本発明者らは、まず、アクセプターモノマーの二重結合官能基とドナーモノマーの二重結合官能基の反応性について、リアルタイムFT−IR、ゲル分率の手法を用いて調べた。まず、単官能アクセプターモノマーと、単官能ドナーモノマーで構成される組成物の場合は、アクセプターモノマーの二重結合官能基とドナーモノマーの二重結合官能基が約1:1の比率で重合反応し、アクセプターモノマー、ドナーモノマー共に、重合反応と共に二重結合官能基がほぼ消失していた。
次に、単官能アクセプターモノマーと、二官能ドナーモノマーで構成される、あるいは、二官能アクセプターモノマーと、二官能ドナーモノマーで構成される組成物の場合、アクセプターモノマーの二重結合官能基とドナーモノマーの二重結合官能基が約1:0.5の割合で重合反応し、ほぼ全てのドナーモノマーは、重合鎖に組み込まれていることが分かった。本発明者らは、二官能ドナーモノマーは、官能基二個のうち一つだけが反応し、単官能モノマーとして機能しているのではないかと推測している。以上から、本発明者らは、アクセプターモノマーに多官能モノマーを用いることで、硬化膜の架橋密度を高め、ドナーモノマーが単官能モノマーとして機能することで、硬化膜の柔軟性や硬化収縮を抑制するという設計思想を考案した。
(活性エネルギー線硬化型インクジェットインク)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、少なくとも1種のアクセプターモノマーと、少なくとも1種のドナーモノマーとを含有する。そして、少なくとも1種のアクセプターモノマーが「多官能アクセプターモノマー」を含有し、かつ少なくとも1種のドナーモノマーが「単官能ドナーモノマー」を含有することを特徴とする。また、少なくとも1種のアクセプターモノマーは、必要に応じて単官能アクセプターモノマーをさらに含有してもよいし;少なくとも1種のドナーモノマーは、必要に応じて多官能ドナーモノマーをさらに含有してもよい。
前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは実質的に溶媒を用いず、インクに含有される液体の主体は重合性のモノマーであるため、活性エネルギー線を照射することによりモノマーが硬化してインクが固体に変化し、溶媒を蒸発させなくても強固な画像を形成することができる。
前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、アクセプターモノマーとドナーモノマーを含有し、両者が電荷移動錯体(CT重合系化合物)を形成している。
前記活性エネルギー線としては、X線、紫外線、電子線、可視光線などが挙げられるが、電荷移動錯体の硬化感度が高いことと、照射装置のコストの点から紫外線が好ましく用いられる。
(比率X)
次に、インクジェット用のインクとして用いる場合に、アクセプターモノマーとドナーモノマーの組成比をどの様にすれば、高い硬化感度、硬化膜の強度、すなわち、耐擦性、耐候性、と、低硬化収縮、柔軟性、インクジェット吐出可能な粘度を兼ねあわせることができるかを検討したところ、以下の比率Xを満たすような配合にすることで可能となることを見出し本発明の完成に至った。
式(2)において、a1〜apは全てのアクセプターモノマーとドナーモノマーの合計に対する各アクセプターモノマーA1〜Apのモル分率を表し、b1〜bpは各アクセプターモノマーA1〜Apの1分子中の官能基数を表し、d1〜dqは全てのアクセプターモノマーとドナーモノマーの合計に対する各ドナーモノマーD1〜Dqのモル分率を表す。
比率Xの分子は、単位質量当たりのアクセプターモノマーの二重結合官能基mol数を示す。比率Xの分母は、ドナーモノマーの二重結合官能基のうち、多官能ドナーモノマーはモノマー1分子あたり一官能基だけ反応することとし、単官能ドナーモノマーはそのまま単官能モノマーとして一官能基が反応するとしたときの、単位質量当たりの反応に用いられるドナーモノマーの二重結合官能基mol数を示す。
従って、比率Xはアクセプターモノマーの有効な官能基の数とドナーモノマーの有効な官能基の数の比を表わしており、0.66以上2以下にすることで、本発明効果が発揮される。
即ち、比率Xが0.66以上であると、硬化の感度が高くなり、硬化膜の強度、すなわち、耐擦性、耐候性、が特に優れる。一方、比率Xが2以下であると、硬化膜の硬化収縮が非常に小さく、インクの粘度も低くなり出射が非常に安定し良好である。更に比率Xは、0.75以上1.1以下が、より好ましい。
(官能基モル分率Y)
さらに多官能アクセプターモノマーの官能基モル分率Yが0.4〜0.52が好ましいことを見出した。官能基モル分率Yが0.4以上であると、硬化膜の強度、すなわち、耐擦性、耐候性、が高くなることから、架橋密度が高くなるものと推測される。一方、官能基モル分率Yが0.52以下であると、硬化収縮が小さい。
本発明における多官能アクセプターモノマーの官能基モル分率Yとは、(多官能アクセプターモノマー各々のモル分率に官能基数を掛け合わせたものの和)/((多官能及び単官能アクセプターモノマー各々のモル分率に官能基数を掛け合わせたものの和)+(ドナーモノマー各々のモル分率の和))とし、下記式にて表されるものとする。なお、本定義では、ドナーモノマーについては、モノマー1分子あたり一官能基だけ反応するものとして考慮し、多官能ドナーモノマーの場合に官能基数を掛け合わせず、単官能モノマーとして扱って、モル分率を計算している。
式(3)において、e1〜erは、全てのアクセプターモノマーとドナーモノマーの合計に対する各多官能アクセプターモノマーE1〜Erのモル分率を表し、f1〜frは各多官能アクセプターモノマーE1〜Erの1分子中の官能基数を表し、a1〜ap、b1〜bpおよびd1〜dqは式(2)と同義である。
(官能基モル分率Z)
さらに単官能ドナーモノマーの官能基モル分率Zが、0.17〜0.58であると、インクジェット吐出により適し、硬化収縮がより少ないインクとなることを見出した。
本発明における単官能ドナーモノマーの官能基モル分率Zとは、(単官能ドナーモノマー各々のモル分率の和)/((多官能及び単官能アクセプターモノマー各々のモル分率に官能基数を掛け合わせたものの和)+(ドナーモノマー各々のモル分率の和))とし、下記式にて表されるものとする。本定義では、ドナーモノマーについては、モノマー1分子あたり一官能基だけ反応するものとして考慮し、多官能ドナーモノマーの場合に官能基数を掛け合わせず、単官能モノマーとして扱って、モル分率を計算している。
式(4)において、g1〜gsは、全てのアクセプターモノマーとドナーモノマーの合計に対する各単官能ドナーモノマーG1〜Gsのモル分率を表し、a1〜ap、b1〜bpおよびd1〜dqは式(2)と同義である。
(官能基モル分率V)
また、単官能アクセプターモノマーの本発明の定義における官能基モル分率Vが、0.04〜0.17とすることで、インク粘度、硬化収縮、柔軟性がより好ましいものになることを見出した。
本発明における単官能アクセプターモノマーの官能基モル分率Vとは、(単官能アクセプターモノマー各々のモル分率の和)/((多官能及び単官能アクセプターモノマー各々のモル分率に官能基数を掛け合わせたものの和)+(ドナーモノマー各々のモル分率の和))とし、下記式にて表されるものとする。本定義では、ドナーモノマーについては、モノマー1分子あたり一官能基だけ反応するものとして考慮し、多官能ドナーモノマーの場合に官能基数を掛け合わせず、単官能モノマーとして扱って、モル分率を計算している。
式(5)において、h1〜htは、全てのアクセプターモノマーとドナーモノマーの合計に対する各単官能アクセプターモノマーH1〜Htのモル分率を表し、a1〜ap、b1〜bpおよびd1〜dqは式(2)と同義である。
(不飽和結合の炭素原子の電荷)
本発明における「不飽和結合を構成する炭素原子の電荷」とは、分子軌道法理論に基づいて計算によって得られる基底状態における原子上の電荷(atomic charge)である。本発明では、「不飽和結合を構成する炭素原子の電荷」は、重合性モノマーの基底状態における不飽和結合の炭素原子上の電荷を、コンピュータを用いて計算によって求める。本発明では、分子軌道計算ソフトに、SPARTAN‘08 for Windows(登録商標)を使用し、計算手法として、Equilibrium Geometry at Ground state with Hartree−Fock 3−21G in Vacuumにて行い、電荷の値として、Natural atomic chargeを用いる。
本発明における「不飽和結合を構成する炭素」とは、電子密度の低いモノマーの場合には、電子吸引性基が結合した不飽和結合上の二つの炭素のうち電荷の値の大きい方の炭素を示し、電子密度が高いモノマーの場合には、電子供与性基が結合した不飽和結合上の二つの炭素のうち電荷の値の小さい方の炭素を示すものとする。尚、重合性モノマー一分子中に当該の不飽和結合が複数存在する場合には、各不飽和結合の炭素の電荷の平均値を使用する。
本発明のインク組成物においては、少なくとも2種の重合性モノマーが有する不飽和結合炭素の電荷の差の最大値が、0.24以上、0.46以下であることが好ましい。電荷の差の最大値が、0.24以上であれば、CT重合が起こりやすくなる。又、電荷の差の最大値が、0.46以下であれば、電荷移動錯体が過度に安定化することなく、十分な重合速度を得ることができる。
(アクセプターモノマー)
本発明におけるアクセプターモノマーとは、電子不足の不飽和結合を有するモノマーであり、本発明における「不飽和結合を構成する炭素原子の電荷」(atomic charge)の値が−0.3以上の重合性モノマーである。本発明におけるアクセプターモノマーが含有する、不飽和結合を構成する炭素原子の電荷の値は、好ましくは−0.28以上である。
単官能アクセプターモノマーとは、1分子中に電子不足の不飽和結合(例えばマレイミド基など)を1つだけ有する重合性モノマーであり;多官能アクセプターモノマーとは、1分子中に電子不足の不飽和結合(例えばマレイミド基など)を2以上有する重合性モノマーである。
本発明のインク組成物に含まれる少なくとも2種の不飽和結合を有する重合性モノマーのうち、「不飽和結合を構成する炭素原子の電荷」が最大である重合性モノマー(アクセプターモノマーの一つ)が、下記一般式(4)または一般式(5)で表される不飽和結合を有する化合物であることが好ましい。
上記一般式(4)または一般式(5)において、EWG1及びEWG2は、各々電子吸引性基が不飽和結合に直結する部分構造を表し、EWG1またはEWG2の構成原子同士が互いに結合して環状構造を有していてもよい。電子吸引性基は、シアノ基、ハロゲン基、ピリジル基、ピリミジル基、ニトロ基、下記一般式(a)で表される基、または下記一般式(b)で表される基を表す。
またEWG1とEWG2は互いに結合して以下に示す電子吸引性連結基を形成して環状構造を形成しても良い。該電子吸引性連結基としては、−CO−O−CO−、−CO−N(RX)−CO−、−S(O)n−O−CO−、−S(O)n−N(R)−CO−、−S(O)n−O−S(O)n−、または−S(O)n−N(RX)−S(O)n−を挙げる事ができる。
EWG
1とEWG
2は、直鎖アルキレン基、分岐アルキレン基、環状アルキレン基、水酸基を有するアルキレン基、アリーレン基またはアリールアルキレン基等の連結基を介して環状構造を形成しても良く、さらに置換基を有していても良い。また、EWG
1またはEWG
2の一部が連結基を介し、2つ以上の不飽和結合部分を有する多官能重合性化合物を形成してもよい。
上記一般式(a)、(b)において、Q1は、OH、OR′、NR′R″またはR′を表す。R′及びR″は、各々水素原子、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基、水酸基を有するアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基を表し、さらに置換基を有しても良い。
一般式(4)または一般式(5)で表される不飽和化合物の具体例としては、例えば、ビニレンイミド化合物、ビニレンジカルボン酸、ビニレンジカルボン酸エステル、ビニレンモノカルボン酸アミドモノカルボン酸、ビニレンモノカルボン酸アミドモノカルボン酸エステル、ビニレンジカルボン酸アミド、ビニレン骨格両端にニトリル基が置換したビニレンニトリル化合物、ビニレン骨格両端にハロゲン基が置換したハロゲン化ビニル化合物、ビニレン骨格両端にカルボニルが置換したビニレンジケトン化合物、ビニレンジチオカルボン酸無水物、ビニレンチオイミド化合物、ビニレンジチオカルボン酸、ビニレンジチオカルボン酸エステル、ビニレンモノチオカルボン酸アミドモノチオカルボン酸、ビニレンモノチオカルボン酸アミドモノチオカルボン酸エステル、ビニレンジチオカルボン酸アミド、ビニレン骨格両端にピリジル基が置換した化合物、ビニレン骨格両端にピリミジル基が置換した化合物構造などが挙げられるが、これらに限定されない。
これらの中で好ましい不飽和化合物は、無水マレイン酸;マレイミドなどのビニレンイミド;マレイン酸、フマル酸などのビニレンジカルボン酸;マレイン酸エステル、フマル酸エステルなどのビニレンジカルボン酸エステル等が挙げられる。
また、本発明においては、一般式(4)または一般式(5)で表される不飽和化合物が、下記一般式(A−1)〜一般式(A−13)から選ばれる少なくとも1種の不飽和化合物であることが好ましい。
式中、R1、R2、R3およびR4は、各々独立に水素原子、直鎖アルキル基、又は、分岐アルキル基、環状アルキル基、水酸基を有するアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基を表す。これらの基は、さらに置換基を有していても良く、2つ以上の不飽和結合部分を有する多官能重合性化合物を形成するための連結基とすることができる。X1はハロゲン原子を表す。
一般式(A−1)〜一般式(A−13)で表される不飽和化合物のうち、更には、一般式(A−1)、一般式(A−2)または一般式(A−6)で表される不飽和化合物であることが好ましい。
以下に、一般式(A−1)〜一般式(A−13)で表される不飽和化合物の一例を示すが、本発明におけるアクセプターモノマーは、以下に例示する不飽和化合物に限定されるものではない。なお、以下に例示する不飽和化合物が有する不飽和結合の炭素原子の電荷は、いずれも−0.30以上の値を示す。
本発明において、一般式(A−1)〜一般式(A−13)で表される単官能の不飽和化合物としては、以下の例が挙げられる。ビニレンジカルボン酸無水物を有する化合物の例として、無水マレイン酸、ビニレンイミドを有する化合物の例として、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−2−エチルヘキシルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−オクタデシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−(p−カルボメトキシフェニル)マレイミド、4,4′−ジマレイミドビスフェノールF、N−ブチルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、2,3−ジメチル−1−N−(2−メタクリルオキシエチルマレイミド、ビニレンジカルボン酸の例として、マレイン酸、フマル酸、ビニレンジカルボン酸エステルの例として、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジ−tert−ブチル、マレイン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジ−tert−ブチル、フマル酸ジ(2−エチルヘキシル)、等が挙げられるが、いずれもこれら具体例には限定されない。
