以下、図面を参照して、本発明による板ガラス加工装置100及び板ガラス加工方法の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。
図1は、本発明による板ガラス加工装置100の実施形態を示す模式図である。板ガラス加工装置100は、第1加工具Bと第1押圧力発生要素110と第1測定手段120とを備える。板ガラス加工装置100は板ガラスAの第1側端面A1を第1加工具Bで加工する。
板ガラスAは矩形の板形状を有しており、第1側端面A1、第2側端面A2、前端面A3及び主面A4を有している。第1側端面A1と第2側端面A2とは互いに相対する面である。板ガラスAの板厚は例えば0.05mm〜10mmである。しかしながら、本発明はこれに限定されない。本発明は矩形以外の形状(例えば多角形)を有する板ガラスAの加工や、板厚が0.05mm〜10mm以外である板ガラスAの加工にも適用し得る。
第1加工具Bは、板ガラスAの第1側端面A1を加工する。第1加工具Bは、第1側端面A1の一方端部である始端部141から、他方端部である終端部142まで、第1側端面A1に対する加工を行う。板ガラスAの第1側端面A1加工は、面取り加工後の第1側端面A1の凹凸を均一にする研磨処理であり得る。また、板ガラスAの端面加工は板ガラスAの第1側端面A1の面取り加工でもあり得る。
第1加工具Bは、板ガラスAの第1側端面A1に沿って板ガラスAと相対移動可能に設けられている。例えば、板ガラス搬送方向Cに沿って移動する板ガラスAに対して、第1加工具Bが回動可能な状態で加工を行う。また、整列停止する板ガラスAに対して、第1加工具Bが搬送方向Cに沿って移動しながら加工を行い得る。
また、第1加工具Bは、板ガラスAの第1側端面A1に対して移動可能に(板ガラスAの主面A4の面方向に移動可能に)設けられている。第1加工具Bは、砥石B1とアーム部材B2とを有する。砥石B1は、回転しながら板ガラスAの第1側端面A1を研磨加工する円柱形状又は円錐台形状の円盤部材である。アーム部材B2は、一方端部を中心に回動可能に枢支され、アーム部材B2の他方端部には砥石B1が回転駆動可能に連結されている。アーム部材B2の回動によって砥石B1が板ガラスAの第1側端面A1に近接し、または第1側端面A1から離間する。
本実施形態において、砥石B1は、円盤面B11が板ガラスAの主面A4と平行になるようにアーム部材B2に連結している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、砥石B1は、円盤面B11が板ガラスAの主面A4と交差するようにアーム部材B2に連結してもよい。また、アーム部材B2は、2つの部材の端部を接続した湾曲形状を有している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、アーム部材B2は、一体の部材で構成されて直線形状を有してもよい。
また、本実施形態では、第1加工具Bは、基準位置、待機位置の2か所に移動するように制御される。基準位置とは、板ガラスAを正常に加工する際に砥石B1と第1側端面A1とが接触し得るよう予め定められた第1加工具Bの配置位置である。待機位置とは、加工を終えた第1加工具Bが板ガラスAから離れて待機する配置位置である。
例えば、板ガラス加工装置100はアーム位置制御部124を更に備え得る。アーム位置制御部124は、第1加工具Bが待機位置、基準位置の2か所に移動するように、アーム部材B2を制御する。待機位置から基準位置に移動する間、基準位置から待機位置に移動する間、そして待機位置に位置する際のアーム部材B2は、アーム位置制御部124の制御によってロック状態にあってアーム部材B2は自由に動かない。一方、基準位置に位置する際、アーム位置制御部124による制御が働かずロックが外されており、アーム部材B2はアームフリーになっている。
第1押圧力発生要素110は、第1加工具Bを板ガラスAの第1側端面A1へ付勢して押圧力を発生する。例えば、第1押圧力発生要素110はアーム部材B2に偶力を与えることにより第1加工具Bを板ガラスAの第1側端面A1へ付勢する。本実施形態では、第1押圧力発生要素110は、板ガラスAの第1側端面A1と、基準位置に移動した第1加工具Bの砥石B1とが接触すると推定されるタイミング(以下、推定接触タイミング)で、アーム部材B2に偶力を与える。基準位置では、アーム部材B2はアームフリーになっているため、偶力によって第1加工具Bは第1側端面A1へ付勢される。なお、押圧力の大きさは、回動可能な第1加工具Bにより、搬送される板ガラスAを加工する場合においても、整列停止する板ガラスAに対して板ガラス加工装置100を走行させて加工する場合においても、板ガラスAに対して第1加工具Bが移動しない程度に設定されている。
回動可能な第1加工具Bにより、搬送される板ガラスAを加工する場合において、第1側端面A1と砥石B1との推定接触タイミングは、搬送される板ガラスAをモニターリングすることによって決定される。図1に示すように、例えば、板ガラスAの搬送経路上の所定位置において、搬送方向Cと直交する線(図に示す線L)に示される範囲をセンサー(図示せず)によってセンシングする。当該所定位置に板ガラスAが到着すると、板ガラスAの搬送速度に基づいて、板ガラスAが当該所定位置から第1加工具Bに到着するまでに所要する時間を算出することで、第1側端面A1と砥石B1との推定接触タイミングを決定する。また、第1側端面A1と砥石B1とが接触するような位置に板ガラスAが到着したか否かをセンサーによってセンシングすることで、第1側端面A1と砥石B1との推定接触タイミングを決定してもよい。なお、搬送による板ガラスAの傾きが少ない場合、又は整列停止する板ガラスAに対して板ガラス加工装置100を走行させて加工する場合では、第1側端面A1と砥石B1とが接触するタイミング及び位置が明確であるため、センサーによってセンシングしなくてもよい。
なお、第1押圧力発生要素110は低摺動抵抗エアシリンダであり得る。本発明の実施形態においては、低摺動性による高速応答性及びピストンレスによる長寿命等を考慮して、低摺動抵抗エアシリンダとしてダイヤフラムシリンダを使用し得る。しかしながら、第1押圧力発生要素110は、エアシリンダに限らず、油圧シリンダやその他周知の駆動装置、又はばねや重りなど押圧力を発生できる部材を用いてよい。
