本発明に係るワイヤの挿入方法及び挿入装置の好適な実施形態を、添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る挿入方法及び挿入装置により製造される分割コア部14を備えたステータ(固定子)10の平面図である。ステータ10は、その内部に設けられる図示しないロータと組み合わされて回転電機を構成し、例えば、電動機又は発電機として用いられる。
ステータ10は、いわゆる3相Y型結線の突極巻のステータであり、図1に示すように、中空状のホルダ12と、3相の入力端子U、V、Wと、中性点を形成する中性端子Nと、ホルダ12の内周面12aに沿って複数(図1では18個)の分割コア部14を環状に配置して形成されるステータコア16とを備えている。
ステータコア16は、U相、V相、W相のコイル18をそれぞれ有する分割コア部14を6つずつ含む。この場合、ステータコア16では、複数の分割コア部14を環状に配置することにより、U相(U1相〜U6相)、V相(V1相〜V6相)、及び、W相(W1相〜W6相)の各コイル18が、図1の時計回りに、U1、V1、W1、U2、…、U6、V6、W6の順番に並ぶように配置される。
次に、U1相〜U6相、V1相〜V6相及びW1相〜W6相のコイル18を有する各分割コア部14のうち、代表的に、1個の分割コア部14の構成について、図2〜図5を参照しながら説明する。なお、ここで説明する分割コア部14の構成は、全ての相の分割コア部14に共通する構成である。
分割コア部14は、プレスにより打ち抜いた略T字状の金属板(鋼板)22を複数枚積層して構成される分割鉄心24と、分割鉄心24を電気的に絶縁するインシュレータ(ワーク)26と、インシュレータ26を介して分割鉄心24に巻回されるコイル素線(ワイヤ、導線)18aにより構成されるコイル18とを有する。コイル素線18aは、断面長方形状の平角線(平角状断面を有するワイヤ)である。
略T字状の分割鉄心24は、矢印B1方向(ステータコア16の外側に向かう方向)側において矢印C方向(ステータコア16の周方向)に沿って延在するヨーク部24aと、ヨーク部24aから矢印B2方向(ステータコア16の内側に向かう方向)に向かって延在する磁極部24bとから構成される。また、ヨーク部24aの矢印C2方向の端部には、略半円状の嵌合凹部32が形成され、ヨーク部24aの矢印C1方向の端部には、嵌合凹部32に対応した略半円状の嵌合凸部34が形成されている。
インシュレータ26は、可撓性を有する樹脂等の電気絶縁材料で構成されている。インシュレータ26は、コイル素線18aの中心部が巻回される巻回部38と、巻回部38から矢印B1方向に突出し、コイル素線18aの端部(始端部又は終端部)を矢印C方向に沿って入力端子U、V、W及び中性端子Nの箇所にまで引き回すための引き回し部40とを有している。
巻回部38は、矢印A方向(上下方向)に嵌合可能な上側巻回部38aと下側巻回部38bとから構成される。
上側巻回部38aは、断面略U字状に形成された上側巻回部本体42aと、上側巻回部本体42aの矢印B2方向の端部に立設する上側内周壁44aと、上側内周壁44aと対向するように、上側巻回部本体42aの矢印B1方向の端部に立設する上側外周壁46aとを有する。
下側巻回部38bは、上側巻回部本体42aと対向するように断面略U字状に形成された下側巻回部本体42bと、上側内周壁44aと対向するように下側巻回部本体42bの矢印B2方向の端部に立設する下側内周壁44bと、下側内周壁44bと対向するように下側巻回部本体42bの矢印B1方向の端部に立設する下側外周壁46bとを有する。
従って、分割鉄心24の磁極部24bを挟み込むように上側巻回部38aと下側巻回部38bとを嵌合させると、上側巻回部本体42aと下側巻回部本体42b、上側内周壁44aと下側内周壁44b、及び、上側外周壁46aと下側外周壁46bは、それぞれ、一部が重なり合って結合する。すなわち、上側巻回部38aの下方から下側巻回部38bが挿入されることで、上側巻回部38aと下側巻回部38bとが一体化されて巻回部38が構成され、該巻回部38の中央部には、矢印B方向に沿って孔48が形成される。これにより、孔48に磁極部24bが嵌まり込む一方で、巻回部38における上側内周壁44a及び下側内周壁44bと、上側外周壁46a及び下側外周壁46bとの間の箇所にコイル素線18aの中心部が巻回されることによりコイル18が構成される。
一方、引き回し部40は、上側外周壁46aの上端部近傍から矢印B1方向に突出するように設けられている。
引き回し部40は、板状部材50と、板状部材50上に形成され、図1の平面視で略U字状の導線収納部52と、導線収納部52の背後(矢印B2方向の背面における矢印C1方向側の箇所)に形成され、巻回部38に巻回されたコイル素線18aの終端部を固定する終端固定部(導線固定部)54とから構成される。
導線収納部52は、巻回部38に巻回されたコイル素線18aの始端部又は終端部を矢印C方向に収納できるように構成されている。
