以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[硬化性樹脂組成物]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、不飽和結合性の官能基を持つ有機シロキサン化合物(A)(本開示において、「有機シロキサン化合物(A)」ともいう)、ケイ素原子に直接結合した水素原子を持つ有機シロキサン化合物(B)(本開示において、「有機シロキサン化合物(B)」ともいう)、及び屈折率が2以上で平均一次粒子径が1〜40nmである複合金属酸化物(C)(本開示において、「複合金属酸化物(C)」ともいう)を含む。
<不飽和結合性の官能基を持つ有機シロキサン化合物(A)>
本実施形態において使用される不飽和結合性の官能基を持つ有機シロキサン化合物(A)は、好ましくは、下記式(1):
R1 mSiO(4-m)/2 (1)
{式中、R1は、飽和若しくは不飽和の非置換若しくは置換の一価の炭化水素基、アルコキシ基、水酸基又は水素原子であり、そしてmは、0〜3の整数である。}で表される単位構造を有し、かつ分子中に不飽和結合性の官能基を少なくとも1つ持つ化合物である。有機シロキサン化合物(A)中に存在する複数のR1及びmはそれぞれ同一でも異なってもよい。
上記式(1)中、R1として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の、C20までの飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基等のアリール基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキセニルエチル基、ノルボルネニルエチル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、スチレニル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリロプロピル基、アクリロプロピル基等の、不飽和炭素二重結合を1つ有する炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等のエポキシ基置換炭化水素基;水酸基;水素原子等が挙げられる。中でも、透明性、合成容易性、及び入手容易性の点から、メチル基、エチル基、フェニル基、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリロプロピル基、アクリロプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、水酸基、及び水素原子が好ましく、メチル基、ビニル基、メタクリロプロピル基、アクリロプロピル基、メトキシ基、イソプロポキシ基、水酸基、及び水素原子がより好ましい。
上記式(1)中、mは、0〜3の整数である。反応性及び耐クラック性の点で、好ましくは、有機シロキサン化合物(A)を構成する単位構造の少なくとも一部、より好ましくは全部において、mは1である。
上記式(1)で表される単位構造の特に好ましい例は、CH3SiO3/2,CH2=CHSiO3/2,(CH3)2SiO2/2,(CH2=CH)CH3SiO2/2,(CH3)3SiO1/2,(CH2=CH)(CH3)2SiO1/2等である。
有機シロキサン化合物(A)は、不飽和結合性の官能基を有する。不飽和結合性の官能基は、後述の有機シロキサン化合物(B)が有する、ケイ素原子に直接結合した水素原子と組合せによって、組成物の熱硬化性に寄与する。不飽和結合性の官能基は、上記式(1)中のR1(単位構造の少なくとも一部においてR1が不飽和炭化水素基である場合)、及び後述のシラノール基封止剤の一方又は両方に由来することができる。良好な耐候性及び耐熱性を得る点から、不飽和結合性の官能基の量は、好ましくは樹脂1グラム当たり0.1〜8.0mmol/gである。また、好ましい態様においては、有機シロキサン化合物(A)中の不飽和結合の数に対する、有機シロキサン化合物(B)中のケイ素原子に直接結合した水素原子の数の比が、後述の特定の範囲である。
硬化性樹脂組成物中の有機シロキサン化合物(A)の含有量は、1〜80質量%であることが好ましい。該含有量は、硬化性の観点から1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、耐熱性の観点から80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
<不飽和結合性の官能基を持つ有機シロキサン化合物(A)の製造>
本実施形態の有機シロキサン化合物(A)は、好ましくは、下記式(2):
R2 mSi(OR3)(4-m) (2)
{式中、R2は、式(1)におけるR1と同じ定義を有し、R3は、炭素原子数1〜6の飽和脂肪族炭化水素基であり、そしてmは、式(1)におけるmと同じ定義を有する。}で表される化合物を加水分解及び縮合して得ることができる。
R3の好ましい例は、アルコキシドの加水分解性の点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の、C20までの飽和脂肪族炭化水素基である。
上記式(2)で表される化合物の好ましい例は、耐熱性及び硬化性の点から、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン等であり、より好ましい例はメチルトリメトキシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、及びジメチルビニルメトキシシランである。
加水分解のための水の添加量は、式(2)で表される化合物中の、OR3で表される置換基に対して、モル比で0.1〜10倍であることが好ましく、0.4〜8倍であることがより好ましく、0.8〜5倍であることがさらに好ましい。水の添加量が0.1倍以上であると、有機シロキサン化合物(A)の分子量が高くなるため好ましく、10倍以下であることは、作業性の点で好ましい。
加水分解及び縮合の反応速度を調節できる観点から、式(2)で表される化合物を、触媒の存在下で、加水分解及び縮合することがより好ましい。
触媒の種類としては、酸触媒及び塩基触媒が挙げられる。例えば、酸触媒としては、無機酸及び有機酸が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸等が挙げられる。塩基触媒としては、無機塩基及び有機塩基が挙げられる。無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ又はアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の金属炭酸水素塩;等が挙げられる。有機塩基としては、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン等のトリアルキルアミン;N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン等の炭素数1〜4のN,N−ジアルキルアニリン誘導体;ピリジン、2,6−ルチジン等の、炭素数1〜4のアルキル置換基を有していてもよいピリジン誘導体;等が挙げられる。
