JP5998330B2 - 複合材の再生処理方法及び再生処理装置 - Google Patents
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Description
そこで、このような課題を解決する目的で、近年、天然繊維と熱可塑性樹脂との複合材を再生するための技術が開発されており、それに関して既に発明が開示されている。
以下、特許文献1に開示された発明について説明する。特許文献1に開示された発明は、天然繊維と熱可塑性樹脂繊維を互いに絡み合わせて加熱しプレス成形により成形される天然繊維入り樹脂成形品・当該不良成形品・当該成形加工時に発生する外周材等の再生方法であって、(1)樹脂成形品・当該不良成形品・当該成形加工時に発生する外周材などの被再生材料をフレーク状に粉砕し、(2) フレーク状に粉砕した被再生材料を、熱可塑性樹脂繊維と同系の熱可塑性樹脂で形成された通気性を備えた収容袋に収容せしめ、(3) 上記収容袋内に収容された被再生材料を当該収容袋に収容したままの状態でもって加熱ヒータ内で厚みを均し、(4) 然る後に加熱しプレス成形する、ことを特徴とする。
このような特徴を有する天然繊維入り樹脂成形品の再生方法においては、再生前の天然繊維入り樹脂成形品と同等な剛性・強度を有する樹脂成形品が再生されるという作用を有する。このため、安価に被再生材料の再生利用が容易に可能となると同時に、繰り返しリサイクルが可能となる。従って、天然繊維入り樹脂成形品を製作する場合のコストの低減化を期することができる。
上記構成の複合材の再生処理方法においては、破砕工程により、被再生対象である複合材を構成する天然繊維及び第1の熱可塑性樹脂が切断される。天然繊維は、約10mm以上の長さを有する長繊維であり、第1の熱可塑性樹脂は天然繊維の各繊維間に含浸されてバインダーとしての作用を有するものであって、例えばポリプロピレンが使用されている。また、被再生対象の複合材の中に占める天然繊維の含有率は約40〜80重量%である。
次に、加熱・混練工程において第2の熱可塑性樹脂を投入し、加熱しながら混練することにより、第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂が溶融され、その中に天然繊維が均等に分散される。これと同時に天然繊維間に第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂が十分に含浸されるという作用を有する。
続いて、成形工程において混練された複合材を成形することにより、再生された複合材が完成する。
なお、第2の熱可塑性樹脂とは、第1の熱可塑性樹脂に対して可溶性を有する樹脂である。この第2の熱可塑性樹脂を投入し、加熱・混練することにより、再生された複合材の成形性が向上することとなる。また、混練工程において、天然繊維と、第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂との接着強度を向上させる接着強度改良剤を付加し、再生された複合材の強度をさらに向上させても良い。この接着強度改良剤は、例えば無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MPP)が用いられる。
さらに、成形工程により、略同一形状を有する複数の複合材が短時間内に再生される。なお、これら略同一形状の複合材は、最終製品の前段階の半製品として専ら利用され、この場合には更なる溶融工程等を経ることで最終製品が完成する。
そして、押出工程により、切れ目がなく長さが不定の紐状の複合材が形成される。さらに、この複合材を10〜50mmの長さに切断することで、複合材が射出成形原料となるペレット状に成形される。射出成形には、例えば射出成形機が用いられる。なお、このペレット成形工程までに複合材は10〜50mmの長さに2度切断されている。これに伴い、ペレット状複合材の中に含まれる天然繊維の長さはより短縮される傾向にあるが、大部分の繊維が10mm以下の長さとなるものではない。また、押出工程とペレット成形工程との間に、紐状の複合材を冷却する冷却工程が設けられても良い。
上記構成の複合材の再生処理方法において、ポリオレフィンとは、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等であって、一般的にはポリオレフィンに含まれないとされるポリスチレン(PS)も含まれる。また、再生ポリオレフィンは、リサイクルされたPE、PP、EVA、PS等である。これらは熱可塑性樹脂であるため、第2の熱可塑性樹脂は、複合材を構成する第1の熱可塑性樹脂との相溶性が高く、加熱によって容易に溶融されるという作用を有する。また、第2の熱可塑性樹脂は再生される複合材のバインダーとして作用し、第2の熱可塑性樹脂を投入しない場合よりも成形性が向上する。
