JP5941774B2 - 合成シリカガラス粉、及びその製造方法 - Google Patents

合成シリカガラス粉、及びその製造方法 Download PDF

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Description

半導体や太陽電池に用いられるシリコンウェハを単結晶引上げ法(チョクラルスキー法(CZ法))により製造する際に、溶融シリコンの容器として使用される石英ガラス製ルツボの原料となる合成シリカガラス粉に関する。
近年のシリコンウェハの大口径化に伴い、シリコン単結晶引上げ用の石英ルツボは二層構造が採用されている。その外層には高温強度にすぐれる天然石英粉を原料としたシリカ層、シリコン融液に接する内層には、不純物が少ない高純度な合成シリカガラス粉を原料とするシリカ層が(例えば特許文献1参照)用いられている。
この二層構造ルツボにおいて、従来、内層は気泡が無いことが求められてきた(たとえば特許文献2〜4参照)。内面の透明ガラス層が実質的に無気泡であると、気泡の剥離を生じることがなく、シリコン単結晶引き上げ時の有転位化率を低減することができるという利点を有している。
一方、最近はシリコン単結晶引上げの際、単結晶品質に悪影響を及ぼすルツボ内のシリコン融液の湯面振動防止のため、ルツボの湯面付近の内層部分に体積で0.01〜0.2%の気泡を含有させる技術(例えば特許文献5参照)や、シリコン融液の温度ムラをなくすため、外部輻射熱を分散させる目的で、内層と外層の中間に体積気泡含有率で0.1%以上の気泡含有層を設ける技術が開発されている(例えば特許文献6参照)。このように、近年ルツボの内側に部分的に数10μmの気泡を作る技術が求められている。
二層構造ルツボの典型的製法は、回転するカーボン型枠(回転モールド)内部に天然石英粉と合成シリカガラス粉を層状に堆積させ、アーク溶融することによるものである(例えば特許文献7参照)。この方法で気泡を作るためには、回転モールド内表面に堆積した石英粉をモールド空間側から加熱溶融し、該加熱溶融の際にモールド側から石英粉堆積層内の空気を吸引して気泡を除去する真空引きとリークを断続的に行う方法がとられている(前記特許文献6参照)。
特開2000−016896号公報 特開平1−148783号公報 特開2001−002430号公報 特開平11−116388号公報 特開2004−250304号公報 特開2009−084113号公報 特開2008−162839号公報
しかしながら、特許文献6に記載のような方法では、気泡の発生場所や気泡径の制御が難しいという課題がある。
上記方法の他に、シリコン融液に接する内面のガラス層に気泡を発生させるために、発泡剤として炭酸カルシウムや炭素含有物質(木屑など)をシリカ粉に混合する方法があるが、この方法ではこれらの発泡剤自体がシリカの不純物となることや、ガラス層の結晶化の起点となるという悪影響が懸念される。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、石英ルツボの必要な箇所に気泡を発生させることができる、高純度の合成シリカガラス粉、及びその製造方法を提供することに存する。
このような課題に対し、本発明者らは、各種のシリカガラス粉を合成して検討したところ、特定の合成シリカガラス粉を用いた場合、溶融後のシリカガラス層に気泡を発生させることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
この特定の合成シリカガラス粉を詳細に調べた結果、少量のシリカ白色粒子(以下「白粒」と記す)が含まれていることが判明し、これが気泡発生剤として作用しているものと考えられた。この白粒はそれが含まれる合成シリカガラス粉の粒子と同じ純度のシリカ粒子であり、このためこれを用いて製造されたルツボの内表面は原料シリカと同じ高い純度に保たれる。
即ち、本発明は以下の諸点を要旨とするものである。
(1) 粒子径が10〜1000μmの範囲であり、そのメジアン径が50から700μmである合成シリカガラス粉であって、前記合成シリカガラス粉中にシリカを1〜600個/g含み、かつシラノール基の濃度が5〜200重量ppmであることを特徴とする合成シリカガラス粉。
(2) 前記シリカ白色粒子の数が5〜500個/gであることを特徴とする(1)に記載の合成シリカガラス粉。
(3) アルコキシシランを原料としてゾルゲル法によって製造することを特徴とする(1)又は(2)に記載の合成シリカガラス粉の製造方法。
(4) 前記ゾルゲル法が、前記アルコキシシランを加水分解して生じるウェットゲルを粉砕した後、前記粉砕されたウェットゲルを回分式の乾燥機を用いて乾燥し、得られた乾燥後のゲルを焼成する方法であることを特徴とする(3)に記載の合成シリカガラス粉の製造方法。
(5) 前記回分式乾燥機が容器回転式であることを特徴とする(4)に記載の合成シリカガラス粉の製造方法。
(6) 前記回分式の乾燥機の乾燥容器の内壁面積に対する前記粉砕されたウェットゲルの仕込み量が乾燥ゲルベースで1〜150kg/mであることを特徴とする(5)に記載の合成シリカガラス粉の製造方法。
(7) (1)又は(2)に記載の合成シリカガラス粉を原料として用いることを特徴とするシリコン単結晶引上げ用石英ルツボの製造方法
本発明の合成シリカガラス粉は、溶融後のシリカガラス層の純度を低下させることなく、気泡を発生させることが可能である。また、本発明の合成シリカガラス粉を、シリコン単結晶引上げ用の石英ルツボ原料として使用した場合、これを使用して製造された箇所のルツボ内表面に気泡を発生させることが可能であり、より優れた品質のシリコン単結晶を製造可能な石英ルツボを製造することができる。
