本発明の発明者は、驚くべきことに、マーカータンパク質のFEN1がCOPDの評価に有用であることを証明することができた。肺傷害の、そして特にCOPDの様々な病期を最先端の方法によって分類することの不確実性の故に、タンパク質FEN1は、今後、COPD患者の評価において重要な判定標準の1つになり得るであろう。
本発明の方法は、COPDの評価に適している。正常対照と比較した、試料中のタンパク質FEN1の増加した濃度は、COPDの指標となることが見出された。
1つの態様において、本発明は、a)試料中のタンパク質FEN1の濃度を定量する工程、及びb)工程(a)で定量されたタンパク質FEN1の濃度をタンパク質FEN1の標準濃度と比較する工程を含んでなる、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を被検者において評価するための in vitro 方法に関し、ここで標準濃度より高いタンパク質FEN1の濃度は、COPDの指標となる。
さらなる態様において、本発明は、a)体液試料中のタンパク質FEN1の濃度を定量する工程、及びb)工程(a)で定量されたタンパク質FEN1の濃度をタンパク質FEN1の標準濃度と比較する工程を含んでなる、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を被検者において評価するための in vitro 方法に関し、ここで標準濃度より高いタンパク質FEN1の濃度は、COPDの存在の指標となる。
ASCは、「カスパーゼ関連動員(recruitment)ドメイン含有アポトーシス関連スペック様タンパク質」であり、「メチル化誘導サイレンシングの標的1」(TMS1)(Swiss−PROT:Q9ULZ3)としても知られている。配列番号1で示される配列を特徴とする、本発明の意味でのASCタンパク質は、22kDaのタンパク質である。カスパーゼ関連動員ドメイン(CARD)は、APAF1(アポトーシスプロテアーゼ活性化因子1)のようなアダプタータンパク質とアポトーシスに参画するカスパーゼのプロ酵素(pro-form)(例、CASP9)の間の相互作用に媒介する。ASCは、CARD含有アダプタータンパク質ファミリーの一員ある。WO2006/105252には、ASC(=CARD−9)の遺伝子発現レベルがCOPDの診断の指標となることが示された。
ARMET(変異型初期腫瘍内アルギニンリッチ、ARP、Swiss−PROT ID:P55145)タンパク質の生物学的な役割及び機能は、依然としてほとんどわかっていない。配列番号2で示される配列を特徴とする、本発明の意味でのARMETタンパク質は、20.3kDaのタンパク質である。ARMETタンパク質は、179個のアミノ酸からなり、予測されるシグナル配列(aa1〜21)を担う。対応する遺伝子は、染色体縞3p21.1に位置して、Shridhar, V., et al.,(Oncogene 12 (1996) 1931-1939)によって初めて特性決定された。この遺伝子は、高度に保存されていて、ラット、マウス、ウシ、及びハムスターといった多くの哺乳動物種に見出すことができる。ARMETがそのように命名されたのは、初期の研究により、ARMETがアルギニンリッチ領域を担うN末端で50個のアミノ酸だけより長いことが示唆されたからである(Shridhar, V., et al., Oncogene 12 (1996) 1931-1939; Shridhar, R., et al., Cancer Res. 56 (1996) 5576-5578; Shridhar, V., et al., Oncogene 14 (1997) 2213-2216)。しかしながら、より最近の研究では、このアルギニン域をコードしない、より小さなオープンリーディングフレームの転写証拠が示されている(Tanaka, H., et al., Oncol. Rep. 7 (2000) 591-593; Mizobuchi, N., et al., Cell Struct. Funct. 32 (2007) 41-50)。対応するタンパク質のサイズ補正により、当初記載された変異型コドン(ATG50)は、今日では、開始コドンであると同定されている。Petrova, P., et al.,(J. Mol. Neurosci. 20 (2003) 173-188)は、ラット中脳1型星状細胞系の条件培地よりARMET遺伝子産物を精製して、それをMANF(中脳星状細胞由来神経栄養因子)と命名した。ごく最近の研究では、ARMETが「非折り畳みタンパク質応答」(UPR)(誤って折り畳まれたタンパク質が小胞体(ER)に蓄積すると活性化されるプロセス)によって上方調節されていることが証明された(Tanaka, H., et al., Oncol. Rep. 7 (2000) 591-593; Apostolou, A., et al., Exp. Cell Res. 314 (2008) 2454-2467)。この研究に基づいて、ARMETは、UPRの適応経路の新規分泌メディエーターとして特性決定されている。
配列番号3で示される配列を特徴とする、本発明の意味でのNNMT(ニコチンアミドN−メチルトランスフェラーゼ;Swiss−PROT:P40261)タンパク質は、29.6kDaのタンパク質であって、5.56の等電点を有する。NNMTは、ニコチンアミドと他のピリジン類のN−メチル化を触媒する。この活性は、多くの薬物及び外因性化合物の生体内変化にとって重要である。このタンパク質は、専ら肝臓中で発現されて、細胞質に位置すると報告されてきた。NNMTは、ヒト肝臓に由来して、計算分子量が29.6kDaである264個のアミノ酸タンパク質をコードする792ヌクレオチドのオープンリーディングフレームを含有するcDNAよりクローン化された(Aksoy, S., et al., J. Biol. Chem. 269 (1994) 14835-14840)。この文献では、この酵素のヒトCOPDにおける潜在的な役割についてほとんど知られていない。Am. J. Respir. Crit. Care Med. 181, pp. 798-805 では、COPD患者の骨格筋細胞におけるNNMTのより高いmRNA発現が観測された。ある研究では、NNMTが肺癌(LC)に有用なバイオマーカーであることが示された(J. Cancer Res. Clin. Onc., Vol. 136 (No.9)(2009) 1223-1229)。前記の研究では、NNMTの血清レベルが、LC患者において、COPD患者や健常ドナーにおけるより有意に高いことが見出された。
本発明の意味でのFlapエンドヌクレアーゼ−1タンパク質(=FEN1,FEN−1)、Swiss−PROT ID:P39748は、配列番号4に示す配列を特徴とする、分子量が42.6kDaである380個のアミノ酸の核内タンパク質である。ヒトFEN1のコーディング配列は、1994年に Murray によって新たにクローン化された配列より予測された(Murray, J.M., et al., Mol. Cell. Biol. 14 (1994) 4878-4888)。酵母相同体、rad2の機能に基づいて、高い忠実度の染色体分離とUV誘発性DNA傷害の修復における役割が示唆された。これらが染色体の完全性における基本的なプロセスであるので、著者らは、このタンパク質の癌回避における関与も提起した。後に、ヒトの第11染色体上の遺伝子座が Hiraoka ら(Hiraoka, L.R., et al., Genomics 25 (1995) 220-225)と Taylor ら(Taylor, T.D., et al., Nature 440 (2006) 497-500)によって同定された。FEN1の機能とDNAとのその相互作用は、数多くの研究の焦点になってきた(Robins, P., et al., J. Biol. Chem. 269 (1994) 28535-28538, Shen, B., et al., J. Biol. Chem. 271 (1996) 9173-9176, Hasan, S., et al., Mol. Cell 7 (2001) 1221-1231, Qiu, J., et al., J. Biol. Chem. 277 (2002) 24659-24666 及び Sakurai, S., et al, EMBO J. 24 (2005) 683-693)。DNAポリメラーゼが下流の Okazaki(岡崎)断片の5’端に遭遇するときの置換合成によって産生される5’−張出し(overhanging)フラップ構造を切断するエンドヌクレアーゼ活性を含めて、DNA代謝におけるいくつかの酵素的機能が証明されている。追加的に、FEN1は、ニック又はギャップのある二本鎖DNAに対する5’→3’エクソヌクレアーゼ活性も保有して、RNアーゼH活性を明示する。上記については、Shen ら(Shen, B., et al., BioEssays 27 (2005) 717-729)又は Liu ら(Liu, Y., et al., Annu. Rev. Biochem. 73 (2004) 589-615)によって概説されている。
本発明の意味でのAPエンドヌクレアーゼ(APEX1,APEX−1)(Swiss−Prot.P27695)は、配列番号5に示す配列を特徴とする。そのプロセシング前の前駆体分子は、318個のアミノ酸からなって、35.6kDaの分子量を有する。APEX1は、DNA修復に関与して、DNA鎖の無プリン又は無ピリミジン部位を切除する。このような無塩基部位は、自発的に、又は化学薬剤により、又は特定の異常塩基を除去するDNAグリコシラーゼによって、割と頻繁に産生される。
AP部位は、正常なDNA複製を妨げる可能性がある変異前損傷(pre-mutagenic lesions)であるので、細胞は、そのような部位を同定して修復するためのシステムを含有する(Barzilay, G., and Hickson, I.D., Bioessays 17 (1995) 713-719)。その3次元構造が解明されて、エンドヌクレアーゼ活性に関与するアミノ酸が同定された(Barizilay, G., et al., Nature Structural Biology 2 (1995) 561-567;Gorman, M.A., et al., EMBO Journal 16 (1997) 6548-6558;Beernink, P., et al., J. Mol. Biol. 307 (2001) 1023-1034)。APEX1は、c−Fos、c−Jun、NF−KB、及びHIF−1のような様々な転写因子のレドックス制御因子でもある。この活性は、エンドヌクレアーゼ活性とは無関係であるらしい。両機能は、このタンパク質の異なるドメインに定位されている(Barzilay, G., and Hickson, I.D., Bioessays 17 (1995) 713-719)。プロテインキナーゼCによるAPEX1のリン酸化がレドックス活性を高めるのに対し、非リン酸化型は、DNA修復に関与している(Yacoub, A., et al., Cancer Res. 57 (1997) 5457-5459)。1つのリン酸化部位、Y261(Swissprot配列による)が Rush, J., et al., Nature Biotech 23 (2005) 94-101 によって同定された。
線維芽細胞活性化タンパク質(=FAP)としても知られる、本発明の意味でのセプラーゼは、2つの同一の単量体セプラーゼ単位からなる、ゼラチナーゼ活性とジペプチジルペプチダーゼ活性を有する170kDaの糖タンパク質である(Pineiro-Sanchez, M.L., et al., J. Biol. Chem. 272 (1997) 7595-7601; Park, J.E., et al., J. Biol. Chem. 274 (1999) 36505-36512)。ヒト膜結合型セプラーゼタンパク質の単量体は、760個のアミノ酸を含んで、配列番号6に示される。ヒトのセプラーゼは、その最初のN末端の4残基を線維芽細胞の細胞質の内部に有して、21残基の膜貫通ドメインと、次いで734残基の細胞外C末端触媒ドメインがこれに続くと予測されている(Goldstein, L.A., et al., Biochim. Biophys. Acta. 1361 (1997) 11-19; Scanlan, M.J., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91 (1994) 5657-5661)。ヒトのセプラーゼタンパク質のより短い形態は、Swissprotデータベースのアクセッション番号:Q12884由来の26〜760位のアミノ酸を含んでなる、可溶型セプラーゼ又は循環抗プラスミン切断酵素(=APCE)として当業者に知られている(Lee, K.N., et al., Blood 103 (2004) 3783-3788; Lee, K.N., et al., Blood 107 (2006) 1397-1404)。可溶型セプラーゼの二量体は、2つの同一の単量体可溶型セプラーゼタンパク質単位からなる160kDaの糖タンパク質である。Pineiro-Sanchez et al.(上掲)は、セプラーゼの増加した発現がヒトのメラノーマ細胞及び癌腫細胞の浸潤性表現型と相関することを見出した。Henry, L.R., et al., Clin. Cancer Res. 13 (2007) 1736-1741 は、高レベルの間質性セプラーゼを有するヒトの結腸腫瘍患者は、攻撃的な疾患進行と転移又は再発の潜在的な発現を有する可能性がより高いと記載している。
