JP6035500B1 - 塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物 - Google Patents

塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】透明性が高く、且つ塗料に用いるに好適な組成物、特に、特定の透過率特性を備えた塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物を提供することを課題とする。【解決手段】波長400〜620nmの光線の反射率が18%未満であり、一次粒子径が1〜50nmである表面の少なくとも一部がケイ素酸化物で被覆された酸化鉄粒子を含む塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物を提供する。同分散体は、波長200〜420nmの光線の透過率が2.0%以下であり、波長620〜800nmの光線に対する透過率が80%以上であることが望ましい。【選択図】図13

Description

本発明は、塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物に関する。
酸化物粒子は、触媒、導電性材料、磁性材料、二次電子放出材料、発光体、吸熱体、エネルギー貯蔵体、電極材料、色材など幅広い分野において用いられている材料であり、粒子の大きさによって、特性が変化するため、目的や要求によって、異なる粒子径や結晶性を持つ酸化物粒子が必要とされている。特に、微粒子化することによってバルクの状態とは大きく異なる特性が発現されるようになり、酸化物粒子は今後も広く求められる材料である。しかし、微粒子化することによって発現する特性が複数ある場合、用途によって、特定の特性のみを発現させ、別の特性は抑制させたい場合がある。一例を挙げると、金属酸化物の場合、微粒子化することによって、光触媒能及び紫外線吸収能の両者が発現するが、金属酸化物の微粒子を色材や紫外線防御剤として用いる場合には、その光触媒能を抑制する必要がある。
以上例示した様に、酸化物粒子に発現する特定の特性を抑制する場合に、酸化物粒子の表面に、異種元素の酸化物を被覆する方法(例えば、特許文献1)によって解決できることが知られている。
特許文献1に記載の方法では、有機溶媒を含む水に酸化物粉末を分散させ、ケイ素化合物を作用させて酸化物粒子の表面にシリカを被覆している。しかし、粉末状の酸化物を一次粒子にまで分散することは非常に困難であり、また酸化物の懸濁液に、該酸化物の表面にシリカ被覆を行うための反応溶液を6〜8時間程度かけて一定速度で加えて、その後に12時間程度の熟成処理を行う必要があるため、反応容器内における反応条件は逐次変化することとなり、容器内の反応物の濃度分布についても均一にすることが困難なため、酸化物粒子の一つ一つについてその表面をケイ素化合物で覆うことはさらに困難である。事実、特許文献1では図2に見られる様に析出した粒子が凝集した結果、凝集後の粒子に対してシリカを被覆してしまっている。このように特許文献1においては、実際には、個々の粒子に均一な被覆処理を施すことが出来ない。その上、処理に長時間を要するため、効率の良い方法とは言えない。特に、酸化物粒子の析出工程と被覆工程とが関連付けられていないため、最終生成物である、コアシェル型酸化物粒子の製造という観点からすると、工業上、極めて非効率であると言わざるを得ない。
また、本願出願人による、特許文献2〜特許文献6、12には、接近離反可能な相対的に回転する処理用面間において粒子を析出させる方法が開示されている。しかし、特許文献2に記載された方法は酸化物粒子を効率よく安定的に製造する方法であり、表面を異種元素の酸化物で被覆されたコアシェル型の酸化物粒子を作製する方法については開示されていなかった。
一方、特許文献3にはアモルファスシリカ粒子を処理用面間より吐出させた後に当該粒子の表面に銀を均一にコートした例が開示されている。しかしながら、アモルファスシリカを含む吐出液と硝酸銀溶液とを管状容器内で所定時間滞留させてアモルファスシリカ粒子の表面に銀コーティングしたものであり、この方法を特許文献2によって得られた酸化物粒子の表面に異種元素の酸化物をコーティングする場合に適応しても、粒子全面に均一なコーティングを施すのは不可能であった。
なお、特許文献4には、酸化物粒子を析出後、上記酸化物粒子の分散性を調整するために、酸化物粒子を含む流体と酸性物質または過酸化水素を含む流体とを1秒以内に混合することが示されている。しかしながら、当該手法により、酸化物粒子の表面全体に異種元素の酸化物を均一に被覆させたコアシェル型の酸化物粒子の作製は不可能であるし、そもそも特許文献4には、酸化物粒子に発現する特定の特性を抑制することすら示されてはいない。
さらに、特許文献5には上記処理用面間において、二酸化チタン粒子の表面を酸化アルミニウムや酸化ケイ素などの物質で覆うことで、当該粒子の光触媒活性を制御できる旨記載されている。しかしながら、特許文献5においては、二酸化チタン粒子の析出工程と、析出した二酸化チタン粒子を酸化ケイ素などの酸化物で被覆する被覆工程との関連性については何も示されてはいない。そのため、コアとなる個々の酸化物粒子の表面全体に、シェルとなる均一な異種元素の酸化物被覆を安定的に施すことは困難であった。
特許文献6には、金属微粒子の製造方法が開示され、複数の、少なくとも1種類の金属及び/または金属化合物を含む流体を別々の導入部より上記処理用面間に導入することで、コアシェル型の合金粒子などを作製することができることが開示されている。しかしながら、特許文献6には、コアとシェルが共に酸化物であるコアシェル型の酸化物粒子を作製する方法についての開示はなく、シェルによる被覆の均一性についての開示もない。
特許文献7においては、特許文献2〜6に記載された装置と同様の装置を用いて、金属Aを金属Bによって修飾された触媒の製造方法が開示されている。また、金属Aと金属Bの形態が共に酸化物であってもよいこと、金属Aの表面が金属Bによって完全に又は部分的に被覆されている形態であることが好ましいことや、金属Aを主成分とするコア部と、金属Bを主成分とするシェル部とからなり、金属Aが金属Bとは異なる結晶構造を有するコアシェル構造体の形態であることがより好ましいことが開示されている。しかしながら、実施例の触媒中の金属粒子の形態は金属A,Bともに酸化物ではなく、表1に記載された表面被覆率を見る限り、金属Aの表面全面を金属Bによって均一に被覆するものではない。
本願発明者は、コアとなる酸化物粒子の析出とコアとなる酸化物粒子の表面へのシェルとなる酸化物の被覆とを連続的に行うことで、酸化物粒子の表面全体に異種元素の酸化物を均一に被覆させた、コアシェル型酸化物粒子を効率よく安定的に製造できることを見出し、本発明に至った。
また、酸化物粒子の用途の一つとして、塗料原料を示すことができる。例えば、建築材の外壁や看板、乗り物等に使用される塗料は、色味の鮮やかさや意匠性だけでなく、耐候性や耐光性などの耐久性も重要である。そのため、紫外線を防御する物質を、塗料に混合する方法または塗膜の上にコートするなどの方法で塗料並びに塗料に含まれる成分を保護するために用いる。一般的にそのような物質には金属酸化物の一つである酸化鉄が効果的であるが、紫外線を防御する能力と共に、塗料の発する色味や彩度、透明性などの色特性、並びに製品の意匠性を損なわないために、可視光線については影響を低減されることが要求されており、特に複層塗膜用赤色塗料に用いる酸化鉄は、赤い光を出来るだけ透過させ、赤以外の光をできるだけ吸収することが必要となる。
紫外線を防御するための酸化鉄として、特許文献8には赤色系酸化鉄または黄色系含水酸化鉄で平均粒子径が10〜300nmを含む太陽光高反射塗料用着色顔料が記載されており、特許文献9には平均長さ500nm、平均直径100nmの針状のシリカ被覆ベンガラ赤色顔料として酸化鉄が記載されている。特許文献8又は9に記載の酸化鉄は、特許文献10又は11に記載の塗料に配合して用いることができる。
しかし、特許文献8並びに特許文献9に記載された酸化鉄またはシリカ被覆の酸化鉄は、可視領域における波長400〜620nmの範囲において、反射率が18%を超える領域があり、赤色塗料の色特性、製品の意匠性を損なうことになるため、紫外線を防御することと、透明性との両立を果たすことは出来なかった。
本願出願人によって、特許文献12には接近離反可能な相対的に回転する処理用面間において、酸化鉄等の各種ナノ粒子を製造する方法が記載されている。しかし、記載された酸化鉄ナノ粒子は黒色酸化鉄(Fe:マグネタイト)や黄色酸化鉄(FeOOH:ゲータイト)のナノ粒子についてであるが、それらの酸化鉄ナノ粒子には紫外線を防御する能力と共に、可視光線については透過する特性は見られなかった。
国際公開第WO98/047476号パンフレット 特許第4868558号公報 国際公開WO2013/128592号号パンフレット 特開2013−082621号公報 特開2009−132596号公報 特開2014−074222号公報 特開2012−216292号公報 特開2009−263547号公報 国際公開WO1998/26011号パンフレット 特開2014−042891号公報 特開2014−042892号公報 国際公開WO2009/008393号パンフレット
本発明は、このような事情に照らし、透明性が高く、且つ塗料に用いるに好適な塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物を提供することを課題とする。特に、赤色系の塗装体に対して有効な、波長200〜420nmの光線の透過率が2.0%以下であり、かつ波長620〜800nmの光線に対する透過率が80%以上である塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄分散体を提供することを課題とする。
また、本発明は、紫外線から上記塗装体を保護する塗料用耐候性組成物において、塗装体を構成する塗料に配合して用いられ、種々の色彩の塗装体、特に、赤色系の塗装体に対して効果的に用いることができる塗料用耐候性組成物を提供することを課題とする。
本願発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下に示す方法により上記目的を達成できることを見出して、本発明を完成するに至った。
本発明は、コアとなる酸化物粒子の表面が、シェルとなる酸化物により被覆された、コアシェル型酸化物粒子の製造方法であって、上記コアとなる酸化物粒子の原料であるコア用酸化物原料を少なくとも含むコア用酸化物原料液と、上記コアとなる酸化物粒子を析出させるための酸化物析出物質を少なくとも含む酸化物析出溶媒とを混合させた混合流体中で上記コアとなる酸化物粒子を析出させる工程1と、上記混合流体と、上記シェルとなる酸化物の原料であるシェル用酸化物原料を少なくとも含むシェル用酸化物原料液とを混合させて、上記コアとなる酸化物粒子の表面全体を上記シェルとなる酸化物で均一に被覆する工程2の、少なくとも上記2つの工程を含み、少なくとも上記2つの工程が、互いに接近離反可能な相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間において連続的に行われることを特徴とする、コアシェル型酸化物粒子の製造方法を提供する。
また、本発明は、コアとなる酸化物粒子の表面が、シェルとなる酸化物により被覆された、コアシェル型酸化物粒子の製造方法であって、上記コアとなる酸化物粒子の原料であるコア用酸化物原料を少なくとも含むコア用酸化物原料液と、上記コアとなる酸化物粒子を析出させるための酸化物析出物質を少なくとも含む酸化物析出溶媒とを混合させた混合流体中で上記コアとなる酸化物粒子を析出させる工程1と、上記混合流体と、上記シェルとなる酸化物の原料であるシェル用酸化物原料を少なくとも含むシェル用酸化物原料液とを混合させて、上記コアとなる酸化物粒子の表面全体を上記シェルとなる酸化物で均一に被覆する工程2の、少なくとも上記2つの工程を含み、上記工程1の後、上記コアとなる酸化物粒子が上記混合流体中で凝集が生じない所定時間に、上記工程2を完了させることを特徴とする、コアシェル型酸化物粒子の製造方法を提供する。上記所定時間は、1秒以内であることが好ましい。
また、本発明は、コアとなる酸化物粒子の表面が、シェルとなる酸化物により被覆された、コアシェル型酸化物粒子の製造方法であって、上記コアとなる酸化物粒子の原料であるコア用酸化物原料を少なくとも含むコア用酸化物原料液と、上記コアとなる酸化物粒子を析出させるための酸化物析出物質を少なくとも含む酸化物析出溶媒とを混合させた混合流体中で上記コアとなる酸化物粒子を析出させる工程1と、上記混合流体と、上記シェルとなる酸化物の原料であるシェル用酸化物原料を少なくとも含むシェル用酸化物原料液とを混合させて、上記コアとなる酸化物粒子の表面全体を上記シェルとなる酸化物で均一に被覆する工程2の、少なくとも上記2つの工程を含み、上記コアシェル型酸化物粒子の一次粒子径が、上記コアとなる酸化物粒子の一次粒子径に対して、190%以下となるように、上記工程1及び上記工程2を制御することを特徴とする、コアシェル型酸化物粒子の製造方法を提供する。
また、本発明は、上記コア用酸化物原料液と、上記酸化物析出溶媒と、上記シェル用酸化物原料液との、少なくとも3つの流体を、対向して配設された互いに接近離反可能な相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間において混合させて、上記コアシェル型酸化物粒子を得るものとして実施することができる。
また、本発明は、上記少なくとも2つの処理用面の中心側を上流側、外側を下流側とするものであり、第1の流体として、上記コア用酸化物原料液と上記酸化物析出溶媒との何れか一方が、薄膜流体を形成しながら上記少なくとも2つの処理用面の間の上流側から下流側に通過し、第2の流体として、上記コア用酸化物原料液と上記酸化物析出溶媒との何れか他方が、上記第1の流体が上記少なくとも2つの処理用面の間に導入される第1の流路とは独立した第2の流路を経て、上記少なくとも2つの処理用面の少なくとも何れか一方に形成された開口部から上記少なくとも2つの処理用面の間に導入され、上記コア用酸化物原料液と上記酸化物析出溶媒とが上記少なくとも2つの処理用面の間において混合され、上記コアとなる酸化物粒子を析出させ、第3の流体として上記シェル用酸化物原料液が、上記第1の流路と上記第2の流路とは独立した第3の流路を経て、上記少なくとも2つの処理用面の少なくとも何れか一方に形成された開口部から上記少なくとも2つの処理用面の間に導入され、上記第2の流路の開口部が上記第3の流路の開口部よりも上流側に設けられたものとして実施することができる。
また、本発明は、上記第1の流体が上記少なくとも2つの処理用面の間に導入される流量であるF1、上記第2の流体が上記少なくとも2つの処理用面の間に導入される流量であるF2、上記第3の流体が上記少なくとも2つの処理用面の間に導入される流量であるF3が、F1>F2 かつ、F1+F2>F3の関係を満たすものとして実施することができる。
また、本発明は、上記コアとなる酸化物粒子が酸化亜鉛粒子または酸化鉄粒子であり、上記シェルとなる酸化物がケイ素酸化物であるものとして実施することができる。
また、本発明は、上記コアとなる酸化物粒子が酸化亜鉛粒子であり、上記シェルとなる酸化物の厚みが、上記コアシェル型酸化物粒子の直径に対して、0.01%〜60%である酸化物粒子を得るものとして実施することができる。
また、本発明は、上記コアとなる酸化物粒子が酸化亜鉛粒子であり、上記コアシェル型酸化物粒子を分散させたメチレンブブルー色素を含む分散液に、365nmの紫外光を少なくとも2時間照射することにより、上記メチレンブブルー色素の吸収ピークに由来する波長660nm付近の光に対する吸光度の減衰率が10%以下である酸化物粒子を得るものとして実施することができる。
また、本発明は、上記コアとなる酸化物粒子が酸化鉄粒子であり、上記シェルとなる酸化物の厚みが、上記コアシェル型酸化物粒子の直径に対して、0.5%〜25%である酸化物粒子を得るものとして実施することができる。
また、本発明は、上記コアとなる酸化物粒子が酸化鉄粒子であり、上記コアシェル型酸化物粒子を分散させたコンゴレッド色素を含む分散液に、白色光を少なくとも2時間照射することにより、上記コンゴレッド色素の吸収ピークに由来する波長505nm付近の光に対する吸光度の減衰率が10%以下である酸化物粒子を得るものとして実施することができる。
また、本発明は、上記シェルとなる酸化物は、上記コアとなる酸化物粒子に含まれる元素とは異なる元素を含むものとして実施することができる。
また、本発明は、コアとなる酸化物粒子の表面全体が、シェルとなる酸化物により均一に被覆された、コアシェル型酸化物粒子であって、上記コアとなる酸化物粒子が1個の酸化亜鉛粒子であり、上記シェルとなる酸化物がケイ素酸化物であり、上記シェルとなる酸化物の厚みが、上記コアシェル型酸化物粒子の直径に対して、0.01%〜60%であるコアシェル型酸化物粒子を提供する。
