以下、本発明の一形態に係るベビーカーを説明する。まず、図1〜図5を参照してベビーカーの全体構成を説明する。ベビーカー1は、車体2と、車体2に支持されたシート3と、シート3の上方に配置されるフード4と、シート3の下方に配置されるバスケット5とを備えている。ただし、図3〜図5においてはフード4の一部又は全部の図示が省略され、かつシート3はそのフレーム部分のみが示されている。図4及び図5ではバスケット5の図示も省略されている。ベビーカー1は、図1〜図5に示すように展開された状態(展開状態)と、図5に示すように折畳まれた状態(折畳み状態)との間で変形可能である。以下では、展開状態を中心としてベビーカー1の構成を説明する。
図3及び図4から明らかなように、車体2は、フレーム部10と、そのフレーム部10を移動自在に支持する前輪部11及び後輪部12とを備えている。フレーム部10は、車体2のフレーム構造を構成する部分であって、ベビーカー1(車体2)の左右方向(幅方向)の両側に配置された一対の前脚14、一対の後脚15及び一対のアームレスト(中間連動部材)16と、左右のアームレスト16を結ぶように配置された単一の手押しフレーム17と、左右の前脚14の下部を相互に連結する前部横断部材としてのステップ18と、左右の後脚15の下部を相互に連結する後部横断部材19とを備えている。
前輪部11は前脚14の下端に設けられ、後輪部12は後脚15の下端に設けられている。各前輪部11は、前脚14の下端に取り付けられる前輪保持部材20と、その前輪保持部材20に支持された水平方向の車軸21と、前輪保持部材20を挟むように配置され、かつ車軸21の両端部に回転自在に取り付けられた一対の前輪22とを有している。前輪保持部材20は、前脚14に固定される固定部20aと、その固定部20aに対して略鉛直方向の旋回軸線VA(図4参照)を中心として回転可能な旋回部20bとを有している。車軸21は旋回部20bに取り付けられている。それにより、前輪22及びそれらの車軸21は旋回軸線VAを中心として旋回可能である。車軸21は旋回軸線VAに対してオフセットされている。ベビーカー1を前進させるとき、車軸21は前輪22に加わる旋回軸線VAの回りのモーメントにより、旋回軸線VAの後方に保持される。その状態を前輪22の前進位置とする。前輪保持部材20には、ロックレバー23(図8参照)の操作により、前輪22が前進位置にある状態で旋回部20bを旋回不可能な状態に拘束する旋回ロック機構(不図示)が設けられている。旋回ロック機構は公知のベビーカーと同様でよく、詳細は省略する。一方、後輪部12は、後脚15の下端に取り付けられる後輪保持部材24と、その後輪保持部材24により、車体2の左右方向に向けた状態で支持された車軸25と、その車軸25に回転自在に支持された単輪の後輪26とを有している。後輪26の鉛直軸線を中心とした旋回は不可能である。つまり、後輪26の車軸25は常に車体2の左右方向に向けられている。なお、後輪25及びその周囲の構造は後に詳しく説明する。
車体2の左右方向一方の側において、前脚14及び後脚15のそれぞれの上端部と、アームレスト16の下端の脚取付部16aとは支点ピン29を介して相互に回転自在に連結されている。車体2の他方の側に関しても同様である。前脚14の脚取付部16aに対する接合位置(リベット28)は、支点ピン29に対して車体2の前後方向に幾らかオフセットされている。なお、アームレスト16は樹脂成形品であり、乳幼児が手や腕を乗せるために上方に向けられた天板16cを備えている。アームレスト16には折畳み時の指挟みを防ぐための特有の形状が付与されているが、この点は後述する。
手押しフレーム17は、左右一対のハンドル杆30と、それらのハンドル杆30の上部を結ぶように延ばされたグリップ杆31とを備えている。各ハンドル杆30は、その途中の屈曲部30aを境として上杆部30b及び下杆部30cの二つの部位に区分可能な形状を有している。ただし、上杆部30b及び下杆部30cは、単一の金属製のパイプ材を曲げ成形することにより一体に形成されている。図4から明らかなように、下杆部30cは上杆部30bの延長線ELよりも車体2の後方に偏るように曲げられている。下杆部30cには上部ブラケット32がリベット33を介して移動不可能に取り付けられている。上部ブラケット32には、アームレスト16の上端のハンドル連結部16bが上部ピン34を介して取り付けられている。それにより、アームレスト16と手押しフレーム17のハンドル杆30とは、上部ピン34を支点として相互に回転自在である。また、下杆部30cの下端には、前部連動杆(前部連動部材)35の後端部、及び後部連動杆(後部連動部材)36の前端部が下部ピン37を介して回転自在に連結されている。それらの連結部分の構造は後に詳しく説明する。前部連動杆35の前端部は前脚14と前部連結ピン38を介して回転自在に連結されている。後部連動杆36の後端部は後脚15と後部連結ピン39を介して回転自在に連結されている。連動杆35、36及び連結ピン38、39はいずれも金属製である。さらに、後脚15には下部ブラケット40が固定されている。ベビーカー1が展開状態にあるとき、ハンドル杆30の下端は下部ブラケット40に当接して後脚15により上下方向に受け止められる。下部ピン37の周囲には、ベビーカー1を展開状態及び折畳み状態に拘束するための開閉ロック機構41が設けられている。開閉ロック機構41の詳細は後述する。なお、下部ブラケット40は後脚15と一体に形成されてもよい。
前脚14、後脚15、アームレスト16、ハンドル杆30、前部連動杆35及び後部連動杆36は車体2のフレーム部10の左右においてリンク機構をそれぞれ形成する。左右のリンク機構の構成は同一である。開閉ロック機構41による車体2の拘束を解除して、リンク機構の構成部品をそれぞれの連結点の回りに回転させることにより、ベビーカー1を図1の展開状態と図5の折畳み状態との間で変形させることができる。図4を参照して、展開状態から折畳み状態への変形を説明すれば次の通りである。ベビーカー1を展開状態から折畳み状態へと変形させる場合、支点ピン29を中心として前脚14をアームレスト16に対して反時計方向に回転させ、支点ピン29を中心として後脚15をアームレスト16に対して時計方向に回転させ、上部ピン34を中心としてアームレスト16を下杆部30cに対して時計方向に回転させる。これに伴って、前部連動杆35及び後部連動杆36は、下杆部30cに対して下部ピン37を中心として回転し、前部連動杆35は前脚14に対して前部連結ピン38を中心に回転し、かつ後部連動杆36は後脚15に対して後部連結ピン39を中心として回転する。これにより、車体2のフレーム部10が図5のように折畳まれる。その折畳み状態において、前輪22と後輪26とは前後方向に幾らか距離を空けて並ぶ。そのとき、ベビーカー1の重心は車体2の前後方向に関して前輪22と後輪26との間に位置する。それにより、折畳み状態でベビーカー1を前輪22及び後輪26により自立させることができる。前脚14を接合するリベット28の位置が支点ピン29よりも前方に偏っているので、折畳み状態で前脚14と後脚15との間には隙間が生じる。これにより、指挟み等の不都合が生じるおそれが排除される。この点は後にさらに詳しく説明する。
展開状態のベビーカー1を車体2の左右方向から見たとき、手押しフレーム17の上杆部30bと、アームレスト16と前脚14とは直線的に並べられている。直線的か否かの一つの判断基準としては、上杆部30bの延長線ELがアームレスト16の少なくとも一部、及び前脚14の少なくとも一部をそれぞれ貫くように延びていれば直線的と判断することができる。加えて、前輪22が前進位置にあるとき(図4の実線位置)に、延長線ELが車軸21を含む仮想水平面HPに対して車軸21又はその前方で交わるように上杆部30bを設けることが望ましい。さらに望ましくは、延長線ELが旋回軸線VA上、又はそれよりも前方で仮想水平面HPと交わるように上杆部30bが設けられる。なお、上部ブラケット32が下杆部30cに取り付けられているので、上部ピン34の位置を延長線ELに近付けることができる。
