JP6031722B2 - 女性の排尿障害の治療剤 - Google Patents

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本発明は、シロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含み、女性の排尿障害患者に投与することを特徴とする排尿障害治療剤に関する。より詳しくは、本発明は、シロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含み、蓄尿障害を有する女性の排尿障害患者に投与することを特徴とする排尿障害治療剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、シロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含み、蓄尿障害を有する女性の排尿障害患者であって低血圧を合併する患者に投与することを特徴とする排尿障害治療剤に関する。
排尿は、尿を膀胱に溜める蓄尿機能と溜めた尿を体外に出す排出機能とで構成される。蓄尿機能および排出機能は、脊髄に存在する腰仙髄排尿中枢、脳幹に存在する橋排尿中枢(pontine micturition center、PMCと略称する)、脳幹より上に存在する高次排尿中枢の支配下、骨盤神経などの副交感神経、下腹神経などの交感神経、及び陰部神経などの体性神経からなる末梢神経系が司っており、種々の神経伝達物質、例えば、アセチルコリン、ノルアドレナリン、アデノシン三リン酸(ATP)、サブスタンスP、ニューロペプチドYなどの関与が示唆されている。膀胱に最大容量に近い尿が溜まると、膀胱からの求心性神経伝達は脊髄を上行し、傍中脳水道灰白質(preriaqueductal gray)、視床を介し、高次排尿中枢およびPMCに連絡する。高次排尿中枢はその状況を判断して、PMCを介し、脊髄神経の下行枝(運動神経)を刺激して尿の排出を促す。通常、高次排尿中枢はPMCを抑制(または刺激)しているが、尿の排出を決意するとこの抑制が解除(または刺激が伝達)され、PMCからの遠心性神経伝達は仙髄の副交感神経中枢を興奮させると同時に、交感神経中枢とオヌフ核を抑制する。この結果、膀胱収縮に協調して2つの尿道括約筋、すなわち内尿道括約筋(平滑筋)と外尿道括約筋(横紋筋)が弛緩し、膀胱が空になるまで尿の排出が円滑に推進される。
排尿障害は、広い意味では下部尿路障害といい、蓄尿障害および排出障害に大別される。排尿障害によってもたらされる症状を下部尿路症状(LUTS、lower urinary tract symptoms)、 といい、蓄尿症状(storage symptoms)、排出症状(voiding symptoms)、さらに排尿後症状(post voiding symptoms)に分けられる。しかし、必ずしも蓄尿症状が蓄尿障害、排出症状が排出障害を反映するとは限らず、また両方の障害や症状をもつ患者も少なくない。
蓄尿障害では、日中頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、尿失禁、膀胱などの異常感覚などの蓄尿症状が出現する。頻尿とは、排尿回数が異常に多い状態である。正常人の排尿回数は日差、個人差が大きいが、目安として1日8回以上、就眠時1回以上が続くときを頻尿としている。頻尿は尿意切迫感、膀胱知覚亢進(早期からの持続的な尿意)、膀胱痛および骨盤部痛や排尿痛を伴う場合がある。尿意切迫感とは、急に起こる、抑えられないような強い尿意で、我慢することが困難な状態である。通常、頻尿や尿失禁を伴う。尿失禁とは、不随意的に尿を漏らす状態である。なお、いくつかの型がある。膀胱に尿が充満して尿閉状態になるとあふれでてくる失禁(溢流性尿失禁)、尿意を感じると排尿を抑制できないために起こる失禁(切迫性尿失禁)、腹圧上昇時のみに起こる失禁(腹圧性尿失禁)、尿道括約筋の機能喪失で、膀胱に尿が貯まらずに持続的に起こる失禁(尿道弛緩性失禁)などがある。
排出障害では、排尿困難、排尿痛、尿閉、残尿感などの排出症状が出現する。排尿困難とは、排尿時に尿が出にくい状態の総称で、排尿しようとしても排尿が始まるまでに時間がかかる(排尿遅延)、尿の勢いが弱い(尿勢低下)、尿線が排尿中に1回以上途切れる(間欠排尿)、また、腹圧を加えないと尿が出にくい(腹圧排尿)などの状態である。排尿痛とは、排尿時に尿道に感じる疼痛のことで、排尿初期又は排尿末期にのみ感じることもある。尿閉とは、膀胱を完全に空にすることができない状態または排出が停止した状態である。また、排尿後症状として、残尿感や排尿後滴下が出現する。
排尿障害の原因は様々であるが、従来から膀胱や尿道の器質的異常と排尿支配神経の異常に大別されていた。膀胱や尿道の器質的異常としては、前立腺肥大をはじめ、尿道狭窄、膀胱憩室、結石や腫瘍などを挙げることができる。排尿支配神経の異常による排尿障害は、尿道の働きをコントロールする交感神経、膀胱の働きをコントロールする副交感神経などの不調によって男女共通に生じる排尿異常であり神経因性膀胱と総称される。神経因性膀胱をきたす主な疾患としては、脳血管障害、パーキンソン病、および脳腫瘍などの脳障害、脊髄損傷、二分脊椎、後縦靱帯骨化症、成人T細胞性白血病ウイルス関連脊髄症(HAM)、および脊髄繋留症候群などの脊髄障害、糖尿病、骨盤腔内手術、および腰部脊柱管狭窄症などの末梢神経障害、並びに多発性硬化症や脊髄小脳変性症を挙げることができる。