すなわち、導線収納部52は、板状部材50の矢印C2方向側と矢印C1方向側とにそれぞれ立設するブロック52a、52bと、ブロック52a、52bの矢印B2方向の背面を連結する連結部52cとから構成される。ブロック52aには、矢印C方向に沿って延在し、平角線のコイル素線18aの始端部又は終端部を収納可能な幅(矢印A方向に沿った長さ)及び深さ(矢印B方向に沿った奥行き)を有する導線端部保持溝56a〜62aが、矢印A方向に所定間隔で設けられている。一方、ブロック52bにも、ブロック52aと同様に、矢印C方向に沿って延在し、コイル素線18aの始端部又は終端部を収納可能な幅及び深さを有する導線端部保持溝56b〜62bが、矢印A方向に所定間隔で設けられている。なお、図2及び図3に示すように、導線端部保持溝56aと導線端部保持溝56b、導線端部保持溝58aと導線端部保持溝58b、導線端部保持溝60aと導線端部保持溝60b、導線端部保持溝62aと導線端部保持溝62bは、互いに略同一の高さに形成されている。
また、ブロック52aにおいて導線端部保持溝56a〜62aを画成する部分は、該ブロック52aの本体部64aから矢印B1方向及び矢印C2方向に平板状に延在する庇状の壁部66a〜74aとして構成される。ブロック52bについても、ブロック52aの場合と同様に、導線端部保持溝56b〜62bを画成する部分は、ブロック52bの本体部64bから矢印B1方向及び矢印C1方向に平板状に延在する庇状の壁部66b〜74bとして構成される。なお、壁部72a、72b間は、連結部76により矢印C方向に連結されている。
ところで、ステータコア16において、各分割コア部14では、同一形状の平角線のコイル素線18aの中心部がそれぞれ巻回されてコイル18を構成する。導線収納部52では、コイル素線18aの始端部又は終端部について、平角線の長辺側を矢印A方向に沿わせた状態で矢印C方向に引き回し、各導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bに収納する。そのため、各導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bは、略同一の幅(高さ)を有する。また、各導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bのうち、最上部の導線端部保持溝56a、56bの深さは、他の導線端部保持溝58a〜62a、58b〜62bの深さよりも深く、他の導線端部保持溝58a〜62a、58b〜62bは、略同一の深さに設定されている。
そして、導線端部保持溝56aと導線端部保持溝56b、導線端部保持溝58aと導線端部保持溝58b、導線端部保持溝60aと導線端部保持溝60b、導線端部保持溝62aと導線端部保持溝62bには、互いに同じコイル素線18aの始端部又は終端部が引き回され、収納される。
具体的に、U1相〜U6相のコイル18を構成する各コイル素線18aの始端部は入力端子Uに接続され、V1相〜V6相のコイル18を構成する各コイル素線18aの始端部は入力端子Vに接続され、W1相〜W6相のコイル18を構成する各コイル素線18aの始端部は入力端子Wに接続され、全ての相(U1〜U6相、V1〜V6相、W1〜W6相)のコイル18を構成する各コイル素線18aの終端部は中性端子Nに接続される。
そのため、最も深い導線端部保持溝56a、56bには、全ての相から合計で18本のコイル素線18aの終端部が引き回されて収納される。また、導線端部保持溝56a、56bよりも浅い深さの他の導線端部保持溝58a〜62a、58b〜62bについても、導線端部保持溝58a、58bには、U1相〜U6相の合計で6本のコイル素線18aの始端部が引き回されて収納され、導線端部保持溝60a、60bには、V1相〜V6相の合計で6本のコイル素線18aの始端部が引き回されて収納され、導線端部保持溝62a、62bには、W1相〜W6相の合計で6本のコイル素線18aの始端部が引き回されて収納される。
図4及び図5に示すように、上側外周壁46a(図3参照)の矢印C2方向側の上端部は、上側巻回部本体42aよりも上方に延出することにより、巻回部38におけるコイル素線18aの巻き始めの箇所(コイル素線18aの始端部)を係止する始端固定部78として構成される。
また、図2〜図5に示すように、ブロック52bの背後には、コイル素線18aの終端部を固定する終端固定部54が配設されている。終端固定部54は、ブロック52bの背面に設けられた略直方体状の支持部80と、支持部80の矢印B2方向側で立設する第1壁部82と、第1壁部82に連接して立設する第2壁部84とを有する。
終端固定部54では、支持部80の上面とブロック52bの上部90と第1壁部82とによって、矢印C方向に延在する第1溝部86が形成されると共に、支持部80の上面とブロック52bの上部90と第2壁部84とによって、矢印B方向に延在する第2溝部88が形成される。従って、第1溝部86及び第2溝部88によって、図5の平面視で、略L字状の溝部91が構成される。
第1溝部86の幅(矢印B方向に沿った長さ)は、コイル素線18aの平角状断面における短辺の長さと略同一の長さに設定されている。また、第2壁部84の高さは、第1壁部82の高さよりも大きく、且つ、第2溝部88の幅(矢印C方向に沿った長さ)と略同一の大きさに設定されている。なお、第2壁部84には、矢印C1方向に向かうに従って矢印B1方向に傾斜する傾斜面が形成されている。また、図4に示すように、支持部80の上部は、壁部68bと連結されているため、溝部91を構成する第2溝部88は、導線端部保持溝56b(図2参照)と連通している。
このように構成される分割コア部14については、図8に示す製造装置130を用いることにより、コイル素線18aの終端部を終端固定部54に仮固定した後に、該終端部を導線端部保持溝56a、56bに引き回して収納し、一方で、コイル素線18aの始端部を導線端部保持溝58a〜62a、58b〜62bに引き回して収納することができる。
