JP5929915B2 - 細胞平面展開デバイスおよびこれを用いた細胞展開方法 - Google Patents

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Description

本発明は、細胞平面展開デバイスおよびこの細胞平面展開デバイスを用いた細胞展開方法に関する。より詳細には、本発明は、特定の溝がその表面に刻まれた細胞平面展開デバイスであって、溝に沿って細胞を密に整列させることができる細胞平面展開デバイスおよびこの細胞平面展開デバイスを用いた細胞展開方法に関する。
現代医学において、細胞の形態から得られる多くの情報は、病気の予防・診断・治療等を行う上で極めて重要な役割を担っている。細胞情報を医療に応用する手段の一つである細胞診については、剥離細胞診や擦過細胞診があり、その他より積極的に病巣の細胞を採取する穿刺細胞診等がある。
これら細胞診は、採血・擦過・穿刺等により細胞を採取した後、スライドガラス上に主に塗沫法(手技)・オートスミア法(遠心力を利用し、スライドガラス上に検体を付着させる)等によって塗沫面をつくる。
そして、この塗沫された検体を染色バット等の容器に収納されたアルコール・染色液・蒸留水等の各溶液中に浸漬し、検体の染色を行った後、封入剤およびカバーガラスを被せる等の一連の操作を行ってプレパラート(標本)を作製し、それを顕微鏡等で鏡検し病変の診断を行うものである。
ところで、このような細胞診では、検査対象とする細胞数は極少量に限られており、事象の見逃しも懸念されている。これは、細胞を検査、すなわち観察するには、平面上に単層に展開する必要があり、このため十分な検査細胞数を確保するには、観察範囲が広大になってしまうことが障害の一つとなっている。
このため、目的細胞を含んだ細胞懸濁液を細胞の重さの違い,細胞の大きさの違いなどの条件で、ある程度分離して目的細胞を見つけ易くした後、この分離した細胞集団を観察して、目的細胞の有無を調べる方法が試みられている。
このような細胞の分離技術について、特許文献1,2には、血液等の細胞分散液に含有される、少なくともがん細胞に対して、物理的・化学的作用および/または生理活性作用を付与できる細胞処理デバイスが開示されている。
この細胞処理デバイスは、図11に示すように、第一面301および第二面302を有し、第一面301から第二面302に貫通し一方向に沿って延びるスリット形状を有する貫通孔310が形成された、スリット部材300を有している。
また、スリット部材300の貫通孔310は、テーパー部312を有し、テーパー部312の形成された方向に対して直交する断面における幅は、第一面301から第二面302側に向かって減少し、第二面302側の端(幅Wte)においてがん細胞gの平均直径よりも小さくなっている。そして細胞分散液に含有されるがん細胞g以外の細胞は、第一面301側から貫通孔310を通って第二面302側に通過される。
なお、循環がん細胞(CTC; Circulating Tumor Cell)は、血液中の通常の細胞よりも平均的な直径が大きいという報告がある。
また、その他の細胞の分離技術として、特許文献3に開示された細胞処理デバイス100では、図12(a),(b)に示したように、底面106に同じ大きさの溝104が複数並設された流路部材102を用意し、この流路部材102の複数の溝104を横切るように一方側110から他方側112に向かって細胞懸濁液150として血液を流入させることで、この溝104内に血液中の赤血球150Aを捕獲し、血液を赤血球150Aとそれ以外の組織由来幹細胞150Bとに分離するようにしている。
また特許文献4に開示された細胞処理デバイス200は、図13(a),(b)に示したように、複数の柱202が列状に整列配置されるとともに、柱202と柱202の間隔が列ごとに徐々に狭められた上下2つの部材204,206からなる容器208を用い、この容器208の柱202と柱202の間隔が一番広くなる一方側210から柱202と柱202の間隔が一番狭くなる他方側212に向かって、細胞懸濁液を流入させることで、柱202と柱202の間に、柱202と柱202の間の間隔よりも大きな細胞が捕獲され、大きな細胞250Aから小さな細胞250Cの順で細胞を分離するようにしている。なお図中の符号250Bは大きな細胞250Aと小さな細胞250Cの間の大きさの細胞である。また符号214は細胞懸濁液を容器内に供給する際の入口である。
このように細胞の分離技術には様々な方法があり、それぞれの分離方法や装置の構成なども異なるため、使用者の目的に合わせて選択したものが用いられている。
特開2010−227011号公報 特開2010−227087号公報 特開2008−212022号公報 米国特許出願公開第2006/0051265号明細書
B.G.de Groothら,Cytometry,6巻:226〜233頁(1985年)
しかしながら、特許文献1,2に記載された細胞処理デバイスは、がん細胞や免疫細胞に物理的作用、化学的作用、および生理的作用の少なくとも一種を付与するためのものであって、細胞懸濁液を平面状に展開してがん細胞等を含めた複数の目的細胞を観察するという用途に最適化されたデバイスではない。
例えば、細胞処理デバイスにはがん細胞gの「平均直径」よりも小さい幅を有する貫通孔310の形成が必須とされているが、細胞診にとって特に重要な稀少なCTCの直径が平均直径よりも小さな場合にそのような貫通孔310を通過して失われてしまう虞がある。
また、基本的にポンプ等の送液システムを用いて細胞処理デバイス上のテーパー部312を細胞懸濁液が通過するようになっており、送液システムを用いずとも細胞懸濁液を細胞処理デバイス上に展開して目的細胞を観察できるようにする態様は記載も示唆もされていない。
他方、非特許文献1には、複数の溝が刻まれているアナログレコード盤上で細胞を観察する方法が開示されているが、溝の幅を制御するという概念は一切記載も示唆もない。
また、上記した特許文献3に開示された細胞処理デバイス100は、細胞懸濁液150である血液中から、組織由来幹細胞105Bを分離する装置であるが、不要な赤血球150Aだけを単に溝104内で捕獲して、血液を組織由来幹細胞150Bを含む集団と赤血球150Aの集団とに分離しただけであり、白血球などその他血球細胞も含む組織由来幹細胞150Bの集団から、組織由来幹細胞105Bを観察しようとした場合には、まずは組織由来幹細胞150Bの集団を例えばガラス基板上に展開させ、細胞集団の各細胞を観察する手順を経る必要があり、結局、正確に目的細胞である組織由来幹細胞105Bを同定するに至るまで煩雑な工程を繰り返す必要があるものであった。
また特許文献4に開示された細胞処理デバイス200では、柱202と柱202の間で大きな細胞250Aから小さな細胞250Cの順に細胞を捕獲する構造であるため、大きな細胞250Aが細胞懸濁液中に多く有ると目詰まりを起こして下流側へそれよりも小さな細胞250B,250Cが流れにくくなってしまい、精度良く細胞を分離することができない場合があった。
本発明はこのような現状に鑑み、複数種からなる細胞懸濁液を平面に展開した際に、目的細胞とそれよりも直径の小さな細胞とを分離するとともに、目的細胞およびそれと同程度の直径の細胞を平面状に密に整列させることができる細胞平面展開デバイスおよびこれを用いた細胞展開方法を提供することを目的とする。
