中間階調を表示させる際には、白色及び黒色が表示される際の中間位置に各粒子を移動させればよい。ただし、このような制御は容易ではなく、例えば各粒子の位置にばらつきが生じてしまうことで、表示される階調にもばらつきが生じるおそれがある。特に、複数の中間階調を表示させるような場合には、表示画像に与える上述したばらつきの影響は大きい。
これに対し、例えばライトグレー(即ち、白に近い灰色)からダークグレー(即ち、黒に近い灰色)に階調を変化させる場合には、ライトグレーを表示している状態から一旦白色又は黒色を表示する位置に各粒子を移動させ、その後にダークグレーを表示する位置へと各粒子を移動させるようにすれば、画素毎の粒子の位置を揃えることができ好適に中間階調を表示させることができる。
上述したように、中間階調を表示させる際には、複数のフェーズで異なる極性の電圧を印加することが求められる場合がある。しかしながら、複数の画素において複数のフェーズを実行する場合、互いに隣り合う画素に対して異なる極性の電圧が印加されてしまうおそれがある。例えば、一の画素に対して白色に対応する負の電圧が印加されている際に、隣接する他の画素には黒色に対応する性の電圧が印加されるという事態が生じ得る。
ここで本願発明者の研究するところによれば、互いに隣り合う画素に異なる極性の電圧が印加されると、画素間での横電界の影響が大きくなり、結果として表示画像が乱れてしまうおそれがあることが判明している。しかしながら、上述した各特許文献には、互いに隣り合う画素に異なる極性の電圧が印加される期間についての対策は何ら記載されていない。言い換えれば、上述した各特許文献を含む従来技術は、互いに隣り合う画素間における横電界の影響で、画質が低下してしまうおそれがあるという技術的問題点を有している。
本発明は、例えば前述した問題点に鑑みなされたものであり、互いに隣り合う画素間における横電界の影響を低減しつつ、好適に中間階調を表示させることが可能な電気光学装置の制御方法、電気光学装置の制御装置、電気光学装置、及び電子機器を提供することを課題とする。
本発明に係る電気光学装置の制御方法は上記課題を解決するために、互いに交差する複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応して設けられ、互いに対向する画素電極及び対向電極間に電気光学物質を夫々有する複数の画素を有し、前記画素は、第1の極限光学状態、第2の極限光学状態、並びに前記第1の極限光学状態及び前記第2の極限光学状態間の複数の中間光学状態をとり得る表示部と、該表示部に画像データに応じた画像を表示させるために、前記複数の画素の各々の前記画素電極に前記画像データに応じた電圧パルスを複数のフレーム期間において供給する駆動部とを備えた電気光学装置を制御する制御方法であって、前記複数の画素のうち第1の画素を第1の中間光学状態に移行させる際の制御工程が、前記第1の画素の前記画素電極に対して、第1の電圧パルスを供給する第1制御工程と、前記第1制御工程の後、前記第1の画素の前記画素電極に対して、前記第1の電圧パルスと逆極性の第2の電圧パルスを供給する第2制御工程とを含み、前記第1の画素に隣り合う第2の画素を第2の中間光学状態に移行させる際の制御工程が、前記第2の画素の前記画素電極に対して、前記第1の電圧パルスと同極性の第3の電圧パルスを供給する第3制御工程と、前記第3制御工程の後、前記第2の画素の前記画素電極に対して、前記第2の電圧パルスと同極性の第4の電圧パルスを供給する第4制御工程と、前記第1制御工程が行われる期間及び前記第4制御工程が行われる期間、又は前記第2制御工程が行われる期間及び前記第3制御工程が行われる期間が互いに重なる逆極性期間が短くなるように、前記第2の画素の前記画素電極に対して、前記対向電極と同電位の第5の電圧パルスを少なくとも1フレーム期間供給する第5制御工程とを含む。
本発明に係る電気光学装置の制御方法によって制御される電気光学装置は、複数の走査線と複数のデータ線との交差に対応してマトリクス状に配列された複数の画素を有する表示部を備えている。表示部は、互いに対向する画素電極及び対向電極間に電気光学物質を夫々有している。また、表示部における複数の画素は、第1の極限光学状態、第2の極限光学状態、並びに前記第1の極限光学状態及び前記第2の極限光学状態間の複数の中間光学状態をとることが可能とされている。
ここで「極限光学状態」とは、表示部における電気光学物質に対して所定の電圧を十分に印加することで実現される光学状態である。ただし、本発明に係る「極限光学状態」は、それ以上所定の電圧を印加しても光学状態が全く変化しない状態を意味するだけでなく、例えば複数の画素が同時に極限光学状態とることで、画素間での光学状態のばらつきを低減できる程度に各画素の光学状態を揃えることが可能な光学状態を含む広い概念である。具体的には、例えば電気光学物質が白色の粒子及び黒色の粒子を含む電気泳動素子として構成される場合において、白色の粒子が表示面側に十分に引き寄せられることで表示される白色や、黒色の粒子が表示面側に十分に引き寄せられることで表示される黒色を表示する際の光学状態が、本発明に係る「極限光学状態」に該当する。
また「中間光学状態」とは、第1の極限光学状態と第2の極限光学状態との中間の光学状態を意味しており、例えば上述した白色及び黒色を表示する際の光学状態を極限光学状態とする場合には、灰色を表示する際の光学状態が該当する。「中間光学状態」は、例えば第1の極限光学状態へと光学状態を変化させるための電圧又は第2の極限光学状態へと光学状態を変化させるための電圧を印加する期間を調整することで実現される。より具体的には、例えば電気泳動素子に含まれる白色の粒子及び黒色の粒子の位置を、白色及び黒色を表示させる場合の中間の位置に移動させることで中間光学状態である灰色を表示することができる。
なお、本発明に係る表示部では、例えば淡い灰色や濃い灰色等のように、複数の中間光学状態を各画素がとり得る。このような複数の中間光学状態は、画素電極及び対向電極間における各粒子の位置を調整することで表示することができる。具体的には、白色の粒子を表示面側に比較的近い中間位置とする(或いは、黒色粒子を表示面側から比較的遠い中間位置とする)ことで淡い灰色を表示することができ、白色の粒子を表示面側に比較的遠い中間位置とする(或いは、黒色粒子を表示面側から比較的近い中間位置とする)ことで濃い灰色を表示することができる。
上述した表示部は、駆動部によって、画像データに応じた画像を表示するよう制御される。具体的には、本発明に係る電気光学装置の動作時には、駆動部によって、複数の画素の各々の画素電極に画像データに応じた電圧パルスが供給される。これにより、各画素に画像データに応じた電圧が印加され、表示部では画像データに応じた画像が表示される。
なお、駆動部による各画素への電圧パルスの供給は、複数のフレーム期間に渡って行われる。言い換えれば、表示部の画素に対する電圧の印加は、フレーム期間単位で複数回行われる。具体的には、一のフレーム期間中に、複数の走査線が所定の順番で1回ずつ選択されるとともに、該選択した走査線に対応する画素における画素電極に電圧パルスが複数のデータ線を介して供給される。なお、ここでの「フレーム期間」とは、複数の走査線を所定の順番で1回ずつ選択する期間として予め定められた期間である。つまり、連続する複数のフレーム期間の各々において、複数の画素の各々における画素電極に電圧パルスを供給する制御が1回ずつ行われることにより、表示部に画像データに応じた画像が表示される。
