JP5925631B2 - 車両用成形天井の製造方法 - Google Patents
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Description
ここで成形天井は、例えばサンルーフ用の開口部が形成される場合がある。サンルーフ用の開口部によって生じた基材の端縁は、表皮材を巻き込むことにより端縁が室内側に直接露呈しないように被覆される。成形天井の端縁の被覆処理は、まず成形天井の裏側から基材に切り込みを入れて基材の端材のみを表皮材からはがす。その上で、基材の端材が表皮材からはがされた部分に接着剤を塗布し表皮材を基材の端縁に巻き込んで接着する。成形天井の端縁の被覆処理は、成形天井の周縁部についても同様の被覆処理がなされる(例えば、特許文献1)。ところが特許文献1の製造方法では、基材を成形するための第1のプレス工程と、表皮材を被着するための第2のプレス工程とを要するので、工程数が増すという問題点があった。
特許文献3に開示された技術を用いれば、接着剤非透過性の紙が基材と表皮材の間に介在するため接着剤が表皮材に染み出すのを抑制する。そのため、成形天井の端縁の被覆処理は、基材の端材のみを表皮材からはがした後に硬化した接着剤を除去する必要も無いし、成形天井の成形面が凹凸状に波打つように成形されることも抑制される。
先ず、第1の発明は、成形面が所要曲面に形成された成形型に基材を表皮材とともにセットして加熱・加圧し該基材と表皮材とを接着させることにより成形天井を成形した後、該成形天井の裏側から基材に切り込みを入れて該基材の端材のみを表皮材からはがし、接着剤を該表皮材の端材をはがした部分に塗布し該表皮材を該基材の端縁に巻き込んで接着することで該端縁を該表皮材によって被覆する車両用成形天井の製造方法であって、前記基材と表皮材との間には、成形後も該基材と表皮材とをはがれ易くする剥離層が予め介在されることで、前記基材の端材のみを前記剥離層にて表皮材からはがす構成とされており、前記剥離層は、サーマルボンド法によって形成された熱可塑性合成繊維からなるサーマルボンド不織布と、該サーマルボンド不織布の上に熱可塑性合成繊維の繊維ウェブとが積層され、該繊維ウェブを交絡させて第2不織布とすると共に、前記サーマルボンド不織布と第2不織布との間が繊維間結合された2層構造の不織布層とされており、前記サーマルボンド不織布が、前記基材側に積層され、前記第2不織布が前記表皮材側に積層されていることを特徴とする。
車両には屋根として鋼板製のルーフパネルが構成されておりルーフパネルの車室内側に車両用成形天井20が装着される。
車両用成形天井20は、図1に図示されるように基材1と剥離層10と表皮材7とが積層されて熱プレスによって加熱及び加圧成形されて一体化される。
<基材1について>
基材1は、概略、芯材2の両面に熱硬化性接着剤を塗布した繊維補強材3,4を積層するとともに、その裏面に非通気性フィルム5を介在させ熱可塑性合成繊維不織布からなる裏材6を積層してなる。
図1に図示されるように繊維補強材3,4は、無機繊維であるガラス繊維を適宜の長さ(例えば50mm〜100mm長)に切断したチョップドストランドを適宜バインダーで固めることによりシート状に成形されている。なお、ここで使用するガラス繊維は上記のようにチョップドストランドを固結したもののほか、ガラス繊維を切断することなくバインダーで固めたもの(コンテイニアスマツト)或いはガラス繊維不織布、ガラス繊維紙、ガラス繊維織布でもよい。また、実施形態における目付量は、要求される強度、その他の種々の条件に適合する様に目付量を選択し得る。繊維補強材は、チョップドストランド等の無機繊維や、有機繊維であるジュート(黄麻)、ケナフ(洋麻)、ラミー、ヘンプ(麻)、サイザル麻、竹等の天然繊維等を適宜選択して、アクリル等のバインダー又はニードル加工によってシート状、マット状にしたものでもよい。
なお、本実施形態1においては繊維補強材3,4にガラス繊維マットが選択される。