CD26としても知られる、ヒトのジペプチジルペプチダーゼIV(=DPPIV)は、本発明の意味において、110kDaの細胞表面分子である。ヒトDPPIVタンパク質のアミノ酸配列は、766個のアミノ酸を含んで、配列番号7(Swissprotデータベースアクセッション番号:P27487)に示される。それは、第三位のアミノ酸の位置にプロリン又はアラニンがあるペプチドよりN末端ジペプチドを選択的に除去する、内因性のジペプチジルペプチダーゼIV活性を含有する。それは、様々な細胞外分子と相互作用して、細胞内シグナル伝達カスケードにも関与する。このヒトDPPIVの多機能活性は、細胞種と、タンパク分解酵素としてのその役割に影響を及ぼす細胞内又は細胞外の諸条件(細胞表面受容体、同時刺激性の相互作用タンパク質、及びシグナル伝達メディエーター)に依存する。ヒトDPPIVは、1〜6位アミノ酸の短い細胞質ドメイン、7〜28位アミノ酸の膜貫通ドメイン、及び内因性ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)活性がある29〜766位アミノ酸の細胞外ドメインを有する。ヒトの可溶型ジペプチジルペプチダーゼIV(=可溶型DPPIV)のアミノ酸配列は、Swissprotデータベースのアクセッション番号:P27487由来の29〜766位アミノ酸を含む。可溶型DPPIVの二量体は、2つの同一の単量体可溶型DPPIV単位からなる170kDaの糖タンパク質である。
本発明の意味での「可溶型DPPIV/セプラーゼタンパク質複合体」(=DPPIV/セプラーゼ)は、可溶型DPPIVホモ二量体(170kDa)と可溶型セプラーゼホモ二量体(160kDa)より形成された、分子量330kDaの可溶型複合体である。ある条件の下で、この複合体は、660kDaの分子量を有する、二重複合体を形成する場合がある。
当業者に明らかであるように、本発明が配列番号4の全長タンパク質FEN1に限定されると解釈してはならない。タンパク質FEN1の生理学的又は人工的な断片、タンパク質FEN1の二次修飾体、並びにタンパク質FEN1の対立遺伝子変異体も本発明に含まれる。ポリペプチドの変異体は、同じ遺伝子によってコードされても、例えば、選択的mRNA又はプレmRNAプロセシングの結果として、その等電点(=PI)又は分子量(=MW)、又はその両方が異なる場合がある。変異体のアミノ酸配列は、その対応するマーカー配列に対して95%以上同一である。人工的な断片には、好ましくは、合成的に、又は組換え技術によって産生されるペプチドが含まれて、これは、配列番号4に開示される配列より誘導されるような少なくとも6、7、8、9、又は10個の連続したアミノ酸からなる、診断上興味深い少なくとも1つのエピトープを含む。このような断片は、有利にも、抗体の産生のために、又はイムノアッセイにおける標準品として使用することができる。
先行技術において、タンパク質FEN1の体液中の存在又はレベルに、COPDの評価における診断上の有用性があることは知られていないようである。今回、本発明の発明者は、個体に由来する体液試料より定量されるようなタンパク質FEN1の増加濃度がCOPDの指標となることを見出して、確定することができた。
本発明を実施するには、他に示さなければ、当該分野の技術範囲内にある、分子生物学(組換え技術が含まれる)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の慣用技術を利用する。そのような技術については、Sambrook, et al.「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular クローニング: A Laboratory Manual)」第2版(1989);Gait, M.J.(監修)「オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)」(1984); Freshney, R.I.(監修)「動物細胞の培養(Animal Cell Culture)」(1987);「酵素学の方法(Methods in Enzymology)」アカデミック・プレス社;Ausubel, F.M., et al.(監修)「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(1987)(及び、定期更新版);Mullis, et al.(監修)「PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR: The Polymerase Chain Reaction)」(1994)のような文献において十分説明されている。
他に定義されなければ、本明細書に使用する技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が普通に理解するのと同じ意味を有する。Singleton, et al.「微生物学及び分子生物学辞典(Dictionary of Microbiology and Molecular Biology)」第2版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク州ニューヨーク(1994);March「最新有機化学反応、機序、及び構造(Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure)」第4版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク州ニューヨーク(1992);Lewin, B.「遺伝子V(Genes V)」出版元:オックスフォード大学出版局(1994),ISBN 0-19-854287 9);Kendrew, J., et al.(監修)「分子生物学事典(The Encyclopedia of Molecular Biology)」出版元:ブラックウェル・サイエンス社(1994),ISBN 0-632-02182-9);及び、Meyers, R.A.(監修)「分子生物学とバイオテクノロジー:総合手引書(Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference)」出版元:VCHパブリッシャーズ社(1995), ISBN 1-56081-569 8) は、本出願において使用される用語の多くに対する一般的なガイドを当業者に提供する。
本明細書に使用するように、以下の用語のそれぞれは、本セクションにおいて、それと関連した意味を有する。
冠詞の「a」及び「an」は、本明細書において、その冠詞の文法上の対象の1又は1より多く(即ち、少なくとも1)を意味するために使用される。例を挙げると、「マーカー(a marker)」は、1つのマーカー又は1より多いマーカーを意味する。「少なくとも」という用語は、1つの対象が存在しても、1つより多いさらなる対象が存在してもよいことを示すために使用される。
「1以上」という表現は、1〜50、好ましくは1〜20、また好ましくは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、又は15を示す。
本明細書に使用する「マーカー」又は「生化学マーカー」という用語は、個体の検査試料を分析するための標的として使用される分子を意味する。1つの態様において、そのような分子標的の例は、タンパク質又はポリペプチドである。本発明におけるマーカーとして使用されるタンパク質又はポリペプチドには、前記タンパク質の天然に存在する変異体、並びに前記タンパク質又は前記変異体の断片、特に、免疫学的に検出可能な断片が含まれると考慮される。免疫学的に検出可能な断片は、好ましくは、前記マーカーポリペプチドの少なくとも6、7、8、10、12、15、又は20個の連続アミノ酸を含む。当業者は、細胞によって放出されるか又は細胞外マトリックスに存在するタンパク質が、例えば、炎症の間に損傷され得て、そのような断片へ分解又は切断される可能性があることを理解されよう。ある種のマーカーは、不活性型で合成されて、引き続き、タンパク分解によって活性化される場合がある。当業者が理解されるように、タンパク質又はその断片は、複合体の一部として存在する場合もある。そのような複合体も、本発明の意味でのマーカーとして使用してよい。加えて、又は代替的に、マーカーポリペプチド又はその変異体は、翻訳後修飾を担う場合がある。好ましい翻訳後修飾は、グリコシル化、アシル化、又はリン酸化である。
本明細書に使用する「標識」という用語は、直接的又は間接的な検出によりシグナルを産生することが可能である、あらゆる物質を意味する。
直接的な検出では、本発明における使用に適した標識基又は標識は、限定されないが、色素原、蛍光、化学発光基(例、アクリジニウムエステル類又はジオキセタン類)、電気化学発光化合物、触媒、酵素、酵素基質、色素、蛍光色素(例、フルオレセイン、クマリン、ローダミン、オキサジン、レゾルフィン、シアニン、及びこれらの誘導体)、コロイド状金属及び非金属粒子、並びに有機高分子ラテックス粒子が含まれる、あらゆる既知の検出可能なマーカー基より選択することができる。他の標識基の例は、ルテニウム又はユーロピウム錯体のような蛍光金属錯体、酵素(例えば、ELISAに使用されるような)及び、放射性同位体である。
間接的な検出系は、例えば、検出試薬(例、検出抗体)が生体親和性結合対の第一の相手で標識されることを含む。好適な結合対の例は、ハプテン又は抗原/抗体、ビオチン又はビオチン類似体(アミノビオチン、イミノビオチン、又はデスチオビオチンのような)/アビジン又はストレプトアビジン、糖/レクチン、核酸又は核酸類似体/相補性核酸、及び受容体/リガンド(例、ステロイドホルモン受容体/ステロイドホルモン)である。好ましい第一結合対の成員は、ハプテン、抗原、及びホルモンを含む。特に好ましいのは、ジゴキシン及びビオチンのようなハプテンとその類似体である。そのような結合対の第二の相手(例、抗体、ストレプトアビジン、等)は、通常、例えば、上記に言及したような標識による直接的な検出を可能にするように標識される。
「慢性閉塞性肺疾患について評価する」又は「COPDについて評価する」という用語は、本発明による方法が、単独で、又は他のマーカー又は変数と一緒になって、例えば、COPDの非存在又は存在について医師が確定又は確認するのに役立つことを示すために使用される。この方法は、例えば、COPDの非存在又は存在を確定又は確認するのに有用であろう。
本発明の意味での「COPDのマーカー」とは、単一のマーカーとして、又はマーカーのFEN1と組み合わせた場合に、検討下の問診(diagnostic question)に対してCOPDの評価における関連情報を加えるマーカーである。この情報は、マーカーのFEN1をすでに含んでなるマーカーパネル(マーカーの組合せ)へ前記マーカーを含めることによって、COPDの評価の(所与の特異度での)感度又は(所与の感度での)特異度がそれぞれ改善され得るならば、適切であるか又は付加価値があるとみなされる。好ましくは、感度又は特異度のそれぞれの改善は、p=0.05、0.02、0.01又はそれ未満の有意水準で統計学的に有意である。
本明細書に使用する「試料」又は「検査試料」という用語は、in vitro での評価の目的で個体より入手される生体試料を意味する。本発明の方法において、試料又は患者試料は、本発明のある態様では、どの体液も含んでよい。好ましい試料は、血清、血漿、又は全血のような体液であって、血清又は血漿が最も好ましい。
タンパク質FEN1、特にタンパク質FEN1の可溶型は、適正な試料において in vitro で定量する。好ましくは、試料は、ヒト被検者、例えば、COPD患者、又はCOPDのリスク状態の人、又はCOPDを有することが疑われる人に由来する。また、タンパク質FEN1は、血清又は血漿試料において定量されることが好ましい。
本明細書に使用する「標準試料」という用語は、in vitro での評価の目的で、見かけ上健常な個体の標準群より提供される生体試料を意味する。本明細書に使用する「標準濃度」という用語は、見かけ上健常な個体の標準群において確定された数値を意味する。
当業者には、本発明の方法(複数)による工程(a)の測定結果を標準濃度へ比較することが知られている。このような標準濃度は、陰性標準試料、陽性標準試料、又は上記種の対照の1つ又は1より多くを含んでなる混合標準試料を使用して定量することができる。陰性標準試料は、好ましくは、非喫煙者、COPD、喘息、又はその様々な組合せの診断がない対照喫煙者由来の試料を含む。陽性標準試料は、好ましくは、COPDの診断がある被検者由来の試料を含む。
「定量した濃度を標準濃度と比較する」という表現は、当業者にとにかく明白であることをさらに例解するために単に使用する。対照試料において標準濃度を確定する。対照試料は、内部又は外部の対照試料であり得る。1つの態様では、内部対照試料を使用する。即ち、前記マーカー(複数)のレベル(複数)に変化があるかどうかを決定するために、検査試料においてだけでなく、同じ被検者より採取した1以上の他の試料(複数)においてもマーカーレベル(複数)について評価する。別の態様では、外部対照試料を使用する。外部対照試料では、個体に由来する試料中のマーカーの存在又は量を、所与の状態に罹患していることが知られているか又はそのリスク状態にあることが知られている個体;又は所与の状態がないことが知られている個体、即ち「正常個体」中の存在又は量と比較する。例えば、患者試料中のマーカーレベルを、COPDの特定経過と関連することが知られているレベルへ比較することができる。通常、試料のマーカーレベルは、診断と直接的又は間接的に相関して、マーカーレベルは、例えば、個体がCOPDのリスク状態にあるかどうかを判定するために使用される。あるいは、試料のマーカーレベルは、例えば、COPD患者における療法への応答、COPDの診断、疾患進行のリスクの判断、又はCOPD患者のフォローアップにおいて、COPDに対する適正な薬物を選択するための手引きに関連することが知られているマーカーレベルへ比較することができる。企図される診断使用に依拠して、適正な対照試料を選択して、そのマーカーのそこでの対照値又は標準値を確定する。当業者には、1つの態様におけるそのような対照試料が、同年齢であって併存疾患がない標準集団より入手されることが理解されよう。また当業者に明らかであるように、対照試料において確定される絶対的なマーカー値は、使用するアッセイに依存するものである。好ましくは、対照(標準)値を確定するには、適正な標準集団からの100名の十分に特性決定された個体由来の試料を使用する。また、標準集団は、20、30、50、200、500、又は1000名の個体からなるように選択され得ることが好ましい。健常個体は、対照値を確定するのに好ましい標準集団を代表する。
