JP6015062B2 - ゼオライト膜を用いて放射性物質含有水を濃縮する装置 - Google Patents
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Description
これらの方法は何れも、溶解性物質の主成分が放射性物質でありその含有量が比較的少ない水溶液に対してはかなり有効な処理方法である。しかし、福島第1原子力発電所の津波被災事故で発生した海水等を含む高放射性廃水のように、放射性物質以外の物質をかなり多量に含む放射性物質含有水溶液を処理対象とする場合などでは、共存物質の存在が吸着効果等を阻害して該放射性物質の除去効率をかなり低下させ、放射性物質のみならず溶存物質もほとんど含まない浄化された水を高回収率で取得回収することは実質的にかなり困難である。
しかし、海水濃度に近い共存物質を含む前記福島第1原子力発電所における廃水などでは浸透圧が高いため、浸透圧以上の加圧が必須条件である逆浸透(RO)プロセスにおいては、膜を透過させて浄化された水を高回収率で取得回収すると共に、膜を透過しない溶存物質を高倍率に濃縮することは原理的に困難である。因みに、海水の浸透圧は約2.5MPaで、逆浸透法の操作圧は通常5〜6MPa程度であるため、このようなケースにおける水回収率は高々50%程度しか期待できない。換言すれば、膜透過しない溶存物質の濃縮倍率は2倍以下と言うことである。
逆浸透法以外の膜分離プロセスとしては、膜蒸留法や浸透気化法を利用する装置やプロセス等がいくつか提案されている。膜蒸留法は、膜内の孔の中に液相の水溶液を浸入させず気相が保たれる疎水性の高分子多孔質膜等を用いて水蒸気を膜透過させるプロセスで、膜透過の駆動力が水蒸気圧差であることなど本発明で活用する浸透気化法と形態的には類
似したプロセスであるが、浸透気化膜が水とエタノールなどとの分子オーダーでの分離機能を有するのに対し、膜蒸留法で使用する疎水性多孔質膜の孔径は少なくとも0.1マイクロメーター(μm)以上と大きく、このような蒸発成分に対する分離機能は全くない。しかし、放射性物質含有水の濃縮等への応用に関しては、特許文献1、特許文献2などいくつか提案例がある。いずれも疎水性の高分子多孔質膜を用いているため、高い耐放射線性を期待することは困難で、高温や高放射線量の放射性物質含有水溶液の処理への適用には限界がある。しかも実際には、親水性物質による膜汚染などにより膜の疎水性を維持することが困難となり、水蒸気のみを優先的に膜透過させる膜蒸留作用の長時間維持が困難であるのが実情で、現時点では膜の疎水性を長時間保てる実用的な膜蒸留膜は、高分子製およびセラミックス製とも、いまだ開発されていない。
の最終廃棄物の容量・重量ができるだけ小さくなることが要求されている。また、既往の冷却システムが利用困難な原子力発電所のアクシデント発生時等においては、高温の放射性物質含有水の効率的な冷却や、核燃料中の残存放射性物質による発熱が問題となる核燃料プール水の効率的な定温維持等が要求されている。
すなわち、本発明の要旨は、下記に示すとおりである。
(1)セシウム含有水濃縮用の膜分離装置であって、セシウム含有水から微細粒子を分離除去する金属製あるいはセラミックス製の微細ろ過装置、微細粒子を除去したセシウム含有水を膜モジュールに供給するためのポンプ、浸透気化プロセスにより、該セシウム含有水から水を除去し、セシウムを濃縮する、SiO2/Al2O3モル比が3以上であるゼオライトを含むチャバサイト型ゼオライト膜を内装する膜モジュール、該ゼオライト膜を透過した膜透過水蒸気を捕集・回収するための装置を有することを特徴とする、セシウム含有水濃縮用の膜分離装置。
(2)微細ろ過装置が、金属製であり、30μm以上の微細粒子を分離除去できる機能を有することを特徴とする(1)記載の装置。
(3)被処理水が膜モジュールに達する前に加熱するための加熱装置を装備する(1)または(2)のいずれか1項に記載の装置。
(4)耐放射線性を有する金属製の濃縮水用タンクと、金属製あるいはプラスチック製の浄化水用タンクとを有する(1)〜(3)のいずれか1項に記載の装置。
