しかし、スリーブ本体を型枠に強固に固定している場合であっても、打設時に型枠とスリーブ本体の間から微量の生コンクリート(硬化前のコンクリート)が侵入することは通常は避けられない。そのため、特許文献2の構成では、固定保持具の溝に生コンクリートが侵入して硬化することで、スリーブ本体から固定保持具から取り外せなくなる可能性がある。従って、特許文献2の構成を現実的に採用することは困難である。
また、特許文献2では、固定保持具及びスリーブ本体に面テープを貼り付けることで、固定保持具とスリーブ本体とを固定する方法についても開示されている。しかし、固定保持具の外径とスリーブ本体の内径は略等しいため、固定時においてスリーブ本体の位置が少しでもズレると、固定保持具とスリーブ本体が面テープにより接着されてしまう。従って、スリーブ本体と固定保持具の軸心を一致させた状態を維持しつつ、スリーブ本体を延ばす必要がある。上述のように、型枠同士の間には、スリーブだけでなく梁配筋及び補強筋等も配置されるため、このような作業は非常に困難である。従って、面テープを用いた構成は、スリーブを型枠に固定する作業の作業性の悪さを解決していないと考えられる。
以上により、上述した特許文献1の課題は必ずしも解決されておらず、これらの課題を解決可能な梁用貫通孔形成具が求められていた。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、スライドスリーブの固定のための釘打ち作業や、型枠の除去後に残った固定具(釘等)の除去作業等の手間を大幅に軽減可能な構成の梁用貫通孔形成具を提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の観点によれば、以下の構成の梁用貫通孔形成具が提供される。即ち、梁用貫通孔形成具は、コンクリートで梁を施工する際に当該梁に貫通孔を形成するためのものである。この梁用貫通孔形成具は、スライドスリーブと、支持具と、連結具と、を備える。前記スライドスリーブは、軸方向に互いにスライド可能な2つの筒部材を含んで構成されており、軸方向の両方の端部近傍に複数の取付孔が形成されている。前記連結具は、取付突起が形成されており、前記スライドスリーブを軸方向にスライドさせて近づけることで前記取付突起が前記取付孔に内側から嵌まり込んで当該スライドスリーブに着脱可能に取り付けられる。前記支持具は、固定具挿入孔が形成されており、当該固定具挿入孔に固定具が挿入されることでコンクリートの型枠に固定され、少なくともコンクリートの打設時に前記スライドスリーブの両方の端部近傍の内部にそれぞれ配置され、前記連結具に着脱可能に取り付けられる。
これにより、連結具がスライドスリーブの内側から嵌まり込んで取り付けられるため、コンクリートの打設時に取付孔にコンクリートが侵入して硬化した場合であっても、連結具から支持具を取り外した後に当該連結具を径方向内側に引っ張ることで、スライドスリーブから連結具を取り外すことができる。従って、コンクリートからの除去が可能であって、スライドスリーブの固定のための釘打ち作業や、型枠の除去後に残った固定具(釘等)の除去作業等の手間を大幅に軽減可能な構成の梁用貫通孔形成具が実現できる。また、スライドスリーブに連結具が取り付けられた状態では、取付孔から連結具が視認可能となるため、スライドスリーブと連結具の取付けが完了していることを外部から容易に確認できる。
前記の梁用貫通孔形成具においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記支持具と前記連結具のうち、一方にはスライド溝が形成されており、他方には、スライド溝に沿ってスライドするスライド部が形成されている。前記支持具のうち、コンクリートの打設時に型枠に接触する側を接触側と称し、前記貫通孔の軸方向における前記接触側の反対側を非接触側と称したときに、前記連結具を前記支持具の前記非接触側にスライドさせることで、前記連結具を前記支持具に取付可能であり、当該取付後は、前記連結具を更に前記非接触側にスライド不能である。
