以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
図1,2は、本実施の形態に係るコネクタを示す図であり、図1は断面図、図2(a),(b)は斜視図である。
図1,2に示すように、本実施の形態に係るコネクタ1は、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3とで構成され、これらコネクタ部2,3を嵌合させることで、複数の電源ラインを一括して接続するためのものである。
より具体的には、コネクタ1は、複数(3つ)の第1接合端子(オス側端子)4a〜4cが整列されて収納される第1ターミナルハウジング(オス側ターミナルハウジング)5を有する第1コネクタ部2と、複数(3つ)の第2接合端子(メス側端子)6a〜6cが整列されて収納される第2ターミナルハウジング(メス側ターミナルハウジング)7を有する第2コネクタ部3と、第2ターミナルハウジング7内に整列されて収納され、第2接合端子6a〜6c間を絶縁するための複数(4つ)の絶縁部材8a〜8dと、を備えている。
コネクタ1は、第1コネクタ部2の第1ターミナルハウジング5と第2コネクタ部3の第2ターミナルハウジング7とを嵌合させると、その内部において、複数の第1接合端子4a〜4cの一面のそれぞれと複数の第2接合端子6a〜6cの一面のそれぞれとが対(第1接合端子4aと第2接合端子6a、第1接合端子4bと第2接合端子6b、第1接合端子4cと第2接合端子6cの各対)となるように対面して複数の接点が構成されると共に、第1接合端子4a〜4cと第2接合端子6a〜6cとが交互に配置され、かつ、各接点が絶縁部材8a〜8dで挟まれた積層状態となるものである。
コネクタ1では、第1コネクタ部2は、インバータやモータなどの機器のシールドケースに取り付けられ、外部に露出した第1接合端子4a〜4cが機器の電源ラインに電気的に接続される。第2コネクタ部3にはケーブル61a〜61cが接続されており、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3とを接続することで、ケーブル61a〜61cと機器の電源ラインとがそれぞれ電気的に接続されるようになっている。ケーブル61a〜61cの端部にコネクタ1(第2コネクタ部3)を設けたものが、本実施の形態に係るワイヤハーネスである。
コネクタ1では、第1接合端子4a〜4cの長さ方向と第2接合端子6a〜6cの長さ方向とが交差する方向に両ターミナルハウジング5,7を嵌合させるよう構成されている。本実施の形態では、第1接合端子4a〜4cの長さ方向と第2接合端子6a〜6cの長さ方向とが直交する方向に両ターミナルハウジング5,7を嵌合させるようにコネクタ1を構成している。なお、コネクタ1では、第1接合端子4a〜4cの長さ方向は両ターミナルハウジング5,7の嵌合方向と一致しており、第2接合端子6a〜6cの長さ方向はケーブル61a〜61cの延出方向と一致しているので、両ターミナルハウジング5,7の嵌合方向とケーブル61a〜61cの延出方向とが直交している、と換言することもできる。
なお、本実施の形態では、両ターミナルハウジング5,7の嵌合方向とケーブル61a〜61cの延出方向とが直交した所謂L字型のコネクタ1について説明するが、両ターミナルハウジング5,7の嵌合方向とケーブル61a〜61cの延出方向とが一致した所謂ストレート型のコネクタであっても本発明は適用可能である。
以下、コネクタ部2,3のそれぞれの構成について詳述する。
[第1コネクタ部]
まず、第1コネクタ部2について説明する。
図1〜5に示すように、第1コネクタ部2は、第1接合端子4a〜4cと、第1ターミナルハウジング5と、第1インナーハウジング10と、を主に備えている。
第1接合端子4a〜4cのそれぞれには、異なる電圧及び/又は電流の電気が送電される。例えば、本実施の形態においては、モータ、インバータ間用の三相交流の電源ラインを想定しており、第1接合端子4a〜4cのそれぞれには、120°位相の異なる交流が送電される。第1接合端子4a〜4cのそれぞれは、コネクタ1での送電ロスを低減するなどの目的のために、導電率の高い銀、銅、アルミニウムなどの金属で構成されるとよい。また、第1接合端子4a〜4cのそれぞれは、多少の可撓性を有する。
第1ターミナルハウジング5は、シールド性能、放熱性、及びコネクタ1の軽量化のために、導電率、熱伝導率が高く軽量なアルミニウムなどの金属で形成されることが好ましいが、樹脂などにより形成するようにしてもよい。本実施の形態においては、第1ターミナルハウジング5をアルミニウムで形成した。
第1インナーハウジング10は、絶縁性樹脂(例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、エポキシ系樹脂)などからなる。
第1接合端子4a〜4cは、第1インナーハウジング10に形成された貫通孔10aに挿入され固定される。第1インナーハウジング10は、第1ターミナルハウジング5に形成された端子取付孔5aを塞ぐように第1ターミナルハウジング5に取り付けられ、これにより、第1接合端子4a〜4cが、第1インナーハウジング10を介して第1ターミナルハウジング5に固定され、第1ターミナルハウジング5内に所定間隔で離間された状態で整列させて保持されるように構成されている。第1インナーハウジング10には、貫通孔10aの周縁から外方に突出する突出部10bが設けられており、これにより、第1接合端子4a〜4cとの接触面積を大きくして、第1接合端子4a〜4cを強固に保持できるように構成されている。
また、第1インナーハウジング10には、後述する第1嵌合検知用端子ケース93を取り付けるための第1嵌合検知用端子ケース取付穴10cが形成されている。
第1ターミナルハウジング5は、横断面が略矩形状の中空の筒状体20と、筒状体20の一方の開口を塞ぐように設けられると共に端子取付孔5aが形成され、筒状体20と一体に設けられる蓋部24と、からなる。蓋部24は、第1コネクタ部2を機器のシールドケースに取り付ける際に、シールドケースの表面に当接する部分であり、フランジ状に形成されている。
本実施の形態では、フランジ状の蓋部24の周縁部から嵌合方向前方(第2コネクタ部3側)に突出するように、保護壁25が形成されている。保護壁25には、後述する接続部材9のカム9aを回転させる工具を通すための工具用穴25aが形成されている。
筒状体20は、両ターミナルハウジング5,7嵌合させた際に第2ターミナルハウジング7内に収容される。筒状体20の外周には、周方向に沿って溝22が形成されており、この溝22にOリングなどのパッキン(図示せず)を設けることで、両ターミナルハウジング5,7を嵌合した際に第2ターミナルハウジング7との間で防水をとるように構成されている。筒状体20の蓋部24と反対側の端部における外周側の角部は、第2ターミナルハウジング7との嵌合性を考慮してテーパ形状に形成されている。
