JP5978762B2 - 含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法及び精製含フッ素ポリマー水性分散体 - Google Patents

含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法及び精製含フッ素ポリマー水性分散体 Download PDF

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Description

本発明は、含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法及び精製含フッ素ポリマー水性分散体に関する。
スルホン酸基やカルボキシル基を有する含フッ素ポリマーは、近年、燃料電池、化学センサー等の電解質膜等の材料として注目されており、また、−SONa等のスルホン酸塩型基を有する含フッ素ポリマーは、食塩電解用イオン交換膜等としての用途がある。
電解質膜等の製造において電解質膜の表面に触媒を固定させる媒体として、従来の有機溶媒を主体とするものに代わり、作業性の面等から含フッ素ポリマーの水性分散体が求められている。含フッ素ポリマーの水性分散体は、それ自体をコーティング用組成物として用いることができるので、キャスト製膜、含浸等に好適に用いることができ、幅広い用途がある。
このような水性分散体を、例えば燃料電池などの電気化学的デバイスに使用する場合、水性分散体に含まれる不純物が電気化学的な反応等に対して悪影響を及ぼす場合があり、これらの不純物を除去する方法が望まれている。
例えば、酸塩型基を有する含フッ素ポリマーを含む未精製水系分散体に限外濾過を行った後、カチオン交換処理を行うことにより、効率よく高純度の含フッ素ポリマー分散体を製造することができることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の実施例には、−SONa基を有する含フッ素ポリマーの水系分散体に限外濾過及びカチオン交換処理をこの順で施し、分散体中のナトリウム含有量を100ppmまで低減したことが記載されている。
特開2009−102490号公報
特許文献1に記載の方法は、限外濾過だけでは除去しきれない不純物カチオンをカチオン交換処理を併用することによって除去しようとするものであり、この方法によってある程度高純度の含フッ素ポリマー水性分散体を製造することができる。しかしながら、特許文献1に記載の方法で精製された分散体であっても、依然として不純物カチオンが100ppm程度残留しており、これを更に低減するための工夫の余地があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、含フッ素ポリマー水性分散体から不純物カチオンを効率的に除去することが可能な含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法及び精製含フッ素ポリマー水性分散体を提供することを目的とするものである。
本発明者は、−SOX、−SONR 及び−COOX(Xは、M1/L又はNR を表す。Mは、水素原子又はL価の金属を表し、前記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素ポリマー水性分散体から不純物カチオンを効率的に除去する方法について種々検討し、含フッ素ポリマー水性分散体におけるカチオン交換処理の効率が、水性分散体中のキャリア量に依存することを見いだした。ここで言うキャリアとは、水溶性の電解質である。従来は、限外濾過等によって電気伝導度をできる限り低くした分散体に対してカチオン交換処理を行っていたが、この方法では、分散媒体である水中にキャリアとなるイオンが少なく、含フッ素ポリマーとイオン交換樹脂との間でのカチオン交換が充分に進行しないために、不純物カチオンが充分に除去できないと考えられる。本発明者は、限外濾過に続いてカチオン交換を行う方法において、カチオン交換処理される含フッ素ポリマー水性分散体の25℃における電気伝導度を1mS/cmより大きくすれば、分散体中に充分な量のキャリアが存在することとなり、分散体中の不純物カチオン、特にアルカリ金属イオンを従来より大幅に低減できることを見いだし、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は、−SOX、−SONR 及び−COOX(Xは、M1/L又はNR を表す。Mは、水素原子又はL価の金属を表し、前記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素ポリマー水性分散体を準備する工程(A)、含フッ素ポリマー水性分散体に限外濾過を行う工程(B)、及び、工程(B)の後に、含フッ素ポリマー水性分散体とカチオン交換型イオン交換樹脂とを接触させて、精製された含フッ素ポリマー水性分散体を得る工程(C)を含み、工程(C)においてカチオン交換型イオン交換樹脂と接触させる含フッ素ポリマー水性分散体の25℃における電気伝導度が1mS/cmより大きいことを特徴とする含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法である。
本発明はまた、上記含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法により得られることを特徴とする精製含フッ素ポリマー水性分散体でもある。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法は、−SOX、−SONR 及び−COOX(Xは、M1/L又はNR を表す。Mは、水素原子又はL価の金属を表し、前記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素ポリマー水性分散体を準備する工程(A)を含む。
上記含フッ素ポリマーとしては、例えば、下記一般式(I):
CF=CF−(O)n1−(CFCFY−O)n2−(CFYn3−A (I)
(式中、Yは、ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基を表す。n1は0又は1の整数を表す。n2は、0〜3の整数を表す。n2個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Yは、ハロゲン原子を表す。n3は、1〜8の整数を表す。n3個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Aは、−SOX、−SONR 又は−COOX(Xは、M1/L又はNR を表す。Mは、水素原子又はL価の金属を表し、前記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。))で表されるフルオロモノマーに由来する構成単位を有するものが好ましい。
上記含フッ素ポリマー水性分散体は、公知の方法によって製造することができる。例えば、特表2001−504872号公報では、含フッ素ポリマー前駆体を媒体と共に圧力容器に投入し、攪拌しながら加熱することで含フッ素ポリマー前駆体を含む未精製水系分散体を得ている。また、国際公開2004/018527号公報では、−SOX及び/又は−COOX(Xは上記定義したものと同じ。)又はそれらの前駆体を有するモノマーとエチレン性二重結合を有するモノマーとを水系媒体中で共重合した後、必要により水酸化アルカリ等を加えることにより含フッ素ポリマー又はその前駆体を含む未精製水系分散体を得ている。
上記含フッ素ポリマーは、下記一般式(III):
CF=CF−(O)n1−(CFCFY−O)n2−(CFYn3−A (III)
