JP6045328B2 - セメントおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、クリンカ1ton当たり、150kg以上350kg以下の石炭灰を原料として使用するセメントクリンカの製造にあたり、水硬率(H.M.)が1.8〜2.3、ケイ酸率(S.M.)が1.3〜2.3、鉄率(I.M.)が1.8〜2.8となるように、石炭灰を含むセメント原料を配合し、得られたセメントクリンカに、総SO3量が2.0〜10.0%となるように石膏を混合して粉砕するか/又は互いに分離粉砕した後混合し、ブレーン比表面積3,000〜4,500cm2/gとしたセメント組成物の製造方法が記載されている。
しかし、ここ数年、廃棄物の使用量、特に原料代替廃棄物(例えば石炭灰)の使用量は頭打ちになってきている。そこで、廃棄物の使用量の更なる増量を進める方策の一つとして、廃棄物の使用対象を普通セメント以外のセメント品種に拡大することが挙げられる。ここで、原料代替廃棄物の多くはAl2O3に富む粘土代替廃棄物であるため、廃棄物の使用量が増加するとセメントクリンカの間隙相(3CaO・Al2O3(以下、「C3A」ともいう。)、及び4CaO・Al2O3・Fe2O3(以下、「C4AF」ともいう。))が増え、結果として水和熱が増大するという問題がある。しかし、早強ポルトランドセメントは、セメントの水和熱が大きな問題となる大型構造物の製造にはほとんど用いられないことから、廃棄物の使用量を増加することができる品種として好適である。
例えば、特許文献2には、早強型セメント系固化材や早強型セメントの母体となり、ボーグ式での鉱物組成の割合が3CaO・SiO2(以下、「C3S」ともいう。)>70%である高活性セメントクリンカであって、該高活性セメントクリンカにおける水硬率(H.M.)が2.2〜2.3のときはケイ酸率(S.M.)が1.7〜2.4かつ鉄率(I.M.)が1.0〜2.1であり、水硬率(H.M.)が2.1〜2.2未満のときはケイ酸率(S.M.)が1.5〜2.0かつ鉄率(I.M.)が0.9〜1.4である高活性セメントクリンカが記載されている。また、特許文献2には、該高活性セメントクリンカの主原料として、カルシウム分をCaO換算で20重量%以上含む産業廃棄物を利用することができることが記載されている。
そこで、本発明は、原料として用いられる廃棄物の使用量を増加させることができるとともに、早強ポルトランドセメントと同等の物理特性(具体的には、凝結、強度、及び流動性)を有するセメントを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[3]を提供するものである。
[1] 水硬率(H.M.)が2.10〜2.30、ケイ酸率(S.M.)が1.80〜2.48、鉄率(I.M.)が1.86〜2.40であり、かつ、焼成物100質量%中の3CaO・SiO2の割合が、ボーグ式による計算値で60.0〜70.0質量%である焼成物の粉砕物と、石膏を含むセメントであって、該セメント100質量%中の石膏の割合が、SO3換算で1.2質量%以上であり、かつ、該セメント中の二水石膏及び半水石膏の合計量に対する半水石膏の割合が、SO3換算で30質量%以上であることを特徴とするセメント。
[2] 前記[1]に記載のセメントを製造するための方法であって、産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上を原料として使用して、上記焼成物を得る、セメントの製造方法。
[3] 上記焼成物が、焼成物1ton当たり、183〜300kgの産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上を原料として使用した焼成物である前記[2]に記載のセメントの製造方法。
また、本発明のセメントは、原料として用いられる廃棄物(産業廃棄物、一般廃棄物、及び/又は建設発生土等)の使用量を増加させることができるので、廃棄物の有効利用をより促進させることができる。
なお、上記焼成物(クリンカ)の各係数は、後述する原料を前記数値範囲内となるように混合することで調整することができる。
