JP5966790B2 - ヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法 - Google Patents
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Description
また、金属層側に、半導体素子及びパワーモジュール用基板を冷却するヒートシンクを接合したヒートシンク付パワーモジュール用基板が提供されている。
このようなパワーモジュール用基板及びヒートシンク付パワーモジュール用基板は、その回路層上に、はんだ材を介してパワー素子としての半導体素子(電子部品)が搭載され、パワーモジュールとされる。
特許文献1、2に記載されたヒートシンク付パワーモジュール用基板は、AlN(窒化アルミ)からなるセラミックス基板の両面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属板(回路層及び金属層)が接合されたパワーモジュール用基板と、アルミニウムからなるヒートシンクとが、Al−Si系のろう材を用いたろう付けによって接合されている。
Mgを含有したアルミニウム合金からなるヒートシンクとパワーモジュール用基板とを、Al−Si系ろう材を用いて接合した際には、例えば図5に示すように、ヒートシンクの表面に微小な突起物が形成されることがある。
このような微小な突起物が広範囲及び多量に観察された場合には、外観不良品と判断されてしまい、製品として用いられないおそれがあった。
さらに、ヒートシンクの表面に微小な突起物が発生した場合には、接合界面に存在するろう材が不足することなり、パワーモジュール用基板とヒートシンクとの接合信頼性が低下するおそれがあった。
本発明者らが、鋭意研究した結果、パワーモジュール用基板の金属層とMgを含有するアルミニウム合金からなるヒートシンクとをろう付けする前に、このヒートシンクに対して熱処理を実施することにより、MgのAl−Si系ろう材への影響を抑制できるとの知見を得た。
これにより、MgのAl−Si系ろう材への影響を抑制でき、ろう材が接合界面から滲み出すことを抑制することが可能となる。したがって、ヒートシンクとパワーモジュール用基板との接合に寄与するろう材を確保することができ、ヒートシンクとパワーモジュール用基板との接合信頼性を向上させることができる。また、ヒートシンク表面に微小な突起物が生成することを抑えることができ、外観不良の発生を抑制することができる。
なお、ヒートシンクが複数の部材で構成されている場合には、前記パワーモジュール用基板に接合される部材が0.2質量%以上4質量%以下のMgを含有するアルミニウム合金で構成されていればよく、少なくとも当該部材を上述のように熱処理すればよい。
この場合、ヒートシンクにおけるMgの分散状態を確実に変化させることができ、ろう材への影響を抑制することができる。また、ヒートシンクの一部が溶融してしまうことを確実に抑制することができる。
この場合、ヒートシンク熱処理工程において、ヒートシンクの表面に厚い酸化被膜が形成されることを抑制できる。
図1に、本発明の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法によって製造されたヒートシンク付パワーモジュール用基板を用いたパワーモジュールを示す。
このパワーモジュール1は、ヒートシンク付パワーモジュール用基板40と、このヒートシンク付パワーモジュール用基板40の一方側(図1において上側)の面にはんだ層2を介して接合された半導体素子(電子部品)3と、を備えている。
ここで、はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材とされている。
パワーモジュール用基板10は、絶縁基板11と、この絶縁基板11の一方の面(図1において上面)に配設された回路層12と、絶縁基板11の他方の面(図1において下面)に配設された金属層13とを備えている。
ここで、放熱板42と冷却部材43とは、固定ネジ45によって連結される構造とされている。このため、放熱板42には、固定ネジ45をねじ込んでも容易に変形しないように剛性を確保する必要がある。そこで、本実施形態では、放熱板42を、耐力が100N/mm2以上の金属材料で構成し、その厚さを2mm以上としている。
まず、回路層12となる銅板と、絶縁基板11とを接合し、回路層12を形成する(回路層形成工程S01)。絶縁基板11の一方の面に、活性ろう材を介して銅板を積層し、いわゆる活性金属ろう付け法によって、銅板と絶縁基板11とを接合する。本実施形態では、Ag−27.4質量%Cu−2.0質量%Tiからなる活性ろう材を用いて、10−3Paの真空中にて、積層方向に9.8×104Pa(1kgf/cm2)以上343×104Pa(35kgf/cm2)以下の範囲で加圧し、850℃で10分加熱することによって、絶縁基板11と銅板とを接合している。
絶縁基板11の他方の面側に、Al−Si系のろう材箔(本実施形態では、Al−7質量%Si)を介してアルミニウム板を積層し、10−3Paの真空中にて、積層方向に9.8×104Pa(1kgf/cm2)以上343×104Pa(35kgf/cm2)以下の範囲で加圧し、650℃で90分加熱することによって、アルミニウム板と絶縁基板11とを接合する。これにより、パワーモジュール用基板10が製出される。
このヒートシンク熱処理工程S03においては、放熱板42を、圧力1×10−2Pa以下の真空雰囲気中、温度:450℃以上620℃(A6063合金の固相線温度)以下、時間:5min以上180min以下の条件で、熱処理を行う。
まず、パワーモジュール用基板10の金属層13と放熱板42との間にAl−Si系ろう材を介在させて、パワーモジュール用基板10と放熱板42とを積層する(積層工程S41)。ここで、本実施形態では、Siの含有量が5.5質量%以上11.0質量%以下、厚さが5μm以上100μm以下のろう材箔を用いた。
そして、雰囲気炉の炉内温度を下げることによって、金属層13と放熱板42との接合界面に形成された溶融金属領域を凝固させて、金属層13と放熱板42とを接合する(溶融金属凝固工程S43)。
