この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
図1は、この発明の実施の形態における横型マシニングセンタを示す斜視図である。図1中には、横型マシニングセンタの外観をなすカバー体を透視することにより、横型マシニングセンタの内部構造が示されている。
図1を参照して、まず、本実施の形態における横型マシニングセンタ10の基本的な構造について説明すると、横型マシニングセンタ10は、ベッド12と、コラム21と、サドル18と、主軸頭41と、テーブル26とを有する。
ベッド12は、コラム21やサドル18等を搭載するためのベース部材であり、工場などの据え付け面に設置されている。
ベッド12には、コラム21が取り付けられている。コラム21は、ベッド12に固定されている。コラム21は、全体として、ベッド12の上面に立設される門形形状を有する。
より具体的には、コラム21は、その構成部位として、側部22(22s,22t)と、頂部23とを有する。側部22は、ベッド12の上面から鉛直上方向に立ち上がるように設けられている。側部22sおよび側部22tは、水平方向に平行なX軸方向に間隔を隔てて配置されている。頂部23は、X軸方向に沿って側部22sから側部22tまで延設されている。
なお、横型マシニングセンタ10の機械構成は、基本的には、X軸方向における中心に対して左右対称の構造を有している。本実施の形態において、参照番号に「s」および「t」が付された構成は、その左右対称に対応する一対の部品である。
ベッド12には、サドル18が取り付けられている。サドル18は、ベッド12に対して、X軸方向にスライド移動可能に設けられている。サドル18には、主軸頭41が取り付けられている。主軸頭41は、側部22s、頂部23、側部22tおよびベッド12に囲まれた空間を通って、テーブル26に向けて延出している。主軸頭41は、水平方向に平行であり、X軸方向に直交するZ軸方向にスライド移動可能に設けられている。
主軸頭41は、主軸42を有する。主軸42は、Z軸方向に平行な中心軸101を中心に、モータ駆動により回転可能に設けられている。主軸42には、加工対象であるワークを加工するための工具が装着される。主軸42の回転に伴って、主軸42に装着された工具が中心軸101を中心に回転する。
ベッド12、サドル18および主軸頭41には、サドル18のX軸方向へのスライド移動および主軸頭41のZ軸方向へのスライド移動を可能とするための送り機構や案内機構、駆動源としてのサーボモータなどが適宜、設けられている。
コラム21には、テーブル26が取り付けられている。テーブル26は、コラム21に対して、鉛直方向に平行であり、X軸方向およびZ軸方向に直交するY軸方向にスライド移動可能に設けられている。
テーブル26は、ワークを固定するための装置であり、パレット27と、回転機構部29(29s,29t)とを有する。
パレット27は、金属製の台であり、各種のクランプ機構を用いてワークが取り付けられる。パレット27は、回転機構部29によって、X軸に平行な中心軸102を中心に旋回可能に設けられている(a軸旋回)。回転機構部29sおよび回転機構部29tは、X軸方向に間隔を隔てて配置されている。パレット27は、回転機構部29sおよび回転機構部29tの間に装着されている。パレット27は、さらに、パレット27の主面に直交する中心軸を中心に旋回可能に設けられてもよい(b軸旋回)。
コラム21およびテーブル26には、テーブル26のY軸方向へのスライド移動を可能とするための送り機構や案内機構、駆動源としてのサーボモータなどが適宜、設けられている。
サドル18のX軸方向へのスライド移動、主軸頭41のZ軸方向へのスライド移動およびテーブル26のY軸方向へのスライド移動が組み合わさって、主軸42に装着された工具によるワークの加工位置が3次元的に移動する。
横型マシニングセンタ10は、マガジン30と、自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)36とをさらに有する。マガジン30は、主軸42に装着する交換用の工具32を収容するための装置である。自動工具交換装置36は、主軸42およびマガジン30の間で工具を交換するための装置である。