第1接合端子4a〜4cは、第1ターミナルハウジング5内においてその厚さ方向に整列するように配置されている。
図4に示すように、第1接合端子4a〜4cは、板状部材60aの基端部と、嵌合方向から見てL字状に形成されたL字部60bとを、傾斜部60cで連結した構成となっている。L字部60bは、その一方の面が板状部材60aの表面と平行となるように設けられ、その一方の面と板状部材60aの基端部とが、板状部材60aの表面に対して傾斜した傾斜部60cにより連結されている。なお、第1ターミナルハウジング5から外部に露出する部分の第1接合端子4a〜4cの形状はこれに限定されるものではなく、機器側の要求に応じて適宜変更可能である。第1接合端子4a〜4cの先端部には、後述する絶縁部材組立体100への挿入を容易とするために、面取り加工が施されている(丸め加工でもよい)。
[第2コネクタ部]
次に、第2コネクタ部3について説明する。
図1,2、および図6,7に示すように、第2コネクタ部3は、内部に3つの第2接合端子6a〜6cを所定間隔で離間された状態で整列させて保持しており、3つの第2接合端子6a〜6cが整列されて収納される第2ターミナルハウジング7と、第2ターミナルハウジング7内に設けられ第2接合端子6a〜6cのそれぞれを絶縁する略直方体形状の複数の絶縁部材8a〜8dと、隣接する絶縁部材8aを押圧することで、複数の第1接合端子4a〜4c及び複数の第2接合端子6a〜6cを各接点にて一括して固定し電気的に接続させる接続部材9とを備える。
第2接合端子6a〜6cの一端側のそれぞれには、ケーブル61a〜61cが接続されている。ケーブル61a〜61cは、導体62の外周に絶縁層63を形成してなる。本実施の形態においては、断面積が20mm2の導体62を用いた。
第2接合端子6a〜6cのそれぞれは、コネクタ1での送電ロスを低減するなどの目的のために、導電率の高い銀、銅、アルミニウムなどの金属で構成されるとよい。また、第2接合端子6a〜6cのそれぞれは、多少の可撓性を有する。
第2接合端子6a〜6cのそれぞれは、図8に示すように、ケーブル61a〜61cの先端部から露出された導体62をかしめるためのかしめ部45と、かしめ部45と一体に形成された板状部材46とを有し、板状部材46の基端部(かしめ部45との接続部分)をS字状に折り曲げてクランプ状に形成されている。板状部材46には、板状部材46の基端部における幅方向の両端部から上方(あるいは下方)に突出するように突起27aが形成されている。この突起27aは、後述する抜け抑制機構27を構成するものである。第2接合端子6a〜6cの先端部には、絶縁部材8b〜8dへの挿入を容易とするために、面取り加工が施されている(丸め加工でもよい)。
図6,7に示すように、ケーブル61a〜61cのそれぞれは、多連筒状(複数の筒が連なっている形状)の樹脂成形体からなる第2インナーハウジング30によって所定間隔で離間されて整列保持される。第2接合端子6a〜6cは、ケーブル61a〜61cと第2インナーハウジング30とを介して、第2ターミナルハウジング7に固定される。このとき、第2接合端子6a〜6cのそれぞれは、第1コネクタ部2と第2コネクタ部3とを嵌合させたときに、第2接合端子6a〜6cのそれぞれと対となるように対面する(即ち、接続対象の)第1接合端子4a〜4cのそれぞれの下方(接続部材9と反対側)に位置するように位置決めして保持される。
第2インナーハウジング30は、第2接合端子6a〜6cのそれぞれを互いに絶縁して短絡を防止すべく、絶縁性樹脂(例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、エポキシ系樹脂)などからなる。この第2インナーハウジング30により、第2接合端子6a〜6cのそれぞれに接続されたケーブル61a〜61cのそれぞれが可撓性に優れたケーブルであっても、第2接合端子6a〜6cのそれぞれを所定の位置に保持することができる。つまり、本実施の形態では、ケーブル61a〜61cとして可撓性に優れたケーブルを用いることができるので、ケーブル61a〜61cを敷設する際の配線自由度を向上できる。
図9に示すように、第2インナーハウジング30は、一方が開放された角筒を3つ連続させた多連筒状に形成され、全体として直方体形状に形成される本体部30aと、本体部30aの側端部からケーブル61a〜61cの挿入方向に延びる板状の平行部30bと、平行部30bの先端部から直交して延びる板状の垂直部30cと、を有し、本体部30aのケーブル61a〜61cの挿入方向前方の面と、平行部30bと、垂直部30cとに囲まれた空間30dに絶縁部材8a〜8dを収容するように構成されている。
平行部30bと本体部30aのケーブル61a〜61cの挿入方向前方の面とが交差する角部、および垂直部30cと平行部30bとが交差する角部には、補強用のリブ30hがそれぞれ形成されている。また、垂直部30cには、後述する第2嵌合検知用端子ケース94をスライド自在に収容するケース収容部30fが形成される。ケース収容部30fは、その側面の一部(本体部30a側)が開放された筒状に形成される。
本体部30aのケーブル61a〜61cの挿入方向前方の面には、第2接合端子6a〜6cを挿入する(本体部30a内から第2接合端子6a〜6cの先端部を露出させる)ための端子挿入孔30eが形成されている。
本実施の形態では、端子挿入孔30eに第2接合端子6a〜6cを挿入することで、第2インナーハウジング30で第2接合端子6a〜6cを直接保持し、第2接合端子6a〜6cの位置決めを行っているが、これに限らず、ケーブル61a〜61c(より詳しくは、第2接合端子6a〜6cに近い位置であってケーブル61a〜61cの端部側)を保持することで、第2接合端子6a〜6cの位置決めを行うよう構成することも可能である。なお、接続部材9の押圧によって第2接合端子6a〜6cが変形した際に、変形した第2接合端子6a〜6cが第2インナーハウジング30に干渉しないようにするため、端子挿入孔30eの大きさを第2接合端子6a〜6cの大きさよりも若干大きく形成することが好ましい。
第2コネクタ部3では、ケーブル61a〜61cが引っ張られた場合であっても、ケーブル61a〜61cが第2インナーハウジング30から抜けてしまわないように、抜け抑制機構27が備えられている。抜け抑制機構27は、第2接合端子6a〜6cのそれぞれの基端部(ケーブル61a〜61cの近傍、本実施の形態では板状部材46のかしめ部45側の端部)に形成された突起27aと、第2インナーハウジング30の本体部30aにケーブル61a〜61cおよび第2接合端子6a〜6cを挿入した後に、本体部30aの側面(第2ターミナルハウジング7の開口側の側面)に形成されたインナープレート挿入孔30gから多連筒状の各筒内に突出するように挿入して設けられ、突起27aを係止して突起27aの後方(ケーブル61a〜61c側)への動きを規制する(図1(a)参照)インナープレート27bとからなる。なお、本実施の形態では、インナープレート27bの構造は限定するものではなく、3つの第2接合端子6a〜6cの突起27aに係止して突起27aの動きを規制できるものであれば、どのような構造であってもよい。
