略号および定義
下記の定義および方法は、本発明をより良く規定するために、また、本発明の実施において当業者に指針を与えるために提供される。別途記される場合を除き、用語は、関連分野の当業者による従来の用法に従って理解されるものとする。
別途示される場合を除き、本明細書中に記載されるアルキル基は好ましくは、1個〜8個の炭素原子を主鎖に含有し、最大でも20個の炭素原子を含有する低級アルキルである。そのようなアルキル基は直鎖または分岐鎖あるいは環状である場合があり、これらには、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシルおよびシクロヘキシルなどが含まれる。
用語「アミン(amine)」または用語「アミノ(amino)」は、本明細書中において単独で使用される場合または別の基の一部として使用される場合、式−N(R8)(R9)の基を表し、ただし、式中、R8およびR9は独立して、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、シリルであるか、あるいは、R8およびR9は一緒になって、置換または非置換の環式成分または多環式成分を形成し、それぞれが、そのような用語に関連して定義される場合、典型的には3個〜8個の原子を環に有する。例えば、「置換(された)アミン(substituted amine)」は、R8およびR9のうちの少なくとも1つが水素以外である式−N(R8)(R9)の基を示す。例えば、「非置換(の)アミン」は、R8およびR9がともに水素である式−N(R8)(R9)の基を示す。
用語「アルコキシド(alkoxide)」は、本明細書中で使用される場合、脱プロトン化されたアルコールを示し、典型的には、M1が金属であるM1−ORの形態の金属錯体を記載するために使用される。
用語「アミド(amide)」は、金属錯体に関連して本明細書中で使用される場合、M1が金属であるM1−N(R8)(R9)の形態の金属錯体を示す。
用語「アリール(aryl)」は、本明細書中において単独で使用される場合または別の基の一部として使用される場合、必要に応じて置換された同素環式芳香族基、好ましくは、6個〜12個の炭素を環部分に含有する単環式基または二環式基、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニルまたは置換ナフチルなどを示す。フェニルおよび置換フェニルが、より好ましいアリールである。
用語「アノードエレクトロクロミック層(anodic electrochromic layer)」および用語「アノードエレクトロクロミック材料(anodic electrochromic material)」は、イオンおよび電子が除かれたとき、電磁放射線に対する透過性がより小さくなる電極層または電極材料をそれぞれ示す。
用語「消色(bleach)」は、第1の光学的状態から第2の光学的状態へのエレクトロクロミック材料の移行で、第1の光学的状態が第2の光学的状態よりも透過性でない場合における移行を示す。
用語「消色状態安定化元素(bleached state stabilizing element)」は、本明細書中で使用される場合、リチウムニッケル酸化物の消色状態電圧を、例えば、完全な消色状態の透過率を低下させることによるか、または、完全な消色状態の色座標における変化を生じさせること(例えば、前記完全な消色状態に対する黄色または褐色の色相をもたらすことなど)によるその完全な消色状態の透過率への悪影響をもたらすことなく増大させるように作用する元素を意味する。一般に、消色状態安定化元素は、無色であるか、または軽く着色した酸化物固体としてその最高酸化状態(すなわち、形式的にはd0)において容易に生じ、かつ、最高酸化状態が3+以上であるそのような元素である。
用語「消色状態電圧(bleached state voltage)」は、1Mの過塩素酸リチウムを含有する炭酸プロピレン溶液における電気化学的セルでのLi/Li+に対するアノードエレクトロクロミック層の開路電圧(VOC)を示す(ただし、このとき、前記層の透過率はその「完全な消色状態」の透過率の95%である)。
用語「カソードエレクトロクロミック層(cathodic electrochromic layer)」および用語「カソードエレクトロクロミック材料(cathodic electrochromic material)」は、イオンおよび電子が挿入されたとき、電磁放射線に対する透過性がより小さくなる電極層または電極材料をそれぞれ示す。
用語「着色効率(coloration efficiency)」または用語「CE」は、層の光学密度がその電荷状態の関数としてどのように変化するかを定量化するエレクトロクロミック層の特性を示す。CEは、構造、材料相および/または組成における違いにより層の調製に大きく依存して変化し得る。これらの違いが、色として明らかとなる電子遷移の確率に影響を与える。そのようなものとして、CEは、様々なレドックス中心の正体、それらの局所的環境およびそれらの相対的比率の集合を包含するエレクトロクロミック層の高感度かつ定量的な記述子である。CEは、通過した電荷密度の量に対する光学的吸光度における変化の比率から計算される。反射率における著しい変化がない場合、この波長依存的性質を、下記の式を使用して目的とする遷移にわたって見積もることができる:
式中、QAは通過面積あたりの電荷であり、Tiniは初期透過度であり、Tfinalは最終透過度である。アノード着色層については、この値は負であり、絶対値(非負の値)で述べられる場合もある。透過度および電荷を同時に測定する簡便な電気光学的機構を、CEを計算するために使用することができる。代替では、最後の透過状態を電気的切り換えの前後でエクスシチュー法で測定することができる。CEはときには代わりに、自然対数に基づいて報告されることがあり、そのような場合には、報告された値はおよそ2.3倍大きい。
用語「着色する(darken)」は、第1の光学的状態から第2の光学的状態へのエレクトロクロミック材料の移行で、第1の光学的状態が第2の光学的状態よりも透過性である場合における移行を示す。
用語「エレクトロクロミック材料(electrochromic material)」は、イオンおよび電子の挿入または取り出しの結果として電磁放射線に対する透過率において可逆的に変化する材料を示す。例えば、エレクトロクロミック材料は、着色した半透明な状態と、透明な状態との間で変化する場合がある。
用語「エレクトロクロミック層(electrochromic layer)」は、エレクトロクロミック材料を含む層を示す。
用語「電極層(electrode layer)」は、イオンおよび電子を伝えることができる層を示す。電極層は、イオンが当該材料に挿入されるときには還元され得る化学種を含有し、また、イオンが当該層から取り出されるときには酸化され得る化学種を含有する。電極層における化学種の酸化状態のこの変化がデバイスにおける光学的性質の変化を担っている。
用語「電気的電位(electrical potential)」または単に用語「電位(potential)」は、電極/イオン導体/電極の組立て品を含むデバイスの両端に存在する電圧を示す。
用語「電気化学的かつ光学的に一致した(electrochemically and optically matched)」(EOM)は、類似する電荷容量を有する一組のカソードエレクトロクロミック薄膜およびアノードエレクトロクロミック薄膜であって、好適なイオン伝導性層および電気絶縁層によって接続されたとき、可逆的な切り換え挙動および大きい切り換え電流を示す機能的なエレクトロクロミックデバイスが形成されるようにそれらの相補的な光学的状態にある(例えば、ともにそれらの消色状態にある、または、ともにそれらの着色状態にある、または、ともに着色の中間状態にある)ものを示す。
用語「完全な消色状態(fully bleached state)」は、アノードエレクトロクロミック材料に関連して使用される場合、(無水条件下およびAr雰囲気で)1Mの過塩素酸リチウムを含有する炭酸プロピレン溶液において25℃でLi/Li+に対して1.5V以上である電気化学的セルにおけるアノードエレクトロクロミック層の最大透過率の状態を示す。
用語「ハライド(halide)」、用語「ハロゲン(halogen)」または用語「ハロ(halo)」は、本明細書中において単独で使用される場合または別の基の一部として使用される場合、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素を示す。
用語「ヘテロ原子(heteroatom)」は、炭素および水素を除く原子を意味するものとする。
用語「炭化水素(hydrocarbon)」および用語「ヒドロカルビル(hydrocarbyl)」は、本明細書中で使用される場合、炭素および水素の元素からもっぱらなる有機化合物または有機基を表す。これらの成分には、アルキル成分、アルケニル成分、アルキニル成分およびアリール成分が含まれる。これらの成分にはまた、他の脂肪族炭化水素基または環式炭化水素基により置換されるアルキル成分、アルケニル成分、アルキニル成分およびアリール成分、例えば、アルカリール、アルケンアリールおよびアルキンアリールなどが含まれる。別途示される場合を除き、これらの成分は好ましくは、1個〜20個の炭素原子を含む。
用語「岩塩(rock salt)」は、本明細書中で使用される場合、金属カチオン(「M」)が立方晶構造の八面***置のすべてを占め、それにより、MOの化学量論をもたらす立方晶構造を表す。さらには、金属が同じ元素であるか、または、異なる元素のランダムな分布であるかどうかにかかわらず、これらの金属は互いに区別することができない。
用語「シリル(silyl)」は、本明細書中で使用される場合、一般式−Si(X8)(X9)(X10)(式中、X8、X9およびX10は独立して、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである)の置換基を表す。
本明細書中に記載される「置換(された)ヒドロカルビル(substituted hydrocarbyl)」成分は、炭素鎖原子がヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素、イオウまたはハロゲン原子など)により置換される成分を含めて、炭素以外の少なくとも1つの原子により置換されるヒドロカルビル成分である。これらの置換基には、ハロゲン、ヘテロシクロ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステル、エーテルおよびチオエーテルが含まれる。
用語「透過率(transmissivity)」は、エレクトロクロミック薄膜を通って伝えられる光の割合を示す。別途述べられる場合を除き、エレクトロクロミック薄膜の透過率は、数字のTvisによって表される。Tvisは、透過スペクトルを、分光的明所視効率(spectral photopic efficiency)I_p(ラムダ)(CIE、1924)を重みづけ因子として使用して400nm〜730nmの波長範囲で積分することによって計算される/得られる(参考文献:ASTM E1423)。
用語「透明な(transparent)」は、電磁放射線が材料を通過して実質的に伝わり、これにより、例えば、材料の彼方または背後に位置する物体が、適切な画像検知技術を使用して明瞭に視認または画像化され得るようになることを示すために使用される。
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明の1つの局面によれば、リチウムニッケル酸化物と、ニオブ、タンタルまたはそれらの組合せとを含み、様々な望ましい性質および特徴を有するアノードエレクトロクロミック層が調製され得る。例えば、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック材料は、2.0Vを著しく超える消色状態電圧値を有する場合がある。別の実施形態において、アノードエレクトロクロミック材料は、エレクトロクロミックデバイスでの使用のためにその完全な消色状態でカソードエレクトロクロミック材料に対して電気化学的かつ光学的に一致した(EOM)状態で提供される。別の実施形態において、アノードエレクトロクロミック材料は比較的安定であり、例えば、リチウムニッケル酸化物材料は周囲空気の存在下における高い温度でその完全な消色状態から着色しないか、または、失活すること(例えば、透明なままであるが、エレクトロクロミック性のアノード材料またはアノード薄膜としてもはや機能しなくなること)がない。
好都合には、ニオブおよびタンタルにより、有利な消色状態特徴を有するエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料の形成が促進される。別の実施形態において、エレクトロクロミック性酸化ニッケル材料はニオブを含む。別の実施形態において、エレクトロクロミック性酸化ニッケル材料はタンタルを含む。別の実施形態において、エレクトロクロミック性酸化ニッケル材料はニオブおよびタンタルを含む。別の実施形態において、エレクトロクロミック性酸化ニッケル材料はニオブを含み、しかし、タンタルを含まない。別の実施形態において、エレクトロクロミック性酸化ニッケル材料はタンタルを含み、しかし、ニオブを含まない。
ある特定の実施形態において、アノードエレクトロクロミック材料は、回折技術(例えば、電子線回折(「ED」)分析およびX線回折(「XRD」)分析など)による少なくとも2.5Åの最大d間隔によって特徴づけられる。例えば、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック材料は、少なくとも2.75Åの最大d間隔によって特徴づけられる。さらなる例として、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック材料は、少なくとも3Åの最大d間隔によって特徴づけられる。さらなる例として、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック材料は、少なくとも3.5Åの最大d間隔によって特徴づけられる。さらなる例として、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック材料は、少なくとも4Åの最大d間隔によって特徴づけられる。さらなる例として、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック材料は、少なくとも4.5Åの最大d間隔によって特徴づけられる。さらなる例として、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック材料は、銅のKα線により測定されるとき、0度(2θ)〜80度(2θ)の間でのXRDパターンにおける少なくとも1つの反射ピークの存在によって測定されるような長距離秩序を示す。さらなる例として、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック材料は、銅のKα線により測定されるとき、26度(2θ)未満でのXRDパターンにおける少なくとも1つの反射ピークの存在によって測定されるような長距離秩序を示す。前記例のそれぞれにおいて、アノードエレクトロクロミック材料は、ニオブ、タンタルまたはそれらの組合せを含んでもよい。1つのそのような実施形態において、リチウムニッケル酸化物組成物はニオブを含む。別のそのような実施形態において、リチウムニッケル酸化物組成物はタンタルを含む。
ある特定の実施形態において、アノードエレクトロクロミック材料は、少なくとも19cm2/Cの着色効率絶対値(非負値)によって特徴づけられる(あるいは、−19cm2/C、−20cm2/C、−21cm2/Cなどの負の値として表される)。さらなる例として、アノードエレクトロクロミック材料は着色効率を約−19cm2/C〜約−60cm2/Cの範囲に有する。さらなる例として、アノードエレクトロクロミック層は着色効率を約−24cm2/C〜約−32cm2/Cの範囲に有する。
本発明の1つの局面によれば、エレクトロクロミック層におけるリチウムの量の、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比(すなわち、Li:[Ni+Ta])が一般には少なくとも約0.4:1であるよう、アノードエレクトロクロミック層におけるリチウム、ニッケルおよびタンタルの相対量が制御される。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック層におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約0.75:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック層におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約0.9:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック層におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約1:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック層におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約1.25:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約1.5:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約2:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約2.5:1である。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約4:1を超えないであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.75:1から約3:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.9:1から約2.5:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約1:1から約2.5:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約1.1:1から約1.5:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約1.5:1から約2:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約2.1:1から約2.5:1までの範囲にあるであろう。
