JP5875578B2 - 光線力学治療用ナノ粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、光線力学治療(PDT;Photo Dynamic Therapy)用ナノ粒子に関する。
1.腫瘍細胞に集積するナノ粒子
ポリ乳酸を疎水性ブロックとする両親媒性ブロックポリマーの分子集合体(ラクトソーム)をキャリアとし、蛍光色素を内包したナノ粒子が開発されている(特許文献1)。ラクトソームは、腫瘍組織周辺の未成熟な血管組織から漏れ出ること(EPR(Enhanced Permeability and Retention)効果)により、腫瘍細胞に集積することができる。
2.脊椎腫瘍の治療
脊椎は悪性腫瘍の骨転移の中でも好発部位である。ガンの骨転移は、癌性疼痛、病的骨折、神経圧迫などによる歩行障害や排尿・***障害を引き起こし、末期癌患者の生活の質(QOL)を著しく低下させる。
転移性骨腫瘍の治療法としては、脊椎の不安定性や脊髄圧迫による麻痺が発生している場合には外科的摘出が検討される。
転移性脊椎腫瘍に対する低侵襲の手術方法としては、主に疼痛緩和のために転移椎体へのセメント注入やラジオ波照射などが臨床応用されている。
一方、転移性脊椎腫瘍の手術にはレーザーは臨床応用されていない。
転移性脊椎腫瘍に対するレーザーと光感受性物質を併用した光線力学療法に関し、動物モデルを用いた研究が報告されている(非特許文献1)。この研究においては、動物モデルとして乳癌脊椎転移モデル、光感受性物質としてBPD−MA (Benzoporphyrin derivative Monoacid Ring A; Verteporfin)、レーザーとして690nmの波長の半導体レーザーが使用されている。
3.早期肺癌の治療
早期肺癌の治療法として、腫瘍に取り込まれる発光物質(例えばポルフィリン誘導体)を事前に注入し、手術中に腫瘍範囲を同定し、腫瘍に取り込まれた発光物質の発光部位をレーザー照射することにより、腫瘍取り残しを最小限とする試みが臨床応用されている。
4.インドシアニングリーンによる細胞毒性
インドシアニングリーンが、光酸化を受けることによってヒト大腸癌細胞に対する細胞毒性を呈することが報告されている(非特許文献2)。
また、インドシアニングリーンが、近赤外光によって励起されて一重項酸素を発生し、この一重項酸素によりインドシアニングリーンが分解され、得られた分解物がブタ網膜色素上皮細胞に対する細胞毒性を呈することが報告されている(非特許文献3)。
さらに、インドシアニングリーンが、ヒト乳がん細胞に対する細胞毒性を呈することが報告されている(非特許文献4)。
国際公開第2009/148121号パンフレット
ジャーナル・オブ・オルソペディック・リサーチ(Journal of Orthopaedic Research)、2005年、第23巻、p.995−1003 ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー(British Journal of Cancer)、1999年、第80巻、p.360−363 インベスティゲイティブ・オフサルモロジー・アンド・ビジュアル・サイエンス(Investigative Ophthalmology & Visual Science)、2008年5月、第49巻、第5号、p.1777−1783 フォトダイアグノシス・アンド・フォトダイナミック・セラピー(Photodiagnosis and Photodynamic Therapy)、2009年、第6巻、第2号、p.117−121
悪性腫瘍の外科的摘出は、安全な切除縁で拡大摘出することを基本としているが、転移性脊椎腫瘍のように神経や血管の近傍に位置する腫瘍の場合は十分な切除縁がとれないことが多く、局所再発の一因となりうる、という問題がある。さらに、転移性脊椎腫瘍のような手術は、術後に追加の放射線療法かホルモン療法など残存腫瘍を制御できる補助療法が行われることを前提とするものであり、従来の外科的手術療法単独による局所制御は難しい、という問題がある。
非特許文献1に報告されている方法においては、光感受性物質を全身投与するためレーザー照射の影響が転移巣に加えて脊髄まで及ぶため、治療による医原性下肢麻痺の発生を防ぎ得ない、という問題がある。
腫瘍にとりこまれる発光物質(ポルフィリン等)の発光部位をレーザー照射する方法においては、注射後患者を長時間(例えば一週間)暗室に待機させる必要があることや、腫瘍に取り込まれたポルフィリンの発光が微弱である、等の問題がある。
本発明の目的は、悪性腫瘍等、特に転移性脊椎腫瘍の外科的摘出すべき部位を特異的に且つ十分な発光強度で視覚化することによって正確に確定するとともに、確定したその部位を効果的に処理することができるシステムを構築可能な光線力学治療用ナノ粒子を提供することにある。
本発明者らは、レーザー照射によって細胞毒性物質を生じるポリ乳酸結合インドシアニングリーンなどの蛍光色素をラクトソームに内包させたナノ粒子を光力学治療に採用することによって、上記本発明の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明を含む。
(1) 20個以上のサルコシン単位を有する親水性ブロック鎖と、10個以上の乳酸単位を有する疎水性ブロック鎖とを有する両親媒性ブロックポリマーA1、及びレーザー照射により細胞毒性を生じさせる近赤外蛍光色素Bを含む光線力学治療用ナノ粒子。
(2)
前記近赤外蛍光色素Bが、前記レーザー光による励起により生じた活性酸素による自己酸化によって、細胞毒性を有する分解物を与えるものである、(1)に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
本発明のナノ粒子は、分子集合体(ラクトソーム;lactosome)をキャリア剤とし、且つ近赤外蛍光色素を有するものである。キャリア剤を有する態様として、下記(3)及び(5)がある。本明細書においては、便宜上、下記(3)及び(5)の態様のいずれについても、分子集合体に近赤外蛍光色素が「内包される」と表現する場合がある。
例えば近赤外蛍光色素Bがシアニン化合物である場合、レーザー光により励起されて生じた活性酸素によって、オレフィン性二重結合部分で酸化され、ジオキセタン中間体を経て、細胞毒性を有する分解物であるカルボニル化合物を生じる。
(3)
