以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
[1.検体情報処理装置の構成例]
本発明の実施形態に係る検体情報処理装置1は、図1、図2に示すように、検体情報検出装置2と、信号処理部3を備えて構成されている。
検体情報検出装置2は、図1、図2に示すように、筐体部10と、内部センサ11と、外部センサ12とを備えて構成されている。
信号処理部3は、図1に示すように、漏れ補正処理部21と、減算処理部31と、波形等化処理部41と、周波数補正処理部51と、抽出処理部61とを備えて構成されている。
以下、本実施形態に係る検体情報検出装置2、信号処理部3、及び検体情報処理装置1の構成、並びに各部を構成する要素について詳細に説明する。
なお、図1は、本実施形態に係る検体情報処理装置1の構成を模式的に表わしたものである。図2は、図1に示した検体情報検出装置2の構成を説明するための図であり、検体情報検出装置2と外耳94との関係を模式的に表わしたものである。
<検体情報検出装置の構成>
検体情報検出装置2は、一例として、図1、図2に示すように、検体90の外耳道91における外部開口部92を塞ぐ筐体部10をそなえ、筐体部10に血管の脈動性信号を検出する内部センサ11が設けられている。さらに、検体情報検出装置2は、外耳道91の外部の音を集音する外部センサ12を備えている。
なお、図2は、検体情報検出装置2と外耳94との関係の一例を模式的に示す図である。図2では検体90である人の耳の構造を示しており、蝸牛と三半規管とを有し前庭神経及び蝸牛神経に接続する内耳、耳小骨と耳菅とを有し鼓膜93から奥の部分である中耳、外耳道91と耳介95を有する外耳94が図示されている。
(筐体部)
筐体部10は、図2に示すように、検体90の外耳道91における外部開口部92を塞いで外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成可能に検体90の外耳94に装着することのできるものである。筐体部10には、図2に示すように、内部センサ11、外部センサ12が設けられている。
筐体部10は、外耳道91における外部に開かれた部分の付近である外部開口部92を塞ぐことのできる外形であれば、形状、サイズ、材質ともに限定はされないが、外部開口部92を塞いで外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成可能に検体90の外耳94に装着するために、筐体部10は、図2に示すように、円筒状、ドーム形状、砲弾形状又は釣鐘形状の外形を少なくとも一部に有することが好ましい。この外形を有することにより、筐体部10は、円筒状、ドーム形状、砲弾形状又は釣鐘形状の突端部側を外耳道91の奥に向け挿入することで、円筒状、ドーム形状、砲弾形状又は釣鐘形状の形状に合わせて外部開口部92を好適に塞ぐことができる。
また、筐体部10は、円筒状、ドーム形状、砲弾形状又は釣鐘形状の突端部側を外耳道91に挿入した際に外部開口部92を塞ぐ程度の大きさを有することが好ましく、筐体部10の周方向の直径が、外耳道91の外部開口部92の内径と略同一か大きいサイズであることが好ましい。この形状により、筐体部10は、外部開口部92を好適に塞ぐことができる。
また、筐体部10は、少なくとも一部が弾性素材で構成されていることが好ましく、例えばゴムやシリコンゴムが用いられる。筐体部10が外耳道91の外部開口部92の内部形状に合わせて弾性変形するとともに、外部開口部92を塞ぐように構成されていることが好ましい。この材質により、筐体部10は外耳道91の形状に合わせて外部開口部92を塞ぐことができる。
より具体的には、筐体部10は、図2に示すように、内部センサ11及び外部センサ12を納めるハウジング13と、外耳道91に向けて挿入されるシリコンゴム製のイヤーピース14により構成されている。
ハウジング13は内部に内部センサ11及び外部センサ12を納める空間を有し、内部センサ11のセンシング用の第一開口部15と、外部センサ12のセンシング用の第二開口部16とが設けられている。ハウジング13の内部の空間内には、内部センサ11がその圧力情報を検出しうるセンシング部分を第一開口部15に向けて取り付けられており、また、外部センサ12がその圧力情報を検出しうるセンシング部分を第二開口部16に向けて取り付けられている。
イヤーピース14は、図2に示すように、砲弾形状又は釣鐘形状の形状を有し、砲弾形状又は釣鐘形状の突端部の頂部17の中心からイヤーピース14の内部に向けて凹状に円筒形状の空間を有する凹状部18が形成されており、さらに凹状部18の端部が開口して貫通孔19が形成されている。イヤーピース14の貫通孔19は、ハウジング13の第一開口部15に連結して取り付けられており、内部センサ11がイヤーピース14の貫通孔19を塞ぐようになっている。
この構成により、筐体部10のイヤーピース14が外耳道91に挿入されて、筐体部10が外耳道91における外部開口部92を塞いだ際に、外耳道91をほぼ閉鎖された空間構造となる空洞として形成するように構成されている。この状態で、内部センサ11が貫通孔19を通じて血管の脈動性信号を検出することができる。
このような構成を有するイヤーピース14として、例えばカナル型インナーイヤホンのイヤーピースを用いることができる。
(空洞)
図2に示すように、筐体部10により検体90の外耳道91における外部開口部92が塞がれることで、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部10とによって、外耳道91が閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となるよう空洞96が形成される。このように空洞96が形成する閉鎖された空間構造を、「Closed Cavity;クローズドキャビティ」ともいう。なお、筐体部10の貫通孔19と連結する第一開口部15に内部センサ11が設けられた場合、外部開口部92が筐体部10及び内部センサ11によって塞がれることで、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部10と、内部センサ11とによって空洞96が形成されるようになっている。
筐体部10により外部開口部92を塞ぐことで外耳道91が閉鎖された空間構造となるようにすることができるが、実際には、例えば外耳道91内に存在する体毛により筐体部10のイヤーピース14と外耳道91との間に空隙が生じて完全には閉鎖できない場合がある。このため、筐体部10により外部開口部92を塞ぐことで、外耳道91が完全に閉じられた空間構造となる空洞として形成されている場合を、外耳道91が閉鎖された空間構造をとるという。一方、筐体部10により外部開口部92を塞いだ際に、例えば上述したような体毛等の影響により、外部開口部92が塞がれているものの外耳道91が完全に閉じられた空間構造とはならない空洞として形成されている場合を、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造という。
(内部センサ)
内部センサ11は、図1、図2に示すように、筐体部10のハウジング13にセンシング部分を外耳道91の内部に向けて設けられ、外耳道91における血管の脈波情報に基づく脈動性信号を、脈動性信号に起因する空洞96内を伝播する圧力情報として検出するとともに、外耳道91の外部からの音に基づく外来信号を他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性を持つ信号として検出するものである。内部センサ11により検出された信号は、信号処理部3の減算処理部31に出力される。
図2に示すように、内部センサ11は、筐体部10の貫通孔19を塞ぐようにして設けられていることが好ましく、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部10と、内部センサ11とによって、外耳道91が閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となるよう構成されることが好ましい。また、内部センサ11には、図示しないGND線及び信号線が接続されており、この信号線を通じて信号処理部3に信号が出力される。
外耳道91における血管の振動が、空洞96内を伝播して、貫通孔19を通じて内部センサ11に伝わることにより、内部センサ11は、外耳道91における血管の脈波情報に基づく脈動性信号を、脈動性信号に起因する空洞96内を伝播する圧力情報として検出する。また、外耳道91の外部からの音が、筐体部10のイヤーピース14と外耳道91の外部開口部92との間に生じている空隙から外耳道91の内部に侵入し、空洞96内を伝播して、貫通孔19を通じて内部センサ11に伝わることにより、内部センサ11は、外部からの音に基づく外来信号を検出する。内部センサ11により得られる脈動性信号は、血管の脈動に起因する信号、呼吸の振動に起因する信号等が含まれるものである。また、内部センサ11により得られる信号は、脈動性信号と外来信号とを含んでなるものである。
内部センサ11は、検体情報検出装置2の筐体部10が検体90の外耳道91における外部開口部92を塞いで、外耳道91をほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成した状態で、脈動性信号及び外来信号の検出を行う。ここで、外耳道91が完全に閉じられないことにより、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることによる影響を受けて、内部センサ11により検出される信号は、脈波情報が検出される周波数帯域(以降、「脈波情報検出帯域」ともいう)において周波数特性の変化が生じる。
内部センサ11により検出される脈動性信号は、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることによる影響を受けて、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが低下している周波数特性を持つ信号として検出される。脈波情報検出帯域は、このゲインが低下している低周波数領域に含まれている。
一方、内部センサ11により検出される外来信号は、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることによる影響を受けて、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性を持つ信号として検出される。これは、外耳道91の外部からの音が、筐体部10のイヤーピース14と外耳道91の外部開口部92との間に生じている空隙から外耳道91の内部に侵入する際に、低周波数の周波数成分が空隙を通じて外耳道91の内部に侵入することで、内部センサ11により検出される外来信号は、脈波情報が検出される脈波情報検出帯域が含まれる低周波数領域が強調されるためであると考えられる。
内部センサ11としては、外耳道91における血管の脈動性信号を検出できるものであれば、特に限定されないが、外耳道91における血管の脈動に起因する外耳道91における皮膚または鼓膜部分の振動によって生じる空気の振動(音圧情報)を電気的に検出するマイクロホン、又は圧電素子のような感圧素子を好適に用いることができる。
なお、外耳道91における血管という場合、外耳道91または鼓膜93に存在する血管をいう。
マイクロホンの中でも、指向性、S/N比、感度の点からコンデンサマイクが好ましく、ECM(electret condenser microphone;エレクトレットコンデンサーマイクロホン、以下、単に「ECM」ともいう)を好適に用いることができる。また、MEMS(microelectromechanical system)技術を用いて作製したECMである、MEMS型ECM(以下、「MEMS−ECM」、「MEMSMIC」ともいう)を好適に用いることができる。圧電素子としては、高い圧電性を示すセラミックスとして、チタン酸ジルコン酸鉛(PZTともいう)を使用したPZT圧電素子を好適に用いることができる。中でも、MEMS−ECMは品質が安定しており、小型、軽量であることから内部センサ11に好適に用いられる。
また、内部センサ11として、ダイナミック型のスピーカー(ダイナミックスピーカー)を用いるようにしても良い。ダイナミックスピーカーは、振動版、コイル、磁石、ヨークを備えている。ダイナミックスピーカーがスピーカーとして機能する場合には、入力された電気信号が磁石及びコイルの作用により振動版を振動させて、入力された電気信号に応じて空洞内を伝播する圧力情報として空気振動を生じさせることで動作する。一方、ダイナミックスピーカー32をマイクロホンとして機能する場合には、入力された空気振動が振動版を振動させて、コイル及び磁石の作用で空気振動を気信号に変えることで動作する。
検体情報検出装置2は、内部センサ11としてダイナミックスピーカーが設けられている場合には、ダイナミックスピーカーをマイクロホンとスピーカーとで時分割に切り替えて使用することができる。
(外部センサ)
外部センサ12は、図2に示すように、筐体部10のハウジング13にセンシング部分を外耳道91の外側に向けて設けられ、オープンの(開放された)状態で外耳道91の外部の音を集音するものである。外部センサ12より集音された外部の音は、電気信号として信号処理部12の漏れ補正処理部21に出力される。