本発明のセメントに用いられる焼成物のケイ酸率(S.M.)は、1.80〜2.48、好ましくは2.00〜2.47、より好ましくは2.20〜2.46、特に好ましくは2.30〜2.45である。該ケイ酸率が2.48を超えると、焼成物を製造する際の焼成が困難となり、得られた焼成物中にフリーライム(CaO)が残りやすくなる。また、廃棄物の使用量を増やすことができなくなる。該ケイ酸率が1.80未満であると、焼成物中のC3A及びC4AFの含有量が多くなり、長期(例えば材齢28日)の強度発現性が悪くなる。また、本発明のセメントを含むモルタル等の流動性及び作業性が悪くなる。また、石膏の必要添加量が増加するため、製造コストが高くなる。また、水和発熱量が過大となる。さらに、焼成物の被粉砕性が悪くなり、製造コストが高くなる。
本発明のセメントに用いられる焼成物の鉄率(I.M.)は、1.3〜2.6、好ましくは1.6〜2.5、より好ましくは1.8〜2.4である。該鉄率が2.6を超えると、焼成物中のC3Aの含有量が多くなり、本発明のセメントを含むモルタル等の流動性及び作業性が悪くなる。また、石膏の必要添加量が増加するため、製造コストが高くなる。さらに、水和発熱量が過大となる。該鉄率が1.3未満であると、焼成物中のC3AFの含有量が多くなり、焼成物の被粉砕性が悪くなるため、製造コストが高くなる。
なお、本明細書中、焼成物中のC3S、C2S、C3A、C4AFの各量は、焼成物100質量%中の割合(質量%)として、原料や焼成物の化学成分に基づき、下記のボーグの計算式を用いて算出される。
C3S(%)=(4.07×CaO(%))−(7.60×SiO2(%))−(6.72×Al2O3(%))−(1.43×Fe2O3(%))
C2S(%)=(2.87×SiO2(%))−(0.754×C3S(%))
C3A(%)=(2.65×Al2O3(%))−(1.69×Fe2O3(%))
C4AF(%)=3.04×Fe2O3(%)
具体的には、石炭灰、生コンスラッジ、各種汚泥(例えば、下水汚泥、浄水汚泥、建設汚泥、製鉄汚泥等)、ボーリング廃土、各種焼却灰、鋳物砂、ロックウール、廃ガラス、高炉二次灰、建築廃材、コンクリート廃材等の産業廃棄物;下水汚泥乾粉、都市ごみ焼却灰、貝殻等の一般廃棄物;建設現場または工事現場等から発生する土壌、残土、及び廃土壌等の建設発生土が挙げられる。
中でも、使用の容易性等の観点から、好ましくは石炭灰である。
上記廃棄物(産業廃棄物、一般廃棄物、及び建設発生土から選ばれる一種以上)の使用量は、廃棄物の有効利用を図り、かつ、セメントの品質を確保するという観点から、上記焼成物1ton当たり、好ましくは183kg以上、より好ましくは183〜300kg、さらに好ましくは185〜280kg、特に好ましくは190〜260kgである。
各原料を混合する方法は、特に限定されるものではなく、エアブレンディングサイロ等の慣用の装置等で行えばよい。また、焼成に使用する装置も特に限定されるものではなく、例えば、ロータリーキルン等の慣用の装置を使用することができる。ロータリーキルンで焼成を行う場合には、燃料代替廃棄物、具体的には、木くず、廃油、廃タイヤ、廃プラスチック等を使用することができる。燃料代替廃棄物を用いることで、廃棄物の利用をさらに促進することができる。
石膏の量が1.2質量%未満の場合、本発明のセメントを含むモルタル等の流動性及び強度発現性が悪くなる。
石膏としては、二水石膏、α型又はβ型半水石膏、及び無水石膏等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、セメント中のSO3量の定量は、化学分析(JIS R 5202(セメントの化学分析方法))、又は、蛍光X線分析(JIS R 5204(セメントの蛍光X線分析方法))により行うことができる。二水石膏及び半水石膏の定量は、例えば、特開平6−242035号公報に記載される方法により行うことができる。
本発明のセメント中の二水石膏及び半水石膏の合計量(100質量%)に対する半水石膏の割合は、SO3換算で30質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。該割合が30質量%以上であると、本発明のセメントを含むモルタル等の流動性を向上させることができる。