これにより、型枠の除去前は、支持具から連結具を外れにくくすることができる。また、型枠を除去した後においては、支持具を非接触側(貫通孔の奥側)にスライドさせることで、連結具から支持具を取り外すことができる。
前記の梁用貫通孔形成具においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記固定具には、少なくとも一部が型枠に挿入される胴部と、当該胴部よりも径が大きい頭部と、が形成されている。前記支持具には、前記スライドスリーブの中心に相当する位置に、前記固定具挿入孔よりも径が大きく、かつ、前記固定具の前記頭部よりも径が大きい位置決め孔が形成されている。
これにより、位置決め孔は固定具の頭部よりも径が大きいため、型枠のうち貫通孔の中心に相当する位置に初めに固定具を挿入しておき、その後に当該固定具に支持具をセットすることができる。従って、支持具及びスライドスリーブの取付けに係る作業性を一層向上させることができる。
前記の梁用貫通孔形成具においては、前記支持具と前記連結具は、色及び材料のうち少なくとも一方が互いに異なることが好ましい。
これにより、両者の色が異なる場合は、支持具と連結具が別体であって取外し可能なことが直感的に把握できる。また、両者の材料が異なる場合は、例えば連結具の材料をコンクリートから剥がれ易い材料にすることで、連結具の取外し作業の手間を軽減できる。
前記の梁用貫通孔形成具においては、前記スライドスリーブと前記連結具は、少なくとも色が互いに異なることが好ましい。
これにより、スライドスリーブに連結具を取り付けた後において、取付孔から連結具が良好に視認できるため、スライドスリーブと連結具の取付けがされていることを外部から容易に確認できる。
前記の梁用貫通孔形成具においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記支持具は、中心部と、アーム部と、を備える。前記中心部は、前記スライドスリーブの中心に相当する位置に配置される。前記アーム部は、当該中心部から前記スライドスリーブの径方向外側に延びるように複数形成されている。複数の前記アーム部には前記固定具挿入孔がそれぞれ形成されるとともに、当該アーム部毎に個別の前記連結具を取付可能である。
これにより、連結具を取り付けるための部分と固定具挿入孔とがともにアーム部に形成されるので、シンプルな構成が実現できる。
前記の梁用貫通孔形成具においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記支持具には、前記アーム部から軸方向に突出するように形成された固定具挿入部が形成されており、当該固定具挿入部に前記固定具挿入孔が形成されている。前記支持具を型枠に固定した際に、前記アーム部と前記固定具挿入部のうち前記固定具挿入部のみが型枠に接触する。
これにより、型枠と支持具の接触面積を抑えることができるので、漏れた生コンクリートが型枠と支持具の間に流れた場合においても、型枠から支持具を除去し易い。
前記の梁用貫通孔形成具においては、前記連結具には、前記支持具を型枠に固定した際に、型枠に接触するように突出する突出部が形成されていることが好ましい。
これにより、連結具を安定的に保持できるので、例えば、スライドスリーブを連結具に取り付ける際に連結具が外れることを防止できる。
前記の梁用貫通孔形成具においては、前記連結具は、前記スライドスリーブの内面のうち、取付孔が形成されている部分及びその周囲にのみ接触していることが好ましい。
これにより、従来のようにスライドスリーブの内面全体に接触して支持する場合、支持する部材が大きくなるので型枠の除去後に当該部材を除去する作業の作業性が低くなる。しかし、上記のようにスライドスリーブの内面の一部のみに接触している場合は、連結具及び支持具の大きさを抑えることができるので、型枠の除去後に支持具及び連結具を除去する作業の作業性を向上できる。
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、図1から図3を参照して、梁用貫通孔形成具1の構成について説明する。