(5)ゼオライト膜で濃縮処理された処理水を被処理水として再び循環供給するための配管と、その戻し量を調節する制御弁を装備することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の装置。
(6)ゼオライト膜を透過して除染・浄化された水蒸気を吸引・捕集するためのエジェクター装置を装備した(1)〜(5)のいずれか1項に記載の装置。
(7)エジェクターから排出された水溶液をエジェクターの作動用水として再利用することを特徴とする(6)記載の装置。
(8)膜透過水蒸気を吸引・捕集するために使用されるエジェクターの作動水蒸気圧を低く維持するため、エジェクターの作動用水を冷却する冷却装置を備えることを特徴とする
(6)または(7)に記載の装置。
(9)処理システムの高放射線量抑制目的で放射性物質を吸着法あるいは凝集法あるいは透析法を単独もしくは複数組み合わせた方法で除去する装置を装備することを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の装置。
(10)該ゼオライト膜は、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜である、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の装置。
(11)セシウム含有水の濃縮方法であって、セシウム含有水をSiO2/Al2O3モル比が3以上であるゼオライトを含むチャバサイト型ゼオライト膜を内装する膜モジュールに供給し、浸透気化プロセスにより、該セシウム含有水から水を除去し、セシウムを濃縮することを特徴とする、セシウム含有水の濃縮方法。
(12)該ゼオライト膜は、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜である、(11)記載のセシウム含有水の濃縮方法。
存物質の高度濃縮を図る装置およびプロセスを提供する。
また、該ゼオライト膜の浸透気化分離機能における潜熱移動作用を利用することにより、高温の放射性物質含有水等の温度低下を図る冷却や、使用済み核燃料を保存する燃料プール水の冷却維持等を効率的に行うことができる装置およびプロセスを提供する。
放射性物質を含まない低濃度の溶存物質を含む水溶液の濃縮には、通常多くの場合逆浸透(RO)膜が用いられる。しかし、放射性物質が比較的低濃度の被処理水を濃縮する場合でも、濃縮された放射性物質の放出放射線量により高分子製逆浸透(RO)膜やそのシール材等が劣化するため、逆浸透(RO)膜を用いて濃縮することは困難で、現在までのところ他に適当な濃縮方法がないのが実情である。
に適用できる膜が実質的になく、災害時に発生する原子力発電所廃水など100℃以上となる高温の放射性物質含有水の処理への適用等は困難である。浸透気化法に関しては、高温でも耐水性や酸性性、耐アルカリ性等において化学的に安定で高水蒸気透過性を示し工業的利用が可能な実用的浸透気化膜は、まだ開発されておらず、そのような膜の適用例もまだ報告されていない。因みに、高分子は一般にアルカリ性溶液には弱く、フッ素系樹脂以外には高温のアルカリ性水溶液に耐える高分子はほとんどない。なお、疎水性の高分子多孔質膜はフッ素系樹脂製であるが、所謂テフロン(登録商標)製等のバルク材ではないため、高温のアルカリ性水溶液中では多孔質部分の疎水的性質性が親水化されて親水性となるなど、その機能が大きく変質する。
さらに、放射性物質を含む高温の被処理水の温度を下げるためには、現状では、冷却媒体と直接接触をさせない間接熱交換器を用いて冷却水によりその温度を下げる既往の方法以外に他に適当な方法がないのが実情である。しかし、このような間接熱交換器により冷却を行う場合、特に被処理水が高温であったり多量であったりするケースでは、伝熱面積が大きく機器サイズも大きな熱交換器と、多量の冷却水を送液する大型のポンプが必要とされる。
そこで本発明は、耐熱・耐放射線性のゼオライト膜が有する浸透気化分離(PV)機能における潜熱移動作用を利用することにより、高温の放射性物質含有水等の温度低下をコンパクトな機器で効率よく行うことができる新規な冷却方法を提供しようとするものである。