また、好ましい不飽和結合を有する多官能の重合性モノマーを得るには、従来公知の様々な連結基骨格を用いて得ることができる。例えば、米国特許第6,034,150号明細書、特開平11−124403号公報に記載されているような多官能のマレイミド誘導体が挙げられる。
以下に、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物におけるアクセプターモノマーとして好ましく用いることのできるマレイミド誘導体について詳細に説明する。
前記マレイミド誘導体は、インクジェットインク組成物として要求される溶解性、低粘度、吐出安定性の観点から、分子中にキラル構造を有するマレイミド化合物が好ましい。
本発明において、キラル基を有するマレイミド化合物は、分子中にキラル炭素原子を最低一つ以上有していれば特に限定されないが、この好ましいマレイミド化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1)のR1およびR2は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1およびR2は互いに結合して環を形成してもよい。R1またはR2で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等を挙げることができる。また、R1及びR2が互いに結合して、シクロプロピレン環、シクロブチレン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等を形成してもよい。
一般式(1)のY1およびY3は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、アリーレン基、エステル基、エーテル基、チオエーテル基から選ばれる基が組み合わされた2価の有機連結基を表す。Y1またはY3で表される、アルキレン基、アルキレンオキシ基、アリーレン基、エステル基、エーテル基、チオエーテル基から選ばれる基が組み合わされた2価の有機連結基の例としては、
アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等);
アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基、ポリエチレンオキシ基、ブチレンオキシ基、ポリブチレンオキシ基等);
アルキレンオキシカルボニル基(例えば、エチレンオキシカルボニル基、ヘキシレンオキシカルボニル基等);
アルキレンカルボニルオキシ基(例えば、メチレンカルボニルオキシ基、ヘキシレンカルボニルオキシ基);
アリーレン基(例えば、フェニレン基、メチルフェニレン基);
オキシカルボニルフェニレンカルボニルオキシ基;
カルボニルオキシフェニレンオキシカルボニル基等が挙げられる。Y1は、好ましくはアルキレン基であり;Y3は、好ましくはアルキレンオキシカルボニル基またはアルキレンカルボニルオキシ基である。
一般式(1)のn1は0または1を表し、n2は0または1を表す。
一般式(1)のY2は、nが1である場合、不斉炭素(キラル炭素)を有する2価の基を表し;nが2以上である場合、それぞれ独立して単結合または不斉炭素(キラル炭素)を有する2価の基を表す。ただし、複数のY2のうち少なくとも一つは不斉炭素(キラル炭素)を有する2価の基であり、好ましくは複数のY2の全てが不斉炭素(キラル炭素)を有する2価の基である。
式中、Xは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルキルオキシ基、炭素数1〜18のアルキルカルボニルオキシ基または水酸基を表す。好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基)が挙げられる。
一般式(1)のnは、1〜6の整数を表し、好ましくは1または2を表す。
一般式(1)のZは、nが1である場合、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基等)、アルキルオキシ基、アルキルエステル基(アルキルオキシカルボニル基またはアルキルカルボニルオキシ基)または水酸基を表し;好ましくはアルキル基またはアルキルオキシ基であり;より好ましくは後述する一般式(2)のR13で示される基と同様である。
一般式(1)のZは、nが2以上である場合、アルキレン基、アルキルオキシ基、アリーレン基(ヘテロアリーレン基も含む)、エステル基(オキシカルボニル基またはカルボニルオキシ基)、エーテル基、チオエーテル基から選ばれる基が組み合わされたn価の連結基を表し;好ましくはアルキレン基またはアルキルオキシ基であり;より好ましくは後述する一般式(2)のR13で示される基と同様である。
2価の連結基の例には、一般式(1)のY1またはY3が示す2価の有機連結基と同様の基が含まれる。3価の連結基の例には、グリセリン、トリメチロールアルキル等から誘導されるアルキレン基;トリアジン等から誘導されるヘテロアリーレン基が含まれる。4価の連結基の例には、ペンタエリスリトール等から誘導されるアルキレン基が含まれる。6価の連結基の例には、ビストリメチロールアルキル等から誘導されるアルキレン基が含まれる。
多官能アクセプターモノマーは、好ましくは一般式(1)においてnが2以上であるマレイミド化合物であり;より好ましくは一般式(1)においてnが2であるマレイミド化合物である。
インクジェットヘッドからの出射のためには、キラル基を有するマレイミド化合物の分子量は200〜1000、好ましくは200〜800が好ましい。200より小さいと結晶化しやすく、出射時に目詰まりが起こりやすくなる。また、分子量は1000より大きいと、粘度が高くなり、出射が難しくなる。
さらに好ましくは、以下の構造式で表されるマレイミド化合物が挙げられる。
ここでn11、n12は0〜6の整数、n13は1〜30の整数が好ましい。R1、R2およびZは、一般式(1)におけるR1、R2およびZと同義である。Xは、上記Y2で表される不斉炭素(キラル炭素)を有する2価の基の例として挙げた式のXと同義である。特に好ましくは、R1およびR2は水素原子であり、Xは炭素数1〜4のアルキル基であり、n12は0であり、nは2であり、Zは炭素数1〜18のアルキレン基またはポリオキシアルキレン基である。
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
これらのマレイミド化合物の合成法は公知であり、例えば、特開平11−124403号公報、あるいはMacromolecular Chemical and physics,2009,210,269−278記載の方法を用いて、容易に合成することができる。
本発明のインク組成物において適用可能なより好ましいマレイミド誘導体としては、低粘度、溶解性、吐出安定性の観点から、下記一般式(2)で表されるマレイミド誘導体が挙げられる。
一般式(2)のR11およびR12は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、R11およびR12は互いに結合して環を形成してもよい。R11及びR12で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等を挙げることができる。またR11及びR12が互いに結合して、シクロプロペン環、シクロブチレン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等を形成しても良い。
一般式(2)のA11およびA13は、それぞれ独立にアルキレン基を表す。A11またはA13で表される2価のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、ブチレン基などが含まれ、好ましくはメチレン基である。一般式(2)のmは、0または1を表し、nは、0または1を表す。
一般式(2)のA12は、不斉炭素(キラル炭素)を有する2価の基を表す。A12は、−CHR14−であることが好ましい。R14は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルキルオキシ基、炭素数1〜18のアルキルカルボニルオキシ基または水酸基を表し、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基等)を表す。
一般式(2)のYは、カルボニルオキシ(−C=O−O−)またはオキシカルボニル(−O−C=O−)を表す。
一般式(2)のpは1または2を表す。一般式(2)のR13は、pが1の場合は、分子量15〜600のアルキル基またはアルキレンオキシ基を表し;pが2の場合は、分子量14〜600のアルキレン基またはアルキレンオキシ基を表す。
pが1の場合のR13で表される分子量15〜600のアルキル基としては、炭素数1〜18の直鎖あるいは分岐のアルキル基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ネオペンチル基、ドデシレル基、2,2,4−オクチル基等を挙げることができる。
pが1の場合のR13で表される分子量15〜600のアルキルオキシ基としては、ヒドロキシまたはアルコキシポリエチレンオキシ基、ヒドロキシまたはアルコキシポリプロピレンオキシ基、ヒドロキシまたはアルコキシポリブチレンオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
pが2の場合のR13で表される分子量14〜600のアルキレン基としては、炭素数1〜18の直鎖あるいは分岐のアルキレン基を表し、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、ネポペンチレン基、ドデシレン基、2,2,4−オクチレン基等を挙げることができる。
pが2の場合のR13で表される分子量14〜600のアルキレンオキシ基の例には、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、ポリブチレンオキシ基等が含まれる。
R13で表されるアルキル基、アルキルオキシ基、アルキレン基またはアルキレンオキシ基のアルキレン部分は、アルキレンオキシユニットを繰り返し単位として含んでいてもよい。アルキレンオキシユニットを繰り返し単位として含むアルキレン基の例には、「−(CH2CH2O)n−CH2CH2−」や「−(CH(−CH3)CH2−O)m−CH(−CH3)CH2−」などが例示できる。アルキレンオキシユニットを繰り返し単位として含むアルキレンオキシ基の例には、「−(OCH2CH2)n−O−」や「−(OCH(−CH3)CH2)m−O−」などが含まれる。
好ましいR13は、炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐のアルキル基または炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2〜12の直鎖もしくは分岐のアルキル基または炭素数2〜12の直鎖もしくは分岐のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数4〜12の直鎖もしくは分岐のアルキレン基または炭素数4〜12の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。
更には、一般式(2)においては、A11およびA13がメチレン基であり;A12が−CHR14−であり;R13が炭素数2〜12の直鎖もしくは分岐のアルキル基又は直鎖もしくは分岐のアルキレン基であることが好ましい。R14は、前述した通り、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルキルオキシ基、炭素数1〜18のアルキルカルボニルオキシ基または水酸基を表し、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基等)を表す。
さらに好ましいマレイミド誘導体として、下記一般式(II)〜(IV)で表されるマレイミド誘導体を挙げることができる。
上記一般式(II)〜(IV)において、R14は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルキルオキシ基、炭素数1〜18のアルキルカルボニルオキシ基または水酸基を表す。好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基等)が挙げられる。pは、1または2を表す。R15は、前記一般式(2)のR13と同様の基でありうるが、好ましくは直鎖の炭素数4〜12のアルキル基又はアルキレン基を表す。
以下に本発明の一般式(2)で表されるマレイミド誘導体の具体例を示す。
上記説明した本発明に係るアクセプターモノマーとしては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸エステル類、フマル酸エステル類、マレイミド化合物が、高感度化の観点から好ましい。
(ドナーモノマー)
本発明におけるドナーモノマーとは、電子過多の不飽和結合を有するモノマーであり、「不飽和結合を構成する炭素原子の電荷」(atomic charge)の値が−0.45以下の重合性モノマーである。本発明におけるドナーモノマーが含有する、不飽和結合を構成する炭素原子の電荷の値は、好ましくは−0.50以下である。
単官能ドナーモノマーとは、1分子中に電子過多の不飽和結合(例えばビニルエーテル基など)を1つだけ有する重合性モノマーであり;多官能ドナーモノマーとは、1分子中に電子過多の不飽和結合(例えばビニルエーテル基など)を2以上有する重合性モノマーである。
本発明のインク組成物に含まれる、不飽和結合を有する2種以上の重合性モノマーにおいて、不飽和結合を構成する炭素原子の電荷が最小である重合性モノマー(ドナーモノマーの一つ)が、下記一般式(6)で表される不飽和化合物であることが好ましい。
上記一般式(6)において、Xは、−O−、−NR4−、−S−、または−SO−を表す。Yは、水素原子、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、水酸基を有するアルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基を表し、さらに、置換基を有していても良い。R1、R2、R3は、各々独立に水素原子、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、水酸基を有するアルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基を表し、さらに、置換基を有していても良い。また、R2またはR3の一部とYとが結合して環状構造を形成してもよい。また、Yの一部が連結基を介し、2つ以上の不飽和結合を有する多官能ドナーモノマーを形成してもよい。