本発明の1つの局面によれば、アノードエレクトロクロミック層がその完全な消色状態にあるとき、アノードエレクトロクロミック層におけるリチウムの量の、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比(すなわち、Li:[Ni+Ta])が一般には1.75:1よりも小さくなるよう、アノードエレクトロクロミック層におけるリチウム、ニッケルおよびタンタルの相対量が制御される。例えば、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック層がその完全な消色状態にあるとき、アノードエレクトロクロミック層におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.5:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.45:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.4:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.35:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.3:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.25:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.2:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.15:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.1:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.05:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.4:1から1.5:1までの範囲にある。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.5:1から1.4:1までの範囲にある。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.6:1から1.35:1までの範囲にある。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.7:1から1.35:1までの範囲にある。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.8:1から1.35:1までの範囲にある。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.9:1から1.35:1までの範囲にある。
本発明の1つの局面によれば、アノードエレクトロクロミック層におけるリチウムの量の、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比(すなわち、Li:[Ni+Nb])が一般には少なくとも約0.4:1であるよう、アノードエレクトロクロミック層におけるリチウム、ニッケルおよびニオブの相対量が制御される。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約0.75:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約0.9:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約1:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約1.25:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約1.5:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約2:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約2.5:1である。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、約4:1を超えないであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.75:1から約3:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.9:1から約2.5:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、約1:1から約2.5:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、約1.1:1から約1.5:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、約1.5:1から約2:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、約2:1から約2.5:1までの範囲にあるであろう。
本発明の1つの局面によれば、アノードエレクトロクロミック層がその完全な消色状態にあるとき、アノードエレクトロクロミック層におけるリチウムの量の、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比(すなわち、Li:[Ni+Nb])が一般には約1.75:1よりも小さくなるよう、アノードエレクトロクロミック層におけるリチウム、ニッケルおよびニオブの相対量が制御される。例えば、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.5:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.45:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.4:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.35:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.3:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.25:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.2:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.15:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.1:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.05:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、1:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.4:1から1.5:1までの範囲にある。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.5:1から1.4:1までの範囲にある。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.6:1から1.35:1までの範囲にある。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.7:1から1.35:1までの範囲にある。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.8:1から1.35:1までの範囲にある。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.9:1から1.35:1までの範囲にある。
本発明の1つの局面によれば、アノードエレクトロクロミック層におけるリチウムの量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比(すなわち、Li:[Ni+Nb+Ta])が一般には少なくとも約0.4:1となるよう、アノードエレクトロクロミック層におけるリチウム、ニッケル、ニオブおよびタンタルの相対量が制御される。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約0.75:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約0.9:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約1:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約1.25:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約1.5:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約2:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約2.5:1である。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約4:1を超えないであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.75:1から約3:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.9:1から約2.5:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約1:1から約2.5:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約1.1:1から約1.5:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約1.5:1から約2:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、アノードエレクトロクロミック層におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約2:1から約2.5:1までの範囲にあるであろう。
本発明の1つの局面によれば、アノードエレクトロクロミック層がその完全な消色状態にあるとき、アノードエレクトロクロミック層におけるリチウムの量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比(すなわち、Li:[Ni+Nb+Ta])が一般には1.75:1よりも小さくなるよう、アノードエレクトロクロミック層におけるリチウム、ニッケル、ニオブおよびタンタルの相対量が制御される。例えば、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.5:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.45:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.4:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.35:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.3:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.25:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.2:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.15:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.1:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.05:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、1:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.4:1から1.5:1までの範囲にある。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.5:1から1.4:1までの範囲にある。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.6:1から1.35:1までの範囲にある。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.7:1から1.35:1までの範囲にある。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.8:1から1.35:1までの範囲にある。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.9:1から1.35:1までの範囲にある。
一般に、ニオブおよび/またはタンタルの量をアノードエレクトロクロミック層においてニッケルの量に対して増大させると、材料の消色状態の安定性および消色状態電圧が増大するが、それはまた、その体積電荷容量を低下させる傾向がある。ニッケルに対して多量のニオブおよび/またはタンタルを有するアノードエレクトロクロミック層、例えば、ニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比(すなわち、[Nb+Ta]:[Ni+Nb+Ta])がそれぞれ、約0.8:1よりも大きいアノードエレクトロクロミック層などは、安定した完全な消色状態を有する傾向があるが、最適とはいえない電荷容量および着色状態透過度を有する傾向がある。したがって、ある特定の実施形態においては、アノードエレクトロクロミック層におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比は約0.8:1(すなわち、[Nb+Ta]:[Ni+Nb+Ta])よりも小さいことが好ましい。例えば、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比が約0.7:1(すなわち、[Nb+Ta]:[Ni+Nb+Ta])よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比が約0.6:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料における、ニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比が約0.5:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック層におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比が約0.4:1よりも小さい。
逆に、ニッケルに対して少量のニオブおよび/またはタンタルを有するアノードエレクトロクロミック層、例えば、ニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比(すなわち、[Nb+Ta]:[Ni+Nb+Ta])がそれぞれ、約0.025:1よりも小さいアノードエレクトロクロミック層などは、比較的大きい電荷容量を有する傾向があるが、それほど安定でない完全な消色状態を有する傾向がある。したがって、ある特定の実施形態においては、アノードエレクトロクロミック層におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する比率(原子比)は約0.03:1(すなわち、[Nb+Ta]:[Ni+Nb+Ta])よりも大きいことが好ましい。例えば、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比が約0.04:1(すなわち、[Nb+Ta]:[Ni+Nb+Ta])よりも大きい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比が約0.05:1よりも大きい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比が約0.075:1よりも大きい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック層におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比が約0.1:1よりも大きい。この段落で示される前記の例および実施形態のそれぞれにおいて、リチウムニッケル酸化物組成物はニオブを含むが、タンタルを含まない場合があり、あるいは、タンタルを含むが、ニオブを含まない場合があり、あるいは、ニオブおよびタンタルを含む場合がある。
ある特定の実施形態において、アノードエレクトロクロミック層におけるニオブの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する比率(原子比)が、約0.025:1から約0.8:1までの範囲にあるであろう(Nb:[Ni+Nb])。例えば、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック層におけるニオブの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比が、約0.05:1と約0.7:1との範囲にあるであろう(Nb:[Ni+Nb])。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比が、約0.075:1と約0.6:1との範囲にあるであろう(Nb:[Ni+Nb])。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比が、約0.1:1と約0.55:1との範囲にあるであろう(Nb:[Ni+Nb])。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比が、約0.15:1と約0.5:1との範囲にあるであろう(Nb:[Ni+Nb])。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比が、約0.175:1と約0.45:1との範囲にあるであろう(Nb:[Ni+Nb])。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック層におけるニオブの、ニッケルおよびニオブの合計量に対する原子比が、約0.2:1と約0.4:1との範囲にあるであろう(Nb:[Ni+Nb])。