本発明に係る電気光学装置の制御方法によれば、第1の画素を第1の中間光学状態へと移行させる場合に、第1制御工程及び第2制御工程が順次行われる。なお、ここでの「第1の中間光学状態」とは、第1画素の書き換えにおいて目標とされる中間光学状態であり、表示部の画素がとり得る複数の中間光学状態のうちいずれかの光学状態として設定される。
第1制御工程では、第1の画素の画素電極に対して、第1の電圧パルスが供給される。そして、続く第2制御工程では、第1の画素の画素電極に対して、第1の電圧パルスと逆極性の第2の電圧パルスが供給される。例えば、第1制御工程において第1の極限光学状態(例えば、白色)に対応する電圧パルスが供給されると、第2制御工程では第2の極限光学状態(例えば、黒色)に対応する電圧パルスが供給される。第1制御工程及び第2制御工程によれば、第1の画素に互いに異なる極性を有する電圧が順次印加されることになり、好適に第1の中間光学状態を実現することが可能となる。
他方で、本発明に係る電気光学装置の制御方法によれば、第1の画素に隣り合う第2の画素を第2の中間光学状態へと移行させる場合に、第3制御工程及び第4制御工程が順次行われる。なお、ここでの「第2の中間光学状態」とは、上述した第1の中間光学状態と同様に、第2画素の書き換えにおいて目標とされる中間光学状態であり、表示部の画素がとり得る複数の中間光学状態のうちいずれかの光学状態として設定される。なお、第1の中間光学状態と第2の中間光学状態は、互いに同じ中間光学状態であってもよい。
第3制御工程では、第2の画素の画素電極に対して、第1の電圧パルス(即ち、第1制御工程で第1の画素に供給される電圧パルス)と同極性の第3の電圧パルスが供給される。そして、続く第4制御工程では、第2の画素の画素電極に対して、第2の電圧パルス(即ち、第2制御工程で第1の画素に供給される電圧パルス)と同極性の第4の電圧パルスが供給される。例えば、第1制御工程において第1の極限光学状態(例えば、白色)に対応する電圧パルスが供給され、第2制御工程において第2の極限光学状態(例えば、黒色)に対応する電圧パルスが供給された場合、第3制御工程では第1の極限光学状態に対応する電圧パルスが供給され、第4制御工程では第2の極限光学状態に対応する電圧パルスが供給される。第3制御工程及び第4制御工程によれば、第2の画素に互いに異なる極性を有する電圧が順次印加されることになり、好適に第2の中間光学状態を実現することが可能となる。
ここで、上述した第1制御工程及び第2制御工程(即ち、第1の画素に対する制御)と、第3制御工程及び第4制御工程(即ち、第2の画素に対する制御)とでは、開始されるタイミングや各工程のフレーム期間数が互いに異なる場合がある。このため、第1の画素及び第2の画素の各々に互いに同極性である第1の電圧パルス及び第3の電圧パルスを夫々供給する第1制御工程及び第3制御工程、並びに第1の画素及び第2の画素の各々に互いに同極性である第2の電圧パルス及び第4の電圧パルスを夫々供給する第2制御工程及び第4制御工程は、互いに独立したタイミングで実行され得る。従って、第1制御工程と第4制御工程が同時に行われる期間及び第2制御工程と第3制御工程が同時に行われる期間(即ち、第1の画素及び第2の画素に互いに異なる極性の電圧が印加される逆極性期間)が生ずることがある。
ここで特に、本発明者の研究するところによれば、第1の画素及び第2の画素に互いに異なる極性の電圧が印加される逆極性期間が生ずると、第1の画素及び第2の画素間の横電界の影響が大きくなり、表示画像が乱れてしまう(即ち、実現すべき光学状態を正確に実現できない)おそれがあることが判明している。特に、逆極性期間が書き換え期間の終了に近い時期に発生すると、その後の書き換えによる調整が難しいため、横電界の影響が大きく現れてしまう。よって、逆極性期間は生じさせない、或いは生じてしまったとしてもできるだけ短い期間であることが好ましい。
これに対し本発明では、第5制御工程において、第1の画素及び第2の画素に互いに異なる極性の電圧が印加される逆極性期間が小さくなるように、第2の画素の画素電極に対して、対向電極と同電位の第5の電圧パルスが少なくとも1フレーム期間供給される。即ち、第5制御工程によって、第2の画素に対する書き換え期間(即ち、第3制御工程及び第4制御工程が行われる期間)が調整され、逆極性期間が短くされる。より具体的には、第1の画素及び第2の画素に同極性の電圧パルスが供給される第1制御工程及び第3制御工程或いは第2制御工程及び第4制御工程が、互いにできるだけ近いタイミングで行われるように調整されることで、逆極性期間が短くされる。従って、逆極性期間に起因する横電界の影響の増大を低減することができ、表示の乱れを抑制することができる。
なお、第5制御工程が行われるタイミングについては特に限定されず、上述した逆極性期間を短くできるようなタイミングであれば、どのようなタイミングで行われても構わない。また、第5制御工程が行われる期間(即ち、第2の画素の画素電極に対向電極と同電位の第5の電圧パルスが供給されるフレーム期間)は、例えば第1制御工程及び第3制御工程が行われるフレーム期間の差分、或いは第2制御工程及び第4制御工程が行われるフレーム期間の差分として設定することができる。
以上説明したように、本発明に係る電気光学装置の制御方法によれば、逆極性期間を短くする第5制御工程を設定することで、互いに隣り合う画素間における横電界の影響を低減しつつ、好適に中間階調を表示させることができる。この結果、高品位な画像を表示させることが可能となる。
本発明に係る電気光学装置の制御方法の一態様では、前記第5制御工程は、前記第3制御工程の前に行われる。
この態様によれば、第3制御工程の開始タイミングを第5制御工程の期間分だけ遅らせることができる。よって、例えば第1の画素に対する第1制御工程と比べて第2の画素に対する第3制御工程が早く終了してしまい、第1制御工程と第3制御工程に続く第4制御工程とが大きく重なってしまうことを防止できる。従って、第1の画素及び第2の画素に互いに異なる極性の電圧が印加される逆極性期間を確実に短くすることができる。
上述した第5制御工程が第3制御工程の前に行われる態様では、前記第5制御工程は、前記第1制御工程が終了するタイミングと、前記第3制御工程が終了するタイミングとが互いに揃うように、前記第5の電圧パルスを供給するフレーム期間が設定されてもよい。
この場合、第1の画素に対する第1制御工程が終了するタイミングと、第2の画素に対する第3制御工程が終了するタイミングとが互いに揃うため、例えば印加される電圧の極性が互いに異なる第1制御工程と第4制御工程とが重なってしまうことを防止できる。従って、第1の画素及び第2の画素に互いに異なる極性の電圧が印加される逆極性期間をなくすことができる。
本発明に係る電気光学装置の制御方法の他の態様では、前記第5制御工程は、前記第3制御工程と前記第4制御工程との間に行われる。