外部センサ12としては、上述した内部センサ11と同様のセンサを用いる事ができる。後述する漏れ補正処理及び減算処理を好適に行う観点から、外部センサ12は、内部センサ11と同じ種類のセンサを用いることが好ましく、同様の周波数特性を持つセンサを用いる事が好ましい。中でも、MEMS−ECMは品質が安定しており、小型、軽量であることから外部センサ12に好適に用いられる。
なお、外部センサ12は、外耳道91の外部の音を集音するものであるため、内部センサ11のように、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることによる影響を受けて、脈波情報検出帯域において周波数特性の変化が生じない。すなわち、外部センサ12により得られる信号は、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることによる、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性を持つ信号としては検出されない。
<信号処理部の構成>
信号処理部3は、脈動性信号検出ユニット1の内部センサ11及び外部センサ12からの信号出力について信号処理を施すものである。本実施形態に係る信号処理部3は、図1に示すように、漏れ補正処理部21と、減算処理部31と、波形等化処理部41と、周波数補正処理部51と、抽出処理部61と備えて構成されている。
信号処理部3は、少なくとも漏れ補正処理部21と、減算処理部31と、波形等化処理部41とを備えていれば良く、周波数補正処理部51、抽出処理部61は必ずしも備えていなくともよい。
(漏れ補正処理部)
漏れ補正処理部21は、外部センサ12からの信号に対して、内部センサ11により検出される外来信号の周波数特性に相当する特性を持たせるように、低周波数領域のゲインを増幅させる漏れ補正処理を施すものである。このような漏れ補正処理はハードウェア回路やソフトウェア、あるいはハードウェアとソフトウェアとを組み合わせたものによって実現できる。漏れ補正処理部21は、漏れ補正処理を施した信号を減算処理部31に出力する。
内部センサ11により検出される外来信号は、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることによる影響を受けて、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性を持つ信号として検出されるのに対して、外部センサ12により得られる信号は、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることによる、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性を持つ信号としては検出されない。漏れ補正処理部21は、このような内部センサ11により検出される周波数特性に相当する特性を持たせるように、減算処理前に、外部センサ12により得られる信号の低周波数領域のゲインを上昇させるものである。
(減算処理部)
減算処理部31は、漏れ補正処理部21により漏れ補正処理を受けた信号と内部センサ11からの信号に対して、内部センサ11からの信号から、漏れ補正処理部21により処理された信号を減算する減算処理を施すものである。このような減算処理はハードウェア回路やソフトウェア、あるいはハードウェアとソフトウェアとを組み合わせたものによって実現できる。減算処理部31は、減算処理を施した信号を、波形等化処理部41に出力するが、周波数補正処理部51に出力するようにしてもよい。
(波形等化処理部)
波形等化処理部41は、減算処理部31により減算処理を受けた信号に対して、内部センサ11により検出される信号の周波数特性における低周波領域のゲインの低下を補償するように、該低周波領域のゲインを増幅させる波形等化処理を施すものである。このような波形等化処理はハードウェア回路やソフトウェア、あるいはハードウェアとソフトウェアとを組み合わせたものによって実現できる。波形等化処理部41は、波形等化処理を施した信号を周波数補正処理部51に出力するが、抽出処理部61に出力するようにしてもよい。
内部センサ11により検出される脈動性信号は、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることによる影響を受けて、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが低下している周波数特性を持つ信号として検出される。波形等化処理部41は、このような内部センサ11により検出される脈動性信号の周波数特性における低周波領域のゲインの低下を補償するものである。
または、波形等化処理部41は、周波数補正処理部51によって周波数補正処理を受けた信号に対して波形等化処理を施すようにしてもよい。このとき、波形等化処理部41は、波形等化処理を施した信号を抽出処理部61に出力する。
(周波数補正処理部)
周波数補正処理部51は、波形等化処理部41により波形等化処理を受けた信号に対して、血管の脈波情報の有する周波数で少なくとも増幅動作、積分動作および微分動作のうちの1つの動作を行なうことにより、少なくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号および脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出す周波数補正処理を施すものである。このような周波数補正処理はハードウェア回路やソフトウェア、あるいはハードウェアとソフトウェアとを組み合わせたものによって実現できる。このとき、周波数補正処理部51は、周波数補正処理を施した信号を抽出処理部61に出力する。
または、周波数補正処理部51は、減算処理部31により減算処理を受けた信号に対して周波数補正処理を施すようにしてもよい。このとき、周波数補正処理部51は、周波数補正処理を施した信号を波形等化処理部41に出力する。
なお、周波数補正処理部51により脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの一つの信号を取り出す処理を、補正処理ともいう。
(抽出処理部)
抽出処理部61は、波形等化処理部41により処理された信号、または周波数補正処理部51により処理された信号に対して信号処理を施して、検体の脈波情報または呼吸情報を取り出すものである。このような処理はハードウェア回路やソフトウェア、あるいはハードウェアとソフトウェアとを組み合わせたものによって実現できる。検体の脈波情報または呼吸情報の取り出しは、例えば位相同期回路(Phase-locked loop、以下、「PLL」ともいう)を利用する周波数復調処理により脈動性信号に変調成分として含まれる呼吸信号を抽出することにより行われる。抽出処理部61により検体の脈波情報または呼吸情報を抽出する処理を、抽出処理ともいう。
(脈波情報と信号について)
本実施形態において、脈波情報とは、検体90の心臓の拍動に伴って生じる血管内を伝わってくる振動を示す信号である。脈波情報は、外耳道91から検出される血管の脈動性信号から、脈波情報以外に起因する信号を除かれたものであることが好ましい。脈波情報としては、例えば、容積脈波信号、速度脈波信号、加速度脈波信号等が挙げられる。
また、呼吸情報とは、検体90の呼吸に伴って生じる呼吸状態を示す信号である。
内部センサ11により検出される信号は、脈動性信号と外来信号とを含んでなるものである。外耳道91における血管の脈波情報に基づく脈動性信号は、脈動性信号に起因する空洞96内を伝播する圧力情報として内部センサ11により検出されるものであるが、この信号は、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることによる影響を受けて、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが低下している周波数特性を持つ信号として検出される信号であって、さらに、外部の音による影響を受けて外来信号(外来ノイズ)を含んだ信号となっているということもできる。
検体情報処理装置1の信号処理部3は、内部センサ11及び外部センサ12からの信号を処理することにより、内部センサ11により検出される、脈動性信号と外来信号が含まれる信号から、外部の音による影響を軽減した脈動性信号を得るとともに、この脈動性信号から低周波数領域におけるゲインの低下を補償した脈動性信号を得るものである。
<検体情報処理装置の構成>
本実施形態にかかる検体情報処理装置1は、一例として、図1に示すように、上述の検体情報検出装置2と、信号処理部3とを備えて構成されている。
信号処理部3は検体情報検出装置2と一体として構成されていてもよく、検体情報検出装置2と分離して無線又は有線により電気的に接続されて構成されていてもよい。
検体情報処理装置1は、外部のコンピュータ81、及び波形表示器82に有線又は無線の回線を介して接続されている。
コンピュータ81は、信号処理部3によって処理された信号が入力されて、信号の処理又は保存を行うものである。コンピュータ81は、周波数補正処理部51によって取り出された脈動性容積信号、脈動性速度信号又は脈動性加速度信号を利用して、各信号の波形から検体91の健康状態の診断を行うことが出来る。また、コンピュータ81は、抽出処理部61によって抽出された呼吸信号を利用して、検体90の呼吸状態の検査や、検体90の睡眠又は覚醒状態の判断を行うことも出来る。
波形表示器82は、信号処理部3から出力された信号が入力されて、信号波形の表示を行うものである。信号処理部3の周波数補正処理部51から脈動性容積信号、脈動性速度信号、又は脈動性加速度信号が波形表示器82に出力されることで、波形表示器82は脈動性容積信号、脈動性速度信号、又は脈動性加速度信号の波形を表示する。信号処理部3の抽出処理部61から呼吸信号が波形表示器82に出力されることで、波形表示器82は呼吸信号の波形を表示する。また、センサ31からの脈動性信号について、信号処理部3の周波数補正処理部51によって増幅動作を行った脈動性信号の波形を表示する。波形表示器82としては、例えば、液晶ディスプレイ、CRT、プリンタ、又はペンレコーダを用いることができる。
<検体情報処理装置について>
本実施形態に係る検体情報処理装置1は、上述のように構成されており、検体情報検出装置2を検体90の外耳94に装着することで、筐体部10が検体90の外耳道91における外部開口部92を塞いだ際に、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部11のイヤーピース39と、内部センサ11とがほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96を形成する。検体情報検出装置2を装着した状態で、内部センサ11が外耳道91における血管の脈波情報に基づく脈動性信号を、脈動性信号に起因する空洞96内を伝播する圧力情報であって、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが低下している周波数特性を持つ信号として検出するとともに、外耳道91の外部からの音に基づく外来信号を、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性を持つ信号として検出し、外部センサ21が、外耳道の外部の音を収音する。
さらに検体情報処理装置1は、漏れ補正処理部21による漏れ補正処理、減算処理部31による減算処理を行うことにより、内部センサ11及び外部センサ12により検出された信号から外部の音の影響を軽減した脈動性信号を得ることができる。
また、検体情報処理装置1は、波形等化処理部41による波形等化処理を行うことにより、低周波領域のゲインの低下を補償した脈動性信号を得ることができる。
また、検体情報処理装置1は、周波数補正処理部51による周波数補正処理を行うことにより、脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの一つの信号を得ることができる。
また、検体情報処理装置1は、抽出処理部61による抽出処理を行うことにより、検体90の脈波情報または呼吸情報を取り出すことができる。
[2.信号処理]
[2−1.信号処理の概要]
検体情報処理装置1は、検体情報検出装置2の内部センサ11及び外部センサ12からの信号を、信号処理部3により処理を行う。以下に、信号処理部3において行う信号処理について説明する。
ここでは、内部センサ11及び外部センサ12により得られる信号の周波数特性と信号処理との関係について概要を説明して、次に各信号処理の詳細を説明する。
