JP5995163B2 - Mycn増幅型疾患のための分子標的及びその利用 - Google Patents

Mycn増幅型疾患のための分子標的及びその利用 Download PDF

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本明細書は、MYCN遺伝子増幅型疾患のための分子標的及びその利用に関する。
MYCN遺伝子の増幅は多くの疾患に関与していると考えられている。例えば、神経芽腫が挙げられる。神経芽腫は、小児の頭蓋外固形腫瘍のなかでも最多の固形腫瘍として知られている。発生母地は神経堤細胞と言われており、交感神経に分化する過程でがん化すると言われている。発生原因は完全には解明されていないが、MYCN遺伝子の増幅やALKの変異などが報告されている(非特許文献1)。また、MYCN増幅タイプの神経芽腫は大変予後が悪く、有効な治療法が得られていないのが現状である。神経芽腫のモデルマウスとしてMYCNトランスジェニックマウスが確立されており、hemi接合体がよりヒト神経芽腫に近いという報告がある。
N Engl J Med 362(23)2002-2011
しかしながら、MYCN遺伝子を直接ノックダウン等により発現抑制すると、ガン細胞のみならず正常細胞にも作用してしまう。したがって、MYCN遺伝子に対して直接作用する薬剤は、副作用を生じるおそれがあると考えられる。
「合成致死」とは、2つの遺伝子の組み合わせで両方に異常があるときにのみ死に至る生命現象とされている。「合成致死」は酵母などの遺伝学から生まれた概念であるが、本発明者らは、がんなどの疾患への適用に着目した。すなわち、合成致死の観点から、その病態を特徴づける遺伝子異常と他の遺伝子の制御を組み合わせて細胞の生死を制御できる可能性があると考えた。「合成致死」は、治療のための標的となる新たな遺伝子や分子標的の探索に有用である。さらに、こうした他の遺伝子を探知できれば、病態を特徴付ける遺伝子への直接の作用を回避して、高い選択性で病態細胞のみに作用する治療が可能となると考えられる。
本明細書は、MYCN遺伝子の増幅に関連して合成致死表現型を示す遺伝子に着目し、当該遺伝子を標的としてMYCN遺伝子増幅型疾患のための分子標的やマーカー並びにこれらの利用を提供する。
本発明者らは、MYCN遺伝子を増幅させたマウス神経芽腫モデル等を用いて、ガン化の進行に伴って発現量の増大する遺伝子、患者予後と発現量の相関を示す遺伝子、MYCN増幅細胞において発現の高い遺伝子などを種々探索し、さらに、こうした遺伝子の中からノックダウンすることによりMYCN増幅細胞で選択的に致死性を示す合成致死遺伝子を見出した。こうした知見に基づき、本明細書の開示は、以下の手段を提供する。
本明細書は、遺伝子異常による疾患のための分子標的のスクリーニング方法を提供する。このスクリーニング方法は、遺伝子異常を提示する遺伝子異常細胞において発現量が増大する1又は2以上の他の遺伝子をスクリーニングする工程と、前記遺伝子異常細胞において前記1又は2以上の他の遺伝子の発現を抑制することによる前記遺伝子異常細胞に対する選択的な致死性を指標として前記1又は2以上の他の遺伝子を評価する工程と、を備えることができる。
また、本明細書は、MYCN増幅型疾患のための薬剤のスクリーニング方法を提供する。このスクリーニング方法は、コンデンシン1複合体を構成するサブユニットタンパク質であるSmc2タンパク質、Smc4タンパク質、CAP-D2タンパク質、CAP-Hタンパク質及びCAP-Gタンパク質からなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質の活性の低下又はこれらのタンパク質をコードする遺伝子の発現抑制を指標として1又は2以上の被験化合物を評価する工程を備えることができる。
また、本明細書は、MYCN増幅型疾患のための薬剤のスクリーニング方法を提供する。このスクリーニング方法は、MYCN増幅細胞に対して1又は2以上の被験化合物を供給する工程と、前記MYCN増幅細胞における、コンデンシン1複合体を構成するサブユニットタンパク質であるSmc2タンパク質、Smc4タンパク質、CAP-D2タンパク質、CAP-Hタンパク質及びCAP-Gタンパク質からなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質の活性の低下又はこれらのタンパク質をコードする遺伝子の発現抑制を指標として、前記1又は2以上の被験化合物を評価する工程と、を備えることができる。
また、本明細書は、MYCN増幅型疾患のための薬剤を提供する。この薬剤は、コンデンシン1複合体を構成するサブユニットタンパク質であるSmc2タンパク質、Smc4タンパク質、CAP-D2タンパク質、CAP-Hタンパク質及びCAP-Gタンパク質からなる群から選択される1種又は2種以上からなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現産物活性を低下する化合物又はこれらのタンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する化合物を有効成分とすることができる。
また、本明細書は、MYCN増幅型疾患における予後マーカーを提供する。この予後マーカーは、コンデンシン1複合体を構成するサブユニットタンパク質であるSmc2タンパク質、Smc4タンパク質、CAP-D2タンパク質、CAP-Hタンパク質及びCAP-Gタンパク質からなる群から選択される1種又は2種以上をコードする遺伝子の発現産物とすることができる。
また、本明細書は、MYCN増幅型疾患の患者の予後の予測方法を提供する。この予測方法によれば、MYCN増幅型疾患の患者から採取された被験試料について、コンデンシン1複合体を構成するSmc2タンパク質、Smc4タンパク質、CAP-D2タンパク質、CAP-Hタンパク質及びCAP-Gタンパク質からなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現状況を指標として前記患者の予後を予測することとすることができる。