(式中、Y、Y、n1、n2及びn3は、上記一般式(I)において定義したものと同じである。Aは、−SO、−SONR 、−SO1/L、−SONR 、−COONR 、−COOM1/L又は−COOR(Yは、ハロゲン原子を表す。Mは、水素又はL価の金属を表し、前記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。Rは、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を表す。)で表されるフルオロモノマーを重合して得られるもの、又は、必要に応じてこれを加水分解することで得られるものであることが好ましい。
上記一般式(III)におけるn1は、0〜1の整数を表すものである。上記n1は、1であることが好ましい。上記n2は、0〜3の整数を表す。上記n2は、0又は1であることが好ましい。上記n3は、1〜8の整数を表す。上記n3は2、3又は4であることが好ましく、2であることがより好ましい。
上記一般式(III)におけるYは、ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基を表し、n2個のYは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記一般式(III)におけるYは、ハロゲン原子を表し、n3個のYは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記Y及びYのハロゲン原子としては特に限定されず、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子の何れであってもよいが、好ましくは、フッ素原子である。上記パーフルオロアルキル基としては特に限定されず、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。上記一般式(III)において、Yは、トリフルオロメチル基であることが好ましく、Yは、フッ素原子であることが好ましい。
上記一般式(III)で表されるフルオロモノマーとしては、上記一般式(I)におけるYがトリフルオロメチル基、Yがフッ素原子、n1が1、n2が0又は1、及び、n3が2であるものが好ましい。
上記含フッ素ポリマーは、少なくとも1種類以上の、−SO及び−COOR(Yは、ハロゲン原子を表す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の基を有するフルオロモノマーに由来する構成単位を有する含フッ素ポリマー前駆体を加水分解することによって得られることが好ましい。このような製造方法によって得られたものは、加水分解工程及び中和工程において多量のイオン性の不純物が系中に混入しやすいため、本発明の製造方法による処理を行った場合の効果がより顕著なものとなる。
上記含フッ素ポリマー前駆体は、上記加水分解を行った後、酸処理を行うことが好ましい。すなわち、加水分解は塩基性で行うことが多いため、加水分解後の含フッ素ポリマーは塩の構造を有する。このため、Hへ置換するために酸処理を行うことが好ましい。酸処理工程の後に更にアルカリ工程を行うことによって、−SO 1/L若しくは−SONR、及び/又は、−COOM 1/L若しくは−COONR(MはL価の金属を表し、L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。R、R、R、及び、Rは、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)とすることもできる。
上記含フッ素ポリマーは、上記一般式(I)で表されるフルオロモノマーに由来する構成単位及びその他の含フッ素エチレン性単量体に由来する構成単位を有する2元以上の共重合体であることが好ましい。上記含フッ素エチレン性単量体は、上記一般式(I)で表されるフルオロモノマーと共重合可能なモノマーであり、ビニル基を有するものであれば特に限定されず、上記一般式(I)で表されるフルオロモノマーとは異なるものである。
上記含フッ素エチレン性単量体としては、例えば、下記一般式(II):
CF=CF−R (II)
(式中、R は、フッ素原子、塩素原子、R 又はOR を表し、R は、炭素数1〜9のエーテル結合を有していてもよい直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基を表す。)で表される少なくとも1種の単量体であることが好ましい。上記一般式(II)で表される単量体は、一部又は全部がテトラフルオロエチレンであることがより好ましい。
また、上記含フッ素エチレン性単量体としては、下記一般式(IV)
CHY=CFY (IV)
(式中、Yは、水素原子又はフッ素原子を表し、Yは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、R 又は−OR を表す。R は、炭素数1〜9のエーテル結合を有していてもよい直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基を表す。)で表される水素含有フルオロエチレン性単量体等を挙げることができる。
上記含フッ素エチレン性単量体は、CF=CF、CH=CF、CF=CFCl、CF=CFH、CH=CFH、CF=CFCF、及び、CF=CF−O−R (式中、R は、炭素数1〜9のフルオロアルキル基又は炭素数1〜9のフルオロポリエーテル基を表す。)で表されるフルオロビニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。上記フルオロビニルエーテルは、R の炭素数が1〜3のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
上記含フッ素エチレン性単量体は、特にパーフルオロエチレン性単量体であることが好ましく、CF=CFであることがより好ましい。上記含フッ素エチレン性単量体としては、1種又は2種以上を用いることができる。
上記含フッ素エチレン性単量体以外にも、更に、上記含フッ素ポリマーに種々の機能を付与するために、含フッ素ポリマーとしての基本的な性能を損なわない範囲で、その他の共重合可能な単量体を添加してもよい。上記その他の共重合可能なモノマーとしては特に限定されず、例えば、重合速度の制御、ポリマー組成の制御、弾性率等の機械的物性の制御、架橋サイトの導入等の目的に応じて共重合可能なモノマーのなかから適宜選択され、パーフルオロジビニルエーテル等の不飽和結合を2つ以上有するモノマー、CF=CFOCFCFCN等のシアノ基を含有するモノマー等が挙げられる。
上記含フッ素ポリマーは、フルオロモノマー単位の含有率が5〜40モル%であるものが好ましい。5モル%未満であると、後述の酸処理工程を経て、又は、後述の酸処理工程とアルカリ処理工程とを経て得られる含フッ素ポリマーの電解質としての性能が低下する場合があり、40モル%を超えると、上記含フッ素ポリマーを用いて得られる膜の機械的強度が不充分になる場合がある。上記フルオロモノマー単位の含有率は、上記一般式(I)におけるAの存在比率が含フッ素ポリマーからなる粒子の粒子内部よりも粒子表面の方が大きい場合、含フッ素ポリマーからなる粒子の粒子表面において上記範囲であることが好ましい。
上記「粒子内部」とは、粒子の全質量のうち中心の50質量%を占める部分を意味する。上記「粒子表面」とは、粒子のうち、上記粒子内部を除く部分を意味する。
本明細書において、上記「フルオロモノマー単位」とは、上記含フッ素ポリマーの分子構造上の一部分であって、上記一般式(I)で表されるフルオロモノマーに由来する部分を意味する。
上記「フルオロモノマー単位の含有率」は、含フッ素ポリマーの分子における全単量体単位が由来する単量体のモル数に占める、フルオロモノマー単位が由来するフルオロモノマーのモル数の割合である。上記「全単量体単位」は、上記含フッ素ポリマーの分子構造上、単量体に由来する部分の全てである。上記「全単量体単位が由来する単量体」は、上記含フッ素ポリマーをなすこととなった単量体全量である。
