JP6009751B2 - フリップチップ実装用封止剤及び半導体チップ実装体の製造方法 - Google Patents
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フリップチップ実装においては、一般的に、半導体チップの突起状電極と、基板又は他の半導体チップの電極部とを接合させた後、アンダーフィルを注入して樹脂封止を行う方法が用いられている。また、電極接合の後にアンダーフィルを注入するのではなく、基板又は半導体チップに予め封止剤を供給しておき、電極接合と樹脂封止とを同時に行う方法も検討されている。
このような方法によれば、半導体チップの自重のみで樹脂排除を行うことができ、ボイドレスで高接続信頼性を有する半導体チップ実装体を製造することができる。しかしながら、このような方法では、例えば、封止剤のはみ出した部分、いわゆるフィレットの形状崩れが生じたり、溶融した電極材料が流れて隣接する電極部分に接触したりする問題があり、充分な信頼性を有する半導体チップ実装体を得ることは難しい。
以下、本発明を詳述する。
本発明者は、これらの問題を解決するためには、電極接合と樹脂封止とを行う際(ボンディング時)の封止剤の粘度を制御することが重要であると考えた。ボンディング時の封止剤の粘度が低すぎると、封止領域に封止剤を充分に充填することはできるが、フィレットの形状崩れが生じたり、溶融した電極材料が流れて隣接する電極部分に接触したりしてしまう。ボンディング時の封止剤の粘度が高すぎると、封止剤の充填が不充分となったり、半導体チップ上部への封止剤の這い上がりが生じたり、電極間に封止剤を噛み込んだりしてしまう。
このような問題に対し、本発明者は、エポキシ化合物を含有する封止剤に対して、ボンディング時の温度よりも低い温度においてエポキシ化合物の硬化系とは別の機構によって封止剤の粘度を上昇させる粘度調整剤を添加することにより、150℃での封止剤の溶融粘度を制御することができ、その結果、直接測定することはできないながらもボンディング時の封止剤の粘度を制御し、信頼性の高い半導体チップ実装体を製造できることを見出した。
即ち、本発明者は、エポキシ化合物、エポキシ硬化剤、硬化促進剤、無機充填剤及び粘度調整剤を含有し、粘度調整剤が熱可塑性樹脂粒子又は反応性モノマーであり、25℃での粘度と150℃での溶融粘度とが所定範囲内であるフリップチップ実装用封止剤は、ディスペンス性に優れ、電極接合を良好に行って信頼性の高い半導体チップ実装体を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記エポキシ化合物として、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリエーテル変性エポキシ樹脂、NBR変性エポキシ樹脂、CTBN変性エポキシ樹脂、及び、これらの水添化物等が挙げられる。なかでも、粘度の低いフリップチップ実装用封止剤が得られることから、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ポリエーテル変性エポキシ樹脂が好ましい。
上記無機充填剤の含有量は、エポキシ化合物100重量部に対し、好ましい下限が30重量部、好ましい上限が400重量部である。含有量が30重量部未満であると、フリップチップ実装用封止剤が充分な信頼性を保持することができないことがある。含有量が400重量部を超えると、フリップチップ実装用封止剤の粘度が高くなりすぎて、ディスペンス性が低下することがある。
上記粘度調整剤がフリップチップ実装用封止剤の粘度を上昇させる温度としては、フリップチップ実装において半導体チップの突起状電極を基板の電極部と接触させるプレヒート工程における温度であることが好ましく、具体的には、80〜180℃程度であることが好ましい。
上記熱可塑性樹脂粒子は、ボンディング時の温度よりも低い温度において、溶融することにより、フリップチップ実装用封止剤の粘度を上昇させる。上記反応性モノマーは、ボンディング時の温度よりも低い温度において、重合することにより、フリップチップ実装用封止剤の粘度を上昇させる。
このような熱可塑性樹脂粒子として、例えば、アクリル樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエステル樹脂、エチレンアクリレート共重合体、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ブタジエンゴム−スチレン共重合体、フェノキシ樹脂等からなる熱可塑性樹脂粒子等が挙げられる。