コイル素線18aの始端部及び終端部の引き回し等の製造装置130の詳細な動作については後述するが、ここでは、図6及び図7を参照して、終端固定部54に対するコイル素線18aの終端部の仮固定(溝部91へのコイル素線18aの終端部の挿入)について、概略的に説明する。
先ず、図6に示すように、分割コア部14の巻回部38に巻回されたコイル18について、コイル素線18aの巻き始め部分(始端部)を第1プーリ100に巻き取り、一方で、コイル素線18aの巻き終わり部分(終端部)を第2プーリ110に巻き取る。分割コア部14、第1プーリ100及び第2プーリ110は、ステータコア16を製造するための所定位置(分割コア部14を環状配置するためのステーションにおける所定位置)まで搬送される。
仮巻プーリとしての第1プーリ100は、コイル素線18aの始端部を巻き取る溝部102を有し、製造装置130(図8参照)を構成する中心軸104に回転可能に取り付けられる。一方、仮巻プーリとしての第2プーリ110は、コイル素線18aの終端部を巻き取る溝部112を有し、製造装置130を構成する中心軸114に回転可能に取り付けられる。なお、第1プーリ100及び第2プーリ110では、それぞれ、コイル素線18aの平角状断面の長辺が溝部102、112に沿うように該コイル素線18aの始端部又は終端部を巻き取っている。
前述のように、前記平角状断面の長辺が巻回部38の表面に沿うように、巻回部38の表面にコイル素線18aの中心部を巻回することにより、コイル18が形成される。また、導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bの矢印A方向に沿った幅は、コイル素線18aの平角線の長辺に沿った長さとされている。従って、巻回部38に巻回されているコイル素線18aの中心部と、導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bに収納されるコイル素線18aの始端部及び終端部とでは、平角状断面の配置角度が互いに異なる(略90°異なる)ことになる。
従って、コイル素線18aのうち、コイル18になる中心部と、導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bに収納される始端部及び終端部とをスムーズに連結するためには、コイル素線18aの中心部に対して始端部及び終端部をそれぞれ捻った状態で、導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bにまで引き回し収納することが好ましい。
前述のように、コイル素線18aの始端部は、第1プーリ100に巻き取られている。そこで、コイル素線18aの始端部を捻る場合には、コイル素線18aの中心部の所定位置(始点89)を捻りが始まる位置に設定すると共に、第1プーリ100をコイル素線18aの始端部に対して実際に捻りを加える位置(終点)に設定する。そして、始点89と第1プーリ100との間のコイル素線18aの始端部の一部での平角状断面を中心軸として(該始端部の一部と同軸の直線を中心軸として)、第1プーリ100を回動させることにより、始点89に対してコイル素線18aの始端部の一部を所定角度(捻り角度)だけ捻る。なお、前記所定角度は、コイル18からコイル素線18aの始端部を導線端部保持溝58a〜62a、58b〜62bにまでスムーズに引き回すことができる程度の角度であることが望ましい。
この結果、導線端部保持溝58a、58bに対して、U1相〜U6相の合計で6本のコイル素線18aの始端部を引き回して収納し、導線端部保持溝60a、60bに対して、V1相〜V6相の合計で6本のコイル素線18aの始端部を引き回して収納し、導線端部保持溝62a、62bに対して、W1相〜W6相の合計で6本のコイル素線18aの始端部を引き回して収納することができる。
一方、コイル素線18aの終端部は、第2プーリ110に巻き取られている。そこで、コイル素線18aの終端部を捻る場合には、始点89を捻りが始まる位置に設定すると共に、第2プーリ110をコイル素線18aの終端部に対して実際に捻りを加える位置(終点)に設定する。そして、始点89と第2プーリ110との間のコイル素線18aの終端部の一部での平角状断面を中心軸として(該終端部の一部と同軸の直線を中心軸として)、第2プーリ110を回動させることにより、始点89に対してコイル素線18aの終端部の一部を所定角度(捻り角度)だけ捻る。
ここで、コイル素線18aの終端部に対する捻りについて、さらに詳しく説明する。
前述のように、コイル素線18aの終端部は、終端固定部54に仮固定される。この場合、終端固定部54には、略L字状の溝部91が設けられており、コイル素線18aの終端部を溝部91に挿入することで、該終端部が終端固定部54に仮固定される。また、溝部91は、コイル18の巻回方向に沿った第1溝部86と、第1溝部86に略直交し(略90°)且つ導線端部保持溝56bに連通する第2溝部88とから構成されている。
そこで、コイル素線18aの終端部の一部(挿入部分92)が略L字状の溝部91にスムーズに挿入されるように、すなわち、始点89に対して挿入部分92が略90°捻られた状態で溝部91に挿入されるように、始点89と第2プーリ110との間のコイル素線18aの終端部の一部での平角状断面を中心軸として、第2プーリ110を回動させる。これにより、挿入部分92は略90°捻られ、この状態で溝部91に挿入される。
この結果、コイル素線18aの終端部は、略90°捻られた状態で終端固定部54に仮固定され、導線端部保持溝56a、56bに引き回されて収納される。