マガジン30は、マガジン本体部31と、柱部材14および柱部材16と、台部材33とを有する。
マガジン本体部31は、複数の工具保持部34と、スプロケット35とを有する。工具保持部34は、工具32を保持可能なように構成されている。複数の工具保持部34は、スプロケット35の周囲に環状に配列されている。スプロケット35は、モータ駆動により、Y軸に平行な中心軸103を中心に回転可能に設けられている。スプロケット35の回転に伴って、複数の工具保持部34が中心軸103を中心に回転移動する。
マガジン本体部31は、柱部材14および柱部材16と、台部材33とによって、ベッド12から鉛直上方向に距離を設けた位置に支持されている。
スプロケット35の回転に伴って、特定の工具32を保持する工具保持部34が機械前方の所定位置に割り出される。特定の工具32は、図示しない工具搬送装置によってZ軸方向に搬送され、工具交換位置まで移動する。自動工具交換装置36が有するダブルアーム37が旋回することにより、工具交換位置に搬送された特定の工具32と、主軸42に装着された工具とが交換される。
続いて、サドル18の案内機構と、その案内機構の取り外しのための構造とについて詳細に説明する。図2は、図1中の横型マシニングセンタを示す平面図である。図3は、図2中の矢印IIIに示す方向から見た横型マシニングセンタを示す側面図である。図中では、主軸頭41、テーブル26、マガジン30および自動工具交換装置36が取り外された状態が示されている。
図2および図3を参照して、横型マシニングセンタ10は、前側ガイドレール51および後側ガイドレール56をさらに有する。前側ガイドレール51および後側ガイドレール56は、サドル18をX軸方向に移動可能に案内する案内機構として設けられている。
前側ガイドレール51および後側ガイドレール56は、ベッド12に取り付けられている。前側ガイドレール51および後側ガイドレール56は、複数のボルトによりベッド12に締結されている。
ベッド12は、上面12aを有する。上面12aは、鉛直上方向に面している。上面12aは、X−Z平面内に配置されている。前側ガイドレール51および後側ガイドレール56は、上面12aに沿って直線状に延びる形状を有する長尺体である。前側ガイドレール51および後側ガイドレール56は、全体として、X軸方向に直線状に延びる形状を有する。
前側ガイドレール51および後側ガイドレール56は、Z軸方向において互いに間隔を隔てて配置されている。前側ガイドレール51は、Z軸方向においてテーブル26に近い側(機械前方)に配置され、後側ガイドレール56は、Z軸方向においてテーブル26から遠い側(機械後方)に配置されている。Z軸方向における前側ガイドレール51および後側ガイドレール56の間には、サドル18の送り機構としてのボールねじ61と、ボールねじ61の駆動源であるサーボモータ62とが設けられている。
図4は、図3中の2点鎖線IVで囲まれた範囲を拡大して示す側面図である。図5は、図4中のV−V線上に沿った工作機械を示す断面図である。図2から図5を参照して、前側ガイドレール51は、レール52およびスライダ53を有する。
レール52は、X軸方向に直線状に延びている。レール52は、X軸方向に間隔を隔てて並ぶ複数のボルト54により、ベッド12に締結されている。スライダ53は、ブロック形状を有し、レール52に沿って走行可能なように設けられている。スライダ53には、サドル18が搭載されている。レール52およびスライダ53の間には、複数の転動体(ボールやコロ)が介挿されており、これら転動体がスライダ53のスライド移動に伴って無限循環することによって、スライダ53の走行が可能となる。前側ガイドレール51の重量は、たとえば、15kgである。
なお、ここでは、代表的に前側ガイドレール51の構造について説明したが、後側ガイドレール56も前側ガイドレール51と同様の構造を有する。
前側ガイドレール51は、X軸方向における両端に、一方端51pおよび他方端51qを有する。X軸方向において前側ガイドレール51の一方端51pおよび他方端51qに隣り合う位置には、それぞれ、コラム21の側部22sおよび側部22tが配置されている。Z軸方向において前側ガイドレール51の一方端51pおよび他方端51qに隣り合う位置(機械前方)には、それぞれ、コラム21の側部22sおよび側部22tが配置されている。すなわち、図2中に示す平面視において、前側ガイドレール51の機械前方および機械側方には、コラム21が配置されている。