本発明の中核となる浸透気化(PV)プロセスは、図1に示すような原理に基づく膜分離プロセスとしては比較的新しい技術で、90wt%以上の含水バイオエタノールの脱水や電子材料の洗浄等に使用されたイソプロピルアルコール(IPA)の脱水などの分野で実用化されている。
この浸透気化プロセスでは、図1に示したように、被処理水を膜の1次側(被処理水側)に供給し、本発明で使用するような親水性が高いゼオライト膜においては水が選択的に膜透過し、膜の2次側表面から水蒸気の形で離脱するので、これを捕集・凝縮させて膜透過水を得る。一方、被処理水はその一部が膜透過することにより結果的に濃縮され、膜装置の出口から排出される。この膜透過の駆動力は、膜透過物質である水の蒸気圧差である。
図2に、ゼオライト膜における膜透過機構の概念を示す。ゼオライトはアルミナ(Al
2O3)とシリカ(SiO2)の混合結晶体で、その結合の仕方によって3〜8Å(0.3
〜0.8nm)程度の微細な結晶孔が形成されるため、水はこの孔の中を移動して膜透過する。親水性のゼオライト膜においては、直径約3Å(0.3nm)弱の水分子が膜表面のゼオライト孔入口で気化してこの孔に選択的に取り込まれ、さらにゼオライト孔内を拡散により膜透過する。この水分子の気化によるゼオライト孔内への取り込みとそれに続く孔の中での拡散の駆動力は、水蒸気圧差に基づく化学ポテンシャル差である。また、水分子を取り込んだゼオライト孔は、サイズ的には水分子よりやや大きいがあまり異ならない程度の大きさであるため、言わば水分子で閉塞された状態になり、放射性物質など他の分
子あるいはイオン等が入り込む余地がなくなることにより、水と被処理水中に溶存する物質との分離が起こると推定されている。このようにゼオライト孔のサイズが分子オーダーであるため、溶存物質の分子サイズ(イオンサイズ)が水分子より大きければ、当然篩い効果による分離作用が寄与する。
既述のように本発明と同目的で利用可能な膜分離法としては、現在のところ実質的には逆浸透(RO)プロセスのみであるが、現状では耐放射線性に乏しい高分子膜しか存在しないため、放射性物質等の高度濃縮目的で利用することは困難である。特に、被処理水中に放射性物質と共に多量の溶存物質が共存する系では、前述のように浸透圧の問題が存在するため、該放射性物質と共に該共存物質を高濃度濃縮することは原理的に困難である。
る。
なお、浸透気化プロセスにおける膜透過の駆動力が蒸気圧差であり、水の膜透過に蒸発潜熱の供給も必要であるため、蒸発により濃縮操作を行い、その発生蒸気の凝縮水を浄化水として回収する通常の蒸発法と基本的には同じではないかとの指摘もある。しかし、少なくとも本発明が処理対象とする放射性物質を含む水溶液系での処理に関しては、浸透気化プロセスには次のような利点が存在する。
物質も蒸気側に移行することになる。しかも、これらの該放射性蒸気は一般に水と凝縮温度が異なり水と共に凝縮する保証は全くなく、該放射性蒸気の外部漏出を避けるためには、気体状の放射性物質を吸着除去することができる適当な機器を別途装備する必要があり、このことは最終的な放射性廃棄物の増大にも繋がる。
技術開発を長年鋭意実施してきた。そして本発明者らは、前述のようなゼオライト浸透気化膜の膜透過機構と現象を具体的に且つ詳細に把握するに至り、新たに開発した耐熱水性・耐放射線性で高分離性能を発現する高機能なゼオライト膜を用いて、原子力施設等で発生する放射性物質等を含む被処理水を効率的に除染処理すると共に、該放射性物質を効率的に濃縮でき、しかも放射性物質等を含む高温の熱水を効率的に冷却することも可能なプロセスと装置を発明するに至った。
以下に、その具体的な実施形態等を詳細に説明する。
本発明の放射性物質含有水処理用の浸透気化(PV)装置とプロセスの概要を、図3に示す。該装置とプロセスは、内部に耐酸性・耐熱水性・耐放射線性と高分離性能を有する高機能なゼオライト分離膜を装備した膜モジュール、この膜モジュールに被処理水を供給する送液ポンプ、膜モジュール内のゼオライト膜を透過した水蒸気を捕集して凝縮するための熱交換器、膜モジュールの透過側を減圧状態に維持するための真空ポンプを最低限の構成要素とするが、特に汚濁物質を含む放射性物質含有廃水の濃縮等を処理目的とする装置とプロセスでは、共存微細粒子の沈着等によりゼオライト膜の表面が汚染されるいわゆる膜汚染による膜の分離機能低下が起こるため、膜モジュールに供給する被処理水中の微細粒子を予め捕捉・除去する微細ろ過装置を装備することを特徴としている。
