以下、本発明にかかる車両の制動制御装置を搭載したハイブリッド車両に具体化した一実施形態を図1〜図7に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。
図1に示すように、ハイブリッド車両には、2モータ方式のハイブリッドシステム10と、全ての車輪FR,FL,RR,RLに対して制動力(液圧制動力)を付与する液圧制動装置30とが設けられている。
ハイブリッドシステム10は、ガソリンなどの燃料の供給によって運転されるエンジン11を備えている。このエンジン11のクランク軸11aには、遊星歯車機構などを有する動力伝達機構12を介して、第1のモータ13及び第2のモータ14が連結されている。そして、動力伝達機構12は、エンジン11からの動力を第1のモータ13及び駆動輪である前輪FR,FL側に分割して伝達するとともに、第2のモータ14からの動力を前輪FR,FL側に伝達するようになっている。
第1のモータ13は、動力伝達機構12を介して伝達された動力によって発電する。そして、第1のモータ13で発電された電力は、インバータ15を介してバッテリ16に供給されて蓄電される。
第2のモータ14は、運転者がアクセルペダル21を操作する場合には、即ちアクセル操作を行う場合には、駆動源として機能する。このとき、第2のモータ14には、インバータ15を介してバッテリ16から電力が供給される。すると、第2のモータ14で発生した動力は、動力伝達機構12及びディファレンシャル17を介して前輪FR,FLに伝達される。
一方、運転者がブレーキ操作部材としてのブレーキペダル22を操作する場合、即ちブレーキ操作を行う場合、第2のモータ14には前輪FR,FLの回転に伴う動力がディファレンシャル17及び動力伝達機構12を介して伝達される。すなわち、車両の減速時において第2のモータ14は発電機として機能し、この第2のモータ14で発電された電力は、インバータ15を介してバッテリ16に供給されて蓄電される。このとき、第2のモータ14は、前輪FR,FLに対して第2のモータ14での発電量に応じた回生制動力を付与する。したがって、本実施形態では、第2のモータ14が、回生制動装置として機能する。
次に、液圧制動装置30について説明する。
液圧制動装置30は、ブレーキペダル22が連結される液圧発生装置31と、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力を自動調整可能なブレーキアクチュエータ50とを備えている。液圧発生装置31には、ブースタ32、マスタシリンダ33及びリザーバ34が設けられている。
図2(a)(b)に示すように、本実施形態のマスタシリンダ33には、有底筒状をなすハウジング40が設けられている。このハウジング40内には、ハウジング40の筒状部40aの延びる方向(図2では左右方向)に沿って摺動可能な2つのピストン41,42が収容されている。そして、ハウジング40の底部40bと第1のピストン41との間に形成された第1の液圧室43内には、第1のピストン41を底部40bから離れる方向(以下、「非制動方向」ともいう。)に付勢する第1のスプリング45が設けられている。また、第1のピストン41と第2のピストン42との間に形成された第2の液圧室44内には、第2のピストン42を非制動方向に付勢する第2のスプリング46が設けられている。
ハウジング40の筒状部40aには、第1の液圧室43とリザーバ34とを連通させる第1のポート47aと、第2の液圧室44とリザーバ34とを連通させる第2のポート47bとが形成されている。これら各ポート47a,47bは、図2(a)に示すように、運転者がブレーキ操作を行っていない場合には、各ピストン41,42が初期位置に位置するため、リザーバ34と液圧室43,44とを連通させる。そして、この状態から運転者がブレーキ操作を行うと、各ピストン41,42は、ブレーキ操作量に応じた分だけ底部40bに近づく方向(以下、「制動方向」ともいう。)に摺動する。ブレーキ操作量が少ない場合には、ポート47a,47bを介したリザーバ34と液圧室43,44との連通状態が維持されるため、液圧室43,44内のブレーキ液圧(以下、「MC圧」ともいう。)が増圧されない。
そして、運転者によるブレーキ操作によって各ピストン41,42が制動方向に更に摺動すると、各ピストン41,42が図2(b)に示す非連通位置に達し、同図2(b)に示すように、各ポート47a,47bの開口が各ピストン41,42によって同時に閉塞される。すなわち、液圧室43,44とリザーバ34とが非連通状態となる。この状態で各ピストン41,42が制動方向に更に摺動すると、各液圧室43,44内のMC圧は、非連通位置から制動方向への各ピストン41,42の移動量に応じて増圧される。
本実施形態では、ピストン41,42を初期位置(図2(a)に示す位置)から非連通位置(図2(b)に示す位置)まで摺動させるのに要するブレーキ操作量が無効操作量に相当する。すなわち、ブレーキ操作量が無効操作量以下である場合には、液圧室43,44、即ちマスタシリンダ33のMC圧が増圧されない。その一方で、ブレーキ操作量が無効操作量を超えた場合には、ブレーキ操作量と無効操作量との差分(以下、「有効操作量」ともいう。)に応じた分だけマスタシリンダ33のMC圧が増圧される。なお、本実施形態において「無効操作量」は、回生制動装置である第2のモータ14が駆動輪である前輪FR,FLに対して付与可能な回生制動力の最大値に基づき設定されている。
