本発明のマスクについて、本発明で使用できる通気性接顔体を着用者側から見た、模式的背面図である図1、本発明のマスクを着用者側から見た、模式的背面図である図2〜図4、および着用者が本発明のマスクを着用し、紙面上左方向を向いた様子を示す、模式的側面図である図5、ならびに図5のA-A’方向線における模式的断面図である図6を用いて説明する。
なお、本発明では、マスク(10)を着用者が着用すると想定した際に形成される、マスク(10)と着用者の顔面(15)によって模式的に包囲される空間をマスクの内気側(b)と称し、それ以外の空間をマスクの外気側(a)と称する。
図1は、本発明で使用できる通気性接顔体を着用者側から見た、模式的背面図である。 本発明の通気性接顔体(12)は「帯電された通気性シートと通気性支持体を積層してなる通気性接顔体」である。
本発明でいう「帯電された通気性シートと通気性支持体を積層してなる」とは、後述するように、通気性支持体と帯電された通気性シートを一体化することなく重ね合わせた状態であること、あるいは、通気性支持体と帯電された通気性シートを重ね合わせて一体化した状態であることを意味する。 そして、「通気性」とは、帯電された通気性シートと通気性支持体および通気性接顔体を構成する素材における、一方の主面ともう一方の主面間を、気体が通過できることを意味する。
また、本発明でいう「帯電された通気性シートよりも前記通気性支持体の方が剛軟度の値が大き」いとは、帯電された通気性シートを以下に説明する剛軟度の測定方法に供することで得られた値よりも、通気性支持体を以下に説明する剛軟度の測定方法に供することで得られた値の方が大きい値であることをいう。 なお、本発明でいう剛軟度の値とは、剛軟度の測定対象の各々をJIS L1086:2007「接着しん地試験方法」に記載の45°カンチレバー法あるいはガーレ法の測定方法に準拠した測定に供することで得られた値を意味する。つまり、剛軟度の測定対象の各々を、まず45°カンチレバー法の測定に供した結果、前記各測定対象の剛軟度が45°カンチレバー法によって測定不可能である場合には、剛軟度の測定対象の各々をガーレ法の測定に供することで剛軟度を測定する。
本発明で使用する通気性接顔体(12)の外周(13)とは、通気性接顔体(12)を着用者側から見た際の、主面における輪郭部分をいう。通気性接顔体(12)が、例えば図1に図示した形状のように、略環帯形状を成す通気性接顔体(12)である場合、その外周(13)は略長円形状である。 なお、ここでいう略環帯形状とは、通気性接顔体(12)の外周(13)が、例えば、略長円形状や略円形状などの形状をなしていると共に、通気性接顔体(12)の中央部分に、例えば、略くの字型あるいは略楔型形状、略長円形状あるいは略半円形、略涙型形状、略多角形状(図1では、略五角形状)などの開口(14)を備えていることをいう。
なお、通気性接顔体(12)の態様が図1の略環帯形状である場合、略環帯形状を成す通気性接顔体(12)の外周(13)の全てが後述するようにマスク本体部(11)の外周(13’)全てと接合一体化できる。また、図3〜図4で説明するように、通気性接顔体(12)が
非略環帯形状であると共に開口(14)を有していない態様である場合、その外周はマスク本体部(11)の外周(13’)と接合一体化している外周(図3〜図4においては13a)と接合一体化していない外周(図3〜図4においては13b)からなる。
通気性接顔体(12)が帯電された通気性シートを備えていることによって、見掛け密度が小さいなど通気性に優れる通気性接顔体(12)を調製した場合であっても、帯電された通気性シートが有する電気的な力により、通気性接顔体(12)を塵埃やウイルスが通過することを防ぐことができる。 そのため、通気性接顔体(12)を備えるマスク(10)は、電気的な力により通気性接顔体(12)を塵埃やウイルスが通過することを防ぐことができる。
そして、帯電された通気性シートと、帯電された通気性シートよりも剛軟度の値が大きな通気性支持体とが積層して通気性接顔体(12)が構成されていることによって、帯電された通気性シートよりも剛性の優れる通気性支持体によって帯電された通気性シートが補強された状態となる。 そのため、通気性接顔体(12)に対してマスク内気側(b)へ向かい圧力が作用した場合であっても、帯電された通気性シートがマスク内気側(b)へ向かい変形するのを防いで、通気性接顔体(12)の形状が意図せず変形するのを防ぐことができる。
図2〜図4は、本発明のマスク(10)を着用者(図2〜図4では図示せず)側から見た、模式的背面図である。
マスク(10)を構成しているマスク本体部(11)は主に、マスクの外気側(図2〜図4では図示せず)からマスクの内気側(図2〜図4では図示せず)に向かい外気を通過させ、マスクの外気側の空気中に含まれる塵埃やウイルスを捕集することで、清浄な空気をマスクの内気側に供給する働きを担う。 また、マスク本体部(11)は、マスクの内気側からマスクの外気側に向かい、着用者の呼気を通過させ、着用者の呼気中に含まれる体液やウイルスなどを捕集することで、体液やウイルスなどがマスクの外気側へ放出されるのを防ぐ働きも担う。
本発明で使用できるマスク本体部(11)の外周(13’)とは、マスク本体部(11)を着用者側から見た際の、主面における輪郭部分をいう。本発明のマスク(10)は主として、マスク本体部(11)と通気性接顔体(12)からなり、マスク本体部(11)と通気性接顔体(12)の各外周(13、13’)における接触部分が接合一体化している。