上記フルオロモノマー単位の含有率は、赤外吸収スペクトル分析[IR]、又は、300℃における溶融NMRを用いて得られる値である。
上記フルオロモノマーに由来する構成単位を有するフルオロポリマー又はその前駆体を得るための重合反応は、乳化重合であることが好ましい。本明細書において、本発明の含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法についての「乳化重合」とは、水性反応媒体中において、乳化剤及び/又は乳化作用剤を用いて行う重合を意味する。上記乳化剤は、従来の乳化重合に通常用いられている乳化剤又は上記既存乳化剤とは異なるものを使用してもよいし、既存乳化剤と新規乳化剤との両方を使用してもよい。
上記乳化剤としては、炭素数が4から12の酸素を含んでも良いフルオロアルキル基と解離性極性基からなる化合物を用いることができ、例えばパーフルオロオクタン酸アンモニウム[C15COONH]、パーフルオロヘキサン酸[C11COONH]、CFOCF(CF)CFOCF(CF)COONH等が挙げられる。上記乳化重合に用いる上記乳化剤は、一般に、水系反応媒体の0.01〜10質量%使用することができる。
上記乳化作用剤としては、上記一般式(III)で表されるフルオロモノマーのうち、Aが−SO1/L、−SONR 、−COONR 又は−COOM1/Lのフルオロモノマーを用いることができ、特にCF=CFOCFCFSONa、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSONa、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCONa等の重合反応に関与してポリマー乳化剤を与え得るフルオロモノマーが好ましい。上記フルオロモノマーは、乳化重合において乳化作用を有するとともに、エチレン性化合物であるので、重合反応における単量体として付加させ、含フッ素ポリマーの分子構造上の少なくとも一部となるように重合させることができる。
上記乳化作用剤を使用した場合、水性反応媒体は既存乳化剤を有さなくても乳化することができるので、乳化剤を使用せずに乳化重合を行うことができる。
上記乳化重合は、重合条件によっては、得られる含フッ素ポリマーの粒子数が低下して粒子径が大きくなり、後述の限外濾過において限外濾過膜に負荷がかかる場合があり、また、製膜の際に膜が不均質になる場合があるので、上記乳化重合は、上記乳化剤を用いることが好ましい場合もある。また、粒子数を増やすためには、多量の乳化剤を用いて重合し得られたディスパージョンを希釈し、引き続き重合を継続する、いわゆる「シード重合」を行うことができる。
本明細書において、上記「水性反応媒体」とは、上記重合において用いられる水からなる媒体であって、水そのもの、又は、水に有機媒体を溶解若しくは分散させてなる媒体を意味する。上記水性反応媒体は、上記有機媒体を含まないものが好ましく、上記有機媒体を含むものであってもごく微量であることが好ましい。
上記重合反応は、重合開始剤を用いて行ってもよい。上記重合開始剤としては特に限定されず、通常、フルオロポリマーの重合に用いられているものであればよく、例えば有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。特に、過硫酸アンモニウム[APS]を用いることが好ましい。上記重合開始剤の添加量としては、重合反応に使用する全ての単量体の合計の0.01〜1質量%であることが好ましい。
上記重合反応における水性反応媒体のpHとしては、4〜7であることが好ましい。pHが上記範囲内であると、重合反応が円滑に進行し、また、重合反応中のフルオロモノマー及び/又は含フッ素ポリマーが有する−SO及び/又は−COOR(Y、Rは、上記定義したものと同じ。)の加水分解を最小限に抑えることができる。
上記重合反応における反応温度等の反応条件は、特に限定されず通常の方法に従って行うことができる。
上記一般式(III)におけるAが−SO、−COORである場合は、重合によって得られたフルオロポリマー前駆体の加水分解反応を行うことによって、目的とするフルオロポリマーを得ることができる。上記加水分解は、0℃〜100℃で水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物の水溶液を添加しながらpH8〜14の条件下で行うことができる。
工程(A)で得られる含フッ素ポリマー水性分散体は、上述した含フッ素ポリマーからなる粒子が水性媒体中に分散されてなるものである。上記含フッ素ポリマー水性分散体は、上記含フッ素ポリマーからなる平均粒子径10nm以上の球状粒子を含むものであることが好ましい。上記のような球状粒子を含む含フッ素ポリマー水性分散体においては、水性分散体の電気伝導度が低い条件下、すなわち、分散媒体である水中のキャリア量が少ない条件下で、含フッ素ポリマーからなる粒子とイオン交換樹脂との間でのカチオン交換が充分に進行せず、不純物カチオンが充分に除去できないという傾向が、より顕著に現れる。このため、上記含フッ素ポリマーからなる平均粒子径10nm以上の球状粒子を含む含フッ素ポリマー水性分散体に対して後述の工程(B)及び(C)を行うことにより、本発明の効果がより顕著に発揮されることになる。
上記球状粒子は、上記含フッ素ポリマーからなる粒子のうち、実質的に球形である粒子をいう。本明細書において、上記「実質的に球形である」とは、アスペクト比が3以下であることを意味する。通常、アスペクト比が1に近づくほど球形に近くなる。上記球状粒子のアスペクト比は、3以下であることが好ましい。より好ましい上限は、2であり、更に好ましい上限は、1.5である。
上記含フッ素ポリマーからなる粒子の25質量%以上が、上記球状粒子であることが好ましい。より好ましくは50質量%以上である。乳化重合により得たディスパージョンから、含フッ素ポリマーからなる球状粒子が90質量%以上のものも得ることができる。
上記平均粒子径は、上記範囲内であれば、含フッ素ポリマー水性分散体の安定性や含フッ素ポリマーの作りやすさという点から、上限を例えば300nmとすることができるが、300nmを超えるものであってもよい。上記平均粒子径のより好ましい下限は、30nmであり、より好ましい上限は、160nmである。
上述のアスペクト比と平均粒子径とは、走査型若しくは透過型の電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等で、上記含フッ素ポリマー水性分散体をガラス板に塗布したのち水性分散媒を除去して得られた上記含フッ素ポリマーからなる粒子の集合体を観測し、得られた画像上の20個以上の粒子について測定した長軸及び短軸の長さの比(長軸/短軸)を上記アスペクト比、長軸及び短軸の長さの平均値を後述の平均粒子径としてそれぞれ得ることができる。
上記含フッ素ポリマー水性分散体は、含フッ素ポリマーからなる粒子のうち、平均粒子径が10nm以上である球状粒子を25質量%以上含むものであることが好ましい。また、上記含フッ素ポリマー水性分散体は、含フッ素ポリマーからなる粒子のうち、平均粒子径が10〜300nmである球状粒子を25質量%以上含むものであることがより好ましい。また、上記含フッ素ポリマー水性分散体は、含フッ素ポリマーからなる粒子のうち、平均粒子径が30〜160nmである球状粒子を25質量%以上含むものであることが更に好ましい。
本発明の含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法は、上記含フッ素ポリマー水性分散体に限外濾過を行う工程(B)を含む。