さらに、成因による石膏の種類は特に限定されず、例えば、天然石膏、排煙脱硫石膏、リン酸石膏、チタン石膏、フッ酸石膏、精錬石膏等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(i)の方法の場合、焼成物と石膏を、ブレーン比表面積が好ましくは3,000〜6,000cm2/g、より好ましくは3,500〜5,500cm2/gとなるまで粉砕する。
上記(ii)の方法の場合、焼成物を、ブレーン比表面積が好ましくは3,000〜5,500cm2/g、より好ましくは3,500〜5,000cm2/gとなるまで粉砕する。また、上記(ii)の方法で用いられる石膏のブレーン比表面積は、好ましくは3,500〜7,000cm2/g、より好ましくは4,000〜6,500cm2/gである。
なお、ブレーン比表面積の測定は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」によって測定することができる。
また、必要に応じて、支障のない範囲内で、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、及びポリカルボン酸系の減水剤(AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤も含む)、並びに、空気連行剤及び消泡剤等の混和剤、セメント混和材を使用することができる。
1.焼成物の製造、及び評価
焼成物の原料として、従来、ポルトランドセメントクリンカの主原料として一般的に使用されている石灰石、粘土、珪石、鉄原料等を主体とし、さらに原料代替廃棄物を用いて、焼成物の水硬率(H.M.)、ケイ酸率(S.M.)、および鉄率(I.M.)が表2で示す値となるように原料を調合した。
ここで、焼成物11の原料として用いた原料代替廃棄物の、焼成物(クリンカ)1ton(表中「t」と表す。)当たりの配合量(kg)を表1に示す。該焼成物11は市販の早強ポルトランドセメントクリンカと同等の水硬率(H.M.)、ケイ酸率(S.M.)、および鉄率(I.M.)を有する焼成物である。
また、他の焼成物に用いられる原料代替廃棄物は、目的とする水硬率等を有する焼成物を得るために、表1で示される原料代替廃棄物のうち、石炭灰及びR鉄原料以外の廃棄物(R石灰石、R粘土、建設発生土、及びR珪石)の使用量を可能な限り固定して、石炭灰及びR鉄原料の使用量を調整したものである。
表2中、原料代替廃棄物の使用量は、焼成例11で用いられた原料代替廃棄物の使用量を基準として、増加した量を表している。
1)原料代替廃棄物の使用量の評価
各焼成物の製造に用いられる原料代替廃棄物の使用量が、焼成例11に用いられた原料代替廃棄物の使用量(165.0kg/ton)よりも20kg/ton以上増加した焼成物は、廃棄物の使用量が十分に増加したものとして評価を「○」とした。結果を表2に示す。
表2の結果から、焼成物のケイ酸率(S.M.)が2.48を超える場合、又はC3S量が70.0質量%を超える場合、焼成物の原料代替廃棄物の使用量の評価が悪くなることがわかる。
[実施例1〜7、比較例1〜13]
表2の各焼成物100質量部に対して、排脱二水石膏(住友金属社製)及び該排脱二水石膏を140℃で加熱して得られた半水石膏を、セメント100質量%中の割合として、石膏(二水石膏及び半水石膏)の割合がSO3換算で2.7質量%となる量を添加し、バッチ式ボールミルでブレーン比表面積が4500±50cm2/gとなるように同時粉砕して、セメントを調製した。なお、二水石膏及び半水石膏の合計量に対する半水石膏の割合は、全てのセメントにおいて、SO3換算で50質量%とした。
1)焼成物の被粉砕性の評価
各セメントのブレーン比表面積と、該ブレーン比表面積となるまでに要した時間を表3に示す。
被粉砕性の評価は、比較例4のセメント(市販品と同等の焼成物11を使用)を製造するのに要した時間を基準とし、該時間に1.1を乗じた時間(127分間)未満のセメントを「○」と評価した。結果を表4に示す。
2)凝結性状の評価
各セメントの凝結時間について、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準拠して測定を行った。結果を表3に示す。
凝結性状の評価は、比較例4のセメント(市販品と同等の焼成物11を使用)の凝結始発時間及び終結時間を基準とし、凝結始発時間が100分間以上であり、かつ、凝結終結時間が150分間以上であるものを「○」と評価した。結果を表4に示す。