図1,6,10に示すように、第2ターミナルハウジング7は、一方が開口した横断面が略矩形状の中空の筒状体36からなり、その筒状体36の開口に第1ターミナルハウジング5が挿入され嵌合されるように構成されている。筒状体36の側面(図10における右側の側面)には、ケーブル61a〜61cが挿入される筒状のケーブル挿入部36aが一体に形成されている。筒状体36の中空部とケーブル挿入部36aの中空部とは、ケーブル61a〜61cを通す3つの矩形状の挿通孔36fを介して連通するようにされ、ケーブル61a〜61cがケーブル挿入部36aの中空部、および挿通孔36fを通って筒状体36の内部へと挿入されるようになっている。第1ターミナルハウジング5の挿入方向と、ケーブル61a〜61cの挿入方向は直交している。
図示していないが、第2ターミナルハウジング7から引き出されたケーブル61a〜61cには、シールド性能の向上を目的とした編組シールドが巻き付けられていてもよい。この編組シールドは、例えば、第2ターミナルハウジング7を介して第1ターミナルハウジング5に電気的に接続され、接地電位とされるとよい。
さらに、図示していないが、ケーブル61a〜61cが引き出されるケーブル挿入部36aの外周には、ケーブル挿入部36aや筒状体36内への水の浸入を防止するゴムブーツが被せられる。
また、筒状体36の上部(図10における上側)には、接続部材9を挿入するための接続部材挿入孔26が形成される。接続部材挿入孔26の周縁の第2ターミナルハウジング7は筒状(中空円筒状)に形成されている。
筒状体36の接続部材挿入孔26と対向する位置の内周面には、接続部材挿入孔26側に突出する直方体形状の台座87が設けられている。コネクタ1では、接続部材9と台座87との間に積層構造を挟持し接続部材9を台座87側押し込んで積層構造に押圧力を加えることにより、各接点に押圧力を加えることになる。
図11に示すように、第2インナーハウジング30は、その本体部30aが台座87のケーブル挿入部36a側に配置され、その平行部36bが台座87の上を通り、台座87のケーブル挿入部36aと反対側に垂直部30cが位置するように配置される。
第2ターミナルハウジング7は、シールド性能、放熱性、及びコネクタ1の軽量化のために、導電率、熱伝導率が高く軽量なアルミニウムなどの金属で形成されることが好ましいが、樹脂などにより形成するようにしても良い。本実施の形態においては、筒状体36をアルミニウムで形成した。
また、第2コネクタ部3では、図7に示すように、ケーブル61a〜61cを挿通させる孔50aを設けた2分割構造のテールプレート50でケーブル61a〜61cを挟み込んで挟持すると共に、そのテールプレート50の第2接合端子6a〜6c側にワイヤシール(防水パッキン)51を設けており、これにより、ケーブル61a〜61cを伝って第2ターミナルハウジング7内に水が浸入することを抑制している。ワイヤシール51は、テールプレート50と挿通孔36f(図10(a)参照)の周囲の壁とで挟み込まれるように配置される。
図1,6,7に示すように、複数の絶縁部材8a〜8dは、第2ターミナルハウジング7内に整列されて収納されると共に複数の第2接合端子6a〜6cの他面(第1接合端子4a〜4cと接合される面と反対側の面)のそれぞれに一体的に設けられる複数の第1絶縁部材8b〜8dと、複数の第1接合端子4a〜4cと複数の第2接合端子6a〜6cとが積層状態となったときに最外(図1,6,7では最も上側)に位置する第1接合端子4aの他面(第2接合端子6aと接合される面と反対側の面)と対向するように設けられる第2絶縁部材8aとからなる。
本実施の形態に係るコネクタ1では、各絶縁部材8a〜8dをそれぞれ連結し、各絶縁部材8a〜8d同士の積層構造の積層方向に対して垂直な方向の動きを規制する絶縁部材規制手段101を有する絶縁部材組立体100を構成している。絶縁部材規制手段101は、積層構造の積層方向をZ軸とする直交座標系を考えたとき、各絶縁部材8a〜8d同士のXY面内の動きを規制するように構成されている。
絶縁部材組立体100には、直交する方向に挿入される両接合端子4a〜4c,6a〜6cを挿入するための孔、すなわち、第1接合端子4a〜4cを挿入するための第1端子挿入孔102と、第2接合端子6a〜6cを挿入するための第2端子挿入孔103が形成されている。第1端子挿入孔102は、隣接する絶縁部材8a〜8d間に形成され、第2端子挿入孔103は各第1絶縁部材8b〜8dに形成される。絶縁部材組立体100の詳細は後述する。
図12に示すように、接続部材9は、カム9aとボルト9bとからなる。カム9aは、下方のみに開口する円筒状に形成されると共に、その上面に異形孔(ここではヘクサロビュラ形の孔)9cが形成されており、レンチなどの工具を嵌合させて回動できるようになっている。カム9aの側面には、第2ターミナルハウジング7内に水が浸入するのを抑制するOリングなどのパッキン14(図1(a)参照)を収容する溝9hが形成されている。カム9aの下部(溝9hを形成する位置も含む)はフランジ状に拡径されている。図示していないが、第2ターミナルハウジング7の接続部材挿入孔26内にカム9aを挿入し、接続部材挿入孔26の内周面に形成された溝にリング状の固定部材を嵌め込み固定することで、フランジ部分が固定部材に干渉してカム9aの外側への動きを規制するようにし、第2ターミナルハウジング7と固定部材との間でカム9aを回転自在に保持するように構成される。
カム9aの中空部内には、ボルト9bの上部が挿入される。カム9aの中空部の内壁(内周面)の対向する位置には、中空部内に向かって突出する凸部9fが形成されている。また、カム9aの下端部(第2絶縁部材8a側の端部)における側壁の周方向の一部を切り欠いて切欠部9gが形成されている。この切欠部9gは、後述するスライドリング95の係合壁95cを係合するためのものである。
ボルト9bは、下方のみに開口する円筒状に形成され、その下部はフランジ状に拡径されている。ボルト9bは、そのフランジ部分に形成された切欠9jを第2ターミナルハウジング7に形成された上下に延びる直線上の突起36e(図10(a)参照)にスライド自在に係合することで、カム9aの回転と共に回転することなく、上下方向にスライド可能とされている。