以下、第1加工具Bが回動可能な状態で、搬送される板ガラスAに対して加工を行う板ガラス加工装置100を例に、加工時の第1加工具Bの動作を説明する。
加工時、板ガラスAは、図示しないコンベアにより、搬送方向Cに沿って搬送される。第1加工具Bは、アーム位置制御部124の制御によって待機位置から基準位置まで移動し、搬送されてくる板ガラスAを基準位置で待機する。その後、推定接触タイミングで第1押圧力発生要素110は、第1加工具Bを板ガラスAの第1側端面A1へ付勢する。そして、第1加工具Bは、始端部141から、終端部142まで、第1側端面A1に対する研磨処理や面取り加工を行う。この間、第1押圧力発生要素110は、第1加工具Bを板ガラスAの第1側端面A1へ付勢し続ける。その後、砥石B1が板ガラスAの第1側端面A1から離間するタイミングで第1押圧力発生要素110は付勢を停止し、第1加工具Bは、アーム位置制御部124の制御によって待機位置に戻る。なお、第1加工具Bは、板ガラスAの第1側端面A1の一部を加工するように移動しても良い。
第1測定手段120は、第1加工具Bと第1測定手段120との距離の変化を測定する。第1測定手段120は、例えば光学式、渦電流式、超音波式などの変位センサーである。本実施形態では、第1測定手段120として渦電流式変位センサーを使用する。図1に示すように、第1測定手段120はアーム部材B2に対して第1押圧力発生部材110、アーム位置制御部124と同じ側であってアーム部材B2から所定距離離間した位置に固定配置される。そして、第1測定手段120は、第1測定手段120からアーム部材B2までの距離を第1加工具Bの位置情報Xとして測定する。
また、本実施形態では、説明の便宜上、第1加工具Bが基準位置に位置する場合に位置情報X=0とし、第1加工具Bが板ガラスAに近寄るほど位置情報Xは大きな値となるが、第1加工具Bが基準位置に位置する場合の位置情報Xは0に限定されず、第1測定手段120からアーム部材B2までの実際の距離であってもよい。
なお、第1測定手段120によって第1加工具Bの砥石B1から第1測定手段120までの距離を測定してもよい。但し、砥石B1から第1測定手段120までの距離を測定した場合、砥石B1の摩耗と共に測定値が徐々に変動する場合があるため、アーム部材B2から第1測定手段120までの距離を測定することが好ましい。
図2〜図4は、板ガラスAの異なる搬送姿勢と、各搬送姿勢に基づいて測定された第1加工具Bの位置情報を示す模式図である。図2(a)は、正常な姿勢で搬送された板ガラスAが本実施形態の板ガラス加工装置100によって加工される様子を示す平面図であり、図2(b)は板ガラス加工装置100における第1加工具Bの位置情報を示す図である。図3(a)は、傾いた姿勢で搬送された板ガラスAが本実施形態の板ガラス加工装置100によって加工される様子を示す平面図であり、図3(b)は板ガラス加工装置100における第1加工具Bの位置情報を示す図である。図4(a)は、傾いた他の姿勢で搬送された板ガラスAが本実施形態の板ガラス加工装置100によって加工される様子を示す平面図であり、図4(b)は、板ガラス加工装置100における第1加工具Bの位置情報を示す図である。図2(b)、図3(b)及び図4(b)において、縦軸は位置情報Xを示し、横軸は時間を示す。図2(b)、図3(b)及び図4(b)において、加工具Bが基準位置に存在する場合にX=0となり、第1加工具Bが板ガラスAに近寄る方向(+X方向)への移動と第1加工具Bが板ガラスAから離れる方向(−X方向)への移動とが、時間に対する波形データとして表示される。
以下に、図2〜図4を参照して、板ガラスAの搬送姿勢と第1加工具Bの位置情報との関係を説明する。
まず、図2(a)及び図2(b)を参照して、板ガラスAが正常な姿勢で搬送される場合の第1加工具Bの位置情報を説明する。正常な姿勢とは、第1側端面A1に沿った方向と搬送方向Cとが平行となり、且つ第1側端面A1が基準位置に位置する第1加工具Bの砥石B1の接線に沿って移動するように板ガラスAが搬送される姿勢である。図2(a)に示す線Rは、板ガラスAが正常な姿勢で搬送される場合の第1側端面A1の軌道を示す。
板ガラスAが正常な姿勢で搬送される場合、第1側端面A1は、推定接触タイミングに従って、基準位置に位置している第1加工具Bの砥石B1と接触する。推定接触タイミングで、第1押圧力発生要素110が第1加工具Bを板ガラスAの第1側端面A1へ付勢して押圧力が発生する(t21)。
押圧力が発生した状態で板ガラスAは搬送され、第1加工具Bによる板ガラスAの第1側端面A1の加工が進行する。板ガラスAは正常な姿勢で搬送されるため、第1加工具Bの位置は基準位置のまま変動しない。
板ガラスAの第1側端面A1の終端部142が第1加工具Bに到達すると同時に、第1押圧力発生要素110は押圧力の発生を中断する。第1側端面A1の終端部142が砥石B1に到達すると(t22)、第1加工具Bは、アーム位置制御部124の制御によって板ガラスAから離れる方向(−X方向)へ待機位置まで一旦移動する。更に次の板ガラスを加工するために、第1加工具Bは基準位置まで移動する(t23)。その後、第1加工具Bは再び板ガラスの加工を開始する。図2(b)に示すように、板ガラスAが正常な姿勢で搬送された場合、板ガラスAの第1側端面A1と第1加工具Bの砥石B1とが接触している期間(t21−t22)の波形パターンは水平な線になる。
なお、板ガラスAの位置が明確に分かっている場合(例えば搬送による板ガラスAの傾斜が発生しない場合)では、第1加工具Bを待機位置まで一旦移動することなく、基準位置に位置した状態で次の板ガラスを待機してもよい。この場合では、次の板ガラスを加工するまでの期間(t22−t23)の波形パターンは直線になる。
なお、図2を参照した上述の説明では、板ガラスAの第1側端面A1に沿った方向と搬送方向Cとが平行となるように板ガラスAが搬送されたが、板ガラスAは、板ガラスAの第1側端面A1が搬送方向Cに対して傾斜した形態で搬送されることがある。以下、図3を参照して、この状態を説明する。