ある特定の実施形態において、アノードエレクトロクロミック層におけるタンタルの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する比率(原子比)が、約0.025:1から約0.8:1までの範囲にあるであろう(Ta:[Ni+Ta])。例えば、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック層におけるタンタルの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比が、約0.05:1と約0.7:1との範囲にあるであろう(Ta:[Ni+Ta])。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるタンタルの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比が、約0.075:1と約0.6:1との範囲にあるであろう(Ta:[Ni+Ta])。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるタンタルの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比が、約0.1:1と約0.55:1との範囲にあるであろう(Ta:[Ni+Ta])。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるタンタルの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比が、約0.15:1と約0.5:1との範囲にあるであろう(Ta:[Ni+Ta])。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるタンタルの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比が、約0.175:1と約0.45:1との範囲にあるであろう(Ta:[Ni+Ta])。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック層におけるタンタルの、ニッケルおよびタンタルの合計量に対する原子比が、約0.2:1と約0.4:1との範囲にあるであろう(Ta:[Ni+Ta])。
一般に、アノードエレクトロクロミック層におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する比率(原子比)が典型的には、約0.025:1から約0.8:1までの範囲にあるであろう([Nb+Ta]:[Ni+Nb+Ta])。例えば、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比が典型的には、約0.05:1と約0.7:1との範囲にあるであろう([Nb+Ta]:[Ni+Nb+Ta])。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比が典型的には、約0.075:1と約0.6:1との範囲にあるであろう([Nb+Ta]:[Ni+Nb+Ta])。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比が、約0.1:1と約0.55:1との範囲にあるであろう([Nb+Ta]:[Ni+Nb+Ta])。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比が、約0.15:1と約0.5:1との範囲にあるであろう(Ta:[Ni+Nb+Ta])。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比が、約0.175:1と約0.45:1との範囲にあるであろう([Nb+Ta]:[Ni+Nb+Ta])。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック層におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブおよびタンタルの合計量に対する原子比が、約0.2:1と約0.4:1との範囲にあるであろう([Nb+Ta]:[Ni+Nb+Ta])。
1つの実施形態において、エレクトロクロミック材料は、ニオブおよびタンタルに加えて、第3族元素、第4族元素、第6族元素、第13族元素、第14族元素および第15族元素(IUPAC分類)ならびにそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の消色状態安定化元素を含む。そのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック層におけるリチウムの量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素の合計量に対する原子比がそれぞれ、一般には少なくとも約0.4:1であるよう、アノードエレクトロクロミック層におけるリチウム、ニッケル、ニオブ、タンタルおよびそのような少なくとも1つの消色状態安定化元素の相対量が制御され、少なくとも1つの消色状態安定化元素は、第3族元素、第4族元素、第6族元素、第13族元素、第14族元素および第15族元素ならびにそれらの組合せからなる群から選択される。例えば、1つの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルならびにすべての第5族金属および消色状態安定化元素の合計量に対する原子比、すなわち、Li:[Ni+Nb+Ta+M]がそれぞれ、少なくとも約0.4:1であり、ただし、式において、Mは、Y、Ti、Zr、Hf、V、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、P、Sbおよびそれらの組合せからなる群から選択される消色状態安定化元素である;別の言い方をすれば、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの量の、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する比率がそれぞれ、少なくとも0.4:1(原子比)である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、リチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約0.75:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、リチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約0.9:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、リチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約1:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、リチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約1.25:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、リチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約1.5:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、リチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約2:1である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、リチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、少なくとも約2.5:1である。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素M(例えば、この場合、Mは、Y、Ti、Zr、Hf、V、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、P、Sbまたはそれらの組合せである)の合計量に対する原子比がそれぞれ、約4:1を超えないであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素M(例えば、この場合、Mは、Y、Ti、Zr、Hf、V、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、P、Sbまたはそれらの組合せである)の合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.75:1から約3:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素M(例えば、この場合、Mは、Y、Ti、Zr、Hf、V、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、P、Sbまたはそれらの組合せである)の合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.9:1から約2.5:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素M(例えば、この場合、Mは、Y、Ti、Zr、Hf、V、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、P、Sbまたはそれらの組合せである)の合計量に対する原子比がそれぞれ、約1:1から約2.5:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素M(例えば、この場合、Mは、Y、Ti、Zr、Hf、V、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、P、Sbまたはそれらの組合せである)の合計量に対する原子比がそれぞれ、約1.1:1から約1.5:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素M(例えば、この場合、Mは、Y、Ti、Zr、Hf、V、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、P、Sbまたはそれらの組合せである)の合計量に対する原子比がそれぞれ、約1.5:1から約2:1までの範囲にあるであろう。したがって、いくつかの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素M(例えば、この場合、Mは、Y、Ti、Zr、Hf、V、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、P、Sbまたはそれらの組合せである)の合計量に対する原子比がそれぞれ、約2:1から約2.5:1までの範囲にあるであろう。
1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック層は、ニッケル、ニオブ、タンタルに加えて、第3族元素、第4族元素、第6族元素、第13族元素、第14族元素および第15族元素(IUPAC分類)ならびにそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の消色状態安定化元素を含む。そのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素の合計量に対する原子比がそれぞれ、一般には約1.75:1よりも小さいよう、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウム、ニッケル、ニオブ、タンタルおよびそのような少なくとも1つの消色状態安定化元素の相対量が制御され、少なくとも1つの消色状態安定化元素は、第3族元素、第4族元素、第6族元素、第13族元素、第14族元素および第15族元素ならびにそれらの組合せからなる群から選択され、かつ、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料はその完全な消色状態にある。例えば、1つの実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、ニッケルならびにすべての第5族金属および消色状態安定化元素の合計量に対する原子比、すなわち、Li:[Ni+Nb+Ta+M]がそれぞれ、約1.75:1よりも小さく、ただし、式において、Mは、Y、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、P、Sbおよびそれらの組合せからなる群から選択される消色状態安定化元素であり、かつ、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料はその完全な消色状態にある;別の言い方をすれば、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの量の、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する比率がそれぞれ、1.75:1(原子比)よりも小さい。例えば、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.5:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.45:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.4:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.35:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.3:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.25:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.2:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.15:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.1:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、1.05:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、1:1よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.4:1から1.5:1までの範囲にある。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.5:1から1.4:1までの範囲にある。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.6:1から1.35:1までの範囲にある。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.7:1から1.35:1までの範囲にある。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.8:1から1.35:1までの範囲にある。ある特定の実施形態において、エレクトロクロミック層がその完全な消色状態にあるとき、エレクトロクロミック層におけるリチウムの、Ni、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、PおよびSbの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.9:1から1.35:1までの範囲にある。
アノードエレクトロクロミック層が、ニオブおよび/またはタンタルに加えて、第3族元素、第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、第14族元素および第15族元素ならびにそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の消色状態安定化元素を含むそれらの実施形態において、少なくとも1つの第5族金属および少なくとも1つの消色状態安定化元素の量をエレクトロクロミック層においてニッケルの量に対して増大させると、材料の安定性および消色状態電圧が増大するが、それはまた、その体積電荷容量を低下させる傾向がある。ニッケルに対して多量のニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素を有するアノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料、例えば、ニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素Mの合計量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび消色状態安定化元素Mの合計量に対する原子比(すなわち、[Nb+Ta+M]:[Ni+Nb+Ta+M])がそれぞれ、約0.8:1よりも大きいアノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料などは、安定した完全な消色状態を有する傾向があるが、最適とはいえない電荷容量および着色状態透過度を有する傾向がある。したがって、ある特定の実施形態においては、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素Mの合計量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび消色状態安定化元素Mの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.8:1(すなわち、[Nb+Ta+M]:[Ni+Nb+Ta+M])よりも小さいことが好ましい。例えば、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブ、タンタルおよび消色状態安定化元素Mの合計量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび消色状態安定化元素Mの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.7:1(すなわち、[Nb+Ta+M]:[Ni+Nb+Ta+M])よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素Mの合計量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素Mの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.6:1(すなわち、[Nb+Ta+M]:[Ni+Nb+Ta+M])よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素Mの合計量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素Mの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.5:1(すなわち、[Nb+Ta+M]:[Ni+Nb+Ta+M])よりも小さい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック層におけるニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素Mの合計量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素Mの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.4:1(すなわち、[Nb+Ta+M]:[Ni+Nb+Ta+M])よりも小さい。