ボルト9bのフランジ部分の上面、すなわち段差部分には、スロープ9dが形成されている。スロープ9dは、カム9aの2つの凸部9fに対応するように、カム9aの回転軸に対して180度回転対称の位置に2つ形成されている。スロープ9dの上部には平坦部9eが形成されており、平坦部9eとスロープ9dとの間には、平坦部9eに位置している凸部9fの移動を規制し意図せずカム9aが回転してしまうことを抑制するための段差9iが形成されている。
この接続部材9では、カム9aを開放位置から締結方向に回転させると、カム9aの凸部9fがボルト9bのスロープ9dに干渉してボルト9bを第2絶縁部材8a側に移動させて第2絶縁部材8aを押圧するようになっている。このように構成することで、作業者が回動させるカム9aが常に一定の位置にあり上下に動かなくなるので、作業性が向上する。以下、各接点に押圧力を付与するときのカム9aの回転方向を締結方向、各接点に付与した押圧力を解除するときのカム9aの回転方向を締結方向と反対方向と呼称する。
カム9aおよびボルト9bとしては、例えば、SUS、鉄、銅合金などの金属からなるものを用いるとよい。なお、カム9aやボルト9bとして樹脂製のものを用いてもよいが、強度の観点からは、金属製のものを用いることが好ましい。
また、接続部材9のボルト9bとその直下の第2絶縁部材8aの上面との間には、第2絶縁部材8aに所定の押圧力を付与する弾性部材15が設けられる。本実施の形態では、ボルト9bの中空部に弾性部材15の上部を収納するようにした。これは、弾性部材15の長さがある程度長い場合であっても、ボルト9bと第2絶縁部材8a間の間隔を短くし、コネクタ1を小型化するための工夫である。弾性部材15は、金属(例えば、SUSなど)製のバネで構成される。なお、本実施の形態において、弾性部材15は、接続部材9の一部という位置付けである。
弾性部材15の下部が当接する第2絶縁部材8aの上面には、弾性部材15の下部を覆う(収納する)凹部16(図7参照)が形成され、凹部16の底部(即ち、弾性部材15の下部が当接する座の部分)には、弾性部材15を受けて絶縁性樹脂からなる第2絶縁部材8aの損傷を抑制する金属(例えば、SUSなど)製の受け部材17が設けられる。
受け部材17は、弾性部材15から第2絶縁部材8aの上面に加わる応力を分散することで第2絶縁部材8aの損傷を抑制するためのものである。そのため、受け部材17と第2絶縁部材8aとの接触面積をできるだけ大きくすることが好ましい。本実施の形態では、受け部材17と第2絶縁部材8aとの接触面積を大きくすべく、凹部16の底部全面に亘って接触するような形状の受け部材17を設けた。
[第1コネクタ部と第2コネクタ部との接続]
両ターミナルハウジング5,7を嵌合させると、第1接合端子4a〜4cのそれぞれが第1端子挿入孔102に挿入され、対となる第2接合端子6a〜6cのそれぞれと絶縁部材8a〜8dとの間に挿入される。そして、該挿入により、複数の第1接合端子4a〜4cの一面のそれぞれと複数の第2接合端子6a〜6cの一面のそれぞれとが対となるように対面すると共に、第1接合端子4a〜4c、第2接合端子6a〜6c、及び絶縁部材8a〜8dとが交互に配置される、即ち、絶縁部材8a〜8dが対となる第1接合端子4a〜4c及び第2接合端子6a〜6cを挟むように配置される積層状態となる。
このとき、第2コネクタ部3の内部において、第1絶縁部材8b〜8dのそれぞれが、所定間隔で離間させた状態で整列させて保持されている第2接合端子6a〜6cの先端側に設けられているため、各絶縁部材8b〜8dの間隔を保持するための保持用治具等を別途設けなくても、各絶縁部材8b〜8dの間隔を保持することができるようになる。これにより、第1接合端子4a〜4cのそれぞれを、対となる第2接合端子6a〜6cのそれぞれと絶縁部材8a〜8dとの間に容易に挿入することができる。即ち、第1接合端子4a〜4cの挿抜性を低下させることがない。また、絶縁部材8b〜8dの間隔を保持するための保持用治具を設けなくてもよい分、従来に比べて更なる小型化を実現できる点において、非常に有効である。
また、第1接合端子4aと第2接合端子6aに係る接点が、第2絶縁部材8aと、接点を構成する第2接合端子6aに設けられた第1絶縁部材8bとにより挟み込まれる。同様に、第1接合端子4b(又は4c)と第2接合端子6b(又は6c)に係る接点が、接点を構成する第2接合端子6b(又は6c)に設けられた第1絶縁部材8c(又は8d)と、他の接点を構成する第2接合端子6a(又は6b)に設けられた第1絶縁部材8b(又は8c)とにより挟み込まれる。
この状態でレンチ等の工具で接続部材9のカム9aを回動させ、ボルト9bを下方に押し込むと、弾性部材15によって第2絶縁部材8a、第1絶縁部材8b、第1絶縁部材8c、第1絶縁部材8dの順に押圧されていき、接点のそれぞれが絶縁部材8a〜8dのいずれか2つによって挟み込まれるように押圧されて各接点に対して押圧力が付与され、接点のそれぞれが互いに絶縁された状態で接触される。このとき、第1接合端子4a〜4cのそれぞれと第2接合端子6a〜6cのそれぞれは、絶縁部材8a〜8dからの押圧によって多少撓み広範囲で接触されることとなる。これにより、車両などの振動を発生させる環境においても、接点のそれぞれが強固に接触して固定される。
なお、カム9aを回転させる工具は、保護壁25の工具用穴25aを通して異形孔9cに嵌合される。コネクタ1では、両ターミナルハウジング5,7がしっかりと嵌合されていない状態では異形孔9cと工具用穴25aの位置がずれ、工具によりカム9aを回転させることができないようになっており、確実に両ターミナルハウジング5,7を嵌合させた状態で各接点に押圧力を付与するように構成されている。
[絶縁部材組立体]
次に、絶縁部材組立体100について詳細に説明する。
図1,7,13に示すように、絶縁部材組立体100は、各絶縁部材8a〜8dを積層方向に順次連結して構成される。つまり、絶縁部材組立体100は、第2絶縁部材8aと第1絶縁部材8b、第1絶縁部材8bと第1絶縁部材8c、第1絶縁部材8cと第1絶縁部材8dをそれぞれ連結して構成される。
絶縁部材組立体100では、絶縁部材規制手段101は、各絶縁部材8a〜8dを連結したときに、各絶縁部材8a〜8d同士の積層方向と垂直方向の動きを規制するようにされる。絶縁部材組立体100では、接続部材9による押圧力を各接点に伝えるために、各絶縁部材8a〜8dは積層方向に相対的に移動可能に連結される。
絶縁部材規制手段101は、積層方向に隣り合う絶縁部材8a〜8dの一方に設けられ隣り合う絶縁部材8a〜8dの他方に向かって突出する複数の連結片81と、隣り合う絶縁部材8a〜8dの他方に複数の連結片81に対応するように設けられ、複数の連結片81を積層方向にスライド自在に収容する複数の連結溝82と、を備えている。