検体情報検出装置2は、筐体部10が、検体90の外耳道91における外部開口部92を塞いで、外耳道91をほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成した状態で、内部センサ11が血管の脈波情報に基づく脈動性信号の検出を行う。このとき、検出される信号は、外耳道91がほぼ閉鎖されたクローズドキャビティを形成するようにした状態で内部センサ11によって検出されることによる影響を受ける。すなわち、内部センサ11は、外耳道91における血管の脈波情報に基づく脈動性信号を、脈動性信号に起因する空洞96内を伝播する圧力情報であって、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが低下している周波数特性を持つ信号として検出する。また、内部センサ11は、外耳道91の外部からの音に基づく外来信号を他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性を持つ信号として検出する。
このような内部センサ11により検出される信号について、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることによる影響を受ける周波数特性を説明するために、まず、クローズドキャビティの形成と周波数応答について説明する。
また、内部センサ11及び外部センサ12(以降、これらをあわせて単に「センサ」ともいう)により検出される信号は、センサの構造に起因して、センサそのものが有する周波数特性によっても影響を受ける。このようなセンサの周波数特性によって影響を受けた信号について説明するととともに、周波数補正処理部51による周波数補正処理について説明する。
さらに、外耳道91の閉鎖レベルと、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることによる影響を受ける周波数特性について説明するとともに、このような周波数特性を補償するために行う、波形等化処理部41による波形等化処理について説明する。また、波形等化処理に関連して、最適ブースト量の決定についても説明する。
さらに、検体情報検出装置2の内部センサ11により検出される信号は、外耳道の外部の音によっても影響を受けて外来ノイズを含んだ信号となっている。このため、検体情報処理装置1は、外部の音の影響を低減することを目的として、内部センサからの信号から、外部センサからの信号を減算する処理を行う。ここで、内部センサ11は外耳道91がほぼ閉鎖されたクローズドキャビティを形成するようにした状態で外耳道91の外部からの音に基づく外来信号を検出するのに対して、外部センサ12はオープンの状態で外部の音を収音するため、内部センサ11と外部センサ12とで検出される外来信号の周波数特性が異なることになる。また、外耳道91内の内部センサ11が外来雑音(外部の音)を拾うのは、外耳道91に挿入されたイヤーピース14と外耳道91の外部開口部92との隙間を通じててあると考えると、外耳道91内部に入ってくる外来雑音は、低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性を持つ信号として内部センサ11により検出されると考えられる。このため、内部センサ11と外部センサ12とのセンサの周波数特性が同じであるとすれば、単に内部センサ11により検出される信号から、外部センサ12からの信号を減算しただけでは、外部の音の影響を十分に低減することができない。よって、減算処理を行う前に、外部の音を拾う外部センサ12により検出される信号にも、低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性を持たせなければならない。
そこで、本検体情報処理装置1は、漏れ補正処理部21において、外部センサ12からの信号に対して、内部センサ11により検出される外来信号にみられるような、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性に相当する特性を持たせるように、低周波数領域のゲインを上昇させる漏れ補正処理を施す。さらに、本検体情報処理装置1は、減算処理部31において、内部センサ11からの信号から漏れ補正処理された信号を減算する減算処理を施すことで、外部の音の影響を低減した脈動性信号を得る。これらの処理についても説明する。
また、脈動性信号に変調成分として含まれる脈波情報または呼吸情報を取り出す、抽出処理部61による抽出処理についても説明する。
[2−2.クローズドキャビティの形成と周波数応答]
<開放状態における周波数応答とクローズの状態における周波数応答>
検体情報検出装置2は、血管の拍動に起因する脈動性信号の振動を内部センサ11によって開放状態(開放系)で測定を行うのではなく、内部センサ11と振動源との関係において、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部10と、内部センサ11とが閉鎖された空間構造(クロ−ズドキャビティ)を形成するように、すなわち内部センサ11と振動源とをクローズの状態にするようにして測定する。
この測定条件の違いを説明するために、まず、内部センサ11として電磁型であるダイナミック型のマイクロホン(ダイナミックマイクロホン)を使用した場合における、開放状態(オープンの状態)とクローズの状態との周波数応答の相違について説明する。
検体90における血管の脈動性信号を検出するにあたって、人体のどこからでも、心臓の動きに端を発する振動を捉えることはできる。しかし、その動きの振幅はきわめて小さく、単にマイクロホン等の圧力を感知できるものを人体の近くに配置しても、心臓の動きに端を発する振動を検出することは困難である。それはセンサを開放状態にした場合では、音の放射の原理でいったん空間に放射された振動は、図3に示すように、その素子の固有周波数f0においてレスポンスがピークとなり、固有周波数f0よりも高周波数領域では定出力となるが、低周波数領域に向けてレスポンスが下降し、心臓の動きの基本周波数のところではきわめて微少な信号になっている周波数応答を示すためである。ダイナミックマイクロホンが無指向性の場合には、図3に示すように、固有周波数f0よりも低周波数領域に向けていわゆる−40dB/decのカーブをたどり、ダイナミックマイクロホンが指向性の場合には、固有周波数f0よりも低周波数領域に向けて−20dB/decのカーブをたどる。
小型の音響機器では固有周波数f0は数kHzであるとされており、図3の周波数応答を示すようなダイナミックマイクロホンを使用した場合には、心臓の動き等の1Hz付近では高い周波数に対する振幅に対して−120dB以下に信号が減衰することになり、レスポンスが低く十分な感度で測定を行うことが困難である。なお、図3で何本ものトレースがあるのはいわゆるダンピングファクターの差であり、横軸のfoの位置が固有周波数を意味する。
一方で、この振動を感知する素子(センサ)の先端に閉じた空間を作り上げてクローズの状態にすることで、周波数特性は一変し図4のようになる。図4における複数のトレースの存在は先に説明したとおり、いわゆるダンピングファクターの差である。図4からは、クロ−ズドキャビティ形成時には、低周波数領域の信号を感度よく測定可能であることが分かる。これは図3の開放状態の周波数応答と比較すると、1Hz付近の心臓の振動であっても、固有周波数f0付近の振動と同ゲインで正しい振幅で検出できることを意味している。このことは振動を音響エネルギーとして空気中に放出するのではなく、閉じた空間の圧力変化に変換しているためであると考えられる。
上述のとおり、内部センサ11としてダイナミックマイクロホンを用いてクロ−ズドキャビティを形成するようにして、内部センサ11と振動源を有する外耳道91とをクローズの状態にして測定することで、脈波が検出される低周波数領域の周波数応答を向上させることができる。
なお、内部センサ11としてコンデンサマイクロホンを用いる場合には、センサをオープンの状態であっても、クローズの状態にした場合であっても同様に、図4に示すように、低周波数領域のゲインが上昇したフラットな周波数特性で検出できる。ただし、オープンの状態では、クローズの状態と比較して、周波数全体においてレベルが大幅に低下する。
言い換えれば、内部センサ11としてコンデンサマイクロホンを用いてクロ−ズドキャビティを形成するようにして、内部センサ11と振動源を有する外耳道91とをクローズの状態にして測定することで、周波数全体においてレベルが上昇することにより、脈波が検出される低周波数領域の周波数応答を向上させることができる。
また、内部センサ11としてバランスドアーマチュア型のマイクロホン(バランスドアーマチュアマイクロホン)を用いた場合も、コンデンサマイクロホンを用いた場合と同様に、クロ−ズドキャビティを形成するようにして、内部センサ11と振動源を有する外耳道91とをクローズの状態にして測定することで、脈波が検出される低周波数領域の周波数応答を向上させることができると考えられる。
すなわち、内部センサ11としてダイナミックマイクロホン、コンデンサマイクロホン、またはバランスドアーマチュアマイクロホンを用いる場合には、クローズドキャビティの形成に伴う周波数応答の変化またはレベルの上昇を利用して、従来のオープンの状態では測定が困難であった、1Hz付近の検体90における血管の脈動性信号に起因する圧力情報を受けて、検体90における血管の脈動性信号を感度良く検出することができ、また1Hz付近の脈動性信号から検体90の呼吸信号を抽出することができる。
本実施形態に係る検体情報検出装置2及び検体情報処理装置1では、内部センサ11及び外部センサ12としてMEMS−ECMを使用しており、外耳道91をほぼ閉鎖された空間構造となる空洞として形成した状態で測定した際に、内部センサ11により検体90における血管の脈動性信号を感度良く検出することができ、また1Hz付近の脈動性信号から検体90の呼吸信号を抽出することができる。また、内部センサ11と外部センサ12がともにMEMS−ECMであるため、内部センサ11により検出される信号と外部センサ12により検出される信号とは、共に図4に示すような低周波数領域のゲインが上昇したフラットな周波数特性で検出できるため、少なくとも、図3、図4に示したようなクローズドキャビティの形成による周波数特性の変化は生じないと考えてよい。
<クローズドキャビティの形成と脈動性信号の検出>
内部センサ11としてダイナミックマイクロホンを用いて、心臓に起因する血管の振動(脈動性信号)を捕らえようとするとき、上述したように内部センサ11を図4のような周波数特性で応答させるために、空洞96が形成する閉じた空間(クローズドキャビティ)の圧力変化として検出することが望ましい。そこで、内部センサ11としてダイナミックマイクロホンを用いる場合には、検体90の外耳道91に筐体部10を挿入し、筐体部10で外耳道91における外部開口部92を塞いで、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部10と、内部センサ11とによって、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成するようにして、検体情報検出装置2を検体90に装着するようにすることが好ましい。これにより、図4のような脈波が検出される低周波数領域の周波数応答が向上した周波数特性で信号が検出できると期待される。
[2−3.センサの周波数特性と周波数補正処理]
<センサの周波数特性について>
内部センサ11及び外部センサ12としてのコンデンサマイクロホンに用いられるECMやMEMS−ECM等に共通の特性として、風除けの対策が施されていることが挙げられる。携帯電話等のマイクでは、風が強いときの風音、あるいは、使用者が咳き込んだとき(吹かれ)などの急な圧力変化に反応しないように、ダイヤフラムに小さな穴(数十μm)の穴が開けられている。これにより、周波数特性的には低周波分の減衰を招くことになる。遅い空気の流れはこの小さなダイヤフラムの穴を抜けることを考えれば理解しやすい。
なお、半導体プロセスによりダイヤフラムの穴が形成されるMEMS−ECMでは、穴の形成を安定して同品質で行うことが可能であり、ECMと比較するとMEMS−ECM毎の個体間において周波数応答が安定していることが知られている。
低周波数領域の感度低下は、可聴音域(例えば20Hz以上)を対象とする通常のマイクロホンの使い方においては風音や吹かれを防止する上で効果的である。しかしながら、本検体情報検出装置2において検出したい脈波の中心周波数は約1Hzであり、呼吸信号の周波数も数Hzオーダーの領域において顕著に現れるため、この低周波数領域の感度低下は検出に影響することが考えられる。
MEMS−ECMは前述の風除けのための小さな穴をダイヤフラムに空けており、一例として、Knowles社製のSPM0408(部品型番)の場合には、100Hz付近から低い周波数において20dB/decで周波数の低い方(低域)に向かって減衰しているモデルで周波数特性を推定できる。100Hz付近から高い周波数ではフラットな周波数特性を示す。
一方、ダイナミック型のイヤホンをマイクとして用いた場合は速度応答型の原理により全周波数帯域にわたり20dB/decで低域に向かい減衰しているモデルで周波数特性が示される。
すなわち、MEMS−ECMとダイナミック型のイヤホンともに、脈波情報検出帯域である0.1Hzから10Hzの周波数範囲では、20dB/decで低域に向かい減衰している周波数特性であると考えてよい。
ここで、内部センサ11及び外部センサ12として用いられるダイナミック型のイヤホン、及びMEMS−ECMがクローズドキャビティを形成した場合において、100Hz以下の低周波数領域の周波数特性は、横軸に周波数(Hz)のスケールをLog(対数)としたものとり、縦軸にGain(ゲイン)(dB)をとることで、図5(a)のように表わされる。
