本発明の第1の発明に係る手袋は、手の形状を有すると共に伸縮性を有する繊維製の基体と、基体の表面であって、少なくとも掌の表面に形成される被膜と、被膜に形成される複数の通気孔と、を備え、着用時における通気孔の開口面積は、非着用時における通気孔の開口面積よりも、大きく、基体は、複数の編目を有しており、手袋が着用されて通気孔が開口する場合には、編目および通気孔が連通する。
この構成により、手袋1は、編目と開口する通気孔との連通によって、被膜における通気性を確保できる。当然に、被膜による把持力も実現できる。
本発明の第2の発明に係る手袋では、第1の発明に加えて、複数の通気孔の少なくとも一つは、手袋の着用時に、複数の編目と連通する。
この構成により、手袋は、通気孔による通気性の度合いを高めることができる。
本発明の第3の発明に係る手袋では、第1の発明に加えて、複数の編目の少なくとも一つは、手袋の着用時に、複数の通気孔と連通する。
この構成により、手袋は、通気性を確保しつつも、通気孔の広がりによる被膜の劣化に対する耐久性を高めることができる。
本発明の第4の発明に係る手袋では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、編目は、伸縮性の少ない基準糸と、伸縮性を有する糸との編み込みによって、形成される。
この構成により、編目は、その開口を維持しやすくなる。結果として、通気孔と連通して生じる通気性が高まる。
本発明の第5の発明に係る手袋では、第4の発明に加えて、基準糸は、竹繊維を含む。
この構成により、基準糸は、伸縮性を低くできる。
本発明の第6の発明に係る手袋では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、被膜は、手袋の指部の根元および指部の関節の少なくとも一部を除いた指部および掌の表面に形成される。
この構成により、汗や水分の溜まりやすい部位であって把持性に問題の少ない部位における通気性を高めることができる。
本発明の第7の発明に係る手袋では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、手袋の指の根元および指部の関節における被膜の厚みは、手袋の指部および掌における被膜の厚みより薄い。
この構成により、汗や水分の溜まりやすい部位であって把持性に問題の少ない部位における通気性を高めることができる。
本発明の第8の発明に係る手袋では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、手袋の指部における被膜の厚みは、掌における被膜の厚みより薄い。
この構成により、より簡便な方法で、汗や水分の気になる指部の通気性を高めることができる。
本発明の第9の発明に係る手袋では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、手袋の指先における被膜の厚みは、指部および掌の少なくとも一方における被膜の厚みよりも厚い。
この構成により、手袋は、指先の把持力を高めることができる。
本発明の第10の発明に係る手袋では、第1から第9のいずれかの発明に加えて、基体の色度は、被膜の色度よりも濃い部分を含んでいる。
この構成により、手袋は、通気孔の存在やその開口を、使用者に間接的に把握させることができる。
本発明に係る手袋は、手の形状を有すると共に伸縮性を有する繊維製の基体と、基体の表面であって、少なくとも掌の表面に形成される被膜と、被膜に形成される複数の通気孔と、を備え、手袋の着用時における通気孔の開口面積は、手袋の非着用時における通気孔の開口面積よりも、大きい。
この構成により、手袋1は、被膜による高い耐久性、把持性、一定の防水性を確保しつつ、通気孔による通気性をも両立させることができる。
本発明に係る手袋は、先の発明に加えて、基体は複数の編目を有しており、通気孔が開口する場合には、編目および通気孔と、が連通する。
この構成により、通気孔は、手の表面と外部との通気や排気を実現できる。
本発明に係る手袋では、先の発明に加えて、複数の編目の開口総面積は、複数の通気孔が開口する場合の開口総面積よりも大きい。
この構成により、汗や湿気の多い手の表面に近い開口が大きくなるので、手の表面の汗や湿気の排気が十分に行われる。
本発明に係る手袋では、先の発明に加えて、複数の編目の内の一つの編目の開口面積は、複数の通気孔の内の一つが開口する場合の開口面積よりも大きい。
この構成により、汗や湿気の多い手の表面に近い開口が大きくなるので、手の表面の汗や湿気の排気が十分に行われる。
本発明に係る手袋では、先の発明に加えて、手袋の掌における編目の開口総面積は、手袋の甲における編目の開口総面積よりも大きい。
この構成により、手の表面の湿気の排気が十分に行われる。
本発明に係る手袋では、先のいずれかの発明に加えて、被膜は、基体の略全面に渡って形成される、もしくは基体の表面において少なくとも基体の掌、指および指の根元に渡って形成される。
この構成により、被膜は、手袋の把持性や操作性を高めることができる。
本発明に係る手袋では、先のいずれかの発明に加えて、複数の通気孔の単位面積当たりの個数(以下、「単位個数」という)および複数の通気孔の単位面積当たりの開口総面積(以下、「単位開口面積」という)の少なくとも一方は、手袋の部位によって不均一である。
この構成により、通気孔は、汗や湿気の溜まりやすい部位を優先的に、通気や排気を高めることができる。加えて、手袋の耐久性を低下させない。
本発明に係る手袋では、先の発明に加えて、手袋の指の根元における単位個数および単位開口面積の少なくとも一方は、手袋の掌における単位個数および単位開口面積の少なくとも一方よりも、多いもしくは大きい。
この構成により、通気孔は、汗や湿気の溜まりやすい指の根元の通気や排気を優先できる。加えて、手袋の耐久性を低下させない。
本発明に係る手袋では、先の発明に加えて、手袋の指における単位個数および単位開口面積の少なくとも一方は、手袋の掌における単位個数および単位開口面積の少なくとも一方よりも、多いもしくは大きい。
この構成により、通気孔は、複雑な形状をしている指の通気や排気を優先できる。加えて、手袋の耐久性を低下させない。
本発明に係る手袋では、先の発明に加えて、手袋を製造する原型における指の大きさは標準サイズ未満であり、原型における掌の大きさは標準サイズ以上である。
この構成により、指における単位個数および単位開口面積を、掌における単位個数や単位開口面積よりも多くもしくは大きくできる。
本発明に係る手袋では、先の発明に加えて、手袋の指における単位個数および単位開口面積の少なくとも一方は、手袋の掌における単位個数および単位開口面積の少なくとも一方よりも、少ないもしくは小さい。
この構成により、表面積の大きい掌の通気性や排気性を、優先できる。当然ながら、手袋の耐久性を低下させない。
本発明に係る手袋では、先の発明に加えて、手袋を製造する原型における指の大きさは標準サイズ以上であり、原型における掌の大きさは標準サイズ未満である。
この構成により、掌における単位個数および単位開口面積を、指における単位個数や単位開口面積よりも多くもしくは大きくできる。
本発明に係る手袋では、先のいずれかの発明に加えて、通気孔は、被膜が含む気泡が破裂することおよび被膜に粒子が付着されることの少なくとも一方により形成される。
この構成により、通気孔が容易に形成される。
本発明に係る手袋では、先のいずれかの発明に加えて、手袋の指は、手袋が非着用時において掌側に屈曲している。
この構成により、指の通気孔は、掌の通気孔よりも、より大きく開口しやすくなる。
(実施の形態1)
実施の形態1について説明する。
(全体概要)
まず、実施の形態1における手袋の概要について、図1〜図4を用いて説明する。実施の形態1の手袋は、人体の手の形状に合わせた形状を有しており、一般的な人である使用者がその手に着用して使用するものである。
図1は、本発明の実施の形態1における手袋の斜視図である。図1は、手袋1を掌側からみた状態を示している。図2は、本発明の実施の形態1における手袋の斜視図である。図2は、手袋1を図1とは逆側である手の甲から見た状態を示している。
手袋1は、基体2と、基体2の表面に形成される被膜3と、被膜3に形成される複数の通気孔4とを備える。基体2は、手の形状を有すると共に伸縮性を有する繊維製である。被膜3は、基体2の表面であって、少なくとも掌5の表面に形成される。被膜3は、樹脂や合皮などの防水性を備えることが好ましい。複数の通気孔4は、図1、図2では、視認することができないが、被膜3において設けられる。手袋1の着用時における通気孔4の開口面積は、手袋1の非着用時における通気孔4の開口面積よりも大きい。
図3は、本発明の実施の形態1における被膜の一部の拡大図である。図3(a)は、手袋1が非着用時での被膜3の状態を示しており(すなわち、被膜3が伸長していない状態を示している)、図3(b)は、手袋1が着用時での被膜3の状態を示している(すなわち、被膜3が着用によって伸長している状態を示している)。被膜3は、複数の通気孔4を備えている。この通気孔4は、形状が不均一であって、様々な形状を有している。
図3(a)では、手袋1が非着用であるので、手袋1を形成する基体2および被膜3のそれぞれは、伸長していない状態である。このため、被膜3が備える複数の通気孔4のそれぞれは、塞がっていたり、わずかに開口していたりする。これに対して、図3(b)では、手袋1が着用されているので、手袋1を形成する基体2および被膜3のそれぞれは、着用される手に従って伸長する。この伸長に従って、被膜3が備える複数の通気孔4のそれぞれは、その開口面積を大きくする。図3(b)に示される通気孔4の開口面積は、図3(a)に示される通気孔4の開口面積よりも大きいことが明らかである。
このように、手袋1内部に使用者の手が挿入されることで、伸縮性を有する基体2が広がる。被膜3は、基体2の表面に付着しているので、基体2の広がりに合わせて被膜3も広がらざるを得ない。この被膜3の広がり、すなわち伸長によって、被膜3が備える複数の通気孔4のそれぞれが、その開口面積を拡大させる。