図3に示すように、ブレーキアクチュエータ50には、2系統の液圧回路511,512が設けられている。第1の液圧回路511には、右前輪FR用のホイールシリンダ65a及び左後輪RL用のホイールシリンダ65dが接続されている。また、第2の液圧回路512には、左前輪FL用のホイールシリンダ及び右後輪RR用のホイールシリンダが接続されている。そして、運転者によるブレーキ操作量が無効操作量を超えてマスタシリンダ33内のMC圧が増圧されると、このマスタシリンダ33からは、液圧回路511,512を介してホイールシリンダに向けてブレーキ液が供給される。すると、ホイールシリンダ内のホイールシリンダ圧(以下、「WC圧」ともいう。)が増圧され、車輪FR,FL,RR,RLにはWC圧に応じた制動力が付与される。
第1の液圧回路511には、マスタシリンダ33とホイールシリンダ65a,65dとを接続する経路に設けられる常開型のリニア電磁弁である差圧弁52が設けられている。そして、第1の液圧回路511において差圧弁52よりもホイールシリンダ65a,65d側には、右前輪FR用の経路53a及び左後輪RL用の経路53dが設けられている。こうした経路53a,53dには、ホイールシリンダ65a,65d内のWC圧の増圧を規制する際に作動する常開型の電磁弁である増圧弁54a,54dと、WC圧を減圧させる際に作動する常閉型の電磁弁である減圧弁55a,55dとが設けられている。
また、第1の液圧回路511には、ホイールシリンダ65a,65dから減圧弁55a,55dを介して流出したブレーキ液を一時貯留するためのリザーバ56と、ポンプ用モータ57の回転に基づき作動するポンプ58とが接続されている。リザーバ56は、吸入用流路59を介してポンプ58に接続されるとともに、マスタ側流路60を介して差圧弁52よりもマスタシリンダ33側に接続されている。また、ポンプ58は、供給用流路61を介して増圧弁54a,54dと差圧弁52との間の接続部位62に接続されている。そして、ポンプ58は、ポンプ用モータ57が回転する場合に、リザーバ56及びマスタシリンダ33側から吸入用流路59及びマスタ側流路60を介してブレーキ液を吸引し、該ブレーキ液を供給用流路61内に吐出する。
なお、第2の液圧回路512の構成については、第1の液圧回路511の構成と略同等であるため、その詳細な説明を割愛するものとする。
次に、ハイブリッド車両に搭載される制御装置70について説明する。
図1に示すように、制御装置70には、アクセル操作量を検出するためのアクセル開度センサSE1、ブレーキ操作量を検出するためのブレーキ操作量センサSE2、及び車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を検出するための車輪速度センサSE3が電気的に接続されている。また、制御装置70には、マスタシリンダ33内のMC圧を検出するためのMC圧検出センサSE4、及びブレーキ操作が行われているか否かを検知するためのブレーキスイッチSW1が電気的に接続されている。そして、制御装置70は、各センサSE1〜SE4、スイッチSW1からの検出信号に基づき車両制御を統括的に行う。
こうした制御装置70は、パワーマネージメントコンピュータ71と、エンジン11を制御するエンジン制御ユニット72と、第1及び第2の各モータ13,14を制御するモータ制御ユニット73と、液圧制動装置30を制御する制動制御装置としてのブレーキ制御ユニット74とを備えている。
パワーマネージメントコンピュータ71は、運転者がアクセル操作を行う場合、車両の走行状態に基づき、エンジン11に要求する要求動力及び第2のモータ14に要求する要求動力を算出する。そして、パワーマネージメントコンピュータ71は、算出した要求動力に基づいた制御指令をエンジン制御ユニット72及びモータ制御ユニット73に個別に送信する。
また、パワーマネージメントコンピュータ71は、その時点でのバッテリ16の蓄電量及び前輪FR,FLの車輪速度などに基づき、その時点で前輪FR,FLに付与可能な回生制動力を算出する。そして、パワーマネージメントコンピュータ71は、算出したその時点の回生制動力をブレーキ制御ユニット74に送信する。
こうしたパワーマネージメントコンピュータ71は、運転者によるブレーキ操作に伴う車両減速時には、ブレーキ制御ユニット74によって算出された要求回生制動力に関する情報を受信する。すると、パワーマネージメントコンピュータ71は、受信した情報をモータ制御ユニット73に送信する。
モータ制御ユニット73は、運転者によるブレーキ操作に伴う車両減速時には、パワーマネージメントコンピュータ71から要求回生制動力に関する情報を受信する。そして、モータ制御ユニット73は、受信した情報に基づいた要求回生制動力と同等の回生制動力が前輪FR,FLに付与されるように第2のモータ14に発電させる。
ブレーキ制御ユニット74は、運転者がブレーキ操作を行う場合、ブレーキ操作量センサSE2からの検出信号に基づきブレーキ操作量を取得し、運転者が要求する車両に対する要求制動力をブレーキ操作量に基づき取得する。そして、ブレーキ制御ユニット74は、取得した車両に対する要求制動力とその時点で前輪FR,FLにできる回生制動力などに基づき要求回生制動力を算出し、該要求回生制動力に関する情報をパワーマネージメントコンピュータ71に送信する。