この態様によれば、第4制御工程の開始タイミングを第5制御工程の期間分だけ遅らせることができる。よって、例えば第1の画素に対する第2制御工程と比べて第2の画素に対する第4制御工程が早く開始されてしまい、第1制御工程と第3制御工程に続く第4制御工程とが大きく重なってしまうことを防止できる。従って、第1の画素及び第2の画素に互いに異なる極性の電圧が印加される逆極性期間を確実に短くすることができる。
上述した第5制御工程が第3制御工程及び第4制御工程の間に行われる態様では、前記第5制御工程は、前記第2制御工程が開始するタイミングと、前記第4制御工程が開始するタイミングとが互いに揃うように、前記第5の電圧パルスを供給するフレーム期間が設定される。
この場合、第1の画素に対する第2制御工程が開始されるタイミングと、第2の画素に対する第4制御工程が開始されるタイミングとが互いに揃うため、例えば印加される電圧の極性が互いに異なる第1制御工程と第4制御工程とが重なってしまうことを防止できる。従って、第1の画素及び第2の画素に互いに異なる極性の電圧が印加される逆極性期間をなくすことができる。
本発明に係る電気光学装置の制御方法の他の態様では、前記第1制御工程は、前記第1の画素の前記画素電極に対して、前記第1の極限光学状態に至るまで、前記第1の電圧パルスを供給する工程であり、前記第2制御工程は、前記第1の画素の前記画素電極に対して、前記第1の中間光学状態に近づくように、前記第2のパルスを供給する工程であり、前記第3制御工程は、前記第2の画素の前記画素電極に対して、前記第1の極限光学状態に至るまで、前記第3の電圧パルスを供給する工程であり、前記第4制御工程は、前記第2の画素の前記画素電極に対して、前記第2の中間光学状態に近づくように、前記第4のパルスを供給する工程である。
この態様によれば、第1制御工程では、第1の画素の画素電極に対して、第1の極限光学状態(例えば、白色)に対応する第1の電圧パルスが供給される。これにより、第1の画素は第1の極限光学状態となる。このように、第1の画素を目標である第1の中間光学状態とする前に、一旦極限光学状態とすることで、表示部における複数の画素間での光学状態を揃えることができる。具体的には、例えば電気泳動素子に含まれる各粒子の位置を揃えることができる。よって、画素を中間光学状態へと移行させる場合に、複数の画素間で光学状態にばらつきが生じることに起因して、表示される画像にノイズ等が生じることを防止することができる。
第2制御工程では、第1の画素の画素電極に対して、第2の極限光学状態(例えば、黒色)に対応する第2の電圧パルスが供給される。これにより、第1の画素における光学状態は、第1の中間光学状態へと近づけられる。なお、第2制御工程の後に、第1の画素の光学状態を微調整する他の制御工程が設定されてもよい。
他方、第3制御工程では、上述した第1制御工程と同様に、第2の画素の画素電極に対して、第1の極限光学状態に対応する第3の電圧パルスが供給される。これにより、第2の画素は第1の極限光学状態となる。
第4制御工程では、上述した第2制御工程と同様に、第2の画素の画素電極に対して、第2の極限光学状態に対応する第4の電圧パルスが供給される。これにより、第2の画素における光学状態は、第2の中間光学状態へと近づけられる。なお、第4制御工程の後に、第2の画素の光学状態を微調整する他の制御工程が設定されてもよい。
以上説明した第1の画素に対する第1制御工程及び第2制御工程、並びに第2の画素に対する第3制御工程及び第4制御工程によれば、各画素に互いに異なる極性の電圧を順次印加することで、好適に目標の中間光学状態(即ち、第1の中間光学状態及び第2の中間光学状態)を実現できる。
しかしながら、互いに異なる極性の電圧が印加されるが故に、上述したような逆極性期間も発生し得る。これに対し本態様では、第5制御工程において、第1の画素及び第2の画素に互いに異なる極性の電圧が印加される逆極性期間が小さくなるように、第2の画素の画素電極に対して、対向電極と同電位の第5の電圧パルスが少なくとも1フレーム期間供給される。従って、逆極性期間を短くすることができ、横電界の影響が大きくなることによって、表示画像が乱れてしまうことを抑制できる。
本発明に係る電気光学装置の制御方法の他の態様では、前記第1制御工程は、前記第1の画素の前記画素電極に対して、前記第1の中間光学状態よりも前記第1制御工程前の光学状態から遠い中間光学状態に至るまで、前記第1の電圧パルスを供給する工程であり、前記第2制御工程は、前記第1の画素の前記画素電極に対して、前記第1の中間光学状態に至るまで、前記第2の電圧パルスを供給する工程であり、前記第3制御工程は、前記第2の画素の前記画素電極に対して、前記第2の中間光学状態よりも前記第3制御工程前の光学状態から遠い中間光学状態に至るまで、前記第3の電圧パルスを供給する工程であり、前記第4制御工程は、前記第2の画素の前記画素電極に対して、前記第2の中間光学状態に至るまで、前記第4の電圧パルスを供給する工程である。
この態様によれば、第1制御工程では、第1の画素の画素電極に対して、例えば第2の極限光学状態(例えば、黒色)に対応する電圧パルスが供給されることで、第1の中間光学状態より第1の極限光学状態に近い光学状態であった第1の画素が、目標である第1の中間光学状態よりも第1制御工程前の光学状態から遠い中間光学状態とされる。即ち、第1の画素は、第1の中間光学状態に向けて光学状態が制御されるものの、第1の中間光学状態を超えた中間光学状態とされる。なお、このような第1制御工程は、意図的に第1の中間光学状態とはならないように行われるのではなく、例えば最小単位(即ち、1フレーム)での電圧印加を行った場合でも、光学状態が大きく変化してしまい、第1の中間光学状態を実現できないような場合に行われる。
第2制御工程では、第1の画素の画素電極に対して、例えば第1の極限光学状態(例えば、白色)に対応する電圧パルスが供給されることで、第1の中間光学状態より第2の極限光学状態に近い状態となった第1の画素が、目標である第1の中間光学状態に近づけられる。即ち、第1の制御工程において、第1の中間光学状態から遠ざかってしまった分が、第2制御工程において調整される。
他方、第3制御工程では、上述した第1制御工程と同様に、第2の画素の画素電極に対して、例えば第2の極限光学状態に対応する電圧パルスが供給されることで、第2の中間光学状態より第1の極限光学状態に近い光学状態であった第2の画素が、目標である第2の中間光学状態よりも第3制御工程前の光学状態から遠い中間光学状態とされる。
第4制御工程では、第2の画素の画素電極に対して、例えば第1の極限光学状態に対応する電圧パルスが供給されることで、第2の中間光学状態より第2の極限光学状態に近い状態となった第2の画素が、目標である第2の中間光学状態に近づけられる。
以上説明した第1の画素に対する第1制御工程及び第2制御工程、並びに第2の画素に対する第3制御工程及び第4制御工程によれば、各画素に互いに異なる極性の電圧を順次印加することで、好適に目標の中間光学状態(即ち、第1の中間光学状態及び第2の中間光学状態)を実現できる。