また、細胞懸濁液中の種々の細胞を大きさごとに平面状に密に整列させることのできる細胞平面展開デバイスおよびこれを用いた細胞展開方法を提供することを目的とする。
さらに整列された細胞をこのまま観察することのできる細胞平面展開デバイスおよびこれを用いた細胞展開方法を提供することを目的とする。
また、目的細胞だけでなく、目的細胞以外の細胞についても観察することのできる細胞平面展開デバイスおよびこれを用いた細胞展開方法を提供することを目的とする。
本発明は、前述したような従来技術における課題および目的を達成するために発明されたものであって、
本発明の細胞平面展開デバイスは、
細胞懸濁液に含まれる目的細胞を平面状に展開することができる細胞平面展開デバイスであって、
前記細胞平面展開デバイスが、
上面に細胞展開部を有する板状の本体部から構成されており、
前記本体部の細胞展開部には、
前記本体部の一方側から他方側に向かって複数の溝が列状に並設されるとともに、前記複数の溝は、溝幅が異なる複数の溝群からなり、
前記複数の溝群のうちの少なくとも1つの溝群において、
溝の開口部上面の最大幅は、前記目的細胞の直径と等しいか、または前記目的細胞の直径より大きく、かつ、
溝は、その深さ方向の途中で前記目的細胞を保持し得るように、その深さ方向において前記目的細胞の直径よりも小さい幅を有し、
の底部に、幅1μm以下のスリットもしくは直径1μm以下の孔を有するか、または、それらを有さないことを特徴とする。
このように構成すれば、目的細胞と、それよりも直径の小さな細胞およびゴミ等とが分離し、目的細胞およびそれと同等の直径の細胞が溝に沿って移動し整列することができる。
さらには、前記本体部の一方側から他方側に向かって複数の前記溝が列状に並設されるとともに、前記複数の溝が溝幅の異なる複数の溝群からなっているので、細胞平面展開デバイスの細胞展開部に細胞懸濁液を流入させた際に、細胞懸濁液中の種々の大きさの細胞を、細胞の大きさに合った大きさの溝内に整列して展開させることができる。
また、本発明の細胞平面展開デバイスは、
前記複数の溝群のうちの前記少なくとも1つの溝群において、溝は、その底部に、0.4μm以上1μm以下の幅のスリットを有することを特徴とする。
このように構成すれば、細胞観察にとって不要な物質を排出することができる。
また、本発明の細胞平面展開デバイスは、
前記複数の溝群のうちの前記少なくとも1つの溝群において、溝の底部は、閉口であることを特徴とする。
このように構成すれば、製造が容易で安価となり好ましい。
またスリットを形成する場合と比べて毛細管力を高めることができ、細胞を展開する上で好ましい。
また、本発明の細胞平面展開デバイスは、
前記複数の溝群のうちの前記少なくとも1つの溝群において、溝が傾斜面を有するテーパード型である場合、傾斜角度は、45度以下であることを特徴とする。
このように構成すれば、目的細胞および非目的細胞の整列および保持が適切に行われる溝を形成しやすくなる。
また、本発明の細胞平面展開デバイスは、
前記複数の溝群のうちの前記少なくとも1つの溝群において、溝の深さは、目的細胞の直径の2倍より小さいことを特徴とする。
このように構成すれば、溝の開口部の最大幅ないし山から山の間の距離が広がり過ぎることなく、一枚の細胞平面展開デバイスで処理できる細胞数を十分に確保できることや毛細管力も働き易くできるなど好ましい。
また、本発明の細胞平面展開デバイスは、
前記複数の溝群のうちの前記少なくとも1つの溝群において、溝の表面は、水に対する接触角が、20度以下であることを特徴とする。
このように構成すれば、細胞懸濁液の展開速度が速く、また必要以上に表面張力によって細胞懸濁液が盛り上がる(厚みを増す)のを抑制することができるなどの観点から好ましい。
また、本発明の細胞平面展開デバイスは、
前記複数の溝群のうちの前記少なくとも1つの溝群において、溝の開口部上面から20μm以上100μm以下の高さに天井構造を有することを特徴とする。
このように、溝上部に天井構造を設け、閉鎖的な流路を形成することによって、細胞懸濁液に毛細管力がはたらき、より迅速に細胞懸濁液の展開および目的細胞の整列を行うことができる。
また、本発明の細胞平面展開デバイスは、
前記複数の溝群が、
前記溝群ごとに同じ溝幅の溝が並設されてなることを特徴とする。
このように構成すれば、溝群ごとに同程度の大きさの細胞を整列して展開させることができる。
また、本発明の細胞平面展開デバイスは、
前記複数の溝群のうちの前記少なくとも1つの溝群以外の他の溝群は、溝の開口部上面の最大幅が、前記目的細胞の直径よりも小さいことを特徴とする。
このように構成すれば、目的細胞よりも直径が小さい非目的細胞を、複数の溝群のうちの少なくとも1つの溝群以外の他の溝群に整列して展開できるので、目的細胞と非目的細胞とをより分離しやすくなる。
また、本発明の細胞平面展開デバイスは、
前記複数の溝群が、
前記本体部の一方側から他方側に向かうにしたがって、前記溝群ごとに溝幅が漸次大きくなるように設定されていることを特徴とする。
このように構成すれば、細胞の大きさの順で、溝内に確実に細胞を展開させることができる。
また、本発明の細胞平面展開デバイスは、
前記複数の溝群が、
前記溝幅が大きくなるに従って、漸次溝深さが深くなるよう構成されていることを特徴とする。
このように構成すれば、溝内に細胞を確実に保持させることができる。
また、本発明の細胞平面展開デバイスは、
前記溝幅が1〜100μmの範囲内であるとともに、前記溝深さが1〜100μmの範囲内であることを特徴とする。
このような大きさとすれば、大きな細胞から小さな細胞までを確実に細胞の大きさごとに分別できる。
また、本発明の細胞平面展開デバイスは、
前記溝が、断面V字状であることを特徴とする。
このような形状であれば、細胞懸濁液の溝の長さ方向への流動性も確保しつつ、細胞の大きさに応じた細胞の捕獲を確実に行うことができる。
また、本発明の細胞平面展開デバイスは、
前記本体部が、複数の分割板状体を並設してなることを特徴とする。
このように構成すれば、細胞懸濁液中の細胞の数や大きさに応じて分割板状体を適宜組み合わせて設けることができるため、検出対象となる細胞や展開する細胞に合わせた細胞平面展開デバイスを簡単に得ることができる。
また、本発明の細胞平面展開デバイスは、
前記複数の分割板状体が、
前記分割板状体ごとに、同じ溝幅及び同じ溝深さの複数の溝からなる1種類の溝群が並設されてなることを特徴とする。
このように構成すれば、分割板状体の規格化を容易に行え、様々な細胞懸濁液に応じた所望の細胞平面展開デバイスを確実に用意することができる。また、このような構造を有するプリズムシートが既に市販されているので、プリズムシートを転用して分割板状体とすることも可能である。
また、本発明の細胞平面展開デバイスは、
前記細胞懸濁液が、生体試料であることを特徴とする。
このように生体試料であれば、医療における細胞を対象とした検査、例えば血液中の癌細胞などのレア細胞を対象とした検査に用いるのに好適である。
また、本発明の細胞展開方法は、
上記のいずれかに記載の細胞平面展開デバイスの溝に、前記細胞懸濁液を添加する工程を含むことを特徴とする。
このような細胞平面展開デバイスを用いた細胞展開方法であれば、細胞平面展開デバイスの溝が形成された部位に直接に細胞懸濁液を添加する場合はもちろん、溝と連通した部位に細胞懸濁液を添加した場合であっても、毛細管力により細胞懸濁液を溝に展開させて細胞を整列させることができる。