本発明でいう「接合一体化している」とは、通気性接顔体(12)の外周(13)における少なくとも一部と、マスク本体部(11)の外周(13’)における少なくとも一部とが接触しており、その接触部分が後述するバインダやホットメルト樹脂などの接着剤により接着一体化する、あるいは溶融一体化することで一体化している結果、接合一体化している部分の通気抵抗が、マスク本体部(11)及び接顔体(12)よりも高い態様を指す。 そのため、接合一体化された各外周(13、13’)における、通気性接顔体(12)とマスク本体部(11)の間から塵埃やウイルスが侵入することを防ぐことができる。
なお、接合一体化している態様として、例えば、通気性接顔体(12)とマスク本体部(11)の各外周(13、13’)における接触部分を、断続することなく一続きとなるように溶融一体化あるいは接着一体化している態様、エンボスパターン等の細かい間隔をなすように溶融一体化あるいは接着一体化している態様などを挙げることができる。
図2では略環帯形状を成す通気性接顔体(12)を備えたマスク(10)を図示しており、マスク本体部(11)と通気性接顔体(12)の各外周(13、13’)の全てが接触すると共に、断続することなく一続きとなる態様で接合一体化している。
そして、図3〜図4では、非略環帯形状であると共に開口(14)を有していない略くの字型の通気性接顔体(12)を備えたマスク(10)を図示しており、マスク本体部(11)の外周(13’)と通気性接顔体(12)の外周(13)の一部(図3〜図4においては13a)が接触すると共に接合一体化している。
図4では、非略環帯形状であると共に開口(14)を有していない略くの字型の通気性接顔体(12)を、2つ有するマスク(10)を図示しており、マスク本体部(11)の紙面上上部および紙面上下部と通気性接顔体(12)の各外周(13a、13’)における接触部分が接合一体化している。通気性接顔体(12)を2つ以上有してなるマスク(10)である場合には通気性接顔体(12)それぞれの各外周(13)の一部とマスク本体部(11)の外周(13’)との、接触部分の各々を接合一体化する。
図5および図6では、着用者が本発明のマスク(10)を着用した様子を示している。 図5は、着用者が本発明に係るマスク(10)を着用し、紙面上左方向を向いた様子を示す、模式的側面図である。そして図6は、図5のA-A’方向線における模式的断面図である。
本発明のマスク(10)は、マスクの内気側(b)に通気性接顔体(12)が存在しているため、着用者が本発明に係るマスク(10)を着用すると、口や鼻など着用者の顔面(15)の一部と通気性接顔体(12)が接触し易い。そのため、通気性接顔体(12)がマスク本体部(11)と着用者の顔面(15)との間に介在することで、マスク本体部(10)と着用者の顔面(15)の間に隙間が生じることを防ぐことができる。
そして、着用者が図2のマスク(10)を着用した場合、着用者の顔面(15)が、通気性接顔体(12)の外周(13)と開口(14)の間の部分と接触して、マスク(10)と着用者の顔面(15)との間に略環帯形状を成す通気性接顔体(12)が広い面積で介在する態様となり、マスク(10)と着用者の顔面(15)の間に隙間が生じることを、防ぐことができる。
また、着用者が図3〜図4のマスク(10)を着用した場合、着用者の顔面(15)が、略くの字型の通気性接顔体(12)の外周(13a)と外周(13b)の間の部分と接触して、マスク(10)と着用者の顔面(15)との間に略くの字型の通気性接顔体(12)が広い面積で介在する態様となり、マスク(10)と着用者の顔面(15)の間に隙間が生じることを、防ぐことができる。 このように、マスク本体部(11)と通気性接顔体(12)の各外周(13、13’)における接触部分が接合一体化しているため、マスク本体部(11)と通気性接顔体(12)との接触部分から塵埃やウイルスが侵入することを防ぐことができ、マスク本来の防塵性能を発揮できる。
以下、本発明に係るマスク(10)について、詳細に説明する。
帯電された通気性シートは、例えば、不織布や織物や編物などの布帛、メッシュ、通気性を備えるフィルム、通気性を備える発泡体などの素材を用いて調製した通気性シートを、帯電することで調製できる。あるいは、帯電した繊維などを用いて帯電された通気性シートを調製することができる。
通気性シートは、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の有機ポリマーを用いて構成されているのが好ましい。
なお、これらの有機ポリマーは、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また有機ポリマーがブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また有機ポリマーの立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の有機ポリマーを混ぜ合わせたものでも良く、特に限定されるものではない。
また、通気性シートに機能性を付与するために、通気性シートを構成する有機ポリマーに活性炭、抗菌剤、消臭剤、帯電補助剤などの添加剤を添加しても良い。
通気性シートが布帛を用いて構成されている場合、布帛を構成する繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