蓄尿障害の治療法は、抗コリン薬を中心とした薬物療法や膀胱拡張術などの手術療法などが知られている。しかし、現在、膀胱の収縮(排出機能)に影響を及ぼさない治療法は報告されていない。
排出障害の治療薬、特に排尿困難の治療薬としては、膀胱筋(排尿筋)の収縮力を増強させる薬剤、又は、前立腺・尿道平滑筋を弛緩し、尿道抵抗を減弱させる薬剤が用いられる。膀胱筋に働き、その収縮力を増強させる薬剤としては、例えばベサネコールなどのコリン作用剤、ジスチグミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬などが使用されているが、例えば、ベサネコールは蓄尿期の膀胱筋も収縮させ膀胱の蓄尿機能を損なうと共に、流涙、発汗、胃腸障害、腹痛などの副作用があり、妊婦、消化性潰瘍、器質的腸管閉塞、喘息、甲状腺機能亢進症などには禁忌である。前立腺・尿道平滑筋を弛緩し、尿道抵抗を減弱させる薬剤としては、α1アドレナリン受容体拮抗剤、例えば、タムスロシン、プラゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、ウラピジルなどが用いられ、残尿感、夜間頻尿などの自覚症状の改善に効果があることが報告されている。タムスロシン、ナフトピジルは選択的α1アドレナリン受容体拮抗剤であり、前立腺・尿道平滑筋へ選択的に作用するため前立腺肥大に伴う排尿障害治療剤として使用されている。一方、α1アドレナリン受容体拮抗剤は、アドレナリン作動***感神経の影響を遮断することから基本的には降圧作用を有しているため、低血圧、起立性低血圧の増悪などの副作用を伴う。
蓄尿障害と排出障害の両方の障害を有する症例では、蓄尿機能と排出機能とが全く逆の機能であるため、蓄尿を補助する薬剤を使うと排出障害の発生や増悪を招く可能性があり、また、排出を補助する薬剤を使うと蓄尿障害の発生や増悪を招く可能性がある。そのため、蓄尿障害と排出障害の両方の障害を有する症例の治療は困難である。
他方、男性及び女性において下部尿路の明らかな器質的障害或いは神経学的異常のいずれにも該当しない排尿障害が近年報告されており、原因疾患として排尿困難症、膀胱頸部硬化症、膀胱頸部閉塞症、尿道症候群、前立腺痛、ヒンマン症候群、ファウラー症候群、心因性排尿障害、薬剤性排尿障害、加齢による排尿障害などを挙げることができる。これらの原因による男性及び女性の排尿障害は、充分な疾患メカニズムの解明はされておらず、治療法も未だ確立していない。
女性の排尿障害では、従来、尿失禁などの症状が生じる蓄尿障害ばかりが注目され、排出障害は数少ないとみなされていたが、実際には排出障害を認めることが少なくない。特に神経因性膀胱では排出障害の頻度が高い。排尿障害は患者の生活の質(Quality of Life、以下QOLと略称することがある)を低下させるため、解決すべき重要な課題である。しかしながら、女性の排尿障害の処置に関する検討は少なく、加えて女性の排出障害に対して使用できる薬も限られているため、新たな治療法の開発が求められている。
近年、α1アドレナリン受容体阻害薬が女性の排出障害に対して有効であるとの報告が散見されている(非特許文献1−6)。α1アドレナリン受容体は、α1A受容体、α1B受容体、α1D受容体の3種類のサブタイプに分けられる。各サブタイプの発現は、組織により異なり、α1A受容体は前立腺や尿道に、α1B受容体は血管に、α1D受容体は前立腺と膀胱排尿筋に多く発現している。そのため、α1アドレナリン受容体サブタイプに対して選択性が低いか、非選択性であるα1アドレナリン受容体阻害薬は、血管に発現するα1B受容体にも作用して抹消血管平滑筋の収縮を阻害する結果、低血圧の増悪、立ちくらみやめまい感などの副作用が認められることがある。
女性は血圧が低いことが多く、また神経疾患例では起立性低血圧を合併していることも少なくない。このため女性症例に対してα1アドレナリン受容体阻害薬が使用し難いといった問題が存在する。例えば、現在、女性の排出障害には、神経因性膀胱への適応を持つウラピジル(販売名エブランチル)の使用のほか、降圧剤として使用されているα1アドレナリン受容体阻害薬の流用がなされている。しかし、これらα1アドレナリン受容体阻害薬はα1アドレナリン受容体サブタイプに対して選択性が低いか、非選択性であるため、低血圧の増悪、立ちくらみやめまい感などの副作用が認められることがあり、安全性に問題があった。
シロドシンは、α1アドレナリン受容体のサブタイプであるα1A受容体の選択的阻害薬であり、前立腺肥大による排尿障害を適用症とする排尿障害治療剤の有効成分として使用されている(非特許文献7および8)。シロドシンは、その他のα1アドレナリン受容体阻害薬、例えばタムスロシン、プラゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、ウラピジルなどと比較して、α1A受容体に対し高選択性を示す(非特許文献8−10)。
特開平6−220015号公報