なお、図5において、図中の横軸の「Log(周波数)」とは、周波数のスケールを対数表記したものを表し、単位はHzである(以降、図中の「Log(周波数)」についても同様)。
図5(a)に示すように、ダイナミック型のイヤホン及びMEMS−ECMの周波数特性は、100Hz以下の低周波数領域に向かって、20dB/decの感度低下が認められる(これを「低周波が落ちる」ともいう)。心臓の動きに関するものであれば脈拍は普通1Hz(脈拍が一分間で60の場合)程度なので、これは本来の検出すべき信号の微分特性を示すものといえる。また、100Hz付近に1つの極を持つ微分回路と等価であるといえる。
この時、血管の脈動の容積変化などの信号を検出すべき信号とすると、内部センサ11及び外部センサ12としてダイナミック型のイヤホン及びMEMS−ECMを用いてクローズドキャビティを形成して脈波を計測する場合、対象とする周波数帯域(およそ0.5〜10Hz)において、単純な微分回路であって、その計測波形は通常の脈波の微分である速度成分を示すことになり、速度脈波であると考えることができる。
なお、よく血管の状況を判断するのに用いられる加速度脈波はこの速度脈波をさらに時間微分したものである。
<周波数補正処理について>
次に、内部センサ11及び外部センサ12としてMEMS−ECM、又はダイナミック型のイヤホンを用いた場合の脈動性信号出力の周波数補正処理について説明する。
周波数補正処理とは、脈動性信号について、周波数補正処理部51により、血管の脈波情報の有する周波数で少なくとも増幅動作、積分動作および微分動作のうちの1つの動作を行なう補正処理をいう。この周波数補正処理により、すくなくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出すことが可能である。
周波数補正処理部51を機能的に表わすとき、周波数補正処理部51は、図6に示すように、増幅器52、積分補正部53、微分補正部54を備えている。
脈動性信号は、周波数補正処理部51の増幅器52に入力され、増幅処理が行われる。内部センサ11としてECMまたはMEMS−ECMを用いた検体情報処理装置1において、増幅器52の出力信号は速度脈波が得られるため、周波数補正処理部51では増幅処理以外の周波数補正処理を行わずに、速度脈波を得ることができる。また、増幅器52の出力信号を積分補正部53に入力し、積分回路での補償を行うこと(積分動作)により、容積脈波を得ることができる。また、増幅器52の出力信号を微分補正部54に入力し、微分回路での補償を行うこと(微分動作)により、加速度脈波を得ることができる。
また、周波数補正処理は、図7に示すような周波数応答をする電気回路(補償回路)を通過させる処理として説明することもできる。または、このような処理はハードウェア回路やソフトウェア、あるいはハードウェアとソフトウェアとを組み合わせたものによって実現してもよい。
図5(a)のように、100Hz付近から低周波数領域に向かって20dB/decの感度低下する応答を示すダイナミック型のイヤホン及びMEMS−ECMの出力(測定データ)は、速度脈波(脈動性速度信号ともいう)として得られる。このため、クローズドキャビティを形成して、ダイナミック型のイヤホン又はMEMS−ECMを用いて血管の脈動性信号を検出した際に、図7に示すように、積分動作または微分動作の周波数補正処理を行わない場合には、図5(a)に示すMEMS−ECMの出力と同様の周波数特性となるため、速度脈波を得ることができる。図5(a)に示す速度脈波は、周波数が高くなるにつれて20dB/decでゲインが上昇しており、脈波の周波数付近では速度脈波を発生する周波数特性となっている。
また、図7に示すように、ダイナミック型のイヤホンまたはMEMS−ECMからの脈動性信号出力に対して超低周波域から100Hzまで−20dB/decでその後はフラットなカーブの周波数応答をする電気回路を通過させる積分動作により、(容積)脈波が得られることになる。この様な回路を通過させた後のトータルな周波数特性は図5(b)のようになる。図5(b)に示す容積脈波は、周波数の変化に伴うゲインの変化は0dB/decであり、脈波の周波数付近では容積脈波を発生するフラットな周波数特性となっている。
また、図7に示すように、ダイナミック型のイヤホンまたはMEMS−ECMの出力に対して超低域から100Hzまで20dB/decで上昇しその後フラットなカーブの周波数応答をする電気回路を通過させる微分動作により、加速度脈波が得られることになる。この様な回路を通過させた後のトータルな周波数特性は図5(c)のようになる。図5(c)に示す加速度脈波は、周波数が高くなるにつれて40dB/decでゲインが上昇しており、脈波の周波数付近では加速度脈波を発生する周波数特性となっている。
上述の周波数補正処理は、内部センサ11及び外部センサ12として用いられるダイナミック型のイヤホン及びMEMS−ECMを用いて血管の脈動性信号を検出した際に得られる速度脈波について、100Hz以下を積分回路で補償する(積分する)ことにより容積脈波を得ることができ、また、速度脈波について、100Hz以下を微分回路で補償する(微分する)ことにより加速度脈波を得ることができる処理と同等の処理を行うものであるということができる。また、周波数補正処理では、必要に応じて増幅動作を行っても良い。
また、周波数補正処理とは、脈波の周波数1Hzに対して、積分動作を行うことで容積脈波を得て、微分動作を行うことで加速度脈波を得て、増幅動作を行うことで速度脈波を得る処理であるということもできる。
周波数補正処理において、容積脈波、加速度脈波、速度脈波のいずれを得る処理を行ってもよいが、特に100Hz以下における積分動作により容積脈波を得ることが好ましい。図5(a)に示されるような内部センサ11としてのダイナミック型のイヤホン又はMEMS−ECMによって検出される脈動性信号について、低周波数領域に向かって20dB/decの感度低下がみられる速度脈波の周波数特性から、図7に示されるように超低周波数領域から100Hz付近まで−20dB/decでその後はフラットなカーブを通過させる積分動作による周波数補正処理を行う。これにより、図5(b)に示されるような周波数の変化に伴うゲインの変化は0dB/decであるフラットな周波数特性を有する、容積脈波を得ることができる。このような周波数特性を有する容積脈波であれば、脈波が検出される1Hz付近の低周波数領域の信号のゲインが向上しているために好ましい。
[2−4.外耳道の閉鎖レベルと周波数特性と波形等化処理]
<外耳道の閉鎖レベルと周波数特性と波形等化処理>
上述のダイナミックマイクロホンを使用した場合のクローズドキャビティの形成による周波数応答、またはコンデンサマイクロホンを使用した場合の周波数応答に鑑みて、検体情報検出装置2によって外耳道91が閉鎖またはほぼ閉鎖されたクローズドキャビティを形成するようにした状態で内部センサ11によって脈動性信号を検出し、この脈動性信号に内部センサ11の周波数特性を考慮して周波数補正処理を行うことにより、低周波数領域が補償された脈波を得ることが出来るとも考えられる。
しかしながら、実際には、例えば外耳道91内には体毛が存在するために、筐体部10と外耳道91との間に空隙が生じて十分に閉鎖できず、完全なクローズドキャビティを形成できない場合がほとんどである。このように、外部開口部92が塞がれているものの外耳道91が完全に閉じられた空間構造とはならない空洞として形成されている場合、すなわち完全なクローズドキャビティを形成できない場合を、外耳道の閉鎖レベルが「ほぼ閉鎖」であるという。
このような、外耳道の閉鎖レベルがほぼ閉鎖の場合に、内部センサ11により検出される脈動性信号の周波数特性は図8(a)のように表される。完全に外耳道91を閉鎖できない場合には、図8(a)に示されるように、高周波数領域から10Hz付近までは図5(b)に示したようにフラットな周波数特性であるものの、脈波情報検出帯域である0.1〜10Hzの低周波数領域が、外耳道の閉鎖レベルに応じて減衰してゲインが落ちることで、検出される脈波の波形が乱れることになる。
このため外耳道の閉鎖レベルがほぼ閉鎖の場合には、図8(b)に示すように、脈波情報検出帯域である0.1〜10Hzの低周波数領域のゲインの減衰にあわせて、信号のゲインを上昇させるような周波数補償を行い、脈波の検出に好適なレベルまで持ち上げる必要がある。なお、外耳道91の閉じ方(閉鎖の度合、閉鎖レベル)によって、図8(a)に示すような低周波数領域の減衰は変化するため、変化に応じて補償を行うブースト量を変化させて周波数補償を行うことが好ましい。
このように、完全に外耳道91を閉鎖できず、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となっている場合に生じる0.1〜10Hzの低周波数領域の減衰を補償するように行う補正を、波形等化処理ともいう。
<外耳道の閉鎖レベルと周波数特性の変化>
クローズドキャビティの形成と外耳道の閉鎖レベルによる周波数特性の変化の一例は、図9、図10に示す脈波波形により示すことができる。
指先または腕においてクローズドキャビティを形成、すなわち完全に閉鎖した状態で、MEMS−ECMを内部センサ11として用いて血管の脈動性信号を検出した際に得られる脈波の波形の一例を示すのが図9(b)である。図9(b)に表される波形は、上述したように、クローズドキャビティを形成して脈波を計測する際のMEMS−ECMの周波数特性から、速度脈波であると考えることができる。図9(b)の波形を示す速度脈波の脈動性信号を積分することで、図9(a)の波形を示す容積脈波が得られる。また、図9(b)の波形を示す速度脈波の脈動性信号を微分することで、図9(c)に示す加速度脈波が得られる。
なお、図9(a)〜(c)において、図中横軸の単位[s]は秒を表す(以降、図中の単位[s]についても同様)。
一方、外耳道91に筐体部10を挿入し、筐体部10のイヤーピース14で外耳道91における外部開口部92を塞いで外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成するようにして、MEMS−ECMを内部センサ11として用いて外耳道91における血管の脈動性信号を検出した際に得られる波形の一例を示すのが図10(b)である。図10(b)の波形を示す脈動性信号を積分することで、図10(a)の波形を示す脈波が得られる。また、図10(b)の波形を示す脈動性信号を微分することで、図10(c)に示す脈波が得られる。
図9において、図9(a)はいわゆる脈波(容積脈波)、図9(b)は速度脈波、図9(c)は加速度脈波を示す。図9(a)〜(c)の各波形と、図10(a)〜(c)の各波形とを比較すると、図10(a)の波形は図9(b)の速度脈波に近く、図10(b)の波形は図9(c)の加速度脈波に近く、図10(c)の波形は図9(b)の加速度脈波の2重微分の波形、又は図9(c)の加速度脈波の微分波形に近いことが分かる。このことは、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成して脈動性信号を検出した場合の図10(a)〜(c)に表される波形は、クローズドキャビティを形成して脈動性信号を検出した場合の図9(a)〜(c)に表される波形と比較して、これら脈波成分の周波数で新たな微分要素が加わっていることを示す。
センサの周波数特性について説明したように、MEMS−ECMには風よけなどの理由で小さな穴があけられており、この穴から空気が漏れる結果、100Hzより低い周波数では例えば6dB/Decで低い周波数に向かって信号が減衰している。このような低い周波数における信号の減衰は、イヤーピース14によって外耳道91を閉空間にできなかったときに同じように起きると考えられる。すなわち、ダイヤフラムにあけた小さな穴では周波数の遅い空気の振動はその周波数が低いほど(ゆっくりした圧力の変動であればあるほど)空気がその穴から漏れやすいため、圧力の振幅が落ちることで信号が減衰する。これに対して、空気の振動がその周波数が高いほど(高速の圧力の変動であればあるほど)穴から空気の振動が漏れにくくなり、圧力の振幅が落ちることがなく振動が減衰しにくいといえる。同様に、イヤーピース14と外耳道91における外部開口部92との隙間が開いている場合にも、空気の振動の周波数が低いほど空気が漏れやすく振動が減衰し、空気の振動の周波数が高いほど空気が漏れにくく振動が減衰しにくいと考えられる。このことから、図9と図10に示したような脈波の変化に見られる、脈波成分の周波数での周波数特性の変化は、上述したように、外耳道91が完全に塞げていないからであると考えられる。
<波形等化処理と脈波の波形>
ここで、図10(b)に表されるように、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成するようにして血管の脈動性信号を検出した際に得られる波形を、図9(b)に表されるように、クローズドキャビティを形成した状態で血管の脈動性信号を検出した際に得られる波形のように補正をするには、上述の図8(b)にて説明した波形等化処理における周波数補償と同様に、検出された脈動性信号を、図11に示すように脈波情報検出帯域である0.1〜10Hzの低周波数領域を上昇させるような周波数補償を行う周波数特性を持つ電気回路に入れればよい。