ヒトの神経芽腫患者におけるMYCN遺伝子増幅と予後との関係を示す図である。 コンデンシン1複合体及びコンデンシン2複合体におけるサブユニットタンパク質を示す図である。 野生型マウス(2週齢)とMYCN遺伝子導入マウス(ホモ接合体及びヘミ接合体、2及び4週齢)における過形成及び腫瘍ガングリオンにおけるSmc2の発現量の評価結果を示す図である。 野生型マウス(2週齢)とMYCN遺伝子導入マウス(ヘミ接合体、2週齢)における過形成ガングリオンにおけるSmc2の発現量の評価結果を示す図である。 ヒト神経芽腫細胞系列(MYCN遺伝子多コピー及び単コピー)を用いて、Smc2の発現量を評価した結果を示す図である。 ヒト神経芽腫細胞系列(MYCN遺伝子単コピー)を用いて、Smc2の発現量を評価した結果を示す図である。 Smc2ノックダウンした及びしていないヒト神経芽腫細胞系列(MYCN遺伝子多コピー及び単コピー)の培養期間における細胞数の計数結果を示す図である。 Smc2ノックダウンIMR32細胞系列のTUNELアッセイの結果を示す図である。 Smc2ノックダウンIMR32細胞系列のTUNELアッセイ(経時変化)の結果を示す図である。 Smc2ノックダウンIMR32細胞系列(MYCN遺伝子多コピー)及びその非ノックダウン系列におけるDNAダメージを蛍光免疫染色により観察した結果を示す図である。 Smc2ノックダウンSK−N−AS細胞系列(MYCN遺伝子単コピー)及びその非ノックダウン系列におけるDNAダメージを蛍光免疫染色により観察した結果を示す図である。 Smc2ノックダウンIMR32細胞系列(MYCN遺伝子多コピー)、Smc2ノックダウンSK−N−AS細胞系列(MYCN遺伝子単コピー)及びこれらの各非ノックダウン系列におけるDNAダメージを組み合わせて示す図である。 MYCN遺伝子単コピー細胞系列(SH−EP)において2種のDNA傷害試薬(シスプラチン及びカンプトテシン)を供給してDNAダメージを生じさせた後にSmc2をノックダウンしたときのアポトーシスの観察結果を示す図である。 神経芽腫臨床検体においてSmc2の発現と相関を示す分子群のオントロジーを示す図である。 Smc2ノックダウンMYCN遺伝子増幅細胞系列(IMR32細胞)の発現解析結果を示す図である。 Smc2ノックダウンMYCN遺伝子単コピー細胞系列(SK−N−AS細胞)の発現解析結果を示す図である。 MYCN遺伝子増幅細胞の増殖機構を示す図である。 MYCN遺伝子単コピー細胞の増殖機を示す図である。 神経芽腫患者におけるMYCN増幅型患者とMYCN非増幅型患者に関してSmc2発現との関係を示す図である(無事象生存群) 神経芽腫患者におけるMYCN増幅型患者とMYCN非増幅型患者に関してSmc2発現との関係を示す図である(全生存群)を示す図である。 神経芽腫患者におけるMYCN増幅型患者とMYCN非増幅型患者に関してSmc2をサブユニットとして含むコンデンシン1複合体のサブユニットタンパク質ともう一つのコンデンシン2複合体のサブユニットタンパク質の発現プロファイルを示す図である。 神経芽腫患者におけるMYCN増幅型患者とMYCN非増幅型患者におけるコンデンシン1複合体を構成するサブユニットタンパク質であるhcapD2、hCAP−H及びコンデンシン2複合体を構成するhCAP−D3及びhCAP−H2並びにこれら複合体に共通するSmc4の発現量と予後とのp値を示す表である。
本明細書は、MYCN遺伝子増幅型疾患のための分子標的やマーカー並びにこれらの利用に関する。
本明細書の開示によれば、合成致死の考え方を利用して、MYCN増幅型疾患の原因とされている細胞におけるMYCN遺伝子の増幅に対して、合成致死的に作用する遺伝子群としてコンデンシン1複合体の構成タンパク質遺伝子群を特定した。すなわち、MYCN増幅細胞において、これらの遺伝子群のいずれかの発現を抑制等して、これらの遺伝子産物であるタンパク質の活性を低下させることで、MYCN増幅細胞を死滅させることができる。
このことから、こうした遺伝子群又はその発現産物であるコンデンシン1複合体あるいはそのサブユニットタンパク質をMYCN増幅型疾患のための薬剤の分子標的として利用できる。これらの遺伝子ないしタンパク質への作用剤は、いずれも、MYCN遺伝子には直接作用しないが、MYCN増幅細胞におけるこれらの分子標的に作用する。したがって、MYCN増幅細胞に対して選択的に作用する薬剤となる。
また、こうした遺伝子群又はその発現産物であるコンデンシン1複合体は、MYCN増幅型疾患における予後マーカーとして利用できる。
以下、本明細書の開示の各種の形態について詳細に説明する。
(遺伝子異常による疾患のための分子標的のスクリーニング方法)
本明細書に開示される分子標的のスクリーニング方法は、遺伝子異常による疾患のための分子標的のスクリーニング方法である。このスクリーニング方法は、前記遺伝子異常を提示する遺伝子異常細胞において発現量が増大する1又は2以上の遺伝子をスクリーニングする工程と、前記遺伝子異常細胞において前記1又は2以上の遺伝子の発現を抑制することによる前記遺伝子異常細胞に対する選択的な致死性を指標として前記1又は2以上の遺伝子を評価する工程と、を備えることができる。この方法によれば、病態の原因となる遺伝子異常に対して選択的かつ合成致死的に作用する分子標的(遺伝子又はその発現産物)をスクリーニングすることができる。こうした選択的かつ合成致死的な遺伝子又はその発現産物を分子標的とすることで、遺伝子異常を生じている異常細胞のみに対して選択的に作用する薬剤のスクリーニングが可能となる。
