このような、従来の枚葉印刷機では、そのデリバリー部にパウダースプレー散布装置(パウダー散布部)が設けられているため、これをインクジェット記録装置に適用すると、パウダー散布部の設置スペース分、インクジェット記録装置が記録媒体の送り方向に長く構成する必要がある。また、記録媒体の排出系が長く、且つ複雑になる。
本発明は、装置の大型化を抑制しつつ、単純な構造で記録媒体に対しブロッキング防止用のパウダーを効率良く散布することができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法を提供することを課題としている。
本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体に対し、インクジェットヘッドを相対的に移動させながら印刷を実施する印刷部と、印刷部に組み込まれ、印刷部よる記録媒体の印刷済み部分にブロッキング防止用のパウダーを散布するパウダー散布部と、を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、パウダー散布部を印刷部に組み込むようにしているため、印刷部による記録媒体への印刷動作に同期して、或いは連動して、記録媒体の印刷済み部分にブロッキング防止用のパウダーを散布することができる。また、パウダー散布部を印刷部に組み込むことで、パウダー散布部をスペース効率良く配置することができる。したがって、装置の大型化を抑制しつつ、単純な構造で、記録媒体に対しブロッキング防止用のパウダーを効率良く散布することができる。これにより、印刷後において、記録媒体を複数枚積層し或いはロール状に巻回することがあっても、パウダーにより裏移り(ブロッキング)を有効に防止することができる。
この場合、印刷部は、インクジェットヘッドをキャリッジに搭載したキャリッジユニットと、インクジェットヘッドの駆動に同期して、キャリッジユニットを主走査方向に移動させる走査機構部と、キャリッジユニットに対し、記録媒体を副走査方向に相対的に改行送りする改行機構部と、を有し、パウダー散布部は、キャリッジに搭載されていることが好ましい。
この構成によれば、走査機構部によりキャリッジユニットを主走査方向に移動させながら、インクジェットヘッドを駆動することにより、記録媒体への1パス分の印刷が行われ、この1パス分の印刷と次の1パス分の印刷との間に、改行機構部により記録媒体が改行送りされる。そして、これを繰り返すことにより記録媒体への一連の印刷が行われる。この場合、パウダー散布部がキャリッジに搭載されているため、主走査方向に移動するインクジェットヘッドの駆動に対応してパウダー散布部を駆動すれば、すなわちインクジェットヘッドによる印刷動作に対し、後追いでパウダー散布部による散布動作を実施すれば、パウダーを記録媒体の印刷済み部分に効率良く散布することができる。
この場合、パウダー散布部は、パウダーをエアーに混入して吹き付ける複数の散布ノズルから成る散布ノズル列を有し、散布ノズル列は、副走査方向に延在し、副走査方向の改行幅に対応する長さを有していることが好ましい。
この構成によれば、記録媒体にパウダーを均一に且つ無駄無く散布することができると共に、散布ノズル列を構成する複数の散布ノズルの選択的な制御を行う必要がない。したがって、印刷動作を利用して、パウダーを記録媒体の印刷済み部分に効率良く散布することができる。
この場合、パウダー散布部は、散布ノズル列がインクジェットヘッドに対し副走査方向に改行幅の単位で位置ズレするように、前記キャリッジに搭載されていることが好ましい。
この構成によれば、インクジェットヘッドに対しパウダー散布部を、副走査方向に適宜、離して配置することができるため、散布したパウダーのインクジェットヘッド等への影響(ノズル詰まりやパウダー上へのインク吐出)を極力排除することができる。
同様に、パウダー散布部は、散布ノズル列がインクジェットヘッドに対し主走査方向に位置ズレするように、キャリッジに搭載されていることが好ましい。
この構成によれば、印刷動作の直後に頒布動作を実施することができると共に、インクジェットヘッドに対しパウダー散布部を、主走査方向において適宜、離して配置することができるため、散布したパウダーのインクジェットヘッド等への影響を極力排除することができる。