一般式(6)で表される不飽和化合物の具体例としては、例えば、ビニルエーテル、プロペニルエーテル等のアルケニルエーテル類、ビニルチオエーテル、プロペニルチオエーテル等のアルケニルチオエーテル、ビニルスルホキシド、プロペニルスルホキシド等のアルケニルスルホキシド類、カルボン酸エステルの酸素原子にビニル基が結合したビニルエステル類、アミノ基の窒素原子にビニル基が結合したビニルアミン類、アミド基の窒素原子にビニル基が結合したビニルアミド類、イミダゾール環の窒素原子にビニル基が結合したビニルイミダゾール、カルバゾール環の窒素原子にビニル基が結合したビニルカルバゾール、ビニレン骨格と酸素原子を環内に含む環状5員環、環状6員環化合物等が挙げられる。
一般式(6)で表わされる化合物が、下記一般式(D−1)〜(D−9)で表される化合物であることがより好ましい。
式中、R5〜R9は、各々独立に水素原子、直鎖アルキル基、又は、分岐アルキル基、環状アルキル基、水酸基を有するアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基を表し、さらに置換基を有していても良く、2つ以上の不飽和結合部分を有する多官能重合性化合物を形成するための連結基とすることができる。Zは、−O−、−N(R10)−または−S−を示す。R10は、水素原子、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基、水酸基を有するアルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基を表し、さらに置換基を有していても良い。
(単官能ドナーモノマー)
一般式(6)で表される単官能ドナーモノマーにおいては、Yが、水素原子、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、水酸基を有するアルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基を表わす。Xは、−O−、−N(R11)CO−、−NR4−、−S−、または−SO−を表わし、R11は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を表わし、R11がYと連結して環を形成しても良い。
以下に、単官能ドナーモノマーの具体例を示す。
ビニルチオエーテル、ビニルスルホキシドを含有する重合性モノマーとして、ビニルメチルスルホキシド、ビニル−tert−ブチルスルフィド、ビニルメチルスルフィド、ビニルエチルスルフィド等が挙げられる。
ビニレン骨格と窒素原子または酸素原子を環内に含む環状5員環、環状6員環化合物を有する重合性モノマーとして、イミダゾール、ピロール、フラン、ジヒドロフラン、ピラン、ジヒドロピラン等が挙げられる。
窒素原子上にビニル基が置換した構造を有するN−ビニル化合物の具体例としては、例えば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−N−エチルウレア、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルエチルカルバメートおよびそれらの誘導体が挙げられ、これらの化合物の中でも特にN−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミドが好ましい。N−ビニルホルムアミドは、例えば、荒川化学工業株式会社から入手することができる。
〔単官能ビニルエーテル化合物〕
活性エネルギー線硬化型インクジェットインクに含まれるドナーモノマーは、一般式(3)で表わされる単官能ビニルエーテル化合物を含有することが好ましい。
式(3)中、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表わし、R6は、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表わす。
単官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
上記以外にも、これまでに開示されている種々のビニルエーテル化合物を適用することが可能である。例えば、特許第3461501号公報に開示されている分子内に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を含む化合物、特許第4037856号公報に開示されている少なくとも酸素原子を含む脂環骨格を持つビニルエーテル化合物、特開2005−015396号公報に開示されている脂環式骨格を有するビニルエーテル、特開2008−137974号公報に開示されている1−インダニルビニルエーテル、特開2008−150341号公報に開示されている4−アセトキシシクロヘキシルビニルエーテル等。
一般式(6)で表わされる単官能ドナーモノマーのうち、Xが−O−である単官能ドナーモノマー(単官能ビニルエーテル化合物)が保存安定性の点から特に好ましい。
(多官能ドナーモノマー)
活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは前記単官能ドナーモノマーに加えて、多官能ドナーモノマーを含有することが、硬化感度、耐候性および耐溶剤性を向上することから好ましい。一般式(6)で表される多官能ドナーモノマーは、上記一般式(D−1)〜一般式(D−9)から選ばれる少なくとも1種の不飽和化合物であり、R5〜R9が1つ以上の不飽和結合部分を有する多官能重合性化合物を形成するための連結基である多官能ドナーモノマーであることが好ましく、なかでも一般式(D−1)で表わされる化合物であることが特に好ましい。
次いで、一般式(D−1)〜一般式(D−9)で表される本発明に係る不飽和結合を有する多官能ドナーモノマーの一例を示すが、本発明ではここに例示するドナーモノマーに限定されるものではない。なお、以下に例示する重合性モノマーの不飽和結合を構成する炭素原子が有する電荷値は、いずれも−0.40以下である。
例えば、ビニルエーテル化合物としては、以下に示すものがある。2官能ビニルエーテル化合物としては、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル(TEGDVE)、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテルなどを挙げることができる。
この他にも特許第4037856号公報に開示されている少なくとも酸素原子を含む脂環骨格を持つビニルエーテル化合物、特開2005−015396号公報に開示されている脂環式骨格を有するビニルエーテル、特開2008−137974号公報に開示されている1−インダニルビニルエーテル、特開2008−150341号公報に開示されている4−アセトキシシクロヘキシルビニルエーテル等を挙げることができる。
また、上記に挙げたジビニルエーテルのビニルエーテル基をプロペニルエーテル基、イソプロペニルエーテル基、ブテニルエーテル基、イソブテニルエーテル基に置換するなど、ビニルエーテル基のα位またはβに置換基を導入することもできる。
これらの2官能ビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジエチレングリコールジビニルエーテルおよびトリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、が硬化性、種々の素材との相溶性、臭気、安全性の点で優れており好ましい。
〈3官能以上の多官能ビニルエーテル化合物〉
本発明に好適な3官能以上の多官能ビニルエーテル化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどが挙げられる。
3官能のビニルエーテル化合物としては、下記一般式(A)で表される化合物のような分子内にオキシアルキレン基を有する化合物が、その他の化合物との相溶性や溶解性、基材との密着性を得る上で好ましい。また、オキシアルキレン基の総数は10以下であることが好ましい。10より大きいと、硬化膜の耐水性が低下する。なお、下記一般式(A)ではオキシエチレン基を例示しているが、炭素数の異なるオキシアルキレン基とすることも可能である。オキシアルキレン基の炭素数としては1〜4とすることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
上記一般式(A)において、R11は水素または有機基を表す。R11で表される有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基;炭素数1〜6個のフルオロアルキル基;アリール基;フリル基またはチエニル基;アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基または3−ブテニル基等の炭素数1〜6個のアルケニル基;フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基またはフェノキシエチル基等のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基またはペンチルカルボニル基等の炭素数1〜6個のアルキルカルボニル基;エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基またはブトキシカルボニル基等の炭素数1〜6個のアルコキシカルボニル基;エトキシカルバモイル基、プロピルカルバモイル基またはブチルペンチルカルバモイル基等の炭素数1〜6個のアルコキシカルバモイル基等の基が挙げられるがこれらに限定されない。この中でも有機基としては、ヘテロ原子を含まない炭化水素基が硬化性の観点で好ましい。また、p、qおよびrは、0または1以上の整数であり、p+q+rは、3〜10の整数である。
また、ビニルエーテル基を4つ以上有する多官能ビニルエーテル化合物としては、下記一般式(B)、(C)に表される化合物を挙げることができる。
上記一般式(B)において、R
12は、メチレン基などの炭素数1〜6のアルキレン基、オキシアルキレン基、エステル基の何れかを含む連結基である。p、q、lおよびmは、それぞれ0または1以上の整数であり、p+q+l+mの総数は、3〜10の整数である。
上記一般式(C)において、R13は、メチレン基などの炭素数1〜6個のアルキレン基、オキシアルキレン基、エステル基の何れかを含む連結基を表す。p1、q1、r1、l1、m1、s1は、それぞれ0または1以上の整数であり、p1+q1+r1+l1+m1+s1の総数は、3〜10の整数である。
上記一般式(B)、(C)においてはオキシエチレン基を例示しているが、炭素数の異なるオキシアルキレン基とすることも可能である。オキシアルキレン基の炭素数としては1〜4であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
(その他のモノマー)
本発明では、その他のモノマーとして、不飽和結合を構成する炭素原子の電荷が、−0.45を超え、−0.30未満の重合性化合物であっても、本発明の効果を損なわない範囲で適宜添加することができる。以下にそのような重合性化合物について説明する。
前記重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、不飽和結合を構成する炭素原子の電荷が、−0.45を超え、−0.30未満であり、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。
前記その他のモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性モノマーが挙げられる。
具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、トリデシルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート等のアクリル酸誘導体;メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体;その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体、が挙げられる。更に具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品若しくは業界で公知のラジカル重合性および架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
これらのアクリレート類及びメタクリレート類の中でも、硬化性と硬化後の膜物性の観点から、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート等のエーテル酸素原子を有するアルコールのアクリレートが好ましいものとして挙げられる。また、同様の理由から、脂環構造を有するアルコールのアクリレートも好ましく、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート等のビシクロ環構造又はトリシクロ環構造を有するアクリレートが好ましいものの具体例として挙げられ、中でも、脂環構造内に二重結合を有する、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートが特に好ましいものとして挙げられる。
〔光重合開始剤〕
本発明のインク組成物においては、高感度を得る観点から、光重合開始剤として、光ラジカル重合開始剤、増感剤を含有することが好ましい。
本発明のインク組成物に適用可能な光ラジカル重合開始剤としては、分子開裂型または水素引き抜き型のものが本発明に好適である。具体例としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等が好適に用いられ、さらにこれら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等を併用しても良いし、さらに水素引き抜き型光重合開始剤である、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルスルフィド、メタロセンタイプの重合開始剤であるビス(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、オキシムエステルタイプの重合開始剤である、1,2−オクタンジオン,1−(4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム))、エタノン,1−(9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル)−,1−(O−アセチルオキシム)等も使用できる。
また、上記光ラジカル重合開始剤に対し、増感剤として、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のラジカル重合性モノマーと付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。もちろん、上記光ラジカル重合開始剤や増感剤は、ラジカル重合性モノマーへの溶解性に優れるものを選択して用いることが好ましい。