上杆部30b、アームレスト16、前脚14及び前輪22の相互の関係を上記のように設定した場合には、次のような利点がある。ベビーカー1の下部、つまり前輪22及び後輪26が位置する接地面近傍の領域で力の加わり方を考えた場合、ユーザがハンドル杆30を介して車体2を押す力が前輪22の旋回軸線VA付近、又はそれよりも前方の領域でに作用する。それにより、前輪22は前方から引かれるようにして旋回軸線VAの回りに旋回する。したがって、旋回軸線VAの回りの前輪22のふらつきが抑えられ、直進時及び旋回時のいずれにおいても前輪22の向きが安定する。これにより、ベビーカー1の操作感を改善することができる。これに対して、ハンドル杆の延長線が前輪と後輪との間、あるいは後輪の近傍を通過するように設定された従来のベビーカーでは、前輪が後から押されるようになるので、旋回軸線の回りに前輪がふらつき易く、前輪22の向きの安定性が損なわれてユーザの操作感が悪化するおそれがある。
図6及び図7により詳しく示したように、手押しフレーム17のグリップ杆31は、左右のハンドル杆30との連結部42と、それらの連結部42に対して車体2の前方かつ上方に向かって斜めに延びるように屈曲したグリップ部43と、グリップ部43間に位置する連絡部44とを有している。連結部42とグリップ部43とは金属製のパイプ材を曲げ成形して一体に形成されている。連結部42とハンドル杆30とはコネクタ45を介して相互に連結されている。それにより、ハンドル杆30とグリップ杆31とで断面形状が相違していても、コネクタ45側のハンドル嵌合部45a及びグリップ嵌合部45bの形状をハンドル杆30及びグリップ杆31のそれぞれの断面形状と適合させることにより、ハンドル杆30とグリップ杆31とを確実に接合することができる。
各コネクタ45には角度調整機構が内蔵されている。その角度調整機構は、コネクタ45のグリップ嵌合部45bをハンドル嵌合部45aに対して回転可能な状態と回転不可能な状態との間で切り替え、それにより、ハンドル杆30に対するグリップ杆31の傾きを変化させることを可能とするために設けられている。左右のコネクタ45のプッシュボタン45c(図6参照)を同時に押し込み操作すると、コネクタ45の嵌合部45a、45b間の拘束が解除されてグリップ杆31のハンドル杆30に対する傾きを変化させることが可能となる。プッシュボタン45cの押し込みを解除するとコネクタ45の嵌合部45a、45b間の相対回転が不可能となる。以下では、連結部42がハンドル杆30の上杆部30bとほぼ一直線になる状態、言い換えれば連結部42が上杆部30bの延長線EL上にある状態をグリップ杆31の基準位置とする。グリップ部43が上記のように斜めに延ばされていることにより、グリップ杆31が基準位置にあるときはグリップ部43が外側(ハンドル杆30と連結される側)から内側に向かうに従って車体2の前方に徐々に偏位する。そのため、ユーザがグリップ部43に手を添え易く、ベビーカー1の操作性が改善される。片手による操作も容易である。グリップ杆31を基準位置よりも後方に傾けた場合、グリップ部43はその外側から内側に向かうに従って徐々に上方に突出する。この場合もユーザが手を添えやすく、ベビーカー1の操作性が改善される。
連絡部44は樹脂製であり、概ね中空円筒状に形成されている。連絡部44はその両端がグリップ部43と嵌め合わされてグリップ部43と一体化されている。連絡部44には、車体2の開閉ロック機構41を操作するための開閉操作部47が設けられている。その開閉操作部47は、連絡部44の外周に設けられた操作レバー48と、その操作レバー48と連動するようにしてグリップ杆31の内部に収容された連繋ワイヤ(不図示)とを有している。連繋ワイヤはグリップ杆31を超えてハンドル杆30の下端付近まで引き回されている。操作レバー48は左右方向にスライド操作可能な状態で連絡部44に取り付けられている。操作レバー48が図6の右方にあるときには開閉ロック機構41の拘束機能が作動してベビーカー1が展開状態又は折畳み状態に拘束される。操作レバー48を左方に操作すると開閉ロック機構41による拘束が解除される。図5から明らかなように、グリップ杆31が基準位置にある状態でベビーカー1が折畳まれたとき、車体2の前後方向に関してグリップ杆31のグリップ部43及び連絡部44は概ね前輪22及び後輪26の間に位置する。そのような配置は、ベビーカー1の折畳み状態における重心位置を前輪22と後輪26との間に設定することに対して有利である。
図8は、前脚14及び後脚15を斜め後方から見た状態を示す図、図9は前脚14及び後脚15の断面形状と車体2の方向との関係を示した図である。前脚14及び後脚15は、手押しフレーム17のハンドル杆30等と同じく金属製のパイプ材を加工して形成されている。図9から明らかなように、前脚14は変形六角形状の断面を有し、後脚15は概略長方形状の断面を有している。なお、図9においては、車体2の前方を矢印Fで、後方を矢印Bで、左方を矢印Lで、右方を矢印Rでそれぞれ示している。前脚14及び後脚15は、断面形状の相違があるものの、その断面寸法に関しては、幅が広い長辺方向と幅が狭い短辺方向とを有している点で共通する。一方、車体2の方向と、断面の長辺方向及び短辺方向との関係は前脚14と後脚15とで相違する。前脚14は長辺方向が車体2の左右方向に相当し、短辺方向が車体2の前後方向に相当するように配置されている。これに対して、後脚15は長辺方向が車体2の前後方向に相当し、短辺方向が車体2の左右方向に相当するように配置されている。その理由は次の通りである。
後脚15は手押しフレーム17の下方に位置し、その手押しフレーム17は後部連動杆36を介して後脚15に連結されるとともに、その下端が後脚15上の下部ブラケット40に支持される。そのため、ユーザが手押しフレーム17に下向きの荷重を加えた場合、その荷重は前脚14よりも後脚15に大きく入力され、後脚15には鉛直面に沿った比較的大きな曲げモーメントが作用する。そのため、後脚15に関しては、その長辺方向を車体2の前後方向に沿うように配置し、それにより荷重方向に対する断面係数や断面二次モーメントを大きく確保して曲げ強度や剛性の向上を図っている。一方、前脚14に関しては、そこに加わる荷重が相対的に小さくなるため、長辺方向を車体2の左右方向に沿うように配置している。これにより、ベビーカー1を前方から見たときの前脚14の投影面積が大きく確保される。そのため、前方から見たときに前脚14がユーザに目立ち易く、その視覚効果が高まる。アームレスト16の天板16cと前脚14との間に一体感を生じさせ、それによりアイキャッチ効果をさらに高めることができる。前脚14に他の部分とは異なる特徴的な色彩や模様を付し、あるいは前脚14の前面を商標や製品名等の表示面として利用することにより、それらの意匠や商標に対してユーザの注意を惹き付けて、ベビーカー1のデザインや商標などをユーザに強く印象付けることができる。なお、前脚14の前面には、車体2の前方に向けてアーチ状の弧が付されることによりデザイン上のさらなる特徴も付与されている。前脚14及び後脚15のそれぞれの断面形状は一例であり、それらの形状は適宜に変更されてよい。例えば、楕円形状の断面を有するパイプ材により前脚14及び後脚15が形成されてもよい。その場合でも、前脚14は断面寸法が大きい方向が車体2の左右方向に相当するように、後脚15は断面寸法が小さい方向が車体2の左右方向に相当するように配置すればよい。