遺伝子異常による疾患としては、ガンを初めとして多様な疾患が含まれる。ここでいう疾患とは、乳がん、子宮がん、胃がん、肺がん等の各種ガンのように個々のガンのほか、各種ガンを包含するガン疾患全般も包含される。個々のガン疾患において特有の遺伝子異常が生じる場合もあり、また、複数のガン疾患に共有する遺伝子異常が生じる場合もあるからである。例えば、神経芽腫では、MYCN遺伝子の異常(増幅)が原因となることがわかっている。また、乳がんでは、BRCA1遺伝子の異常(変異)が原因となることがわかっている。疾患における遺伝子の異常に関する情報については、当業者であれば公知の文献等から適宜取得することができる。遺伝子異常としては、特定遺伝子の変異や転座等による発現の増大のほか、発現低下、変異タンパク質の発現等などの異常が挙げられる。
前記遺伝子異常細胞は、上記遺伝子異常を有する細胞を含むものであれば足りる。こうした遺伝子異常細胞としては、例えば、前記疾患に罹患した患者から採取した細胞、その培養細胞のほか採取組織のほか、遺伝子工学的に前記遺伝子異常を生じさせた細胞、その培養細胞等が挙げられる。さらに、遺伝子工学的に前記遺伝子異常を生じさせたマウスやゼブラフィッシュなどの非ヒト動物あるいはこの非ヒト動物から採取された細胞や組織等が挙げられる。遺伝子の異常を生じさせた非ヒト動物の作製は、当業者であれば必要に応じて可能である。
本スクリーニング方法は、前記遺伝子異常細胞において、発現量が増大する1又は2以上の遺伝子をスクリーニングする工程を備えることができる。この工程によれば、こうした遺伝子異常細胞の生存に寄与する可能性のある遺伝子をスクリーニングできる。こうした遺伝子をスクリーニングするには、遺伝子異常細胞から得られる核酸(DNAあるいはRNA)試料につき、発現解析することが考えられる。当業者であれば、公知技術を用いて発現量の増大する遺伝子の解析を行うことができる。例えば、mRNA量による発現解析のほか、DNAの変異、さらには染色体における転座等による特定遺伝子の多コピー数解析を組み合わせてもよい。また、可能性ある発現タンパク質の量を解析してもよい。
本工程におけるスクリーニングでは、発現量が増大する傾向にある1又は2以上の他の遺伝子をスクリーニングする。次工程で、さらなるスクリーニングを行うため、好ましくは複数個の他の遺伝子をスクリーニングする。
本スクリーニング方法は、さらに、前記遺伝子異常細胞において前記1又は2以上の他の遺伝子の発現を抑制することによる前記遺伝子異常細胞に対する選択的な致死性を指標として前記1又は2以上の他の遺伝子を評価する工程を備えることができる。この工程によれば、前記1又は2以上の他の遺伝子から、その発現が抑制されることで、前記遺伝子異常細胞に対して選択的に作用して致死に至らしめる他の遺伝子をスクリーニングできる。この他の遺伝子及び/又はその産物であるタンパク質は、遺伝子異常細胞に対して選択性の高い致死性の分子標的となりうる。
特定の遺伝子の異常と組み合わせて選択的かつ合成致死的に作用する他の遺伝子の発現量を低下させる化合物、当該他の遺伝子の産物たるタンパク質の活性を低下させる化合物(阻害剤)等が、遺伝子異常による疾患のための薬剤となりうる。
(MYCN増幅型疾患のための薬剤のスクリーニング方法1)
本明細書に開示される薬剤のスクリーニング方法は、MYCN増幅型疾患のための薬剤のスクリーニング方法であって、コンデンシン1複合体を構成するサブユニットタンパク質であるSmc2タンパク質、Smc4タンパク質、CAP-D2タンパク質、CAP-Hタンパク質及びCAP-Gタンパク質からなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質の活性の低下又はこれらのタンパク質をコードする遺伝子の発現抑制を指標として1又は2以上の被験化合物を評価する工程を備えることができる。本発明者らは、MYCN増幅型疾患においてこれらのタンパク質又はその遺伝子が合成致死的に作用することを見出した。本スクリーニング方法によれば、分子標的としてのこれらのタンパク質の活性を低下させる化合物や遺伝子の発現を抑制できる化合物をスクリーニングできる。これらの化合物は、MYCN遺伝子には直接作用するものでないため、正常細胞への悪影響が回避又は抑制される薬剤となりうる。MYCN増幅型疾患としては、典型的には神経芽腫が挙げられる。スクリーニングされた薬剤は、MYCN増幅型疾患の予防又は治療のための有用な薬剤又はその候補化合物となる。
なお、これらのタンパク質及びそれをコードする遺伝子は、当業者であれば、ヒトのほか、マウスなどの非ヒト哺乳動物等に関し、公開されているデータベースにおいて取得できる。例えば、NCBIのホームページのEntrez Nuccleotide(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nucleotide/)においては、ヒトsmc2は、NM_001042550、NM_001042551、NM_006444、AF092563、AF113673、AJ420415、AK001485、AK292599、AL833191、BC130385、BN000163等を参照することにより取得できる。また、同様に、ヒトsmc4は、NM_001002800、NM_005496、AB019987、AF092564、AK122939、AK128143、AK315070、AL136877、AL833949、BC146370、BC148796、NM_005496、AB019987、AF092564、AK122939、AK128143、AK315070、AL136877、AL833949、BC146370、BC148796等を参照することにより取得できる。また、同様に、ヒトCAP-D2は、NM_014865, AK022511, AK125155, AK128354, AK303310, BC016913, BC028182, D63880等を参照することにより取得できる。また、同様に、ヒトCAP-Gは、NM_022346, XM_001058724, XM_223468, AB013299, AF235023, AF331796, AK022512, AK023147, BC068467, BC101476等を参照することにより取得できる。また、同様に、ヒトCAP-Hは、NM_015341, AK303725, BC024211, CR592757, CR610329, CR620375, D38553等を参照することにより取得できる。