布帛を構成する繊維は、一種類の有機ポリマーから構成されてなるものでも、複数種類の有機ポリマーから構成されてなるものでも構わない。複数種類の有機ポリマーから構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。
更に、布帛が、例えば、伸縮性を示す有機ポリマーからなる繊維、又は熱などにより捲縮を発現した潜在捲縮性繊維などを含んでいると、柔軟で着用時に着用者の顔面(15)の形状に追従し易い通気性接顔体(12)を調製でき、通気性接顔体(12)と着用者の顔面(15)とが密着して、マスク(10)と着用者の顔面(15)の間から塵埃やウイルスが侵入することを防いで、マスク本来の防塵性能を更に発揮できるマスク(10)を調製できるため、好ましい。
そのため、布帛の質量に占める、例えば、伸縮性を示す有機ポリマーからなる繊維、又は熱などにより捲縮を発現した潜在捲縮性繊維などが施された繊維などの質量比率は30質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上であるのがより好ましく、90質量%以上であるのが最も好ましい。特に、質量比率が100質量%であると、柔軟で着用時に着用者の顔面(15)の形状に、更に追従し易い通気性接顔体(12)を調製できる布帛を得られるため、好ましい。
なお、前記布帛が織物や編物である場合、上述のようにして調製した繊維を、織るあるいは編むことで調製することができる。
また、前記布帛が不織布である場合、不織布として、例えば、カード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせて不織布の態様とする乾式不織布、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き不織布の態様とする湿式不織布、直接法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集してなる不織布などが挙げられる。また、このようにして調製される不織布における繊維の絡合の程度を調整するため、不織布をニードルパンチ装置や水流絡合装置に供することができる。
特に、水流絡合装置に供すると、柔軟で着用時に着用者の顔面(15)の形状に追従し易い通気性シートを調製可能な不織布が得られると共に、水流を作用させて繊維同士を絡み合わせる際に、繊維に付着した帯電効果を阻害する添加剤(繊維油剤、分散剤、界面活性剤など)が水流により除去されて、後述するように帯電量に優れる通気性シート
を調製可能な不織布が得られるため、好ましい。
また、直接法を用いてなる不織布を通気性シートとして使用した場合には、帯電効果を阻害する添加剤(繊維油剤、分散剤、界面活性剤など)を使用しない、あるいは使用量を少なくできるため、帯電量に優れる通気性シートを調製し易い。
上述した布帛に加熱処理を施して繊維同士を溶融一体化させる、及び/又は、布帛にバインダの付与処理を施して、布帛を構成する繊維同士を一体化しても良い。また、加圧処理を施すことで布帛の厚さ、通気度などを調整しても良い。
通気性シートがメッシュ、通気性を備えるフィルム、通気性を備える発泡体である場合、例えば、溶融状態の有機ポリマーを型に流し込み成型したり、発泡処理するなど、公知の方法へ供することで調製することができる。
なお、上述した素材を単独で使用する、同一の素材を複数積層する、複数種類の素材を積層することで、通気性シートを調製することができる。
通気性シートを帯電させる手段として、例えば、プラズマ帯電処理やコロナ帯電などイオンを注入して帯電させる手段、極性液体を介して力を作用させて帯電させる手段、複数種類の繊維成分を摩擦して帯電させる手段など、公知の手段を適宜選択して、又は組み合わせて利用することができる。
プラズマ帯電処理やコロナ帯電などイオンを注入して帯電させる手段を利用する場合、通気性シートが、体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上の有機ポリマーから構成されていると、帯電量のより多い通気性接顔体(12)を得ることができるため好ましい。 体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上の有機ポリマーとして、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂など)、ポリ四フッ化エチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどを挙げることができる。 なお、本発明における「体積固有抵抗値」は、JIS K 6911「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準じた測定により得られる値をいう。
極性液体を介して力を作用させることで帯電させる手段を利用する場合、通気性シートが、体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上の有機ポリマーから構成されていると、通気性シートの帯電量をより多くすることができるため好ましい。