また、本発明の細胞展開方法は、
前記細胞懸濁液を接触させる工程において、
前記細胞平面展開デバイスの前記本体部の一方側から他方側に向かって前記複数の溝群を横切るように前記細胞懸濁液を前記複数の溝群の溝内に供給し、前記細胞懸濁液中の細胞を小さい細胞から大きい細胞の順に前記複数の溝群の溝内に整列させて展開する工程と、
を少なくとも有することを特徴とする。
このような工程を経れば、細胞懸濁液中の細胞を小さい細胞から大きい細胞の順で、順次細胞平面展開デバイスの溝内に整列して展開させることができる。
また、本発明の細胞展開方法は、
前記細胞懸濁液中の細胞を小さい細胞から大きい細胞の順に前記複数の溝群の溝内に整列させて展開する工程の後、
さらに前記平面状に展開された細胞を観察手段で観察する工程と、
を有することを特徴とする。
このような工程を有していれば、細胞懸濁液中の細胞は、先の工程で既に小さい細胞から大きい細胞の順に、順次細胞平面展開デバイスの溝内に整列して展開されているため、このままの状態で細胞の観察を行うことができる。
したがって、細胞の展開から観察までを迅速に行うことができ、例えば診断に要する時間を従来よりも少なくすることができる。
本発明は、複数種からなる細胞懸濁液をその表面に添加すると、目的細胞と、それよりも直径の小さな細胞およびゴミ等とが分離し、目的細胞およびそれと同等の直径の細胞が溝に沿って移動し整列する細胞平面展開デバイスおよびこれを用いた細胞展開方法を提供することができる。
さらに本発明によれば、細胞平面展開デバイスの溝上部に、細胞径の2倍程度の高さで天井構造を有するため、複数の溝に跨って細胞に毛細管力がはたらき、ポンプを使用し細胞懸濁液を送液せずとも、前記デバイス表面上に多量の細胞を観察し易く整列させることができる。
また、本発明によれば、複数の大きさの溝を列状に並設してなるため、細胞懸濁液中の種々の細胞を大きさごとに溝内に平面状に整列させることができる。
さらに本発明によれば、細胞懸濁液中の目的細胞を平面状に整列させることができるため、このままの状態で細胞の観察を行うことができる。
また本発明によれば、全ての大きさの細胞を展開することができるため、目的細胞だけでなく、目的細胞以外の細胞についても観察することができる。
図1は、本発明の細胞平面展開デバイスの斜視図である。 図2は、図1に示した本発明の細胞平面展開デバイスのA−A線による断面図である。 図3は、本発明の細胞平面展開デバイスの分割板状体の斜視図である。 図4は、本発明の細胞平面展開デバイスの変形例を説明するための斜視図である。 図5は、本発明の細胞平面展開デバイスの横断面の模式図であって、表面に刻まれている溝がテーパード型(a)または平行型(b)であり、目的細胞および目的細胞の直径よりも小さな細胞(非目的細胞)が溝に接触している一態様である。 図6は、本発明の細胞平面展開デバイスの横断面の模式図であって、表面に刻まれている溝がテーパード型(a)もしくは山が平らなテーパード型(a’)である場合、または平行型(b)である場合を示したものである。 図7は、本発明の細胞平面展開デバイスの変形例を説明するための斜視図である。 図8は、本発明の細胞平面展開デバイスの溝に細胞を展開させた状態を示した状態図である。 図9は、実施例および比較例で得られた画像を示し、図9(a)が実施例1、図9(b)が実施例2、図9(c)が実施例3、図9(d)が比較例1に対応する。 図10は、本発明の実施例による細胞平面展開デバイスの説明図であり、図10(a)は細胞平面展開デバイスの上面図、図10(b)は各分割板状体の溝の断面図、図10(c)は各分割板状体の溝に細胞を展開した状態を示した図である。 図11は、特許文献1,2の図5と同様であり、特許文献1,2に開示されている細胞処理デバイスの横断面の模式図である。 図12は、従来の細胞処理デバイスであり、図12(a)は斜視図、図12(b)は細胞の分離状態を説明する説明図である。 図13は、従来の細胞処理デバイスであり、図13(a)は斜視図、図13(b)は細胞の分離状態を説明する説明図である。
次に、本発明の細胞平面展開デバイスおよびこれを用いた細胞展開方法について詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る細胞平面展開デバイスおよびこれを用いた細胞展開装置は、細胞懸濁液中の種々の細胞を大きさごとに平面状に密に整列させ、この整列された細胞をこのまま観察できるようにしたものである。
また本発明及びその実施形態に係る細胞展開方法は、細胞平面展開デバイスを用いて細胞懸濁液中の種々の細胞を、大きさごとに確実に平面状に整列させる方法である。
なお、本明細書中で「溝群」とは、同じ溝幅の溝の群のことであるが、溝群が1本の溝のみからなる場合も含むものである。
<細胞展開装置>
本発明の細胞平面展開デバイスを利用した細胞展開装置としては、図1に示したような細胞平面展開デバイス10と、この細胞平面展開デバイス10上に細胞懸濁液30を供給する液供給手段(図示せず)と、を少なくとも有するものである。
細胞平面展開デバイス10は、板状の本体部12からなり、この本体部12上の細胞展開部14に複数の溝16が列状に並設されている。
そして細胞懸濁液30を、液供給手段(図示せず)で細胞平面展開デバイス10の複数の溝16を横切るように本体部12の一方側20から他方側22に向かって供給することで、溝16内に細胞懸濁液30中の細胞が密に整列されて展開されるようになっている。
上述した細胞展開装置において、特に細胞平面展開デバイス10の構造については、同じ寸法の溝、すなわち幅及び深さが同じ寸法の溝が、複数列状に並設されてなるものであれば良いが、溝構造については、以下に記したような特徴的な構造を採っている。
なお、この特徴的な溝構造を備える細胞平面展開デバイス10の構造については、寸法の異なる溝が複数設けられた構造であれば、より好ましい。
このような細胞平面展開デバイス10の好ましい構造、および溝の好ましい構造について以下、詳細に説明する。
<細胞平面展開デバイス10>
図1に示した本発明の細胞平面展開デバイス10は、板状の本体部12から構成されており、この本体部12の上面が、細胞懸濁液30を展開するための細胞展開部14となっている。
そして細胞展開部14には、本体部12の一方側20から他方側22に向かって複数の溝16(16a,16b,16c)が列状に並設されている。なお、これらの溝16a,16b,16cのそれぞれに溝幅及び溝深さが異なっており、同じ寸法の溝の集団が一つの溝群を構成している。図1に示した細胞平面展開デバイス10においては、溝16aの集団が溝群18Aを構成し、溝16bの集団が溝群18Bを構成し、溝16cの集団が溝群18Cを構成している。
このような細胞平面展開デバイス10は、図2に示したように断面が一方側20から他方側22(図の右側から左側)に向かって徐々に溝16の大きさ(溝幅及び溝深さ)が大きくなるように3つの溝群18A,18B,18Cが並設されている。
また、このような細胞平面展開デバイス10は、図3に示したように、溝の大きさの異なる溝群18ごとに個別の分割板状体12A,12B,12Cを作成しておき、これを複数並設して設けることで本体部12を構成することが好ましい。
分割板状体12A,12B,12Cの溝は、公知の微細加工技術で加工可能であるが、例えば市販のプリズムシートを代用することもできる。通常、プリズムシートは、同じ大きさの溝が複数列状に並設されたものであり、本発明の分割板状体とするのに好適である。
