JP5998463B2 - 電動ポンプの吐出流量推定装置 - Google Patents
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Description
ところで変速摩擦要素は、アクセル操作による加速要求があったり、湾曲登坂路などで変速段を切り替えながらの低速走行を繰り返す場合に、伝達トルクの増大や繰り返し変化に伴って負荷が増し、発熱量が多くなって熱的負荷が増す。
この冷却に電動ポンプからの吐出オイルを用いる場合、変速摩擦要素の熱負荷状態を推定して電動ポンプの作動が必要か否かを、また作動が必要ならポンプ吐出流量を如何なる量にすべきかを決定しなければならない。
この提案技術は、上記電動ポンプの制御に用いるものではなく、現在における変速摩擦要素の熱負荷状態と、次の変速で予測される変速摩擦要素の発熱状態とから、次変速の許可、禁止を決定する制御に用いるものであるが、固定値の放熱量に基づき変速摩擦要素の熱負荷状態を推定するものである。
変速摩擦要素の冷却過多は、電動ポンプの吐出流量が多すぎることを意味し、過多分だけポンプが電力を無駄に消費していることとなり、エネルギー効率の低下に関する問題を生じ、
変速摩擦要素の冷却不足は、変速摩擦要素の過熱を招き、その耐久性が低下するという問題や、変速摩擦要素が焼損するという問題を生ずる。
先ず、本発明の前提となる電動ポンプの吐出流量推定装置は、ポンプ回転速度が目標ポンプ回転速度となるよう制御される電動ポンプの吐出流量を推定するものである。
前者のポンプ駆動力情報検出手段は、上記電動ポンプの駆動力に係わるポンプ駆動力情報を検出するものであり、また、
後者のポンプ吐出流量演算手段は、ポンプ駆動力情報検出手段で検出したポンプ駆動力情報から得られる現在のポンプ駆動力、および、上記目標ポンプ回転速度を実現するための目標ポンプ駆動力から、目標ポンプ駆動力に対する現在のポンプ駆動力のポンプ駆動力偏差を求め、該ポンプ駆動力偏差から得られるポンプ吐出流量偏差を、上記ポンプ回転速度または目標ポンプ回転速度に応じた理論ポンプ吐出流量から差し引いて前記電動ポンプの吐出流量を演算するものである。
検出したポンプ駆動力情報(現在のポンプ駆動力)、および、目標ポンプ回転速度を実現するための目標ポンプ駆動力から、目標ポンプ駆動力に対する現在のポンプ駆動力のポンプ駆動力偏差を求め、このポンプ駆動力偏差から得られるポンプ吐出流量偏差を、ポンプ回転速度(目標ポンプ回転速度)による理論ポンプ吐出流量から差し引いて電動ポンプの吐出流量を演算するため、
ポンプ吐出流量の変化を良く表すポンプ駆動力の変化を基に電動ポンプの吐出流量を演算(推定)することとなり、
エアの吸い込みなどによりポンプ容積効率が低下してポンプ吐出流量が変化した場合においても、ポンプ吐出流量を高精度に推定することができ、当該推定したポンプ吐出流量に基づく制御を常に狙い通りに遂行可能である。
<実施例の構成>
図1は、本発明の一実施例になるポンプ吐出流量推定装置を内包したポンプ吐出流量制御装置を示す機能別ブロック線図である。
図1の吐出流量制御装置は、トランスミッション1内における図示せざる発進クラッチに対し、潤滑を含む冷却用のオイルを必要に応じて適宜供給するための電動オイルポンプ2(本発明における電動ポンプに相当)を吐出流量制御するものとする。
なお電動オイルポンプ2は、ポンプ回転速度が後で詳述する目標ポンプ回転速度Nop_2となるように行う回転速度制御によって、その吐出流量が要求吐出流量となるよう制御されるものである。
