JP6020395B2 - クロマトグラフ質量分析を用いた薬物分析方法 - Google Patents
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Description
a)クロマトグラフ質量分析装置により、同定対象の化合物を含む試料に対し、
a1)イオン化の際の開裂によって生じるナフトイルをプリカーサイオン、該ナフトイルからカルボニル基が脱離したナフタレンをプロダクトイオンとし、ナフタレン環に結合している第3官能基の質量の相違に応じた複数のMRMトランジションを測定条件とした第1のMRM測定、又は、前記第3官能基の質量の相違に応じたナフトイルをプリカーサイオンとした第1のプロダクトイオンスキャン測定、
a2)イオン化の際の開裂によって生じるインドールカルボニルをプリカーサイオン、該インドールカルボニルからカルボニル基が脱離したインドールをプロダクトイオンとし、インドール環に結合している第2官能基の質量の相違に応じた複数のMRMトランジションを測定条件とした第2のMRM測定、又は、前記第2官能基の質量の相違に応じたインドルカルボニルをプリカーサイオンとした第2のプロダクトイオンスキャン測定、及び、
a3)インドール環の窒素に結合している第1官能基が脱離する一方、前記第2官能基が付加している状態のインドールカルボニルをプロダクトイオンとしたプリカーサイオンスキャン測定、
という3種類のMS/MS測定を繰り返し実行する測定実行ステップと、
b)第1のMRM測定又は第1のプロダクトイオンスキャン測定、第2のMRM測定又は第2のプロダクトイオンスキャン測定、及びプリカーサイオンスキャン測定によりそれぞれ得られたデータに基づいて作成される、その3種類の測定にそれぞれ対応したクロマトグラム上の同一保持時間にピークが共通に存在するか否かを判定することにより、前記基本骨格を有する特定化合物の存在を判断する化合物存在確認ステップと、
c)前記第1のMRM測定又は第1のプロダクトイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて第3官能基の種類を、前記第2のMRM測定又は第2のプロダクトイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて第2官能基の種類を、前記プリカーサイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて第1官能基の種類を、それぞれ推定し、それら推定結果に基づいて、前記化合物存在確認ステップにおいて存在が確認された特定化合物の化学構造を推定する構造推定ステップと、
を有することを特徴としている。
上記測定実行ステップでは、試料由来のイオンを意図的に開裂させない通常のスキャン測定を前記3種類のMS/MS測定と併せて繰り返し実行し、
上記通常のスキャン測定により得られたデータに基づいて作成されるマススペクトルを薬物データベースと照合することにより、既知の化合物を同定するデータベース利用同定ステップをさらに有し、
上記構造推定ステップでは、上記薬物データベースに収録されていない未知の化合物についての構造推定を実施するとよい。
試料気化室10内に少量の試料液が滴下されると、試料液は短時間で気化し、該試料中の化合物はヘリウム等のキャリアガスに乗ってカラム12中に送り込まれる。カラム12を通過する間に、試料中の各化合物はそれぞれ異なる時間だけ遅れてカラム12出口に達する。カラムオーブン11は予め決められた温度プロファイルに従って加熱される。イオン源21は、カラム12出口から供給されるガス中の化合物を順次イオン化する。なお、イオン源21はEIイオン源であるため、イオン化の際に化合物の結合の一部が切断され(つまりは開裂が生じ)、1つの化合物由来の様々な断片のイオンが生成される。
図3は同定対象であるナフトイルインドール系薬物の化学構造である。図示するように、この化合物は、(1H−インドール−3−イル)(ナフタレン−1−イル)メタノンを基本骨格として有する。インドール環の1位には官能基R1(第1官能基)が結合し、インドール環の2位には官能基R2(第2官能基)が結合し、さらにナフタレン環の4位には官能基R3(第3官能基)が結合している。非特許文献1に記載の省令では、指定薬物に包含される化合物における官能基R1、R3の種類が示され、また官能基R2が水素ではなくメチル基に置換された化合物も指定薬物に含まれている。
そのため、このナフトイルインドール系薬物を包括的に同定するには、次の2つが必要である。
[A](1H−インドール−3−イル)(ナフタレン−1−イル)メタノンを基本骨格として有することの確認。
[B]3種類の官能基R1、R2、R3が上記省令で指定されているものに相当するか否かの判断。
図4、図5(a)に示すように、イオン化の際に生成されるナフトイルは3種類の官能基のうち官能基R3のみを含み、また、図5(b)に示すように、ナフトイルをターゲットとした衝突誘起解離を行うと、官能基R3は残ったままカルボニル基が脱離したナフタレンが観測される。この場合、ナフトイルとナフタレンはいずれも官能基R3を含み、その官能基R3の種類によってナフトイル、ナフタレンともに質量電荷比が相違する。そこで、ナフトイルをプリカーサイオン、ナフタレンをプロダクトイオンとし、ナフタレンに付加している13種類の官能基R3の質量にそれぞれ対応するようにMRMトランジションを設定したMRM測定を第1のMS/MS測定とした。
3種類の官能基のうち官能基R1がイオン化の際に脱離し、官能基R2のみを含むインドールカルボニルをターゲットとした衝突誘起解離を行うと、図7に示すように、官能基R2は残ったままカルボニル基が脱離したインドールが観測される。この場合、インドールカルボニルとカルボニル基が脱離したインドールはいずれも官能基R2を含み、その官能基R2の種類によってインドールカルボニル、インドールともに質量電荷比が相違する。そこで、官能基R1が脱離したインドールカルボニルをプリカーサイオン、官能基R1が脱離したインドールをプロダクトイオンとし、インドール環の2位に付加している2種類の官能基R2の質量にそれぞれ対応するようにMRMトランジションを設定したMRM測定を第2のMS/MS測定とした。