しかしながら、互いに異なる極性の電圧が印加されるが故に、上述したような逆極性期間も発生し得る。これに対し本態様では、第5制御工程において、第1の画素及び第2の画素に互いに異なる極性の電圧が印加される逆極性期間が小さくなるように、第2の画素の画素電極に対して、対向電極と同電位の第5の電圧パルスが少なくとも1フレーム期間供給される。従って、逆極性期間を短くすることができ、横電界の影響が大きくなることによって、表示画像が乱れてしまうことを抑制できる。
本発明に係る電気光学装置の制御装置は上記課題を解決するために、互いに交差する複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応して設けられ、互いに対向する画素電極及び対向電極間に電気光学物質を夫々有する複数の画素を有し、前記画素は、第1の極限光学状態、第2の極限光学状態、並びに前記第1の極限光学状態及び前記第2の極限光学状態間の複数の中間光学状態をとり得る表示部と、該表示部に画像データに応じた画像を表示させるために、前記複数の画素の各々の前記画素電極に前記画像データに応じた電圧パルスを複数のフレーム期間において供給する駆動部とを備えた電気光学装置を制御する制御装置であって、前記複数の画素のうち第1の画素を第1の中間光学状態に移行させる際に、
前記第1の画素の前記画素電極に対して、第1の電圧パルスを供給する第1制御手段と、前記第1制御手段によって前記第1の電圧パルスが供給された後、前記第1の画素の前記画素電極に対して、前記第1の電圧パルスと逆極性の第2の電圧パルスを供給する第2制御手段と、前記第1の画素に隣り合う第2の画素を第2の中間光学状態に移行させる際に、前記第2の画素の前記画素電極に対して、前記第1の電圧パルスと同極性の第3の電圧パルスを供給する第3制御手段と、前記第3制御手段によって前記第3の電圧パルスが供給された後、前記第2の画素の前記画素電極に対して、前記第2の電圧パルスと同極性の第4の電圧パルスを供給する第4制御手段と、前記第1制御手段によって前記第1の電圧パルスが供給される期間及び前記第4制御手段によって前記第4の電圧パルスが供給される期間、又は前記第2制御手段によって前記第2の電圧パルスが供給される期間及び前記第3制御手段によって前記第3の電圧パルスが供給される期間が互いに重なる逆極性期間が短くなるように、前記第2の画素の前記画素電極に対して、前記対向電極と同電位の第5の電圧パルスを少なくとも1フレーム期間供給する第5制御手段とを備える。
本発明に係る電気光学装置の制御装置によれば、前述した本発明に係る電気光学装置の制御方法と同様に、電気光学装置において、互いに隣り合う画素間における横電界の影響を低減しつつ、好適に中間階調を表示させることができる。この結果、高品位な画像を表示させることが可能となる。
なお、本発明に係る電気光学装置の制御装置においても、前述した本発明に係る電気光学装置の制御方法における各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
本発明に係る電気光学装置は上記課題を解決するために、前述した本発明に係る電気光学装置の制御装置(但し、その各種態様も含む)を備える。
本発明に係る電気光学装置によれば、前述した本発明に係る電気光学装置の制御装置を備えるので、複数の画素間での光学状態のばらつきを防止しつつ、好適に所望の中間光学状態を実現させることができる。この結果、高品位な画像を表示することが可能となる。
本発明に係る電子機器は上記課題を解決するために、前述した本発明に係る電気光学装置(但し、その各種態様も含む)を備える。
本発明に係る電子機器によれば、前述した本発明に係る電気光学装置を備えるので、高品質な画像を表示することが可能な、例えば、腕時計、電子ペーパー、電子ノート、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの各種電子機器を実現できる。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
<電気光学装置>
本実施形態に係る電気光学装置について、図1から図11を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、本発明に係る電気光学装置の一例として、アクティブマトリクス駆動方式の電気泳動表示装置を挙げて説明する。
先ず、本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成について、図1から図3を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図である。
図1において、本実施形態に係る電気泳動表示装置1は、表示部3、ROM4、RAM5、コントローラ10及びCPU100を備えて構成されている。
表示部3は、メモリ性を有する表示素子を有しており、書き込みを行なわない状態においても表示状態が維持される表示デバイスである。なお、メモリ性とは、電圧の印加によって所定の表示状態になると、電圧が印加されなくなっても、その表示状態を維持しようとする性質をいうものであり、双安定性ともいう。表示部の具体的な構成については後に詳述する。
ROM4は、電気泳動表示装置の動作時に用いるデータを記憶する手段である。ROM4には、例えば、各画素において目標とする表示状態を実現するための駆動電圧の波形テーブルが記憶されている。駆動電圧の波形テーブルについては後に詳述する。なお、ROM4は、RAM等の書き換え可能な記憶手段でも代用することが可能である。
RAM5は、上述したROM4と同様に、電気泳動表示装置の動作時に用いるデータを記憶する手段である。RAM5は、例えば書き換え動作前の表示状態を示すデータや書き換え後の表示状態を示すデータを記憶する。またRAM5は、例えばフレームバッファとして機能するVRAM等を含んでおり、CPU100の制御に基づいて、フレーム画像データを記憶する。
コントローラ10は、上述したROM4やRAM5に記憶されたデータを用いて表示部3の表示動作を制御する。コントローラ10は、表示部3に表示させる画像を示す画像信号、その他各種信号(例えば、クロック信号等)を出力することによって表示部3を制御する。
CPU100は、電気泳動表示装置1の動作を制御するプロセッサであり、予め記憶されたプログラムを実行することにより、データの読み出しや書き込みを行う。CPU100は、例えば画像を書き換える際に、表示部3に表示させる画像データをVRAMに記憶させる。
図2は、本実施形態に係る電気泳動表示装置の表示部周辺の構成を示すブロック図である。
図2において、本実施形態に係る電気泳動表示装置1は、アクティブマトリクス駆動方式の電気泳動表示装置であり、表示部3と、コントローラ10と、走査線駆動回路60と、データ線駆動回路70と、共通電位供給回路220とを備えている。
表示部3には、m行×n列分の画素20がマトリクス状(二次元平面的)に配列されている。また、表示部3には、m本の走査線40(即ち、走査線Y1、Y2、…、Ym)と、n本のデータ線50(即ち、データ線X1、X2、…、Xn)とが互いに交差するように設けられている。具体的には、m本の走査線40は、行方向(即ち、X方向)に延在し、n本のデータ線50は、列方向(即ち、Y方向)に延在している。m本の走査線40とn本のデータ線50との交差に対応して画素20が配置されている。