これらの触媒は、1種で又は2種以上を混合して用いることができる。有機シロキサン化合物(A)の製造時に、反応系のpHを0.01〜6.0の範囲になる量の触媒を加えることが、有機シロキサン化合物(A)の反応効率の点で好ましい。
有機シロキサン化合物(A)を製造するための加水分解及び縮合は、有機溶媒中で行うこともできる。縮合反応に使用できる有機溶媒としては、例えば、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、脂肪族炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物、アミド化合物等が挙げられる。
上記アルコール類としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールのような一価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールのような多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルのような多価アルコールのモノエーテル類;等が挙げられる。
上記エステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等が挙げられる。
上記エーテル類としては、上記の多価アルコールのモノエーテル類の他に、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのような多価アルコールの水酸基の全てをアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類;テトラヒドロフラン;1,4−ジオキサン;アニソール;等が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
上記アミド化合物としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
以上の溶媒の中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;が水と混合しやすい点で好ましい。
これらの溶媒は単独で使用してもよいし、複数の溶媒を組み合わせて使用してもよい。
有機シロキサン化合物(A)を製造する際の反応温度は特に制限は無いが、−50℃〜200℃が好ましく、0℃〜150℃がより好ましい。加水分解及び縮合反応の反応速度を上げる観点から、反応温度が−50℃以上であることが好ましく、有機シロキサン化合物(A)のゲル化を抑制する観点から、反応温度が200℃以下であることが好ましい。
有機シロキサン化合物(A)を製造する際の反応時間は特に制限は無いが、30分〜24時間が好ましく、1〜6時間がより好ましい。アルコキシ基の加水分解が充分に進行させるために、反応時間が30分以上であることが好ましく、有機シロキサン化合物(A)のゲル化を抑制する観点から、反応温度が24時間以下であることが好ましい。
(シラノール基封止)
有機シロキサン化合物(A)は、末端シラノール基がオルガノシリル化処理により封止されたものであっても良い。
好ましい態様において、有機シロキサン化合物(A)は、末端シラノール基がシラノール基封止剤で封止されたものであることができる。好ましいシラノール基封止剤の例は、下記式(3):
X1 nR4 (3-n)SiY (3)
{式中、X1は、不飽和炭素二重結合を1つ有する炭化水素基であり、R4は、飽和の非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、Yは、ハロゲン原子であり、そしてnは、0〜3の整数である。}で表される化合物である。このような化合物を用いた処理により、シラノール基が封止された有機シロキサン化合物(A)を得ることができる。
nは、より好ましくは0〜2の整数、さらに好ましくは0又1である。
X1は、有機シロキサン化合物(A)における不飽和結合性の官能基として作用できる。X1の好ましい例は、反応性の観点から、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、メタクリル基、アクリル基、及びスチリル基であり、より好ましい例は、ビニル基、及びアリル基である。
R4の好ましい例は、耐熱性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の、C20までの飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基等のアリール基であり、より好ましい例はメチル基である。
Yの好ましい例は、反応性の点から、塩素原子である。
上記式(3)で表される化合物の添加量は、シラノール基量を調整するために適宜調整すればよく特に制限は無いが、量を変化させることにより、有機シロキサン化合物(A)中のシラノール基濃度を調整することができる。例えば、上記式(3)で表される化合物としてクロロシランを用いる場合の添加量は、処理前の有機シロキサン化合物(A)が有するシラノール基に対するモル比で0.2〜1.1程度であることが好ましい。
シラノール基量を調整するために、上記式(3)で表される化合物と、トリメチルクロロシラン等の、不飽和炭素二重結合を1つ有する炭化水素基を有さないシラノール基封止剤とを併用することもできる。
シラノール基をオルガノシリル化処理することによりシラノール基を封止する際、溶剤を用いてもよい。溶剤として、例えば、エステル類、エーテル類、脂肪族炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物等が挙げられる。
上記エステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等が挙げられる。
上記エーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルのような多価アルコールのモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのような多価アルコールの水酸基の全てをアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類;テトラヒドロフラン;1,4−ジオキサン;アニソール;等が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
シラノール基をオルガノシリル化処理することによりシラノール基を封止する際、シラノール基封止剤としてクロロシラン類を用いることが、高反応性の点で好ましい。クロロシラン類として、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジメチルクロロシラン等の一塩素置換(すなわちモノクロロ)シラン等を挙げることができる。また、前記の一塩素置換(すなわちモノクロロ)シランを用いることは、硬化性樹脂組成物の低粘度化を可能にする点で好ましい。