逆に、ニッケルに対して少量のニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素Mを有するアノードエレクトロクロミック層、例えば、ニオブ、タンタルおよび消色状態安定化元素M(この場合、Mは、Y、Ti、Zr、Hf、V、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、P、Sbまたはそれらの組合せである)の合計量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび消色状態安定化元素Mの合計量に対する原子比(すなわち、[Nb+Ta+M]:[Ni+Nb+Ta+M])がそれぞれ、約0.025:1よりも小さいアノードエレクトロクロミック層などは、比較的大きい電荷容量を有する傾向があるが、それほど安定でない完全な消色状態を有する傾向がある。したがって、ある特定の実施形態においては、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素Mの合計量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび消色状態安定化元素Mの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.03:1(すなわち、[Nb+Ta+M]:[Ni+Nb+Ta+M])よりも大きいことが好ましい。例えば、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび消色状態安定化元素Mの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.04:1(すなわち、[Nb+Ta+M]:[Ni+Nb+Ta+M])よりも大きい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素Mの合計量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび消色状態安定化元素Mの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.05:1(すなわち、[Nb+Ta+M]:[Ni+Nb+Ta+M])よりも大きい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素Mの合計量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび消色状態安定化元素Mの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.075:1(すなわち、[Nb+Ta+M]:[Ni+Nb+Ta+M])よりも大きい。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、エレクトロクロミック層におけるニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素Mの合計量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび消色状態安定化元素Mの合計量に対する原子比がそれぞれ、約0.1:1(すなわち、[Nb+Ta+M]:[Ni+Nb+Ta+M])よりも大きい。
アノードエレクトロクロミック層が、ニオブおよび/またはタンタルに加えて、第3族元素、第4族元素、第5族元素、第6族元素、第13族元素、第14族元素および第15族元素ならびにそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の消色状態安定化元素を含むそれらの実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブ、タンタルおよび消色状態安定化元素の合計量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび消色状態安定化元素M(この場合、Mは、Y、Ti、Zr、Hf、V、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、P、Sbまたはそれらの組合せである)の合計量に対する比率(原子比)が典型的にはそれぞれ、約0.025:1から約0.8:1までの範囲にあるであろう([Nb+Ta+M]:[Ni+Nb+Ta+M])。例えば、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物材料におけるニオブ、タンタルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素Mの合計量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび消色状態安定化元素Mの合計量に対する原子比が典型的にはそれぞれ、約0.05:1と約0.7:1との範囲にあるであろう([Nb+Ta+M]:[Ni+Nb+Ta+M])。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック層におけるニオブおよびタンタルの合計量の、ニッケル、ニオブ、タンタルおよび消色状態安定化元素Mの合計量に対する原子比が典型的にはそれぞれ、約0.075:1と約0.6:1との範囲にあるであろう([Nb+Ta+M]:[Ni+Nb+Ta+M])。
1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック層は、少なくとも2Vである消色状態電圧を有する。例えば、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック性酸化リチウム材料は、少なくとも2.5Vの消色状態電圧を有する。さらなる例として、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック性酸化リチウム材料は、少なくとも3Vの消色状態電圧を有する。さらなる例として、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック性酸化リチウム材料は、少なくとも3.5Vの消色状態電圧を有する。
エレクトロクロミック積層体およびエレクトロクロミックデバイス
図1は、リチウム、ニッケルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素を本発明の1つの実施形態に従って含むアノードエレクトロクロミック層を有するエレクトロクロミック構造物1の断面構造略図を示す。中心から外側に向かって、エレクトロクロミック構造物1はイオン伝導層10を含む。アノード層20(リチウムと、ニッケルと、ニオブおよび/またはタンタルと、必要な場合には本明細書中のどこか他のところでより詳しく記載されるような1つまたは複数の消色状態安定化元素とを含むアノードエレクトロクロミック層)がイオン伝導層10の一方の側にあり、かつ、その第1の表面と接触している。カソード層21が、イオン伝導層10の他方の側にあり、かつ、その第2の表面と接触している。この中心構造物(すなわち、層20、層10、層21)が第1の電気伝導性層22と第2の電気伝導性層23との間に位置し、これらの電気伝導性層はさらには外側基板24、25に対して配置される。要素22、要素20、要素10、要素21および要素23はまとめて、エレクトロクロミック積層体28として示される。
イオン伝導層10は、エレクトロクロミックデバイスが消色状態と着色状態との間で変わるとき、リチウムイオンが(電解質の様式で)通り抜けて輸送される媒体として役立つ。イオン伝導層10はイオン導体材料を含み、用途に応じて透明または非透明で、かつ、着色または非着色である場合がある。好ましくは、イオン伝導層10はリチウムイオンに対して非常に伝導性であり、かつ、無視できるほどの電子移動が通常の操作の期間中に生じる十分に低い電子伝導率を有する。
電解質タイプのいくつかの非網羅的な例には、下記のものが挙げられる:固体高分子電解質(SPE)、例えば、溶解されたリチウム塩を伴うポリ(エチレンオキシド)など;ゲル高分子電解質(GPE)、例えば、リチウム塩を伴うポリ(メタクリル酸メチル)および炭酸プロピレンの混合物など;複合ゲル高分子電解質(CGPE)、これは、GPEと類似しているが、第2のポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)など)および液体電解質(LE)(例えば、リチウム塩を伴う炭酸エチレン/炭酸ジエチルの溶媒混合物など)の添加を伴う;ならびに、複合有機・無機電解質(CE)、これは、チタニア、シリカまたは他の酸化物の添加とともにLEを含む。使用されるリチウム塩のいくつかの非網羅的な例として、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド)、LiBF4(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiPF6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiAsF6(ヘキサフルオロヒ酸リチウム)、LiCF3SO3(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiB(C6F5)4(リチウムペルフルオロテトラフェニルボロン)およびLiClO4(過塩素酸リチウム)が挙げられる。好適なイオン伝導層のさらなる例には、ケイ酸塩、タングステン酸化物、タンタル酸化物、ニオブ酸化物およびホウ酸塩が含まれる。ケイ素酸化物には、ケイ素アルミニウム酸化物が含まれる。これらの材料には、リチウムを含めて種々のドーパントがドープされる場合がある。リチウムがドープされたケイ素酸化物には、リチウム・ケイ素アルミニウム酸化物が含まれる。いくつかの実施形態において、イオン伝導層はケイ酸塩型構造を含む。他の実施形態において、リチウムイオン輸送のために特に適合化される好適なイオン伝導層には、ケイ酸リチウム、ケイ酸アルミニウムリチウム、ホウ酸アルミニウムリチウム、フッ化アルミニウムリチウム、ホウ酸リチウム、窒化リチウム、ケイ酸ジルコニウムリチウム、ニオブ酸リチウム、ホウケイ酸リチウム、リンケイ酸リチウム、および、他のそのようなリチウム系セラミック材料、シリカまたはケイ素酸化物(リチウム・ケイ素酸化物を含む)が含まれるが、これに限定されない。
イオン伝導層10の厚さは、材料に依存して変化するであろう。無機のイオン導体を使用するいくつかの実施形態において、イオン伝導層10は約250nm〜1nmの厚さであり、好ましくは約50nm〜5nmの厚さである。有機のイオン導体を使用するいくつかの実施形態において、イオン伝導層は約1000000nm〜1000nmの厚さであるか、または、約250000nm〜10000nmの厚さである。イオン伝導層の厚さはまた、実質的に均一である。1つの実施形態において、実質的に均一なイオン伝導層は上記の厚さ範囲のそれぞれにおいて約+/−10%を超えて変化しない。別の実施形態において、実質的に均一なイオン伝導層は上記の厚さ範囲のそれぞれにおいて約+/−5%を超えて変化しない。別の実施形態において、実質的に均一なイオン伝導層は上記の厚さ範囲のそれぞれにおいて約+/−3%を超えて変化しない。
アノード層20は、リチウムと、ニッケルと、本明細書中のどこか他のところでより詳しく記載されるように、ニオブおよびタンタルから選択される少なくとも1つの第5族金属とを含むアノードエレクトロクロミック層である。1つの実施形態において、カソード層21はエレクトロクロミック層である。例えば、カソード21は、タングステン、モリブデン、ニオブ、チタンおよび/またはビスマスに基づくエレクトロクロミック性酸化物を含む場合がある。代替実施形態において、カソード層21は、アノード層20のための非エレクトロクロミック性の対向電極であり、例えば、酸化セリウムなどである。
アノード層20およびカソード層21の厚さは、エレクトロクロミック層および用途のために選択されるエレクトロクロミック材料に依存するであろう。いくつかの実施形態において、アノード層20は厚さが約25nm〜約2000nmの範囲にあるであろう。例えば、1つの実施形態において、アノード層20は厚さが約50nm〜約2000nmである。さらなる例として、1つの実施形態において、アノード層20は厚さが約25nm〜約1000nmである。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノード層20は平均厚さが約100nm〜約700nmの間である。いくつかの実施形態において、アノード層20は厚さが約250nm〜約500nmである。カソード層21は典型的には、アノード層20について述べられる厚さと同じ範囲における厚さを有するであろう。
1つの実施形態において、アノード層20およびカソード層21は、電気化学的かつ光学的に一致した(EOM)状態にある。例えば、カソードが、約400nmの厚さおよび27mC/cm2の面積電荷容量を有するW酸化物薄膜であるとき、約250nmの厚さおよび約1.7Vのセル電圧での27mC/cm2の電荷容量を有するリチウムタングステンニッケル酸化物薄膜(この場合、0Vは、アノードおよびカソードの両方の完全な消色状態である)。
電気伝導性層22が、バスバー26を介して電源(示されず)の一方の端子と電気的に接触しており、かつ、電気伝導性層23が、バスバー27を介して電源(示されず)の他方の端子と電気的に接触しており、したがって、エレクトロクロミックデバイス10の透過率が、電圧パルスを電気伝導性層22および23に加えることによって変化させられる場合がある。パルスは、電子およびイオンがアノード層20とカソード層21との間で移動することを生じさせ、その結果として、アノード層20および場合によりカソード層21が光学的状態を変化させ、それにより、エレクトロクロミック構造物1をより透過性の状態からそれほど透過性でない状態に切り換えるか、または、それほど透過性でない状態からより透過性の状態に切り換える。1つの実施形態において、エレクトロクロミック構造物1は電圧パルスの前において透明であり、電圧パルスの後においてそれほど透過性でなく(例えば、より反射性であるか、またはより着色しており)、あるいは、逆に、電圧パルスの前においてそれほど透過性でなく(例えば、より反射性であるか、またはより着色しており)、電圧パルスの後において透明である。
再び図1を参照して、バスバー26、27に接続される電源(示されず)は典型的には、必要に応じて用いられる電流制限または電流抑制特徴を有する電圧源であり、また、局所的な熱センサー、光電性センサーまたは他の環境センサーと併せて作動するように構成される場合がある。電圧源はまた、エネルギー管理システム、例えば、エレクトロクロミックデバイスを様々な要因(例えば、時期、時刻および測定された環境条件など)に従って制御するコンピュータシステムなどとインターフェース接続するために構成される場合がある。そのようなエネルギー管理システムは、面積が大きいエレクトロクロミックデバイス(例えば、エレクトロクロミック性の建築用窓)と併用された場合、建物のエネルギー消費を劇的に下げることができる。
基板24、25のうちの少なくとも1つが、積層体28のエレクトロクロミック性質を周囲に対して明らかにするために好ましくは透明である。好適な光学的性質、電気的性質、熱的性質および機械的性質を有する材料はどれも、第1の基板24または第2の基板25として使用される場合がある。そのような基板には、例えば、ガラス、プラスチック、金属、および、金属被覆されたガラスまたはプラスチックが含まれる。可能なプラスチック基板の非網羅的な例として、ポリカーボネート、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン、ウレタンカーボナネートコポリマー、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアルケン、ポリイミド、ポリスルフィド、ポリビニルアセテートおよびセルロース系ポリマーが挙げられる。プラスチック基板が使用されるならば、プラスチック基板は、例えば、プラスチック窓ガラス分野では広く知られているように、例えば、ダイヤモンドライクの保護被膜またはシリカ/シリコーンの摩耗防止用被膜などの硬い被覆を使用してバリア保護および摩耗保護される場合がある。好適なガラス基板には、透明であるか、または着色しているかのどちらかでのソーダ石灰ガラス、化学的強化ソーダ石灰ガラス、熱強化ソーダ石灰ガラス、強化ガラスまたはホウケイ酸ガラスが含まれる。ガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス)が第1の基板24および/または第2の基板25として使用されるエレクトロクロミック構造物1のいくつかの実施形態において、ナトリウム拡散バリア層(示されず)が、ガラスから第1の電気伝導性層および/または第2の電気伝導性層23へのナトリウムイオンの拡散を防止するために、第1の基板24と第1の電気伝導性層22との間に、かつ/または、第2の基板25と第2の電気伝導性層23との間に存在する。いくつかの実施形態では、第2の基板25が省略される。
本発明の1つの好ましい実施形態において、第1の基板24および第2の基板25がそれぞれ、フロートガラスである。建築用途のためのある特定の実施形態において、このガラスは少なくとも0.5メートル×0.5メートルであり、また、はるかにより大きいことが可能であり、例えば、約3メートル×4メートルもの大きさであることが可能である。そのような用途において、このガラスは典型的には少なくとも約2mmの厚さであり、より一般的には4mm〜6mmの厚さである。