一般的に、マシニングセンタにおいては、機械剛性を確保するために加工地点に近い位置で主軸を支持したいという要求がある。本実施の形態における横型マシニングセンタ10では、サドル18を支持する前側ガイドレール51を加工地点に近づけようと、前側ガイドレール51の機械前方への配置を試みた結果、上記の前側ガイドレール51およびコラム21の相対的な位置関係となった。
コラム21は、対向部24(24s,24t)を有する。対向部24(24s,24t)は、コラム21の側部22(22s,22t)の一部である。対向部24は、X軸方向において前側ガイドレール51の端部と対向する。より具体的には、対向部24sは、前側ガイドレール51の一方端51pと隙間を設けて対向し、対向部24tは、前側ガイドレール51の他方端51qと隙間を設けて対向する。
対向部24sおよび対向部24tには、前側ガイドレール51が挿通可能な孔66が形成されている。本実施の形態では、コラム21が鋳物から形成されている。孔66は、コラム21に設けられた複数の鋳抜き孔のうちの1つである。
孔66は、対向部24を貫通するように設けられている。X軸方向(図4中に示す方向)から見た場合に、孔66は、前側ガイドレール51と重なり合うように設けられている。孔66は、前側ガイドレール51の一部と重なり合うように設けられてもよいし、前側ガイドレール51の全部と重なり合うように設けられてもよい。
X軸方向(図4中に示す方向)から見た場合に、孔66の開口面は、相対的に大きい長さを有する長手方向(図4中の矢印111に示す方向)と、相対的に小さい長さを有する短手方向(図4中の矢印112に示す方向)とを有する長孔形状を有する。孔66の開口面の長手方向は、ベッド12の上面12aに沿う方向であり、孔66の開口面の短手方向は、ベッド12の上面12aからの距離が変化する方向である。より具体的には、孔66の開口面の長手方向は、Z軸方向(水平方向)であり、孔66の開口面の短手方向は、Y軸方向(鉛直方向)である。
なお、図4中には、孔66の形状として、角部が丸められた略矩形の開口面が示されているが、孔66の形状は、前側ガイドレール51が挿通可能な形状(大きさ)であれば特に限定されない。たとえば、孔66は、横長の楕円形の開口面を有してもよい。孔66は、機械加工により設けられた孔であってもよい。
X軸方向(図4中に示す方向)から見た場合に、前側ガイドレール51は、孔66の開口面の長手方向における孔66の中心から一方の側にシフトした位置に配置されている。図4中では、孔66の開口面の長手方向における孔66の中心が、中心線121により表されている。この場合に、中心線121に対して一方の側を第1範囲113とし、中心線121に対して他方の側を第2範囲114とすると、前側ガイドレール51は、第2範囲114よりも第1範囲113に寄った位置に配置されている。
ベッド12の上面12aには、さらに、位置決めブロック63が締結されている。位置決めブロック63は、X軸方向に延在する側面63bを有する。レール52が側面63bに当接されることによって、ベッド12に対するレール52の位置が決定されている。X軸方向(図4中に示す方向)から見た場合に、位置決めブロック63は、第2範囲114よりも第1範囲113に寄った位置に配置されている。言い換えれば、前側ガイドレール51は、孔66の開口面の長手方向において、中心線121に対して位置決めブロック63と同じ側(第1範囲113側)に配置されている。
図6は、図1中の工作機械において、前側ガイドレールを取り外す工程を示す平面図である。図7は、図1中の工作機械において、前側ガイドレールを取り外す工程を示す斜視図である。
図1から図7を参照して、横型マシニングセンタ10のメンテナンスにおいて、前側ガイドレール51の交換が必要となる場合がある。そのような場合に前側ガイドレール51を取り外す工程について説明する。
まず、レール52の両端のボルト54を残して、複数のボルト54を取り外す。次に、サドル18およびボールねじ61のナット間の締結を解除する。