また、本発明は、コアとなる酸化物粒子の表面全体が、シェルとなる酸化物により均一に被覆された、コアシェル型酸化物粒子であって、上記コアとなる酸化物粒子が1個の酸化鉄粒子であり、上記シェルとなる酸化物がケイ素酸化物であり、上記シェルとなる酸化物の厚みが、上記コアシェル型酸化物粒子の直径に対して、0.5%〜25%であるコアシェル型酸化物粒子を提供する。
上述のコアシェル型酸化物粒子に関する研究に伴い、本願発明者は、ケイ素酸化物被覆酸化鉄を、塗料用組成物に適用することも知見し、以下の発明を完成させた。
すなわち、本発明は、波長400〜620nmの光線の反射率が18%未満であり、一次粒子径が1〜50nmである表面の少なくとも一部がケイ素酸化物で被覆された酸化鉄粒子を含むことを特徴とする塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物を提供する。
また本発明は、上記酸化鉄粒子を含む分散体として実施することができる。上記分散体は、波長200〜420nmの光線の透過率が2.0%以下であり、かつ、波長620〜800nmの光線に対する透過率が80%以上であることが好ましい。
また本発明は、上記酸化鉄粒子を含む分散体における酸化鉄の濃度が2重量%において、ヘーズ値が2.0%以下であることが好ましい。
また本発明は、上記ケイ素酸化物が非晶質であるものとして実施することができる。
本発明に係る塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物は、表面の少なくとも一部がケイ素酸化物で被覆されればその性能を発揮することができるものであり、コアシェル型の粒子形態以外の形態であってもかまわないが、コアシェル型酸化物粒子として実施することが望ましい。
即ち、本発明は、塗装体を構成する塗料に配合して用いられ、所定の反射率、透過率及び透明度を備え、紫外線から上記塗装体を保護する新たな塗料用耐候性組成物を提供する。この塗料用耐候性組成物は、コアとなる酸化鉄粒子の表面が、シェルとなるケイ素酸化物により被覆されたコアシェル型酸化鉄粒子を含む。このコアシェル型酸化鉄粒子にあっては、上記ケイ素酸化物が非晶質であることが好ましく、さらに上記コアシェル型酸化鉄粒子の一次粒子径が1〜50nmであることが最も好ましい。
コアとシェルとの関係については、上記コアシェル型酸化鉄粒子は、その一次粒子径が、コアとなる酸化鉄粒子の一次粒子径の100.5%以上190%以下であることが好ましい。
また、上記コアとなる酸化鉄粒子がα−Feであることが好ましい。
上記の構成を備えたコアシェル型酸化鉄粒子は、次の特性を示し得る。
即ち、反射率については、上記コアシェル型酸化鉄粒子は、波長400〜620nmの光線に対する反射率が18%未満とすることができる。
透過率については、上記コアシェル型酸化鉄粒子は、上記コアシェル型酸化鉄粒子をプロピレングリコールに対して、酸化鉄としての濃度が0.05重量%となるように分散させた分散液の状態で、波長200〜420nmの光線の同分散体の透過率が2.0%以下を示し、且つ、波長620〜800nmの光線に対する透過率が80%以上を示すものとすることができる。
透明度については、上記コアシェル型酸化鉄粒子は、上記コアシェル型酸化鉄粒子をプロピレングリコールまたは水に対して、酸化鉄としての濃度が2重量%となるように分散させた分散体の状態で、同分散体のヘーズ値が2.0%以下を示すものとすることができる。
本発明は、透明性が高く、且つ塗料の性能を損なわない塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物を提供することができたものである。
さらに本発明は、紫外線から上記塗装体を保護する塗料用耐候性組成物において、塗装体を構成する塗料に配合して用いられ、種々の色彩の塗装体、特に、赤色系の塗装体に対して効果的に用いることができる塗料用耐候性組成物を提供することができたものである。
(A)は本発明の実施の形態に係る流体処理装置の略断面図であり、(B)は本発明の他の実施の形態に係る流体処理装置の略断面図である。 図1(A)(B)に示す流体処理装置の第1処理用面の略平面図である。 本発明の実施例1で得られたコアシェル型酸化物粒子のTEM写真である。 本発明の実施例1で得られたコアシェル型酸化物粒子のSTEMマッピングである。 本発明の実施例1で得られたコアシェル型酸化物粒子のXRD測定結果である。 本発明の実施例1で得られたコアシェル型酸化物粒子のIR測定結果である。 本発明の比較例2〜4で得られた粒子のXRD測定結果である。 本発明の比較例5で得られたコアシェル型酸化物粒子のTEM写真である。 本発明の実施例2で得られたコアシェル型酸化物粒子と比較例7で得られた酸化物粒子の透過スペクトルである。 本発明の実施例2で得られたコアシェル型酸化物粒子と比較例7で得られた酸化物粒子の吸収スペクトルである。 本発明の実施例1で得られたコアシェル型酸化物粒子を、メチレンブルー色素を溶解させたプロピレングリコール中に分散させ、365nmの紫外光を2時間照射する前後の吸収スペクトルである。 本発明の比較例7で得られた酸化物粒子を、メチレンブルー色素を溶解させたプロピレングリコール中に分散させ、365nmの紫外光を2時間照射する前後の吸収スペクトルである。 本発明の実施例8で得られたコアシェル型酸化物粒子のTEM写真である。 本発明の実施例8で得られたコアシェル型酸化物粒子のSTEMマッピングである。 本発明の実施例8で得られたコアシェル型酸化物粒子のXRD測定結果である。 本発明の実施例8で得られたコアシェル型酸化物粒子と比較例12で得られた酸化物粒子の透過スペクトルである。 本発明の実施例8で得られたコアシェル型酸化物粒子と比較例12で得られた酸化物粒子の吸収スペクトルである。 本発明の実施例8で得られたコアシェル型酸化物粒子を、コンゴレッド色素を溶解させたプロピレングリコール中に分散させ、白色光を2時間照射する前後の吸収スペクトルである。 本発明の比較例12で得られた酸化物粒子を、コンゴレッド色素を溶解させたプロピレングリコール中に分散させ、白色光を2時間照射する前後の吸収スペクトルである。 本発明の実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子、比較例12、13の酸化鉄粒子のプロピレングリコール分散液の透過スペクトルである。 本発明の実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子、比較例12、13の酸化鉄粒子のプロピレングリコール分散液の吸収スペクトルから算出された、測定波長に対するモル吸光係数のグラフである。 本発明の実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の粉末、比較例12、13の酸化鉄粒子の反射スペクトルである。 本発明の実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子、比較例12、13の酸化鉄粒子の水分散液の反射スペクトルである。 本発明の比較例13の酸化鉄粒子のTEM写真である。
以下、図面に基づき本発明の実施の形態の一例をとりあげて説明する。
(コアシェル型酸化物粒子)
本発明においては、コアシェル型酸化物粒子とは、コアとなる酸化物粒子の表面全体をシェルとなる酸化物で均一に被覆した粒子をいう。ここで、コアとなる酸化物粒子とシェルとなる酸化物とは異なる物質であるが、シェルとなる酸化物は、コアとなる酸化物粒子に含まれる元素とは異なる元素を含むものであることが好ましい。ここで、「コアとなる酸化物粒子に含まれる元素とは異なる元素」とは、コアとシェルに含まれる主成分となる元素がコアとシェルとで異なることを意味し、コアとなる酸化物粒子に含まれる元素がシェルとなる酸化物に含まることを妨げず、シェルとなる酸化物に含まれる元素がコアとなる酸化物粒子に含まることを妨げるものではない。また、「主成分となる」とは、コアとなる酸化物粒子またはシェルとなる酸化物に含まれる主成分となる元素(酸素元素を除く)が、コアとなる酸化物粒子またはシェルとなる酸化物に含まれる全元素(酸素元素を除く)の50%以上を占めることを意味する。また、本発明に係るコアシェル型酸化物粒子は、コアとなる酸化物粒子が酸化亜鉛又は酸化鉄の粒子であって、シェルとなる酸化物がケイ素酸化物であるコアシェル型酸化物粒子であることが好ましい。当該コアシェル型酸化物粒子を色材や紫外線防御剤として用いた場合、発現する特性(光触媒能及び紫外線吸収能)のうち光触媒能を抑制することができる。また、分散性の向上、透明度や耐溶剤性の観点からも、シェルとなる酸化物がケイ素酸化物であることが好ましい。
(酸化物用原料)
本発明におけるコアシェル型酸化物粒子の作製に用いる酸化物原料としては、特に限定されない。反応、晶析、析出、共沈等の方法で酸化物となるものであれば実施出来る。本発明においては、以下、当該方法を析出と記載する。ここで、コアシェル型酸化物粒子の作製に用いる酸化物原料とは、コアとなる酸化物粒子の原料であるコア用酸化物原料と、シェルとなる酸化物の原料であるシェル用酸化物原料であって、例えば金属や非金属の単体、金属化合物や非金属の化合物である。本発明における金属は、特に限定されない。好ましくは化学周期表上における全ての金属元素である。また、本発明における非金属は、特に限定されないが、好ましくは、B,Si,Ge,As,Sb,C,N,O,S,Te,Se,F,Cl,Br,I,At等の非金属元素を挙げることができる。これらの金属や非金属について、単一の元素であっても良く、複数の元素からなる合金や金属元素に非金属元素を含む物質であっても良い。また、本発明において、上記の金属の化合物を金属化合物という。金属化合物または上記の非金属の化合物としては特に限定されないが、一例を挙げると、金属または非金属の塩や酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、窒化物、炭化物、錯体、有機塩、有機錯体、有機化合物またはそれらの水和物、有機溶媒和物などが挙げられる。金属塩または非金属の塩としては、特に限定されないが、金属または非金属の硝酸塩や亜硝酸塩、硫酸塩や亜硫酸塩、蟻酸塩や酢酸塩、リン酸塩や亜リン酸塩、次亜リン酸塩や塩化物、オキシ塩やアセチルアセトナート塩またはそれらの水和物、有機溶媒和物などが挙げられ、有機化合物としては金属または非金属のアルコキシドなどが挙げられる。以上、これらの金属化合物または非金属の化合物は単独で使用しても良く、複数以上の混合物として使用しても良い。
コアとなる酸化物粒子が酸化亜鉛又は酸化鉄である場合には、コア用酸化物原料としては、亜鉛または鉄の酸化物や水酸化物、その他亜鉛または鉄の塩やアルコキシドなどの化合物やそれらの水和物などが挙げられる。特に限定されないが、亜鉛または鉄の塩化物、硝酸塩、硫酸塩などの無機化合物や、亜鉛または鉄のアルコキシドやアセチルアセトナート等の有機化合物などが挙げられる。具体的な一例としては、酸化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、塩化鉄(III)、塩化鉄(II)、硝酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、亜鉛アセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナートやそれられの水和物などが挙げられる。
シェルとなる酸化物がケイ素化合物である場合には、シェル用酸化物原料としては、ケイ素の酸化物や水酸化物、その他ケイ素の塩やアルコキシドなどの化合物やそれらの水和物が挙げられる。特に限定されないが、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−トリフルオロプロピル−トリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、およびTEOSのオリゴマ縮合物、例えば、エチルシリケート40、テトライソプロピルシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラブトキシシラン、および同様の物質が挙げられる。さらにシェル用酸化物原料として、その他のシロキサン化合物、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1、9−ビス(トリエトキシシリル)ノナン、ジエトキシジクロロシラン、トリエトキシクロロシラン等を用いても構わない。
また、本発明においては、コア用酸化物用原料を少なくとも含むコア用酸化物原料液を用いるものであり、シェル用酸化物原料を少なくとも含むシェル用酸化物原料液を用いるものである。上記酸化物原料が固体の場合には、上記酸化物原料を溶融させた状態、または後述する溶媒に混合または溶解された状態(分子分散させた状態も含む)で用いることが好ましい。上記酸化物原料が液体や気体の場合であっても、後述する溶媒に混合または溶解された状態(分子分散させた状態も含む)で用いてもよい。コア用酸化物原料またはシェル用酸化物原料について、それぞれ単数の酸化物原料を用いた場合には、酸素以外の元素について単数の元素を含む酸化物が作製可能となるため、コアまたはシェルにそれぞれ酸素以外に単数の元素を含むコアシェル型酸化物粒子を作製可能となる。また、コア用酸化物原料またはシェル用酸化物原料について、それぞれ複数の酸化物原料を用いた場合には、酸素以外の元素について複数の元素を含む複合酸化物が作製可能となるため、コアまたはシェルについて、それぞれ酸素以外に複数の元素を含む複合酸化物から成るコアシェル型酸化物粒子を作製することも可能である。更に上記のコア用酸化物原料液やシェル用酸化物原料液には、分散液やスラリーなどの状態のものも含んでも実施できる。
本発明における酸化物析出物質としては、コア用酸化物原料液に含まれるコア用酸化物原料を、コアとなる酸化物粒子として析出させることができる物質であり、かつ、シェル用酸化物原料液に含まれるシェル用酸化物原料をシェルとなる酸化物として析出させることができる物質であれば、特に限定されず、例えば、酸性物質または塩基性物質を用いることができる。
(塩基性物質)
本発明における塩基性物質としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの金属水酸化物、ナトリウムメトキシドやナトリウムイソプロポキシドのような金属アルコキシド、トリエチルアミン、ジエチルアミノエタノールやジエチルアミンなどのアミン系化合物やアンモニアなどが挙げられる。
(酸性物質)
本発明における酸性物質としては、王水、塩酸、硝酸、発煙硝酸、硫酸、発煙硫酸などの無機酸や、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などの有機酸が挙げられる。
(酸化物析出溶媒・調製に用いられる溶媒)
本発明においては、酸化物析出物質を少なくとも含む酸化物析出溶媒を用いるものであり、少なくとも酸化物析出物質を溶媒に混合・溶解・分子分散させて酸化物析出溶媒を調製することが好ましい。コア用酸化物原料液、酸化物析出溶媒とシェル用酸化物原料液の調製に用いる溶媒としては、例えば水や有機溶媒、またはそれらの複数からなる混合溶媒が挙げられる。上記水としては、水道水やイオン交換水、純水や超純水、RO水などが挙げられ、有機溶媒としては、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物などが挙げられる。上記の溶媒はそれぞれ単独で使用しても良く、または複数を混合して使用しても良い。アルコール化合物溶媒としては、メタノールやエタノールなどの1価アルコールや、エチレングリコールやプロピレングリコールなどのポリオールなどが挙げられる。また、コアシェル型酸化物粒子の作製に悪影響を及ぼさない範囲において、必要に応じて、上記酸性物質をコア用酸化物原料液やシェル用酸化物原料液に混合しても良い。
(調製装置)
本発明における上記コア用酸化物原料液、シェル用酸化物原料液または酸化物析出溶媒は、棒状、板状、プロペラ状等の種々の形状の撹拌子を槽内で回転させるものや、撹拌子に対して相対的に回転するスクリーンを備えたものなど、流体にせん断力を加えるなどして、均質な混合を実現する回転式分散機などの調製装置を用いて調製されることが望ましい。回転式分散機の好ましい例としては、特許第5147091号に開示されている撹拌機を適用することができる。
また、回転式分散機はバッチ式で行うものであってもよく、連続式で行うものであってもよい。連続式で行う場合には、撹拌槽に対する流体の供給と排出とを連続的に行うものであってもよく、撹拌槽を用いずに連続式のミキサーを用いて行うものであってもよく、公知の撹拌機や撹拌手段を用い、適宜撹拌エネルギーを制御することができる。なお、撹拌エネルギーに関しては、本願出願人による特開平04−114725号公報に詳述されている。本発明における撹拌の方法は特に限定されないが、各種せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波式などの撹拌機や溶解機、乳化機、分散機、ホジナイザーなどを用いて実施することができる。一例としては、ウルトラタラックス(IKA製)、ポリトロン(キネマティカ製)、TKホモミキサー(プライミクス製)、エバラマイルダー(荏原製作所製)、TKホモミックラインフロー(プライミクス製)、コロイドミル(神鋼パンテック製)、スラッシャー(日本コークス工業製)、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機製)、キャビトロン(ユーロテック製)、ファインフローミル(太平洋機工製)などの連続式乳化機、クレアミックス(エム・テクニック製)、クレアミックスディゾルバー(エム・テクニック製)、フィルミックス(プライミクス製)などのバッチ式もしくは連続両用乳化機をあげることができる。また、撹拌処理は、高速回転する撹拌翼を備えたものであって、撹拌翼の外側にスクリーンを備え、スクリーンの開口から流体がジェット流となって吐出する撹拌機、特に上記のクレアミックス(エム・テクニック製)やクレアミックスディゾルバー(エム・テクニック製)を用いて行われることが望ましい。