「測定」、「測定すること」又は「定量すること」という用語は、好ましくは、定性的、半定量的、又は定量的な測定を含む。本発明では、タンパク質FEN1を体液試料において測定する。好ましい態様において、測定は、半定量的な測定である。即ち、タンパク質FEN1の濃度がカットオフ値の上にあるか又は下にあるかが判定される。当業者が理解するように、有り(Yes)(存在)又は無し(No)(非存在)のアッセイにおいて、アッセイ感度は、通常、カットオフ値に適合する(match)ように設定される。
対照群又は対照集団において定量されるようなタンパク質FEN1の数値は、例えば、カットオフ値又は標準範囲を確定するために使用される。そのようなカットオフ値より高いか又は標準範囲のより高値の外側にある数値は、COPDの存在のために上昇しているか又はその指標になるとみなされる。
ある態様では、一定のカットオフ値を確定する。そのようなカットフ値は、対象となる問診に適合するように選択される。
ある態様では、90%の特異度をもたらすようにカットオフを設定し、また好ましくは、95%の特異度をもたらすようにカットオフを設定し、また好ましくは、98%の特異度をもたらすようにカットオフを設定する。
ある態様では、90%の感度をもたらすようにカットオフを設定し、また好ましくは、95%の感度をもたらすようにカットオフを設定し、また好ましくは、98%の感度をもたらすようにカットオフを設定する。
1つの態様では、対照群又は対照集団において定量されるようなタンパク質FEN1の数値を使用して、標準範囲を確定する。好ましい態様では、タンパク質FEN1の濃度が標準範囲の90%パーセンタイルより上にあれば、その定量値は、上昇しているとみなされる。さらに好ましい態様では、タンパク質FEN1の濃度が標準範囲の95%パーセンタイル、96%パーセンタイル、97%パーセンタイル、又は97.5%パーセンタイルより上にあれば、その定量値は、上昇しているとみなされる。
カットオフ値の上の数値は、例えば、COPDの存在の指標になり得る。カットオフ値の下の数値は、例えば、COPDの非存在の指標になり得る。
さらに好ましい態様において、タンパク質FEN1の測定は、定量的な測定である。さらなる態様において、タンパク質FEN1の濃度は、根本的な問診に相関している。
ある設定においてすでにCOPDが確認された患者より提供される試料は、陽性対照試料として使用し得て、好ましくは、検討される試料と並行してアッセイされ得る。このような設定において、陽性対照試料中のマーカータンパク質FEN1の陽性結果は、この検査手順がその技術レベルで行われたことを示す。
当業者が理解するように、どのそのような評価も、in vitro でなされる。試料(検査試料)は、その後、処分される。試料は、本発明の in vitro 診断方法のためにのみ使用されて、試料の成分は、患者の体内へ戻されない。典型的には、試料は、体液試料、例えば、血清、血漿、又は全血である。
本発明による方法は、個体より得られる液体又は体液試料と、そのような試料中のタンパク質FEN1の in vitro 定量に基づく。本明細書に使用する「個体」は、単一のヒト又は非ヒト生物を意味する。従って、本明細書に記載の方法及び組成物は、ヒト疾患と獣医学的疾患の両方に適用可能である。好ましくは、個体、被検者、又は患者は、ヒトである。
好ましくは、マーカータンパク質FEN1は、液体試料より、特異結合剤の使用によって、in vitro で特異的に定量される。
本発明による好ましい態様では、タンパク質FEN1の濃度が定量される。ある態様では、マーカータンパク質FEN1の濃度が、試料より、特異結合剤の使用によって、in vitro で特異的に定量される。
特異結合剤は、例えば、タンパク質FEN1の受容体、タンパク質FEN1へ結合するレクチン、タンパク質FEN1に対する抗体、タンパク質FEN1に対するペプチドボディ、二重特異性デュアル結合剤又は二重特異性抗体フォーマットである。特異結合剤は、その対応する標的分子に対して少なくとも107l/モルの親和性を有する。特異結合剤は、その標的分子に対して、好ましくは108l/モル、また好ましくは109l/モルの親和性を有する。
当業者が理解するように、「特異的」という用語は、試料中に存在する他の生体分子が、配列番号4のタンパク質FEN1配列に特異的な結合剤へ有意には結合しないことを示すために使用される。好ましくは、標的分子以外の生体分子へ結合するレベルは、標的分子に対する親和性の最大でもほんの10%以下、ほんの5%以下、ほんの2%以下、又はほんの1%以下である結合親和性をもたらす。好ましい特異結合剤は、親和性並びに特異性についての上記の最低基準を共に満たすものである。
特異結合剤の例は、ペプチド、ペプチド模倣体、アプタマー、シュピーゲルマー(spiegelmers)、ダルピン(darpins)、アンキリン反復タンパク質、クニッツ(Kunitz)型ドメイン、抗体、単一ドメイン抗体(Hey, T., et al., Trends Biotechnol 23 (2005) 514-522 を参照のこと)、及び抗体の一価断片である。
ある好ましい態様において、特異結合剤は、ポリペプチドである。
ある好ましい態様において、特異結合剤は、抗体又は一価抗体断片、好ましくは、モノクローナル抗体に由来する一価断片である。
一価抗体断片には、限定されないが、下記に提供されるような、Fab、Fab’−SH、単一ドメイン抗体、Fv、及びscFv断片が含まれる。
本明細書の「抗体」という用語は、最も広義で使用されて、具体的には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクト抗体より生成される多重特異性抗体(例、二重特異性抗体)、及び抗体断片(それらが所望される生物活性を明示する限りにおいて)が含まれる。ある好ましい態様において、特異結合剤は、抗体又は一価抗体断片、好ましくは、モノクローナル抗体に由来する一価断片である。
「単離」抗体は、その本来の環境の成分より同定及び分離された、及び/又は回収された抗体である。その本来の環境の混在成分は、該抗体の研究、診断、又は療法上の使用に干渉するはずの物質であって、酵素、ホルモン、及び他のタンパク性又は非タンパク性の溶質を含めてよい。いくつかの態様では、抗体を(1)例えば、ローリー法によって定量されるような抗体の95重量%より高くまで、そしていくつかの態様では、99重量%より高くまで;(2)例えば、スピニングカップ配列決定装置の使用により、少なくとも15残基のN末端又は内部アミノ酸配列を得るのに十分な度合いまで、又は(3)例えば、クマシーブルー染色又は銀染色を使用する還元又は非還元条件下でのSDS−PAGEによる均質性まで精製する。単離抗体には、その抗体の本来環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、組換え細胞内の in situ 抗体が含まれる。しかしながら、通常、単離抗体は、少なくとも1回の精製工程によって製造される。
「ネイティブ抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。それぞれの軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖へ連結しているが、ジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間で変動する。それぞれの重鎖と軽鎖にも、一定間隔の鎖内ジスルフィド架橋がある。それぞれの重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を有して、いくつかの定常ドメインがそれに続く。それぞれの軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を有して、その他端に定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第一定常ドメインと並置して、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと並置している。特別なアミノ酸残基が軽鎖及び重鎖の可変ドメインの間のインターフェイスを形成すると考えられている。
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインに関連する。重鎖の可変ドメインは、「VH」と呼ばれる場合がある。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と呼ばれる場合がある。一般に、これらのドメインは、抗体の最も変化する部分であって、抗原結合部位を含有する。
「可変」という用語は、可変ドメインのある部分が配列において抗体間で広汎に異なって、それぞれの特別な抗体のその特別な抗原への結合と特異性において使用されるという事実に関連する。しかしながら、この可変性は、抗体の可変ドメイン全体で均等に分布しているわけではない。それは、軽鎖と重鎖の両方の可変ドメインにおいて超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。ネイティブな重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ4つのFR領域(主にβシート配置を採って、3つのHVRによって連結している)を含み、このβシート構造を連結して、ある場合はその構造の一部となるループを形成する。各鎖中のHVRは、FR領域によってごく近接して一緒になって、他の鎖由来のHVRと一緒に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.「免疫学的に興味深いタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」第5版、米国立衛生研究所、メリーランド州ベセスダ(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接的には関与しないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の参画のような、様々なエフェクター機能を明示する。
抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、どの脊椎動物種に由来しても、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる、2つの明瞭に別々の種類のうち1つへ帰属させることができる。
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依拠して、抗体(免疫グロブリン)を異なるグラスへ帰属させることができる。免疫グロブリンには5種の主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあって、このいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2へさらに分類することができる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元配置についてはよく知られていて、例えば、Abbas et al.「細胞及び分子免疫学(Celluular and Mol. Immunology)」第4版、W. B. Saunders 社(2000)に一般的に記載されている。抗体は、1以上の他のタンパク質又はペプチドと該抗体の共有結合的又は非共有結合的な会合によって形成される、より大きな融合分子の一部であってよい。
「全長抗体」、「インタクト抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書において可換的に使用されて、下記に定義されるような抗体断片ではなくて、その実質的にインタクトな形態での抗体を意味する。この用語は、特に、Fc領域を含有する重鎖がある抗体に言及する。
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部を含み、好ましくは、その抗原結合領域を含んでなる。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;二重特異性抗体;線状抗体;単鎖抗体分子;及び抗体断片より形成される多重特異性抗体が含まれる。
抗体のパパイン消化は、それぞれに単一の抗原結合部位がある、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、残余の「Fc」断片(この名称は、容易に結晶するその能力を反映する)を産生する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有して、依然として抗原と交差結合することが可能であるF(ab’)2断片を生じる。
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。1つの態様では、2本鎖Fv種が、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインが緊密に非共有結合的に会合した二量体からなる。単鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインが、この軽鎖と重鎖が2本鎖Fv種におけるそれに類似した「二量体」構造で会合し得るように、柔軟なペプチドリンカーによって共有結合的に連結され得る。それぞれの可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH−VL二量体の表面に抗原結合部位を規定するのは、この配置においてである。集合的に、この6つのHVRは、抗体へ抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つだけのHVRを含んでなる、Fvの半分)でも、完全な結合部位より低い親和性であっても、抗原を認識して結合する能力を有する。