コンデンシン1複合体は、図2にも示すように、細胞周期の***期(M期)で染色体の濃縮に関わる重要な役目を担っている。コンデンシン1複合体は、細菌からヒトまで高度にそのアミノ酸配列が保存されたサブユニットで構成されている。コンデンシン1複合体のサブユニットは、Smc2タンパク質、Smc4タンパク質、CAP-D2タンパク質、CAP-Hタンパク質及びCAP-Gタンパク質を含んでいる。
評価に用いるタンパク質及び遺伝子は、これらのコンデンシン1複合体のサブユニットタンパク質からなる群から選択される1種又は2種以上又はこれらをコードする遺伝子であることが好ましい。これらのタンパク質のうち、Smc2は、MYCN増幅細胞において増幅するタンパク質であり、当該タンパク質の活性を抑制(発現抑制)することで、合成致死的であるからである。また、コンデンシン1複合体のサブユニットタンパク質は全体として、MYCN増幅細胞において増幅することがわかっており、これらのタンパク質の活性低下や遺伝子の発現抑制が、Smc2タンパク質の活性低下やその遺伝子の発現抑制と同様に合成致死的となることが明らかであるからである。
好ましくは、評価に用いる分子標的は、より好ましくは、Smc2タンパク質、Smc4タンパク質及びCAP-D2タンパク質の1種又は2種以上あるいはこれらのタンパク質をコードする遺伝子の1種又は2種以上である。これらのタンパク質は、特に、神経芽腫などのMYCN増幅型疾患の予後に関連深いからである。さらに好ましくは、Smc2タンパク質又はこのタンパク質をコードする遺伝子である。
本スクリーニング方法において、具体的な手法としては、上記タンパク質の1種又は2種以上と1又は2以上の被験化合物とを接触させておき、上記タンパク質の活性の低下を、例えば、ATPアーゼとしての酵素活性の低下で検出することができる。また、コンデンシン1複合体のDNA二重鎖の巻き戻し作用等で評価する方法も挙げられる。コンデンシン1複合体と被験化合物とを接触させ、コンデンシン1複合体の前記巻き戻し作用の低下ないし消失は、被験化合物がコンデンシン1複合体を構成するサブユニットタンパク質の活性を低下したことによるからである。コンデンシン1複合体の前記巻き戻し作用の低下等は、アガロース電気泳動の移動度で検出することができる。
また、上記タンパク質をコードする遺伝子の1種又は2種類以上を発現する細胞(好適には、これらの遺伝子の発現が増強された細胞)に対して、1又は2以上の被験化合物を供給して、これら遺伝子の発現抑制を、発現産物(mRNAやタンパク質)の量や、細胞周期の変調等で評価する方法が挙げられる。
なお、コンデンシン1複合体のサブユニットタンパク質の1種又は2種以上をコードする遺伝子の発現が増強された細胞は、MYCN増幅型疾患のための薬剤スクリーニングに有用な細胞である。こうした形質転換細胞は、当業者であれば公知の遺伝子工学的手法により容易に取得できる。宿主細胞は、ヒト細胞のほか非ヒト細胞を用いることができ、酵母等であってもよい。
1又は2以上の被験化合物としては、本スクリーニング方法をin vivo系とするかあるいはin vitro系とするかによっても異なるが、これらのいずれかの系において上記タンパク質や遺伝子に作用する可能性がある化合物であれば特に限定されない。適宜、化合物ライブラリーから選択されてもよいし、上記遺伝子の発現を抑制可能に設計されたアンチRNAやsiRNA等であってもよい。
(MYCN増幅型疾患のための薬剤のスクリーニング方法2)
本明細書に開示される薬剤のスクリーニング方法は、MYCN増幅型疾患のための薬剤のスクリーニング方法であって、MYCN増幅細胞に対して1又は2以上の被験化合物を供給する工程と、前記MYCN増幅細胞における、コンデンシン1複合体を構成するサブユニットであるSmc2、Smc4、CAP-D2、CAP-H及びCAP-Gからなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質の活性の低下又はこれらのタンパク質をコードする遺伝子の発現抑制を指標として、前記1又は2以上の被験化合物を評価する工程と、を備えることができる。本スクリーニング方法によれば、MYCN増幅細胞を用いて上記タンパク質の活性の低下又は当該タンパク質をコードする遺伝子の発現の抑制を評価することで、MYCN増幅細胞に対してより選択的に作用する化合物をスクリーニングできる。MYCN増幅型疾患としては、典型的には神経芽腫が挙げられる。スクリーニングされた薬剤は、MYCN増幅型疾患の予防又は治療のためのより有効な薬剤又はその候補化合物となる。
このスクリーニング方法においても、先に説明した薬剤のスクリーニング方法において適用する実施態様を適用できる。すなわち、評価に用いるタンパク質、評価手法等については、先の薬剤スクリーニング方法を適用できる。なお、本スクリーニング方法においては細胞に被験化合物を供給する態様に限定される。
MYCN増幅細胞は、MYCN遺伝子の発現が増強された細胞である。MYCN増幅細胞としては、MYCN増幅型疾患の患者から採取されあるいはその培養細胞が挙げられる。また、ヒト細胞あるいは非ヒト細胞等を宿主として遺伝子工学的に作製された細胞であってもよい。さらに、MYCN遺伝子が増幅されるとともに、コンデンシン1複合体のサブユニットタンパク質の1種又は2種以上をコードする遺伝子の発現が増強された細胞もMYCN増幅細胞として用いることができる。MYCN及びコンデンシン1複合体サブユニットを1種又は2種以上をコードする遺伝子の発現が増強された細胞は、MYCN増幅型疾患のための薬剤スクリーニングに有用な細胞である。遺伝子工学的にMYCN増幅細胞を作製すると、同時にサブユニットの一つであるSmc2タンパク質の発現が増強される場合もあることもわかっている。MYCN遺伝子及びSmc2タンパク質をコードする遺伝子を含む他のサブユニットタンパク質の発現が増強された形質転換細胞は、当業者であれば公知の遺伝子工学的手法により容易に取得できる。宿主細胞は、ヒト細胞のほか非ヒト細胞を用いることができ、酵母等であってもよい。