このとき、ブレーキ制御ユニット74は、車両に対する要求制動力を回生制動力だけで賄うことができると判断した場合、ブレーキアクチュエータ50を作動させない。すなわち、ブレーキ制御ユニット74は、液圧制動装置30から各車輪FR,FL,RR,RLに対して液圧制動力を付与させない。一方、ブレーキ制御ユニット74は、車両に対する要求制動力が回生制動力だけで賄うことができない場合、各車輪FR,FL,RR,RLに対して液圧制動力を付与させる。このように回生制動力と液圧制動力とを管理することにより、回生エネルギーの回収効率が高くなる。
次に、運転者によるブレーキ操作によって車両を停止させる際の一例について、図4に示すタイミングチャートを参照して説明する。なお、前提として、運転者によるブレーキ操作量が無効操作量を超える前に、要求制動力を回生制動力だけで賄うことができなくなるものとする。
図4(a)(b)に示すように、第1のタイミングt11でブレーキ操作が開始されると、車両の減速が開始される。このとき、ブレーキ操作量は、「0(零)」の状態から徐々に多くなる。そのため、ブレーキ操作量が少ない段階では、ブレーキ操作量に応じた要求制動力を回生制動力BPmgだけで賄うことができる。その後、ブレーキ操作量が多くなって第2のタイミングt12になると、要求制動力も大きくなるため、要求制動力を回生制動力BPmgだけでは賄えなくなる。しかし、第2のタイミングt12では、運転者によるブレーキ操作量が未だ無効操作量以下であるため、マスタシリンダ33内のMC圧は増圧されない。
そのため、第2のタイミングt12では、差圧弁52及びポンプ58の作動によって、差圧弁52よりもマスタシリンダ33側の第1のブレーキ液圧であるMC圧と、差圧弁52よりもホイールシリンダ側の第2のブレーキ液圧であるWC圧との間に差圧を発生させる。このときに発生させる差圧は、要求制動力から回生制動力BPmgを減算した制動力差に応じた差圧となっている。その結果、第2のタイミングt12から、ブレーキ操作量が無効操作量に達する第3のタイミングt13までの間では、差圧弁52及びポンプ58の作動に基づいた液圧制動力BPpが、ブレーキ操作量の増大に伴って大きくなる。
そして、第3のタイミングt13を経過すると、ブレーキ操作量が無効操作量を超えるため、マスタシリンダ33内のMC圧は、有効操作量に応じて増圧されるようになる。すると、各ホイールシリンダのWC圧は、MC圧の増圧に応じた分だけ増圧される。すなわち、第3のタイミングt13以降においては、MC圧の増圧に基づいた液圧制動力BPmcも車両に付与されるようになる。なお、このようにMC圧が増圧されるようになると、MC圧とWC圧との差圧を第3のタイミングt13直前の差圧で保持するように差圧弁52及びポンプ58が作動するようになる。
その後、車両の車体速度VSが低速になると、前輪FR,FLの回転速度が遅くなり、第4のタイミングt14以降では回生制動力BPmgが急激に小さくなる。すると、回生制動力BPmgの減少分を補うように、MC圧とWC圧との間に生じる差圧をさらに大きくすべく差圧弁52及びポンプ58が作動するようになる。そして、車両が停止する第6のタイミングt16よりも前の第5のタイミングt15で、回生制動力BPmgがほぼ「0(零)」となる。その結果、第5のタイミングt15以降では、液圧制動力BPp,BPmcのみが車両に付与されるようになる。
ところで、差圧弁52のマスタシリンダ33側の第1のブレーキ液圧に対する差圧弁52のホイールシリンダ65a,65d側の第2のブレーキ液圧の差圧に相当する、MC圧に対するWC圧の差圧を制御する際には、差圧弁52及びポンプ58が制御される。この際、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が一定である場合、差圧弁52に対する指示差圧としての指示電流値を変更しない限り、MC圧に対するWC圧の実際の差圧(以下、「実差圧」ともいう。)はほとんど変化しない。これに対し、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が変化する場合において差圧弁52に対する指示電流値を変更しないときには、実差圧は徐々に変化する。例えば、吐出量が増大される場合には実差圧が次第に大きくなる一方、吐出量が減少される場合には実差圧が次第に小さくなる。これは、差圧弁52に対する指示電流値と実差圧との関係が、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量に依存しているためである。そのため、吐出量が変化する場合であっても実差圧を保持したい場合には、指示電流値を補正する必要がある。
なお、ブレーキ制御ユニット74によってポンプ58からのブレーキの吐出量が変更される状況としては、以下に示す状況などが挙げられる。
(第1の状況)ポンプ58の作動中において車両が停止した場合。
(第2の状況)車両の走行中に発生させる差圧、即ち車両の走行中においてブレーキ制御ユニット74によって設定される要求差圧が変更されない場合。
車両の停止時においては、車両走行時とは異なり車両で発生する騒音が小さくなっている。そのため、こうした状況下でブレーキアクチュエータ50のポンプ58が作動していると、このポンプ58及びポンプ用モータ57からの騒音及び振動が車両の乗員に伝わるおそれがある。そのため、上記の第1の状況であるときには、ポンプ58が停止される、即ちポンプ58からのブレーキ液の吐出量が「0(零)」にされる。