Fab断片は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインを含有して、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1以上のシステインが含まれる重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端の数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’−SHは、本明細書において、定常ドメインのシステイン残基(複数)がフリーチオール基を担うFab’の表記である。F(ab’)2抗体断片は、元来、その間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的カップリングについても知られている。
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVHドメインとVLドメインを含み、ここでこれらのドメインは、単一のポリペプチド鎖で存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それによりscFvが抗原結合に望まれる構造を形成することが可能になる。scFvの概説については、例えば、「モノクローナル抗体の薬理学(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies)」第113巻、Rosenburg and Moore (監修)、Springer-Verlag, ニューヨーク (1994)中の Plueckthun の概説(269-315頁)を参照のこと。
「二重特異性抗体」という用語は、2つの抗原結合部位がある抗体断片を意味し、この断片は、同一のポリペプチド鎖(VH−VL)において軽鎖可変ドメイン(VL)へ連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同一の鎖上の2つのドメインの間での対合を可能にするにはあまりに短いリンカーを使用することによって、このドメインは、無理やり別の鎖の相補性ドメインと対合して、2つの抗原結合部位を創出する。二重特異性抗体は、二価又は二重特異性であり得る。二重特異性抗体については、例えば、EP0404097;WO1993/01161;Hudson, P.J. et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134; 及び Holliger, P. et al., PNAS USA 90 (1993) 6444-6448 により詳しく記載されている。Hudson, P.J. et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134 には、三重特異性抗体(triabodies)と四重特異性抗体(tetrabodies)についても記載されている。
本明細書に使用する「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団より入手される抗体を意味する。即ち、この集団を含んでなる個別の抗体は、微量で存在し得る、可能な突然変異体(例、天然に存在する突然変異体)を除けば、同一である。このように、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという、抗体の特徴を示す。ある態様において、そのようなモノクローナル抗体には、典型的には、標的へ結合するポリペプチド配列を含んでなる抗体が含まれて、ここで標的結合性のポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一の標的結合性ポリペプチド配列の選択が含まれる方法によって入手された。例えば、この選択方法は、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、又は組換えDNAクローンのプールのような、複数のクローンからのユニーククローンの選択であり得る。選択された標的結合配列を、例えば、標的への親和性を高める、標的結合配列をヒト化する、細胞培養におけるその産生を向上させる、その in vivo 免疫原性を低下させる、多重特異性抗体を創出する、等のようにさらに改変することができること、そしてこの改変された標的結合配列を含んでなる抗体も本発明のモノクローナル抗体であることが理解されるべきである。異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体が典型的には含まれるポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。その特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には他の免疫グロブリンがそれらに非混在である点で有利である。
特異結合剤は、好ましくは、配列番号4と反応性の抗体である。
本発明に開示されるような達成のために、様々な供給源からの抗体を使用してよい。抗体を入手するための標準プロトコールは、最新の代替法としても使用してよい。抗体の産生の代替法は、中でも、免疫化のために臨床上重要なFEN1のエピトープを代表する、合成又は組換えペプチドの使用を含む。あるいは、DNAワクチン接種としても知られるDNA免疫化を使用してよい。明らかに、異なる種、例えば、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ラット、又はモルモット由来のモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を使用することができる。モノクローナル抗体は、一定の特性を伴って求められる任意の量で産生することができるので、それらは、臨床ルーチン用のアッセイの開発において理想的なツールとなる。
今や当業者が理解するように、タンパク質FEN1は、COPDの評価に有用であるマーカーとして同定された。様々な免疫診断手順を使用して、本発明の達成事項に匹敵するデータに到達することができる。
タンパク質FEN1の定量には、個体より入手される試料を、結合剤−FEN1複合体の形成に適した条件の下で、FEN1の特異結合剤とともに in vitro でインキュベートする。そのような条件については、当業者ならば創意に富む努力をせずにそのような適正なインキュベーション条件を容易に同定することができるので、特定する必要はない。結合剤−FEN1複合体の量を定量して、COPDの評価に使用する。当業者が理解するように、特異結合剤−FEN1複合体の量を定量するための数多くの方法があって、いずれも関連教科書に詳しく記載されている(例えば、Tijssen, P., 上掲、又は Diamandis, E.P., and Christopoulos, T.K.(監修)「イムノアッセイ(Immunoassay)」アカデミック・プレス、ボストン(1996)を参照のこと)。
イムノアッセイについては、当業者によく知られている。このようなアッセイを行うための方法、並びに実地の応用及び手順については、関連教科書に要約されている。関連教科書の例は、Burdon, R.H., and v. Knippenberg, P.H.(監修)、「酵素イムノアッセイの実践及び理論(Practice and theory of enzyme immunoassays)」、エルセヴィエ、アムステルダム(1990)中221-278頁、Tijssen, P.「酵素−抗体又は他の酵素−巨大分子コンジュゲートの調製(Preparation of enzyme-antibody or other enzyme-macromolecule conjugates)」と、免疫学的な検出法を扱っている、Colowick, S.P., and Caplan, N.O.(監修)「酵素学の方法(Methods in Enzymology)」アカデミック・プレスの様々な巻、特に、70、73、74、84、92、及び121巻である。
本発明はまた、ある態様において、タンパク質FEN1へ特異的に結合する抗体の、本発明による方法における使用に関する。
1つの態様では、本発明による方法において、タンパク質FEN1をイムノアッセイ手順で測定する。
さらなる態様では、タンパク質FEN1を酵素結合イムノアッセイ(ELISA)において検出する。
さらなる態様では、タンパク質FEN1をサンドイッチアッセイ(サンドイッチ型のアッセイ形式)で検出する。そのようなアッセイでは、第一の特異結合剤を使用してタンパク質FEN1を一方で捕捉して、直接的又は間接的に検出可能であるように標識された第二の特異結合剤を他方で使用する。サンドイッチ型アッセイ形式において使用される特異結合剤は、タンパク質FEN1に対して特異的に指向された抗体であり得る。一方では、検出は、異なる捕捉抗体及び標識抗体(即ち、FEN1ポリペプチド上の異なるエピトープを認識する抗体)を使用することによって行うことができる。他方では、サンドイッチ型アッセイは、タンパク質FEN1の同一エピトープに対して指向される捕捉及び標識抗体でも行ってよい。この態様では、タンパク質FEN1の二量体又は多量体の形態だけが検出され得る。ある態様では、タンパク質FEN1への抗体を定性的(FEN1が存在又は非存在であるか)又は定量的(FEN1の量を定量する)イムノアッセイに使用する。
さらなる態様において、本発明による方法は、FEN1の測定に基づき、ここでFEN1の前記測定は、少なくとも2種の非重複エピトープと反応性の少なくとも2種の抗体を利用するサンドイッチイムノアッセイで実施する。
さらなる態様では、タンパク質FEN1を競合アッセイにおいて検出する。そのようなアッセイ形式では、配列番号4のFEN1へ特異的に結合する結合剤を使用する。混合物中で、該混合物へ加えた標識FEN1と、試料に含まれるFEN1が、特異結合剤への結合について競合する。標準手順に従って、そのような競合の程度を測定することができる。
検査試料中のタンパク質FEN1の濃度は、上記にすでに記載したような、特異的ELISAを使用して、in vitro で定量することができる。このアッセイ形式を使用して、本発明者は、典型的な方法(例、スパイロメトリー)によってCOPDを有するとすでに診断された患者由来の試料を見かけ上健常な個体由来の試料から識別することが可能であることを示した。本出願の実施例のセクションにおいて結果を示す。
本発明の発明者は、驚くべきことに、タンパク質FEN1を体液試料中で検出することができる。なおより驚くべきことに、彼らは、個体より入手されるそのような液体試料中のタンパク質FEN1の存在がCOPDに相関する可能性があることを証明することができる。COPDの評価においてマーカーFEN1を利用するのに、組織試料も生検試料も必要とされない。簡便な体液試料(例えば、その少量のアリコート)中のタンパク質FEN1のレベルを測定することは、COPDの分野においてきわめて有利であるとみなされる。
好ましい態様において、本発明による方法は、血清を試料材料として実施される。さらに好ましい態様において、本発明による方法は、血漿を試料材料として実施される。さらに好ましい態様において、本発明による方法は、全血を試料材料として実施される。
さらに好ましい態様において、本発明は、個体より入手される液体試料からのCOPDの in vitro 評価におけるマーカー分子としてのタンパク質FEN1の使用に関する。
理想的な診断のシナリオは、例えば、感染症におけるように、単一の事象又はプロセスがそれぞれの疾患を引き起こすという状況であろう。他のすべての症例において、正確な診断は、特に、疾患の病因が(COPDの症例のように)完全には理解されていない場合、きわめて困難になり得る。当業者が理解するように、例えば、COPDの場合のような所与の多因子疾患について100%の特異度と同時に100%の感度で診断し得る生化学マーカーは、1つもない。むしろ、生化学マーカーが使用されるのは、根本的な問診(例、疾患の存在、非存在、又は重症度)について、ある種の尤度又は予測値で評価するためである。故に、ルーチンの臨床診断では、一般に、基礎疾患の評価において、様々な臨床症状と生体マーカーが一緒に考慮される。当業者は、評価すべき問診についての相対リスク又は尤度を計算するために定型的に使用される数学/統計学の手法に知悉している。ルーチンの臨床業務では、一般に、基礎疾患の診断、治療、及び管理において、様々な臨床症状と生体マーカーが医師によって一緒に考慮されるものである。
COPD患者は、慣例上、気管支拡張剤又はステロイド類で治療されて、気流閉塞の可逆性をスパイロメトリーによって検査される。可逆性が15%未満であれば、そして特に、彼らが長い喫煙歴を有していれば、彼らは、COPD患者として分類されるはずである。
ATS(米国胸部疾患学会)のCOPD診断の判定基準は、以下の通りである:
・FEV1/FVC比<0.7
・FEV1<70%予測値、吸入型B2アゴニストに対する可逆性<15%
・2週間の経口プレドニゾロン試験投与でも15%未満のFEV1可逆性
・喫煙歴。
FEV1は、最大吸入の位置から始めて、被検者が最大の努力をして1秒間で肺より呼出される空気の量である。FEV1%は、努力肺活量(FVC)の百分率として表されるFEV1である。FVCは、最大吸入の位置から被検者が最大の努力をして肺より呼出される空気の全量である。FEV1は、最初の1秒の呼気において呼出される空気の量を測定するスパイロメーターを使用して測定し得る。
ATS(米国胸部疾患学会)/欧州呼吸器学会(2004)によるCOPDのスパイロメーター分類を表1に示す。ATS COPD病期0は、現在では、もはやATS分類体系に使用されていない。
表1:
COPDの評価において、マーカータンパク質FEN1は、以下の側面の1以上において有利であろう:評価;スクリーニング;疾患の病期判定(staging);疾患進行のモニタリング;予後判定;療法のガイダンスと療法への応答のモニタリング。
COPDを有することが疑われるか又は知られている個体について評価する場合に好ましい診断関連の分野は、スクリーニング、疾患の病期判定、疾患進行のモニタリング、及び療法への応答のモニタリングである。
スクリーニング(個体がCOPDを発症するリスク状態にあるか又はCOPDを有するかどうかの評価):
スクリーニングは、疾患の指標(例えば、COPDの存在)に関して個体(例えば、リスク状態の個体)を同定するために検査を体系的に適用することと定義される。好ましくは、スクリーニング集団は、COPDの平均リスクより高い状態にあることが知られている個体からなる。例えば、COPDのスクリーニング集団は、喫煙者又は元喫煙者のような、COPDの平均リスクより高い状態にあることが知られている個体からなる。