図3は、板ガラスAの第1側端面A1が搬送方向Cに対して傾斜し、第1側端面A1の始端部141が正常時の軌道Rから外側(第1加工具Bに近寄る側)に逸脱した状態で板ガラスAが搬送される形態を示す。
板ガラスAが図3(a)に示す形態で搬送される場合では、板ガラスAは、推定接触タイミングよりも前に、第1側端面A1と前端面A3との間の角A5で第1加工具Bの砥石B1と接触する(t31)。板ガラスAの角A5が砥石B1に接触すると、接触の衝撃により、第1加工具Bは、基準位置から、板ガラスAを離れる方向(−X方向)に移動する。その後、推定接触タイミングで、第1押圧力発生要素110は、第1加工具Bを板ガラスAへ付勢する(t32)。第1押圧力発生要素110の付勢によって、第1加工具Bは、砥石B1が板ガラスAの第1側端面A1に接触する位置まで移動する(t33)。
押圧力が発生した状態で板ガラスAは搬送され、第1加工具Bによる板ガラスAの第1側端面A1の加工が進行する。ここでは、板ガラスAの第1側端面A1の終端部142が正常時の軌道R上を通過するように板ガラスAは搬送されており、第1加工具Bの位置は徐々に基準位置に近づく。図3(b)から理解されるように、板ガラスAの第1側端面A1の終端部142が第1加工具Bに到達する時(t34)、第1加工具Bは基準位置に位置している。
また、板ガラスAの第1側端面A1の終端部142が砥石B1に到達すると同時に、第1押圧力発生要素110は押圧力の発生を中断する。第1側端面A1の終端部142が砥石B1に到達すると(t34)、第1加工具Bは、板ガラスAから離れる方向(−X方向)へ待機位置まで一旦移動する。そして次の板ガラスを加工するために、第1加工具Bは基準位置まで移動する(t35)。その後、第1加工具Bは再び板ガラスの加工を開始する。
なお、上述の説明から理解されるように、第1加工具Bの位置は、板ガラスAの第1側端面A1の位置に対応しており、板ガラスAの第1側端面A1を加工する間、変化する。このため、図3(b)において、推定接触タイミングから、板ガラスAの第1側端面A1を離れるまでの期間(t31−t34)の波形パターンは、−X方向にずれている。板ガラスAの第1側端面A1と第1加工具Bの砥石B1とが接触している期間(t33−t34)の波形パターンは、板ガラスAの搬送方向C(または正常時の軌道R)に対する板ガラスAの第1側端面A1の傾きを示している。
なお、図3を参照した上述の説明では、板ガラスAの第1側端面A1の始端部141が正常時の軌道Rから外側(第1加工具Bに近寄る側)に逸脱した状態で板ガラスAが搬送されたが、板ガラスAの第1側端面A1の始端部141が正常時の軌道Rから内側(第1加工具Bを離れる側)に逸脱した状態で板ガラスAが搬送されることがある。以下、図4を参照してこの状態を説明する。
図4は、板ガラスAの第1側端面A1の始端部141が正常時の軌道Rから内側(第1加工具Bを離れる側)に逸脱した状態で板ガラスAが搬送される形態を示す。
板ガラスAが図4(a)に示す形態で搬送される場合では、推定接触タイミングでは、第1側端面A1の始端部141は、基準位置に位置する第1加工具Bの砥石B1から離れており、砥石B1と接触しない。この時、第1押圧力発生要素110は、第1加工具Bを板ガラスAへ付勢する(t41)。第1押圧力発生要素110の付勢によって、第1加工具Bは、基準位置を越えて板ガラスAに近寄る方向(+X方向)に移動し、砥石B1が板ガラスAの第1側端面A1に接触する位置まで移動する(t42)。
押圧力が発生した状態で板ガラスAは搬送され、第1加工具Bによる板ガラスAの第1側端面A1の加工が進行する。ここでは、板ガラスAの第1側端面A1の終端部142が正常時の軌道R上を通過するように板ガラスAは搬送されているため、板ガラスAの搬送に伴って第1加工具Bは基準位置に向かう方向(−X方向)へ押し戻され、第1加工具Bの位置は徐々に基準位置に近づく。図4(b)から理解されるように、板ガラスAの第1側端面A1の終端部142が第1加工具Bに到達する時(t43)、第1加工具Bは基準位置に位置している。
板ガラスAの第1側端面A1の終端部142が第1加工具Bに到達すると同時に、第1押圧力発生要素110は押圧力の発生を中断する。第1側端面A1の終端部142が砥石B1に到達すると(t43)、第1加工具Bは、板ガラスAから離れる方向(−X方向)へ待機位置まで一旦移動する。そして次の板ガラスを加工するために、第1加工具Bは基準位置まで移動する(t44)。その後、第1加工具Bは再び板ガラスの加工を開始する。
なお、上述の説明から理解されるように、第1加工具Bの位置は、板ガラスAの第1側端面A1の位置に対応しており、板ガラスAの第1側端面A1を加工する間、変化する。このため、図4(b)において、推定接触タイミングから、板ガラスAの第1側端面A1を離れるまでの期間(t41−t43)の波形パターンは、+X方向にずれている。板ガラスAの第1側端面A1と第1加工具Bの砥石B1とが接触している期間(t42−t43)の波形パターンは、板ガラスAの搬送方向(または正常時の軌道R)に対する板ガラスAの第1側端面A1の傾きを示している。
図1〜図4を参照して説明した実施形態では、回動可能な第1加工具Bにより、搬送される板ガラスAを加工していた。しかし、本発明はこれに限定されず、整列停止する板ガラスAに対して、板ガラス加工装置100を走行させて加工し得る。また、板ガラスA及び板ガラス加工装置100の両方を移動させて加工し得る。これらの場合では、加工時、板ガラス加工装置100を走行方向(図1〜図4に示す搬送方向Cと同方向)に沿って走行させる。第1加工具Bは、アーム位置制御部124の制御によって待機位置から基準位置まで移動し、板ガラスAとの接触を基準位置で待機する。その後、推定接触タイミングで第1押圧力発生要素110は、第1加工具Bを板ガラスAの第1側端面A1へ付勢する。そして、第1加工具Bは、始端部から終端部まで、第1側端面A1に対する研磨処理や面取り加工を行う。その後、砥石B1が板ガラスAの第1側端面A1から離間するタイミングで第1押圧力発生要素は付勢を停止し、第1加工具Bは、アーム位置制御部124の制御によって待機位置に戻る。