T. Yamanishi et al., "Improvement of urethral resistance after the administration of an alpha-adrenoceptor blocking agent, urapidil, for neuropathic voiding disfunction", Paraplegia, Vol.32, pp.271-276 (1994) K. Yasuda et al., "The effect of urapidil on neurogenic bladder: a placebo controlled couble-blind study", The Journal of Urology, Vol.156, pp.1125-1130 (1996) H. Kakizaki et al., "Urodynamic effects of alpha1-blocker tamsulosin on voiding dysfunction in patients with neurogenic bladder", International Journal of Urology, Vol.10, pp.576-581 (2003) L. O. Olujide et al., "Female voiding dysfunction", Best Practice & Research Clinical Obstetrics and Gynaecology, Vol.19, No.6, pp.807-828 (2005) T. M. Kessler et al., "The effect of terazosin on functional bladder outlet obstruction in woman: a pilot study", The Journal of Urology, Vol.176, pp.1487-1492 (2006) K. Lee et al., "Efficacy and safety of tamusulosin for the treatment of non-neurogenic voiding dysfunctionvin females: a 8-week prospective study", Journal of Korean Medicinal science, Vol.25, pp.117-122 (2010) S. Schilit et al., "Silodosin: a selective alpha1A-adrenergic receptor antagonist for the treatment of benign prostatic hyperplasia", Clinical Therapeutics, Vol.31, No.11, pp.2489-2502 (2009) 川邉香月、「前立腺肥大症の薬物治療最前線」、薬学雑誌、第126巻、第199−206頁、2006年 村松郁延ら、「α1アドレナリン受容体の分類とα1遮断薬の最新情報」、薬学雑誌、第126巻、第187−198頁、2006年 立道聡ら、「シロドシン(KMD−3213)のα1−アドレナリン受容体サブタイプ選択性及び臓器特異性」、薬学雑誌、第126巻、第199−206頁、2006年
本発明の課題は、女性の排尿障害の治療に適用することができ、かつ副作用の少ない安全な薬剤を提供することである。排尿障害は患者のQOLを低下させるため、解決すべき重要な課題である。排尿障害をもたらす疾患として過活動膀胱、神経因性膀胱、前立腺肥大症、間質性膀胱炎など種々のものがあるが、とくに高齢者においては種々の原因が重なり合い、また加齢や生活習慣病そのものが排尿障害の症状を引き起こすとも報告されている。特に女性の排尿障害は、未だ充分な疾患メカニズムの解明はされておらず、治療法も未だ確立していない。
女性における排尿障害では従来、尿失禁などの症状が生じる蓄尿障害ばかりが注目され、数少ないとみなされていた排出障害の治療に関する検討は少なく、検討が行われても良い結果が得られていなかった。また女性では低血圧の人が多く、女性の排尿障害に使用されている従来の治療薬はウラピジル(販売名エブランチル)や降圧剤であり、これらは、低血圧の増悪、立ちくらみやめまい感などの副作用が時にみられることがあり、安全性に問題があった。
本発明者は上記課題を解決すべく、女性の排尿障害に対する有用性と安全性に関する探索的研究を進め、その過程において、前立腺肥大による排尿障害治療剤の有効成分である選択的α1Aアドレナリン受容体阻害薬シロドシンが血圧に及ぼす作用が少ないことに着目し、女性の排尿障害に対する有用性と安全性に関する探索的研究(自主臨床試験)を行った。
そして、本発明者はシロドシンが女性の排尿障害患者において蓄尿症状および排出症状のいずれも軽減してQOLを改善し得ること、および当該患者の基礎血圧や起立性血圧には影響を及ぼさないことを臨床において初めて確認し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下に関する:
1.シロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含み、女性の排尿障害患者に投与されることを特徴とする排尿障害治療剤、
2.投与される女性の排尿障害患者が蓄尿障害を有する女性の排尿障害患者である、上記1.の排尿障害治療剤、
3.投与される女性の排尿障害患者が蓄尿障害および排出障害を有する女性の排尿障害患者である、上記2.の排尿障害治療剤、
4.投与される女性の排尿障害患者が低血圧を合併する患者である、上記2.または3.の排尿障害治療剤、
5.投与される女性の排尿障害患者が低血圧を合併する患者であり、該低血圧が起立性低血圧である、上記4.の排尿障害治療剤、
6.女性の排尿障害患者の治療における、シロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物の使用。