次に、本実施形態に係る製造装置(挿入装置)130について、図8を参照しながら説明する。
図8は、製造装置130の概略正面図である。
この製造装置130は、第1プーリ100に巻回されたコイル素線18aの始端部を導線端部保持溝58a〜62a、58b〜62bに引き回して収納させると共に、第2プーリ110に巻回されたコイル素線18aの終端部を終端固定部54の溝部91に挿入して終端固定部54に仮固定し、導線端部保持溝56a、56bに引き回して収納させることが可能な装置である。
製造装置130は、第1プーリ100の回転、回動又は移動を行わせるための第1プーリ駆動機構132と、第2プーリ110の回転、回動又は移動を行わせるための第2プーリ駆動機構134とを有し、図8の正面視で、分割コア部14に対して略左右対称に構成されている。なお、分割コア部14は、図示しないステージ等に固定されている。
第1プーリ駆動機構132は、軸部142を進退させることにより、該軸部142の先端に固定された平板状の支持部144を昇降させる駆動源140を有する。支持部144は、アーム146を支持する。アーム146の一端部には回転駆動源148が固定され、他端部には支持部材150が取り付けられている。支持部材150には、軸部材154の軸部152が回転可能に挿入されている。軸部材154には、アーム146と略平行にアーム156が延在している。
アーム146内には、回転駆動源148の軸部157の回転を軸部152に伝達するベルト等の伝達部158が内蔵されている。従って、回転駆動源148の駆動によって軸部157が回転すると、伝達部158を介して軸部152に連結された軸部材154が回転し、この結果、アーム156は、軸部材154を中心軸として回動する。
アーム156には、支持部材160を介して回転駆動源162が該アーム156の上方で支持されている。略水平方向に延在する回転駆動源162の軸部164には、第1プーリ100を支持する支持プレート166が連結されている。この場合、支持部材160の基端部は、アーム156に内蔵されたリニアアクチュエータ163を構成するガイドレール165に装着されている。ガイドレール165は、アーム156に沿って水平方向に延在し、支持部材160の基端部は、ガイドレール165に案内されるリニアアクチュエータ163のスライダとして機能する。すなわち、支持部材160は、リニアアクチュエータ163の図示しない駆動源の作用下に、ガイドレール165に沿って摺動可能である。
支持プレート166は、図8の正面視で略L字状であり、軸部164と連結される連結部166aと、連結部166aに連なり且つ第1プーリ100が配置される平板状のプーリ配置部166bとから構成される。プーリ配置部166bには、回転駆動源168が内蔵されている。回転駆動源168の軸部である中心軸104は、プーリ配置部166bから突出するように設けられている。第1プーリ100は、中心軸104に対して略同軸に保持される。従って、第1プーリ100は、回転駆動源168の駆動作用下に、中心軸104を中心として回転可能である。また、回転駆動源162の駆動によって軸部164が回転することにより、第1プーリ100及び支持プレート166は、軸部164を中心として回動する。
前述のように、軸部164は略水平方向に延在し、分割コア部14と第1プーリ100との間のコイル素線18aの始端部の一部は、図8中、軸部164に略沿って延在している。そのため、第1プーリ100及び支持プレート166が軸部164を中心として回動する際、第1プーリ100及び支持プレート166は、コイル素線18aの始端部の一部での平角状断面を中心軸として回動し、該始端部の一部を捻ることができる。また、第1プーリ100の回転によって分割コア部14と第1プーリ100の距離が変わるような場合には、リニアアクチュエータ163によりガイドレール165に沿って支持部材160を摺動させ、支持部材160、回転駆動源162、支持プレート166及び第1プーリ100を分割コア部14に対して一体的に進退させて、分割コア部14と第1プーリ100との間の距離を調整すればよい。
一方、第2プーリ駆動機構134は、第1プーリ駆動機構132と略同様の構成を有する。
すなわち、第2プーリ駆動機構134は、軸部172を進退させることにより、該軸部172の先端に固定された平板状の支持部174を昇降させる駆動源(第3駆動部)170を有する。また、支持部174が支持するアーム176の一端部には回転駆動源(第3駆動源)178が固定され、他端部には支持部材180が取り付けられている。支持部材180には、軸部材184の軸部182が回転可能に挿入され、該軸部材184には、アーム176と略平行にアーム186が延在している。アーム176内には、回転駆動源178の軸部187の回転を軸部182に伝達する伝達部188が内蔵されており、回転駆動源178の駆動によって軸部187が回転すると、伝達部188を介して軸部182に連結された軸部材184が回転する。この結果、アーム186は、軸部材184を中心軸として回動する。
アーム186には、支持部材190を介して回転駆動源(第2駆動部)192がアーム186の上方で支持される。回転駆動源192の軸部194には、第2プーリ110を支持する支持プレート196が連結されている。この場合、支持部材190の基端部は、アーム186に内蔵されたリニアアクチュエータ193のガイドレール195に装着されている。ガイドレール195は、アーム186に沿って水平方向に延在しており、支持部材190は、リニアアクチュエータ193の図示しない駆動源の作用下に、ガイドレール195に沿って摺動可能なスライダとして機能する。