なお、本明細書によれば、BRCA1及び/又はBRCA2増幅型疾患(以下、単にBRCA1増幅型疾患)における薬剤のスクリーニング方法も提供される。BRCA1及び/又はBRCA2増幅異常は、乳がん等の原因とされている。BRCA1及び/又はBRCA2増幅細胞においてPARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)(典型的にはPARP-1)遺伝子の発現抑制やParpタンパク質の活性低下(阻害)は合成致死的に作用することが知られている(Nature. 2005 Mar 31;434(7033):598-604. Nature. 2005 Apr 14;434(7035):917-21. Nature. 2005 Apr 14;434(7035):913-7. Nature. 2005 Apr 14;434(7035):864-70)。したがって、BRCA1増幅型疾患に関し、Parpタンパク質の活性の低下又はPARP遺伝子の発現の抑制を指標として1又は2以上の被験化合物を評価する工程を備える、BRCA1増幅型疾患のための薬剤のスクリーニング方法が提供される。また、BRCA1増幅型疾患のための薬剤のスクリーニング方法であって、BRCA1及び/又はBRCA2増幅細胞に対して1又は2以上の被験化合物を供給する工程と、前記BRCA1及び/又はBRCA2増幅細胞における、Parpタンパク質の活性の低下又はこのタンパク質をコードする遺伝子の発現抑制を指標として、前記1又は2以上の被験化合物を評価する工程と、を備える、スクリーニング方法も提供される。これらのスクリーニング方法においては、MYCN増幅型疾患のスクリーニング方法と同様に、BRCA1及び/又はBRCA2増幅細胞を用いることが好ましい。さらに、BRCA1及び/又はBRCA2の増幅に加えてPARPが増幅するような細胞(形質転換細胞を含む)を用いることが好ましい。
コンデンシン1複合体は、Parpタンパク質の作用(DNA修復)を補助することがわかっている。したがって、コンデンシン1複合体のサブユニットタンパク質及びそれをコードする遺伝子は、BRCA1増幅型疾患においても分子標的となりうる。したがって、当該サブユニットタンパク質の活性を低下(阻害)又は当該タンパク質の1種又は2種以上をコードする遺伝子の発現を抑制する化合物は、BRCA1増幅型疾患においても有用な薬剤ないし候補化合物となる。
(MYCN増幅型疾患のための薬剤)
本明細書に開示されるMYCN増幅型疾患のための薬剤は、コンデンシン1複合体を構成するサブユニットタンパク質であるSmc2タンパク質、Smc4タンパク質、CAP-D2タンパク質、CAP-Hタンパク質及びCAP-Gタンパク質からなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質の活性を低下する又はこれらのタンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する化合物を有効成分とすることができる。上記したように、こうした化合物は、MYCN増幅型疾患においてMYCN遺伝子への作用を回避又は抑制してMYCN増幅細胞に選択的に作用する薬剤又は候補化合物である。
化合物としては、特に限定されない。上記タンパク質の阻害剤等となりうる低分子有機化合物のほか上記遺伝子の発現を抑制可能に設計されたアンチRNAやsiRNA等が挙げられる。
(MYCN増幅型疾患における予後マーカー)
本明細書に開示されるMYCN増幅型疾患における予後マーカーは、コンデンシン1複合体を構成するサブユニットタンパク質であるSmc2タンパク質、Smc4タンパク質、CAP-D2タンパク質、CAP-Hタンパク質及びCAP-Gタンパク質からなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現産物を含むことができる。これらのタンパク質をコードする遺伝子の発現産物、すなわち、mRNAやタンパク質は、MYCN増幅型疾患において、MYCN遺伝子の増幅に伴いその発現が増大する。したがって、MYCN増幅型疾患では、その遺伝子の増強の程度が大きいほど予後が悪いことがわかっている。したがって、これらの遺伝子の発現産物は、MYCN増幅型疾患の予後マーカーとして利用できる。これらの遺伝子の発現産物をマーカーとして用いるには、例えば、これらの遺伝子の転写産物であるmRNAやmRNAから得られるcDNAを定性的及び/又は定量的に検出可能なプライマーやプローブ等、あるいはこれらの遺伝子の翻訳産物であるタンパク質を検出する抗体や当該タンパク質の活性等を検出する試薬を用いることができる。マーカーとして用いるタンパク質のアミノ酸配列や遺伝子の塩基配列が既知であるとき、当業者であれは公知技術に基づき適宜取得することができる。本予後マーカーは、神経芽腫に好ましく適用できる。
マーカーは、Smc2、Smc4、CAP-D2及びCAP-Hの1種又は2種以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現産物とすることが好ましく、より好ましくは、Smc2、Smc4及びCAP-D2の1種又は2種以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現産物であり、さらに好ましくは、Smc2タンパク質をコードする遺伝子の発現産物である。
(予後の予測方法)