7.女性の排尿障害患者が蓄尿障害を有する女性の排尿障害患者である上記6.のシロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物の使用、
8.女性の排尿障害患者が蓄尿障害および排出障害を有する女性の排尿障害患者である、上記7.のシロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物の使用、
9.女性の排尿障害患者が低血圧を合併する患者である、上記7.または8.のシロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物の使用、
10.女性の排尿障害患者が低血圧を合併する患者であり、該低血圧が起立性低血圧である、上記9.のシロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物の使用。
本発明によれば、女性の排尿障害患者に投与される排尿障害治療剤を提供できる。本発明に係る排尿障害治療剤は、蓄尿障害を有する女性の排尿障害患者、好ましくは蓄尿障害および排出障害を有する女性の排尿障害患者において臨床的に有効な優れた効果を示すため、従来、治療の選択肢の少なかった女性の排尿障害患者に有用である。さらに、本発明に係る排尿障害治療剤は、起立性低血圧といった低血圧に関する副作用がなく、そのため、そのような低血圧を合併する排尿障害患者に投与することができる。このように、本発明は、排尿障害患者、特に蓄尿障害を有する女性の排尿障害患者、好ましくは蓄尿障害および排出障害を有する女性の排尿障害患者、さらには低血圧を合併する女性の排尿障害患者の治療に係る医療分野において有用である。
シロドシン投与前および投与開始後の排尿症状を、国際前立腺症状スコア(IPSS)により評価した結果を示す図である。■は排出症状の評価結果を、▲は蓄尿症状の評価結果を、◆は総スコアによる評価結果を示す。*は、スチューデントt検定による統計解析で有意差(P<0.05)が認められたことを示す。(実施例1) シロドシン投与前および投与開始後のQOLを、IPSS−QOLにより評価した結果を示す図である。*は、スチューデントt検定による統計解析で有意差(P<0.05)が認められたことを示す。(実施例1) シロドシン投与前および投与開始後の蓄尿症状を、過活動膀胱症状質問票(OABSS)により評価した結果を示す図である。*は、スチューデントt検定による統計解析で有意差(P<0.05)が認められたことを示す。(実施例1) シロドシン投与前および投与開始後の尿失禁の状態を、国際尿失禁会議質問表ショートフォーム(ICIQ−SF)により評価した結果を示す図である。■は尿漏れ頻度を、▲は不快感を、◆は尿漏れ量を示す。(実施例1) シロドシン投与前および投与開始後のQOLを、キング健康調査票(KHQ)により評価した結果を示す図である。(実施例1) シロドシン投与前および投与開始後の残尿量を評価した結果を示す図である。*は、スチューデントt検定による統計解析で有意差(P<0.05)が認められたことを示す。(実施例1) シロドシン投与前および投与開始後に起立性低血圧をシェロング試験により測定した結果を示す図である。●はシロドシン投与前の収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)を、□はシロドシン投与開始時のSBPおよびDBPを、▲はシロドシン投与開始4週時のSBPおよびDBPを、◆はシロドシン投与開始8週時のSBPおよびDBPを、■はシロドシン投与開始12週時のSBPおよびDBPを示す。(実施例1) シロドシン投与前および投与開始後のシェロング試験実施時に脈拍を測定した結果を示す図である。●はシロドシン投与前の収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)を、□はシロドシン投与開始時のSBPおよびDBPを、▲はシロドシン投与開始4週時のSBPおよびDBPを、◆はシロドシン投与開始8週時のSBPおよびDBPを、■はシロドシン投与開始12週時のSBPおよびDBPを示す。(実施例1)●はシロドシン投与前の収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)を、□はシロドシン投与開始時のSBPおよびDBPを、▲はシロドシン投与開始4週時のSBPおよびDBPを、◆はシロドシン投与開始8週時のSBPおよびDBPを、■はシロドシン投与開始12週時のSBPおよびDBPを示す。(実施例1)
本発明は、シロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含み、女性の排尿障害患者に投与することを特徴とする排尿障害治療剤に関する。
本発明に係る排尿障害治療剤は、蓄尿障害を有する女性の排尿障害患者に好ましく投与される。蓄尿障害を有する女性の排尿障害患者の範囲には、蓄尿障害および排出障害を有する女性の排尿障害患者、並びに蓄尿障害を有するが排尿障害を有さない女性の排尿障害患者が包含される。
本発明に係る排尿障害治療剤は、蓄尿障害および排出障害を有する女性の排尿障害患者により好ましく投与される。蓄尿障害と排出障害の両方の障害を有する排尿障害では、蓄尿機能と排出機能とが全く逆の機能であるため、蓄尿を補助する薬剤を使うと排出障害の発生や増悪を招く可能性があり、また、排出を補助する薬剤を使うと蓄尿障害の発生や増悪を招く可能性がある。そのため、蓄尿障害と排出障害の両方の障害を有する排尿障害の治療は困難である。シロドシンは、排出障害のみが認められる症例の排出障害の改善のほか、蓄尿障害と排出障害の両方を有する症例において排出障害の改善のみならず蓄尿障害の改善も確認でき、さらには蓄尿障害のみが認められる症例の蓄尿症状を改善し得る可能性も認められた。このように、シロドシンは、蓄尿障害および排出障害を有する女性の排尿障害患者において臨床的に有効な優れた効果を示した。
