以下、図面を参照しながら、本発明に係るドアロック装置の実施の形態(実施形態)を詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
また、以下の実施形態では、本発明に係るドアロック装置の一例として、上方ヒンジにより車両本体に取り付けられたバックドアなどの開閉体を車両本体に対して閉ドア状態に保持するドアロック装置を挙げる。このドアロック装置は、バックドアの下端に取り付けられる。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るドアロック装置の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1に示したドアロック装置の側面図である。図3は、ラッチケース内部の概略構成を示す平面図である。図4は、ラッチケース内部の概略構成を示す正面図である。
本実施形態のドアロック装置は、ラッチケース1と、ラッチ機構と、噛合解除機構と、保持機構とを備え、それらを図1乃至図4に示すような構成にしてある。
ラッチケース1は、ボディ101と、カバープレート102と、バックプレート103とを備える。
ラッチケース1は、凹形状のカバープレート102の開口面にボディ101およびバックプレート103をかぶせることで、その内部にラッチ機構および保持機構の第2保持レバー17を収容可能な空間を設けてある。また、ラッチケース1には、車両本体に設けたストライカSが進入するストライカ進入溝1Sを設けてある。ストライカ進入溝1Sは、ラッチケース1における車両前方側の端面にストライカ進入口があり、車両前後方向の略中央で終端している。カバープレート102は、開口面側の外周部に、ラッチケース1(ドアロック装置)をバックドアに取り付けるためのねじ孔102aを有する取付部102bを設けてある。バックプレート103は、ボディ101との間に第2保持レバー17を収容可能な空間を設けるためのカバー部103aと、リリースレバー9などを配設するレバー配設部103bとからなる。カバー部103aとレバー配設部103bとは、その境界がラッチケース1における車両後方側の端に位置し、図2に示した側面視において略L字になり、かつレバー配設部103bがカバー部103aに対して車両上方側に曲がるように設けてある。
ラッチ機構は、ラッチ2と、ラッチ軸3と、第1コイルばね4と、ラチェット5と、ラチェット軸6と、第2コイルばね7とを備える。
ラッチ2は、ストライカ係合溝2aと、フック部2bと、フルラッチ係止部2cと、ハーフラッチ係止部2dと、第2保持レバー駆動部2eとを有し、ラッチケース1に取り付けられたラッチ軸3で回転可能に支持してある。ラッチ2は、ラッチ軸3に取り付けた第1コイルばね4の弾性復元力による図3における反時計回りの付勢力が常時作用するよう第1コイルばね4と係合している。
ストライカ係合溝2aは、ストライカ進入溝1Sに進入したストライカSに係合する溝であり、ラッチ2の外周面からラッチ軸3に向けて形成してある。フック部2bは、図3においてストライカ係合溝2aよりも車両前方側に位置しており、ラッチ2がフルラッチ位置またはハーフラッチ位置にあるときはストライカSを拘束し、ラッチ2がオープン位置にあるときはストライカSを離脱可能にする部分である。フルラッチ係止部2cは、図3においてストライカ係合溝2aの車両後方側に位置しており、ラッチ2がフルラッチ位置に至るとラチェット5と噛合い、付勢力によるラッチ2の回転を阻止する部分である。ハーフラッチ係止部2dは、ラッチ2がハーフラッチ位置に至るとラチェット5と噛合い、付勢力によるラッチ2の回転を阻止する部分である。第2保持レバー駆動部2eは、ラッチ2がハーフラッチ位置からオープン位置側に回転移動したときに第2保持レバー17を押圧して第2保持レバー17を図3における時計回りに回転させる部分である。
ラチェット5は、噛合部5aと、作用部5bとを有し、ラッチケース1に取り付けられたラチェット軸6で回転可能に支持してある。ラチェット5は、ラチェット軸6に取り付けた第2コイルばね7の弾性復元力による図3における時計回りの付勢力が常時作用するよう第2コイルばね7と係合している。また、ラチェット5は、ラッチケース1(カバープレート102)に取り付けたストッパ8により所定の回転位置(初期位置)で図3における時計回りの回転が阻止される。
噛合部5aは、ラッチ2のフルラッチ係止部2cおよびハーフラッチ係止部2dと噛合う部分である。作用部5bは、ラチェット5を噛合位置から噛合解除位置に移動可能な方向でリリースレバー9と当接する部分である。
ラッチ2とラチェット5とは、ラッチ2の回転中心(ラッチ軸3)とラチェットの回転中心(ラチェット軸6)とがストライカ進入溝1Sを境として両側に位置する関係になるよう配設してある。
噛合解除機構は、リリースレバー9と、リリースレバー軸10と、第3コイルばね11と、第1操作レバー12と、第2操作レバー13とを備える。
リリースレバー9は、ラチェット当接部9aと、第1操作受け部9bと、第2操作受け部9cと、第1保持レバー係合部9dを有し、レバー配設部103bに取り付けられたリリースレバー軸10で回転可能に支持してある。リリースレバー9は、リリースレバー軸10に取り付けた第3コイルばね11の弾性復元力による図4における時計回りの付勢力が常時作用するよう第3コイルばね11と係合している。なお、第3コイルばね11の付勢力は、第2コイルばね7の付勢力よりも小さく設定されている。
ラチェット当接部9aは、バックプレート103(ラッチケース1)に設けた開口103cを通ってラッチケース1内に入っており、ラチェット5を噛合位置から噛合解除位置に移動可能な方向でラチェット5の作用部5bと当接する部分である。第1操作受け部9bは、開ドア装置の操作により第1操作レバー12が動作したときにリリースレバー9が図4における時計回りに回転して第1操作レバー12のリリースレバー駆動部12bと当接する部分である。ラチェット5、リリースレバー9、および第2操作レバー13は、ラチェット当接部9aと第1操作受け部9bとがラチェット軸6の軸方向にずれるように配設される。第2操作受け部9cは、リリースレバー9の回転中心(リリースレバー軸10)とラチェット当接部9aとの間に位置し、開ドア装置の操作により第2操作レバー13が動作したときにリリースレバー9が図4における反時計回りに回転する方向で第2操作レバー13と当接する部分である。第1保持レバー係合部9dは、リリースレバー9でラチェット5を噛合位置から噛合解除位置に移動させたときに第1保持レバー14と係合する部分である。