本発明の意味でのスクリーニングは、COPDを発症するリスクについての、個体の不偏評価に関する。ある態様では、本発明による方法をスクリーニング目的に使用する。即ち、それを使用して、a)試料中のタンパク質FEN1の濃度を in vitro で定量する工程、及びb)工程(a)で定量されたタンパク質FEN1の濃度をタンパク質FEN1の標準濃度と比較する工程によって、COPDの事前診断がない被検者について評価する。ここで標準濃度より高いタンパク質FEN1の濃度は、COPDの存在の指標となる。ある態様では、血液、血清、又は血漿のような体液試料をCOPDのスクリーニングにおける試料として使用する。
タンパク質FEN1の測定は、COPDを有することが疑われる個体におけるCOPDの存在又は非存在について医師が評価するのに役立つだろう。
ある態様において、本発明は、a)試料中のタンパク質FEN1の濃度を定量する工程、及びb)工程(a)で定量されたタンパク質FEN1の濃度をタンパク質FEN1の標準濃度と比較する工程を含んでなる、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の被検者における存在又は非存在について評価するための in vitro 方法に関し、ここで標準濃度より高いタンパク質FEN1の濃度は、COPDの存在の指標となる。好ましい態様において、試料は、体液試料である。さらに好ましい態様において、試料は、血清、血漿、及び全血からなる群より選択される。
ある態様において、本発明は、a)試料中のタンパク質FEN1の濃度を定量する工程、b)工程(a)で定量されたタンパク質FEN1の濃度をタンパク質FEN1の標準濃度と比較する工程、及びc)工程(b)の比較に基づいて、COPDの存在又は非存在について評価する工程を含んでなる、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の被検者における存在又は非存在について評価するための in vitro 方法に関し、ここで標準濃度より高いタンパク質FEN1の濃度は、COPDの存在の指標となる。好ましい態様において、試料は、体液試料である。さらに好ましい態様において、試料は、血清、血漿、及び全血からなる群より選択される。
ある態様において、本発明は、COPDの存在又は非存在について被検者を評価する in vitro 方法に関し、該方法は、a)試料中のタンパク質FEN1の濃度を定量する工程、及びb)工程(a)で定量されたタンパク質FEN1の濃度を標準集団において確定されたタンパク質FEN1のカットオフ値と比較する工程を含んでなり、ここでカットオフ値より高いタンパク質FEN1の濃度は、COPDの存在の指標となる。ある態様において、本発明は、COPDの存在又は非存在について被検者を評価する in vitro 方法に関し、該方法は、a)試料中のタンパク質FEN1の濃度を定量する工程、及びb)工程(a)で定量されたタンパク質FEN1の濃度を標準集団において確定されたタンパク質FEN1のカットオフ値と比較する工程を含んでなり、ここでカットオフ値より低いタンパク質FEN1の濃度は、COPDの非存在の指標となる。
ある態様において、本発明は、COPDの評価におけるタンパク質FEN1の使用に関する。好ましくは、COPDの存在又は非存在の評価においてタンパク質FEN1を使用する。
さらなる態様において、本発明は、試料中でのCOPDの in vitro 評価におけるタンパク質FEN1の使用に関し、ここでタンパク質FEN1の標準濃度より高いタンパク質FEN1の濃度は、COPDの指標となる。
好ましい態様において、この使用による試料は、体液試料である。さらに好ましい態様において、この使用による前記体液試料は、血清、血漿、及び全血からなる群より選択される。
さらなる態様において、本発明は、体液試料中でのCOPDのin vitro 評価におけるタンパク質FEN1の使用に関し、ここでタンパク質FEN1についての体液試料中の標準濃度より高いタンパク質FEN1の濃度は、COPDの存在の指標となる。
さらなる態様において、本発明は、血清、血漿、又は全血試料中でのCOPDの in vitro 評価におけるタンパク質FEN1の使用に関し、ここでタンパク質FEN1についての血清、血漿、及び全血試料中の標準濃度より高いタンパク質FEN1の濃度は、COPDの存在の指標となる。
本発明の1つの態様は、おそらくはCOPDがない個体とおそらくはCOPDを有する個体を識別するための集団のスクリーニングに関連する。次いで、後者の個体群は、さらなる診断手順(例えば、肺機能検査、スパイロメトリー、又は他の好適な手段)へ処される場合がある。
ある態様において、本発明による in vitro 方法は、タンパク質FEN1の評価を行うのが、臨床方針の決定(特にCOPDの治療又は療法用医薬品によるさらなる治療)と気道及び肺の感染/炎症性疾患の治療又は療法、並びに抗生物質治療又は治療用抗体治療の療法制御のために、COPDを有するリスク状態に従って患者を分類するためであることを特徴とする。
ある態様において、本発明は、a)試料中のタンパク質FEN1の濃度を定量する工程、及びb)工程(a)で定量されたタンパク質FEN1の濃度をタンパク質FEN1の標準濃度と比較することによって、個体がCOPDを発症するリスクについて評価する工程を含んでなる、前記個体がCOPDを発症するリスク状態にあるかどうかについて評価するための in vitro 方法に関し、ここで標準濃度より高いタンパク質FEN1の濃度は、個体がCOPDを発症するリスク状態にあることの指標となる。
ある態様において、本発明は、a)体液試料中のタンパク質FEN1の濃度を定量する工程、及びb)工程(a)で定量されたタンパク質FEN1の濃度をタンパク質FEN1の標準濃度と比較することによって、個体がCOPDを発症するリスクについて評価する工程を含んでなる、前記個体がCOPDを発症するリスク状態にあるかどうかについて評価するための in vitro 方法に関し、ここで標準濃度より高いタンパク質FEN1の濃度は、個体がCOPDを発症するリスク状態にあることの指標となる。好ましい態様において、体液試料は、血清、血漿、及び全血からなる群より選択される。
予後判定
ある尤度で疾患アウトカムを予測する予後指標をCOPD患者の臨床、病理学、又は生化学上の特徴として明確化することができる。その主たる使用は、患者管理を合理的に計画すること、即ち、攻撃的な疾患への不十分な治療と無痛性の疾患への過剰治療をそれぞれ回避することの助けになることである。
タンパク質FEN1のレベルは、単独で、COPD患者を健常対照又は他の肺疾患(例、喘息、気管支炎、肺線維症、及び結核)と区別すること、好ましくはCOPDを喘息と区別することに有意に貢献するので、それは、COPDに罹患している患者の予後について評価することに役立つと予測されるはずである。タンパク質FEN1の濃度は、九分通り、肺機能検査又はスパイロメトリーの結果と組み合わされる。
COPDの喘息との区別
さらなる態様では、本発明による方法を使用して、COPDを他の種類の肺疾患、好ましくは喘息と区別する。
タンパク質FEN1を使用して、COPDを他の種類の肺疾患、例えば、喘息、気管支炎、肺線維症、及び結核と区別する(好ましくは、COPDを喘息と区別する)ことも好ましい。驚くべきことに、本発明者は、COPD特異マーカー、好ましくはFEN1と、CRP、インターロイキン−6、血清アミロイドA、S100、及びE−セレクチンからなる群より選択される炎症マーカーのマーカー組合せの使用により、COPDと他の炎症性肺疾患(例、喘息、肺の急性又は慢性炎症)のそれぞれとの間の区別をもたらすことが可能であることを見出した。タンパク質FEN1とタンパク質CRPについての実験結果を実施例のセクションに示す。
疾患進行のモニタリング
現行では、COPDと診断された患者が多かれ少なかれ安定した状態を保つのかどうか、又はその疾患が進行するのかどうかを妥当な尤度で予測することは、きわめて困難である。
疾患の(即ち、COPDの)進行については、検査試料中のタンパク質FEN1の濃度の in vitro モニタリングによって、特に、1以上の連続した試料を採取することによって評価することができる。ある態様において、本発明は、COPDを罹患している患者において疾患進行をモニターするための in vitro 方法に関し、該方法は、a)試料中のタンパク質FEN1の濃度を定量する工程、b)工程(a)で定量されたタンパク質FEN1の濃度をタンパク質FEN1の標準濃度と比較して、工程(a)で定量された濃度を同じ患者より以前の時点で採取した試料中で定量したこのマーカーの濃度に比較することによって疾患進行をモニターする工程を含んでなる。理解されるように、C末端proSP−Bのレベルの経時的な増加は、疾患進行の指標になる。
療法への患者の応答をモニターする
本発明による方法は、患者モニタリングにおいて使用される場合、患者のフォローアップに使用して、例えば、COPDの治療薬の効力について評価するのに役立ててよい。
ある態様において、本発明は、a)体液試料中のタンパク質FEN1の濃度を定量する工程、b)工程(a)で定量されたタンパク質FEN1の濃度をタンパク質FEN1の標準濃度と比較して、工程(a)で定量された濃度をこのマーカーのその基準値に対するこのマーカーの濃度に比較することによって、COPD療法に対する患者の応答をモニターする工程を含んでなる、COPDを抑えることを目標とした治療に対する患者の応答をモニターするための in vitro 方法に関する。好ましい態様において、体液試料は、血清、血漿、及び全血からなる群より選択される。
療法に対する患者の応答をモニターすることは、例えば、療法前及び療法後のタンパク質FEN1のマーカーレベルを確定することによって、そしてその療法前及び療法後のマーカーレベルを比較することによって実施することができる。
COPD治療に対する患者の応答については、検査試料中のタンパク質FEN1の濃度を経時的にモニターすることによって in vitro で評価し得る。ある態様において、本発明は、a)試料中のタンパク質FEN1の濃度を定量する工程、b)工程(a)で定量されたタンパク質FEN1の濃度を以前の試料で確定されたタンパク質FEN1の濃度と比較する工程を含んでなる、COPD治療に対する患者の応答をモニターするための in vitro 方法に関し、ここでタンパク質FEN1の減少は、前記治療に対する陽性応答の指標となる。
タンパク質FEN1のレベルは、療法に対する患者の応答をモニターするのに適しているようである。従って、本発明はまた、療法に対する患者の応答をモニターすることにおけるタンパク質FEN1の使用に関し、ここでタンパク質FEN1の減少したレベルは、COPDの有効な治療の陽性指標となる。
マーカー組合せ
故に、本発明は、ある態様において、COPDの評価用のマーカーパネルの1つのマーカーとしてのタンパク質FEN1の使用に関する。そのようなマーカーパネルは、タンパク質FEN1と、COPDについての1以上の追加マーカーを含む。あるマーカーの組合せは、例えば、COPDのスクリーニングにおいて有利であろう。
当業者が理解するように、検討下の問診を改善するために2以上のマーカーの測定値を使用する多くのやり方がある。
生化学マーカーは、個別に定量してよく、本発明のある態様において、それらは、同時に(例えば、チップ又はビーズベースのアレイ技術を使用して)定量してもよい。従って、バイオマーカーの濃度は、例えば、各マーカーについて個別のカットオフを使用することによって、独立的に解釈されるか又は、それらは、解釈のために組み合わされる。
当業者が理解するように、マーカーレベルをある尤度又はリスクへ相関させる工程は、様々なやり方で実施及び達成することができる。好ましくは、タンパク質FEN1と1以上の他のマーカー(複数)の定量された濃度を数学的に組み合わせて、その複合値を基礎問診へ相関させる。マーカー値は、どの適正な最先端の数学的方法によっても、FEN1の定量値と組み合わせてよい。
好ましくは、マーカーの組合せに適用される数学的アルゴリズムは、ロジスティック関数である。そのような数学的アルゴリズム又はそのようなロジスティック関数を適用することの結果は、好ましくは、単一値である。基礎問診に依存して、そのような数値は、例えば、個体のCOPDについてのリスクへ、又はCOPD患者の評価に役立つ他の企図される診断上の使用へ容易に相関させることができる。好ましいやり方では、a)個体を諸群へ(例えば、正常群、COPDのリスク状態の個体群、肺の急性又は慢性炎症の患者群、等へ)分類すること、b)これらの群の間で有意に異なるマーカーを単変量解析によって同定すること、c)これらの異なる群について評価するのに有用なマーカーの独立した特異値について評価するためのロジスティック回帰分析、及びd)独立した特異値を組み合わせるためのロジスティック関数の構築によって、そのようなロジスティック関数を得る。この種の分析において、マーカーは、もはや独立性ではなく、マーカーの組合せの代表となる。
ある態様において、FEN1の数値と少なくとも1つのさらなるマーカーの数値を組み合わせることに使用するロジスティック関数は、a)個体を、正常群とCOPDを有する可能性がある個体群のそれぞれへ分類すること、b)FEN1の数値と少なくとも1つのさらなるマーカーの数値を確定すること、c)ロジスティック回帰分析を実施すること、及びd)FEN1のマーカー値と少なくとも1つのさらなるマーカーの数値を組み合わせるためのロジスティック関数の構築によって入手される。