クロロシラン類を用いてシラノール基をオルガノシリル化処理することによりシラノール基を封止する際、発生する酸を、ルイス塩基により中和することが好ましい。ルイス塩基として、例えば、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミン等が挙げられる。
クロロシラン類を用いてシラノール基をオルガノシリル化処理することによりシラノール基を封止する際、反応温度は、20〜150℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。反応温度が20℃以上であると、反応速度の観点で好ましく、反応温度が150℃以下であると、作業性の観点で好ましい。
<ケイ素原子に直接結合した水素原子を持つ有機シロキサン化合物(B)>
本実施形態において使用されるケイ素原子に直接結合した水素原子を持つ有機シロキサン化合物(B)は、好ましくは、下記式(4):
R5 pSiO(4-p)/2 (4)
{式中、R5は、飽和若しくは不飽和の非置換若しくは置換の一価の炭化水素基、アルコキシ基、水酸基又は水素原子であり、pは、0〜3の整数である。}で表される単位構造を有し、かつ分子中に、ケイ素原子に直接結合した水素原子を少なくとも1つ持つ化合物である。有機シロキサン化合物(B)中に存在する複数のR5及びpはそれぞれ同一でも異なってもよい。
上記式(4)中、R5として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のC20までの飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基等のアリール基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキセニルエチル基、ノルボルネニルエチル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、スチレニル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリロプロピル基、アクリロプロピル基等の、不飽和炭素二重結合を1つ有する炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、等のアルコキシ基;γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等のエポキシ基置換炭化水素基;水酸基;水素原子等が挙げられる。中でも、透明性、合成容易性、及び入手容易性の点から、メチル基、エチル基、フェニル基、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリロプロピル基、アクリロプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、水酸基、及び水素原子が好ましく、メチル基、ビニル基、メタクリロプロピル基、アクリロプロピル基、メトキシ基、イソプロポキシ基、水酸基、及び水素原子がより好ましい。
上記式(4)中、pは、0〜3の整数である。反応性及び耐クラック性の点で、好ましくは、有機シロキサン化合物(B)を構成する単位構造の少なくとも一部、より好ましくは全部において、pは1である。
上記式(4)で表される単位構造の特に好ましい例は、CH3SiO3/2,HSiO3/2,(CH3)2SiO2/2,CH3(H)SiO2/2,(CH3)3SiO1/2,(CH3)2(H)SiO1/2等である。
有機シロキサン化合物(B)は、ケイ素原子に直接結合した水素原子を有する。ケイ素原子に直接結合した水素原子は、良好な熱硬化性に寄与する。このような水素原子は、上記式(4)中のR5(単位構造の少なくとも一部においてR5が水素原子である場合)、及び後述のシラノール基封止剤の一方又は両方に由来することができる。良好な熱硬化性を得る点から、ケイ素原子に直接結合した水素原子の量は、好ましくは樹脂1gあたり0.1〜8mmol/gである。
有機シロキサン化合物(B)中の、ケイ素原子に直接結合した水素原子の数、換言するとSiH基の数(Y)の、有機シロキサン化合物(A)中の不飽和結合の数(X)に対する比は、熱劣化に対する耐熱性と、硬度との点から、3≧Y/X≧0.5が好ましく、1.5≧Y/X≧0.7がより好ましい。
なお、有機シロキサン化合物(A)及び有機シロキサン化合物(B)のいずれにも該当する化合物(本開示において、「有機シロキサン化合物(AB)」ともいう)を単独又は他の化合物との組合せで用いてもよい。この場合、上記のX及びYは、それぞれ、有機シロキサン化合物(A)のうちケイ素原子に直接結合した水素原子を持たないもの、有機シロキサン化合物(B)のうち不飽和結合性の官能基を持たないもの、及び有機シロキサン化合物(AB)、のうち硬化性樹脂組成物中に存在するものが有する、ケイ素原子に直接結合した水素原子の総数及び不飽和結合の総数と考える。
硬化性樹脂組成物中の有機シロキサン化合物(B)の含有量は、1〜80質量%であることが好ましい。該含有量は、熱硬化性の観点から1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、耐熱性の観点から80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
硬化性樹脂組成物中の有機シロキサン化合物(AB)の含有量は0質量%であってもよいし、熱硬化性の観点から0質量%超であることもできる。また該含有量は100質量%未満であり、耐熱性及び硬度の観点から好ましくは20質量%以下である。
<ケイ素原子に直接結合した水素原子を持つ有機シロキサン化合物(B)の製造>
本実施形態の有機シロキサン化合物(B)は、下記式(5):
HoR6 pSi(OR7)(4-o-p) (5)
{式中、R6は、式(4)におけるR5と同じ定義を有し、R7は、炭素原子数1〜6の飽和脂肪族炭化水素基であり、そしてpは、式(4)におけるpと同じ定義を有する。}で表される化合物を加水分解及び縮合して得ることができる。
R7の好ましい例は、アルコキシドの加水分解性の点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の、C20までの飽和脂肪族炭化水素基である。
上記式(5)で表される化合物の好ましい例は、入手のしやすさ、および耐熱性の点から、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、トリメチルシラン、トリメチルエトキシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン等であり、より好ましい例はメチルトリメトキシラン、トリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、及びジメチルエトキシシランである。
加水分解のための水の添加量としては、式(5)で表される化合物中の、OR7で表される置換基に対して、モル比で0.1〜10倍であることが好ましく、0.4〜8倍であることがより好ましく、0.8〜5倍であることがさらに好ましい。水の添加量が0.1倍以上であると、有機シロキサン化合物(B)の分子量が高くなるため好ましく、10倍以下であることは、作業性の点で好ましい。