前記近赤外蛍光色素Bが、10個以上の乳酸単位と、近赤外蛍光基とを少なくとも有する近赤外蛍光標識ポリマーB1であり、且つ、前記両親媒性ブロックポリマーA1とともに自己集合することにより分子集合体を形成している、(1)又は(2)に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
(4)
前記近赤外蛍光標識ポリマーB1における近赤外蛍光基が、下記式(I):
(式中、Rは、置換されていてもよい炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい2価の炭化水素基であり;R及びR’は、水素であるか、又はそれらが互いに連結して環状構造を形成するものであり;Xは水素又はハロゲンであり;Aは陰イオンであり、mは0又は1であり;環B及び環Dは、それぞれ同一又は異なっていてもよい含窒素縮合芳香族複素環である。)で示されるものである、(3)に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
(5)
前記近赤外蛍光標識ポリマーB1における近赤外蛍光基がインドシアニングリーンに由来する基である、(3)又は(4)に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
(6)
前記近赤外蛍光色素Bが、前記両親媒性ブロックポリマーA1の自己集合により形成された分子集合体に内包された近赤外蛍光分子B2である、(1)又は(2)に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
(7)
前記近赤外蛍光分子B2が、下記式(I’):
(式中、R及びR’は、それぞれ、同一又は異なっていてもよく、置換されていてもよい炭化水素基であり;R及びR’は、水素であるか、又はそれらが互いに連結して環状構造を形成するものであり;Xはハロゲンであり;Aは陰イオンであり、mは0又は1であり;環B及び環Dは、同一又は異なっていてもよい含窒素縮合芳香族複素環である。)で示されるシアニン化合物である、(6)に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
(8)
前記近赤外蛍光分子B2がインドシアニングリーン分子である、(6)又は(7)に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
(9)
前記ナノ粒子が、10個以上の乳酸単位を少なくとも有する疎水性ポリマーA2をさらに含むものである、(1)〜(8)のいずれかに記載の光線力学治療用ナノ粒子。
(10)
前記ナノ粒子が、20〜200nmの粒子径を有する、(1)〜(9)のいずれかに記載の光線力学治療用ナノ粒子。
(11)
前記近赤外蛍光色素Bの濃度が、前記ナノ粒子を構成するポリマー及び前記赤外蛍光色素Bの合計に対し0.1〜50mol%である、(1)〜(10)のいずれかに記載の光線力学治療用ナノ粒子。
上記(11)において、ナノ粒子を構成するポリマー及び赤外蛍光色素Bの合計とは、ポリマーA1及び色素Bの合計、又はポリマーA1、ポリマーA2及び色素Bの合計である。
(12)
骨又は脊椎に存在する血管病変を治療するための、(1)〜(11)のいずれかに記載の光線力学治療用ナノ粒子。
(13)
ヒト乳がん細胞を治療するための、(1)〜(12)のいずれかに記載の光線力学治療用ナノ粒子。
本発明のナノ粒子は、血管病変部位を正確に確定しレーザー照射によりその部位を処理するシステムを構築することができる。このシステムにおいては、本発明のナノ粒子を血管内に注入し、血管病変部位を処理する際に、血管病変部位に特異的に集積したナノ粒子から発せられた近赤外蛍光により正確に確定された部位のみにレーザーの焦点をあわせる。このため、血管病変部位に正確に照射でき、周囲正常組織へのダメージが軽減され、低侵襲で血管病変部位の処理を行う。
さらに、本発明のナノ粒子は、細胞毒性物質を血管病変部位に効率的に作用させるシステムを構築することができる。このシステムにおいては、内部に近赤外蛍光色素を封入したナノ粒子を血管内に注入し、細胞毒性物質を発生させる際に、正確に確定された血管病変の位置にレーザーの焦点を合わせるため、レーザー照射により、血管病変部位に到達したナノ粒子に内包された近赤外蛍光色素のみを励起し、細胞毒性物質を血管病変に効率的に作用させる。
(14)
20個以上のサルコシン単位を有する親水性ブロック鎖と、10個以上の乳酸単位を有する疎水性ブロック鎖とを有する両親媒性ブロックポリマーA1、及び近赤外蛍光色素Bを含むナノ粒子であって、レーザー光による前記近赤外蛍光色素Bの励起により活性酸素を生じるナノ粒子と、
血管病変の位置を示す画像データを取得するための手段、画像データに基づいてレーザー光の照射位置を血管病変に合わせる手段、及びナノ粒子に対してレーザー光を照射する手段を備えた装置と
を有する、血管病変の光線力学治療システム。
本発明の光線力学治療用ナノ粒子によると、悪性腫瘍等、特に転移性脊椎腫瘍の外科的摘出すべき部位を特異的に且つ十分な発光強度で視覚化することによって正確に確定するとともに、確定したその部位を効果的に処理することができるシステムを構築することができる。
ICGラクトソームを投与した脊椎移転乳癌ラットモデルの蛍光イメージングの結果である。 ICGを投与した脊椎移転乳癌ラットモデルの蛍光イメージングの結果である。 ICGラクトソームを投与した脊椎移転乳癌ラットモデルの、癌細胞移植7日後(Rat 6)における摘出した椎体の明視野像及び蛍光イメージング像、及び、下肢麻痺出現後(Rat 7)における摘出した椎体の明視野像及び蛍光イメージング像である。 図3のRat 6の椎体の断面像、及びRat 7の椎体の断面像である。 レーザー(Laser)処理群及びPDT処理群について、下肢運動機能(BBB scale)とラット作製後の日数(Days)との関係を示す。 レーザー(Laser)処理群及びPDT処理群について、生存率とラット作製後の日数(Days)との関係を示す。 レーザー(Laser)処理群、PDT−低濃度ICGラクトソーム処理群及びPDT−高濃度ICGラクトソーム処理群について、下肢運動機能(BBB scale)とラット作製後の日数(Day)との関係を示す。 コントロール群、ICGラクトソーム群、レーザー(Laser)群及びPDT群について、乳癌細胞を経過観察した顕微鏡写真である。 コントロール(Control)群、ICGラクトソーム(ICG lactosome)群、レーザー(Laser)群及びPDT群についての、乳癌細胞のWST-1アッセイの結果である。