被膜3は、樹脂や合皮などの防水性を有している素材で形成されることで、掌5からの水分の浸入を低減させることができる。また、被膜3が樹脂や合皮などで形成されることで、使用者が手袋1を使用して対象物を取り扱うときの滑り止めを実現したり、把持力の向上を実現したりできる。
また、被膜3は複数の通気孔4を備えており、複数の通気孔4は、非着用時よりも着用時においてその開口面積を拡大する。このため、使用者が手袋1を着用すると、被膜3の伸長に伴って複数の通気孔4の開口面積が広がり、この広がった通気孔4を通じて通気性が得られる。非着用時には、この通気孔4の開口面積は、着用時よりも小さく場合によっては十分に開口していないため、非着用時には不必要に水分が掌から手袋1内部に入り込むことも防止できる。
このように、実施の形態1の手袋1は、非使用時に期待できる一定の防水性と、使用時における把持力および通気性と、を両立させることができる。
基体2は、繊維製であるので、繊維によって編みこまれた複数の編目を有している。編目とは、繊維同士で形成される開口空間である。図4は、実施の形態1における手袋の基体と通気孔との関係を示す正面図である。基体2は、繊維21によって編みこまれて形成される。このため、縦横の繊維21同士の組み合わせによって、開口空間となる編目22が形成される。基体2は、複数の繊維21が縦横に編みこまれるので、基体2は、複数の編目22を有することになる。すなわち、基体2は、複数の編目22で形成されているような状態となる。
被膜3は、基体2の表面に形成されるので、被膜3は、編目22の表面に形成されていることになる。通気孔4は、この被膜3に設けられており、その開口面積は、手袋1が着用されることで大きくなる。このため、手袋1が着用されることで、通気孔4の開口面積が大きくなり、通気孔4は、基体2の編目22と連通するようになる。編目22は当然ながら手の表面と通気しているので、手の表面、編目22、通気孔4、外界、とが連通することになる。これらの結果、通気孔4によって、手の表面の湿気や水分が、外部に放出されるようになり、手袋1の通気性が高まる。もちろん、手袋1内部の温度低下も促され、蒸れ感も低減される。
次に、各部の詳細について説明する。
(基体)
基体2は、繊維製で編みこまれた手袋の外形形状を有する手袋1の基礎的部分である。基体2は、綿、麻などの天然素材やナイロン、ポリエステルなどの合成繊維が編みこまれて製造される。特にウーリー加工されている繊維が用いられることが好ましい。このとき、基体2は、編布、織布で製造される。また、綿、麻などのセルロース繊維が用いられることで、基体2は、高い吸湿性を有することができるようになる。一方、抗菌性、肌触りのよさ、放湿性、乾きやすさからは、竹繊維が使用されることも好ましい。この竹繊維については、特開2008−101291号公報に、その製造方法が開示されている。また、東京都立産業技術研究センター研究報告、第1号、2006年は、竹繊維の鑑別と消費性能について、詳細を開示している。
いずれにしても、基体2は繊維製の素材で製造されるので、伸縮性を有する。この基体2の伸縮性によって、使用者が手袋1を着用する場合に、手袋1が伸長するようになる。当然ながら、使用者が手袋1を外すと、手袋1は伸長から開放されて元の大きさに戻る。
手袋1は、人間の手の形状を有する原型を用いて製造される。この原型の形状、大きさによって、手袋1の形状、大きさが決定される。このため、原型が切り替われば得られる手袋1の形状や大きさを変更できる。例えば、子供用、大人用、男性用、女性用、老人用であったり、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズであったりなどの形状や大きさの切り替えは、手袋1を製造する原型の切り替えによって実現される。
基体2は、繊維製の素材で製造されるので、複数の編目を有する。この複数の編目は、挿入された手に対しての通気性を生じさせる。複数の通気孔4は、この編目と連通することで、挿入された手と外部との通気性を実現させる。このため、基体2の備える複数の編目の形状、大きさ、位置によって、手袋1の通気性の増減が実現される。
図1、図2に示されるとおり、基体2は、掌5、指6、手首7、甲8を備える。手袋1を製造するのに用いられる原型が、これら掌5、指6、手首7、甲8の要素を備えており、この原型に合わせて繊維が編みこまれることで基体2は、これらの要素を備えた形状を有するようになる。これら掌5、指6、手首7、甲8の要素は、使用者の手の形状に対応するだけでなく、通気の必要性の軽重に関る。このため、これらの要素は、通気孔4によって確保される通気性の様々なバリエーションを生じさせる。
(被膜)
被膜3は、基体2の表面に形成される。製造された基体2が被膜3の原料となる樹脂液などの液状素材に浸漬されることで、基体2の表面に被膜3が形成される。
被膜3は、基体2の表面に形成されるが、基体2の表面の全面に渡って形成されても良く、基体2の少なくとも掌5の表面に形成されても良く、基体2の少なくとも掌5および指6の表面に形成されても良く、基体2の掌5、指6および甲8の表面に形成されても良い(最後の場合は、手首7以外の表面に被膜3が形成される状態である)。被膜3は、使用者が手袋1を着用して作業する際に、滑り止め、把持力強化、簡便な防水および安全性の少なくとも一つを確保することを目的としている。このため、これらの目的に応じて、被膜3は基体2の表面の一部もしくは全部に形成される。
一般的には、掌5および指6の表面に、被膜3が形成される。図1、図2は、この状態を示している。図1に示されるように、掌5および指6の掌5側には、被膜3が形成されている。一方、図2に示されるように、甲8には被膜3が形成されていない。このように、甲8側に被膜3が形成されないことで、手袋1に挿入された手の全体が被膜3によって覆われなくなる。この結果、被膜3の形成されていない部分(図2では、例えば、手首7や甲8など)は、基体2の編目が、通気性を確保できる。
被膜3は、ゴムラテックスや樹脂エマルジョンなどの素材で形成される。ゴムラテックスとしては、天然ゴムラテックス、アクリロニトリルーブタジエンゴム(以下、「NBR」という)やスチレンーブタジエン(以下、「SBR」という)などの合成ゴムラテックスが用いられる。また、樹脂エマルジョンとしては、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などが用いられる。
これらの素材は、いずれも防水性、高い把持性、保護性を有しており、基体2の表面に形成される被膜3は、使用者が手袋1を使用する際の、種々の効能を提供できる。被膜3が形成される部分においては、通気孔4の存在を無視すれば、被膜3に用いられる素材の特性によって、防水性が生じる。
被膜3は、被膜3を形成するゴムラテックスや樹脂エマルジョンなどの素材であって、液状化した状態の素材に基体2が浸漬されることで、基体2の表面に被膜3が形成される。例えば、液状であるゴムラテックスや樹脂エマルジョンなどの素材が容器に貯められておき、この容器に基体2が落とし込まれる。例えば基体2の掌5のみが液状である素材に浸漬される。所定時間浸漬されることで基体2を構成する繊維に浸み込む。浸み込んだ液状の素材は、乾燥されると固化する。この固化によって、基体2の表面に被膜3が形成される。
なお、基体2が原型にはめ込まれたままで、液状素材に浸漬されることで、基体2の変形を防止した上で被膜3が形成されても良い。このとき、まず基体2が凝固剤に浸漬され、ついで、ゴムラテックスや樹脂エマルジョンに必要な配合剤が配合された液状素材に浸漬される。予め凝固剤に浸漬されることで、浸漬された液状素材が、基体2の表面で容易に凝固するようになるからである。液状素材が凝固すれば、基体2の表面に被膜3が形成される。
また、被膜3を形成する液状の素材には、必要に応じて、安定剤、架橋剤、架橋分散体、老化防止剤、増粘剤、可塑剤、消泡剤などが添加される。これらが添加された状態の液状素材が、基体2に浸漬されて、基体2の表面に被膜3が形成される。
架橋分散体は、硫黄や過酸化物などの架橋剤のほかに、BZ、TT、CZ、PZなどの架橋促進剤、亜鉛華などの架橋促進剤、あるいは老化防止剤などの固体物を水に分散させることで得られる。架橋分散体は、液状素材がゴムラテックスの場合に主に用いられる。架橋分散体がゴムラテックスの液状素材に添加されることで、ゴム分子が編目状に結合され、樹脂被膜の強度などの物性が向上する。
以上のように、ゴムラテックスや樹脂エマルジョンなどの液状素材に、基体2の表面が浸漬されることで、基体2の表面に被膜3が形成される。特に、液状素材に基体2の表面が浸漬されることで、基体2における所望される様々な部位に、被膜3が形成される。被膜3は、手袋1の把持性や取り扱い性を向上させるだけでなく、後述の通りの通気性とのバランスを生じさせるので、被膜3の形成される部位が、所望の通りに決定されることは好適である。
(通気孔)
次に、通気孔4について説明する。
通気孔4は被膜3に形成されて、手袋1が着用される場合の通気孔4の開口面積は、非着用時の開口面積よりも大きい。手袋1が使用者の手に着用されることで、通気孔4の開口面積が、非着用時よりも大きくなる。この結果、手袋1の使用者は、通気性を確保することができる。
図3は、手袋1の着用によって、通気孔4の開口面積が拡大している状態を示している。非着用時を示す図3(a)では、通気孔4の開口面積は小さいが、着用時を示す図3(b)では、通気孔4の開口面積が大きくなっている。基体2は伸縮性を有しており、基体2の表面に形成される被膜3も伸縮性を有している。通気孔4は、被膜3に形成されており、言い換えれば通気孔4は、被膜3の複数の箇所に生じている裂け目、割れ目、孔および傷のようなものである。
手袋1の着用によって、被膜3が伸長するので、これら裂け目、割れ目、孔および傷が広がることになる。このような広がりによって、通気孔4の開口面積が図3(b)のように広がる。通気孔4の開口面積が広がることで、基体2の編目の有する開口と連通して、人体の手の表面と外部とが連通して、空気の通り道が形成される。この空気の通り道によって、人体の手の表面で生じた湿気や蒸気(汗などによって引き起こされる)が、外部に排出されるようになるので、手袋1を使用している使用者の快適性を維持できる。