用途に関係なく、本発明のエレクトロクロミックデバイスは広範囲の様々なサイズを有する場合がある。一般に、エレクトロクロミックデバイスは、表面積が少なくとも0.001メートル2である表面を有する基板を含むことが好ましい。例えば、ある特定の実施形態において、エレクトロクロミックデバイスは、表面積が少なくとも0.01メートル2である表面を有する基板を含む。さらなる例として、ある特定の実施形態において、エレクトロクロミックデバイスは、表面積が少なくとも0.1メートル2である表面を有する基板を含む。さらなる例として、ある特定の実施形態において、エレクトロクロミックデバイスは、表面積が少なくとも1メートル2である表面を有する基板を含む。さらなる例として、ある特定の実施形態において、エレクトロクロミックデバイスは、表面積が少なくとも5メートル2である表面を有する基板を含む。さらなる例として、ある特定の実施形態において、エレクトロクロミックデバイスは、表面積が少なくとも10メートル2である表面を有する基板を含む。
2つの電気伝導性層22、23のうちの少なくとも1つはまた、積層体28のエレクトロクロミック性質を周囲に対して明らかにするために好ましくは透明である。1つの実施形態において、電気伝導性層23が透明である。別の実施形態において、電気伝導性層22が透明である。別の実施形態において、電気伝導性層22、電気伝導性層23がそれぞれ、透明である。ある特定の実施形態において、これらの電気伝導性層22、23の一方または両方が無機および/または固体である。電気伝導性層22および電気伝導性層23は、透明な導電性酸化物、薄い金属被膜、導電性ナノ粒子のネットワーク(例えば、ロッド、チューブ、ドット)、導電性金属窒化物および複合導体などの多数の異なる透明な材料から作製される場合がある。透明な導電性酸化物には、金属酸化物、および、1つまたは複数の金属がドープされた金属酸化物が含まれる。そのような金属酸化物およびドープされた金属酸化物の例には、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、ドープされた酸化インジウム、酸化スズ、ドープされた酸化スズ、酸化亜鉛、アルミニウム亜鉛酸化物、ドープされた酸化亜鉛、酸化ルテニウム、および、ドープされた酸化ルテニウムなどが含まれる。透明な導電性酸化物はときには、(TCO)層として示される。実質的に透明である薄い金属被膜もまた使用される場合がある。そのような薄い金属被膜のために使用される金属の例には、金、白金、銀、アルミニウム、ニッケル、および、これらの合金が含まれる。透明な導電性窒化物の例には、チタン窒化物、タンタル窒化物、チタンオキシ窒化物およびタンタルオキシ窒化物が含まれる。電気伝導性層22および電気伝導性層23はまた、透明な複合導体である場合がある。そのような複合導体が、高導電性セラミックおよび金属ワイヤまたは導電性層パターン物を基板の面の1つに置き、その後、透明な導電性材料(例えば、ドープされたスズ酸化物またはインジウムスズ酸化物など)を上塗りすることによって製造される場合がある。理想的には、そのようなワイヤは、肉眼に見えないように十分に薄くなければならない(例えば、約100μm以下でなければならない)。可視光に対して透明である電子導体22および23の非網羅的な例として、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、n型ドープまたはp型ドープの酸化亜鉛、および、亜鉛オキシフルオリドの薄い膜が挙げられる。金属に基づく層(例えば、ZnS/Ag/ZnSなど)および炭素ナノチューブ層が近年では、同様に詳しく検討されている。特定の用途に依存して、一方または両方の電気伝導性層22および23が金属グリッドから作製される場合があり、または、金属グリッドを含む場合がある。
電気伝導性層の厚さは、層内に含まれる材料の組成およびその透明特性によって影響されることがある。いくつかの実施形態において、電気伝導性層22および電気伝導性層23は透明であり、かつ、それぞれが、約1000nm〜約50nmの間である厚さを有する。いくつかの実施形態において、電気伝導性層22および電気伝導性層23の厚さが約500nm〜約100nmの間である。他の実施形態において、電気伝導性層22および電気伝導性層23はそれぞれ、約400nm〜約200nmの間である厚さを有する。一般には、必要な電気的性質(例えば、電気伝導率)および光学的性質(例えば、透過率)が提供される限り、より厚い層またはより薄い層が用いられる場合がある。ある特定の用途のためには、電気伝導性層22および電気伝導性層23は、透明性を増大させるために、かつ、費用を低下させるためにできる限り薄いことが一般に好ましいであろう。
再び図1を参照して、電気伝導性層の機能は、エレクトロクロミック積層体28の表面全体にわたって電源によって提供される電位を積層体の内側領域に加えることである。電位が、導電性層に対する電気的接続を介して導電性層に伝えられる。いくつかの実施形態において、バスバー(1つが第1の電気伝導性層22と接触しており、1つが第2の電気伝導性層23と接触している)により、電気的接続が、電圧源と電気伝導性層22および電気伝導性層23との間に提供される。
1つの実施形態において、第1の電気伝導性層22および第2の電気伝導性層23のシート抵抗Rsが約500Ω/□〜1Ω/□である。いくつかの実施形態において、第1の電気伝導性層22および第2の電気伝導性層23のシート抵抗が約100Ω/□〜5Ω/□である。一般には、第1の電気伝導性層22および第2の電気伝導性層23のそれぞれのシート抵抗はほぼ同じであることが望ましい。1つの実施形態において、第1の電気伝導性層22および第2の電気伝導性層23はそれぞれ、シート抵抗が約20Ω/□〜約8Ω/□である。
比較的より大きい透過率の状態から比較的より小さい透過率の状態への、または、逆に、比較的より小さい透過率の状態から比較的より大きい透過率の状態へのエレクトロクロミックデバイス1のより迅速な切り換えを容易にするために、電気伝導性層22、23のうちの少なくとも1つは、不均一である層を通過する電子の流れに対するシート抵抗Rsを有する場合がある。例えば、1つの実施形態において、第1の電気伝導性層22および第2の電気伝導性層23のうちの一方のみが、当該層を通過する電子の流れに対する不均一なシート抵抗を有する。代替では、第1の電気伝導性層22および第2の電気伝導性層23がそれぞれ、それぞれの層を通過する電子の流れに対する不均一なシート抵抗を有する場合がある。特定の理論によって何らとらわれないが、電気伝導性層22のシート抵抗を空間的に変えること、電気伝導性層23のシート抵抗を空間的に変えること、または、電気伝導性層22および電気伝導性層23のシート抵抗を空間的に変えることは、導電性層における電圧低下を抑制して、均一な電位低下または所望される不均一な電位低下をデバイスの両端において、すなわち、国際公開WO2012/109494においてより詳しく記載されるようにデバイスの区域にわたって提供することによって、デバイスの切り換え性能を改善すると現時点では考えられている。
図2は、本発明の代替実施形態によるエレクトロクロミックデバイス1の断面構造略図を示す。中心から外側に向かって、エレクトロクロミック構造物1はイオン伝導層10を含む。アノード層20(リチウム、ニッケル、および、本明細書中のどこか他のところでより詳しく記載されるような少なくとも1つの第5族金属を含むアノードエレクトロクロミック層)がイオン伝導層10の一方の側にあり、かつ、その第1の表面と接触しており、また、カソード層21がイオン伝導層10の他方の側にあり、かつ、その第2の表面と接触している。第1および第2の電流調節構造物30および31がさらには、外側基板24、25に対してそれぞれ配置される第1および第2の電気伝導性層22および23にそれぞれ隣接している。
比較的より大きい透過率の状態から比較的より小さい透過率の状態への、または、逆に、比較的より小さい透過率の状態から比較的より大きい透過率の状態へのエレクトロクロミック構造物1のより迅速な切り換えを容易にするために、第1の電流調節構造物30、第2の電流調節構造物31、または、第1の電流調節構造物30および第2の電流調節構造物31の両方が、抵抗材料(例えば、抵抗率が少なくとも104Ωcmである材料)を含む。1つの実施形態において、第1の電流調節構造物30および第2の電流調節構造物31のうちの少なくとも一方が、当該構造物を通過する電子の流れに対する不均一な断面層(cross−layer)抵抗RCを有する。1つのそのような実施形態において、第1の電流調節構造物30および第2の電流調節構造物31のうちの一方のみが、当該層を通過する電子の流れに対する不均一な断面層抵抗RCを有する。代替において、また、より典型的には、第1の電流調節構造物30および第2の電流調節構造物31がそれぞれ、それぞれの当該層を通過する電子の流れに対する不均一な断面層抵抗RCを有する。特定の理論によって何らとらわれないが、第1の電流調節構造物30および第2の電流調節構造物31の断面層抵抗RCを空間的に変化させること、第1の電流調節構造物30の断面層抵抗RCを空間的に変化させること、または、第2の電流調節構造物31の断面層抵抗RCを空間的に変化させることは、より均一な電位低下または所望される不均一な電位降下をデバイスの両端において、すなわち、デバイスの区域にわたって提供することによって、デバイスの切り換え性能を改善すると現時点では考えられている。
1つの例示的な実施形態において、電流調節構造物30および/または電流調節構造物31は、異なる電気伝導率を有する少なくとも2つの材料を含む複合物である。例えば、1つの実施形態において、第1の材料は、抵抗率が約104Ωcm〜1010Ωcmの範囲にある抵抗材料であり、第2の材料は絶縁体である。さらなる例として、1つの実施形態において、第1の材料は、抵抗率が少なくとも104Ωcmである抵抗材料であり、第2の材料は、第1の材料の抵抗率を少なくとも102倍超える抵抗率を有する。さらなる例として、1つの実施形態において、第1の材料は、抵抗率が少なくとも104Ωcmである抵抗材料であり、第2の材料は、第1の材料の抵抗率を少なくとも103倍超える抵抗率を有する。さらなる例として、1つの実施形態において、第1の材料は、抵抗率が少なくとも104Ωcmである抵抗材料であり、第2の材料は、第1の材料の抵抗率を少なくとも104倍超える抵抗率を有する。さらなる例として、1つの実施形態において、第1の材料は、抵抗率が少なくとも104Ωcmである抵抗材料であり、第2の材料は、第1の材料の抵抗率を少なくとも105倍超える抵抗率を有する。さらなる例として、1つの実施形態において、電流調節構造物30、31のうちの少なくとも一方が、抵抗率を104Ωcm〜1010Ωcmの範囲に有する第1の材料と、絶縁体であるか、または、抵抗率を1010Ωcm〜1014Ωcmの範囲に有する第2の材料とを含む。さらなる例として、1つの実施形態において、電流調節構造物30、31のうちの少なくとも一方が、抵抗率を104Ωcm〜1010Ωcmの範囲に有する第1の材料と、抵抗率を1010Ωcm〜1014Ωcmの範囲に有する第2の材料とを含み、ただし、この場合、第1の材料および第2の材料の前記抵抗率は少なくとも103倍異なる。さらなる例として、1つの実施形態において、電流調節構造物30、31のうちの少なくとも一方が、抵抗率を104Ωcm〜1010Ωcmの範囲に有する第1の材料と、抵抗率を1010Ωcm〜1014Ωcmの範囲に有する第2の材料とを含み、ただし、この場合、第1の材料および第2の材料の前記抵抗率は少なくとも104倍異なる。さらなる例として、1つの実施形態において、電流調節構造物30、31のうちの少なくとも一方が、抵抗率を104Ωcm〜1010Ωcmの範囲に有する第1の材料と、抵抗率を1010Ωcm〜1014Ωcmの範囲に有する第2の材料とを含み、ただし、この場合、第1の材料および第2の材料の前記抵抗率は少なくとも105倍異なる。前記例示的な実施形態のそれぞれにおいて、電流調節構造物30、31のそれぞれが、抵抗率を104Ωcm〜1010Ωcmの範囲に有する第1の材料と、絶縁性である第2の材料とを含む場合がある。
用途に依存して、電流調節構造物30および/または電流調節構造物31における第1の材料および第2の材料の相対的割合が実質的に変化する場合ある。しかしながら、一般には、第2の材料(すなわち、絶縁性材料、または、抵抗率が少なくとも1010Ωcmである材料)が、電流調節構造物30、31のうちの少なくとも一方の少なくとも約5vol%を構成する。例えば、1つの実施形態において、第2の材料が電流調節構造物30、31のうちの少なくとも一方の少なくとも約10vol%を構成する。さらなる例として、1つの実施形態において、第2の材料が電流調節構造物30、31のうちの少なくとも一方の少なくとも約20vol%を構成する。さらなる例として、1つの実施形態において、第2の材料が電流調節構造物30、31のうちの少なくとも一方の少なくとも約30vol%を構成する。さらなる例として、1つの実施形態において、第2の材料が電流調節構造物30、31のうちの少なくとも一方の少なくとも約40vol%を構成する。しかしながら、一般には、第2の材料は典型的には、電流調節構造物30、31のどちらかの約70vol%超を構成しないであろう。前記実施形態のそれぞれにおいて、また、以前に議論されたように、第2の材料は抵抗率を1010Ωcm〜1014Ωcmの範囲に有する場合があり、また、(電流調節構造物30、31のどちらかまたは両方における)第1の材料および第2の材料の抵抗率が少なくとも103倍異なる場合がある。
一般に、第1の電流調節構造物30、第2の電流調節構造物31は、意図された適用のための十分な抵抗率、光学的透明性および化学的安定性を示すどのような材料をも含む場合がある。例えば、いくつかの実施形態において、電流調節構造物30、31は、大きい化学的安定性を有する抵抗材料または絶縁性材料を含む場合がある。例示的な絶縁体材料には、アルミナ、シリカ、多孔性シリカ、フッ素ドープされたシリカ、炭素ドープされたシリカ、窒化ケイ素、ケイ素オキシ窒化物、ハフニア、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリイミド、ポリマー誘電体(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびシリコーンなど)が含まれる。例示的な抵抗材料には、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化チタン、ならびに、酸化ガリウム(III)、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化第二スズおよび酸化ゲルマニウムが含まれる。1つの実施形態において、第1および第2の電流調節構造物30、31のうちの一方または両方がそのような抵抗材料の1つまたは複数を含む。別の実施形態において、第1および第2の電流調節構造物30、31のうちの一方または両方がそのような絶縁性材料の1つまたは複数を含む。別の実施形態において、第1および第2の電流調節構造物30、31のうちの一方または両方が、そのような抵抗材料の1つまたは複数と、そのような絶縁性材料の1つまたは複数とを含む。
電流調節構造物30、31の厚さが、当該構造物によって含まれる材料の組成ならびにその抵抗率および透過率により影響を受ける場合がある。いくつかの実施形態において、電流調節構造物30および電流調節構造物31は透明であり、かつ、それぞれが、約50nm〜約1マイクロメートルの間である厚さを有する。いくつかの実施形態において、電流調節構造物30および電流調節構造物31の厚さが約100nm〜約500nmの間である。一般には、必要な電気的性質(例えば、電気伝導率)および光学的性質(例えば、透過率)が提供される限り、より厚い層またはより薄い層が用いられる場合がある。ある特定の用途のためには、電流調節構造物30および電流調節構造物31は、透明性を増大させるために、かつ、費用を低下させるためにできる限り薄いことが一般に好ましいであろう。
リチウムニッケル酸化物層の調製
1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物組成物が、リチウム、ニッケル、少なくとも1つの第5族金属、および、必要な場合には、以前に記載されたような1つまたは複数の消色状態安定化元素を含有する液状混合物から調製される場合がある。例えば、1つの実施形態において、液状混合物が、リチウム、ニッケル、少なくとも1つの第5族金属、および、必要な場合には少なくとも1つの消色状態安定化元素を含む薄膜を形成するために基板の表面に堆積され、その後、堆積された薄膜が、リチウム、ニッケル、少なくとも1つの第5族金属(および、必要な場合には1つまたは複数の消色状態安定化元素)を含有するアノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物層を形成するために処理される。そのような実施形態において、液状混合物におけるリチウム、ニッケル、ニオブおよびタンタルならびに少なくとも1つの消色状態安定化元素の相対量が制御されて、堆積された層におけるリチウムの、ニッケルおよび少なくとも1つの第5族金属ならびに少なくとも1つの消色状態安定化元素の合計量に対する原子比がそれぞれ、以前に記載されたように、一般には少なくとも約0.4:1であることを満たすようにされる。
液状混合物は、溶媒系において、リチウム、ニッケルおよび少なくとも1つの第5族金属の供給源を一緒にすることによって調製される場合がある。一般には、液状混合物によって含まれるリチウム、ニッケルおよび少なくとも1つの第5族金属のそれぞれのための供給源材料(出発材料)は液状混合物溶媒系において溶解可能または分散可能であり、リチウムニッケル酸化物薄膜のための金属または金属酸化物の供給源を提供する。1つの実施形態において、液状混合物は、コーティング工程の前に0.2ミクロン(0.2マイクロメートル)のフィルターに通される。
液状混合物のリチウム成分は、化学分解または熱分解してリチウムの供給源をもたらす様々な溶解可能または分散可能なリチウム含有供給源材料(出発材料)に由来する場合がある。例えば、液状混合物のためのリチウムの供給源は、有機化合物のリチウム誘導体(例えば、有機リチウム化合物)または無機アニオンのリチウム塩(例えば、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、過酸化物および重炭酸塩など)を含む場合がある。
