JP5954527B2 - 高周波鉄損特性に優れる極薄電磁鋼板 - Google Patents

高周波鉄損特性に優れる極薄電磁鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、リアクトル等のコア材に使用される、板厚が0.1mm未満で、高周波励磁時の鉄損特性に優れる極薄電磁鋼板に関するものである。
一般に、電磁鋼板の鉄損は、励磁周波数が高くなると急激に上昇することが知られている。ところが、トランスやリアクトルの駆動周波数は、鉄心の小型化や高効率化のために、高周波化しているのが実状である。そのため、電磁鋼板の鉄損による発熱が問題となる場合が多くなってきている。
鋼板の鉄損を低減するには、Siの含有量を高めて鋼の固有抵抗を高める方法が有効である。しかし、鋼中のSi量が3.5mass%を超えると、加工性が著しく低下し、従来の圧延法を利用した電磁鋼板の製造方法では、製造することが難しくなる。そのため、高Si量の鋼板を製造する種々の方法が提案されている。たとえば、特許文献1には、1023〜1200℃の温度でSiClを含む無酸化性ガスを鋼板面に吹き付けて浸珪処理し、Si量の高い電磁鋼板を得る方法が開示されている。また、特許文献2には、加工性の悪い4.5〜7mass%の高Si鋼を、連続式熱間圧延における圧延条件を適正化して圧延することで、冷間圧延性が良好な熱延板を得る方法が開示されている。
Si量を増加する以外の鉄損を低減する方法としては、板厚を低減することが有効である。しかし、高Si鋼を素材として圧延法で鋼板を製造する場合には、板厚を低減するには限界がある。そこで、低Si鋼を所定の最終板厚まで冷間圧延した後、SiCl含有雰囲気中で浸珪処理し、鋼中のSi含有量を増やす方法が開発され、既に工業化されている。この方法は、板厚方向のSi濃度に勾配をつけることが可能であり、高励磁周波数における鉄損低減に有効であることが開示されている(特許文献3〜5参照。)。
しかしながら、高周波励磁下でさらなる低鉄損を実現するため、板厚方向にSi濃度勾配をつけた鋼板の板厚を0.10mmよりも薄くしても、期待するほどの鉄損低減効果が得られないことが明らかとなっている。例えば、特許文献には、Si濃度勾配をつけて成分を規定することで高周波磁気特性を向上させた板厚0.05mmの鋼板が記載されているが、鉄損W1/10kは4.43W/kg程度で、低いレベルとはいえない。
また、特許文献には、板厚を0.03〜0.15mmと薄くした場合に、鋼板の集合組織をGoss方位に集積させることで良好な高周波磁気特性が得られることが開示されている。しかし、この方法は二次再結晶という時間もコストも大幅にかかる工程を採用することで集合組織を改善する技術が開示されている。
特公平05−049745号公報 特公平06−057853号公報 特許第3948113号公報 特許第3948112号公報 特許第4073075号公報 特開平11−199988号公報 特開2009−235529号公報
しかしながら、特許文献7に開示の技術のような工程を採用して集合組織を制御した鋼板は、磁気特性は優れるものの製品コストの大幅増加は免れない。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、鋼板の集合組織を制御することなく、すなわち、Goss方位が少ない集合組織の鋼板でも、良好な高周波磁気特性を有する電磁鋼板を提供することにある。
本発明らは、板厚が0.10mm未満と薄くかつ鋼板の集合組織においてGoss方位が少ない場合でも、良好な高周波磁気特性を有する電磁鋼板を開発するべく、鋭意研究を重ねた。その結果、鋼板の板厚方向のSi濃度勾配を極めて大きくさせると共に、板厚貫通粒の割合を高めてやることが有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記知見に基く本発明は、C:0.010mass%未満、Si:2〜10mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、板厚が0.01〜0.08mmである電磁鋼板において、鋼板中のSi濃度が、板厚表層が高くて中心部が低く、板厚方向の濃度勾配が30mass%/mm以上である濃度分布を有すると共に、板厚貫通粒の個数割合が50%以上で、かつ、Goss方位からのずれ角が15°以下である結晶粒の個数割合が4%以下である鋼板組織を有することを特徴とする極薄電磁鋼板である。