(分散剤等)
本発明においては、コアシェル型酸化物粒子の作製に悪影響を及ぼさない範囲において、目的や必要に応じて各種の分散剤や界面活性剤を用いてもよい。特に限定されないが、分散剤や界面活性剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品または新規に合成したものなどを使用できる。一例として、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記の界面活性剤及び分散剤は、酸化物原料液、酸化物析出溶媒、シェル用酸化物原料液の少なくともいずれか1つの流体に含まれていてもよい。また、上記の界面活性剤及び分散剤は、酸化物原料液、酸化物析出溶媒、シェル用酸化物原料液とも異なる、後述する第4の流体に含まれていてもよい。
(反応方法:装置)
本発明におけるコアシェル型酸化物粒子や酸化物粒子の表面の少なくとも一部を酸化物で被覆した粒子の製造方法は、例えば、第1のマイクロリアクターを用いてコア部分の酸化物粒子を作製し、これに続く第2のマイクロリアクターによってコアとなる酸化物粒子の表面の少なくとも一部をシェルとなる酸化物で被覆する方法や、希薄系での反応をバッチ容器内で行うなどの方法で酸化物粒子を作製し、引き続き希薄系での反応によって先述した酸化物粒子の表面の少なくとも一部に酸化物の被覆を行うなどの方法、またビーズミルなどの粉砕法で酸化物粒子を作製し、その後に反応容器内で酸化物粒子の表面の少なくとも一部に酸化物の被覆を行う方法などが挙げられる。また本願出願人よって提案された特開2009−112892号公報にて記載されたような装置並びに方法を用いても良い。特開2009−112892号公報に記載の装置は、断面形状が円形である内周面を有する攪拌槽と、該攪拌槽の内周面と僅かな間隙を在して付設される攪拌具とを有し、撹拌槽には、少なくとも二箇所の流体入口と、少なくとも一箇所の流体出口とを備え、流体入口のうち一箇所からは、被処理流体のうち、反応物の一つを含む第一の被処理流体を攪拌槽内に導入し、流体入口のうちで上記以外の一箇所からは、前記反応物とは異なる反応物の一つを含む第二の被処理流体を、上記第一の被処理流体とは異なる流路より攪拌槽内に導入するものであり、攪拌槽と攪拌具の少なくとも一方が他方に対し高速回転することにより被処理流体を薄膜状態とし、この薄膜中で少なくとも上記第一の被処理流体と第二の被処理流体とに含まれる反応物同士を反応させるものであり、三つ以上の被処理流体を攪拌槽に導入するために、図4及び5に示すように導入管を三つ以上設けても良いことが記載されている。
本発明においては、少なくとも上記酸化物原料液と酸化物析出溶媒との混合を、マイクロリアクターを用いて行うことが好ましく、その中でも図1に示す、特許文献4に記載の装置と同様のものを用いることが好ましい。以下、マイクロリアクターについて詳述する。図1(A)(B)、並びに図2においてRは回転方向を示している。
本実施の形態におけるマイクロリアクター(以下、流体処理装置とも称する)は、対向する第1および第2の、2つの処理用部10、20を備え、第1処理用部10が回転する。両処理用部10、20の対向する面が、夫々処理用面となる。第1処理用部10は第1処理用面1を備え、第2処理用部20は第2処理用面2を備える。
両処理用面1、2は、第1、第2、第3の被処理流体の流路d1、d2、d3に接続され、被処理流体の密封された流路の一部を構成する。この両処理用面1、2間の間隔は、通常は、1mm以下、例えば、0.1μmから50μm程度の微小間隔に調整される。これによって、この両処理用面1、2間を通過する被処理流体は、両処理用面1、2によって強制された強制薄膜流体となる。
そして、この装置は、処理用面1、2間において、第1、第2、または第3の被処理流体を混合し反応させてコアシェル型酸化物粒子を析出させる流体処理を行なう。
より具体的に説明すると、上記装置は、上記の第1処理用部10を保持する第1ホルダ11と、第2処理用部20を保持する第2ホルダ21と、接面圧付与機構43と、回転駆動機構(図示せず)と、第1導入部d1と、第2導入部d2と、第3導入部d3と流体圧付与機構p1、p2、p3とを備える。流体圧付与機構p1、p2、p3には、コンプレッサやその他のポンプを採用することができる。第1導入部d1、第2導入部と第3導入路には、それぞれ内部に温度計と圧力計とを備え、第1、第2、第3の被処理流体の導入圧力と導入圧力下での温度を測定することができる。
なお、第3導入部d3の第2処理用面2における開口部は、第2導入部d2の開口部よりも、第1処理用面1の回転の中心の外側に位置する。即ち、第2処理用面2において、第3導入部d3の開口部は、第2導入部d2の開口部よりも、下流側に位置する。第3導入部d3の開口部と第2導入部d2の開口部との間には、第2処理用部20の径の内外方向について、間隔が開けられている。
上記実施の形態において、第1処理用部10、第2処理用部20はリング状のディスクである。第1、第2処理用部10、20の材質は、金属の他、カーボン、セラミック、焼結金属、耐磨耗鋼、サファイア、その他金属に硬化処理を施したものや、硬質材をライニングやコーティング、メッキなどを施工したものを採用することができる。上記実施の形態において、両処理用部10、20は、互いに対向する第1、第2の処理用面1、2が鏡面研磨されており、算術平均粗さは、0.01〜1.0μmである。
上記実施の形態において、第2ホルダ21が装置に固定されており、同じく装置に固定された回転駆動機構の回転軸50に取り付けられた第1ホルダ11が回転し、この第1ホルダ11に支持された第1処理用部10が第2処理用部20に対して回転する。もちろん、第2処理用部20を回転させるようにしてもよく、双方を回転させるようにしてもよい。
また、本発明において、上記回転速度は、例えば、350〜5000rpmとすることができる。
上記実施の形態では、第1処理用部10に対して、第2処理用部20が回転軸50の方向に接近離反するもので、第2ホルダ21に設けられた収容部41に、第2処理用部20の処理用面2側と反対側の部位が出没可能に収容されている。ただし、これとは逆に、第1処理用部10が、第2処理用部20に対して接近離反するものであってもよく、両処理用部10、20が互いに接近離反するものであってもよい。
上記収容部41は、第2処理用部20の、処理用面2側と反対側の部位を収容する凹部であり、環状に形成された溝である。この収容部41は、第2処理用部20の処理用面2側と反対側の部位を出没させ得る十分なクリアランスを持って、第2処理用部20を収容する。
接面圧付与機構は、第1処理用部10の第1処理用面1と第2処理用部20の第2処理用面2とが接近する方向に押す力(以下、接面圧力という)を発生させるための機構である。この接面圧力と、第1〜第3の被処理流体の流体圧力による両処理用面1、2間を離反させる力(以下、離反力という)との均衡によって、両処理用面1、2間の間隔を所定の微小間隔に保ちつつ、nm単位ないしμm単位の微小な膜厚を有する薄膜流体を発生させる。上記実施の形態では、接面圧付与機構は、第2ホルダ21に設けられたスプリング43によって、第2処理用部20を第1処理用部10に向けて付勢することにより、接面圧力を付与する。
さらに、空気などの背圧用の流体の圧力を、スプリング43に加えて付与することもできる。これらの全ての圧力の和が上記の接面圧力であり、この接面圧力が第1〜第3の被処理流体の流体圧力による離反力と均衡する。処理用面間において、各被処理流体をその沸点以上にて導入・混合する場合には、各被処理流体の流体圧力を、高く設定することが好ましい。具体的には、各被処理流体の流体圧力を標準気圧を超えるものとするものであり、これに対して均衡する接面圧力も高く設定される。具体的には、上記背圧用の流体の圧力を0.020〜0.350MPaG、好ましくは0.050〜0.400MPaG、より好ましくは0.100〜0.500MPaGに設定可能であり、またスプリング43については、0.007〜0.030MPa、好ましくは0.010〜0.20MPaに設定可能である。
流体圧付与機構p1により加圧された第1の被処理流体は、第1導入部d1から、開口部d10を通じて両処理用部10、20の内側の空間に導入される。本実施形態において、開口部d10は、処理用面1,2間の内周側である。
一方、流体圧付与機構p2により加圧された第2の被処理流体は、第2導入部d2から第2処理用部20の内部に設けられた通路を介して第2処理用面に形成された開口部d20から両処理用部10、20の内側の空間に導入される。
開口部d20において、第1の被処理流体と第2の被処理流体とが合流し、混合する。
その際、混合した被処理流体は、上記の微小な隙間を保持する両処理用面1、2によって強制された薄膜流体となり、環状の両処理用面1、2の外側に移動しようとする。第1処理用部10は回転しているので、混合された被処理流体は、環状の両処理用面1、2の内側から外側へ直線的に移動するのではなく、環状の半径方向への移動ベクトルと周方向への移動ベクトルとの合成ベクトルが被処理流体に作用して、内側から外側へ略渦巻き状に移動する。
ここで、図2に示すように、第1処理用部10の第1処理用面1には、第1処理用部10の中心側から外側に向けて、すなわち径方向について伸びる溝状の凹部13を形成してもかまわない。この凹部13の平面形状は、第1処理用面1上をカーブしてあるいは渦巻き状に伸びるものや、図示はしないが、真っ直ぐ外方向に伸びるもの、L字状などに屈曲あるいは湾曲するもの、連続したもの、断続するもの、枝分かれするものであってもよい。また、この凹部13は、第2処理用面2に形成するものとしても実施可能であり、第1および第2の処理用面1、2の双方に形成するものとしても実施可能である。この様な凹部13を形成することによりマイクロポンプ効果を得ることができ、被処理流体を第1および第2の処理用面1、2間に移送することができる効果がある。
上記凹部13の基端は第1処理用部10の内周に達することが望ましい。上記凹部13の先端は、第1処理用面1の外周側に向けて伸びるもので、その深さは、基端から先端に向かうにつれて、漸次減少するものとしている。この凹部13の先端と第1処理用面1の外周面との間には、凹部13のない平坦面16が設けられている。
上述の開口部d20は、第1処理用面1の平坦面と対向する位置に設けることが好ましい。特に、マイクロポンプ効果によって導入される際の第1の被処理流体の流れ方向が処理用面間で形成されるスパイラル状で層流の流れ方向に変換される点よりも下流側の平坦面16に対向する位置に開口部d20を設置することが好ましい。これによって、層流条件下にて複数の被処理流体の混合と、微粒子の析出を行うことが可能となる。
第2導入部d2には方向性を持たせることが好ましい。例えば、第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、第2処理用面2に対して所定の仰角で傾斜していてもよいし、第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、上記の第2処理用面2に沿う平面において、方向性を有し、この第2の被処理流体の導入方向は、処理用面の半径方向の成分にあっては中心から遠ざかる外方向であって、且つ、回転する処理用面間における流体の回転方向に対しての成分にあっては順方向であってもよい。このように、開口部d20における第1の被処理流体の流れが層流であって、かつ第2導入部d2に方向性を持たせることによって、第1の被処理流体の流れに対する乱れの発生を抑制しつつ処理用面1、2間に第2の被処理流体を導入することができる。
さらに、図1(A)に示す通り、流体圧付与機構p3により加圧された第3の被処理流体は、第3導入部d3から第2処理用部20の内部に設けられた通路を介して第2処理用面に形成された開口部d30から両処理用部10、20の内側の空間に導入される。
開口部d30は、開口部d10、開口部d20の下流側に設けられているため、開口部d30において第3の被処理流体は、第1の被処理流体と第2の被処理流体との混合流体と合流し混合する。
第1の被処理流体と第2の被処理流体とが合流し、混合した場合と同様に、混合した被処理流体は、上記の微小な隙間を保持する両処理用面1、2によって強制された薄膜流体となり、環状の両処理用面1、2の内側から外側へ略渦巻き状に移動する。
開口部d30が、第1処理用面1の平坦面と対向する位置に設けることが好ましい点や、第1の被処理流体と第2の被処理流体との混合流体の流れ方向が処理用面間で形成されるスパイラル状で層流の流れ方向に変換される点よりも下流側の平坦面16に対向する位置に開口部d30を設置することが好ましい点、さらに第3導入部d3には方向性を持たせることが好ましい点も開口部d20の場合と同様である。
また、両処理用部10、20の外側に吐出した混合した被処理流体は、ベッセルvを介して、吐出液としてビーカーbに集められる。本発明の実施の形態においては、後述する様に、吐出液には、コアシェル型酸化物粒子が含まれる。
以上のように、この実施の形態に係る装置にあっては、両処理用面1、2間の領域において、開口部d20と開口部d30との間の領域が、工程1に係るコアとなる酸化物粒子の析出形成領域となる。そして、両処理用面1、2間の領域において、開口部d30より下流(図の例では外側)の領域が、工程2に係るシェルとなる酸化物の析出領域となる。但し、工程1と工程2とは連続して行われるため、両工程は完全に切りわけられるものでなくともよい。言い換えれば、工程2が開始された後にも、コアとなる酸化物粒子の析出や成長が一部続いてもかまわない。
なお、上記の被処理流体の種類とその流路の数は、図1の例では、3つとしたが、4つ以上であってもよい。また、各処理用部に設けられる導入用の開口部は、その形状や大きさや数は特に制限はなく適宜変更して実施しうる。たとえば、図1(B)に示すように開口部d20の形状は、リング状ディスクである処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状であってもよく、その円環形状の開口部は連続していてもよいし、不連続であってもよい。同様に、開口部d30の形状も、リング状ディスクである処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状であってもよく、その円環形状の開口部は連続していてもよいし、不連続であってもよい。また、上記第1および第2の処理用面間1、2の直前あるいはさらに上流側に導入用の開口部を設けてもよい。本願における好ましい形態は、後述するように、少なくともシェル用酸化物原料を導入するための開口部d30が円環形状に連続に開口しているものであることが好ましく、最も好ましい形態は、開口部d20及d30が円環形状に連続して開口されたものである。
開口部d30又は開口部d20及びd30が円環形状であることによって、第1〜第3の全ての被処理流体を処理用面1、2間で必ず接触させることができる。それによりコアとなる酸化物粒子の表面全体がシェルとなる酸化物により均一に被覆されたコアシェル型酸化物粒子のみを確実に作製することができる。
上記の3つの開口部(d10、d20及びd30)を備えた装置は、工程1と工程2とを連続する処理用面間で行う場合に適する。
但し、本発明に実施に際しては、工程1と工程2とのうち一方を上述の処理用面間で行い、他方を異なる装置で行うことも可能である。この場合には、図1(B)に示すように、上述の処理用面を備えた装置には、少なくとの2つの開口部(d10、d20)を備えれば足りるが、3つ以上の開口部を備えた装置で実施することを妨げるものではない。
工程1と工程2とのうち一方を上述の処理用面間で行い、他方を異なる装置で行う場合の例としては、工程1を上述の処理用面間で行い、且つ、工程2を工程1に続いて連続的にバッチ又は連続式の混合反応装置で行う方法などが挙げられる。具体的に説明すると、上記に説明した装置のベッセルvに投入口を設け(図示せず)、当該投入口からシェル用酸化物原料液をベッセルv内部に供給し、処理用面1,2から吐出させた吐出直後のコアとなる酸化物粒子を含む混合流体とシェル用酸化物原料液とを混合する方法が挙げられる。コアとなる酸化物粒子を含む混合流体は処理用面1,2による強制から開放され、より広い流路空間へと吐出するものであり、広がりながら吐出される上記の混合流体に対して、効率よく且つ連続してシェル用酸化物原料液を供給することができる。