このようにして、本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板40が製出される。
すなわち、一のヒートシンク付パワーモジュール用基板40におけるヒートシンク接合工程S04の加熱工程S42と、他のヒートシンク付パワーモジュール用基板40におけるヒートシンク熱処理工程S03とを同時に実施しているのである。
したがって、ヒートシンク41(放熱板42)とパワーモジュール用基板10との接合に寄与するろう材を確保することができ、ヒートシンク41(放熱板42)とパワーモジュール用基板10との接合信頼性を向上させることができる。また、ヒートシンク41表面に微小な突起物が生成することを抑えることができ、外観不良の発生を抑制することができる。
さらに、本実施形態においては、ヒートシンク熱処理工程S03の条件を、温度:450℃以上620℃以下、時間:5min以上180min以下、に設定しているので、ヒートシンク41(放熱板42)におけるMgの分散状態を確実に変化させることができるとともに、ヒートシンク41(放熱板42)の一部が溶融することを防止することができる。
例えば、回路層を銅又は銅合金で構成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成したものであってもよい。
さらに、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層と絶縁基板とを、ろう付け法によって接合するものとして説明したが、これに限定されることはなく、拡散接合等の他の方法で接合したものであってもよい。
さらに、絶縁基板としてAlNからなるセラミックス板を用いたものとして説明したが、これに限定されることはなく、Al2O3、Si3N4等からなるセラミックス板を用いても良い。
30mm×30mm×0.635mmのAINからなる絶縁基板と、この絶縁基板の一方の面に28mm×28mm×0.6mmの4Nアルミニウムの圧延板を接合して形成された回路層と、絶縁基板の他方の面に28mm×28mm×1.6mmの4Nアルミニウムの圧延板を接合して形成された金属層と、を有するパワーモジュール用基板を準備した。なお、回路層となるアルミニウム板と絶縁基板、及び、絶縁基板と金属層となるアルミニウム板との接合は、次の条件で実施した。回路層となるアルミニウム板と絶縁基板をAl−7質量%Siのろう材箔を介して積層し、前記絶縁基板と金属層となるアルミニウム板を前記ろう材箔を介して積層し、積層方向に3kgf/cm2で加圧した状態で、圧力1×10−2Pa以下の真空雰囲気で、650℃、40minの条件で加熱することによって、セラミックス基板の両面に純アルミニウム圧延板が接合されたパワーモジュール用基板を製出した。
本発明例では、ヒートシンクを、圧力1×10−2Pa以下の真空雰囲気で、600℃、30minの条件で、熱処理を実施した。
ヒートシンク表面の観察は、光学顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡観察、EDX分析、を実施した。
表面粗さの測定は、株式会社ミツトヨ製小形表面粗さ測定機サーフテストSJ−210を用いて実施した。
(接合率)={(初期接合面積)−(非接合部面積)}/(初期接合面積)×100
また、表面粗さ及び接合率の評価結果を表1に示す。なお、接合率の評価は、本発明例及び従来例として、それぞれ5個ずつの試験片の平均値とした。
この突起物のAl、Mg、Siの濃度をEDX分析により求めた結果、図6に示すように、SiとMgを多く含有しており、ろう材が接合界面から滲みだしてヒートシンクの表面に微小な突起物が発生したと推測される。このため、接合に寄与するろう材が充分に確保されず、接合率も89.3%と低くなったと推測される。
ヒートシンクのうちパワーモジュール用基板の周縁部のAl、Mg、Siの濃度をEDX分析により求めた結果、図4に示すように、SiとMgは多く検出されておらず、ろう材が接合界面から滲み出していないことが確認された。このため、接合に寄与するろう材が充分に確保されており、接合率も97.0%と高くなった。
10 パワーモジュール用基板
11 絶縁基板
12 回路層
13 金属層
40 ヒートシンク付パワーモジュール用基板
41 ヒートシンク
42 放熱板
Claims (3)
- 絶縁基板の一方の面に回路層及び、前記絶縁基板の他方の面に金属層が配設されたパワーモジュール用基板と、前記パワーモジュール用基板に接合されたヒートシンクと、を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法であって、
前記金属層は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成され、
前記ヒートシンクは、0.2質量%以上4質量%以下のMgを含有するアルミニウム合金で構成されており、
前記ヒートシンクに対して、熱処理を実施するヒートシンク熱処理工程と、
前記ヒートシンク熱処理工程を実施した前記ヒートシンクと前記パワーモジュール用基板の金属層とをAl−Si系ろう材を介して接合する接合工程と、
を備えており、
前記ヒートシンク熱処理工程は、温度が450℃以上、かつ、前記ヒートシンクを構成するアルミニウム合金の固相線温度以下の条件で実施されることを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。 - 前記ヒートシンク熱処理工程は、時間が5min以上180min以下の条件で実施されることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
- 前記ヒートシンク熱処理工程は、圧力1×10−2Pa以下の真空雰囲気中で実施されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
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