本発明に係る排尿障害治療剤は、蓄尿障害を有する女性の排尿障害患者であって低血圧を合併する患者にさらに好ましく投与される。シロドシンは、女性の排尿障害患者において基礎血圧の低下、起立性低血圧の悪化、その他の副作用を示さなかった。したがって、シロドシンは、蓄尿障害を有する女性の排尿障害患者、好ましくは蓄尿障害および排出障害を有する女性の排尿障害患者であって、低血圧を合併する患者に投与することのできる安全な薬剤である。
用語「排尿障害」とは、排尿機能を成す2つの過程である蓄尿期と排出期のいずれか、または両方の過程が妨げられ、正常な排尿機能が損なわれた状態をいう。すなわち、排尿障害は、蓄尿障害のみを有する排尿障害、蓄尿障害と排出障害とを有する排尿障害、および排出障害のみを有する排尿障害の3つに大別される。
用語「蓄尿障害」とは、蓄尿過程に何らかの障害があり、膀胱に尿を十分に溜められない障害をいう。蓄尿障害では、日中頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、および切迫性尿失禁などの蓄尿症状が生じる。
用語「排出障害」とは、排出過程に何らかの障害があり、膀胱に溜めた尿を十分に出し切れない障害をいう。排出障害では排尿開始遅延、尿勢低下、間欠排尿、いきみ、および残尿感などの排出症状が生じる。
用語「排尿障害治療剤」とは、排尿障害を有する患者に投与することにより、排尿障害の軽減、改善、または治癒といった効果を奏する薬剤を意味する。
用語「低血圧」とは、全身動脈圧の低下をいい、収縮期血圧100mgHg以下、より好ましくは収縮期血圧80mgHg以下を指す。低血圧は、本態性低血圧、二次性低血圧(または症候性低血圧ともいう)、および起立性低血圧に大別される。本態性低血圧は原因不明の低血圧であり、2次性低血圧は特定できた原因疾患による症状の一つとして起こる低血圧である。起立性低血圧は起立時などの***変動時に生じる一過性低血圧をいう。本発明において、低血圧という場合、このような分類に関らず、上記収縮期血圧以下の血圧を指す。
用語「起立性低血圧」とは、***変動時、例えば臥位や座位から起立時に20mmHg以上の収縮期血圧低下を示す一過性低血圧をいう。起立性低血圧では、起立時の血圧低下とともに眼前暗黒感、めまい、失神、動悸、悪心などの症状をきたす。起立性低血圧は、座位血圧が正常血圧、低血圧、高血圧であることに関らず全てのヒトに起こり得る。血圧調節には自律神経、特に交感神経が非常に重要な働きをしているため、交感神経機能障害をきたす疾患や交感神経機能の阻害薬は低血圧、特に起立性低血圧を起こし得る。
シロドシンは、その化学名が(−)−1−(3−ヒドロキシプロピル)−5−[(2R)−2−({2−[2−(2,2,2−トリフロロエトキシ)フェノキシ]エチル}アミノ)プロピル]−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−7−カルボキシアミド((-)-1-(3-Hydroxypropyl)-5-[(2R)-2-({2-[2-(2,2,2-trifluoroethoxy)phenoxy]ethyl]amino)propyl]-2,3-dihydro-1H-indole-7-carboxamide)であるインドリン誘導体であり、尿道平滑筋収縮抑制作用を有する排尿困難症治療剤として開発された(特許文献1)。シロドシンは、例えば、特許文献1などに記載の方法により製造できる。
シロドシンは、選択的α1Aアドレナリン受容体阻害薬であり、α1A、α1B、およびα1Dなどのα1アドレナリン受容体サブタイプのうち、α1A受容体に親和性が高く、その他のサブタイプのα1アドレナリン受容体と比べてα1A受容体をより強く阻害する。α1A受容体はα1D受容体と比較して尿道に多く発現している。一方、α1B受容体は血管に多く発現している。したがって、選択的α1Aアドレナリン受容体阻害薬は、α1Bアドレナリン受容体阻害薬などと比較して血管への作用、すなわち低血圧などの副作用は少なく、尿道に選択的に効果を示す。
本発明に係る排尿障害治療剤の有効成分として含まれるシロドシンは、遊離体のままでもよく、薬理学的に許容される塩であってもよい。薬理学的に許容される塩として、酸付加塩及び塩基付加塩を挙げることができる。酸付加塩として、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、またはリン酸塩などの無機酸塩、およびクエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、またはパラトルエンスルホン酸塩などの有機酸塩を例示できる。塩基付加塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、またはアンモニウム塩などの無機塩基塩、およびトリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩などの有機塩基塩を例示できる。また、シロドシンは、遊離体および塩のほか、これらの溶媒和物であってもよい。溶媒和物として、水和物やエタノール和物などを例示できるが、医薬品として許容される他の溶媒との溶媒和物であればいずれの溶媒和物であってもよい。