[1.ナノ粒子]
本発明におけるナノ粒子は、少なくとも両親媒性ブロックポリマーA1の凝集により、或いは自己集合的な配向会合により成り立つ分子集合体(ラクトソーム)をキャリア剤とする、近赤外蛍光色素Bを有する構造体である。
本発明におけるナノ粒子は、親媒性ブロックポリマーA1が、近赤外蛍光色素Bとしての近赤外蛍光標識ポリマーB1とともに分子集合体を形成したもの;両親媒性ブロックポリマーA1及び疎水性ポリマーA2が、近赤外蛍光色素Bとしての近赤外蛍光標識ポリマーB1とともに分子集合体を形成したもの;両親媒性ブロックポリマーA1の分子集合体に、近赤外蛍光色素Bとしての近赤外蛍光分子B2が内包されたもの;両親媒性ブロックポリマーA1及び疎水性ポリマーA2の分子集合体に、近赤外蛍光色素Bとしての近赤外蛍光分子B2が内包されたものを含む。
本発明における分子集合体はミセルを構成する。両親媒性ブロックポリマーA1は、自己組織化によって、疎水性ブロック鎖がコア部を形成する。一方、近赤外蛍光色素Bは、当該疎水コア部に位置する。
[1−1.両親媒性ブロックポリマーA1]
本発明の両親媒性ブロックポリマーA1は、以下の親水性ブロック及び疎水性ブロックを有する。両親媒性ブロックポリマーA1は、ナノ粒子のキャリア剤となる分子集合体の基本的要素である。両親媒性ブロックポリマーA1は、下記の1種又は複数種を組み合わせて用いることができる。以下、本発明において、用語「アミノ酸」は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、及びそれらの修飾及び/又は化学的変更による誘導体を含む概念で用いる。さらに、本明細書において、アミノ酸は、α−、β−、γ−アミノ酸を含む。好ましくは、αアミノ酸である。
[1−1−1.親水性ブロック鎖]
本発明において、親水性ブロック鎖が有する「親水性」という物性の具体的な程度としては、特に限定されるものではないが、少なくとも、親水性ブロック鎖が、後述の特定の疎水性ブロック鎖に対して、相対的に親水性が強い領域であり、当該親水性ブロック鎖が当該疎水性ブロック鎖とコポリマーを形成することによって、コポリマー分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の親水性を有していれば良い。或いは、当該両親媒性ブロックポリマーが溶媒中で自己組織化して、自己集合体、好ましくは粒子状の自己集合体を形成することが可能となる程度の親水性を有していれば良い。
親水性ブロック鎖は、サルコシンに由来する単位を親水性必須構成単位として含み、且つ前記親水性必須構成単位を20個以上有する親水性分子鎖である。具体的には、親水性分子鎖は、サルコシン単位を20個、好ましくは30個以上有する親水性ポリペプチド鎖が含まれる。
サルコシンとはすなわちN−メチルグリシンである。
サルコシン単位以外の構成単位を有する場合、そのような構成単位としては特に限定されないが、例えばサルコシン単位以外のアミノ酸(親水性アミノ酸及びその他のアミノ酸を含む)単位やアルキレンオキシド単位が挙げられる。そのようなアミノ酸単位の例としては、好ましくは、αアミノ酸である。例えば、セリン、スレオニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。アルキレンオキシド単位の例としては、具体的には、エチレンオキシド単位(ポリエチレングリコール単位)、プロピレンオキシド単位(プロピレングリコール)などが挙げられる。また、アルキレンオキシド単位においては、水素が置換されていてもよい。
親水性ブロック鎖において、その鎖を構成する構成単位の種類・比率は、ブロック鎖全体が上述したような親水性となるように、当業者によって適宜決定される。
親水性ブロック鎖は、例えば構成単位数500程度を上限として設計することができる。本発明においては、しばしば、30〜300、より好ましくは50〜200程度の構成単位数を有する親水性ブロック鎖が合成されうる。構成単位数が500程度を超えると、分子集合体を形成した場合に、当該形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。構成単位数が30を下回ると、分子集合体の形成自体が困難となる傾向にある。
親水性ブロック鎖においては、同じ構成単位のすべてが連続していてもよいし、非連続であってもかまわない。親水性ブロック鎖において、上記特定の単位以外の他の構成単位を含む場合、他の構成単位の種類・比率は、ブロック鎖全体が上述したような親水性となるように、当業者によって適宜決定される。またその場合、後述の基本特性を損なわないように分子設計されることが好ましい。
サルコシン(すなわちN−メチルグリシン)は水溶性が高く、また、サルコシンのポリマーはN置換アミドを有することから通常のアミド基に比べてシス−トランス異性化が可能であり、さらに、Cα炭素まわりの立体障害が少ないことから、高い柔軟性を有するものである。このようなポリペプチドを構成ブロック鎖として用いることは、当該ブロック鎖に高い親水性と高い柔軟性とを併せ持つという基本特性が備わる点で非常に有用である。
[1−1−2.疎水性ブロック鎖]
本発明において、疎水性ブロック鎖が有する「疎水性」という物性の具体的な程度としては、特に限定されるものではないが、少なくとも、疎水性ブロック鎖が、上記の親水性ブロック鎖に対して、相対的に疎水性が強い領域であり、当該親水性ブロック鎖とコポリマーを形成することによって、コポリマー分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の疎水性を有していれば良い。或いは、当該両親媒性ブロックポリマーが溶媒中で自己組織化して、自己集合体、好ましくは粒子状の自己集合体を形成することが可能となる程度の疎水性を有していれば良い。
本発明において、疎水性ブロック鎖は、10個以上の乳酸単位を有するものである(本明細書においては、乳酸単位を基本単位とするこの疎水性ブロック鎖を、単にポリ乳酸と記載することがある)。好ましくは、疎水性ブロック鎖は、20個以上の乳酸単位を有する。この疎水性ブロック鎖においては、乳酸単位のすべてが連続していてもよいし、非連続であってもかまわない。疎水性分子鎖において、乳酸単位以外の構成単位の種類・比率は、ブロック鎖全体が上述したような疎水性となるように、当業者によって適宜決定される。