有機化合物の広範囲の様々なリチウム誘導体が文献に記載されており、本発明の液状混合物のためのリチウム供給源として有用である。それらには、アルカンのリチウム誘導体(アルキルリチウム化合物)、芳香族化合物のリチウム誘導体(アリールリチウム化合物)、オレフィンのリチウム誘導体(ビニルリチウム化合物またはアリルリチウム化合物)、アセチレン系化合物のリチウム誘導体(リチウムアセチリド化合物)、アルコールのリチウム誘導体(リチウムアルコキシド化合物)、アミンのリチウム誘導体(リチウムアミド化合物)、チオールのリチウム誘導体(リチウムチオラート化合物)、カルボン酸のリチウム誘導体(リチウムカルボン酸塩化合物)、および、β−ジケトンのリチウム誘導体(β−ジケトナート化合物)が含まれる。リチウム化合物の役割は、リチウムニッケル酸化物層におけるリチウムイオンの可溶性供給源を提供することであるので、有機リチウム化合物の有機部分が加工処理中に除かれる。そのため、単純で、低コストで、かつ、容易に入手できる有機リチウム化合物を利用することが好ましい。有機リチウム化合物は、空気にさらされたときに発火性でないものであることがさらに好ましい。この性質は、アルキル、アリール、ビニル、アリル、アセチリドの有機リチウム試薬を本発明の液状混合物におけるリチウム供給源として使用することを制限しており、しかし、この性質により、そのような有機リチウム試薬を本発明の液状混合物におけるリチウム供給源として使用することは排除されない。1つの実施形態において、液状混合物のリチウム成分のための供給源材料(出発材料)は、式LiNR1R2(式中、R1およびR2は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはシリルであり、また、場合により、R1およびR2ならびにそれらが結合する窒素原子は複素環を形成する場合がある)に対応するリチウムアミド化合物である。
代替実施形態において、液状混合物のリチウム成分のための供給源材料(出発材料)は、式LiOR(式中、Rは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたは場合により置換されたシリルである)に対応するリチウムアルコキシドである。1つのそのような実施形態において、液状混合物のリチウム成分のための供給源材料(出発材料)は、式LiOR(式中、Rは、場合により置換されたアルキルまたはアリールである)に対応するリチウムアルコキシドである。例えば、1つのそのような実施形態において、Rは、直鎖アルキル、分岐アルキルまたは環状アルキルである。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、Rは2−ジメチルアミノエチルである。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、Rは2−メトキシエチルである。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、Rは、場合により置換されたアリールである。別の実施形態において、液状混合物のリチウム成分のための供給源材料(出発材料)は、式LiOC(O)R1(式中、R1は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロシクロまたは場合により置換されたシリルである)に対応するリチウムカルボン酸塩である。例えば、1つのそのような実施形態において、R1はメチル(酢酸リチウム)である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、R1は直鎖アルキルまたは分岐アルキルである。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、R1は環式または多環式である。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、R1は、場合により置換されたアリールである。別の実施形態において、液状混合物のリチウム成分のための供給源材料(出発材料)は、下記の式に対応するリチウムβ−ジケトナートである:
式中、R10およびR11は独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたは場合により置換されたシリルである。例えば、1つのそのような実施形態において、R10およびR11は独立して、直鎖アルキルまたは分岐アルキルである。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、R10およびR11は独立して、環式または多環式である。
1つの実施形態において、液状混合物のリチウム成分のための供給源材料(出発材料)は、ニッケルまたは消色状態安定化元素を含有するアニオンのリチウム塩を含む。例えば、1つのそのような実施形態において、液状混合物のリチウム成分のための供給源材料(出発材料)は、ポリオキソメタレートのリチウム塩またはケギンアニオンのリチウム塩(例えば、ヘテロポリタングステン酸塩またはヘテロポリモリブデン酸塩)を含む。代替において、1つのそのような実施形態において、液状混合物のリチウム成分のための供給源材料(出発材料)は、リチウム塩、あるいは、リチウム塩の付加物(例えば、リチウム塩のエーテラートなど)、ニッケルおよび/または消色状態安定化元素のアニオン性配位錯体のリチウム塩を含む。例えば、1つのそのような実施形態において、リチウム塩は、[M4(OR2)4]−、[M5(OR2)5]−、[M6(OR2)6]−または[LnNiX1X2X3]−の式に対応する配位錯体のリチウム塩であり、ただし、これらの式において、
Lは中性の単座または多座のルイス塩基配位子であり、
M4は、B、Al、GaまたはYであり、
M5は、Ti、ZrまたはHfであり、
M6は、NbまたはTaであり、
nは、Ni中心に配位する中性配位子(L)の数であり、かつ、
それぞれのR2は独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、あるいは、置換または非置換のヒドロカルビルシリルであり、
X1、X2およびX3は独立して、アニオン性の有機配位子または無機配位子である。
1つのそのような実施形態において、X1、X2およびX3は独立して、ハライド、アルコキシド、ジケトナート、アミドであり、また、いずれか2つのL配位子またはX配位子は、キレート化配位子を形成するために架橋成分を介して連結させることができる。
液状混合物のニッケル成分は、化学分解または熱分解してニッケルの供給源をもたらす様々な溶解可能または分散可能なニッケル含有供給源材料(出発材料)に由来する場合がある。例えば、液状混合物のためのニッケルの供給源は、有機化合物のニッケル誘導体(例えば、有機ニッケル化合物)または無機アニオンのニッケル塩(例えば、水酸化物、炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩など)、あるいは、有機配位子および無機配位子の両方を含む混成物を含む場合がある。
広範囲の様々な有機ニッケル化合物が文献に記載されており、本発明の液状混合物のためのニッケル供給源として有用である。好ましい実施形態において、供給源材料が、0.2ミクロン(0.2マイクロメートル)のフィルターでろ過可能である均一な溶液を形成するために液体混合物に溶解される。例えば、1つの実施形態において、ニッケル供給源はゼロ価有機ニッケル化合物である。好適なゼロ価有機ニッケル化合物には、ビス(シクロオクタジエン)Niが含まれる。
より一般には、ニッケル中心が2+の形式的な酸化状態(Ni(II))にある有機ニッケル化合物が、本発明の液状混合物におけるニッケルの供給源として使用される。例示的なNi(II)錯体としてはさらに、式LnNiX4X5(式中、Lは中性のルイス塩基配位子であり、nは、Ni中心に配位する中性のルイス配位子の数であり、かつ、X4およびX5は独立して、有機または無機のアニオン性配位子である)に対応する有機配位子安定化Ni(II)錯体が挙げられる。例えば、1つのそのような実施形態において、ニッケル供給源は、式LnNiX4X5(式中、それぞれのLが独立して、ルイス塩基配位子(例えば、アミン、ピリジン、水、THFまたはホスフィンなど)であり、かつ、X4およびX5が独立して、ヒドリド配位子、アルキル配位子、アルコキシド配位子、アリル配位子、ジケトナート配位子、アミド配位子またはカルボキシラート配位子であり、また、いずれか2つのL配位子またはX配位子は、キレート化配位子を形成するために架橋成分を介して連結させることができる)に対応する。例示的なNi(II)錯体には、ビス(シクロペンタジエニル)Ni(II)型錯体、Ni(II)アリル型錯体(混合型のシクロペンタジエニルNI(II)アリル型錯体を含む)、ビス(アリール)N(II)型錯体(例えば、ビス(メシチル)Ni(II)など)、ビス(アセテート)Ni(II)、ビス(2−エチルヘキサノアート)Ni(II)、ビス(2,4−ペンタンジオナト)Ni(II)およびそれらの中性のルイス塩基付加物などのNi(II)錯体が含まれる。
1つの実施形態において、液状混合物のニッケル成分のための供給源材料(出発材料)は、加水分解可能なニッケル組成物を含む。加水分解可能なニッケル前駆体は、一般的な有機溶媒を含めて様々な溶媒に易溶性であり、水分と反応して、Ni(OH)2を形成し、かつ、アニオン性配位子をそのプロトン化形態(例えば、X−H)で遊離させる。この配位子は、有機溶媒(例えば、脂肪族および芳香族の炭化水素、エーテルおよびアルコールなど)における溶解性を与え、かつ、一般には、当該ニッケル錯体の反応性に影響を与える。加水分解可能なニッケル前駆体の重要な機能的特徴が、低い温度(例えば、150℃未満)で水蒸気にさらされたときに水酸化ニッケルまたは酸化ニッケルに変換することである。好ましい加水分解可能なニッケル前駆体が、下記の一般式のアルコールに由来する置換アルコキシド配位子によって安定化されるNi錯体を使用して調製される:
HOC(R3)(R4)C(R5)(R6)(R7)
式中、R3、R4、R5、R6およびR7は独立して、置換または非置換のヒドロカルビル基であり、R3、R4、R5、R6およびR7の少なくとも1つが電気陰性ヘテロ原子を含み、かつ、R3、R4、R5、R6およびR7のどれもが、環を形成するために一緒に連結されることが可能である。好ましい電気陰性ヘテロ原子は酸素または窒素である。好ましいアルコキシド配位子[OC(R3)(R4)C(R5)(R6)(R7)]が、1つまたは複数のR5、R6およびR7がエーテル官能基またはアミン官能基であるアルコールに由来する。例示的なアルコキシド配位子が、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール(DMAP)、すなわち、HOCH(Me)CH2NMe2に由来するものである。さらなる例として、1つの実施形態において、ニッケル組成物は、下記の式に対応する加水分解可能なニッケル組成物である:
1つの実施形態において、液状混物のニッケル成分のための供給源材料(出発材料)は液状混合物に溶解可能または分散可能であり、また、化学分解または熱分解して、ニッケルに加えて、少なくとも1つの第5族金属および/または少なくとも1つの消色状態安定化元素の供給源を提供する。例えば、1つのそのような実施形態において、液状混合物のニッケル成分のための供給源材料は、少なくとも1つのそのような第5族金属および/または少なくとも1つのそのような消色状態安定化元素を含有する有機配位子安定化金属錯体または無機塩である。例えば、塩は、ハロゲン化物塩、硝酸塩、水酸化物塩、炭酸塩または硫酸塩あるいはそれらの付加物(例えば、酸付加物、エーテル付加物、アミン付加物または水付加物)である場合がある。1つの好ましい実施形態において、少なくとも1つの第5族金属および少なくとも1つの消色状態安定化元素は、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Sbおよびそれらの組合せの有機誘導体からなる群から選択される。前述の通り、これらの元素の広範囲の様々な有機配位子安定化誘導体が文献に知られており、本発明の液状混合物の成分として有用である。これらには好ましくは、安定化有機配位子が、アルコキシド、カルボキシラート、ジケトナート、アミドである錯体が含まれる。より大きい酸化状態を有する金属(例えば、第VI族金属など)については、アニオン性有機配位子(例えば、アルコキシドなど)を含むオキソ誘導体が好ましく、これらには、(RO)4MOおよび(RO)2MO2(式中、Mは、MoまたはWであり、Oは酸素であり、かつ、Rは、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、あるいは、ヒドロカルビルシリル基または置換ヒドロカルビルシリル基である)が含まれる。
1つの実施形態において、液状混合物の少なくとも1つの第5族金属のための供給源材料(出発材料)は、液状混合物に溶解可能または分散可能であり、かつ、化学分解または熱分解して、コーティング工程の前に0.2ミクロン(0.2マイクロメートル)のフィルターでろ過可能であるリチウムニッケル酸化物薄膜のための当該少なくとも1つの第5族金属の供給源を提供する第5族金属含有組成物を含む。例えば、1つの実施形態において、第5族金属供給源は有機配位子安定化金属錯体または無機塩である。例えば、塩は、ハロゲン化物塩、硝酸塩、水酸化物塩、炭酸塩または硫酸塩あるいはそれらの付加物(例えば、酸付加物、エーテル付加物、アミン付加物または水付加物)である場合がある。前記の通り、例えば、錯体などはまた、少なくとも1つの第5族金属に加えてニッケルを含有する場合がある。1つの好ましい実施形態において、少なくとも1つの第5族金属は、V、Nb、Taおよびそれらの組合せの有機誘導体からなる群から選択される。前述の通り、これらの元素の広範囲の様々な有機配位子安定化誘導体が文献に知られており、本発明の液状混合物の成分として有用である。これらには好ましくは、安定化有機配位子が、アルコキシド、カルボキシラート、ジケトナート、アミドである錯体が含まれる。
1つの実施形態において、液状混合物の少なくとも1つの消色状態安定化元素のための供給源材料(出発材料)は、液状混合物に溶解可能または分散可能であり、かつ、化学分解または熱分解して、コーティング工程の前に0.2ミクロン(0.2マイクロメートル)のフィルターでろ過可能であるリチウムニッケル酸化物薄膜のための当該少なくとも1つの消色状態安定化元素の供給源を提供する消色状態安定化元素含有組成物を含む。例えば、1つの実施形態において、消色状態安定化元素供給源は有機配位子安定化金属錯体または無機塩である。例えば、塩は、ハロゲン化物塩、硝酸塩、水酸化物塩、炭酸塩または硫酸塩あるいはそれらの付加物(例えば、酸付加物、エーテル付加物、アミン付加物または水付加物)である場合がある。前記の通り、例えば、錯体などはまた、少なくとも1つの消色状態安定化元素に加えてニッケルを含有する場合がある。1つの好ましい実施形態において、少なくとも1つの消色状態安定化元素は、Y、Ti、Zr、Hf、V、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Sbおよびそれらの組合せの有機誘導体からなる群から選択される。前述の通り、これらの元素の広範囲の様々な有機配位子安定化誘導体が文献に知られており、本発明の液状混合物の成分として有用である。これらには好ましくは、安定化有機配位子が、アルコキシド、カルボキシラート、ジケトナート、アミドである錯体が含まれる。より大きい酸化状態を有する金属(例えば、第VI族金属など)については、アニオン性有機配位子(例えば、アルコキシドなど)を含むオキソ誘導体が好ましく、これらには、(RO)4MOおよび(RO)2MO2(式中、Mは、MoまたはWであり、Oは酸素であり、かつ、Rは、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、あるいは、ヒドロカルビルシリル基または置換ヒドロカルビルシリル基である)が含まれる。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、液状混合物は、Y、Ti、Zr、Hf、V、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Sbおよびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの消色状態安定化元素を少なくとも含む。
溶媒系は、上記のリチウム、ニッケルおよび少なくとも1つの消色状態安定化元素が溶解されるか、または分散される単一溶媒または溶媒の混合物を含む場合がある。実施形態において、溶媒系は、水を含むプロトン性溶媒、ならびに、プロトン性有機溶媒、例えば、アルコール、カルボン酸およびそれらの混合物などを含む。例示的なプロトン性有機溶媒には、メタノール、エタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールおよび2−エトキシエタノール;ステアリン酸、オレイン酸、オレアミンおよびオクタデシルアミンなど、ならびに、それらの混合物が含まれる。別の実施形態において、溶媒系は、極性または無極性の非プロトン性溶媒を含む。例えば、1つのそのような実施形態において、溶媒系は、アルカン系溶媒、および、オレフィン系溶媒、芳香族溶媒、エステル系溶媒またはエーテル系溶媒、あるいは、それらの組合せを含む場合がある。例示的な無極性の非プロトン性溶媒には、ヘキサン、オクタン、1−オクタデセン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどが含まれる。例示的な極性の非プロトン性溶媒には、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリジノン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アセトン、酢酸エチル、ベンジルエーテル、トリオクチルホンフィン(trioctylphonphine)およびトリオクチルホスフィンオキシドなど、ならびに、それらの混合物が含まれる。例示的なエーテル系溶媒には、例えば、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサンなど、ならびに、それらの混合物が含まれる。
液状混合物が、リチウム供給源材料、ニッケル供給源材料、第5族金属供給源材料および(必要に応じた)消色状態安定化元素供給源材料を典型的には約25℃〜350℃の範囲における温度で溶媒系に導入することによって形成される場合がある。それらの化学的組成および安定性に依存して、リチウム供給源材料、ニッケル供給源材料および第5族金属供給源材料が、不活性雰囲気のもとで溶媒系に溶解または分散させられる場合がある。好ましい場合には、上記のリチウム、ニッケルおよび少なくとも1つの第5族金属は、加水分解可能であるアルコキシドであり、好ましい溶媒がアルコールであり、液状混合物が、薄膜堆積プロセスに先立つ加水分解および沈殿物の形成を防止するために不活性雰囲気において調製される。しかしながら、ある特定の他の実施形態では、リチウム供給源材料、ニッケル供給源材料および第5族金属供給源材料が、空気または合成空気(N2/O2)の周囲において溶媒系に溶解または分散させられる場合がある。周囲に関係なく、リチウム供給源材料、ニッケル供給源材料および第5族金属供給源材料が、液状混合物を形成するために溶媒系に導入される順序は、厳密には重要でない。したがって、例えば、ある特定の実施形態において、それらは、どのような順序であれ、互いに、または溶媒系と一緒にされる場合がある。さらなる例として、1つの実施形態において、液状混合物のためのリチウム供給源材料、ニッケル供給源材料および第5族金属供給源材料は、3つの別個の化学的に異なる材料である。別の実施形態において、これらの供給原材料(出発材料)の少なくとも1つが、リチウム、ニッケルおよび少なくとも1つの第5族金属のうちの下記のような少なくとも2つの組合せの供給源を構成する:例えば、(i)リチウムおよびニッケル、(ii)リチウムおよび第5族金属、(iii)ニッケルおよび第5族金属、(iv)少なくとも1つの第5族金属および別の第5族金属または消色状態安定化元素、あるいは、(v)リチウム、ニッケルおよび少なくとも1つの第5族金属。