上記限外濾過は、限外濾過膜を有する限外濾過装置を用いて低分子量不純物を除去する方法であれば特に限定されず、例えば遠心式限外濾過法、回分式限外濾過法、循環式限外濾過法等が挙げられる。上記限外濾過膜及び限外濾過膜を有する限外濾過装置は、除去する低分子量不純物の分子量、種類、水系媒体の種類、含フッ素ポリマーの分子量、種類等により適宜選択される。上記低分子量不純物としては、例えば、含フッ素アニオン界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。上記限外濾過膜を有する限外濾過装置としては、市販のものを好適に使用することができ、試験的には、例えば、Centriprep(商品名、アミコン社製)、ミリタン(商品名、ミリポア社製)等が挙げられる。上記限外濾過により、加水分解時に生成する塩を除去することもできる。また、得られた含フッ素ポリマーの濃縮も行うことができる。
本発明の含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法において、限外濾過を行いながら、被処理物である上記含フッ素ポリマー水性分散体に精製水を追加する操作、酸を添加して被処理液の含フッ素ポリマー水性分散体のpHを3以下とする操作を行ってもよい。具体的には、遠心式限外濾過法及び回分式限外濾過法による処理を行った後、処理後の液に精製水や酸を添加し、再度限外濾過処理を施す工程を繰り返すことができる。また、循環式限外濾過法では、処理液タンク内に適宜、精製水や酸を追加すればよい。
上記限外濾過の終点は、濾液に含まれる不純物の量に基づいて決定することが適切である。簡便な方法としては、精製水を追加する方法では、濾液の電気伝導度に基づいて決定することができる。また酸を追加する方法では、ICP分析や原子吸光分析でアルカリ金属等を定量する方法、濾液を酸・塩基滴定して、酸が消費されなくなった時点とする方法などがあるが、簡便であることから、後者の方法が好ましい。
工程(B)における限外濾過は、濾液として系外に排出された量に相当する精製水を追加しながら行うことが好ましい。上記限外濾過の終点は、濾液の電気伝導度に基づいて決定することが好ましい。上記電気伝導度は、例えば堀場製作所社製のTwincond B−173電気伝導度計を用いて容易に測定することができる。
上記限外濾過の終点は、後述する工程(C)のカチオン交換処理において、カチオン交換型イオン交換樹脂と接触させる含フッ素ポリマー水性分散体(被処理液)の25℃における電気伝導度を1mS/cm超とすることができるように決定することが好ましい。工程(C)における被処理液の25℃における電気伝導度を1mS/cm超とする方法としては、(i)工程(B)における限外濾過によって含フッ素ポリマー水性分散体の25℃における電気伝導度を1mS/cm以下にした後、水性分散体中でカチオンとアニオンとに電離する物質(電解質)を添加して水性分散体の25℃における電気伝導度を1mS/cm超に調整する工程を行う方法、及び、(ii)含フッ素ポリマー水性分散体の25℃における電気伝導度が1mS/cm超である時点を工程(B)における限外濾過の終点とする方法、を挙げることができる。
工程(B)において、限外濾過された後の含フッ素ポリマー水性分散体の電気伝導度は、限外濾過の濾液の電気伝導度として測定することができ、濾液の電気伝導度が上述した終点の基準を満たしているか否かを判定することにより、限外濾過が終点に達したか否かを判断することができる。
上記(i)の方法においては、上記限外濾過の終点は、上記電気伝導度が1mS/cm以下となった時点である。好ましくは100μS/cm以下、より好ましくは10μS/cm以下となった時点である。また、上記限外濾過の終点における上記電気伝導度の下限は、0.1μS/cmであることが好ましい。より好ましい下限は1μS/cmである。
上記(ii)の方法においては、上記限外濾過の終点は、含フッ素ポリマー水性分散体の25℃における電気伝導度が1mS/cm超である時点であれば限定されないが、水性分散体中のキャリア量を増やしてカチオン交換処理効率を向上させる観点からは、25℃における電気伝導度が2mS/cm以上である時点を上記限外濾過の終点とすることが好ましく、5mS/cm以上である時点がより好ましい。また、上記(ii)の方法において上記限外濾過の終点となる電気伝導度は、使用するカチオン型イオン交換樹脂の利用効率の観点から20mS/cm以下が好ましく、10mS/cm以下がより好ましい。
工程(B)において、含フッ素ポリマー水性分散体の25℃における電気伝導度が1mS/cm以下となった時点を限外濾過の終点とする場合(上記(i)の方法を採用する場合)には、工程(B)に続いて、含フッ素ポリマー水性分散体に電解質を添加して水性分散体の25℃における電気伝導度を1mS/cm超に調整する工程(B−1)を行うことが必要である。工程(B−1)における処理後の含フッ素ポリマー水性分散体の25℃における電気伝導度は、2mS/cm以上とすることが好ましく、5mS/cm以上とすることがより好ましい。また、使用するカチオン型イオン交換樹脂の利用効率の観点から20mS/cm以下とすることが好ましく、10mS/cm以下とすることがより好ましい。
工程(B−1)において添加する電解質としては、塩化水素、硝酸、硫酸等の酸、及び、当該酸の塩等が挙げられる。中でも、硝酸及び硝酸塩が好ましい。上記電解質は、そのまま含フッ素ポリマー水性分散体に添加してもよく、水等の適切な媒体に溶解して溶液として添加してもよい。
工程(B)において、含フッ素ポリマー水性分散体の25℃における電気伝導度が1mS/cm超である時点を限外濾過の終点とする場合(上記(ii)の方法を採用する場合)には、工程(B)で得られた含フッ素ポリマー水性分散体をそのまま工程(C)に供することができる。
本発明の含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法は、工程(B)の後に、含フッ素ポリマー水性分散体とカチオン交換型イオン交換樹脂とを接触させて、精製された含フッ素ポリマー水性分散体を得る工程(C)を含む。
含フッ素ポリマー水性分散体とカチオン交換型イオン交換樹脂(以下、カチオン交換樹脂ともいう。)とを接触させる処理、すなわち、カチオン交換処理としては、カチオン交換樹脂を充填したカラムに含フッ素ポリマー水性分散体を流通させる方法や、含フッ素ポリマー水性分散体中にカチオン交換樹脂を分散させてイオン交換した後、カチオン交換樹脂を濾別する等して分離する方法等がある。
工程(C)においてカチオン交換型イオン交換樹脂と接触させる含フッ素ポリマー水性分散体(被処理液)の25℃における電気伝導度は、1mS/cmより大きい。これにより、被処理液中に充分な量のキャリアが存在することとなり、被処理液中の不純物カチオン、特にアルカリ金属イオンをカチオン交換処理によって充分に除去することができる。上記電気伝導度としては、2mS/cm以上が好ましく、5mS/cm以上がより好ましい。また、使用するカチオン型イオン交換樹脂の利用効率の観点から20mS/cm以下が好ましく、10mS/cm以下がより好ましい。
工程(C)における被処理液の25℃における電気伝導度を1mS/cm超とする方法としては、上述した方法(i)及び(ii)を挙げることができる。
イオン交換の程度は、上記精製された含フッ素ポリマー水性分散体(処理後の含フッ素ポリマー水性分散体)に含まれる不純物カチオン、特にナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオンの量が所定の基準を満たす点を終点とすることが好ましい。製膜性や、燃料電池の性能や耐久性に悪影響を及ぼさないためには、上記精製された含フッ素ポリマー水性分散体に対するアルカリ金属イオンの含有量を100ppm未満にすることが好ましく、50ppm以下にすることがより好ましく、10ppm以下にすることが更に好ましい。上記アルカリ金属イオンの量は、原子吸光光度法により測定することができる。