第1操作レバー12は、伝達部材接続部12aと、リリースレバー駆動部12bとを有し、リリースレバー軸10で回転可能に支持してある。なお、第1操作レバー12には、第3コイルばね11の弾性復元力による付勢力が作用しないようにしてある。また、第1操作レバー12は、リリースレバー9と独立して回転可能にリリースレバー軸10に支持してあり、リリースレバー駆動部12bでリリースレバー9を押圧しているときおよびリリースレバー9によりリリースレバー駆動部12bが押圧されているときのみ、リリースレバー9と一体的に回転する。
伝達部材接続部12aは、バックドアに設けた開ドア装置(たとえば、キーシリンダ)の操作を第1操作レバー12に伝達する伝達部材を接続する部分である。この伝達部材は、開ドア装置の操作がなされたときに第1操作レバー12が図4における時計回り回転をするよう第1操作レバー12に接続する。リリースレバー駆動部12bは、伝達部材による第1操作レバー12の操作がなされ第1操作レバー12が図4における時計回りの回転をしたときにリリースレバー9の第1操作受け部9bを押圧してリリースレバー9を図4における時計回りに回転させる部分である。
第2操作レバー13は、開ドア操作受け部13aと、リリースレバー駆動部13bとを有し、ラチェット軸6で回転可能に支持してある。
開ドア操作受け部13aは、車両内に設けた開ドア装置(たとえば、オープンハンドル)の操作を第2操作レバー13に伝達する伝達部材から押圧を受ける部分であり、ラッチケース1に設けた開口103dを通ってラッチケース1外に突出している。伝達部材と第2操作レバー13とは、開ドア装置の操作がなされたときに第2操作レバー13が図3における反時計回りの回転をするよう当接させる。リリースレバー駆動部13bは、伝達部材による第2操作レバー13の操作がなされ第2操作レバー13が図3における反時計回りの回転をしたときにリリースレバー9の第2操作受け部9cを押圧し、リリースレバー9を図4における時計回りに回転させる部分である。
保持機構は、第1保持レバー14と、第1保持レバー軸15と、第4コイルばね16と、第2保持レバー17と、第2保持レバー軸18とを備える。
第1保持レバー14は、リリースレバー係止部14aと、作用部14bとを有し、レバー配設部103bに取り付けられた第1保持レバー軸15で回転可能に支持してある。第1保持レバー14は、第1保持レバー軸15に取り付けた第4コイルばね16の弾性復元力による図4における時計回りの付勢力が常時作用するよう第4コイルばね16と係合している。
リリースレバー係止部14aは、リリースレバー9でラチェット5を噛合解除位置に移動させたときにリリースレバー9の第1保持レバー係合部9dと係合し、付勢力によるリリースレバー9の回転を阻止する部分である。作用部9bは、第1保持レバー14とリリースレバー9との係合が解除される方向で第2保持レバー17と当接する部分である。
第2保持レバー17は、ラッチ当接部17aと、第1保持レバー駆動部17bとを有し、バックプレート103のカバー部103aに取り付けられた第2保持レバー軸18で回転可能に支持してある。第2保持レバー軸18は、バックプレート103のカバー部103aからラッチケース1内に向けて延出しており、第2保持レバー17は、第1保持レバー駆動部17bを除く部分がラッチケース1内に収容されている。
ラッチ当接部17aは、ラッチ2が図3における反時計回りに回転してハーフラッチ位置からオープン位置に向かう際にラッチ2の第2保持レバー駆動部2eと当接し、第2保持レバー駆動部2eからの押圧により第2保持レバー17を図3における時計回りに回転させる部分である。第1保持レバー駆動部17bは、バックプレート103(ラッチケース1)に設けた開口103eを通ってラッチケース1外に出ており、第2保持レバー17が図3における時計回りに回転したときに第1保持レバー14とリリースレバー9との係合が解除される態様で第1保持レバー14と当接する部分である。
このように、本実施形態のドアロック装置は、リリースレバー9とラチェット5とを、ラッチケース1内であり、かつストライカ進入溝1Sを境としてラチェット5の回転中心(ラチェット軸6)がある側で当接させている。また、本実施形態のドアロック装置では、第1保持レバー14をリリースレバー9との係合位置から係合解除位置に移動させる第2保持レバー17を、ラッチケース1内であり、かつストライカ進入溝1Sを境としてラッチ2の回転中心(ラッチ軸3)がある側に配設してある。そのため、本発明に係るドアロック装置は、噛合解除機構や保持機構を配設するレバー配設部103bを小さくでき、ドアロック装置の小型化が可能になる。
さらに、本実施形態のドアロック装置は、レバー配設部103bに配設した第1操作レバー12およびラッチケース1の側面に設けた開口から突出した第2操作レバー13のいずれを操作してもラチェット5を噛合解除位置に移動させることができるよう構成してあるが、第2操作レバー13をラチェット5に重ねラチェット軸6で回転可能に支持し、かつリリースレバー9の回転中心からリリースレバー9の第2操作受け部9cまでの距離が、リリースレバー9の回転中心からリリースレバー9のラチェット当接部9aまでの距離よりも短くなるようにしてある。そのため、第2操作レバー13をラッチケース1内に効率よく配設することができるとともに、ラチェット5とリリースレバー9との当接位置や第2操作レバー13とリリースレバー9との当接位置をラッチケース1内に効率よく設定できる。すなわち、本実施形態のドアロック装置は、第2操作レバー13を設けることによるドアロック装置の大型化を防いでいる。