コントローラ10は、走査線駆動回路60、データ線駆動回路70及び共通電位供給回路220の動作を制御する。コントローラ10は、例えば、クロック信号、スタートパルス等のタイミング信号を各回路に供給する。
走査線駆動回路60は、コントローラ10による制御下で、所定のフレーム期間中に、走査線Y1、Y2、…、Ymの各々に走査信号をパルス的に順次供給する。
データ線駆動回路70は、コントローラ10による制御下で、データ線X1、X2、…、Xnにデータ電位を供給する。データ電位は、基準電位GND(例えば0ボルト)、高電位VSH(例えば+15ボルト)又は低電位−VSH(例えば−15ボルト)のいずれかの電位をとる。
共通電位供給回路220は、共通電位線93に共通電位Vcom(本実施形態では、基準電位GNDと同一の電位)を供給する。なお、共通電位Vcomは、共通電位Vcomが供給された対向電極22と基準電位GNDが供給された画素電極21との間に電圧が実質的に生じない範囲内で、基準電位GNDとは異なる電位であってもよい。例えば、共通電位Vcomが、フィードスルーによる画素電極21の電位の変動を考慮して、画素電極21に供給される基準電位GNDとは異なる値とされていてもよく、この場合であっても、本明細書では、共通電位Vcomと基準電位GNDとが同一であるとみなす。
ここで、フィードスルーとは、走査線40に走査信号が供給され、データ線50を介して画素電極21に電位が供給された後に、走査線40への走査信号の供給が終了した際(例えば走査線40の電位が低下した際)、画素電極21の電位が、走査線40との間の寄生容量に起因して変動する(例えば走査線40の電位低下とともに低下する)現象をいう。共通電位Vcomは、フィードスルーにより画素電極21の電位が低下することを予め想定して、画素電極21に供給される基準電位GNDより僅かに低い値とされることがあるが、この場合も共通電位Vcomと基準電位GNDとが同電位であるとみなす。
なお、コントローラ10、走査線駆動回路60、データ線駆動回路70及び共通電位供給回路220には、各種の信号が入出力されるが、本実施形態と特に関係のないものについては説明を省略する。
図3は、本実施形態に係る画素20の電気的な構成を示す等価回路図である。
図3において、画素20は、画素スイッチング用トランジスター24と、画素電極21と、対向電極22と、電気泳動素子23と、保持容量27とを備えている。
画素スイッチング用トランジスター24は、例えばN型トランジスターで構成されている。画素スイッチング用トランジスター24は、そのゲートが走査線40に電気的に接続されており、そのソースがデータ線50に電気的に接続されており、そのドレインが画素電極21及び保持容量27に電気的に接続されている。画素スイッチング用トランジスター24は、データ線駆動回路70(図2参照)からデータ線50を介して供給されるデータ電位を、走査線駆動回路60(図2参照)から走査線40を介してパルス的に供給される走査信号に応じたタイミングで、画素電極21及び保持容量27に出力する。
画素電極21には、データ線駆動回路70からデータ線50及び画素スイッチング用トランジスター24を介して、データ電位が供給される。画素電極21は、電気泳動素子23を介して対向電極22と互いに対向するように配置されている。
対向電極22は、共通電位Vcomが供給される共通電位線93に電気的に接続されている。
電気泳動素子23は、電気泳動粒子をそれぞれ含んでなる複数のマイクロカプセルから構成されている。
保持容量27は、誘電体膜を介して対向配置された一対の電極からなり、一方の電極が、画素電極21及び画素スイッチング用トランジスター24に電気的に接続され、他方の電極が共通電位線93に電気的に接続されている。保持容量27によってデータ電位を一定期間だけ維持することができる。
次に、本実施形態に係る電気泳動表示装置の表示部の具体的な構成について、図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係る電気泳動表示装置1の表示部3の部分断面図である。
図4において、表示部3は、素子基板28と対向基板29との間に電気泳動素子23が挟持される構成となっている。なお、本実施形態では、対向基板29側に画像を表示することを前提として説明する。
素子基板28は、例えばガラスやプラスチック等からなる基板である。素子基板28上には、ここでは図示を省略するが、図2を参照して前述した画素スイッチング用トランジスター24、保持容量27、走査線40、データ線50、共通電位線93等が作り込まれた積層構造が形成されている。この積層構造の上層側に複数の画素電極21がマトリクス状に設けられている。
対向基板29は、例えばガラスやプラスチック等からなる透明な基板である。対向基板29における素子基板28との対向面上には、対向電極22が複数の画素電極21と対向してベタ状に形成されている。対向電極22は、例えばマグネシウム銀(MgAg)、インジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)等の透明導電材料から形成されている。
電気泳動素子23は、電気泳動粒子をそれぞれ含んでなる複数のマイクロカプセル80から構成されており、例えば樹脂等からなるバインダー30及び接着層31によって素子基板28及び対向基板29間で固定されている。なお、本実施形態に係る電気泳動表示装置1は、製造プロセスにおいて、電気泳動素子23が予め対向基板29側にバインダー30によって固定されてなる電気泳動シートが、別途製造された、画素電極21等が形成された素子基板28側に接着層31によって接着されて構成されている。
マイクロカプセル80は、画素電極21及び対向電極22間に挟持され、1つの画素20内に(言い換えれば、1つの画素電極21に対して)1つ又は複数配置されている。
マイクロカプセル80は、被膜85の内部に分散媒81と、複数の白色粒子82と、複数の黒色粒子83とが封入されてなる。マイクロカプセル80は、例えば、50um程度の粒径を有する球状に形成されている。
被膜85は、マイクロカプセル80の外殻として機能し、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル樹脂、ユリア樹脂、アラビアガム、ゼラチン等の透光性を有する高分子樹脂から形成されている。
分散媒81は、白色粒子82及び黒色粒子83をマイクロカプセル80内(言い換えれば、被膜85内)に分散させる媒質である。分散媒81としては、水や、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、メチルセルソルブ等のアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等の各種エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ペンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエンや、キシレン、ヘキシルベンゼン、へブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン等の長鎖アルキル基を有するベンゼン類等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1、2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、カルボン酸塩やその他の油類を単独で又は混合して用いることができる。また、分散媒81には、界面活性剤が配合されてもよい。