この場合、インクジェットヘッドは、光硬化インクを吐出し、キャリッジには、前記主走査方向においてインクジェットヘッドに隣接し、吐出直後の光硬化インクを硬化させる光照射ユニットが更に搭載され、パウダー散布部は、キャリッジにおいて光照射ユニットの外側に配設されていることが好ましい。
この構成によれば、印刷動作の直後に光硬化インクの硬化動作を実施することができ、さらにその直後にパウダーの頒布動作を実施することができる。また、インクジェットヘッドに対しパウダー散布部を、主走査方向に十分に離して配置することができる。したがって、パウダーを記録媒体の印刷済み部分に効率良く散布することができる。なお、光硬化インクは、紫外線硬化型のものが好ましいが、赤外線硬化型や可視光硬化型等であってもよい。
一方、印刷部は、インクジェットヘッドをキャリッジに搭載したキャリッジユニットと、インクジェットヘッドの駆動に同期して、キャリッジユニットを主走査方向に移動させる走査機構部と、キャリッジユニットに対し、記録媒体を副走査方向に相対的に改行送りする改行機構部と、を有し、パウダー散布部は、改行機構部に組み込まれていることが好ましい。
この構成によれば、走査機構部によりキャリッジユニットを主走査方向に移動させながら、インクジェットヘッドを駆動することにより、記録媒体への1パス分の印刷が行われ、この1パス分の印刷と次の1パス分の印刷との間に、改行機構部により記録媒体が改行送りされる。そして、これを繰り返すことにより記録媒体への一連の印刷が行われる。この場合、パウダー散布部が改行機構部に組み込まれているため、記録媒体の改行送りに対応してパウダー散布部を駆動すれば、すなわちインクジェットヘッドによる印刷動作に対し、後追いでパウダー散布部による散布動作を実施すれば、パウダーを記録媒体の印刷済み部分に効率良く散布することができる。
この場合、改行機構部は、記録媒体がセットされるセットステージと、セットステージを改行移動させる移動機構部と、を有し、パウダー散布部は、移動機構部においてセットステージを跨ぐように配設されていることが好ましい。
この構成によれば、改行送りの単位で、パウダーを記録媒体の印刷済み部分に効率良く散布することができると共に、パウダー散布部をインクジェットヘッドから十分に離して配置することができる。
本発明のインクジェット記録装置の制御方法は、記録媒体に対し、インクジェットヘッドを相対的に移動させながら印刷を実施する印刷機構部と、記録媒体に対し、ブロッキング防止用のパウダーを散布する散布ノズルを相対的に移動させながらパウダーの散布を実施するパウダー散布部と、備えたインクジェット記録装置の制御方法であって、印刷機構部による記録媒体への印刷動作に後追いで、記録媒体の印刷済み部分に対し、パウダー散布部によるパウダーの散布動作を実施することを特徴とする。
この構成によれば、印刷機構部による記録媒体への印刷動作に後追いで、記録媒体の印刷済み部分に対し、パウダー散布部によるパウダーの散布動作を実施するようにしているため、装置の大型化を抑制しつつ、単純な構造で記録媒体に対しブロッキング防止用のパウダーを効率良く散布することができる。これにより、印刷後において、記録媒体を複数枚積層し或いはロール状に巻回することがあっても、パウダーにより裏移り(ブロッキング)を有効に防止することができる。
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置およびその制御方法について説明する。このインクジェット記録装置は、いわゆるリール・ツー・リール形式で除給材される薄いフィルム状の記録媒体に対して、例えば、紫外線硬化インク(UVインク)をインクジェットヘッドにより吐出することで、所望の画像等を印刷するものである。また、このインクジェット記録装置は、印刷後の記録媒体が巻き取られることを考慮し、記録媒体の印刷済み部分に、ブロッキング(裏移り)防止用のパウダーを散布する機能を有している。なお、以下の説明では、記録媒体の送り方向をX軸方向とし、X軸方向に直交する方向をY軸方向して規定する。