本発明においては、処理用面1、2間にて上記処理を行うことができればよく、例えば第1導入部d1より第2の被処理流体を導入し、第2導入部d2より第1の被処理流体を導入するものであってもよい。各流体における第1〜第3という表現は、複数存在する流体の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、上述の通り第4以上の流体も存在しうる。
本発明においては、当該流体処理装置において、第1、第2、第3の各導入部(d1、d2、d3)からコア用酸化物原料液、酸化物析出溶媒、シェル用酸化物原料液の3つの流体をそれぞれ処理用面1,2間に導入して実施することが好ましい。まず第1導入部からコア用酸化物原料液(第1の被処理流体。以下、第1の流体ともいう。)を処理用面1,2間に導入し、第2導入部から酸化物析出溶媒(第2の被処理流体。以下、第2の流体ともいう。)を処理用面1,2間に導入し、両者を処理用面1,2間にできる薄膜流体中で混合させて、処理用面1,2間において両者の混合流体中でコアとなる酸化物粒子を析出させる。次に第3導入部からシェル用酸化物原料液(第3の被処理流体。以下、第3の流体とも言う)を処理用面1,2間に導入し、析出させたコアとなる酸化物粒子を含む混合流体とシェル用酸化物原料液とを処理用面1,2間にできる薄膜流体中で混合させて、上記コアとなる酸化物粒子の表面にシェルとなる酸化物を析出させて、コアシェル型酸化物粒子を作製可能である。すなわち、当該流体処理装置を用いて、処理用面1,2間においてコアとなる酸化物粒子を析出させた後、処理用面1,2間よりコアとなる酸化物粒子を含む混合流体を吐出させる前に、シェル用酸化物原料液を処理用面1,2間に導入することで、コアとなる酸化物粒子を含む混合流体とシェル用酸化物原料液とを処理用面1,2間において混合させて、コアとなる酸化物粒子の表面にシェルとなる酸化物を析出させて、コアシェル型酸化物粒子を作製することができる。第1の流体と第2の流体とを混合させてコアとなる酸化物粒子を析出させれば良いため、コア用酸化物原料液と酸化物析出溶媒とは、両者のうち何れか一方が第1の流体であり、何れか他方が第2の流体であれば良い。上記のような方法によって、コア用酸化物原料液と酸化物析出溶媒とを混合させた混合流体中でコアとなる酸化物粒子を析出させる工程1と、上記混合流体とシェル用酸化物原料液とを混合させて、コアとなる酸化物粒子の表面全体をシェルとなる酸化物で均一に被覆する工程2とを連続的に行うことができる。第1と第2の流体とを混合させることで生じるコアとなる酸化物粒子が凝集してしまう前にコアとなる酸化物粒子を含む混合流体とシェル用酸化物原料液とを混合させ、コアとなる酸化物粒子の表面全体に、シェルとなる酸化物による均一な被覆を完了させる必要がある。即ち、上記工程1の後、コアとなる酸化物粒子が混合流体中で凝集してしまう前に、上記工程2を完了させる必要がある。好ましくは、第1と第2の流体とを混合させてから、コアとなる酸化物粒子の析出とその後の第3の流体との混合によって引き起こされるシェルとなる酸化物による被覆を完了させるまでの時間を1秒以内とすることが好ましい。そのため、上記第3の流体は、上記第1、第2の流体の混合に引き続き連続的に混合されることが好ましい。特に限定されないが、上記第1と第2の流体が混合されてから1秒以内に第3の流体を混合させることが好ましく、更に好ましくは0.5秒以内に混合させることが好ましい。それによって、第1と第2の流体とを混合させて析出させたコアとなる酸化物粒子が凝集してしまう前に第3の流体に含まれるシェルとなる酸化物原料をコアとなる酸化物粒子に作用させることが可能となる。従来の技術においては、コアとなる酸化物粒子が析出した後に凝集し、凝集後の粒子にシェルとなる酸化物原料を作用させていたため、例えばコアとなる酸化物粒子の二個以上をシェルとなる酸化物で覆ってしまうが故に、作製されたコアシェル型酸化物粒子の一次粒子径が、コアとなる酸化物粒子の一次粒子径の190%より大きくなることがあった。本願発明の方法においては、コアとなる酸化物粒子の一つ一つの表面全体をシェルとなる酸化物により均一に覆うことができるために、作製されたコアシェル型酸化物粒子の一次粒子径が、コアとなる酸化物粒子の一次粒子径の190%以下となる。また、シェルとなる酸化物の被覆が薄すぎると、作製されたコアシェル型酸化物粒子が有する各種効果を発揮し得なくなる恐れがあることから、作製されたコアシェル型酸化物粒子の一次粒子径が、コアとなる酸化物粒子の一次粒子径の100.5%以上であることが好ましい。
本発明においては、上記第1の流体が処理用面1,2間に導入される流量をF1、上記第2の流体が処理用面1,2間に導入される流量をF2、及び上記第3の流体が処理用面1,2間に導入される流量をF3とした場合、上記F1、F2、F3とが、F1>F2かつF1+F2>F3の関係を満たすことが好ましい。接近離反可能な処理用面1,2間においては、処理用部中央に設けられた第1導入部d1から導入される第1の流体中に第2導入部d2から第2の流体を導入してコアとなる酸化物粒子を析出させ、第1と第2の流体とが混合されて出来た混合流体中に第3導入部d3から第3の流体を導入することが重要である。F1>F2の関係を満たすことにより、第2流体が確実に第1流体と混合するから、未反応の第2流体が第3流体と混合した際の副生成物を減少させることができる。また、F1+F2>F3の関係を満たすことにより、未反応のシェル用酸化物原料やシェルとなる酸化物が単独で析出するのを減らすことができ、コアとなる酸化物粒子の表面へのシェルとなる酸化物の析出が確実に行われる。つまり、シェルとなる酸化物がコアとなる酸化物粒子の表面に析出に対する阻害要因が減少するとともに、シェルの析出が確実に行われるため、コア全面に均一にシェルを形成することが可能となる。このように、F1>F2かつF1+F2>F3の関係を満たすことで、均一なコアシェル型酸化物粒子を製造可能である。通常、F1を100部とした場合、F2は99部〜1部、好ましくは75部〜3部とすることが好ましい。またF1+F2を100部とした場合、F3は99部〜1部、好ましくは75部〜3部とすることが好ましい。さらに、第1、第2、第3の流体の組み合わせ、及び処理条件についても、第1、第2の流体を混合させ、コアとなる酸化物を析出させた後、1秒以内に第3の流体と混合させてシェルとなる酸化物によってコアとなる酸化物の表面全体を均一に被覆することが完了できるものとする必要がある。例えばシェル形成が遅すぎると、コアとなる酸化物粒子が凝集してから、その凝集体をシェルとなる酸化物で被覆してしまう場合や、また第1の流体および第2の流体混合後のコアとなる酸化物粒子の析出が遅すぎる場合には、第3の流体混合時点でコアとなる酸化物粒子が作製されていないため、コアとなる酸化物粒子とシェルとなる酸化物が被覆の形態では無く、複合酸化物のような状態となる等のことが考えられる。
本発明に係るコアシェル型酸化物粒子は、上述のとおり、コアとなる酸化物粒子の表面全体をシェルとなる酸化物で均一に被覆した粒子をいう。ここで、「均一に被覆した」とは、シェルとなる酸化物の厚みが、コアシェル型酸化物粒子の直径、すなわちコアシェル型酸化物粒子の最外周間の距離に対して、0.01%〜60%の範囲であることを意味し、0.1%〜50%の範囲であることが好ましく、0.2%〜40%の範囲であることがより好ましい。
本発明に係るコアシェル型酸化物粒子は、酸化物粒子に発現する特定の特性を抑制することができる。コアとなる酸化物粒子が酸化亜鉛又は酸化鉄の粒子であって、シェルとなる酸化物がケイ素酸化物である場合には、光触媒能を抑制することができる。光触媒能の抑制効果は、紫外可視光吸収スペクトルを測定することによって、確認した。より詳しくは、本発明に係るコアシェル型酸化物粒子を分散させた色素を含む分散液に紫外光や可視光といった光を一定時間照射し、照射前後の紫外可視光吸収スペクトルを測定し、分散液に含まれる色素の吸収ピークに由来する特定波長に対する吸光度の減衰率(式1)により、光触媒能を評価した。
吸光度の減衰率=(A1−A2)/A1×100(%)(式1)
A1:光照射前の吸光度
A2:光照射後の吸光度
当該吸光度の減衰率が10%以下であることをもって、光触媒能が抑制できていると評価した。当該吸光度の減衰率が10%以下であれば、本願発明に係るコアシェル型酸化物粒子を色材や紫外線防御剤として用いる場合に耐光性を維持できるという点で好ましい。当該吸光度の減衰率が、7.5%以下がより好ましく、5.0%以下がさらに好ましい。
本発明における上記紫外光または白色光は、自然界における太陽光や室内における蛍光灯等の光に含まれる光線に対して、本発明の粒子が光触媒能を抑制出来ているかを評価するために用いることが出来る。紫外光とは波長400〜10nmの領域における光線であり、本発明における触媒能の評価においては、紫外光線を出力可能な装置等を用いて実施することが出来る。また、単波長の紫外光線を出力する装置を用いて実施しても良い。本発明における白色光とは波長400〜750nmまたは800nmの領域における可視光線が混ざった光であり、本発明における触媒能の評価においては、白色光線を出力可能な装置を用いて実施することが出来る。また、単色光の可視光線を出力可能な装置を用いて実施しても良い。上記紫外光と白色光とは、それぞれ単独に用いて本発明の製造方法で作製されたコアシェル型酸化物粒子の光触媒能を評価しても良いし、同時に両方の光を照射して評価しても良い。
本発明における上記色素とは光触媒能を有する粒子の光触媒効果によって分解するものであれば特に限定されない。上記色素を本発明に係るコアシェル型酸化物粒子の分散液に混合し、得られた分散液に上記紫外光または上記白色光を一定時間照射することで、上記色素の分解を確認された場合には粒子に光触媒能が認められたことを示し、確認されなかった場合には光触媒能が認められなかったことを示す。本発明においては、上述の吸光度の減衰率で色素の分解を確認した。
(pH領域)
本発明において、コア用酸化物原料液、酸化物析出溶媒、シェル用酸化物原料液のpHは、特に限定されない。用いる酸化物原料(コア用酸化物原料、シェル用酸化物原料)や酸化物析出物質の種類や濃度、目的や対象とするコアシェル型酸化物粒子の種類などによって、適宜変更することが可能である。
例えば、コアとなる酸化物粒子が酸化亜鉛粒子である場合、工程2完了後の混合流体のpHが12を超えることが好ましい。工程2完了後の混合流体のpHが12以下の場合、酸化亜鉛のほかに酸化亜鉛以外の副生成物(例えば、6Zn(OH)・ZnSO・4HO)が作製されるため好ましくない。
また、シェルとなる酸化物がケイ素化合物である場合、シェル用酸化物原料を反応させてシェルとなる酸化物とし、シェルとなる酸化物をコアとなる酸化物の表面全体に被覆するにあたり、反応場の液性が塩基性であることが好ましい。工程2においては、塩基性条件下で、シェル用酸化物原料をゾルーゲル法により反応させることにより、コアとなる酸化物粒子の表面全体がシェルとなる酸化物により覆われたコアシェル型酸化物粒子を作製することができる。より詳しくは、シェル用酸化物原料を酸性又は塩基性条件下において加水分解した後、塩基性条件下において脱水縮重合させることによって、コアとなる酸化物粒子の表面全体がシェルとなる酸化物により覆われたコアシェル型酸化物粒子を作製する際に、シェルの均一性を向上させることができる。
(温度)
本発明において、コア用酸化物原料液と酸化物析出溶媒とを混合する際の温度は、特に限定されない。また、コア用酸化物原料液と酸化物析出溶媒とを混合した混合流体とシェル用酸化物原料液とを混合する際の温度は、特に限定されない。用いる酸化物原料や酸化物析出物質の種類、対象とするコアシェル型酸化物粒子の種類、それぞれの流体のpHなどによって適切な温度で実施することが可能である。
次に、コアとなる酸化物が酸化鉄粒子であって、シェルとなる酸化物がケイ素酸化物であるケイ素酸化物被覆酸化鉄を取り上げて詳細を説明する。以下、ケイ素酸化物被覆酸化鉄を含む組成物を塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物ともいう。上記ケイ素酸化物被覆酸化鉄は、塗料用組成物、特に複層塗膜用の塗料に用いることにより、その性能を適正に発揮する。なお、同じ部材には同じ符号を付与することにより、詳細な説明は省略する。
本発明における塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物は、ケイ素酸化物被覆酸化鉄の粉末、並びに液状である分散媒にケイ素酸化物被覆酸化鉄を分散させた分散体や、ガラスや樹脂等の固体にケイ素酸化物被覆酸化鉄を分散させた分散体などケイ素酸化物被覆酸化鉄を含む組成物である。本願のケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物を単独で、また、顔料や染料と共に、塗料に分散して使用しても良いし、塗膜にオーバーコートしても良い。さらに、本願のケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物を単独の顔料として用いることも出来る。液状である分散媒としては、水道水や蒸留水、RO水や純水、超純水等の水やメタノールやエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールやグリセリンなどの多価アルコール系溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、複数を混合して使用しても良い。
本発明のケイ素酸化物被覆酸化鉄分散液、具体的には後述する実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子をプロピレングリコールにFeとして0.05重量%の濃度で分散させた分散液の波長200〜800nmの透過スペクトルを図20に示す。図20より、波長620〜800nmの光線の透過率が80%以上であり、波長200〜420nmの光線の透過率が2.0%以下である。
図22に、本発明のケイ素酸化物被覆酸化鉄粉末、具体的には実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の粉末の反射スペクトルを示した。図22に見られるように、波長400〜620nmの領域において、光線の反射率が18%未満である。図23に、本発明のケイ素酸化物被覆酸化鉄の水分散液、具体的には実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を水にFeとして0.31重量%の濃度で分散させた分散液の波長400〜750nmの反射スペクトルを示した。図23に見られるように、波長400〜620nmの領域において、光線の反射率が18%未満である。光線の反射率が18%を超えた場合には、赤色塗料の発する色特性を損なうことになるため、本発明においては、波長400〜620nmの領域において、光線の反射率が18%未満であることが好ましく、15%未満であることがより好ましい。
上記実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子をプロピレングリコールにFeとして0.05重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は0.00%であり、また、水にFeとして0.31重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は0.08%であり、どちらも非常に透明性の高い分散液であった。ヘーズ値は透明性を示す数値であり、例えば建築物や乗り物の塗料の上に、ヘーズ値が2%を超える組成物を塗布した場合、下地となる塗料の色を損なうこととなり、目的としていた着色を阻害することとなる。また人体の皮膚等に塗布する場合にも、ヘーズ値が2%を超え、透過率の低いものを使用すると、質感及び外観を損なうこととなり、好ましくない。本発明においては、ケイ素酸化物被覆酸化物粒子が、Feとして2重量%の分散体において、ヘーズ値が2%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましい。
このようなケイ素酸化物被覆酸化鉄分散液は、紫外領域の光線を吸収し、近赤外領域の光線を反射、さらに可視領域の光線は透過させるため、塗料に混ぜる目的や、塗装に対するクリア層を保護する目的での使用において、色材の鮮やかな発色や意匠性を損なうことなく、紫外線から防御並びに保護することが可能な塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物となる。