また、1枚の分割板状体に同じ大きさの溝だけを備えていれば、例えば目的の大きさの細胞30Aが展開された分割板状体12Aだけを観察するようにすることもできる。
さらに、細胞懸濁液30中の細胞30A,30B,30Cについて、細胞ごとに細胞展開部14に展開される面積がある程度分かっている場合、例えば小さな細胞が大多数であり、大きな細胞が僅かにしか存在しないような場合には、図4に示したように、その割合に合わせて分割板状体12A,12B,12Cの大きさ(面積)を変えることもできる。
なお、本発明の細胞平面展開デバイス10は、大きさが特に限定されるものではなく、展開する細胞数を加味して大きさを適宜調整することができ、例えば最大で複数の分割板状体12A,12B,12Cを合わせてA5(150mm×210mm)程度の大きさとすることもできる。
ここで細胞平面展開デバイス10をA5(150mm×210mm)程度とした場合には、10ml程度の血液(細胞懸濁液30)を、細胞平面展開デバイス10の細胞展開部14の複数の溝上に密に整列させることができる。なお細胞懸濁液30中の細胞の量が多ければ、細胞平面展開デバイス10をA5(150mm×210mm)以上の大きさとする必要がある場合が有ることは当然のことであり、この場合には、分割板状体12A,12B,12Cを分割して、1板状体ずつ観察することも可能である。
なお、このような細胞平面展開デバイス10の大きさは、従来のスライドガラスの様な細胞観察デバイスに用いられる標準的な大きさ(25mm×75mm程度)よりもはるかに大きいため、一度に多量の細胞30A,30B,30Cの観察をすることができ、検出対象の細胞数をはるかに多くすることで、検査精度を向上させることができる。
ここで複数の分割板状体12A,12B,12Cを並設する方法としては、分割板状体と分割板状体との間が確実に開かないようにすることができれば如何なる方法であっても良いものである。このような方法の例としては、予め枠部材(図示せず)を用意しておき、この枠部材(図示せず)に各分割板状体12A,12B,12Cを嵌め入れる構成としたり、分割板状体12Aと分割板状体12Bとを取り外し可能な接着剤(図示せず)で接着するなどの方法が挙げられる。
次いで細胞平面展開デバイス10に設けられる溝16の構造について詳しく説明する。
<溝16>
図5(a)に示したように、溝16は、開口部50から底部52全体にかけて、または少なくとも開口部50近傍において、テーパード型であることが好ましいが、テーパード型でなくても任意の形状にすることができる。
目的細胞60の直径より小さい幅を有して目的細胞60が保持される部分よりも深い底部52側も、テーパード型であってもよいし、また図5(b)に示したように平行型であってもよいし、任意の形状とすることができる。
溝16の底部52の形状としては、溝16を横断面にして見た場合、逆三角形(図6(a))であっても、半円(図6(b))ないし弧を描いていても、矩形であってもよく、特に限定されるものではない。
なお、溝16の底部52(谷近傍)にはスリットが形成されることもある。また、溝16の側面は、溝16を横断面にして見た場合、直線であっても、折れ線であっても、曲線であってもよく、特に限定されるものではない。
<<開口部50の最大幅T>>
溝16の開口部50の最大幅Tは、通常、目的細胞60の直径と等しいか、または目的細胞60の直径より大きい。
溝16の開口部50の最大幅Tが目的細胞60の直径と等しければ、テーパード型、平行型どちらの場合も、目的細胞60はほぼ開口部50の位置で保持されることになる。
また、開口部50の最大幅Tが目的細胞60の直径よりも大きければ、目的細胞60は溝16に入り込み、目的細胞60は開口部50の位置から底部にかけての途中の位置で保持されることになり、目的細胞60よりも直径が小さい細胞が存在した場合には、目的細胞60が保持される位置よりも底部側がテーパード型であっても平行型であっても、その細胞は目的細胞60よりも底部側または底部(溝16の底面)で保持されることになる。
これらいずれの場合も、溝16の壁面との間に働く毛細管力によって展開される細胞懸濁液30とともに、目的細胞60も溝16に沿って移動して整列させることができる。
一方、開口部50の最大幅が目的細胞60の直径よりも小さければ、目的細胞60の一部は溝16に入り込むかもしれないが、全体的に開口部50から上(底部と反対の方向)の位置に保持されることになる。そうすると、細胞懸濁液30とともに目的細胞60は移動しにくくなったり、あるいは溝16の境界である山54を越えて隣接する溝16に移りやすくなったりする虞があるなど、目的細胞60を溝に整列させる上で好ましくない。
なお、溝16の幅の基準となる「目的細胞60の直径」は、あらかじめ目的細胞60の直径について十分なデータが得られている場合には、必要に応じて、「目的細胞60の平均直径」、「目的細胞60の平均直径+3σ」(σは標準偏差)などに読み替えることができ、それを基準とした幅の溝16を有する細胞平面展開デバイス10を作製することができる。後述するスリットの幅や溝16の深さHに関する「目的細胞60の直径」についても同様である。
さらに、細胞平面展開デバイス10を、目的細胞60と、平均直径が目的細胞60より小さい目的細胞以外の種類の非目的細胞70を1種以上含む細胞懸濁液30を対象とすることのできるものとして作製する場合、溝16の幅は、
目的細胞60が、溝16のより開口部50に近い部位において保持され、かつ、
非目的細胞70が、溝16のより底部に近い部位において保持される、または、非目的細胞70が溝16の底部(谷)に接する状態で保持されるようにすることが好ましい。
すなわち、直径のより大きい目的細胞60が溝16の最上部近傍の側面に接地し、一方、直径のより小さい非目的細胞70が目的細胞60の下から溝16の最下部近傍に位置し、細胞が二段以上に重なって溝16の中に存在する状態となる。
このとき、目的細胞60の下端と非目的細胞70の上端とが接触しない距離となるような溝形状にすることが好ましい。
<<傾斜角度θ・深さH>>
溝16が傾斜面を有するテーパード型(図6(a))である場合、その傾斜角度θは45度以下であることが好ましい。傾斜角度θがこのような範囲にあると、目的細胞60および非目的細胞70の整列および保持が適切に行われる溝16を形成しやすくなる。
また、例えば溝16について適切な深さHを確保しようとした場合に溝16の開口部50の最大幅Tないし山54と山54との間の距離が広がり過ぎることなく、一枚の細胞平面展開デバイス10で処理できる細胞数を十分に確保できることや毛細管力も働き易くできるなど好ましい。
なお、溝16と溝16との間は、図6(a)に示すように水平ないし傾斜のついた頂上面(開口部50の上面)が形成されていなくてもよいし(この場合、山54と山54との間の距離=開口部50の最大幅Tとなる)、図6(a’),(b)に示すように頂上面が形成されていてもよいし(この場合、山54と山54との間の距離>開口部50の最大幅Tとなる)、テーパード型であっても図8(b)に示すような平らな面が形成されていていてもよい。
水平な平面の頂上面を設ける場合は、その幅は、細胞平面展開デバイス10上の溝16の密度(つまり処理できる細胞数)や、隣接する溝同士における目的細胞60の整列の具合などに応じて、適宜調節することができる。