支持プレート196は、軸部194と連結される連結部196aと、連結部196aに連なり且つ第2プーリ110が配置される平板状のプーリ配置部196bとから構成される。プーリ配置部196bには、回転駆動源(第1駆動部)198が内蔵されている。回転駆動源198の軸部である中心軸114は、プーリ配置部196bから突出するように設けられ、第2プーリ110は、中心軸114に対して略同軸に保持される。従って、第2プーリ110は、回転駆動源198の駆動作用下に、中心軸114を中心として回転可能である。また、回転駆動源192の駆動によって軸部194が回転することにより、第2プーリ110及び支持プレート196は、軸部194を中心として回動する。
軸部194は略水平方向に延在し、分割コア部14と第2プーリ110との間のコイル素線18aの終端部の一部は、図8中、軸部194に略沿って延在しているため、第2プーリ110及び支持プレート196が軸部194を中心として回動する際、第2プーリ110及び支持プレート196は、コイル素線18aの終端部の一部での平角状断面を中心軸として回動し、該終端部の一部を捻ることができる。また、第2プーリ110の回転によって分割コア部14と第2プーリ110の距離が変わるような場合には、リニアアクチュエータ193によりガイドレール195に沿って支持部材190を摺動させ、支持部材190、回転駆動源192、支持プレート196及び第2プーリ110を分割コア部14に対して一体的に進退させて、分割コア部14と第2プーリ110との間の距離を調整すればよい。
次に、製造装置130の動作(挿入方法)について、図8〜図21を参照しながら説明する。なお、この説明では、必要に応じて、図1〜図7も参照しながら説明する。
ここでは、コイル18が形成された1個の分割コア部14の終端固定部54にコイル素線18aの終端部を仮固定し、その後、コイル素線18aの始端部及び終端部を導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bに引き回して収納する場合について説明する。なお、図9A〜図17Bでは、製造装置130による分割コア部14、第1プーリ100及び第2プーリ110の位置関係についてのみ図示し、製造装置130の構成については図示を省略する。
製造装置130は、下記の第1〜第4の工程を実行する。
第1の工程では、コイル素線18aの終端部の捻りが始まる始点89と、該コイル素線18aの終端部に対して捻りを加える終点としての第2プーリ110との間の箇所(図6の挿入部分92)を溝部91に挿入するために、予備実験等で求めておいた第2プーリ110での捻り角度(捻り量)と挿入部分92での捻り角度との相関関係(図18A及び図18B参照)を用いて、挿入部分92を溝部91に挿入するために適切な挿入部分92での捻り角度(本実施形態では略90°)に応じた回動角度(捻り角度)で、第2プーリ110を回動させる(図9A〜図13B参照)。
第2の工程では、第1の工程によって捻られた挿入部分92を溝部91に挿入する(図14A〜図15B参照)。
第3の工程では、第2の工程による溝部91への挿入部分92の挿入後、第2プーリ110を第1の工程での回動方向とは逆方向に回動させて、挿入部分92での捻りを戻す(図16A及び図16B参照)。
第4の工程では、コイル素線18aの始端部及び終端部を導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bまで引き回して収納する(図17A及び図17B参照)。
なお、第1の工程に先立ち、巻回部38に巻回されたコイル18から飛び出たコイル素線18aの始端部を第1プーリ100に巻き取ると共に、コイル素線18aの終端部を第2プーリ110に巻き取る工程を行う必要があることは勿論である。この場合、例えば、第2プーリ110については、溝部200(図9A、図11A、図13A、図14A及び図15A参照)にコイル素線18aの終端部の先端部分を挿入した状態で、該終端部を巻き取ることが望ましい。また、図9A、図11A、図13A、図14A及び図15Aにおいて、参照符号の202は、中心軸114が貫通する孔部202である。
次に、第1〜第4の工程の詳細について、順に説明する。
第1の工程では、先ず、図8〜図9Bに示すように、分割コア部14、第1プーリ100及び第2プーリ110を製造装置130に搬送し、分割コア部14の天地を逆転させて図示しないステージに配置する。また、第1プーリ駆動機構132を構成する中心軸104に第1プーリ100を回転可能に保持させると共に、第2プーリ駆動機構134を構成する中心軸114に第2プーリ110を回転可能に保持させる。
なお、図9A及び図9Bに示すように、コイル18の中心軸と第2プーリ110の中心軸とが同一方向(図6の矢印B方向)であれば、コイル素線18aの終端部に対する捻りは発生しない。すなわち、図9A及び図9Bの状態は、始点89に対するコイル素線18aの終端部の捻り角度(捻り量)が略0°の初期状態である。
そして、第1の工程では、図10A〜図13Bに示すように、図9A及び図9Bの初期状態に対して、第2プーリ110を360°回動させる。
ここで、回動角度を図9A及び図9Bの初期状態に対して360°とした理由について説明する。