本発明の水処理プロセスで使用するゼオライト製の浸透気化膜としては、耐水・耐熱・耐酸・耐アルカリ・耐放射線性と高水蒸気高透過性に優れると共に、100℃以上の高温でも安定な分離性能を示すことが必要不可欠である。そのため、A型ゼオライト膜やアルミナゾルから形成する全アルミナ製多孔質膜、あるいはシリカ系多孔質膜など化学的安定性に問題のある既往のセラミックス製浸透気化膜を利用することは困難である。したがって、本発明においては、耐水・耐熱・耐酸・耐アルカリ製・耐放射線性と高い水蒸気高透過性能を有すSiO2/Al2O3モル比が少なくとも3以上、望ましくは5以上であるゼオライトを主成分とするゼオライト膜である。なお、その平均孔径は10Å(1nm)以下であることが好ましい。より具体的には、T型ゼオライト膜、チャバサイト型ゼオライト膜、MFI型ゼオライト膜、FAU型ゼオライト膜、MOR型ゼオライト膜、炭素膜の利用が望ましく、特に耐水・耐酸・高放射線性と水蒸気高透過性の視点から、T型ゼオライト膜あるいはチャバサイト型ゼオライト膜の利用が好ましい。なお、これらのゼオライト膜は、いずれもアルミナ質多孔体等の表面に該ゼオライト膜が層状に形成されたものであり、そのゼオライト孔径は8Å(0.8nm)以下である。なお、チャバサイト型(CHA型)ゼオライト膜は、特開2011−121040に記載のものが好ましい。
本発明では、上述のとおり、微細ろ過装置を装備することを特徴としている。
しかし、既往の逆浸透プロセスにおいては、多くの場合この目的で高分子製フィルターや高分子製の精密ろ過膜(MF)などが利用されているが、放射性物質等を含む高温の廃水等を被処理水とすることが多い本発明のプロセスにおいては、耐熱性と耐放射線性が必要不可欠な特性であるため、アルミナなど無機酸化物や金属の粉末を焼結して作製するセラミックス製や金属製の多孔質ろ過体の利用が望ましい。特に、金属線を金属製支持体の周囲に捻りながら巻くことにより形成された線と線の間の微細な隙間を利用する金属製フィルターや、細い金属繊維を圧縮成型して微細な網目状の隙間を利用する金属製フィルター等を用いた全金属製の微細ろ過装置の利用が好ましい。この種の全金属製フィルターは、被処理水のろ過抵抗が小さく、空気や窒素等の気体を用いて極めて容易に逆洗を行うことができるからである。なお、該金属製フィルターは、少なくとも70℃以上望ましくは100℃以上の熱水のろ過に利用可能なものの使用が好ましく、少なくとも30μm以上、好ましくは10μm以上、特に好ましくは1μm以上の微細粒子が分離除去できる性能を
有すものの使用が好ましい。
浸透気化法による放射性物質含有水溶液の処理においては、その処理速度は浸透気化膜を界して与えられる水蒸気圧差に比例するため、膜モジュールに供給する被処理水を予め加温する加熱装置の装備が有効で、この被処理水の加熱は装置固定費の支配的要因である使用浸透気化膜の膜面積の低減化にも極めて有効な手段である。特に放射能汚染土壌除染廃水の処理に際しては、実際には現地での実施が想定されるため、本加熱装置の装備は必要不可欠である。
本発明においては、被処理水用や、濃縮水用、膜透過水用の各タンクの設置は、必ずしも必須の条件ではない。しかしながら、物質含有水溶液や放射能を有す機器等に接触して放射性物質を含むと推定される水溶液等を処理対象とする場合は、放射性物質含有水の他所への流出を可能な限り防ぐ予防措置の観点から、被処理水用、濃縮水用、膜透過水用の各タンクを設置することが望ましく、それらは何れも耐放射線性を有する金属製タンクであることが好ましい。