加水分解及び縮合の反応速度を調節できる観点から、式(5)で表される化合物を、触媒の存在下で、加水分解及び縮合することがより好ましい。
触媒の種類としては、酸触媒及び塩基触媒が挙げられる。例えば、酸触媒としては、無機酸及び有機酸が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸等が挙げられる。塩基触媒としては、無機塩基及び有機塩基が挙げられる。無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ又はアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の金属炭酸水素塩;等が挙げられる。有機塩基としては、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン等のトリアルキルアミン;N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン等の炭素数1〜4のN,N−ジアルキルアニリン誘導体;ピリジン、2,6−ルチジン等の、炭素数1〜4のアルキル置換基を有していてもよいピリジン誘導体;等が挙げられる。
これらの触媒は、1種で又は2種以上を混合して用いることができる。有機シロキサン化合物(B)の製造時に、反応系のpHを0.01〜6.0の範囲になる量の触媒を加えることが、有機シロキサン化合物(B)の反応効率の点で好ましい。
有機シロキサン化合物(B)を製造するための加水分解及び縮合は、有機溶媒中で行うこともできる。縮合反応に使用できる有機溶媒としては、例えば、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、脂肪族炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物、アミド化合物等が挙げられる。
上記アルコール類としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールのような一価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールのような多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルのような多価アルコールのモノエーテル類;等が挙げられる。
上記エステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等が挙げられる。
上記エーテル類としては、上記の多価アルコールのモノエーテル類の他に、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのような多価アルコールの水酸基の全てをアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類;テトラヒドロフラン;1,4−ジオキサン;アニソール;等が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
上記アミド化合物としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
以上の溶媒の中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;が水と混合しやすい点で好ましい。
これらの溶媒は単独で使用してもよいし、複数の溶媒を組み合わせて使用してもよい。 有機シロキサン化合物(B)を製造する際の反応温度は特に制限は無いが、−50℃〜200℃が好ましく、0℃〜150℃がより好ましい。加水分解及び縮合反応の反応速度を上げる観点から、反応温度が−50℃以上であることが好ましく、有機シロキサン化合物(B)のゲル化を抑制する観点から、反応温度が200℃以下であることが好ましい。
有機シロキサン化合物(B)を製造する際の反応時間は特に制限は無いが、30分〜24時間が好ましく、1〜6時間がより好ましい。アルコキシ基の加水分解が充分に進行させるために、反応時間が30分以上であることが好ましく、有機シロキサン化合物(B)のゲル化を抑制する観点から、反応温度が24時間以下であることが好ましい。
(シラノール基封止)
有機シロキサン化合物(B)は、末端シラノール基がオルガノシリル化処理により封止されたものであっても良い。
好ましい態様において、ケイ素原子に直接結合した水素原子を持つ有機シロキサン化合物(B)のシラノール基は、シラノール基封止剤で封止できる。好ましいシラノール基封止剤の例は、下記式(6):
X2 qR8 (3-q)SiY (6)
{式中、X2は、水素原子であり、R8は、飽和の非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、Yは、ハロゲン原子であり、そしてqは、0〜3の整数である。}で表される化合物である。このような化合物を用いた処理により、シラノール基が封止された有機シロキサン化合物(B)を得ることができる。
qは、より好ましくは0〜2の整数、さらに好ましくは0又は1である。
X2は、有機シロキサン化合物(B)における、ケイ素原子に直接結合した水素原子として作用できる。
R8の好ましい例は、耐熱性の点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の、C20までの飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基等のアリール基であり、より好ましい例はメチル基である。
Yの好ましい例は、反応性の点から、塩素原子である。
上記式(6)で表される化合物の添加量は、シラノール基量を調整するために適宜調整すればよく特に制限は無いが、量を変化させることにより、有機シロキサン化合物(B)中のシラノール基濃度を調整することができる。例えば、上記式(6)で表される化合物としてクロロシランを用いる場合の添加量は、処理前の有機シロキサン化合物(B)が有するシラノール基に対するモル比で0.2〜1.1程度であることが好ましい。
シラノール基量を調整するために、上記式(6)で表される化合物と、トリメチルクロロシラン等の、不飽和炭素二重結合を1つ有する炭化水素基を有さないシラノール基封止剤とを併用することもできる。
シラノール基をオルガノシリル化処理することによりシラノール基を封止する際、溶剤を用いてもよい。溶剤として、例えば、エステル類、エーテル類、脂肪族炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物等が挙げられる。
上記エステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等が挙げられる。
上記エーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルのような多価アルコールのモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのような多価アルコールの水酸基の全てをアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類;テトラヒドロフラン;1,4−ジオキサン;アニソール;等が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