次に、開閉ロック機構41の詳細を説明する。図10は前脚14、後脚15、アームレスト16及び手押しフレーム17の連結部分の拡大図であり、図11は同部分を車体2の斜め後方から見た状態を示す図である。また、図12及び図13は、図10及び図11の状態からシート3を起こした状態を示している。シート3の傾き調整に関連した構成については後述する。上述したように、下部ピン37の周囲には開閉ロック機構41が設けられている。開閉ロック機構41は車体2の左右に一つずつ設けられており、左右の開閉ロック機構41の構成は同一である。
図14は、開閉ロック機構41の下部ピン37に沿った断面図であり、図15はその開閉ロック機構41の周囲を車体2の斜め後方から見た状態を示す図である。これらの図から明らかなように、開閉ロック機構41は、ハンドル杆30の下杆部30cの外周に嵌め合わされたロック部材50と、下杆部30cの内部に配置されたワイヤホルダ51と、下杆部30cに対して車体2の左右方向内側(図14の右側)に配置された第1保持部材52、第2保持部材53、及び第3保持部材54とを備えている。下杆部30cにはその長手方向に沿って長孔30dが設けられている。ロック部材50とワイヤホルダ51とは、長孔30dを貫いて延ばされた連結ピン55により、下杆部30cの長手方向に沿って一体的に移動できるように相互に結合されている。第1〜第3保持部材52、53、54は相互に回転自在に組み合わされ、かつ下部ピン37に貫かれるようにして下杆部30cと連結されている。それらの保持部材52、53、54は、下部ピン37の回りに個別に回転可能である。なお、第1保持部材52及び第3保持部材54には下部ピン37と同軸の嵌合凹部52a、54aが設けられ、第2保持部材53にはそれらの嵌合凹部52a、54aと回転自在に嵌合する嵌合凸部53a、53bが設けられている。嵌合凹部52a、54aと嵌合凸部53a、53bとが相互に嵌り合うことにより、第1〜第3保持部材52、53、54の間のガタツキを抑え、第1〜第3保持部材52、53、54を下部ピン37の回りに相互に円滑に回転させることが可能である。
第1保持部材52には後部連動杆36が固定され、第3保持部材54には前部連動杆35が固定されている。後部連動杆36もまた下部ピン37に貫かれている。さらに、第2保持部材53及び第3保持部材54にはシート3のフレームが固定されるが、この点は後に詳しく説明する。第1保持部材52にはロック受け部56が一体に形成されている。ロック受け部56は、第1保持部材52の外周に突出し、その外周の二箇所にはロック受け溝56aが設けられている。ロック部材50には、下杆部30cの内側に突出するロック突起50aが設けられている。ロック部材50は、そのロック突起50aが図16に示したようにロック受け部56の上方に離れた解放位置と、その解放位置よりも下方に偏位したロック位置との間で移動する。ロック部材50がロック位置に移動すると、ロック突起50aがロック受け溝56aに嵌り込む。それにより、ロック部材50とロック受け部56とは下部ピン37の回りに相対回転不可能に噛み合う。
ロック部材50はハンドル杆30の下杆部30cに取り付けられ、ロック受け部56は下部ピン37を中心として後部連動杆36と一体に回転できるように設けられている。したがって、ロック部材50とロック受け部56とが相互に回転不可能となった場合、下部ピン37を中心としたハンドル杆30と後部連動杆36との相対回転も不可能となる。車体2の展開状態と折畳み状態との間の変形時には、後部連動杆36もハンドル杆30や後脚15等に対して相対的に回転する。そのため、ハンドル杆30と後部連動杆36とが相対回転不可能となれば、車体2の変形動作もまた不可能となる。それにより、ベビーカー1は展開状態又は折畳み状態に拘束される。なお、上述したように、ロック受け部56には二つのロック受け溝56aが設けられている。展開状態ではロック突起50aが一方のロック受け溝56aに嵌り込み、折畳み状態ではロック突起50aが他方のロック受け溝56aに嵌り込む。展開状態と折畳み状態との間の変形途中ではロック突起50aとロック受け溝56aとが噛み合うことは不可能である。
このように、開閉ロック機構41では、ロック部材50のロック突起50aがハンドル杆30と後部連動杆36との回転中心となるべき下部ピン37に対して比較的近い位置にあるロック受け溝56aに嵌り込むことにより、ベビーカー1が展開状態又は折畳み状態に拘束される。回転中心付近でロック部材50とロック受け部56とを噛み合わせているので、ロック突起50aとロック受け溝56aとの嵌合部分に作用する荷重を小さく抑えることができる。それにより、ロック部材50とロック受け部56との小型化、軽量化を図ることができる。なお、ロック部材50の解放位置とロック位置との間の切り替えは、グリップ杆31の連絡部44に設けられた操作レバー48(図6及び図7参照)の操作によって実現される。既に述べたように、操作レバー48は手押しフレーム17内に引き回された連繋ワイヤと結合されており、その連繋ワイヤの先端部がワイヤホルダ51と結合される。ワイヤホルダ51は、ばね等の付勢部材(不図示)によりロック位置に向かって付勢されている。その付勢部材の力に抗して操作レバー48を図7の左方に操作すると、ワイヤホルダ51が引き上げられてロック部材50が解放位置へと移動する。
図14に示したように、ハンドル杆30の下杆部30cの下端部には、支持脚58と、その支持脚58の内側に固定された嵌合ブロック59とが設けられている(図5も参照)。嵌合ブロック59は、支持脚58を超えてハンドル杆30の下方に突出する。ベビーカー1が折畳み状態から展開状態へと展開されるとき、支持脚58は下部ブラケット40の脚受け部40aに嵌り込み、かつ嵌合ブロック59はその脚受け部40aに設けられた凹部40bに嵌り込む。支持脚58が下部ブラケット40の脚受け部40aと接触することにより、ハンドル杆30はその下部ブラケット40により下方から受け止められる。これにより、ハンドル杆30に作用する下向きの荷重の一部を後脚15にて直接的に支持することができ、開閉ロック機構41の構成部品の負担を軽減することができる。
また、嵌合ブロック59が凹部40bに嵌り込むことにより、後脚15に対するハンドル杆30の左右方向への変位が制限される。したがって、ハンドル杆30と後脚15とが、下部ピン37、後部連動杆36及び後部連結ピン39といった複数の部品を介して連結された構造であっても、ハンドル杆30と後脚15との間の遊びが拡大せず、展開状態における車体2のガタツキをさらに確実に防止することができる。このように、嵌合ブロック59及び下部ブラケット40の凹部40bは一対の噛み合い部として機能する。ただし、下部ブラケット40に嵌合ブロック59と同様の凸部を配置し、ハンドル杆30の下端に凹部を配置してこれらを一対の噛み合い部として機能させてもよい。折畳み状態から展開状態への変形に伴って支持脚58が受け部40aに嵌り込むときの指挟み等を防止するため、下部ブラケット40には車体2の前方及び左右から支持脚58の周囲を取り囲む縦壁部40cが設けられている(図8及び図10も参照)。
ロック部材50、第1〜第3保持部材52、53、54、支持脚58及び嵌合ブロック59の材質は適宜に設定してよいが、樹脂を素材としてこれらの部品を形成することにより車体2の軽量化を図ることができる。金属製のハンドル杆30及び金属製の後部連動杆36のそれぞれを、同じく金属製の下部ピン37と嵌め合わせているので、ハンドル杆30から後部連動杆36までの間の荷重伝達経路が全て金属部品にて構成される。さらに、後部連動杆36が金属製の後部連結ピン39を介して後脚15に結合されているので、後部連動杆36と後脚15との間も同様である。したがって、開閉ロック機構41の第1〜第3保持部材52、53、54といった構成部品が樹脂製であっても、ハンドル杆30から後部連動杆36を介して後脚15に至るまでの荷重伝達経路を金属部品で構成して、車体2の強度、剛性を高く維持することができる。