また、溝16がテーパード型(a)、平行型(b)どちらの場合も、深さHは目的細胞60の直径の2倍より小さいことが好ましい。
本発明の細胞平面展開デバイス10の大きさや厚さおよび材質は、顕微鏡下で観察できる大きさや厚さおよび材質であれば、特に限定されるものではない。細胞平面展開デバイス10の一態様として、例えば、スライドグラス程度の大きさ・厚さを有し、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)からなるプリズムシートなどが挙げられる。
このようなプリズムシートは市販されており、例えば、有機光学株式会社(株)製の「プリズムシート(先端角度90度、ピッチ0.02、幅(ピッチ方向)300×長さ300、標準板厚2ミリ)」などが好適である。
また、本発明の細胞平面展開デバイス10は、例えば、プリズム形状が形成された金型に紫外線硬化樹脂を配設し、紫外線硬化樹脂上に透明な錘(例えばガラス)または透明基板を配置し、紫外線硬化樹脂の硬化波長を有する光を錘または透明基板の上面から照射し、紫外線硬化樹脂を硬化する方法(特開2005−31658号公報を参照。)などによって製造することができる。
<<接触角>>
本発明の細胞平面展開デバイス10が有する溝16の表面は、親水化処理を施すなどして、その水に対する接触角を20度以下とすることが好ましい。
細胞平面展開デバイス10の表面の水に対する接触角をこのような範囲内にするには、例えばUVオゾンクリーナー等を用いる処理など、公知の親水化処理により達成することができる。
細胞平面展開デバイス10の表面の水に対する接触角がこのような範囲内であると、細胞懸濁液30の展開速度が速く、また必要以上に表面張力によって細胞懸濁液30が盛り上がる(厚みを増す)のを抑制することができるなどの観点から好ましい。
<<細胞懸濁液30・目的細胞60・非目的細胞70>>
細胞懸濁液30は、60を1種含むものであり、目的細胞60以外の種類の非目的細胞70をさらに1種以上含むものであってもよい。
このような細胞懸濁液30としては、例えば、ヒト等の動物の体液、すなわち、血液,リンパ液,組織液,体腔液などが挙げられる。また、生体由来のものに限定されず、試験・研究等のために人工的に細胞を懸濁させて調製した細胞の分散液であってもよい。
細胞懸濁液30は、目的細胞60として好ましくはがん細胞を含む。そして細胞懸濁液30は、非目的細胞70として、がん細胞以外の他の細胞が分散されていてもよい。
例えば、細胞懸濁液30は、免疫細胞を含んでいてもよい。また、例えば、血液のように、がん細胞(目的細胞60)の他に、白血球(免疫細胞),赤血球,血小板等の細胞(非目的細胞70)が分散していてもよい。
本明細書において、がん細胞とは、がん(悪性腫瘍)を構成する細胞をいう。がんは、転移する性質を有し、がん細胞は、がんが転移する際に、上述した血液等の体液に混入する。血液に混入して生体内を循環できる状態になったがん細胞は、循環がん細胞〔CTC〕(または循環腫瘍細胞)と呼ばれている。
したがって、細胞懸濁液30は、循環がん細胞を含む血液であってもよい。本明細書において、免疫細胞とは、白血球、すなわち、顆粒球,リンパ球,単球などの細胞をいう。
CTCの直径(本明細書において「平均直径」を意味する。)について、例えば、American Journal of Pathology, Vol.156, No.1, 57−63, January 2000には、以下のように報告されている。
複数種の循環がん細胞について光学顕微鏡写真を撮影し、各種の循環がん細胞の平均的な投影面積を396μm2〜796μm2であると測定した。よって、各種の循環がん細胞の形状を球と仮定すると、循環がん細胞の直径は22〜32μmであると算出されるとした。
また、血球細胞の直径を下表に示す。
<<スリット・孔>>
スリットとは、溝16の長手方向に沿って底部52(谷近傍)に長く延びている孔をいい、細胞観察にとって不要な物質を排出することのできるものをいう。
本発明の細胞平面展開デバイス10は、必要に応じて、このようなスリットや孔を有していてもよい。なお、溝16にスリットや孔が形成される場合は、毛細管力がやや弱まる可能性があるが、細胞懸濁液30を展開する上で支障がないようにすればよい。
このようなスリットとしてはその幅(溝16の長手方向に対する垂直方向の長さ)が1μm以下、孔であれば直径1μm以下であることが実験により確認された。逆にいうと、溝16にスリットを形成しない場合は、形成する場合に比べて毛細管力を高めることができ、細胞を展開する上でより好ましい。
スリットは、谷(最深部)を含む部位に形成されていることが好ましいが、不要物の排出に支障が生じない範囲であれば、谷を含まない部位に形成されていてもよい。また、スリットは、溝16の長手方向に沿って底部52全体にわたって形成されていてもよいし、部分的、または断続的に形成されていてもよい。スリットの溝16の長手方向の長さは特に限定されるものではない。
なおスリットの幅はその機能上、細胞懸濁液30の溶媒(水など)が通常は自重の働きのみにより表面張力に打ち勝って落ちることのできる幅を有することが好ましい。そのような幅は、溶媒の種類や細胞平面展開デバイス10の材質、表面処理(親水化処理)によって変動する可能性があるが、例えば0.4μmを下限とすることが好ましい。ただし、吸収部材等により自重以外の力を働かせてスリットから細胞懸濁液30の溶媒等を排出するような場合には、スリットの幅の下限値をより小さくすることも可能である。
スリットの幅が0.4μm以上1μm以下であると、細胞を一切ロスすることなく、細胞懸濁液30の溶媒とともに細胞のデブリ等のゴミが細胞平面展開デバイス10から除去されるため、細胞を展開した後の観察に好適である。
また、細胞を展開途中または展開後に蛍光物質等を用いて染色する場合に、染色液を容易に除去できる点からも好ましい。細胞懸濁液30の溶媒や染色液を除去すると、目的細胞60の移動は止まり、静止した状態で目的細胞60を観察することができるようになる。
<<天井構造>>
本発明の細胞平面展開デバイス10において、溝16の上部に天井構造がなく開放された状態であっても、溝16の壁面との間に働く力により、細胞懸濁液30はポンプ等を使用して送液することなく溝16の中に展開し、細胞平面展開デバイス10の表面上に目的細胞60を整列させることができる。
しかしながら、溝16の上部に天井構造を設け、閉鎖的な流路を形成することによって、細胞懸濁液30に毛細管力がはたらき、より迅速に細胞懸濁液30の展開および目的細胞60の整列を行うことができるようになる。
この天井構造は、開口部50の上面(頂上面)から20μm以上100μm以下の高さに設けることが好ましく、目的細胞60の直径の2倍程度の高さに設けることがより好ましい。
このような天井構造は、例えば、20μm以上100μm以下の厚さのスペーサを介したカバーグラス等で形成することができる。
上記した細胞平面展開デバイス10を用いた細胞展開方法について下記に説明する。
<細胞展開方法>
本発明の細胞展開方法は、本発明の細胞平面展開デバイス10の溝16に、細胞懸濁液30を接触させる工程を含むことを特徴とする。
細胞平面展開デバイス10の溝16が形成された部位に直接に細胞懸濁液30を添加する場合はもちろん、溝16と連通した部位に細胞懸濁液30を添加した場合であっても、毛細管力により細胞懸濁液30を溝に展開させて細胞を整列させることができる。