シラノール基をオルガノシリル化処理することによりシラノール基を封止する際、シラノール基封止剤としてクロロシラン類を用いることが、高反応性の点で好ましい。クロロシラン類として、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジメチルクロロシラン等の一塩素置換(すなわちモノクロロ)シラン等を挙げることができる。また、前記の一塩素置換(すなわちモノクロロ)シランを用いることは、硬化性樹脂組成物の低粘度化を可能にする点で好ましい。
クロロシラン類を用いてシラノール基をオルガノシリル化処理することによりシラノール基を封止する際、発生する酸を、ルイス塩基により中和することが好ましい。ルイス塩基として、例えば、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミン等が挙げられる。
クロロシラン類を用いてシラノール基をオルガノシリル化処理することによりシラノール基を封止する際、反応温度は、20〜150℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。反応温度が20℃以上であると、反応速度の観点で好ましく、反応温度が150℃以下であると、作業性の観点で好ましい。
<複合金属酸化物(C)>
本実施形態において使用される複合金属酸化物(C)は、2種以上の金属原子と酸素原子とからなる金属酸化物である。複合金属酸化物としては、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、珪酸ジルコニウム、ジルコン酸鉛、スズ添加酸化インジウム、アンチモン添加酸化スズ、ニオブ酸リチウム、及びコバルト酸リチウムから選ばれる1種以上が好ましい。屈折率及び入手のしやすさからチタン酸バリウム及びチタン酸ストロンチウムから選ばれる1種以上がより好ましい。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。また他の元素を若干量含む材料、いわゆるドーピングされた材料であってもよい。
複合金属酸化物(C)の平均一次粒子径は、サイズに由来する量子効果が顕著である点、及び樹脂中に分散させた際の透明性に優れる点から、40nm以下である。該平均一次粒子径は、分散性の観点から1nm以上である。該平均一次粒子径は、1〜20nmの範囲がより好ましい。なお本開示において、平均一次粒子径とは数平均での値を意味する。上記平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるナノ粒子50個の数平均値である。
複合金属酸化物(C)の屈折率は、組成物の屈折率と充填量の観点から、2以上である。該屈折率は、光散乱による透明性の減少の観点から、好ましくは4以下である。なお上記屈折率は、プリズムカップリング法で測定される値である。
複合金属酸化物(C)は,有機溶剤、水又はこれらの混合物に分散された湿式状態でもよく、また粉末状の乾式状態でもよい。
複合金属酸化物(C)は、例えばゾルゲル法、共沈法、水熱法等で得られる。複合金属酸化物(C)の表面水酸基量を、例えば50℃から1000℃までの温度での焼結により制御してもよいし、そのような制御なしで用いてもよい。表面水酸基量の制御は、ナノ粒子である複合金属酸化物の分散性の点で好ましい。
複合金属酸化物(C)の表面の水酸基濃度は、拡散反射赤外分光スペクトルをクベルカ−ムンカ処理することにより準定量的に定量できる。
複合金属酸化物(C)の形状は、球状、棒状、板状若しくは繊維状又はこれらの2種類以上が合体した形状であることができるが、硬化性樹脂組成物が低粘度化できる点から、球状が好ましい。尚、ここでいう球状とは、真球状の他、回転楕円体及び卵形等を含む略球状を意味する。
複合金属酸化物(C)は、例えば下記のような種々の方法で硬化性樹脂組成物中に分散させることができる。これらの方法を複数組合せてもよい。
有機シロキサン化合物(A)のシラノール基を封止する場合において、封止前の有機シロキサン化合物(A)に複合金属酸化物(C)を添加し、複合金属酸化物(C)表面の水酸基を用いて縮合させることで複合金属酸化物(C)を有機シロキサン化合物(A)中に分散させても良い。又はシラノール基を封止した後にビーズミル等のナノ分散機を用いて複合金属酸化物(C)を封止後の有機シロキサン化合物(A)中に分散させても良い。
有機シロキサン化合物(B)のシラノール基を封止する場合において、封止前の有機シロキサン化合物(B)に複合金属酸化物(C)を添加し、複合金属酸化物(C)表面の水酸基を用いて該シラノール基と縮合させることで複合金属酸化物(C)を有機シロキサン化合物(B)中に分散させても良い。又はシラノール基を封止した後にビーズミル等のナノ分散機を用いて複合金属酸化物(C)を封止後の有機シロキサン化合物(B)中に分散させても良い。
また、有機シロキサン化合物(A)、有機シロキサン化合物(B)及び複合金属酸化物(C)を、共通の良溶媒に溶かした後、脱溶剤することで、複合金属酸化物(C)を分散させることが出来る。さらに、湿式又は乾式の複合金属酸化物微粒子(C)と、有機シロキサン化合物(A)及び有機シロキサン化合物(B)とを混合し、ビーズミル等の分散装置を用いて分散させてもよい。
ビーズミルは、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルであって、撹拌粒子であるビーズも超微小ビーズであることが必要である。超微小ビーズとしては、3〜50μmの粒子径を有する超微小ビーズが好ましく、10〜30μmの粒子径を有する超微小ビーズがより好ましい。超微小ビーズの粒子径が3μm以上であれば、分散に必要な衝撃エネルギーが得られ、粒子径が50μm以下であれば、過剰な衝撃エネルギーによる再凝集が抑制できる。さらに撹拌粒子は、十分に研磨したものを使用することが、分散液の光透過度を高くする観点から好ましい。
適応可能な撹拌粒子としては、ジルコニア、アルミナ、シリカ、ガラス、炭化珪素、窒化珪素等が例示される。これらの中でも、撹拌粒子としての強度と安定性に優れるという観点から、ジルコニアを用いることが好ましい。さらにビーズミルは、セパレータの径をd、ステータの内径をDとしたとき、d/Dが0.5〜0.9であればより好ましい。このような形状を有するビーズミルであれば、短時間でより効率的に分散液を製造することできる。
複合金属酸化物(C)を分散させる際に、複合金属酸化物(C)には、例えば加水分解性基含有シラン化合物、カルボキシル基含有化合物、アミノ基含有化合物、ヒドロキシル基含有化合物、メルカプト基含有化合物、リン酸基含有化合物、スルフォン酸基含有化合物、及び配位性高分子等を用いて表面処理を行なってもよい。耐熱性及び分散性の点から加水分解性基含有シラン化合物(例えばアルコキシシラン類及びクロロシラン類が挙げられる)で表面処理を行うことが好ましい。