本発明に係る排尿障害治療剤は、必要に応じて、医薬用に許容される担体(医薬用担体)を含む医薬組成物として製造できる。
医薬用担体は、製剤の使用形態に応じて通常使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤および賦形剤を例示できる。これらは得られる製剤の投与形態に応じて適宜選択して使用される。より具体的には、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトースを例示できる。これらは、本薬剤の剤形に応じて適宜1種類または2種類以上を組み合わせて使用される。そのほか、安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、界面活性剤、およびpH調整剤などを適宜使用することもできる。安定化剤は、例えばヒト血清アルブミンや通常のL−アミノ酸、糖類、セルロース誘導体を例示できる。L−アミノ酸は、特に限定はなく、例えばグリシン、システイン、グルタミン酸などのいずれでもよい。糖類も特に限定はなく、例えばグルコース、マンノース、ガラクトース、果糖などの単糖類、マンニトール、イノシトール、キシリトールなどの糖アルコール、ショ糖、マルトース、乳糖などの二糖類、デキストラン、ヒドロキシプロピルスターチ、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸などの多糖類などおよびそれらの誘導体などのいずれでもよい。セルロース誘導体も特に限定はなく、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのいずれでもよい。界面活性剤も特に限定はなく、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤のいずれも使用できる。界面活性剤には、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ソルビタンモノアシルエステル系、脂肪酸グリセリド系などが包含される。緩衝剤は、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、ε−アミノカプロン酸、グルタミン酸および/またはそれらに対応する塩(例えばそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)を例示できる。等張化剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリンを例示できる。キレート剤は、例えばエデト酸ナトリウム、クエン酸を例示できる。
本発明に係る排尿障害治療剤に含まれる有効成分の量は、広範囲から適宜選択される。通常約0.00001−70重量%、好ましくは0.0001−5重量%程度の範囲である。
本発明に係る排尿障害治療剤の用量範囲は特に限定されず、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無など)、および担当医師の判断などに応じて適宜選択される。一般的には適当な用量は、例えば対象の体重1kgあたり0.01μg乃至100mg程度、好ましくは約0.1μg乃至1mg程度の範囲である。しかしながら、当該分野においてよく知られた最適化のための一般的な常套的実験を用いてこれらの用量の変更を行うことができる。上記投与量は1日1回乃至数回に分けて投与することができる。好ましい用量は、経口投与する場合、シロドシンの重量として1回2mg−4mgを1日に2回投与することが適当である。
投与経路は、全身投与または局所投与のいずれも選択することができる。この場合、疾患、症状などに応じた適当な投与経路を選択する。本発明に係る薬剤は、経口経路および非経口経路のいずれによっても投与できるが、経口投与がより好ましい。非経口経路としては、通常の静脈内投与、動脈内投与のほか、皮下、皮内、筋肉内などへの投与を挙げることができる。
剤形は、特に限定されず、種々の剤形とすることができる。例えば、溶液製剤として使用できるほかに、これを凍結乾燥化し保存し得る状態にした後、用時、水や生理的食塩水などを含む緩衝液などで溶解して適当な濃度に調製した後に使用することもできる。また持続性剤形または徐放性剤形であってもよい。
具体的には、経口投与のためには、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁液、溶液剤、酒精剤、シロップ剤、エキス剤、エリキシル剤とすることができる。非経口剤としては、例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤などの注射剤、経皮投与または貼付剤、軟膏またはローション、口腔内投与のための舌下剤、口腔貼付剤、ならびに経鼻投与のためのエアゾール剤、坐剤とすることができるが、これらには限定されない。これらの製剤は、製剤工程において通常用いられる公知の方法により製造することができる。