なお、図11では、一例として、0.1Hzから0.68Hzまで、0.1Hzから7Hzまで、0.1Hzから10.6Hzまで、−20dB/decでその後はフラットなカーブを通過させることで、それぞれ0.1〜10Hzの低周波数領域を上昇させるブースト量が異なる、3通りの周波数特性の補償パターンを示している。
すなわち、図11は、脈波情報検出帯域より高い周波数成分を通過させて、脈波情報検出帯域の周波数成分のゲインを周波数の減少とともに漸増させて、脈波情報検出帯域より低い周波数成分のゲインを増幅させる波形等化処理の一例を示すものである。
このような周波数特性の補償を実現できる電気回路として、例えば図12のような回路が挙げられる。図12の電気回路は、演算増幅器(以下、オペアンプという)201、容量C1のコンデンサ202、抵抗値R1の抵抗203、抵抗値R2の抵抗204、抵抗値R3の抵抗205からなる。
図12の電気回路の伝達関数は下記式(1)のように表すことができる。
また、図12の電気回路をボード線図で表すと、図13のように示すことができる。
図12、図13のR1〜R3及び/またはC1の値を変化させることで、図11に示されるような3種類の周波数特性の補償パターンを実現することが出来る。中でも、R3を変化させることで、図11に示す3パターンのように周波数特性の補償パターンを変化させることが望ましい。アナログ回路ではこのR3を連続的に変化させることが困難である場合があるため、何個かのR3の値を準備してそれらを切り替えて最適なものを選ぶことで、R3の値を変化させることが出来る。
本実施形態では、R1を1kΩ、R2を100kΩ、C1を22μFとし、R3を680Ωの固定抵抗+10kΩの可変抵抗として、R3の10kΩの可変抵抗を動かすことで、図13に示される1/R3C1の値を、図11に示されるように時間周波数で0.68Hz、7Hz、10.6Hzの3通りに変化させることにより、周波数補償を行う電気回路の周波数特性の補償パターンを3つのパターンに変化させた。
図10(a)〜図10(c)に表される波形を、1/R3C1の値が0.68Hz、すなわち図11に示すように0.1Hzから0.68Hzまでの領域を上昇させるように周波数特性を補償した場合には、図10(a)から図14(a)、図10(b)から図14(b)、図10(c)から図14(c)に表される波形が得られた。図10(a)〜図10(c)に表される波形を、1/R3C1の値が7Hz、すなわち図11に示すように0.1Hzから7Hzまでの領域を上昇させるように周波数特性を補償した場合には、図10(a)から図15(a)、図10(b)から図15(b)、図10(c)から図15(c)に表される波形が得られた。図10(a)〜図10(c)に表される波形を、1/R3C1の値が10.6Hz、すなわち図11に示すように0.1Hzから10.6Hzまでの領域を上昇させるように周波数特性を補償した場合には、図10(a)から図16(a)、図10(b)から図16(b)、図10(c)から図16(c)に表される波形が得られた。
これら図14(a)〜図14(c)、図15(a)〜図15(c)、図16(a)〜図16(c)に表される周波数特性の補償後の波形と、図10に表される周波数特性の補償前の波形と、図9に表されるクローズドキャビティを形成した状態で得られる脈波の波形とを比較すると、図16に表される波形ではブースト量が過多であり周波数特性の補償が過剰であって、図14に表される波形ではブースト量が不足しており周波数特性の補償が不十分であることが分かる。一方で、図15に表される波形は図9に表される波形に近い波形が得られており、ブースト量がほぼ最適であって、周波数特性の補償が適正であることが分かる。すなわち、図11に示した3パターンの周波数特性の補償パターンの中では、外耳道91をほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成するようにして血管の脈動性信号を検出した際に得られる波形を、0.1Hzから7Hzまでの領域を上昇させるように周波数特性を補償したことで、クローズドキャビティを形成した状態で血管の脈動性信号を検出した際に得られる波形と同様の波形を得ることで、波形等化処理を適切な条件で施すことができたことがわかる。
このように、波形等化処理とは、外耳道91をほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成するようにして、内部センサ11により血管の脈動性信号を検出した際に得られる微分要素が加わっている脈波について、0.1〜10Hzの低周波数領域の減衰を補償するようにして、クローズドキャビティを形成した状態で血管の脈動性信号を検出した際に得られる微分要素が加わっていない脈波を得る補正ともいうことができる。または、波形等化処理とは、外耳道91がほぼ閉鎖されたクローズドキャビティを形成するようにした状態で内部センサ11によって信号が検出されることによる影響を受けることにより、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが低下している周波数特性を持つ信号の低周波領域のゲインの低下を補償するように、低周波領域のゲインを増幅させる処理ともいうことができる。
<最適ブースト量の決定>
波形等化処理においては、図10(b)に表されるように、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成するようにして血管の脈動性信号を検出した際に得られる波形から、図9(b)に表されるように、クローズドキャビティを形成した状態で血管の脈動性信号を検出した際に得られる波形のように補正をするには、図15の波形が得られるように適正なブースト量を有する周波数特性の補償を行うことが好ましい。このような周波数特性の補償における最適ブースト量の決定について説明する。
波形等化処理のブースト量は、波形等化処理を図12のような回路で表わした場合に、抵抗値R1、R2、R3、及び/または容量C1の値を変化させることにより調整することができる。抵抗値R1、R2、R3、及び/または容量C1の値を変化させることで、図13に示す波形等化処理の周波数特性の横軸(周波数)の「1/(R2+R3)C1」または「1/R3C1」、縦軸(ゲイン)の「−(R2/R1)・R3/(R2+R3)」または「R2/R1」の値が変化する。これにより、図13に示す波形等化処理の周波数特性において、ゲインの漸増の程度(傾き)、ゲインの増幅の大きさ、ゲインを漸増させる周波数帯域(コーナー周波数、立ち上がり周波数)、ゲインを増幅させる周波数帯域、信号を通過させる周波数帯域等を所定の値に設定することで、波形等化処理のブースト量を調整することができる。
周波数特性の補償を行うとともに最適ブースト量を決定する回路の構成は、一例として図17に示すブロック図により示すことができる。
図17に示すように、内部センサ11により検出された耳(外耳道91の血管)からの脈動性信号は、第一周波数特性補償部211、第二周波数特性補償部212、第三周波数特性補償部213にそれぞれ入力されてそれぞれ異なる周波数特性の補償によって、異なるブースト量の周波数補償を受ける。第一周波数特性補償部211、第二周波数特性補償部212、第三周波数特性補償部213において周波数補償を受けた信号は、AD変換・サンプリング215、216、217、及びセレクタ219にそれぞれ出力される。第一周波数特性補償部211、第二周波数特性補償部212、第三周波数特性補償部213は、それぞれ図18(b−1)、図18(b−2)、図18(b−3)に示すように、周波数補償を行う周波数領域が異なり、3通りのブースト量により周波数補償が行われるようになっている。なお、ここでは、一例として、第一周波数特性補償部211では0.1Hzから0.68Hzまで、第二周波数特性補償部212では0.1Hzから7Hzまで、第三周波数特性補償部213では0.1Hzから10.6Hzまで、−20dB/decでその後はフラットなカーブを通過させることで、それぞれ0.1〜10Hzの低周波数領域を上昇させるブースト量が異なる、3通りの周波数特性の補償パターンを示している。
また、図17に示すように、内部センサ11により検出された耳からの脈動性信号は、PLL214に入力される。脈動性信号は脈波の周期成分を持っているため、PLL214によりロックをかけることができる。PLL214は、図19に一例として示すように、脈動性信号の波形の立ち上がりを検出して、脈動性信号の立ち上がりから次の脈動性信号の立ち上がりまでを1周期として検出し、1周期を1024分割して0から1023までの計1024のロック位相をAD変換・サンプリング215、216、217にそれぞれ出力する。
AD変換・サンプリング215、216、217は、アナログ−デジタル変換回路、又はサンプルホールドを行うサンプルホールド回路を含み、PLL214から入力されるロック位相に応じて、第一周波数特性補償部211、第二周波数特性補償部212、第三周波数特性補償部213から入力される信号を、それぞれデジタル変換又はサンプルホールドを行い、論理演算部218に出力するものである。
論理演算部218では、AD変換・サンプリング215、216、217から入力された信号の比較演算を行い、比較結果を2ビットの信号としてセレクタ219に出力する。
セレクタ219では、論理演算部218からの信号を受けて、第一周波数特性補償部211、第二周波数特性補償部212、第三周波数特性補償部213のいずれかからの最適なブースト量の周波数補償を受けた信号を、周波数特性を補償した速度脈波、すなわち波形等化処理を受けた信号として出力する。
以下に、最適なブースト量の周波数補償の決定の処理についてより詳細に説明する。
PLL214により得られるロック位相の処理では、図19に示すように、タイミングa〜eのサンプリング点をとる。PLL214は、脈波波形のがピークをとるPeak値をPLLの同期位相0として、このタイミングをサンプリング点bとする。サンプリング点bの時間軸の前後にサンプリング点aとサンプリング点cを、そして脈波の極性でマイナスに触れる点、すなわち容積脈波の偏曲点にサンプリング点eを、そしてサンプリング点cとサンプリング点eとの間にサンプリング点dを配置する。
図18(a−1)は、第一周波数特性補償部211による周波数補償を受けた脈動性信号の波形を表し、図18(a−2)は第二周波数特性補償部212による周波数補償を受けた脈動性信号の波形を表し、図18(a−3)は第三周波数特性補償部213による周波数補償を受けた脈動性信号の波形を表し、それぞれの波形に対応する前述のタイミングa〜eのサンプリング点を示している。図18(b−1)〜図18(b−3)に示される3通りのブースト量による周波数補償を受けて、各サンプリング点a〜eにおけるサンプル値(信号の強さ)が、図18(a−1)〜図18(a−3)の間で変化していることがわかる。
AD変換・サンプリング215は、第一周波数特性補償部211から入力される周波数補償を受けた信号について、サンプリング点a〜eのサンプル値A1〜A5を取得し、論理演算部218に出力する。AD変換・サンプリング216は、第二周波数特性補償部212から入力される周波数補償を受けた信号について、サンプリング点a〜eのサンプル値B1〜B5を取得し、論理演算部218に出力する。AD変換・サンプリング217は、第三周波数特性補償部213から入力される周波数補償を受けた信号について、サンプリング点a〜eのサンプル値C1〜C5を取得し、論理演算部218に出力する。
論理演算部218では、AD変換・サンプリング215、216、217から出力される、サンプリング点a〜eに対応する各々のサンプル値A1〜A5、B1〜B5、C1〜C5を比較演算する。
ここで、図18(b−1)は、第一周波数特性補償部211による周波数補償の周波数特性を模式的に示したものであって、図18(b−1)に示すように、低周波数領域から0.68Hzまでの領域において周波数補償を行った場合には、補償回路の折れ点が低すぎることになり周波数補償のブースト量が不足する。このような場合には、周波数補償後の波形に微分効果が残ることになる。また、図18(a−1)に示すようにサンプリング点dのサンプル値A4が負になる傾向が強く、またサンプリング点bでのサンプル値A2が大きく、サンプリング点aとcでのサンプル値A1とA3が小さくなり、波形の形状としては本来の波形よりもピークがスリム(急峻)になるというパターンを示す。
図18(b−2)は、第二周波数特性補償部212による周波数補償の周波数特性を模式的に示したものである。図18(b−2)に示すように、低周波数領域から7Hzまでの領域において周波数補償を行った場合には、補償回路の折れ点が最適付近となり周波数補償のブースト量がほぼ最適となる。このような場合には、サンプリング点eのサンプル値B5が負の値となり、サンプリング点dのサンプル値B4が0に近い値となり、サンプリング点aとサンプリング点cのサンプル値B1とB3がサンプリング点bのサンプル値B2の約1/2付近となるというパターンを示す。
図18(b−3)は、第三周波数特性補償部213による周波数補償の周波数特性を模式的に示したものである。図18(b−3)に示すように、低周波数領域から10.6Hzまでの領域において周波数補償を行った場合には、補償回路の折れ点が低すぎることになり周波数補償のブースト量がやや過多となる。このような場合には、サンプリング点bのサンプル値(ピーク値)C2が、他の周波数補償を行った場合に比べて低くなるというパターンを示す。