本発明のケイ素酸化物被覆酸化鉄とは酸化鉄表面をケイ素酸化物で被覆された酸化鉄であり、一例として後述する実施例8の方法で作製したケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子のTEM写真を図13に、STEMを用いたマッピング結果を図14に示す。図13に示したように、コアが1個の酸化鉄粒子であり、シェルがケイ素酸化物であって、コアの表面全体をシェルで均一に被覆した、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子が観察され、コアとなる酸化鉄粒子の表面全体に厚み1.37nm程度のケイ素酸化物の被覆層(シェル)が観察された。同じく図14において、(a)は暗視野像(HADDF像)であり、(b)は酸素(O)、(c)は鉄(Fe)、(d)はケイ素(Si)のそれぞれマッピングである。HADDF像にて観察された粒子に対して、酸素(O)並びにケイ素(Si)については粒子の全体にそれぞれの元素が分布している様子が観察され、鉄(Fe)についてはHADDF像で観察された粒子よりも半径で約1.37nm程度小さく観察された。特に酸化鉄は光触媒能を有するため、ケイ素酸化物で被覆されていない状態では、紫外線を吸収して光触媒能を発することで、塗料や塗膜に含まれる色材や樹脂、分散剤等の各種成分を分解してしまう可能性がある。そのため、本発明においては、酸化鉄表面をケイ素酸化物で被覆されたケイ素酸化物被覆酸化鉄を用いる。なお、被覆はコアとなる粒子全体でなくともコアとなる粒子の少なくとも一部を被覆することで実施出来る。さらに、酸化鉄表面を結晶性のケイ素酸化物で被覆した場合には、屈折率への影響等より、波長400〜620nmの光線の反射率が高くなる可能性がある。本発明においては、上記酸化鉄の表面を、非晶質のケイ素酸化物で被覆することによって、上記波長400〜620nmの領域において、光線の反射率を18%未満にまで低減できる効果があり、赤色以外の反射を低減することができるために、赤色塗料用に用いる上で性能が向上することとなり、さらに上記分散液の透過スペクトル特性、透明度を達成出来るため好ましい。なお、上記非晶質のケイ素酸化物は、SiOの状態であっても良いし、SiO2―Xのように、一部酸素が欠損した状態であっても良い。
本発明においては、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子の波長200〜420nmの光線に対する、モル吸光係数が従来のものに比べて高いことも、本発明を完成させるに至った要因と考えている。後述する実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子をプロピレングリコールに分散させて得られる分散液の、吸収スペクトルの測定波長から算出される該測定波長に対するモル吸光係数のグラフを図21に示す。本発明においては上記酸化鉄粒子の波長400nmの光線に対するモル吸光係数が500L/(mol・cm)以上であり、波長220nmの光線に対するモル吸光係数が3000L/(mol・cm)以上であることが好ましい。モル吸光係数は、紫外可視吸収スペクトル測定における、吸光度とモル濃度より、以下の式2にて算出可能である。
ε=A/(c・l)(式2)
ここで、εは物質固有の定数で、モル吸光係数と言い、1cmの厚みをもつ1mol/Lの溶液中を光が通過したときの光の強さの比の逆数であるため、単位はL/(mol・cm)である。Aは紫外可視吸収スペクトル測定における吸光度であり、cは試料のモル濃度(mol/L)である。lは光が透過する長さ(光路長)であり、通常は紫外可視吸収スペクトルを測定する際のセルの厚みである。
本発明に係る塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物に用いられるケイ素酸化物被覆酸化鉄の一次粒子径が、一般に実用化されている従来のものに比べて小さいことに加えて、モル吸光係数が、従来のものに比べて高い。モル吸光係数は、単位モル当たりの酸化鉄に対する光線の吸収能力であり、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子分散体の波長400nmの光線に対するモル吸光係数が500L/(mol・cm)以上であり、波長220nmの光線に対するモル吸光係数が3000L/(mol・cm)以上であることにより、塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物としての性能を適正に発揮し、塗布などの方法で使用するに際し、多くの量を必要とすることを抑制し、ヘーズ値や透過率を損なう可能性を低減させることができる。
本発明におけるケイ素酸化物被覆酸化鉄は、一次粒子径が従来のものよりも小さいことによって表面積が増大しただけでなく、コアとなる酸化鉄粒子の結晶性が高いことも、上記モル吸光係数が高いものとなる要因であると考えている。なお、粒子の形状は、上記の各要因に比して影響は小さく種々の形状のものであってもよいが、略球形をなしていることで塗装における複屈折の低減を可能とする効果があるために望ましい。本発明におけるケイ素酸化物被覆酸化鉄は、長径/短径の割合が、1.0〜3.0、好ましくは1.0〜2.5、更に好ましくは1.0〜2.0の範囲である略球形の粒子であることが好ましい。本発明におけるケイ素酸化物被覆酸化鉄は、好ましくは一次粒子径が1〜50nmのケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子であり、さらに好ましくは1〜20nmのケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子である。
本発明において、コアとなる酸化物が酸化鉄粒子であり、シェルとなる酸化物がケイ素酸化物であるケイ素酸化物被覆酸化鉄にあっては、酸化鉄粒子はα−Fe(ヘマタイト)であることが好ましい。そのため、コア用酸化物原料に含まれる鉄のイオンは、Fe3+であることが好ましく、コア用酸化物原料としては、溶液中においてFe3+イオンを生成する物質を用いることが好ましい。しかし、Fe2+イオンを生成する物質を溶媒に溶解し、硝酸等の酸化性酸にてFe2+イオンをFe3+イオンに変化させるなどの手段を用いてコア用酸化物原料を調製しても良い。本発明において、塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物を構成するケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子については、本発明における塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物の特性を発揮出来れば良く、上記マイクロリアクターを用いたコアシェル型酸化物粒子の製造方法に限定されるものでは無い。例えば、第1のマイクロリアクターを用いてコア部分の酸化鉄を作製し、これに続く第2のマイクロリアクターを用いてコアとなる酸化鉄粒子の表面の少なくとも一部をシェルとなるケイ素酸化物で被覆する方法や、希薄系での反応をバッチ容器内で行うなどの方法で酸化鉄粒子を作製し、引き続き希薄系での反応によって先述した酸化鉄粒子の表面少なくとも一部にケイ素酸化物の被覆を行うなどの方法、またビーズミルなどの粉砕法で酸化鉄粒子を作製し、その後に反応容器内で酸化鉄粒子の表面の少なくとも一部にケイ素酸化物の被覆を行う方法などが挙げられる。また本願出願人よって提案された特開2009−112892号公報にて記載されたような装置並びに方法を用いても良い。
本発明の塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物を配合し得る塗料組成物は、特許文献10又は11に記載のものの他、特に限定されるものではなく、溶剤系塗料、水性塗料など種々の塗料組成物に適用することができる。塗料組成物は、種々の樹脂成分に加えて、必要に応じて、顔料、染料の他、湿潤剤、分散剤、色分れ防止剤、レベリング剤、粘度調整剤、皮張り防止剤、ゲル化防止剤、消泡剤増粘剤、タレ防止剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、成膜助剤、界面活性剤等の添加剤を、適宜、さらに含むことができる。
樹脂成分としては、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂などを例示し得る。
本発明の塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物が含まれる塗料が適用される塗装体としては、単一の塗料組成物から構成される単層の塗装体であってもよく、複数の塗料組成物から構成される複数層の塗装体であってもよく、また、顔料が含まれる塗料に含めて実施することもできるし、顔料が含まれないクリアー塗料などの塗料に含めて実施することもできる。
塗装体の色としては、赤色系、例えばマンセル色相環でRP〜YRの色相を備えた色(メタルカラーを含む)の塗装体に用いられる塗料組成物に好適に配合することができるが、これに限るものはなく、他の色相の色であってもかまわない。
塗料組成物に必要に応じて含まれる顔料や染料は、種々の顔料や染料を用いることができ、例えばカラーインデックスに登録される全ての顔料や染料を用いることが出来る。その中でも例えば、赤色を構成する顔料や染料にあっては、カラーインデックスにおいてC.I.Pigment Redに分類される顔料並びに染料、C.I.Pigment VioletやC.I.Pigment Orangeに分類される顔料並びに染料等が挙げられる。より具体的にはC.I.Pgment Red 122やC.I.Pgment Violet 19のようなキナリドン系顔料やC.I.Pgment Red 254やC.I.Pigment Orange73のようなジケトピロロピロール系顔料、C.I.Pigment Red 150やC.I.Pigment Red 170のようなナフトール系顔料やC.I.Pigment Red 123やC.I.Pigment Red179のようなペリレン系顔料やC.I.Pigment Red 144のようなアゾ系顔料等が挙げられる。これらの赤色を構成する顔料並びに染料は、単独で用いても良いし、複数を混合して使用しても良い。なお、本発明のケイ素酸化物被覆酸化鉄は、上記赤色を構成する顔料並びに染料等と混合せずに単独で用いることも可能である。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。以下の実施例において、A液とは、図1(A)(B)に示す装置の第1導入部d1から導入される第1の被処理流体を指し、B液とは、同じく装置(A)(B)の第2導入部d2から導入される第2の被処理流体を指す。また、C液とは同じく装置(A)の第3導入部d3から導入される第3の被処理流体を指す。
(実施例1)
高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を用いて、コア用酸化物原料液、酸化物析出溶媒、並びにシェル用酸化物原料液を調製した。具体的には、表1の実施例1に示すコア用酸化物原料液の処方に基づいて、コア用酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度40℃、ローター回転数を20000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、コア用酸化物原料液を調製した。また、表1の実施例1に示す酸化物析出溶媒の処方に基づいて、酸化物析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度45℃、ローターの回転数15000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、酸化物析出溶媒を調製した。さらに、表1の実施例1に示すシェル用酸化物原料液の処方に基づいて、シェル用酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度20℃、ローターの回転数6000rpmにて10分間撹拌することにより均質に混合し、シェル用酸化物原料液を調製した。
なお、表1に記載の化学式や略記号で示された物質については、MeOHはメタノール(ゴードー製)、97wt%HSOは濃硫酸(キシダ化学製)、KOHは水酸化カリウム(日本曹達製)、35wt%HClは塩酸(関東化学製)、TEOSはテトラエチルオルトシリケート(和光純薬製)、60wt%HNOは硝酸(関東化学製)、ZnOは酸化亜鉛(関東化学製)を使用した。
次に調製したコア用酸化物原料液、酸化物析出溶媒、並びにシェル用酸化物原料液を図1(A)に示す流体処理装置にて混合した。具体的には、A液として酸化物析出溶媒を処理用面1,2間に導入し、処理用部10を回転数1130rpmで運転しながら、B液としてコア用酸化物原料液を処理用面1,2間に導入して、酸化物析出溶媒とコア用酸化物原料液とを薄膜流体中で混合し、処理用面1,2間において、コアとなる酸化物粒子を析出させた。次に、C液としてシェル用酸化物原料液を処理用面1,2間に導入し、薄膜流体中おいてコアとなる酸化物粒子を含む混合流体と混合した。その結果、コアとなる酸化物粒子の表面にシェル用酸化物が析出され、コアシェル型酸化物粒子を含む流体(以下、コアシェル型酸化物粒子分散液)を流体処理装置の処理用面1、2間から吐出させた。吐出させたコアシェル型酸化物粒子分散液を、ベッセルvを介してビーカーbに回収した。なお、B液を処理用面1,2間に導入してから処理用面1,2よりコアシェル型酸化物粒子分散液を吐出させるまでの時間は大半の粒子については0.5秒であり、1秒以内であった。
表2に、流体処理装置の運転条件を示す。表2に示したA液、B液並びにC液の導入温度(送液温度)と導入圧力(送液圧力)は、処理用面1、2間に通じる密封された導入路(第1導入部d1と第2導入部d2、並びに第3導入路d3)内に設けられた温度計と圧力計とを用いて測定したものであり、表2に示したA液の導入温度は、第1導入部d1内の導入圧力下における実際のA液の温度であり、同じくB液の導入温度は、第2導入部d2内の導入圧力下における実際のB液の温度であり、C液の導入温度は、第3導入部d3内の導入圧力下における実際のC液の温度である。
pH測定には、HORIBA製の型番D−51のpHメーターを用いた。A液、B液及びC液を流体処理装置に導入する前に、そのpHを室温にて測定した。また、コア用酸化物原料液と酸化物析出溶媒との混合直後の混合流体のpH、並びにコアとなる酸化物微粒子を含む流体とシェル用酸化物原料液との混合直後のpHを測定することは困難なため、同装置から吐出させ、ビーカーbに回収したコアシェル型酸化物粒子分散液のpHを室温にて測定した。
流体処理装置から吐出させ、ビーカーbに回収したコアシェル型酸化物粒子分散液から、乾燥粉体とウェットケーキサンプルを作製した。作製方法は、この種の処理の常法に従い行ったもので、吐出されたコアシェル型酸化物粒子分散液を回収し、コアシェル型酸化物粒子を沈降させて上澄み液を除去し、その後、純水100重量部とメタノール100重量部とを混合した混合液での洗浄と沈降とを繰り返し3回行い、その後に純水での洗浄と沈降とを繰り返し3回行うことでコアシェル型酸化物粒子を洗浄し、最終的に得られたコアシェル型酸化物粒子のウェットケーキの一部を25℃、20時間乾燥させて乾燥粉体とした。残りをウェットケーキサンプルとした。
(TEM観察用試料作製とSTEM観察用試料作製)
実施例及び比較例で得られた洗浄処理後のコアシェル型酸化物粒子のウェットケーキサンプルの一部をプロピレングリコールに分散させ、さらにイソプロピルアルコール(IPA)で100倍に希釈した。得られた希釈液をコロジオン膜またはマイクログリッドに滴下して乾燥させて、TEM観察用試料またはSTEM観察用試料とした。
(透過型電子顕微鏡並びにエネルギー分散型X線分析装置:TEM−EDS分析)
TEM−EDS分析によるコアシェル型酸化物粒子の観察及び定量分析には、エネルギー分散型X線分析装置、JED−2300(JEOL製)を備えた、透過型電子顕微鏡、JEM−2100(JEOL製)を用いた。観察条件としては、加速電圧を80kV、観察倍率を1万倍以上とした。表2、4に記載した粒子径(D)は一次粒子径であり、コアシェル型酸化物粒子の最外周間の距離より算出し、100個の粒子について粒子径を測定した結果の平均値を示した。表2、4に記載したコア粒子径(Dc)は一次粒子径であり、コアシェル型酸化物粒子のコアとなる酸化物粒子の最外周間の距離より算出し、100個の粒子についてコア粒子径を測定した結果の平均値を示した。また、粒子一個についてEDS分析を行い、コアとなる酸化物粒子に含まれる元素と、シェルとなる酸化物に含まれる元素とのモル比を算出した。また、シェルとなる酸化物の厚み(以下、シェル層の厚みともいう)を計測した。粒子1個について4箇所測定し、粒子10個の平均値を表2又は表4の「被覆厚み」の項目に記載した。以下、コアとなる酸化物粒子をコアともいい、シェルとなる酸化物をシェルもしくはシェル層ともいう。
(走査透過型電子顕微鏡並びにエネルギー分散型X線分析装置:STEM−EDS分析)
STEM−EDS分析による、コアシェル型酸化物粒子中に含まれる元素のマッピング及び定量には、エネルギー分散型X線分析装置、Centurio(JEOL製)を備えた、原子分解能分析電子顕微鏡、JEM−ARM200F(JEOL製)を用いた。観察条件としては、加速電圧を80kV、観察倍率を5万倍以上とし、直径0.2nmのビーム径を用いて分析した。
(X線回折測定)