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、記録媒体Wに印刷を実施する記録装置本体2(印刷部)と、ロール状に巻回した長尺の記録媒体Wを繰り出して記録装置本体2に送り込む繰出装置3と、記録装置本体2から送り出された印刷済みの記録媒体Wを巻き取る巻取装置4と、記録装置本体2に組み込まれ、記録媒体Wにブロッキング防止用のパウダーを散布するパウダー散布ユニット5(パウダー散布部:図2参照)と、を備えている。
記録装置本体2は、機台11と、機台11上に配設され、給材された記録媒体Wを吸着セットするセットステージ12と、X軸方向に延在し、セットステージ12を介して記録媒体WをX軸方向に間欠送りするX軸テーブル13(移動機構部)と、X軸テーブル13を跨ぐようにY軸方向に架け渡されたY軸テーブル14(走査機構部)と、インクを吐出して記録媒体Wに描画を行う複数のインクジェットヘッド16を有し、Y軸テーブル14に移動自在に搭載されたキャリッジユニット15と、を備えている。詳細は後述するが、上記のパウダー散布ユニット5は、このキャリッジユニット15に搭載されている。なお、セットステージ12とX軸テーブル13とにより、請求項に言う「改行機構部」が構成されている。
また、記録装置本体2は、各インクジェットヘッド16にUVインクを供給するためのインク供給装置(図示省略)と、各インクジェットヘッド16の機能の保守および回復を図るための保守装置17と、インクジェット記録装置1を統括制御する制御部18(図3参照)と、を備えている。保守装置17は、X軸テーブル13およびY軸テーブル14が交差する印刷領域からY軸方向に外れた保守領域に配設されており、保守領域に臨ませたインクジェットヘッド16のインク吸引やワイピング等の保守を行う。
このインクジェット記録装置1では、繰出装置3により繰出された記録媒体Wをセットステージ12で吸着した後、X軸テーブル13によりセットステージ12を介して記録媒体WをX軸方向に改行送り(副走査)すると共に、吸着保持された記録媒体Wに対し、Y軸テーブル14によりキャリッジユニット15を往復動(主走査)させながらインクジェットヘッド16からUVインクを吐出して印刷を行う。なお、印刷処理に供される記録媒体Wは、連続的に供給可能なロール状のものに限定されるものではなく、枚葉の記録媒体Wを用いてもよい。
繰出装置3は、記録媒体Wを巻回した繰出リール21を繰り出し回転させる繰出モーター22と、繰り出された記録媒体Wを上下方向に「V」字状に屈曲させると共に、記録媒体Wに軽いバックテンションを付与する繰出側バッファー機構23と、を備えている。そして、記録装置本体2に対し繰出装置3は、記録媒体Wの送り方向(X軸方向)上流側に配設されている。
巻取装置4は、記録媒体Wを巻き取る巻取リール24を巻き取り回転させる巻取モーター25と、巻き取られた記録媒体Wを上下方向に「V」字状に屈曲させると共に、記録媒体Wに軽いフォワードテンションを付与する巻取側バッファー機構26と、を備えている。そして、記録装置本体2に対し巻取装置4は、記録媒体Wの送り方向(X軸方向)下流側に配設されている。
セットステージ12は、その表面に複数形成された小孔(図示省略)を介して、繰出装置3から送られてきた記録媒体Wを吸着する。セットステージ12の搬送(X軸)方向上流端部および下流端部には、送込ローラー28と送出ローラー29とが、それぞれ添設されている。送込ローラー28および送出ローラー29は、それぞれ昇降可能に設けられた自由回転するニップローラーであり、X軸方向に並んで配設され、記録媒体Wを挟み込んで、セットステージ12の上面に記録媒体Wを臨ませる。そして、セットステージ12は、記録媒体Wを吸着した状態で、X軸テーブル13によりX軸方向(上流側から下流側)に改行送り(間欠送り)される。
X軸テーブル13は、機台11上に配設され、X軸方向に延在する一対のX軸ガイドレール31と、セットステージ12をX軸ガイドレール31に沿ってスライド自在に支持する複数のX軸スライダー32と、セットステージ12をX軸ガイドレール31に沿って移動させるモーター駆動のX軸移動機構33と、を有している。X軸移動機構33は、例えばリニアーモーター、モーター駆動のリードねじ機構、モーター駆動のベルト伝動機構等で構成されている。このように構成されたX軸テーブル13は、キャリッジユニット15の往動(または復動)時には停止し、次の復動(または往動)までに、印刷幅(行)分、記録媒体WをX軸方向の下流側に送る(改行送り)。