次に、シート3の構成を説明する。シート3は、図3及び図4に示したシートフレーム60に、図1及び図2に示したシート材61を貼り合わせた基本構成を備えている。図10及び図11から明らかなように、シートフレーム60は、座部フレーム62と、背部フレーム63とを含んでいる。座部フレーム62は、シート3の座部の骨格となるべき部分であり、背部フレーム63はシート3の背部の骨格となるべき部分である。座部フレーム62は、単一のパイプ材を曲げ加工して、左右一対のサイドパイプ62aと、それらのサイドパイプ62aの前端を結ぶフロントパイプ62bとを一体に形成した構成を備えている。フロントパイプ62bは、サイドパイプ62aに対して下方に折り曲げられつつ、車体2の左右方向に延ばされている。各サイドパイプ62aの後端は、開閉ロック機構41の第3保持部材54に固定されている(図15参照)。それにより、座部フレーム62は前部連動杆35と一体となって、下部ピン37を中心に展開状態と折畳み状態との間で回転する。
一方、背部フレーム63は、左右一対のサイドパイプ(背支持部材としてのサイド部材)64と、それらのサイドパイプ64を結ぶようにして車体2の左右方向に延びるヘッドパイプ(ヘッド部材)65とを有している。サイドパイプ64は開閉ロック機構41の第2保持部材53に固定されている(図15参照)。したがって、サイドパイプ64は、下部ピン37を中心として回転自在な状態でハンドル杆30と連結されている。ヘッドパイプ65はジョイント66を介してサイドパイプ64と連結されている。ジョイント66は、連結ピン66aを中心として回転自在に組み合わされた一対の連結部66b、66cを有している。下側連結部66bにはサイドパイプ64が固定され、上側連結部66cにはヘッドパイプ65が固定されている。これにより、ヘッドパイプ65はサイドパイプ64に対して連結ピン66aを中心に角度(傾き)を変えることができる。さらに、上側連結部66cは、連動杆(連動部材)67を介して上部ブラケット32と連結されている。連動杆67の前端部は前部ピン68を介して上部ブラケット32と回転自在に連結され、連動杆67の後端部は後部ピン69を介して上側連結部66cと回転自在に連結されている。ジョイント66の下側連結部66bはサイドパイプ64の一部として機能し、上側連結部66cはヘッドパイプ65の一部として機能する。それにより、ハンドル杆30、サイドパイプ64、ヘッドパイプ65及び連動杆67は四節回転リンク機構を構成する。
図10及び図11に示したように、背部フレーム63のサイドパイプ64が下部ピン37を中心として後方に倒された場合、ヘッドパイプ65は、連動杆67によりサイドパイプ64に対して引き起こされるようにして連結ピン66aの回りに回転する。一方、図12及び図13に示すように、背部フレーム63のサイドパイプ64が下部ピン37を中心としてハンドル杆30側に起こされた場合、ヘッドパイプ65は連動杆67に押されて連結ピン66aの回りに図12の時計方向に回転する。それにより、ジョイント66の連結部66b、66cが一直線に並び、ヘッドパイプ65は、その先端部がサイドパイプ64の延長線に対して後方に反り返るようにして傾きを変える。ジョイント66の下側連結部66bに対する上側連結部66cの時計方向の回転運動は、図12の位置よりも幾らか時計方向にずれた位置にて規制され、その位置を超えた時計方向へのさらなる回転は不可能である。このような回転運動の規制は、例えば下側連結部66bと上側連結部66cとの間に回転範囲を制限するストッパ等を設けることにより実現することができる。
シート材61は、シートフレーム60のパイプ62a、62b、64、65に対して適度の張力を付した状態で接合される。図17及び図18はシート材61が取り付けられた状態を示している。シート材61には、一例として多数の通気孔を備えたメッシュ生地が利用される。図13及び図15から明らかなように、左右の開閉ロック機構41の第3保持部材54にはパイプ保持部54bが一体に形成され、そのパイプ保持部54bには、車体2の左右方向に延びるシート支持パイプ(シート支持部材)70の端部が取り付けられている。シート支持パイプ70は背部フレーム63のサイドパイプ64と一体的に下部ピン37の回りに回転する。なお、パイプ保持部54bは左右方向の内側から後部連動杆37に接触する。それにより、車体2の左右方向の剛性を向上させることができる。
図18から明らかなように、シート材61の裏面側で、かつ座部フレーム62と背部フレーム63との境界付近の位置には、連結ベルト71がループを形成するように取り付けられている。その連結ベルト71にシート支持パイプ70が通されることにより、連結ベルト71は適度な張力が付された状態でシート支持パイプ70に掛け止めされる。これにより、シート材61は、連結ベルト71の取り付け位置を境として、座部3a及び背部3b(図17)のそれぞれに対応した領域に明確に区分される。なお、シート材61には、乳幼児を拘束するためのシートベルト72も組み付けられる。
以上のシート3によれば、シートフレーム60にシート材61を貼り合わせてシートベルト72等の付属部品を取り付けることにより、シート3それ自体を予めサブアッセンブリ部品として完成させておくことができる。サブアッセンブリ部品として組み立てられたシート3は、座部フレーム62のサイドパイプ62aを開閉ロック機構41の第3保持部材54に、背部フレーム63のサイドパイプ64を開閉ロック機構41の第2保持部材53にそれぞれ固定し、連結ベルト71のループ内にシート支持パイプ70を通し、さらに連動杆67を介してジョイント66と上部ブラケット32とを連結することにより、車体2に取り付けることができる。このように、シート3の組立作業とシート3を車体2に取り付ける作業とを明確に区分することができるので、シート関連の組み付け作業の効率を高めることができる。
なお、シート3の背部3bをハンドル杆30と連結して背部3bの安定性を確保するとともに、その背部3bの傾きの調整を可能とするため、シート3の背面側には、背部フレーム63の傾きを調整する手段として傾き調整ベルト73が設けられる(図2参照)。傾き調整ベルト73は、シート3の背部3bの外側を車体2の左右方向に回り込むように配置され、その両端は手押しフレーム17のハンドル杆30に固定される。傾き調整ベルト73は、調整紐73aを利用してその長さを調整することができる。傾き調整ベルト73を伸ばせば背部3bが倒れ込み、傾き調整ベルト73を縮めれば背部3bが起き上がる。これにより、シート3のリクライニング機能が実現される。ただし、背部フレーム63の傾きを調整する手段は、傾き調整ベルト73に限らず、適宜の変形が可能である。例えば、背部フレーム63の両側と左右のハンドル杆30との間に個別に長さ調整可能なベルトその他の連結部材を設けてもよい。
次に、後輪26及びその周囲の構造について詳しく説明する。図19及び図20に示したように、後輪保持部材24には、後脚取付部80と車軸支持部81とが一体に形成されている。後脚取付部80には嵌合凹部80aが設けられ、その嵌合凹部80aに後脚15の下端が嵌め合わされることにより、後脚15と後輪保持部材24とが一体に結合されている。後脚取付部80には後部横断部材19も固定されている。図21に示したように、車軸支持部81には後輪部12の車軸25が取り付けられている。後輪26は、樹脂製のホイール本体82と、そのホイール本体82の外周に嵌め合わされる弾性材料製のタイヤ83とを有している。ホイール本体82は、ハブ82a、スポーク82b及びリム82cを有する。スポーク82bの本数は、軽量化を目的として三本に設定されている(図1参照)。リム82cには、補強を目的として複数のリブ82dが設けられている。なお、各前輪22も、後輪26と同様にホイール本体とタイヤとを組み合わせた構成を有し、ホイール本体のスポーク本数は三本である。