白色粒子82は、例えば、二酸化チタン、亜鉛華(酸化亜鉛)、三酸化アンチモン等の白色顔料からなる粒子(高分子或いはコロイド)であり、例えば負に帯電されている。
黒色粒子83は、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料からなる粒子(高分子或いはコロイド)であり、例えば正に帯電されている。
このため、白色粒子82及び黒色粒子83は、画素電極21と対向電極22との間の電位差によって発生する電場によって、分散媒81中を移動することができる。
これらの顔料には、必要に応じ、電解質、界面活性剤、金属石鹸、樹脂、ゴム、油、ワニス、コンパウンド等の粒子からなる荷電制御剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤等を添加することができる。
図4において、画素電極21と対向電極22との間に、相対的に対向電極22の電位が高くなるように電圧が印加された場合には、正に帯電された黒色粒子83はクーロン力によってマイクロカプセル80内で画素電極21側に引き寄せられるとともに、負に帯電された白色粒子82はクーロン力によってマイクロカプセル80内で対向電極22側に引き寄せられる。この結果、マイクロカプセル80内の表示面側(即ち、対向電極22側)には白色粒子82が集まることになり、表示部3の表示面にはこの白色粒子82の色(即ち、白色)が表示されることとなる。逆に、画素電極21と対向電極22との間に、相対的に画素電極21の電位が高くなるように電圧が印加された場合には、負に帯電された白色粒子82がクーロン力によって画素電極21側に引き寄せられるとともに、正に帯電された黒色粒子83はクーロン力によって対向電極22側に引き寄せられる。この結果、マイクロカプセル80の表示面側には黒色粒子83が集まることになり、表示部3の表示面にはこの黒色粒子83の色(即ち、黒色)が表示されることとなる。
なお、白色粒子82、黒色粒子83に用いる顔料を、例えば赤色、緑色、青色等の顔料に代えることによって、赤色、緑色、青色等を表示することができる。
次に、本実施形態に係る電気泳動表示装置における画像書き換え時の動作について、2つの実施形態を挙げて説明する。
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態に係る電気泳動表示装置における画像書き換え時の動作について、図5を参照して説明する。以下では、説明の便宜上、互いに隣り合う2つの画素である第1の画素及び第2の画素のみに着目して書き換え時の動作を説明する。なお、以下に示す各処理は、典型的にはコントローラ10において行われるものであるが、コントローラ10以外で行われるようにしても構わない。
図5は、本実施形態に係る電気泳動表示装置の制御方法を示すフローチャートである。
図5において、本実施形態に係る電気泳動表示装置の動作時には、先ず画像を書き換えるように指示が出されると(ステップS01:YES)、第1の画素及び第2の画素に供給される電圧パルスの波形が比較される(ステップS02)。なお、各画素に供給される電圧パルスの波形は、例えば書き換え前の階調及び書き換え後の階調(以下、適宜「目標階調」と称する)に基づいて設定される。なお、ここでの階調は、本発明の「光学状態」の一例であり、例えば明度や反射率と言い換えることもできる。また、目標階調は、本発明の「第1の光学状態」及び「第2の光学状態」の一例である。
続いて、第1の画素及び第2の画素に供給される電圧パルスを比較した結果、逆極性期間が発生するか否かが判定される(ステップS03)。ここで逆極性期間とは、第1の画素及び第2の画素に互いに異なる極性の電圧が印加される期間である。逆極性期間が発生すると、第1の画素及び第2の画素間での横電界の影響が大きくなり、表示画像に乱れが生じてしまうおそれがある。よって、逆極性は発生しない、或いは発生してもできるだけ短い期間であることが好ましい。
以下では、逆極性期間の発生について、図6を参照して詳細に説明する。なお、以下では、本実施形態に係る電気泳動表示装置1が8段階の階調を表示可能な場合を例に挙げて説明を進める。ここでは、黒に対応する階調をレベル0、白に対応する階調をレベル7とし、黒と白との中間階調を夫々レベル1からレベル6で示す。
図6は、第1実施形態に係る隣接画素での逆極性期間の発生を示す概念図である。
図6において、第1の画素がレベル3の中間階調からレベル4の中間階調に書き換えられ、第2の画素がレベル4の中間階調からレベル3の中間階調に書き換えられる場合を考える。
この場合、第1の画素には、フェーズAにおいて白色に対応する駆動電圧−VSHが14フレーム印加される。フェーズAは、それまで表示されていた階調が白となるまでに長く印加する期間として設定されている。フェーズAによれば、目標階調である中間階調を実現する前に一旦白を表示させることで、各画素でばらつきのある白色粒子82及び黒色粒子83の位置を互いに揃えることが可能となる。よって、中間階調を表示する際に、各画素における粒子の位置にばらつきが生じることに起因して、表示される階調にもばらつきが生じてしまうことを防止することができる。ここでのフェーズAは、本発明の「第1制御工程」の一例である。
続いて第1の画素には、フェーズBにおいて、黒色に対応する駆動電圧VSH(即ち、フェーズAと逆極性の電位)が1フレーム印加される。フェーズBは、フェーズAにおいて白とされた階調を目標階調へと変化させるための期間として設定される。ここでのフェーズBは、本発明の「第2制御工程」の一例である。
他方、第2の画素には、フェーズAにおいて白色に対応する駆動電圧−VSHが13フレーム印加される。なお、第2の画素におけるフェーズAの期間(即ち、13フレーム)は、第1の画素におけるフェーズA(即ち、14フレーム)よりも短い。これは、第2の画素の書き換え前の階調(即ち、レベル4)が、第1の画素の書き換え前の階調(即ち、レベル3)よりも白に近い階調であることに起因している。ここでのフェーズAは、本発明の「第3制御工程」の一例である。
続いて第2の画素には、フェーズBにおいて、黒色に対応する駆動電圧VSHが2フレーム印加される。フェーズBは、フェーズAにおいて白とされた階調を目標階調へと変化させるための期間として設定される。なお、第2の画素におけるフェーズBの期間(即ち、2フレーム)は、第1の画素におけるフェーズB(即ち、1フレーム)よりも長い。これは、第2の画素の目標階調(即ち、レベル3)が、第1の画素の目標階調(即ち、レベル4)よりも黒に近い階調であることに起因している。ここでのフェーズBは、本発明の「第4制御工程」の一例である。