図1に示す梁用貫通孔形成具1は、コンクリートで梁を施工する際に当該梁に貫通孔を形成するための部材である。梁に形成される貫通孔は、例えば、給排水の配管、空調の配管、又は電気配線等を設置するために用いられる。なお、以下の説明では、梁に形成される貫通孔の径方向を単に「径方向」と称する。図1に示すように、梁用貫通孔形成具1は、支持具10と、連結具30と、スライドスリーブ50と、を備える。
支持具10は、少なくともコンクリートの打設時にスライドスリーブ50の内部に配置されて当該スライドスリーブ50を支持する。支持具10は、スライドスリーブ50の両端に相当する位置にそれぞれ配置される。支持具10の材料は任意であるが、例えば、ポリプロピレン(PP)等の合成樹脂であることが好ましい。図2に示すように、支持具10は、中心部11と、アーム部13と、固定具挿入部14と、連結具取付部16と、を備える。
中心部11は、支持具10の中央(コンクリートの打設時においてスライドスリーブ又は貫通孔の中心近傍)に位置する筒状の部材である。この中心部11には、貫通孔である位置決め孔12が形成されている。位置決め孔12の軸方向は、貫通孔の軸方向と同じである(即ち位置決め孔12の軸方向と型枠面は垂直である)。位置決め孔12は、支持具10を型枠に固定する際に、支持具10の中心と貫通孔の中心とを一致させるために用いられる(詳細は後述)。
アーム部13は、中心部11から放射状に(詳細には、位置決め孔12や貫通孔の径方向外側に)延びるように形成されている。アーム部13の長手方向の長さは、形成する貫通孔の半径よりやや短い程度である。本実施形態では、アーム部13は3本設けられているが、2本であっても良いし、4本以上であっても良い。また、アーム部13の配置間隔は、均一であっても良いし、不均一であっても良い。アーム部13には、長手方向に沿ってリブが形成されているが、リブが形成されていなくても良い。
固定具挿入部14は、アーム部13の径方向外側の端部近傍に形成された筒状の部材である。固定具挿入部14は、アーム部13毎に個別に形成されている。固定具挿入部14には、貫通孔である固定具挿入孔15が形成されている。固定具挿入孔15の軸方向は、貫通孔の軸方向と同じである(即ち固定具挿入孔15の軸方向と型枠面は垂直である)。固定具挿入孔15は、支持具10を型枠に固定するために用いられる。具体的には、支持具10を型枠に設置して、当該固定具挿入孔15に釘72を打ち込むことで、支持具10が型枠に固定される。また、固定具挿入孔15の内径は、位置決め孔12の内径よりも小さい。なお、固定具は釘に限られず、例えば画鋲又はタッピングネジ等を用いることもできる。
連結具取付部16は、固定具挿入部14の更に径方向外側に形成されている。連結具取付部16には、断面T字状かつ貫通状のスライド溝17が形成されている。スライド溝17は、連結具30を着脱可能に取り付けるために用いられる。
連結具30は、支持具10に着脱可能に取り付けられるとともに、スライドスリーブ50にも着脱可能に取り付けられる。従って、連結具30は、支持具10とスライドスリーブ50を連結する機能を有する。連結具30の材料は任意であるが、例えば、ポリエチレン(PE)等の弾性変形が可能な合成樹脂であることが好ましい。連結具30をポリエチレン(PE)にすることで、コンクリートの硬化後に連結具30を取り外し易くなる。また、本実施形態では、支持具10と連結具30が別体かつ着脱可能であることを分かり易くするために、支持具10と連結具30の色及び材料の両方を異ならせている(なお片方のみが異なる構成であっても良い)。図3に示すように、連結具30は、弾性変形部31と、取付突起32と、スライド部33と、突出部34と、を備える。
弾性変形部31は、径方向内側に押圧されることで弾性変形する部分である。弾性変形部31は、第1部材31aと第2部材31bとから構成されている。第1部材31aを径方向内側に押圧することで、第1部材31aと第2部材31bのなす角が小さくなり、第1部材31aが径方向内側に弾性変形する。なお、弾性変形部31は、径方向内側に押圧されることで弾性変形するのであれば別の構成であっても良い。