本発明のように被処理水を分離膜で処理する場合、被処理水の膜モジュールへの供給はワンパスでその分の膜処理をほぼ完結させることが原則で、通常はその処理完結に必要な膜面積を装備する。被処理水が生産ラインで多量に発生するような場合は、ワンパスでの連続的処理が必要であるが、放射性物質含有廃水を処理するケースなどでは、すでに存在する所定量の廃水を所定の時間内で処理すれば良く、その処理時間にある程度の時間的余裕が許容されることも多い。このような場合には、被処理水タンクに膜処理をした処理水を戻すバッチ形式の循環処理を行うことにより、ワンパスの連続処理を行う場合より膜面積を少なくして使用膜モジュール数を節約することができる。換言すれば、処理時間を犠牲にして膜装備の固定費を節約することができる。但し、そのどちらに重きを置くかは、設定条件と目的や環境条件等によるため、実際にはその最適化を図ることが必要である。
このように、ワンパス処理方式のみならず循環処理方式をも可能とするためには、膜処理した処理水を被処理水タンクに戻すための配管と、その戻し量を調節できる制御弁の装備することが好ましい。
本発明を実施する中核技術である浸透気化(PV)プロセスにおいては、膜モジュールに供給された被処理水中の水分の多くは、膜モジュール内で膜を界しての水蒸気圧差を駆動力としてゼオライト膜を透過し、該ゼオライト膜裏面(透過側の表面)で水蒸気となり、膜透過側を減圧状態に維持するための真空ポンプの前に設置された凝縮用熱交換器へと導かれて凝縮液化される。この液化された膜透過水は、さらに該熱交換機と該真空ポンプの中間に位置する気液分離器へと導かれ、その下部に貯留された液状の膜透過水はポンプを介して外部の膜透過水タンクへと送液される。
エジェクターの作動流体としては、膜透過水タンクに貯留された“膜透過水”自体を利用することができる。この場合も、膜を透過した水蒸気は、エジェクターのベンチュリー部内部に外部配管を通じて直接導かれ、作動用水として利用された該“膜透過水”に吸収されることになる。従って、エジェクターから排出された水溶液をエジェクターの作動用水として再利用することが好ましい。
エジェクターの吸引作動圧は、一般に作動用水の供給速度と水蒸気圧に支配され、特に作動用水の水蒸気圧はベンチュリー部内部における吸引作動圧の低限を支配する。
このため上記のように、エジェクター作動用水に膜透過水を再利用する場合は、循環利用を進めて膜処理による被処理水の濃縮が進むにつれて、該エジェクター作動用水は膜透過水の凝縮熱により次第にその温度が上昇し、結果的にエジェクターの吸引作動圧を増加させることにより、膜透過水蒸気の捕集能力とシステム全体の処理能力を低下させる。
また、被処理水の操作温度が40〜60℃程度とあまり高くない場合などでは、膜透過の水蒸気圧差を大きくするために膜透過側の水蒸気圧を低くすることが必要で、そのためにはエジェクター作動用水の温度を十分低く維持することが必要とされる。
本発明のゼオライト製浸透気化(PV)膜を用いた放射性物質含有水等の濃縮プロセスでは、容易に高濃度濃縮が可能であるため、被処理水の放射線量が最初からある程度高い場合などでは、濃縮により安全な作業環境が維持できなくなるほど高放射線量となることに注意する必要がある。
このような場合には、吸着法あるいは凝集法あるいは透析法あるいはこれらを2種以上組み合わせた方法を利用することにより、被処理水の放射線量を低下させることが望ましい。吸着法における吸着材としては、イオン交換樹脂、ゼオライト、活性炭、ベントナイト、スメタイト、フェロシアン系化合物等が利用できるが、特にこれらに限定されるものではなく、これらの吸着材の単独使用のみならず2種以上組み合わせて利用してもよく、また、異なる吸着材を各々用いる2種以上の吸着法を組み合わせて利用してもよい。
透析法としては、(強・弱)陽イオン交換膜、(強・弱)陰イオン交換膜、中性の透析膜等を適宜用いる拡散透析法や電気透析法等を利用することができる。
本発明の別の要旨としては、前述の装置を用いて、放射線含有水の濃縮を行うことが好ましい。
(放射能汚染土壌の除染廃水の処理)
本発明のゼオライト製浸透気化(PV)膜を用いた処理プロセスは、放射性セシウム(C
s)や放射性ストロンチウム(Sr)、放射性沃素(I)などの放射性物質で汚染された土壌
の除染工程で発生する放射性物質含有廃水等の濃縮と放射性物質等を除去した浄化水の回収等の目的で適用された場合には、極めて効果的な成果が得られる。
は適用困難で、実質的に本発明のセラミックス製ゼオライト膜を用いた浸透気化(PV)プロセスのみが、その高度濃縮と浄化水回収を図れる唯一の適用可能な処理プロセスである。