本発明の前記電磁鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、Mn:0.005〜1.0mass%、Ni:0.010〜1.50mass%、Cr:0.01〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sn:0.005〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.100mass%およびAl:0.02〜6.0mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
本発明によれば、板厚が0.1mm未満で、高周波鉄損特性に優れる極薄電磁鋼板を製造することができる。したがって、本発明によれば、高周波鉄損特性が求められる小型の変圧器や、モーター、リアクトル等の鉄心材料に用いて好適な極薄の電磁鋼板を提供することができる。
板厚方向のSi濃度勾配と高周波鉄損W0.5/20kとの関係を示すグラフである。
まず、本発明を開発する契機となった実験について説明する。
C:0.0082mass%、Si:3.10mass%を含有する鋼スラブを熱間圧延して板厚2.2mmの熱延板とし、酸洗してスケールを除去した後、冷間圧延して最終板厚0.08mmの冷延板とした。次いで、この冷延板を、1000〜1200℃の温度で100〜1400秒の時間、10vol%SiCl+90vol%N雰囲気中で浸珪処理を施し、さらに、浸珪処理後、Siの板厚方向の濃度勾配を緩やかにする目的で、1100℃で0〜1200秒の拡散焼鈍をN雰囲気下で施して、種々のSi濃度勾配を有する鋼板を作製した。なお、上記浸珪処理では、どの条件でも板厚方向の平均Si量が5.5mass%程度となるように処理条件を調整した。
上記のようにして得た鋼板の磁気特性を、JIS C2550に記載の方法で測定した。また、上記鋼板の断面をEPMAでライン分析し、板厚方向のSi濃度勾配を測定した。さらに、X線回折法により、鋼板表層の集合組織を測定した。なお、上記Si濃度勾配は、Siの最高濃度と最低濃度の差を板厚の1/2で割った値と定義する。
図1は、Si濃度勾配と鉄損W0.5/20k(磁束密度0.05T、周波数20000Hzで励磁した時の鉄損)との関係を示したものである。この結果から、Si濃度勾配が大きいほど鉄損が低くなること、および、Si濃度勾配が30mass%/mm程度までは、濃度勾配の増加による鉄損減少代が大きいが、30mass%/mmを超えると減少代が小さくなることがわかる。すなわち、板厚が0.08mmと薄い鋼板では、Siの濃度勾配を30mass%/mm以上に大きくしないと、良好な鉄損が得られないことがわかる。
また、X線回折による測定結果では、鋼板表層の集合組織は、浸珪処理条件の違いによらずほぼ同じであり、Goss方位を有する結晶粒の個数割合は全体の0.6〜1.2%の範囲内であった。ここで、上記のGoss方位を有する粒とは、Goss方位からのずれ角が15°以下の方位である結晶粒のことをいう。このことは、Goss方位が少なくても、図1に示した通り、良好な鉄損特性の鋼板が得られることを示している。
板厚が薄いと、Siの濃度勾配を大きくしなければ良好な高周波鉄損特性が得られない理由は、まだ十分に明らかとはなってはいないが、発明者らは次のように考えている。
特許文献3に記載されているように、板厚が厚い場合には、高周波励磁したときの磁束は鋼板の表層付近に集中するため、表層付近の透磁率を高めることで、渦電流損を低減できる。しかし、板厚を薄くすると、表層と中心層との距離が縮まるため、中心層にもある程度の磁束が流れるようになる。
ここで、Si濃度勾配をつけた場合、中心層のSi濃度は高くないことから透磁率も高くはなく、中心層の渦電流損が増大すると予想される。その結果、鋼板表層では透磁率の影響で渦電流損が低減するが、中心層の渦電流損が増大する影響で、鋼板全体としてみたときの鉄損低減効果が得られなくなる。これが、板厚が薄くなると、良好な鉄損特性が得られない原因と推測している。
この考え方に立つと、Si濃度勾配が大きくなるほど鉄損が増大することが予想されるが、前記の実験結果はそのようになっていない。
そこで、発明者らは、Siが固溶した時の鉄の格子定数の変化に着目して考察した。Fe格子は、常温では体心立方格子であるが、Siが固溶してFe原子がSi原子で置換された場合、Fe格子は縮まることが知られている。すなわち、浸珪処理して鋼板表層のSi量を高めると、鋼板表層は収縮しようとする。しかし、鋼板中心層はSi量が低く収縮量も少ないため、鋼板表層は中心層から引張応力を付与された状態になる。これは、正に鋼板表面に張力コーティングを付与したときと同じであり、この引張応力の効果で、渦電流損が低減するものと考えられる。
上記鋼板表面に生ずる引張応力の大きさは、Si濃度勾配に依存すると考えられることから、Si濃度勾配を増加させることで鋼板表面の引張応力を増加させ、渦電流損低減代を増大させることが可能となるものと考えられる。すなわち、中心層まで磁束が流れることによる鉄損の劣化分は、Si濃度勾配を大きくすることで相殺されると考えられる。