取付突起32は、弾性変形部31(詳細には第1部材31a)の径方向外側の面に形成されており、径方向外側へ突出する略円柱状の突起である。取付突起32は、スライドスリーブ50に形成された取付孔53(後述)に嵌まり込むことで、連結具30をスライドスリーブ50に着脱可能に取り付ける。
スライド部33は、弾性変形部31の径方向内側に形成されている。スライド部33は、図3(c)に示すように断面T字状となっている。これにより、スライド部33をスライド溝17に挿入することで、連結具30を支持具10に着脱可能に取り付けることができる。また、コンクリートの打設時に型枠に接触する側を「接触側」、貫通孔の軸方向において接触側の反対側を「非接触側」としたときに、図3(b)に示すように、スライド部33は、接触側の端部が閉鎖するように形成されている。
この構成により、図1に示すように、支持具10に対して連結具30を非接触側にスライドさせることで、連結具30を支持具10に取り付けることができる。このとき、連結具30を所定以上スライドさせることで、スライド部33の閉鎖した端部が連結具取付部16に接触する(ストッパ機能が働く)ため、連結具30を非接触側にスライドさせ過ぎることを防止できる。また、連結具30を取り付けた状態から、連結具30を逆方向(接触側)にスライドさせることで、支持具10から連結具30を取り外すことができる。このようにして、連結具30は支持具10に着脱可能に構成される。
突出部34は、スライド部33から接触側に突出する部分である。突出部34は、図1(b)に示すように、コンクリートの打設時において、型枠に接触する。これにより、支持具10及び連結具30を型枠に固定した後に、連結具30が支持具10から外れることを防止できる。
スライドスリーブ50は、筒状の部材であり、コンクリートの打設時に内部にコンクリートが侵入しないようにすることで、貫通孔を形成する部材である。スライドスリーブ50は、金属製又は高強度の樹脂製であり、貫通孔の形成後においても除去されずに貫通孔に埋め込まれたままである。なお、スライドスリーブ50の色は連結具30と異なる色が採用されている。スライドスリーブ50は、図5に示すように、内筒51と、外筒52と、を備える。内筒51及び外筒52には、それぞれ取付孔53が形成されている。
内筒51と外筒52は、少なくとも一部が重なるように(外筒52の内側に内筒51が配置されるように)構成されている。この構成により、内筒51又は外筒52を軸方向に沿って移動させることで、外筒52に対して内筒51を(内筒51に対して外筒52を)スライドさせることができる。
取付孔53は、内筒51及び外筒52の開口側の端部近傍に複数形成されている。取付孔53が形成される間隔は、アーム部13が形成される間隔(即ち連結具30が配置される間隔)と同一である。取付孔53は、連結具30の取付突起32が嵌まり込むことで、連結具30にスライドスリーブ50を取り付けることができる。具体的には、スライドスリーブ50をスライドさせて連結具30に近づける。これにより、取付孔53が取付突起32に到達していない状況では、取付突起32が径方向内側に縮められており、その後、取付孔53が取付突起32に到達することで、弾性変形部31の弾性変形の復元力により取付突起32が径方向外側に移動する。これにより、連結具30にスライドスリーブ50を取り付けることができる。なお、スライドスリーブ50を取り付けた後は、取付突起32を径方向内側に縮めることで、連結具30を取り外すことができる。このようにして、連結具30はスライドスリーブ50に着脱可能に構成される。なお、取付孔53が形成される位置は、内筒51及び外筒52の端部から、貫通孔の軸方向における支持具10のサイズ分だけ中央側の箇所までの間である。
ここで、内筒51と外筒52は内径が異なるので、異なるサイズの支持具10又は連結具30が必要とも思われるが、本実施形態では、弾性変形部31の径方向の変位が大きいため、内筒51と取付孔53とで同じ支持具10及び連結具30を用いることができる。言い換えると、弾性変形部31の径方向の変位は、取付突起32と取付孔53の嵌め込みに必要な変位に加えて、更に、内筒51と外筒52の内径差に相当する分だけ変位可能であるため、内筒51と取付孔53とで同じ支持具10及び連結具30を用いることができる。