カチオン交換樹脂としては、例えば、有機ポリマー分子に酸性官能基を導入したカチオン交換樹脂を挙げることができる。
使用するカチオン交換樹脂の酸性度は、ポリマー骨格と官能基の種類から、種々設定することができ、一般的にスチレン系骨格にスルホン酸官能基を導入したもの、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、パーフルオロポリマー骨格にスルホン酸、カルボン酸を導入したもの等を用いることができる。本用途では、酸性度によらず所期の目的を達成することができ、特に限定されるものではないが、入手が容易である点から、市販のものを用いることが好ましい。このようなカチオン交換樹脂は通常Na型で市販されている樹脂を鉱酸でコンディショニングしてH型に調製して用いられるが、H型で市販されている樹脂を使用してもよい。具体的には、ローム&ハース社製のアンバーライトIR120B、アンバーライトIR124、アンバーライトFPC3500、三菱化学社製のダイヤイオンSK1B、同SK110、同SK112、ダイヤイオンWK10、同WK11、同WK100、同WK40等から選択することができる。
本発明の含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法は、更に、工程(C)の後に限外濾過を行う工程(D)を含むことが好ましい。上述した工程(C)では、カチオン交換処理の効率を上げるために、電気伝導度が高い(イオン量が多い)含フッ素ポリマー水性分散体を被処理液に使用するため、工程(C)を行った後の含フッ素ポリマー水性分散体には、カチオン交換で除去できないアニオン等が多く含まれる。工程(C)の後に再度限外濾過を行うことで、アニオン不純物等を除去し、より純度の高い含フッ素ポリマー水性分散体を製造することができる。
工程(D)における限外濾過は、工程(B)における限外濾過と同様の装置や方法によって行うことができる。工程(D)における限外濾過の終点は、濾液の電気伝導度、又は、アニオン種を測定するイオンメーターにより決定することができる。終点となる濾液の電気伝導度は、好ましくは100μS/cm以下、より好ましくは10μS/cm以下、さらに好ましくは1μS/cm以下である。
本発明は、上述した含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法により得られることを特徴とする精製含フッ素ポリマー水性分散体でもある。
上記精製含フッ素ポリマー水性分散体は、上述の含フッ素ポリマーからなる粒子が水性分散媒に分散したものであり、かつ、不純物カチオン含有量が充分に低減されたものである。
上記水性分散媒は、水からなるものであっても、水及び水溶性の有機溶剤からなるものであってもよい。上記水性分散媒は、水性の分散体に通常用いられる界面活性剤、安定剤等の添加剤を有するものであってもよい。
上記水性分散媒は、水含有率が10〜100質量%であることが好ましい。10質量%未満であると、分散性が悪化しやすく環境及び人体への影響の点でも好ましくない。より好ましい下限は40質量%である。
上記精製含フッ素ポリマー水性分散体に含まれる上記含フッ素ポリマーからなる粒子の固形分質量は、上記精製含フッ素ポリマー水性分散体の合計質量の2〜80質量%が好ましい。上記精製含フッ素ポリマー水性分散体中の含フッ素ポリマーからなる粒子の量は、通常、上記精製含フッ素ポリマー水性分散体中の固形分質量に相当する。含フッ素ポリマー分散体中の含フッ素ポリマーからなる粒子の含有量が2質量%未満であると、水性分散媒の量が多くなり製膜に用いた場合、生産性が低下する場合がある。一方、80質量%を超えると、粘度が高くなり取り扱いが困難になりやすい。より好ましい下限は、5質量%、より好ましい上限は、60質量%である。
上記含フッ素ポリマーからなる粒子は、実質的に球形である含フッ素ポリマー球状粒子を25質量%以上含むものであることが好ましい。本明細書において、上記「含フッ素ポリマー球状粒子を25質量%以上含む」とは、含フッ素ポリマーからなる粒子の25質量%以上が含フッ素ポリマー球状粒子であることを意味する。
上記含フッ素ポリマーからなる粒子の形状は、アスペクト比を目安にすることができる。本明細書において、上記「実質的に球形である」とは、アスペクト比が3以下であることを意味する。通常、アスペクト比が1に近づくほど球形に近くなる。上記含フッ素ポリマーからなる粒子のアスペクト比は、3以下であることが好ましい。より好ましい上限は、2であり、更に好ましい上限は、1.5である。
一般に、ポリマー粒子の形状に異方性があると、上記ポリマー粒子の分散体は高粘度になりやすく、上記ポリマー粒子の分散体が高粘度であると、分散体中のポリマー粒子の濃度を高くすることが困難になることから好ましくない。
上記含フッ素ポリマーからなる粒子が、実質的に球形である含フッ素ポリマー球状粒子を25質量%以上含むものであると、例えば、精製含フッ素ポリマー水性分散体の粘度を、上記含フッ素ポリマーからなる粒子の形状が実質的に球形でない場合に比べて、低くすることが可能であり、精製含フッ素ポリマー水性分散体の固形分濃度を高くすることができ、ひいてはキャスト製膜等の方法によって製膜する際、高い生産性を実現することが可能である。
上記含フッ素ポリマーからなる粒子は、含フッ素ポリマー球状粒子を50質量%以上含むものであることがより好ましい。
含フッ素ポリマー球状粒子を上記範囲内の含有率で有する精製含フッ素ポリマー水性分散体は、乳化重合により得たディスパージョンから調製することにより得ることができる。乳化重合により得たディスパージョンから含フッ素ポリマー球状粒子が90質量%以上のものも得ることができる。本発明の精製含フッ素ポリマー水性分散体は、含フッ素ポリマー球状粒子を比較的高い含有率で有する分散体に、含フッ素ポリマーからなる粒子のうち、実質的に球形ではない粒子を配合して目的に応じた性能を発揮するよう調整することも可能である。
上記球状粒子を50質量%以上含む含フッ素ポリマーからなる粒子は、例えば、−SOFを有するフルオロモノマーを乳化重合させ、その後加水分解することによって製造することができる。
上記含フッ素ポリマーからなる粒子は、平均粒子径が10nm以上であることが好ましい。10nm未満であると、電極材料として使用する場合において、活性点を被覆してしまい良好な電池特性が得られない場合がある。
上記平均粒子径は、上記範囲内であれば、精製含フッ素ポリマー水性分散体の安定性や含フッ素ポリマーの作りやすさという点から、上限を例えば300nmとすることができるが、300nmを超えるものであっても電池特性に大きく影響を与えるものではない。
上記含フッ素ポリマーからなる粒子は、平均粒子径が10〜300nmであるものがより好ましい。平均粒子径の更に好ましい下限は、30nmであり、更に好ましい上限は、160nmである。
上述のアスペクト比と平均粒子径とは、走査型若しくは透過型の電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等で、上記精製含フッ素ポリマー水性分散体をガラス板に塗布したのち水性分散媒を除去して得られた上記含フッ素ポリマーからなる粒子の集合体を観測し、得られた画像上の20個以上の粒子について測定した長軸及び短軸の長さの比(長軸/短軸)を上記アスペクト比、長軸及び短軸の長さの平均値を後述の平均粒子径としてそれぞれ得ることができる。
上記精製含フッ素ポリマー水性分散体は、含フッ素ポリマーからなる粒子のうち、平均粒子径が10nm以上である含フッ素球状粒子を25質量%以上含むものであることが好ましい。
上記精製含フッ素ポリマー水性分散体は、含フッ素ポリマーからなる粒子のうち、平均粒子径が10〜300nmである含フッ素球状粒子を25質量%以上含むものであることがより好ましい。