経口用固形製剤を調製する場合は、上記有効成分に賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤などを加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などを製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されるものでよく、例えば、賦形剤としては、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸などを、結合剤としては、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドンなどを、崩壊剤としては乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖などを、滑沢剤としては精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコールなどを、矯味剤としては白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸などを例示できる。
経口用液体製剤を調製する場合は、上記化合物に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤などを加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤などを製造することができる。この場合矯味剤としては上記に挙げられたもので良く、緩衝剤としてはクエン酸ナトリウムなどが、安定化剤としてはトラガント、アラビアゴム、ゼラチンなどを挙げることができる。
注射剤を調製する場合は、上記化合物にpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤などを添加し、常法により皮下、筋肉内及び静脈内用注射剤を製造することができる。この場合のpH調節剤及び緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどを挙げることができる。安定化剤としてはピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオグリコール酸、チオ乳酸などを挙げることができる。局所麻酔剤としては塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどを挙げることができる。等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖などを例示できる。
本発明はまた、シロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含む排尿障害治療剤を、女性の排尿障害患者に投与することを特徴とする排尿障害治療方法に関する。本発明に係る排尿障害治療方法は、好ましくは蓄尿障害を有する女性の排尿障害患者、より好ましくは蓄尿障害および排出障害を有する女性の排尿障害患者を対象とする。さらに好ましくは、本発明に係る排尿障害治療剤は、蓄尿障害を有する女性の排尿障害患者、好ましくは蓄尿障害および排出障害を有する女性の排尿障害患者であって、低血圧を合併する患者を対象とする。
本発明はさらに、女性の排尿障害患者の治療における、シロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物の使用に関する。シロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物は、好ましくは蓄尿障害を有する女性の排尿障害患者、より好ましくは蓄尿障害および排出障害を有する女性の排尿障害患者の治療に使用される。さらに好ましくは、シロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物は、蓄尿障害を有する女性の排尿障害患者、好ましくは蓄尿障害および排出障害を有する女性の排尿障害患者であって、低血圧を合併する患者に使用される。
本発明に係る排尿障害治療剤の投与により、女性の排尿障害の治療においてQOLの改善が実現される。したがって本発明によれば、シロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含む、女性の排尿障害におけるQOL改善剤を提供できる。また、本発明によれば、シロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含む排尿障害治療剤を投与することを特徴とする女性の排尿障害におけるQOL改善方法を提供できる。さらにまた、本発明によれば、女性の排尿障害患者のQOL改善における、シロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物の使用を提供できる。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
[被験者]
排出症状および残尿を有した女性15症例を対象としてシロドシンを投与し、排尿障害に対するシロドシンの効果を検討した。本臨床研究に先立ち、倫理委員会での認可を受け、かつ対象となる患者本人の同意を文章にて得た。いずれの被験者も、排尿に影響を与える薬剤の投与を受けていない。
[薬剤]
まず、排尿状態を4週間観察後、シロドシンの投与を12週間行った。シロドシン製剤はキッセイ薬品工業株式会社製ユリーフ(登録商標)錠を使用し、1回4mgを1日2回経口投与した。半数例は4週間後にシロドシンの投与量を増加し、1回8mgを1日2回経口投与した。
[評価方法]