さらに、上記考え方に立つと、鋼板中の応力分布に、結晶粒界が影響を及ぼしてくることが推測される。つまり、結晶粒界は、応力を緩和する効果があると考えられることから、引張応力に平行(板面と平行な方向)な結晶粒界は少ない方が好ましく、したがって、鋼板内の存在する結晶粒は、鋼板表面と平行な結晶粒界が存在しない板厚貫通粒であることが望ましいと考えられる。
以上説明したように、発明者らは、板厚が薄い電磁鋼板において、Si濃度勾配を極めて大きくすることに加えて、結晶粒における板厚貫通粒の割合を高めることで、高周波励磁時の鉄損を大幅に低減できることを見出し、本発明を完成させた。
次に、本発明の電磁鋼板(製品板)の成分組成について説明する。
本発明の電磁鋼板は、C:0.010mass%未満、Si:2〜10mass%の成分組成を有することが必要である。
C:0.010mass%未満
Cは、磁気時効を起こして磁気特性を劣化させるため、少ないほど望ましい。しかし、Cの過度の低減は、製造コストの上昇を招く。そこで、Cは、磁気時効が実用上問題とならない0.010mass%未満に制限する。好ましくは0.005mass%未満である。
Si:2〜10mass%
Siは、鋼の比抵抗を高め、鉄損特性を改善する必須の元素であり、全板厚の平均で2mass%以上含有させる必要がある。その理由は、板厚方向にSi濃度勾配を大きく付けることを前提とする本発明では、表層付近のSi最高濃度を、透磁率が増加する4mass%超えとする必要があるが、その際のSiの最低濃度を0mass%とすると、板厚平均では2mass%となるからである。しかし、10mass%を超えて含有させると、飽和磁束密度が顕著に低下するようになる。よって、本発明では、Siは全板厚の平均で2〜10mass%の範囲とする。
また、本発明の電磁鋼板は、図1からわかるように、鋼板中のSi濃度が板厚表層が高くて中心部が低く、かつ、板厚方向の濃度勾配が30mass%/mm以上である濃度分布を有することが必要である。好ましくは、50mass%/mm以上である。
本発明の電磁鋼板は、上記C,Si以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、熱間加工性の改善や、鉄損、磁束密度等の磁気特性の改善を目的として、Mn,Ni,Cr,Cu,P,Sn,Sb,Bi,MoおよびAlを下記の範囲で含有させるのが好ましい。
Mn:0.005〜1.0mass%
Mnは、熱間圧延時の加工性を改善するために0.005〜1.0mass%の範囲で含有させるのが好ましい。0.005mass%未満では、上記加工性改善効果が小さく、一方、1.0mass%を超えると、磁気特性が低下するからである。ただし、Mnは低減することが困難な元素であり、不純物レベルとして0.01mass%程度混入していることから、敢えて添加しなくてもよい。
Ni:0.010〜1.50mass%
Niは、磁気特性を向上させる効果があるため添加することができる。添加量が0.010mass%未満では磁気特性向上効果が小さく、一方、1.50mass%を超えると、飽和磁束密度が低下する。よって、Niは、0.010〜1.50mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Cr:0.01〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Al:0.02〜6.0mass%、Sn:0.005〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%およびMo:0.005〜0.100mass%のうちから選ばれる1種または2種以上
これらは、いずれも鉄損の低減に有効な元素であり、斯かる効果を得るためには、上記範囲内で1種または2種以上を含有させることが好ましい。含有量が上記下限値より少ない場合には鉄損低減効果がなく、一方、上記上限値を超えると、飽和磁束密度が低下するので好ましくない。
次に、本発明の電磁鋼板の板厚および結晶組織について説明する。
本発明の電磁鋼板の板厚は、0.10mm未満とする。というのは、本発明で明らかにした板厚に起因する問題は、0.10mm未満の板厚で発生するからである。しかし、0.01mm未満となると、最終板厚まで圧延することや、浸珪処理設備に通板させることが困難となり、生産性が著しく阻害されるので、板厚の下限は0.01mmとする。
また、本発明の電磁鋼板は、全結晶粒のうち、板厚貫通粒が個数割合で50%以上であることが必要である。前述したように、板面と平行な結晶粒界は、鋼板表面に発生した引張応力を緩和する効果があるため、板面と平行な結晶粒界のない板厚貫通粒が多いほど望ましいからである。そこで、本発明では、板厚貫通粒の個数割合を50%以上とする。好ましくは、75%以上である。