上記精製含フッ素ポリマー水性分散体は、含フッ素ポリマーからなる粒子のうち、平均粒子径が30〜160nmである含フッ素球状粒子を25質量%以上含むものであることが更に好ましい。
本発明の精製含フッ素ポリマー水性分散体は、上述した製造方法によって得られるものであるため、不純物カチオン、特にアルカリ金属イオンの含有量が充分に低減されたものである。精製含フッ素ポリマー水性分散体に含まれるアルカリ金属イオンは、水性分散体に対して100ppm未満であることが好ましく、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。
本発明の精製含フッ素ポリマー水性分散体は、上記含フッ素ポリマーからなる粒子のほか、必要に応じて、添加剤を添加してなるものであってよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕等のフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート〔PET〕等の熱可塑性樹脂;ポリアミド、ポリイミド等の熱硬化性樹脂;他のイオン交換樹脂等の微粉末;アルミナ、シリカ、ジルコニア、カーボン等の無機材料の微粉末等が挙げられる。
本発明の精製含フッ素ポリマー水性分散体は、必要に応じて上述の水性分散媒とは異なる液状媒体を配合して膜形成用分散体組成物とし、多孔性支持体に含浸させて製膜したり、キャスト製膜したりして、膜形成用途に好適に用いることができる。本発明の精製含フッ素ポリマー水性分散体は、また、必要に応じてポリエチレングリコール等を配合して、厚膜を形成する用途に用いることもできる。
上記液状媒体は、上記含フッ素ポリマーからなる粒子を濡らし得る液体である。上記液状媒体は室温で液体であることが好ましい。
上記液状媒体としては、上記含フッ素ポリマーからなる粒子の良好な分散性が望まれる場合には、例えば、アルコール類;N−メチルピロリドン〔NMP〕等の含窒素溶剤;アセトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;ジグライム、テトラヒドロフラン〔THF〕等の極性エーテル類;ジエチレンカーボネート等の炭酸エステル類;ジメチルスルホキシド〔DMSO〕等のスルホン類等の極性を有する有機溶剤が挙げられ、これらのなかから1種又は2種以上を混合して用いることができる。上記液状媒体は、上述の水性分散媒における水溶性有機溶剤を含み得る概念である。
上記膜形成用分散体組成物は、上記膜形成用分散体組成物の製膜性等の特性を損なわない範囲で、上記精製含フッ素ポリマー水性分散体及び上記液状媒体以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、例えば造膜補助剤、活性物質等が挙げられる。
上記精製含フッ素ポリマー水性分散体又は上記膜形成用分散体組成物は、膜の形成に好適に用いることができる。製膜方法としては特に限定されないが、例えば、キャスト製膜、多孔性支持体に含浸させることによる製膜等を挙げることができる。上記キャスト製膜とは、通常、上記精製含フッ素ポリマー水性分散体又は上記膜形成用分散体組成物をガラス等の基材の表面に塗布し、常温下及び/又は加熱下で乾燥し、必要に応じて水中に浸漬して基材の表面から剥離することにより薄膜を得ることをいう。また、多孔性支持体に含浸させることによる製膜は、上記精製含フッ素ポリマー水性分散体又は上記膜形成用分散体組成物を多孔性支持体に含浸させたのち、液状媒体を除去することにより膜を得ることをいう。液状媒体は、通常、常温下及び/又は加熱下で乾燥することにより除去することができる。
このようにして得られた膜は、固体高分子電解質型燃料電池における活性物質固定体や膜電極接合体に特に好適に用いることができる。
本発明の含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法は、上述の構成を有するので、含フッ素ポリマー水性分散体から不純物カチオン、特にアルカリ金属イオンを効率的に除去することができる。本発明の製造方法によって得られた精製含フッ素ポリマー水性分散体は、膜形成用分散体組成物、膜、活性物質固定体、膜電極接合体及び固体高分子電解質型燃料電池において好適に使用することができる。
図1は、カチオン交換処理における被処理液の25℃における電気伝導度と、得られた精製含フッ素ポリマー水性分散体中のイオン量(カチオン量)との関係を示す図である。横軸にイオン交換前に測定した電気伝導度を、縦軸にイオン交換後の含フッ素ポリマー水性分散体が含むイオン量を記した。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において使用した循環式限外ろ過ユニットとは、ミリポア社製限外ろ過装置であり、分画分子量1万の限外ろ過膜(ミリポア社製 Pelicon2 Filter)を、ミリポア社製ステンレス製ホルダーに挟み込んだものである。含フッ素ポリマー水性分散体を循環式限外ろ過ユニットに供給するにあたっては、送液ポンプ(ミリポア社製easy−load MasterFlex 1/P)を使用した。
以下の実施例および比較例において使用した陽イオン交換樹脂ビーズは、ローム・アンド・ハース社製、アンバーライトIR120Bを塩酸で処理することによって酸型に変換したものである。
以下の実施例および比較例において電気伝導度測定に使用した装置は、堀場製作所社製、Twincond B−173電気伝導度計である。
以下の実施例および比較例において、原子吸光光度法によるナトリウムイオン、カリウムイオン量の測定に用いた装置は、日立製作所製Z8000であり、検出下限は1ppbである。
実施例1
(1)含フッ素ポリマー水性分散体の合成
容積6000mlのステンレス製攪拌式オートクレーブに、CF(CFCONHの20質量%水溶液150gと純水2850gを仕込み、充分に真空、窒素置換を行った。オートクレーブを充分に真空にした後、テトラフルオロエチレン[TFE]ガスをゲージ圧力で0.2MPaまで導入し、50℃まで昇温した。その後、CF=CFOCFCFSOFを180g注入し、TFEガスを導入してゲージ圧力で0.7MPaまで昇圧した。引き続き1.5gの過硫酸アンモニウム[APS]を30gの純水に溶解した水溶液を注入して重合を開始した。
重合により消費されたTFEを補給するため、連続的にTFEを供給してオートクレーブの圧力を0.7MPaに保つようにした。さらに供給したTFEに対して、質量比で0.65倍に相当する量のCF=CFOCFCFSOFを連続的に供給して重合を継続した。
供給したTFEが780gになった時点で、オートクレーブの圧力を開放し、重合を停止した。その後室温まで冷却し、SOFを含む含フッ素ポリマーを約28質量%含有する、やや白濁した含フッ素ポリマー水性分散体4450gを得た。
(2)含フッ素ポリマー水性分散体の加水分解
(1)で得られた含フッ素ポリマー水性分散体3500gに対し、48重量%KOHを650gと純水4500gを加え、80℃で20時間加熱した後に、室温となるまで放冷した。放冷した含フッ素ポリマー水性分散体に、10重量%の硝酸を1400g加え、液のpHが8〜9となるように調整することにより、含フッ素ポリマーを約11質量%含有した含フッ素ポリマー水性分散体10050gを得た。
(3)含フッ素ポリマー水性分散体の精製
(2)のように調整した含フッ素ポリマー水性分散体10050gを、循環型限外ろ過ユニットに供給し、精製した。具体的には、含フッ素ポリマー水性分散体に含まれる低分子量成分を、ろ液として系外に排出し、含フッ素ポリマー成分は循環式限外ろ過ユニットを循環させた。一定時間処理した後、除去された水量に相当する純粋を系内に供給することを繰り返すことにより、精製を行った。精製は、系外に排出されたろ液の25℃における電気伝導度が1μS/cmとなった時点で完了したものとした。
