JP5899654B2 - 固定床多管式反応器の製造方法 - Google Patents
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具体的に、特許文献1には、シェル部の内部において、反応管よりも外側に反応管と平行に整流棒群を設ける構成が記載されている。
特許文献2には、反応管より大きい複数の孔を邪魔板に形成し、孔のそれぞれに反応管を遊挿して、反応管の外周部と邪魔板の孔の内周面との間のクリアランスを熱媒体の流路とする構成が記載されている。
また、特許文献2の構成では、邪魔板に反応管径より大きい径の孔を形成するため、反応管の本数と太さが制限される傾向にあった。また、反応管と邪魔板とのクリアランスを熱媒体流路として活用すると、邪魔板に沿って(反応器の径方向に沿って)流動する熱媒体の流量が低下する。その結果、特に反応器の外周側での熱媒体による加熱および除熱能力の低下が生じ、反応器の外周側と内周側とで過大な温度差が発生する可能性がある。
しかしながら、特許文献3の方法では、特に反応管が多数本密集して存在する場合には、後から纏めて溶接することは不可能であるため、反応管を1本ずつ溶接しながら挿入していく必要がある。そのため、全クリアランスを閉塞するには多大な労力を要する。その結果、製造コストの増加、及び製造効率の低下に繋がるという問題がある。また、溶接による全クリアランスの閉塞を行うと、反応器を反応条件まで昇温することにより生じる、邪魔板、および、反応管の熱膨張により、反応器が破損する恐れがある。
また、本発明の固定床多管式反応器の製造方法においては、前記処理物質が前記水溶液であり、前記暴露処理が、前記炭素鋼製である少なくとも一方を、前記処理物質に、大気圧下、室温にて含浸した後、大気圧下、室温にて保管する処理であることが好ましい。
図1に示すように、本実施形態の反応器1は、円筒状のシェル部10と、シェル部10に設置された複数(例えば、3枚)の欠円型邪魔板(邪魔板)20a,20b,20cと、シェル部10の内部に設置された多数本の反応管30と、を備えている。
また、反応器1は、全反応管30の下端を固定するとともにシェル部10の床部になる下側固定板40と、全反応管30の上端を固定するとともにシェル部10の天井部になる上側固定板50と、下側固定板40の下方に設けられた原料導入部60と、上側固定板50の上方に設けられた反応生成物排出部70と、下側固定板40よりも上方に設置され、シェル部10に熱媒体を導入する熱媒体導入管80と、上側固定板50よりも下方かつ熱媒体導入管80よりも上方に設置され、シェル部10から熱媒体を排出する熱媒体排出管90と、を備えている。
図2に示すように、欠円型邪魔板20a,20b,20cは、シェル部10の内径より直径が小さい円板の一部が欠けた形状のものであり、例えば炭素鋼、ステンレス鋼等により構成されている。本実施形態における欠円型邪魔板20a,20b,20cは、円板の一部が直線的に切除されたように欠けている。なお、本明細書では、円板の一部が直線的に切除されたように欠けて形成された欠円型邪魔板20a,20b,20cの直線状の端部21のことを、「直線状端部21」という。
また、第2室12と第3室13とは、主に、中段の欠円型邪魔板20bの直線状端部21と、シェル部10の内壁10aと、の間に生じるクリアランスBにより連通状態にされている。
また、第3室13と第4室14とは、主に、上段の欠円型邪魔板20aの直線状端部21と、シェル部10の内壁10aと、の間に生じるクリアランスBにより連通状態にされている。
したがって、熱媒体導入管80からシェル部10に導入された殆どの熱媒体は、第1室11、第2室12、第3室13、及び第4室14を経てシェル部10内を蛇行しながら上昇し、熱媒体排出管90から排出されるようになっている。
また、反応管30の内径と長さには特に制限はないが、通常、内径が10〜50mm、長さが300〜10000mmの範囲である。
また、触媒は無担体であってもよく、担体に触媒を担持した担持触媒であってもよい。担体としては、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、シリコンカーバイト等の不活性担体が挙げられる。また、担体の形状としては、球状、円柱状、リング状、星形状等が挙げられる。
また、触媒を複数の触媒層に分けて反応管30内に充填してもよく、その場合には触媒層同士の間に不活性充填材層を介在させてもよい。