この疎水性ブロック鎖において、乳酸単位以外の構成単位を有する場合、そのような構成単位の種類・比率は、ブロック鎖全体が上述したような疎水性であることを満たせば特に限定されるものではないが、後述の諸特性を有するように分子設計されたものであることが好ましい。
疎水性ブロック鎖において、乳酸単位以外の構成単位を有する場合、そのような構成単位は、乳酸以外のヒドロキシル酸及びアミノ酸(疎水性アミノ酸及びその他のアミノ酸を含む)からなる群から選択することができる。ヒドロキシル酸としては、特に限定されないが、グリコール酸、ヒドロキシイソ酪酸などが挙げられる。疎水性アミノ酸は、その多くが、脂肪族側鎖、芳香族側鎖などを有する。天然アミノ酸では、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、チロシン、及びトリプトファンなどが挙げられる。非天然アミノ酸では、特に限定されないが、グルタミン酸メチルエステル、グルタミン酸ベンジルエステル、アスパラギン酸メチルエステル、アスパラギン酸エチルエステル、アスパラギン酸ベンジルエステルなどのアミノ酸誘導体が挙げられる。
疎水性ブロック鎖の構成単位数の上限としては特に限定されないが、100程度である。本発明においては、しばしば、10〜80、好ましくは20〜50程度の構成単位数を有する疎水性ブロック鎖が合成されうる。構成単位数が100程度を超えると、分子集合体を形成した場合に、当該形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。構成単位数が10を下回ると、分子集合体の形成自体が困難となる傾向にある。
ポリ乳酸は、優れた生体適合性及び安定性を有するものである。このため、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から得られる分子集合体は、生体、特に人体への応用性という点で非常に有用である。
また、ポリ乳酸は、優れた生分解性を有することから代謝が早く、生体内において血管病変以外への組織への集積性が低い。このため、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から得られる分子集合体は、血管病変への特異的な集積性という点で非常に有用である。
そして、ポリ乳酸は、低沸点溶媒への溶解性に優れるものであることから、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から分子集合体を得る際に、有害な高沸点溶媒の使用を回避することが可能である。このため、このような分子集合体は、生体への安全性という点で非常に有用である。
さらに、ポリ乳酸の鎖長を調整することは、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から得られる分子集合体の形状制御及び大きさ制御の一要因として寄与する点で好ましい。このため、このような構成ブロックを用いることは、得られる分子集合体形状の用途性に優れるという点で非常に有用である。
疎水性ブロック鎖において、乳酸単位以外の構成単位を有する場合も、これらの優れた諸特性を有するように分子設計することが好ましい。
疎水性ブロック鎖は、光学純度の観点から、さらに以下のバリエーションを有することができる。
例えば、疎水性ブロック鎖における当該乳酸単位が、L−乳酸単位のみで構成されてもよいし、D−乳酸単位のみで構成されてもよいし、L−乳酸単位とD−乳酸単位との両者から構成されてもよい。疎水性ブロック鎖は、上記例示のものから選ばれた1種が単独で使用されてもよいし、複数種が組み合わされて使用されてもよい。
当該乳酸単位がL−乳酸単位とD−乳酸単位との両者から構成される場合、L−乳酸単位とD−乳酸単位との重合順番は限定されない。L−乳酸単位とD−乳酸単位とが1個又は2個ずつ交互に重合されていてもよいし、ランダムに重合されていてもよいし、ブロック重合されていてもよい。
従って、当該乳酸単位がL−乳酸単位とD−乳酸単位との両者から構成される場合、それぞれの乳酸単位の含有量は特に限定されない。すなわち、L−乳酸単位とD−乳酸単位とが異なる量で含有されていてもよいし、L−乳酸単位とD−乳酸単位とが同量含有されていてもよい。この場合、当該10個以上の乳酸単位が全体として光学純度0%のラセミ体であり得る。
[1−2.近赤外蛍光色素B]
近赤外蛍光色素Bは、キャリア剤に内包される要素である。具体的には、ポリマーに近赤外蛍光基が結合した態様を有するもの(近赤外蛍光標識ポリマーB1)及び近赤外蛍光分子そのもの(近赤外蛍光分子B2)から選ばれる。
本発明における近赤外蛍光色素Bは、検出によりイメージングを可能にする特性を有する。近赤外領域(700〜1300nm)では、水素結合を有する各置換基の吸収が存在するものの、その吸収は比較的小さい。このため、近赤外光は生体組織を透過しやすい特性を有する。このような近赤外光の特性を利用すれば、ナノ粒子が集積された部位の情報を正確に得ることが可能である。
さらに、本発明においては、近赤外蛍光色素の光線化学反応を利用する。この観点によると、本発明における近赤外蛍光色素Bは、レーザー光により励起され、細胞毒性物質を生じる特性を有しうる。本発明における細胞毒性物質は、少なくとも活性酸素(例えば一重項酸素)を含み、その他のフリーラジカル、及び近赤外蛍光色素Bの分解物を含みうる。例えば活性酸素は、標的細胞へ細胞毒性を与えるが、さらに、近赤外蛍光色素Bの自己酸化を誘発し、細胞毒性を有する分解物を生じさせる特性も有しうる。従って、本発明における近赤外蛍光色素Bは、ナノ粒子自身の特異的集積性により治療部位を可視化するとともに、可視化された部位へのレーザー照射で生じる物質により標的細胞へ細胞毒性を与える効果も生じさせることができる。
[1−2−1.近赤外蛍光標識ポリマーB1]
近赤外蛍光標識ポリマーB1は、以下の標識部及びポリマー部を少なくとも有する。近赤外蛍光標識ポリマーB1は、上記両親媒性ブロックポリマーA1とともに自己集合により分子集合体を形成することができる要素である。近赤外蛍光標識ポリマーB1は、下記の1種又は複数種を組み合わせて使用することができる。
[1−2−1−1.標識部]
標識部は、本発明の近赤外蛍光色素Bに上述の特性を付与する部分であり、具体的には、近赤外蛍光分子に由来する基(近赤外蛍光基)である。例えば、シアニン系蛍光分子や量子ドットなどに由来する基が用いられる。シアニン系色素に由来する基は、レーザー光により励起されて生じた活性酸素によって、自らのオレフィン性二重結合部分で酸化され、ジオキセタン中間体を経て、細胞毒性を有するアルデヒドなどのカルボニル化合物に分解される。シアニン系色素に由来する基の一例は、以下の一般式(I)で表される。