また、ブレーキアクチュエータ50での消費電力の低減を図るためには、ポンプ用モータ57の回転速度を極力低速にすることが好ましい。そのため、車両が停止していなくても要求差圧が変更されない第2の状況下においては、吐出量が第1の吐出量から同第1の吐出量よりも少ない第2の吐出量(≠0)まで減少されることがある。ただし、第2の状況下では、ポンプ58の動力源であるポンプ用モータ57に対する指示電流値が徐々に減少されるのに対し、第1の状況下ではポンプ用モータ57に対する指示電流値が一気に「0(零)」とされる。そのため、第2の状況下では、第1の状況下と比較して、吐出量がゆっくりと減少される。
次に、本実施形態のブレーキ制御ユニット74が実行する各種処理ルーチンについて説明する。
まず始めに、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量の変化に応じて差圧弁52に対する指示電流値を補正するための指示電流値補正処理ルーチンについて、図5のフローチャートを参照して説明する。
この指示電流値補正処理ルーチンは、予め設定された所定周期毎に実行される。そして、指示電流値補正処理ルーチンにおいて、ブレーキ制御ユニット74は、ブレーキスイッチSW1からの検出信号に基づきブレーキ操作中であるか否かを判定する(ステップS11)。ブレーキ操作中ではない場合(ステップS11:NO)、ブレーキ制御ユニット74は、指示電流値補正処理ルーチンを一旦終了する。一方、ブレーキ操作中である場合(ステップS11:YES)、ブレーキ制御ユニット74は、差圧弁52及びポンプ58、即ちブレーキアクチュエータ50の作動によってMC圧とWC圧との間に差圧を発生させているか否か、即ち要求差圧が「0(零)」とは異なる値に設定されているか否かを判定する(ステップS12)。差圧を発生させていない場合(ステップS12:NO)、ブレーキ制御ユニット74は、指示電流値補正処理ルーチンを一旦終了する。
一方、差圧を発生させている場合(ステップS12:YES)、ブレーキ制御ユニット74は、車両が停止しているか否かを判定する(ステップS13)。そして、ブレーキ制御ユニット74は、停車中である場合(ステップS13:YES)にはその処理を後述するステップS14に移行し、停車中ではない場合(ステップS13:NO)にはその処理を後述するステップS16に移行する。
ここで、本実施形態では、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量の変化態様は、車両の停止中であるか否かによって一義的に決められている。すなわち、車両が停止している場合、即ち上記の第1の状況の成立時には、ポンプ58の駆動源であるポンプ用モータ57を早期に停止させるため、ポンプ58からブレーキ液が吐出される状態から吐出量が「0(零)」になる第1の遷移状態が、吐出量の変化速度を特定する変化速度情報として取得される。一方、車両の非停止時において吐出量を減少させる場合、即ち上記の第2の状況の成立時には、吐出量を第1の吐出量から同第1の吐出量とは異なる第2の吐出量に変更する第2の遷移状態が変化速度情報として取得される。そして、第1の遷移状態である場合には、第2の遷移状態である場合より、吐出量の減少速度(変化速度)が速くなる。つまり、ステップS13では、ポンプ58に対する制御態様に基づき、吐出量の減少速度が高速であるか否かが判定される。この点で、本実施形態では、ブレーキ制御ユニット74が、取得部としても機能する。
ステップS14において、ブレーキ制御ユニット74は、指示電流値Iindを補正する第1の補正処理を行う。したがって、本実施形態では、ブレーキ制御ユニット74が、制御部としても機能する。この第1の補正処理では、指示電流値Iindが、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量の変化速度と、第1の補正処理の開始直前におけるMC圧に対するWC圧の差圧とに基づき補正される。具体的には、ブレーキ制御ユニット74は、以下に示す関係式(式1)に基づき指示電流値Iindを補正する。
なお、第1の補正ゲイン値「G1」は、上記の第1の状況の成立時用のゲイン値であって「1」よりも大きな値に設定されている。また、差圧用のゲイン値「Gwc」は、「1」よりも大きな値に設定されたゲイン値であって、設定されている要求差圧が高圧であるほど大きな値に設定される。
続いて、ブレーキ制御ユニット74は、ポンプ58の作動が完全に停止しているか否か、即ちポンプ58からのブレーキ液の吐出量が「0(零)」になったか否かを判定する(ステップS15)。ポンプ58が未だ作動中である場合(ステップS15:NO)、ブレーキ制御ユニット74は、その処理を前述したステップS14に移行する。一方、ポンプ58の作動が完全に停止している場合(ステップS15:YES)、ブレーキ制御ユニット74は、その処理を後述するステップS19に移行する。すなわち、本実施形態では、運転者によるブレーキ操作と、ブレーキアクチュエータ50の作動とによって車両が停止した場合においてMC圧に対するWC圧の差圧を保持させるときには、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が「0(零)」になるまで第1の補正処理が実行される。
ステップS16において、ブレーキ制御ユニット74は、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が変化しているか否かを判定する。吐出量が変化していない場合(ステップS16:NO)、上記第2の状況が成立していないため、ブレーキ制御ユニット74は、指示電流値補正処理ルーチンを一旦終了する。一方、吐出量が変化している場合(ステップS16:YES)、上記第2の状況が成立しているため、ブレーキ制御ユニット74は、第2の補正処理を行う(ステップS17)。