図18Aは、コイル素線18aの終端部における始点89からの距離(捻り距離)と、各捻り距離で前記終端部が捻られる角度(捻り角度)との相関関係を示す説明図であり、図18Bは、図18Aの相関関係を示すグラフである。
図18Aに示すように、コイル素線18aの終端部を始点89に対して捻った場合、捻り距離と捻り角度との間には、図18Bに示す相関関係が得られる。すなわち、始点89から捻り距離L毎にコイル素線18aの終端部は90°捻られる。従って、始点89から捻り距離4Lの位置を捻りを加える終点として、該終点で360°捻ると、始点89から距離Lの箇所では90°捻られることになる。
前述のように、終端固定部54の溝部91は、平面視で略L字状、すなわち、略90°曲がっているため、挿入部分92が90°曲がるように挿入部分92を予め捻れば、溝部91に挿入部分92を容易に挿入して仮固定することができる。すなわち、溝部91が距離Lの箇所であれば、終点としての第2プーリ110で余分に捻ると、挿入部分92を所望の捻り角度(90°)で捻ることができる。
そこで、第1の工程では、先ず、リニアアクチュエータ193を駆動させて、ガイドレール195に沿って支持部材190を摺動させ、分割コア部14に対して第2プーリ110を進退させることにより、始点89と前記終点である第2プーリ110との間の距離が捻り距離4Lとなるように調整する。次に、始点89と第2プーリ110との間のコイル素線18aの終端部の一部における平角状断面を中心軸として、始点89に対し第2プーリ110を360°回動させることにより、挿入部分92に90°の捻りを与える。すなわち、製造装置130の第2プーリ駆動機構134は、図9A及び図9Bに示す状態から360°だけ第2プーリ110を回動させればよい。
具体的に、第2プーリ駆動機構134は、下記のように動作すればよい。
先ず、リニアアクチュエータ193の図示しない駆動源を駆動させて、ガイドレール195に沿って支持部材190の基端部を摺動させる。これにより、分割コア部14に対して、支持部材190、回転駆動源192、支持プレート196及び第2プーリ110が一体的に進退する。従って、始点89と第2プーリ110(の中心)との間の距離が捻り距離4Lとなるまで、前記駆動源を駆動させて、前記距離の調整作業を行う。
始点89と第2プーリ110との間の距離が捻り距離4Lに調整された状態で、前記駆動源の駆動を停止させる一方で、回転駆動源192を駆動させて軸部194を回転させる。これにより、支持プレート196及び第2プーリ110は、図10A及び図10Bに示すように、軸部194(図8参照)を中心に90°回動する。
この場合、始点89と第2プーリ110との間のコイル素線18aの終端部の一部は、軸部194と略同じ高さにあるため(図8参照)、該終端部の一部と軸部194とを略同軸にして、軸部194を中心に90°回動させれば、第2プーリ110は、コイル素線18aの終端部の一部における平角状断面を中心軸として、始点89に対し90°回動することになる。しかも、仮巻プーリである第2プーリ110の溝部112にコイル素線18aの終端部が巻き取られているため、第2プーリ110を回動させると、該第2プーリ110の回動力がコイル素線18aの終端部の一部に伝わり、該終端部の一部に対してテンションTをかけながら容易に捻ることができる。
なお、垂直軸204は、巻回部38におけるコイル18の巻き終わり部分に沿った軸であり、始点89は、垂直軸204に沿って設けられている。また、水平軸206は、回動前の第2プーリ110に沿った軸である。図9B、図10B、図11B、図12B、図13B、図14B、図15B及び図16Bに示すように、水平軸206と垂直軸204との交点210は、側面視で、終端固定部54に設定されている。従って、交点210を中心に、あるいは、交点210近傍を中心に、第2プーリ110を回動させることにより、コイル素線18aの終端部の一部における平角状断面を中心軸として、該第2プーリ110を効率よく回動させ、コイル素線18aの終端部の一部を捻ることができる。
次に、回転駆動源192の駆動を継続することで軸部194をさらに回転させると、支持プレート196及び第2プーリ110は、図11A及び図11Bに示すように、軸部194を中心にさらに90°回動する。すなわち、第2プーリ110は、コイル素線18aの終端部の一部における平角状断面を中心軸として、90°さらに回動し、コイル素線18aの終端部の一部をさらに捻ることができる。
回転駆動源192の駆動を継続して軸部194をさらに回転させると、支持プレート196及び第2プーリ110は、図12A及び図12Bに示すように、軸部194を中心にさらに90°回動するため、コイル素線18aの終端部の一部をさらに捻ることができる。
次に、回転駆動源192の駆動をさらに継続して軸部194を回転させることにより、図13A及び図13Bに示すように、軸部194を中心に、支持プレート196及び第2プーリ110をさらに90°回動する。この結果、図9A及び図9Bの状態に対して、支持プレート196及び第2プーリ110を合計で360°回動させることができる。すなわち、始点89に対して第2プーリ110を360°回動させることにより、コイル素線18aの終端部の一部としての挿入部分92に、略90°の捻り角度を与えることができる。このように、図9A及び図9Bの状態に対して、合計で360°回動した時点で、回転駆動源192の駆動を停止させる。
以上が第1の工程に対する説明である。
次に、第2の工程では、図14A〜図15Bに示すように、90°捻られた挿入部分92を終端固定部54の溝部91に挿入することにより、コイル素線18aの終端部を終端固定部54に仮固定する。