上記式(I)中、Rは、置換されていてもよい炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい2価の炭化水素基である。
における炭化水素基は、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜5のアルキル基でありうる。
における炭化水素基は、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜5のアルキレン基でありうる。
及びRにおける置換基は、アニオン性であってもよい置換基であり、カルボキシル基、カルボキシレート基、金属カルボキシレート基、スルホニル基、スルホネート基、金属スルホネート基、又は水酸基でありうる。前記金属は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属でありうる。
及びR’は、水素であるか、又はそれらが互いに連結して環状構造を形成するものである。R及びR’は互いに連結して環状構造をとることにより、蛍光色素の分子構造をリジッド化しうる。
Xは水素又はハロゲンである。ハロゲンは、Cl、Br、又はIでありうる。
は陰イオンであり、mは0又は1である。mが0の場合、R及びRのいずれか一方がアニオン性基であり、分子全体としてベタイン構造をとる。mが1の場合、Aは、Cl、Br、I等のハロゲンイオン、CIO 、BF 、PF 、SbF 、SCN等でありうる。
環B及び環Dは、同一又は異なっていてもよい含窒素縮合芳香族複素環である。たとえば、含窒素二環式や三環式芳香族複素環でありうる。好ましくは、環B及び環Dは、同一である。
環Bの好ましい態様としては、以下に示す構造が挙げられる。
環Dの好ましい態様としては、以下に示す構造が挙げられる。
上記式において、R及びRは、いずれも水素でありうる。又は、R及びRは、それらが互いに連結してアリール環を形成しうる。前記アリール環は、置換されてよいベンゼン環でありうる。
本発明において好ましい蛍光基は、下記構造式(II)で示される、インドシアニン化合物由来の基である。
本発明における蛍光基の具体例として、環B及び環Dがいずれも含窒素三環式芳香族複素環であるICG基(III)、IC7−1基(IV)及びIR820基(V)、環B及び環Dがいずれも含窒素二環式芳香族複素環であるIR783基(VI)及びIR806基(VII)、及び、環Bが含窒素三環式芳香族複素環、環Cが含窒素二環式芳香族複素環であるIC7−2基(VIII)が挙げられる。これら基の構造式を以下に示す。
上記式(III)で表されるICG基は、810nm付近の近赤外光レーザーの照射を受けると励起され、定常状態に戻る際に活性酸素やフリーラジカルを放出し、さらに細胞毒性を有する分解物を生じる。
[1−2−1−2.ポリマー部]
ポリマー部は、複数の乳酸単位を有する。例えば、乳酸単位を主たる構成成分とするもの(すなわちポリ乳酸基)であってもよいし、乳酸単位を疎水性ブロックとし、さらにそれに対する親水性ブロックを有するもの(すなわち両親媒性ブロックポリマー基)であってもよい。本発明における分子集合体は、生体適合性、安定性及び生分解性に優れ、構成ポリマーが低沸点溶媒への溶解性に優れるという諸特性を有するものであることが好ましい。従って、ポリマー部の構成は、これらの優れた諸特性を有するように分子設計されることが好ましい。
ポリ乳酸基は、5〜50、好ましくは15〜35の乳酸単位を主たる構成成分とする。乳酸単位のすべてが連続していてもよいし、非連続であってもかまわない。上記範囲内で、標識ポリマーB1全体の長さが上述の両親媒性ブロックポリマーA1の長さを超えないように分子設計される。好ましくは、両親媒性ブロックポリマーA1における疎水性ブロックの2倍の長さを超えないように分子設計される。
その他、標識ポリマーB1のポリマー部の構成単位や鎖長に関しては、基本的に、上述の両親媒性ブロックポリマーA1における疎水性ブロック鎖の分子設計における場合と同様の観点で決定することができる。このようにすることによって、分子集合体において、標識ポリマーB1と、両親媒性ブロックポリマーA1の疎水性ブロック鎖との親和性に優れるという効果も得られる。
標識ポリマーB1において、近赤外蛍光基は、ポリマー部の末端構成単位に結合しうる。また、標識ポリマーB1は、分子設計上化学的又は生化学的に許容される近赤外蛍光基及びポリマー基以外の構成要素のいかなるものも有しうる。この場合、他の構成要素は、標識ポリマーB1が全体として上記定義された「疎水性」の範疇を越える影響を与えない程度で含まれる。
以下に、この態様における標識ポリマーB1の具体例を示す。下記式において、nは、5〜50の整数である。下記の化合物は、近赤外蛍光基としてICG基を有するものである。
標識ポリマーB1が標識両親媒性ブロックポリマーである場合、「疎水性」及び「親水性」の物性の具体的な程度は、上述の両親媒性ブロックポリマーA1の分子設計における場合と同様である。また、この場合における標識ポリマーB1のポリマー部(すなわち両親媒性ブロックポリマー部)の構成単位や鎖長に関しても、基本的に、上述の両親媒性ブロックポリマーA1の分子設計における場合と同様の観点で決定することができる。このようにすることによって、分子集合体において、標識ポリマーB1と、両親媒性ブロックポリマーA1の疎水性ブロック鎖との親和性に優れるという効果も得られる。
[1−2−2.近赤外蛍光分子B2]
近赤外蛍光分子B2は、上記両親媒性ブロックポリマーA1を基礎的要素とする分子集合体に内包されることができる要素である。
近赤外蛍光分子B2は、例えば、シアニン系蛍光分子や量子ドットなどが用いられる。シアニン系蛍光分子は、シアニン系蛍光分子は、レーザー光により励起されて生じた活性酸素によって、自らのオレフィン性二重結合部分で酸化され、ジオキセタン中間体を経て、細胞毒性を有するアルデヒドなどのカルボニル化合物に分解される。シアニン系蛍光分子の一例は、以下の一般式(I’)で表される。
上記式(I’)に示す構造は、上記式(I)に示す構造における2価のRが1価のR’に置き換わったことを除き、上記式(I)と同様である。
上記式(I’)中、R及びR’は、それぞれ、同一又は異なっていてもよく、置換されていてもよい炭化水素基である。