第2の状況の成立時においては、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量は、第1の状況の成立時よりもゆっくりと減少される。そのため、第2の補正処理では、第1の補正処理の実行時と比較して、指示電流値Iindが少しずつ変化するように補正される。こうした第2の補正処理であっても、指示電流値Iindは、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量の変化速度と、第1の補正処理の開始直前におけるMC圧に対するWC圧の差圧とに基づき補正される。具体的には、ブレーキ制御ユニット74は、以下に示す関係式(式2)に基づき指示電流値Iindを補正する。
なお、第2の補正ゲイン値「G2」は、上記の第2の状況の成立時用のゲイン値であって、「1」よりも大きく且つ上記の第1の補正ゲイン値「G1」よりも小さな値に設定されている。
続いて、ブレーキ制御ユニット74は、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が一定になったか否かを判定する(ステップS18)。吐出量が一定になったか否かは、ポンプ58の駆動源であるポンプ用モータ57に対する指示電流値の変化態様に基づき判定することができる。そして、吐出量が未だ変化している場合(ステップS18:NO)、ブレーキ制御ユニット74は、その処理を前述したステップS17に移行する。一方、吐出量が一定になった場合(ステップS18:YES)、ブレーキ制御ユニット74は、その処理を後述するステップS19に移行する。すなわち、本実施形態では、運転者によるブレーキ操作と、ブレーキアクチュエータ50の作動とによって車両に液圧制動力が付与されている場合においてMC圧に対するWC圧の差圧を保持するときには、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が一定になるまで第2の補正処理が実行される。
ステップS19において、ブレーキ制御ユニット74は、第1の補正処理又は第2の補正処理を行ったか否かを判定する電流値補正フラグFLGをオンにセットする。そして、ブレーキ制御ユニット74は、規定差圧に相当する下限電流値Iminを演算する(ステップS20)。本実施形態では、下限電流値Iminは、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が「0(零)」であっても、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量の減少が開始される直前の差圧を保持できる最低限度の値又はこの最低限度の値よりも僅かに大きな値となる。そのため、下限電流値Iminは、この時点の指示電流値Iindよりも小さな値となる。その後、ブレーキ制御ユニット74は、指示電流値補正処理ルーチンを一旦終了する。
次に、運転者によるブレーキ操作量が減少される場合に実行される減圧処理ルーチンについて、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
減圧処理ルーチンは、上記の所定周期毎に実行される。そして、減圧処理ルーチンにおいて、ブレーキ制御ユニット74は、電流値補正フラグFLGがオンであるか否かを判定する(ステップS31)。電流値補正フラグFLGがオフである場合(ステップS31:NO)、ブレーキ制御ユニット74は、減圧処理ルーチンを一旦終了する。一方、電流値補正フラグFLGがオンである場合(ステップS31:YES)、ブレーキ制御ユニット74は、ブレーキ操作量センサSE2からの検出信号に基づいた現時点のブレーキ操作量を今回のブレーキ操作量Pbp(n)として取得する。また、ブレーキ制御ユニット74は、減圧処理ルーチンの前回の実行タイミングにおけるブレーキ操作量を前回のブレーキ操作量Pbp(n−1)として取得する(ステップS32)。
そして、ブレーキ制御ユニット74は、前回のブレーキ操作量Pbp(n−1)から今回のブレーキ操作量Pbp(n)を減算した操作量差分が予め設定された操作量判定値Pbpth(>0(零))以上であるか否かを判定する(ステップS33)。この操作量判定値Pbpthは、ブレーキ操作量の減少が開始されたか否かの判断基準として設定された値である。操作量差分が操作量判定値Pbpth未満である場合(ステップS33:NO)、ブレーキ制御ユニット74は、減圧処理ルーチンを一旦終了する。
一方、操作量差分が操作量判定値Pbpth以上である場合(ステップS33:YES)、ブレーキ操作量の減少が開始されたと判断できるため、ブレーキ制御ユニット74は、差圧弁52に対する指示電流値Iindを、ステップS20で演算した下限電流値Iminにする(ステップS34)。すなわち、ステップS34では、ブレーキ操作量の減少の検知を契機に、指示電流値Iindを下限電流値Iminまで一気に減少させる減少処理が実行される。
続いて、ブレーキ制御ユニット74は、電流値補正フラグFLGをオフにセットし(ステップS35)、ブレーキ操作量センサSE2からの検出信号に基づいた現時点のブレーキ操作量Pbpを取得する(ステップS36)。そして、ブレーキ制御ユニット74は、指示電流値Iindを、ステップS36で取得したブレーキ操作量Pbpに応じた値に設定する(ステップS37)。すなわち、ブレーキ操作量Pbpが減少している場合においては、指示電流値Iindは徐々に小さな値になる。そして、ブレーキ操作量Pbpが「0(零)」になると、指示電流値Iindが「0(零)」となる。