表皮材7は、車両用成形天井20の意匠面を担う部位である。表皮材7は、表面層8、ウレタンフォームシート9が積層されてなる。表面層8は、ファブリック,クロス,ニット等の布帛や、織布、不織布、起毛布等の布部材、合成皮革、人工皮革、本革等、種々適用できる。ウレタンフォームシート9は、車両用成形天井20に柔らかい触感を得るためにウレタン樹脂発泡体からなる軟質層を適用して積層される。なお、ウレタンフォームシート9が積層されない態様もある。
剥離層10は、後述する車両用成形天井20の端縁の被覆処理において基材1を表皮材7からはがしやすくし、基材1を表皮材7からはがした後に硬化した熱硬化性接着剤を除去する必要が無く、車両用成形天井20の成形面が凹凸状に波打つように成形されないために構成されるものである。
剥離層10は、図3〜5に拡大して示したように、サーマルボンド法によって形成された熱可塑性合成繊維からなるサーマルボンド不織布11と、サーマルボンド不織布11の上に熱可塑性合成繊維の繊維ウェブ12aとが積層され、ニードルパンチ法によって繊維ウェブ12aを交絡させてニードルパンチ不織布12(第2不織布)とすると共に、サーマルボンド不織布11とニードルパンチ不織布12との間が繊維間結合された2層構造からなるものである。
熱可塑性合成繊維は、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリルニトリル系の各種合成繊維が適用できる。なお、本実施形態1におけるサーマルボンド不織布11の熱可塑性繊維は、ポリエチレンテレフタレートを選択している。
サーマルボンド不織布11に用いる繊維ウェブの熱可塑性合成樹脂繊維は、15mm〜100mmの繊維長にカットされている。熱可塑性合成樹脂繊維が15mm未満であると繊維同士の絡み合いが少なくなってしまう。一方、熱可塑性合成樹脂繊維が100mmより長くした場合、混綿が難しくなり単位面積に対して熱可塑性合成繊維が均等に混ぜ合わせることが困難となって均一な繊維マットが形成しにくくなる。
サーマルボンド不織布11に用いる繊維ウェブは、クロスレイヤー、エアレイ等に代表される乾式法、または抄紙法に代表される湿式法のいずれの製法を選択しても形成できる。
乾式法(クロスレイヤー)は、熱可塑性合成樹脂繊維を15mm〜100mmの繊維長にカットした上で開繊機でよく混ぜ合わせ(混綿)カード機で積層し所定目付けの繊維ウェブとする。
乾式法(エアレイ)は、熱可塑性合成樹脂繊維を15mm〜100mmの繊維長にカットした上でエアレイと呼ばれる空気流でよく混ぜ合わせ(混綿)たものを積層し所定目付けの繊維ウェブとする。
湿式法は、熱可塑性合成樹脂繊維を15mm〜100mmの繊維長にカットした上で水中に分散し網状のネット等ですき上げてフリースを形成し、加熱機で乾燥して繊維ウェブとする。
乾式法、湿式法のいずれかにおいて形成された繊維ウェブは、上述のように熱ロール間に通して熱圧着して、繊維同士を部分的に溶着させることで繊維を結合して繊維マットにする。そのためサーマルボンド不織布11は、繊維同士が溶着された溶着部分と、繊維状態を維持した繊維部分とが混在している。
繊維ウェブ12aの熱可塑性合成繊維は、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリルニトリル系の各種合成繊維が適用できる。なお、本実施形態1における繊維ウェブ12aの熱可塑性繊維は、ポリエチレンテレフタレートを選択している。繊維ウェブ12aの熱可塑性合成樹脂繊維は、上記サーマルボンド不織布と同様の理由から15mm〜100mmの繊維長にカットされている。繊維ウェブ12aは、上記と同様にクロスレイヤー、エアレイ等に代表される乾式法、または抄紙法に代表される湿式法のいずれかの製法を選択して形成する。