及びR’における炭化水素基は、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜5のアルキル基でありうる。R及びR’における置換基は、アニオン性であってもよい置換基であり、カルボキシル基、カルボキシレート基、金属カルボキシレート基、スルホニル基、スルホネート基、金属スルホネート基、又は水酸基でありうる。前記金属は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属でありうる。
及びR’は、水素であるか、又はそれらが互いに連結して環状構造を形成するものである。R及びR’は互いに連結して環状構造をとることにより、蛍光色素の分子構造をリジッド化しうる。
Xは水素又はハロゲンである。ハロゲンは、Cl、Br、又はIでありうる。
は陰イオンであり、mは0又は1である。mが0の場合、R及びRのいずれか一方がアニオン性基であり、分子全体としてベタイン構造をとる。mが1の場合、Aは、Cl、Br、I等のハロゲンイオン、CIO 、BF 、PF 、SbF 、SCN等でありうる。
環B及び環Dは、同一又は異なっていてもよい含窒素縮合芳香族複素環である。たとえば、含窒素二環式や三環式芳香族複素環でありうる。好ましくは、環B及び環Dは、同一である。
環Bの好ましい態様としては、以下に示す構造が挙げられる。
環Dの好ましい態様としては、以下に示す構造が挙げられる。
上記式において、R及びRは、いずれも水素でありうる。又は、R及びRは、それらが互いに連結してアリール環を形成しうる。前記アリール環は、置換されてよいベンゼン環でありうる。
本発明においてより好ましい蛍光色素は、下記構造式(II’)で示されるインドシアニン化合物である。
本発明における蛍光色素の具体例として、環B及び環Dがいずれも含窒素三環式芳香族複素環であるICG(III’)、IC7−1(IV’)及びIR820(V’)、環B及び環Dがいずれも含窒素二環式芳香族複素環であるIR783(VI’)及びIR806(VII
’)、及び、環Bが含窒素三環式芳香族複素環、環Cが含窒素二環式芳香族複素環であるIC7−2(VIII’)の構造式を以下に示す。
上記式(III’)で表されるICG(インドシアニングリーン)分子は、810nm付近の近赤外光レーザーの照射を受けると励起され、定常状態に戻る際に活性酸素やフリーラジカルを放出し、さらに細胞毒性を有する分解物を生じる。
[1−2−3.近赤外蛍光色素Bの濃度]
近赤外蛍光色素Bの濃度は、ナノ粒子を構成するポリマー及び前記赤外蛍光色素Bの合計に対し、例えば、0.1〜50mol%、又は0.5〜20mol%でありうる。また、上記範囲の下限は、1mol%、5mol%又は10mol%であってもよい。上記範囲の上限は、10mol%、5mol%又は1mol%であってもよい。
[1−3.疎水性ポリマーA2]
本発明においては、分子集合体はさらに疎水性ポリマーA2を含むことができる。
10以上の乳酸単位を少なくとも有する疎水性ポリマーである。好ましくは、疎水性ポリマーA2は、15個以上の乳酸単位を少なくとも有する。ここで、疎水性ポリマーA2が有する「疎水性」という物性の具体的な程度としては特に限定されるものではないが、少なくとも、上記の両親媒性ポリマーA1の親水性ブロックに対して、相対的に疎水性が強い。
疎水性ポリマーA2においては、10個以上の乳酸単位が主たる構成成分であることが好ましい。しかしながら一方で、乳酸単位以外の他の構成単位を有することも許容する。当該乳酸単位はそのすべてが連続していてもよいし、非連続であってもよい。
疎水性ポリマーA2の構成単位や鎖長は、基本的に、上述の両親媒性ブロックポリマーA1における疎水性ブロック鎖や、近赤外蛍光標識ポリマーB1におけるポリマー部の分子設計における場合と同様の観点で決定することができる。このようにすることによって、分子集合体において、疎水性ポリマーA2と、両親媒性ブロックポリマーA1の疎水性ブロック鎖及び/又は近赤外蛍光標識ポリマーB1におけるポリマー部との親和性に優れるという効果も得られる。
疎水性ポリマーA2の構成単位数の上限としては、上述の両親媒性ブロックポリマーA1の長さを超えないものであれば特に限定されないが、好ましくは、両親媒性ブロックポリマーA1における疎水性ブロックの2倍の長さを超えないものとする。従って、疎水性ポリマーA2の構成単位数の上限としては、200程度とすることができる。本発明においては、しばしば、10〜160、好ましくは20〜100程度の構成単位数を有する疎水性ポリマーA2が合成されうる。構成単位数が200程度を超えると、分子集合体を形成した場合に、形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。構成単位数が10を下回ると、疎水性ポリマーA2を混合することによる後述の効果(疎水コア体積増大効果及び粒子径制御効果)が小さくなる。
疎水性ポリマーA2の配合量は、例えば、両親媒性ブロックポリマーA1と疎水性ポリマーA2との使用割合が、モル基準で10:1〜1:10となる量でありうる。上記範囲よりも疎水性ポリマーA2の割合が上回ると、分子集合体自体がその形状を保ちにくくなる傾向にある。また、上記範囲よりも疎水性ポリマーA2の割合が下回ると、疎水性ポリマーA2を混合することによる後述の効果(疎水コア体積増大効果及び粒子径制御効果)が得られにくくなる傾向にある。
[1−4.ナノ粒子の大きさ]
[1−4−1.ナノ粒子の大きさ]
本発明のナノ粒子の大きさは、例えば粒子径10〜500nm、好ましくは20〜200nm である。ここで「粒子径」とは、粒子分布で最も出現頻度の高い粒径、すなわち中心粒径をいう。粒子径が10nmより小さいものは作成が難しく、500nmより大きいものは、特に生体内へ注射により投与する場合に、注射剤として好ましくない場合がある。
[1−4−2.ナノ粒子の大きさ測定]
本発明のナノ粒子の大きさを測定するための方法は特に限定されるものではなく、当業者によって適宜選択されるものである。例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)による観察法や、動的光散乱(Dynamic Light Scattering;DLS)法などが挙げられる。DLS法においては、溶液中でブラウン運動している粒子の移動拡散係数を測定する。
[1−4−3.ナノ粒子の大きさ制御]