続いて、ブレーキ制御ユニット74は、ステップS36で取得したブレーキ操作量Pbpが「0(零)」であるか否かを判定する(ステップS38)。ブレーキ操作量Pbpが「0(零)」ではない場合(ステップS38:NO)、未だブレーキ操作中であるため、ブレーキ制御ユニット74は、その処理を前述したステップS36に移行する。一方、ブレーキ操作量Pbpが「0(零)」である場合(ステップS38:YES)、ブレーキ操作が解消されたため、ブレーキ制御ユニット74は、減圧処理ルーチンを一旦終了する。
次に、本実施形態のハイブリッド車両の動作について、図7に示すタイミングチャートを参照して説明する。なお、前提として、車両を停止させるための運転者によるブレーキ操作によって、ブレーキアクチュエータ50が作動しているものとする。
運転者がブレーキ操作を行っていると、ブレーキ操作量Pbpから無効操作量を減算した有効操作量に応じた分だけマスタシリンダ33のMC圧が増圧されるとともに、ホイールシリンダのWC圧は、MC圧の増圧分だけ増圧される。また、本実施形態では、ブレーキアクチュエータ50の差圧弁52及びポンプ58の作動によってもWC圧が増圧されている。すなわち、車輪FR,FL,RR,RLには、それらに個別対応するホイールシリンダのWC圧に応じた液圧制動力が付与される。
そして、第1のタイミングt21で車両が停止したと判定されると、図7(a)に示すように、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量Qbpの急激な減少が開始され、第2のタイミングt22で吐出量Qbpが「0(零)」となる。このように吐出量Qbpが急激に減少する状況下においては、図7(b)(d)にて破線で示すように、差圧弁52に対する指示電流値Iindを吐出量に応じて補正する従来の補正処理を実行しても、WC圧が第1のタイミングt21時点でのWC圧、即ち要求制動力に応じたWC圧よりも低くなる。
これに対し、本実施形態では、車両停止時における補正処理としては第1の補正処理が選択されるため、図7(b)にて実線で示すように、吐出量Qbpの変化速度が速いほど、指示電流値Iindの増大速度が速くなる。しかも、吐出量Qbpの減少が継続している間では、吐出量Qbpを「0(零)」としてもWC圧を保持できる程度の値である下限電流値Iminを超えても、指示電流値Iindの補正が継続される。そのため、吐出量Qbpが「0(零)」となりポンプ58の作動が完全に停止する第2のタイミングt22では、指示電流値Iindは、下限電流値Iminよりも十分に大きな値となっている。なお、第2のタイミングt22の時点での指示電流値Iind1は、WC圧を、吐出量Qbpの減少開始直前のWC圧で保持できる電流値の最大値又はこの最大値よりも僅かに小さな値に設定されている。
ここで、ポンプ58の作動が停止される場合などのようにポンプ58からのブレーキ液の吐出量Qbpが減少される場合には、差圧弁52よりもホイールシリンダ側のブレーキ液が、差圧弁52を介してマスタシリンダ33側に流出することがある。しかも、こうしたブレーキ液の流出は、MC圧に対するWC圧の実差圧が大きいほど生じやすい。
この点、本実施形態では、吐出量Qbpの減少に伴う指示電流値Iindの補正に際し、実差圧に相当する要求差圧も加味して指示電流値Iindが補正される。そのため、ポンプ58の作動が停止しても、WC圧はさらに減圧されにくくなる。
その後、第3のタイミングt23で運転者によるブレーキ操作量Pbpの減少が検知されると、指示電流値Iindは、下限電流値Iminまで一気に減少される。そして、ブレーキ操作を解消させるべくブレーキ操作量Pbpが少なくなっていくと、指示電流値Iindは、ブレーキ操作量Pbpの減少に伴い徐々に小さくなる。そして、ブレーキ操作量Pbpが「0(零)」となる第5のタイミングt25では、指示電流値Iindは「0(零)」となっており、MC圧とWC圧との間で差圧がほとんど発生していない状態になる。すなわち、車輪FR,FL,RR,RLには液圧制動力が付与されていない状態になる。
ここで、もし仮に、吐出量Qbpが「0(零)」になる第2のタイミングt22から、ブレーキ操作量Pbpの減少が検知される第3のタイミングt23までの間で、指示電流値Iindを下限電流値Iminまで急変させる減少処理を行わなかったとする。すると、この場合、指示電流値Iindは、図7(b)にて二点鎖線で示すように変化して第5のタイミングt25で「0(零)」となる。しかし、図7(d)にて二点鎖線で示すように、指示電流値Iindが下限電流値Imin以上である間は、指示電流値Iindを小さくしても、WC圧の減少が開始されない。そして、指示電流値Iindが下限電流値Imin以下となる第4のタイミングt24を経過すると、差圧弁52の弁体が弁座から離れる方向に移動し始め、WC圧が急激に減少することになる。この場合、車両に対する制動力が運転者によるブレーキ操作によって変動しない期間(この場合、第3のタイミングt23から第4のタイミングt24までの期間)があり、その後に制動力が急激に減少されることになる。そして、こうした制動力の減少態様に起因した違和感を運転者に与えるおそれがある。