更に、極性液体を介して力を作用させることで帯電させる手段を利用する際に、通気性シートの帯電量を多くできるように、通気性シートを構成する有機ポリマーに、例えば、ヒンダードアミン系化合物、脂肪族金属塩(例えば、ステアリン酸のマグネシウム塩、ステアリン酸のアルミニウム塩など)、不飽和カルボン酸変性高分子のうちから選ばれた1種または2種以上の化合物を、添加剤として添加することができる。これら一連の添加剤の中でもヒンダードアミン系化合物を添加するのが好ましい。 このようなヒンダードアミン系化合物の具体例として、例えば、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などを挙げることができる。
有機ポリマーに対する、これらの添加剤の添加量は特に限定されるものではないが、有機ポリマーの質量に対して、0.01〜5質量%の質量で添加されていることが望ましい。添加剤の添加量が0.01質量%未満では、通気性シートの帯電効果が小さくなる傾向にあるためで、0.05質量%以上の添加量とするのが好ましい。 また、当該添加量が5質量%を超えた場合、通気性シートの強度が劣る傾向にある。そのため、より好ましくは当該添加量を4質量%以下とする。
本発明において、極性液体を介して力を作用させることで帯電させる方法とは、通気性シートに極性液体を付与すると同時に、又は付与した後に、極性液体を介して通気性シートに力を作用させて帯電させる方法をいう。
極性液体を通気性シートに付与する手段として、例えば、スプレー、シャワー、ノズルなどを用いて極性液体を霧状、液滴状、液流状などの態様として付与する手段や、例えば、含浸装置(例えば、Rodney Hunt社のサチュレーター)を用いて極性液体に通気性シートを浸漬することで付与する手段などが挙げられる。極性液体を通気性シートに付与する手段は、帯電された通気性シートを得られるのであれば限定されるものではなく、適宜選択するのが好ましい。
極性液体として、例えば水、アルコール、アセトン、アルコール水溶液、アセトン水溶液、アンモニア水溶液などの、電気伝導率が低い液体を用いるのが好ましい。ここに云う電気伝導率とはJIS K 0101「工業用水試験方法」により測定されるものをいう。特に、極性液体として水を用いると、通気性シートを帯電させる際の作業環境に優れること、並びに、後述する乾燥処理において引火又は発火することを回避し得る点から、より好ましい。 また、液体帯電過程において使用される極性液体の温度は、通気性シートを帯電できるのであれば、限定されるものではないが、40℃以下であることが好ましい。
極性液体を介して通気性シートに力を作用させる方法として、例えば、超音波を作用させる方法、振動を作用させる方法などを使用することができる。また、上述した極性液体を通気性シートに付与する手段を用いて、通気性シートに極性液体を接触させることで、極性液体を介して通気性シートに力を作用させることもできる。
次いで、このようにして極性液体を介して力を作用させた通気性シートは、極性液体を除くために乾燥処理へ供される。
乾燥処理に使用する装置は、例えば、キャンドライヤやカレンダなどの加熱ローラ、熱風ドライヤ、熱風乾燥機、電気炉、ヒートプレートなど、公知の装置を挙げられる。乾燥処理における温度は、好ましくは120℃以下、より好ましくは105℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。 あるいは、上述の乾燥装置を使用することなく自然乾燥する、または、超音波や振動を作用させて極性液体を除くなど、通気性シートが熱を受け難い乾燥処理を行っても良い。
複数種類の繊維成分を摩擦して帯電させる手段を利用する場合、体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上のポリオレフィン系樹脂成分からなる繊維とアクリル系樹脂成分からなる繊維を摩擦して布帛を帯電させると、布帛の帯電量を多くして帯電量のより多い帯電された通気性シートを得ることができるため好ましい。
そして、布帛の帯電量を多くできるように、ポリオレフィン系樹脂成分からなる繊維として、ポリオレフィン系樹脂の一部をシアノ基やハロゲンで置換した樹脂からなる、ポリオレフィン系繊維を用いるのが好ましい。更に、布帛の帯電量を多くできるように、ポリオレフィン系樹脂成分からなる繊維として、リン系酸化防止剤及び/又はイオウ系酸化防止剤を含むポリオレフィン系繊維を用いるのが好ましい。このとき、布帛の帯電量を多くできるように、ポリオレフィン系繊維にのみリン系酸化防止剤及び/又はイオウ系酸化防止剤を含むのが、より好ましい。
布帛を構成する繊維に繊維油剤など帯電効果を阻害する添加剤が多量に付着していると、布帛の帯電が効果的になされず帯電量の多い帯電された通気性シートを得ることが困難になる。そのため、繊維を例えば温水やアルコールなどで洗浄して、帯電効果を阻害する添加剤の添加割合が、繊維質量に対して0.2質量%以下、好ましくは0.15質量%以下である状態として、複数種類の繊維成分を摩擦して帯電させるのが望ましい。
複数種類の繊維成分を摩擦して帯電させる手段は、繊維同士を互いに摩擦して帯電させることができるのであれば、その手段は限定されるものではない。
布帛が不織布である場合、不織布を帯電させる手段として、複数種類の繊維成分を摩擦して帯電させる手段を利用する場合、フラットカードやローラーカードに代表されるカード装置の他、ガーネット装置或いはエアレイ法に属する装置を用いると、繊維同士が互いに摩擦しやすいため好ましい。また、最終的に得られる帯電された通気性シートの強度を高めると共に帯電量の向上を図るために、ニードルパンチ装置に供してなる不織布であるのが好適である。