上記反応性モノマーのうち、市販品として、例えば、DPCA−120、DPCA−60、DPHA(以上、日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ラジカル重合開始剤として、例えば、パーオキサイド、アゾ系開始剤等が挙げられる。上記ラジカル開始剤のうち、市販品として、例えば、パーヘキシルPV、パーブチルPV、パーオクタO、パーブチルO、パーヘキサHC、パーテトラA(以上、日油社製)、V−40、V−59(以上、和光純薬工業社製)等が挙げられる。
粘度が10Pa・s未満であると、フリップチップ実装用封止剤はディスペンス後に形状保持性に欠ける。粘度が200Pa・sを超えると、ディスペンサを用いてフリップチップ実装用封止剤をディスペンスする場合に糸引き等が生じ、吐出安定性に欠ける。粘度の好ましい下限は20Pa・s、好ましい上限は100Pa・sであり、より好ましい下限は25Pa・s、より好ましい上限は50Pa・sである。
溶融粘度が100Pa・s未満であると、ボンディング時のフリップチップ実装用封止剤の粘度が低くなりすぎ、フィレットの形状崩れが生じたり、溶融した電極材料が流れて隣接する電極部分に接触したりしてしまう。溶融粘度が10000Pa・sを超えると、ボンディング時のフリップチップ実装用封止剤の粘度が高くなりすぎ、フリップチップ実装用封止剤の充填が不充分となったり、半導体チップ上部へのフリップチップ実装用封止剤の這い上がりが生じたり、電極間にフリップチップ実装用封止剤を噛み込んだりしてしまう。溶融粘度の好ましい下限は150Pa・s、好ましい上限は5000Pa・sであり、より好ましい下限は200Pa・s、より好ましい上限は1000Pa・sである。
ゲルタイムが5秒未満であると、フリップチップ実装用封止剤のボンディング時のポットライフが短くなり、実装不良を起こすことがある。ゲルタイムが30秒を超えると、フリップチップ実装用封止剤の硬化物の物性が悪くなったり、半導体チップ実装体の生産効率が低下したりすることがある。ゲルタイムのより好ましい下限は6秒、より好ましい上限は15秒である。
なお、240℃でのゲルタイムは、JIS C2161 Bに準拠して測定することができる。
上記混合の方法として、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を使用する方法が挙げられる。
ディスペンスする温度が120℃を超えると、粘度調整剤による粘度上昇が開始してしまうことがあり、フリップチップ実装用封止剤のディスペンス性が低下する。
加熱する温度が120℃未満であると、粘度調整剤による期待する粘度上昇が達成できない。加熱する温度が180℃を超えると、粘度調整剤による粘度上昇に加えてエポキシ化合物の硬化反応も進行し、粘度が過度に上昇してしまう。
加熱する温度が200℃未満であると、突起状電極又は電極部が溶融せず、電極接合が良好に行えない。加熱する温度が320℃を超えると、溶融した電極材料が流れて隣接する電極部分に接触することがある。
本発明のフリップチップ実装用封止剤を完全に硬化させるための加熱温度は、好ましい下限が160℃、好ましい上限が200℃である。
本発明の半導体チップ実装体の製造方法は、電極材料が半田である場合に特に有用である。
(フリップチップ実装用封止剤の製造)
表1に記載の組成に従って、下記に示す各材料を、遊離攪拌器を用いて攪拌混合することによりフリップチップ実装用封止剤を製造した。
エポキシ化合物A(EXA−850CRP、DIC社製)
エポキシ化合物B(EXA−4710、DIC社製)
2.エポキシ硬化剤
酸無水物(YH−306、三菱化学社製)
3.硬化促進剤
イミダゾール化合物(2MA−OK、四国化成工業社製)
4.無機充填剤
球状シリカ(SE−2050−SPJ、アドマテックス社製、平均粒子径0.5μm、最大粒子径2μm)
5.粘度調整剤
熱可塑性樹脂粒子(アクリル粒子、KP0930、三菱レイヨン社製)
反応性モノマー(アクリルモノマー、DPHA、日本化薬社製)
6.ラジカル重合開始剤
ラジカル開始剤(パーブチルO、日油社製)
E型粘度測定装置(商品名「VISCOMETER TV−22」、東機産業社製、使用ローターφ15mm、設定温度25℃)を用いて、フリップチップ実装用封止剤の回転数5rpmにおける粘度を求めた。
レオメーターを用いて、昇温速度5℃/分、周波数1rad秒で、フリップチップ実装用封止剤のコーンプレート剪断時における150℃での溶融粘度を測定した。
フリップチップ実装用封止剤について、240℃でのゲルタイムを測定した。なお、ゲルタイムは、JIS C2161 Bに準拠して測定した。