本願発明の合成シリカガラス粉を製造するためのフロー図の一例を示す。 本願発明の合成シリカガラス粉を製造するためのフロー図の一例を示す。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施できる。
[1.合成シリカガラス粉]
本発明の合成シリカガラス粉は、非晶質の二酸化ケイ素粒子であって、少なくともその中にシリカ白色粒子(以下「白粒」と記す)を1〜600個/g含み、かつシラノール基の濃度が5〜200重量ppmである。
以下に、本発明の合成シリカガラス粉の示す物性について詳細に説明する。
(1)粒子径、メジアン径
合成シリカガラス粉の粒子径は、10μm以上、好ましくは50μm以上であり、1000μm以下、好ましくは500μm以下であり、そのメジアン径が50μm以上、好ましくは100μm以上であり、700μm以下、好ましくは400μm以下である。ここで用いる粒子径は、白粒を含む合成シリカガラス粉をレーザー回折散乱法で測定した粒子径であり、メジアン径はその累積粒度分布の50%に相当する粒子径を意味する。
合成シリカガラス粉の粒径分布を上記範囲内に狭めることにより、ルツボ内層のシリカガラス層に気泡を均一に発生させることができ、またメジアン径を上記範囲とすることにより、アーク溶融時の粒子の溶融速度と粒子内のガスの脱離速度のバランスを良好なものとすることができる。
(2)かさ密度
合成シリカガラス粉のかさ密度は、好ましくは1.1g/cm以上、より好ましくは1.2g/cm以上であり、好ましくは1.5g/cm以下、より好ましくは1.4g/cm以下の範囲である。かさ密度の測定は、白粒を含む合成シリカガラス粉について、例えばJIS−K−6720による測定法で行われる。
合成シリカガラス粉のかさ密度を上記範囲の下限以上とすることで、合成シリカガラス粉を溶融させてシリカガラス層を形成する際に体積収縮が生じることを低減することができる。また、合成シリカガラス粉間に存在する粒子間空隙に起因する、直径1mm以上の径の粗大気泡が発生することを防ぐことができる。合成シリカガラス粉のかさ密度を上記の上限以下とすることで、溶融速度をより均一にすることができ、溶融ムラによる粗大気泡の発生を防止することができる。
(3)比表面積
合成シリカガラス粉の比表面積は、好ましくは0.003m/g以上、より好ましくは、0.01m/g以上、好ましくは0.5m/g以下、より好ましくは0.1m/g以下の範囲である。比表面積の測定は、白粒を含む合成シリカガラス粉について、例えば窒素吸着法のようなガス吸着法で行われる。
合成シリカガラス粉の比表面積が、0.5m/gを超えて大きい場合、原料のドライゲル由来の多孔質ゲルの性質が残っていて、ルツボ化の際に粗大な気泡を生成する原因となり、一方0.003m/g未満になると、通常、合成シリカガラス粉の粒径が1000μmを超えるので好ましくない。比表面積を上記範囲とすることにより、気泡生成を制御したルツボの製造が可能となる。
(4)不純物含有量
合成シリカガラス粉の不純物含有量としては、金属元素の総含有量が1重量ppm以下であることが好ましい。不純物含有量の測定は、白粒を含む合成シリカガラス粉について、例えばICP−MS法(誘導結合プラズマ質量分析法)により行われる。
合成シリカガラス粉の不純物含有量が上記範囲の上限値以下の場合では、合成シリカガラス粉を原料として用いてシリコン単結晶引き上げ用石英ルツボを作成した場合に、シリコン単結晶引き上げ用石英ルツボからシリコン融液及びシリコン単結晶への金属元素の溶出を抑えて汚染を防ぐことができる。
なお、上記不純物含有量は一般に少ないほど好ましいが、その下限値は通常10重量ppb程度である。10重量ppb未満まで不純物を減らすことはあまり現実的ではなく、また1重量ppbレベルの分析は非常に困難である。
(5)シラノール基の含有量
さらに、合成シリカガラス粉の粒子中のシラノール基(Si−OH)の含有量は、シラノール基の濃度として5重量ppm以上、好ましくは20重量ppm以上であり、200重量ppm以下、好ましくは100重量ppm以下である。シラノール基の濃度は、白粒を含む合成シリカガラス粉について、例えば赤外線分光光度法(赤外分光法)で測定可能であり、粒子重量に対するヒドロキシル基(OH基)の重量割合として示される。
合成シリカガラス粉の粒子中のシラノール基(Si−OH)の含有量を上記範囲の下限以上とすることによりシラノール基の脱水縮合で生成する水(水蒸気)に基づく気泡の発生を適切な量に制御しつつ、合成シリカガラス粉製造時の焼成時間も過度に長くならないようにできる。合成シリカガラス粉の粒子中のシラノール基(Si−OH)の含有量を上記範囲の上限以下とすることにより、気泡の過度な生成を防止し、併せて高温時におけるルツボの変形などの耐久性悪化を予防することができる。
[2.シリカ白色粒子(白粒)]
本発明でいうシリカ白色粒子(白粒)とは、非晶質の二酸化ケイ素粒子であって、下記(a)〜(c)の特性を持つ粒子のことである。
(a)目視で白く見える
(b)主成分がSiOである
(c)粒子密度が2.2g/cmより低い
以下、シリカ白色粒子についてさらに詳細に説明する。
白粒の外観としては、上記白粒を含まない合成シリカガラス粉(以下、「正常粒子」ともいう)が目視では粒子全体が無色透明であるのに対し、白粒は目視で白く見える点が特徴である。このため、肉眼でも容易に正常粒子と見分けることができる。その形状は、正常粒子が球体状あるいは塊状であるのに対し、白粒は板状のものが多く、厚みは通常5〜50μm程度である。その外見としては、白粒全面が白い場合と、無色透明な粒子が部分的に又は斑点状に白い場合とがある。