通気性シートに補強材を積層してから帯電手段に供することもできる。補強材を備えていることで通気性シートの形態を安定な状態にして、帯電手段に供することで、帯電された通気性シートを調製することができる。なお、補強材として、通気性支持体を用いてもよい。
通気性シートに補強材を積層してから帯電手段に供する場合には、補強材として、帯電された通気性シートの帯電能力を低下させにくい補強材を使用することが望ましい。例えば、スパンボンド不織布は帯電特性を劣化させる界面活性剤等の付着量が少ないことから、補強材として好適に使用可能である。
帯電された通気性シートの剛軟度の値は、特に限定されるものではないが、着用者の顔面(15)の形状に追従し易いと共に、マスク着用時や保管時に重力や圧力などの力が作用した場合でも、形状が変形するのを防ぐことができるように、45°カンチレバー法によって測定された値が、5mm〜300mmであるのが好ましく、10mm〜200mmであるのがより好ましく、20mm〜150mmであるのがより好ましく、30mm〜100mmであるのが最も好ましい。
また、帯電された通気性シートの、例えば、厚さ、見掛け密度、通気度などの値も特に限定されるものではなく、適宜調製するものであるが、例えば、以下の範囲をとるのが好ましい。
帯電された通気性シートの厚さは、0.3mm〜10mmとするのが好ましく、0.5mm〜5mmとするのがより好ましく、1mm〜3mmとするのが最も好ましい。
帯電された通気性シートの見掛け密度は、10〜250 kg/m3とするのが好ましく、30〜200 kg/m3とするのがより好ましく、50〜150 kg/m3とするのが最も好ましい。
帯電された通気性シートの通気度は、10cm3/cm2・s〜200cm3/cm2・sとするのが好ましく、20cm3/cm2・s〜150cm3/cm2・sとするのがより好ましく、30cm3/cm2・s〜100cm3/cm2・sとするのが最も好ましい。
なお、本発明でいう「厚さ」とは主面上に2KPaの加重をかけた際の主面間の長さをいい、「見掛け密度」は1m3あたりの質量を算出した値であり、「通気度」はJIS L1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」に記載されている「通気性」A法(フラジール形法)の測定方法に準拠して測定した値である。
通気性支持体は、上述した通気性シートと同様にして調製することができる。
剛軟度の値が帯電された通気性シートの値よりも大きな通気性支持体を調製する方法として、例えば、通気性シートよりも繊維密度の高い通気性支持体を調製する、通気性シートを構成している繊維よりも繊度の大きな繊維を用いて通気性支持体を調製する、通気性シートを構成するポリマーよりも硬度の高いポリマーを用いて通気性支持体を調製する、バインダの量を増やして繊維間の一体化が通気性シートよりも成された通気性支持体を調製する、繊維
同士をニードルパンチ処理あるいは水流絡合処理に供することで通気性シートよりも繊維同士を更に絡み合わされてなる通気性支持体を調製する、繊維同士の溶融一体化程度を増やして通気性支持体を調製する、などの方法を挙げることができる。 なお、通気性支持体を、上述した通気性シートと同様に帯電手段へ供することで、帯電した通気性支持体を調製してもよい。
このようにして調製される通気性支持体の剛軟度の値は、帯電された通気性シートの剛軟度の値よりも大きいのであれば、その値は特に限定されるものではなく、通気性接顔体(12)の形状が意図せず変形するのを防ぐことができるように適宜調製するものであるが、通気性支持体の剛軟度は帯電された通気性シートの剛軟度よりも、45°カンチレバー法によって測定された値が0.1mm以上大きいのが好ましく、1mm以上大きいのがより好ましく、5mm以上大きいのがより好ましく、8mm以上大きいのがより好ましく、10mm以上大きいのがより好ましく、50mm以上大きいのが最も好ましい。また、上限値も適宜調製するものであるが、現実的には200mm以下であるのが好ましい。
また、通気性支持体の、例えば、厚さ、見掛け密度、通気度などの値も特に限定されるものではなく、通気性接顔体(12)の形状が意図せず変形するのを防ぐことができるように適宜調製するものであるが、例えば、以下の範囲をとるのが好ましい。 通気性支持体の厚さは、0.5mm〜10mmとするのが好ましく、0.9mm〜5mmとするのがより好ましく、1.5mm〜3.5mmとするのが最も好ましい。 通気性支持体の見掛け密度は、10〜100 kg/m3とするのが好ましく、20〜90 kg/m3とするのがより好ましく、30〜80 kg/m3とするのが最も好ましい。
通気性支持体と帯電された通気性シートを積層して、通気性接顔体を調製する方法として、例えば、1.通気性支持体と帯電された通気性シートを一体化することなく重ね合わせる方法、2.重ね合わせた通気性支持体と帯電された通気性シートを、例えばニードルパンチ装置や水流絡合装置に供することで絡合する方法、3.重ね合わせた通気性支持体と帯電された通気性シートを、加熱手段に供することで溶融一体化する方法、4.バインダやホットメルト樹脂などの接着剤を間に介在させて、通気性支持体と帯電された通気性シートを重ね合わせて、接着一体化する方法、などを用いることができる。
特に、例えば上述したような、絡合する方法、溶融一体化する方法、接着一体化する方法などの、通気性支持体と帯電された通気性シートが分別され難い方法を用いて通気性支持体と帯電された通気性シートを積層することで、通気性接顔体の形状が意図せず変形するのを効果的に防ぐことができる。