実施例及び比較例で得られたフリップチップ実装用封止剤について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
フリップチップ実装用封止剤を用いてエアーディスペンス装置(武蔵エンジニアリング社製)でクロスパターンを描いた際に、塗布形状不良又は糸引きが発生した場合を×、発生しなかった場合を○とした。
フリップチップ実装用封止剤を、半導体チップと電気的に接続されたときに半導体チップ内のメタル配線とデイジーチェーンとなるように銅が配線された20mm×20mm×0.75mm厚の基板(ガラス/エポキシ系FR−4)上に30℃でディスペンスした。バンプを有する半導体チップを、フリップチップ実装用封止剤を介して基板上に、ボンディング装置(FC3000、東レエンジニアリング社製)を用いてバンプにかかる実温度が180℃、10秒、10N(プレヒート工程)、その後、240℃、10秒、10N(接続工程)の条件にてボンディングした。その後、オーブンにて170℃30分で完全硬化を行った(硬化工程)。
基板−半導体チップ間について、封止領域からはみ出したフリップチップ実装用封止剤のはみ出し距離(フィレット距離)の最大値を測定し、下記の基準で評価した。
○ フィレット距離の最大値が400μm以下であった。
× フィレット距離の最大値が400μmを超えていた、又は、封止領域全体にフリップチップ実装用封止剤が充填されておらず、フィレット距離の最大値が0μmであった。
上記「2.フィレットの形状」で得られた半導体チップ実装体について、超音波映像装置(SAT)(mi−scope hyper、日立建機ファインテック社製)を用いてボイドの有無を確認した。ボイドの面積が1%以上であった場合を×、1%未満であった場合を○とした。
上記「2.フィレットの形状」で得られた半導体チップ実装体の半導体チップを上部より光学顕微鏡で観察した際に、半導体チップ上部にフリップチップ実装用封止剤が回り込んでいた(這い上がっていた)場合を×、回り込んでいなかった場合を○とした。
上記「2.フィレットの形状」で得られた半導体チップ実装体の半導体チップに対して垂直にバンプまで研磨し、光学顕微鏡でバンプの接合状態を観察した。半導体チップ全面でバンプ接合が行われていた場合を○、一箇所でも電極同士が外れていた場合を×とした。
上記「2.フィレットの形状」で得られた半導体チップ実装体について、60℃、60%RH、120時間吸湿させ、ピーク温度260℃のリフローオーブンに3回通した後、−55〜125℃(30分/1サイクル)、1000サイクルの温度サイクル試験を行った。試験前後のボイドを観察し、試験前後でボイドの状態に変化があった場合を×、変化がなかった場合を○とした。
フリップチップ実装用封止剤を、80℃で1時間放置した。放置後の粘度変化率が初期粘度に対して2倍以上であった場合を×、2倍以下であった場合を○とした。
Claims (4)
- エポキシ化合物、エポキシ硬化剤、硬化促進剤、無機充填剤及び粘度調整剤を含有し、
前記粘度調整剤は、熱可塑性樹脂粒子又は反応性モノマーであり、
25℃でE型粘度計を用いて測定した粘度が10〜200Pa・sであり、
150℃でレオメーターを用いて測定した溶融粘度が100〜10000Pa・sである
ことを特徴とするフリップチップ実装用封止剤。 - 粘度調整剤は、ガラス転移温度が70〜180℃のポリマーからなる熱可塑性樹脂粒子であり、
前記粘度調整剤の含有量は、エポキシ化合物100重量部に対して5〜20重量部である
ことを特徴とする請求項1記載のフリップチップ実装用封止剤。 - 粘度調整剤は、アクリルモノマー、メタクリルモノマー、マレイミド、アリルモノマー及びビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1つの反応性モノマーであり、
前記粘度調整剤の含有量は、エポキシ化合物100重量部に対して20〜60重量部である
ことを特徴とする請求項1記載のフリップチップ実装用封止剤。 - 請求項1、2又は3記載のフリップチップ実装用封止剤を、電極部を有する基板上に120℃以下でディスペンスするディスペンス工程と、
半導体チップの突起状電極を、120〜180℃に加熱しながら前記フリップチップ実装用封止剤を介して前記基板の電極部と接触させるプレヒート工程と、
前記半導体チップの突起状電極を、200〜320℃に加熱して前記基板の電極部と接合する接続工程と、
前記フリップチップ実装用封止剤を完全に硬化させる硬化工程とを有する
ことを特徴とする半導体チップ実装体の製造方法。
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