なお白粒の粒度分布は正常粒子とほぼ同じであって、粒子径が10〜1000μmの範囲である。これは、下記[4.合成シリカガラス粉と白粒の製造方法]で説明するように、白粒が正常粒子の製造過程で副生するもので、正常粒子と同じ分級工程を経るためである。
白粒の組成は正常粒子と同じ高純度のシリカ(二酸化ケイ素)である。白粒の構造は、正常粒子の1粒が単一の無孔質シリカ粒子であるのに対して、白粒の電子顕微鏡による観察では1μm以下のシリカ粒子の凝集・焼結体である。白粒内部にはサブミクロンレベルの大きさの気泡が多数存在する構造となっており、白粒中の気泡体積分率は、0〜18%である。この気泡により可視光が散乱されるため、外観が白く見えるものと考えられる。また白粒内部に気泡があるため、粒子密度は、非晶質のシリカ(2.2g/cm)より低く、1.8〜2.2g/cm程度である。
本発明でいう白粒の特定は、目視による色の確認のほかに、たとえばSEM−EDXのようなX線分光分析法で粒子組成がSiOであることや、液密度を2.2g/cm以下に調整した重液(比重測定用液体)に白粒を投入し、その浮沈から粒子密度が2.2g/cmより小さいことを確認する方法により行われる。
白粒が溶融後のシリカ層に気泡を発生させる理由は、白粒内部の気泡によるものと推定されるが、その体積以上の気泡が発生することから考えると、シリカ粉の溶融中に白粒の気泡を核として、周囲のシリカのSiO骨格の末端に存在するSiOH基(シラノール基)が脱水縮合して生じる水(水蒸気)が集合することによるものと考えられる。
上記の理由により、シリカ中のシラノール基濃度が高いほど、発生する気泡の量が多くなるので、合成シリカガラス粉の溶融時の気泡の発生量(発生数)及び気泡の径は白粒数とシラノール基濃度で制御できる。本発明において合成石英シリカガラス中の白粒の含有量は1〜600個/g含むことが必要であり、溶融時に気泡を有意に発生させるためには、合成シリカガラス1g中に5個以上であることが好ましく、より好ましくは10個以上である。一方、合成シリカガラス粉1g中の白粒が600個を超えて多くなると1mm以上の巨大な気泡が発生することが多くなるため、例えばシリコン単結晶引き上げ用のルツボ用途については、シリカガラス1g中の白粒が600個以下であることがその品質上必要である。より好ましい白粒含有量の上限値は500個/gである。
シラノール基濃度は、合成シリカガラス粉製造の焼成工程において、1000℃以上に加熱する時間で制御でき、加熱時間が長いほど、原料中のシラノール基の脱水縮合反応が進行し、シリカ中のシラノール基濃度は低下する。
気泡の発生量は、例えば合成シリカガラス粉のシラノール基濃度が5〜200重量ppmであれば、白粒1粒あたりの溶融ガラス1g中の気泡体積分率は、10−5〜10−3体積%となる。また、発生する気泡の大きさは、溶融条件にもよるが、例えば直径0.01〜1mm程度と思われる。
本発明の白粒を含有する合成シリカガラス粉の使用にあたっては、白粒含有量の少ない又は白粒を含有しない合成シリカガラス粉と、別の白粒含有量が異なる合成シリカガラス粉とを混合して使用することができる。また、白粒を多く含む合成シリカガラス粉から目視によって白粒を拾い出したり、前述した正常粒子と白粒との密度差を利用する方法により分離したりして集めた白粒を、別の白粒含有量の少ない又は白粒を含有しない合成シリカガラス粉に添加混合することにより、白粒数を制御することが可能である。
さらに、このような合成シリカガラス粉の使用にあたっては、ルツボ製造の際、部分的に当該白粒含有合成シリカガラス粉を用いることにより、所望の部位に気泡を形成させることもできる。
[3.白粒の検出・計数方法]
白粒は、目視で検出できるが、本発明でいう白粒の含有量は例えば以下の分析方法(浸液透過光法)によって測定することが可能である。
〔浸液透過光法〕
合成シリカガラス粉2gを直径3cm、深さ3cmのガラス容器(秤量瓶)に秤取し、屈折率を非晶質シリカと同じ1.46に調節した溶媒(屈折液)を2cc添加する(屈折液としては、たとえばメタキシレン65wt%+イソブタノール35wt%混合液を用いることができる)。
このスラリーを金属棒などで軽く撹拌して粉体と屈折液をなじませる。こうすると、正常粒子は完全に見えなくなり、白粒だけが液中に浮遊して見えるようになる。これを実体顕微鏡(倍率数倍)で観察し、計数する。この方法は、鉱物やセラミック粒子の観察に用いられる周知の方法である。
本発明に規定する白粒数は、この方法で得られた数値を観察サンプルの量から、合成シリカガラス粉1gあたりの含有量に換算し、その2回測定値(n=2)を平均したものである。もちろん、3回以上の測定を行い、その場合の測定値を平均してもよい。
[4.合成シリカガラス粉と白粒の製造方法]
本発明の合成シリカガラス粉は、好ましくはアルコキシシランを原料とするゾルゲル法で製造される。ゾルゲル法は、例えば文献(作花済夫「ゾルゲル法の科学」)で公知であるが、具体的な製造例として、特開平5−246708号公報や特開平8−91822号公報に記載された方法が挙げられる。
基本的には、以下の反応式(a)による、反応(A)を利用して、アルコキシシランの加水分解反応を行う。
原料のアルコキシシランとしては、テトラアルコキシシランが好ましい。また原料は予め蒸留精製したものを用いることが好ましく、これにより高い純度のSiOを製造することができる。
(RO)Si + 2HO → SiO + 4ROH (a)