この点、本実施形態では、第3のタイミングt23で減少処理が行われるため、図7(d)にて実線で示すように、その後のブレーキ操作量Pbpの減少に伴って、WC圧が減少される。すなわち、運転者によるブレーキ操作量Pbpの変化に追随して車両に対する制動力が減少されるようになる。
以上説明したように、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)補正処理中では、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量Qbpの変化速度が速いほど、差圧弁52に対する指示電流値Iindの変化速度が大きくなるように指示電流値Iindが補正される。これにより、吐出量Qbpに応じて指示電流値Iindを設定する従来の場合と比較して、吐出量Qbpの変化速度が高速度であるときには指示電流値Iindの変化速度が速くなる。その結果、MC圧に対するWC圧の実差圧と要求差圧との差を極力小さくすることが可能となる。一方、吐出量Qbpの変化速度が低速度であるときには指示電流値Iindの変化速度が遅くなる。その結果、実差圧と要求差圧との差を極力小さくすることが可能となる。したがって、吐出量Qbpが変化するときには、この吐出量Qbpの変化速度の大きさに拘わらず、WC圧を適切に制御することができるようになる。
(2)本実施形態では、補正処理の実行直前の実差圧が高圧である場合ほど、指示電流値Iindが大幅に補正されるようになる。これにより、要求差圧が高圧である場合であっても、WC圧を適切に制御することができるようになる。
また、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量Qbpが減少される場合にあっては、補正処理の実行直前の実差圧が低圧である場合、指示電流値Iindは、WC圧が高圧である場合よりも小さい値に設定される。そのため、差圧弁52に不要に大電流が供給される事態を抑制することができる。その結果、ブレーキアクチュエータ50の消費電力量の低減を図ることができるとともに、差圧弁52の長寿命化を図ることができるようになる。
(3)運転者によるブレーキ操作時においてブレーキアクチュエータ50の作動によって車両が停止した場合において差圧を保持するときには、ポンプ58の作動が停止される。このとき、指示電流値Iindを補正する第1の補正処理は、吐出量Qbpの減少が開始されてから吐出量Qbpが「0(零)」となるまで継続される。そのため、ポンプ58の作動が完全停止した時点では、指示電流値Iindは、下限電流値Iminよりも十分に大きな値となっている。
ここで、もし仮にポンプ58からのブレーキ液の吐出量の減少途中であって且つ指示電流値Iindが下限電流値Iminとなった時点で第1の補正処理を終了させたとする。すると、ポンプ58の作動が完全停止した時点での指示電流値Iindは下限電流値Iminとなっている。この場合、差圧弁52の固体毎の特性差などによっては、差圧弁52よりもホイールシリンダ側のブレーキ液が差圧弁52を介してマスタシリンダ33側に流出し、WC圧が不要に少しずつ減少されるおそれがある。この点、本実施形態では、ポンプ58の作動が完全停止した時点の指示電流値Iindは下限電流値Iminよりも十分に大きな値に設定されている。そのため、運転者によるブレーキ操作量Pbpが低下していない場合には、車両停止時における車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の不要な低下を抑制することができるようになる。
また、このように車両の停止時には車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力を保持しつつポンプ58の作動を停止させることができるようになる。その結果、ポンプ58及びポンプ用モータ57の作動を停止させることができる分、車両停止時におけるブレーキアクチュエータ50の静粛性を向上させることができるようになる。
(4)ポンプ58の作動が完全停止してからブレーキ操作量Pbpの減少が検知されるまでの間に、指示電流値Iindを下限電流値Iminまで一気に減少させる減少処理が行われる。そのため、ブレーキ操作量Pbpが減少される場合においては、ブレーキ操作量Pbpの減少に追随するようにWC圧が減圧される。すなわち、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力がブレーキ操作量Pbpの減少に応じて減少されるようになる。したがって、減少処理が行われない場合と比較して、ブレーキ操作量Pbpの減少時におけるWC圧の減圧の遅れ、即ち車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の低下の遅れを抑制することができるようになる。
(5)減少処理を、ポンプ58の作動が完全停止した第2のタイミングt22の後、即ち第3のタイミングt23よりも前に行ったとする。この場合、上述したように、差圧弁52の個体毎の特性差によっては、減少処理が行われてからブレーキ操作量Pbpの減少が検知されるまでの間に、WC圧が不要に少しずつ減圧し、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力が少しずつ小さくなるおそれがある。この点、本実施形態では、減少処理は、ブレーキ操作量Pbpの減少が検知された時点で行われる。そのため、ブレーキ操作量Pbpが一定である間における車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の不要な低下を抑制することができるようになる。