そのためには、先ず、駆動源170(図8参照)を駆動させて軸部172を退動させることにより支持部174を下降させる。これにより、支持部174に支持されたアーム176、アーム186、回転駆動源192、支持プレート196及び第2プーリ110が一体的に下降する。この結果、図14A及び図14Bに示すように、挿入部分92を含むコイル素線18aの終端部にテンションをかけながら第2プーリ110を下降させることになる。
次に、駆動源170の駆動を一旦停止させた後に、該駆動源170の駆動を再開させて、今度は、軸部172を進行させて支持部174を上昇させる。これにより、支持部174に支持されたアーム176、アーム186、回転駆動源192、支持プレート196及び第2プーリ110が一体的に上昇する。この結果、図15A及び図15Bに示すように、挿入部分92を含むコイル素線18aの終端部にテンションをかけながら第2プーリ110を上昇させ、挿入部分92を溝部91に挿入することができる。
図19A〜図20Cは、挿入部分92に対する捻りを、溝部91に向かう方向に捻った場合(図19A〜図19Cの時計方向に捻った場合(比較例))と、溝部91から離間する方向に捻った場合(図20A〜図20Cの反時計方向に捻った場合(実施例))とを比較したものである。
比較例では、図19A〜図19Cの時計方向に挿入部分92(コイル素線18aの終端部)を捻る。このように捻った状態で挿入部分92を溝部91に挿入すると、挿入部分92が第1壁部82又は第2壁部84に衝突して、挿入部分92に傷が付くおそれがある。
これに対して、実施例では、図20A〜図20Cの反時計方向に挿入部分92を捻っている。そのため、このような捻り状態で挿入部分92を溝部91に挿入した場合、挿入部分92の捻りが足りないことにより、該挿入部分92が第1壁部82又は第2壁部84に接触しても、挿入部分92には、図20Cで反時計方向の矢印に示す力が作用するため、挿入部分92に傷を付けることなく、該挿入部分92を溝部91に容易に挿入することができる。
従って、図8の製造装置130では、第1の工程において、図20A〜図20Cに示す実施例のように、挿入部分92を捻ることが好ましい。
このようにして溝部91に挿入部分92が挿入された状態で、次の第3の工程が行われる。
第3の工程では、図16A及び図16Bに示すように、図10A〜図13Bに示す回動方向とは逆方向に、第2プーリ110を−270°回動させて、挿入部分92の捻りを戻す。具体的には、回転駆動源192を駆動させて軸部194を逆回転させることにより、図16A及び図16Bに示すように、軸部194を中心に、支持プレート196及び第2プーリ110を−270°回動させ、挿入部分92の捻りを戻す。このようにして、−270°回動した後、回転駆動源192の駆動を停止させる。
次に、第4の工程において、第1プーリ100を移動させてコイル素線18aの始端部を導線端部保持溝58a〜62a、58b〜62bまで引き回して収納する一方で、第2プーリ110を移動させてコイル素線18aの終端部を導線端部保持溝56a、56bまで引き回して収納する(図17A及び図17B参照)。
具体的に、第1プーリ100を移動させるためには、先ず、回転駆動源148(図8参照)を駆動させて軸部157を回転させる。これにより、軸部157の回転は、伝達部158を介して軸部152に伝達され、アーム156、回転駆動源162、支持プレート166及び第1プーリ100は、軸部材154を中心軸として回動する。また、回転駆動源168を駆動して中心軸104及び第1プーリ100を回転させる。これにより、図17Aの側面視で、第1プーリ100を水平方向に移動させながら、該第1プーリ100の溝部102に巻き取られたコイル素線18aの始端部を分割コア部14に向けて繰り出すことができるため、コイル素線18aの始端部を導線端部保持溝58a〜62a、58b〜62bにまで引き回して収納することができる。
図17Aでは、コイル素線18aの始端部を導線端部保持溝60a、60bに引き回して収納する場合を図示しているが、他の導線端部保持溝58a、58b、62a、62bにコイル素線18aの始端部を引き回して収納する場合には、駆動源140を駆動させて、軸部142に連結された支持部144を昇降させて、第1プーリ100の高さを、導線端部保持溝58a、58b、62a、62bの位置に応じた高さに調整した後に、上記の収納動作を行えばよい。
一方、第2プーリ110を移動させるためには、先ず、回転駆動源178(図8参照)を駆動させて軸部187を回転させ、軸部187の回転を伝達部188を介して軸部182に伝達することにより、アーム186、回転駆動源192、支持プレート196及び第2プーリ110を、軸部材184を中心軸として回動させる。また、回転駆動源198を駆動して中心軸114及び第2プーリ110を回転させる。これにより、図17Bの側面視で、第2プーリ110を水平方向に移動させながら、該第2プーリ110の溝部112に巻き取られたコイル素線18aの終端部を分割コア部14に向けて繰り出すことができるため、コイル素線18aの終端部を導線端部保持溝56a、56bにまで引き回して収納することができる。
この場合でも、第2プーリ110の高さが、導線端部保持溝56a、56bの位置に応じた高さに調整されていない場合には、駆動源170を駆動させて、軸部172に連結された支持部174を昇降させ、第2プーリ110の高さを調整すればよい。