次に、図4から図11を参照して、梁用貫通孔形成具1を用いて梁に貫通孔を形成する流れを説明する。なお、以下では、型枠61の配置後の流れを説明する。
予め、作業者は、支持具10に連結具30を取り付けておく。そして、作業者は、施工図等を確認して、貫通孔の中心位置を示す印を型枠61に付ける。次に、作業者は、図4(a)に示すように、印を付けた位置に釘71を打ち込む。その後、位置決め孔12に釘71を通すようにして、支持具10を型枠61に仮置きする。ここで、位置決め孔12の内径は、釘71の頭部よりも若干大きくなるように構成されているため、先に釘71を打ち付けた後に支持具10を仮置きできる。これにより、限られたスペースしか確保できない場合であっても支持具10の位置決めを高精度に行うことができる。
次に、図4(b)に示すように、仮置きした支持具10の固定具挿入孔15に釘72を打ち付けて支持具10を固定する。ここで、固定具挿入孔15の内径は、釘72の頭部よりも小さくなるようにかつ釘72の胴部よりも大きくなるように構成されているため、釘72を打ち付けることで支持具10を固定できる。なお、本実施形態では、釘71と釘72は同じサイズであり、位置決め孔12と固定具挿入孔15の径を異ならせたが、位置決め孔12と固定具挿入孔15の径を同じにして、釘71と釘72のサイズを異ならせても良い。
図4(a)及び図4(b)で説明した作業は、対向して配置された型枠61の両方に対して行われる。即ち、1つの貫通孔に対して2つの支持具10が型枠61に固定される。
次に、作業者は、図5に示すように、スライドスリーブ50を下降させて、対向するように設けられた型枠61の間に配置する。このとき、梁を補強するための梁配筋62及び貫通孔の端部を補強するための補強筋63も同時に配置される。なお、図面を見易くするために、図5以外では、梁配筋62及び補強筋63の図示を省略する。
次に、作業者は、図6に示すように、スライドスリーブ50を外側に延ばすようにスライドさせる。これにより、上述したように内筒51及び外筒52の取付孔53に連結具30の取付突起32が嵌まり込むことで、スライドスリーブ50が連結具30に取り付けられる(スライドスリーブ50が支持具10に支持される)。スライドスリーブ50が連結具30に取り付けられることで、取付孔53から取付突起32が突出する。また、上述のようにスライドスリーブ50と連結具30は色が異なる。従って、取付孔53から取付突起32が突出していることを確認するだけで、連結具30にスライドスリーブ50が取り付けられたことを確認できる。
次に、作業者は、図7に示すように、対向して配置された型枠61の間に生コンクリート64を流し込む。スライドスリーブ50は、支持具10により支持されているため、生コンクリート64の圧力が掛かっても所定の位置を維持する。
次に、作業者は、生コンクリート64が硬化した後に、型枠61を除去する。図8には、型枠61の除去前の様子が示されており、図9には、型枠61の除去後の様子が示されている。ここで、図8に示すように、型枠61には、中心部11、固定具挿入部14、及び突出部34は接触しているが、アーム部13は接触していない(なおアーム部13が型枠61に接触する構成にすることもできる)。この構成により、スライドスリーブ50と型枠61の間から微量のコンクリートが漏れた場合であっても、支持具10及び連結具30と型枠61とが接着しにくくなる。また、型枠61と梁用貫通孔形成具1は、釘72のみによって固定されている。以上により、型枠61を外側(支持具10から離す方向)に移動させることで、型枠61を除去することができる。
次に、作業者は、貫通孔の内部に残された支持具10を除去する。なお、上述のようにスライドスリーブ50は貫通孔に配置したままにするため、除去の必要はない。初めに、作業者は、図10に示すように、支持具10を貫通孔の奥側に押圧することで、連結具30から支持具10を取り外す。上述したように、支持具10は、貫通孔の奥側にはスライド可能であるため、連結具30から支持具10を容易に取り外すことができる。支持具10と連結具30の連結箇所は、取付孔53よりも内側にあるため、仮にコンクリート漏れが生じていた場合でも支持具10と連結具30は強固に接着されていないため、ハンマー等を用いて支持具10を叩くことで、連結具30から支持具10を取り外すことができる。