本明細書に開示されるMYCN増幅型疾患の予後の予測方法は、MYCN増幅型疾患の患者から採取された被験試料について、コンデンシン1複合体を構成するサブユニットであるSmc2タンパク質、Smc4タンパク質、CAP-D2タンパク質、CAP-Hタンパク質及びCAP-Gタンパク質からなる群から選択される1種又は2種以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現状況を指標として、前記MYCN増幅型疾患の予後を予測することができる。これらのタンパク質をコードする遺伝子の発現状況は、MYCN増幅型疾患においてMYCN遺伝子の増幅状況、すなわち、疾患の進行度に対応して増大し、しかも予後の悪さにも対応している。したがって、これらの遺伝子の発現状況を指標とすることでMYCN増幅型疾患の予後(進行度)を予測することができる。
これらの遺伝子の発現の状況は、上記したタンパク質をコードする遺伝子の発現産物を定性的にあるいは定量的に検出することにより行う。例えば、上記遺伝子の転写産物であるmRNA量、上記遺伝子の翻訳産物であるタンパク質やその活性を検出したり、タンパク質の発現量やタンパク質の活性を測定したりすることにより行うことができる。これらの手法は、上述のとおり当業者であれば公知技術を適用して適宜実施することができる。
以下、本明細書の開示を具現化した具体例を示す。なお、本明細書の開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
以下に、実施例で用いた実験方法について記載する。
(1)マウス
MYCN遺伝子導入マウス(神経芽腫モデルマウス)は、本発明者である門松建治らにより作製されたものであり、名古屋大学大学院医学系研究科(郵便番号466-8550日本国愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65番地)において、制御された環境下、標準的な飼料と水が供給されて飼育維持されており、入手可能である。野生型マウス、ヘミ接合体及びホモ接合体のMYCN遺伝子導入マウスから、正常な神経節、前癌状態及びガンの組織を切除し、すり潰して全RNAを常法に従い抽出した。
(2)細胞系列
IMR32 細胞(ヒト神経芽腫細胞、多コピー)は、MEM培地(10%牛胎児血清、1%非必須アミノ酸含有、ペニシリン−ストレプトマイシン含有)で培養した。 SK-N-AS(ヒト神経芽腫細胞、単コピー)、SK-N-BE(同、多コピー)、 SH-SY5Y(同、単コピー)及び293T 細胞はダルベッコ改変イーグル培地(10%牛胎児血清含有)で培養した。SH-EP 細胞(同、単コピー)はRPMI1640培地(10%牛胎児血清及びペニシリン−ストレプトマイシン)で培養した。
(3)ウイルス感染
レンチウィルスのパッケージングプラスミドであるpsPAX2, pMD2.Gとノンターゲットベクター、shRNAを発現するベクター(Openbiosystems)及び発現ベクター(RIKEN)をFuGENE HD(Promega)を用いて293T細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション後3日及び4日後の培地上清をウイルス液として使用した。
(4)プラスミド
sh RNA ノンターゲット(Sigma), sh Smc2-38, 40 及び 42(Openbiosystems)は購入した。
(5)DNA傷害試薬
細胞は、シスプラチン又は CPT (カンプトテシン)で処理して染色体DNAを傷害した。
(6)RNAの分離、RT−PCR及び定量的リアルタイムPCR
全RNAは、所定の細胞又は組織から、ISOGEN II (Nippongene, Japan)を用いて分離した。RT−PCR及び定量的リアルタイムPCRのためには、全RNA(1μg)を、 DNase I (Invitrogen, Carlsbad, CA)とインキュベートして混在するゲノムDNAを除去した。その後、オリゴdT、ランダムヘキサマープライマー及びThermoScript RT-PCR systemとともにRT−PCRに供した。hSmc2, hGAPDH (コントロール)及び各種遺伝子の量は、ΔΔCT 法で測定した(Mx3000p or Mx3005p (Agilent technologies) )。
(7)FACS
フローサイトメトリー用の試料は、70%エタノール中に固定し、1mlのPBSで洗浄し、100μg/mlのRNase Aを含む1mlのPBSに再懸濁後、37℃で1時間インキュベートした。この液に、全量で50μg/mlとなるように、ヨードプロピジウムを添加し、4℃で30分インキュベートした。この液につき、Becton-Dickinson FACS caliburを用い付属のプロトコールに従い試験した。
(8)TUNELアッセイ
APO-DIRECT kit (556381, BD pharmingen)を用いてTUNELアッセイを行った。細胞固定と染色を、キット付属のプロトコールに従い行った。次いで、APO-DIRECTによる試料につきFACScanto (556381, BD pharmingen)を用いてTUNELアッセイを行った。
(9)蛍光免疫染色
蛍光免疫染色のため、細胞を、50〜70%コンフルーエントになるまで4又は6ウェルプレート中のガラスカバースリップ上で培養した。カバースリップをPBSにて2回洗浄し、その後、4%パラホルムアルデヒドで、室温で1時間固定した。その後、細胞をPBSで3回洗浄した。さらに、1%Triton/PBSで室温30分静置後、PBSで3回洗浄し、2%BSA/PBSで室温30分静置し、PBSで3回洗浄した。この液を、1次抗体と反応(室温1時間)させた。一次抗体(γ-H2AX 抗体 (Millipore)、DNAダメージのマーカーである。)は、ブロッキング溶液で1000倍希釈した。反応液をPBSで3回洗浄後、2次抗体(マウス-Alexa488)(1000倍希釈)を加えて室温30分静置した。反応液をPBSで3回洗浄後、DAPI (4',6'-diamidino-2-phenylindole)で10分染色し、その後、顕微鏡観察した。
(マウスにおけるSmc2発現の評価)