Y軸テーブル14は、機台11をY軸方向に跨ぐように架け渡された一対のY軸ガイドレール35と、キャリッジユニット15を吊設したブリッジプレート36と、ブリッジプレート36をY軸方向にスライド自在に支持する複数のY軸スライダー37と、ブリッジプレート36を介して、キャリッジユニット15をY軸ガイドレール35に沿って移動させるモーター駆動のY軸移動機構38(走査機構部)と、を有している。Y軸移動機構38は、例えばリニアーモーター、モーター駆動のリードねじ機構、モーター駆動のベルト伝動機構等で構成されている。このように構成されたY軸テーブル14は、キャリッジユニット15を介して印刷時に各インクジェットヘッド16をY軸方向に往復動させるほか、各インクジェットヘッド16を保守装置17に臨ませる。
図2は、キャリッジユニット15の平面模式図である。同図に示すように、 キャリッジユニット15は、ブリッジプレート36に垂設した垂設フレーム41と、垂設フレーム41に下側から支持されたキャリッジ42と、サブプレート43を介して、キャリッジ42に搭載した複数個のインクジェットヘッド16と、を有している。また、キャリッジ42には、Y軸方向両端部に位置して、一対の紫外線照射ユニット44(光照射ユニット)が搭載され、且つ一方の紫外線照射ユニット44に隣接して、上記のパウダー散布ユニット5が搭載されている。
各紫外線照射ユニット44は、例えば、複数の紫外線発光ダイオードを列設したダイオードアレイ45を有し、このダイオードアレイ45がX軸方向に延在するように配設されている。一対の紫外線照射ユニット44は、サブプレート43(インクジェットヘッド16)を挟むようにその両側に配設されており、サブプレート43と略同一長に形成されると共に、X軸方向において略同一に配設されている。主走査によりインクジェットヘッド16が駆動し、記録媒体W上にUVインクが吐出・着弾する(印刷)と、これに後追いするように吐出・着弾したUVインクに、紫外線照射ユニット44から紫外線が照射される。これにより、吐出・着弾したUVインクは硬化し、記録媒体W上に定着する。なお、主走査の往復動の両方で印刷を実施する場合には、インクジェットヘッド16に対し後続となる側の紫外線照射ユニット44を点灯する。もっとも、印刷の形態にかかわらず、両紫外線照射ユニット44を常時点灯とするようにしてもよい。
パウダー散布ユニット5は、例えば、パウダーを貯留するパウダータンクと、パウダータンクから供給されたパウダーとエアーとを混合するミキシング室と、ミキシング室に連なる分配室と(いずれも図示省略)、分配室に連なる複数の散布ノズル47と、を有している。ミキシング室には、図外のブロワーから圧縮エアーが供給され、パウダーは、この圧縮エアーに混入された状態で複数の散布ノズル47から散布される。複数の散布ノズル47は、直線状に並んで散布ノズル列48を構成しており、この散布ノズル列48がX軸方向に延在するように配設されている。なお、パウダー散布ユニット5の分配室および散布ノズル47のみをキャリッジユニット15に組み込み、ミキシング室と分配室とをチューブで接続するようにしてもよい。
また、散布ノズル列48の列長は、Y軸テーブル14による記録媒体Wの改行幅に対応している。そして、パウダー散布ユニット5は、キャリッジ42上において、インクジェットヘッド16に対し、X軸方向およびY軸方向に位置ズレして配設されている。具体的には、パウダー散布ユニット5の散布ノズル列48は、後述するインクジェットヘッド16のノズル列49に対し、改行幅分、X軸方向に離間し、且つY軸方向において、一方の紫外線照射ユニット44と略同位置に配設されている。これにより、詳細は後述するが、印刷および紫外線照射が3行目まで進んだときに、1行目においてパウダーの散布が開始されることになる。
一方、キャリッジ42(サブプレート43)に搭載された複数個(実施形態のものは6個)のインクジェットヘッド16は、千鳥状に且つ2列となる所定のパターンで配置されている。なお、インクジェットヘッド16の個数や配置パターンは、任意である。