この場合、電動オイルポンプ2を作動させて、これからの吐出オイルを発進クラッチに供給し、同時に電動オイルポンプ2を、その吐出流量が発進クラッチの冷却必要油量に対応したものとなるよう回転速度制御する。
クラッチ温度TEMPclや油温TEMPoilが、発進クラッチの冷却を必要としない低温であれば、発進クラッチを冷却する必要がないから、電動オイルポンプ2の非作動を指令すべく、オイルポンプ作動要否判定部10はオイルポンプ作動要否信号SopをSop=OFFとなす。
発進クラッチが近々冷却の必要な高温になると予測される条件下であれば、発進クラッチを冷却すべきであるから、電動オイルポンプ2の作動を指令すべく、オイルポンプ作動要否信号SopをSop=ONとなし、
発進クラッチが近々冷却の必要な高温になることはないと予測される条件下であれば、 発進クラッチを冷却する必要がないから、電動オイルポンプ2の非作動を指令すべく、オイルポンプ作動要否信号SopをSop=OFFとなす。
演算部20からの基準目標ポンプ回転速度Nop_1またはポンプ停止用回転速度指令tNop=0を最終的な目標ポンプ回転速度Nop_2に設定する。
また目標ポンプ回転速度選択部30は、Sop=OFFであれば、tNop=0を最終的な目標ポンプ回転速度Nop_2に設定して、電動オイルポンプ2を回転速度がNop_2=tNop=0になるよう制御し、電動オイルポンプ2を停止させる。
上記した第1実施例による電動オイルポンプ2の回転速度制御を介した吐出流量制御を、以下に概略説明する。
オイルポンプ作動要否判定部10による電動オイルポンプ2の作動要否判定結果(オイルポンプ作動要否信号Sop)がSop=ONである(電動オイルポンプ2の作動が要求される)場合、目標ポンプ回転速度選択部30は、基準目標ポンプ回転速度演算部20で求めた、発進クラッチの冷却に必要な油量を賄い得る電動オイルポンプ2の要求吐出流量を実現可能な電動オイルポンプ2の基準目標ポンプ回転速度Nop_1を最終的な目標ポンプ回転速度Nop_2と定め、電動オイルポンプ2を、回転速度がNop_2=Nop_1になるよう制御する。
上記したように作動する電動オイルポンプ2の吐出流量を推定するための装置を、本実施例では以下のようなものとする。
このポンプ吐出流量推定装置は図1に示すように、ポンプ駆動電流検出部41と、ポンプ回転速度検出部42と、目標ポンプ駆動電流演算部43と、ポンプ駆動トルク変化量演算部44と、ポンプ吐出流量偏差演算部45と、理論ポンプ吐出流量演算部46と、ポンプ吐出流量演算部47と、クラッチ温度推定部48と、クラッチ温度判定部49とで構成する。
従ってポンプ駆動電流検出部41は、本発明におけるポンプ駆動力情報検出手段に相当する。
なお電動オイルポンプ2の駆動力情報としては、ポンプ駆動電流Iopの代わりにポンプ駆動トルクなど、他のポンプ駆動力情報を用いてもよい。
なお、検出部42で検出したポンプ回転速度Nopの代わりに、選択部30からの目標ポンプ回転速度Nop_2を用いてもよいし、電動オイルポンプ2が回転速度をデューティー制御されるものである場合は、その駆動デューティー比を用いてもよいのは言うまでもない。
このポンプ駆動力変化量ΔTopは、実ポンプ駆動トルクTopがエアの吸い込みなどによるポンプ容積効率の低下程度に応じて変化するため、エアの吸い込みなどによるポンプ容積効率の低下程度に対応する。
なお、ポンプ吐出流量偏差演算部45でポンプ吐出流量偏差ΔQopを求めるに際しては、演算部44における電流偏差(tIop−Iop)に比例常数K1を乗じてポンプ吐出流量偏差ΔQopを求めることも可能である。