図1〜図4を参照して説明したように、本発明の板ガラス加工装置によれば、第1加工具Bの位置の変化を測定するため、第1加工具Bの位置の変化を用いて第1加工具Bの状態を評価することができる。例えば、第1加工具Bの加工姿勢を評価することが可能になる。具体的には、板ガラスAに対して相対移動する第1加工具Bの移動にずれが生じたか否か、加工を終えた第1加工具Bが正確に基準位置に復帰できたか否か、第1加工具Bの砥石B1と板ガラスAの第1側端面A1との接触位置や離間位置が望ましい位置であるか否かなどを判定することが可能になる。
また、本発明において、板ガラスAの第1側端面A1方向への押圧力により、第1加工具Bの砥石B1は常に板ガラスAの第1側端面A1に接触しようとするため、第1加工具Bの位置の変化は板ガラスAの状態(例えば搬送される板ガラスAの搬送姿勢、又は整列停止する板ガラスAの整列姿勢)をも表しており、加工具の位置の変化を用いて板ガラスの状態を評価することもできる。
なお、本発明の板ガラス加工装置は、第1加工具Bの位置の変化の観察のために、第1加工具Bの位置の変化を表すデータを表示する表示装置を備えてもよい。
図5は、本発明による板ガラス加工装置の他の実施形態を示す模式図である。本実施形態では、板ガラス加工装置100Aは、第1加工具B、第1押圧力発生要素110及び第1測定手段120に加えて、制御装置30と表示装置40とを備える。制御装置30は、演算プログラムや波形データが記憶されるメモリー31と、演算プログラムに基づいて演算を行う処理装置(一例として中央処理装置CPU)32とを有する。メモリー31は記憶手段122を含み、処理装置32はデータ生成手段121と判定手段123とを含む。第1加工具B、第1押圧力発生要素110及び第1測定手段120については、図1を参照して上述した実施形態と同様な構成を有しているため、重複の部分について説明を省略する。
データ生成手段121は、第1測定手段120による測定結果に基づいて、時間に対する第1加工具Bの位置情報パターンを示す第1波形データを生成する。本実施形態では、データ生成手段121は、第1加工具Bの基準位置を原点とし、第1加工具Bが第1側端面A1を加工した後に待機位置に移動し、そして再び基準位置に移動した期間の測定結果に基づいて第1波形データを生成する。なお、データ生成手段121は、任意の期間の測定結果に基づいて第1波形データを生成してもよい。
記憶手段122は、第1加工具Bの所定の位置情報パターンを示す少なくとも1つの参照データを予め記憶する。参照データは、板ガラスAの搬送姿勢、整列姿勢または第1加工具Bの作動状態が正常である際の第1加工具Bの位置情報パターンを示すデータ(正常データ)であり得る。図2(b)のように、板ガラスAが正常な姿勢で搬送される場合の第1加工具Bの位置情報パターンを示したデータが正常データの一例である。参照データは、板ガラスAの搬送姿勢、整列姿勢または第1加工具Bの作動状態が異常である際の第1加工具Bの位置情報パターンを示すデータ(異常データ)でもあり得る。図3(b)、図4(b)のように、板ガラスAが傾いた姿勢で搬送される場合の第1加工具Bの位置情報パターンを示したデータが異常データの一例である。
参照データは、例えば所定条件下で第1加工具Bの所定の位置情報を第1測定手段120によって測定し、そして測定結果に基づいてデータ生成手段121によって生成される。なお、データ生成手段121によって生成されたデータに対して更に加工(複数のデータを平均する加工や誤差を補正する加工)を行ったデータを参照データとして使用し得る。また、第1加工具Bの位置情報の予測値をデータ生成手段121によって生成したデータを参照データとして使用し得る。
判定手段123は、第1波形データと少なくとも1つの参照データとを照合して板ガラスAまたは第1加工具Bの状態を判定する。例えば、判定手段123は、記憶手段122に予め記憶された正常データと第1波形データとを照合する。第1波形データと正常データとが一致した場合には、判定手段123は、板ガラスAまたは第1加工具Bの状態が正常であると判定する。一方、第1波形データと正常データとが一致しない場合には、判定手段123は、板ガラスAまたは第1加工具Bの状態が異常であると判定する。
記憶手段122は、メモリー31として機能し、データ生成手段121と判定手段123とは処理装置32の一部として機能する。処理装置32の演算結果(例えばデータ生成手段121による波形データ、判定手段123による判定結果)は、表示装置40に表示される。
以下、図5〜図8を参照して、板ガラスAまたは第1加工具Bの状態を判定する手法を説明する。なお、第1加工具Bが回動可能な状態で、搬送される板ガラスAに対して加工を行う板ガラス加工装置100を例に説明するが、整列停止する板ガラスAに対して板ガラス加工装置100を走行させて加工する場合においても、板ガラスA及び板ガラス加工装置100の両方を移動させて加工する場合においても同様に、第1測定手段120によって第1加工具Bの位置情報が得られるため、板ガラスAまたは第1加工具Bの状態を判定することができる。
初めに、図5及び図6を参照して、第1加工具Bにバウンドが生じたか否かの判定手法を説明する。例えば、板ガラスAの搬送速度が増加すると、板ガラスAの第1側端面A1に存在する微視的な凹凸起伏、又は研磨抵抗による砥石回転モータの回転速度やトルクの変動が原因で発生する衝撃力(板ガラスの第1側端面A1から第1加工具Bに作用する衝撃力)によって第1加工具Bが弾かれ、板ガラスAの第1側端面A1から第1加工具Bが離れてしまう。一方、第1押圧力発生要素110は、アーム部材B2に偶力を与えることにより第1加工具Bを板ガラスAへ付勢して押圧力を発生する。アーム部材B2に対する板ガラスAの第1側端面A1方向への押圧力により、アーム部材B2は常に板ガラスAの第1側端面A1に戻ろうとする。このように第1加工具Bが板ガラスAに対し接近と離間を繰り返す現象をバウンドと称する。図6は、板ガラスAの第1側端面A1に対する第1加工具Bのバウンドを示す。第1加工具Bのバウンド時の第1加工具B(砥石B1の回転軸)の軌跡は、図6(a)に示すように、複数の連続波形を描く。図6(a)において、距離aは、第1加工具B(砥石B1の回転軸)と板ガラスAの第1側端面A1との間の距離を示す。
図6(b)はバウンド波形データを示す。バウンド波形データは、バウンドが生じた際の第1加工具Bの時間に対する位置情報パターンを示すデータであり、参照データの一つとして予め記憶手段122に記憶されている。バウンド波形データは、鋸状の波形を示す。