上記構成の複合材の再生処理方法においては、加熱・混練工程後における複合材の中に占める天然繊維の含有率が10〜50重量%となることから、再生処理前の複合材と同等又はそれ以下の繊維含有率を有する複合材が再生されるという作用を有する。
上記構成の複合材の再生処理方法において、セルロースを主成分とする植物性の天然繊維とは、例えばケナフ、麻、竹、綿、バナナの葉、シュロの皮等をいう。本再生処理方法においては、これらのいずれか1種、または複数種類を混合させても良く、これにより所望する種類の天然繊維を含む複合材が再生されるという作用を有する。
上記構成の複合材の再生処理装置において、「裁断手段」とは、例えば回転刃または固定刃により連続的に剪断破砕を行なう破砕機をいい、「選別手段」とは、篩目の大きさが10〜50mmの、例えばスクリーン等をいう。さらに、「加熱・混練手段」とは、例えば回転可能なロータ等を備えて複合材を混練可能であるとともに加熱温度を調整可能な連続混練機等をいう。
そして、「押出ノズル」は、切れ目がなく長さが不定の紐状の複合材を形成し、その口径は調整可能である。そして、「カッター」は例えばペレタイザーであって、長さが不定の複合材を所望する長さに切断可能な構造である。また、押出ノズルとカッターとの間に、紐状の複合材を冷却する冷却手段が設けられても良い。
なお、これらの「裁断手段」、「選別手段」、「加熱・混練手段」、「成形手段」は、それぞれ別体であって互いに連結された構造であっても良く、あるいはこれらのいずれか又はすべてが一体的に組み合わされた構造であっても良い。
このような構成の複合材の再生処理装置においては、10〜50mmの長さに抽出された複合材に対し、第2の熱可塑性樹脂の投入量や、混練温度、射出圧力、押出ノズルの口径等を調整することで、天然繊維を含み、多様な形状や繊維含有率、強度を有する複合材が再生されるという作用を有する。
次に、再生された複合材は、溶融した第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂の中に天然繊維が均等に分散されることから、複合材の強度や弾性率が均一となる。すなわち、良好な品質の複合材が再生される。さらに、天然繊維間に第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂が十分に含浸されることから、繊維表面がこれらの樹脂に被覆され、混練による繊維の損傷が抑制される。
また、第2の熱可塑性樹脂や接着強度改良剤の投入・混練によって、再生された複合材の成形性が向上するため、破砕工程以降の混練や成形が容易となる。
加えて、成形工程により複数の複合材が短時間内に再生されるため、複合材の生産効率が良好である。さらに、これらの複合材は略同一形状であるので、更なる溶融工程において熱の伝達がそれぞれ均等であり、全体的に天然繊維が均一に分散された半製品が完成する。この半製品は再度成形されることから、所望する形状の最終製品を製造することができる。すなわち、板状以外の形状を自在に製造可能である。
そして、ペレット状の複合材が完成するため、任意の量の複合材をその後の加工に使用することができる。従って、多様な形状や大きさの最終製品を製造することが可能である。さらに、ペレット状であるため、最終製品と比較して輸送する際に厳重な梱包が必要とならず、輸送の手間とコストを削減することができる。
また、複合材が2回切断されることによって大部分の天然繊維が10mm以下の長さとなるものではないため、圧縮成形された複合材と比較してもペレット状の複合材はこれと同等な強度を有している。
また、使用されるポリオレフィンのうち、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンは汎用樹脂であって比較的安価であることから、コスト的な負担が少なく、容易に本請求項記載の複合材の再生処理方法を導入可能である。
図1は、本発明の実施の形態に係る複合材の再生処理方法の実施例の工程図である。
複合材C1は、第1の熱可塑性樹脂が天然繊維を材料とした不織布を含浸して成り、板状に圧縮成形されたものである。その中に占める天然繊維の含有率は、約40〜80重量%である。
第1の熱可塑性樹脂は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等であり、不織布のバインダーとして作用している。また、天然繊維を含浸し易くするため、メルトフローインデックス(MFI)は50g/10min程度の溶融粘度の低いものが用いられている。
また、天然繊維は、例えばケナフ、麻、竹、綿等であり、繊維長が10mm以上を有する長繊維である。
そして、加熱により、複合材C1の第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂Rが溶融されて一体化し、同時に行われる混練により天然繊維はこれらの中に均等に分散される。すなわち、天然繊維間に複合材C1の第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂Rが十分に含浸される。