本実施の形態では、絶縁部材8a〜8dを、その積層方向から見た形状が略矩形状となるように形成し、絶縁部材8a〜8dの4つの隅部のうち少なくとも2箇所に、連結片81と連結溝82の一方または両方を形成するようにした。ここでは、絶縁部材8a〜8dの4つの隅部それぞれに、連結片81と連結溝82の一方または両方を形成する場合を説明する。
絶縁部材組立体100では、第1絶縁部材8b〜8dには、第1絶縁部材8b〜8dの幅方向の4つの隅部から、当該第1絶縁部材8b〜8dが設けられる第2接合端子6a〜6cを挟んで対向する絶縁部材8a〜8c(第1絶縁部材8bでは第2絶縁部材8a、第1絶縁部材8cでは第1絶縁部材8b、第1絶縁部材8dでは第1絶縁部材8c)に延びる連結片81がそれぞれ一体に形成される。
また、第1絶縁部材8b〜8dと対向する(第1絶縁部材8b〜8dが設けられる第2接合端子6a〜6cを挟んで対向する)絶縁部材8a〜8cには、絶縁部材8a〜8cの両側面に、連結片81を積層方向にスライド自在に収容する連結溝82がそれぞれ形成される。本実施の形態では、複数の第1絶縁部材8b〜8dを同じ形状に形成し、最外に位置する第1絶縁部材8dにも、連結溝82を形成した。また、本実施の形態では、連結片81と連結溝82を、積層方向から見て略矩形状に形成した。複数の第1絶縁部材8b〜8dを同じ形状に形成することにより、部品点数を削減し低コスト化が可能になる。
第1絶縁部材8bの連結片81を第2絶縁部材8aの連結溝82に、第1絶縁部材8cの連結片81を第1絶縁部材8bの連結溝82に、第1絶縁部材8dの連結片81を第1絶縁部材8cの連結溝82にそれぞれ収容することで、各絶縁部材8a〜8dは、積層方向に相対的に移動可能な状態で連結され、絶縁部材組立体100が構成される。
また、絶縁部材組立体100では、絶縁部材8a〜8dを連結(積層)したときに、連結片81の先端(上端)が連結溝82の上面で規制されて、絶縁部材8a〜8d同士の間隔が所定の間隔(最小積層間隔という)よりも狭くならないよう規制されるようになっている。
この最小積層間隔は、接点を構成する第1接合端子4a〜4cと第2接合端子6a〜6cの合計厚さ(接点厚さという)よりも、若干小さい間隔となるように調整される。最小積層間隔が接点厚さよりも大きいと、接続部材9による押圧力が接点に伝わらず、また最小積層間隔を小さくし過ぎると、何らかの理由で第2接合端子6a〜6cが変形するなどした際に、絶縁部材8a〜8dの積層方向の位置ずれが大きくなりすぎ、嵌合性が悪化するなどの不具合が発生するためである。最小積層間隔の調整は、連結片81と連結溝82の積層方向の長さの差を調整することで行うことができる(例えば、連結溝82の長さに対して連結片81を長くしていくと、最小積層間隔が長くなる)。
図14(a)に示すように、第1絶縁部材8b〜8dの4つの連結片81は、第2接合端子6a〜6cの長さ方向から見て略Γ字状、あるいは略左右反転させたΓ字状に形成されており、内側に向かって開口するコの字状の嵌合溝83が形成されている。この嵌合溝83に第2接合端子6a〜6cを挿入することで、第1絶縁部材8b〜8dが第2接合端子6a〜6cに係止され固定されるようになっている。つまり、連結片81は、絶縁部材8a〜8d同士を連結する役割と、第2接合端子6a〜6cに係止する役割を兼ねており、その嵌合溝83が第2端子挿入孔103となっている。
他方、図1(b)および図14(b)に示すように、両ターミナルハウジング5,7を嵌合させたときには、第2ターミナルハウジング7の開口に臨む位置(第1接合端子4a〜4cの挿入側)に形成される連結片81の間に、第1接合端子4a〜4cが挿入される。つまり、第2ターミナルハウジング7の開口に臨む位置に形成される連結片81は、第1接合端子4a〜4cの先端部をガイドし位置決めを行う役割も兼ねており、また、第2接合端子6a〜6cと絶縁部材8a〜8cとの間であって、かつ、両連結片81に挟まれた開口が第1端子挿入孔102となる。
本実施の形態では、図14(a),(b)に示すように、複数の第1絶縁部材8b〜8dに、第2接合端子6a〜6cの第1接合端子4a〜4cの挿入側の端面を覆い、第2接合端子6a〜6cと絶縁部材8a〜8cとの間に第1接合端子4a〜4cを挿入する際に両接合端子4a〜4c,6a〜6cが衝突することを抑制する衝突抑制用壁84を一体に形成し、各衝突抑制用壁84の角部に、第1接合端子4a〜4cの挿入を容易とするための面取り加工(または丸め加工)を施すようにした。同様の面取り加工(または丸め加工)が、衝突抑制用壁84と対向する位置の絶縁部材8a〜8c(つまり、絶縁部材8a〜8cの接続部材9と反対側でかつ第1接合端子4a〜4cの挿入側の角部)にも形成される。本実施の形態では省略しているが、連結片81の第1端子挿入孔102側の角部にも面取り加工または丸め加工を施し、第1接合端子4a〜4cの挿入をより容易としてもよい。衝突抑制用壁84は、その上面が第2接合端子6a〜6cの上面と同一面となるように形成される。
第1絶縁部材8b〜8dを第2接合端子6a〜6cに設けることで、第1絶縁部材8b〜8dが、第2接合端子6a〜6c、第2インナーハウジング30を介して第2ターミナルハウジング7に保持されることとなり、第1絶縁部材8b〜8dの第1ターミナルハウジング5に対する位置決めがなされる。第1ターミナルハウジング5に対する位置決めがなされた状態では、連結片81の先端と連結溝82の上面との間には隙間が形成され、第1絶縁部材8b〜8d同士が積層方向に相対的に移動可能となっている。なお、このとき、各絶縁部材8a〜8dは、第2インナーハウジング30の本体部30aと平行部30bと垂直部30cとに囲まれた空間30dに収容されることになる(図9,11参照)。
嵌合溝83の積層方向の幅(コの字状の開口の幅)は、第2接合端子6a〜6cの厚さよりも若干大きく形成される。これにより、嵌合溝83に第2接合端子6a〜6cを嵌合したときに、嵌合溝83と第2接合端子6a〜6cの間に隙間(クリアランス)が形成されるようになり、第1絶縁部材8b〜8dが、第2接合端子6a〜6cに対してがたつきを持たせて設けられることになる。第1絶縁部材8b〜8dを、第2接合端子6a〜6cに対してがたつきを持たせて設けることにより、第1絶縁部材8b〜8dの位置が多少ずれた場合でも、第1絶縁部材8b〜8dが柔軟に移動可能となるので、第1接合端子4a〜4cが第1絶縁部材8b〜8dに突き当たる等して、嵌合性が悪化することを抑制できる。また、嵌合溝83と第2接合端子6a〜6cの間に隙間(クリアランス)を形成することにより、第2接合端子6a〜6cを嵌合溝83に容易に嵌合させることが可能になる。なお、本実施の形態では、第2接合端子6a〜6cの嵌合溝83への嵌合を容易とするために、嵌合溝83の側方の角部にのみ面取り加工を施しているが、嵌合溝83の上下の角部や第2接合端子6a〜6c挿入側の第1絶縁部材8b〜8dの角部に面取り加工あるいは丸め加工を施すようにしてもよい。