上記反応式(a)中、Rはアルキル基を表し、その炭素数としては1〜4が好ましく、特に反応(A)の進行が速く、かつ生じたシリカ中へのアルコキシ基の残留が少ないメチル基が好ましい。
本発明の合成シリカガラス粉の製造フロー図の一例を図1、2に示す。
本発明の合成シリカガラス粉は、図1に示すように、アルコキシシランの加水分解を行う加水分解工程(ステップ1)、ウェットゲルの粉砕を行う粉砕工程(ステップ2)、粉砕ウェットゲルの乾燥を行う乾燥工程(ステップ3)、ドライゲルの焼成を行う焼成工程(ステップ4)を経て製造される。
または、本発明の合成シリカガラス粉は、図2に示すように、アルコキシシランの加水分解を行う加水分解工程(ステップ11)、ウェットゲルの粉砕を行う粉砕工程(ステップ12)、粉砕後ウェットゲルの乾燥を行う乾燥工程(ステップ13)、ドライゲルの焼成を行う焼成工程(ステップ14)の後に、さらに焼成後の合成シリカガラス粉に分級を行う分級工程(ステップ15)を行ってもよい。
以下、各処理について詳細に説明する。なお、以下の説明では、アルコキシシランとして、テトラアルコキシシランを用いた場合について説明する。
<加水分解反応(反応(A))>
加水分解反応は、原料であるテトラアルコキシシランに上述の反応(A)による加水分解反応を行うものであって、公知の方法に従ってテトラアルコキシシランと水を反応させることにより行なうことができる。ここで、テトラアルコキシランの加水分解物を「ウェットゲル」という。
この際、必要に応じて副生するアルコールと相溶性のあるアルコール類やエーテル類、ケトン類等の有機溶媒を混合してもよい。例えばアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等が、エーテル類としてはジエチルエーテル等が、ケトン類としてはアセトン等が挙げられる。
但し、加水分解反応の進行につれてケイ素と結合していたアルコキシ基が、アルコールとして遊離するためゲル化する(ウェットゲルが生成する)前に反応液が均一な状態となる場合、即ち、加水分解速度が大きいアルコキシ基(例えばメトキシ基)を含むような原料の場合、アルコール等の添加を行わなくても実際上支障なく製造が可能である。
この反応では触媒は必須ではないが、場合により塩酸、酢酸、フッ酸、硫酸のような酸や、アンモニア水のようなアルカリ等を触媒として使用してもよい。加水分解に使用する水は、目的物である合成シリカガラス粉をより高純度に得るためには超純水等を用いるのが好ましい。水の使用量は、加水分解反応が進行する量であれば特に制限されないが、実際上は理論量(テトラアルコキシシランの2倍モル)よりも過剰に加えることが一般的である。
また、ゲル化に要する時間および粗粉砕に要する時間等を適正な範囲とするために、テトラアルコキシラン:水のモル比を1:2〜1:10、好ましくは1:3〜1:8、より好ましくは1:4〜1:7の範囲とするのが実用的である。極端に水が多いとゲル化に長時間を要するばかりでなく、ゲル化した後もウェットゲルが粉砕工程に適する硬さになるまでに時間が掛かったり、場合によっては過剰の水を蒸発させなければならないことがあり、更には後述する乾燥工程に時間を要する等の不都合が生じることがある。また水が少なすぎると加水分解が十分進まず、従ってゲル化も十分行われないことになる。加水分解反応は、テトラアルコキシランと水との均一溶液が形成されたら、ほぼ完全に進行しているので、その後は溶液がゲル化し一体化するまで静置すればよい。
加水分解反応及びゲル化の条件は使用する原料によって異なるが、通常20〜100℃の温度、常圧〜0.2MPaの圧力の条件で20分〜10時間程度である。加水分解物のゲル化は、常温でも数時間で進行し、かつ加熱により促進できるので、温度条件を調節することによってゲル化時間を調整することができる。
なお、粉砕処理において取り扱いやすくするために、加水分解反応後に、ウェットゲルを数cmのサイズまで粗粉砕する、粗粉砕処理を行ってもよい。粗粉砕の方法は問わないが、例えば加水分解反応後の加水分解容器内のウェットゲルを減圧下におくことでゲルにクラックを入れ、さらにウェットゲルが入っている加水分解容器を回転又は揺動することにより、ゲルを粉砕することで行うことができる。
<粉砕>
上記のテトラアルコキシランの加水分解で得られたウェットゲルは、副生アルコールや未反応の水を含んでいる。最終製品の粒度を調整するためには、この段階でウェットゲルを粉砕することが好ましい。ここで、ウェットゲルを粉砕したものを「粉砕ウェットゲル」という。
粉砕に際しては、ウェットゲルは脆いため微粉が発生しやすいので、本発明の10〜1000μmの粒子径の合成シリカガラス粉を収率良く得るためには、粉砕機内の滞留時間を短くし、かつワンパスの連続式粉砕機を用いることが好ましい。滞留時間としては、1分以内が好ましく、また粉砕機の種類としては、例えば、ハンマー、ブレード、ピンなどを高速回転させ、衝撃並びに剪断によって粉砕するタイプの高速回転ミル(ハンマーミル、パルベライザー等)が好ましく用いられる。中でも粉砕機内部に粉砕物の分級のためのスクリーン(多孔板)を内蔵したスクリーンミルが好適である。多孔板の孔直径は、0.5〜5mm、さらに好ましくは0.8〜3mmである。
合成シリカガラス粉の最終的な粒度分布の範囲は、焼成後のふるい分けで調整できるが、粒子径範囲内での粒度分布およびメジアン径は、ウェットゲル粉砕時のスクリーンの孔径とミルの回転速度および滞留時間で制御しておくことが好ましい。
また、粉砕操作の際の金属成分の混入を低減・予防するために、例えば合成樹脂製等の網状物にウェットゲルを押し付け、網の目を通過させるような形式の網式粉砕機を用いることができる。この形式の粉砕機を用いる場合も、網目サイズや滞留時間を上記と同様に選定すればよい。