光ラジカル重合開始剤と増感剤は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物全質量に対して0.1〜20質量%、好ましくは、1〜12質量%の範囲である。
その他に、欧州特許第1,674,499A号明細書に記載のデンドリマーコアに開始剤構造としてアミン系開始助剤を結合させたタイプ、欧州特許第2,161,264A号明細書、欧州特許第2,189,477A号明細書に記載の重合性基を有する開始剤、アミン系開始助剤、欧州特許第1,927,632B1号明細書に記載の複数のアミン系開始助剤を1分子内に有するタイプ、国際公開第2009/060235号に記載の分子内に複数のチオキサントンを含有するタイプ、Lamberti社より市販されているESACURE ONE、ESACUR KIP150に代表されるαヒドロキシプロピオフェノンが側鎖に結合したオリゴマータイプの重合開始剤なども好ましく用いることができる。
また、本発明においては、マレイミド含有の重合性モノマーを用いる場合には、マレイミド含有重合性モノマー自身が開始剤として機能することができる。
次いで、本発明のインク組成物のその他の構成要素について説明する。
〔着色剤〕
本発明のインクジェットインクを着色する場合は、顔料を着色剤として用いることが好ましい。顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無色無機顔料又は有色有機顔料を使用することができる。有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系有機顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系有機顔料;ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系有機顔料;イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系有機顔料;ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系有機顔料;チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロンイエロー等のキノフタロン系有機顔料;イソインドリンイエローなどのイソインドリン系有機顔料;その他の顔料として、フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)番号で以下に例示する。
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、 C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、
C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、
C.I.ピグメントグリーン7、36、
C.I.ピグメントブラウン23、25、26、
上記顔料の中でも、キナクリドン系、フタロシアニン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、縮合アゾ系、キノフタロン系、イソインドリン系有機顔料等は耐光性が優れているため好ましい。
有機顔料は、レーザ散乱による測定値でインク中の平均粒径が10〜150nmの微細粒子であることが好ましい。顔料の平均粒径が10nm未満の場合は、粒径が小さくなることによる耐光性の低下が生じ、150nmを超える場合は分散の安定維持が困難になり、顔料の沈澱が生じ易くなるとともに、吐出安定性が低下し、サテライトと言われる微小のミストが発生する問題が起こる。ただし、酸化チタンの場合は白色度と隠蔽性を持たせるために平均粒径は150〜300nm、好ましくは180〜250nmとする。
またインク中の顔料の最大粒径は、1.0μmを越えないよう、十分に分散あるいは、ろ過により粗大粒子を除くことが好ましい。粗大粒子が存在すると、やはり吐出安定性が低下する傾向にある。
有機顔料の微細化は、以下の方法で行うことができる。即ち、有機顔料、有機顔料の3質量倍以上の水溶性無機塩及び水溶性溶剤の少なくとも3成分から成る混合物を粘土状とし、ニーダー等で強く練り込んで微細化した後、水中に投入し、ハイスピードミキサー等で攪拌してスラリー状とする。次いで、スラリーの濾過と水洗を繰り返して、水溶性の無機塩及び水溶性の溶剤を、水性処理により除去する。微細化工程において、樹脂、顔料分散剤等を添加してもよい。
水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらの無機塩は有機顔料の3〜20質量倍の範囲で用いるが、分散処理を行った後は、本発明で規定するハロゲンイオン含有量を達成するため、塩素イオン(ハロゲンイオン)を水洗処理により取り除く操作を行う。無機塩の量が3質量倍よりも少ないと、所望の大きさの処理顔料が得られず、又、20質量倍よりも多いと、後の工程における洗浄処理が多大であり、有機顔料の実質的な処理量が少なくなる。
水溶性溶剤は、有機顔料と破砕助剤として用いられる水溶性無機塩との適度な粘土状態を作り、充分な破砕を効率よく行うために用いられ、水に溶解する溶剤であれば特に限定されないが、混練時に温度が上昇して溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から沸点120〜250℃の高沸点の溶剤が好ましい。水溶性溶剤として、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(i−ペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
また顔料はその表面に顔料分散剤との吸着を促進するために、酸性処理または塩基性処理、シナージスト、各種カップリング剤など、公知の技術により表面処理を行うことが分散安定性を確保するために好ましい。
顔料は、十分な濃度及び十分な耐光性を得るため、インクジェットインク中に白色を除く色の場合1.5〜8質量%、酸化チタンを用いた白色インクの場合、10〜30質量%の範囲で含まれることが好ましい。
〔顔料分散剤〕
顔料分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート、顔料誘導体等を挙げることができる。
具体例としては、BYK Chemie社製の「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「400」、「Bykumen」(高分子量不飽和酸エステル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコーン系)」、「Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコーン)」が挙げられる。
又、Efka CHEMICALS社製の「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、745(銅フタロシアニン系)」;共栄化学社製の「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」;楠本化成社製の「ディスパロンKS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」等が挙げられる。
更には、花王社製の「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、EP」、「ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)」、「エマルゲン920、930、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート)」;ゼネカ社製の「ソルスパーズ5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13240、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000、32000、7000」;日光ケミカル社製の「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline4−0(ヘキサグリセリルテトラオレート)」、味の素ファインテクノ製のアジスパー821、822、824等が挙げられる。
これらの顔料分散剤は、顔料100に対し5〜70質量%、好ましくは10〜50質量%の範囲で含有させることが好ましい。5%より少ないと分散安定性が得られにくい場合があり、70%より多いと吐出安定性が劣化する場合がある。
更に、これらの顔料分散剤は、0℃におけるカチオン重合性モノマー全体へ5質量%以上の溶解性があることが好ましい。溶解性が5質量%未満であると、インクを0℃〜10℃程度の間で低温保存をしたときに、好ましくないポリマーゲルまたは顔料の軟凝集体が発生する場合があり、インクの保存安定性と吐出安定性とが劣化する場合がある。
〔ラジカル重合禁止剤〕
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物あるいはインクジェットインクでは、保存安定性の観点から、ラジカル重合禁止剤を添加するのが好ましい。本発明のインクジェットインクは、保存中に、熱や光の影響で発生したラジカルによりラジカル重合がおこる場合が考えられる。ラジカル重合禁止剤を、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物あるいはインクジェットインクに使用することは、保存中に起きるラジカル重合を防ぐ効果がある反面、光カチオン重合の硬化は阻害しないことから、本発明のようなビニルエーテルを主とし硬化性に極めて優れたインクの光硬化を阻害せずに、インクの経時保存安定性だけを高めてくれる作用があることから非常に好ましい実施形態である。
ラジカル重合禁止剤としては、フェノール系水酸基含有化合物、メトキノン(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、ハイドロキノン、4−メトキシ−1−ナフトール、ヒンダードアミン系酸化防止剤、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル フリーラジカル、N−オキシド化合物類、ピペリジン 1−オキシル フリーラジカル化合物類、ピロリジン 1−オキシル フリーラジカル化合物類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン類、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、各種糖類、リン酸系酸化防止剤、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体、ジシアンジアミドとポリアルキレンポリアミンの重縮合物、フェノチアジン、などが挙げられる。
ラジカル重合禁止剤としては、具体的には以下の化合物を挙げることができる。
フェノール性化合物としては、例えば、次の化合物である:フェノール、アルキルフェノール、例えば、o−、m−又はp−クレゾール(メチルフェノール)、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、6−t−ブチル−2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−メチル−4−t−ブチルフェノール、4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェノール、又は2,2′−メチレン−ビス−(6−t−ブチル−メチルフェノール)、4,4′−オキシジフェニル、3,4−メチレンジオキシジフェノール(ゴマ油)、3,4−ジメチルフェノール、ベンズカテキン(1,2−ジヒドロキシベンゾール)、2−(1′−メチルシクロヘキシ−1′−イル)−4,6−ジメチルフェノール、2−又は4−(1′−フェニルエチ−1′−イル)フェノール、2−t−ブチル−6−メチルフェノール、2,4,6−トリス−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ノニルフェノール[CAS−Nr.11066−49−2]、オクチルフェノール[CAS−Nr.140−66−9]、2,6−ジメチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールF、ビスフェノールS、3,3′,5,5′−テトラブロモビスフェノールA、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、BASF Aktiengesellschaftのコレシン(Koresin)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、4−t−ブチルベンズカテキン、2−ヒドロキシベンジルアルコール、2−メトキシ−4−メチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、6−イソプロピル−m−クレゾール、n−オクタデシル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゾール、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル−イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート又はペンタエリスリット−テトラキス−[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6−ジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノメチルフェノール、6−s−ブチル−2,4−ジニトロフェノール、Firma Ciba Spezialitaetenchemieのイルガノックス(Irganox)565、1010、1076、1141、1192、1222及び1425、3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルエステル。3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヘキサデシルエステル、3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクチルエステル、3−チア−1,5−ペンタンジオール−ビス−[3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,8−ジオキサ−1,11−ウンデカンジオール−ビス−[3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,8−ジオキサ−1,11−ウンデカンジオール−ビス−[(3′−t−ブチル−4′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)プロピオネート]、1,9−ノナンジオール−ビス−[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,7−ヘプタンジアミン−ビス[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド]、1,1−メタンジアミン−ビス[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド]、3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、3−(3′,5′−ジメチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、ビス−(3−t−ブチル−5−エチル−2−ヒドロキシフェニ−1−イル)メタン、ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニ−1−イル)メタン、ビス−[3−(1′−メチルシクロヘキ−1′−イル)−5−メチル−2−ヒドロキシフェニ−1−イル]メタン、ビス−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニ−1−イル)メタン、1,1−ビス−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニ−1−イル)エタン、ビス−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニ−1−イル)スルフィド、ビス−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニ−1−イル)スルフィド、1,1−ビス−(3,4−ジメチル−2−ヒドロキシフェニ−1−イル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス−(5−t−ブチル−3−メチル−2−ヒドロキシフェニ−1−イル)ブタン、1,3,5−トリス−[1′−(3″,5″−ジ−t−ブチル−4″−ヒドロキシフェニ−1″−イル)メチ−1′−イル]−2,4,6−トリメチルベンゾール、1,1,4−トリス−(5′−t−ブチル−4′−ヒドロキシ−2′−メチルフェニ−1′−イル)ブタン及びt−ブチルカテコール、及びアミノフェノール、例えば、p−アミノフェノール、ニトロソフェノール、例えば、p−ニトロソフェノール、p−ニトロソ−o−クレゾール、アルコキシフェノール、例えば、2−メトキシフェノール(グアヤコール、ベンズカテキンモノメチルエーテル)、2−エトキシフェノール、2−イソプロポキシフェノール、4−メトキシフェノール(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、モノ−又はジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジルアルコール、2,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンジルアルコール(シリンガアルコール)、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、4−ヒドロキシ−3−エトキシベンズアルデヒド(エチルバニリン)、3−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド(イソバニリン)、1−((4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)エタノン(アセトバニリン)、オイゲノール、ジヒドロオイゲノール、イソオイゲノール、トコフェロール、例えば、α−、β−、γ−、δ−及びε−トコフェロール、トコール、α−トコフェロールヒドロキノン、及び2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ヒドロキシベンゾフラン(2,2−ジメチル−7−ヒドロキシクマラン)。
また、キノン及びヒドロキノンとして、例えば、ヒドロキノン又はヒドロキノンモノメチルエーテル(4−メトキシフェノール)、メチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン4−メチルベンズカテキン、t−ブチルヒドロキノン、3−メチルベンズカテキン、ベンゾキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、4−エトキシフェノール、4−ブトキシフェノール、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、p−フェノキシフェノール、2−メチルヒドロキノン、テトラメチル−p−ベンゾキノン、ジエチル−1,4−シクロヘキサンジオン−2,5−ジカルボキシレート、フェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−3−ベンジル−p−ベンゾキノン、2−イソプロピル−5−メチル−p−ベンゾキノン(チモキノン)、2,6−ジイソプロピル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−3−ヒドロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジヒドロキシ−p−ベンゾキノン、エンベリン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、2−アミノ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ビスフェニルアミノ−1,4−ベンゾキノン、5,8−ジヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、2−アニリノ−1,4−ナフトキノン、アントラキノン、N,N−ジメチルインドアニリン、N,N−ジフェニル−p−ベンゾキノンジイミン、1,4−ベンゾキノンジオキシム、セルリグノン、3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメチルジフェノキノン、p−ロゾール酸(オーリン)、2,6−ジ−t−ブチル−4−ベンジリデン−ベンゾキノン、2,5−ジ−t−ブチル−アミルヒドロキノンが好適である。
また、N−オキシル(ニトロキシル−又はN−オキシル−基、少なくとも1個の>N−O・−基を有する化合物)としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、BASF Aktiengesellschaftのウビヌル(Uvinul)4040P、4,4′,4″−トリス−(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル)ホスフィット、3−オキソ−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジン−N−オキシル、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−メトキシピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−トリメチルシリルオキシピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−2−エチルヘキサノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−セバケート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−ステアレート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−ベンゾエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−(4−t−ブチル)ベンゾエート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)スクシネート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジペート、1,10−デカンジ酸−ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステル、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルマロネート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)フタレート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)イソフタレート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)テレフタレート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ヘキサヒドロテレフタレート、N,N′−ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジピンアミド、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カプロラクタム、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ドデシルスクシンイミド、2,4,6−トリス−[N−ブチル−N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル]トリアジン、N,N′−ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N′−ビス−ホルミル−1,6−ジアミノヘキサン、4,4′−エチレン−ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペラジン−3−オン)が好適である。
芳香族アミン又はフェニレンジアミンとして、例えば、N,N−ジフェニルアミン、N−ニトロソ−ジフェニルアミン、ニトロソジエチルアニリン、p−フェニレンジアミン、N,N′−ジアルキル−p−フェニレンジアミン(この際、アルキル基は同じ又は異なっていてよく、各々相互に無関係で、1〜4個の炭素原子を含み、直鎖又は分子鎖であってよい)、例えば、N,N′−ジ−イソ−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−イソ−プロピル−p−フェニレンジアミン、Firma Ciba Spezialitaetenchemieのイルガノックス5057、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン(BASF Aktiengesellschaftのケロビット(Kerobit)BPD)、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(Bayer AGのブルカノックス(Vulkanox)4010)、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、イミノジベンジル、N,N′−ジフェニルベンジジン、N−フェニルテトラアニリン、アクリドン、3−ヒドロキシジフェニルアミン、4−ヒドロキシジフェニルアミンが好適である。
イミンとしては、例えば、メチルエチルイミン、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾキノンイミン、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾフェノンイミン、N,N−ジメチルインドアニリン、チオニン(7−アミノ−3−イミノ−3H−フェノチアジン)、メチレンバイオレット(7−ジメチルアミノ−3−フェニチアジノン)である。
ラジカル重合禁止剤として有効なスルホンアミドは、例えば、N−メチル−4−トルオールスルホンアミド、N−t−ブチル−4−トルオールスルホンアミド、N−t−ブチル−N−オキシル−4−トルオールスルホンアミド、N,N′−ビス(4−スルファニルアミド)ピペリジン、3−{[5−(4−アミノベンゾイル)−2,4−ジメチルベンゾールスルホニル]エチルアミノ}−4−メチルベンゾールスルホン酸である。
ラジカル重合禁止剤として有効なオキシムとしては、例えば、アルドキシム、ケトキシム又はアミドキシム、有利にジエチルケトキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム、ベンズアルデヒドキシム、ベンジルジオキシム、ジメチルグリオキシム、2−ピリジンアルドキシム、サリチルアルドキシム、フェニル−2−ピリジルケトキシム、1,4−ベンゾキノンジオキシム、2,3−ブタンジオンジオキシム、2,3−ブタンジオンモノオキシム、9−フルオレノンオキシム、4−t−ブチル−シクロヘキサノンオキシム、N−エトキシ−アセチミド酸エチルエステル、2,4−ジメチル−3−ペンタノンオキシム、シクロドデカノンオキシム、4−ヘプタノンオキシム及びジ−2−フラニルエタンジオンジオイキシム又は他の脂肪族又は芳香族オキシム又はアルキル転移剤、例えば、アルキルハロゲニド、−トリフレート、−スルホネート、−トシレート、−カルボネート、−スルフェート、−ホスフェート等とのその反応生成物であってよい。
ヒドロキシルアミンは、例えば、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン及びPCT/EP03/03139の国際特許出願に記載されている化合物を挙げることができる。
尿素誘導体として、例えば、尿素又はチオ尿素が好適である。
燐含有化合物は、例えば、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィット、次亜燐酸、トリノニルホスフィット、トリエチルホスフィット又はジフェニルイソプロピルホスフィンである。
硫黄含有化合物として、例えば、ジフェニルスルフィド、フェノチアジン及び硫黄含有天然物質、例えば、システインが好適である。
テトラアザアンヌレン(TAA)をベースとする錯化剤は、例えば、Chem.Soc.Rev.1998,27,105−115に挙げられている、例えば、ジベンゾテトラアザ[14]環及びポルフィリンである。
その他にも、炭酸、塩化、ジチオカルバミン酸、硫酸、サリチル酸、酢酸、ステアリン酸、エチルヘキサン酸等の各金属塩(銅、マンガン、セリウム、ニッケル、クロム等)を挙げることができる。
また、Macromol.Rapid Commun.,28,1929(2007)に記載のビニルエーテル官能基を有するN−オキシル フリーラジカル化合物は、重合性機能とラジカル捕捉機能を同一分子内に併せ持つ構造であり、硬化性とインク保存性の観点から、本発明のインクに添加するのは好ましい。又、このビニルエーテル官能基を有するN−オキシル フリーラジカル化合物を重合して得られたポリマーは、側鎖にフリーラジカルを有する構造を持つ高分子であり、耐溶剤性、擦過性、耐候性といった硬化膜物性や、インク保存性の観点から、本発明のインクに添加することが好ましい。