また、第1絶縁部材8b〜8dでは、その第2接合端子6a〜6cの挿入側と反対側の2つの連結片81間を連結するように、連結壁85が一体に形成されている。連結壁85は、嵌合溝83の第2接合端子6a〜6cの挿入側と反対側を塞ぐように第1接合端子4a〜4cの挿入方向と平行に設けられ、連結片81の機械的強度を向上させると共に、この連結壁85に第2接合端子6a〜6cの先端を当接させることで、第2接合端子6a〜6cの位置決めおよび過挿入を抑制する役割を果たしている。また、連結壁85は下方に延長されて連結溝82の第2接合端子6a〜6cの挿入側と反対側を覆うように構成されており、連結溝82に連結片81を挿入した際の接触面積を大きくして、絶縁部材8b〜8d同士の連結をより安定させる役割を果たしている。なお、連結壁85は、絶縁部材8a〜8dの間隔を最小積層間隔としたときに、対向する絶縁部材8a〜8cに衝突しない程度の高さに形成される。
さらに、連結壁85は、図14(b)に示すように、両ターミナルハウジング5,7を嵌合させ第1接合端子4a〜4cを挿入した際に、第1接合端子4a〜4cの側方を覆い、各接点間の沿面距離を大きくする役割も果たしている。このような構成は、絶縁部材8b〜8dを小型としコネクタ1全体の小型化を図る場合に特に有効である。なお、本実施の形態では、両ターミナルハウジング5,7を嵌合させた際に、第1接合端子4a〜4cが第2接合端子6a〜6c全体を覆わずに途中まで挿入されるように構成しており、これにより絶縁部材8b〜8dの第1接合端子4a〜4cの挿入側と反対側を介した接点間の沿面距離を大きくしているため、絶縁部材8b〜8dの第1接合端子4a〜4cの挿入側と反対側には連結壁を形成しなかったが、当然ながら、絶縁部材8b〜8dの第1接合端子4a〜4cの挿入側と反対側にさらに連結壁を形成することも可能である。
また、本実施の形態では、連結溝82を挟んで連結壁85と対向するように補助壁86が設けられており、連結溝82に挿入される連結片81を連結壁85と補助壁86で挟み込むことにより、より強固に連結片81を保持できるように構成されている。
本実施の形態では、第1絶縁部材8b〜8dに連結片81を形成し、対向する絶縁部材8a〜8cに連結溝82を形成したが、絶縁部材組立体100において、連結片81と連結溝82の関係を逆にする(絶縁部材8a〜8cに連結片81を形成し、対向する絶縁部材8b〜8dに連結溝82を形成する)ことも当然可能である。ただし、この場合、連結片81に嵌合溝83を形成することができなくなるので、第1絶縁部材8b〜8dに、別途第1接合端子4a〜4cを設ける機構を設けなければならず、第1絶縁部材8b〜8dの構造が複雑になる。
[嵌合検知機構]
次に、本発明の要部である嵌合検知機構について説明する。
コネクタ1は、両ターミナルハウジング5,7の嵌合を検知する嵌合検知機構を備えている。嵌合検知機構は、高圧連動ループ(HVIL)などの電流を遮断する装置の一部を構成するものである。
嵌合検知機構は、第1ターミナルハウジング5と第2ターミナルハウジング7の一方に設けられた第1嵌合検知用端子90と、第1ターミナルハウジング5と第2ターミナルハウジング7の他方に、両ターミナルハウジング5,7の嵌合方向に沿ってスライド可能に設けられた第2嵌合検知用端子91と、カム9aの回転に伴って第2嵌合検知用端子91をスライドさせるように構成され、両ターミナルハウジング5,7を嵌合させカム9aを締結方向に回転させた際に、第1嵌合検知用端子90と第2嵌合検知用端子91とを電気的に接続させるスライド手段92と、を備えている。
本実施の形態では、第1ターミナルハウジング5に第1嵌合検知用端子90を、第2ターミナルハウジング7に第2嵌合検知用端子91とスライド手段92を設けている。
図15に示すように、第1嵌合検知用端子90は、第1嵌合検知用端子ケース93内に収容され保持される。第1嵌合検知用端子ケース93は、第1インナーハウジング10の第1嵌合検知用端子ケース取付穴10cに取り付けられ、これにより、第1嵌合検知用端子90が、第1嵌合検知用端子ケース93、第1インナーハウジング10を介して第1ターミナルハウジング5に固定される。
第1嵌合検知用端子90は、嵌合検知用ケーブル89がかしめ固定されるかしめ部90aと、略角筒状に形成され第2嵌合検知用端子91の先端部が挿入される端子部90bと、かしめ部90aと端子部90bとを連結する連結部90cと、からなる。端子部90bの内部には板ばねが設けられており、この板ばねにより第2嵌合検知用端子91の先端部を端子部90bの内壁に押しつけて接点を保持するようになっている。第1嵌合検知用端子ケース93の先端部には、第2嵌合検知用端子91の先端部を端子部90b内にガイドするガイド穴93aが形成されている。ガイド穴93aの周縁の角部には、第2嵌合検知用端子91の挿入を容易とすべく面取り加工が施されている。
図示省略しているが、第1嵌合検知用端子ケース93内には、2つの第1嵌合検知用端子90が整列して保持され、両第1嵌合検知用端子90には、図示しない嵌合検知装置から延出された嵌合検知用ケーブル89がそれぞれ接続される。
第2嵌合検知用端子91は、第2嵌合検知用端子ケース94内に収容され保持される。第2嵌合検知用端子ケース94は、スライド方向前方(嵌合方向前方)が開口した筒状に形成されている。第2嵌合検知用端子91は、略U字状に形成され、その先端部が開口に臨むように第2嵌合検知用端子ケース94内に固定されている。第2嵌合検知用端子91の先端部の角部には、第1嵌合検知用端子90の端子部90bへの挿入を容易とすべく面取り加工が施されている。
スライド手段92は、第2嵌合検知用端子ケース94に設けられたケース側突起94aと、カム9aと一体に回転するスライドリング95と、を備えている。
スライドリング95は、カム9aと一体に回転するリング部95aと、リング部95aに設けられ、リング部95aを回転させた際にケース側突起94aに干渉して第2嵌合検知用端子ケース94をスライドさせるリング側突起96と、を有している。
リング部95aは、円盤状に形成され、その中央部には、弾性部材15を通す貫通孔95bが形成されている。また、リング部95aの周方向の一部において、その周縁から上方(カム9a側)に突出するように係合壁95cが形成されている。この係合壁95cをカム9aの切欠部9gに係合することにより、カム9aとリング部95aとが一体に回転するように構成される。
リング側突起96は、リング部95aの下面(カム9aと反対側)から下方に突出するように形成される。本実施の形態では、リング側突起96は、リング部95aの周方向に沿って形成された前方突起96aと後方突起96bの2つの突起からなる。