上述したようにインドール環の窒素を修飾している官能基R1はイオン化の際に比較的脱離し易いものの、マススペクトル上には、官能基R1が脱離しない(つまり付加したままの)インドールカルボニルも観測される。このインドールカルボニルを衝突誘起解離により開裂させると、官能基R1が脱離する(図9参照)。そのため、その衝突誘起解離前のプリカーサイオンの質量電荷比と衝突誘起解離後のプロダクトイオンの質量電荷比との差は官能基R1に対応する。このとき、インドールカルボニルは官能基R2も含むが、官能基R2は2種類(水素又はメチル基)のみが分かりさえすればよいので、官能基R1が脱離したインドールカルボニルの質量電荷比は官能基R2の種類に応じてたかだか2種類である。そこで、R1官能基が脱離したインドールカルボニルにおいて官能基R2の位置に水素又はメチル基のいずれかが付加した2種類の質量電荷比をそれぞれプロダクトイオンに設定したプリカーサイオンスキャン測定を第3のMS/MS測定とした。
測定に使用した装置は以下のとおりである。
GC-MS/MS :島津製作所製 GCMS-TQ8030
カラム:レステック(Restek)社製 Rxi-5Sil MS(長さ30m、内径0.25mm、df=0.25μm)
官能基R1、R2、R3の組み合わせが異なる20種類の(1H−インドール−3−イル)(ナフタレン−1−イル)メタノンを基本骨格として有する違法薬物である化合物の標準試料を測定した。その化合物の種類と官能基R1、R2、R3は図12に示すとおりである。
例えば上記実施例では、試料中の化合物を分離するためにガスクロマトグラフを用いたが、液体クロマトグラフを用いてもよい。ただし、液体クロマトグラフのカラムから溶出する試料液中の化合物をイオン化するためには一般的に大気圧イオン化法が用いられ、大気圧イオン化法ではイオン化の段階でイオンが開裂しにくい。そこで、電子イオン化法による開裂と同様のフラグメントイオンが得られるようにインソース分解の機能を有するイオン源を用いるとよい。
10…試料気化室
11…カラムオーブン
12…カラム
2…MS/MS部
20…分析室
21…イオン源
22…前段四重極マスフィルタ
23…コリジョンセル
24…多重極型イオンガイド
25…後段四重極マスフィルタ
26…検出器
30…データ処理部
31…包括的薬物同定用データ処理部
32…薬物データベース
33…分析制御部
34…中央制御部
35…包括的薬物同定用制御プログラム
36…入力部
37…表示部
Claims (2)
- MS/MS測定が可能であるクロマトグラフ質量分析装置を用い(1H−インドール−3−イル)(ナフタレン−1−イル)メタノンを基本骨格とする特定の化合物を包括的に同定する薬物分析方法であって、
a)クロマトグラフ質量分析装置により、同定対象の化合物を含む試料に対し、
a1)イオン化の際の開裂によって生じるナフトイルをプリカーサイオン、該ナフトイルからカルボニル基が脱離したナフタレンをプロダクトイオンとし、ナフタレン環に結合している第3官能基の質量の相違に応じた複数のMRMトランジションを測定条件とした第1のMRM測定、又は、前記第3官能基の質量の相違に応じたナフトイルをプリカーサイオンとした第1のプロダクトイオンスキャン測定、
a2)イオン化の際の開裂によって生じるインドールカルボニルをプリカーサイオン、該インドールカルボニルからカルボニル基が脱離したインドールをプロダクトイオンとし、インドール環に結合している第2官能基の質量の相違に応じた複数のMRMトランジションを測定条件とした第2のMRM測定、又は、前記第2官能基の質量の相違に応じたインドルカルボニルをプリカーサイオンとした第2のプロダクトイオンスキャン測定、及び、
a3)インドール環の窒素に結合している第1官能基が脱離する一方、前記第2官能基が付加している状態のインドールカルボニルをプロダクトイオンとしたプリカーサイオンスキャン測定、
という3種類のMS/MS測定を繰り返し実行する測定実行ステップと、
b)第1のMRM測定又は第1のプロダクトイオンスキャン測定、第2のMRM測定又は第2のプロダクトイオンスキャン測定、及びプリカーサイオンスキャン測定によりそれぞれ得られたデータに基づいて作成される、その3種類の測定にそれぞれ対応したクロマトグラム上の同一保持時間にピークが共通に存在するか否かを判定することにより、前記基本骨格を有する特定化合物の存在を判断する化合物存在確認ステップと、
c)前記第1のMRM測定又は第1のプロダクトイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて第3官能基の種類を、前記第2のMRM測定又は第2のプロダクトイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて第2官能基の種類を、前記プリカーサイオンスキャン測定により得られたデータに基づいて第1官能基の種類を、それぞれ推定し、それら推定結果に基づいて、前記化合物存在確認ステップにおいて存在が確認された特定化合物の化学構造を推定する構造推定ステップと、
を有することを特徴とする、クロマトグラフ質量分析を用いた薬物分析方法。 - 請求項1に記載の薬物分析方法であって、
前記測定実行ステップでは、試料由来のイオンを意図的に開裂させない通常のスキャン測定を前記3種類のMS/MS測定と併せて繰り返し実行し、
前記通常のスキャン測定により得られたデータに基づいて作成されるマススペクトルを薬物データベースと照合することにより、既知の化合物を同定するデータベース利用同定ステップをさらに有し、
前記構造推定ステップでは、前記薬物データベースに収録されていない未知の化合物についての構造推定を実施することを特徴とする、クロマトグラフ質量分析を用いた薬物分析方法。
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JP2013186699A JP6020395B2 (ja) | 2013-09-09 | 2013-09-09 | クロマトグラフ質量分析を用いた薬物分析方法 |
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