図4、5に図示されるように、剥離層10は、ニードルパンチ法によって繊維ウェブ12aを交絡させてニードルパンチ不織布12とすると共に、サーマルボンド不織布11とニードルパンチ不織布12との間を繊維間結合して2層構造の不織布層に形成される。詳しくは、ニードルパンチ法は、サーマルボンド不織布11の上に繊維ウェブ12aを積層した積層体を一定方向に送りながらサーマルボンド不織布11と繊維ウェブ12aの厚み方向に対して高速で上下するニードル22(針)を往復させることで繊維ウェブ12aを交絡させてニードルパンチ不織布12とすると共に、サーマルボンド不織布11とニードルパンチ不織布12との間を繊維間結合して2層構造の不織布層に形成する。図4に図示されているようにニードル22(針)は、サーマルボンド不織布11側から往復させるニードル22(針)と、繊維ウェブ12a側から往復させるニードル22(針)を有している。これにより剥離層10は、積層体の両面からニードル22(針)を往復させ形成する。この他に、ニードル22(針)は、サーマルボンド不織布11側からのみ往復させる態様や繊維ウェブ12a側からのみ往復させる態様など種々適用できる。
ニードルパンチ不織布12の目付が150g/m2より大きいと車両用成形天井20の重量が増加してしまい好ましくない。ニードルパンチ不織布12の目付は、より好ましくは、80g/m2〜130g/m2の範囲である。
実施形態1における表皮材7及び剥離層10は、ファブリック等の布帛からなる表面層8、ウレタンフォームシート9、剥離層10をフレームラミネート工法により製造されるものを選択した。
表皮材7及び剥離層10は、図2に示したフレームラミネート工法により製造されるもので、同図において、8はロール状に巻回されたファブリック等の布帛からなる表面層、9はロール状に巻回されたウレタンフォームシート、10はロール状に巻回された剥離層である。
このフレームラミネート工法では、ガスバーナ13の火炎によりウレタンフォームシート9の一方の表面をあぶって溶融し、そこへ剥離層10のニードルパンチ不織布12側を重ね合わせてロール14,15間に通すとともに、ガスバーナ16の火炎によりウレタンフォームシート9の他方の表面をあぶって溶融し布帛からなる表面層8を重ね合わせてロール15,17間に通すことにより、図1に示した断面構造の表皮材7及び剥離層10をロール状に巻き取り製造する。
そして、図6に示したように、成形面が所要曲面に形成された成形型18,19間に基材1を表皮材7及び剥離層10とともにセットし加熱・加圧することにより、基材1と表皮材7との間に熱硬化性接着剤を溶融浸透させて基材1と表皮材7とを接着させる。このとき、剥離層10は、サーマルボンド不織布11が基材1側に積層され、ニードルパンチ不織布12が表皮材7側に積層されている。サーマルボンド不織布11はこの加熱・加圧時に熱硬化性接着剤がニードルパンチ不織布12に浸透するのを抑制する。これによって、図7に示したような所要の立体曲面状の車両用成形天井20となる。図7は車両用成形天井20の基材1側からの斜視図であって、20aはサンルーフ用開口部を形成するために基材1側に僅かに盛り上がるように形成された丘状部、20b,20cは下面(室内側)にサンバイザーを収容できるように基材1側に僅かに盛り上がるように形成された丘状部を示す。
そしてこの切り込みによって出来た端材1aのみを図9に示したようにサーマルボンド不織布11の層間剥離によって表皮材7からはがす。
詳しくは、熱硬化性接着剤は、サーマルボンド不織布11によってニードルパンチ不織布12側に浸透するのを抑制されている。また、ニードルパンチ不織布12はサーマルボンド不織布11に比べて崇高性が高い。そのため、ニードルパンチ不織布12側に浸透した熱硬化性接着剤があっても、熱硬化性接着剤がニードルパンチ不織布12内で止まっており、ウレタンフォームシート9まで浸透しない。また、サーマルボンド不織布11は、基材1の端材1aを表皮材7からはがす力でサーマルボンド不織布11の繊維部分が引張られて分離することで層間剥離が生じることから分離し易い。また、サーマルボンド不織布11が層間剥離しなくてもサーマルボンド不織布11とニードルパンチ不織布12の間で分離する。これにより、ウレタンフォームシート9が強く引っ張られて破れるようなことはなく、端材1aのみを容易に離脱することができる。そして、このウレタンフォームシート9に接着剤を塗布し、表皮材7の端縁を図10に示したように基材1の端縁に巻き込んで接着することにより、基材1の端縁を表皮材7によって被覆でき見栄えのよいものとなる。