溶媒系はまた、様々な添加物を含有する場合がある。例えば、液状混合物は、液状混合物を熱および加水分解に対して安定化する溶解性強化剤および錯化剤(例えば、有機酸、有機炭酸塩、ならびに、アミンおよびポリエーテルなど)を含有する場合がある。液状混合物はまた、液状混合物に由来する層の品質を高めるために湿潤化剤(例えば、プロピレングリコールなど)を含有する場合がある。一般に、溶媒系におけるリチウム成分、ニッケル成分および消色状態安定化元素成分の単純な変化により、リチウム、ニッケル、少なくとも1つの第5族金属および必要に応じた消色状態安定化元素の組成物における実質的な質量損失または変化を伴うことなく0.2ミクロン(0.2マイクロメートル)のフィルターでろ過することができる均一な溶液がもたらされるであろう。
液状混合物の溶媒系が水性であるときには、容易に入手可能な水溶性のリチウム前駆体、消色状態金属前駆体およびニッケル前駆体の使用が好ましい場合がある。この実施形態における例示的なリチウム前駆体およびニッケル前駆体には、単純な無機塩(例えば、硝酸塩、水酸化物および炭酸塩など)、または、有機酸の塩(例えば、酢酸塩など)が含まれる。この実施形態における例示的なリチウム前駆体には、単純な無機塩(例えば、硝酸リチウムおよび水酸化リチウムなど)、または、空気中で安定な有機塩(例えば、酢酸リチウムなど)が含まれる。ある特定のそのような実施形態において、酢酸リチウムがときには好ましい。この実施形態における例示的なニッケル前駆体には、単純な無機塩(例えば、硝酸ニッケル、水酸化ニッケルおよび炭酸ニッケルなど)、または、空気中で安定な有機塩(例えば、酢酸ニッケルまたはジエン酸ニッケル化合物(例えば、ビス(2−エチルヘキサノアート)Ni(II))などが含まれ、酢酸ニッケルが、ある特定の実施形態では好ましい。この実施形態における例示的な消色状態金属前駆体には、単純な無機前駆体、酸化物前駆体(例えば、金属塩化物、金属アルコキシド、金属ペルオキソ、金属オキソなど)、あるいは、有機酸(例えば、酢酸、乳酸、クエン酸またはシュウ酸など)の塩、または、組合せでのこれらの無機配位子および有機配位子の塩が含まれる。例えば、液状混合物がタングステンを含むときには、タングステン(オキソ)テトラ(イソプロポキシド)およびメタタングステン酸アンモニウムを使用することができ、メタタングステン酸アンモニウムが、ある特定の実施形態では好ましい。液状混合物がチタンを含むときには、乳酸チタンアンモニウムが、ある特定の実施形態では好ましい。液状混合物がジルコニウムを含むときには、硝酸ジルコニルおよび酢酸水酸化物ジルコニウムが、ある特定の実施形態において使用される場合があり、硝酸ジルコニルがときには好ましい。液状混合物がニオブを含むときには、ニオブ酸シュウ酸アンモニウムまたはニオブペルオキソ錯体が使用される場合があり、ペルオキソ錯体がときには好ましい。
いくつかの実施形態において、リチウム、ニッケルおよび他の金属の安定な溶液の形成が、様々なリチウム前駆体、ニッケル前駆体および金属前駆体が一緒にされるときの沈殿形成を最小限に抑えるために、または、それどころか、そのような沈殿形成を避けるために酸を使用することによって支援される場合がある。一般的な無機酸(例えば、塩酸および硝酸など)および有機酸(例えば、乳酸、クエン酸およびグリオキシル酸など)がこの目的のために使用される場合があり、クエン酸が、ある特定の実施形態では好ましい。当業者は、ある特定の有機酸が液状混合物のpHを低下させること、および、沈殿形成を最小限に抑えることの両方をもたらすであろうこと、そして、有機酸の選定および濃度の単純な変化が、許容できる(安定な、沈殿物非存在溶液の)液状混合物をときにはもたらすであろうし、また、許容できない(相当の沈殿形成を伴う)液状混合物をときにはもたらすであろうことを理解するであろう。例えば、グリオキシル酸が、溶液のpHを低下させるために使用されるときには、沈殿物が、液状混合物の前駆体のうちの1つまたは複数と組み合わされるときに形成されることが多い。場合により、pHが、塩基(例えば、水酸化アンモニウムなど)の添加によって、混合物におけるすべての金属前駆体の溶解を促進させるために調節される。pHは好ましくは、成分のいずれかが溶液から沈殿するpHを超えて調節されない。
水性の液状混合物が使用されるときには、湿潤化剤添加物の添加が多くの場合、リチウム混合金属ニッケル酸化物材料の薄膜品質を改善するために好まれる。添加物の部類には、ポリマー、例えば、ポリエーテルまたはポリオール(例えば、ポリエチレングリコール)など、アルコール、例えば、エタノールまたはブタノールなど、エステル、例えば、酢酸エチルなど、アミノアルコール、例えば、N,N−ジエチルアミノエタノールなど、混合型アルコールエーテル、例えば、2−エトキシエタノールなど、グリコール、例えば、プロピレングリコールなどが含まれ、プロピレングリコールプロピルエーテルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが典型的には選択される。
液状混合物の溶媒系が有機溶媒であるときには、極性有機溶媒(例えば、アルコール溶媒系、エーテル溶媒系など)または無極性有機溶媒(例えば、トルエン、ヘキサンなど)が使用される場合がある。極性溶媒が使用されるときには、リチウム、ニッケルおよび他の金属の前駆体の有機金属錯体の使用が一般に好ましい。リチウム、ニッケルおよび他の金属の例示的な前駆体には、水と容易に反応し、これにより、水酸化物に変わる加水分解可能な錯体(例えば、アルコキシド、アミノアルコキシド、ジオラートまたはアミドなど)が含まれる。例示的なリチウム前駆体およびニッケル前駆体には、それらの(N,N−ジメチルアミノ−イソプロポキシド)錯体が含まれる。第4族、第5族、第6族および他の消色状態元素の例示的な前駆体には、リチウム前駆体およびニッケル前駆体とともに相容的に可溶性であり、かつ、好ましくは沈殿形成を何ら伴わないアルコキシド(例えば、エトキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、オキシアルコキシドまたはクロロアルコキシドなど)が含まれる。液状混合物を極性有機溶媒(例えば、アルコール溶媒など)において形成するための1つの例示的な方法は、リチウム、少なくとも1つの消色状態金属およびニッケルのアルコキシド錯体を不活性雰囲気において25C〜80Cの間で一緒にすることを含む。
加水分解可能な金属錯体前駆体が使用されるときには、コーティング溶液は、空気中の水分に対して容易に反応性であり、その結果、それらの金属水酸化物、金属酸化物または金属炭酸塩の沈殿形成が生じる。したがって、加水分解を抑える極性有機溶媒を添加することが、これらの溶液を安定化させるためのときには好ましい方法である。添加物の部類には、キレート化するアルコールまたはアミノアルコール、例えば、2−メトキシエタノール、ジメチルアミノエタノールまたはプロピルアミノエタノール類など、グリコール、例えば、プロピレングリコールまたはエチレングリコールなど、pKaが低い溶媒、例えば、ヘキサフルオロプロパノールなどが含まれ、プロピレングリコールまたは炭酸プロピレンがときには好ましい。
本発明の1つの局面によれば、エレクトロクロミックアノード層が、一連の工程で液状混合物から調製される場合がある。一般には、薄膜が液状混合物から基板上に形成され、溶媒が液状混合物から蒸発させられ、前記薄膜が、エレクトロクロミックアノード層を形成するために処理される。1つのそのような実施形態において、薄膜が、エレクトロクロミックアノード層を形成するために熱処理される。
液状混合物が、好適な光学的性質、電気的性質、熱的性質および機械的性質を有する任意の基板に堆積される場合がある。そのような基板には、例えば、ガラス、プラスチック、金属、および、金属被覆されたガラスまたはプラスチックが含まれる。可能なプラスチック基板の非網羅的な例として、ポリカーボネート、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン、ウレタンカーボネートコポリマー、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアルケン、ポリイミド、ポリスルフィド、ポリビニルアセテートおよびセルロース系ポリマーが挙げられる。プラスチック基板が使用されるならば、プラスチック基板は、例えば、プラスチック窓ガラス分野では広く知られているように、例えば、ダイヤモンド様の保護被膜またはシリカ/シリコーンの摩耗防止用被膜などの硬い被覆を使用してバリア保護または摩耗保護される場合がある。好適なガラス基板には、透明であるか、または着色しているかのどちらかでのソーダ石灰ガラス、化学的強化ソーダ石灰ガラス、熱強化ソーダ石灰ガラス、強化ガラスまたはホウケイ酸ガラスが含まれる。
1つの実施形態において、基板は、(図1に関連して記載されるような)透明な導電性酸化物層を、ガラス、プラスチック、金属、および、金属被覆されたガラスまたはプラスチックの上に含む。この実施形態において、液状混合物が、透明な導電性層の表面に直接に堆積される場合がある。
別の実施形態において、基板は、(図2に関連して記載されるような)電流調節層を、ガラス、プラスチック、金属、および、金属被覆されたガラスまたはプラスチックの上に含む。この実施形態において、液状混合物が、電流調節層の表面に直接に堆積される場合がある。
別の実施形態において、基板は、(図1に関連して記載されるような)イオン伝導層を、ガラス、プラスチック、金属、および、金属被覆されたガラスまたはプラスチックの上に含む。この実施形態において、液状混合物が、イオン伝導層の表面に直接に堆積される場合がある。
様々な技術が、液状混合物に由来する層を基板上に形成するために使用される場合がある。1つの例示的な実施形態において、液状混合物の連続した液状層が、メニスカスコーティング、ロールコーティング、浸漬コーティング、スピンコーティング、スクリーン印刷、スプレーコーティング、インクジェットコーティング、ロール式ナイフ塗布(ギャップコーティング)、メータリングロッドコーティング、カーテンコーティング、エアナイフコーティングおよび部分的浸漬コーティングなどによって基板に塗布され、その後、溶媒が除かれる。代替において、層が、液状混合物の液滴をスプレーコーティングまたはインクジェットコーティングにより基板に向けること、および、溶媒を除くことによって形成される場合がある。技術にかかわらず、層が、リチウム、ニッケルおよび少なくとも1つの第5族金属をエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物層に関連して本明細書中において先に記載される比率で含有する基板の上に形成される。すなわち、層におけるリチウム、ニッケル、ニオブおよびタンタルの相対量が制御され、その結果、リチウムの、ニッケルおよび少なくとも1つの第5族金属の合計量に対する原子比、ならびに、すべての第5族金属の合計量のニッケルに対する原子比が前記の通りであるようにされる。
リチウム組成物、ニッケル組成物および/または第5族金属(および必要に応じた消色状態安定化元素)の組成物が加水分解可能であるそのような実施形態では、層を制御された雰囲気で基板上に形成することが望ましい場合がある。例えば、1つの実施形態において、液状混合物の堆積が、相対湿度(RH)が55%RH未満である雰囲気で行われる。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、液状混合物の堆積が、40%RHを超えていない相対湿度を有する雰囲気で行われる。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、液状混合物の堆積が、30%RHを超えていない相対湿度を有する雰囲気で行われる。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、液状混合物の堆積が、20%RHを超えていない相対湿度を有する雰囲気で行われる。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、液状混合物の堆積が、10%RHを超えていない相対湿度を有する雰囲気、または、それどころか、5%RHを超えていない相対湿度を有する雰囲気で行われる。いくつかの実施形態において、雰囲気は一層より乾燥している場合がある。例えば、いくつかの実施形態において、堆積が、5%RH未満のRH、1%RH未満のRH、または、それどころか、10ppm未満の水分のRHによって定義される乾燥雰囲気で行われる場合がある。
基板上への液状混合物の堆積は様々な雰囲気で行われる場合がある。1つの実施形態において、液状混合物が、不活性雰囲気(例えば、窒素またはアルゴン)の雰囲気で堆積される。代替実施形態において、液状混合物が、酸素含有雰囲気で、例えば、圧縮乾燥空気または合成空気(これは、およそ20:80(v/v比率)での酸素および窒素の混合物からなる)において堆積される。ある特定の実施形態において、例えば、液状混合物が、リチウム、ニッケルおよび/または少なくとも1つの第5族金属のための加水分解可能な前駆体を含むときには、性能が、CO2に対する液状混合物および堆積された薄膜の曝露を最小限に抑えることによって改善される場合がある。例えば、いくつかの実施形態において、周囲は、50ppm未満、5ppm未満、または、それどころか、1ppm未満のCO2濃度を有する場合がある。
液状混合物が基板に堆積される温度は、室温近くから高温にまで及ぶ場合がある。例えば、スプレーコーティングについては、最高温度が、層のための基板安定性(例えば、ガラスについては550℃〜700℃、ほとんどのプラスチックなどについては250℃未満)および所望されるアニーリング温度によって制限されるであろう。例えば、連続した液状薄膜が基板に塗布されるコーティング技術については、コーティング温度が典型的には、25℃の室温から約80℃までの範囲にあるであろう。
基板が液状混合物によりコーティングされた後、得られた薄膜は、残存溶媒を除くために、空気流のもと、真空下に置かれる場合があり、または、さらなる乾燥を達成するために加熱される場合がある。この工程のための周囲雰囲気の組成は、コーティング工程に関連して先に記載されるように制御される場合がある。例えば、雰囲気は相対湿度が1%未満から55%RHである場合があり、雰囲気は不活性雰囲気(窒素またはアルゴン)である場合があり、または、雰囲気は酸素を含有する場合がある。
液状混合物が、リチウム、ニッケルまたは第5族金属のための加水分解可能な前駆体を含有するそのような実施形態において、コーティングされた基板はその後、金属錯体を加水分解して、プロトン化配位子の副産物と、リチウムニッケルポリヒドロキシド薄膜を形成するために、湿った雰囲気(例えば、少なくとも30%RHのRH)にさらされる場合がある。そのような曝露が、例えば、約40℃〜約200℃の範囲における温度で約5分〜約4時間の期間にわたって行われる場合がある。いくつかの実施形態では、実質的により低いレベルの水酸化物含有量を有する酸化物薄膜を形成するための、200℃を超える温度における、好ましくは250℃を超える温度における第2の熱加工処理工程。
1つの実施形態において、コーティングされた基板は、エレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物層を形成するために熱処理(アニーリング)される。液状混合物の組成および基板の安定性に依存して、コーティングされた基板は、少なくとも約200℃の温度でアニーリングされる。例えば、1つの実施形態において、基板が、この範囲の下端での温度において、例えば、少なくとも約250℃で、しかし、約700℃未満の温度でアニーリングされる場合がある;この範囲に含まれる温度は、より高い温度では寸法安定性を失うことがあるポリマー基板のためには特に好都合であろう。他の実施形態において、コーティングされた基板は約300℃〜約650℃の範囲における温度でアニーリングされる場合がある。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、コーティングされた基板は約350℃〜約500℃の範囲における温度でアニーリングされる場合がある。しかしながら、一般には、アニーリング温度は典型的には、約750℃を超えないであろう。アニール時間は数分(例えば、約5分)から数時間にまで及ぶ場合がある。典型的には、アニール時間は約30分から約2時間にまで及ぶであろう。加えて、アニーリング温度が、1分から約数時間にまで及ぶ期間にわたって達成される場合がある(すなわち、室温からアニーリング温度への上昇速度)。
いくつかの実施形態において、コーティングされた基板を制御された雰囲気で熱処理することが望ましい場合がある。例えば、1つの実施形態において、コーティングされた基板は、相対湿度(RH)が約5%RH〜55%RHである雰囲気でアニーリングされる。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、コーティングされた基板は、10%RHを超えていない相対湿度を有する雰囲気、または、それどころか、5%RHを超えていない相対湿度を有する雰囲気でアニーリングされる。いくつかの実施形態において、雰囲気は一層より乾燥している場合がある。例えば、いくつかの実施形態において、コーティングされた基板は、5%RH未満のRH、1%RH未満のRH、または、それどころか、10ppm未満の水分のRHによって定義される乾燥雰囲気でアニーリングされる。
いくつかの実施形態において、熱処理が行われるキャリアガスの組成が、不活性な(窒素またはアルゴン)雰囲気である場合がある。代替において、キャリアガスは、酸素(例えば、圧縮された乾燥空気、または、およそ20:80(v/v比率)での酸素および窒素の混合物からなる合成空気)の環境を含有する場合がある。ある特定の実施形態において、性能が、CO2への曝露を、CO2濃度が50ppm未満である雰囲気を使用して減らすことによって改善される場合がある。例えば、いくつかの実施形態において、CO2濃度が、5ppm未満、または、それどころか、1ppm未満である場合がある。
コーティングされた基板は様々な手段によって熱処理(アニーリング)される場合がある。1つの実施形態において、コーティングされた基板は、加熱が層および/または基板による放射エネルギーの吸収を介して主に行われる急速熱アニール装置で熱処理(アニーリング)される。別の実施形態において、コーティングされた基板は、加熱が連続プロセスで1つまたは複数の帯域において行われるベルト炉で熱処理(アニーリング)される。別の実施形態において、コーティングされた基材は、対流オーブンにおいて、また、加熱が放射プロセスおよび伝導プロセスの組合せによって回分プロセスで達成される炉において熱処理(アニーリング)される。別の実施形態において、コーティングされた基板は、加熱が、基板を加熱表面または加熱表面のわずかに上方に置くことによる伝導によって主に行われるホットプレート(ベークプレート)または表面加熱を使用して熱処理(アニーリング)される;例には、サンプルが、空気のクッションを使用してプレートの上方で保持される近接ベーキング、基板が真空または何らかの他の方法により加熱表面の表面に対して保持されるハードコンタクトベーキング、および、基板が重力だけにより加熱表面に置かれるソフトコンタクトベーキングが含まれる。