かようにして推定したポンプ吐出流量Qopは、ポンプ吐出流量偏差ΔQopが上記の通りエアの吸い込みなどによるポンプ容積効率の低下に起因したものであることから、エアの吸い込みなどによるポンプ容積効率の低下により減少した実際のポンプ吐出流量を表す。
つまり、発進クラッチの摩擦による瞬間発熱量をPn[J/s]とし、発進クラッチの瞬間放熱量をCn[J/s/K]とし(実験により得られた定数Co,Qoで決まる流量比例と見なし、Cn=Co×QopQo)、発進クラッチの摩擦面温度をTEMPcl[℃]とし、油温をTEMPoil[℃]とし、推定時間をΔt[s]とし、発進クラッチの熱容量をQcl[J/K]としたとき、次式で表される発進クラッチの温度変化量ΔTEMPclを求める。
ΔTEMPcl={Pn−Cn(TEMPcl−TEMPoil)}Δt/ Qcl
次に、このクラッチの温度変化量ΔTEMPclを上記のクラッチ摩擦面温度TEMPclに加算する次式の演算により発進クラッチの温度推定値TEMPcl_cを求める。
TEMPcl_c=TEMPcl+ΔTEMPcl
上記した本実施例によるポンプ吐出流量推定装置の作用・効果を、図3(a),(b)に基づき以下に説明する。
図3(a),(b)はいずれも、瞬時t1に発進クラッチが締結を開始して、クラッチ入力トルク立ち上がると共に、クラッチ出力回転速度がクラッチ入力回転速度に向け上昇している最中の瞬時t2に、発進クラッチの発熱によりその冷却(電動オイルポンプ2の作動)が必要になったことで、オイルポンプ作動要否信号SopがOFFからONに切り替わり、
電動オイルポンプ2からの吐出オイルによる発進クラッチの冷却で瞬時t3に、発進クラッチの冷却(電動オイルポンプ2の作動)が不要になって、オイルポンプ作動要否信号SopがONからOFFに切り替わった場合の動作タイムチャートである。
このため図1の演算部44で求めるポンプ駆動トルク変化量ΔTopが0であり、また演算部45で求めるポンプ吐出流量偏差ΔQopも0であり、演算部47で求めるポンプ吐出流量推定値Qopは図3(a)に実線で示すように、演算部46で求めた同図に破線で示す理論ポンプ吐出流量Qop_0と同じになる。
従って、図1の推定部48で求めたクラッチ温度推定値TEMPcl_cが、図3(a)に実線で示すように、破線で示す実際のクラッチ温度TEMPclに一致する。
よってクラッチ温度TEMPclを、図3(a)に実線で示すとおり保証温度TEMPcl_s以下に保つことができ、発進クラッチの耐久性が低下するという問題や、発進クラッチが焼損するという問題を生ずることがない。
電動オイルポンプ2が、エアを吸い込みにより容積効率を低下されると、電動オイルポンプ2の駆動負荷が変化(低下)するため、ポンプ駆動電流Iop(ポンプ駆動トルクTop)が図3(b)に実線で示すように、破線で示す目標ポンプ駆動電流tIop(目標ポンプ駆動トルクtTop)よりも、エア吸い込み程度(容積効率の低下量)に応じた分だけ小さな値へと低下する。
よって、図1の演算部47で求めるポンプ吐出流量推定値Qopは図3(b)に実線で示すように、演算部46で求めた同図に破線で示す理論ポンプ吐出流量Qop_0よりも、上記のポンプ吐出流量偏差ΔQopだけ小さな値となる。
よってクラッチ温度TEMPclが、図3(b)に実線で示すとおり保証温度TEMPcl_sよりも高くなって、発進クラッチの耐久性が低下するという問題や、発進クラッチが焼損するという問題を生じ、これに対する何らかの対策が必要である。