特に複数種からなる細胞懸濁液30を細胞平面展開デバイス10の溝16に接触させると、目的細胞60と、非目的細胞70およびゴミ等とを分離し、目的細胞60のみを平面状に密に整列させることができる。
さらに、本発明の細胞平面展開デバイス10の溝16の上部に、細胞径の2倍程度の高さで天井構造を有すると、細胞に毛細管力がはたらき、より迅速に、細胞平面展開デバイス10の表面上に目的細胞60のみを整列させることができるため好ましい。
また、たとえば細胞懸濁液30の展開速度をさらに速めたり、より均一に細胞を展開させたりしたい場合には、スピンコーターなどの展開手段を併用することも可能である。
上記のようにして目的細胞60を整列させたのち、溝16の中で目的細胞60が保持されている位置(高さ)に顕微鏡の焦点を合わせることにより、目的細胞60を観察することができる。その際、細胞懸濁液30中に非目的細胞70が存在していたとしても、目的細胞60よりも底部52側に保持されているので、目的細胞60の観察を妨げない。
このような、細胞平面展開デバイス10の溝16に、細胞懸濁液30を接触させる工程について詳しく説明する。
まず始めに、図1に示したような上記説明した本発明の細胞平面展開デバイス10を準備する。細胞平面展開デバイス10は、本体部12の一方側20から他方側22に向かって、各溝16の大きさが漸次大きくなるように構成されたものである。
そして、この細胞平面展開デバイス10の複数の溝群18を横切るように、好ましくは複数の溝群18を直交するように本体部12の一方側20から他方側22に向かって、細胞懸濁液30を供給する。すなわち、小さな溝16aが設けられた側から各溝群を横切るように、細胞懸濁液30を細胞展開部14に供給する。図1中の棒線矢印は、細胞懸濁液30の流れ方向である。
細胞懸濁液30の液供給手段(図示せず)としては、特に限定されるものではなく、例えば細胞平面展開デバイス10を平らな面に載置させた後、シリンジを用いて一方側20から他方側22に向かって細胞懸濁液30を供給したりすることができる。
また、細胞平面展開デバイス10を傾斜させ、ここに本体部12の一方側20から細胞懸濁液30を流すことで細胞展開部14に細胞懸濁液30中の細胞30A,30B,30Cを展開させるようにしても良い。
細胞平面展開デバイス10の傾斜の際には、細胞平面展開デバイス10自体を傾斜させる他、図7に示したように細胞平面展開デバイス10を載置させた際に上面の細胞展開部14が傾斜面40となるような形態としても良いものである。
要は、細胞懸濁液30中の各細胞30A,30B,30Cが緩やかな流れや自重を利用して溝を横切って移動されるような液供給手段(図示せず)であれば、如何なる手段であっても構わないものである。なおこの時、細胞懸濁液30の好ましい流速としては10〜300μl/secである。
細胞懸濁液30を液供給手段(図示せず)で細胞展開部14に展開させると、図8に示したように、溝16a,16b,16c内に細胞懸濁液30中の細胞30A,30B,30Cが平面状に展開されることとなる。
細胞懸濁液30の供給は、細胞平面展開デバイス10の溝16の大きさが、小さい溝16aから大きい溝16cに向かって供給しているので、小さい溝16aから大きな溝16cの順に小さい細胞30Aから大きな細胞30Cが展開されることになる。このため、大きな溝16c内に小さな細胞30Aと大きな細胞30Cとが両方入ってしまうようなことがなく、細胞を確実に大きさごとに分別しながら密に展開することができる。
このようにして種々の細胞を展開した後、今度はこの平面状に細胞が展開された細胞平面展開デバイス10を観察手段(図示せず)で観察する。
観察手段(図示せず)としては、例えばCCDカメラ,顕微鏡など通常用いる手段が利用できる。
従来の細胞の分離技術では、分離した後、新たに分離後の細胞を平面状に展開させ、これを観察するといった手順が再度必要であったり、分離により目的細胞60を損失してしまうといったことがあったが、本発明の細胞平面展開デバイス10を用いた場合には、細胞の展開後、このままの状態で細胞観察が直ぐにできるため、細胞懸濁液30中から目的細胞60を見つけ出し、これを観察するまでの一連の作業を従来より早めることができるとともに、多数の細胞を漏れなく展開できるため、簡易に目的細胞60の検出精度を高めることができる。
すなわち、目的細胞60が例えば血液中のがん細胞などであった場合には、これを早くに精度良く見つけ出すことで早期に臨床学的診断ができ、結果的に適切な治療方針を導き、患者への身体的および精神的な負担が軽減されることにもつながる。
以上、本発明の細胞平面展開デバイス10およびこれを用いた細胞展開方法について説明したが、本発明は上記の形態および方法に限定されるものではないものである。
例えば、上記した細胞展開方法の説明では、細胞懸濁液30を溝16の大きさが小さい方から大きい方に向かって供給しているが、場合によってはこの逆であっても構わないものである。
このような場合は、例えば大きな細胞だけを整列展開させたい場合であり、この場合には、細胞懸濁液30の供給を、細胞平面展開デバイス10の溝16の大きさが小さい方から大きい方に向かって供給しても、大きい方から小さい方へ供給しても、いずれにしても大きな細胞を細胞展開部の上方(上面側)に整列展開した分別ができる。
したがって、細胞懸濁液30を供給する方向については、細胞懸濁液30中のどのような大きさの細胞を観察したいのか、あるいは細胞懸濁液30中の種々の細胞のうち、どの細胞を展開させたいかなどに応じて適宜決定すれば良いものである。
さらに、上記細胞平面展開デバイス10では、溝16が本体部12の両側面に至るまで溝16が形成されているため、細胞懸濁液30が溝16外に流れ出す可能性を有する構造であるが、これを防止するために別途両側面に壁(図示せず)を設け、細胞懸濁液30が溝16の両端部から外に流れ出ないようにしても良いものである。
また、上記細胞平面展開デバイス10は、3つの分割板状体からなり、それぞれに1種類の溝が形成されているが、これに限定されるものではなく、何枚の分割板状体を用いても良く、また1枚の分割板状体に大きさが異なる複数種の溝が形成されていても構わないものであり、分割板状体の枚数と溝の大きさの種類数とが一致しなくても良いものである。
次に、本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[実施例1]
山54と山54との間の幅(ピッチ=開口部50の最大幅T)24μmかつ傾斜角度θが45度のプリズムシート(有機光学株式会社(株)製の「プリズムシート(先端角度90度、ピッチ0.02、幅(ピッチ方向)300×長さ300、標準板厚2ミリ)」;テーパード型)の表面を、UVオゾンクリーナーを用いて親水化処理を施した。シート表面の水に対する接触角は20度であった。
次に、Hoechst試薬にて(Invtrogen社)染色済みJurkat細胞(直径約10〜15μm)を含む細胞懸濁液(107個/mL)20μLをその表面に滴下し、細胞を展開した。蛍光顕微鏡下で取得した細胞展開画像を図9(a)に示す。
[実施例2]
実施例1で用いたプリズムシート表面を、実施例1と同様にして表面処理を行った。
その後、厚さ50μmのフィルムをスペーサとして介してカバーガラスをプリズムシートの表面上に配置した。