このように、周波数補償の周波数特性が異なることでブースト量が変わることにより、周波数補償後に得られる波形が変化し、各サンプリング点におけるサンプル値が変化する。論理演算部218では各サンプリング点のサンプル値を比較することにより、各サンプル値が周波数補償のブースト量が最適となる場合に表れるパターンに最も近くなるような補償を行った周波数特性補償部を決定して、その結果をセレクタ219に出力する。
セレクタ219では、論理演算部218での比較結果を基にして、周波数補償が最適となるような補償を行ったいずれかの周波数特性補償部からの信号を出力することにより、最適ブースト量により波形等化処理が行われた信号を速度脈波として得ることが出来る。
なお、本実施形態では、第一周波数特性補償部211、第二周波数特性補償部212、第三周波数特性補償部213の3つの周波数特性補償部により周波数補償を行いそれらの結果を比較することで最適ブースト量を決定したが、周波数特性補償部は2つでもよく、4つ以上でもよく、複数の周波数特性補償部からの補償結果を比較して、ブースト量が最適となる場合に表れるパターンに最も近くなる周波数補償部を決定するようにすればよい。
また、本実施形態では、内部センサ11により検出された耳(外耳道91の血管)からの脈動性信号、すなわち、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成して脈動性信号を検出した場合に検出される速度脈波に微分要素が加わっている信号を入力して、波形等化処理により速度脈波を得る場合について説明したが、周波数補正処理部51により周波数補正処理を行った脈動性信号を入力して波形等化処理を行ってもよい。言い換えれば、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成して脈動性信号を検出した場合に検出される速度脈波に微分要素が加わっている信号に対して、100Hz以下を積分回路で補償する(積分する)周波数補正処理を行うことで容積脈波に微分要素が加わっている信号となり、この信号を入力して波形等化処理を行ってもよい。この場合、波形等化処理が行われた信号を容積脈波として得ることができる。
<外耳道の閉鎖レベルとイヤホン>
外耳道の閉鎖レベルイヤホンの種類との関係を図20に示す。
外耳道91が開放されている場合、外耳道の閉鎖レベルが「オープン(Open)」という。図20(a)の実線部に示すように、例えば非カナル型のオープンイヤホンを装着した場合には、外耳道の閉鎖レベルがオープンであるとみなすことができる。この場合、図20(a)に示す破線部の領域の完全に閉鎖から少し閉鎖までのレベルは達成できず、外耳道91においてクローズドキャビティを形成することができないため、クローズドキャビティの形成に伴う周波数応答の変化を利用した脈動性信号の検出は困難である。
外部開口部92が塞がれているものの外耳道91が閉じられた空間構造とはならない空洞として形成されている場合には、外耳道の閉鎖レベルが「少し閉鎖」であるという。図20(b)の実線部に示すように、例えばカナル型のインナー型イヤホンを装着した場合には、外耳道の閉鎖レベルが少し閉鎖であるとみなすことができる。この場合、図20(b)に示す破線部の領域の完全に閉鎖からほぼ閉鎖レベルは達成できず、外耳道91において完全なクローズドキャビティを形成することができないため、クローズドキャビティの形成に伴う周波数応答の変化を利用した脈動性信号の検出は困難である。また、内部センサ11により検出される脈動性信号について、低周波数領域における減衰が高い周波数域から生じることで、波形等化処理の際の補償量を大きくする必要があり、得られる脈動性信号のS/N比が低下すると考えられる。
外部開口部92が塞がれているものの外耳道91が完全に閉じられた空間構造とはならない空洞として形成されている場合、すなわち完全なクローズドキャビティを形成できない場合を、外耳道の閉鎖レベルが「ほぼ閉鎖」という。図20(c)の実線部に示すようにインナー密閉型イヤホンと呼ばれるイヤホンを装着した場合には、外耳道の閉鎖レベルがほぼ閉鎖であるとみなすことが出来る。この場合、図20(c)の破線部に示すように、完全ではないもののクローズドキャビティを形成することができ、上述の波形等化処理により、微分要素が加わっている脈波から、外耳道の閉鎖レベルが完全に閉鎖の状態と同等の脈波を得ることが出来る。また、外耳道の閉鎖レベルが少し閉鎖の場合と比べて、波形等化処理の際の補償量が少なくとも補償が可能となり、得られる脈動性信号の十分なS/N比の確保が可能となる。
外部開口部92が塞がれて外耳道91が完全に閉じられた空間構造となる空洞として形成されている場合を、外耳道の閉鎖レベルが「閉鎖」であるという。この場合、完全に外耳道を閉鎖できず外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となっている場合に生じる、内部センサ11により検出される脈動性信号についての低周波数領域の減衰が生じないため、上述の波形等化処理を行うことなく微分要素が加わっていない脈波を得ることができる。
図20に示すように、周波数が0.1〜10Hzである脈波を検出する際には、外耳道の閉鎖レベルが完全に閉鎖からほぼ閉鎖であることが求められる。さらには、外耳道の閉鎖レベルがほぼ閉鎖である場合には、波形等化処理により微分要素が加わっていない脈波を得ることが可能である。
検体90によって外耳94の構造は異なり、外耳道91の閉鎖レベルは、検体情報検出装置2の筐体10、中でもイヤーピース14と検体90の外部開口部92との接触状況によっても影響を受ける。よって、検体情報検出装置2と検体90との組み合わせにより、外耳道91の閉鎖レベルは変化し、検出される信号の周波数特性にも変化が生じることで、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることによる、内部センサ11により検出される脈動性信号についての他の周波数領域よりも低周波数領域におけるゲインの低下も変化する。さらに、このような低周波数領域におけるゲインの低下を補償する波形等化処理の最適ブースト量も影響を受ける。また、漏れ補正処理の最適ブースト量も影響を受ける。
このため、検体情報検出装置2と検体90との組み合わせに応じて、あらかじめ、波形等化処理及び漏れ補正処理の最適ブースト量を決定しておくキャリブレーションを行うことが好ましい。
さらには、検体情報検出装置2のイヤーピース14と検体90の外部開口部92との関係は、装着した状況、例えば検体情報検出装置2の外耳道への装着時の深さや傾き具合等、が変わることによっても外耳道91の閉鎖レベルが変化する場合がある。ゆえに、検体情報検出装置2を検体90に装着して、検体情報処理装置1により検体情報の検出を行う度に、波形等化処理及び漏れ補正処理の最適ブースト量を決定しておくキャリブレーションを行うようにしてもよい。
[2−5.漏れ補正処理]
内部センサ11からの信号と外部センサ12からの信号との減算処理を行うためには、外耳道91の外部からの音に基づく外来信号を、外部センサ12によって外耳道91の外部の音を集音することによって得られる信号に対して、内部センサ11によって他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性を持つ信号として検出される信号と同じ周波数特性を持たせる信号処理を行う必要がある。すなわち、外部センサ12によって検出される信号に対して、内部センサにより検出される外来信号の、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることによる影響を受けた周波数特性に相当する特性を持たせるように信号処理を行う必要がある。
上述したように、外耳道の閉鎖レベルがほぼ閉鎖の場合に、内部センサ11により検出される脈動性信号は、図8(a)に示すように、脈波情報検出帯域である0.1〜10Hzの低周波数領域のゲインが、外耳道の閉鎖レベルに応じて低下している周波数特性を有する信号として検出される。すなわち、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが低下しているように変化した周波数特性を持っている。このとき、内部センサ11により検出される外耳道91の外部からの音に基づく外来信号は、内部センサ11により検出される脈動性信号の周波数特性の変化とは逆向きの特性の変化を示す信号として検出され、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性を持つ信号として検出される。このため、漏れ補正処理部21では、外部センサ12からの信号に対して、内部センサ11により検出される脈動性信号に対する補償回路の周波数特性と同様に、図8(b)に示すような周波数特性となるように、低周波数領域のゲインを増幅する漏れ補正処理を施せばよい。これは、脈波情報検出帯域である0.1〜10Hzの低周波数領域を上昇させるような図8(b)に示すような周波数補償とは同様の周波数特性により、0.1〜10Hzの低周波数領域を増幅させる処理である。すなわち、漏れ補正処理は、波形等化処理部の波形等化処理と同様の特性であるような処理を行うものであるといえる。
漏れ補正処理は、血管の脈波情報が検出される周波数帯域である脈波情報検出帯域が、ゲインが上昇している他の周波数領域よりも低周波の領域に含まれている場合に、少なくとも脈波情報検出帯域の周波数特性のゲインを増幅させればよい。
上記の波形等化処理部41による波形等化処理が、脈波情報検出帯域より高い周波数成分を通過させて、脈波情報検出帯域の周波数成分のゲインを周波数の減少とともに漸増させて、脈波情報検出帯域より低い周波数成分のゲインを増幅させる処理であるならば、漏れ補正処理部21による漏れ補正処理は、波形等化処理と同様の特性となるように、外部センサ12からの信号に対して、脈波情報検出帯域より大きい周波数成分を通過させて、脈波情報検出帯域の周波数成分のゲインを周波数の減少とともに漸増させて、脈波情報検出帯域より低い周波数成分のゲインを増幅させる処理を行えばよい。
このとき、漏れ補正処理におけるゲインの増幅の大きさと波形等化処理におけるゲインの増幅の大きさとが等しいかほぼ等しくなるようにすればよい。また、漏れ補正処理におけるゲインの漸増の程度と波形等化処理におけるゲインの漸増の程度とが等しいかほぼ等しくなるようにすればよい。
外部センサ12からの信号を、内部センサ11により検出される外来信号の、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることによる影響を受ける周波数特性に相当する特性を持たせるようにするためには、漏れ補正処理と波形等化処理とにおけるゲインの増幅の大きさ、また漏れ補正処理と波形等化処理とにおけるとゲインの漸増の程度がそれぞれ等しくなることが好ましい。しかしながら、後述する減算処理において、内部センサ11からの信号から、漏れ補正処理部により処理された信号を減算する際には、漏れ補正処理と波形等化処理とにおけるゲインの増幅の大きさ、また漏れ補正処理と波形等化処理とにおけるゲインの漸増の程度が、全く同じでなくとも、外部センサ12からの信号を内部センサにより検出される外来信号のほぼ閉鎖された空間構造の影響による周波数特性と近い特性とすることにより、外部の音の軽減の効果は期待できる。このため、漏れ補正処理と波形等化処理とにおけるゲインの増幅の大きさ、また漏れ補正処理と波形等化処理とにおけるゲインの漸増の程度とは、等しいか、ほぼ等しくなるようにすればよい。
一例として、外耳道の閉鎖レベルがほぼ閉鎖の場合に、内部センサ11により検出される脈動性信号が、図21(a)に示すように、脈波情報検出帯域を含む7Hz付近よりも低周波数領域において20dB/decでゲインが低下している周波数特性を持つ信号として検出される場合の漏れ補正処理について説明する。なお、この場合、内部センサ11により検出される外来信号は、図21(b)に示すように、脈波情報検出帯域を含む7Hz付近よりも低周波数領域において20dB/decでゲインが上昇している周波数特性を持つ信号として検出される。
この場合、波形等化処理部41による波形等化処理では、内部センサ11により検出される信号に対して、図21(c)に示すような周波数特性により波形等化処理を行うことで、低周波数領域のゲインの低下を補償することができる。このときの波形等化処理の最適ブースト量は、上述したような周波数補償後に得られる波形の各サンプリング点におけるサンプル値をパターンと対比する方法により決定することができる。ここでは、図21(c)に示すように、7Hzより高い周波数成分を通過させて、脈波情報検出帯域である0.1Hzから7Hzまでのゲインを周波数の減少とともに20dB/decで漸増させて、0.1Hzより低い周波数成分のゲインを増幅させる周波数特性による処理が最適なブースト量であったとする。