マーカーの組合せを疾患へ相関させるためのロジスティック関数は、好ましくは、統計手法を適用することによって開発されて入手されるアルゴリズムを利用する。適正な統計手法は、例えば、判別分析(DA)(即ち、線形、二次、正則化−DA)、カーネル法(即ち、SVM)、ノンパラメトリック法(即ち、k−最近傍分類器)、PLS(部分的最小二乗法)、ツリーベース法(即ち、論理回帰、CART、ランダムフォレスト法、ブースティング/バギング法)、一般化線形モデル(即ち、ロジスティック回帰)、主成分ベース法(即ち、SIMCA)、一般化加法モデル、ファジィ論理ベース法、ニューラルネットワーク及び遺伝的アルゴリズムベース法である。当業者には、本発明のマーカー組合せについて評価して、それにより適正な数学的アルゴリズムを入手するのに適正な統計手法を選択するのに何の問題もないであろう。ある態様において、COPDの評価に使用される数学的アルゴリズムを入手するのに利用する統計手法は、DA(即ち、線形、二次、正則化判別分析)、カーネル法(即ち、SVM)、ノンパラメトリック法(即ち、k−最近傍分類器)、PLS(部分的最小二乗法)、ツリーベース法(即ち、論理回帰、CART、ランダムフォレスト法、ブースティング/バギング法)、又は一般化線形モデル(即ち、ロジスティック回帰)より選択される。これらの統計手法に関する詳細は、以下の参考文献に見出される:Ruczinski, I., et al., J. of Computational and Graphical Statistics 12 (2003) 475-511; Friedman, J.H., J. of the AmericanStatistical Association 84 (1989) 165-175; Hastie, T., et al.「統計学習の初歩(The Elements of Statistical Learning)」Springer Verlag (2001); Breiman, L., et al.「分類と回帰ツリー(Classification and regression trees)」ワズワース国際グループ(Wadsworth International Group)、カリフォルニア州(1984);Breiman, L., Machine Learning 45 (2001) 5-32; Pepe, M.S.「分類と予測のための医学的検査の統計学的評価(The Statistical Evaluation of Medical Tests for Classification and Prediction)」オックスフォード統計科学シリーズ(Oxford Statistical Science Series)28, オックスフォード大学出版局(2003);及び Duda, R.O., et al.「パターン分類(Pattern Classification)」ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社、第2版(2001)。
生体マーカーの基本的な組合せのために最適化した多変量カットオフを使用して、状態Aと状態B(例えば、正常群とCOPDのリスクがある個体群、療法へ応答性のCOPD患者と療法が失敗するCOPD患者、肺の急性炎症を有する患者とCOPD患者、疾患進行を示すCOPD患者と疾患進行を示さないCOPD患者)をそれぞれ識別することは、本発明の態様である。
受信者動作曲線下面積(=AUC)は、診断手順の性能又は精度の指標である。診断方法の精度は、その受信者動作特性(ROC)によって最良に記載される(特に、Zweig, M.H., and Campbell, G., Clin. Chem. 39 (1993) 561-577 を参照のこと)。ROCグラフは、観測データの全範囲にわたって決定閾値を連続的に変化させることより生じる、すべての感度/特異度対のプロットである。
臨床検査の臨床性能は、その診断精度、又は被検者を臨床的に関連した亜群へ正確に分類する能力に依存する。診断精度は、検討される被検者の2つの異なる状態を正確に識別する検査の能力を測定する。そのような状態は、例えば、健康と疾患、又は「疾患進行」対「疾患進行無し」である。
各々の場合において、ROCプロットでは、決定閾値の全範囲に対して「感度」対「1−特異度」をプロットすることによって、2つの分布の間の重なりが図示される。y軸には、感度、又は真陽性率[(真陽性検査結果の数)/(真陽性検査結果の数+偽陰性検査結果の数)として定義される]がある。これは、疾患又は状態の存在下での正値性とも呼ばれている。それは、罹患状態の亜群からのみ計算される。x軸には、偽陽性率、又は1−特異度[(偽陽性結果の数)/(真陰性結果の数+偽陽性結果の数)として定義される]がある。それは、特異性の指標であって、非罹患状態の亜群だけから計算される。真陽性率と偽陽性率は、2つの異なる亜群からの検査結果を使用することによって全く別々に計算されるので、ROCプロットは、試料中の疾患の罹患率とは無関係である。ROCプロット上の各点は、特別な決定閾値に対応する感度/1−特異度の対を表す。完全な識別の検査(2つの分布結果に重なりがない)では、左上隅[ここでは、真陽性率が1.0又は100%(完全感度)であって、偽陽性率が0(完全特異度)である]を通過するROCプロットが得られる。識別の無い検査(2つの群で同一の分布結果)についての理論上のプロットは、左下隅から右上隅までの45°対角線である。ほとんどのプロットは、上記2つの極端の間に落ちる(ROCプロットが45°対角線より完全に下に落ちるならば、これは、「正値性」の判定基準を「〜より大きい」から「〜未満」へ(又はその逆へ)逆転させることによって容易に解消される。定性的には、プロットが左上隅に近づくにつれて、検査の全体精度が高くなる。
臨床検査の診断精度を定量するための1つの簡便な目標は、その性能を1つの数字によって表現することである。最も一般的な全体尺度は、ROCプロット下面積(AUC)である。変換により、この面積は、いつでも0.5以上である(そうでなければ、そうなるように、決定ルールを逆転させることができる)。数値は、1.0(2群の検査値の完全な分離)と0.5(2群の検査値の間に見かけの分布差が無い)の間に及ぶ。この面積は、この対角線に最も近い点や90%特異度での感度といった、プロットの特別な部分だけでなく、プロット全体にも左右される。これは、ROCプロットが完全なもの(面積=1.0)にどのくらい近いかの定量的な記述表現である。
全体のアッセイ感度は、本明細書に開示される方法を実施するのに必要とされる特異度に依存するものである。ある好ましい設定では、75%の特異度で十分であり得て、統計手法と生じるアルゴリズムは、この特異性の要件に基づく可能性がある。1つの好ましい態様において、COPDのリスク状態にある個体について評価するのに使用する方法は、80%、85%の特異度、又は好ましくは90%又は95%の特異度に基づく。
COPDのスクリーニングには、ある種のマーカーの組合せが有利であろう。
1つの態様において、本発明は、試料中のタンパク質FEN1と1以上の他のマーカー(複数)の濃度を定量する工程、定量されたタンパク質FEN1の濃度と1以上の他のマーカーの濃度をそれぞれ数学的に組み合わせる工程を含んでなる、COPDを生化学マーカーによって評価するための in vitro 方法へ向けられ、ここで組み合わされた数値の増加は、COPDの存在の指標となる。
ある態様において、本発明は、試料中のタンパク質FEN1と1以上の他のマーカー(複数)の濃度を定量する工程と、定量されたタンパク質FEN1の濃度をタンパク質FEN1の標準濃度と比較する工程を含んでなる、COPDを生化学マーカーによって評価するための in vitro 方法へ向けられ、ここで標準濃度より高いタンパク質FEN1の濃度は、COPDの存在の指標となる。前記方法の1以上の他のマーカーは、ASC、ARMET、NNMT、APEX1、及びセプラーゼからなる群より選択されることが好ましい。さらに好ましい態様において、前記マーカーパネルは、少なくともタンパク質FEN1とタンパク質ASCを含む。さらに好ましい態様において、前記マーカーパネルは、少なくともタンパク質FEN1とタンパク質ARMETを含む。さらに好ましい態様において、前記マーカーパネルは、少なくともタンパク質FEN1とタンパク質NNMTを含む。さらに好ましい態様において、前記マーカーパネルは、少なくともタンパク質FEN1とタンパク質APEX1を含む。さらに好ましい態様において、前記マーカーパネルは、少なくともタンパク質FEN1とタンパク質セプラーゼを含む。
ある態様において、本発明は、COPDの指標となる1以上のマーカー分子(複数)との組合せにおける、COPDの in vitro 評価用のマーカー分子としてのマーカーFEN1の使用に関する。故に、本発明は、ある態様において、COPDマーカーパネル(即ち、タンパク質FEN1とCOPDスクリーニング目的のための1以上の追加マーカーを含んでなるマーカーパネル)の1つのマーカーとしてのタンパク質FEN1の使用に関する。
例えば、本発明はまた、タンパク質FEN1とASCを含んでなるマーカーパネルの、タンパク質FEN1とARMETを含んでなるマーカーパネルの、又はタンパク質FEN1とNNMTを含んでなるマーカーパネルの、又はタンパク質FEN1とAPEX1を含んでなるマーカーパネルの、又はタンパク質FEN1とセプラーゼを含んでなるマーカーパネルの、又はタンパク質FEN1とASC、ARMET、NNMT、APEX1、及びセプラーゼからなる群より選択される2以上のマーカーを含んでなるマーカーパネルの使用に関する。
ある態様では、本発明による方法でのタンパク質FEN1との組合せにおける使用に好ましいマーカーは、ASC、ARMET、NNMT、APEX1、及びセプラーゼからなる群より選択される。これらのマーカーは、COPDについて評価するために、それぞれ個別に使用しても、FEN1と一緒のあらゆる組合せで使用してもよい。
ある態様において、COPDを生化学マーカーによって評価するための in vitro 方法に使用されるマーカーパネルは、試料中のタンパク質FEN1とタンパク質NNMTの濃度を定量する工程を含み、ここでタンパク質FEN1の標準濃度より高いタンパク質FEN1の濃度は、COPDの存在の指標となる。さらなる態様において、in vitro 方法に使用されるマーカーパネルは、マーカータンパク質のFEN1、NNMT、及びセプラーゼを含む。さらなる態様において、in vitro 方法に使用されるマーカーパネルは、マーカータンパク質のFEN1、NNMT、セプラーゼ、及びASCを含む。
さらなる態様において、タンパク質FEN1との組合せにおける使用のためのマーカーは、炎症(即ち、基礎疾患の全身炎症)の評価に有用であるマーカーである。
炎症のマーカー
現在、炎症の診断用に多くの血清マーカーが知られている。当業者は、「炎症のマーカー」という用語に馴染みがある。前記炎症のマーカーは、例えば、インターロイキン−6、C−反応性タンパク質、血清アミロイドA、sE−セレクチン、及びS100タンパク質より選択される。
インターロイキン−6(IL−6)は、21kDaの分泌型タンパク質であって、造血作用に関与する活性と自然免疫応答の活性化に関与する活性へ分けることができる数多くの生体活性を有する。IL−6は、急性期の反応体であって、接着分子が含まれる様々なタンパク質の合成を刺激する。その主要な機能は、肝臓タンパク質の急性期産生に媒介することであって、その合成は、サイトカインのIL−1及びTNF−αによって誘導される。IL−6は、通常、マクロファージとTリンパ球によって産生される。IL−6の正常血清濃度は、5pg/ml未満である。
C反応性タンパク質(CRP)は、宿主防御に関与する、21kDaのサブユニットがある、急性期のホモ五量体Ca2+結合タンパク質である。CRPの合成は、IL−6によって、そしてIL−1が肝類洞中のクッパー細胞によるIL−6の合成の引き金になり得るので、間接的にはIL−1によって誘導される。CRPの正常血漿濃度は、健常集団の90%において3μg/ml(30nM)未満であって、健常個体の99%において10μg/ml(100nM)未満である。血漿CRP濃度は、例えば、イムノアッセイによって測定することができる。血漿CRP濃度は、例えば、均質アッセイ形式又はELISAによって測定することができる。
血清アミロイドA(=SAA)は、11.7kDaの低分子量の急性期タンパク質である。それは、専ら、IL−1、IL−6、又はTNF−αの刺激に応答して肝臓によって合成されて、T細胞依存型免疫応答の調節に関与する。急性事象時に、SAAの濃度は、1000倍まで増加して、1ミリグラム/ミリリットルに到達する。これは、嚢胞性線維症、腎移植片拒絶、外傷、又は感染症のような多様な疾患において炎症をモニターするのに使用される。慢性関節リウマチでは、ある種の症例において、CRPの代用物として使用されてきたが、SAAは、まだ広く受け入れられていない。
S100タンパク質は、今日では20種より多い成員が含まれる、増加し続けるCa2+結合タンパク質のファミリーを形成する。S100タンパク質の生理学的に重要な構造は、ホモ二量体であるが、それぞれ他のもの(例、S100A8及びS100A9)とヘテロ二量体を形成し得るものもある。細胞内の機能は、タンパク質リン酸化、酵素活性、又は細胞骨格の動態の調節から細胞の増殖及び分化への関与へと多岐に及ぶ。細胞から放出されるS100タンパク質もあるので、例えば、神経細胞生存、星状細胞増殖、アポトーシスの誘導、及び炎症プロセスの調節といった、細胞外の機能についても記載されてきた。S100A8、S100A9、ヘテロ二量体のS100A8/A9及びS100A12は、炎症時に見出されて、S100A8が慢性炎症に応答する一方で、S100A9、S100A8/A9、及びS100A12は、急性炎症時に増加する。S100A8、S100A9、S100A8/A9、及びS100A12は、一部の癌、腎自家移植片拒絶、大腸炎、及び(最も重要には)RAが含まれる、炎症要素を伴う異なる疾患へ関連付けられてきた(Burmeister, G., and Gallacchi, G., Inflammopharmacology 3 (1995) 221-230;Foell, D., et al., Rheumathology 42 (2003) 1383-1389)。
sE−セレクチン(可溶型内皮白血球接着分子−1、ELAM−1)は、内皮細胞上でのみ、そして炎症性サイトカイン(IL−1β、TNF−α)又はエンドトキシンによる活性化の後でのみ発現される、115kDaのI型膜貫通糖タンパク質である。細胞表面のE−セレクチンは、白血球が炎症部位に血管外遊出するのに必須の工程である、白血球の内皮へのローリング付着のメディエーターであって、それにより局在化免疫応答において重要な役割を担う。可溶型E−セレクチンは、おそらくはその表面発現分子のタンパク分解的な切断より生じて、健常個体の血液に見出される。様々な病理学的状態において、sE−セレクチンの血清レベルの上昇が報告されてきた(Gearing, A.J., and Hemingway, I., Ann. N.Y. Acad. Sci. 667 (1992) 324-331)。