また、触媒を計量する際には、反応管30に充填する触媒量と管理目標量との差が、触媒量の平均値の±10%以内にすることが好ましく、±5%以内にすることがより好ましい。反応管30に充填する触媒量と管理目標量との差が、この範囲でない場合には、反応管30の触媒負荷が不均一となる場合がある。また、計量した触媒を反応管30に全て充填し終わる前に、反応管30が満たされる場合には、反応管30内での触媒のブリッジ等による充填ミスが考えられるので、その反応管30については触媒の再充填を行う必要がある。
また、反応管30と貫通孔23との間のクリアランスCは、反応器1の組み立てが可能な範囲で任意の値を設定できるが、反応器1の径方向へのナイターの流動を主流とする目的から、0.5mm以下に設定することが好ましい。
その後、熱媒体は欠円型邪魔板20b,20aにより流動方向が順に折り返され、シェル部10内を蛇行しながら流動することで、第2室12、第3室13、及び第4室14を経由して、熱媒体排出管90から排出される。
以上により、クリアランスC内に閉塞材31が形成され、本実施形態の反応器1が完成する。
この場合、熱媒体によって反応管30への熱の供給、または反応管30内にて発生した反応熱の除去を行う。なお、閉塞処理工程の時点で原料を導入しても構わない。
まず、反応器1を用いたメタクリル酸の製造では、反応管30の内部にメタクリル酸製造用触媒の触媒層をあらかじめ形成しておく。なお触媒層は1層であってもよいし、2層以上であってもよい。
MoaPbCucVdXeYfOg・・・(1)
なお、式(1)中、Mo、P、Cu、VおよびOは、それぞれモリブデン、リン、銅、バナジウムおよび酸素であり、Xは鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、クロム、タングステン、マンガン、銀、ホウ素、ケイ素、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、インジウム、イオウ、セレン、テルル、ランタンおよびセリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Yはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である。a、b、c、d、e、f及びgは、各元素の原子比率を表し、a=12のとき、b=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0.01〜2、e=0〜3、f=0.01〜3であり、gは上述した各元素の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比率である。
また、触媒層には、メタクリル酸製造用触媒の他に他の添加成分が混合されていてもよい。他の添加成分としては、上述した不活性充填材担体が挙げられる。また、触媒前駆体には、水溶性セルロース等の有機物が含まれていてもよい。
それとともに、少なくともメタクロレインと分子状酸素とを含む原料ガスを、原料導入部60を介して反応管30に導入し、触媒層にてメタクロレインと分子状酸素とを反応させることで、メタクリル酸を製造できる。反応によって生じた反応熱は反応管30の外側を流動する熱媒体によって除熱する。
反応管30から流出した反応生成物は、反応生成物排出部70を介して反応器1から次の工程に送られる。
原料ガスは、メタクロレインに空気を混合し、空気に含まれる分子状酸素を利用することが経済的である点で好ましいが、メタクロレインに、純酸素を混合した空気を混合しても構わない。この場合、原料ガス中の酸素量は、メタクロレインに対して0.3〜4倍モルが好ましく、0.4〜2.5倍モルがより好ましい。
また、原料ガスは、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈されていることが好ましい。
反応温度は、230〜450℃が好ましく、250〜400℃がより好ましい。
原料ガスの流量は特に限定されないが、通常、原料ガスをメタクリル製造用触媒との接触時間が1.5〜15秒となる流量が好ましく、該接触時間が2〜5秒となる流量がより好ましい。