次に、本実施形態に係るドアロック装置の動作を説明する。なお、以下の動作の説明は、図3および図4に示した状態、すなわちストライカSに係合したラッチ2がフルラッチ位置でラチェット5と噛合っており、バックドアが車両に対して全閉状態になっているところからはじめる。
図5は、第1操作レバーと連係した開ドア装置の操作によりフルラッチ位置におけるラッチとラチェットの噛合いが解除されラッチがハーフラッチ位置に至る時点でのドアロック装置の状態を示す平面図である。図6は、図5に示したドアロック装置の正面図である。図7は、ラッチが図5に示したハーフラッチ位置を越えてオープン位置に至ったときのドアロック装置の状態を示す平面図である。図8は、図7に示したドアロック装置の正面図である。図9は、オープン位置に至った後でストライカが再びストライカ進入溝に進入してラッチがハーフラッチ位置に至る時点でのドアロック装置の状態を示す平面図である。図10は、第2操作レバーと連係した開ドア装置の操作によりフルラッチ位置におけるラッチとラチェットの噛合いが解除されラッチがハーフラッチ位置に至る時点でのドアロック装置の状態を示す平面図である。図11は、図10に示したドアロック装置の正面図である。
本実施形態のドアロック装置をバックドアに取り付けた車両において、バックドアを開けるためにバックドアに設けたキーシリンダにキーを挿入して回転させると、その操作が第1操作レバー12に伝達される。第1操作レバー12は、キーシリンダによる開ドア操作がなされると、図4における時計回りに回転し、リリースレバー駆動部12bがリリースレバー9の第1操作受け部9bを押圧する。リリースレバー9は、リリースレバー駆動部12bからの押圧を受けると、図4における時計回りに回転し、ラチェット5の作用部5bを押圧する。ラチェット5は、リリースレバー9からの押圧を受けると、ラチェット5に作用する第2コイルばね7からの付勢力に抗して図3における反時計回りに回転し、噛合解除位置に移動する。ラチェット5が噛合解除位置に移動すると、ラッチ2のフルラッチ係止部2cとラチェット5の噛合部5aとの噛合いが解除されるので、ラッチ2は、第1コイルばね4からの付勢力により図3における反時計回りに回転する。したがって、キーシリンダの操作が第1操作レバー12に伝達されると、ドアロック装置は、図5および図6に示す状態になる。
また、リリースレバー9が図4における時計回りに回転してラチェット5を噛合解除位置に移動させると、図5および図6に示すように、リリースレバー9の第1保持レバー係合部9dが第1保持レバー14のリリースレバー係止部14aと係合する。リリースレバー9と係合した第1保持レバー14は、第4コイルばね16による図6における反時計回りの付勢力が作用している。そのため、第1操作レバー12が図6に二点鎖線で示した初期位置、すなわちキーシリンダの操作が伝達される前の位置に戻っても、リリースレバー9と第1保持レバー14の係合が解除されない限り、リリースレバー9およびラチェット5は、図5および図6に示す状態が保持される。すなわち、ラッチ2がハーフラッチ位置に至ってもラチェット5は噛合解除位置に保持されており、ラチェット5の噛合部5aがラッチ2のハーフラッチ係止部2dと噛合うことはない。したがって、ラッチ2はハーフラッチ位置を越えてオープン位置に向かう。
なお、第2操作レバー13のリリースレバー駆動部13bは、第2操作レバー13が図3における反時計回りに回転したときにリリースレバー9の第2操作受け部9cを押圧してリリースレバー9を回転させる方向でリリースレバー9と当接する。そのため、第1操作レバー12からの押圧によりリリースレバー9を回転させたときには第2操作レバー13が動かない。したがって、バックドアに設けたキーシリンダの操作によるリリースレバー9の回転が第2操作レバー13に接続した伝達部材やオープンハンドルに伝達することはない。
ラッチ2がハーフラッチ位置を越えてオープン位置に向かうと、その途中で、ラッチ2に設けた第2保持レバー駆動部2eが第2保持レバー17のラッチ当接部17aと当接して押圧する。第2保持レバー17は、第2保持レバー駆動部2eからの押圧を受けると、図5における時計回りに回転し、第1保持レバー駆動部17bが第1保持レバー14の作用部14bを押圧する。第2保持レバー17は、ラッチ2がハーフラッチ位置からオープン位置に向かう範囲内でのみ図3における時計回りに回転するので、第2保持レバー17の移動軌跡を小さくできる。第1保持レバー14は、第1保持レバー駆動部17bからの押圧を受けると、第4コイルばね16からの付勢力に抗して図6における反時計回りに回転し、リリースレバー係止部14aとリリースレバー9の第1保持レバー係合部9dとの係合を解除可能な位置(係合解除位置)に移動する。第1保持レバー14が係合解除位置に移動すると、第1保持レバー14のリリースレバー係止部14aとリリースレバー9の第1保持レバー係合部9dとの係合が解除されるので、リリースレバー9は、第3コイルばね11からの付勢力により図6における反時計回りに回転する。そのため、ラチェット5は、第2コイルばね7からの付勢力により図5における時計回りに回転し、噛合解除位置からストッパ8と当接する初期位置に戻る。したがって、ラッチ2がフルラッチ位置からハーフラッチ位置を越えてオープン位置に至ると、ドアロック装置は、図7および図8に示す状態になる。
オープン位置に至ったラッチ2は、フック部2bがラッチケース1内に収容され、ストライカSがラッチ2のストライカ係合溝2aおよびラッチケース1のストライカ進入溝1Sから離脱可能になる。そのため、バックドアを開ドア方向に動かすと、図7および図8に示すように、ストライカSがラッチ2のストライカ係合溝2aおよびラッチケース1のストライカ進入溝1Sから離脱し、バックドアを開けることができる。なお、オープン位置に至ったラッチ2は、たとえば、フック部2bがラッチケース1に設けた図示しない係止部と係合し、第1コイルばね4からの付勢力による図7における反時計回りの回転を阻止されている。