また、本発明の電磁鋼板は、その集合組織が、Goss方位からのずれ角が15°以下である結晶粒が全結晶粒に対する個数割合で4%以下であることが必要である。というのは、本発明は、Goss方位が少ない鋼板を対象としているためである。なお、本発明の電磁鋼板の集合組織の測定は、板厚が薄く、板厚貫通粒が多いことから、鋼板表層を測定すれば十分である。
次に、本発明の電磁鋼板の製造方法について説明する。
本発明の電磁鋼板は、電磁鋼板の製造方法として一般的な方法を利用して製造することができる。すなわち、前記した所定の成分組成に調整した鋼を溶製して鋼スラブとし、熱間圧延し、得られた熱延板に必要に応じて熱延板焼鈍を施した後、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延をして最終板厚の冷延板とし、浸珪処理を施し、必要に応じて絶縁被膜をコーティングして製造する。
前述した成分組成を有する鋼スラブは、通常の造塊−分塊圧延法や連続鋳造法で製造してもよいし、100mm以下の厚さの薄鋳片を直接鋳造法で製造してもよい。その後、上記鋼スラブは、通常の方法で再加熱して熱間圧延に供するが、再加熱することなく、鋳造後、直ちに熱間圧延してもよい。また、薄鋳片の場合には、熱間圧延してもよいし、熱間圧延を省略して次の工程に進めてもよい。
熱間圧延前にスラブを再加熱する場合の加熱温度は、エネルギーコストの観点から、1250℃以下とするのが好ましい。
次いで、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。この熱延板焼鈍の焼鈍温度は、良好な磁気特性を得るため、および、鋼板にリジングと呼ばれる凹凸欠陥を発生させないためには、800〜1150℃の温度範囲とするのが好ましい。焼鈍温度が800℃未満では、熱延でのバンド組織が残留し、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなり、磁気特性が低下する。一方、焼鈍温度が1150℃を超えると、熱延板焼鈍後の粒径が粗大化し過ぎて、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなる。
熱間圧延後あるいは熱延板焼鈍後の熱延板は、酸洗して脱スケールし、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とする。なお、冷間圧延の温度を100〜300℃の温度に上昇させて行うことや、冷間圧延の途中で、100〜300℃の温度範囲で時効処理を1回または複数回施すことは、磁気特性の向上には有効である。
上記冷間圧延後の冷延板は、その後、浸珪処理を施す。上記浸珪処理は、既に工業化されている、SiClを反応雰囲気として用いる気相浸珪方式を適用することできる。ただし、そのような気相反応方式でなくとも、シリカシートで鋼板を挟み、焼鈍して浸珪処理する固相浸珪方式でも、板厚方向にSi濃度勾配を付与することができるので、用いてもよい。
浸珪処理に上記の気相浸珪方式の場合には、Siの濃度勾配を制御するためには、処理温度、処理時間および雰囲気ガス(反応ガス)を適宜調節することが望ましい。また、浸珪処理後は、Siの拡散による濃度勾配の低下を抑制するため、直ちに冷却することが好ましい。また、製品板における結晶粒の板厚貫通粒の割合を高めるためには、浸珪処理温度を1050℃以上とするのが好ましく、1150℃以上がより好ましい。
浸珪処理した鋼板は、その後、積層して使用するときの鋼板の絶縁性を確保するため、絶縁コーティングを付与することが好ましい。
C:0.0035mass%、Si:2.58mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を溶製し、連続鋳造して鋼スラブとし、その鋼スラブを1150℃の温度に再加熱した後、熱間圧延して板厚1.8mmの熱延板とし、酸洗し、冷間圧延して最終板厚が0.05mmの冷延板とした。次いで、上記冷延板に、10vol%SiCl+90vol%Ar雰囲気中で、1200℃×180秒の浸珪処理を施した。なお、浸珪処理後の鋼板板厚方向のSi濃度勾配を調査したところ、74mass%/mmであった。その後、上記Si濃度勾配を低減する目的で、1100℃の温度で、表1に記載した0〜1200秒の範囲の時間で拡散焼鈍を施した。
斯くして得られた鋼板表層の集合組織をX線回折法で調査したところ、いずれの鋼板も、Goss方位からのずれ角が15°以下である結晶粒の割合は0.4〜0.8%の範囲内であった。