また、いずれの工程においても、破砕機、連続混練機、射出成形機、ペレタイザー及び圧縮成形機といった一般的な設備を用いていることから設備費が特に負担となることはなく、また既設の処理施設に対してもわずかな改造により導入が可能である。
また、加熱・混練により溶融された複合材C1の第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂Rの中に天然繊維が均等に分散されるとともに繊維間にこれらの樹脂が含浸する。従って、天然繊維が集中するために樹脂が含浸していない部分が存在しないことから、局所的な強度不足を防止可能である。この効果は、小型の再生複合材を製造する場合、特に有効である。
加えて、接着強度改良剤を付加することで、再生複合材C2,C3の強度をさらに向上させることができる。
以下、本実施の形態に係る複合材の再生処理方法について実施例を挙げて説明する。
まず、実施例の構成を有する複数個の試料片を作成し、それぞれ引張試験、曲げ試験及びシャルピー衝撃試験を行って試験結果を得た。試料片は、ポリプロピレンペレット(MFI=55g/10min)と天然繊維(ケナフ)を混合し、ステップS1の破砕工程〜ステップS4−1の押出工程により作成した。各試験は、試料片の中に占める天然繊維の含有率を変化させた複数種類の試料について行った。なお、試料片の形状は下記のJIS規格に規定される各形状に従うものである。また、比較例として上記のポリプロピレンペレットを使用した。
(1)引張試験(表1参照)
JIS K 7162に準拠し1BA形小型試験片で試験を行った。
(2)曲げ試験(表2参照)
JIS K 7171に準拠して実施した。
(3)シャルピー衝撃試験(表3参照)
JIS K 7111−1に準拠し試験片タイプ1でノッチ付き、エッジワイズで実施した。
以下に、これらの試験結果を示す。なお、表1〜表3中の値はいずれも、前述のJIS規格において定義される値であり、複数個の試料片についての平均値である。
次に、表2に示されるとおり、曲げ試験においても、上記と同様な傾向となった。
さらに、表3に示されるとおり、シャルピー衝撃試験においては、MPP濃度0重量%,繊維含有率25重量%のケナフを含有する試料が最大の衝撃値を示している。これにより、繊維含有率を増加させる際に上限が存在することが理解される。加えて、表1〜表3のいずれの実施例においても、実施例の衝撃値はいずれも比較例より高い値となっている。また、実施例のうち、同繊維含有率の場合にMPPを付加することで最大強度は向上するが、衝撃値はかえって低下する結果となった。そして、再成形をした場合では、これをしない場合と比較して最大強度及び衝撃値はやや減少しているものの、ほぼ同等の値となった。
以上の結果から、ケナフを含有する試料は、これを含有しないポリプロピレンペレットよりも強度、弾性率、衝撃値が向上しており、総合的に優れた性質を有していると言える。また、繊維含有率やMPPの有無については、様々な用途に適するよう成分を適宜調整すると良いことが分かる。
図2は、本発明の実施の形態に係る再生複合材ペレットの実物写真である。
繊維含有率30重量%のケナフを含有する複数個の再生複合材ペレットを作成し、それぞれ引張試験、曲げ試験及びシャルピー衝撃試験を行って試験結果を得た。実施例1に係る再生複合材ペレットは、ケナフ複合材(繊維含有率約55重量%)と、第2の熱可塑性樹脂として再生ポリオレフィンペレットを混合し、ステップS1の破砕工程〜ステップS4−3の射出成形工程により作成した(図2参照)。なお、再生複合材ペレットは、直径が4mmであり、ステップS1−1の裁断工程、ステップS4−2のペレット成形工程においてケナフ複合材をいずれも長さ15mmに切断している。
また、再生ポリオレフィンペレットは、主成分がポリエチレン、ポリピロピレンであり、この他にも少量のポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートを含んでいる。そして、MFIは10〜20g/10min程度である。
比較例として再生ポリオレフィンペレットを使用した。その結果を表4に示す。なお、表4中の値はいずれも、前述のJIS規格において定義される値であり、複数個の再生複合材ペレットについての平均値である。
また、実施例2によれば、引張試験、曲げ試験における強度は、実施例1と同等の値を示しており、再成形による強度低下はわずかであった。
また、実施例4によれば、引張試験、曲げ試験における強度及びシャルピー衝撃試験における衝撃値は、実施例3と同等の値を示しており、再成形による強度及び衝撃値の低下はわずかであった。