次に、Hoechst試薬にて(Invtrogen社)染色済みJurkat細胞を含む細胞懸濁液(107個/mL)20μLを、プリズムシートとカバーガラスとの間隙に添加し、細胞を展開した。蛍光顕微鏡下で取得した細胞展開画像を図9(b)に示す。
[実施例3]
実施例1において、プリズムシートとして山54と山54との間の幅(ピッチ)15μmかつ傾斜角度θが70度のプリズムシート(有機光学株式会社(株)製の「プリズムシート 先端角度140度、ピッチ0.015、幅(ピッチ方向)300×長さ300、標準板厚2ミリ」;テーパード型)を用いた以外は実施例1と同様にして細胞を展開した。顕微鏡下で取得した細胞展開画像を図9(c)に示す。
[比較例1]
実施例1において、プリズムシートの代わりに、溝のないスライドガラス(松浪硝子(株)製の「大型スライド白縁磨 No.1」)を用いた以外は実施例1と同様にして細胞を展開した。顕微鏡下で取得した細胞展開画像を図9(d)に示す。
実施例1〜3に相当する図9(a)〜図9(c)から明らかなように、本実施形態の溝構造を有する細胞平面展開デバイス10を用いれば、細胞が重なることなく、均一で平面状に展開されていることが確認できた。
これに対して比較例1に相当する図9(d)では、細胞が一部に偏っており、また細胞同士が密になってしまっていることが確認された。
[実施例4]
がん患者から採血された末梢血を用い、これを本発明の細胞平面展開デバイス10上に展開し、末梢血中の種々の細胞の検出、特には血液循環がん細胞(CTC)の検出を行った。
なお、ここでの細胞懸濁液30は、末梢血そのものでも適切な緩衝液、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)等で希釈し細胞平面展開デバイス10上に展開され易いようにしたものであっても良いものであるが、ここではリン酸緩衝食塩水(PBS)で希釈したものを用いた。
また細胞懸濁液30は、細胞平面展開デバイス10上に展開した後、光学検出にて細胞を同定するために、あらかじめ血液循環がん細胞(CTC)および白血球を蛍光標識した。
上記細胞懸濁液30の調整方法は以下の通りである。
まず細胞懸濁液1mlに、白血球標識用にAlexa Fluor488(インビトロジェン社製)で標識した抗CD45抗体(Santa Cruz Biotechnology, Inc.)溶液10μlを添加し、室温暗所にて30分反応させた後、さらにパラホルムアルデヒド(和光純薬社製)を4%になるように加えて、緩やかに混和し、室温暗所にて15分間反応させた。
ここに、リン酸緩衝食塩水(PBS)を充分量加えて混和し、遠心分離にて洗浄を行い、次に細胞膜透過処理用として0.1%Tweenを含むリン酸緩衝食塩水(PBS)を1ml、およびCTC標識用にAlexa Fluor647で標識した抗CK抗体(Micromet社製)溶液10μlを添加し、緩やかに混和しながら、室温暗所にて30分反応させ、最後の5分間、細胞核染色用にDAPI(同仁化学社製)溶液10μlを添加して反応させた。
この後、遠心分離により細胞に結合していない抗体試薬を除去し、新たにリン酸緩衝食塩水(PBS)を添加して再懸濁させ、これにて本実施例で用いる細胞懸濁液とした。
本実施例においては、図10(a)に示したように、1種類の大きさの溝からなる溝群がそれぞれに形成された4枚の分割板状体(12A〜12D)を用意し、この4枚の分割板状体(12A〜12D)を溝16の大きさの順に並べ合わせてなる細胞平面展開デバイス10を用いた。
なお、図10(b)に示したように、1枚目の分割板状体12Aには、溝幅Tが5μm,溝深さHが5μmの溝16aが複数列状に並設され、同様に2枚目の分割板状体12Bには、溝幅Tが10μm,溝深さHが10μmの溝16bが複数列状に並設され、3枚目の分割板状体12Cには、溝幅Tが15μm,溝深さHが15μmの溝16cが複数列状に並設され、4枚目の分割板状体12Dには、溝幅Tが20μm,溝深さHが20μmの溝16dが複数列状に並設されている。
溝幅Tが5μm,溝深さHが5μmの溝16aを有する分割板状体12Aの溝内には、直径2〜4μm程度の血小板,数μm程度にまで小さくなったCTC細胞残骸,厚み2μm程度の一部の赤血球が捕獲されるものと考えられる。通常の細胞が球状であるのに対し、赤血球は、直径が7〜8μmで厚みが2μm程度の偏平形状であるから、この大きさの溝16aにも捕獲されると考えられる。
次いで溝幅Tが10μm,溝深さHが10μmの溝16bを有する分割板状体12Bの溝内には、直径7〜8μmで厚み2μm程度の赤血球の一部,6〜9μm程度の小リンパ球が捕獲されるものと考えられる。
さらに溝幅Tが15μm,溝深さHが15μmの溝16cを有する分割板状体12Cの溝内には、直径9〜15μm程度の大リンパ球,直径10〜17μm程度の顆粒球が捕獲されるものと考えられる。
最後に最下流側の溝幅Tが20μm,溝深さHが20μmの溝16dを有する分割板状体12Dの溝内には、直径20μm程度の血液循環がん細胞(CTC)が捕獲されるものと考えられる。
このような4枚の分割板状体12A〜12Dからなる細胞平面展開デバイス10を傾斜させ、細胞平面展開デバイス10の溝16の大きさが小さい溝16aから大きい溝16dとなる一方側20から他方側22に溝16を直交するようにして、細胞展開部14上に細胞懸濁液30を供給し、溝内に各細胞を展開させた。
このとき、細胞平面展開デバイス10の傾斜具合は、細胞懸濁液の流速が10〜300μl/sec程度となるよう調整した。
細胞展開後の細胞平面展開デバイス10のうち、最下流側に位置する溝幅Tが20μm,溝深さHが20μmの溝16dを有する分割板状体12Dに、He−Neレーザ(励起波長633nm)を照射し、これをCCDカメラで撮像したところ、血液循環がん細胞(CTC)に特異的に発現するCKに結合したAlexa Flour647の蛍光が検出され、血液循環がん細胞(CTC)を同定できた。
ここで偽陽性を避けるため、白血球検出用に標識したAlexa Fluor488を励起するArレーザ(励起波長488nm)で、シグナルが検出されないことも確認した。
次に細胞核を検出するため、水銀ランプを用いてDAPIをUV励起させたところ、細胞核も検出された。
また、CTC細胞残骸を検出するため、最上流側に位置する溝幅Tが5μm,溝深さHが5μmの溝16aを有する分割板状体12Aに上記したのと同様のHe−Neレーザ(励起波長633nm)を照射したところ、CTC細胞残骸も検出された。
本発明の細胞平面展開デバイス10を用いて行った血液中の種々の細胞展開の結果としては、図10(c)に示したように予想していた大きさの細胞が、その大きさに合った大きさの溝16内に確実に整列されて展開され、特に重要な血液循環がん細胞(CTC)についても、先に展開予想されていた分割板状体12Dから検出できた。
したがって、本発明の細胞平面展開デバイス10を用いて細胞懸濁液30の展開を行えば、確実に大きさの違う細胞をこれに合った大きさの溝内に整列して分別できるとともに、このまま観察することができることが確認された。
なお、本実施例では行っていないが、末梢血液中に存在する非血球細胞としては、循環血管内皮細胞(CEC)や循環内皮前駆細胞(CEP)などもあり、これらは一般に直径10〜15μm程度の大きさを有する。