ある態様において、本発明による方法でのタンパク質FEN1との組合せにおける使用に好ましいマーカーは、CRP、インターロイキン−6、血清アミロイドA、及びS100からなる群より選択される。本発明の in vitro 方法によるさらなる態様では、FEN1について定量した数値を、CRP、インターロイキン−6、血清アミロイドA、S100、及びE−セレクチンからなる群より選択される少なくとも1つのさらなるマーカーの定量値と組み合わせる。ある態様において、本発明は、COPDの評価におけるFEN1及びC反応性タンパク質(CRP)のマーカー組合せの使用に関する。ある態様において、本発明は、COPDの評価におけるFEN1及びインターロイキン−6(IL−6)のマーカー組合せの使用に関する。ある態様において、本発明は、COPDの評価におけるFEN1及び血清アミロイドAのマーカー組合せの使用に関する。ある態様において、本発明は、COPDの評価におけるFEN1及びS100のマーカー組合せの使用に関する。
さらなる態様において、本発明は、COPDの存在又は非存在についての血清又は血漿試料中の in vitro 評価における、タンパク質FEN1とCRPを含んでなるマーカーパネルの使用に関し、ここでタンパク質FEN1の標準濃度より高いタンパク質FEN1の濃度と、タンパク質CRPの標準濃度より高いタンパク質CRPの濃度は、COPDの存在の指標となる。
さらなる態様において、本発明は、COPDの存在又は非存在についての血清又は血漿試料中の in vitro 評価における、タンパク質FEN1とCRPを含んでなるマーカーパネルの使用に関し、ここでタンパク質FEN1の標準濃度以下のタンパク質FEN1の濃度と、タンパク質CRPの標準濃度より高いタンパク質CRPの濃度は、COPDの非存在の指標となる。
1つの態様では、マーカーパネルを単一の検査デバイス内で、例えば、チップ上に、又はアレイ形式において組み合わせる。本発明によるマーカーパネルは、ある態様において、バイオチップアレイ(タンパク質アレイ)技術を使用して決定される。アレイとは、アドレス指定可能な個々のマーカーの収集物である。そのようなマーカーは、マイクロタイタープレート内に含まれるか又は平面上に印字されるアレイ(ここでは、各マーカーが別々のX座標及びY座標に存在する)のように、空間的にアドレス指定可能であり得る。あるいは、マーカーは、タグ、ビーズ、ナノ粒子、又は物理特性に基づいてアドレス指定可能であり得る。当業者に知られた方法に従って、バイオチップアレイを製造することができる(例えば、US5,807,522;Robinson, W. H., et al., Nat. Med. 8 (2002) 295-301; Robinson, W. H., et al., Arthritis Rheum. 46 (2002) 885-893 を参照のこと)。本発明に使用するアレイは、多数のアドレス指定可能マーカーを用いるどの免疫学的アッセイにも関連する。当業者にはマイクロアレイとしても知られているバイオチップアレイは、小型化形態のアレイである。
「チップ」、「バイオチップ」、「ポリマーチップ」、又は「タンパク質チップ」という用語は、可換的に使用されて、シリコンウェハ、ナイロンストリップ、プラスチックストリップ、又はガラススライドの一部になり得る共通の基質上に配置された、多数のプローブ、マーカー、又は生化学マーカーの収集物を意味する。
「アレイ」、「マクロアレイ」、又は「マイクロアレイ」とは、ガラス、プラスチック、シリコンチップ、又はアレイを形成する他の材料といった基質又は固体表面へ付着されるか又はその上で作製される、分子、マーカー、開口部(openings)、マイクロコイル、検出体、及び/又はセンサーといった物質の意図的に創出された収集物である。アレイは、多数(例、数十、数千、又は数百万)の反応又は組合せのレベルを同時に測定するために使用することができる。アレイは、少数(例、1つ、2〜3、又は1ダース)の物質を含有する場合もある。アレイ中の物質は、同一であっても、互いに異なっていてもよい。アレイは、多様な形式(例、可溶性分子のライブラリー、固定化分子のライブラリー、固定化抗体のライブラリー、樹脂ビーズ、シリカチップ、又は他の固体支持体へ繋留した化合物のライブラリー)をとることが可能である。アレイは、アレイ上のパッドの大きさに依存して、マクロアレイであっても、マイクロアレイであってもよい。マクロアレイは一般に、約300ミクロン以上のパッドサイズを含有して、ゲル及びブロットスキャナによって容易に造影することができる。マイクロアレイは、一般に、300ミクロン未満のパッドサイズを含有する。
「固体支持体」は、不溶性で官能化されたポリマー材料であり、それへライブラリーメンバー又は試薬を、固定化されるか又はそれらが過剰の試薬、可溶性の反応副産物、又は溶媒より(濾過、遠心分離、洗浄、等によって)容易に分離されることを可能にするように、付着又は共有結合(しばしばリンカーを介して)させることができる。
ある態様において、本発明は、マーカータンパク質FEN1と任意選択的に1以上の他のCOPDマーカータンパク質を含んでなるバイオチップアレイに関する。
本発明はまた、ある態様において、本発明による方法を実施してタンパク質FEN1の濃度とタンパク質のASC、ARMET、NNMT、APEX1、及びセプラーゼからなる群より選択される1以上の他のマーカーの濃度を特異的に定量するためのバイオチップアレイと、任意選択的に、その測定を実施するための補助試薬を提供する。
本発明はまた、ある態様において、本発明による方法を実施してタンパク質FEN1の濃度とタンパク質のASC、ARMET、NNMT、APEX1、及びセプラーゼからなる群より選択される1以上の他のマーカーの濃度を特異的に定量するためのバイオチップアレイと、任意選択的に、COPDの存在又は非存在についての評価時の補助試薬を提供する。
キット
本発明はまた、タンパク質FEN1の濃度を特異的に定量するのに必要とされる試薬を含んでなる、本発明による in vitro 方法を実施するためのキットを提供する。
本発明はまた、タンパク質FEN1の濃度と、任意選択的に、上記に記載のようなCOPDの1以上のマーカータンパク質の濃度を特異的に定量するのに必要とされる試薬を含んでなる、本発明による方法を実施するためのキットを提供し、ここで他のマーカーは、それぞれ個別に使用しても、そのあらゆる組合せで使用してもよい。
本発明はまた、タンパク質FEN1の濃度とタンパク質のASC、ARMET、NNMT、APEX1、及びセプラーゼからなる群より選択される1以上の他のマーカータンパク質の濃度を特異的に定量するのに必要とされる試薬と、任意選択的に、その測定を実施するための補助試薬を含んでなる、本発明による方法を実施するためのキットを提供する。
なおさらなる態様において、本発明は、タンパク質FEN1の濃度を特異的に定量するのに必要とされる試薬と、COPDマーカー組合せにおいて一緒に使用されるCOPDの1以上の他のマーカーを測定するのに必要とされる試薬を含んでなるキットに関する。前記キットは、ある態様において、タンパク質FEN1へ特異的に結合する抗体又はその断片を含む。さらなる態様では、前記キット中の前記抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvからなる群より選択される。1つの態様において、本発明は、配列番号4のFEN1配列に含まれる少なくとも2つの非重複エピトープへ特異的に結合する少なくとも2つの抗体又はその断片を含んでなるキットに関する。好ましくは、本発明によるキットに含まれる少なくとも2つの抗体又はその断片は、モノクローナル抗体である。前記キットは、ある態様において、抗体又はその断片がその上に固定化されるバイオチップをさらに含む。
さらなる態様において、本発明は、本発明に従ってCOPDについて評価するための in vitro 方法を行うための in vitro 診断医療用具(IVD)に関する。本明細書に使用する「診断用具」は、それが試薬、目盛り測定器(calibrator)、対照材料、キット、標本容器、ソフトウェア、機器、装置、装具、又はシステムであっても、単独で使用されても、in vitro 使用のための他の診断製品と組み合わせて使用されても、in vitro 診断医療用具(IVD)を意味する。製造業者には、単に、又は主に、マーカーの濃度、生理学的又は病理学的な状態、先天異常に関する情報を得る目的で、又は潜在的なレシピエントとの安全性又は適合性を判定するために、又は治療手段についてモニターするために、ヒトの身体に由来する試料又は標本を検査するのに in vitro で使用されることが企図されなければならない。
以下の実施例、配列表、及び図面は、本発明の理解を助けるために提供するのであって、本発明の真の範囲は、付帯の特許請求項に示される。ここで説明する手順には、本発明の精神から逸脱することなく種々の変更を施すことができると理解される。
配列の記載
配列番号1 ヒトタンパク質ASCのアミノ酸配列(SwissProtデータベースアクセッション番号:Q9ULZ3)を示す。
配列番号2 ヒトタンパク質ARMETのアミノ酸配列(SwissProtデータベースアクセッション番号:P55145)を示す。
配列番号3 ヒトタンパク質NNMTのアミノ酸配列(SwissProtデータベースアクセッション番号:P40261)を示す。
配列番号4 ヒトタンパク質FEN1のアミノ酸配列(SwissProtデータベースアクセッション番号:P39748)を示す。
配列番号5 ヒトタンパク質APEX1のアミノ酸配列(SwissProtデータベースアクセッション番号:P27695)を示す。
配列番号6 ヒトタンパク質セプラーゼのアミノ酸配列(SwissProtデータベースアクセッション番号:Q12884)を示す。
配列番号7 ヒトタンパク質DPPIVのアミノ酸配列(SwissProtデータベースアクセッション番号:P27487)を示す。
配列番号8 フォワードプライマー
配列番号9 リバースプライマー
配列番号10 N末端ペプチド伸張部分
実施例1
COPD試験集団
血清試料の供給源:
COPD特異的タンパク質をCOPDの潜在的な診断マーカーとして同定するために、全国多施設研究において、十分に特性決定されたCOPD(表1によるATS分類体系)患者より血清試料を導いた。それぞれの試料ドナーについてスパイロメトリーを実施した。肺機能、他の診断検査結果、並びに、転院理由、診断、及び合併症についても、特定の症例報告書(CRF)に記録した。COPD試料について、表2に示す対照群1〜4より入手した対照試料と比較して評価した。
血清試料の調製:
血清試料を血清管へ吸引して、そのまま室温で少なくとも60分〜120分まで凝固させた。遠心分離(10分、2000g)の後で、上清を1mlのアリコートに分けて、−70℃で凍結させた。測定の前に試料を融かして、プロトタイプアッセイ及びリファレンスアッセイに適したより少ない量へ再分割して、再び凍結させた。試料を融かしてからすぐに分析した。故に、パネル中の各試料は、測定前に、凍結融解サイクルを2回だけ受けた。
実施例2.1
マーカータンパク質FEN1に対する抗体の産生
マーカータンパク質FEN1に対するポリクローナル抗体を、FEN1の血清及び血漿レベル又は他の体液中の濃度のイムノ検出アッセイ(例、ウェスタンブロット及びELISA)による測定における、この抗体のさらなる使用のために産生する。
大腸菌における組換えタンパク質発現
FEN1に対する抗体を産生するために、この組換え抗原を大腸菌において産生する。故に、ドイツゲノム研究資源センター(RZPD,ドイツ、ベルリン)より入手した全長cDNAクローンより、以下のプライマーを使用して、FEN1コーディング領域をPCR増幅する:
フォワードプライマー(配列番号8):
5’-cacacacaattgattaaagaggagaaattaactATGAGAGGATCGCATCACCATCACCATCACATTGAAGGCCGTGGAATTCAAGGCCTGGCC-3’(MunI部位に下線を施し、コーディングヌクレオチドは、大文字)、
リバースプライマー(配列番号9):
5’-acgtacgtaagcttTCATTATTTTCCCCTTTTAAACTTC-3’(HindIII部位に下線を施し、コーディングヌクレオチドは、大文字)。
フォワードプライマーは、(MunIクローニング部位とリボソーム結合部位以外に)FEN1遺伝子に対して5’端で正しいフレームで融合されるN末端MRGSHHHHHHIEGRペプチド伸張部分(配列番号10)をコードする。MunI/HindIIIで消化したPCR断片をpQE80Lベクター(Qiagen, ヒルデン、ドイツ)中へ連結させる。引き続き、この産生したプラスミドで大腸菌株のXL1ブルーコンピテント細胞を形質転換する。配列解析の後で、pQEベクター系列のT5−プロモーターの制御下でのIPTG−誘導可能な発現のために、製造業者の説明書に従って、この産生プラスミドで大腸菌C600コンピテント細胞を形質転換する。
MRGSHHHHHHIEGR−FEN1融合タンパク質の精製のために、一晩誘導した1Lの細菌培養液を遠心分離によってペレット化して、この細胞ペレットを溶解緩衝液(20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)、500mM塩化ナトリウム(NaCl))に再懸濁させる。この細胞をフレンチプレスにおいて1500バールの圧力で破壊する。不溶性の材料を遠心分離(25000g,15分、4℃)によってペレット化して、上清をNi−ニトリロトリ酢酸(Ni−NTA)金属親和性クロマトグラフィーへ適用する。このカラムを数ベッド容量の洗浄緩衝液(20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)、500mM NaCl、20mMイミダゾール)で洗浄する。最後に、洗浄緩衝液を20〜mM〜500mMのイミダゾールの線形勾配とともに使用して、結合した抗原を溶出させて、抗原含有画分(各7mL)をUV検出器のOD280で同定する。抗原含有画分をプールし、保存緩衝液(75mM HEPES(pH7.5)、100mM NaCl、1mM EDTA、6.5%(w/v)サッカロース)に対して透析して、4℃又は−80℃でそれぞれ保存する。