<乾燥>
次に、粉砕後のウェットゲルを乾燥して、ゲル中に含まれるアルコールと水を除去する。粉砕ウェットゲルの乾燥は通常バッチ方式で行われる。ここで、ウェットゲルを乾燥させたものを、「ドライゲル」という。
本発明の白粒は、通常この乾燥工程で生成する。
具体的な乾燥方法は以下の通り例示できる。
本願発明の特定の白粒を含む合成シリカガラス粉を製造する際に用いる乾燥装置の形式としては、コニカルドライヤーやロータリードライヤー等の、ジャケットを有する乾燥容器が回転して内部の粉体を転動させながら、ジャケット内に水蒸気(過熱水蒸気)などの熱媒を流通させることにより、容器の内壁面を通して粉体を加熱して乾燥する形式のものが好ましい。
乾燥装置として、例えば流動層乾燥機のように熱風で加熱する形式のものは、後述するシリカ層が形成されにくく、また連続式乾燥機は、通常乾燥装置内での滞留時間が短いため、シリカ層が形成されても、白粒数を本願の特定範囲とすることは困難なことが多い。
上記乾燥容器の材質としてはステンレスなどの金属を用いるのが、白粒の形成およびウェットゲルの汚染防止のためも好ましい。
乾燥条件としては、容器内部を例えば−20〜−95kPa程度の減圧にするのが乾燥促進のために好ましく、また乾燥温度は、50〜200℃、好ましくは100〜150℃である。白粒は、この乾燥時に乾燥容器内壁面上で生成するものと考えられる。
白粒の生成機構としては、粉砕ウェットゲル中の1μmレベルの大きさの二酸化ケイ素の微粒子が容器の内壁に付着、堆積し、これが転動するゲル粒子により圧着され、薄い板状のシリカ層を形成する。このシリカ層は剥離と成長を容器壁面で繰り返して、剥離した部分が粉砕されて白粒となり、乾燥された正常粒子中へ混入するものと推測される。
合成シリカガラス粉中の白粒含有量を1〜600個/g、特に本願の好適範囲内である、5〜500個/gとするためには、乾燥容器の内壁面積に対するゲルの仕込み量を乾燥ゲルベースで、通常1kg/m以上、好ましくは20kg/m以上、さらに好ましくは40kg/m以上で、通常150kg/m以下、好ましくは100kg/m以下、さらに好ましくは80kg/m以下とするのがよい。この仕込み量を1kg/m以上とすることにより、乾燥機の容量に対するゲルの仕込み量が極端に少なくなるためにシリカ層の形成が不十分となることを防ぐことができ、また工業的に見ても効率的となる。一方、仕込み量を150kg/m以下にすることにより、粉砕ウェットゲルの仕込み量が乾燥機容量の50%を超えるために乾燥操作が実質上困難となることを回避することができる。なお、上記の仕込み量とは、乾燥時に乾燥装置の乾燥装置に入れられる粉砕ウェットゲルの重量を、乾燥ゲルベースで表した重量である。
粉砕ウェットゲルの重量を乾燥ゲルベースで表した重量は、例えば粉砕ウェットゲルの含液率(含水率)を乾燥減量法で測定することで、粉砕ウェットゲルの重量から、含液率から算出される粉砕ウェットゲルに含まれる液体分の重量を差し引いた固形分の重量として得ることができる。
乾燥容器内での滞留時間は、5〜30時間とするのが好ましい。
また乾燥容器の回転速度は、白粒の生成・剥離のサイクルを形成するためには、周速として、通常0.01m/s以上、好ましくは0.05m/s以上、通常5m/s以下、好ましくは0.5m/s以下とするのが好ましい。周速が上記範囲の下限値以上の場合には、ゲルの転動混合が十分となり、乾燥時間を短縮できる。一方、周速を上記範囲の上限値以下とすることで、ゲルによる壁面の摩耗を低減し、かつシリカ層の安定した成長やゲルの破砕を防止することができる。
また、上記の内壁に付着したシリカ層の形成・剥離のサイクルが安定的に起こるようになるまでには、ある程度の乾燥のバッチ数が必要であり、白粒が本願で規定される範囲に達するのは通常、3〜4バッチ程度の乾燥を行った後である。一方、長期間乾燥を繰り返すと、シリカ層が強固に固着して剥離しにくくなるため、通常、50〜200バッチに1回、乾燥機に水酸化ナトリウム水溶液のようなアルカリ性水溶液を仕込んでシリカ層を溶解除去することが好ましい。
乾燥後のゲル(ドライゲル)は必要に応じて、純水等による洗浄を行うことにより、加水分解に用いた溶媒及び触媒、並びに加水分解により生じたアルコキシ基に由来する有機性の成分を取り除くことができる。
なお、焼成処理の際にゲルを取り扱いやすくするために、また焼成処理後の分級による最終的な粒度分布範囲の調整を好適に行うことを目的として、必要に応じて乾燥処理後にドライゲルを予備的に分級してもよい。
<焼成>
乾燥後のドライゲルは、一般に多孔質であるので、ルツボのようなガラス層形成の原料として不適当である。そのため、得られたドライゲルを加熱焼成し、緻密化させて無孔性の合成シリカガラス粉とするのが好ましい。
焼成の方法は特に限定されないが、合成シリカガラス粉としての純度を高く保つためには、石英製のルツボに粉体を充填し、必要に応じて空気や不活性ガス雰囲気下で加熱することが好ましい。焼成温度は、通常1000〜1300℃で、焼成時間は一般に10〜100時間程度である。
焼成時間を長くするほどシラノール基の濃度は減少するため、その目標濃度に応じて、焼成の温度及び時間を調節する。焼成工程において、白粒は当初の微小シリカ粒子の凝集体から、その微細シリカ粒子が焼結により融着して1つの粒子となる。このとき、個々の微細シリカ粒子内の細孔は焼成により消滅するが、元の凝集粒子間の空隙が焼成後も残留して、白粒の気泡を形成するものと考えられる。
<分級>