図5は、本発明の実施の形態1における通気孔が広がる状態を示す説明図である。図5は、手袋の一部の側面を示しており、被膜3に形成された複数の通気孔4が、手袋1の使用者による手への着用に合わせて、広がる状態を示している。
図5(a)は、手袋1が非着用である場合の、手袋1の一部の側面を示している。基体2aの表面に被膜3aが形成されている。基体2aは、編目を有しており、非着用の状態では、基体2aおよび被膜3aは伸長していない。このため、被膜3aに形成されている通気孔4aは、その開口面積がまだ小さい(十分に開ききっていない)。図5における円形で囲まれた部分は、手袋1側面の拡大図を示している。図5(a)の拡大図に示されるとおり、手袋1が非着用の状態では、通気孔4aは、閉じているかもしくは十分に開いていない。
図5(b)は、手袋1が着用状態である場合の、手袋1の一部の側面を示している。円形で囲まれた部分は、この側面の一部の拡大図を示している。基体2bは編目を有しており、この基体2bの表面に被膜3bが形成されている。この被膜3bは、複数の通気孔4bを備えているが、手袋1が着用されることで、基体2bおよび被膜3bが伸長する。この伸長に伴って、通気孔4bが広がる。これは、円形で囲まれた拡大図からも明らかである。通気孔4bが広がって、通気孔4bの開口が基体2の編目と連通するようになる。この連通で、手の表面の湿気などが外部に排出されるようになる。
(通気孔4の開口)
手袋1の着用時における通気孔4の開口面積が、手袋1の非着用時における通気孔4の開口面積よりも大きいことは、種々の状態を含む。
一例として、手袋1の非着用時においては、通気孔4は開口しているが開口状態が不十分であってその開口面積が小さく、手袋1の着用時には、通気孔4が十分に開口して開口面積が大きくなる状態が含まれる。すなわち、着用時、非着用時の別に関らず、通気孔4は開口しているが、着用時には、通気孔4の開口面積が広がる状態である。
また、他の例として、手袋1の非着用時においては、通気孔4は閉じており(塞がっており)、手袋1の着用時においては、通気孔4が開口する状態が含まれる。すなわち、開いていなかった通気孔4が開く状態が含まれる。
また、被膜3は、複数の通気孔4を備えており、通気孔4は、被膜3に生じる割れ目、裂け目、孔や傷などであったりする。このため、複数の通気孔4においては、閉じている状態から開口する通気孔4や開いている状態から更に広く開口する通気孔4が混在していてもよい。例えば、手袋1の非着用時には、複数の通気孔4の一部は閉じており、残りの通気孔4は開いている。手袋1の着用時には、閉じていた通気孔4が開口し、既に開いていた通気孔4は、更に広く開口する。
あるいは、複数の通気孔4の一部は、手袋1が着用されても、閉じたままであったり開口面積が大きくならないままだったりすることもある。逆に、手袋1が着用される際に、基体2や被膜3の伸長具合によって、開口面積が小さくなる通気孔4が存在してもよい。例えば、手袋1の着用によって掌5は伸長しやすいが、この伸長によって指6の根元や掌5の側面は、却って圧迫されることも生じる。この場合には、掌5の通気孔4はその開口を広げるが、指6の根元や掌5の側面の通気孔4は、圧迫によって、その開口を広げないかあるいは狭めることもありうるからである。
被膜3は、複数(多数)の通気孔4を備えているので、非着用時には、(1)閉じている、(2)少し開口している、(3)開口している、などの種々の通気孔4が存在し、着用時には、(1)閉じていたのが開く、(2)非着用時よりも開口面積が大きくなる、(3)非着用時よりと開口面積が変わらない、(4)非着用時よりも開口面積が小さくなる、などの種々の通気孔4が存在する。混在していても、大多数の通気孔4は、手袋1の伸長に合わせてその開口面積を大きくする。この結果、被膜3における通気性が確保される。
また、通気孔4は、手袋1の縦方向に開口したり、横方向に開口したり、斜め方向に開口したり、様々な方向に開口する。これらは、通気孔4の形成位置や形状に依存するものである。
複数の通気孔4のそれぞれが、非着用時よりも着用時において、その開口面積を増大させる態様であってもよいし、複数の通気孔4の開口総面積が、非着用時よりも着用時において、増大する態様であっても良い。すなわち、複数の通気孔4の一つに着目する場合には、この通気孔4が着用時にその開口面積を増大させることで、当該通気孔4が存在する部位の通気がよくなる。一方、複数の通気孔4全体に着目する場合には、通気孔4の開口総面積が増大することで、手袋1全体として通気が良くなる。
実施の形態1の手袋1における、着用時における通気孔4の開口面積が、非着用時における通気孔4の開口面積よりも大きいとは、種々の態様を含むものであるし、複数の通気孔4の一部において異なる態様が生じることを排除するものではない。また、通気孔4の開口面積が増大することによる通気性の向上であっても、通気孔4全体の開口総面積が増大することによる通気性の向上であっても良い。
(通気孔と基体との関係)
次に、通気孔4と基体2との連通について説明する。図4を用いて、通気孔4と編目22とが連通する態様については、上述の通りである。
基体2は、繊維製の構造を有しているので、基体2は、複数の編目を有している。通気孔4は、この編目と連通することで、手の表面と外部とを通気させるようになる。編目は、基体2に広がっており、編目の上が被膜3によって覆われている状態である。このため、被膜3に設けられている通気孔4が開口すると、そもそも開口している編目(当該編目は、手袋1の着用によって、更にその開口面積が増大する)と通気孔4の開口部とが連通するので、手の表面と外部とが通気できるようになる。このため、編目の開口および通気孔4の開口との関係によって、通気態様が変わってくる。
例えば、手袋1の着用時における複数の編目の開口総面積は、複数の通気孔4の開口総面積よりも大きい。編目は、基体2に備わっているので、編目は手の表面と直接的に接触する。一方で、通気孔4は、手の表面とは間接的に接触することになる。手袋1の通気は、外部から手袋1内部に空気が取り込まれる取り込み方向と、手の表面から外部に湿気等が排出される排出方向の、2つの方向を有している。この2つの方向においては、手袋1の使用者の快適性を維持する為に、排出方向における排出能力が重要である。
手の表面により近い編目の開口面積が、手の表面より遠い通気孔4の開口面積よりも大きいことで、最初に編目の開口が手の表面から多くの湿気や蒸気を吸い上げ、次いで通気孔4の開口が、編目から伝わる湿気や蒸気を外部に排出する。通気孔4を余りに大きく開口させると、被膜3が裂けたり破れたりする原因となるので、通気孔4を余りに大きく開口させることは好ましくない。手袋の耐久性が悪くなってしまう。一方で、編目の開口を通気孔4と同じように小さくさせると、手の表面から外部への排出方向の通気性が悪くなる。このように、編目の開口総面積が通気孔4の開口総面積よりも大きいことで、手袋1の耐久性を低下させることなく、手の表面から外部への排出方向における通気能力が向上する。
また、編目の開口と通気孔4の開口との関係は、上述のように、開口総面積で判断しても良いし、複数の編目の一つと複数の通気孔4の一つとの関係で判断しても良い。
例えば、複数の編目の内の一つの編目の開口面積は、複数の通気孔4の内の一つの通気孔4の開口面積よりも大きい。もちろん、複数の編目と複数の通気孔4との開口面積同士の関係は、ある編目とある通気孔4とでは、編目の開口面積が大きい場合もあるし、ある編目とある通気孔4とでは、編目の開口面積が小さい場合もありえる。ある編目と通気孔4とに着目した場合に、編目の開口面積が大きいということである。
このように、複数の編目の内の一つの編目の開口面積が、複数の通気孔4の内の一つの通気孔4の開口面積よりも大きいことで、開口総面積の場合と同じく、手の表面から外部への排出方向における通気性が向上する。この結果、手袋1を使用する際の快適性が高まる。
手袋1は、編目を備える基体2と通気孔4を備える被膜3とで構成されるので、編目と通気孔4との相互関係に基づく態様が、通気性の改良や向上につながる。上述のように、編目の開口総面積もしくはある編目の開口面積が、通気孔4の開口総面積もしくはある通気孔4の開口面積よりも大きいことで、通気性において重要となる排出方向の通気性が向上する。なお、手の表面と接触する編目の開口面積が大きいことは、外部よりも温度の高い手の表面からの熱気を、吸収した上で外部に排出しやすいというメリットも提供できる。
また、基体2の掌5における編目の開口総面積は、基体2の甲8における編目の開口総面積よりも大きいことも好適である。
図2に示されるように、被膜3は、掌5には設けられるが手の甲8には設けられないことが多い。このため、手の甲8は、基体2がむき出しになっており、基体2の編目の開口面積が小さくても通気性は確保できる。また、甲8における編目の開口面積が非常に大きすぎると、手袋1の構造維持力が弱くなる問題もある。
一方、掌5は、被膜3で覆われることが多いので、通気性の確保は重要である。被膜3は、手袋1の着用によって開口面積の広がる通気孔4を備えるが、通気孔4は、編目と連通することで、その通気性を確保できる。このため、編目の開口面積がより大きいことが、通気性の向上(特に、手の表面から外部への排出方向での通気性の向上)に重要である。掌5においては、編目の開口面積が大きいことは、通気性の面から有効である。もちろん、手袋1としての構造維持力を発揮できる限界を維持する必要はある。但し、掌5は、被膜3で覆われるので、基体2の編目の開口面積が大きい場合でも、構造維持力は発揮できる。
このように、基体2の編目の開口総面積が、掌5において手の甲8よりも大きいことで、手袋の構造維持力を保ちつつ、手袋1全体でのバランスよい通気性を実現できる。
なお、掌5および手の甲8のそれぞれでの編目の開口総面積相違は、編目の数の大小によって判断されても良いし、個々の編目の開口面積によって判断されても良いし、編目の数と編目の開口面積の乗算によって判断されても良い。
以上のように、実施の形態1における手袋1は、被膜3に設けられた通気孔4が、手袋1の着用によってその開口面積を拡大させることで、手袋1の把持力や操作性を損なうことなく、通気性も実現できる。
(実施の形態2)