その後、バックドアを閉めると、ストライカSがラッチケース1のストライカ進入溝1Sおよびラッチ2のストライカ係合溝2aに進入し、ストライカSにラッチ2が係合する。そしてストライカSがストライカ進入溝1Sの奥側に移動すると、ラッチ2は、第1コイルばね4からの付勢力に抗して図8における時計回りに回転し、ハーフラッチ位置に至る。このときラチェット5は、図7に示すように初期位置、すなわちラッチ2と噛合い可能な位置にある。そのため、ラッチ2がオープン位置からハーフラッチ位置に至ると、ラチェット5の噛合部5aがラッチ2のハーフラッチ係止部2dと噛合う。したがって、ラッチ2がオープン位置からハーフラッチ位置に至ると、ドアロック装置は、図9に示す状態になり、ラッチ2をハーフラッチ位置で一時的に保持することが可能になる。
その後、ストライカSがストライカ進入溝1Sのさらに奥側に移動すると、ラッチ2は、第1コイルばね4からの付勢力に抗して図9における時計回りに回転し、フルラッチ位置に至る。その結果、図3に示したように、ラチェット5の噛合部5aがラッチ2のフルラッチ係止部2cと噛合い、バックドアが全閉状態になる。
一方、本実施形態のドアロック装置をバックドアに取り付けた車両において、バックドアを開けるために車両内に設けたオープンハンドルを操作すると、その操作が第2操作レバー13の開ドア操作受け部13aに伝達される。第2操作レバー13は、オープンハンドルの操作(伝達部材の押圧)を開ドア操作受け部13aで受けると、図3における反時計回りに回転し、リリースレバー駆動部13bがリリースレバー9の第2操作受け部9cを押圧する。リリースレバー9は、第2操作レバー13からの押圧を受けると、図4における時計回りに回転し、ラチェット5の作用部5bを押圧する。ラチェット5は、リリースレバー9からの押圧を受けると、第2コイルばね7からの付勢力に抗して図3における反時計回りに回転し、噛合解除位置に移動する。ラチェット5が噛合解除位置に移動すると、ラッチ2のフルラッチ係止部2cとラチェット5の噛合部5aとの噛合いが解除されるので、ラッチ2は、第1コイルばね4からの付勢力により図3における反時計回りに回転する。したがって、オープンハンドルの操作が第2操作レバー13に伝達されると、ドアロック装置は、図10および図11に示す状態になる。
また、リリースレバー9が図4における時計回りに回転してラチェット5を噛合解除位置に移動させたときも、図10および図11に示すように、リリースレバー9の第1保持レバー係合部9dが第1保持レバー14のリリースレバー係止部14aと係合する。リリースレバー9と係合した第1保持レバー14は、第4コイルばね16による図11における反時計回りの付勢力が作用している。そのため、第2操作レバー13が初期位置に戻っても、リリースレバー9と第1保持レバー14の係合が解除されない限り、リリースレバー9およびラチェット5は、図10および図11に示す状態が保持される。そのため、ラッチ2がハーフラッチ位置に至ってもラチェット5は噛合解除位置に保持されており、ラチェット5の噛合部5aがラッチ2のハーフラッチ係止部2dと噛合うことはない。したがって、ラッチ2はハーフラッチ位置を越えてオープン位置に向かう。
なお、第2操作レバー13によりリリースレバー9を回転させたときにも、第1操作レバー12は動かない。したがって、車両内に設けたオープンハンドルの操作によるリリースレバー9の回転が第1操作レバー12に接続した伝達部材やキーシリンダに伝達することはない。
また、図示は省略するが、ラッチ2がハーフラッチ位置を越えてオープン位置に向かうと、オープン位置に至る途中でラッチ2に設けた第2保持レバー駆動部2eが第2保持レバー17を押圧する。そのため、第2操作レバー13でラチェット5を噛合解除位置に移動させた場合も、ラッチ2がオープン位置に至ると、図7および図8に示したように、第1保持レバー14とリリースレバー9との係合が解除され、リリースレバー9およびラチェット5が初期位置、言い換えるとラチェット5の噛合部5aがラッチ2のフルラッチ係止部2cおよびハーフラッチ係止部2dと噛合可能な位置に戻る。リリースレバー9が初期位置に戻る際には、リリースレバー9の第2操作受け部9cからの押圧により第2操作レバー13も初期位置に戻る。
このように、本実施形態のドアロック装置は、第1操作レバー12と連係する開ドア装置および第2操作レバー13と連係する開ドア装置のいずれを操作してフルラッチ位置でのラッチ2とラチェット5の噛合いを解除した場合も、ハーフラッチ位置でのラッチ2とラチェット5との噛合いを防げる。さらに、本実施形態のドアロック装置は、バックドアを閉めるときには、ハーフラッチ位置でのラッチ2とラチェット5との噛合いが可能である。そのため、バックドアを開ける際にハーフラッチ位置でラッチ1とラチェット5とが噛合わないことを意識することなくバックドアの開閉操作ができ、利便性が損なわれない。
以上説明したように、本実施形態のドアロック装置は、ラッチケース1におけるストライカ進入溝1Sを境にしてラチェット5の回転中心(ラチェット軸6)がある側に噛合解除機構を配設し、ラッチ2の回転中心(ラッチ軸3)がある側に保持機構を配設してある。そして、リリースレバー9とラチェット5とをラッチケース1内で当接させるとともに、第2保持レバー17をラッチケース1内に配設してある。そのため、本実施形態のドアロック装置は、噛合解除機構や保持機構を配設するレバー配設部103bを小さくでき、ドアロック装置の小型化が可能になる。
また、本実施形態のドアロック装置における第2操作レバー13は、リリースレバー9の回転中心とラチェット当接部9aとの間に位置する第2操作受け部9cに当接するようラチェット5と重ねて配置し、ラチェット軸6で回転可能に支持している。その上、ラチェット5、リリースレバー9、および第2操作レバー13は、ラチェット当接部9aと第1操作受け部9bとがラチェット軸6の軸方向にずれるように配設されている。そのため、第2操作レバー13をラッチケース1内に効率よく配設することができるとともに、ラチェット5とリリースレバー9との当接位置や第2操作レバー13とリリースレバー9との当接位置をラッチケース1内に効率よく設定できる。すなわち、本実施形態のドアロック装置は、第2操作レバー13を設けることによるドアロック装置の大型化を防いでいる。