既述のように浸透気化プロセスにおいては、水が液相から蒸気相へと膜透過し膜を界して相変化するため、膜透過が進行するに伴いその蒸発潜熱が膜内を熱移動し、結果的に被処理水の温度が低下する。このことは、実質的に膜が伝熱面となる熱交換器と考えることができる。
因みにこの際の温度低下は、膜透過成分が水でその蒸発潜熱が大きいために特に大きく、被処理水の6%相当量が膜透過すると残された被処理水は約30℃の温度低下が起こり、12%相当量では約60℃の温度低下となる。
そこで本発明提案者は、この現象を原子力発電施設等における熱水の冷却方法として利用する方法を詳しく検討し、以下のようなプロセスと装置を発明すると共に、その画期的効果を明らかにした。
因みに原子力発電施設などにおいては、自然災害等に起因する通常の冷却システムの異常事態発生時等に、比較的高温で温度低下を図る必要のある放射性物質含有熱水や冷却維持が必要不可欠な比較的低温の放射性物質含有水などが各種存在する。例えば、前者の代表例としては原子炉格納容器付属のサプレッションプール水などがあり、後者の代表例としては自己発熱性を有す使用済み核燃料を暫定保存する燃料用プール水などがある。特に後者の場合は発熱量に対応した熱量のみを冷却除去する定温維持が主な目的となる。
脱イオン水を使用し、塩化セシウム0.13重量%、塩化ストロンチウム0.18重量%の水溶液を1L調整し、被分離液とした。CHA型ゼオライト膜(特開2011−121040に記載の無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体)を用いて40℃で、パーベーパレーション法により上記被分離液から水を選択的に透過させた。
なお、このCHA型ゼオライト膜のSiO2/Al2O3モル比は、16であった。 パーベーパレーション法に用いた装置の概略図を図5に示す。図5において5のゼオライト膜複合体は9の真空ポンプによって内側が減圧され、4の被分離液が接触している外側と圧力差が約1気圧になっている。この圧力差によって4の被分離液中透過物質の水が5のゼオライト膜複合体に浸透気化して透過する。透過した物質は7のトラップで捕集される。一方、透過しないイオン成分は5のゼオライト膜の外側に滞留する。2時間後、トラップに補修した水の重量と透過液中に浸漬したゼオライト膜の有効面積から、水の透過流束を計算した。
透過流束は2.67kg/(m2・h)であった。測定結果を表1に示す。
被分離液の温度を75℃に保持する以外は、実施例1と同様に無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いてパーベーパレーション法により塩化セシウムと塩化スト
ロンチウムを含む被分離液から水を選択的に透過させた。
その時の透過流束は11.97kg/(m2・h)であった。測定結果を表1に示す。
被分離液を水96.2重量%、塩化セシウム0.13重量%、塩化ストロンチウム0.18重量%、塩化ナトリウム重量2.79%、塩化カルシウム0.524重量%、塩化マグネシウム重量%、の水溶液とする以外は、実施例1と同様に無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いてパーベーパレーション法により塩化セシウム、塩化ストロンチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムを含む被分離液から水を選択的に透過させた。
その時の透過流束は2.58kg/(m2・h)であり、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、およびカルシウムイオンが共存しない実施例1と同等の透過流束が得られた。測定結果を表1に示す。
被分離液の温度を75℃に保持する以外は、実施例3と同様に無機多孔質支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を用いてパーベーパレーション法により塩化セシウム、塩化ストロンチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムを含む被分離液から水を選択的に透過させた。