ハブ82aは、軸受部材としてのカラー84を介して車軸25に嵌め合わされている。カラー84とハブ82aとは一体回転可能に嵌め合わされ、カラー84は車軸25に対して相対回転可能である。したがって、車軸25を金属製とし、ホイール本体82を樹脂製とした場合でも、カラー84と車軸25との間ですべりが生じ、ハブ82aとカラー84との間では摩耗が生じないか、又は生じたとしてもその進行は極めて遅い。カラー84が摩耗あるいは変形して車軸25とカラー84との間に無視できない遊びが生じたときには、そのカラー84を交換すれば、後輪26の車軸25に対するガタツキの発生や拡大を防ぐことができる。車軸25は、その一端のフランジ部25aが後輪26の外側に位置するようにして、車軸支持部81に装着されている。車軸25の他端側は、車軸支持部81の内側に突出して止め輪等の固定部材85により抜け止めされている。車軸25のフランジ部25aとカラー84との間にはワッシャ86が設けられている。そのワッシャ86により、車軸25に対する後輪26の傾きが抑制される。固定部材85と車軸支持部81との間にもワッシャ87が設けられている。そのワッシャ87により、車輪支持部81の固定部材85と対向する端面の摩耗が防止され、車軸25の軸線方向におけるがたつきが抑えられる。それにより、車軸25の安定性が向上し、車輪25に対する後輪26の傾き防止効果がさらに高まる。ただし、固定部材85によって同等の効果が期待できるといった事情がある場合には、ワッシャ87が省略されてもよい。さらに、後輪26は、車軸25よりも上側の領域において、ハブ82aの内側の端面82eが車軸支持部81の拘束面81aと接触するようにして車軸25に取り付けられている。したがって、一つの後輪部12に単一の後輪26のみを設けた構成であっても、後輪26の上部の車軸方向内側への倒れ込み、つまり図21に矢印Aで示した方向への後輪26の傾きを抑えることができる。
図19及び図20に示したように、後輪26と後輪保持部材24との間には、後輪26を回転不可能に拘束するための後輪ロック機構90がさらに設けられている。後輪ロック機構90は、後輪保持部材24に旋回軸としてのピン91を中心として回転自在に取り付けられた操作ペダル(ロック操作部材)92と、後輪26のハブ82aの内側に設けられた複数の突起部93とを有している。突起部93はホイール本体82と一体成形され、ハブ82aの一部を構成する。上述したハブ82aの端面82eは、それらの突起部93の端面によって構成される。図22に示したように、複数の突起部93は、車軸25の回りに一定のピッチで設けられている。なお、図22は、操作ペダル92と突起部93との関係を車軸25と平行な方向から見た状態を示し、同図の右方が車体2の後方に相当する。
各突起部93は、ハブ82aの半径方向に延びる基部93aと、その基部93aの外周側に配置された拡大部93bとを有している。一方、操作ペダル92には、円柱状のストッパピン(ストッパ部)92aが設けられている。操作ペダル92の表面には、一対の操作部92b、92cが設けられ、それらの操作部92b、92cをユーザが選択的に踏み込むように操作すると、操作ペダル92はピン91を中心としてシーソーのように揺動する。図22の左側の操作部92bが踏み込まれると、操作ペダル92はピン91の回りに反時計方向に回転して実線で示すロック解除位置に移動し、ストッパピン92aは突起部93の後方に離れる。右側の操作部92cが踏み込まれると操作ペダル92がピン91の回りに時計方向に回転してロック位置へと移動し、それによりストッパピン92aが突起部93間の隙間のピン受け溝94に嵌り込む。この場合、後輪26が前進方向及び後退方向のいずれに回転しようとしても、突起部93とストッパピン92とが車軸25の周方向に噛み合ってハブ82aが周方向に関して拘束され、後輪26が回転不可能となる。突起部93の外周側に拡大部93bが設けられているので、後輪26に作用するトルクを原因とするストッパピン92aの抜けを抑えることができる。そのストッパピン92aの抜け防止効果は、ストッパピン92aと突起部93との間に、次のような関係を設定することにより確実に発揮させることができる。
図23に示したように、ストッパピン92aの中心位置SCが車軸25の回りに描く円弧を突起部93の回転軌跡C1とし、ストッパピン92aの中心位置SCが旋回軸としてのピン91の回りに描く円弧をストッパピン92aの回転軌跡C2とする。それらの回転軌跡C1、C2の交点Pから回転軌跡C1、C2に対して接線α、βを引いたとき、それらの接線α、βの交差角θが略90°となるように、ストッパピン92aと突起部93との関係が設定されている。これにより、ストッパピン92aがピン受け溝94に嵌り込んだ状態で、後輪26に対して前進方向及び後退方向のいずれの方向のトルクが作用しても、突起部93とストッパピン92aとの間には接線αに沿って押し付け力が作用し、ストッパピン92aをピン受け溝94から押し出す方向の分力は作用しないか、又は作用しても僅かである。したがって、後輪ロック機構90による後輪26の拘束効果を確実に発揮させることができる。なお、交差角θは、ストッパピン92aをピン受け溝94から押し出すに足りる分力が生じない限りにおいて、90°に対し幾らかの許容範囲が設定されてよい。「略90°」は、そのような範囲が含まれることを意味する趣旨である。
なお、ハブ82aの突起部93に設けられた拡大部93bは、その外周側に先細りとなるテーパが付されている。そのようなテーパを設けることにより、ストッパピン92aがピン受け溝94に入り易くなる。また、操作ペダル92の操作部92b、92cの間には抜き孔92dが形成されている。後輪保持部材24には、操作ペダル92がロック位置にあるときに抜き孔92d内に出現するロック標識、及び操作ペダル92がロック解除位置にあるときに抜き孔92d内に出現するロック解除標識の少なくともいずれか一方が設けられる。その標識を確認することにより、ユーザは後輪26がロック状態にあるか、回転自在な状態にあるかを判別することが可能である。
図24及び図25はホイールキャップ100を示している。ホイールキャップ100は、前輪22(ただし外側の前輪に限る。)及び後輪26のそれぞれの外側に、装飾を目的として任意に装着される樹脂製の部品である。図4及び図19にはホイールキャップ100が装着された状態が示されている。前輪用のホイールキャップ100と後輪用のホイールキャップ100とは、大きさが異なるのみでその構成は同じである。したがって、以下では後輪26のホイールキャップ100を例に挙げてその構成を説明する。ホイールキャップ100は円盤状の外観を有し、その中心部には貫通孔101が形成されている。ホイールキャップ100の裏面側(図25に示す側)には、後輪26のリム82cの内周に沿うように嵌め合わされるリブ102と、それらのリブ102からさらに突出する複数の爪部103とが設けられている。爪部103がリム82cの内側に掛け止めされることにより、ホイールキャップ100が後輪26に装着される。ホイールキャップ100を後輪26に装着した場合、爪部103はホイールキャップ100の裏面側に隠れてユーザからは見えない。したがって、機能性の向上を目的とする表面処理、例えば外観向上を目的としたメッキ処理、耐摩耗性の向上を目的としたコーディング処理等をホイールキャップ100の表面に施す場合、爪部103はその処理対象の範囲から除外することができる。したがって、表面処理に伴う不都合、例えば寸法変化による噛み合い不良の発生や、脆化、あるいは弾性の低下による折損リスクの増大等を防止することができる。表面処理がメッキ液等の処理液への浸漬によって行われる場合には、爪部103を処理液に浸漬させる必要がない。そのため、爪部103をマスキング処理する必要もなく、作業工数の削減を図ることができる。