分子集合体の大きさを制御する手段の例として、両親媒性ブロックポリマーA1の鎖長を制御することが挙げられる。好ましくは、両親媒性ブロックポリマーA1における疎水性ブロックの重合度を調整することができる。
他の例においては、近赤外蛍光色素Bとしての近赤外蛍光標識ポリマーB1のポリマー部や、疎水性ポリマーA2の重合度を調整することができる。
さらなる他の例においては、疎水性ポリマーA2の配合量を制御することができる。疎水性ポリマーA2は、分子集合体の疎水性コアを増大させる効果がある。しかも、その配合量を調整することにより、分子集合体の大きさの連続的制御を可能にする。従って、この手段は、ラクトソームの微妙な大きさの調整ができる点で好ましい。
[1−5.ナノ粒子の形成]
ナノ粒子の作成法は特に限定されず、所望するナノ粒子の大きさ、特性、担持させる近赤外蛍光色素Bの種類、性質、含有量などに応じて、当業者が適宜選択することができる。必要に応じ、下記のようにナノ粒子を形成した後に、得られたナノ粒子に対して、公知の方法によって表面修飾を行っても良い。
なお、粒子が形成されたことの確認は、電子顕微鏡観察によって行うと良い。
[1−5−1.フィルム法]
フィルム法は、リポソームの調製に用いられていた方法である。本発明における両親媒性ブロックポリマーは低沸点溶媒への溶解性を有するため、この方法を用いたナノ粒子の調製が可能である。
フィルム法は、次の工程を含む。すなわち、容器(例えばガラス容器)中に、両親媒性ブロックポリマーA1、疎水性ポリマーA2等分子集合体を構成するポリマーと近赤外蛍光色素Bとを有機溶媒中に含む溶液を用意する工程;前記溶液から前記有機溶媒を除去し、前記容器の内壁にポリマーと近赤外蛍光色素Bとを含むフィルムを得る工程;及び、前記容器中に水又は水溶液を加え、超音波処理又は加温処理を行い、前記フィルム状物質を、近赤外蛍光色素Bを内包する分子集合体に変換してナノ粒子の分散液を得る工程、を含む。さらに、フィルム法は、前記のナノ粒子の分散液を凍結乾燥処理に供する工程を含んでも良い。
分子集合体を構成するポリマーと近赤外蛍光色素Bとを有機溶媒中に含む溶液は、分子集合体を構成するポリマーをあらかじめフィルムの状態でストックしておき、ナノ粒子調製時に、近赤外蛍光色素Bを含む溶液を加えてフィルムを溶解することによって調製してもよい。
フィルム法に用いる有機溶媒としては、低沸点溶媒を用いることが好ましい。本発明における低沸点溶媒とは、1気圧における沸点が100℃以下、好ましくは90℃以下のものをいう。具体的には、クロロホルム、ジエチルエーテル、アセトニトリル、エタノール、アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ヘキサンなどが挙げられる。
分子集合体を構成するポリマー及び近赤外蛍光色素Bの溶解にこのような低沸点溶媒を使用することによって、溶媒の除去が非常に簡単になる。溶媒の除去の方法としては特に限定されることなく、使用する有機溶媒の沸点などに応じ、当業者が適宜決定すればよい。例えば、減圧下における溶媒除去を行ってもよいし、自然乾燥による溶媒除去を行ってもよい。
有機溶媒が除去された後は、容器内壁に分子集合体を構成するポリマーと近赤外蛍光色素Bとを含むフィルムが形成される。このフィルムが張り付いた容器中に、水又は水溶液を加える。水又は水溶液としては特に限定されることなく、生化学的、薬学的に許容することができるものを当業者が適宜選択すればよい。例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられる。
水又は水溶液が加えられた後、加温処理を行う。加温によりフィルムが容器内壁から剥がれる過程で分子集合体を形成する。加温処理は、例えば70〜100℃、5〜60分の条件下で行うことができる。加温処理終了時には、近赤外蛍光色素Bが内包された分子集合体(ナノ粒子)が前記の水又は水溶液中に分散された分散液が容器中に調製される。
得られた分散液は、直接生体に投与されることが可能である。すなわち、無溶媒のナノ粒子そのものの状態で保存されなくてもよい。
一方、得られた分散液を凍結乾燥処理しても良い。凍結乾燥処理の方法としては公知の方法を特に限定されることなく用いることができる。たとえば、上記のようにして得られたナノ粒子の分散液を液体窒素などによって凍結させ、減圧下で昇華させることによって行うことができる。これにより、ナノ粒子の凍結乾燥処理物が得られる。すなわち、ナノ粒子を凍結乾燥処理物として保存することが可能になる。必要に応じ、この凍結乾燥物に水又は水溶液を加えて、ナノ粒子の分散液を得ることによって、ナノ粒子を使用に供することができる。水又は水溶液としては特に限定されることなく、生化学的、薬学的に許容することができるものを当業者が適宜選択すればよい。例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられる。
ここで、凍結乾燥処理前の分散液中には、分子集合体を構成するポリマーと近赤外蛍光色素Bとから形成された本発明のナノ粒子以外にも、そのようなナノ粒子の形成に寄与しなかったポリマー及び/又は近赤外蛍光色素Bが各々それ自体として残存しうる。このような分散液を凍結乾燥処理に供すると、溶媒が濃縮される過程で、本発明のナノ粒子を形成せず残存していたポリマーと近赤外蛍光色素Bとから、さらにナノ粒子を形成することが可能になる。従って、本発明のナノ粒子の調製を効率的に行うことが可能になる。
[1−5−2.インジェクション法]
インジェクション法は、本発明のナノ粒子に限らず、他の多くのナノ粒子の調製に用いられる方法である。この方法においては、有機溶媒、例えばトリフルオロエタノール、エタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどに、分子集合体を構成するポリマーと近赤外蛍光色素Bとを溶解し、得られた溶液を、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などの水系溶媒に分散させ、精製処理、例えばゲルろ過クロマトグラフィー、フィルタリング、超遠心などの処理を行った後、有機溶媒を除去することによってナノ粒子を調製することができる。このようにして得られたナノ粒子を生体内へ投与する場合であって、有機溶媒に生体に有害なものを用いた場合は、この有機溶媒の除去を厳密に行う必要がある。
[1−6.ナノ粒子の投与]