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 EMPYREAN(スペクトリス株式会社PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は、測定範囲:10〜100[°2Theta] Cu対陰極、管電圧45kV、管電流40mA、走査速度0.3°/minとした。各実施例及び比較例で得られコアシェル型酸化物粒子の乾燥粉体を用いてXRD測定を行った。
表2に記載したモル比(シェル/コア)は、一個のコアシェル型酸化物粒子についてTEM−EDS分析にて算出された元素のモル比を当該元素の酸化物に換算した値である。例えば表2の実施例1におけるモル比(シェル/コア、SiO/ZnO)は、一個のコアシェル型酸化物粒子についてTEM−EDS分析にて算出されたSi/Znのモル比を、SiO/ZnOに換算した値であり、10個の粒子についてモル比(SiO/ZnO)を算出した結果の平均値を、計算値と共に示した。計算値は、コア用酸化物原料液中のZnの濃度と導入流量、並びにシェル用酸化物原料液中のSiの濃度と導入流量より算出した。
実施例1で得られたコアシェル型酸化物粒子のTEM写真を図3に示す。コアが1個の酸化亜鉛粒子であり、シェルがケイ素酸化物であって、コアの表面全体をシェルで均一に被覆した、ケイ素酸化物被覆酸化亜鉛粒子が観察され、コアとなる酸化亜鉛粒子の表面全体に厚み1.8nm程度のケイ素酸化物の被覆層(シェル層)が観察された。同じく実施例1で得られたケイ素酸化物被覆亜鉛粒子について、STEMを用いたマッピング結果について図4に示す。図4において、(a)は暗視野像(HADDF像)であり、(b)は酸素(O)、(c)は亜鉛(Zn)、(d)はケイ素(Si)のそれぞれマッピングである。HADDF像にて観察された粒子に対して、酸素(O)並びにケイ素(Si)については粒子の全体にそれぞれの元素が分布している様子が観察され、亜鉛(Zn)についてはHADDF像で観察された粒子よりも半径で約1.8nm程度小さく観察された。D/Dcは122.1%であった。
図5に実施例1で得られたケイ素酸化物被覆酸化亜鉛粒子のXRD測定結果を示す。同測定結果では、酸化亜鉛(ZnO)に由来するピークが観察され、その他にピークは観察されなかった。また、図6には、実施例1で得られたケイ素酸化物被覆酸化亜鉛粒子のIR(赤外吸収スペクトル)測定結果を、二酸化ケイ素(SiO)並びに酸化亜鉛(ZnO)のIR測定結果と共に示す。図6に見られるように、実施例1で得られたケイ素酸化物被覆酸化亜鉛粒子については900cm−1付近にブロードなピークが見られた。これは酸化亜鉛(ZnO)には見られないピークであるが、SiOに見られる1000cm−1付近のピークよりも低波数側に観測されている。よって、実施例1で得られたケイ素酸化物被覆酸化亜鉛粒子のケイ素酸化物は、SiOまたはSiO2−xのような一部酸素が欠損した状態である可能性が考えられた。
なお、IR測定には、フーリエ変換赤外分光光度計、FT/IR−4100(日本分光製)を用いた。測定条件は、ATR法を用い、分解能4.0cm−1、積算回数1024回である。
(実施例2〜6、比較例1〜4:図1(A)の装置を使用)
実施例1と同様に、図1(A)の装置を用いて、表1に記載されているコア用酸化物原料液、酸化物析出溶媒、並びにシェル用酸化物原料液の各処方、並びに表2に記載されている運転条件(導入流量、導入温度、導入圧力)にて実施し、コアシェル型酸化物粒子を処理用面1、2間で析出させた。流体処理装置から吐出させ、ベッセルvを介してビーカーbに回収したコアシェル型酸化物粒子分散液から、乾燥粉体とウェットケーキサンプルを作製した。実施例1と同様の手順でTEM観察、XRD測定等を行ったところ、表2に記載の通りの結果を得た。なお、表2に記載されていない条件については実施例1と同様であり、B液を処理用面1,2間に導入してから処理用面1,2よりコアシェル型酸化物粒子分散液を吐出させるまでの時間は大半の粒子については0.5秒なので、1秒以内であった。図7に比較例2〜4で得られた粒子のXRD測定結果を示す。実施例1〜6にあっては、各処方並びに流体処理装置の運転条件を変更することで、粒子径、コア粒子径並びにシェルとなる酸化物の厚み(被覆の厚み)を変更可能であることが分かった。また、比較例1のように、実施例2と同じ物質を使用した場合であっても、A液の流量よりも、B液の流量が多い場合には、ケイ素酸化物で被覆されていない酸化亜鉛粒子が多く見られ、均一な被覆処理が不可能であった。そのため、粒子径(D)については計測していない。比較例2〜4にあっては、コアとなる酸化物粒子のみと、シェルとなるはずだった成分からなる粒子のみとから成る場合、及びそのような粒子を含む場合が観察された。また比較例2〜4のように吐出液のpHが12以下となった場合には、図7に見られるように、コアとなる酸化物粒子として酸化亜鉛以外の物質も作製されるため好ましくない。しかし本願は吐出液のpHに限定されるものでは無く、A、B、C液の処方、並びに流体処理装置の運転条件を変更することで、粒子径、コア粒子径及びシェルとなる酸化物の厚み(被覆の厚み)を制御可能である。
(比較例5)
実施例2と同じ処方にて、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を用いて、コア用酸化物原料液、酸化物析出溶媒、並びにシェル用酸化物原料液を調製した。
次に調製したコア用酸化物原料液と、酸化物析出溶媒とを図1(B)に示す流体処理装置にて混合した。具体的には、A液として酸化物析出溶媒(MeOH 93.70/97wt%HSO 6.30)(重量比)を処理用面1,2間に28℃、460ml/minで導入し、処理用部10を回転数1130rpmで運転しながら、B液としてコア用酸化物原料液(ZnO 3.0/KOH 46.6/純水 50.4)(重量比)を、22℃、40ml/minにて処理用面1,2間に導入して薄膜流体中で混合し、処理用面1,2間において、コアとなる酸化物粒子(酸化亜鉛粒子)を析出させた。コアとなる酸化亜鉛粒子を含む吐出液(以下、酸化亜鉛粒子分散液)を流体処理装置の処理用面1、2間から吐出させた(工程1)。吐出させた酸化亜鉛粒子分散液を、ベッセルvを介してビーカーbに回収した。吐出液のpHは13.91(測定温度28.1℃)であった。回収した酸化亜鉛粒子分散液中の酸化亜鉛粒子は既に凝集していた。なお、運転条件に関してはシェル用酸化物原料液を除いて実施例2に揃えている。
次に、回収した酸化亜鉛粒子分散液とシェル用酸化物原料液(MeOH 94.61/35wt%HCl 5.11/TEOS 0.28)(重量比)とを高速回転式分散機であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を使用して混合した。具体的にはビーカー内の酸化亜鉛粒子分散液を含む分散液500重量部を、温度25℃下で、クレアミックスを用いてローター回転数10000rpmにて撹拌しながら、シェル用酸化物原料液、125重量部をビーカーbに投入し、30分間撹拌することにより酸化亜鉛粒子を含む分散液とシェル用酸化物原料液とを均質に混合し、酸化亜鉛粒子の表面にケイ素酸化物を析出させ、酸化亜鉛粒子の表面をケイ素酸化物で被覆する処理を行った(工程2)。混合後の流体のpHは13.79(測定温度28.1℃)であった。比較例5において、工程1から工程2に移行するまでに要した時間、即ち上記ビーカーb内の酸化亜鉛粒子を含む分散液500重量部を撹拌しながら、シェル用酸化物原料液、125重量部をビーカーbに投入し始めるまでの時間は2分であった。ビーカーb内の分散液から、乾燥粉体とウェットケーキサンプルを作製した。比較例5の方法で作製したコアシェル型酸化物粒子については、TEM観察の結果、実施例1〜6で得られたような、1個の酸化亜鉛粒子の表面全体を均一にケイ素酸化物で被覆した酸化亜鉛粒子は観察されず、酸化亜鉛粒子の複数個をケイ素酸化物のシェルで覆った粒子も多く観察され、その粒子のD/Dcは334%であった。図8に比較例5で得られたコアシェル型酸化物粒子のTEM写真を示す。図8に見られるように、コアとなる酸化亜鉛の一次粒子の凝集体をシェルとなるケイ素酸化物で被覆されている様子が見られる。
(実施例7)
比較例5と同じ条件にて、図1(B)の流体処理装置を用いてA液(酸化物析出溶媒)及びB液(コア用酸化物原料液)を処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で混合し、処理用面1,2間にて酸化亜鉛粒子を析出させて、酸化亜鉛粒子を含む吐出液(以下、酸化亜鉛粒子分散液)を流体処理装置の処理用面1、2間から吐出させた。次に、第3流体としてシェル用酸化物原料液をベッセルvに設けた図示しない投入口から25℃、125ml/minで導入し、処理用面1,2間より吐出させた吐出直後の酸化亜鉛分散液とシェル用酸化物原料液とをベッセルvの内部で混合し、ビーカーbに回収した。ビーカーbに回収した分散液のpHは13.92(測定温度28.4℃)であった。ビーカーbに回収した分散液から、乾燥粉体とウェットケーキサンプルを作製した。なお、B液を処理用面1,2間に導入してから処理用面1,2より酸化亜鉛粒子分散液を吐出させ、吐出させた酸化亜鉛分散液とシェル用酸化物原料液との混合流体がビーカーbに回収されるまでの時間は大半の粒子については0.8秒であり、1秒以内であった。実施例7の方法で作製したコアシェル型酸化物粒子については、TEM観察の結果、実施例1〜6で得られたような、1個の酸化亜鉛粒子の表面全体を均一にケイ素酸化物で被覆した酸化亜鉛粒子、すなわちケイ素酸化物被覆酸化亜鉛粒子が観察され、粒子径(D)は26.5nm、シェルとなる酸化物の厚み(被覆厚み)は2.3nmで、ケイ素酸化物被覆酸化亜鉛粒子のD/Dcは121.0%であった。
(比較例6)
実施例2と同じ処方にて、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を用いて、コア用酸化物原料液、酸化物析出溶媒、並びにシェル用酸化物原料液を調製した。次に調製したコア用酸化物原料液と、酸化物析出溶媒とをビーカー内にてマグネティックスターラーを用いて撹拌して混合した。マグネティックスターラーの撹拌速度は、600rpmである。具体的には、酸化物析出溶媒(MeOH 93.70/97wt%HSO 6.30)(重量比)4600mlを28℃で撹拌しながら、コア用酸化物原料液(ZnO 3.0/KOH 46.6/純水 50.4)(重量比)400mlを、22℃にて10minかけて投入し、酸化亜鉛粒子を析出させ、酸化亜鉛粒子分散液を得た。酸化亜鉛粒子分散液のpHは13.89(測定温度28.1℃)であった。得られた酸化亜鉛粒子分散液中の酸化亜鉛粒子は既に凝集していた。
次に、図1(B)の流体処理装置を用いて、得られた酸化亜鉛粒子分散液を、A液として33℃、500ml/minで導入し、処理用部10を回転数1130rpmで運転しながら、B液としてシェル用酸化物原料液(MeOH 94.61/35wt%HCl 5.11/TEOS 0.28)(重量比)を25℃、125ml/minで処理用面1,2間に導入し、薄膜流体中おいて酸化亜鉛粒子分散液とシェル用酸化物原料液とを混合した。酸化亜鉛粒子の表面にシェル用酸化物が析出された、コアシェル型酸化物粒子を含む吐出液(以下コアシェル型酸化物粒子分散液)を流体処理装置の処理用面1、2間から吐出させた。吐出させたコアシェル型酸化物粒子分散液を、ベッセルvを介してビーカーbに回収した。吐出液のpHは13.80(測定温度28.3℃)であった。なお、得られた酸化亜鉛粒子分散液を流体処理装置にセットしてから処理用面1,2より分散液を吐出させるまでの時間は大半の粒子については5分程度であり、比較例6の処理時間は計10分であった。ビーカーbに回収した分散液から、乾燥粉体とウェットケーキサンプルを作製した。比較例6の方法で作製したコアシェル型酸化物粒子については、TEM観察の結果、実施例1〜6で得られたような、1個の酸化亜鉛粒子の表面全体を均一にケイ素酸化物で被覆した酸化亜鉛粒子は観察されず、酸化亜鉛ナノ粒子の複数個をケイ素酸化物のシェルで覆った粒子も多く観察され、その粒子のD/Dcは396%であった。
(比較例7)
ケイ素酸化物によって表面を被覆された酸化亜鉛粒子との比較のために、ケイ素酸化物によって表面を被覆されていない酸化亜鉛粒子を作製した。
実施例2のコア用酸化物原料液と酸化物析出溶媒と同じ処方にて、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を用いて、コア用酸化物原料液と酸化物析出溶媒を調製した。
次に調製したコア用酸化物原料液と酸化物析出溶媒とを図1(B)に示す流体処理装置を用い、以下の条件で酸化亜鉛粒子を作製した。具体的にはA液として酸化物析出溶媒(MeOH 93.70/97wt%HSO 6.30)(重量比)を処理用面1,2間に22℃、460ml/minで導入し、処理用部10を回転数1130rpmで運転しながら、B液として酸化亜鉛原料液(ZnO 3.0/KOH 46.6/純水 50.4)(重量比)を処理用面1,2間に28℃、40ml/minで導入し、薄膜流体中で酸化物析出溶媒とコア用酸化物原料液とを混合し、処理用面1,2間にて酸化亜鉛粒子を析出させた。酸化亜鉛粒子を含む吐出液(酸化亜鉛粒子分散液)が処理用面1,2間より吐出された。粒子の洗浄方法、分析・評価方法等は実施例1と同じである。実施例1のコア粒子径と同様の方法で測定した粒子径は10.1nmであり、XRD測定結果より、酸化亜鉛のピークのみが検出された。吐出液のpHは13.92(測定温度28.2℃)であった。得られた酸化亜鉛粒子分散液中の酸化亜鉛粒子は既に凝集していた。
実施例2の条件で得られたケイ素酸化物被覆酸化亜鉛粒子をプロピレングリコールに0.00185mol/Lの濃度で分散させた分散液と、比較例7の条件で得られた酸化亜鉛粒子をプロピレングリコールに0.00185mol/Lの濃度で分散させた分散液とをそれぞれ用意し、両者の紫外可視吸光分光測定結果を、図9(透過率)、図10(吸光度)に示す。図9、図10に見られるように、実施例2で得られた、ケイ素酸化物で表面全体を均一に被覆した酸化亜鉛粒子を分散させた分散液の方が、比較例8で得られた酸化亜鉛粒子を分散させた分散液と比べて、吸収領域である200〜350nmの波長の光を強く吸収し、透過領域である370〜800nmの波長の光を透過し易いことがわかった。ケイ素酸化物で1個の酸化亜鉛粒子の表面全体を均一に被覆することによって、溶媒との親和性が向上し、粒子の分散性が改善されたものと考えられる。
(光触媒能評価)
実施例1〜7、及び比較例1〜7で得られた粒子について光触媒能を評価した。具体的には各実施例または比較例にて得られた粒子をメチレンブルー色素を溶解させたプロピレングリコールに分散させ、365nmの紫外光を2時間照射し、照射前後の紫外可視吸光スペクトルを測定した。365nmの紫外光の照射には、トランスイルミネーター(VILBER LOURMAT製:TFX20CL)を用いた。メチレンブブルー色素の吸収ピークに由来する波長660nm付近の光に対する吸光度の減衰率(式1)により、光触媒能を評価した。プロピレングリコール中のメチレンブルーの濃度は、紫外光照射前の測定において、波長660nmの吸光度が1付近となるように設定し、粒子の分散濃度は5×10−5mol/Lとした。図11に実施例1の条件で得られた粒子について紫外光照射前後の吸収スペクトル測定結果を示し、図12に比較例7の条件で得られた粒子について紫外光照射前後の吸収スペクトル測定結果を示す。実施例1で得られたケイ素酸化物被覆酸化亜鉛粒子については、365nmの紫外光を2時間照射する前後で、波長660nmの光に対する吸光度の変化は略見られなかったが(照射前の最大吸光度に対する、照射後の最大吸光度が0.90〜1.00)、比較例7で作製した粒子の場合には吸光度が減衰しており、照射前の最大吸光度に対する、照射後の最大吸光度が0.90未満にまで下がっていた。比較例1〜6の条件で作製した粒子についても比較例7と同様の傾向を示した。実施例1〜7の条件で作製した粒子については、ケイ素酸化物で1個の酸化亜鉛粒子の表面全体を均一に被覆することによって、酸化亜鉛粒子の光触媒能を抑制出来ているが、比較例1〜6の条件で作製した粒子については、酸化亜鉛粒子の表面をケイ素酸化物で被覆出来ていないものや、ケイ素酸化物で複数個の酸化亜鉛粒子の表面を被覆するものも含むために、酸化亜鉛の光触媒能を抑制出来ていないことがわかった。
(実施例8)
高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を用いて、コア用酸化物原料液、酸化物析出溶媒、並びにシェル用酸化物原料液を調製した。具体的には表3の実施例8に示すコア用酸化物原料液の処方に基づいて、コア用酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度40℃、ローター回転数を20000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、コア用酸化物原料液を調製した。また、表3の実施例8に示す酸化物析出溶媒の処方に基づいて、酸化物析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度45℃、ローターの回転数15000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、酸化物析出溶媒を調製した。さらに、表3の実施例8に示すシェル用酸化物原料液の処方に基づいて、シェル用酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度20℃、ローターの回転数6000rpmにて10分間撹拌することにより均質に混合し、シェル用酸化物原料液を調製した。