上述の乾燥・焼成工程を経て得られた、特定量の白粒を含有する合成シリカガラス粉は、そのまま使用してもよいが、必要に応じてふるい、風力分級機等により分級を行って粒度を調整するのが好ましい。分級は、合成シリカガラス粉の所望の粒子径の上限と下限に対応する孔径を有するスクリーンを用いて行うことができる。
なお、上述した合成シリカガラス粉と白粒形成の推定機構に基づく製造方法は一例であって、この製法に限らず、例えばサブミクロン程度の大きさのシリカ粒子を原料として造粒、焼成して白粒のみを別途製造した上で、所望量を正常粒子に混合することも可能である。
[5.効果]
本発明の合成シリカガラス粉を用いると溶融後のシリカガラス層に気泡を発生させることができる。また、本発明の合成シリカガラス粉を特定の箇所に含ませることで、所望の箇所に気泡を発生させることが可能である。
本発明の合成シリカガラス粉の製造方法によれば、白粒を含む合成シリカガラス粉の製造が可能であり、溶融後のシリカガラス層に発生する気泡の発生量(発生数)が好適となるような白粒数及びシラノール基濃度の合成シリカガラス粉を得ることができる。
さらに、本発明の合成シリカガラス粉を用いてルツボを製造した場合には、本発明の合成シリカガラス粉が含まれる部位に気泡を発生させることが可能であり、本発明の合成シリカガラス粉が用いられた部位を原料シリカと同じ高い純度に保つことが可能である。これにより、例えば本発明の合成シリカガラス粉をルツボ内表面の形成に用いた場合には、ルツボ内表面の純度を低下させることなく、特定の部位に気泡を発生させることが可能である。
[6.シリコン単結晶引上げ用石英ルツボ]
本発明の合成シリカガラス粉は、シリコン単結晶引上げ用石英ルツボに適用可能である。本発明の白粒を含む合成シリカガラス粉を用いて、ルツボの製造の際にシリカガラス粉を溶融させることで、シリカガラス層に気泡を有するシリコン単結晶引上げ用石英ルツボを得ることができる。
シリコン単結晶引上げ用石英ルツボとは、例えばチョクラルスキー法によるシリコンの単結晶引き上げに用いられるものであって、多結晶シリコンを入れて加熱溶融させた溶融シリコンの容器として使用されるものである。
本発明の合成シリカガラス粉は、シリコン単結晶引上げ用石英ルツボの全体(全部分)に使用してもよいが、シリコン単結晶引上げ用石英ルツボの特定の部位において気泡を発生させるために、白粒を含有しない従来の原料シリカガラス粉と共に用いて、本発明の合成シリカガラス粉を特定の部位に充填してからシリカガラス粉を溶融させるようにしてもよい。本発明の合成シリカガラス粉がシリコン単結晶引上げ用石英ルツボにおいて使用される部位は特に限定されるものではなく、溶融シリコンと接するルツボの内面の内層に用いてもよく、ヒーターにより加熱されるルツボの外面の外層に用いてもよく、内層と外層の間の中間層に用いてもよく、また各層における特定の位置に用いてもよい。
シリコン単結晶引上げ用石英ルツボ製造の際には、白粒を含有する本発明の合成シリカガラス粉を部分的に用いることにより、所望の部位に気泡を形成させることができる。これにより、シリコン単結晶引上げ用石英ルツボに気泡の存在部位に応じた機能を付与することができ、より優れた品質のシリコン単結晶を製造可能な石英ルツボを製造することができる。
一例として、モールド内面に従来の原料シリカガラス粉を充填する際に、ルツボ内表面のシリコン融液の湯面と接する部位に対応する位置に本発明の合成シリカガラス粉を充填して、シリカガラス粉を溶融させることができる。これにより、ルツボ内層のシリコン融液の湯面となる位置の内表面に気泡を含有することによって、従来の合成シリカガラス粉から製造されたルツボに比べて、シリコン融液の湯面振動の抑制が期待できる。
又は、従来の原料シリカガラス粉を含む複数のシリカガラス粉を積層して充填する際に、ルツボの中間層に本発明の合成シリカガラス粉を積層して、シリカガラス粉を溶融させることができる。これにより、ルツボ壁面内部の中間層に気泡を有することによって、従来の内面が透明ガラス層で外面が気泡含有層である二層構造のルツボに比べて、ルツボ加熱時の外部輻射熱を分散させ、シリコン融液の温度ムラの低減が期待できる。
〔粒子径・メジアン径の測定方法〕
合成シリカガラス粉の粒子径及びメジアン径は、粒子径分布測定装置(Leeds&[Northrup社製、マイクロトラックFRA9220)を用いてレーザー回折散乱法で測定した。合成シリカガラス粉の累積粒度分布の50%に相当する粒子径をメジアン径とした。
〔シラノール基濃度の測定方法〕
合成シリカガラス粉のシラノール基の含有量は、シラノール基濃度として、赤外分光光度計(JASCO製、フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR−4100typeA)を用いて、測定対象の合成シリカガラス粉を石英セルに入れ、セル内の空隙を四塩化炭素で満たした上で、波数3670cm−1でのピーク高さを計測することにより測定した。
〔白粒数の計測方法〕
合成シリカガラス粉の白粒数は、上記[3.白粒の検出・計数方法]にて説明した、浸液透過光法で計測した。
<製造例>合成シリカガラス粉の製造
容量750リットルのステンレス製のジャケット付きコニカル型反応器にテトラメトキシシラン180kgと超純水106kg(5倍モル量)とを仕込み、ジャケットに47℃の温水を通しながら、回転数6rpmで反応機を回転させながら反応させた。内温が80℃に達したら、回転を止めて、30分間静置しゲル化を進行させた。その後、反応機内部を減圧にしてゲルにクラックを入れ、再び15分間回転させて、反応機内でゲルを数cmのサイズにまで粗粉砕した。