前方突起96aは、下面視でリング部95aの周方向に沿う円弧状に形成された円弧部97aと、円弧部97aの後方突起96bと反対側の端部においてリング部95aの径方向外方に突出する突出部97bと、を有している。円弧部97aや突出部97bの側壁は丸みを帯びた形状に形成される。後方突起96bは、円柱状に形成される。
ケース側突起94aは、第2嵌合検知用端子ケース94の外周面から側方(スライドリング95側)に突出するように設けられる。本実施の形態では、第2嵌合検知用端子ケース94のケース側突起94aよりもスライド方向前方(嵌合方向前方)に、第2嵌合検知用端子ケース94の外周面から側方に突出するようにケース側補助突起94bを形成している。
以下、嵌合検知機構の動作を図17,18を用いて説明する。なお、図17,18では、図1における下方から見たときの第1嵌合検知用端子ケース93、第2嵌合検知用端子ケース94、スライドリング95の位置関係を表している。
図17(a)に示すように、カム9aを締結方向と反対方向に回転させた位置である開放位置においては、前方突起96aの突出部97bによりケース側突起94aがスライド方向後方(図17における上方)に押さえられた状態となっており、第2嵌合検知用端子ケース94のスライド方向前方(図17における下方)への動きが規制されている。
この状態からカム9aを締結方向に回転させると、図17(b)に示すように、スライドリング95が回転し、前方突起96aの突出部97bがケース側補助突起94bに接触する。前方突起96aがケース側補助突起94bに接触するまでは、第2嵌合検知用端子ケース94のスライド方向前方への押し出しは行われず、カム9aの回転に伴いボルト9bが押し下げられ、弾性部材15を介して各接点に押圧力が付与されることになる。
さらにカム9aを締結方向に回転させると、図17(c)に示すように、前方突起96aの突出部97bがケース側補助突起94bに干渉して、スライドリング95の回転に伴い、第2嵌合検知用端子ケース94をスライド方向前方(第1嵌合検知用端子90側)にスライドさせる。
さらにカム9aを締結方向に回転させると、図17(d)に示すように、前方突起96aの突出部97bがケース側補助突起94bから離脱すると共に、後方突起96bがケース側突起94aに接触する。このとき前方突起96aが離脱し易いように、ケース側補助突起94bの先端部におけるスライド方向後方(第1嵌合検知用端子90と反対側)の角部には、丸め加工が施されている。
さらにカム9aを締結方向に回転させると、図17(e)に示すように、後方突起96bがケース側突起94aに干渉して、スライドリング95の回転に伴い、第2嵌合検知用端子ケース94をスライド方向前方(第1嵌合検知用端子90側)にスライドさせる。
これにより、第1嵌合検知用端子ケース93の先端部が第2嵌合検知用端子ケース94内に押し込まれると共に、第2嵌合検知用端子91の先端部が第1嵌合検知用端子90の端子部90b内に押し込まれ、第1嵌合検知用端子90と第2嵌合検知用端子91が電気的に接続される。
本実施の形態においては、U字状に形成された第2嵌合検知用端子91の両方の先端部が、第1嵌合検知用端子ケース93に収容された2つの第1嵌合検知用端子90の端子部90b内にそれぞれ押し込まれ、第2嵌合検知用端子91を介して、両第1嵌合検知用端子90が電気的に接続されることになる。その結果、嵌合検知装置から嵌合検知用ケーブル89、第1嵌合検知用端子90、第2嵌合検知用端子91、第1嵌合検知用端子90、嵌合検知用ケーブル89を介して嵌合検知装置に至るループ回路が形成される。嵌合検知装置では、例えば、嵌合検知装置から延出される両嵌合検知用ケーブル89の端部に電圧を印加しておき、ループ回路を流れる電流が予め設定した閾値以上であるか否かにより、両ターミナルハウジング5,7が嵌合しているか否かを判断するよう構成される。
図17(e)に示すように、カム9aを締結方向に回転させた位置である締結位置においては、ケース側突起94aが前方突起96aと後方突起96bの間に挟み込まれ、第2嵌合検知用端子ケース94のスライド方向への動きが規制された状態となっている。
このように、本実施の形態においては、スライド手段92は、両ターミナルハウジング5,7を嵌合させカム9aを締結方向に回転させた際に、各接点に押圧力を付与した後、第1嵌合検知用端子90と第2嵌合検知用端子91とを電気的に接続させるよう構成されている。これにより、確実に各接点へ押圧力を付与してから、各接点に電流を流すことを許容するよう構成することが可能となり、安全性をより向上できる。
なお、第2嵌合検知用端子ケース94を第1嵌合検知用端子90側にスライドさせるという観点からは、最低限、後方突起96bとケース側突起94aのみを備えていればよいが、この場合、スライドリング95を大型としなければ、第2嵌合検知用端子ケース94のスライド方向への移動距離を確保することができない。本実施の形態のように、前方突起96aがケース側補助突起94bに干渉して第2嵌合検知用端子ケース94を第1嵌合検知用端子90側にスライドさせ、その後、後方突起96bがケース側突起94aに干渉して第2嵌合検知用端子ケース94を第1嵌合検知用端子90側にスライドさせるように構成することで、スライドリング95を小型としても第2嵌合検知用端子ケース94のスライド方向への移動距離を確保することが可能となり、コネクタ1全体の小型化が可能になる。
図18(a)に示すように、カム9aを締結位置から締結方向と反対方向に回転させると、前方突起96aの円弧部97aがケース側突起94aに接触し、さらにカム9aを回転させると、図18(b)に示すように、前方突起96aの円弧部97aがケース側突起94aに干渉して、スライドリング95の回転に伴い、第2嵌合検知用端子ケース94を第1嵌合検知用端子90と反対側にスライドさせる。図18(b)の状態においては、第1嵌合検知用端子90と第2嵌合検知用端子91の電気的な接続は解除されているが、カム9aは締結位置に至っていないため、各接点には押圧力が付与されたままとなっている。
さらにカム9aを締結方向と反対方向に回転させると、図18(c)に示すように、前方突起96aの円弧部97aがケース側突起94aから離脱すると共に、前方突起96aの突出部97bがケース側突起94aに接触した状態となり、開放位置において、第2嵌合検知用端子ケース94のスライド方向前方への動きが規制された状態となる。なお、前方突起96aが離脱し易いように、ケース側突起94aの先端部におけるスライド方向前方(第1嵌合検知用端子90側)の角部には、丸め加工が施されている。
このように、本実施の形態では、スライド手段92は、カム9aを締結位置から締結方向と反対方向に回転させた際には、第1嵌合検知用端子90と第2嵌合検知用端子91とを電気的に遮断した後に、各接点への押圧力の付与を解除するように構成されている。これにより、各接点に流れる電流を確実に遮断してから各接点への押圧力の付与を解除して両ターミナルハウジング5,6を離脱可能な状態とすることが可能となり、安全性をより向上できる。