免疫化のためのペプチド免疫原の産生:
FEN1に特異的であるポリクローナル抗体を創出するために、他の既知のヒトタンパク質に対して有意な相同性を示さないペプチド配列を同定する。スイスバイオインフォーマティクス研究所でアクセス可能なヒトタンパク質のデータバンクに対して、Blastソフトウェアを使用して、FEN1のアミノ酸配列を実行する。アミノ酸配列260〜273は、他のヒトタンパク質に対して有意な相同性を示さないので、FEN1特異抗体を産生するために選択する。それぞれの配列を合成してKLH(=アオガイヘモシアニン)へ化学的にコンジュゲートして、免疫化のための免疫原を入手する。
ポリクローナル抗体の産生:
a)免疫化
免疫化には、タンパク質溶液(100μg/ml タンパク質FEN1)及び完全フロイントアジュバントの1:1比での新鮮なエマルジョンを調製する。各ウサギを、このエマルジョンの1mlで、1、7、及び14日目と30、60、及び90日目に免疫化する。血液を吸引して、生じる抗FEN1血清を実施例3及び4に記載のようなさらなる実験に使用する。
b)ウサギ血清からのカプリル酸及び硫酸アンモニウムでの連続沈殿によるIgG(免疫グロブリンG)の精製
1容量のウサギ血清を4容量の酢酸緩衝液(60mM,pH4.0)で希釈する。pHは、2M Tris塩基で4.5へ調整する。激しく撹拌しながら、カプリル酸(25μl/mlの希釈試料)を滴下する。30分後、試料を遠心分離(13000xg,30分、4℃)させ、ペレットを捨てて、上清を採取する。上清のpHを2M Tris塩基の添加によって7.5へ調整して、濾過(0.2μm)する。
4M硫酸アンモニウム溶液の最終2M濃度への滴下によって、激しい撹拌下に、上清中の免疫グロブリンを沈殿させる。沈殿した免疫グロブリンを遠心分離(8000xg,15分、4℃)によって採取する。
上清を捨てる。ペレットを10mM NaH2PO4/NaOH(pH7.5)、30mM NaClに溶かして、徹底的に透析する。この透析液を遠心分離(13000xg,15分、4℃)させて、濾過(0.2μm)する。
ポリクローナルウサギIgGのビオチニル化
ポリクローナルウサギIgGを10mM NaH2PO4/NaOH(pH7.5),30mM NaCl中10mg/mlとする。1mlのIgG溶液につき50μlのビオチン−N−ヒドロキシスクシンイミド(DMSO中3.6mg/ml)を加える。室温で30分後、この試料をSuperdex 200(10mM NaH2PO4/NaOH,pH7.5,30mM NaCl)でクロマトグラフ処理する。ビオチニル化IgGを含有する画分を採取する。同じ手順に従って、モノクローナル抗体をビオチニル化した。
ポリクローナルウサギIgGのジゴキシゲニン化(digoxygenylation)
ポリクローナルウサギIgGを10mM NaH2PO4/NaOH,30mM NaCl(pH7.5)中10mg/mlとする。1mlのIgG溶液につき50μlのジゴキシゲニン−3−O−メチルカルボニル−e−アミノカプロン酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Roche Diagnostics,マンハイム、ドイツ、カタログ番号:1333054)(DMSO中3.8mg/ml)を加える。室温で30分後、この試料をSuperdex 200(10mM NaH2PO4/NaOH,pH7.5,30mM NaCl)でクロマトグラフ処理する。ジゴキシゲニン化IgGを含有する画分を採取する。同じ手順に従って、モノクローナル抗体をジゴキシゲニンで標識した。
実施例2.2
CRP
マーカータンパク質のCRPは、Roche Diagnostics,マンハイム(FRG)によって流通されている均質アッセイ(Hitachi)を使用して測定する。
実施例3
ヒト血清又は血漿試料中のFEN1の測定用のELISA
ヒト血清又は血漿試料中のFEN1の検出のために、サンドイッチELISAを開発した。この抗原の捕捉及び検出のために、FEN1に対する抗体のアリコートをビオチンとジゴキシゲニンとそれぞれコンジュゲートさせた。
ストレプトアビジンコート化マイクロタイタープレートの別々のウェルにおいて、インキュベーション緩衝液(40mMリン酸塩、200mM酒石酸ナトリウム、10mM EDTA、0.05%フェノール、0.1%ポリエチレングリコール40000、0.1% Tween20、0.2% BSA、0.1%ウシIgG、0.02% 5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、pH7.4へ調整、ヒト抗ラット抗体応答(HARA)の消失ために200μg/mlのポリマー性モノクローナルマウスIgG Fab断片を補充;Roche Diagnostics GmbH,マンハイム、ドイツ、カタログ番号:11096478−001)中にビオチン標識化抗体とジゴキシゲニン標識化抗体のそれぞれの0.12μg/mlを含有する100μlの抗体試薬と試料(20μl)を混合した。
1時間のインキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液(10mM Tris,150mM NaCl,0.05% Tween20)で3回洗浄した。
次の工程では、普遍コンジュゲート(Universal Conjugate)緩衝液(Roche Diagnostics GmbH,マンハイム、ドイツ、カタログ番号:11684825)中30mU/mlの抗ジゴキシゲニン−HRPコンジュゲート(Roche Diagnostics GmbH,マンハイム、ドイツ、カタログ番号:1633716)とともにウェルを60分間インキュベートして、先と同様に洗浄した。
次いで、100μlのTMB基質溶液(Roche Diagnostics GmbH,マンハイム、ドイツ、カタログ番号:12034425)とともにウェルを30分間インキュベートした。2N硫酸(50μl)の添加により発色を止めて、青色を黄色へ変換した。ELISAリーダーを用いて450nmでODを測定した。
すべてのインキュベーションは、室温であった。ヒト血清又は血漿の試料をインキュベーション緩衝液で5%へプレ希釈した。較正のために、ヒト血清を標準品として使用した。これをインキュベーション緩衝液で2/4/8/16/32%へ希釈して、それぞれ2/4/8/16/32ユニット/mlの恣意的な任意値の較正液(calibrators)を作製した。
非線形最小二乗法の曲線適合(Wiemer-Rodbard)によって較正曲線の式を計算して、ウェルの吸光度読取値を対応する濃度値へ変換するのに使用した。この結果にプレ希釈率を掛けて、それぞれの試料それ自体の濃度を得た。
実施例4
COPDの血清マーカーとしてのFEN1
表1に示すATS COPD病期0〜IV分類の123名の十分特性決定されたCOPD患者に由来する血清試料を使用する。この試験集団を表2に示す。
表2:試験集団
COPD試料中のタンパク質FEN1の血清濃度について、明らかに健常な個体(=対照コホート)と喘息患者(対照4)より入手した対照試料(対照1、2、及び3)に比較して評価して、0.84のAUCを得る(表3)。表3に表す、マーカーFEN1の結果の受信者動作特性曲線(ROC)を図面1に示す。炎症マーカーCRPについて定量したデータを図面2に示す。FEN1のAUCは、CRPのAUCより高い。
表3:CRPと比較したマーカータンパク質のROC分析
95%の特異度をもたらす95%分位数の計算によって、対照集合におけるカットオフ値を決定した。受信者動作特性曲線(ROC)(表3)又は95%のプリセット特異度での臨床感度(表4)を計算することによって、このバイオマーカーの診断ポテンシャルについて評価した。COPDについての「カットオフ」対「健常個体(対照1)」のマーカーFEN1の感度は、74%である。それぞれの対照コホート(対照1、2、及び3:即ち、健常非喫煙者、喫煙者、元喫煙者、及びCOPDを発症する職業上のリスクがある個体)に対して95%の特異度を生じるカットオフ値で、COPDについての一般スクリーニングでのカットオフのためのマーカーFEN1の感度は、53%である。
表4:CRPと比較したマーカータンパク質の感度及び特異度
対照1(表2による健常対照)に基づくか又は対照1、2、及び3(表2によるスクリーニング対照)に基づいてカットオフ(95%特異度)を適用する場合、マーカーFEN1の感度は、CRPの感度より高い(表4)。このことは、マーカーFEN1がマーカーCRPより大きいAUCを明示するROC分析によっても反映されている(表3)。
ATS COPD病期0〜IVによるCOPD試料中のタンパク質FEN1について定量したデータを使用して、タンパク質FEN1の血清濃度のATS COPD病期0〜IVとの相関を表す、図面3に示す箱ひげ図を計算した。ATS COPD病期0〜IVに従って分類した各試料内の炎症マーカーCRPについて定量したデータを使用して、CRPの血清濃度のCOPD病期判定との相関を表す、図面4に示す箱ひげ図を計算した。
FEN1血清濃度は、ATS病期0〜IVと有意には相関しないので、マーカーFEN1は、COPDの診断に有用であるが、COPD病期判定には有用でない。
実施例5
ヒトのCOPDを喘息と区別するための血清マーカーとしてのFEN1
表1に示すATS COPD病期0〜IV分類に従って十分に特性決定された123名のCOPD患者に由来する試料、並びに26名の喘息患者(表2に示す対照4)に由来する試料について、マーカーFEN1を使用して分析した。喘息対照コホートに対して95%の特異度を生じるカットオフ値で、COPDの感度は、79%である(表5)。
COPDを喘息と区別するためのマーカーFEN1の感度は、炎症マーカーCRPの感度より高い。
表5:マーカータンパク質の使用による「COPD」対「喘息」の区別
マーカーFEN1の結果のグラフ表示を受信者動作特性曲線(ROC)として図面5に示す。炎症マーカーCRPの結果は、受信者動作特性曲線(ROC)として図面6に示す。
COPD試料中のタンパク質FEN1について定量したデータを使用して、表6に示すデータに基づいて、健常被検者(n=50)からの試料、スクリーニング対照(n=135)と喘息患者(n=26)からの試料に対する、タンパク質FEN1の血清濃度のATS COPD病期0〜IV(表2に示すように、n=123)との相関を表す、図面7に示す箱ひげ図を計算した。対照(健常、スクリーニング対照、及び喘息)の平均値が5.9U/mlと8.2U/mlの間の範囲に及ぶのに対し、COPD患者のFEN1濃度は、有意により高くて、27.1U/mlの平均値である。結果を表6に表す。
表6:FEN1の変動性
実施例6
マーカー組合せ/統計的分析及び結果
R−ツールボックス「glmnet」(http://cran.r-project.org/)において実施するように、マーカー組合せの数学的モデルとしてペナルティ付きロジスティック回帰(PLR)を使用した。追加マーカーについて検索するために、最初のマーカーは、このモデルに非ペナルティ付きのやり方で入れる一方で、すべての他のマーカーをペナルティ化へ処した。
内部反復の10分割交差検証によってアルゴリズムの最適化(即ち、ペナルティ化の種類とそのペナルティ化変数の選択)を行う一方で、性能変数(感度と特異度)の導出は、外部反復の10分割交差検証に基づいた。
元のデータセットを10部分に分けて、その後この部分のうち9つで訓練セットを形成して、10番目の部分を検定セットとした。次いで、この訓練セットも10部分へ分けて、この部分の9つでサブ訓練セットを形成して、10番目の部分をサブ検定セットとした。これらのサブデータセットを用いて、追加マーカーの数に基づいて、ペナルティ化変数を最適化した。この最適化された値を用いて、PLRを訓練セット全体に適用して、診断ルールを作成した。推定罹患事後確率に対する閾値を対照と訓練セットの症例に対して決定して、この多変量診断ルールについて90%の見かけの特異度及び感度を達成した。次いで、このルールを検定セットへ適用して、所与の閾値での感度と特異度を推定した。外部10分割交差検証を50回繰り返して、内部交差検証を25回繰り返した。
交差検証からの個別の試行の綿密な分析は、FEN1にとって最良の追加マーカーがNNMTであることを明らかにした。すべての試行においてそれが最良の追加マーカーとして選択されたからである。2つの追加マーカーがある最良のモデルは、FEN1+NNMT及びセプラーゼである。3つの追加マーカーがある最良のモデルは、FEN1+NNMT、セプラーゼ、及びASCである。
表2に示すようなATS COPD病期0〜IV分類による123名の十分に特性決定されたCOPD患者に由来する試料、並びに健常(n=136)及び喘息患者(n=25)に由来する161の試料からなる対照コホートについて分析した。
表7に、上記組合せの訓練セット及び検定セットに対する分類性能を90%の特異度に基づいて示す。
表7の結果は、1つの追加マーカーを組み合わせることによって、単一マーカーとしてのFEN1に比べて、特異度の損失を伴うことなく、感度を有意に改善することが可能であることを明らかに示す。
表7:90%の特異度でのマーカー組合せ
表8に、上記組合せの訓練セット及び検定セットに対する分類性能を90%の感度に基づいて示す。表8の結果は、1つの追加マーカーを組み合わせることによって、単一マーカーとしてのFEN1に比べて、感度の損失を伴うことなく、特異度を有意に改善することが可能であることを明らかに示す。
表8:90%の感度でのマーカー組合せ
対照コホートに対して90%の特異度を生じるカットオフ値を用いると、FEN1での一般スクリーニングのカットオフの感度は、82.3%であり、FEN1+NNMTでは90.0%であり、FEN1+NNMT+セプラーゼでは92.6%であって、FEN1+NNMT+セプラーゼ+ASC(図面8に示されない4マーカー組合せ)では、93.1%である。マーカーFEN1と3マーカーまでのマーカーマーカー組合せの結果のグラフ表示を、受信者動作特性曲線(ROC)として図面8に示す。