第1測定手段120は、第1加工具Bのバウンド時の第1加工具B(砥石B1の回転軸)の軌跡に基づいて、第1加工具Bの位置情報を測定する。データ生成手段121は、第1測定手段120による測定結果に基づいて、時間に対する第1加工具Bの位置情報パターンを示す第1波形データを生成する。判定手段123は、第1波形データとバウンド波形データとを照合して、板ガラスAの第1側端面A1に対する第1加工具Bのバウンドが生じたか否かを判定する。具体的には、判定手段123は、第1波形データとバウンド波形データとの間の相関係数を算出する。相関係数の値は第1波形データとバウンド波形データとの類似度を表している。相関係数の値が予め決めた閾値を超えた場合、第1波形データとバウンド波形データとは一致であると判別する。
判定手段123が第1波形データとバウンド波形データとを照合した結果、第1波形データの波形とバウンド波形データの波形とが一致した場合には、判定手段123は板ガラスAの第1側端面A1に対する第1加工具Bのバウンドが生じたと判定する。一方、判定手段123が第1波形データとバウンド波形データとを照合した結果、第1波形データの波形とバウンド波形データの波形とが一致しない場合には、判定手段123は板ガラスAの第1側端面A1に対する第1加工具Bのバウンドが生じていないと判定する。
なお、図5及び図6を参照して説明した判定手法では、第1波形データをバウンド波形データと照合することによって第1加工具Bのバウンドが生じたか否かを判定していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、記憶手段122には、バウンドが生じていない第1加工具Bの時間に対する位置情報パターンを示す直線波形データが参照波形データとして予め記憶され、第1波形データを直線波形データと照合することによって第1加工具Bのバウンドが生じたか否かを判定し得る。
また、第1加工具Bのバウンドが生じたか否かの判定は、参照波形データと照合せず、第1波形データを判定手段123で分析することによって行い得る。例えば、第1波形データを複数の区間に分割する。区間内の波形を時間で微分した値が次の区間では+方向又は−方向に変化する場合、又はある区間内波形の平均値が次の区間で予め設定した閾値を超える場合では、板ガラスAの第1側端面A1に対する第1加工具Bのバウンドが生じたと判定する。
図5及図7を参照して、第1加工具Bの摩耗状態を判定する手法を説明する。図7は、第1加工具Bの摩耗状態を判定する手法を説明するための模式図である。図7(a)は、摩耗していない第1加工具Bによって板ガラスAを加工する状態を示し、図7(b)は、摩耗した第1加工具B′によって板ガラスAを加工する状態を示し、図7(c)は、摩耗していない第1加工具Bの位置情報パターンを示す参照データ(実線)及び摩耗した第1加工具B′の位置情報パターンを示す第1波形データ(二点鎖線)を示す。第1波形データと参照データとは、板ガラスAが正常な姿勢で搬送される状態において生成された。
図7(a)に示すように、第1加工具Bには、砥石B1の端面に加工溝B3が形成されている。摩耗していない第1加工具Bで加工を行う場合では、搬送される板ガラスAの第1側端面A1は、推定接触タイミング(t71)で加工溝B3の底部と接触し、砥石B1によって第1側端面A1が加工される。
一方、図7(b)に示すように、一定の期間使用されて摩耗した砥石B1′では、加工溝B3′の深さが大きくなるため、摩耗した第1加工具B′で加工を行う場合では、推定接触タイミング(t71)において、板ガラスAの第1側端面A1と加工溝B3′の底部との間に隙間が存在する。このため、第1加工具B′は推定接触タイミングにおいて、第1押圧力発生要素110の偶力によって、基準位置を越えて板ガラスAに近寄る方向(+X方向)に移動する。第1加工具B′は、加工溝B3′の底部が板ガラスAの第1側端面A1と接触する位置まで移動する(t72)。その後、第1側端面A1の終端部142が砥石B1′に到達すると(t73)、第1加工具B′は、板ガラスAから離れる方向(−X方向)へ待機位置まで一旦移動する(t74)。そして次の板ガラスAを加工するために、第1加工具B′は基準位置まで移動する(t75)。その後、第1加工具B′は再び板ガラスAの加工を開始する。
図7(c)を参照して理解できるように、推定接触タイミングから、第1加工具B′が待機位置に移動完了するまでの期間(t71−t74)では、第1波形データの波形パターンは参照データの波形パターンよりも+X方向にずれている(特徴1)。更に、第1加工具B′が第1側端面A1に接触したタイミングから、第1加工具B′が板ガラスAを離れるタイミングまでの期間(t72−t73)では、第1波形データの波形パターンは参照データの波形パターンと同様に水平な線を示す(特徴2)。このため、判定手段123は、上述した2つの特徴(特徴1、特徴2)を判定条件として照合を行う。照合の結果、判定条件と一致した場合では、使用中の加工具が摩耗した第1加工具B′であると判定する。
使用中の加工具が摩耗した第1加工具B′であると判定した場合、該判定結果を例えば表示装置へ表示することが可能である。表示された判定結果を確認したオペレータは、必要に応じて、加工の中断、第1加工具B′の交換等を行う。また、判定手段123は、第1加工具B′の摩耗量を判定してもよい。具体的には、判定手段123は、第1加工具B′が第1側端面A1に接触したタイミングから、第1加工具B′が板ガラスAを離れるタイミングまでの期間(t72−t73)の波形パターンに対して、第1波形データと参照データとの差分値を計算する。得られた差分値は、第1加工具B′の摩耗量に対応する。
なお、本実施形態では、参照データとして、摩耗していない第1加工具Bの位置情報を実際に測定してデータ生成手段121によって生成したデータが用いられたが、本発明はこれに限定されない。例えば、参照データは、データ生成手段121によって生成されたデータに対して更に加工を行ったデータ、摩耗していない第1加工具Bの位置情報の予測値をデータ生成手段121によって生成したデータである。