硬化性樹脂組成物中の複合金属酸化物(C)の含有量は、1〜60体積%であることが好ましい。該含有量は、高屈折率を得る観点から1体積%以上が好ましく、10体積%以上がより好ましく、粘度と接着性との観点から60体積%以下が好ましく、40体積%以下がより好ましい。
<ヒドロシリル化触媒(D)>
硬化性樹脂組成物は、ヒドロシリル化触媒(D)を更に含有していてもよい。ヒドロシリル化触媒(D)とは、不飽和炭化水素基における不飽和炭化水素と、SiH基におけるケイ素原子に直接結合した水素原子との付加反応を促進するための触媒である。ヒドロシリル化触媒(D)としては、既知のヒドロシリル化触媒を使用できる。ヒドロシリル化触媒として、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・nH2O、H2PtCl6・nH2O、NaHPtCl6・nH2O、KHPtCl6・nH2O、Na2PtCl6・nH2O、K2PtCl4・nH2O、PtCl4・nH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・nH2O{式中、nは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である。}等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸;塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス;白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィンコンプレックス;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体又はビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックス等が挙げられる。これらのヒドロシリル化触媒は、1種類で用いてもよいし、2種類以上のヒドロシリル化触媒を混合して用いてもよい。
硬化性樹脂組成物中のヒドロシリル化触媒(D)の含有量としては、白金族金属の質量換算で、有機シロキサン化合物(A)、有機シロキサン化合物(B)、及び有機シロキサン化合物(AB)の総質量を基準に0.01〜1000ppmが好ましく、0.2〜100ppmがより好ましい。該含有量は、0.01ppm以上であることが反応効率の点で好ましく、1000ppm以下であることが、硬化物の透明性の点で好ましい。
<光重合開始剤(E)>
本実施形態の硬化性樹脂組成物を露光により硬化させる場合、硬化性樹脂組成物は光重合開始剤(E)を含むことが好ましい。光重合開始剤(E)は、光を吸収することにより、上記、不飽和結合性の官能基を持つ有機シロキサン化合物(A)の重合反応を促進する効果を有するものであり、典型的には光ラジカル開始剤である。このような光重合開始剤(E)としては、例えば、(1)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン等のベンゾフェノン誘導体、(2)トリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、フェニルグリオキシル酸メチル、(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン)(チバ・ジャパン株式会社製IRGACURE127)等のアセトフェノン誘導体、(3)チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、(4)ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体、(5)ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン等のベンゾイン誘導体、(6)1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)](チバ・ジャパン株式会社製OXE−01)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)(チバ・ジャパン株式会社製IRGACURE OXE02)等のオキシム系化合物、(7)2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン等のα−ヒドロキシケトン系化合物、(8)2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・ジャパン株式会社製IRGACURE369)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン等のα−アミノアルキルフェノン系化合物、(9)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン株式会社製DAOCURE TPO)等のフォスフィンオキサイド系化合物、(10)ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム等のチタノセン化合物、(11)エチル−p−(N,N−ジメチルアミノベンゾエイト)等のベンゾエイト誘導体、(12)9−フェニルアクリジン等のアクリジン誘導体が挙げられる。
これらは単独で用いても、複数の光重合開始剤を混ぜて使用しても良い。
光重合開始剤(E)の量としては、有機シロキサン化合物(A)、有機シロキサン化合物(B)及び複合金属酸化物(C)の合計量100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上5質量部以下、更に好ましくは0.2質量部以上3質量部以下である。0.01質量部以上であれば硬化が良好に進行し、10質量部以下であれば、光硬化後又は熱によるベーク後に着色が少ない。
本実施形態は、不飽和結合性の官能基を持つ有機シロキサン化合物(A)、屈折率が2以上で平均一次粒子径が1〜40nmである複合金属酸化物(C)、及び光重合開始剤(E)を含む、硬化性樹脂組成物も提供する。該硬化性樹脂組成物は露光により硬化させることができ、また高透明性、高耐候性、及び高屈折率を達成することができる。有機シロキサン化合物(A)、複合金属酸化物(C)、及び光重合開始剤(E)の好ましい態様は前述した通りである。
硬化性樹脂組成物は、接着性付与剤を含有することが、各種材料との接着性の点で好ましい。接着性付与剤として、例えば、エポキシ官能性基含有化合物、アルコキシシラン等が挙げられる。好ましい接着性付与剤は、エポキシ基及び/又はアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物であり、特に好ましい接着性付与剤は、エポキシ基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物である。
上記接着性付与剤の配合量は、有機シロキサン化合物(A)、有機シロキサン化合物(B)及び複合金属酸化物(C)の合計量100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下が好ましい。該配合量が0.01質量部以上であることが、接着性の点で好ましく、20質量部以下であることが、透明性及び耐クラック性の点で好ましい。