ラジカル重合禁止剤の添加量は、1.0〜5000μg/gインクであることが好ましく、10〜2000μg/gインクがより好ましい。1.0μg/gインク以上であれば、所望の保存安定性が得られ、インクの増粘やインクジェットノズルに対する撥液性を得ることができ、吐出安定性の観点で好ましい。また、5000μg/gインク以下であれば、重合開始剤の酸発生効率を損なうことがなく、高い硬化感度を維持することができる。
〔カチオン重合禁止剤〕
本発明の活性エネルギー光線硬化型インクジェットインクにおいては、ラジカル重合禁止剤と共にカチオン重合禁止剤を添加することが好ましい。
カチオン重合禁止剤としては、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物もしくは、アミン類を挙げることができる。アルカリ金属イオン類は後述するようにできるだけ添加しない方が好ましく、アミン類が適している。
アミンとして好ましくは、アルカノールアミン類、N,N−ジメチルアルキルアミン類、N,N−ジメチルアケニルアミン類、N,N−ジメチルアルキニルアミン類などであり、具体的には、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、2−アミノエタノール、2−メチルアミノエタノール、3−メチルアミノ−1−プロパノール、3−メチルアミノ−1,2−プロパンジオール、2−エチルアミノエタノール、4−エチルアミノ−1−ブタノール、4−(n−ブチルアミノ)−1−ブタノール、2−(t−ブチルアミノ)エタノール、N,N−ジメチルウンデカノール、N,N−ジメチルドデカノールアミン、N,N−ジメチルトリデカノールアミン、N,N−ジメチルテトラデカノールアミン、N,N−ジメチルペンタデカノールアミン、N,N−ジメチルノナデシルアミン、N,N−ジメチルイコシルアミン、N,N−ジメチルエイコシルアミン、N,N−ジメチルヘンイコシルアミン、N,N−ジメチルドコシルアミン、N,N−ジメチルトリコシルアミン、N,N−ジメチルテトラコシルアミン、N,N−ジメチルペンタコシルアミン、N,N−ジメチルペンタノールアミン、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N,N−ジメチルヘプタノールアミン、N,N−ジメチルオクタノールアミン、N,N−ジメチルノナノールアミン、N,N−ジメチルデカノールアミン、N,N−ジメチルノニルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルトリデシルアミン、N,N−ジメチルテトラデシルアミン、N,N−ジメチルペンタデシルアミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、N,N−ジメチルヘプタデシルアミン、N,N−ジメチルオクタデシルアミンが挙げられる。これらの他にも、4級アンモニウム塩なども使用することができる。中でも2メチルアミノエタノールは少量の添加で硬化性を落とさずに保存安定性を改善することができるので好ましい。
カチオン重合禁止剤の添加量は10ppm〜5000ppmであることが好ましい。カチオン重合禁止剤の添加量を10ppm以上とすることにより良好な保存安定性が得られ、インクの増粘やインクジェットノズルに対する良好な撥液性が得られ吐出安定性を維持できる点で好ましい。カチオン重合禁止剤の添加量を5000ppm以下とすることにより、活性エネルギー線開始剤の酸発生効率を十分に維持することが可能となり、硬化感度を維持することが可能となる。
また、上記のカチオン重合禁止剤とラジカル重合禁止剤を併用することも好ましい。ラジカル重合禁止剤を併用することにより、インク中に不純物や残留酸が存在していても飛躍的にインクの保存安定性を向上させられることが分かった。
〔その他の添加剤〕
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物あるいはインクジェットインクでは、上記説明した以外に、必要に応じて、出射安定性、プリントヘッドやインク包装容器適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、界面活性剤、滑剤、充填剤、消泡剤、ゲル化剤、増粘剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができる。
更に、必要に応じてエステル系溶剤、エーテル系溶剤、エーテルエステル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、含窒素系有機溶剤など少量の溶剤を添加することもできる。
具体例としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、テトラエチレンスルホキシド、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、メチル−イソプロピルスルホン、メチル−ヒドロキシエチルスルホン、スルホラン、或いは、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、β−ラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、イソホロン、シクロヘキサノン、炭酸プロピレン、アニソール、メチルエチルケトン、アセトン、乳酸エチル、乳酸ブチル、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、二塩基酸エステル、メトキシブチルアセテート、等、が挙げられる。これらをインク中に1.5〜30%、好ましくは、1.5〜15%添加するとポリ塩化ビニル等の樹脂記録媒体に対する密着性が向上する。
別の具体例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等が挙げられる。
また、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物あるいはインクジェットインクに使用することができる界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、シリコーン系やフッ素系の界面活性剤が挙げられ、特にシリコーン系もしくはフッ素系の界面活性剤が好ましい。
シリコーン系もしくはフッ素系の界面活性剤を添加することで、塩化ビニルシートをはじめ種々の疎水性樹脂からなる記録媒体や、印刷本紙などの吸収が遅い記録媒体に対して、インク混じりをより抑えることができ、高画質な印字画像を得られる。該界面活性剤は、前記低表面張力の水溶性有機溶剤と併用することが特に好ましい。
シリコーン系の界面活性剤としては、好ましくはポリエーテル変性ポリシロキサン化合物があり、例えば、信越化学工業製のKF−351A、KF−642、X−22−4272やビッグケミー製のBYK307、BYK345、BYK347、BYK348、東芝シリコーン社製のTSF4452などが挙げられる。
フッ素系の界面活性剤は、通常の界面活性剤の疎水性基の炭素に結合した水素の代わりに、その一部または全部をフッ素で置換したものを意味する。この内、分子内にパーフルオロアルキル基を有するものが好ましい。
フッ素系の界面活性剤の内、ある種のものはDIC社からメガファック(Megafac)Fなる商品名で、旭硝子社からサーフロン(Surflon)なる商品名で、ミネソタ・マイニング・アンド・マニファクチュアリング・カンパニー社からフルオラッド(Fluorad)FCなる商品名で、インペリアル・ケミカル・インダストリー社からモンフロール(Monflor)なる商品名で、イー・アイ・デュポン・ネメラス・アンド・カンパニー社からゾニルス(Zonyls)なる商品名で、またファルベベルケ・ヘキスト社からリコベット(Licowet)VPFなる商品名で、またネオス社からフタージェントなる商品名それぞれ市販されている。
界面活性剤の添加量としては、インク全質量に対して、0.1質量%以上、2.0質量%未満が好ましい。
インクの表面張力としては、15mN/m以上であれば、インクジェットヘッドのノズル周りが濡れて吐出能力が低下することがなく、また35mN/m未満であれば表面エネルギーが通常の紙よりも低いコート紙や樹脂製の記録媒体によく濡れて白ぬけが発生することがないため好ましい。
〔インク物性〕
本発明のインクジェットインクの物性は、通常の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクと同様の物性値を有することが好ましい。即ち、粘度は25℃において2〜50mPa・sで、シェアレート依存性ができるだけ小さく、表面張力は25℃において22〜35mN/mの範囲にあること、着色剤として顔料を用いる場合には、顔料粒子以外には平均粒径が1.0μmを超えるようなゲル状物質が無いこと、電導度は10μS/cm以下の電導度とし、ヘッド内部での電気的な腐食のないインクとすることが好ましい。コンティニュアスタイプにおいては、電解質による電導度の調整が必要であり、この場合には0.5mS/cm以上の電導度に調整する必要がある。
加えて、本発明のインクジェットインクの物性として、更に好ましい形態は、毎分5℃の降下速度で25℃から−25℃の範囲でインクのDSC測定を行ったとき、単位質量あたりの発熱量が10mJ/mg以上の発熱ピークを示さないことである。本発明の構成に従って素材の選定を行うことにより、DSC測定において一定量以上の発熱を抑えることができる。このような構成とすることにより、インクを低温で保存した場合においてもゲルの発生や、析出物の発生を抑えることができる。
〔インクの調製方法〕
本発明のインクジェットインクは、活性エネルギー線硬化型化合物である重合性モノマー、光重合開始剤、着色剤である顔料分散剤と、着色剤として顔料を用いる場合には、顔料と共にサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することにより製造される。予め顔料高濃度の濃縮液を調製しておき、重合性モノマーで希釈することが好ましい。通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、このため、過剰な分散エネルギーが掛からず、多大な分散時間を必要としないので、インク成分の分散時の変質を招き難く、安定性に優れたインクが調製できる。調製されたインクは、孔径3μm以下、更には1μm以下のフィルターで濾過することが好ましい。
〔記録媒体〕
本発明のインクジェット記録方法に用いる記録媒体としては、従来、各種の用途で使用されている広汎な合成樹脂が全て対象となり、具体的には、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等が挙げられ、これらの合成樹脂基材の厚みや形状は何ら限定されない。この他にも金属類、ガラス、印刷用紙なども使用できる。
本発明のインクジェット記録方法で用いる記録媒体の一つであるポリ塩化ビニルの具体例としては、SOL−371G、SOL−373M、SOL−4701(以上、ビッグテクノス株式会社製)、光沢塩ビ(株式会社システムグラフィ社製)、KSM−VS、KSM−VST、KSM−VT(以上、株式会社きもと製)、J−CAL−HGX、J−CAL−YHG、J−CAL−WWWG(以上、株式会社共ショウ大阪製)、BUS MARK V400 F vinyl、LITEcal V−600F vinyl(以上、Flexcon社製)、FR2(Hanwha社製)LLBAU13713、LLSP20133(以上、桜井株式会社製)、P−370B、P−400M(以上、カンボウプラス株式会社製)、S02P、S12P、S13P、S14P、S22P、S24P、S34P、S27P(以上、Grafityp社製)、P−223RW、P−224RW、P−249ZW、P−284ZC(以上、リンテック株式会社製)、LKG−19、LPA−70、LPE−248、LPM−45、LTG−11、LTG−21(以上、株式会社新星社製)、MPI3023(株式会社トーヨーコーポレーション社製)、ナポレオングロス 光沢塩ビ(株式会社二樹エレクトロニクス社製)、JV−610、Y−114(以上、アイケーシー株式会社製)、NIJ−CAPVC、NIJ−SPVCGT(以上、ニチエ株式会社製)、3101/H12/P4、3104/H12/P4、3104/H12/P4S、9800/H12/P4、3100/H12/R2、3101/H12/R2、3104/H12/R2、1445/H14/P3、1438/One Way Vision(以上、Inetrcoat社製)、JT5129PM、JT5728P、JT5822P、JT5829P、JT5829R、JT5829PM、JT5829RM、JT5929PM(以上、Mactac社製)、MPI1005、MPI1900、MPI2000、MPI2001、MPI2002、MPI3000、MPI3021、MPI3500、MPI3501(以上、Avery社製)、AM−101G、AM−501G(以上、銀一株式会社製)、FR2(ハンファ・ジャパン株式会社製)、AY−15P、AY−60P、AY−80P、DBSP137GGH、DBSP137GGL(以上、株式会社インサイト社製)、SJT−V200F、SJT−V400F−1(以上、平岡織染株式会社製)、SPS−98、SPSM−98、SPSH−98、SVGL−137、SVGS−137、MD3−200、MD3−301M、MD5−100、MD5−101M、MD5−105(以上、Metamark社製)、640M、641G、641M、3105M、3105SG、3162G、3164G、3164M、3164XG、3164XM、3165G、3165SG、3165M、3169M、3451SG、3551G、3551M、3631、3641M、3651G、3651M、3651SG、3951G、3641M(以上、Orafol社製)、SVTL−HQ130(株式会社ラミーコーポレーション製)、SP300 GWF、SPCLEARAD vinyl(以上、Catalina社製)、RM−SJR(菱洋商事株式会社製)、Hi Lucky、New Lucky PVC(以上、LG社製)、SIY−110、SIY−310、SIY−320(以上、積水化学工業株式会社製)、PRINT MI Frontlit、PRINT XL Light weight banner(以上、Endutex社製)、RIJET 100、RIJET 145、RIJET165(以上、Ritrama社製)、NM−SG、NM−SM(日栄化工株式会社製)、LTO3GS(株式会社ルキオ社製)、イージープリント80、パフォーマンスプリント80(以上、ジェットグラフ株式会社製)、DSE 550、DSB 550、DSE 800G、DSE 802/137、V250WG、V300WG、V350WG(以上、Hexis社製)、Digital White 6005PE、6010PE(以上、Multifix社製)等が挙げられる。
また、可塑剤を含有しない樹脂基材又は非吸収性の無機基材を構成要素とする記録媒体としては、下記の各種基材を構成要素として、1種類の基材単独で、又は複数の種類の基材を組み合わせて、使用をすることができる。本発明に用いられる可塑剤を含有しない樹脂基材としては、例えば、ABS樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、可塑剤を含有しない硬質ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂は可塑剤を含有していないことが特徴であるが、その他の厚み、形状、色、軟化温度、硬さ等の諸特性について特に制限はない。