各インクジェットヘッド16は、圧電素子により吐出駆動されるものであり、X軸方向に延在する色別複数のノズル列49を有している。色別複数のノズル列49は、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、オレンジ(Or)、グリーン(Gr)、ライトマゼンタ(LM)、ライトシアン(LC)、ホワイト(W)、クリアー(CL)等のUVインクを吐出する。この場合、各色のノズル列49がX軸方向に連なって、各色の1の印刷ラインを構成するように、複数個のインクジェットヘッド16が千鳥状に配設されている。
次に、図3を参照して、記録装置本体2の制御系について簡単に説明する。この制御系は、基本的に、インクジェットヘッド16、X軸テーブル13、Y軸テーブル14、保守装置17、紫外線照射ユニット44、パウダー散布ユニット5等を駆動するための各種ドライバーを有する駆動部19と、駆動部19を含めインクジェット記録装置1全体を統括制御する制御部18と、を備えている。
駆動部19は、インクジェットヘッド16の吐出駆動を制御するヘッドドライバー51と、X軸テーブル13およびY軸テーブル14の駆動を制御する印刷移動用ドライバー52と、保守装置17の駆動を制御する保守用ドライバー53と、紫外線照射ユニット44の駆動を制御する照射用ドライバー54と、パウダー散布ユニット5の駆動を制御する散布用ドライバー55と、を有している。
制御部18は、CPU61と、ROM62と、RAM63と、P−CON64とを有し、これらは互いにバス65を介して接続されている。ROM62は、CPU61で処理する制御プログラム等を記憶する制御プログラム領域と、印刷処理、保守処理、紫外線点灯処理、パウダー散布処理等を行うための制御データを記憶する制御データ領域と、を有している。
RAM63には、各種レジスタ群の他、記録媒体WにUVインクの吐出を行うための印刷データを記憶する印刷データ記憶部と、記録媒体Wおよびインクジェットヘッド16、紫外線照射ユニット44、パウダー散布ユニット5等の位置データを記憶する位置データ記憶部等の各種記憶部を有し、制御処理のための各種作業領域として使用される。
P−CON64には、駆動部19の各種ドライバーが接続されており、CPU61の機能を補うと共に、周辺回路とのインターフェース信号を取り扱うための論理回路が組み込まれている。
そして、CPU61は、ROM62内の制御プログラムに従って、P−CON64を介して各種検出信号、各種指令、各種データ等を入力し、RAM63内の各種データ等を処理した後、P−CON64を介して駆動部19等に各種の制御信号を出力することにより、記録装置本体2の全体を制御している。例えば、CPU61は、インクジェットヘッド16、X軸テーブル13およびY軸テーブル14を制御して、所定のインク吐出条件や所定の移動条件で記録媒体Wに印刷を実施すると共に、記録媒体Wの印刷済み部分に紫外線照射およびパウダー散布を実施する。
ここで、図4を参照して、上記の制御部18による記録装置本体2の制御方法について、簡単な例を挙げて説明する。この例では、6個(複数個)のインクジェットヘッド16により構成される各色の1の印刷ラインは、改行幅の3倍の長さを有し(厳密には、改行幅の3倍マイナス3ノズルピッチの長さ)、パウダー散布ユニット5の散布ノズル列48は、改行幅と同じ長さを有し(厳密には、改行幅マイナス1ノズルピッチの長さ)、且つ各色の1の印刷ラインに対しX軸方向に改行幅分、離間しているものとする。したがって、1行目(1パス)の印刷は、記録媒体Wの送り方向上流側の2つのインクジェットヘッド16の駆動により開始し、3回(3パス)の重ね印刷により印刷画像が完成するものとする。なお、一対の紫外線照射ユニット44は、印刷動作時において常時点灯とする。
この制御方法では、先ず上流側の2つのインクジェットヘッド16の主走査により、1行目の印刷を実施する(同図(a))。次に、改行送り(副走査)を実施した後、上流側の2つのインクジェットヘッド16による2行目の印刷と、中間の2つのインクジェットヘッド16による1行目の重ね印刷(2回目)と、を実施する(同図(b))。次に、改行送りを実施した後、上流側の2つのインクジェットヘッド16による3行目の印刷と、中間の2つのインクジェットヘッド16による2行目の重ね印刷(2回目)と、下流側の2つのインクジェットヘッド16による1行目の重ね印刷(3回目)と、を実施する(同図(c))。ここで、3回の重ね印刷が実施された1行目の印刷画像が完成する。なお、この例では、記録媒体Wの印刷領域を3行分としている。