図5及び図8を参照して、第1加工具Bの加工姿勢、板ガラスAの搬送姿勢または板ガラスAの整列姿勢が異常か否かの判定手法を説明する。図8(a)は板ガラスAの搬送形態を示す図であり、図8(b)は、第1加工具Bの位置情報を示す図である。
第1加工具Bの加工姿勢、板ガラスAの搬送姿勢または板ガラスAの整列姿勢が異常である場合には、第1加工具Bの位置情報パターンが正常時とは異なるパターンを示す。このため、姿勢が正常及び姿勢が異常である場合の位置情報パターンに基づいて、姿勢が正常か否かを区別できる閾値を実験的に定める。定めた閾値を参照データとして記憶手段122に記憶しておくことにより、判定手段123は、第1波形データと参照データとを照合して第1加工具Bの加工姿勢、板ガラスAの搬送姿勢または板ガラスAの整列姿勢が正常か否かを判定する。判定手段123が、第1加工具Bの加工姿勢、板ガラスAの搬送姿勢または板ガラスAの整列姿勢を異常と判定した場合、必要に応じて、加工の中断、第1加工具Bの交換、板ガラスAの廃棄等を行う。
例えば、図8(a)に示すように、板ガラスAが正常な姿勢とは異なる異常な姿勢(第1側端面A1の始端部141が正常時の軌道Rから内側に逸脱した姿勢)で搬送される場合、第1加工具Bは、板ガラスAと接触するまで第1押圧力発生要素110によって押圧されるため、図8(b)に示すように、推定接触タイミング(t81)から、板ガラスAの第1側端面A1を離れる(t82)までの期間の波形パターンは、基準位置から大きく離れた位置を示し、+X方向にずれている。
このため、板ガラスAが正常な姿勢で搬送される場合及び異常な姿勢で搬送される場合の波形パターンを区別できる上限閾値を参照データとして記憶手段122に記憶しておく。これにより、第1側端面A1の加工を行って得られた第1波形データと参照データに含まれる所定の上限閾値とを照合することによって、判定手段123は、第1波形データのピーク値が上限閾値を超える場合に、板ガラスAの搬送姿勢が異常であると判定する。
なお、図3を参照して説明したように、第1側端面A1の始端部141が正常時の軌道Rから外側に逸脱した状態で板ガラスAが搬送される場合には、推定接触タイミングから板ガラスAの第1側端面A1を離れる時までの期間の波形パターンは、−X方向にずれている。このため、閾値として下限閾値を定めてもよい。また、第1側端面A1の始端部141が正常時の軌道Rから内側に逸脱した状態で板ガラスAが搬送される場合と第1側端面A1の始端部141が正常時の軌道Rから外側に逸脱した状態で板ガラスAが搬送される場合とを判別できるように、閾値として上限閾値と下限閾値とを定めてもよい。
同じように、参照データとして、第1加工具Bが正常な姿勢で加工する場合及び異常な姿勢で加工する場合の波形パターンを区別する上限閾値又は下限閾値を記憶手段122に記憶しておく。この場合、第1側端面A1の加工を行って得られた第1波形データと参照データとを照合することで、判定手段123は、第1波形データのピーク値が上限閾値又は下限閾値を超える場合に、第1加工具Bの加工姿勢が異常であると判定する。
図5〜図8を参照して説明したように、本実施形態の板ガラス加工装置100Aによれば、板ガラスAまたは第1加工具Bの状態を判定することができる。例えば、第1加工具Bにバウンドが生じたか否かを判定することができる。または、第1加工具Bの摩耗状態を判定することができる。さらに、第1加工具Bの加工姿勢、板ガラスAの搬送姿勢または板ガラスAの整列姿勢は正常か否かを判定することができる。
なお、図1から図8を参照した上述の説明では、板ガラスAは1つの加工具によって加工されたが、本発明はこれに限定されない。板ガラスAは複数の加工具によって同時に加工されてもよい。以下、図9を参照して、複数の加工具によって板ガラスAを加工する実施形態を説明する
図9は、本発明による板ガラス加工装置の更なる実施形態を示す模式図である。板ガラス加工装置100Bは、第1加工具B、第1押圧力発生要素110、及び第1測定手段120に加えて、第2加工具D、第2押圧力発生要素140、及び第2測定手段150をさらに備える。第2加工具Dは、板ガラスAの第1側端面A1に相対する第2側端面A2を加工する。第2押圧力発生要素140は、第2加工具Dから板ガラスAの第2側端面A2に対して作用する押圧力を発生する。第2測定手段150は、第2加工具Dの位置情報を測定する。
本実施形態の板ガラス加工装置100Bは、第2加工具D、第2押圧力発生要素140及び第2測定手段150をさらに備える点を除いて図5を参照して上述した板ガラス加工装置100Aと同様の構成を有しており、冗長を避けるために重複する記載を省略する。また、第2加工具D、第2押圧力発生要素140、及び第2測定手段150は、それぞれ、第1加工具B、第1押圧力発生要素110、及び第1測定手段120と同様の構成を有しており、ここでは、第2加工具D、第2押圧力発生要素140及び第2測定手段150は、それぞれ、板ガラスAに対して、第1加工具B、第1押圧力発生要素110及び第2測定手段120と対称に配置されている。
また、本実施形態では、データ生成手段121は、第1測定手段120による測定結果に基づいて、時間に対する第1加工具Bの位置情報パターンを示す第1波形データを生成するだけでなく、第2測定手段150による測定結果に基づいて、時間に対する第2加工具Dの位置情報パターンを示す第2波形データを生成する。記憶手段122は、第1加工具Bの所定の位置情報パターンを示す第1参照データに加えて、第2加工具Dの所定の位置情報パターンを示す第2参照データを記憶しており、判定手段123は、第1波形データと第1参照データとの照合に加えて、第2波形データと第2参照データとの照合により、板ガラスAの状態を判定する。または、判定手段123は、第1波形データと第2波形データとの照合により、板ガラスAの状態を判定する。
本実施形態の板ガラス加工装置100Bは、第1測定手段120、第2測定手段150により、板ガラスAの両端面をそれぞれ加工する第1加工具B及び第2加工具Dの位置情報を同時に測定することにより、例えば板ガラスAのサイズ、板ガラスAの直進性、及び板ガラスAの撓み等を判定することができる。