図26はステップ18を示している。ステップ18は、シート3に座っている乳幼児が足を載せる場として設けられるとともに、左右の前脚14を連結して車体2を左右方向に補強する部材としても機能する。ステップ18は樹脂成形品である。ステップ18の両端には、前脚14が通される脚嵌合孔18aが設けられている。脚嵌合孔18a間には、足を載せるためのステップ面18bが形成されている。そのステップ面18bは、前部18cに対して後部18dが一段低められた段付面として構成されている。そのような段付面とすることにより、車体2の前後方向におけるステップ18の見かけ上の幅を減少させることができる。図27はステップ18の裏面側の構成を示す。ステップ18に必要な強度を与えるため、ステップ18の裏面側には必要に応じてリブ18eが縦横に形成されている。リブ18eは一様に設けなくてもよい。強度あるいは剛性を高める必要がある箇所に限定してリブ18eを設けてもよい。
図28はフード4及びその周囲の拡大図、図29は、フード4の手押しフレーム17に対する取付部分の拡大図である。フード4は、フード支持機構110とフード本体111とを備えている。図29から明らかなように、フード支持機構110は、手押しフレーム17の左右のハンドル杆30に取り付けられる一対のフードブラケット(図29では片側のみ示す。)112と、それらのフードブラケット112に対して着脱自在に取り付けられる一対のフードベース113と、それらのフードベース113間に設けられる単一のフードステイ114とを備えている(図4も参照)。フードベース113は、フードブラケット112に取り付けられるマウント部113aと、そのマウント部113aに対してピン113bの回りに回転可能に取り付けられる旋回部113cとを備えている。マウント部113aは、その操作レバー113dを押し込み操作することにより、フードブラケット112から取り外し可能である。
マウント部113a及び旋回部113cはいずれも樹脂製である。マウント部113aと旋回部113cとの間には、樹脂の弾性を利用して旋回部113cをその回転範囲内における複数の停止位置のいずれかに選択的に保持する位置保持手段(不図示)が設けられている。位置保持手段は、例えば、マウント部113aと旋回部113cとの対向面間にて、旋回部113cの軸線、すなわちピン113bの回りに凹凸部を交互に形成し、一方の対向面の凸部が他方の対向面の凹部に嵌り込むことによって旋回部113cが停止し、停止位置を変更させる場合には、両対向面の凸部同士を弾性変形させるように構成すれば、旋回部113cの自由な回転が制限されてそれらの凹凸部を位置保持手段として機能させることができる。旋回部113cにはステイ嵌合部113eが一体に形成されている。フードステイ114は樹脂製の帯状部品であり、その両端が左右のフードベース113のステイ嵌合部113eに固定されることにより、フードベース113間にて、上方にアーチを描くように曲げられた状態で支持される。フードステイ114は、フードベース113に内蔵された位置保持機構により、フード4を展開したときの展開位置とフード4を畳んだときの収納位置とを含む複数の停止位置のいずれかに選択的に保持される。
フード本体111は、フード生地を適宜の形状に裁断して形成されるスクリーン115と、そのスクリーン115の内面側の適宜の位置に取り付けられる複数本(図では三本が示されている。)の樹脂製のフードリブ116とを備えている。フード生地にはストレッチ素材が利用されている。スクリーン115の前端部は、フードステイ114を内側に巻き込むようにしてフードステイ114と結合される。各フードリブ116は、フード4のスクリーン115を図28のように展開したときに、車体2の前後方向に適宜の間隔が空くように位置決めされてスクリーン115に固定されている。フードリブ116の両端部はフードベース113付近に集約されるが、フードベース113には固定されていない。
スクリーン115の両側には、手押しフレーム17のハンドル杆30に巻き付け可能な巻付け部117が設けられている。巻付け部117のスクリーン115に対する接合位置は、スクリーン115の前端から数えて三番目のフードリブ116の位置と合わされている。左右の巻付け部117をハンドル杆30に巻き付け、上下一対のスナップボタン118を利用して巻付け部117とスクリーン115とを相互に留め合わせることにより、その三番目のフードリブ116をハンドル杆30に沿って保持しつつスクリーン115の両側をハンドル杆30に連結することができる。さらに、スクリーン115の両側でかつフードリブ116の端部が集まる部分には、フードベース113のマウント部113a(旋回部113cでもよい。)の外周に掛け止め可能なループ部115aが設けられている。そのループ部115aをマウント部113aに掛け止めすることにより、各フードリブ116の両端は概ねマウント部113aの付近に保持される。
さらに、スクリーン115の後端側には、車体2の後方に向かって拡張部115bが設けられている。拡張部115bは袋状に縫製され、その後端部はシート3の背部3bが倒された状態にあるときに、その背部3bの背面側に被せることが可能である(図6も参照)。これにより、シート3の背部が倒された状態でもその上方の領域をスクリーン115にて覆うことができる。なお、拡張部115bとシート3の背部3bとの間に、両者を互いに結合するスナップボタン等の接合部品を設け、その接合部品を利用してシート3とスクリーン115とを相互に接合可能としてもよい。
以上のようなフード4は、フード支持機構110のフードステイ114をフードベース113のピン113bの回りに回転させることにより、スクリーン115の折畳み状態と展開状態とを切り替えることができる。スクリーン115の展開状態では、フードステイ114がフードベース113内に設けられた位置保持手段にてハンドル杆30の前方に概略水平に突出する位置に保持され、スクリーン115が前後方向に伸ばされて適度な張力がスクリーン115に作用する。また、三番目のフードリブ116が巻付け部117によってハンドル杆30に沿うように保持され、かつ、フードベース113にループ部115aが掛け止めされることにより、各フードリブ116の両端部が概ねフードベース113の付近に保持される。したがって、フードリブ116をフードベース113に取り付けてそれらを定位置に保持する構成を追加する必要はない。また、フードステイ114とフードリブ116との間隔、あるいはフードリブ116同士の間隔を一定に保持するような前後方向のフレームやばねといった別部品を設けなくとも、スクリーン115のストレッチ性を利用してスクリーン115をほぼ一定の展開形状に保持することが可能である。これにより、フード4の部品点数を削減することができる。
図1〜図5に戻って、バスケット5は、メッシュ生地等の布地をボックス状に縫い合わせて形成されている。バスケット5は、その上縁部の四隅に配置された連結ベルト120を利用して車体2から吊り下げられている。図8に示したように、バスケット5の前側は、前部連動杆35と前脚14とを結ぶ前部連結ピン38から連結ベルト120を利用して吊り下げられている。バスケット5の後側は、後部連動杆36と後脚15とを結ぶ後部連結ピン39から連結ベルト120を利用して吊り下げられている。図30及び図31は連結ベルト120の詳細を示している。連結ベルト120はその一端側の基部120aがバスケット5に縫い付けられることにより、バスケット5の上縁部に固定されている。連結ベルト120の先端部には、連結ベルト120それ自身を蛇行させて相互に縫い合わせることにより、連結ベルト120の表裏に突出するストッパ部120bが形成されている。連結ベルト120の基部120aの接合箇所には、フック121がループベルト122を介して固定されている。ループベルト122は、連結ベルト120の基部120aとともに、所定の接合箇所SPにてバスケット5に縫合されている。フック121の先端には連結ベルト120が通過可能なスリット121aが形成されている。