いくつかの実施形態において、得られたアノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物層は平均厚さが約25nm〜約2,000nmの間である。例えば、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物層は厚さが約50nm〜約2,000nmである。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物層は厚さが約25nm〜約1,000nmである。さらなる例として、1つのそのような実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物層は平均厚さが約100nm〜約700nmの間である。いくつかの実施形態において、アノードエレクトロクロミック性リチウムニッケル酸化物層は厚さが約250nm〜約500nmである。
堆積方法、および、液状混合物によって含まれる溶媒系に依存して、得られたアノードエレクトロクロミック性酸化ニッケル層は著しい量の炭素を含む場合がある。例えば、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック性酸化ニッケル材料は少なくとも約0.01wt%の炭素を含有する。さらなる例として、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック性酸化ニッケル材料は少なくとも約0.05wt.%の炭素を含有する。さらなる例として、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック性酸化ニッケル材料は少なくとも約0.1wt.%の炭素を含有する。さらなる例として、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック性酸化ニッケル材料は少なくとも約0.25wt.%の炭素を含有する。さらなる例として、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック性酸化ニッケル材料は少なくとも約0.5wt.%の炭素を含有する。しかしながら、典型的には、アノードエレクトロクロミック性酸化ニッケル材料は一般には、約5wt%を超える炭素を含有しない。したがって、例えば、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック性酸化ニッケル材料は4wt%未満の炭素を含有する。さらなる例として、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック性酸化ニッケル材料は3wt.%未満の炭素を含有する。さらなる例として、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック性酸化ニッケル材料は2wt.%未満の炭素を含有する。さらなる例として、1つの実施形態において、アノードエレクトロクロミック性酸化ニッケル材料は3wt.%未満の炭素を含有する。したがって、ある特定の実施形態において、アノードエレクトロクロミック性酸化ニッケル材料は0.01wt.%〜5wt.%の炭素を含有する場合がある。さらなる例として、ある特定の実施形態において、アノードエレクトロクロミック性酸化ニッケル材料は0.05wt.%〜2.5wt.%の炭素を含有する場合がある。さらなる例として、ある特定の実施形態において、アノードエレクトロクロミック性酸化ニッケル材料は0.1wt.%〜2wt.%の炭素を含有する場合がある。さらなる例として、ある特定の実施形態において、アノードエレクトロクロミック性酸化ニッケル材料は0.5wt.%〜1wt.%の炭素を含有する場合がある。
<実施例>
下記の限定されない実施例は、本発明をさらに例示するために提供される。下記の実施例において開示される技術は、本発明の実施において十分に機能すると本発明者らが見出しているアプローチを表しており、したがって、その実施のための様々な態様例を構成すると見なされ得ることが、当業者によって理解されなければならない。しかしながら、当業者は、多くの変化が、開示される具体的な実施形態において行われ得ること、そして、多くの変化により、同様な結果または類似する結果が依然として、本発明の精神および範囲から逸脱することなく得られ得ることを、本開示を考慮して理解しなければならない。
実施例1:加水分解可能なNi前駆体の合成
加水分解可能なNi(II)前駆体化合物(Ni(DMAP)2)が、公知の方法(Hubert−Pfalzgraf他、Polyhedron、16(1997)、4197〜4203)の改変によって合成されている。事前に乾燥されたN,N−ジメチルアミノ−2−プロパノール(8.17g、0.0787mol)の無水トルエン溶液(200mL)に、NaH(1.92g、0.0800mol)をN2パージのグローブボックスにおいて少量ずつ加えた。混合物を、透明になるまで室温で2時間撹拌した。この溶液にNi(NH3)6Cl2(9.0g、0.039mol)を加え、80℃で6時間加熱し、これにより、暗緑色の溶液を得た。その後、この溶液を減圧下で蒸発乾固し、得られた固体をTHF(約300mL)に再溶解し、その後、THF溶液を重力式漏斗でろ過した。暗緑色のろ液溶液を最初の体積の1/3に濃縮し、ヘキサン(Hexanes)(50mL)により希釈し、その後、冷凍庫(−20℃)で冷却した。緑色の針状微結晶を1日後に得た。針状微結晶をろ過し、冷ヘキサン(Hexanes)により洗浄した。収率:80%。結晶性化合物の微量分析が表1に示される。
実施例2:LiNiO2薄膜の合成
20mLのシンチレーション用バイアルにおいて、NiDMAP(70mg)、LiOMe(11mg)および無水MeOH(0.6mL)を加え、これにより、暗赤色の溶液を得た。その後、電気伝導性FTO(フッ素化された酸化スズ、20mm×20mm×2mm)が被覆されたガラスをグローブボックス内のスピンコータに載せた。FTO基板の上に、0.3mLの前駆体溶液を0.2μmのフィルターに通して分注し、2500rpmで1分間回転させた。空気曝露(CO2および水分)を避けるために容器に密封された状態で、コーティングされた薄膜をボックスから取り出し、温かい水分(45℃)のもと、N2充填のグローブバッグにおいて1時間にわたって加水分解した。その後、薄膜をO2パージの管状炉に移し、続いて、O2下、400℃で1時間脱水した。冷却後、薄膜の厚さが、プロフィロメトリーによって70nmであると測定された。コーティングされた薄膜の構造相を薄膜XRD測定によって求めた。構造相は、鋭いピークを(003)反射に対応する2θ=18.79°で示す六方晶系の層状LiNiO2相として特定された(図3)。その後、薄膜をAr充填のグローブボックスに入れ、そのエレクトロクロミック性質を、光源および分光計の経路に置かれるキュベットにおける三電極セルからなる統合された電気化学的/光学的機構で調べた。データを、炭酸プロピレン中1MのLiClO4の電解質においてLi/Li+に対して1.1V〜4.0Vの間で10mV/sの走査速度によりサイクロボルタンメトリーによって得た。リチウム金属の別個の試験片を参照電極および対向電極として使用し、光学的データを1s〜5s毎に記録した。被膜は、72%から16%までの550nmでの光学的透過性における可逆的変化をLi/Li+に対して1.1V〜4.0Vで示し、電荷容量が30mC/cm2であり、かつ、CE(着色効率)が22cm2/Cであった(図4)。NiおよびLiの前駆体溶液が2倍に濃縮されたときには、より厚い(100nm)薄膜が得られており、その可逆的なCV特徴は、大きい電荷容量(40mC/cm2)を与える100サイクルの電圧掃引にわたって一貫したままであった。23cm2/CのCEを生じさせる固定された電圧のもとにおける77%〜9%の間での完全な透過性変化を得るには数分を要した。この材料は、Li/Li+に対して1.55Vで、その最も透明な状態の95%以内に消色した。
実施例3:Li2NiO2透明薄膜の合成
透明状態のLi2NiO2を単離するために、実施例2で記載されたように調製されたLiNiO2薄膜(100nm厚)を、Ar雰囲気下での電気化学的セルにおいて1.1V〜4.0Vの間を循環し、1.1Vで停止することによって電気化学的に還元した。その後、薄膜をArボックスから取り出し、空気にさらし、その間に、その薄膜XRDを、Bruker d8 Advanceによって集めた。その後、薄膜をArグローブボックスの中に戻し、EC循環を行った。これは、無視できるほどの電流の流れを、550nmにおける光学的透過性変化を何ら伴うことなくもたらした。
その後、別のLiNiO2薄膜を実施例2と同じ方法で調製し、Ar雰囲気下での電気化学的セルにおいて1.1V〜4.0Vの間で5回の循環に供し、これにより、23mC/cm2と推定される電荷容量が得られた。循環を3.6Vで停止させ、薄膜を単離し、続いて、空気にさらすことなく、THFにおけるリチウムベンゾフェノンの新しく調製された溶液(濃い青色の溶液)に浸した。2日後、薄膜は透明になり、そのサイクリックボルタンモグラムを記録した。これにより、その前回のLiNiO2相と一致している電流の流れがAr雰囲気下での電気化学的セルにおいて1.1V〜4.0Vの間で得られた。電荷容量は25mC/cm2であると推定される(図5を参照のこと)。
実施例4〜実施例49:様々な組成を有するLixMyNi1−yOzアノード薄膜
LixMyNi1−yOzのコーティング溶液を、秤り取った量のLiDMAP、NiDMAP、および、消色状態安定化金属(M)の前駆体化合物を表2に示されるような様々なモル比(ただし、zは一般には、1.3〜3.8の範囲にあると考えられる)により1−BuOHに溶解することによって調製した。金属イオンの合計された溶液モル濃度[Li+M+Ni]は1.8M〜2.8Mの範囲にあった。溶液を0.2μmのフィルターでろ過した後、溶液をN2雰囲気下においてFTO基板にスピンコーティングした。得られた被膜を室温において40%RHのCDAまたはゼロ空気(zero−air)のもとで湿らせ、続いて、別途記される場合を除き、400℃〜550℃の温度範囲で、同じ雰囲気のもとで1時間焼成した。
冷却後、薄膜をAr充填のグローブボックスに入れ、エレクトロクロミック性質を、光源および分光計の経路に置かれるキュベットにおける三電極セルからなる統合された電気化学的/光学的機構で調べた。データを、定電流制御、それに続く定電圧保持(CC−CV)のもとでの逐次的な酸化および還元によって得た。電解質は炭酸プロピレン中1MのLiClO4であった。典型的には、Li/Li+に対して1.5V〜4.2V、2.5V〜4.2V、または、2.5V〜4.0Vの電圧範囲を加えた。リチウム金属の別個の試験片を参照電極および対向電極として使用した。光学的データを1s〜5s毎に記録した。着色効率を、(550nmでの)透過性データ、および、加えられた電圧範囲にわたる薄膜の2回目の還元事象の期間中に通過した電荷の量から計算した。
薄膜X線回折(XRD)を、Bruker D8 Advance回折計によって測定した。入射ビーム角度を、アノード酸化物薄膜の大きいピーク強度を得るために0.05°〜0.1°に調節した。焼成された薄膜の炭素濃度を、Evans Analytical GroupにおいてSIMS分析(二次イオン質量分析法)によって測定し、分析した。リチウムニッケル酸化物薄膜の金属濃度を、薄膜を塩酸に温浸し(Baの内部標準)、ICP−OES(誘導結合プラズマ発光分析、Thermo Electron Iris Intrepid II XPS)による分析を行うことによって分析した。
薄膜の厚さがプロフィロメータによって測定され、表2に示されるすべての薄膜について106nm〜529nmの範囲にあった。測定された電荷容量データが、加えられた電圧範囲にわたって3.4mC/cm2〜30mC/cm2の範囲にあり、薄膜は、(550nmにおいて)51%から89%までの範囲における消色状態透過性から、14%から63%までの範囲における着色状態透過性に切り替わった。絶対値での着色効率が、表2におけるすべての薄膜について20cm2/C〜41cm2/Cの範囲にあった。選択された薄膜についての消色状態電圧が表3に示される。選択された薄膜についての薄膜XRDデータが表4に列挙され、それらの典型的なXRDパターンが図6に示される。SIMS薄膜分析によって測定および分析される焼成された薄膜の炭素濃度が表5に示される。ICPによって分析された金属組成が表6に示される。
実施例50〜実施例65:様々な組成を有するLixNi1−y−y’MyM’y’Ozアノード薄膜
LixNi1−y−y’MyM’y’Ozのコーティング溶液を、秤り取った量のLiDMAP、NiDMAP、M前駆体化合物およびM’前駆体化合物を表7に示されるような金属間の様々なモル比により1−BuOHに溶解することによって調製した。これらの溶液を実施例4〜実施例49の場合と同じ方法でスピンコーティングし、熱加工処理した。冷却後、薄膜をAr充填のグローブボックスの中に入れ、エレクトロクロミック成績を実施例4〜実施例49に記載されるのと同じ方法で測定した。
薄膜の厚さがプロフィロメータによって測定され、測定値が、表7に示されるすべての薄膜について161nm〜418nmの範囲で得られた。測定された電荷容量データが、与えられた電圧範囲において9mC/cm2〜31mC/cm2の範囲にあることが見出され、また、薄膜は、(550nmにおいて)62%から87%までの範囲における消色状態透過性から、10%〜42%までの範囲における着色状態透過性に切り替わった。絶対値での着色効率が、表7におけるすべての薄膜について26cm2/C〜46cm2/Cの範囲にあった。
実施例66〜実施例73:様々な組成を有するLixNi1−y−y’−y’’MyM’y’M’’y’’Ozアノード薄膜
LixNi1−y−y’−y’’MyM’y’M’’y’’Ozアノード薄膜のための溶液調製法、スピンコーティング法および熱処理加工法は実施例4〜実施例49と同じであり、それぞれの金属成分のモル比が表8に示される。電気化学的測定および光学的測定もまた、実施例4〜実施例49に記載されるのと同じ方法で行った。
薄膜の厚さがプロフィロメータによって測定され、測定値が、表8に示されるLixNi1−y−y’−y’’MyM’y’M’’y’’Ozの薄膜のすべてについて196nm〜279nmの範囲で得られた。測定された電荷容量データが、与えられた電圧範囲において14mC/cm2〜29mC/cm2の範囲にあることが見出され、また、薄膜は、(550nmにおいて)72%から88%までの範囲における消色状態透過性から、17%から38%までの範囲における着色状態透過性に切り替わった。絶対値での着色効率が、表8におけるすべての薄膜について21cm2/C〜31cm2/Cの範囲にあった。
実施例74〜実施例88:WO3カソード薄膜およびLixNi1−yMyOzアノード薄膜によって組み立てられるデバイス
五層デバイスを、FTO基板上の完全に焼成されたアノード薄膜(有効面積、約90mm2)と、公知の手順によりFTO基板上に調製される酸化タングステンに基づくカソード(有効面積、約90mm2〜260mm2)とを使用して組み立てた。不活性なグローブボックスにおいて、カソード含有基板を、90℃に設定される予熱されたホットプレートの上に置き、175uLの電解質前駆体溶液を表面に堆積させた。電解質前駆体溶液は、炭酸プロピレン中1Mリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの1重量部に対して、炭酸ジメチル中25%ポリ(メタクリル酸メチル)の3重量部からなった。カソード基板上の電解質前駆体溶液を15分間乾燥させ、その後、基板の端部近くにおいて、厚さが100ミクロン(100マイクロメートル)で、幅が約2mmである4つのポリイミド製シムを、基板表面から約2mm突き出るように置いた。その後、アノード含有基板を、カソード含有基板に対して約260mm2の重なりを伴って電解質の上に置いた。組立て物全体を、真空下、約1atmの圧力で10分間、90℃で積層体化した。積層体化後、シムを除き、接点を、金属クリップを使用してそれぞれの電極基板に加えた。その後、組み立てられたデバイスを封入用治具に移し、接点および光学的窓のみが封入されないままであるようにエポキシ(Loctite E−30CL)により封入した。封入剤が硬化した後(約16時間後)、デバイスを、光学的光源および分光計と組み合わされる二電極電気化学的機構で測定した。データを、電圧を1.7Vと−0.9Vとの間で循環する定電圧制御のもとでの逐次的な酸化および還元によって得た。このとき、アノードは25℃で正側リード線に接続された。絶対値での残留電流が5マイクロアンペア未満になったとき、サイクルを切り換えた。光学的データを1s〜5s毎に記録した。デバイスにおけるアノード組成およびカソード組成、ならびに、25℃での10サイクルの後におけるエレクトロクロミックデータが表9に示される。
実施例89:電流調節層を含む基板を使用して製造されるデバイス
エレクトロクロミックデバイスを、FTO被覆されたソーダ石灰ガラスをレーザパターン化することによって形成される電流調節層を含む基板を使用して製造した。レーザパターン化FTOのシート抵抗は25オーム/sqから250オーム/sqまで直線的に変化した。アノード薄膜を、溶液中のLi:Nb:Niの比率が1.3:0.33:0.67である溶液のスロット・ダイ・コーティングによってレーザーパターン化FTOの上に調製した。414℃への熱処理の後、五層デバイスを、レーザスクライブされたFTO基板の上に調製された酸化タングステンに基づくカソードを積層することによって製造した。これらの基板の間に積層されるイオン伝導層は、炭酸プロピレンにより可塑化され、かつ、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを含有するポリビニルブチラールからなった。類似するカソードおよびイオン導体が文献において知られている。完成したデバイスをその後、電流/電圧源を光学的光源および分光計と組み合わせる電気光学的機構を使用して容量および光学的透過性について試験した。データを、アノードとカソードとの間でのデバイスの端部における電圧が、1.7V(着色時)および−0.9V(消色時)の値を達成するために駆動され、ただし、この場合、アノードが正側リード線に接続される定電圧制御のもとにおける逐次的な酸化および還元によって得た。光学的データを1s〜5s毎に記録した。デバイスの容量は約15C(19mC/cm2)であり、デバイスは、(550nmにおいて)72%前後の消色状態における透過性から、8%前後の着色状態における透過性に切り替わった。