なお、表3に記載の化学式や略記号で示された物質については、97wt%HSOは濃硫酸(キシダ化学製)、NaOHは水酸化ナトリウム(関東化学製)、TEOSはテトラエチルオルトシリケート(和光純薬製)、Fe(NO・9HOは硝酸鉄九水和物(関東化学製)を使用した。粒子の洗浄方法及び分析・評価方法については、実施例1と同じである。
次に調製したコア用酸化物原料液、酸化物析出溶媒、並びにシェル用酸化物原料液を図1(A)に示す流体処理装置にて混合した。具体的には、A液としてコア用酸化物原料液を処理用面1,2間に導入し、処理用部10を回転数1130rpmで運転しながら、B液として酸化物析出溶媒を処理用面1,2間に導入して、コア用酸化物原料と酸化物析出溶媒とを薄膜流体中で混合し、処理用面1,2間において、コアとなる酸化物粒子を析出させた。次に、C液としてシェル用酸化物原料液を処理用面1,2間に導入し、薄膜流体中おいてコアとなる酸化物粒子を含む混合流体と混合した。コアとなる酸化物粒子の表面にシェル用酸化物が析出され、コアシェル型酸化物粒子を含む吐出液(以下、コアシェル型酸化物粒子分散液)を流体処理装置の処理用面1、2間から吐出させた。吐出させたコアシェル型酸化物粒子分散液を、ベッセルvを介してビーカーbに回収した。なお、B液を処理用面1,2間に導入してから処理用面1,2よりコアシェル型酸化物粒子分散液を吐出させるまでの時間は大半の粒子については0.4秒であり、1秒以内であった。
表4に、流体処理装置の運転条件を示す。表4に示したA液、B液並びにC液の導入温度(送液温度)と導入圧力(送液圧力)は、処理用面1、2間に通じる密封された導入路(第1導入部d1と第2導入部d2、並びに第3導入路d3)内に設けられた温度計と圧力計とを用いて測定したものであり、表4に示したA液の導入温度は、第1導入部d1内の導入圧力下における実際のA液の温度であり、同じくB液の導入温度は、第2導入部d2内の導入圧力下における実際のB液の温度であり、C液の導入温度は、第3導入部d3内の導入圧力下における実際のC液の温度である。
表4に記載したモル比(シェル/コア)は、一個のコアシェル型酸化物粒子についてTEM−EDS分析にて算出された元素のモル比を当該元素の酸化物に換算した値である。例えば表4の実施例8におけるモル比(シェル/コア、SiO/Fe)は、一個のコアシェル型酸化物粒子についてTEM−EDS分析にて算出されたSi/Feのモル比を、SiO/Feに換算した値であり、10個の粒子についてモル比(SiO/Fe)を算出した結果の平均値を、計算値と共に示した。計算値は、コア用酸化物原料液中のFeの濃度と導入流量、並びにシェル用酸化物原料液中のSiの濃度と導入流量より算出した。
実施例8で得られたコアシェル型酸化物粒子のTEM写真を図13に示す。コアが1個の酸化鉄粒子であり、シェルがケイ素酸化物であって、コアの表面全体をシェルで均一に被覆した、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子が観察され、コアとなる酸化鉄粒子の表面全体に厚み1.37nm程度のケイ素酸化物の被覆層(シェル)が観察された。同じく実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子について、STEMを用いたマッピング結果について図14に示す。図14において、(a)は暗視野像(HADDF像)であり、(b)は酸素(O)、(c)は鉄(Fe)、(d)はケイ素(Si)のそれぞれマッピングである。HADDF像にて観察された粒子に対して、酸素(O)並びにケイ素(Si)については粒子の全体にそれぞれの元素が分布している様子が観察され、鉄(Fe)についてはHADDF像で観察された粒子よりも半径で約1.37nm程度小さく観察された。D/Dcは150.2%であった。
図15に見られる実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子のXRD測定結果より、酸化鉄(Fe)に由来するピークが観察され、その他にピークは観察されなかった。
(実施例9、比較例8,9)
実施例8と同様に、図1(A)の装置を用いて、表3に記載されているコア用酸化物原料液、酸化物析出溶媒、並びにシェル用酸化物原料液の各処方、並びに表4に記載されている運転条件(導入流量、導入温度、導入圧力)にて実施し、コアシェル型酸化物粒子を処理用面1、2間で析出させた。流体処理装置から吐出させ、ベッセルvを介してビーカーbに回収したコアシェル型酸化物粒子分散液から、乾燥粉体とウェットケーキサンプルを作製した。実施例8と同様の手順でTEM観察、XRD測定等を行ったところ、表4に記載の通りの結果を得た。なお、表4に記載されていない条件については実施例8と同様であり、B液を処理用面1,2間に導入してから処理用面1,2よりコアシェル型酸化物粒子分散液を吐出させるまでの時間は大半の粒子については0.3秒であり、1秒以内であった。実施例8,9にあっては、各処方並びに流体処理装置の運転条件を変更することで、粒子径、コア粒子径並びにシェルとなる酸化物の厚み(被覆の厚み)を変更可能であることが分かった。本願は吐出液のpHに限定されるものでは無く、A、B、C液の処方、並びに流体処理装置の運転条件を変更することで、粒子径、コア粒子径及びシェルとなる酸化物の厚み(被覆の厚み)を制御可能である。また、比較例8,9のように、A液の流量よりも、B液の流量が多い場合には、ケイ素酸化物で被覆されていない酸化鉄粒子が多く見られ、均一な被覆処理が不可能であった。そのため粒子径(D)については計測していない。
(比較例10)
実施例9と同じ処方にて、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を用いて、コア用酸化物原料液、酸化物析出溶媒、並びにシェル用酸化物原料液を調製した。
次に調製したコア用酸化物原料液と酸化物析出溶媒とを図1(B)に示す流体処理装置にて混合した。具体的には、A液としてコア用酸化物原料液(純水 98.00/Fe(NO・9HO 2.00)(重量比)を処理用面1,2間に142℃、400ml/minで導入し、処理用部10を回転数1130rpmで運転しながら、B液として酸化物析出溶媒(NaOH 9.00/純水 91.00)(重量比)を、86℃、50ml/minにて処理用面1,2間に導入して薄膜流体中で両者を混合し、処理用面1,2間において、コアとなる酸化物粒子(酸化鉄粒子)を析出させた。コアとなる酸化鉄粒子を含む吐出液(以下酸化鉄粒子分散液)を流体処理装置の処理用面1、2間から吐出させた。吐出させた酸化鉄粒子分散液を、ベッセルvを介してビーカーbに回収した。吐出液のpHは12.51(測定温度32.9℃)であった。回収した酸化鉄粒子分散液中の酸化鉄粒子は既に凝集していた。
次に、回収した酸化鉄粒子分散液をとシェル用酸化物原料液(MeOH 93.70/35wt%HCl 5.11/TEOS 1.19)(重量比)とを高速回転式分散機であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を使用して混合した。具体的にはビーカーb内の酸化鉄粒子分散液を含む分散液450重量部を、温度98℃下で、クレアミックスを用いてローター回転数10000rpmにて撹拌しながら、シェル用酸化物原料液、100重量部をビーカーbに投入し、30分間撹拌することにより酸化鉄粒子を含む分散液とシェル用酸化物原料液とを均質に混合し、酸化鉄粒子の表面にケイ素酸化物を析出させ、酸化鉄粒子の表面をケイ素酸化物で被覆する処理を行った(工程2)。混合後の流体のpHは11.98(測定温度32.9.1℃)であった。比較例10において、工程1から工程2に移行するまでに要した時間、即ち上記ビーカーb内の酸化鉄粒子を含む分散液450重量部を撹拌しながら、シェル用酸化物原料液、100重量部をビーカーbに投入し始めるまでの時間は5分であった。ビーカーb内の分散液から、乾燥粉体とウェットケーキサンプルを作製した。比較例10の方法で作製したコアシェル型酸化物粒子については、TEM観察の結果、実施例8〜9で得られたような、1個の酸化鉄粒子の表面全体を均一にケイ素酸化物で被覆した酸化鉄粒子は観察されず、酸化鉄粒子の複数個をケイ素酸化物のシェルで覆った粒子も多く観察され、その粒子のD/Dcは412%であった。
(実施例10)
比較例10と同じ条件にて、図1(B)の流体処理装置を用いてA液(コア用酸化物原料液)及びB液(酸化物析出溶媒)を処理用面1,2間に形成される薄膜流体中で混合し、処理用面1,2間にて酸化鉄粒子を析出させて、酸化鉄粒子を含む分散液(以下、酸化鉄粒子分散液)を流体処理装置の処理用面1,2間から吐出させた。次に、第3流体としてシェル用酸化物原料液をベッセルvに設けた図示しない投入口から89℃、100ml/minで導入し、処理用面間より吐出させた吐出直後の酸化鉄分散液とシェル用酸化物原料液とをベッセルvの内部で混合し、ビーカーbに回収した。ビーカーbの分散液のpHは13.89(測定温度29.6℃)であった。ビーカーbに回収した分散液から、乾燥粉体とウェットケーキサンプルを作製した。なお、B液を処理用面1,2間に導入してから処理用面1,2より酸化鉄粒子分散液を吐出させ、吐出させた酸化鉄粒子分散液とシェル用酸化物原料液との混合流体がビーカーbに回収されるまでの時間は大半の粒子については0.8秒であり、1秒以内であった。実施例10の方法で作製したコアシェル型酸化物粒子については、TEM観察の結果、実施例8〜9で得られたような、1個の酸化鉄粒子の表面全体を均一にケイ素酸化物で被覆したコアシェル型酸化物粒子、すなわち、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子が観察され、粒子径(D)が9.90nm、シェルとなる酸化物の厚み(被覆厚み)が1.17nmで、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子のD/Dcは131.0%であった。
(比較例11)
実施例9と同じ処方にて、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を用いて、コア用酸化物原料液、酸化物析出溶媒、並びにシェル用酸化物原料液を調製した。次に調製したコア用酸化物原料液と、酸化物析出溶媒とを加圧容器内にて撹拌機を用いて撹拌し混合した。撹拌機の撹拌速度は、600rpmである。具体的には、第1被処理流体としてコア用酸化物原料液(純水 98.00/Fe(NO・9HO 2.00)(重量比)4000mlを、142℃で撹拌しながら、第2被処理流体として酸化物析出溶媒(NaOH 9.00/純水 91.00)(重量比)500mlを、86℃にて10分かけて投入し、酸化鉄粒子を析出させ、酸化鉄粒子分散液を得た。混合後のpHは12.64(測定温度33.2℃)であった。得られた酸化鉄粒子分散液中の酸化鉄粒子は既に凝集していた。
次に、図1(B)の流体処理装置を用いて、得られた酸化鉄粒子分散液を、A液として142℃、450ml/minで処理用面1,2間に導入し、処理用部10を回転数1130rpmで運転しながら、B液としてシェル用酸化物原料液(純水 93.70/97wt%HSO 5.11/TEOS 1.19)(重量比)を89℃、100ml/minで処理用面1,2間に導入し、薄膜流体中おいて酸化鉄粒子分散液とシェル用酸化物原料液とを混合した。酸化鉄粒子の表面にシェル用酸化物が析出され、コアシェル型酸化物粒子を含む吐出液(以下コアシェル型酸化物粒子分散液)を流体処理装置の処理用面1、2間から吐出させた。吐出させたコアシェル型酸化物粒子分散液を、ベッセルvを介してビーカーbに回収した。吐出液のpHは11.88(測定温度32.4℃)であった。なお、回収した酸化鉄粒子分散液を流体処理装置にセットしてから処理用面1,2より分散液を吐出させるまでの時間は大半の粒子については10分であり、比較例11の処理時間は計20分であった。ビーカーbに回収した分散液から、乾燥粉体とウェットケーキサンプルを作製した。比較例11の方法で作製したコアシェル型酸化物粒子については、TEM観察の結果、実施例8〜9で得られたような、1個の酸化鉄粒子の表面全体を均一にケイ素酸化物で被覆した酸化鉄粒子は観察されず、酸化鉄粒子の複数個をケイ素酸化物のシェルで覆った粒子も多く観察され、その粒子のD/Dcは433%であった。
(比較例12)
ケイ素酸化物によって表面を被覆された酸化鉄粒子との比較のために、ケイ素酸化物によって表面を被覆されていない酸化鉄粒子を作製した。
実施例8,9のコア用酸化物原料液と酸化物析出溶媒と同じ処方にて、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を用いて、コア用酸化物原料液と酸化物析出溶媒を調製した。
次に調製したコア用酸化物原料液と酸化物析出溶媒とを図1(B)に示す流体処理装置を用い、以下の条件で酸化鉄粒子を作製した。具体的にはA液としてコア用酸化物原料液(純水 98.00/Fe(NO・9HO 2.00)(重量比)を処理用面1,2間に142℃、400ml/minで導入し、処理用部10を回転数1130rpmで運転しながら、B液として酸化物析出溶媒(NaOH 9.00/純水 91.00)(重量比)を処理用面1,2間に86℃、50ml/minで導入し、薄膜流体中で酸化物析出溶媒とコア用酸化物原料液とを混合し、酸化鉄粒子を処理用面1,2間にて析出させた。酸化鉄粒子を含む吐出液(酸化鉄粒子分散液)が処理用面1,2間より吐出された。粒子の洗浄方法、分析・評価方法等は実施例8と同じである。実施例8のコア粒子径と同様の方法で測定した粒子径は6.40nmであり、XRD測定結果より、酸化鉄のピークのみが検出された。吐出液のpHは13.89(測定温度29.6℃)であった。得られた酸化鉄粒子分散液中の酸化鉄粒子は既に凝集していた。
(実施例11)
実施例11として、特開2009−112892号公報に記載の装置並びにA液(コア用酸化物原料液)、B液(酸化物析出溶媒)、C液(シェル用酸化物原料液)の混合・反応方法を用いた以外は、実施例8と同じ条件とすることでケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を作製した。ここで、特開2009−112892号公報の装置とは、同公報の図4に記載の装置であって、攪拌槽の内径が均一であるものを用い、撹拌槽の内径が420mm、攪拌具の外端と攪拌槽の内周面との間隙が1mm、攪拌羽根の回転数は実施例8で用いた図1(A)に示す流体処理装置の処理用部の回転数と同じ(1130rpm)とした。また、撹拌槽にA液を導入し、攪拌槽の内周面に圧着されたA液からなる薄膜中にB液を加えて混合し反応させ、攪拌槽の内周面に圧着されたA液とB液の混合液からなる薄膜中にC液を加えて混合し反応させた。TEM観察の結果、コアが1個の酸化鉄粒子であり、シェルがケイ素酸化物であって、コアの表面の一部をシェルで被覆した、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子が観察され、コアとなる酸化鉄粒子の表面に厚み1.0〜2.0nm程度のケイ素酸化物の被覆層(シェル)が観察された。同じく実施例11で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子について、実施例8と同様にSTEMを用いたマッピングを行った結果、HADDF像にて観察された粒子に対して、酸素(O)については粒子の全体にそれぞれの元素が分布している様子が観察され、鉄(Fe)についてはHADDF像で観察された粒子よりも半径で約1.0〜2.0nm程度小さく観察され、ケイ素(Si)については主として被覆層にのみ分布している様子が観察された。粒子径(D)が16.9nm、シェルとなる酸化物の厚み(被覆厚み)が1.0〜2.0nmで、ケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子のD/Dcは111.8〜123.7%であった。実施例11で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子のXRD測定結果より、酸化鉄(Fe)に由来するピークが観察され、その他にピークは観察されなかった。