よって、クラッチ温度TEMPclが、図3(b)に実線で示すとおり保証温度TEMPcl_sよりも高くなるのを検知することができず、発進クラッチの耐久性が低下するという問題や、発進クラッチが焼損するという問題に対する対策を行い得ない。
エアを吸い込む(容積効率を低下された)図3(b)の場合でも、ポンプ吐出流量推定値Qopを同図に実線で示すごとく実際のポンプ吐出流量に一致させることができる。
この判定結果に基づき基準目標ポンプ回転速度演算部20に対し、基準目標ポンプ回転速度Nop_1を、エアの吸い込みなどによるポンプ容積効率の低下で減少したポンプ吐出流量の低下分が補償されるよう増大補正して出力するよう指令し得る。
この対策によって、エアを吸い込む(容積効率を低下された)図3(b)の場合においても、この図では示していないが、ポンプ吐出流量を要求通りのものにすることができ、発進クラッチが冷却不足に陥るのを防止して、発進クラッチが耐久性を低下されたり、焼損されるという上記の問題を回避することができる。
なお上記した実施例では、電動オイルポンプ2がトランスミッション1内の発進クラッチを冷却するためのものであることとして説明したが、電動オイルポンプ2は、トランスミッション1内の他のクラッチを冷却するためのものであってもよいし、トランスミッションに限らず、任意の対象物を冷却するためのものであってもよい。
また、吐出流量制御の対象である電動ポンプは、電動オイルポンプに限られず、オイル以外の液体を吐出するものであってもよい。
2 電動オイルポンプ(電動ポンプ)
10 オイルポンプ作動要否判定部
20 補正済目標ポンプ回転速度演算部
30 目標ポンプ回転速度選択部
41 ポンプ駆動電流検出部(ポンプ駆動力情報検出手段)
42 ポンプ回転速度検出部
43 目標ポンプ駆動電流演算部(ポンプ吐出流量演算手段)
44 ポンプ駆動トルク変化量演算部(ポンプ吐出流量演算手段)
45 ポンプ吐出流量偏差演算部(ポンプ吐出流量演算手段)
46 理論ポンプ吐出流量演算部(ポンプ吐出流量演算手段)
47 ポンプ吐出流量演算部(ポンプ吐出流量演算手段)
48 クラッチ温度推定部
49 クラッチ温度判定部
Claims (3)
- ポンプ回転速度が目標ポンプ回転速度となるよう制御される電動ポンプの吐出流量を推定するための装置において、
前記電動ポンプの駆動力に係わるポンプ駆動力情報を検出するポンプ駆動力情報検出手段と、
該手段で検出したポンプ駆動力情報から得られる現在のポンプ駆動力、および、前記目標ポンプ回転速度を実現するための目標ポンプ駆動力から、目標ポンプ駆動力に対する現在のポンプ駆動力のポンプ駆動力偏差を求め、該ポンプ駆動力偏差から得られるポンプ吐出流量偏差を、前記ポンプ回転速度または目標ポンプ回転速度に応じた理論ポンプ吐出流量から差し引いて前記電動ポンプの吐出流量を演算するポンプ吐出流量演算手段と
を具備してなることを特徴とする電動ポンプの吐出流量推定装置。 - 請求項1に記載された、電動ポンプの吐出流量推定装置において、
前記ポンプ駆動力情報検出手段は、前記電動ポンプの駆動トルクまたは駆動電流をポンプ駆動力情報として検出するものであることを特徴とする電動ポンプの吐出流量推定装置。 - 前記電動ポンプの吐出液が冷却に用いられるものである、請求項1または2に記載された、電動ポンプの吐出流量推定装置において、
前記推定したポンプ吐出流量から、前記冷却すべき対象物の放熱量を演算して、該対象物の熱的負荷変化の演算に供し、該熱的負荷変化を前記目標ポンプ回転速度の補正に用いるよう構成したことを特徴とする電動ポンプの吐出流量推定装置。
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