さらに、本実施形態のドアロック装置は、第1操作レバー12または第2操作レバー13でリリースレバー9を移動させることでラチェット5を噛合解除位置に移動させ、かつリリースレバー9が第1保持レバー14と係合した状態(すなわちラチェット5が噛合解除位置に保持された状態)にあっても第1操作レバー12および第2操作レバー13は初期位置に戻ることができる。そのため、第1操作レバー12および第2操作レバー13に、たとえば、リリースレバー9に対しての逃し用の長孔を設ける必要がない。そのため、本実施形態のドアロック装置は、噛合解除機構および保持機構も小型化でき、ドアロック装置をよりいっそうの小型化できる。
その上、本実施形態のドアロック装置は、第1操作レバー12および第2操作レバー13のいずれでもラチェット5を噛合解除位置に移動可能に構成してある。そのため、本実施形態のドアロック装置では、車両内に設けた開ドア装置(オープンハンドル)とバックドアに設けた開ドア装置(キーシリンダ)とを異なる操作レバーに接続することができる。したがって、開ドア装置の操作をドアロック装置に伝達する伝達部材の干渉を防ぎやすくなり、伝達部材の構成を簡素化することができる。特に、第2操作レバー13をラッチケース1の側面に設けた開口103dから突出させているので、本実施形態のドアロック装置をバックドアに取り付けた場合、車両内に設けた開ドア装置の操作を第2操作レバー13に伝達する部品を車両本体側、すなわち車両本体に設けたストライカSの近傍に配置可能になる。その場合、車両内に設けた開ドア装置の操作をドアロック装置に伝達する伝達部材を、ヒンジの近傍を通してバックドアの内部空間に引き込むなどの方法で大きく迂回させることなく配設できる。したがって、本実施形態のドアロック装置をバックドアに取り付けると、車両内に設けた開ドア装置の操作をドアロック装置に伝達する伝達部材の構成をいっそう簡素化することができる。
加えて、本実施形態のドアロック装置では、第1保持レバー14がレバー配設部103bにおけるストライカ進入溝1Sの進入口がある端部側を向く面に配設され、第2保持レバー17がカバー部103aのラッチ2と対向する面に配設されている。そのため、第2保持レバー17の第1保持レバー駆動部17bと第1保持レバー14の作用部14bとがそれぞれ延出した先で係合でき、第1保持レバー14とリリースレバー9との係合を解除する構成を簡単にできる。
しかも、本実施形態のドアロック装置をバックドアに取り付けた場合、開いているバックドアを閉めるときには、従来と同様ハーフラッチ位置でのラッチ2とラチェット5との噛合いが可能である。そのため、バックドアを開ける際にハーフラッチ位置でラッチ2とラチェット5とが噛合わないことを意識することなくバックドアの開閉操作ができ、利便性が損なわれない。
(実施形態2)
図12は、本発明の実施形態2に係るドアロック装置におけるラッチケース1内部の概略構成を示す平面図である。図13は、ラッチケース内部の概略構成を示す正面図である。
本実施形態のドアロック装置は、ラッチケース1と、ラッチ機構と、噛合解除機構と、保持機構とを備え、それらを図12および図13に示すような構成にしてある。本実施形態のドアロック装置において、実施形態1のドアロック装置と異なる点は、ラチェット5に開ドア操作受け部5cを設けて第2操作レバー13を省略した点と、第2保持レバー17の保持方法を変えた点と、リリースレバー9と第1保持レバー14との係合を解除するタイミングを変えた点の3点である。
ラッチケース1は、ボディ101と、カバープレート102と、バックプレート103とを備える。
ラッチ機構は、ラッチ2と、ラッチ軸3と、第1コイルばね4と、ラチェット5と、ラチェット軸6と、第2コイルばね7とを備える。
ラッチ2は、ストライカ係合溝2aと、フック部2bと、フルラッチ係止部2cと、ハーフラッチ係止部2dと、第2保持レバー駆動部2eとを有し、ラッチケース1に取り付けられたラッチ軸3で回転可能に支持してある。ラッチ2は、ラッチ軸3に取り付けた第1コイルばね4の弾性復元力による図12における反時計回りの付勢力が常時作用するよう第1コイルばね4と係合している。
ストライカ係合溝2a、フック部2b、フルラッチ係止部2c、およびハーフラッチ係止部2dは、それぞれ、実施形態1で示したラッチ2と同じように設けてある。第2保持レバー駆動部2eは、ラッチ2がハーフラッチ位置からフルラッチ位置側に回転移動したときに第2保持レバー17を押圧して第2保持レバー17を図12における時計回りに回転させる部分である。
ラチェット5は、噛合部5aと、作用部5bと、開ドア操作受け部5cとを有し、ラッチケース1に取り付けられたラチェット軸6で回転可能に支持してある。ラチェット5は、ラチェット軸6に取り付けた第2コイルばね7の弾性復元力による図12における時計回りの付勢力が常時作用するよう第2コイルばね7と係合している。なお、ラチェット5は、ラッチケース1(カバープレート102)に取り付けたストッパ8により所定の回転位置(初期位置)で図12における時計回りの回転が阻止される。
噛合部5aおよび作用部5bは、それぞれ、実施形態1で示したラチェット5と同じように設けてある。開ドア操作受け部5cは、車両内に設けた開ドア装置(たとえば、オープンハンドル)の操作をラチェット5に伝達する伝達部材と当接し、その伝達部材から押圧を受ける部分である。開ドア操作受け部5cは、実施形態1で示した第2操作レバー13における開ドア操作受け部13aに相当し、ラッチケース1に設けた開口103dを通ってラッチケース1外に突出している。伝達部材と開ドア操作受け部5cとは、開ドア装置の操作がなされたときにラチェット5が図12における反時計回りの回転をするよう当接させる。
ラッチ2とラチェット5とは、ラッチ2の回転中心(ラッチ軸3)とラチェット5の回転中心(ラチェット軸6)とがストライカ進入溝1Sを挟む位置関係になるよう配設してある。
噛合解除機構は、リリースレバー9と、リリースレバー軸10と、第3コイルばね11と、第1操作レバー12とを備える。