また、各通気性支持体及び各帯電された通気性シートの積層枚数や、通気性支持体と帯電された通気性シートの積層順番など、通気性支持体と帯電された通気性シートを積層する態様は適宜選択することができる。 通気性支持体と帯電された通気性シートを積層する態様として、例えば、通気性支持体-帯電された通気性シート-通気性支持体、帯電された通気性シート-通気性支持体-帯電された通気性シート、通気性支持体-帯電された通気性シート-帯電された通気性シートなどの積層態様を例示できる
上述のようにして調製した通気性接顔体(12)の見掛け密度は、通気性が優れるように250kg/m3以下であるのが好ましく、200kg/m3以下であるのがより好ましく150kg/m3以下であるのが最も好ましい。また、マスクの外気側(a)に存在する塵埃やウイルス、及び/又は、着用者の呼気中に含まれる体液やウイルスなどの通過を防ぐことができるように、10kg/m3以上であるのが好ましく、30kg/m3以上であるのがより好ましく、50kg/m3以上であるのが最も好ましい。
また、通気性接顔体(12)の通気度は、通気性に優れるように、10cm3/cm2・s以上であるのが好ましく、20cm3/cm2・s以上であるのがより好ましく、30cm3/cm2・s以上であるのが最も好ましい。通気度の上限は、マスクの外気側(a)に存在する塵埃やウイルス、及び/又は、着用者の呼気中に含まれる体液やウイルスなどの通過を防ぎやすいように、200cm3/cm2・s以下であるのが好ましく、150cm3/cm2・s以下であるのがより好ましく、100cm3/cm2・s以下であるのが最も好ましい。
また、通気性接顔体(12)の、例えば、厚さなどの値も特に限定されるものではなく、通気性接顔体(12)の形状が意図せず変形するのを防ぐことができるように適宜調製する。
通気性接顔体(12)の外周(13)の形状は、マスク本体部(11)の外周(13’)と接合一体化できると共に、着用者の顔面(15)に接触可能な態様をなす限り限定されるものはなく、例えば、略多角形、略くの字型あるいは略楔型形状、略長円形状や略円形状あるいは略半円形状、略多角形状などになるよう、適宜調整するのが好ましい。
略環帯形状の通気性接顔体(12)である場合の、通気性接顔体(12)における開口(14)と外周(13)との最短距離の長さは、着用者の顔面(15)との間に隙間が生じることを防ぐことができるように適宜調整し、限定されるものではないが、上述の最短距離の長さは1mm以上とすることができ、5mm以上とすることができ、10mm以上とすることができる。 また、上述の最短距離の上限は限定するものではないが、通気性接顔体(12)が着用者の口や鼻を塞ぐことなく囲む態様をなすように、適宜調整するが、例えば、4cm以下とすることができる。
通気性接顔体(12)の形状を加工する手段としては、公知の手段を採用することができる。例えば、切り抜く、打ち抜くなどして、カップ形状マスクや二つ折りマスクなどの形状に加工されたマスク本体部(11)と接合一体化できる形状にできる。
マスク本体部(11)を構成する素材(以降、マスク本体部用素材と称する)や加工方法や形状などは、塵埃やウイルスなどを捕集できるのであれば、特に限定されるものではなく、上述した通気性シートや通気性支持体と同様にして調製することができる。
なお、マスク本体部用素材を、上述した通気性シートと同様に帯電手段へ供することで、帯電したマスク本体部(11)を調製すると、マスク(10)の塵埃やウイルスなどの捕集能力を向上できるため好ましい。
特に、マスク本体部用素材として直接法を用いてなる不織布を採用すると、帯電効果を阻害する添加剤(繊維油剤、分散剤、界面活性剤など)を使用しない、あるいは使用量を少なくできるため、帯電量に優れるマスク本体部(11)を調製可能な不織布が得られるため、好ましい。
マスク本体部用素材を帯電手段へ供する場合、マスク本体部用素材に補強材を積層してから帯電しても良い。補強材を備えていることで形態安定性に優れるマスク本体部用素材を用いて、帯電されたマスク本体部(11)を調製することができる。 補強材として、マスク本体部(11)の帯電能力を低下させにくい補強材を使用することが望ましい。例えば、スパンボンド不織布は帯電特性を劣化させる界面活性剤等の付着量が少ないことから、補強材として好適に使用可能である。
マスク本体部(11)を調製する手段としては、公知の手段を採用することができる。例えば、マスク本体部用素材を切り抜く、打ち抜くなどして二つ折りマスクを調製できる。あるいは成型してカップ形状にできる。 また、着用者の呼気中に含まれる体液やウイルスなどを、マスク本体部(11)あるいは通気性接顔体(12)で捕集する必要の無い場合には、排気が楽に行えるようマスク本体部(11)に、マスクの内気側(b)からマスクの外気側(a)に移動する呼気を選択的に通過させることのできる排気弁(図示せず)を設けてもよい。
マスク本体部(11)と通気性接顔体(12)の各外周(13、13’)における接触部分を接合一体化して、マスク(10)を調製する手段として、バインダやホットメルト樹脂などの接着剤により接着一体化する、あるいは溶融一体化することができる。 接合一体化方法として溶融一体化させる方法を作用する場合には、熱が加わることで最終的に得られるマスク(10)の帯電性能が失われる恐れがあるため、超音波融着などマスク本体部(11)と通気性接顔体(12)が加熱され難い手段を用いるのが好ましい。