次に、作業者は、貫通孔の内部に残った連結具30を取り外す。ここで、従来では、スライドスリーブの内周面の全体にわたって接触して支持する支持具が用いられている。この場合、コンクリートが漏れた場合、スライドスリーブと支持具が強固に接着し易くなる。これに対し、本実施形態では、スライドスリーブ50の内面のうち、取付孔53が形成されている部分及びその周囲にのみ連結具30が接触しているため、スライドスリーブ50と連結具30が強固に接着されにくくなる。なお、連結具30の取付突起32の外側の面はコンクリートに接触するため、連結具30はある程度の力で固定されている。しかし、連結具30は基本的には表面のみがコンクリートで固定されているため、径方向内側に引っ張ることで、連結具30を取り外すことができる。特に、本実施形態では連結具30はポリエチレンであってコンクリートから剥がし易いので、連結具30を除去できる。
以上に説明したように、本実施形態の梁用貫通孔形成具1は、コンクリートで梁を施工する際に当該梁に貫通孔を形成するために用いられる。梁用貫通孔形成具1は、スライドスリーブ50と、支持具10と、連結具30と、を備える。スライドスリーブ50は、軸方向に互いにスライド可能な2つの筒部材(内筒51及び外筒52)を含んで構成されており、軸方向の両端部近傍に複数の取付孔53が形成されている。支持具10は、固定具挿入孔15が形成されており、当該固定具挿入孔15に釘72が挿入されることでコンクリートの型枠61に固定され、少なくともコンクリートの打設時にスライドスリーブ50の両端部の近傍の内部にそれぞれ1つずつ配置されて当該スライドスリーブ50を支持する。連結具30は、取付突起32が形成されており、スライドスリーブ50を軸方向にスライドさせて近づけることで取付突起32が取付孔53に内側から嵌まり込んで当該スライドスリーブ50に着脱可能に取り付けられるとともに、支持具10に着脱可能に取り付けられる。
これにより、連結具30がスライドスリーブ50の内側から嵌まり込んで取り付けられるため、コンクリートの打設時に取付孔53にコンクリートが侵入して硬化した場合であっても、連結具30から支持具10を取り外した後に当該連結具30を径方向内側に引っ張ることで、スライドスリーブ50から連結具30を取り外すことができる。従って、コンクリートからの除去が可能であって、スライドスリーブ50の固定のための釘打ち作業や、型枠の除去後に残った固定具(釘等)の除去作業等の手間を大幅に軽減可能な構成の梁用貫通孔形成具1が実現できる。また、スライドスリーブ50に連結具30が取り付けられることで、取付孔53から連結具30が視認可能となるため、スライドスリーブ50と連結具30の取付けが完了していることを外部から容易に確認できる。
また、本実施形態の梁用貫通孔形成具1において、支持具10にはスライド溝17が形成されており、連結具30には、スライド溝17に沿ってスライドするスライド部33が形成されている。連結具30を支持具10の非接触側にスライドさせることで、連結具30を支持具10に取付可能であり、当該取付後は、連結具30を更に非接触側にスライド不能である。
これにより、コンクリートの硬化後に型枠61を除去した後において、支持具10を非接触側(貫通孔の奥側)にスライドさせることで、連結具30から支持具10を取り外すことができる。
また、本実施形態の梁用貫通孔形成具1において、釘72には、少なくとも一部が型枠61に挿入される胴部と、当該胴部よりも径が大きい頭部と、が形成されている。支持具10には、スライドスリーブ50の中心に相当する位置に配置されており、固定具挿入孔15よりも径が大きく、かつ、釘71,72の頭部よりも径が大きい位置決め孔12が形成されている。
これにより、位置決め孔12は釘71,72の頭部よりも径が大きいため、型枠61のうち貫通孔の中心に相当する位置に初めに釘71を挿入しておき、その後に釘71に支持具10をセットすることができる。従って、支持具10及びスライドスリーブ50の取付けに係る作業性を一層向上させることができる。