この粗粉砕ウェットゲルを反応機から取り出し、次に、内部に孔径1mmのすり鉢状のスクリーンといかり型のブレードを有する高速回転ミル型粉砕機(Quadro社製、Comil(商品名))を用いて、粗粉砕ウェットゲルを連続的に粉砕し、大きさ1mm以下の粉砕ウェットゲルを得た。このゲルの含液率を乾燥減量法で測定したところ、69%であった。残りの31%はシリカゲルである。(以下、この粉砕ウェットゲルを「原料ウェットゲル」という。)
この加水分解反応と粉砕を繰り返して、合計1500kgの原料ウェットゲルを製造した。
続いて、予め水酸化ナトリウム水溶液で装置内部壁面のシリカ層を溶解して洗浄除去した、容量3000リットルのステンレス製のジャケット付きコニカル型乾燥機(内壁面積10.1m)に、この原料ウエットゲル1420kgを仕込んだ。このとき、乾燥容器の内壁面積に対する、原料ウェットゲル中のシリカゲル分の量(すなわち、乾燥ゲルベースでの原料ウェットゲルの仕込み量)(以下、「乾燥ゲル/内壁面積」ともいう)=44kg/mであった。
乾燥機のジャケットに過熱水蒸気を通し、回転数1rpm(周速=0.16m/s)で回転させながら圧力−90kPaで減圧乾燥を行い、ゲルの温度が135℃となったところで、加熱を停止して、乾燥機内部を復圧した。
次に、超純水1000Lを乾燥機に供給し、10分間装置を回転させて洗浄した後、ゲル上部の水相部を乾燥機外へ排出した。この超純水によるゲルの洗浄をさらに2回繰り返した。
その後、再びこの乾燥機のジャケットに過熱水蒸気を通し、回転数2rpmで回転させながら減圧乾燥を行い、ゲルの温度が130℃となったところで、加熱を停止して乾燥機内部を復圧した。乾燥機中のドライゲルを取り出し、125μmと630μmのスクリーンを用いて分級を行い、粒子径125〜630μmのドライゲル260kgを得た。
次に、このドライゲルを以下のようにして焼成した。
容量1リットルの石英製ルツボにドライゲル800gを仕込み、ルツボを電気炉内にセットした。その後、中央部に孔を開けた石英製円板でルツボに蓋をし、蓋の孔を通して石英チューブをゲル粉体層に挿入した。このチューブを通してゲル粉体層中に乾燥空気を吹き込みながら加熱を行い、1220℃で30時間保持した。冷却後、焼成ゲルを100μmと450μmのスクリーンを用いて分級を行い、粒子径100〜450μmの合成シリカガラス粉を得た。この粒度分布を測定した結果、メジアン径は190μmであった。また、シラノール基濃度を測定したところ、48ppm(重量ppm、以下同じ)であった。
得られた合成シリカガラス粉の白粒数を計測したところ、1個/gであった。これは、コニカル乾燥機を用いた場合の1バッチ目で得られた合成シリカガラス粉の白粒量は少ないことを示している。
<参考例>白粒の無い合成シリカガラス粉(「シリカ粉A」)の製造
上記製造例の途中で得られた原料ウェットゲル5kgを石英バットに取り分け、棚段式真空乾燥機内で静置乾燥した。乾燥後のゲルを5リットルビーカーに移し、上記製造例と同様にして、超純水による洗浄・上澄み水相分離を3回繰り返した後、再び静置乾燥した。
得られたドライゲルを上記製造例と同じく、「分級−焼成−分級」の操作を行い、合成シリカガラス粉600gを得た。この中の白粒数を計測したところ、0個/gで白粒は全く含まれていなかった。また、得られた合成シリカガラス粉の粒子径、メジアン径、シラノール基濃度を測定したところ、上記製造例と同じく、粒子径は100〜450μm、メジアン径は190μm、メジアン径は48ppmであった。
以下、この白粒が含まれていない合成シリカガラス粉を「シリカ粉A」と呼ぶ。
<実施例1>
上記製造例において、乾燥機内壁面が清浄な状態から、シリカ層の溶解洗浄除去を行うことなく、上記製造例と同様にして5バッチ連続して原料ウェットゲルの乾燥操作を行い、5バッチ目で得られたドライゲルを焼成して合成シリカガラス粉を製造した。
得られた合成石英ガラス粉の粒子径、メジアン径、シラノール基濃度を測定したところ、上記製造例と同じく、粒子径は100〜450μm、メジアン径は190μm、シラノール基濃度は48ppmであった。また、含まれる白粒数を計測したところ、53個/gであった。
この白粒を目視にて拾い出し、SEM/EDX(走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法分析法)で元素分析したところ、ケイ素と酸素のみが検出され、白粒が高純度のシリカであることが確認された。また、白粒をピンセットで割って断面をSEMで観察したところ、内部に大きさ1μm以下の孔が多数存在していた。また、四塩化炭素(密度1.58g/ml)とジブロモメタン(密度2.48g/ml)を混合して、密度2.116g/mlの溶液(重液)を調整し、拾い出した白粒を投入したところ、全ての白粒が重液表面に浮上し、白粒の密度が純シリカの2.2g/mlより低いことが確認された。
<実施例2>
乾燥機への粉砕ウエットゲル仕込み重量を、乾燥ゲル/内壁面積=20kg/mとしたこと以外は、実施例1と同様にして、乾燥操作を5バッチ連続して行った。5バッチ目のドライゲルを用いて焼成して合成シリカガラス粉を製造した。
得られた合成シリカガラス粉の白粒数を計測したところ、106個/gであった。また、得られた合成石英ガラス粉の粒子径、メジアン径、シラノール基濃度を測定したところ、上記製造例と同じく、粒子径は100〜450μm、メジアン径は190μm、シラノール基濃度は48ppmであった。
<実施例3>
実施例2において、乾燥機への粉砕ウエットゲル仕込み重量を、乾燥ゲル/内壁面積=10kg/mとし、同様に乾燥5バッチ目のドライゲルを焼成して合成シリカガラス粉を製造した。