また、実施例6によれば、引張試験、曲げ試験における強度は、実施例5と同等の値を示しており、再成形による強度の低下はわずかであった。
図3(a)及び図3(b)は、それぞれ実施例7に係る再生複合材ボンベ台の表面及び裏面の実物写真である。
繊維含有率27重量%のケナフを含有する複数の再生複合材ボンベ台を作成して曲げ試験及び圧縮試験を行い、試験結果を得た。実施例7に係る再生複合材ボンベ台は、ケナフ複合材(繊維含有率約55重量%)と、第2の熱可塑性樹脂として実施例1で使用したと同一の再生ポリオレフィンペレットを1:1の割合で混合して繊維含有率が約27重量%に調整されたものであり、ステップS1の破砕工程〜ステップS5−2の圧縮成形工程により作成した。なお、ステップS1−1の裁断工程においては、ケナフ複合材を長さ30mmに切断した。また、再生複合材ボンベ台の大きさは約400mm×400mm×35mmであり、図3(a)に示すように表面に放射状の溝部を備え、図3(b)に示すように裏面には格子状にリブを備えている。
試験は、ボンベ台全体を約1/2の面積となるように厚さ方向に沿って分割した分割片、表面の平板部、裏面のリブ交差部について実施した。このうち、分割片、表面の平板部については曲げ試験を実施し、裏面のリブ交差部については圧縮試験を実施した。使用した圧子は、分割片及び平板部が20mm径の鉄棒であり、リブ交差部では120mm径の円形平板である。また、比較例として再生ポリオレフィンから構成される従来材料を使用した。その結果を表6に示す。なお、表6中の値はいずれも、前述のJIS規格において定義される値であり、複数個の再生複合材ボンベ台についての平均値である。
また、分割片、平板部、リブ交差部における弾性率は、それぞれ約225%、370%、175%程度向上していた。
従って、本発明は、混練可能な繊維長さ及び高強度を有する複合材の再生処理方法及び再生処理装置を提供するという課題を十分に解決するものである。
Claims (5)
- 天然繊維と第1の熱可塑性樹脂とが結合して成形された複合材の再生処理方法において、
前記天然繊維は、長さが10mm以上の長繊維であり、
前記第1の熱可塑性樹脂は、前記天然繊維の各繊維間に含浸され、
前記複合材は、その中に占める前記天然繊維の含有率が40〜80重量%であり、
前記複合材をその長さが10〜50mmとなるように破砕する破砕工程と、
破砕された前記複合材に第2の熱可塑性樹脂を投入し、加熱しながら混練する加熱・混練工程と、
混練された前記複合材を成形する成形工程と、を備え、
前記破砕工程は、前記複合材を裁断する裁断工程と、裁断された前記複合材のうち、長さが10〜50mmの前記複合材のみを抽出する選別工程と、を有し、
前記成形工程は、混練された前記複合材をノズルから押し出す押出工程と、押し出された前記複合材を10〜50mmの長さに切断してペレット状に成形するペレット成形工程と、を備え、
前記ペレット成形工程後のペレット状に成形された前記複合材に含まれる前記天然繊維の長さが、10mmよりも長いことを特徴とする複合材の再生処理方法。 - 前記第2の熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン、ポリスチレン、再生ポリオレフィン及び再生ポリスチレンから選択されることを特徴とする請求項1記載の複合材の再生処理方法。
- 前記加熱・混練工程後における前記複合材の中に占める前記天然繊維の含有率が、10〜50重量%となることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合材の再生処理方法。
- 前記天然繊維は、セルロースを主成分とする植物性の天然繊維であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の複合材の再生処理方法。
- 天然繊維と第1の熱可塑性樹脂とが結合して成形された複合材の再生処理装置であって、
前記天然繊維は、長さが10mm以上の長繊維であり、
前記第1の熱可塑性樹脂は、前記天然繊維の各繊維間に含浸され、
前記複合材は、その中に占める前記天然繊維の含有率が40〜80重量%であり、
前記複合材をその長さが10〜50mmとなるように裁断する裁断手段と、
裁断された前記複合材のうち、長さが10〜50mmの前記複合材のみを抽出する選別手段と、
選別された前記複合材に第2の熱可塑性樹脂を投入し、加熱しながら混練する加熱・混練手段と、
混練された前記複合材を成形する成形手段を備え、
前記成形手段は、混練された前記複合材を押し出す押出ノズルと、押し出された前記複合材を10〜50mmの長さに切断するカッターと、を備え、
前記カッターで切断された前記複合材に含まれる前記天然繊維の長さが、10mmよりも長いことを特徴とする複合材の再生処理装置。
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