また、得られた鋼板の磁気特性を、JIS C2550に記載の方法で測定した。さらに、得られた鋼板の断面を長さ50mmにわたって光学顕微鏡で観察し、全結晶粒に対する板厚貫通粒の割合を測定し、それらの結果を表1に併記した。
Figure 0005954527
表1から、本発明に適合するSi濃度勾配を有する鋼板は、高周波励磁時の磁気特性が極めて良好であることがわかる。因みに、特許文献6には、Si濃度勾配をつけて高周波磁気特性を向上させた板厚0.05mmで鉄損W1/10kが4.43W/kgの鋼板が記載されている。W1/10kとW0.5/20kは、測定条件が異なるため直接比較することはできないが、経験的にほぼ同じ値を示す。そこで、両者の鉄損値を対比すると、本発明の電磁鋼板の方が、鉄損が格段に低いことがわかる。この違いは、本発明では、Si濃度勾配を大きくしたことに加えて、板厚貫通粒の割合を高めたことが寄与しているものと推測される。
C:0.0071mass%、Si:3.75mass%、Mn:0.07mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を溶製し、連続鋳造して鋼スラブとし、その鋼スラブを1200℃の温度に再加熱した後、熱間圧延して板厚2.3mmの熱延板とし、1000℃×30秒の熱延板焼鈍を施した後、酸洗し、冷間圧延して最終板厚が0.03mmの冷延板とした。その後、上記冷延板に、20vol%SiCl+80vol%N雰囲気中で、表2に記載の温度と時間を変化させた条件で浸珪処理を施した。
斯くして得られた鋼板表層の集合組織をX線回折法で測定したところ、Goss方位からのずれ角が15°以下である結晶粒の割合はいずれも0.8〜3.2%の範囲内であった。また、得られた鋼板の磁気特性をJIS C2550に記載の方法で測定し、さらに、得られた鋼板の断面を長さ50mmにわたって光学顕微鏡で観察し、全結晶粒のうちの板厚貫通粒の割合を測定した。
上記の測定の結果を表2に併記した。表2から、Si濃度勾配および板厚貫通粒がいずれも本発明に適合する鋼板では、高周波励磁時の磁気特性が極めて良好であることがわかる。
Figure 0005954527
Siを除き、表3に示した種々の成分組成からなる鋼を溶製し、連続鋳造して鋼スラブとし、1200℃の温度に再加熱した後、熱間圧延して板厚2.7mmの熱延板とし、酸洗し、冷間圧延して板厚0.080mmの最終冷延板とし、その後、上記冷延板に、15vol%SiCl+85vol%N雰囲気中で1200℃×100秒の浸珪処理を施した。
斯くして得られた鋼板を成分分析した結果と、板厚方向のSi濃度勾配を測定した結果を表3に示した。なお、表3中のSi量は、浸珪処理後の板厚方向の平均値である。また、得られた鋼板表層の集合組織をX線回折法で測定したところ、Goss方位からのずれ角が15°以下である結晶粒の割合はいずれも0.3〜0.8%の範囲内であった。
また、得られた鋼板の磁気特性をJIS C2550に記載の方法で測定した。さらに、得られたサンプルの断面を長さ50mmにわたって光学顕微鏡で観察し、全結晶粒のうちの板厚貫通粒の割合を測定した。
上記測定の結果を表3に併記した。表3から、鋼成分、Si濃度勾配および板厚貫通粒の割合すべてが本発明範囲内である鋼板は、高周波励磁時の磁気特性が極めて良好であることがわかる。
Figure 0005954527

Claims (2)

  1. C:0.010mass%未満、Si:2〜10mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、板厚が0.01〜0.08mmである電磁鋼板において、
    鋼板中のSi濃度が、板厚表層が高くて中心部が低く、板厚方向の濃度勾配が30mass%/mm以上である濃度分布を有すると共に、
    板厚貫通粒の個数割合が50%以上で、かつ、Goss方位からのずれ角が15°以下である結晶粒の個数割合が4%以下である鋼板組織を有することを特徴とする極薄電磁鋼板。
  2. 前記電磁鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、Mn:0.005〜1.0mass%、Ni:0.010〜1.50mass%、Cr:0.01〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sn:0.005〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.100mass%およびAl:0.02〜6.0mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の極薄電磁鋼板。
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