また、成型したマスク本体部(11)と通気性接顔体(12)の双方を積層した後に各外周(13、13’)における接触部分を接合一体化する、あるいはマスク本体部用素材と通気性接顔体(12)を積層した後に同時に切り抜く、打ち抜く、あるいは成型すると共に、各外周(13、13’)における接触部分を接合一体化しても良い。
マスク本体部(11)と通気性接顔体(12)の各外周(13、13’)における接触部分を接合一体化してマスク(10)を調製する際に、通気性接顔体(12)を構成する通気性支持体がマスクの内気側(b)に面するようにして接合一体化しても、通気性接顔体(12)を構成する通気性シートがマスクの内気側(b)に面するように接合一体化しても、どちらでも良い。
マスク本体部(11)と通気性接顔体(12)の接触部分を接合一体化する際に、通気性支持体あるいは通気性シートのどちらがマスクの内気側(b)に存在するようにして接合一体化するかは、マスク(10)の着用時に不快感を感じ難く、マスク(10)と着用者の顔面(15)の間から塵埃やウイルスが侵入することを防ぐことができ、マスク(10)本来の防塵性能を発揮できると共に、通気性接顔体(12)の形状が意図せず変形するのを防ぐことができるように、適宜選択する。
なお、マスク本体部(11)に設ける通気性接顔体(12)の総数や位置は、マスク(10)と着用者の顔面(15)の間から塵埃やウイルスが侵入することを防ぐことができるのであれば、限定されるものではない。 マスク本体部(11)の外周(13’)において、着用者の鼻に近い部位や、着用者の頬や顎に近い部位などに通気性接顔体(12)が存在していると、マスク(10)と着用者の顔面(15)の間から塵埃やウイルスが侵入することを、より防ぐことができる。
着用者の顔面(15)にマスク(10)を保持するため使用されるマスクヒモ(16)や、マスクヒモ(16)をマスク本体部(11)に一体化するための部材(図示せず)など、マスク(10)に一般的に付随する周知の部材を一体化する方法は、特に限定されるものではない。
また、本発明に係るマスク(10)は、プリーツ加工が施されたマスク本体部(11)から構成されてなるマスク(10)であっても良い。マスク本体部(11)にプリーツ加工を施す方法として、周知の技術を使用することができ、特に限定されるものではない。
以下、本発明の理解を容易とするため特定の数値条件などを例示して説明するが、本発明はこれら特定条件にのみ限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で設計の変更及び変形を行うことができる。
なお、調製した各布帛の剛軟度の値は、JIS L1086:2007「接着しん地試験方法」に記載の45°カンチレバー法に準拠し測定することで求めた。
(マスク本体部の調製方法) マスク本体部として、市販のカップ形状のマスク(日本バイリーン株式会社、X-3502)を使用した。
(帯電された通気性シートの調製方法) 潜在捲縮性を有する、エチレンプロピレンコポリマー/ポリプロピレンサイドバイサイド型複合繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:44mm)をカード装置に供した後、水流絡合処理に供することで互いの繊維を絡み合わせ、その後、乾燥させ、熱風ドライヤーを用いてサイドバイサイド型複合
繊維に捲縮を発現させることで、伸縮性水流絡合不織布を調製した。 上述のようにして調製した伸縮性水流絡合不織布を2層積層して、コロナ放電処理(15kv)を行うことで、帯電された通気性シートを構成可能な帯電不織布(目付:160g/m2、厚さ:1.2mm、通気度:40cm3/cm2・s、見掛け密度:145kg/m3、剛軟度:5.5mm)を調製した。 そして、開口と外周との最短距離が10mmであり、図1に図示した略環帯形状となるように打ち抜くことで、帯電された通気性シートを調製した。
(通気性支持体の調製方法) 以下に説明するようにして、2種類の通気性支持体(通気性支持体A、および、通気性支持体B)を調製した。
(i)通気性支持体Aの調製方法 以下の組成の繊維を混合してカード装置に供することで、目付が30g/m2の第1繊維ウェブを作製した。 ・ポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘型熱接着性複合繊維(繊度:6.6dtex、繊維長:102mm):70質量% ・ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレートコポリマーサイドバイサイド型潜在捲縮性繊維 (繊度:2.2dtex、繊維長:51mm):25質量% ・ポリプロピレン/ポリエチレン-ポリエチレン酢酸ビニル共重合体芯鞘型熱接着性複合繊維(繊度:3.3dtex、繊維長:64mm):5質量% 次いで、以下の組成の繊維を混合してカード装置に供することで、目付が50g/m2の第2繊維ウェブを作製した。 ・ポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘型熱接着性複合繊維(繊度:20 dtex、繊維長:102mm):30質量% ・ポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘型熱接着性複合繊維(繊度:6.6dtex、繊維長:102mm):65質量% ・ポリプロピレン/ポリエチレン-ポリエチレン酢酸ビニル共重合体芯鞘型熱接着性複合繊維(繊度:3.3dtex、繊維長:64mm):5質量% 上述のようにして作製した第1繊維ウェブおよび第2繊維ウェブを重ね合わせ、第1繊維ウェブ側からニードルパンチ処理を行った後、130℃のドライヤー装置へ供することで各熱接着性繊維同士を溶融させ繊維同士を溶融一体化させ、そして、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることで、通気性支持体Aを構成可能な不織布(目付:80g/m2、厚さ:0.9mm、通気度:300cm3/cm2・s、剛軟度:5.7mm)を調製した。 そして、開口と外周との最短距離が10mmであり、図1に図示した略環帯形状となるように打ち抜くことで、通気性支持体Aを調製した。