次に実施の形態2について説明する。実施の形態2においては、手袋1の部位と通気孔4との関係について説明する。
手袋1は、当然ながら人体の手に着用される。本発明の手袋1は、着用によって開口面積の広がる通気孔4によって、通気性を確保する。ここで、人体の手は、手袋を着用して作業する場合に、手の部位によって汗や湿気が溜まる場所が異なる。また、汗や湿気の溜まる場所の違いだけでなく、汗や湿気によって不快に感じる度合いも、部位によって異なる。例えば、指6の根元では、その構造上窪みができやすく、この窪みに汗や水分が溜まりやすい。
このように、手の部位(手袋1の部位)によって、通気性の軽重を設けることが必要になることもある。通気性は、複数の通気孔4の数、開口面積、開口総面積や複数の編目の数、開口面積、開口総面積など、種々のパラメータによって、その軽重を異ならせることが好適である。
このため、複数の通気孔4の単位面積当たりの個数(以下、「単位個数」という)および複数の通気孔4の単位面積当たりの開口総面積(以下、「単位開口面積」という)の少なくとも一方は、手袋1の部位によって不均一であることも好適である。この不均一に基づいて、手袋1の部位によって(すなわち人体の手の部位によって)通気性の軽重が生じるようになる。通気性の軽重は、使用者が感じる不快感に最適に対応できるようになる。
実施の形態2における手袋1は、複数の通気孔4の単位個数および単位開口面積の少なくとも一方が手袋の部位によって不均一であることで、通気性の不均一を生じさせるが、通気性の不均一は、使用者の感覚や使用態様に応じて異なる。このため、下記にいくつかの例を示す。
(例1 指の根元が掌より優先される)
手袋1の指6の根元61における単位個数は、手袋1の掌5における単位個数よりも多い。あるいは、手袋1の指6の根元61における単位開口面積は、手袋1の掌5における単位開口面積よりも大きい。単位個数および単位開口面積の一方のみが多いかもしくは大きくても良いし、両方が多いかもしくは大きくても良い。
図6は、本発明の実施の形態2における手袋の正面図である。図6は、通気孔4の分布状態を分かりやすく示すために、通気孔4を本来より大きく示している。図6の被膜3表面に記載の丸印は、全て通気孔4を模式的に表したものである。
図6に示されるように、指6の根元61における単位個数は、掌5における単位個数よりも多い。使用者の手においては、指の根元にくぼみができやすく、どうしても汗や湿気が溜まりやすい。加えて、指の根元は、隣り合う指と接するので、汗や湿気が溜まることは、使用者にとって不快を生じさせる。一方で、掌はその面積が広いので、単位個数が少なくても汗や湿気が溜まりにくいと考えられる。
このことから、使用者の指の根元に対応する手袋1の指6の根元61における単位個数は、使用者の掌に対応する手袋1の掌5の単位個数よりも多いことが好ましい。単位個数が多いことで、汗や湿気の溜まりやすい指6の根元61からの、蒸気や湿気の排出がより容易になるからである。
また、図6では、単位個数の差が示されているが、単位開口面積の差であっても同様である。すなわち、指6の根元61における単位開口面積は、掌5における単位開口面積よりも大きいことで、より汗や湿気の溜まりやすい指の根元における通気性が高まる。この結果、手袋1を使用する使用者の高い快適性が維持される。
もちろん、指6の根元61の単位個数および単位開口面積のいずれか一方が、掌5の単位個数および単位開口面積のいずれか一方よりも少ないか小さい場合でも、他方が多いか大きいことによって、指6の根元61での通気性が、掌5での通気性よりも高ければよい。もちろん、複数の通気孔4のいずれかに着目する場合に、指6の根元61の通気孔4のいずれか一つの開口面積が掌5の通気孔4のいずれか一つの開口面積よりも小さい場合があっても、全体として、単位個数および単位開口面積の少なくとも一方に差があればよい。このような差によって、指6の根元61の通気性が、掌5の通気性よりも高まることは、使用者の快適感にとって好適である。
なお、手袋1の指6の根元61と掌5とを比較しているが、これは、被膜3に形成される通気孔4において、手袋1の指6の根元61および掌5に対応する位置での通気孔4の態様の比較を示している。
(例2 指の通気が掌の通気より優先される場合)
手袋1の指6における通気孔4の単位個数および単位開口面積の少なくとも一方は、手袋1の掌5における通気孔4の単位個数および単位開口面積の少なくとも一方よりも、多いもしくは大きい。すなわち、手袋1の指6における単位個数は、手袋1の掌5における単位個数よりも多い。あるいは、手袋1の指6における単位開口面積は、手袋1の掌5における単位開口面積より大きい。あるいは、手袋1の指6における単位個数および単位開口面積の双方が、手袋1の掌5における単位個数および単位開口面積よりも多いもしくは大きい。
すなわち、手袋1の指6における通気孔4は、手袋1の掌5における通気孔4よりも、数や開口面積に基づいて、高い通気能力を有している。通気孔4は手袋1の着用時に開口面積を増大させる。この開口面積の増大で通気孔4は、手の表面と外部との通気を実現する。このため、単位個数や単位開口面積が大きいことで、掌5における通気孔4よりも、指6における通気孔4の通気能力が大きいことになる。
指6における単位個数が掌5における単位個数よりも多いことで、指6では、掌5よりも手の表面と外部との空気の通路の数が多くなる。この通路の数が多いことで、指6における通気性は、掌5における通気性よりも相対的に高くなる。これは、指6における単位開口面積が掌5における単位開口面積よりも大きいことでも同様である。
人体の手においては、指は複雑な形状をしているとともに複数の関節を備える。このため、指は、その関節や複雑な形状において汗や湿気をためやすい。このとき、上述のように、指6における単位個数および単位開口面積の少なくとも一方が、掌5における単位個数および単位開口面積の少なくとも一方よりも多いもしくは大きいことで、指に溜まりやすい汗や湿気を、より効率的に排出できる。結果として、使用者の快適感を維持できる。また、掌5における単位個数や単位開口面積が、相対的に少ないもしくは小さいことで、被膜3の損傷も防止できる。
なお、単位個数や単位開口面積は、所定の単位面積(例えば、1cm2など)における通気孔4の個数や開口総面積を示すものであるが、所定の単位面積は、適宜柔軟に定められれば良い。また、単位個数や単位開口面積の差は、その傾向が認められればよいのであり、厳密に個数や単位開口面積の差分が立証されることまでをも求めるものではない。例えば、指6の単位個数が掌5の単位個数よりも少ない領域と多い領域とが、単位面積となる領域を変化させることで混在しても、傾向としては、指6における単位個数が、掌5における単位個数よりも多ければ、単位個数が多いものとみなす。これは、単位開口面積の場合であっても同様である。
また、指6における単位個数は掌5における単位個数よりも多いが、指6における単位開口面積は掌5における単位開口面積よりも小さい場合であっても良い。逆に、指6における単位開口面積は掌5における単位開口面積よりも大きいが、指6における単位個数は掌5における単位個数よりも少ない場合であってもよい。いずれにしても、指6における通気能力が掌5における通気能力よりも高くなる態様が、通気孔4の形状、個数、開口面積、開口総面積を基準に現れていればよい。
(製造方法)
通気孔4は、被膜3における気泡、粒子の付着などの種々の手段で形成される。このため、例2で説明した指6における単位個数が掌5における単位個数よりも多い手袋1は、被膜3における気泡の数、付着させる粒子の数を、指6において掌5よりも多くすることで、製造される。
一方、例2で説明した指6における単位開口面積が掌5における単位開口面積よりも大きい手袋1は、個々の気泡の大きさ、付着させる粒子の大きさを、指6において掌5よりも大きくすることで、製造される。
また、通気孔4を形成する気泡や粒子といった、製造において制御しにくい要素に基づくのではなく、手袋1を製造する原型の工夫によって、指6における単位開口面積が掌5における単位開口面積よりも大きい態様を実現できる。
手袋1を製造する原型(手型)においては、指の大きさは標準サイズ未満であり、掌の大きさは標準サイズ以上である。例えば、原型の指の大きさはSサイズであって、掌の大きさはMサイズが用いられる。もちろん、これ以外の組み合わせでもよい。原型における指の大きさが標準未満であって、掌の大きさが標準以上であることで、製造される手袋1は、指6の大きさが掌5の大きさよりも比較として小さい。
手袋1が着用されると、指6の大きさが掌5の大きさに比較して、相対的に小さいので、掌5よりも指6の方が着用に合わせて伸長する。通気孔4は、手袋1(基体2)の伸長に合わせて開口面積を増加させる。このため、指6の伸長が掌5の伸長よりも大きい状態では、指6における通気孔4は、掌5における通気孔4よりも大きく開口するようになる。この結果、指6の単位開口面積は、掌5の単位開口面積よりも大きくなりやすくなる。手袋1が着用される場合に、手袋1の内部に手が挿入されることに着目して、手袋1が予めアンバランスに製造されることで、通気孔4の開口面積を調整したものである。
このように、手袋1を製造する原型が指と掌とでアンバランスであることで、指6における単位開口面積が掌5における単位開口面積よりも大きくなる。
(例3 掌の通気が指の通気に優先される場合)
手袋1の指6における単位個数および単位開口面積の少なくとも一方は、手袋1の掌5における単位個数および単位開口面積の少なくとも一方より少ないもしくは小さい。すなわち、手袋1の指6における単位個数は、手袋1の掌5における単位個数よりも少ない。あるいは、手袋1の指6における単位開口面積は、手袋1の掌5における単位開口面積より小さい。あるいは、手袋1の指6における単位個数および単位開口面積の双方が、手袋1の掌5における単位個数および単位開口面積よりも少ないもしくは小さい。
図7は、本発明の実施の形態2における手袋の正面図である。図7は、手袋1において、指6における単位個数が掌5における単位個数よりも少ない態様を示している。