図21(c)に示すような周波数特性は適正なブースト量を有すると考えられるため、内部センサ11で検出される図12(a)に示すような周波数特性を有する信号に対して、図21(c)に示すような周波数特性により周波数補償を行うと、低周波数領域のゲインの低下が補償された周波数特性の信号が得られるといえる。このことから、内部センサ11は、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることにより、血管の脈波情報に基づく脈動性信号が、図21(c)に示すような周波数特性とは逆向きの特性の周波数特性の信号処理を受けているといえる。このため、外部センサ12で検出される信号に対して、図21(c)に示すような周波数特性とは同様の特性となる、図21(d)に示すような周波数特性により処理を行うことで、図21(b)に示すような、内部センサ11で検出される外来信号と同様の低周波数領域のゲインが上昇した周波数特性となるといえる。
このとき、漏れ補正処理部21による漏れ補正処理では、図21(d)に示すような周波数特性により、7Hzより大きい周波数成分を通過させて、脈波情報検出帯域である0.1Hzから7Hzの周波数成分のゲインを周波数の減少とともに20dB/decで漸増させて、0.1Hzより低い周波数成分のゲインを増幅させる処理を行えばよい。またこのとき、図21(d)に示す0.1Hz以下の周波数成分の増幅の大きさと、図21(c)に示す0.1Hz以下の周波数成分の増幅の大きさとが等しいかほぼ等しくなるようにすればよい。または、図21(d)に示す0.1Hzから7Hzの周波数成分の漸増の程度と、図21(c)に示す0.1Hzから7Hzの周波数成分の漸増の程度とが等しいかほぼ等しくなるようにすればよい。
なお、漏れ補正処理部21では、少なくとも、脈波情報検出帯域より大きい周波数成分を通過させて、脈波情報検出帯域の周波数成分のゲインを周波数の減少とともに漸増させる処理を行えばよく、脈波情報検出帯域より低い周波数成分のゲインを増幅させる処理は必ずしも行わなくともよい。これは、波形等化処理部についても同様であって、脈波情報検出帯域より高い周波数成分を通過させて、脈波情報検出帯域の周波数成分のゲインを周波数減少とともに漸増せる処理を行えばよく、脈波情報検出帯域より低い周波数成分のゲインを増幅させる処理は必ずしも行わなくともよい。
例えば、図21(d)では、0.1Hzより低い周波数成分のゲインを増幅させる漏れ補正処理について説明したが、0.1Hzから7Hzの周波数成分のゲインを周波数の減少とともに20dB/decで漸増させる処理を、0.1Hz以下の周波数成分においても適用してもよい。また、図21(c)では、0.1Hzより低い周波数成分のゲインを増幅させる波形等化処理について説明したが、0.1Hzから7Hzまでのゲインを周波数の減少とともに20dB/decで漸増させる処理を、0.1Hz以下の周波数成分においても適用してもよい。
ただし、漏れ補正処理及び波形等化処理において脈波情報検出帯域より低い周波数成分をゲインを周波数の減少とともに漸増させる場合には、周波数の減少とともに信号のゲインを増大させ続けることになるため、図21(c)、図21(d)に示すように適当な周波数でフラットな処理となるようにすることが好ましい。
[2−6.減算処理]
減算処理部31では、内部センサ11からの信号から、漏れ補正処理部21により漏れ補正処理された信号を減算する減算処理を施す。この減算処理により、外部の音により影響が軽減された脈動性信号を得ることができる。
内部センサ11により検出される外耳道91の外部からの音に基づく外来信号は、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることによる影響を受けて、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性を持つ信号として検出されている。一方で、外部センサ12からの信号は、漏れ補正処理部21により、内部センサ11により検出される信号の、低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性に相当する特性を持たせるように、低周波数領域のゲインを増幅させる漏れ補正処理が施されている。このため、漏れ補正処理部21により漏れ補正処理された信号は、外部センサ12により得られる信号に漏れ補正処理を行わない場合よりも、内部センサ11が外来信号をほぼ閉鎖された空間構造の影響を受けて検出した信号の特性と近いものとなっている。よって、減算処理部31による減算処理によって、内部センサ11により検出される信号に含まれる外部の音(外来信号)の影響を効果的に軽減することができる。
減算処理を行う前に、内部センサ11からの信号と、漏れ補正処理部21により漏れ補正処理された信号とのレベルを合わせるように、漏れ補正処理部21により漏れ補正処理された信号のレベルを増幅させる処理を行ってもよい。
従来より、音楽分野などでノイズキャンセリングとして知られる技術が用いられている。これは、外部の音を集音するマイクロホンにより得られた音を元にして、外部の音を打ち消す信号を音楽信号と共に出力することにより、外部の音の影響を軽減するものである。
音楽用ノイズキャンセリングでは図22の示されるような特性を有する音声帯域のノイズキャンセリングが知られている。図22では、横軸に周波数、縦軸にノイズキャンセリングによる外部の音のキャンセル量を表わしている。また、図22では101、102、103の符号を付した三本の曲線を表わしているが、これはノイズキャンセリングが用いられる環境ごとに適した3種類の異なるノイズキャンセリングモードを表わしている。101の符号を付したものは、例えば電車やバス車内の騒音に適しており、低周波領域のノイズをキャンセルするモードとなっている。102の符号を付したものは、例えば航空機内の騒音に適しており、電車やバス車内よりも高い周波数において高いキャンセル量となるモードとなっている。103の符号を付したものは、例えばOA機器や空調機器の騒音に適しており、低周波領域から高周波領域にかけて、広がりを持たせたモードとなっている。
通常、音楽分野のイヤホンまたはヘッドホンに用いられるノイズキャンセリングでは、およそ40〜1.5kHzの周波数域において外部の音を打ち消す信号が出力されることで、ノイズキャンセリングがなされている。これは、人の可聴域に対応して設定されているものである。図22に示した3種類のノイズキャンセリングの例についても同様に、人の可聴域のところにキャンセリングの中心がセットされている。このようなノイズキャンセリングの手法によっては、人に聞こえない1Hz付近の低周波数の領域のノイズキャンセリングに対応したものではなかった。
本実施形態の検体情報処理装置1では、減算処理部31により、血管の脈波情報が検出される周波数帯域である脈波情報検出帯域である、0.1〜10Hzにおいて、減算処理を行う。これにより、内部センサ11により検出される血管の脈波情報に基づく脈動性信号を、外部の音の影響が軽減された状態で得ることができる。
[2−7.呼吸信号の抽出処理]
抽出処理部61によって行われる、検体90の脈波情報または呼吸情報を取り出す(抽出する)処理について説明する。
抽出処理部61は、例えばPLLを利用する周波数復調処理により脈動性信号に変調成分として含まれる脈波情報または呼吸情報を取り出す、抽出処理を行う。
抽出処理部61を機能的に表わすとき、抽出処理部61は、図23に示すように、位相比較器62、ローパスフィルタ63、VCO(voltage controlled oscillator;電圧制御発振器)64、分周器65を備えている。
周波数復調処理とは、PLLによって位相を同期させた二つの信号を比較することで、脈動性信号に含まれる呼吸信号を抽出する処理である。一例として、図23に示すように、抽出処理部61において、位相比較器62に脈動性信号を入力し、位相比較器62からの出力をローパスフィルタ63に入力してその出力でVCO64の発振周波数を調整し、分周器65によって分周し、位相比較器62に戻してこれらの二つの信号を同期させることで、ローパスフィルタ63の出力波形を呼吸成分として得ることができる。
すなわち、検体90の呼吸成分が変調された脈動性信号について、復調処理を施すことにより、脈動性信号に含まれる呼吸成分を、呼吸信号として脈動性信号から抽出できるのである。
また、検体90の呼吸成分が変調された脈動性信号から、脈動性信号に含まれる呼吸成分を除くことで、脈波情報として脈動性信号を抽出できる。
本実施形態に係る検体情報処理装置1における検体90の脈波情報または呼吸情報の抽出は、図24に示すように、検体情報検出装置2の外部センサ12からの信号に対して漏れ補正処理部が漏れ補正処理を施し、内部センサ11からの信号と漏れ補正処理部21により処理された信号に対して減算処理部31が減算処理を施し、減算処理後の信号に対して波形等化処理部41が波形等化処理を施し、波形等化処理後の信号に対して周波数補正処理部51にが少なくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号および脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出す周波数補正処理を施した後に、周波数補正処理後の脈動性容積信号、脈動性速度信号および脈動性加速度信号のうちの少なくとも1つの脈動性信号に対して、抽出処理部61が周波数復調処理を行う。
[3.検体情報処理装置の動作]
検体情報処理装置1は上述のように構成されており、図2に示すように、検体90の外耳道91に筐体部10を挿入し、筐体部10で外耳道91における外部開口部92を塞いで外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成するようにして、検体情報検出装置2を検体90に装着する。この状態で検体情報検出装置2の内部センサ11及び外部センサ12による信号の検出と、信号処理部3による信号処理を行う。本実施形態に係る信号処理部3では、図1、図24に示すように、漏れ補正処理部21と、減算処理部31と、波形等化処理部41と、周波数補正処理部51と、抽出処理部61とを備え、各々信号処理を行うようになっている。
信号処置部3における信号処理は少なくとも漏れ補正処理部21と減算処理部31による漏れ補正処理と減算処理とを行えばよいが、さらに波形等化処理部41と、周波数補正処理部51と、抽出処理部61とを備えて、波形等化処理と周波数補正処理と抽出処理とを行うことが好ましい。なお、波形等化処理と周波数補正処理とは、信号処理の順番を適宜変えてもよい。
本実施形態では、検体情報処理装置1が図24に示す機能構成を備え、漏れ補正処理部が外部センサ12からの信号に対して漏れ補正処理を施し、減算処理部31が内部センサ11からの信号から、漏れ補正処理部21により処理された信号を減算する減算処理を施し、波形等化処理部41が減算処理部31により処理された信号に対して波形等化処理を施し、周波数補正処理部51が波形等化処理部41により処理された信号に対して周波数補正処理を施し、抽出処理部61が周波数補正処理部51により処理された信号に対して抽出処理を施す場合について説明する。
図25に示すように、まず、検体情報検出装置2の内部センサ11によって、外耳道91における血管の脈波情報に基づく脈動性信号を、脈動性信号に起因する空洞96内を伝播する圧力情報であって、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが低下している周波数特性を持つ信号として検出するととともに、外耳道91の外部からの音に基づく外来信号を、他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性を持つ信号として検出し、得られた信号を減算処理部31に出力する(ステップS11)。
検体情報検出装置2の外部センサ12は、外耳道の外部の音を集音し、得られた信号を漏れ補正処理部21に出力する(ステップS12)。
信号処理部3の漏れ補正処理部は、外部センサ12からの信号に対して、内部センサ11により検出される外来信号の周波数特性に相当する特性を持たせるように、低周波数領域のゲインを増幅させる漏れ補正処理を施し、漏れ補正処理を施した信号を減算処理部31に出力する(ステップS13)。
減算処理部31は、内部センサ11からの信号から、漏れ補正処理部21により処理された信号を減算する減算処理を施し、減算処理を施した信号を波形等化処理部に出力する(ステップS14)。減算処理により、内部センサ11により検出された信号から外部の音(外来信号)の影響を軽減した脈動性信号を得ることができる。
波形等化処理部は、減算処理部31により処理された信号に対して、内部センサ11により検出される脈動性信号の周波数特性における低周波領域のゲインの低下を補償するように、低周波領域のゲインを増幅させる波形等化処理を施し、波形等化処理を施した信号を周波数補正処理部に出力する(ステップS15)。波形等化処理により、低周波領域のゲインの低下を補償した脈動性信号を得ることができる。
周波数補正処理部51は、波形等化処理部41により処理された信号に対して、脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの一つの信号を取り出す周波数補正処理を施し、周波数補正処理を施した脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの少なくとも一つの信号を抽出処理部61に出力する(ステップS16)。