精製が完了した含フッ素ポリマー水性分散体から、循環型限外ろ過ユニットを用いて水分の除去を行い、濃縮された含フッ素ポリマー水性分散体を得た。濃縮が完了した含フッ素ポリマー水性分散体は、含フッ素ポリマーを約25質量%含有する、白濁した含フッ素ポリマー水性分散体4000gとなった。これが含む陽イオン量を原子吸光光度法によって測定したところ、含フッ素ポリマー水性分散体に対してカリウムイオンが13500ppm、ナトリウムイオンが10ppmであった。
(4)含フッ素ポリマー水性分散体の電気伝導度の調整
(3)で精製と濃縮が完了した含フッ素ポリマー水性分散体に、10重量%の硝酸水溶液を30g加えることにより、0.1重量%の硝酸水溶液中に約25重量%の含フッ素ポリマーを含有した含フッ素ポリマー水性分散体4030gとした。この含フッ素ポリマー水性分散体の25℃における電気伝導度を測定したところ、約7mS/cmであった。
(5)含フッ素ポリマー水性分散体のイオン交換
0.1重量%の硝酸水溶液とともに陽イオン交換樹脂ビーズを充填した、直径10cm、高さ50cmのガラスカラムを準備し、これに(4)で電気伝導度を調整した含フッ素ポリマー水性分散体4030gを流通させた。流通速度は、1分間あたり含フッ素ポリマー水性分散体が60g流通する速度で行った。流通させた後には、含フッ素ポリマーを約23%含有した含フッ素ポリマー水性分散体が4300g得られた。得られた含フッ素ポリマー水性分散体の硝酸イオン濃度を硝酸イオンメーターで測定したところ、900ppmであった。
(6)含フッ素ポリマー水性分散体の再精製
イオン交換を行った含フッ素ポリマー水性分散体4300gを循環型限外ろ過ユニットに供給し、精製を行った。具体的には、(4)の工程において含フッ素ポリマー水性分散体に追加した硝酸成分をろ液として系外に排出し、含フッ素ポリマー成分は循環式限外ろ過ユニットを循環させた。一定時間処理した後、除去された水量に相当する純粋を系内に供給することを繰り返すことにより、精製を行った。精製の終点は、25℃におけるろ液の電気伝導度が1μS/cmとなった時点とした。さらに(4)と同様の手順によって含フッ素ポリマー水性分散体を濃縮し、含フッ素ポリマーを約25質量%含有する、白濁した含フッ素ポリマー水性分散体3800gを得た。
含フッ素ポリマー水性分散体が含む陽イオン量を原子吸光光度法によって測定したところ、含フッ素ポリマー水性分散体に対してカリウムイオンが2ppmで、ナトリウムイオンは検出されなかった。含フッ素ポリマー水性分散体の硝酸イオン濃度を硝酸イオンメーターで測定したところ、1ppmであった。
実施例2
(1)含フッ素ポリマー水性分散体の合成
容積6000mlのステンレス製攪拌式オートクレーブに、CF(CFCONHの20質量%水溶液100gと、CF=CFOCFCFSONaを10gと、純水2850gを仕込み、充分に真空、窒素置換を行った。オートクレーブを充分に真空にした後、テトラフルオロエチレン[TFE]ガスをゲージ圧力で0.2MPaまで導入し、50℃まで昇温した。その後、CF=CFOCFCFSOFを180g注入し、TFEガスを導入してゲージ圧力で0.7MPaまで昇圧した。引き続き1.5gの過硫酸アンモニウム[APS]を30gの純水に溶解した水溶液を注入して重合を開始した。
重合により消費されたTFEを補給するため、連続的にTFEを供給してオートクレーブの圧力を0.7MPaに保つようにした。さらに供給したTFEに対して、質量比で0.65倍に相当する量のCF=CFOCFCFSOFを連続的に供給して重合を継続した。
供給したTFEが780gになった時点で、オートクレーブの圧力を開放し、重合を停止した。その後室温まで冷却し、SOFを含む含フッ素ポリマーを約28質量%含有する、やや白濁した含フッ素ポリマー水性分散体4450gを得た。
実施例1の(2)〜(3)と同様の工程を行い、含フッ素ポリマーを約25質量%含有する、限外濾過により精製された含フッ素ポリマー水性分散体4000gを得た。
精製と濃縮が完了した含フッ素ポリマー水性分散体に、30重量%の硝酸水溶液を330g加えることにより、3重量%の硝酸水溶液中に約23重量%の含フッ素ポリマーを含有した含フッ素ポリマー水性分散体4330gとした。この含フッ素ポリマー水性分散体の25℃における電気伝導度を測定したところ、約200mS/cmであった。
実施例1の(5)〜(6)と同様の手順で含フッ素ポリマー水性分散体のイオン交換と再精製を行うことによって、含フッ素ポリマーを約25質量%含有する、白濁した含フッ素ポリマー水性分散体3800gを得た。再精製の終点は、25℃におけるろ液の電気伝導度が1μS/cmとなった時点とした。
含フッ素ポリマー水性分散体が含む陽イオン量を原子吸光光度法によって測定したところ、含フッ素ポリマー水性分散体に対してカリウムイオンが2ppmで、ナトリウムイオンは検出されなかった。得られた含フッ素ポリマー水性分散体の硝酸イオン濃度を硝酸イオンメーターで測定したところ、1ppmであった。
実施例3
実施例1の(1)〜(3)と同様の工程を行い、含フッ素ポリマーを約25質量%含有する、限外濾過により精製された含フッ素ポリマー水性分散体4000gを得た。
精製と濃縮が完了した含フッ素ポリマー水性分散体に、10重量%の硝酸カリウム水溶液を30g加えることにより、0.1重量%の硝酸カリウム水溶液中に約25重量%の含フッ素ポリマーを含有した含フッ素ポリマー水性分散体4030gとした。この含フッ素ポリマー水性分散体の25℃における電気伝導度を測定したところ、約5mS/cmであった。
実施例1の(5)〜(6)と同様の手順で含フッ素ポリマー水性分散体のイオン交換と再精製を行うことによって、含フッ素ポリマーを約25質量%含有する、白濁した含フッ素ポリマー水性分散体3800gを得た。再精製の終点は、25℃におけるろ液の電気伝導度が1μS/cmとなった時点とした。
含フッ素ポリマー水性分散体が含む陽イオン量を原子吸光光度法によって測定したところ、含フッ素ポリマー水性分散体に対してカリウムイオンが2ppmで、ナトリウムイオンは検出されなかった。
実施例4
実施例1の(1)〜(2)と同様の工程を行い、含フッ素ポリマーを約11質量%含有した含フッ素ポリマー水性分散体10050gを得た。
上記のように調整した含フッ素ポリマー水性分散体10050gを、循環型限外ろ過ユニットに供給し、実施例1の(3)と同様の手順で低分子量成分の除去を行った。系外に排出されたろ液の25℃における電気伝導度が3mS/cmとなった時点で純水の追加を停止し、処理液が4000gとなった時点で限外ろ過機を停止させ、含フッ素ポリマー水性分散体4000gを得た。含フッ素ポリマー水性分散体のフッ素イオン濃度をフッ素イオンメーターで測定したところ、700ppmであった。
実施例1の(5)から(6)と同様の手順で含フッ素ポリマー水性分散体のイオン交換と再精製を行うことによって、含フッ素ポリマーを約25質量%含有する、白濁した含フッ素ポリマー水性分散体3800gを得た。再精製の終点は、25℃におけるろ液の電気伝導度が1μS/cmとなった時点とした。
含フッ素ポリマー水性分散体が含む陽イオン量を原子吸光光度法によって測定したところ、含フッ素ポリマー水性分散体に対してカリウムイオンが7ppmで、ナトリウムイオンは検出されなかった。含フッ素ポリマー水性分散体のフッ素イオン濃度をフッ素イオンメーターで測定したところ、1ppmであった。
実施例5
実施例1の(1)〜(2)と同様の工程を行い、含フッ素ポリマーを約11質量%含有した含フッ素ポリマー水性分散体10000gを得た。