以下、図9を参照して板ガラスAのサイズを判定する手法を説明する。端面加工工程に運搬された板ガラスAにおいて、第1側端面A1と第2側端面A2との間の幅サイズが所定サイズと一致しない(幅サイズが所定サイズよりも大きいまたは小さい)場合がある。第1側端面A1を加工する第1加工具Bの位置情報と、第2側端面A2を加工する第2加工具Dの位置情報とを測定することで、加工する板ガラスAの幅サイズが所定サイズと一致するか否かを判定することができる。
具体的には、所定サイズを有する基準板ガラスに対して端面加工を行った際の第1加工具Bの位置情報を第1参照データとし、第2加工具Dの位置情報を第2参照データとする。板ガラスAの端面加工を行うたびに、判定手段123は、データ生成手段121で生成された第1波形データと第2波形データとの差分値(以下、測定差分値)を計算すると共に、記憶手段122に記憶された第1参照データと第2参照データの差分値(以下、参照差分値)を計算する。そして、測定差分値と参照差分値が一致する場合には、判定手段123は板ガラスAの幅サイズが所定サイズと一致すると判定する。一方、測定差分値と参照差分値が一致しない場合には、判定手段123は板ガラスAの幅サイズが所定サイズと一致しないと判定する。
以下、図9を参照して板ガラスAの直進性を判定する手法を説明する。板ガラスAの搬送手段として、板ガラスAの2つの側端面近辺をベルト(またはローラー)でそれぞれ挟んで搬送することがある。板ガラスAの一方の側端面近辺を挟むベルトの速度と、他方の側端面近辺を挟むベルトの速度とが一致しない場合、板ガラスAは直進的に搬送されない。その結果、加工した後の側端面は直線状とならないことがある。このことから、第1側端面A1を加工する第1加工具Bの位置情報と、第2側端面A2を加工する第2加工具Dの位置情報とを照合することで、加工する板ガラスAの直進性を判定することができる。
具体的には、直進的に搬送された板ガラスに対して端面加工を行った際の第1加工具Bの位置情報を第1参照データとし、第2加工具Dの位置情報を第2参照データとする。板ガラスAの端面加工を行うたびに、判定手段123は、データ生成手段121で生成された第1波形データと第1参照データとの相関係数を計算すると共に、第2波形データと第2参照データとの相関係数を計算する。判定手段123は、相関係数の値が予め決めた閾値を超えたか否かに基づいて判定を行う。
第1波形データと第1参照データとの相関係数及び第2波形データと第2参照データとの相関係数の値が閾値を超えた場合、判定手段123は、第1波形データと第1参照データとが一致すると判別する。即ち、板ガラスAは直進的に搬送されていた。
一方、第1波形データと第1参照データとの相関係数及び第2波形データと第2参照データとの相関係数の値が閾値を超えていない場合、判定手段123は、第1波形データと第1参照データとが一致しないと判別する。即ち、板ガラスAは直進的に搬送されていなかった。
以下、図10〜図11を参照して、板ガラスAの撓みを判定する手法を説明する。図10(a)は、撓みが発生した板ガラスAの加工形態を示す平面図である。図10(b)は、第1加工具Bの位置情報を示す図であり、図10(c)は、第2加工具Dの位置情報を示す図である。端面加工工程に運搬された板ガラスAにおいて、自重により撓みが発生することがある。この場合では、板ガラスAの第1側端面A1及び/または第2側端面A2は、上方または下方に反って正常時の軌道Rから逸脱する。図10(a)に示す板ガラスAでは、撓みによって第1側端面Aの始端部141が正常時の軌道Rから内側に逸脱している。
板ガラスAが矩形の形状を有しているため、撓みが発生していない場合では、第1側端面A1と第2側端面A2との間の直線距離(以下、幅方向の直線距離)は、板ガラスAの始端部141から終端部142にかけて一定である。これに対して、図10(a)に示すように撓みが発生した板ガラスAの場合、幅方向の直線距離は変化する。このことから、第1側端面A1を加工する第1加工具Bの位置情報と、第2側端面A2を加工する第2加工具Dの位置情報とを照合することで、加工する板ガラスAに撓みが生じたか否かを判定することができる。
具体的には、板ガラスAの端面加工を行うたびに、判定手段123は、データ生成手段121で生成された第1波形データと第2波形データとの差分値を計算し、差分値が時間tの経過に対して一定であるか否かに基づいて判定を行う。
差分値が時間tの経過に対して一定でない場合、板ガラスAの幅方向の直線距離が変化したことが分かる。このため、判定手段123は、板ガラスAに撓みが発生したと判定する。
一方、差分値が時間tの経過に対して一定である場合、板ガラスAの幅方向の直線距離が変化していないことが理解できる。しかしながら、図11に示すように、板ガラスAの始端部141から終端部142にかけて幅方向の直線距離が一定であるように板ガラスAに撓みが発生することがある。このように、第1波形データと第2波形データとの差分値は時間tの経過に対して一定である場合においても、板ガラスAに撓みが発生した可能性がある。
しかしながら、撓みが発生した板ガラスAの幅方向の直線距離は、撓みが発生していない板ガラスAの幅方向の直線距離より短くなる。このため、撓んでいない板ガラスの幅方向の直線距離に基づいて予め閾値を定めておく。差分値は時間tの経過に対して一定である場合、判定手段123は、差分値が閾値を超えているか否かに基づいて更に判定を行う。差分値が閾値を超えた場合に、判定手段123は、板ガラスAに撓みが発生したと判定する。一方、差分値が閾値を超えていない場合に、判定手段123は、板ガラスAに撓みが発生していないと判定する。
図9〜図11を参照して説明したように、本実施形態の板ガラス加工装置100Bによれば、例えば板ガラスAのサイズ、板ガラスAの直進性、及び板ガラスAの撓み等を判定することができる。
図12は、図5を参照して上述した板ガラス加工装置100Aによる板ガラス加工方法を示すフローチャートである。以下、図5、図12を参照して板ガラス加工方法の実施形態を説明する。本実施形態の板ガラス加工方法は、第1加工具準備工程と第1押圧力発生工程と第1測定工程とを含み、ステップS201〜S212によって実行される。
ステップS201において、板ガラス加工装置100Aの運転を開始する。