硬化性樹脂組成物は、無機フィラーを含有してもよい。無機フィラーは、光透過性への悪影響を避けるため、目的の用途において使用する波長以下の平均一次粒子径を有するものが好ましい。該平均一次粒子径は、より好ましくは100nm以下である。無機フィラーは、樹脂において、例えば機械的物性を改善する場合及び熱伝導性を向上させる場合がある。無機フィラーの平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、樹脂組成物の粘度が低く良好な成形性を有するという点から、0.1nm以上であることが好ましい。なお上記平均一次粒子径は、BETの比表面積から計算で求められる値である。無機フィラーの配合量は、目的に応じて選択できるが、有機シロキサン化合物(A)、有機シロキサン化合物(B)及び複合金属酸化物(C)の合計量100質量部に対して、例えば1〜60質量部、より好ましくは5〜60質量部、さらに好ましくは5〜40質量部であることができる。
また、硬化性樹脂組成物は、硬化遅延剤、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤から選ばれる1種以上を含有してもよい。
更に、硬化性樹脂組成物は、発光波長の色を変換させる目的で、蛍光体又は燐光体を含有してもよい。これらの材料は公知の方法、例えば、遠心分離等を用いて樹脂成分又は任意の他の成分と混合することが好ましい。得られた混合物を真空脱泡等で泡抜きしてもよい。
硬化性樹脂組成物の粘度は樹脂のハンドリング性の点から25℃で30,000Pa・s以下であることが好ましく、成形性の点から0.01Pa・s以上、さらに1Pa・s以上であることが好ましい。粘度は1〜1,000Pa・sであることがより好ましい。上記粘度は回転E型粘度計により測定される値である。
<硬化物>
本実施形態の別の態様は、上述した本実施形態の硬化性樹脂組成物の硬化物である、種々の物品を提供する。本実施形態の硬化性樹脂組成物の硬化物は、光半導体用の封止材、ダイアタッチ材、及びレンズとして好ましく利用でき、特に好ましくは光半導体用の封止材として利用できる。
硬化物は、本実施形態において開示される硬化性樹脂組成物を加熱、露光、又は露光した後加熱することにより得られる。
これらの硬化物を製造する際の硬化温度は種々設定できるが、30℃〜300℃が好ましく、硬化速度と成形加工性との点から70℃〜200℃がさらに好ましい。
硬化は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階的又は連続的に温度を変化させてもよい。硬化を一定の温度で行うよりも、多段階的又は連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、歪の少ない均一な硬化物が得られやすくクラックが発生しにくいという点において好ましい。
硬化時の、炭化水素基による架橋構造の形成方法については特に制限はなく、縮合反応、付加反応等が例示できる。Si−(CH2)2−Si構造は、硬化物の耐熱性の点において特に好ましい。この構造は、例えば、ケイ素原子に直接結合するエテニル基と、ケイ素原子に直接結合する水素原子とを例えば白金触媒によってヒドロシリル化反応させることで得ることが可能である。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の例にて合成した、不飽和結合性の官能基を持つ有機シロキサン化合物(A)、ケイ素原子に直接結合した水素原子を持つ有機シロキサン化合物(B)、及び複合金属酸化物(C)について、以下の(1)〜(3)に従って測定を行った。
(1)複合金属酸化物の粒子径の測定
粒子分散液を微細試料捕獲用の膜(コロジオン膜)上に滴下、乾燥後、日本電子製2000−FX透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた観察を行い、50個の粒子の一次粒子径の数平均を算出した。
(2)複合金属酸化物の粒子の同定
粒子分散液を一部乾燥させてリガク製X線回折装置RU−200Xを用いて粉末X線回折を行い、文献記載の回折パターンと比較することにより結晶構造の確認を行った。
(3)粘度測定
東機産業製RE80型粘度計を用いて、調製した硬化性樹脂組成物についての粘度測定を行った。1,000Pa・s以下の粘度を有する組成物を○、1,000Pa・sより粘度が高い組成物を×として評価した。
[実施例1]
窒素雰囲気下に置換した容量 1Lのセパラブルフラスコに、2−メトキシエタノール288mL、金属バリウム6.56g、テトラエトキシチタン10.05mLを入れた。撹拌しながら70℃で2時間加熱し、金属バリウムとテトラエトキシチタンとを完全に溶解させた。2時間後、水43.2mLを2−メトキシエタノールで溶解した液を、全液量が600mLになるように加えた。オイルバスを用いて70℃で3時間撹拌してチタン酸バリウムの分散溶液を得た。TEMにより平均6nmのナノ粒子が得られ、XRD回折ピークがチタン酸バリウムに一致することを確認した。
別に200mLナスフラスコに、メチルトリメトキシシラン8.7g、エトキシトリメチルシラン2.5g、2−プロパノール20gを仕込み、混合した。別途容器に蒸留水7.7g、1等量希塩酸3.6μLを取り、混合した後、10分かけて滴下した。滴下終了後、還流冷却管を取り付け、オイルバスを用いて窒素気流下で、110℃で1.5時間還流し、ポリオルガノシロキサン溶液を得た。
得られたオルガノシロキサン溶液をチタン酸バリウム分散液に室温で20分かけて混合した後、窒素下70℃で2時間加熱後、エバポレータを用いて溶剤を除去した。チタン酸バリウム含有シロキサン樹脂をプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(以後、PGMEAと表す)45gに再溶解した後、ピリジン5.7gを加え、ジメチルビニルクロロシラン8.7gを加え1時間室温で撹拌した。得られた混合液をイオン交換水で3回洗浄した後、70℃で1時間減圧乾燥することで、複合金属酸化物(C)が、不飽和結合性の官能基を持つ有機シロキサン化合物(A)中に分散された、混合物(AC−1)を得た。
同様にして、チタン酸バリウム含有シロキサン樹脂にジメチルビニルクロロシランの代わりにジメチルクロロシラン6.7gを加え、同様の処理を行うことで、複合金属酸化物(C)が、ケイ素原子に直接結合した水素原子を持つ有機シロキサン化合物(B)中に分散された、混合物(BC−1)を得た。AC−1とBC−1とを等量混合することにより硬化性樹脂組成物を得た。
[実施例2(参考例)]
200mLナスフラスコに、メチルトリメトキシシラン8.7g、エトキシトリメチルシラン2.5g、2−プロパノール20gを仕込み、混合した。別途容器に蒸留水7.7g、1等量希塩酸3.6μLを取り、混合した後、10分かけて滴下した。滴下終了後、還流冷却管を取り付け、オイルバスを用いて窒素気流下で、110℃で1.5時間還流し、ポリオルガノシロキサン溶液を得た。このシロキサン樹脂をPGMEA 45gに再溶解した後、ピリジン5.7gを加え、ジメチルビニルクロロシラン8.7gを加え1時間室温で撹拌した。得られた混合液をイオン交換水で3回洗浄した後、70℃で1時間減圧乾燥することで、不飽和結合性の官能基を持つ有機シロキサン化合物(A−2)を得た。