このため、2番目に位置する溝幅Tが10μm,溝深さHが10μmの溝16bを有する分割板状体12Bと、3番目に位置する溝幅Tが15μm,溝深さHが15μmの溝16cを有する分割板状体12Cを観察すれば、これらの細胞検出が可能と考えられる。
上記の実施例においては主に末梢血中の血液循環がん細胞(CTC)の検出を行ったが、他にも同様にして末梢血中の胎児有核赤血球、末梢血,骨髄液,組織中の幹細胞などのレア細胞、また体液(腹水,唾液,汗,尿,糞,髄液,乳汁など)中に剥離した細胞の検出などにも利用され得ると考えられる。
本発明の細胞平面展開デバイスを用いて細胞を観察した場合、細胞懸濁液が、例えば、被験者から採血した血液(10mL)である場合、顕微鏡の狭い視野内に多数の細胞を高密度で整列させ展開することができるため、例えばがん細胞などの数が少ない細胞を効率良く発見することができる。
10・・・細胞平面展開デバイス
12・・・本体部
12A〜12D・・・分割板状体
14・・・細胞展開部
16・・・溝
16a〜16d・・・溝
18・・・溝群
18A〜18D・・・溝群
20・・・一方側
22・・・他方側
30・・・細胞懸濁液
30A〜30C・・・細胞
40・・・傾斜面
50・・・開口部
52・・・底部
54・・・山
60・・・目的細胞
70・・・非目的細胞
T・・・溝の最大幅
H・・・溝深さ
100・・・細胞処理デバイス
102・・・流路部材
104・・・溝
106・・・底面
110・・・一方側
112・・・他方側
150・・・細胞懸濁液
150A・・赤血球
150B・・組織由来幹細胞
200・・・細胞処理デバイス
202・・・柱
204・・・部材
206・・・部材
208・・・容器
210・・・一方側
212・・・他方側
214・・・入口
250A〜250C・・・細胞
300・・・スリット部材
301・・・第1面
302・・・第2面
310・・・貫通孔
312・・・テーパー部
g・・・がん細胞
t・・・厚み
dt・・・深さ
Wte・・・幅

Claims (19)

  1. 細胞懸濁液に含まれる目的細胞を平面状に展開することができる細胞平面展開デバイスであって、
    前記細胞平面展開デバイスが、
    上面に細胞展開部を有する板状の本体部から構成されており、
    前記本体部の細胞展開部には、
    前記本体部の一方側から他方側に向かって複数の溝が列状に並設されるとともに、前記複数の溝は、溝幅が異なる複数の溝群からなり、
    前記複数の溝群のうちの少なくとも1つの溝群において、
    溝の開口部上面の最大幅は、前記目的細胞の直径と等しいか、または前記目的細胞の直径より大きく、かつ、
    溝は、その深さ方向の途中で前記目的細胞を保持し得るように、その深さ方向において前記目的細胞の直径よりも小さい幅を有し、
    の底部に、幅1μm以下のスリットもしくは直径1μm以下の孔を有するか、または、それらを有さないことを特徴とする細胞平面展開デバイス。
  2. 前記複数の溝群のうちの前記少なくとも1つの溝群において、溝が、その底部に、0.4μm以上1μm以下の幅のスリットを有することを特徴とする請求項1に記載の細胞平面展開デバイス。
  3. 前記複数の溝群のうちの前記少なくとも1つの溝群において、溝の底部は、閉口であることを特徴とする請求項1に記載の細胞平面展開デバイス。
  4. 前記複数の溝群のうちの前記少なくとも1つの溝群において、溝が傾斜面を有するテーパード型であり、傾斜角度が45度以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の細胞平面展開デバイス。
  5. 前記複数の溝群のうちの前記少なくとも1つの溝群において、溝の深さが目的細胞の直径の2倍より小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の細胞平面展開デバイス。
  6. 前記複数の溝群のうちの前記少なくとも1つの溝群において、溝の表面は、水に対する接触角が、20度以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の細胞平面展開デバイス。
  7. 前記複数の溝群のうちの前記少なくとも1つの溝群において、溝の開口部上面から20μm以上100μm以下の高さに天井構造を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の細胞平面展開デバイス。
  8. 前記複数の溝群が、
    前記溝群ごとに同じ溝幅の溝が並設されてなることを特徴とする請求項1〜7に記載の細胞平面展開デバイス。
  9. 前記複数の溝群のうちの前記少なくとも1つの溝群以外の他の溝群は、溝の開口部上面の最大幅が、前記目的細胞の直径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜8に記載の細胞平面展開デバイス。
  10. 前記複数の溝群が、
    前記本体部の一方側から他方側に向かうにしたがって、前記溝群ごとに溝幅が漸次大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項1〜9に記載の細胞平面展開デバイス。
  11. 前記複数の溝群が、
    前記溝幅が大きくなるに従って、漸次溝深さが深くなるよう構成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の細胞平面展開デバイス。
  12. 前記溝幅が1〜100μmの範囲内であるとともに、前記溝深さが1〜100μmの範囲内であることを特徴とする請求項11に記載の細胞平面展開デバイス。
  13. 前記溝が、断面V字状であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の細胞平面展開デバイス。
  14. 前記本体部が、複数の分割板状体を並設してなることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の細胞平面展開デバイス。
  15. 前記複数の分割板状体が、
    前記分割板状体ごとに、同じ溝幅及び同じ溝深さの複数の溝からなる1種類の溝群が並設されてなることを特徴とする請求項14に記載の細胞平面展開デバイス。
  16. 前記細胞懸濁液が、生体試料であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の細胞平面展開デバイス。
  17. 請求項1〜16のいずれかに記載の細胞平面展開デバイスの溝に、前記細胞懸濁液を接触させる工程を含むことを特徴とする細胞展開方法。
  18. 前記細胞懸濁液を接触させる工程において、
    前記細胞平面展開デバイスの前記本体部の一方側から他方側に向かって前記複数の溝群を横切るように前記細胞懸濁液を前記複数の溝群の溝内に供給し、前記細胞懸濁液中の細胞を小さい細胞から大きい細胞の順に前記複数の溝群の溝内に整列させて展開する工程と、
    を少なくとも有することを特徴とする請求項17に記載の細胞展開方法。
  19. 前記細胞懸濁液中の細胞を小さい細胞から大きい細胞の順に前記複数の溝群の溝内に整列させて展開する工程の後、
    さらに前記平面状に展開された細胞を観察手段で観察する工程と、
    を有することを特徴とする請求項18に記載の細胞展開方法。
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