この構成によれば、熱媒体が欠円型邪魔板20a,20b,20cに沿って水平方向に流動するとともに、第1室11から第4室14に至るまでシェル部10内を蛇行しながら流動することになる。そのため、熱媒体の流動状態を制御することが可能になり、シェル部10内の全域に亘って均一に熱媒体を行渡らせることができる。これにより、熱媒体が有する除熱能力を充分に利用できるため、反応器1内における局所的な発熱を抑えることができ、反応器1の内部における温度差を充分に小さくできる。この場合、特にシェル部10の内壁10a付近での局所的な発熱を抑制して、シェル部10内における水平方向での温度差を充分に小さくできる。
したがって、反応器1の暴走反応や、触媒の急速な失活、反応管30及び欠円型邪魔板20a,20b,20cの熱膨張による反応管30の破損等の発生を抑制することが可能になるので、設備コストを低減できる。
また、本実施形態によれば、欠円型邪魔板20a,20b,20cを鉛直方向に沿って複数配置することで、反応器1内の全域に熱媒体をより一層効率的に行渡らせることができる。
例えば、欠円型邪魔板20a,20b,20cの設置枚数や、各欠円型邪魔板20a,20b,20cの間隔等は、適宜設計変更が可能である。但し、欠円型邪魔板の枚数が偶数である場合、熱媒体排出管90のシェル部10における取り付け位置は、熱媒体導入管80に対して180°の位置とする。
さらに、上述した実施形態では、シェル部や邪魔板を平面視円形状に形成したが、これに限らず、平面視矩形状等、適宜設計変更が可能である。
また、欠円型邪魔板は、円板の一部が曲線的に切除されたように欠けていてもよいし、円板の一部が楔形に切除されたように欠けていてもよい。
なお、処理物質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等を含む水溶液や、水蒸気、アンモニア、塩素などのガスが挙げられる。但し、反応部材と反応し、その反応表面にスケールを形成することにより、クリアランスCを閉塞し、かつ、反応温度において、閉塞状態が保たれれば、処理物質の種類及び処理方法は特に制限されない。
(実施例)
直径6m、高さ6mの反応器1に、直径30mmの反応管30を20,000本有する固定床多管式反応器において、反応器組み立て前の段階において、全反応管30に対して、塩化ナトリウムを35質量%含む水溶液で大気圧下、室温にて、10時間、表面の含浸処理を行った。処理後の反応管30は反応器1の組み立て時までの数日間、大気圧下、室温にて保管した。
このように、暴露処理が施された反応管30を用いて組み立てられた反応器1において、温度280℃の硝酸カリウム、及び亜硝酸ナトリウムを含む塩溶融物を熱媒体として流動させ、定常状態となった時点で、熱媒体流入温度と反応器1内に設置された各熱電対での測定温度の温度差(以後、ΔTと表記)を算出した(表1参照)。なお、熱電対の設置箇所について、鉛直方向は、図3の記号A−Fにより示され、水平方向は、図4の番号(1)−(5)により示される。この時、メタクリル酸の収率は78.3%であった。
実施例と同型の反応器を、塩化ナトリウムによるクリアランスCの閉塞処理を行わずに作成した。
この反応器1に、実施例1と同条件で熱媒体を流動させ、定常状態となった時のΔTを表2に示す。この時、メタクリル酸の収率は77.7%であった。
10 シェル部
20a,20b,20c 欠円型邪魔板(邪魔板)
30 反応管
31 閉塞材
Claims (2)
- 内部に熱媒体が流動するシェル部と、
前記シェル部の内部に設置され、前記熱媒体の流動方向を変更可能な邪魔板と、
前記邪魔板の厚さ方向に沿って形成された複数の貫通孔内にそれぞれ挿入された複数の反応管と、を有する固定床多管式反応器の製造方法であって、
前記邪魔板および前記反応管の少なくとも一方が炭素鋼製であり、
固定床多管式反応器の組み立て前に、前記炭素鋼製である少なくとも一方の表面に、塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムから選ばれる少なくとも一方を含む水溶液、水蒸気ならびに塩素ガスから選ばれる少なくとも1種の処理物質を用いて暴露処理を施すことによってスケールを堆積させ、前記スケールによって前記反応管と前記貫通孔の内周面との間のクリアランスを閉塞する固定床多管式反応器の製造方法。 - 前記処理物質が前記水溶液であり、前記暴露処理が、前記炭素鋼製である少なくとも一方を、前記処理物質に、大気圧下、室温にて含浸した後、大気圧下、室温にて保管する処理である請求項1に記載の固定床多管式反応器の製造方法。
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