なお、上記の第1〜第4の工程において、第2プーリ110の回転によって、第2プーリ110と分割コア部14(の始点89)との間の距離が変化するような場合には、必要に応じてリニアアクチュエータ193を駆動させ、ガイドレール195に沿って支持部材190を摺動させ、分割コア部14に対して第2プーリ110を進退させることにより、前記距離が所望の距離(例えば、捻り距離4L)となるように適宜調整すればよい。
第1〜第4の工程を経て、コイル素線18aの始端部及び終端部が導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bに収納された後は、プーリ配置部166bから第1プーリ100を取り外すと共に、プーリ配置部196bから第2プーリ110を取り外せばよい。
なお、上記の説明では、第2プーリ110を360°捻ることにより挿入部分92を90°捻る場合について説明した。実際には、第2の工程で捻った後に、第3の工程で捻りを戻すと、挿入部分92から第1壁部82及び第2壁部84に不用意に負荷がかかり、第1壁部82及び第2壁部84に割れが発生するおそれがある。
図21は、溝部91への挿入部分92の挿入後、時点t0で挿入部分92の捻りを戻した場合に、挿入部分92から第1壁部82及び第2壁部84に負荷がかかることで第1壁部82及び第2壁部84に作用する応力を示したものである。
図21で図示された角度は、第2プーリ110での捻り角度を示しており、上述した360°で捻った場合よりも、390°で捻った場合の方が応力の絶対値が小さくなる。また、420°及び450°のように、さらに捻った場合には、応力の絶対値が390°の場合よりも大きくなる結果が得られた。
従って、本実施形態では、図18A及び図18Bに示す相関関係で得られる捻り角度(例えば、360°)よりも所定角度(+5°〜+30°)付加した捻り角度で、コイル素線18aの終端部(挿入部分92)を余分に捻れば、第3の工程で捻りを戻した際に、第1壁部82及び第2壁部84に作用する応力を低下させることができる。これは、挿入部分92を余分に捻れば、該挿入部分92に捻り癖が付き、第3の工程で捻りを戻しても、捻り癖が付いたヒステリシスの状態で戻るためである。この結果、挿入部分92から第1壁部82及び第2壁部84にかかる負荷を緩和でき、第1壁部82及び第2壁部84に割れの発生を回避することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る挿入方法及び挿入装置(製造装置130)によれば、コイル素線18aの終端部に対して捻りを加える終点としての第2プーリ110での捻り角度と、溝部91に挿入される挿入部分92での捻り角度との相関関係を予備実験等により求めておき、この相関関係に基づいて、溝部91への挿入部分92の挿入に適した第2プーリ110での捻り角度を決定する。
これにより、決定した捻り角度で第2プーリ110を捻れば、溝部91に挿入される挿入部分92での捻り角度が、該溝部91への挿入に適した所望の捻り角度となるため、捻り角度を調整するための時間を短縮して、挿入部分92を速やかに溝部91に挿入することが可能となる。従って、本実施形態によれば、コイル素線18aの終端部を捻って溝部91に挿入する動作を短時間で効率よく行うことができる。
また、本実施形態では、コイル素線18aの終端部を第2プーリ110に巻き取った状態で、コイル素線18aの終端部における平角状断面を中心軸として第2プーリ110を回動させる。これにより、前記中心軸を中心としてコイル素線18aの終端部を捻ることになるため、第2プーリ110と、捻りが始まる始点89及び挿入部分92との距離が短くなり、小さな回動量でもコイル素線18aの終端部を十分に捻ることができる。
また、コイル素線18aの終端部を第2プーリ110に巻き取ることにより、製造装置130の小型化を実現することができると共に、コイル素線18aの終端部を捻って溝部91に挿入する工程を容易に自動化することができる。
しかも、仮巻プーリである第2プーリ110の溝部112にコイル素線18aの終端部が巻き取られているため、第2プーリ110を回動させると、該第2プーリ110の回動力がコイル素線18aの終端部に伝わり、該終端部を容易に捻ることができる。
さらに、上述の予備実験で求まる相関関係に基づいた捻り角度に対して、さらに所定角度付加して第2プーリ110を捻ることにより、コイル素線18aの終端部が余分に捻られて、挿入部分92に捻り癖が付く。この結果、溝部91に挿入部分92を挿入した後に該挿入部分92の捻りを戻しても、捻り癖が付いたヒステリシスの状態で戻るため、挿入部分92から第1壁部82及び第2壁部84にかかる負荷が緩和され、第1壁部82及び第2壁部84の割れの発生を回避することができる。
なお、第1壁部82及び第2壁部84の厚みを増やして、第1壁部82及び第2壁部84の剛性を高めた場合、挿入部分92の捻りを戻して、挿入部分92から第1壁部82及び第2壁部84に不用意に負荷がかかっても、第1壁部82及び第2壁部84の割れの発生を回避できることは勿論である。
また、始点89から溝部91までの長さLに対して、始点89から第2プーリ110までの長さが4L(4倍)であれば、前記相関関係に基づいて第2プーリ110を略360°捻れば、溝部91に挿入される挿入部分92を略90°捻ることができる。この結果、略L字状の溝部91に挿入部分92を容易に挿入することが可能となる。
本発明は上記した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。