すなわち、手袋1の掌5における通気孔4は、手袋1の指6における通気孔4よりも、数や開口面積に基づいて、高い通気能力を有している。通気孔4は手袋1の着用時に開口面積を増大させる。この開口面積の増大で通気孔4は、手の表面と外部との通気を実現する。このため、単位個数や単位開口面積が大きいことで、指6における通気孔4よりも、掌5における通気孔4の通気能力が大きいことになる。
掌5における単位個数が指6における単位個数よりも多いことで、掌5では、指6よりも手の表面と外部との空気の通路の数が多くなる。この通路の数が多いことで、掌5における通気性は、指6における通気性よりも相対的に高くなる。これは、掌5における単位開口面積が指6における単位開口面積よりも大きいことでも同様である。
人体の手においては、掌においてもっとも発汗が多いと考えられる。掌は大きな表面積を有し、屈曲や把持などの動作を行ったり、把持する物体と熱的に接触したりするからである。また、物体を把持する際には、掌は折り曲げられた状態となるので、発生した汗が掌表面に留まりやすい。更には把持される物体が遮蔽物となって、掌の表面に溜まった汗や湿気が外部に排出されにくい。このような問題に対応するために、例3のように、指6における単位個数や単位開口面積の少なくとも一方が、掌5における単位個数や単位開口面積の少なくとも一方より、少ないか小さいことで、掌の表面に溜まりやすい汗や湿気を、効率的に外部に排出できるようになる。
ここで、指6における単位個数や単位開口面積が、相対的に掌5よりも少ないもしくは小さいことで、被膜3全体での通気孔4による開口を増大させすぎることがない。結果として、被膜3の耐久性や強度に悪影響が生じない。
なお、単位個数や単位開口面積は、指6および掌5のそれぞれの任意の領域で比較されればよく、全体として指6の単位個数および単位開口面積の少なくとも一方が、掌5の単位個数および単位開口面積の少なくとも一方より少ないもしくは小さいとの傾向が見られれば良い。すなわち、ある領域で比較した場合に、指6での単位個数および単位開口面積が、掌5での単位個数や単位開口面積よりも多いもしくは大きい場合があることを除外するものではない。このような逆転態様が検出されたとしても、全体として、指6での単位個数および単位開口面積が、掌5での単位個数および単位開口面積より少ないもしくは小さい傾向が認められれば、指6での単位個数および単位開口面積の少なくとも一方が、掌5での単位個数や単位開口面積の少なくとも一方より少ないもしくは小さい態様であると判断できる。すなわち、単位個数や単位開口面積の差は、その傾向が認められればよく、厳密に個数や単位開口面積の差分が立証されることまでをも求めるものではない。
また、指6における単位個数が掌5における単位個数より少ないが、指6における単位開口面積が掌5における単位開口面積より大きい態様でもよい。逆に、指6における単位開口面積が掌5における単位開口面積より小さいが、指6における単位個数が掌5における単位個数よりも多い態様でもよい。
いずれにしても、掌5における通気能力が指6における通気能力よりも高くなる態様が、通気孔4の形状、個数、開口面積、開口総面積を基準に現れていればよい。
また、例1、例2、例3説明する単位開口面積は、手袋1が着用された状態での通気孔4の開口面積を基準とするのを基本とするが、これは、手袋1が着用された状態は、着用者によって変動しうることを許容するものである。また、非着用時の通気孔4の開口面積を基準とすることを除外するものでもない。
(製造方法)
例3の態様に合致する手袋1の製造方法について説明する。
通気孔4は、被膜3における気泡、粒子の付着などの種々の手段で形成される。このため、例3で説明した指6における単位個数が掌5における単位個数よりも少ない手袋1は、被膜3における気泡の数、付着させる粒子の数を、指6において掌5よりも少なくすることで、製造される。
一方、例3で説明した指6における単位開口面積が掌5における単位開口面積よりも小さい手袋1は、個々の気泡の大きさ、付着させる粒子の大きさを、指6において掌5よりも小さくすることで、製造される。
また、通気孔4を形成する気泡や粒子といった、製造において制御しにくい要素に基づくのではなく、手袋1を製造する原型の工夫によって、指6における単位開口面積が掌5における単位開口面積よりも小さい態様を実現できる。
手袋1を製造する原型(手型)においては、指の大きさは標準サイズ以上であり、掌の大きさは標準サイズ未満である。例えば、原型の指の大きさはMサイズであって、掌の大きさはSサイズが用いられる。もちろん、これ以外の組み合わせでもよい。原型における指の大きさが標準以上であって、掌の大きさが標準未満であることで、製造される手袋1は、指6の大きさが掌5の大きさよりも比較として大きい。
一例として、Lサイズを基準とする原型において、以下のようにする。
標準 : 中指の周囲 = 68mm 掌の周囲 = 220mm
実施例 : 中指の周囲 = 68mm 掌の周囲 = 180mm
この実施例からわかる通り、指の大きさ比較は、68mm/68mm=1.0であるが、掌の大きさ比較は、180mm/220mm=0.8である。このように、指の大きさは標準以上であって、掌の大きさは、標準未満である。ここで、標準は、発明者が多数の測定例から算出した平均値に基づいて得られるサイズである。
手袋1が着用されると、掌5の大きさが指6の大きさに比較して相対的に小さいので、指6よりも掌5が着用に合わせて伸長する。通気孔4は、手袋1(基体2)の伸長に合わせて開口面積を増加させる。このため、掌5の伸長が指6の伸長よりも大きい状態では、掌5における通気孔4は、指6における通気孔4よりも大きく開口するようになる。この結果、掌5の単位開口面積は、指6の単位開口面積よりも大きくなりやすくなる。手袋1が着用される場合に、手袋1の内部に手が挿入されることに着目して、手袋1が予めアンバランスに製造されることで、通気孔4の開口面積を調整したものである。
このように、手袋1を製造する原型が指と掌とでアンバランスであることで、掌5における単位開口面積が指6における単位開口面積よりも大きくなる。
通気孔4は、その個数や開口面積が大きいほど、当然ながら通気性が高まる。しかし、通気孔4は、被膜3に形成されるのであり、通気孔4は、被膜3に貫通している裂け目、割れ目である。このため、通気孔4の個数や開口面積を余りに増大させると、被膜3が破れたり損傷したりして、手袋1そのものも使えなくなってしまう。
実施の形態2で説明したように、通気孔4の単位個数や単位開口面積を、手袋1の部位に応じて不均一にすることで、被膜3の損傷の防止と部位によって必要となる通気性の確保との両立ができるようになる。人体の手は、その部位によって通気性の軽重を要するので、実施の形態2で説明したように、被膜3の損傷防止との両立を考慮した通気性の不均一を生じさせることは好適である。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態3では、通気孔4をより容易に開口させる工夫について説明する。
図8は、本発明の実施の形態3における手袋の側面図である。図8(a)は、非着用での手袋1の側面を示しており、図8(b)は、着用後の手袋1の側面を示している。
図8(a)に示されるように、手袋1の指6は、手袋1が非着用時においては、掌5側に屈曲している。このように指6が手袋1の非着用時において、掌5側に屈曲するように手袋1が製造されることで、被膜3も掌5側に屈曲する。すなわち、被膜3は、掌5側に向かって収縮した状態となる。被膜3が掌5側に収縮した状態であると、被膜3に形成されている通気孔4は、開口面積が小さい状態である。
これに対して図8(b)に示されるように、手袋1が着用されると、指6はまっすぐに伸びるようになり、指6は、掌5側に屈曲していた状態から甲8側に対して平行に近い状態となる。この結果、掌5側に形成された被膜3は、反り返るように伸長する。この伸長によって、掌5側の被膜3に形成されている通気孔4は、十分に開口できるようになる。通気孔4、特に掌5側の通気孔4が十分に開口すると、汗や湿気の溜まりやすい掌表面の排気、通気が向上する。一般的には、手の甲より掌の方が汗をかきやすいし、汗が溜まりやすいと考えられるからである。
図8に示されるように、製造された段階で、指6が掌5側に屈曲していることで、手袋1が着用されると、掌5や指6の掌5側は、当然ながら伸長しやすい。通気孔4を、非着用時から大きく開口させることは、防水性や耐久性の観点から好ましくないが、通気孔4の形状の工夫によって、着用時の通気孔4の開口面積を大きくすることは難しい。これに対して、手袋1が着用されることで掌5における被膜3が伸長しやすくなると、被膜3や通気孔4に余分なストレスを与えずに(当然に使用者に対して、着用での工夫やストレスを与えることもない)通気孔4が十分に開口できるようになる。
これに対して、製造された段階で、指6が掌5側に屈曲していない場合には(例えば、図8(b)の状態を想像すればよい)、使用者が手袋1を着用しても掌5側の被膜3は伸長しにくい。結果として、掌5側の通気孔4も大きくは開口しない。結果として、汗や湿気の溜まりやすい掌の通気が不十分となる。
図8に示されるように、指6が掌5側に屈曲しているだけでなく、掌5が内側に丸まっている状態でもよいし、指6のそれぞれが異なる屈曲状態を有していてもよい。手袋1が着用されることで、掌5や指6における被膜3が自然に伸長し、結果として通気孔4が広がるようになるからである。もちろん、手の甲8側の通気を高めたい場合には、図8とは逆に、指6が手の甲8側に屈曲するように、手袋1が製造されれば良い。
以上のように、実施の形態3における手袋1は、製造される段階で、予め屈曲した態様とされることで、着用によって通気孔4が広がるようになる。この結果、通気性、排気性の高い手袋1が実現できる。
(実施の形態4)
次に実施の形態4について説明する。
実施の形態4では、通気孔4の製造方法について説明する。
通気孔4は、被膜3に形成される。通気孔4のように「孔」として要素を特定しているが、円形や楕円形などの孔だけでなく、割れ目や裂け目といった、不定形の貫通部を幅広く含む。このため、通気孔4の開口形状は、円形、楕円形、方形、長方形、菱形、棒状形状、直線形状、破線形状などの様々な態様を含む。
通気孔4は、被膜3に形成されるので、被膜3製造の段階における種々の手法で形成される。