実施例8の条件で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子と比較例12で得られた酸化鉄粒子について、透過スペクトルは、プロピレングリコールにケイ素酸化物被覆酸化鉄をFeとして0.05重量%の濃度で分散させた分散液を用意し、吸収スペクトルについては、プロピレングリコールにケイ素酸化物被覆酸化鉄をFeとして0.007重量%(0.0005mol/L)の濃度で分散させた分散液を測定試料として用意し、それぞれのスペクトルを測定した。両者の紫外可視吸光分光測定結果を、図16(透過率)、図17(吸光度)に示す。図16、図17に見られるように、実施例8で得られた、ケイ素酸化物で表面全体を均一に被覆した酸化鉄粒子を分散させた分散液の方が、比較例12で得られた酸化鉄粒子を分散させた分散液に比べて、吸収領域である200〜400nmの波長の光を強く吸収し、透過領域である450〜800nmの波長の光を透過し易いことがわかった。ケイ素酸化物で1個の酸化鉄粒子の表面全体を被覆することによって、溶媒との親和性が向上し、粒子の分散性が改善されたものと考えられる。また、実施例11の条件で作製したケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子についても、実施例8で得られた粒子の特性までは得られなかったが、吸収領域である200〜400nmの波長の光を強く吸収し、透過領域である450〜800nmの波長の光を透過し易いことがわかった。
(光触媒能評価)
実施例8〜10、及び比較例8〜12で得られた粒子について光触媒能を評価した。具体的には各実施例または比較例にて得られた粒子をコンゴレッド色素を溶解させたプロピレングリコールに分散させ、白色光を2時間照射し、照射前後の紫外可視吸光スペクトルを測定した。白色光の照射には、メタルハライドランプ(ウシオライティング製:ULRD−250ST/9H2)を備えた、250Wメタルハライド光源装置(ウシオライティング製:UF3250NAC)を用いた。コンゴレッド色素の吸収ピークに由来する波長505nmの光に対する吸光度の減衰率(式1)により、光触媒能を評価した。プロピレングリコール中のメチレンブルーの濃度は、波長505nmの吸光度が1付近となるように設定し、粒子の分散濃度は5×10−5mol/Lとした。図18に実施例8の条件で得られた粒子について白色光照射前後の吸収スペクトル測定結果を示し、図19に比較例12の条件で得られた粒子について白色光照射前後の吸収スペクトル測定結果を示す。実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子については、白色光を2時間照射する前後で、波長505nmの光に対する吸光度の変化は略見られなかったが(照射前を1として、照射後は0.98〜1.00)、比較例12で作製した粒子の場合には吸光度が減衰しており、照射前を1として、照射後は0.90未満にまで下がっていた。比較例8〜11の条件で作製した粒子についても比較例12と同様の傾向を示した。実施例8〜10の条件で作製した粒子については、ケイ素酸化物で1個の酸化鉄粒子の表面全体を均一に被覆することによって、酸化鉄粒子の光触媒能を抑制出来ているが、比較例8〜11の条件で作製した粒子については、酸化鉄粒子の表面をケイ素酸化物で被覆出来ていないものや、ケイ素酸化物で複数個の酸化鉄粒子の表面を被覆するものも含むために、酸化鉄の光触媒能を抑制出来ていないことがわかった。
次に、上述の実施例8と実施例11で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子及びケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を分散媒に分散させた分散体について更に実験を行った。
(透過スペクトル並びに吸収スペクトル)
透過スペクトル並びに吸収スペクトルは、可視紫外吸光分光光度計(製品名:UV−2450、島津製作所製)を使用した。測定範囲は200〜800nmとし、サンプリングレートを0.2nm、測定速度を低速として測定した。透過スペクトルは、プロピレングリコールにケイ素酸化物被覆酸化鉄をFeとして0.05重量%の濃度で分散させた分散液を測定試料として用いた。吸収スペクトルについては、プロピレングリコールにケイ素酸化物被覆酸化鉄をFeとして0.007重量%(0.0005mol/L)の濃度で分散させた分散液を測定試料として用いて、吸収スペクトルを測定後、測定結果から得られた吸光度と分散液の酸化鉄濃度(Feとして)より、モル吸光係数を算出し、横軸に測定波長、縦軸にモル吸光係数を記載したグラフとした。測定には、厚み1cmの液体用セルを用いた。
(ヘーズ値測定)
ヘーズ値測定には、ヘーズ値メーター(型式 HZ−V3、スガ試験機製)を用いた。光学条件としてJIS K 7136、JIS K 7361に対応した、ダブルビーム方式で、光源としてD65光を使用した。測定は厚み1mmの液体用セルに 紫外可視吸収・透過スペクトル測定に用いた分散液と同じ分散液について測定した。
(反射スペクトル)
反射スペクトルは、紫外可視近赤外分光光度計(製品名:SolidSpec−3700、島津製作所製)を使用した。測定範囲は400〜750nmとし、サンプリングレートを2.0nm、測定速度を中速として測定した。また粉末を測定する際のバックグラウンド測定には、標準白板(製品名:Spectralon(商標)、Labsphere製)を使用し、分散液を測定する際のバックグラウンドには硫酸バリウムを使用した。測定試料としては、後述するように、ケイ素酸化物被覆酸化鉄の粉末、及び水にケイ素酸化物被覆酸化鉄をFeとして0.31重量%の濃度で分散させた分散液を用いた。
(比較例13)
比較例13として、和光純薬製酸化鉄(III)(α−Fe)を実施例8と同様に、プロピレングリコールまたは水に分散させ、実施例8と同様の方法でTEM観察、ヘーズ値、紫外可視透過吸収スペクトル、反射スペクトル、XRDを測定した。図24に比較例13の酸化鉄粒子のTEM写真を示す。平均一次粒子径は119.6nmであった。なお、比較例13のTEM観察用試料の作製にあっては、上記の市販の酸化鉄(III)(α−Fe)を洗浄せずに用いた。
ケイ素酸化物によって表面を被覆された酸化鉄粒子との比較のために、ケイ素酸化物によって表面を被覆されていない酸化鉄粒子として比較例12を用いた。
XRD測定の結果、実施例8、実施例11、比較例12、比較例13共にα−Fe(ヘマタイト)のピークが明らかに検出された。また、実施例8及び実施例11においては、上述の通り、粒子の表面に被覆されたケイ素酸化物についてはピークが検出されず、非晶質であると考えられる。
実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子をプロピレングリコールに分散させた分散液と、比較例12、13の酸化鉄粒子をプロピレングリコールに分散させた分散液の、透過スペクトル測定結果を、図20に示す。実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子分散体は、波長200〜400nmの紫外光を略透過することはなく、波長420nmの透過率が1.64%であった。また、比較例12で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子分散体についても、波長200〜400nmの紫外光を略透過することはなく、波長420nmの透過率が1.73%であった。実施例8並びに比較例12で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子分散体は、波長620〜800nmの透過率が80%を超えていることがわかった。即ち、波長200〜420nmの光を吸収し、それ以外の光、特に620〜800nmの光を透過していることがわかった。それに対して、比較例13の酸化鉄粒子分散体の透過率は測定全域において、概ね10%の透過率であり、吸収領域と透過領域について、明確な差が見られなかった。また、実施例11で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子分散体は、波長200〜400nmの紫外光を略透過することはなく、波長420nmの透過率が1.89%であった。波長620〜800nmの透過率については、実施例8で得られた粒子の特性には若干およばなかったが、80%を超えていることがわかった。
実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子をプロピレングリコールに分散させた分散液と、比較例12、13の酸化鉄粒子をプロピレングリコールに分散させた分散液の吸収スペクトル測定結果から得られた吸光度と測定液の酸化鉄濃度(Feとして)より、モル吸光係数を算出し、横軸に測定波長、縦軸にモル吸光係数を記載したグラフを図21に示す。また図21に見られるように、実施例8で得られた酸化鉄粒子のモル吸光係数は、波長400nmの光線に対して1193 L/(mol・cm)であり波長220nmの光に対して5479L/(mol・cm)であった。また比較例12で得られた酸化鉄粒子のモル吸光係数は、波長400nmの光線に対して952 L/(mol・cm)であり波長220nmの光に対して4488L/(mol・cm)であった。それに対して比較例13の酸化鉄粒子のモル吸光係数は、測定範囲の全域において、50〜150L/(mol・cm)であった。実施例11で得られた酸化鉄粒子のモル吸光係数は、波長400nmの光線に対して595 L/(mol・cm)であり波長220nmの光に対して3112L/(mol・cm)であった。
図22に、実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子粉末と比較例12、13の酸化鉄粒子粉末の反射スペクトルを示した。図22に見られるように、実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子については、波長400〜620nmの領域において、光線の反射率が18%未満であったのに対して、比較例12、13酸化鉄粒子については、18%を超えた。図23に、実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を水にFeとして0.31重量%の濃度で分散させた分散液の波長400〜750nmの反射スペクトルを示した。図23に見られるように、波長400〜620nmの領域において、光線の反射率が18%未満であったのに対して、比較例1並びに比較例2の酸化鉄については、18%を超えた。また実施例11で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子についても、波長400〜620nmの領域において、光線の反射率が18%未満であった。
上記実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子をプロピレングリコールにFeとして0.05重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は0.00%であり、また、水にFeとして0.31重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は0.00%であり、どちらも非常に透明性の高い分散液であった。さらに、上記実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を水にFeとして2.0重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は0.89%であり、非常に透明性の高い分散液であった。また、それに対して比較例13の酸化鉄粒子をプロピレングリコールに0.02重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は21.9%であり、また、水に0.31重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は15.9%、水に2.0重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は23.4%であり明らかな濁りが見られた。また比較例12で得られた酸化鉄粒子を、水に2.0重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は2.56%であり、濁りが見られた。上記実施例11で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子をプロピレングリコールにFeとして0.05重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は0.91%であり、また、水にFeとして0.31重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は1.46%であり、実施例8で得られたケイ素被覆酸化鉄粒子程ではないが、透明性の高い分散液であった。さらに、上記実施例11で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子を水にFeとして2.0重量%の濃度で分散させた分散液のヘーズ値は1.64%であり、実施例8で得られたケイ素被覆酸化鉄粒子程ではないが、透明性の高い分散液であった。
以上より、実施例8並びに実施例11で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子又はその組成物の透過・吸収スペクトル、反射スペクトル、一次粒子径、並びにヘーズ値は、特に赤色塗料に用いた際に、塗料本来の発色、色特性並びに製品の意匠性を損なわず、好適に用いることが可能であるが、比較例13の酸化鉄粒子は、紫外可視領域における透過領域と吸収領域に明確な差が見られず、赤色の領域に強い反射特性を持つため、赤色塗料本来の発色、色特性並びに製品の意匠性を損なうものである。また比較例12の表面をケイ素酸化物で被覆されていない酸化鉄粒子については、波長400〜620nmの領域において、光線の反射率が18%を超えており、赤色以外の光を反射しており、実施例8で得られたケイ素酸化物被覆酸化鉄粒子に比べて該酸化鉄粒子粉末の見た目に黄身がかっているものであった。そのため、赤色塗料本来の発色、色特性並びに製品の意匠性を損なうものである。
1 第1処理用面
2 第2処理用面
10 第1処理用部
11 第1ホルダ
20 第2処理用部
21 第2ホルダ
d1 第1導入部
d2 第2導入部
d3 第3導入部
d10 開口部
d20 開口部
d30 開口部

Claims (7)

  1. 波長400〜620nmの光線の反射率が18%未満であり、一次粒子径が1〜50nmである表面の少なくとも一部がケイ素酸化物で被覆された酸化鉄粒子を含むものであり、
    上記ケイ素酸化物が非晶質であることを特徴とする塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物。
  2. 上記酸化鉄粒子を含む分散体が、波長200〜420nmの光線の透過率が2.0%以下であり、波長620〜800nmの光線に対する透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物。
  3. 上記酸化鉄粒子を含む分散体における酸化鉄の濃度が2重量%において、ヘーズ値が2.0%以下であるケイ素酸化物被覆酸化鉄分散体であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物。
  4. 上記ケイ素酸化物で被覆された酸化鉄粒子は、コアとなる酸化鉄粒子の表面が、シェルとなるケイ素酸化物により被覆されたコアシェル型酸化鉄粒子であり、
    上記コアシェル型酸化鉄粒子は、その一次粒子径が、コアとなる酸化鉄粒子の一次粒子径の100.5%以上190%以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の塗料用ケイ素酸化物被覆酸化鉄組成物。
  5. 塗装体を構成する塗料に配合して用いられ、
    所定の反射率、透過率及び透明度を備え、紫外線から上記塗装体を保護する塗料用耐候性組成物において、
    コアとなる酸化鉄粒子の表面が、シェルとなるケイ素酸化物により被覆されたコアシェル型酸化鉄粒子を含み、
    上記ケイ素酸化物は非晶質であり、
    上記コアシェル型酸化鉄粒子の一次粒子径が1〜50nmであり、
    上記コアシェル型酸化鉄粒子は、波長400〜620nmの光線に対する反射率が18%未満であり、
    上記コアシェル型酸化鉄粒子は、上記コアシェル型酸化鉄粒子をプロピレングリコールに対して、酸化鉄としての濃度が0.05重量%となるように分散させた分散液の状態で、波長200〜420nmの光線の同分散体の透過率が2.0%以下を示し、且つ、波長620〜800nmの光線に対する透過率が80%以上を示すものであり、
    上記コアシェル型酸化鉄粒子は、上記コアシェル型酸化鉄粒子をプロピレングリコールまたは水に対して、酸化鉄としての濃度が2重量%となるように分散させた分散体の状態で、同分散体のヘーズ値が2.0%以下を示すように構成されたものであることを特徴とする塗料用耐候性組成物。
  6. 上記コアシェル型酸化鉄粒子は、その一次粒子径が、コアとなる酸化鉄粒子の一次粒子径の100.5%以上190%以下であることを特徴とする請求項5に記載の塗料用耐候性組成物。
  7. 上記コアとなる酸化鉄粒子がα−Feであることを特徴とする請求項5又は6に記載の塗料用耐候性組成物。
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