本発明に用いられる記録媒体として好ましくは、ABS樹脂、PET樹脂、PC樹脂、POM樹脂、PA樹脂、PI樹脂、可塑剤を含有しない硬質PVC樹脂、アクリル樹脂、PE樹脂、PP樹脂である。さらに好ましくはABS樹脂、PET樹脂、PC樹脂、PA樹脂、可塑剤を含有しない硬質PVC樹脂、アクリル樹脂である。
また、本発明に用いられる非吸収性の無機基材としては、例えば、ガラス板、鉄やアルミニウムなどの金属板、セラミック板等が挙げられる。これらの無機基材は表面にインク吸収性の層を有していないことが特徴である。これらの非吸収性の無機基材はその他の厚み、形状、色、軟化温度、硬さ等の諸特性について特に制限はない。
本発明のインクジェットインクは、表面エネルギーが25mN/m以上、50mN/m未満の記録媒体において、特に本発明の効果を良好に発揮することができる。記録媒体の表面エネルギーの例としては、例えば、IJ180CV2(3M社製、ポリ塩化ビニル、表面エネルギー=38.0mN/m)、MD5(Metamark社製、ポリ塩化ビニル、表面エネルギー=36.6mN/m)、ORAJET(ORACAL社製、ポリ塩化ビニル、表面エネルギー=33.1mN/m)、OPAQUE MATT FILM(Oce社製、ポリエチレンテレフタレート、表面エネルギー=35.4mN/m)、特菱アート(三菱製紙社製、アート紙、表面エネルギー=37.6mN/m)、HANITA(ハニタコーティング社製、ポリエチレンテレフタレート、表面エネルギー=35.4mN/m)、ルミラー38−T60(東レ社製、未処理ポリエチレンテレフタレート、表面エネルギー=36.9mN/m)、サンロイドユニ G400(住友ベークライト社製、ポリ塩化ビニル、表面エネルギー=34.5mN/m)、スミペックス 068(住友化学社製、アクリルキャスト、表面エネルギー=39.5mN/m)、サンロイドペットエース EPG400(住友ベークライト社製、非結晶性ポリエチレンテレフタレート、表面エネルギー=35.7mN/m)、リンテック社グロス(キャストコート紙、表面エネルギー27mN/m)、マルウ接着社製白PET#50溶剤強粘PGS(ポリエチレンテレフタレート、表面エネルギー50mN/m)等を挙げることができる。
なお、本発明に係る記録媒体の表面エネルギーは、表面張力が既知の2種類以上の液体を用いて接触角を測定することにより算出できる。
〔インジェット記録方法〕
本発明のインクジェットインクを吐出して画像形成を行う本発明のインジェット記録方法において使用するインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。又吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等など何れの吐出方式を用いても構わない。
本発明のインクジェット記録方法は、上記本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクをインクジェットノズルより記録媒体上に吐出して、次いで紫外線などの活性エネルギー線を照射してインクを硬化させる記録方法である。
(インク着弾後の活性エネルギー線照射条件)
本発明のインクジェット記録方法においては、活性エネルギー線の照射条件として、インク着弾後0.001秒〜1.0秒の間に活性エネルギー線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜0.5秒である。
高精細な画像を形成するためには、照射タイミングができるだけ早いこと好ましい。
活性エネルギー線の照射方法は、特に限定されず、例えば、下記の方法で行うことができる。特開昭60−132767号公報に記載のヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査し、照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われ、さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化が完了する方法、あるいは米国特許第6,145,979号明細書に記載の光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へ紫外線を照射する方法を挙げることができる。
本発明のインクジェット記録方法においては、これらの何れの照射方法も用いることができる。
また、活性エネルギー線の照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性エネルギー線を照射し、かつ、全印字終了後、さらに活性エネルギー線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性エネルギー線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
(インク着弾後の総インク膜厚)
本発明のインクジェット記録方法では、記録媒体上にインクが着弾し、活性エネルギー線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが、記録媒体のカール、皺、記録媒体の質感変化、などの面から好ましい。
尚、ここでいう「総インク膜厚」とは、記録媒体に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
(インクの加熱および吐出条件)
本発明のインクジェット記録方法においては、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを加熱した状態で、活性エネルギー線を照射することが、吐出安定性の面から、好ましい。
加熱する温度としては、35〜100℃が好ましく、35〜80℃に保った状態で、活性エネルギー線を照射すること、吐出安定性の点でさらに好ましい。
インクジェットインクを所定の温度に加熱、保温する方法として特に制限はないが、例えば、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク等のインク供給系や、フィルター付き配管、ピエゾヘッド等を断熱して、パネルヒーター、リボンヒーター、保温水等により所定の温度に加熱する方法がある。
インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃が好ましく、さらに設定温度±2℃が好ましく、特に設定温度±1℃が、吐出安定性の面から好ましい。
各ノズルより吐出する液滴量としては、記録速度、画質の面から2〜20plであることが好ましい。
次いで、本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)について説明する。
図1は記録装置の主要部の構成の一例を示す正面図である。記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。
この記録装置1では、記録媒体Pの下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録媒体Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
記録媒体Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行う。
ヘッドキャリッジ2は記録媒体Pの上側に設置され、記録媒体P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。
ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
尚、図1ではヘッドキャリッジ2がホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)、ホワイト(W)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行っているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性エネルギー線硬化型インクジェットインク(例えばUV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録媒体Pに向けて吐出する。
記録ヘッド3は記録媒体Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録媒体Pの他端まで移動するという走査の間に、記録媒体Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対してUVインクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
上記走査を適宜回数行い、1領域の着弾可能領域に向けて活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの吐出を行った後、搬送手段で記録媒体Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行いながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対してUVインクの吐出を行う。
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段および搬送手段と連動して記録ヘッド3か活性エネルギー線硬化型インクジェットインクらを吐出することにより、記録媒体P上に活性エネルギー線硬化型インクジェットインク滴の集合体からなる画像が形成される。
照射手段4は、例えば特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプ8および特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。
ここで、紫外線ランプ8としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザ、冷陰極管、熱陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、熱陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましく、特に超寿命で安価ということから、LEDが好ましい。LEDを照射手段4の放射線源に用いることで、UVインクを硬化するための照射手段4を安価に作製することができる。
ただし一般的に、LEDは単一波長光源であり高圧水銀灯のような複数の輝線スペクトルを有する光源より照度が低くなりやすい。本発明のようにラジカル重合で硬化させる場合、照度が低いとラジカルが酸素と結合して失活する割合が増えるので、時間を延長して積算光量を同じにしても、硬化しにくくなる。従って、インクとしては低照度、低積算光量で硬化可能なことが求められている。
安価なLED光源を使用するには、照度として8W/cm2以下が好ましく、更に2W/cm2以下が好ましい。
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(UVインクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録媒体Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録媒体Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録媒体Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。
又、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にするとさらに好ましい。
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプまたはフィルターを交換することで適宜変更することができる。
図2は、インクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。図2で示したインクジェット記録装置は、ラインヘッド方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に、各色のインクジェット記録ヘッド3を、記録媒体Pの全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置されている。
一方、ヘッドキャリッジ2の下流側、すなわち、記録媒体Pが搬送される方向のヘッドキャリッジ2の後部には、同じく記録媒体Pの全幅をカバーするようにして、インク印字面全域をカバーするように配置されている照射手段4が設けられている。
照明手段4に用いられる紫外線ランプは、図1に記載したのと同様のものを用いることができる。
このラインヘッド方式では、ヘッドキャリッジ2および照射手段4は固定され、記録媒体Pのみが、搬送されて、インク出射および硬化を行って画像形成を行う。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、実施例において断りの無い限り、組成中の成分の量と比率は質量と質量比を意味する。
実施例1
〔顔料分散体1の調製〕
イエロー顔料として、C.I.ピグメントイエロー150を6.0gと、顔料分散剤としてアジスパーPB824(味の素ファインテック株式会社製)を3.0gと、トリエチレングリコールジビニルエーテルを40gとを、0.5mmのジルコニアビーズ200g(200質量部)と共に、100mlのポリプロピレンの密閉容器に入れて、ペイントシェーカー(RED DEVIL EQUIPMENT CO.製 TWIN−ARM ONE−GALLON SHAKER 5400)を用いて6時間分散を行い、顔料分散体1を得た。
〔顔料分散体2の調製〕
マゼンタ顔料として、C.I.ピグメントレッド122を6.0gと、顔料分散剤としてアジスパーPB824(味の素ファインテック株式会社製)を3.0gと、トリエチレングリコールジビニルエーテルを40gとを、0.5mmのジルコニアビーズ200g(200質量部)と共に、100mlのポリプロピレンの密閉容器に入れて、ペイントシェーカー(RED DEVIL EQUIPMENT CO.製 TWIN−ARM ONE−GALLON SHAKER 5400)を用いて6時間分散を行い、顔料分散体2を得た。
〔顔料分散体3の調製〕
シアン顔料として、C.I.ピグメントブルー15:4を10.0gと、顔料分散剤としてアジスパーPB824(味の素ファインテック株式会社製)を5.0gと、トリエチレングリコールジビニルエーテルを34gとを、0.5mmのジルコニアビーズ200g(200質量部)と共に、100mlのポリプロピレンの密閉容器に入れて、ペイントシェーカー(RED DEVIL EQUIPMENT CO.製 TWIN−ARM ONE−GALLON SHAKER 5400)を用いて6時間分散を行い、顔料分散体3を得た。
〔顔料分散体4の調製〕