上記のように調整した含フッ素ポリマー水性分散体10000gを、循環型限外ろ過ユニットに供給し、実施例1の(3)と同様の手順で低分子量成分の除去を行った。系外に排出された25℃におけるろ液の電気伝導度が1.5mS/cmとなった時点で純水の追加を停止し、処理液が4000gとなった時点で限外ろ過機を停止させ、含フッ素ポリマー水性分散体4000gを得た。含フッ素ポリマー水性分散体のフッ素イオン濃度をフッ素イオンメーターで測定したところ、200ppmであった。
実施例1の(5)から(6)と同様の手順で含フッ素ポリマー水性分散体のイオン交換と再精製を行うことによって、含フッ素ポリマーを約25質量%含有する、白濁した含フッ素ポリマー水性分散体3800gを得た。再精製の終点は、25℃におけるろ液の電気伝導度が1μS/cmとなった時点とした。
含フッ素ポリマー水性分散体が含む陽イオン量を原子吸光光度法によって測定したところ、含フッ素ポリマー水性分散体に対してカリウムイオンが18ppmで、ナトリウムイオンは検出されなかった。含フッ素ポリマー水性分散体のフッ素イオン濃度をフッ素イオンメーターで測定したところ、1ppmであった。
比較例1
実施例1の(1)〜(3)と同様の工程を行い、含フッ素ポリマーを約25質量%含有する、限外濾過により精製された含フッ素ポリマー水性分散体4000gを得た。精製の終点は、25℃におけるろ液の電気伝導度が1μS/cmとなった時点とした。
純水で満たした陽イオン交換樹脂ビーズを充填した、直径10cm、高さ50cmのガラスカラムを準備し、上記で調製した含フッ素ポリマー水性分散体4000gを流通させた。流通速度は、1分間あたり含フッ素ポリマー水性分散体が60g流通する速度で行った。流通させた後には、含フッ素ポリマーを約23%含有した含フッ素ポリマー水性分散体が4300g得られた。
含フッ素ポリマー水性分散体が含む陽イオン量を原子吸光光度法によって測定したところ、含フッ素ポリマー水性分散体に対してカリウムイオンが700ppmで、ナトリウムイオンが5ppmであった。
比較例2
実施例1の(1)〜(2)と同様の工程を行い、含フッ素ポリマーを約11質量%含有した含フッ素ポリマー水性分散体10050gを得た。
上記のように調整した含フッ素ポリマー水性分散体10050gを、循環型限外ろ過ユニットに供給し、実施例1の(3)と同様の手順で低分子量成分の除去を行った。系外に排出された25℃におけるろ液の電気伝導度が10μS/cmとなった時点で純水の追加を停止し、処理液が4000gとなった時点で限外ろ過機を停止させ、含フッ素ポリマー水性分散体4000gを得た。
実施例1の(5)から(6)と同様の手順で含フッ素ポリマー水性分散体のイオン交換と再精製を行うことによって、含フッ素ポリマーを約25質量%含有する、白濁した含フッ素ポリマー水性分散体3800gを得た。再精製の終点は、25℃におけるろ液の電気伝導度が1μS/cmとなった時点とした。
含フッ素ポリマー水性分散体が含む陽イオン量を原子吸光光度法によって測定したところ、含フッ素ポリマー水性分散体に対してカリウムイオンが200ppmで、ナトリウムイオンは検出されなかった。
上記実施例及び比較例について、カチオン交換処理における被処理液の25℃における電気伝導度と、得られた精製含フッ素ポリマー水性分散体中のイオン量(カチオン量)との関係を図1に示した。横軸にイオン交換前に測定した電気伝導度を、縦軸にイオン交換後の含フッ素ポリマー水性分散体が含むイオン量を記した。

Claims (9)

  1. −SOX、−SONR 及び−COOX(Xは、M1/L又はNR を表す。Mは、水素原子又はL価の金属を表し、前記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する含フッ素ポリマーを含む含フッ素ポリマー水性分散体を準備する工程(A)、
    含フッ素ポリマー水性分散体に限外濾過を行う工程(B)、及び、
    工程(B)の後に、含フッ素ポリマー水性分散体とカチオン交換型イオン交換樹脂とを接触させて、精製された含フッ素ポリマー水性分散体を得る工程(C)を含み、
    工程(C)においてカチオン交換型イオン交換樹脂と接触させる含フッ素ポリマー水性分散体の25℃における電気伝導度が1mS/cmより大きい
    ことを特徴とする含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法。
  2. 更に、工程(C)の後に限外濾過を行う工程(D)を含む請求項1記載の含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法。
  3. 工程(C)で得られた、精製された含フッ素ポリマー水性分散体に対するアルカリ金属イオンの含有量が100ppm未満である請求項1又は2記載の含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法。
  4. 含フッ素ポリマーは、下記一般式(I):
    CF=CF−(O)n1−(CFCFY−O)n2−(CFYn3−A (I)
    (式中、Yは、ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基を表す。n1は0又は1の整数を表す。n2は、0〜3の整数を表す。n2個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Yは、ハロゲン原子を表す。n3は、1〜8の整数を表す。n3個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Aは、−SOX、−SONR 又は−COOX(Xは、M1/L又はNR を表す。Mは、水素原子又はL価の金属を表し、前記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。))で表されるフルオロモノマーに由来する構成単位を有する請求項1、2又は3記載の含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法。
  5. 含フッ素ポリマーは、少なくとも1種類以上の、−SO及び−COOR(Yは、ハロゲン原子を表す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する含フッ素ポリマー前駆体を加水分解する工程によって得られた請求項1、2、3又は4記載の含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法。
  6. 含フッ素ポリマーは、前記一般式(I)で表されるフルオロモノマーに由来する構成単位、及び、その他の含フッ素エチレン性単量体に由来する構成単位を有する2元以上の共重合体である請求項4又は5記載の含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法。
  7. 含フッ素エチレン性単量体は、下記一般式(II):
    CF=CF−R (II)
    (式中、R は、フッ素原子、塩素原子、R 又はOR を表す。R は、エーテル結合を有していてもよい炭素数1〜9の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基を表す。)で表される少なくとも1種の単量体である請求項6記載の含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法。
  8. 一般式(II)で表される単量体は、一部又は全部がテトラフルオロエチレンである請求項7記載の含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法。
  9. 一般式(I)におけるYはトリフルオロメチル基であり、Yはフッ素原子であり、n1が1、n2が0又は1、及び、n3が2である請求項4、5、6、7又は8記載の含フッ素ポリマー水性分散体の製造方法。
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