その時の透過流束は11.90kg/(m2・h)であり、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、およびカルシウムイオンが共存しない実施例3と同等の透過流束が得られた。測定結果を表1に示す。
用いて、ナトリウムイオン、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンについては、Thermo Fisher Scientific社製高分解能ICP質量分析装置ELEMENT2型を用いてそれぞれ測定した。
透過液中のセシウムイオン濃度は、測定法の検出下限である0.1ppb以下であった。
ストロンチウムイオンも1.3ppbであり、ほとんど漏洩していない事がわかる。 測定結果を表2に示す。
2 湯浴
3 撹拌子
4 被分離液
5 ゼオライト膜複合体
6 ピラニゲージ
7 透過液捕集用トラップ
8 コールドトラップ
9 真空ポンプ
Claims (12)
- セシウム含有水濃縮用の膜分離装置であって、
セシウム含有水から微細粒子を分離除去する金属製あるいはセラミックス製の微細ろ過装置、
微細粒子を除去したセシウム含有水を膜モジュールに供給するためのポンプ、
浸透気化プロセスにより、該セシウム含有水から水を除去し、セシウムを濃縮する、
SiO2/Al2O3モル比が3以上であるゼオライトを含むチャバサイト型ゼオライト膜を内装する膜モジュール、
該ゼオライト膜を透過した膜透過水蒸気を捕集・回収するための装置を有することを特徴とする、
セシウム含有水濃縮用の膜分離装置。 - 微細ろ過装置が、金属製であり、30μm以上の微細粒子を分離除去できる機能を有することを特徴とする請求項1記載の装置。
- 被処理水が膜モジュールに達する前に加熱するための加熱装置を装備する請求項1または2に記載の装置。
- 耐放射線性を有する金属製の濃縮水用タンクと、金属製あるいはプラスチック製の浄化水用タンクとを有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
- ゼオライト膜で濃縮処理された処理水を被処理水として再び循環供給するための配管と、その戻し量を調節する制御弁を装備することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
- ゼオライト膜を透過して除染・浄化された水蒸気を吸引・捕集するためのエジェクター装置を装備した請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
- エジェクターから排出された水溶液をエジェクターの作動用水として再利用することを特徴とする請求項6記載の装置。
- 膜透過水蒸気を吸引・捕集するために使用されるエジェクターの作動水蒸気圧を低く維持するため、エジェクターの作動用水を冷却する冷却装置を備えることを特徴とする請求項
6または請求項7に記載の装置。 - 処理システムの高放射線量抑制目的で放射性物質を吸着法あるいは凝集法あるいは透析法を単独もしくは複数組み合わせた方法で除去する装置を装備することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
- 該ゼオライト膜は、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
- セシウム含有水の濃縮方法であって、
セシウム含有水をSiO2/Al2O3モル比が3以上であるゼオライトを含むチャバサイト型ゼオライト膜を内装する膜モジュールに供給し、
浸透気化プロセスにより、該セシウム含有水から水を除去し、セシウムを濃縮することを特徴とする、
セシウム含有水の濃縮方法。 - 該ゼオライト膜は、無機多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜である、請求項11記載のセシウム含有水の濃縮方法。
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Publications (2)
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