被膜3は、液状素材に基体2が浸漬されることで形成されるので、液状素材が浸漬される際あるいはその前後の処理によって、通気孔4が形成される。
(発泡による製造)
被膜3が発泡性の液状素材であって、浸漬されて基体2に浸み込まされた液状素材が乾燥した後で、気泡が破裂することによって、通気孔4が形成される。図9は、本発明の実施の形態4における通気孔4の製造工程を示す説明図である。図9は、基体2と被膜3とを側面から見た状態を示している。
被膜3は、液状素材として基体2の表面に浸漬される。この液状素材は、発泡性を有しており、複数の気泡4Aを有している。気泡4Aは、被膜3が液状である間は保持されているが、浸漬後に乾燥されるに従って、破裂する。図9における下半分に示される状態は、気泡4Aが破裂した状態を示している。気泡4Aが破裂した跡が、外部と基体2とを接続する通気孔4となる。もちろん、気泡4Aの破裂状態によっては、基体2にまで到達しないこともありえるが、その場合でも、使用によって通気孔4が基体2に到達するように裂けることもある。
予め発泡させた液状素材に、基体2が浸漬されることで、気泡4Aを含む被膜3が形成され、この気泡4Aの破裂によって、通気孔4が形成される。このような気泡4Aを利用することで、通気孔4が容易に形成される。
液状素材に気泡を含ませるには、既存の機械的方法や化学的方法が用いられる。機械的方法では、液状素材を攪拌しながら空気を液状素材の中に送り込んで、所定の体積に到達したら空気の吹き込みを停止して泡が安定するまで攪拌する。
被膜3に含まれる気泡の量は、被膜3の単位体積に対して15vol%未満が好ましい。更に好ましくは、5〜10vol%である。気泡量が10vol%を越える場合には、通気性はよくなるが、耐摩耗性が低下する。逆に、気泡量が5vol%未満の場合には、通気性は悪くなるが、耐摩耗性は向上する。従って、気泡の量は、5〜10vol%であることがこのましい。
気泡の量は、次の手順で測定される。まず、重量が既知のメスシリンダーに500mlの液状素材が投入されて、この液状素材の重量が測定される。液状素材の比重は、概ね値「1」なので、「気泡の容量 = (500−液状素材の重量)/500」との算出式で求められる。
(粒子による製造)
また、被膜3の元となる液状素材が粒子を含んでおり、この粒子を含んだ液状素材が、被膜3として基体2に浸漬されることで粒子を含んだ液状素材が基体2に浸み込む。浸漬した液状素材が乾燥して被膜3となる過程で、この粒子が欠落したり被膜3に傷を与えたりすることで、通気孔4が形成される。粒子の欠落や傷によって、被膜3が貫通されて、基体2と外部とが接続されるからである。
あるいは、液状素材が基体2に浸漬された後で、表面に粒子が付着されても良い。付着された粒子が欠落したり被膜3に傷を与えたりすることで、通気孔4が形成されることは同様である。また、液状素材が乾燥される過程で、粒子を強制的に取り除いたり被膜3上で移動させたりすることで、強制的に被膜3に通気孔4を形成することも好適である。
以上のように、通気孔4は、被膜3を形成する液状素材に浸漬される際や浸漬された後での処理によって形成される。
もちろん、通気孔4の形成においては、上述の工程は一例であり、針状の器具によって通気孔4が形成されても良い。
(実施の形態5)
次に、実施の形態5について説明する。実施の形態5では、実際の手袋の製造工程について説明する。
(基体の製造)
まず、基体2が製造される。
綿などの天然繊維、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維が、編布や織布されることによって、基体2が製造される。このとき、天然繊維や合成繊維などの素材は、ウーリー加工されていることが好適である。また、実施の形態3で説明したように、原型において、指の大きさが標準サイズ未満であって掌の大きさが標準サイズ以上であってもよい。あるいは、指の大きさが標準サイズ以上であって掌の大きさが標準サイズ未満であっても良い。それぞれの場合において、指6の通気孔4と掌5の通気孔4との開口面積の不均一を生じさせても良い。
また、実施の形態1で説明したように、竹繊維を用いることも好適である。
(被膜となる液状素材の製造)
被膜3は、基体2に樹脂などの液状素材が浸漬されることで、形成される。
液状素材は、ゴムラテックスや樹脂エマルジョンを用いることが好適である。ゴムラテックスは、天然ゴムラテックス、NBR、SBRなどの合成ゴムラテックスを含む。樹脂エマルジョンは、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などを含む。
液状素材は、これらのゴムラテックスや樹脂エマルジョンに、必要に応じて、安定剤、架橋剤、架橋分散体、老化防止剤、増粘剤、可塑剤、消泡剤などが添加されて製造される。このようにして製造された液状素材に、基体2が浸漬されて、基体2の表面に被膜3が形成される。被膜3は、防水性だけでなく、手袋1の把持性を向上させるために、設けられる。
この被膜3は、通気孔4を備え、通気孔4は、被膜3における裂け目、割れ目、傷などによって形成される。具体的には、基体2の表面に形成された被膜3は、基体2が着用(人体の手でもよいし、製造に用いられる原型(手型)でもよい)される圧力によって、裂け目、割れ目、傷が生じて、これらが通気孔4になってもよい。このため、被膜3が裂け易かったり、破れやすかったりする状態であることが好ましい。
被膜3がこのように裂け易かったり破れやすかったりするために、液状素材そのものの製造工程や被膜3の製造工程において、次のような工夫が施される。
(例1)
液状素材は、ゴムラテックスなどの主原料に、安定剤などの添加物が配合されて製造される。この液状素材は、所定時間に渡って、熟成される。この熟成時間を通常より長くすることで、液状素材は、過度に熟成される。過度に熟成された液状素材は、裂け易かったり破けやすかったりする被膜3を形成できる。
(例2)
液状素材に充填剤が多く配合されることで、ゴムの純度が低下されることも好適である。ゴムの純度が下がることで、液状素材は、裂け易かったり破けやすかったりする被膜3を形成できる。
(例3)
実施の形態4で説明したように、液状素材を予め発泡させておくことも好適である。発泡は、液状素材の攪拌(特に、空気を送り込みながらの攪拌)によって形成されれば良い。発泡によって得られる気泡の連通や破裂によって、通気孔4が形成されやすくなる。また、当然ながら発泡による気泡を含んだ液状素材は、裂け易かったり破けやすかったりする被膜3を形成できる。また、被膜3が溶剤に浸漬させられる工程(被膜3が膨潤する)に伴って、気泡が破裂させられることも好適である。
(例4)
液状素材に粒子や粉体を配合させることも好適である。粒子や粉体が配合されることで、被膜3にも粒子や粉体が付着した状態となる。この粒子や粉体の周囲には、応力が集中して被膜3が破けやすくなるようになる。すなわち、このような液状素材は、裂け易かったり破けやすかったりする被膜3を形成できる。なお、被膜3が溶剤に浸漬させられる工程(被膜3が膨潤する)に伴って粒子が付着されても良い。
(例5)
被膜3の厚みを薄くすることも好適である。厚みが薄ければ、当然に、被膜3は裂け易かったり破けやすくなったりするからである。被膜3の厚みは、例えば、液状素材に基体2が浸漬される時間、液状素材の粘度などによって調整される。
(例6)
液状素材に基体2が浸漬された後で、被膜3がSP値の近い溶剤に浸漬される。この結果、被膜3が膨潤される。その後、被膜3が乾燥すると、被膜3は収縮して凹凸が生じる。すなわち、非常に微細な波状形状が、被膜3の表面に生じることになる。このような凹凸によって、被膜3は、裂け易くなったり破けやすくなったりする。
以上のように、例1〜例6のいずれかの方法によって形成される被膜3は裂け易かったり破けやすかったりするようになり、通気孔4が形成されやすくなる。
また、指6、根元61、掌5など、手袋1の部位に応じて例1〜例6のいずれかによって異なる液状素材が浸漬されても良い。例えば、指6の通気孔4の数や開口総面積を増やしたい場合には、指6に浸漬させる液状素材は、例1から例6のいずれかで製造されており、掌5に浸漬させる液状素材は、例1から例6のいずれの処理がなされていない。逆に、指6に比較して掌5の通気孔4の数や開口総面積を増やしたい場合には、掌5に浸漬させる液状素材は、例1から例6のいずれかで製造されており、指6に浸漬させる液状素材は、例1から例6のいずれの処理もなされてない。
また、液状素材は、熟成工程を経ることも好適である。樹脂に種々の物質が配合された液状素材は、30℃の状態で、任意の時間に渡って熟成される。このような熟成工程を経た液状樹脂は、形成する被膜3に影響を及ぼす。
(被膜3の形成)
基体2は、液状素材に浸漬される。
まず、原型に基体2が着用されて、温度調整が行われる。その後、基体2が凝固剤に浸漬される。更に、基体2が液状素材に浸漬される。浸漬された後で、基体2が引き上げられて乾燥等を経て、被膜3が形成される。
液状素材の凝固では、塩凝固法、感熱凝固法、ストレート法などが用いられる。塩凝固法は、液状素材を塩によってゲル化させる方法である。感熱凝固法は、液状素材に予め感熱剤を添加しておき、温度によってゲル化させる方法である。ストレート法は、凝固剤や感熱剤を使用せず、乾燥によってゲル化させる方法である。塩凝固法に使用される凝固剤は、硝酸カルシウム、塩化カルシウムなどを用いる。
乾燥は、熱風が用いられることもあるし、室温にて放置されることもある。
(通気孔4の形成)
液状樹脂が乾燥して被膜3が形成された後で、手袋1が着用されるなどによって、被膜3に通気孔4が形成される。通気孔4は、被膜3の割れ目、裂け目、傷などによって形成されるので、手袋1の出荷時に形成される通気孔4と、手袋1の使用によって形成される通気孔4とが、存在する。このため、通気孔4の数や開口面積は変化することがありうる。例1〜例6で説明したように、被膜3が裂け易かったり破けやすかったりするように製造された液状樹脂が被膜3(被膜3の一部であったり全部であったりする)を形成していることで、手袋1の着用によって、容易に通気孔4が形成される。