次に、前側ガイドレール51のスライダ53に繋がる潤滑油用の配管を取り外す。次に、サドル18および前側ガイドレール51のスライダ53間の締結を解除する。次に、前側ガイドレール51のレール52の両端に残るボルト54を取り外すことにより、レール52およびベッド12間の締結を解除する。
次に、ベッド12の上面12aおよびサドル18間にジャッキをセッティングする。この際、前側ガイドレール51の近傍にジャッキを配置する。ジャッキを用いて、前側ガイドレール51を引き抜くことが可能な程度にサドル18をリフトアップする。
次に、前側ガイドレール51を孔66を通してベッド12から取り外す。本実施の形態では、コラム21の対向部24に前側ガイドレール51が挿通可能な孔66が形成されているため、前側ガイドレール51の周辺の部品を取り外すことなく、前側ガイドレール51の取り外しが可能となる。これにより、前側ガイドレール51の取り外し時の作業性を良好にすることができる。
また、本実施の形態では、X軸方向から見た場合に、孔66が、前側ガイドレール51と重なり合うように設けられている。このような構成により、サドル18のリフトアップ量が小さくて済むなど、前側ガイドレール51の取り外し時の作業性をさらに良好にすることができる。
また、本実施の形態では、孔66の開口面が、上面12aに沿う方向が長手方向となる長孔形状を有する。さらに、前側ガイドレール51は、その長手方向における孔66の中心から一方の側にシフトした第1範囲113に配置されている。
このような構成により、前側ガイドレール51を、ベッド12の上面12aに沿う姿勢を維持しつつ、旋回させながら孔66に通す。この際、前側ガイドレール51が通る孔66の位置を第1範囲113から第2範囲114に徐々に移すことによって(図6中の前側ガイドレール51A→前側ガイドレール51B→前側ガイドレール51C→前側ガイドレール51D)、前側ガイドレール51を孔66の内壁に干渉させることなく容易に旋回移動させることができる。
前側ガイドレール51を旋回させながら孔66を通すことによって、前側ガイドレール51の取り外し時に必要となるスペースを小さく抑えることができる。図6中には、横型マシニングセンタ10のカバーライン131が示されている。たとえば、全幅L1が1700mmの横型マシニングセンタ10において、前側ガイドレール51の取り外し時に必要となる側面スペースの幅L2を600mmの長さに抑えることができる。
孔66は、対向部24sおよび対向部24tのうち少なくともいずれか一方に形成されていればよい。本実施の形態では、対向部24sおよび対向部24tの双方に孔66が形成されているため、横型マシニングセンタ10の両側の空きスペースを考慮して、前側ガイドレール51の取り外し方向を選択することができる。
以上に説明した、この発明の実施の形態における横型マシニングセンタ10の構造をまとめると、本実施の形態における工作機械としての横型マシニングセンタ10は、主面としての上面12aを有するベース部材としてのベッド12と、上面12aに沿って直線状に延びる形状を有し、ベッド12に取り付けられる長尺体としての前側ガイドレール51と、上面12a上に設けられ、ベッド12に固定される構造体としてのコラム21とを備える。コラム21は、前側ガイドレール51が直線状に延びる所定方向としてのX軸方向において前側ガイドレール51の端部に対向して配置される対向部24を有する。対向部24には、前側ガイドレール51が挿通可能な孔66が形成される。
このように構成された、この発明の実施の形態における横型マシニングセンタ10によれば、前側ガイドレール51の取り外し時の作業性を良好にすることができる。
なお、本実施の形態では、本発明における長尺体が前側ガイドレール51である場合について説明したが、このような構成に限られず、長尺体は、たとえば、移動体の送り機構としてのボールねじや、各軸の位置検出を行なうスケール等であってもよい。また、本発明が適用される工作機械は、横型マシニングセンタに限られず、たとえば、旋盤や、旋削機能とミーリング機能とを有する複合加工機であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。