抽出処理部61は、周波数補正処理部51により処理された脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの少なくとも一つの信号に対して、抽出処理を施し、脈動性信号出力に含まれる脈波情報または呼吸信号を取り出す(ステップS17)。
ステップS15における波形等化処理部41による波形等化処理を施すために、あらかじめ、検体情報検出装置2を検体90の外耳94に装着した状態で、波形等化処理における最適ブースト量を決定するキャリブレーションを行うことが好ましい。
ステップS13における漏れ補正処理部21による漏れ補正処理を施すために、漏れ補正処理における最適ブースト量は、あらかじめ、検体情報検出装置2を検体90の外耳94に装着した状態で、波形等化処理における最適ブースト量を決定するキャリブレーションを行い、波形等化処理と同様の特性であるような処理を行えばよい。
[4.検体情報処理装置の効果]
本実施形態にかかる検体情報検出装置2及び検体情報処理装置1によれば、筐体部10により検体90の外耳道91における外部開口部92を塞いで外耳道91をはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として、内部センサ11が外耳道91における血管の脈動性信号を、脈動性信号に起因し空洞内を伝播する圧力情報として検出することで、外耳道91に存在する血管、特に鼓膜93に存在する血管を利用して、検体90の脈動性信号を検出することが出来る。
また、検体情報検出装置2及び検体情報処理装置1によれば、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部10と、内部センサ11とがほぼ閉鎖された空間構造(クロ−ズドキャビティ)を形成するようにして測定することで、従来よりも低周波数領域における脈動性信号のS/N比及び感度が改善される。また、脈動性信号から抽出される呼吸信号のS/N比及び感度も向上させることができる。
さらに、検体情報処理装置1によれば、減算処理部31によって、内部センサ11からの信号から、外部センサ12からの信号を減算することにより、外部の音(外来信号)の影響を低減して、外来ノイズを減少させた脈動性信号を得ることができる。外耳道91をほぼ閉鎖された空間構造となる空洞として形成可能した状態では、外耳道91の外部からの音が、筐体部10のイヤーピース14と外耳道91の外部開口部92との間に生じている空隙から外耳道91の内部に侵入することにより、内部センサ11は、外部からの音に基づく外来信号を他の周波数領域よりも低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性を持つ信号として検出する。すなわち、内部センサ11により検出される信号には外部からの音に基づく外来信号が含まれ、この外来信号は、脈波情報が検出される脈波情報検出帯域が含まれる低周波数領域においてゲインが上昇している周波数特性を持つ信号として検出されると考えられる。このため、検体情報処理装置1によれば、この外来信号の影響を低減することにより、人体の血管の脈動情報に基づく脈動性信号等の、比較的信号の小さい生体信号の検出に特に有効であるといえる。
また、検体情報処理装置1によれば、漏れ補正処理部21によって、減算処理に用いられる外部センサ12からの信号について、内部センサ11により検出される外来信号の周波数特性に相当する特性を持たせる漏れ補正処理を施すことにより、減算処理に用いられる内部センサ11からの信号に含まれる内部センサ11により検出された外来信号と、外部センサ12からの信号とが同様の周波数特性をもつことになる。このため、漏れ補正処理後の減算処理により、内部センサ11からの信号から外部の音の影響を効果的に低減することができる。
また、検体情報処理装置1によれば、波形等化処理部41によって、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となることによる、内部センサ11により検出される脈動性信号の低周波数領域のゲインの低下を補償することができ、脈波が検出される0.1〜10Hz付近の低周波数領域の脈動性信号の検出感度を上げることができる。また、波形等化処理部41よって、脈動性信号を微分要素の加わっていない速度脈波信号として得ることが出来る。
また、検体情報処理装置1によれば、周波数補正処理部51によって、外部の音の影響が低減されているとともに、低周波数領域のゲインの低下が補償されて微分要素の加わっていない、脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの一つの信号を取り出すことができる。
中でも、図7に示すように超低周波数領域から100Hz付近まで−20dB/decでその後はフラットなカーブを通過させる積分動作により、図5(b)のような周波数特性の脈波(容積脈波)が得られる。図5(b)に示す容積脈波は、周波数の変化に伴うゲインの変化は0dB/decであり、脈波の周波数付近では容積脈波を発生するフラットな周波数特性となっている。容積脈波信号の場合、内部センサ11としてダイナミック型のイヤホン、ECM、及びMEMS−ECMを用いた場合に見られる、100Hz付近以下の低周波数領域の周波数特性(低域周波数特性)の感度を向上させることができるために有用である。
また、検体情報処理装置1によれば、抽出処理部61による抽出処理を行うことで、外部の音の影響が低減されているとともに、低周波数領域のゲインの低下が補償されて微分要素の加わっていない、検体90の脈波情報または呼吸情報を取り出すことができる。
また、内部センサ11及び外部センサ12としてのダイナミックスピーカーを用いることにより、ダイナミックスピーカーをスピーカーまたはマイクロホンとで切り替えて機能させることで、検体情報検出装置2をマイクロホンとして用いる場合の脈動性信号の検出と、検体情報検出装置2をイヤホン(イヤホンのスピーカーユニット)として用いる場合の動作とを併用することができる。
[5.その他]
<クローズドキャビティを形成することによる周波数特性の変化と補正処理について>
上記の説明においては、漏れ補正処理部21が、外部センサ12からの信号に対して、内部センサ11により検出される信号の周波数特性に相当する特性を持たせるように、低周波数領域のゲインを増幅させる漏れ補正処理を施すことについて説明したが、内部センサ11及び外部センサ12にダイナミックマイクロホンを用いる場合、中でも無指向性ダイナミックマイクロホンを用いる場合には、減算処理部31による減算処理の前に、さらに外部センサ12からの信号に対して、クローズドキャビティを形成することによる周波数特性に相当する特性を持たせるように補正処理(周波数応答補正処理)を行うことが好ましい。
図3、図4を用いて説明したように、内部センサ11及び外部センサ12にダイナミックマイクロホンを用いる場合には、クロ−ズドキャビティ形成時に内部センサ11により検出される信号は、振動源からの振動が閉じた空間の圧力変化に変換されて検出されることにより、低周波数領域の信号を感度よく測定可能であるフラットな周波数特性となる。内部センサ11は振動源を有する外耳道91とクローズの状態にして測定しているため、図4に示すような低周波領域までフラットな周波数特性になると考えられる。一方、外部センサ12はクローズな状態にしておらず、オープンの状態で外部の音を集音するため、外部センサにより検出される信号は、図3に示すように、低周波数領域のゲインが低下する周波数特性を示す。このため、内部センサ11及び外部センサ12に、低周波数領域のゲインが低下が大きい無指向性ダイナミックマイクロホンを用いる場合には、内部センサ11からの信号から、外部センサからの信号を減算する前に、外部センサ12からの信号に対して、内部センサ11により検出される信号の周波数特性に相当する特性を持たせるように、低周波数領域のゲインが上昇したフラットな周波数特性となる補正処理を行うことが好ましい。
すなわち、内部センサ11及び外部センサ12に無指向性ダイナミックマイクロホンを用いる場合には、外部センサ12からの信号に対して、内部センサ11により検出される信号の周波数特性に相当する特性を持たせるように、減算処理部31による減算処理の前に、クローズドキャビティを形成することによる周波数特性の変化を補償するためのフラットな周波数特性となる処理と、漏れ補正処理による低周波数領域のゲインを増幅させる処理とを共に行うことが好ましい。
<外部センサについて>
上記の説明においては、外部センサ12は筐体部10のハウジング13において、内部センサ11とともに設けられている構成について説明したが、外部センサ12は、内部センサ11及び筐体10から離隔して設けられていてもよい。なお、内部センサ11における外部の音の影響を低減する観点からは、外部センサ12を内部センサ11と同様の環境におくことが好ましく、少なくとも外耳道91の外部の音を収音できる状況において、内部センサ11に近い位置に設けられることが好ましい。
<イヤホンまたはヘッドホンの利用について>
音楽を視聴する際にイヤホンまたはヘッドホンが用いられるが、これらは通常左耳と右耳とで少なくとも1対のスピーカーユニットを備えている。本検体情報処理装置1の内部センサ11及び外部センサ12は、イヤホンまたはヘッドホンのスピーカーユニットをセンサとして用いてもよい。このとき、1対のスピーカーユニットのうち、一方を内部センサ11として用いて、他方を外部センサ12として用いればよい。
また、ノイズキャンセリングイヤホンまたはノイズキャンセリングイヤホンヘッドホンとして、視聴用の音を発するスピーカーユニットと、外部の音を収音するマイクロホンとを備えたものが知られている。本検体情報処理装置1の内部センサ11及び外部センサ12は、ノイズキャンセリングイヤホンまたはノイズキャンセリングイヤホンヘッドホンの視聴用の音を発するスピーカーユニットを内部センサ11として用いて、外部の音を収音するマイクロホンを外部センサ12として用いてもよい。
<内部センサと外部センサとのキャリブレーションについて>
上記の説明においては、外部センサ12は、内部センサ11と同じ種類のセンサを用いることが好ましく、同様の周波数特性を持つセンサを用いる事が好ましいと説明したが、さらにあらかじめキャリブレーションを行うことで、内部センサ11と外部センサ12の各々の周波数特性を確認しておいてもよい。内部センサ11と外部センサ12のそれぞれの特性に応じて、漏れ補正処理または波形等化処理を行ってもよい。また、内部センサ11と外部センサ12のそれぞれの特性に応じて、減算処理部31における減算処理の前に、特定の周波数成分の信号のゲインを増幅または減衰させるようにしてもよく、全体の信号のゲインを増幅または減衰させるようにしてもよい。
<最適ブースト量の決定について>
上記の説明においては、最適ブースト量の決定について、周波数補償後に得られる波形の各サンプリング点におけるサンプル値をパターンと対比する方法について説明した。この他の最適ブースト量の決定方法としては、内部センサ11がスポンジを介して信号を検出するようにして、スポンジに応じた所定の周波数特性に合わせてブースト量を決定する方法が挙げられる。スポンジとしては、例えばウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる発泡性のフォーム素材が用いられる。
イヤーピースの貫通孔19をスポンジで塞ぐようにすることで、内部センサ11と外耳道91または鼓膜93との間にスポンジを設けることができる。このとき、内部センサ11が、外耳道91における血管の脈波情報に基づく脈動性信号を、脈動性信号に起因する空洞96内を伝播する圧力情報として検出する際に、スポンジを介して信号を検出することになる。スポンジを介して内部センサ11により検出される脈動性信号は、周波数特性が変化して、図8(a)に示されるような低周波数領域のゲインの減衰が、スポンジに応じて特定の周波数特性を示すようになる。このため、スポンジに応じた特定の周波数特性に合わせて最適ブースト量を決定することができる。
<信号処理部と信号処理について>
上記の説明においては、検体情報処理装置1が図24に示す機能構成を備える場合について説明したが、減算処理部31による減算処理の後に、減算処理部31により処理された信号に対して周波数補正処理部51が周波数補正処理を施してもよく、さらに、周波数補正処理部51により処理された信号に対して波形等化処理部41が波形等化処理を施してもよく、さらに、波形等化処理部41により処理された信号に対して抽出処理部61が抽出処理を施すようにしてもよい。
また、減算処理部31による減算処理の後に、減算処理部31により処理された信号に対して波形等化処理部41が波形等化処理を施し、この波形等化処理部41により処理された信号に対して抽出処理部61が抽出処理を施すようにしてもよい。
<アナログ回路による信号処理とデジタル回路による信号処理について>
上記の説明においては、脈動性信号の処理を検体情報検出装置2及び検体情報処理装置1が備えるアナログ回路による処理について説明したが、検体情報検出装置及び検体情報処理装置がデジタル回路、例えばデジタルシグナルプロセッサ(以下、「DSP」ともいう)を含む回路とアナログ回路とを組み合わせたり、演算処理装置(CPU)やDSPを組み合わせたりして、このデジタル回路を含む回路により信号を処理する構成としてもよい。