以上のように、手袋1の部位による通気孔4の数や開口総面積(単位個数や単位開口面積)は、被膜3の部位による強弱のばらつきによって、生じる。
次に、通気孔4の単位個数や単位開口面積などに変化をもたらすための、各種実施例や比較例について説明する。
実施例においては、容易に通気孔4が形成されたり、手袋1の部位によって、通気孔4の個数や開口総面積が異なったりする手袋1を説明する。比較例においては、実施例と異なり、通気孔4の形成が困難であったり通気孔4の不均一が実現できかったりする場合について説明する。
(実施例1)
実施例1の手袋1は、所定時間の熟成工程を経た液状素材を用いて、被膜3を形成する。手袋1を製造する原型は、指の周囲の比(使用される原型と標準サイズとの比)を1.0、掌の周囲の比(使用される原型と標準サイズとの比)を0.8とする。基体2は、ウーリーポリエステルで製造される。基体2を60℃に型温調整し、凝固剤(塩化カルシウム1%/メタノール溶液)に浸漬して、30℃で24時間熟成させた液状素材に浸漬する。その後、溶剤(トルエン)に浸漬し、ついで、110℃で30分乾燥加硫を行なうことにより、手袋を作成した。
この実施例1では、掌5における通気孔4の単位個数や単位開口面積が、指6における通気孔4の単位個数や単位開口面積よりも多いもしくは大きい。手袋1を製造する原型の不均一および液状素材の熟成によって、単位個数や単位開口面積の不均一が実現される。
(実施例2)
実施例2の手袋1は、次の工程で製造される。まず、原型にかぶせられた基体2(ウーリーポリエステル 100%)を凝固剤(塩化カルシウム 1%/メタノール溶液)に浸漬し、ついで、熟成された液状素材に浸漬する。その後、乾燥させて溶剤(トルエン溶液)に浸漬して、被膜3となる浸漬された液状素材が膨潤されて、110℃で30分間乾燥される。
このようにして製造された実施例2の手袋1は、被膜3に凹凸が生じることになるので、手袋1が着用されるだけで容易に通気孔4が形成されるようになる。
また、熟成時間の異なる複数の種類の液状素材が予め製造され、手袋1の部位によって、熟成時間の異なる液状素材が、浸漬されることも好適である。この結果、手袋1の部位によって異なる凹凸が形成されて、手袋1の部位によって通気孔4の単位個数や単位開口面積が不均一にされるからである。
(実施例3)
実施例3の手袋1は、10vol%の気泡を含ませた液状素材に基体2が浸漬されて製造される。もちろん、浸漬後に乾燥させられても良い。
このような実施例3によって製造された手袋1は、気泡の破裂によって、容易に通気孔4を形成できる。また、気泡の多い液状素材と気泡の少ない液状素材との2種類の液状素材が予め製造され、手袋1の部位によって気泡の量の異なる液状素材が浸漬されることも好適である。この場合には、部位によって通気孔4の単位個数や単位開口面積を不均一にすることができるからである。
(実施例4)
実施例4の手袋1は、5%の天然ゴム粉を含ませた液状素材に基体2が浸漬される工程を経て製造される。もちろん、浸漬後に乾燥させられても良い。
実施例4によって製造された手袋1は、天然ゴム粉の応力によって、容易に通気孔4を形成できる。また、天然ゴム粉の配合率の高い液状素材と天然ゴム粉の配合率の低い液状素材との複数の種類の液状素材が予め製造され、手袋1の部位によって配合率の異なる液状素材が浸漬されることも好適である。この場合には、部位によって通気孔4の単位個数や単位開口面積を不均一にすることができるからである。
以上のように、実施例1〜4の手袋1は、通気孔4を容易に形成できたり、手袋1の部位によって単位個数や単位開口面積を不均一にしたりできる。
また、この実施例1〜4に対する比較例を説明する。比較例1〜4は、通気孔4が形成されないか、形成されても不十分であるか、不均一な通気孔の形成が困難であるか、のいずれかの結果を示す。
(比較例1)
比較例1は、液状素材の熟成工程を省略した上で製造される。
液状素材の熟成工程が省略された比較例1で製造された手袋1は、通気孔4を形成できない。
(比較例2)
比較例2は、手袋1を製造する原型において、指の周囲の比(使用される原型と標準サイズとの比)を0.8、掌の周囲の比(使用される原型と標準サイズとの比)を0.8とした手袋1を製造する。
比較例2で製造される手袋1では、指6における通気孔4の単位個数や単位開口面積は、掌5における通気孔4の単位個数や単位開口面積と同様となる。基体2における、部位による大きさの不均一が存在しないことで、単位個数や単位開口面積における不均一が生じないからである。
(比較例3)
比較例3の手袋1では、基体2が伸縮性のない繊維(例えば、綿)で製造される。これ以外は、実施例1と同じ製造工程で製造される。
基体2が伸縮性を有さないことで、比較例3の手袋1が着用されても、被膜3が伸長せず通気孔4が形成されない。
(比較例4)
比較例4の手袋1は、手袋1を製造する原型において、指の周囲の比(使用される原型と標準サイズとの比)を1.0、掌の周囲の比(使用される原型と標準サイズとの比)を1.0とした手袋1を製造する。
比較例4の手袋1は、着用されても指6および掌5が伸長することがないので、通気孔4が形成されない。
以上のように、比較例1〜4は、通気孔4が形成されないか、形成されても不十分であるか、不均一な形成ができない、といった問題を有する。
(実施の形態6)
(通気孔と編目の連通)
手袋1が着用されることで通気孔4が開口する場合に、開口する通気孔4は、基体2の編目22と連通することで、手の表面と外界とが、通気するようになる。
ここで、通気孔4と編目22とは、様々な関係を有して連通するようになる。図10は、本発明の実施の形態6における手袋の正面図である。図10は、被膜3が形成されている掌側から見た状態を示している。図10の手袋1は、掌の表面に被膜3を有しており、被膜3は、通気孔4を有している。丸で囲まれた部分は、通気孔4とその周囲を拡大した状態を示している。
被膜3は、複数の通気孔4を有している。このとき、複数の通気孔4の少なくとも一つは、複数の編目22と連通しても良い。図10は、このように一つの通気孔4が複数の編目22と連通している状態を示している。一つの通気孔4が複数の編目22と連通することで、通気性が高まる。手の表面と外界との通気性は、通気孔4が実現するが、一つの通気孔4が複数の編目22と連通することで、通気能力が高まるからである。
一つの通気孔4が複数の編目22から空気を通すことで、個々の通気孔4の通気量が多くなる。このように、一つの通気孔4が複数の編目22と連通することは、通気能力を高めるメリットを生じさせる。
図11は、本発明の実施の形態6における手袋の正面図である。図11に示される手袋1は、図10の手袋1と異なり、複数の編目22の少なくとも一つが、複数の通気孔4と連通する。図11の丸で囲まれた部分は、通気孔4周辺の拡大図である。
拡大図に示されるとおり、一つの編目22に、複数の通気孔4が連通している。これは、通気孔4が小さいことで実現される。あるいは、編目22が大きいことでも実現される。手袋1の通気性は、通気孔4と編目22との連通によって実現されるが、最終的には通気孔4の開口が通気能力を制御する。このため、複数の通気孔4が一つの編目22と連通することでは、一つの通気孔4の通気能力は低い。しかしながら、細かな通気部分が多数存在することで、手袋1全体で一様な通気性を確保できるメリットがある。あるいは、相対的に通気孔4の開口時の大きさが小さくなるので、被膜3の耐久性も向上するメリットもある。
このように通気孔4と編目22とが、様々なバリエーションで連通することで、通気性や耐久性などのバランスを取ることができる。なお、手袋1が着用される際に、通気孔4が開口することで、編目22と連通する状態を、図10、図11の両方は示している。
また、図10に示されるように複数の編目22と連通する通気孔4と、一つの編目に複数で連通する通気孔4とが、一つの手袋1において混在しても良い。一つの手袋1に様々に混在することで、手袋1は、通気性や耐久性をバランスよく維持することができる。
(編目の形成)
編目22は、基体2が繊維で編みこまれることで形成される。繊維の編み込みによって繊維同士に囲まれる領域が編目22となる。基体2は伸縮性を必要とするので、基体2を形成する繊維も伸縮性を有していることが好ましい。
ここで、基体2は、伸縮性の少ない基準糸と、伸縮性を有する糸との編みこみによって形成されることも好適である。基準糸は伸縮性が少なく、この基準糸に編みこまれる糸が伸縮性を有することで、伸縮性の少ないラインと伸縮性の高いラインとが交差するようになる。例えば横糸が基準糸であり、縦糸が糸である場合には、伸縮方向が縦方向に集約されやすくなる。この結果、基体2が伸縮する場合には、基準糸を基本として、編目22が容易に広がるようになる。また、伸縮性の少ない基準糸が存在することで、伸縮性のある糸だけが広がって、形成される編目22が潰れにくくなる。編目22が潰れにくければ、通気孔4と連通する際の通気領域が確実に確保されるようになる。
基準糸は、基体2の横糸に使用されても良いし、縦糸に使用されても良い。いずれの場合であっても、伸縮性の少ない基準糸に対して、伸縮性のある糸が編みこまれれば、基準糸を基本として、潰れにくい編目22が形成される。
基準糸は、伸縮性の少ない素材が用いられればよく、例えば竹繊維が用いられる。あるいは、木材繊維や、伸縮性の少ない化学繊維が用いられる。
(被膜の形成位置)
被膜3は、手袋1の少なくとも掌の表面に形成される。被膜3は、一定の防水性も生じさせるが、把持性を向上させる。被膜3は、摩擦力が高く、滑り止めの機能を生じさせるからである。しかしながら、本明細書で説明した通り被膜3は通気性を妨げるので、被膜3を設けることは、把持性と引換えに通気性や快適性を損なう。被膜3が備える通気孔4は、この通気性と快適性を維持する。
ここで、手袋1に覆われている手は、汗や水分で不快感を有するが、手の表面においても、汗や水分の生じやすい場所は様々である。一般的には、手の指は手袋で覆われていると、指一本当たりの空間体積が狭いので湿度や水分が狭い空間にこもりやすいからである(これに対して、掌や手の甲は、覆われている空間体積が大きいので、空気の流れも生じて、湿度や水分の籠もり具合が少なくなる)。