シロドシンの効果の評価は、観察期間前後と内服2、4、8、12週後に、国際前立腺症状スコア(IPSS)、IPSS−QOL、過活動膀胱症状質問票(OABSS)、国際尿失禁会議質問表ショートフォーム(ICIQ−SF)、キング健康調査票(KHQ)、問診、尿流および残尿の測定にて行った。また、起立性血圧変動への副作用を、シェロング試験(Schellong test)にて測定し、測定時に脈拍も測定した。測定結果はスチューデントt−検定により解析した。
IPSSは、刺激(蓄尿)症状および閉塞(排出)症状の両方に関する排尿症状の評価方法であり、点数が低いほうがより症状が軽いと判断される。刺激(蓄尿)症状の評価は、2時間以内の排尿、尿意切迫感、および夜間排尿についてそれぞれ得点化することにより行う。閉塞(排出)症状の評価は残尿感、尿線途絶、尿腺の勢い、排尿時のいきみについてそれぞれ得点化することにより行う。また、排尿症状の評価は、刺激(蓄尿)症状に関する得点と閉塞(排出)症状に関する得点とを合算して総スコアにより行う。
IPSS−QOLは、排尿症状をきたしていることに対する満足度、言い換えれば不満度を評価する方法であり、低いほうがQOLの満足度が増していると解釈できる。
OABSSは、過活動膀胱症状、すなわち蓄尿症状の評価方法であり、点数が低いほうが症状が軽いと判断される。昼間排尿回数、夜間排尿回数、尿意切迫感、尿失禁についてそれぞれ得点化し、点数が低いほうが症状が軽いと判断される。
ICIQ−SFは、尿失禁の評価方法であり、点数が低いほうが症状が軽いと判断される。尿漏れの頻度、尿漏れの量、および尿漏れによる困惑度についてそれぞれ得点化することにより評価を行う。
KHQは、排尿障害によるQOLの評価方法であり、点数が低いほうがQOLが良いと判断される。評価は、身体的および社会的活動の制限、並びに睡眠および活力(エネルギー)に関してそれぞれ得点化し、その総スコアを算出することにより行う。
尿流測定はウロフロメトリー機器を用いて、最大尿流率(Qmax、ml/秒)および平均尿流率量(ml)について行った。いずれも尿の勢いを見る検査値であり、高いほど尿排出が早く、したがって排出障害が軽いまたは正常と判断される。
残尿量測定は、経腹的超音波断層法により行い、自尿後に膀胱内に残っている尿の量を測定した。残尿量が多いほど、排出障害が重度と判断される。
シェロング試験は自律神経障害による起立性低血圧を評価する方法である。一般的には、10分間の安静臥位の後に10分間起立させ、起立前後に血圧の測定、および起立失調症状、例えば立ちくらみ、ふらつき感、眼前の暗黒感や白濁感などについての問診を行う。起立失調症状を認め、かつ、起立時に20−30mmHg以上の収縮期低血圧があれば、起立性低血圧と診断する。
[結果]
IPSS評価およびIPSS−QOL評価の結果をそれぞれ図1および図2に示す、OABSS評価およびICIQ−SF評価の結果は図3および図4に示す。KHQ評価の結果は図5に示す。残尿量測定評価の結果は図6に示す。また、シェロング試験の結果を図7−Aに、脈拍の測定結果を図7−Bに示す。
シロドシンの内服前と2週、4週、8週、12週後の観察において、排出症状スコア(IPSSの閉塞症状スコア)は8週後および12週後に有意な低下を認めた。また残尿もほぼ全例で減少し、最大尿流率および平均尿流率の平均値も上昇した。加えて、蓄尿症状スコア(IPSSの刺激症状スコアおよびOASSスコア)も8週以降から有意な低下を認めた。よってシロドシンは8週目以降に排出症状のみでなく、蓄尿症状をも改善することが観察された。他方、尿失禁の頻度や程度、誘因には変化を認めなかった。
一方、シロドシンはシェロングテスト(起立負荷テスト)による起立誘発性の血圧変化に影響を及ぼさず、基礎血圧や脈拍への影響も示さなかった。また、そのほか有害事象も無く、安全に使用し得ることが観察された。
上記臨床結果から、シロドシンは女性の蓄尿症状(障害)および排出症状(障害)を安全に改善すること、および血圧低下に関する副作用を示さないことが判明した。このようにシロドシンは、神経因性および非神経因性の両方の排尿障害に対して有効かつ安全な薬剤であると考えられた。
本発明は、排尿障害患者、特に蓄尿症状を有する女性の排尿障害患者、好ましくは蓄尿症状および排出症状を有する女性の排尿障害患者、さらには低血圧を合併する女性の排尿障害患者の医療分野において有用である。

Claims (5)

  1. 女性の排尿障害治療剤であって、女性の排尿障害患者が起立性低血圧を合併する女性の排尿障害患者であり、シロドシン若しくはその薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含み、女性の排尿障害患者にシロドシンの用量として1回2〜4mgで1日2回経口で投与されることを特徴とする排尿障害治療剤。
  2. 女性の排尿障害患者が蓄尿障害を有する女性の排尿障害患者である、請求項1に記載の女性の排尿障害治療剤。
  3. 女性の排尿障害患者が蓄尿障害に加えて排出障害を有する女性の排尿障害患者である、請求項2に記載の女性の排尿障害治療剤。
  4. 前記シロドシンの用量として1回2〜4mgで1日2回経口で投与されることが、シロドシンの用量として1回4mgで1日2回経口で投与されることである請求項1〜3のいずれか1項に記載の排尿障害治療剤。
  5. 前記経口で投与されることが、経口で12週間投与されることである請求項4に記載の排尿障害治療剤。
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