[本実施の形態の作用]
本実施の形態の作用を説明する。
本実施の形態に係るコネクタ1では、カム9aを締結方向に回転させることで各接点を押圧し、複数の第1接合端子4a〜4c及び複数の第2接合端子6a〜6cを各接点にて一括して固定し電気的に接続させる接続部材9と、第1ターミナルハウジング5と第2ターミナルハウジング7の一方に設けられた第1嵌合検知用端子90と、第1ターミナルハウジング5と第2ターミナルハウジング7の他方に、両ターミナルハウジング5,7の嵌合方向に沿ってスライド可能に設けられた第2嵌合検知用端子91と、カム9aの回転に伴って第2嵌合検知用端子91をスライドさせるように構成され、両ターミナルハウジング5,7を嵌合させカム9aを締結方向に回転させた際に、第1嵌合検知用端子90と第2嵌合検知用端子91とを電気的に接続させるスライド手段92と、を備えている。
このように構成することで、カム9aを回転させるという1つの作業で、各接点に押圧力を付与することと、第1嵌合検知用端子90と第2嵌合検知用端子91とを電気的に接続させることが可能となり、両コネクタ部2,3を接続する際の接続作業の作業性を大幅に向上させることが可能になる。
また、コネクタ1では、各接点を固定した状態で両嵌合検知用端子90,91を電気的に接続するため、従来のように両嵌合検知用端子90,91を電気的に接続したまま両ターミナルハウジングを離脱して火花を発生させてしまうといったおそれがなくなり、接続作業時の安全性も向上できる。
つまり、コネクタ1によれば、接続作業の作業性や安全性を低下させることなくターミナルハウジング5,7の嵌合検知が可能な積層構造型のコネクタ1を実現できる。
また、コネクタ1では、複数の絶縁部材8a〜8dをそれぞれ連結して構成され、各絶縁部材8a〜8d同士の積層構造の積層方向に対して垂直な方向の動きを規制する絶縁部材規制手段101を有する絶縁部材組立体100を備えている。これにより、ケーブル61a〜61cに力(例えば、ケーブル61a〜61cを引っ張る力や、ケーブル61a〜61cを第1コネクタ部2側に押し込む力)が加わった場合であっても、絶縁部材8a〜8dの位置ずれを低減することが可能となり、その結果、両コネクタ部2,3を接続する際に第2接合端子6a〜6cが絶縁部材8a〜8dに突き当たってしまうことを抑制でき、嵌合動作を円滑に行うことが可能となる。また、コネクタ1は、従来のコネクタのように保持用治具を用いていないため、小型である。
さらに、コネクタ1では、第1接合端子4a〜4cの長さ方向と第2接合端子6a〜6cの長さ方向とが交差する方向に両ターミナルハウジング5,7を嵌合させるべく、絶縁部材組立体100に第1端子挿入孔102と第2端子挿入孔103を形成しているため、積層構造型でありつつも、機器に直結した場合に機器からの突出長を小さくでき、配線スペースを有効利用することが可能になる。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
例えば、上記実施の形態においては、第1嵌合検知用端子90をメス端子、第2嵌合検知用端子91をオス端子とした場合を説明したが、オスメスの関係は逆でもよい。
また、上記実施の形態においては、前方突起96aを円弧部97aと突出部97bを一体とした形状に形成したが、これらを分割して2つの突起で前方突起96aを構成してもよい。同様に、後方突起96b、ケース側突起94a、ケース側補助突起94b等の形状は、適宜変更可能である。
上記実施の形態においては、三相交流の電源ラインを想定していたが、本発明の技術思想によれば、例えば、自動車用のコネクタであって、モータ、インバータ間用の三相交流の電源ライン、エアコン用の直流二相の電源ラインなど異なる用途のラインを一括して接続するような構成としても良い。このように構成することにより、1つのコネクタで複数の用途の電源ラインを一括して接続することができるため、用途毎に異なるコネクタを用意する必要がなく、省スペース化や低コスト化などに貢献することができる。
また、第1接合端子4a〜4cのそれぞれと第2接合端子6a〜6cのそれぞれの端子表面をローレット加工などにより荒らし、摩擦力を大きくさせ、端子同士を動きづらくして接点のそれぞれでの固定を強固にするようにしても良い。
また、上記実施の形態においては、第1コネクタ部2を機器側に取り付ける場合を説明したが、第1接合端子4a〜4cをケーブルの端部に設けられた端子とし、ケーブル同士を接続するように構成することも可能である。
さらに、上記実施の形態では、第1インナーハウジング10の貫通孔10aに第1接合端子4a〜4cを挿入することで、第1接合端子4a〜4cを第1インナーハウジング10に固定したが、インサート成型により第1接合端子4a〜4cと一体に第1インナーハウジング10を形成してもよい。
また、上記実施の形態では、嵌合溝83に第2接合端子6a〜6cを嵌合することで、第1絶縁部材8b〜8dを第2接合端子6a〜6cに設ける場合を説明したが、インサート成型により第1絶縁部材8b〜8dを第2接合端子6a〜6cに固定したり、あるいは、第1絶縁部材8b〜8dに第2接合端子6a〜6cを圧入して固定するようにしてもよい。
また、上記実施の形態においては、ケーブル61a〜61cとして可撓性に優れたケーブルを用いていたが、リジッドなケーブルでも良い。
また、上記実施の形態においては、コネクタの使用状態における向きは、接続部材9が略水平状態であっても、略垂直状態であっても良い。即ち、本実施の形態におけるコネクタの使用条件に、使用状態における向きは要件としない。
また、上記実施の形態においては、接続部材9の一部である弾性部材15を介して接続部材9のボルト9bによって隣接する第2絶縁部材8aを押圧しているが、弾性部材15を介さずに直接、ボルト9bによって隣接する第2絶縁部材8aを押圧しても良い。
また、上記実施の形態においては、第1ターミナルハウジング5の一側のみに接続部材9を設ける場合を説明したが、第1ターミナルハウジング5の両側に接続部材9を設け、両側に設けられた両接続部材9により各接点に押圧力を付与するように構成してもよい。
また、第1ターミナルハウジング5は、例えばインバータ等の機器の筐体の一部であってもよい。つまり、コネクタ1に第1コネクタ部2が含まれない構成であってもよい。この場合、ケーブル61a〜61cの端部に第2コネクタ部3を設けたものが、本発明のワイヤハーネスとなる。
上記実施の形態では、第1ターミナルハウジング5側(筒状体20の溝22)にパッキンを設けていたが、第2ターミナルハウジング7側にパッキンを設けてもよい。この場合、第2ターミナルハウジング7の内周にパッキンを設けるための溝を形成することが好ましい。