リリースレバー9は、ラチェット当接部9aと、第1操作受け部9bと、第1保持レバー係合部9dを有し、レバー配設部103bに取り付けられたリリースレバー軸10で回転可能に支持してある。リリースレバー9は、リリースレバー軸10に取り付けた第3コイルばね11の弾性復元力による図4における反時計回りの付勢力が常時作用するよう第3コイルばね11と係合している。
ラチェット当接部9a、第1操作受け部9b、および第1保持レバー係合部9dは、実施形態1で示したリリースレバー9と同じように設けてある。また、第1操作レバー12は、実施形態1で示したものと同じように設けてある。
保持機構は、第1保持レバー14と、第1保持レバー軸15と、第4コイルばね16と、第2保持レバー17とを備える。第1保持レバー14は、実施形態1で示したものと同じように設けてある。
第2保持レバー17は、ラッチ当接部17aと、第1保持レバー駆動部17bとを有し、ラッチ軸3で回転可能に支持してある。第2保持レバー17は、第1保持レバー駆動部17bを除く部分がラッチケース1内に収容されている。
ラッチ当接部17aは、ラッチ2が図12における時計回りに回転してハーフラッチ位置からフルラッチ位置に向かう際にラッチ2の第2保持レバー駆動部2eと当接し、第2保持レバー駆動部2eからの押圧により第2保持レバー17を図12における時計回りに回転させる部分である。第1保持レバー駆動部17bは、バックプレート103(ラッチケース1)に設けた開口103eを通ってラッチケース1外に出ており、第2保持レバー17が図12における時計回りに回転したときに第1保持レバー14とリリースレバー9との係合が解除される方向で第1保持レバー14と当接する部分である。
このように、本実施形態のドアロック装置は、ラッチケース1におけるストライカ進入溝1Sを境にしてラチェット5の回転中心(ラチェット軸6)がある側に噛合解除機構を配設し、ラッチ2の回転中心(ラッチ軸3)がある側に保持機構を配設してある。そして、リリースレバー9とラチェット5とをラッチケース1内で当接させるとともに、第2保持レバー17をラッチケース1内に配設してある。そのため、本実施形態のドアロック装置は、噛合解除機構や保持機構を配設するレバー配設部103bを小さくでき、ドアロック装置の小型化が可能になる。
さらに、本実施形態のドアロック装置では、ラチェット5に設けた開ドア操作受け部5cをラッチケース1の側面に設けた開口103dからラッチケース1外に突出させることで、実施形態1のドアロック装置における第2操作レバー13を省略している。そのため、本実施形態のドアロック装置は、実施形態1のドアロック装置よりも小型化できる。
次に、本実施形態に係るドアロック装置の動作を説明する。なお、以下の動作の説明は、図12および図13に示した状態、すなわちストライカSに係合したラッチ2がフルラッチ位置でラチェット5と噛合っており、バックドアが車両に対して全閉状態になっているところからはじめる。
図14は、第1操作レバーと連係した開ドア装置の操作によりフルラッチ位置におけるラッチとラチェットの噛合いが解除されラッチがハーフラッチ位置に至る時点でのドアロック装置の状態を示す平面図である。図15は、図14に示したドアロック装置の正面図である。図16は、ラッチが図14に示したハーフラッチ位置を越えてオープン位置に至ったときのドアロック装置の状態を示す平面図である。図17は、図16に示したドアロック装置の正面図である。図18は、ラチェットの開ドア操作受け部の押圧によりフルラッチ位置におけるラッチとラチェットの噛合いを解除した直後のドアロック装置の状態を示す平面図である。図19は、ラッチが図18に示した位置からハーフラッチ位置に至った時点でのドアロック装置の状態を示す平面図である。図20は、図19に示したドアロック装置の正面図である。図21は、ラチェットの開ドア操作受け部の押圧により図19に示したハーフラッチ位置でのラッチとラチェットの噛合いが解除されラッチがオープン位置に至る時点でのドアロック装置の状態を示す平面図である。図22は、図21に示したドアロック装置の正面図である。
本実施形態のドアロック装置をバックドアに取り付けた車両において、バックドアに設けたキーシリンダにキーを挿入して回転させると、その操作が第1操作レバー12に伝達される。第1操作レバー12は、キーシリンダによる開ドア操作がなされると、図13における時計回りに回転し、リリースレバー駆動部12bがリリースレバー9の第1操作受け部9bを押圧する。リリースレバー9は、第1操作レバー12からの押圧を受けると、図4における時計回りに回転し、ラチェット5の作用部5bを押圧する。ラチェット5は、リリースレバー9からの押圧を受けると、第2コイルばね7からの付勢力に抗して図12における反時計回りに回転し、噛合解除位置に移動する。ラチェット5が噛合解除位置に移動すると、ラッチ2のフルラッチ係止部2cとラチェット5の噛合部5aとの噛合いが解除されるので、ラッチ2は、第1コイルばね4からの付勢力により図3における反時計回りに回転する。したがって、第1操作レバー12(キーシリンダ)の操作によりフルラッチ位置におけるラッチ2とラチェット5との噛合いが解除された場合、ラッチ2がハーフラッチ位置に至る時点でのドアロック装置は、図14および図15に示す状態になる。
また、リリースレバー9が図13における時計回りに回転してラチェット5を噛合解除位置に移動させると、図14および図15に示すように、リリースレバー9の第1保持レバー係合部9dが第1保持レバー14のリリースレバー係止部14aと係合する。リリースレバー9と係合した第1保持レバー14は、第4コイルばね16による図15における反時計回りの付勢力が作用している。そのため、第1操作レバー12が図15に二点鎖線で示した初期位置、すなわちキーシリンダの操作がなされる前の位置に戻っても、リリースレバー9と第1保持レバー14との係合が解除されない限り、リリースレバー9およびラチェット5は、図14および図15に示す状態が保持される。すなわち、ラッチ2がハーフラッチ位置に至ってもラチェット5は噛合解除位置に保持されており、ラチェット5の噛合部5aがラッチ2のハーフラッチ係止部2dと噛合うことはない。したがって、ラッチ2はハーフラッチ位置を越えてオープン位置に向かう。