続いて、改行送りを実施した後、中間の2つのインクジェットヘッド16による3行目の重ね印刷(2回目)と、下流側の2つのインクジェットヘッド16による2行目の重ね印刷(3回目)と、を実施する(同図(d))。ここで、1行目に加え2行目の印刷画像が完成する。次に、改行送りを実施した後、下流側の2つのインクジェットヘッド16による3行目の重ね印刷(3回目)と、パウダー散布ユニット5による1行目のパウダー散布が実施される(同図(e))。ここで、3行分の印刷画像が完成すると共にパウダーの散布が開始される。次に、改行送りを実施した後、パウダー散布ユニット5による2行目のパウダー散布が実施され(同図(f))、さらに改行送りの後、3行目のパウダー散布が実施される(同図(g))。
このようにして、6個(複数個)のインクジェットヘッド16による印刷画像の印刷と、パウダー散布ユニット5による印刷済み部分へのパウダーの散布とが行われる。なお、改行送りを挟んで、キャリッジユニット15の往復動の両主走査で印刷およびパウダー散布を実施するようにしてもよい。
本実施形態では、パウダー散布ユニット5の少なくとも分配室および複数の散布ノズル47をキャリッジユニット15に搭載するようにしている。このため、印刷動作における主走査および副操作を利用して、且つ印刷動作に後追いで、パウダーの散布を行うことができる。したがって、パウダー散布ユニット5をスペース効率良く配置することができると共に、簡単な構造でパウダーの散布を効率良く行うことができる。しかも、キャリッジユニット15上において、パウダー散布ユニット5とインクジェットヘッド16とを可能な限り離して配置することができ、パウダー散布の印刷への悪影響を極力排除することができる。なお、インクジェットヘッド16の個数は任意であり、また各色の1の印刷ラインとパウダー散布ユニット5(散布ノズル列48)との離間寸法は、改行幅の整数倍であればよい。
次に、図5を参照して、記録装置本体2の第2実施形態について説明する。この実施形態では、パウダー散布ユニット5が、複数のインクジェットヘッド16に対しX軸方向においてのみ位置ズレして、キャリッジ42に搭載されている。上述のように、キャリッジユニット15は、主体を為すキャリッジ42に、複数個のインクジェットヘッド16と、一対の紫外線照射ユニット44が搭載されている。そして、パウダー散布ユニット5は、一方の紫外線照射ユニット44の外側に配設されている。より具体的には、パウダー散布ユニット5は、X軸方向において、X軸テーブル13から遠い方の一方の紫外線照射ユニット44の外側に隣接して配設され、Y軸方向において、下流側の2つのインクジェットヘッド16と同位置に配設されている。すなわち、下流側の2つのインクジェットヘッド16のノズル列49により構成される部分印刷ラインと、パウダー散布ユニット5の散布ノズル列48とが、Y軸方向において同位置に配設されている。
この場合の制御方法では、上記の図4(c)における、下流側の2つのインクジェットヘッド16による1行目の重ね印刷(3回目)の際に、これに後追で、パウダー散布ユニット5による1行目へのパウダー散布が行われる。具体的には、キャリッジユニット15のY軸方向への移動(主走査)により、下流側の2つのインクジェットヘッド16、一方の紫外線照射ユニット44、パウダー散布ユニット5に順で記録媒体Wに臨み、記録媒体Wに1行目の対し、印刷動作に後追いで紫外線照射が実施され、紫外線照射に後追いでパウダー散布が実施される。すなわち、記録媒体Wに対し、UVインク吐出が行われ、その直後にUVインクの硬化・定着が行われ、更にその直後に硬化・定着した印刷部分にパウダーの散布が行われる。
同様に、図4(d)における、下流側の2つのインクジェットヘッド16による2行目の重ね印刷(3回目)の際に、これに後追でパウダー散布ユニット5による2行目へのパウダー散布が行われる。さらに、図4(e)における、下流側の2つのインクジェットヘッド16による3行目の重ね印刷(3回目)の際に、これに後追で3行目へのパウダー散布が行われ、一連の印刷およびパウダー散布が完了する。