シアン顔料として、C.I.ピグメントブルー15:4を10.0gと、顔料分散剤としてアジスパーPB824(味の素ファインテック株式会社製)を5.0gと、ジエチレングリコールモノビニルエーテルを34gとを、0.5mmのジルコニアビーズ200g(200質量部)と共に、100mlのポリプロピレンの密閉容器に入れて、ペイントシェーカー(RED DEVIL EQUIPMENT CO.製 TWIN−ARM ONE−GALLON SHAKER 5400)を用いて6時間分散を行い、顔料分散体4を得た。
〔顔料分散体5の調製〕
ブラック顔料として、カーボンブラックMA−7を6.0gと、顔料分散剤としてアジスパーPB824(味の素ファインテック株式会社製)を3.0gと、トリエチレングリコールジビニルエーテルを40gとを、0.5mmのジルコニアビーズ200g(200質量部)と共に、100mlのポリプロピレンの密閉容器に入れて、ペイントシェーカー(RED DEVIL EQUIPMENT CO.製 TWIN−ARM ONE−GALLON SHAKER 5400)を用いて6時間分散を行い、顔料分散体5を得た。
〔顔料分散体6の調製〕
シアン顔料として、C.I.ピグメントブルー15:4を10.0gと、顔料分散剤としてソルスパース24000SC(日本ルーブリゾール株式会社製)を5.0gと、ドデシルビニルエーテル34gとを、0.5mmのジルコニアビーズ200g(200質量部)と共に、100mlのポリプロピレンの密閉容器に入れて、ペイントシェーカー(RED DEVIL EQUIPMENT CO.製 TWIN−ARM ONE−GALLON SHAKER 5400)を用いて6時間分散を行い、顔料分散体6を得た。
〔インクの調製〕
表1〜4の組成となるように、顔料インク分散体、アクセプターモノマー、ドナーモノマー、光重合開始剤、ラジカル重合禁止剤、およびカチオン重合禁止剤を常温(23℃)で30〜60分間攪拌混合し、インクジェットインク、インク1〜15および18〜45を作製した。
尚、使用した材料は以下の通り。
なお、イエロー顔料分散体は顔料分散体1を用い、マゼンタ顔料分散体は顔料分散体2を用い、ブラック顔料分散体は顔料分散体5を用いた。
シアン顔料分散体として、インク1、2、7〜15、18〜21、23〜45においては顔料分散体3を用い、インク22においては顔料分散体6を用いた。
以下、表1〜4に記載の化合物について、以下に説明する。
(2官能アクセプターモノマー)
化合物1:M−3(電荷=−0.27、分子量=462.49、一般式(1)で表される化合物の具体例)
化合物2:M−44(電荷=−0.27、分子量=304.34、一般式(1)で表される化合物の具体例)
化合物1および2は、特開平11−124403号公報、あるいはMacromolecular Chemical and physics,2009,210,269−278記載の方法を用いて従来公知の方法で合成した。
化合物3:下記式の化合物(電荷=−0.25、分子量=358.34)
化合物3は、以下の公知の方法にて合成した。即ち、1リットルの三口フラスコに、マレイン酸ジエチル206g(1.2mol)、ジエチレングリコール42.2g(0.4mol)を入れて撹拌しながら、パラトルエンスルホン酸一水和物4.7g(27mmol)、0.2gのハイドロキノンを加える。160℃で18時間撹拌したのち、減圧蒸留にて、残ったマレイン酸ジエチルを留去し、重曹水、イオン交換水で洗浄後、カラム精製を行い、化合物3を得た。淡黄色オイル状物。
(単官能アクセプターモノマー)
化合物4:M−38(電荷=−0.27、分子量=281.35、一般式(1)で表される化合物の具体例)
化合物4は、特開平11−124403号公報、あるいはMacromolecular Chemical and physics,2009,210,269−278記載の方法を用いて従来公知の方法で合成した。
フマル酸ジブチル(電荷=−0.27、分子量=228.28)
(2官能ドナーモノマー)
TEGDVE:トリエチレングリコールジビニルエーテル(電荷=−0.54、分子量=202.25、BASFジャパン株式会社製)
(単官能ドナーモノマー)
DEGMVE:ジエチレングリコールモノビニルエーテル(電荷=−0.54、分子量=132.16、丸善石油化学株式会社製)
DDVE:ドデシルビニルエーテル(電荷=−0.54、分子量=212.38、BASFジャパン株式会社)
なお、上記化合物の電荷は、分子軌道計算ソフトに、SPARTAN‘08 for Windows(登録商標)を使用し、計算手法として、Equilibrium Geometry at Ground state with Hartree−Fock 3−21G in Vacuumを使用し求め、電荷の値として、Natural atomic chargeを用いて表わした。
(光重合開始剤)
TPO:ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド SPEEDCURE TPO(LAMBSON,LTD社)
ITX:2−イソプロピルチオキサントン、及び4−イソプロピルチオキサントンの混合物 SPEEDCURE ITX(LAMBSON,LTD社)
(顔料)
CB:カーボンブラックMA−7(三菱化学株式会社)
PY:C.I.ピグメントイエロー150(ランクセス株式会社)
PR:C.I.ピグメントレッド122(大日精化株式会社)
PB:C.I.ピグメントブルー15:4(大日精化株式会社)
(顔料分散剤)
PB824:アジスパーPB−824(味の素ファインテクノ株式会社)
(ラジカル重合禁止剤)
UV−10:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ−4−イル)セバケート IRGASTAB UV−10(BASFジャパン)
(カチオン重合禁止剤)
2MAE:2−メチルアミノエタノール(関東化学株式会社)
得られたインクの硬化感度、粘度、硬化収縮、耐候性、耐溶剤性、柔軟性を、以下の方法で評価した。
(硬化感度)
ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、各インクをワイヤーバー(No.3)で塗布し、出力2W/cm2の385nmのLEDにより光照射して、硬化させた直後の膜表面を触指し、表面タック(粘着性)の無くなる時点での光量(硬化光量)を測定した。
◎:50mJ/cm2未満の光量で硬化
○:50mJ/cm2以上100mJ/cm2未満の光量で硬化
△:100mJ/cm2以上200mJ/cm2未満の光量で硬化
×:200mJ/cm2以上の光量が硬化のために必要。
(インク粘度)
25℃〜55℃におけるインクの粘度(mPa・s)をレオメータ(Paar Physica製 MCR300)により測定した。
◎:25℃以上45℃未満において9mPa・s以上12mPa・s未満の粘度範囲に収まる
○:45℃以上50℃未満において9mPa・s以上12mPa・s未満の粘度範囲に収まる
△:50℃以上55℃以下において9mPa・s以上12mPa・s未満の粘度範囲に収まる
×:55℃を超える温度で9mPa・s以上12mPa・s未満の粘度範囲に収まる
(硬化収縮)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーT−60、厚さ38μm、東レ社製)上に、各インクをワイヤーバー(No.7)で、ウェット厚みで10μmとなるように塗布した。得られた塗布層に、出力2W/cm2のLEDにより、波長385nmの光を500mJ/cm2の光量で照射して、硬化させる操作を2回繰り返した。硬化後の塗布層を有するフィルムを、長さ方向75mm、幅方向5mmに裁断した。塗布層が硬化収縮してカールすることにより長さ方向の両端の距離が短くなるので、長さ方向の両端の距離を指標として、下記のように評価した。
◎:硬化後の塗布層を有するフィルムに反りなし(距離が75mm)
○:硬化後の塗布層を有するフィルムにごく僅かに反りが見られる(距離が70mm以上75mm未満)
△:硬化後の塗布層を有するフィルムに反りが見られるが、許容範囲内(距離が65mm以上70mm未満)
×:硬化後の塗布層を有するフィルムに反りが大きく、NGレベル(距離が65mm未満)
(インクジェット画像の作製)
各インクを、コニカミノルタIJ社製のピエゾヘッドKM512MHを用いて、1ドットあたりの液滴量14plで、720dpi×720dpi(本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)のベタ画像をポリ塩化ビニルシート(IJ180)上にパス数8回で印字し、出力2W/cm2の385nmのLEDにより、1回のパス毎に1回(40mJ/cm2)の照射を行い、計8回の照射で、トータル320mJ/cm2の光量を照射して、画像膜を硬化しインクジェット画像を形成した。
(耐候性)
上記ベタ画像をスガ試験機株式会社製低温キセノンウェザーメーターXL75にて600時間保存し、保存前後の画像濃度をX−rite(D65光源、2度、ステータスA)で測定し、以下の濃度残存率を計算により求めた。
濃度残存率(%)=(保存後の濃度)/(保存前の濃度)*100(%)
◎:濃度残存率95%以上
○:濃度残存率90%以上95%未満
△:濃度残存率80%以上90%未満
×:濃度残存率80%未満
(耐溶剤性)
上記耐候性評価にて、キセノンフェードメーターで600時間保存した画像の表面を2−プロパノールに浸した綿棒で10回ふき取りを行った。
○:全く変化なし
△:綿棒に僅かに色が付着するが、画像面の色は許容範囲
×:ふき取りにより画像面の色が薄くなり、NGレベル
(柔軟性)
上記作製したインクジェット画像を幅1cm、長さ5cmの短冊状に切り取り、長形方向の両端をクランプで固定して引っ張り試験を行い、印字画像にクラックが生じる迄の引っ張り長さを測定し、以下の式により柔軟性(%)を求めた。
柔軟性(%)=(クラックが発生した時点の長さ)/(初期の長さ=5cm)*100(%)
◎:柔軟性160%以上
○:柔軟性140%以上160%未満
△:柔軟性120%以上140%未満
×:柔軟性120%未満
下記、表1〜4に比率X、官能基モル分率Y、官能基モル分率Z、官能基モル分率Vおよび評価結果を示す。なお、表5,表6に、表1〜4に記載のモノマーの組成と分子量より求めた各モノマーのモル分率を示した。
インク1〜12、30〜37、38〜45の結果から、比率Xが0.66〜2の間、より好ましくは0.75〜1.1の間にすることで、硬化感度に優れ、耐候性、耐溶剤性、インク粘度、硬化収縮、柔軟性に優れたインクジェットインクが得られる。比率Xが、0.66未満となると、硬化感度、耐候性、耐溶剤性、柔軟性などが未達となる。比率Xが2を超えると、インク粘度、硬化収縮、柔軟性が未達となる。
又、多官能アクセプターモノマーの本発明の定義における官能基mol分率Yが、0.4〜0.52において、本発明の効果が更に良好であることが分かる。
インク13〜15、18〜22にて、単官能ドナーモノマーの本発明の定義における官能基mol分率Zが、0.17〜0.58において、インク粘度、硬化収縮、柔軟性がより良好であることが分かる。但し、0.34以上であると、やや感度が下がる。
インク23〜25、26〜29にて、単官能アクセプターモノマーの本発明の定義における官能基mol分率Vが、0.04〜0.17において、インク粘度、硬化収縮、柔軟性がより良好であることが分かる。但し、0.10を超えると感度がやや下がる。
インク1〜12、30〜37、38〜45の結果から、多官能アクセプターモノマーが、マレイミド化合物である場合に、硬化感度、耐候性が良好であり、さらに、一般式(2)で表わされるマレイミドを用いることで、インク粘度、硬化収縮、柔軟性がより良好になることが分かる。
実施例2
〔インクの調製〕
実施例1のインク1の作製において、表7〜表12の組成となるようにした他は同様にインク46〜69を作成した。
尚、使用した顔料分散液、材料は、評価方法は、実施例1で用いたもの、及び方法と同じ。
実施例2で新たに使用された表7〜表12に記載の化合物について、以下に説明する。
(2官能アクセプターモノマー)
化合物5:M−2(電荷=−0.27、分子量=420.41、一般式(1)で表される化合物の具体例)
化合物5は、特開平11−124403号公報、あるいはMacromolecular Chemical and physics,2009,210,269−278記載の方法を用いて従来公知の方法で合成した。
(単官能ドナーモノマー)
2EHVE:2−エチルヘキシルビニルエーテル(電荷=−0.53、分子量=156.27)
CHMMVE:1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル(電荷=−0.54、分子量=170.25)
なお、上記化合物の電荷は、実施例1と同様に求めた。
(ラジカル重合禁止剤)
BHT : 2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
p−メトキシフェノール
(カチオン重合禁止剤)
TIPA : トリイソプロパノールアミン
KOH : 水酸価カリウム
追加の評価として、60℃、1週間、密閉容器で保存したインクについて、硬化感度2(実施例1記載と同じ評価方法)、インク粘度変化(評価基準は以下に示す)、及びインク臭気(評価基準は以下に示す)を評価した。
(インク粘度変化)
保存前のインクの粘度をレオメータ(Paar Physica製 MCR300)により、温度を変化させながら測定し、粘度が10mPa・sとなる温度T1を求めた。次に、同様に温度T1における保存後のインクの粘度を測定した。この時の、保存前の粘度に対する保存後の粘度の変動率(%)を以下のように求めた。
変動率(%)=|(保存後の粘度−10mPa・s)/(10mPa・s)|*100(%)
◎:変動率が5%未満
○:変動率が5%以上、10%未満
△:変動率が10%以上、15%未満
×:変動率が15%以上。
(インク臭気)
保存後のインクの臭気を官能評価した。
◎:臭気なし
○:僅かに臭気があるが、不快なものではない。
△:臭気があるが、インクジェット印字を行う上での許容範囲内。
×:不快な臭気があり、許容範囲外。換気、又は、マスク、ドラフト等の臭気削減手段が必要。
下記表7〜表12に比率X、官能基モル分率Y、官能基モル分率Z、官能基モル分率Vおよび評価結果を示す。なお、表13、表14に、表7〜表12に記載のモノマーの組成と分子量より求めた各モノマーのモル分率を示した。
本発明の比率Xが(0.66〜2の間)、多官能アクセプターモノマーの本発明の定義における官能基mol分率Yが(0.4〜0.52)、単官能ドナーモノマーの本発明の定義における官能基mol分率Zが(0.17〜0.58)、単官能アクセプターモノマーの本発明の定義における官能基mol分率Vが(0.04〜0.17)、を満たすインクジェットインクにおいて、ラジカル重合禁止剤とカチオン重合禁止剤を併用すると、硬化感度に優れ、耐候性、耐溶剤性、インク粘度、硬化収縮、柔軟性に優れ、さらには、インク保存後の硬化感度、インク粘度変化率、臭気がより好ましいものになることが分かる。ラジカル重合禁止剤のみを添加した場合、あるいは、カチオン重合禁止剤のみを添加した場合でも、インク保存後の硬化感度、インク粘度変化率、臭気が、許容範囲内であるが、ラジカル重合禁止剤とカチオン重合禁止剤を併用した場合、更に優れた性能に成ることが分かる。
本出願は、2011年4月1日出願の特願2011−081530に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。