リリースレバー9の第1保持レバー係合部9dが第1保持レバー14のリリースレバー係止部14aと係合すると、第2操作レバー13は、図12および図14に示すように、ラッチ2がフルラッチ位置のときよりも図12における反時計回りに回転した位置で保持される。第1保持レバー係合部9dとリリースレバー係止部14aとの係合は、ラッチ2に設けた第2保持レバー駆動部2eで第2保持レバー17のラッチ当接部17aを押圧することにより解除される。第2保持レバー駆動部2eは、上記のようにラッチ2がハーフラッチ位置からフルラッチ位置に向かう際にラッチ当接部17aに当接して押圧する。そのため、ラッチ2がオープン位置に至っても、リリースレバー9と第1保持レバー14との係合は解除されない。したがって、第1操作レバー12(キーシリンダ)の操作によりフルラッチ位置におけるラッチ2とラチェット5との噛合いが解除された場合、ラッチ2がフルラッチ位置からハーフラッチ位置を越えてオープン位置に至ると、ドアロック装置は、図16および図17に示す状態になる。すなわち、本実施形態のロック装置では、第1操作レバー12を介した噛合解除操作を行った場合、ラッチ2がオープン位置に至っても、第2操作レバー13は、ラッチ2がフルラッチ位置のときよりも図12における反時計回りに回転した位置で保持される。
オープン位置に至ったラッチ2は、フック部2bがラッチケース1内に収容され、ストライカSがラッチ2のストライカ係合溝2aおよびラッチケース1のストライカ進入溝1Sから離脱可能になる。そのため、バックドアを開ドア方向に動かすと、図16および図17に示すように、ストライカSがラッチ2のストライカ係合溝2aおよびラッチケース1のストライカ進入溝1Sから離脱し、バックドアを開けることができる。なお、オープン位置に至ったラッチ2は、たとえば、フック部2bがラッチケース1に設けた図示しない係止部と係合し、第1コイルばね4からの付勢力による図16における反時計回りの回転を阻止されている。
その後、バックドアを閉めると、ストライカSがラッチケース1のストライカ進入溝1Sおよびラッチ2のストライカ係合溝2aに進入し、ストライカSにラッチ2が係合する。そしてストライカSがストライカ進入溝1Sの奥側に移動すると、ラッチ2は、第1コイルばね4からの付勢力に抗して図16における時計回りに回転をし、ハーフラッチ位置に至る。このときラチェット5は、図16に示すように噛合解除位置に保持されたままである。そのため、ラッチ2がオープン位置からハーフラッチ位置に至っても、ラチェット5の噛合部5aがラッチ2のハーフラッチ係止部2dと噛合うことはない。
その後、ストライカSがストライカ進入溝1Sのさらに奥側に移動すると、ラッチ2は、第1コイルばね4からの付勢力に抗して図16における時計回りに回転し、フルラッチ位置に至る。ラッチ2がハーフラッチ位置を越えてフルラッチ位置に向かうと、その途中で、ラッチ2に設けた第2保持レバー駆動部2eが第2保持レバー17のラッチ当接部17aと当接して押圧する。第2保持レバー17は、第2保持レバー駆動部2eからの押圧を受けると、図16における時計回りに回転し、第1保持レバー駆動部17bが第1保持レバー14の作用部14bを押圧する。第1保持レバー14は、第2保持レバー17からの押圧を受けると、第4コイルばね16からの付勢力に抗して図17における反時計回りに回転し、リリースレバー係止部14aとリリースレバー9の第1保持レバー係合部9dとの係合を解除可能な位置(係合解除位置)に移動する。第1保持レバー14が係合解除位置に移動すると、第1保持レバー14のリリースレバー係止部14aとリリースレバー9の第1保持レバー係合部9dとの係合が解除されるので、リリースレバー9は、第3コイルばね11からの付勢力により図17における反時計回りに回転する。そのため、ラチェット5は、第2コイルばね7からの付勢力により図16における時計回りに回転し、噛合解除位置からストッパ8と当接する初期位置に戻る。したがって、ラッチ2がオープン位置からハーフラッチ位置を越えてフルラッチ位置に至ると、ドアロック装置は、図12および図13に示す状態に戻る。その結果、図16に示したように、ラチェット5の噛合部5aがラッチ2のフルラッチ係止部2cと噛合い、バックドアが全閉状態になる。
一方、本実施形態のドアロック装置をバックドアに取り付けた車両において、バックドアを開けるために車両内に設けたオープンハンドルを操作すると、その操作がラチェット5の開ドア操作受け部5cに伝達される。ラチェット5は、オープンハンドルの操作(伝達部材の押圧)を開ドア操作受け部5cで受けると、第2コイルばね7からの付勢力に抗して図12における反時計回りに回転し、噛合解除位置に移動する。ラチェット5が噛合解除位置に移動すると、ラッチ2のフルラッチ係止部2cとラチェット5の噛合部5aとの噛合いが解除されるので、ラッチ2は、第1コイルばね4からの付勢力により図12における反時計回りに回転する。したがって、オープンハンドルの操作がラチェット5に伝達されると、ラッチ2とラチェット5との噛合いが解除された直後のドアロック装置は、図18に示す状態になる。
なお、オープンハンドルの操作によりラチェット5を直接噛合解除位置に移動させた場合、リリースレバー9は動かない。そのため、オープンハンドルを操作した直後に元の位置(操作前の位置)に戻すと、ラチェット5は、第2コイルばね7からの付勢力により時計回りに回転し、図18に二点鎖線で示したようにラッチ2と当接する。
その後、ラッチ2が第1コイルばね4からの付勢力により図18における反時計回りに回転してハーフラッチ位置に至ると、ラッチ2のハーフラッチ係止部2dとラチェット5の噛合部5aとが噛合う。したがって、オープンハンドルによる開ドア操作の時間が短かった、凍結によりバックドアの動きが鈍くなっているなどの理由で、ラッチ2がハーフラッチ位置を越えるところまでバックドアが開かなかった場合、ラッチ2がハーフラッチ位置に至った時点におけるドアロック装置は、図19および図20に示す状態になる。