このような構成においても、パウダー散布ユニット5をキャリッジユニット15に搭載するようにしているため、印刷動作における主走査および副操作を利用して、且つ印刷動作に後追いで、パウダーの散布を行うことができる。したがって、パウダー散布ユニット5をスペース効率良く配置することができると共に、簡単な構造でパウダーの散布を効率良く行うことができる。また、キャリッジユニット15上において、パウダー散布ユニット5とインクジェットヘッド16とを可能な限り離して配置することができ、パウダー散布の印刷への悪影響を極力排除することができる。
なお、複数のインクジェットヘッド16のノズル列49により構成される印刷ラインに対し、パウダー散布ユニット5の散布ノズル列48を同長とし、且つY軸方向において同位置に配設するようにしてもよい。ただし、この場合には、1の印刷ラインの長さを改行幅とし、重ね印刷は行わない。また、キャリッジユニット15の荷搬重量を軽減すべく、パウダー散布ユニット5は、その分配室および複数の散布ノズル47のみ、キャリッジユニット15に搭載するようにする。
次に、図6を参照して、記録装置本体2の第3実施形態について説明する。この実施形態では、パウダー散布ユニット5が、X軸テーブル13に組み込まれている。具体的には、パウダー散布ユニット5は、X軸テーブル13およびY軸テーブル14が交差する印刷領域から、記録媒体Wの送り方向下流側に僅かに外れた位置において、セットステージ12を跨ぐように配設されている。この場合、パウダー散布ユニット5の散布ノズル列48は、セットステージ12の幅に対応している。すなわち、散布ノズル列48の列長は、セットステージ12にセットされる最大幅の記録媒体Wの幅(印刷可能領域)に対応している。
この実施形態では、上記の実施形態と同様に、印刷ラインの1/3の改行幅で重ね印刷を行う場合の他、印刷ラインの改行幅で印刷を行うことが可能である。いずれの印刷方法であっても、この実施形態では、改行送り(副走査)の際にパウダー散布ユニット5によるパウダー散布が行われる。上記の制御部18による実際の制御動作では、X軸テーブル13により記録媒体Wがパウダー散布ユニット5(散布ノズル列48)の直下を通過する間において、その改行送りに同期してパウダー散布ユニット5を駆動するようにしている。これにより、記録媒体Wに対し、改行幅単位で主走査による印刷が行われ、続いて印刷済部分に対し、改行幅単位でパウダーの散布が行われる。その後、印刷とパウダー散布とが行われた記録媒体Wは、セットステージ12から離れ(吸着解除)、巻取装置4に向かって送り出される。
このような構成では、パウダー散布ユニット5が、印刷領域の下流側においてX軸テーブル13に組み込まれているため、印刷動作における副操作を利用して、且つ印刷動作に後追いで、パウダーの散布を行うことができる。したがって、パウダー散布ユニット5をスペース効率良く配置することができると共に、簡単な構造でパウダーの散布を効率良く行うことができる。しかも、パウダー散布ユニット5とインクジェットヘッド16とを十分に離して配置することができ、パウダー散布の印刷への悪影響を極力排除することができる。
なお、第3実施形態において、キャリッジユニット15(インクジェットヘッド16)廻りを、X軸テーブル13を跨ぐラインヘッドの形態とすることも可能である。かかる場合には、パウダー散布ユニット5をキャリッジユニット15とは別体で設けるようにしてもよいし、キャリッジユニット15に組み込むようにしてもよい。
以上のように、これらの実施形態によれば、印刷動作と並行して、或いは印刷動作と一部重複して、記録媒体Wの印刷済み部分にブロッキング防止用のパウダーを散布することができる。このため、印刷済みの記録媒体Wは、パウダーを散布された状態で、記録装置本体2から上記の巻取装置4に送られこれに巻き取られる。したがって、巻取装置4において、記録媒体が強く巻き締められても、付着したパウダーにより、裏移りを確実に防止することができる。
なお、上記の実施形態では、UVインクを導入するインクジェット記録装置について説明したが、本発明は、インクの種別や記録媒体の種別を問わず、ブロックキング(裏移り)が生ずる可能性のあるインクおよび記録媒体の組み合わせとなる場合において、適用可能である。