野生型マウス(2週齢)とMYCN遺伝子導入マウス(ホモ接合体及びヘミ接合体、2及び4週齢)における過形成及び腫瘍ガングリオンにおけるSmc2の発現量を評価した。上記(1)、(6)に従い、所定のマウスから全RNAを抽出し、RT−PCR及びリアルタイムPCRを行った。結果を図3及び図4に示す。
図3に示すように、野生型マウスにおいてはSmc2の発現は弱かったが、MYCN遺伝子導入マウス(神経芽腫モデルマウス)では、週齢が大きくなるのに伴い、ガングリオンは、過形成細胞から腫瘍細胞に変化し、がん化が進行していることがわかった。また、がん化に伴って、Smc2の発現量が増えることがわかった。さらに、図4に示すように、MYCN遺伝子導入マウス(ヘミ接合体、2週齢)の過形成ガングリオンでも、既にSmc2の発現が増大している傾向がわかった。
上記(2)に記載のヒト神経芽腫細胞系列(MYCN遺伝子多コピー及び単コピー)を用いて、Smc2の発現量を評価した。結果を図5及び図6に示す。
図5に示すように、MYCN遺伝子を単コピー有する細胞系列(SH−SY5Y及びSK−N−AS)では、Smc2の発現はほとんど見られないのに対し、MYCN遺伝子増幅細胞系列(IMR32及びSK−N−BE)では、Smc2が発現が増大していることがわかった。また、MYCN遺伝子が正常の細胞にMYCN遺伝子を導入してMYCNを強制発現すると、Smc2の発現上昇が誘導されることがわかった。
Smc2ノックダウンによるヒト神経芽腫細胞系列(多コピー及び単コピー)への影響を評価した。上記(2)に記載のIMR32細胞(ヒト神経芽腫細胞系列、多コピー)に上記(3)及び(4)に従い調製した、Smc2をターゲットとするsh RNAベクターとコントロールであるノンターゲットベクターとをそれぞれ含むウイルス液を常法により感染させた。これらの細胞系列を培養して細胞数をカウントした。結果を図7に示す。
図7に示すように、MYCN遺伝子増幅細胞系列(IMR32)では、Smc2をノックダウンすると細胞増殖が抑制され、ノックダウンしない場合には、細胞は増殖した。これに対して、MYCN遺伝子単コピー細胞系列(SK−N−AS)では、Smc2をノックダウンしてもしなくても、細胞は増殖した。これらの結果から、MYCN遺伝子増幅細胞系列においては、Smc2が細胞増殖に必要であることがわかった。
MYCN遺伝子増幅細胞系列(IMR32)におけるSmc2ノックダウンによる細胞増殖抑制がアポトーシスによるものかどうかを確認した。実施例3において、shsmc2−40ベクターを含むウイルス液を調製した以外には、実施例3と同様の方法でウイルス液を調製し、IMR32細胞系列を感染させた。作製したSmc2ノックダウンIMR32細胞系列につき、上記(8)に従いTUNELアッセイを行った。結果を図8及び図9に示す。
図8に示すように、shsmc2−40ベクターが導入されたSmc2ノックダウンIMR32細胞系列では、97.1%の細胞がアポトーシスに至っていることがわかった。これに対して、無感染のIMR32細胞系列及びコントロールベクターを感染させたIMR32細胞系列では、アポトーシスに至る細胞はほとんど観察されなかった。また、図9に示すように、培養が進むにつれてSmc2ノックダウンIMR32細胞系列ではアポトーシスに至る細胞が増大することがわかった。以上のことから、MYCN遺伝子増幅細胞系列における、Smc2ノックダウンによる細胞増殖抑制の理由の一つが、アポトーシスによるものであることがわかった。すなわち、Smc2は、MYCN遺伝子が増幅するという異常な細胞系列において、その発現が抑制されることで合成致死的に作用する遺伝子であることがわかった。
MYCN遺伝子増幅細胞系列における合成致死遺伝子SMC2の機能を解析した。実施例3で作製したSmc2ノックダウンIMR32細胞系列及びSmc2ノックダウンSK−N−AS細胞系列並びにノンターゲットIMR32細胞系列及びノンターゲットSK−N−AS細胞系列におけるDNAダメージを確認するため、上記(9)に従い蛍光免疫染色を行った。結果を図10、図11及び図12に示す。
図10及び図11に示すように、MYCN遺伝子増幅細胞系列においては、Smc2をノックダウンすると、ノックダウンしてない場合に比較してDNAダメージが増大したのに対して、MYCN遺伝子単コピー細胞系列においては、Smc2のノックダウンの有無にかかわらず、DNAダメージは同程度であった。これらの結果をまとめた図12に示すように、MYCN遺伝子増幅細胞系列においては、Smc2ノックダウンによるDNAダメージの増大が格別であることがわかった。以上の結果から、Smc2のノックダウンがMYCNに誘導されるDNAダメージの修復不全を誘導する可能性があることがわかった。
MYCN遺伝子単コピー細胞系列(SH−EP)に対してDNA傷害試薬(シスプラチン及びカンプトテシン)を供給して、DNAダメージを引き起こした後に、実施例2と同様にしてshSmc2ベクターを含むウイルス液を調製して常法に従い感染させ、上記(8)に従いアポトーシスを観察した。結果を図13に示す。
図13に示すように、ノンターゲットに比較して、Smc2をノックダウンすると、アポトーシスが生じていることがわかった。この結果から、Smc2はDNA修復に関連し、Smc2ノックダウンは、DNA修復不全を誘導していることが強く推測された。図14には、神経芽腫臨床検体を用いてSmc2の発現と相関を示す分子群のオントロジーを示す。図14に示すように、Smc2と相関を示す分子はDNA修復に関するものが多かった。このことは、Smc2のノックダウンにより、DNA修復不全が誘導されることを支持している。
実施例2で作製したSmc2ノックダウンMYCN遺伝子増幅細胞系列(IMR32細胞)及びSmc2ノックダウンMYCN遺伝子単コピー細胞系列(SK−N−AS細胞)の発現解析を常法に従い行った。これらの結果を、それぞれ図15及び図16に示す。
図15及び図16に示すように、MYCN遺伝子増幅細胞では、Smc2がノックダウンされることによりDNA修復に関わる分子群の発現量が顕著に減少するが、MYCN遺伝子単コピー細胞では、これらの分子群の発現量には大きな減少は観察されなかった。