オープンハンドルによる開ドア操作をしたにもかかわらず、ハーフラッチ位置においてラッチ2とラチェット5とが噛合ってしまった場合は、オープンハンドルによる開ドア操作を再度行い、ハーフラッチ位置でのラッチ2とラチェット5との噛合いを解除する。そうすると、ラッチ2は第1コイルばね4からの付勢力により図19における反時計回りに回転してオープン位置に至る。したがって、ラチェット5の開ドア操作受け部5cの押圧によりフルラッチ位置におけるラッチ2とラチェット5の噛合いが解除された場合、ラッチ2がフルラッチ位置からハーフラッチ位置を越えてオープン位置に至ると、ドアロック装置は、図21および図22に示す状態になる。
なお、オープンハンドルの操作によりラチェット5を直接噛合解除位置に移動させる場合、リリースレバー9および第1操作レバー12は動かない。したがって、車両内に設けたオープンハンドルの操作によるラチェット5の移動が第1操作レバー12に接続した伝達部材やキーシリンダに伝達することはない。
また、図示は省略するが、オープンハンドルの操作によりラチェット5を直接噛合解除位置に移動させてラッチ2をフルラッチ位置からオープン位置に移動させた場合、リリースレバー9と第1保持レバー14とは係合していないので、ラチェット5は初期位置と噛合解除位置との間で揺動可能である。そのため、オープンハンドルの操作によりラチェット5を直接噛合解除位置に移動させてラッチ2をフルラッチ位置からオープン位置に移動させた場合、その後バックドアを閉めるときには、ラッチ2がハーフラッチ位置に至る時点でラチェット5の噛合部5aがラッチ2のハーフラッチ係止部2dと噛合う。
このように、本実施形態のドアロック装置は、第1操作レバー12と連係する開ドア装置を操作してフルラッチ位置でのラッチ2とラチェット5との噛合いを解除した場合は、ハーフラッチ位置でのラッチ2とラチェット5との噛合いを防げる。さらに、本実施形態のドアロック装置は、第1操作レバー12が動作してラッチ2をオープン位置に移動させてバックドアを開けた場合、その直後のバックドアを閉める動作ではハーフラッチ位置でラッチ2とラチェット5とが噛合わない。そのため、車外からバックドアを開閉するときにはハーフラッチ位置でのラッチ2とラチェット5との噛合いにより半ドア状態になることを防げ、それ以外のときには従来と同様のバックドアの開閉操作ができ、利便性が向上する。
以上説明したように、本実施形態のドアロック装置は、ラッチケース1におけるストライカ進入溝1Sを境にしてラチェット5の回転中心(ラチェット軸6)がある側に噛合解除機構を配設し、ラッチ2の回転中心(ラッチ軸3)がある側に保持機構を配設してある。そして、リリースレバー9とラチェット5とをラッチケース1内で当接させるとともに、第2保持レバー17をラッチケース1内に配設してある。また、第1操作レバー12でリリースレバー9を移動させることでラチェット5を噛合解除位置に移動させ、かつリリースレバー9が第1保持レバー14と係合した状態(すなわちラチェット5が噛合解除位置に保持された状態)にあっても第1操作レバー12は初期位置に戻ることができる。そのため、第1操作レバー12に、たとえば、リリースレバー9に対しての逃し用の長孔を設ける必要がない。そのため、本実施形態のドアロック装置は、噛合解除機構や保持機構を配設するレバー配設部103bを小さくでき、ドアロック装置の小型化が可能になる。
さらに、本実施形態のドアロック装置は、ラチェット5に設けた開ドア操作受け部5cをラッチケース1の側面に設けた開口103dからラッチケース1外に突出させることで、実施形態1のドアロック装置における第2操作レバー13を省略している。そのため、本実施形態のドアロック装置は、実施形態1のドアロック装置よりも小型化できる。
その上、本実施形態のドアロック装置は、第1操作レバー12およびラチェット5の開ドア操作受け部5cのいずれでもラチェット5を噛合解除位置に移動可能に構成してある。そのため、本実施形態のドアロック装置では、車両内に設けた開ドア装置(オープンハンドル)とバックドアに設けた開ドア装置(キーシリンダ)とを異なる操作レバーに接続することができる。したがって、開ドア装置の操作をドアロック装置に伝達する伝達部材の干渉を防ぎやすくなり、伝達部材の構成を簡素化することができる。特に、ラチェット5に設けた開ドア操作受け部5cをラッチケース1の側面に設けた開口103dから突出させているので、本実施形態のドアロック装置をバックドアに取り付けた場合、車両内に設けた開ドア装置の操作を開ドア操作受け部5c(ラチェット5)に伝達する部品を車両本体側、すなわち車両本体に設けたストライカSの近傍に配置可能になる。その場合、車両内に設けた開ドア装置の操作をドアロック装置に伝達する伝達部材を、ヒンジの近傍を通してバックドアの内部空間に引き込まなくてもよくなる。したがって、本実施形態のドアロック装置をバックドアに取り付けると、車両内に設けた開ドア装置の操作をドアロック装置に伝達する伝達部材の構成をいっそう簡素化することができる。
加えて、本実施形態のドアロック装置では、第1保持レバー14がレバー配設部103bにおけるストライカ進入溝1Sの進入口がある端部側を向く面に配設され、第2保持レバー17がカバー部103aのラッチ2と対向する面に配設されている。そのため、第2保持レバー17の第1保持レバー駆動部17bと第1保持レバー14の作用部14bとがそれぞれ延出した先で係合でき、第1保持レバー14とリリースレバー9との係合を解除する構成を簡単にできる。
しかも、本実施形態のドアロック装置をバックドアに取り付けた場合、車外からバックドアを開閉するときにはハーフラッチ位置でのラッチ2とラチェット5との噛合いにより半ドア状態になることを防げ、それ以外のときには従来と同様のバックドアの開閉操作ができるので、利便性が向上する。
以上、本発明に係るドアロック装置を、上記の実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることはもちろんである。たとえば、本発明に係るドアロック装置における噛合解除機構と保持機構とは、上記実施形態で示した組み合わせに限らず、実施形態1の噛合解除機構と実施形態2の保持機構とを組み合わせてもよいことや、逆に実施形態1の保持機構と実施形態2の噛合解除機構とを組み合わせてもよいことはもちろんである。