したがって、連結ベルト120を前部連結ピン38及び後部連結ピン39のそれぞれに巻き付けて折り返し、そのストッパ部120bよりも基部120a側の部分をスリット121aからフック121内に挿入すれば、ストッパ部120bがフック121に引っ掛かり、連結ベルト120のフック121からの抜けが阻止される。これにより、連結ベルト120を介してバスケット5を前部連結ピン38及び後部連結ピン39から吊り下げることができる。連結ベルト120それ自身を重ね合わせて接合することによりストッパ部120bを形成しているため、別部品を連結ベルト120に取り付けてストッパとして機能させる場合と比較して、バスケット5の取り付けに必要な部品の点数を削減することができる。
次に、アームレスト16及びその周囲における指挟み防止のための構成について詳しく説明する。図32は、折畳み状態におけるアームレスト16及びその周囲の構成を拡大して示す側面図であり、図33は図32の矢印XXXIII方向からの正面図、図34は図32のXXXIV−XXXIV線に沿った断面図である。図32から明らかなように、ベビーカー1の折畳み状態においては、展開状態のときとは逆に、脚取付部16aに対してハンドル連結部16bが下方に位置するように斜めに傾く。その場合、脚取付部16aの周囲では、前脚14と後脚15とが接近し、かつアームレスト16が後脚15に覆い被さる。したがって、展開状態から折畳み状態への変形時に、ユーザが支点ピン29の周囲に不用意に指を添えると、指挟みが生じるおそれがある。そこで、上述したように、前脚14は後脚15に対して支点ピン29よりも前方にオフセットして連結され、それにより、折畳み状態で前脚14と後脚15の間に隙間S1が確保されている。隙間S1の大きさは、指挟みを防止するために必要とされる隙間量の最小値(以下、要求隙間量と呼ぶ。)以上に設定される。要求隙間量は、ユーザの指の太さの想定範囲に対して一定の安全値を見込んで設定すればよい。ベビーカーに対する安全規格その他の標準規格により要求隙間量が定まっている場合には、その値を要求隙間量とすればよい。例えば、要求隙間量以上の隙間が確保されているか否かは、要求隙間量を直径とする円弧を仮想し、折畳み状態でその円弧を包含する隙間が存在していれば、要求隙間量以上の大きさの隙間が確保されていると判断することができる。なお、図32では、隙間S1のおおよその位置を仮想線による丸印で示している。以下、他の隙間に関しても、各図に同様の丸印にて示す。ただし、図中の丸印は隙間の位置を示すに過ぎず、隙間の範囲あるいは隙間量を図示するものではない。
図33及び図34から明らかなように、アームレスト16は、上述した天板16cと、その天板16cの両側縁に沿って延ばされて車体2の左右方向に向けられた一対の側板16d、16eとを有している。天板16c及び側板16d、16eで囲まれたアームレスト16の内部領域は空洞であり、その空洞はアームレスト16の下面側、言い換えれば、後脚15と対向する側に向かって開口する。それにより、折畳み状態でアームレスト16の内部に後脚15が入り込むことができる。アームレスト16と後脚15との間における指挟みを防止するため、アームレスト16の側板16d、16eは、後脚15の幅方向中心線CL1に対して左右非対称に設けられている。まず、ベビーカー1の左右方向外側の側板16dは後脚15よりも外側に大きく膨らむように設けられ、中心線CL1から側板16dまでの距離は中心線CL1から側板16eまでの距離よりも大きい。それにより、後脚15の一部がアームレスト16の内部に入り込んだ状態において、後脚15と側板16dとの間には、要求隙間量以上の大きさの隙間S2が確保されている。したがって、ベビーカー1を折畳む際にアームレスト16の側板16dの内面側にユーザが指を添えていても、その指が後脚15と側板16dとの間に挟み込まれるおそれはない。
一方、内側の側板16eに関しては、側板16dよりも中心線CL1に近い。その理由は、側板16eは内側にあって、ユーザが折畳み操作時に側板16eの内面に指を添える可能性が想定し難いこと、及び、アームレスト16の内側の側板16eがシート3上に過度に張り出すと、シート3上のスペースが左右方向に狭められて乳幼児の快適性が損なわれるおそれがあるためである。ただし、折畳み状態で後脚15上の下部ブラケット40はアームレスト16に接近し、特にその脚受け部40a(図8参照)は側板16d、16eを超えてアームレスト16の内部に入り込む程度まで移動する。そのため、図34に示すように、天板16cと脚受け部40aとの間にも要求隙間量以上の大きさの隙間S3が確保される。さらに、図35及び図36に示すように、側板16eには、折畳み状態における下部ブロック40と位置を合わせるようにして凹部16fが形成されている。それにより、隙間S3は凹部16fを介してアームレスト16の外部、より詳しくは側板16eの外部に通じている。なお、凹部16fは、脚受け部40aの位置に限らず、必要に応じて側板16e上の適宜の位置に設けてよい。
図35に示したように、アームレスト16のハンドル連結部16bとハンドル杆30上の上部ブラケット32とを連結する上部ピン34は、ハンドル杆30の下杆部30cよりも前方にオフセットされている。したがって、折畳み状態では、アームレスト16の天板16cとハンドル杆30の下部杆30cとの間にも要求隙間量以上の大きさの隙間S4が確保される。
上述した隙間S1〜S4の他にも、ベビーカー1には、指挟みを防止するために要求隙間量以上の大きさの隙間S5〜S14が確保されている。以下、順に説明する。図35に示したように、フード支持機構110のフードベース113とアームレスト16の天板16cとの間には隙間S5が設けられている。図33に示したように、シートフレーム60においては、背部フレーム63の連動杆67が両端部間にて左右方向に二段に屈曲され、それにより、前部ピン68側の端部とサイドパイプ64との間に隙間S6が、後部ピン69側の端部とフードベース113及びフードステイ114との間に隙間S7がそれぞれ確保されている。連動杆67は、さらにその両端部が中間部分に対して前後方向にも屈曲され、それにより、前部ピン68の回りに隙間S8が、後部ピン69の回りに隙間S9がそれぞれ確保されている。
図37は下部ピン37の周囲を図5の矢印XXXVII方向から見た状態を示す図であり、図38はその下部ピン37の周囲をベビーカー1の内側から見た状態を示す図である。これらの図に示すように、下部ピン37の周囲の幾つかの位置にも要求隙間量以上の隙間が確保されている。上述したように、ハンドル杆30の左右方向内側には、第1、第2及び第3保持部材52、53、54が下部ピン37の軸線方向に沿って順次取り付けられ、第1保持部材52には後部連動杆36が、第2保持部材53には背部フレーム63のサイドパイプ64が、第3保持部材54には座部フレーム62のサイドパイプ62aがそれぞれ固定されている。ベビーカー1の左右方向(下部ピン37の軸線方向)に関して、ハンドル杆30と後脚15とは同一位置にあり、後部連動杆37は第1保持部材52から真っ直ぐに延ばされて後脚15と後部連結ピン39を介して連結される。したがって、後脚15と後部連動杆37との間には隙間S10が設けられる。なお、隙間S10を維持するため、後部連結ピン39の外周にはスペーサ39aが嵌め合わされる。また、後部連動杆36と第2保持部材53及びサイドパイプ64との間にも、第1保持部材52及び第2保持部材53の軸線方向の厚さに応じて隙間S11、S12が確保される。