以上の結果から、以下のことがわかる。図17には、MYCN遺伝子増幅細胞の増殖機構を示し、図18には、MYCN遺伝子単コピー細胞の増殖機構を示す。MYCNが過剰に発現すると、細胞増殖を引き起こすが同時にDNAダメージも引き起こし、本来なら細胞は死に至る。しかしながら、図17の左欄に示すように、MYCNの増幅は同時にSmc2の発現も誘導する。このために、DNAの修復が促進され、がん細胞として無限の増殖能を獲得する。一方、図17の右欄に示すように、Smc2をノックダウンすると細胞はDNA修復不全のために細胞は死に至る。
また、図18の左欄に示すように、MYCN遺伝子が単コピー細胞の場合には、DNAダメージがそもそも多くないためにSmc2の役割は小さく、細胞は増殖する。このために、Smc2をノックダウンしても、細胞は死ぬことがない(図18の右欄)。
以上の結果に基づいて、Web上で公開されているデータ(NCBIのGSE-3960)及び対応する神経芽腫患者における予後データ(John M Marisのグループによるもの(Giulio D'Angio Chair in Neuroblastoma Research, Chief, Division of Oncology, Director, Center for Childhood Cancer Research, Children's Hospital of Philadelphia, University of Pennsylvania School of Medicine))に基づいて、以下の解析を行った。なお、解析は、名古屋工業大学情報工学教育類/創成シミュレーション工学専攻竹内一郎准教授に依頼した。結果を図19〜図22に示す。
図19及び図20は、神経芽腫患者におけるMYCN増幅型患者とMYCN非増幅型患者(ただし、Smc2を発現する)に関してSmc2発現との関係を示す。図19及び図20に示すように、Smc2の発現は、MYCN増幅患者においてのみ予後と関連していた。
図21は、神経芽腫患者におけるMYCN増幅型患者とMYCN非増幅型患者(ただし、Smc2を発現する)に関してSmc2をサブユニットとして含むコンデンシン1複合体のサブユニットタンパク質ともう一つのコンデンシン2複合体のサブユニットタンパク質の発現プロファイルを示す。図21の上段に示すように、MYCNの発現あるいは増幅とコンデンシン1複合体を構成する遺伝子群と強い相関があることがわかった。これに対して、コンデンシン2複合体を構成する遺伝子群はSmc2の発現や増幅とは相関がないことがわかった(図21の下段)。
図22は、神経芽腫患者におけるMYCN増幅型患者とMYCN非増幅型患者(ただし、Smc2を発現する)におけるコンデンシン1複合体を構成するサブユニットタンパク質であってSmc2以外のhcapD2、hCAP−H及びコンデンシン2複合体を構成するhCAP−D3及びhCAP−H2並びにこれら複合体に共通するSmc4の発現量と予後とのp値を示す表である。図22に示すように、MYCN増幅型患者においてhCAP−D2、hCAP−H及びSmc4の発現量と強い相関があることがわかった。
以上のことから、遺伝子異常に関連する疾患において合成致死的に作用する遺伝子を探索することで、こうした疾患のために有効な薬剤をスクリーニングするための分子標的(化合物又は遺伝子、本明細書の場合には、コンデンシン1複合体のサブユニットタンパク質又はこれらのタンパク質をコードする遺伝子)を見出すことができることがわかった。
また、こうして取得した分子標的に作用する化合物を探索することで、遺伝子異常に関連する疾患のための薬剤をスクリーニングできることもわかった。
さらに、コンデンシン複合体1の構成サブユニットタンパク質の発現量がMYCN遺伝子増幅型の神経芽腫患者の予後マーカーとなりうることがわかった。そして、コンデンシン1複合体は、これらのサブユニットが集合して機能するものであるため、これらのサブユニットタンパク質又はこれらをコードする遺伝子を分子標的としてこれらの活性を低下ないし発現を抑制するような化合物は、MYCN増幅型の神経芽腫の有用な薬剤となりうることがわかった。

Claims (7)

  1. MYCN増幅型疾患のための薬剤のスクリーニング方法であって、
    コンデンシン1複合体を構成するサブユニットタンパク質であるSmc2タンパク質をコードする遺伝子の発現抑制を指標として1又は2以上の被験化合物を評価する工程を備える、スクリーニング方法。
  2. 前記MYCN増幅型疾患は神経芽腫を含む、請求項に記載のスクリーニング方法。
  3. MYCN増幅型疾患のための薬剤のスクリーニング方法であって、
    MYCN増幅細胞に対して1又は2以上の被験化合物を供給する工程と、
    前記MYCN増幅細胞における、コンデンシン1複合体を構成するサブユニットタンパク質であるSmc2タンパク質をコードする遺伝子の発現抑制を指標として、前記1又は2以上の被験化合物を評価する工程と、
    を備える、スクリーニング方法。
  4. 前記MYCN増幅型疾患は神経芽腫を含む、請求項に記載のスクリーニング方法。
  5. コンデンシン1複合体を構成するサブユニットタンパク質であるSmc2タンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制するshRNA発現ベクターを有効成分とする、MYCN増幅型疾患のための薬剤。
  6. MYCN増幅型疾患の患者から採取された被験試料について、コンデンシン1複合体を構成するSmc2タンパク質をコードする遺伝子の発現状況を指標として、前記MYCN増幅型疾患の予後を予測する方法。
  7. 前記MYCN増幅型疾患は、神経芽腫を含む、請求項に記載の方法。

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