以上のように、第1の画素及び第2の画素の各々対して、互いに異なる極性の電圧を供給するフェーズA及びフェーズBが行われる場合、第1の画素と第2の画素とでフェーズAの期間が異なるため、フェーズAの終了タイミング(言い換えれば、フェーズBの開始タイミング)に差が生じる。これにより、第1の画素におけるフェーズAが行われる期間と、第2の画素におけるフェーズBが行われる期間とが重なり、第1の画素及び第2の画素に互いに異なる極性の電圧が印加される逆極性期間が発生する。
図5に戻り、逆極性期間が発生すると判定されると(ステップS03:YES)、逆極性期間を小さくするためのフェーズZが第2の画素に対して設定される(ステップS04)。以下では、このフェーズZについて、図7を参照して詳細に説明する。
図7は、フェーズZ設定後の電圧印加方法を示す概念図である。
図7において、フェーズZは、第2の画素の画素電極21に対向電極22と同じ電位(即ち、GND)を供給する期間であり、フェーズA及びフェーズB間の期間として設定される。フェーズZは、本発明の「第5制御工程」の一例である。
ここでのフェーズZは、1フレームの長さを有する期間として設定される。フェーズZの長さは、第1の画素におけるフェーズAの期間(即ち、14フレーム)と、第2の画素におけるフェーズAの期間(即ち、13フレーム)との差分に応じて設定される。このようにフェーズZを設定することで、第2の画素におけるフェーズBの開始タイミングが1フレーム遅れ、結果として第1の画素におけるフェーズBの開始タイミングと第2の画素におけるフェーズBの開始タイミングが揃えられる。
第1の画素及び第2の画素でフェーズBの開始タイミングを揃えることで、図6で示したような逆極性期間をなくすことができる。従って、横電界に起因する表示画像の乱れを抑制することができる。なお、ここでは逆極性期間が完全になくなる場合を例に挙げて説明したが、逆極性期間を多少なりとも短くすることができれば、上述した効果は相応に得られる。
なお、フェーズZを設定することにより、第1の画素に−VSHが供給され、第2の画素にGNDが供給される期間が発生する。即ち、第1の画素及び第2の画素の一方にだけ電圧が印加される期間が発生する。このような期間は、第1の画素及び第2の画素に印加される駆動電圧の極性が同じ極性である場合と比べると、横電界の影響を増大させてしまうおそれがある。しかしながら、上述した逆極性期間と比べると、その影響は確実に小さい。よって、フェーズZを設定すれば、確実に横電界に起因する表示の乱れを抑制することができる。
また、上述した実施形態では、フェーズZをフェーズAとフェーズBとの間に設定する場合を例に挙げたが、フェーズZをフェーズAの前に設定してもよい。この場合、第2の画素におけるフェーズAの開始タイミングが1フレーム遅れることになるので、第1の画素及び第2の画素でフェーズAの終了タイミングが揃い、フェーズBの開始タイミングも揃う。よって、フェーズZをフェーズAの前に設定した場合でも、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る電気光学装置における画像書き換え時の動作について説明する。なお、第2実施形態は、上述する第1実施形態と比べて一部の動作が異なるのみであり、その他の動作については概ね同様である。このため、以下では第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
本願発明者の研究するところによれば、白色から中間階調へと階調を変化させる場合、電気泳動素子23の特性に起因して、フェーズBだけでは目標階調を実現できない場合が存在し得ることが判明している。以下では、この電気泳動素子23の特性について、図8及び図9を参照して説明する。
図8は、白から黒へ書き換える際の階調の変化を示すグラフである。
図8において、白から黒へと画像を書き換える場合、電圧を印加する期間に対する階調の変化は、書き換え開始直後は大きいが、反対階調に近づくにつれて小さくなっていく傾向にある。即ち、白に近い階調である時点では大きく黒方向へと階調が変化するが、黒に近づくにつれて階調は変化し難くなっていく。
図9は、黒から白へ書き換える際の階調の変化を示すグラフである。
図9において、黒から白へと画像を書き換える場合も同様に、電圧を印加する期間に対する階調の変化は、書き換え開始直後は大きいが、反対階調に近づくにつれて小さくなっていく傾向にある。即ち、黒に近い階調である時点では大きく白方向へと階調が変化するが、白に近づくにつれて階調は変化し難くなっていく。
電気泳動素子23が上述した特性を有する場合、例えば図6や図7で示したレベル3及びレベル4の中間階調はフェーズA及びフェーズBのみで実現することができる。しかしながら、フェーズBにおいて最小単位である1フレームだけ駆動電圧VSHを印加した場合であっても、レベル7であった階調はレベル4の中間階調となってしまう。このため、例えばレベル5及びレベル6の中間階調は、フェーズA及びフェーズBのみでは実現することが難しい。
これに対し本実施形態では、フェーズA及びフェーズBだけでは目標階調を実現できない場合に、目標階調より黒に近い階調を実現するためのフェーズBが設定され、更にフェーズB後の階調を目標階調とするためのフェーズCが設定される。
フェーズCは、フェーズBでの電圧印加によって目標階調より黒に近くなった階調を目標階調へと近づけるために設定される期間である。フェーズCでは、書き換え対象画素に対して白に対応する駆動電圧VSH(即ち、フェーズAと同極性の電圧)が印加される。
以下では、このフェーズCを用いた目標階調の実現方法及びフェーズCを用いた場合に発生する逆極性期間について、図10を参照して説明する。
図10は、第2実施形態に係る隣接画素での逆極性期間の発生を示す概念図である。
図10において、第1の画素がレベル3の中間階調からレベル5の中間階調に書き換えられ、第2の画素がレベル4の中間階調からレベル6の中間階調に書き換えられる場合を考える。
この場合、第1の画素には、フェーズAにおいて白色に対応する駆動電圧−VSHが14フレーム印加される。これにより、第1の画素の階調はレベル7となる。
続いて第1の画素には、フェーズBにおいて、黒色に対応する駆動電圧VSH(即ち、フェーズAと逆極性の電位)が2フレーム印加される。これにより、第1の画素の階調はレベル3となる。
第1の画素に対するフェーズCは、フェーズBによってレベル3となった階調(即ち、目標階調より黒に近い階調)を、目標階調であるレベル5とする期間として設定されている。フェーズCでは、白に対応する駆動電圧−VSHが印加されるため、階調は白に近づけられる。この際、階調の変化率は、図9でも示したように、比較的変化率の大きいフェーズBと比べて小さくなる。即ち、フェーズCでは、フェーズBと比べて階調が緩やかに変化する。よって、フェーズCにおいて駆動電圧−VSHを2フレーム印加すれば、レベル3であった中間階調を、目標階調であるレベル5とすることができる。
他方、第2の画素には、フェーズAにおいて白色に対応する駆動電圧−VSHが13フレーム印加される。これにより、第1の画素の階調はレベル7となる。