(6)さらに、本実施形態では、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量Qbpの減少状態が第1の遷移状態であるか第2の遷移状態であるかによって、指示電流値Iindの補正に用いるゲイン値として第1のゲイン値「G1」又は第2のゲイン値「G2」が選択される。すなわち、ポンプ58をどのように制御するかを判別することにより、指示電流値Iindの変化態様が決定される。そのため、吐出量Qbpの変化速度を実測又は推定して指示電流値Iindの変化態様(即ち、ゲイン値)を決定する場合と比較して、指示電流値Iindを決定させるための処理内容を簡素化させることができる。
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・車両が停止していない状態で吐出量Qbpが「0(零)」に向けて減圧されるときには、吐出量Qbpの減圧開始時点から吐出量Qbpが「0(零)」となるまでの間、第1の補正処理を行うようにしてもよい。
・補正処理を行うに際し、ポンプ用モータ57に対する指示電流値の変化態様などに基づき、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量の変化速度を推定し、該推定結果に基づき指示電流値Iindを補正するようにしてもよい。
・減少処理を、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量Qbpが変化していないのであれば、ブレーキ操作量Pbpの減少が検知される前の任意のタイミングで行ってもよい。例えば、減少処理を、吐出量Qbpが一定になってから(即ち、補正処理が終了してから)規定時間が経過した後に行うようにしてもよい。ただし、規定時間が経過する前にブレーキ操作量Pbpの減少が検知された場合には、この検知タイミングで減少処理を行うことが好ましい。なお、ブレーキ操作量Pbpの減少が検知される前に減少処理を行う場合、規定差圧に相当する規定電流値を、減少処理の開始前の指示電流値Iindと下限電流値Iminとの間の値に設定することが好ましい。
・規定電流値を、減少処理の開始前の指示電流値Iindと下限電流値Iminとの間の値に設定した場合、指示電流値Iindを、複数段階で減少させるようにしてもよい。例えば、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が一定となった後に、指示電流値Iindを規定電流値まで一気に減少させ、その後、ブレーキ操作量Pbpの減少が検知されたタイミングで指示電流値Iindを下限電流値Iminにするようにしてもよい。
・減少処理を、補正処理が終了した時点から、ブレーキ操作量Pbpの減少が検知されてから所定時間が経過した時点までの間の任意のタイミングで行ってもよい。例えば、図8に示すように、ブレーキ操作量Pbpの減少が検知された時点(第3のタイミングt23)から所定時間KTが経過した時点(第3−1のタイミングt23−1)で減少処理を行ってもよい。ただし、この場合、所定時間KTは、減少処理を実行しない場合においてブレーキ操作量Pbpの減少が開始されてからWC圧が減少し始めるまでのタイムラグTLよりも短い時間に設定される。このような制御構成を採用することにより、減少処理を行わない場合よりも、ブレーキ操作量Pbpの減少が開始されてからのWC圧の減圧開始の遅れを短くすることができるようになる。
・減少処理を行わなくてもよい。この場合、図9に示すように、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が変化している途中であっても、指示電流値Iindが下限電流値Iminを超えた時点(第1−1のタイミングt21−1)で補正処理を終了させるようにしてもよい。
・吐出量Qbpが「0(零)」とは異なる第2の吐出量で一定になった場合には、下限電流値Iminを、吐出量Qbpが第2の吐出量であっても、吐出量Qbpの減少が開始される直前の差圧を保持できる最低限度の値又はこの最低限度の値よりも僅かに大きな値としてもよい。
・補正処理を行うに際し、補正処理の開始直前の実差圧を加味することなく、指示電流値Iindを補正するようにしてもよい。この場合、WC圧用のゲイン値Gwcは、補正処理の開始直前のWC圧の推定値の大きさに拘わらず一定値とされる。
・要求差圧が一定である場合には、補正処理を、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量Qbpが増大する場合に実行してもよい。この場合であっても、吐出量Qbpの増加速度が速い場合ほど、指示電流値Iindの減少速度が速くなるように指示電流値Iindが補正されることになる。
・補正処理を、運転者によるブレーキ操作を伴わない液圧制動力の発生時に実行させるようにしてもよい。なお、こうした場合としては、車両前方に障害物が発見された場合に、ブレーキアクチュエータ50を作動させる場合などが挙げられる。
・差圧弁は、常閉型のリニア電磁弁であってもよい。この場合、差圧弁に対する指示差圧が高くなるほど、差圧弁に対する指示電流値が小さくされる。
・車両は、ハイブリッド車両でなくてもよい。この場合、マスタシリンダとしては、運転者によるブレーキ操作の開始とほぼ同時にMC圧が増圧されるものが採用される。