得られた合成シリカガラス粉の白粒数を計測したところ、206個/gであった。また、得られた合成石英ガラス粉の粒子径、メジアン径、シラノール基濃度を測定したところ、上記製造例と同じく、粒子径は100〜450μm、メジアン径は190μm、シラノール基濃度は48ppmであった。
以上の結果を表1に示す。なお、この表1における実施例2、3の合成石英シリカガラス粉の粒子径、メジアン径、およびシラノール濃度を測定したところ、前記製造例と同じく、粒子径は100〜450μm、メジアン径は190μm、シラノール基濃度は48ppmであった。この表1から、乾燥機への粉砕ウェットゲル仕込み量で白粒数を制御できることがわかる。
Figure 0005941774
〔溶融ガラス中の気泡数の測定方法〕
上記参考例で製造したシリカ粉A45gを容量50ccの黒鉛ルツボに秤取し、タッピングにより表面を平担にした上で、この表面に測定対象の合成石英シリカガラス粉サンプル2gを均一に散布し分散させる。
この黒鉛ルツボを真空加熱炉内で1780℃、1時間加熱した後、冷却し、円柱状のシリカ溶融ガラスインゴットを得る。得られたインゴット中の気泡をルーペを用いて観察し、無気泡状態で透明なガラス層の上に形成された表面層(散布した合成石英ガラスサンプル由来の層)中の直径0.1mm以下の気泡の数をカウントする(単位「個/g・サンプル」)。この気泡が白粒及びシラノール基が脱水縮合して生じる水(水蒸気)由来のものと考えられる。
<実施例4>
上記実施例1の合成シリカガラス粉から白粒を拾い出し、この白粒をシリカ粉Aへ添加することにより白粒数=7個/gの合成シリカガラス粉を調製した。このガラス粉について上記測定方法に従ってで気泡数を測定したところ、直径0.1mm以下の気泡数は13個/gであった。
<実施例5>
上記実施例4と同様にして、白粒数=22個/gの合成シリカガラス粉を調製し、気泡数を測定したところ、直径0.1mm以下の気泡数は44個/gであった。
<実施例6>
実施例1で得られた合成シリカガラス粉の気泡数を、上記方法で測定したところ、直径0.1mm以下の気泡数は105個/gであった。
<実施例7、8>
実施例2、3で得られた合成シリカガラス粉の気泡数を同様にして測定した。直径0.1mm以下の気泡数は、それぞれ203、398個/gであった。
<実施例9>
上記実施例4と同様にして、白粒数=502個/gの合成シリカガラス粉を調製し、気泡数を測定したところ、直径0.1mm以下の気泡数は960個/gであった。
<比較例1>
表面に散布・分散させるシリカ粉として、シリカ粉A(白粒含有量:0個/g)を用いて、気泡数を測定した。表面層にも気泡は見られず、得られたインゴットは全体が無気泡状態で透明であった。
<比較例2、3>
上記実施例4と同様にして、白粒数がそれぞれ610個/g、690個/gの合成シリカガラス粉を調製し、気泡数を測定したところ、直径1mm以上の巨大な気泡が多数発生し、測定が困難であった。
以上の、実施例4〜9、及び比較例1〜3の結果を表2にまとめて示す。白粒が気泡の発生要因となっており、白粒量により気泡数を制御できることがわかる。また、白粒数が600個/gを超えると、直径1mm以上の巨大気泡が発生することが判る。
なお、表2に示す実施例4〜9、比較例1〜3について合成シリカガラス粉の粒子径およびメジアン径を測定したところ、前記製造例と同じく粒子径は100〜450μm、メジアン径は190μmであった。
Figure 0005941774
<実施例10〜14、比較例4>
実施例1においてドライゲルの焼成時間を変えることで、シラノール基濃度が10ppm〜315ppmとそれぞれ異なる合成シリカガラス粉を6種類(実施例10〜14、比較例4)を製造した。それぞれの白粒数は、53個/gで差はなかった。
これらの気泡数を上記方法により測定したところ、表3に示す通りであった。シラノール基濃度が高いほど気泡数が多くなる傾向となった。
なお、ここで用いた合成シリカガラス粉の粒子径およびメジアン径を測定したところ、上記製造例と同じく粒子径は100〜450μm、メジアン径は190μmであった。
Figure 0005941774

Claims (7)

  1. 粒子径が10〜1000μmの範囲であり、そのメジアン径が50〜700μmである合成シリカガラス粉であって、前記合成シリカガラス粉中にシリカ白色粒子を1〜600個/g含み、かつシラノール基の濃度が5〜200重量ppmであることを特徴とする合成シリカガラス粉。
  2. 前記シリカ白色粒子の数が5〜500個/gであることを特徴とする請求項1に記載の合成シリカガラス粉。
  3. アルコキシシランを原料としてゾルゲル法によって製造することを特徴とする請求項1又は2に記載の合成シリカガラス粉の製造方法。
  4. 前記ゾルゲル法が、前記アルコキシシランを加水分解して生じるウェットゲルを粉砕した後、前記粉砕されたウェットゲルを回分式の乾燥機を用いて乾燥し、得られた乾燥後のゲルを焼成する方法であることを特徴とする請求項3に記載の合成シリカガラス粉の製造方法。
  5. 前記回分式乾燥機が容器回転式であることを特徴とする請求項4に記載の合成シリカガラス粉の製造方法。
  6. 前記回分式の乾燥機の乾燥容器の内壁面積に対する前記粉砕されたウェットゲルの仕込み量が乾燥ゲルベースで1〜150kg/mであることを特徴とする請求項5に記載の合成シリカガラス粉の製造方法。
  7. 請求項1又は2に記載の合成シリカガラス粉を原料として用いることを特徴とするシリコン単結晶引上げ用石英ルツボの製造方法
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