続いて第2の画素には、フェーズBにおいて、黒色に対応する駆動電圧VSHが1フレーム印加される。フェーズBは、フェーズAにおいて白とされた階調を目標階調へと変化させるための期間として設定される。これにより、第1の画素の階調はレベル4となる。
第2の画素に対するフェーズCは、フェーズBによってレベル4となった階調(即ち、目標階調より黒に近い階調)を、目標階調であるレベル6とする期間として設定されている。フェーズCでは、白に対応する駆動電圧−VSHが印加されるため、階調は白に近づけられる。この際、上述した第1の画素の場合と同様に、フェーズCでは、フェーズBと比べて階調が緩やかに変化する。よって、フェーズCにおいて駆動電圧−VSHを4フレーム印加すれば、レベル4であった中間階調を、目標階調であるレベル6とすることができる。
以上のように、第1の画素及び第2の画素の各々対して、互いに異なる極性の電圧を供給するフェーズA、フェーズB及びフェーズCが行われる場合、第1の画素と第2の画素とで各フェーズの期間が異なるため、フェーズAの終了タイミング(言い換えれば、フェーズBの開始タイミング)及びフェーズBの終了タイミング(言い換えれば、フェーズCの開始タイミング)に差が生じる。これにより、第1の画素におけるフェーズAが行われる期間と、第2の画素におけるフェーズBが行われる期間とが重なる、或いは第1の画素におけるフェーズBが行われる期間と、第2の画素におけるフェーズCが行われる期間とが重なることで、第1の画素及び第2の画素に互いに異なる極性の電圧が印加される逆極性期間が発生する。
本実施形態では、上述した逆極性期間を小さくするため期間として、フェーズZ0及びフェーズZ1の2つのフェーズが第2の画素に対して設定される。以下では、このフェーズZ0及びフェーズZ1について、図11を参照して詳細に説明する。
図11は、フェーズZ0及びZ1設定後の電圧印加方法を示す概念図である。
図11において、フェーズZ0は、第2の画素の画素電極21に対向電極22と同じ電位(即ち、GND)を供給する期間であり、フェーズAの前の期間として設定される。フェーズZ0は、本発明の「第5制御工程」の一例であり、この場合、第1の画素におけるフェーズAが本発明の「第1制御工程」の一例であり、第1の画素におけるフェーズBが本発明の「第2制御工程」の一例であり、第2の画素におけるフェーズAが本発明の「第3制御工程」の一例であり、第2の画素におけるフェーズBが本発明の「第4制御工程」の一例である。
ここでのフェーズZ0は、1フレームの長さを有する期間として設定される。フェーズZ0の長さは、第1の画素におけるフェーズAの期間(即ち、14フレーム)と、第2の画素におけるフェーズAの期間(即ち、13フレーム)との差分に応じて設定される。このようにフェーズZ0を設定することで、第2の画素におけるフェーズBの開始タイミングが1フレーム遅れ、結果として第1の画素におけるフェーズBの開始タイミングと第2の画素におけるフェーズBの開始タイミングが揃えられる。
他方、フェーズZ1は、第2の画素の画素電極21に対向電極22と同じ電位(即ち、GND)を供給する期間であり、フェーズB及びフェーズC間の期間として設定される。フェーズZ1は、フェーズZ0と同様に本発明の「第5制御工程」の一例であり、この場合、第1の画素におけるフェーズBが本発明の「第1制御工程」の一例であり、第1の画素におけるフェーズCが本発明の「第2制御工程」の一例であり、第2の画素におけるフェーズBが本発明の「第3制御工程」の一例であり、第2の画素におけるフェーズCが本発明の「第4制御工程」の一例である。
ここでのフェーズZ1は、1フレームの長さを有する期間として設定される。フェーズZ1の長さは、第1の画素におけるフェーズBの期間(即ち、2フレーム)と、第2の画素におけるフェーズBの期間(即ち、1フレーム)との差分に応じて設定される。このようにフェーズZ1を設定することで、第2の画素におけるフェーズCの開始タイミングが1フレーム遅れ(正確には、フェーズZ0による遅れと合わせて2フレーム遅れ)、結果として第1の画素におけるフェーズCの開始タイミングと第2の画素におけるフェーズCの開始タイミングが揃えられる。
以上のように、第1の画素と第2の画素とでフェーズB及びフェーズCの開始タイミングを揃えることで、図10で示したような逆極性期間をなくすことができる。従って、横電界に起因する表示画像の乱れを抑制することができる。
なお、ここでは、逆極性期間を小さくするための期間として、フェーズZ0及びフェーズZ1の2つのフェーズが第2の画素に対して設定される場合を例に挙げたが、例えば画像書き換え処理のフェーズがより多くのフェーズを含む場合には、逆極性期間を小さくするための期間として、3つ以上のフェーズが設定されることもあり得る。
以上説明したように、本実施形態に係る電気泳動表示装置によれば、横電界の影響の増大を防止しつつ、好適に所望の中間階調を表示させることができる。従って、高品質な画像を表示することが可能となる。
なお、上記実施形態では、白色粒子82が負に帯電し、黒色粒子83が正に帯電している例で説明したが、白色粒子82が正に帯電し、黒色粒子83が負に帯電していてもよい。また、電気泳動素子23は、マイクロカプセル80を有する構成に限られず、隔壁によって仕切られた空間に電気泳動分散媒と電気泳動粒子が含まれる構成であってもよい。また、電気光学装置として電気泳動素子23を有するものを例に説明したが、これに限定する趣旨ではない。電気光学装置は、例えば電子粉流体を用いた電気光学装置であってもよい。
<電子機器>
次に、前述した電気泳動表示装置を適用した電子機器について、図12及び図13を参照して説明する。以下では、前述した電気泳動表示装置を電子ペーパー及び電子ノートに適用した場合を例にとる。
図12は、電子ペーパー1400の構成を示す斜視図である。
図12に示すように、電子ペーパー1400は、前述した実施形態に係る電気泳動表示装置を表示部1401として備えている。電子ペーパー1400は可撓性を有し、従来の紙と同様の質感及び柔軟性を有する書き換え可能なシートからなる本体1402を備えて構成されている。
図13は、電子ノート1500の構成を示す斜視図である。
図13に示すように、電子ノート1500は、図12で示した電子ペーパー1400が複数枚束ねられ、カバー1501に挟まれているものである。カバー1501は、例えば外部の装置から送られる表示データを入力するための表示データ入力手段(図示せず)を備える。これにより、その表示データに応じて、電子ペーパーが束ねられた状態のまま、表示内容の変更や更新を行うことができる。
前述した電子ペーパー1400及び電子ノート1500は、前述した実施形態に係る電気泳動表示装置を備えるので、高品質な画像表示を行うことが可能である。
なお、これらの他に、腕時計、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの電子機器の表示部に、前述した本実施形態に係る電気泳動表示装置を適用することができる。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置の制御方法、電気光学装置の制御装置、電気光学装置、及び電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。