第3保持部材53に連結された座部フレーム62のサイドパイプ62aは、シート3の幅を確保するために、第3保持部54との連結部分から左右方向外側に膨らむように曲げられているが、その曲げ量は、サイドパイプ62aとハンドル杆30との間に隙間S13が生じるように制限されている。さらに、図38から明らかなように、第2保持部材53に対するサイドパイプ64の連結部分と、第3保持部材54に対するサイドパイプ62aの連結部分との間にも隙間S14が確保されている。
次に、ベビーカー1が折畳み状態にあるときの背部3b(図1参照)の収納について説明する。図5から明らかなように、ベビーカー1が折畳み状態にあるとき、シートフレーム60の背部フレーム63(言い換えればシート3の背部3b)は、車体2のハンドル杆30側に起こされた収納位置へと移動させることが可能である。図39〜図41は、ベビーカー1が折畳み状態にあるときに、背部フレーム63をハンドル杆30側に収納する様子を示している。ただし、図39は背部フレーム63が後方に倒された進出位置にある状態を示している。上述したように、背部フレーム63のサイドパイプ64はハンドル杆30に対して下部ピン37の回りに回転自在に連結され、連動杆67はハンドル杆30に対して前部ピン68の回りに回転自在に連結されている。したがって、背部フレーム63(背部3b)を収納位置に移動させたとき、何らかの手段によって背部フレーム63の回転を制限しないと、背部フレーム63が進出位置へと自然に倒れるおそれがある。以下、図42を参照して背部フレーム63を収納位置に保持するための構成を説明する。
図42は背部フレーム63を四節回転リンク機構として模式的に示した図であって、点Aは連結ピン66aを、点Bは後部ピン69を、点Cは前部ピン68を、点Dは下部ピン37をそれぞれ代表する点であり、点Dが背部連結点、点Aがヘッド連結点、点Cが前部連結点、点Bが後部連結点に相当する。まず、同一のハンドル杆30に取り付けられた点CDを固定して考えれば、点Aは点Dを中心とする回転軌跡を描き、点Bは点Cを中心とする回転軌跡Btを描く。また、点Bは点Aを中心として相対的に回転する。しかし、点Aに対する点Bの相対的な回転運動には制限がある。つまり、図39の進出位置から背部フレーム63を収納位置Psへと動作させたとき、サイドパイプ64とヘッドパイプ65との連結部分が一直線となる位置よりもヘッドパイプ65が幾らか後方に傾いた規制位置Pxに背部フレーム63が達するまでは、点Bを中心とした回転運動が許容されるが、背部フレーム63が規制位置Pxを超えて収納位置Ps側の領域に移動すると、ジョイント66の連結部66b、66c間の回転運動の制限により、点Bは点Aを中心として相対回転することができない。図42では、点Bが位置P1に達したときに背部フレーム63が規制位置Pxとなる。このときの点Bの位置を規制開始点P1と呼ぶ。規制開始点P1において、点Bは、点Cを中心とした回転軌跡Btと、点Dを中心とした回転軌跡Dtの二つの異なる軌跡上の交点として定義される。したがって、背部フレーム63が完全剛体であるとすれば、規制開始点P1を超えて収納位置Ps側へと点Bが移動することは不可能である。しかし、実際には背部フレーム63が完全剛体ではないため、例えば、連動杆67が弾性変形することにより、点Bは規制開始点P1を超えて移動することができる。その弾性変形量は軌跡Bt、Dtが離れるほど大きくなる。
さらに、図42から明らかなように、回転軌跡Bt、Dtは規制開始点P1の他に変極点P2でも交差し、その変極点P2と点Bとが一致する位置が背部フレーム63の収納位置Psである。点Bが変極点P2にあるときは、規制開始点P1にあるときと同様に、背部フレーム63が弾性変形状態から開放される。点Bが変極点P2を超えてさらに図42の左方(つまり、背部フレーム63をより深く収納する方向)に移動すると、回転軌跡Bt、Dtが再び離れるので、背部フレーム63に弾性変形が生じる。つまり、変極点P2を境として、点Bがいずれの方向に移動しても背部フレーム63には弾性変形が生じ、それらの弾性変形に対する復元力は点Bを変極点P2に戻す方向に作用する。このように点Bが変極点P2と一致するときの背部フレーム63の位置が収納位置Psとして設定されている。つまり、背部フレーム63を収納位置Psまで移動させると、点Bが変極点P2と一致して背部フレーム63を収納位置Psに保持する作用が生じる。ただし、点Bが規制開始点P1と変極点P2との間にあるとき、軌跡Bt、Dtの差から明らかなように、背部フレーム63の弾性変形量が点P1、P2の中間位置でピークに達し、その中間位置を超えて点Bが変極点P2側に移動した場合には、弾性変形量が徐々に減少する。弾性変形に伴う復元力は、弾性変形量を減少させる方向に作用するため、点P1、P2の中間位置を超えて点P2側に点Bが移動すれば、背部フレーム63にはこれを収納位置Psに向けて移動させる力が加わる。したがって、点Bが点P1、点P2間の中間位置と変極点P2との間にある任意の位置で背部フレーム63の収納位置Psへ向かう動作を規制するストッパを車体2に付加すれば、背部フレーム63はその内部に生じた弾性復元力でストッパに押し当てられる。その位置を収納位置Psとして設定しても、弾性変形に対する復元力により背部フレーム63を収納位置Psに保持する作用を生じさせることが可能である。
なお、上述した背部フレーム63の規制位置Pxは、車体2の展開状態における背部フレーム63の傾きを調整できる範囲(背部3bの移動範囲)外に設定されている。つまり、展開状態で背部3bの傾きを調整している限りはジョイント66の連結部66b、66c間の回転の規制が生じることなく、折畳み状態で背部フレーム63を図39の進出位置から車体2の前方に幾らか起こしたときに背部フレーム63が規制位置に達するように、連結ピン66aを中心とした連結部66b、66cの連結構造が構成されている。また、図39〜図41にも示したように、背部フレーム63に関しては、既に説明した隙間S8、S9に加えて、指挟みを防止するための要求隙間量以上の大きさの隙間として、ジョイント66の連結ピン66aの回りの隙間S15、下部ピン37の回りの隙間S16が設けられている。
本発明は上述した形態及びその変形例に限定されることなく、種々の形態にて実施されてよい。例えば、上記の形態ではジョイント66のピン66a、言い換えればヘッド連結点Aを中心とした回転運動を規制位置から収納位置側の領域で制限したが、これに代えて、後部ピン69、つまり後部連結点Bの回りの回転運動を制限してもよい。この場合には、ピン66aが下部ピン37及び前部ピン68の回りにそれぞれ描く回転軌跡を対象として図42と同様に収納位置を設定すればよい。背部の背支持部材はパイプ状のサイド部材に限定されることなく、板状その他適宜の形態でよい。単一の背支持部材を左右のハンドル杆等の車体構成部品に背部連結点にて回転自在に連結してもよい。上記の形態では、背部の左右方向の両側縁のそれぞれにて四節回転リンク機構が構成されるように背部を設けたが、いずれか一方の側縁のみに四節回転リンク機構が構成されてもよい。両側に四節回転リンク機構が設けられる場合であっても、いずれか一方の側においてのみヘッド部材側の一方の連結点の回りの回転運動を規制してもよい。ただし、両側で回転運動を規制した場合には、背部を収納位置に保持する作用を背部の両側で等しく生じさせ、それにより背部の保持効果をより確実に発揮させることができて好適である。車体は、上述したフレーム構造による例に限らない。車体に対してシートの背部が四節回転リンク機構を構成するように装着されている限りにおいて、車体を折畳み可能とするための構成は種々変形可能であり、その構造は必ずしもフレーム構造に限らない。四輪式のベビーカーに限らず、前輪を単輪とした三輪式のベビーカーであっても本発明は適用可能である。