(ii)通気性支持体Bの調製方法 以下の組成の繊維を混合してカード装置に供することで、目付が20g/m2の第3繊維ウェブを作製した。 ・ポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘型熱接着性複合繊維(繊度:1.7 dtex、繊維長:51mm):50質量% ・ポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘型熱接着性複合繊維(繊度:3.3 dtex、繊維長:64mm):50質量% 次いで、以下の組成の繊維をカード装置に供することで、目付が30g/m2の第4繊維ウェブを作製した。 ・ポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘型熱接着性複合繊維(繊度:3.3 dtex、繊維長:64mm):100質量% 上述のようにして作製した第3繊維ウェブおよび第4繊維ウェブを重ね合わせ、第4繊維ウェブ側からニードルパンチ処理を行った後、145℃のドライヤー装置へ供することで各熱接着性繊維同士を溶融させ繊維同士を溶融一体化させて、通気性支持体Bを構成可能な不織布(目付:50g/m2、厚さ:3.5mm、通気度:400cm3/cm2・s、剛軟度:14.3mm)を調製した。 そして、開口と外周との最短距離が10mmであり、図1に図示した略環帯形状となるように打ち抜くことで、通気性支持体Bを調製した。
(実施例1) 帯電された通気性シートと通気性支持体Aを、一体化することなく重ね合わせて本発明に係る通気性接顔体を作製した。 そして、前記通気性接顔体における通気性支持体A側の全外周に、上述のようにして用意したカップ形状のマスク本体部における全外周を接触させ、超音波融着によって帯電された通気性シートと通気性支持体Aごとカップ形状のマスク本体部と接合一体化することで、通気性接顔体とカップ形状のマスク本体部を接合一体化した。更に、マスクヒモをマスク本体部に超音波融着によって一体化して、マスクを製造した。
(実施例2) 帯電された通気性シートと通気性支持体Bを、一体化することなく重ね合わせて本発明に係る通気性接顔体を作製した。 そして、前記通気性接顔体における通気性支持体B側の全外周に、上述のようにして用意したカップ形状のマスク本体部における全外周を接触させ、超音波融着によって帯電された通気性シートと通気性支持体Bごとカップ形状のマスク本体部と接合一体化することで、通気性接顔体とカップ形状のマスク本体部を接合一体化した。更に、マスクヒモをマスク本体部に超音波融着によって一体化して、マスクを製造した。
(比較例1) 帯電された通気性シートを1枚用いて接顔体とし、マスクを製造した。 つまり、帯電された通気性シートにおける全外周に、上述のようにして用意したカップ形状のマスク本体部における全外周を接触させ、接触部分を超音波融着により接合一体化すると共に、マスクヒモをマスク本体部に超音波融着によって一体化して、マスクを製造した。
(比較例2) 帯電された通気性シートを、一体化することなく2枚重ね合わせて接顔体を作製した。 そして、前記積層体における全外周に、上述のようにして用意したカップ形状のマスク本体部における全外周を接触させ、超音波融着によって帯電された通気性シートを2枚ごとカップ形状のマスク本体部と接合一体化することで、前記積層体とカップ形状のマスク本体部を接合一体化した。更に、マスクヒモをマスク本体部に超音波融着によって一体化して、マスクを製造した。
以上のようにして得られた、実施例1-2および比較例1-2のマスクを、次の測定に供することで評価した。
(接顔体の形状変化測定) 実施例1-2および比較例1-2のマスクを、各々10枚ずつ作製した。 実施例1のマスクを10枚同一方向となるように重ね合わせ、マスクにおける接顔体側が重力方向に面するようにして、静置状態のまま3日間保管した。その後、10枚重ね合わせたマスクのうち、重力方向側から数えて2枚目に重ね合わされていたマスクにおける、接顔体の形状変化の有無を目視で判断した。 そして、実施例2および比較例1-2の各マスクについても、実施例1と同様にして接顔体の形状変化の有無を目視で判断した。
つまり、測定前のマスクにおける接顔体と比べて、測定後のマスクにおける接顔体がマスク内気側へ向かい変形していない場合には○と評価し、測定後のマスクにおける接顔体がマスク内気側へ向かい変形していた場合には×と評価した。
実施例1-2および比較例1-2のマスクの測定結果を、表1にまとめた。
実施例1-2および比較例1-2の測定結果を比較した結果、実施例1-2のマスクは比較例1-2のマスクと比較して、接顔体が形状変化するのを防ぐことができるマスクであることが判明した。