同様にして、このシロキサン樹脂にジメチルビニルクロロシランの代わりにジメチルクロロシラン6.7gを加え、同様の処理を行うことで、ケイ素原子に直接結合した水素原子を持つ有機シロキサン化合物(B−2)を得た。
窒素雰囲気下に置換した容量 1Lのセパラブルフラスコに、エタノール288mL、金属バリウム6.56g、テトラエトキシチタン10.05mLを入れた。撹拌しながら70℃で2時間加熱し、金属バリウムとテトラエトキシチタンを完全に溶解させた。2時間後、水43.2mLをエタノールで溶解した液を、全液量が600mLになるように加えた。オイルバスを用いて70℃で3時間撹拌して、チタン酸バリウム(複合金属酸化物(C)である)溶液を得た。TEMにより平均6nmのナノ粒子が得られ、XRD回折ピークがチタン酸バリウムに一致することを確認した。これにビニルトリメトキシシラン2.7g,及びA−2,B−2をそれぞれ3gずつ混合し、ビーズミルを用いてチタン酸バリウムを分散させた。ビーズミルの動作条件は、撹拌粒子として粒子径0.03mmの球形のジルコニア粒子を使用し、撹拌粒子の投入量は0.13kg(約0.035L)とした。またローターの周速は8m/sとした。その後、溶剤を70℃で減圧除去して硬化性樹脂組成物を得た。
[実施例3(参考例)]
チタン酸バリウムの合成時に蒸留水を130mLにしたこと以外は実施例2の方法に準じ、硬化性樹脂組成物を得た。TEMにより、平均粒子径20nmのナノ粒子が得られたことを確認し、XRD回折ピークにより、この粒子の回折ピークがチタン酸バリウムに一致することを確認した。
[実施例4]
実施例1において得られた混合物(AC−1)100質量部に対して、光重合開始剤として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・ジャパン株式会社製、IRGACURE369)0.5質量部を混合し、硬化性樹脂組成物を得た。
[比較例1]
メチルトリメトキシシラン25.4g、エトキシトリメチルシラン56.2g、2−プロパノール188gを仕込み、混合した。別途容器に蒸留水215g、3.7%濃塩酸0.075gを取り、混合した後、10分かけて滴下した。滴下終了後、還流冷却管を取り付け、オイルバスを用いて窒素気流下で、110℃で1.5時間還流し、ポリオルガノシロキサン溶液を得た。
別に水分散型ナノシリカ分散液PL−2L(扶桑化学工業製、固形分濃度20.0質量%、平均一次粒子径16nm)186g、2−プロパノール188gを投入し、混合した。次いで、室温まで冷却した前記のポリオルガノシロキサン溶液を、10分かけて滴下し、室温で10分攪拌した。攪拌後、還流冷却管を取り付け、窒素気流下で100℃3時間還流させた。
還流後、室温まで冷却し、PGMEA324gを投入し、エバポレータを用いて溶媒を除去し、多量のシラノール基を含有するシリカナノ粒子反応生成物を伴うオルガノポリシロキサンを得た。
このポリマーに、PGMEA324g、ピリジン102gを加え混合した後、クロロジメチルビニルシラン101gを滴下し、室温で1時間反応させた。得られた反応液にシクロヘキサン400gを加え、イオン交換水で生成したピリジン塩酸塩を取り除く操作を3回繰り返し、70℃、減圧下で溶媒を除去し、さらに140℃、減圧下で1時間ポリマーを乾燥させ、不飽和結合基をもつナノ粒子反応生成物を伴うオルガノポリシロキサンを得た。
また、同様に合成したポリマーにPGMEA324g、ピリジン102gを加え混合した後、クロロジメチルシラン79.4gを滴下し、室温で1時間反応させた。得られた反応液にシクロヘキサン400gを加え、イオン交換水で生成したピリジン塩酸塩を取り除く操作を3回繰り返し、70℃、減圧下で溶媒を除去し、さらに140℃、減圧下で1時間ポリマーを乾燥させ、水素原子に直接結合した水素原子を持つナノ粒子反応生成物を伴うオルガノポリシロキサンを得た。
不飽和結合基をもつナノ粒子反応生成物を伴うオルガノポリシロキサンと、水素原子に直接結合した水素原子を持つナノ粒子反応生成物を伴うオルガノポリシロキサンとを等量混ぜ合わせることで、硬化性樹脂組成物を得た。
[比較例2]
実施例2の、不飽和結合を有する有機シロキサン化合物をトリアリルイソシアヌレートに変えた以外は、実施例2に準じ、硬化性樹脂組成物を得た。
更に、実施例1〜3並びに比較例1及び2で得た硬化性樹脂組成物に、ヒドロシリル化触媒(D)としてのジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体(Gelest社製、Pt錯体で2.1質量%のキシレン溶液)(白金触媒)を白金重量で1.5ppmになるように均一に混合した後、真空脱泡し、ヒドロシリル化触媒(D)を更に含有する硬化性樹脂組成物(以下、実施例4の硬化性樹脂組成物と併せて、触媒含有組成物ともいう)を得た。
各実施例、比較例で得られた触媒含有組成物について、以下の(4)、(5)及び(6)に従って測定を行った。
(4)硬化膜の屈折率測定
無アルカリガラスの基板上に各々の触媒含有組成物を塗布し、150℃で2時間加熱することで、膜厚130μmの硬化膜を作製した。実施例4の触媒含有組成物については、波長365nmの光源を用いて露光した後、150℃で10分加熱することにより硬化膜を作製した。この硬化膜をカッターの刃先を用いて無アルカリガラスの基板から剥がし、多波長アッベ屈折計(アタゴ製DR−M2)を用いて589nmの波長における屈折率を測定した。測定は、作製した硬化膜をプリズムと採光ガラスとに挟んで行った。その際、硬化膜とプリズムとの界面、及び硬化膜と採光ガラスとの界面に、中間液としてモノブロモナフタレンを滴下した。屈折率が1.55以上のものを○、1.55未満のものを×と評価した。
(5)硬化物の透明性(透過率)
50mm×50mm×1mmの型に、調製した各々の触媒含有組成物を満たし、オーブンを用いて80℃×30分、100℃×30分、150℃×1時間で加熱硬化させた。実施例4の触媒含有組成物については、波長365nmの光源を用いて露光した後、150℃で10分加熱することにより硬化させた。加熱硬化後の硬化物について、分光光度計(U−4100、日立ハイテク製)を用いて波長が400nmの光の透過率を測定した。透過率が、80%以上のものを○、70%以上80%未満のものを△、70%未満のものを×と評価した。
(6)硬化物の耐候性(透過率)
50mm×50mm×1mmの型に、調製した各々の触媒含有組成物を満たし、オーブンを用いて80℃×30分、100℃×30分、150℃×1時間で加熱硬化させた。実施例4の触媒含有組成物については、波長365nmの光源を用いて露光した後、150℃で10分加熱することにより硬化させた。加熱硬化後の硬化物を、200℃のオーブン内に空気中で10日間放置し、さらに7Wの365nmの光源への144時間暴露試験を行った。試験後の硬化物について、波長が400nmの光の透過率を測定した。透過率が、85%以上のものを○、55%以上85%未満のものを△、55%未満のものを×と評価した。