・ステップS202において、第1加工具Bの位置情報を測定する。具体的には、第1測定手段120が、第1測定手段120から第1加工具Bのアーム部材B2までの距離を第1加工具Bの位置情報として測定する。
・ステップS203において、板ガラスAを板ガラス加工装置100Aに搬入する。例えば、コンベアによって、板ガラスAを水平姿勢または縦姿勢で搬送する。
・ステップS204において、第1加工具Bを基準位置に移動する。第1加工具Bの移動は、アーム位置制御部124によって制御する。基準位置では、第1加工具Bのアーム部材B2はアームフリーになっている。
・ステップS205において、押圧を開始する。具体的には、板ガラスAの第1側端面A1と、第1加工具Bの砥石B1との推定接触タイミングにおいて、第1押圧力発生要素110により、第1加工具Bを板ガラスAの第1側端面A1へ付勢して押圧力を発生する。板ガラスAが搬送され、砥石B1によって第1側端面A1が加工される。
・ステップS206において、押圧を終了する。具体的には、第1押圧力発生要素110は、砥石B1が板ガラスAの第1側端面A1から離間するタイミングで付勢を停止して押圧を終了する。
・ステップS207において、第1加工具Bを待機位置に移動する。第1加工具Bはアーム位置制御部124の制御によって移動する。
・ステップS208において、時間に対する第1加工具Bの位置情報パターンを示す第1波形データを生成する。具体的には、第1測定手段120による測定結果に基づいて、データ生成手段121によって第1波形データを生成する。
・ステップS209において、ステップS208で生成された第1波形データを用いて照合し、判定を行う。具体的には、判定手段123によって、第1波形データと参照データとを照合し、板ガラスAまたは第1加工具Bの状態を判定する。例えば、第1加工具Bにバウンドが生じたか否かを判定する。または、第1加工具Bが摩耗したか否かを判定する。または、第1加工具Bの加工姿勢、板ガラスAの搬送姿勢または板ガラスAの整列姿勢が正常か否かを判定する。
・ステップS210において、ステップS209での判定の結果を出力する。例えば、判定の結果を表示装置40に表示する。出力された判定結果を確認したオペレータは、必要に応じて適切な措置を取る。
・ステップS211において、次の板ガラスを加工するか否かを判断する。次の板ガラスを加工する場合は、ステップS203へ戻り、ステップ203〜ステップ211を再び実行する。次の板ガラスを加工しない場合は、ステップS212へ進む。
・ステップS212において、板ガラス加工装置100Aの運転を終了する。
以下、図9と図12を参照して、板ガラス加工装置100Bによる本実施形態の板ガラス加工方法を説明する。本実施形態の加工方法は、図12を参照して上述した加工方法と同様にステップS201〜S212によって実行される。
ステップS201において、板ガラス加工装置100Bの運転を開始する。
・ステップS202において、第1加工具B及び第2加工具Dの位置情報を測定する。
・ステップS203において、板ガラスAを板ガラス加工装置100Bに搬入する。
・ステップS204において、第1加工具B及び第2加工具Dを基準位置に移動する。
・ステップS205において、押圧を開始する。具体的には、第1押圧力発生要素110により、第1加工具Bを板ガラスAの第1側端面A1へ付勢して押圧力を発生すると共に、第2押圧力発生要素140により、第2加工具Dを板ガラスAの第2側端面A2へ付勢して押圧力を発生する。板ガラスAが搬送され、第1側端面A1が第1加工具Bによって加工され、第2側端面A2が第2加工具Dによって加工される。
・ステップS206において、押圧を終了する。具体的には、第1押圧力発生要素110が第1加工具Bへの付勢を停止して押圧を終了すると共に、第2押圧力発生要素140が第2加工具Dへの付勢を停止して押圧を終了する。
・ステップS207において、第1加工具Bを待機位置に移動すると共に、第2加工具Dを待機位置に移動する。
・ステップS208において、時間に対する第1加工具Bの位置情報パターンを示す第1波形データを生成すると共に、時間に対する第2加工具Dの位置情報パターンを示す第1波形データを生成する。具体的には、第1測定手段120による測定結果に基づいて、データ生成手段121によって第1波形データを生成し、第2測定手段150による測定結果に基づいて、データ生成手段121によって第2波形データを生成する。
・ステップS209において、ステップS208で生成された第1波形データまたは第2波形データを用いて照合し、判定を行う。具体的には、判定手段123によって、参照データと第1波形データまたは第2波形データとを照合し、板ガラスA、第1加工具Bまたは第2加工具Dの状態(例えば、第1加工具Bまたは第2加工具Dにバウンドが生じたか否か、第1加工具Bまたは第2加工具Dが摩耗したか否か、第1加工具Bの加工姿勢、第2加工具Dの加工姿勢または板ガラスAの搬送姿勢、板ガラスAの整列姿勢が正常か否か)を判定する。または、判定手段123によって、第1波形データと第2波形データとを照合し、板ガラスAの状態(例えば、板ガラスAのサイズ、板ガラスAの直進性、及び板ガラスAの撓み等)を判定する。
・ステップS210において、ステップS209での判定の結果を出力する。例えば、判定の結果を表示装置40に表示する。出力された判定結果を確認したオペレータは、必要に応じて適切な措置を取る。
・ステップS211において、次の板ガラスを加工するか否かを判断する。次の板ガラスを加工する場合は、ステップS203へ戻り、ステップ203〜ステップ211を再び実行する。次の板ガラスを加工しない場合は、ステップS212へ進む。
・ステップS212において、板ガラス加工装置100Bの運転を終了する。
なお、図5〜図12を参照して説明した実施形態では、板ガラス加工装置は、データ生成手段、記憶手段及び判定手段を備え、記憶手段に予め記憶されている参照データとデータ生成手段で生成した波形データとを判定手段によって照合して判定を行っていたが、本発明はこれに限定されない。板ガラス加工装置は、データ生成手段のみを備え、記憶手段及び判定手段を備えなくてもよい。例えば、データ生成手段で生成した波形データを表示装置に表示し、表示結果を確認したオペレータが参照データ又は経験に基づいて板ガラスまたは加工具の状態を判定してもよい。