このため、このように汗や水分が溜まりやすい部位は、被膜3が形成されないことも好適である。一方で、把持性を維持するためには、必要な部位における被膜3は重要である。
図12は、本発明の実施の形態6における手袋の正面図である。図12に示される手袋1は、指の根元を除いた指部および掌表面に、被膜3を形成している。指部は、上述の通り、一本一本が手袋1で覆われるので、どうしても汗や水分がこもりやすくなる。特に、指の根元は、指で生じた汗が落ちてきて溜まるので、汗や水分が溜まりやすい部位である。
一方で、指の根元は、手袋1を用いる使用者が、対象物を把持する際には、滑り止めをそこまで必要としない。このため、指の根元は、被膜3が無くても、把持性に問題を生じさせることは少ない。このため、被膜3は、指の根元を除いた指部(および掌)に形成されることも好適である。すなわち、指の根元においては、基体2が露出している。指の根元に被膜3が形成されないことで、汗や水分が指の根元にたまっても、基体2が露出しており、基体2の編目22から効率的に通気して排出される。このため、使用者は、指の根元に溜まりやすい汗や水分による不快感を減少させることができる。
もちろん、掌や指部など、被膜3で覆われている部位は、通気孔4と編目22の連通によって通気性を確保できる。
あるいは、図13に示されるように、指の根元に加えて指の関節を除く指部(および掌)に被膜3が形成される手袋1も好適である。図13は、本発明の実施の形態6における手袋の正面図である。
指の根元と同様に、指の関節も汗や水分が溜まりやすい。汗や水分が溜まりやすいと、不快感が高まる。これに対して、図13のように、指の関節において、被膜3が形成されていない(基体2が露出している)と、高い通気性が確保されることになる。この高い通気性によって、指の関節に生じる汗や水分も外部に放出されやすくなり、快適性が高まる。
指の関節は、把持における役割を有しているが、指先や掌に比較すると、把持における影響は小さい。このため、被膜3が形成されていなくても、手袋1全体の把持力への影響は小さい。一方、上述の通り、指の関節の通気性が高いことは、手袋1の快適性を高める。すなわち、図13に示される手袋1は、把持性と快適性のバランスを有している。
もちろん、指の根元と指の関節を除いた指部に被膜3が形成されている手袋1でも良いし、指の根元だけが除かれて被膜3が形成されている手袋1および指の関節だけが除かれて被膜3が形成されている手袋1のいずれかであってもよい。これらは、手袋1への仕様に基づいて定められれば良い。
なお、指の根元や指の関節など、被膜3が除かれるには、被膜3を形成する液状素材への浸漬が除外されるか、被膜3が形成された後で除去されればよい。
図12、図13のように汗や水分が特に溜まりやすい部位であって、把持性が余りそこなわれない場所については、被膜3が設けられない(基体2が露出している)ことで、通気孔4の働きとあいまって、把持性と通気性とが両立する手袋1が実現される。
また、図12、図13では、汗や水分の溜まりやすい指の根元や指の関節において被膜3が形成されない手袋1を説明したが、これらの部位における被膜3の厚みが薄い手袋1も好適である。すなわち、指の根元および関節における被膜3の厚みが、指や掌における被膜3の厚みよりも薄い。
被膜3が薄ければ、通気孔4は、使用でより大きく開口するようになり、通気性が高まるからである。もちろん、被膜3が薄いことで、蒸れ感が減少するメリットもある。
このように、指の根元や関節において被膜3が形成されないまでも、被膜3の厚みが、他の部位における厚みよりも薄いことで、使用感や快適感を高めることが可能になる。
また、指部においては、指の根元や関節に汗や水分が溜まりやすい(上述の通り、指で発生した汗や水分が滴りおちてくぼみとなっている根元や間接に溜まってしまうからである)。図12、図13に示されるように指の根元や関節において被膜3が形成されなかったり、被膜3の厚みが薄かったりすることも好適であるが、製造工程が複雑になる。
このため、指部における被膜3の厚みが、掌における被膜3の厚みよりも薄いことも好適である。指部は、把持性を高めるために被膜3を必要とする。ここで被膜3は、通気孔4による通気性を確保している。このとき、指部3における被膜3の厚みが薄ければ、指部における通気孔4は、大きくなりやすくなって通気性が高まる。もちろん、被膜3が薄いことは、蒸れ感の減少にも繋がる。
また、指部全体の被膜3の厚みを、他の部位の被膜3の厚みよりも薄くすることは、製造工程としても容易である。指部に部位によって被膜3の厚みを変える必要がないからである。
このように、指部の汗や水分の溜まりやすさに着目して、指部の被膜3を工夫することで把持性と通気性とのバランスを最適化することができる。
(把持性の向上)
手袋1は、被膜3によって把持性を高めている。このため、被膜3は、把持力を調整できる要素である。手袋1においては、掌でモノを握ることもあるが、指先でモノをつまむことも多い。このため、指先における被膜3の厚みは、指部や掌における被膜3の厚みよりも厚いことも好適である。
被膜3の厚みが厚いことで、指先における把持物に対する圧力を高めることができる。当然ながら、被膜3が厚いことで、耐久性も向上する。耐久性が高ければ、使用者は、指先で把持物を掴む際に、思い切って力を入れることもできるようになる。この結果、指先の把持力は更に高まる。このように、指先の被膜3の厚みが厚いことは、他の部分の被膜3の厚みよりも厚いことは、把持力の向上に役立つ。
もちろん、指先の被膜3においても、通気孔4は形成されており、通気性も確保されている。指先は、凸状に被膜3が広がるので、通気孔4も広がりやすい。このため、通気性も十分になる。また、指先の被膜3が厚いだけでなく、被膜3による凸凹などが形成されることも好適である。凸凹によって、滑り止めの機能を生じさせるからである。
(通気孔の開口の確認)
通気孔4は、手袋1の着用時に、その開口面積を増加させる。この通気孔4の開口によって、手袋1は、通気性を確保できる。しかしながら、通気孔4は、簡単に視認できる大きさではなく、非常に小さいものである。このため、使用者は、通気孔4がちゃんと設けられているのか、着用時に通気孔4が十分に開口しているのか、といったことを簡単に視認することができないこともある。もちろん、視認できなくても、実際の製品としての性能に問題はないが、顧客にとっては視認できることで、製品への信頼性が高まるメリットもある。
通気孔4の開口を目視で容易に確認することは難しい場合が多いが、通気孔4が空いていることを窺わせることは可能である。
基体2の色度は、被膜3の色度よりも濃い部分を含んでいることは、通気孔4の開口を把握させる点で好適である。通気孔4は、被膜3に形成される。被膜3は、基体2の表面に形成されるが、通気孔4が形成されており、くわえて通気孔4の開口面積が大きくなると、この通気孔4によって、基体2の色味が被膜3を透過して視認できるようになる。基体2の色度が被膜3の色度よりも濃い場合には、被膜3に備わる多数の通気孔4の存在によって、被膜3を透過して、基体2の色味が見えるようになるからである。すなわち、被膜3を透過して、基体2の色味が透けて見えるようになる。
被膜3が非常に薄い場合を除けば、被膜3に通気孔4が形成されていない限りは、被膜3は、基体2の色味を透けさせることはない。一方、被膜3が多数の通気孔4を備えている場合には、被膜3は、基体2の色味を透けさせる。特に、基体2の色度が被膜3の色度より濃い場合には、より確実に透けて見えるようになる。色度が濃いとは、例えば被膜3が肌色や白色である場合に、基体3は、黒や茶などの色味を有している場合である。特に、手袋1が着用されて通気孔4が開口する場合には、更に被膜3を通じて基体2の色味が透けて見えるようになる。
このように、被膜3を通して基体2の色味が透けて見えるということは、通気孔4が形成されていることを使用者に知らせることができる。もちろん、手袋1の着用前と着用後で、被膜3を通じた基体2の色味の透け方が強くなることが確認される場合には、使用者は、着用によって通気孔4の開口面積が高まることを実感できる。
以上のように、基体2の色度が被膜3の色度よりも濃いことで、通気孔4によって被膜3が基体2の色味を透けさせることができる。このように透けることで、使用者は、通気孔4が形成されていることおよび通気孔4が着用によって開口することを把握できるようになる。通気孔4を把握できることは、使用者にとっては、手袋1への安心を感じ、提供者にとっては信頼性の醸成ができるようになる。
また、基体2の色度が被膜3の色度よりも濃いだけでなく、基体2が、被膜3の色度よりも濃い色度の模様を有していることも好適である。図14は、本発明の実施の形態6における手袋の正面図である。図14の手袋1は、被膜3が、基体2の模様を透けて可視状態にしている。通気孔4が被膜3に設けられている場合には、この通気孔4の存在および通気孔4の開口によって、被膜3は、基体3の模様を透けさせる。これは、上述と同じ理由である。すなわち、色度の濃い模様は、通気孔4によって部分的に見えるようになり、全体として被膜3を透過して、使用者に可視状態にできるからである。図14では、基体2に設けられた水玉模様28が被膜3を通じて透けて見える。被膜3が複数の通気孔4を有することで、このような透け方が生じる。
基体2の色味のみと異なり、模様の場合には、透けて見える場合でも視認が容易である。また、被膜3を通じて基体2の模様が見えることは、使用者にとっても楽しいメリットもある。また、透け方が強くなってきたということは、通気孔4が使用の中で拡大したり、被膜3が磨り減ってきたりしてきたことを示している。このため使用者は、透け方に基づいて、手袋1の交換時期を把握することもできるようになる。
このように、基体2の色度や模様と被膜3の色度との対比によって、使用者にとって、通気孔4の存在や開口を間接的に把握させることができるようになる。この把握によって、手袋1に対する信頼性が高まるメリットもある。
以上のように、実施の形態6の手袋1は、様々な工夫によって、使用感を向上させたり、使い勝手を向上させたりできる。
以上、実施の形態1〜6で説明された手袋は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。