なお、この実施例ではサンルーフ用開口部について説明したが、車両用成形天井20の周縁部も同様の端縁処理をすることが可能である。
サーマルボンド不織布11は、短繊維で形成された繊維ウェブを熱ロール間に通して熱圧着して、繊維同士を部分的に溶着させることで繊維を結合して形成される。そのためサーマルボンド不織布11は、繊維同士が溶着された溶着部分と、繊維状態を維持した繊維部分とが混在している。そのため、サーマルボンド不織布11の溶着部分は、車両用成形天井20の成形時における接着剤に対し、壁となって表皮材7側に染み出すのを抑制する。一方、サーマルボンド不織布11の繊維部分は、基材1の端材1aを表皮材7からはがす力で繊維部分が引張られて分離することでサーマルボンド不織布11の層間剥離が生じる。そのため、基材1の端材1aのみを表皮材7からはがしやすくすることができる。以上より、車両用成形天井20の端縁の被覆処理は、基材1と表皮の剥離に接着剤非透過性の紙を用いなくても、基材1を表皮材7からはがした後に硬化した接着剤を除去する必要が無く、車両用成形天井20の成形面が凹凸状に波打つように成形されない。すなわち、車両用成形天井20の端縁の被覆処理において接着剤非透過性の紙を用いることなく、基材1を表皮材7からはがしやすくする車両用成形天井20の製造方法を提供することができる。
1a 端材
2 芯材
3 繊維補強材
4 繊維補強材
5 非通気性フィルム
6 裏材
7 表皮材
8 表面層
9 ウレタンフォームシート
10 剥離層
11 サーマルボンド不織布
12 ニードルパンチ不織布(第2不織布)
12a 繊維ウェブ
13 ガスバーナ
14 ロール
15 ロール
16 ガスバーナ
17 ロール
18 成形型
19 成形型
20 車両用成形天井
20a 丘状部
20b 丘状部
20c 丘状部
21 カッターナイフ
22 ニードル
Claims (4)
- 成形面が所要曲面に形成された成形型に基材を表皮材とともにセットして加熱・加圧し該基材と表皮材とを接着させることにより成形天井を成形した後、該成形天井の裏側から基材に切り込みを入れて該基材の端材のみを表皮材からはがし、接着剤を該表皮材の端材をはがした部分に塗布し該表皮材を該基材の端縁に巻き込んで接着することで該端縁を該表皮材によって被覆する車両用成形天井の製造方法であって、
前記基材と表皮材との間には、成形後も該基材と表皮材とをはがれ易くする剥離層が予め介在されることで、前記基材の端材のみを前記剥離層にて表皮材からはがす構成とされており、
前記剥離層は、サーマルボンド法によって形成された熱可塑性合成繊維からなるサーマルボンド不織布と、該サーマルボンド不織布の上に熱可塑性合成繊維の繊維ウェブとが積層され、該繊維ウェブを交絡させて第2不織布とすると共に、前記サーマルボンド不織布と第2不織布との間が繊維間結合された2層構造の不織布層とされており、前記サーマルボンド不織布が、前記基材側に積層され、前記第2不織布が前記表皮材側に積層されていることを特徴とする車両用成形天井の製造方法。 - 請求項1に記載の車両用成形天井の製造方法であって、
前記剥離層は、ニードルパンチ法によって前記繊維ウェブを交絡させて第2不織布とすると共に、前記サーマルボンド不織布と第2不織布との間が繊維間結合されていることを特徴とする車両用成形天井の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載の車両用成形天井の製造方法であって、
前記サーマルボンド不織布は、相対的に前記第2不織布より目付が小さく構成されていることを特徴とする車両用成形天井の製造方法。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用成形天井の製造方法であって、
表皮材の裏面に前記剥離層が予め貼付されていることを特徴とする車両用成形天井の製造方法。
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