各セメントを含むモルタルのモルタル圧縮強さについて、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準拠して測定を行った。結果を表3に示す。
モルタル圧縮強さの評価は、比較例4のセメント(市販品と同等の焼成物11を使用)を含むモルタルのモルタル圧縮強度を基準とし、比較例4のセメントを含むモルタルの各材齢における圧縮強度に0.95を乗じた数値以上のモルタル圧縮強さを満足するもの(材齢1日:24.7N/mm2以上、材齢3日:44.8N/mm2以上、材齢7日:55.3N/mm2以上、材齢28日:64.0N/mm2以上)を「○」と評価した。結果を表4に示す。
4)流動性の評価
以下の配合のモルタルについて、混練直後及び混練後30分間静置したモルタルを、フローコーン(上面直径5cm、下面直径10cm、高さ15cm)に投入し、フローコーンを上方へ取り去った際のモルタルの広がりを測定し、フロー値を求めた。混練直後の数値(以下、「直後値」ともいう。)及び、下記評価式を用いて算出した経時変化量(以下、「ロス率」ともいう。)を用いて流動性の評価を行った。流動性の評価は、直後値が250mm以上であり、かつ、ロス率が30%以下であるものを「○」と評価した。結果を表3、及び4に示す。
[配合]
水/セメント(質量比):0.35
細骨材/セメント(質量比):2.0
減水剤(エヌエムビー社製「レオビルドSP8N」/セメント(質量比):0.0065
[経時変化量(ロス率)の評価式]
経時変化量(ロス率):(f1−f2)/(f1−100)×100(%)
(式中、f1は混練直後のモルタルのフロー値(mm)を表し、f2は混練後30分間静置したモルタルのフロー値(mm)を表す。)
実施例8〜13及び比較例14〜17では、表2の焼成物6を焼成物(クリンカ)として使用した。
焼成物100質量部に対して、排脱二水石膏(住友金属社製)及び該排脱二水石膏を140℃で加熱して得られた半水石膏を、表5に示される割合で添加して、バッチ式ボールミルで118分間同時粉砕して、セメントを調製した。
なお、石膏の添加量による影響でブレーン比表面積は実施例1〜8及び比較例1〜12よりもばらついているが、該ばらつきは市販品の通常のばらつきと同程度である。
5)凝結性状の評価
各セメントの凝結時間について、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準拠して測定を行った。結果を表5に示す。
凝結性状の評価は、比較例4のセメント(市販品と同等の焼成物11を使用)の凝結始発時間及び終結時間を基準とし、凝結始発時間が100分間以上であり、かつ、凝結終結時間が150分以上であるものを「○」と評価した。結果を表5に示す。
6)流動性の評価
実施例1〜7及び比較例1〜13と同様にして、混練直後及び混練後30分間静置したモルタルのフロー値を測定した。混練直後の数値、及び上述した経時変化量(ロス率)の評価式を用いて流動性の評価を行った。流動性の評価は、直後値が250mm以上であり、かつ、ロス率が30%以下であるものを「○」と評価した。結果を表5に示す。
Claims (3)
- 水硬率(H.M.)が2.10〜2.30、ケイ酸率(S.M.)が1.80〜2.48、鉄率(I.M.)が1.86〜2.40であり、かつ、焼成物100質量%中の3CaO・SiO2の割合が、ボーグ式による計算値で60.0〜70.0質量%である焼成物の粉砕物と、石膏を含むセメントであって、
該セメント100質量%中の石膏の割合が、SO3換算で1.2質量%以上であり、かつ、該セメント中の二水石膏及び半水石膏の合計量に対する半水石膏の割合が、SO3換算で30質量%以上であることを特徴とするセメント。 - 請求項1に記載のセメントを製造するための方法であって、産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上を原料として使用して、上記焼成物を得る、セメントの製造方法。
- 上記焼成物が、焼成物1ton当たり、183〜300kgの産業廃棄物、一般廃棄物及び建設発生土から選ばれる一種以上を原料として使用した焼成物である請求項2に記載のセメントの製造方法。
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