また、本実施形態の梁用貫通孔形成具1において、支持具10と連結具30は、色及び材料のうち少なくとも一方が互いに異なる。
これにより、両者の色が異なる場合は、支持具10と連結具30が別体であって取外し可能なことが直感的に把握できる。また、両者の材料が異なる場合は、例えば連結具30の材料をコンクリートから剥がれ易い材料にすることで、連結具30の取外し作業の手間を軽減できる。
また、本実施形態の梁用貫通孔形成具1において、スライドスリーブ50と連結具30は、少なくとも色が互いに異なる。
これにより、スライドスリーブ50に連結具30を取り付けた後において、取付孔53から連結具30が視認可能となるため、スライドスリーブ50と連結具30の取付けがされていることを外部から容易に確認できる。
また、本実施形態の梁用貫通孔形成具1において、支持具10は、中心部11と、アーム部13と、を備える。中心部11は、スライドスリーブ50の中心に相当する位置に配置される。アーム部13は、当該中心部11からスライドスリーブ50の径方向外側に延びるように複数形成されており、固定具挿入孔15が形成されるとともに、連結具30を取付可能である。
これにより、連結具30を取り付けるための部分と固定具挿入孔15とがともにアーム部13に形成されるので、シンプルな構成が実現できる。
また、本実施形態の梁用貫通孔形成具1において、固定具挿入孔15は、アーム部13から軸方向に突出するように形成された固定具挿入部14に形成されている。支持具10を型枠61に固定した際に、アーム部13は型枠61に接触せず、固定具挿入部14が型枠に接触する。
これにより、型枠61と支持具10の接触面積を抑えることができるので、漏れた生コンクリート64が型枠61と支持具10の間に流れた場合においても、型枠61から支持具10を除去し易い。
また、本実施形態の梁用貫通孔形成具1において、連結具30には、支持具10を型枠61に固定した際に、型枠61に接触するように突出する突出部34が形成されている。
これにより、連結具30を安定的に保持できるので、例えば、スライドスリーブ50を連結具30に取り付ける際に連結具30が外れることを防止できる。
また、本実施形態の梁用貫通孔形成具1において、連結具30は、スライドスリーブ50の内面のうち、取付孔53が形成されている部分及びその周囲にのみ接触している。
これにより、従来のようにスライドスリーブの内面全体に接触して支持する場合、支持する部材が大きくなるので型枠の除去後に当該部材を除去する作業の作業性が低くなる。しかし、上記のようにスライドスリーブ50の内面の一部のみに接触している場合は、連結具30及び支持具10の大きさを抑えることができるので、型枠61の除去後に支持具10及び連結具30を除去する作業の作業性を向上できる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記の実施形態では、アーム部13に固定具挿入孔15が形成されているが、板状(例えば円板状)の部材に固定具挿入孔15が形成されていても良い。円筒状の部材また、アーム部13の径方向の端部近傍ではなく、中途部に固定具挿入孔15が形成されていても良い。また、上記実施形態では、アーム部13毎に個別の連結具30が取り付けられる構成であるが、複数のアーム部13に1つの連結具が取り付けられていても良い。このような連結具としては、例えば円筒状であって、アーム部13との連結箇所が複数設けられ、更に、取付突起32が複数形成されたものが用いられる。
スライドスリーブ50に形成される取付孔53及び取付突起32は、円形に限られず、楕円、長円、矩形であっても良い。
上記の実施形態では、支持具10にスライド溝17が形成されており、連結具30にスライド部33が形成されているが、支持具10にスライド部が形成されており、連結具30にスライド溝が形成されていても良い。
上記の実施形態では、スライドスリーブ50が2つの筒部材から構成されているが、3つ以上の筒部材から構成されていても良い。