ナノ粒子を投与される生体としては特に限定されず、ヒト及び非ヒト動物でありうる。非ヒト動物としては特に限定されないが、ヒト以外の哺乳類、より具体的には、霊長類、齧歯類(マウス、ラットなど)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、及びウマなどが挙げられる。
生体内への投与の方法としては特に限定されず、当業者が適宜決定することができる。従って、投与の方法としては、全身投与及び局所投与とを問わない。すなわち、分子プローブの投与は、注射(針有型、針無型)、内服、外用のいずれの方法によっても行うことができる。投与液中におけるナノ粒子の濃度は、例えば内包物がICG-PLLA30でありキャリアがPSar70-PLLA30の分子集合体であるラクトソームの場合の量に換算して0.5〜100mg/ml、好ましくは0.8〜50mg/ml、より好ましくは1〜20mg/mlでありうる。
本発明におけるナノ粒子は、血管病変部位への特異的集積性に優れたものである。血管病変部位としては、腫瘍部位、炎症部位、動脈硬化部位、血管新生部位などが挙げられる。本発明におけるナノ粒子は、EPR (enhanced permeability and retention) 効果によりこれらの部位の組織へ集積するため、その集積性は血管病変部位の組織の種類によらず、その範囲は多岐にわたる。本発明におけるナノ粒子の投与ターゲットとしては腫瘍(特に悪性腫瘍)又は炎症であることが好ましい。その場所としては、特に、骨又は脊椎であることが好ましい。従って、例えば、骨腫瘍や脊椎腫瘍、炎症性滑膜(例えば関節リウマチによるもの)、骨軟部腫瘍(例えば絨毛性色素性滑膜腫)が投与ターゲットとなる。
ナノ粒子投与から検出開始までの時間は、投与されるナノ粒子が有する近赤外蛍光色素Bの種類、及び投与ターゲットの種類に応じて、当業者が適宜決定することができる。例えば、投与後3〜48時間、或いは1〜24時間とすることができる。上記範囲を下回ると、シグナルが強すぎ、投与ターゲットと他の部位(バックグラウンド)とを明確に分けることができない場合がある。また、上記範囲を上回ると、蛍光プローブが投与ターゲットから***されてしまう場合がある。
[2.ナノ粒子と組み合わされる装置]
ナノ粒子と組み合わされる装置は、蛍光イメージング手段とレーザー照射手段とを有する。
蛍光イメージング手段は、すなわち、血管病変の位置を示す画像データを取得するための手段である。レーザー照射手段は、すなわち、画像データに基づいてレーザー光の照射位置を血管病変に合わせる手段と、ナノ粒子に対してレーザー光を照射する手段と、を含むものである。
[2−1.血管病変の位置を示す画像データを取得するための手段]
本発明のナノ粒子によって構築されるシステムにおける蛍光イメージング手段、すなわち血管病変の位置を示す画像データを取得するための手段としては、人体などの被写体に投与されたナノ粒子に含まれる近赤外蛍光色素Bに由来する近赤外光を検出し、ナノ粒子が存在する組織の位置や大きさを観測することができるものであればよい。従って、当業者であれば、ナノ粒子に含まれる近赤外蛍光色素Bに由来する近赤外光を可視化することができる手段を適宜選択することができる。
好ましい態様において、血管病変の位置を示す画像データを取得するための手段は、被写体に投与されたナノ粒子に含まれる近赤外蛍光色素Bに由来する近赤外蛍光を検出し、その可視化像と周辺組織可視光像とを同時に抽出するものである。これにより、本発明のナノ粒子を蛍光造影剤として投与した人体などの被写体において、ナノ粒子が集積した血管病変の部位における可視光像と、集積したナノ粒子からの赤外光像との合成画像を取得することができる。具体的には、以下のように光源、光学フィルタ、固体撮像素子、及び信号処理回路を含む撮像装置が用いられうる。このような手段を有する蛍光イメージング装置の具体例として、HyperEye Medical System(瑞穂医科工業株式会社製)が挙げられる。
光源は、被写体に対し、可視光と、近赤外蛍光色素Bの励起光とを照射するものである。具体的には、可視光を発する可視光発光部と、励起光を発する励起光発光部とを有しうる。可視光発光部としては、例えばキセノンランプや白色LEDであり、励起光発光部としては、ナノ粒子に包含される近赤外蛍光色素Bの励起波長(具体的にはICGの場合は780nmにピーク波長)を有する、LED等の半導体発光デバイスでありうる。
被写体からの光は、レンズ等の光学系を介して撮像装置内に取り込まれ、光学フィルタを介して固体撮影素子に入射する。
光学フィルタは、被写体からの可視光成分と赤外蛍光成分とを分離することなく固体撮像素子に入射させるものである。光学フィルタは、可視光、励起光、及び近赤外光の透過性を独立して制御する。具体的には、被写体からの光のうち、可視光及び赤外蛍光を透過し、励起光の透過を阻止する。さらに、光学フィルタは、可視光発光部及び励起光発光部それぞれの発光強度を個別に制御可能でありうる。このような光学フィルタにおいては、可視光に対する透過率は蛍光に対する透過率より低く設定されることにより、微弱な蛍光による赤外光像を可視光像上にて明瞭に表示することができる。
光学フィルタとしては、例えば真空蒸着法により金属や誘電体を積層して成膜された薄膜が用いられる。
固体撮像素子は、上記光学フィルタの透過光に基づいて可視光像と近赤外光像とを撮影するものである。これにより、可視光と近赤外光との同時撮影が可能になる。具体的には、半導体基板上に、受光画素を構成するモザイク状のカラーフィルタが配置されて構成される。カラーフィルタは、着色した有機材料で構成されている。各カラーフィルタの透過特性に応じて、各受光画素が感度を有する光成分が定まる。各受光画素には、入射光のうち各画素に配置されたカラーフィルタの色に対応する可視光成分に応じた信号電荷と、赤外光成分に応じた信号電荷とが合成されて蓄積される。
蓄積された信号電荷は、信号処理回路に出力される。
信号処理回路は、固体撮像素子から出力された信号を処理するものである。具体的には、上記撮像素子の各受光画素から読み出された信号から、可視光像と近赤外光像とに基づく合成画像を表す画像信号を生成する。生成された合成信号は、表示デバイスに入力及び表示される。具体的には、手術部位の可視光像と、ナノ粒子が集積された位置が、内包される色素Bの濃度に応じた色調で構成された赤外光像とが合成された合成画像がモニターに表示される。
本発明のナノ粒子は血管病変部位へ特異的に集積するものであるため、上述の蛍光イメージング手段によって、レーザー照射すべき部位、より具体的にはレーザーで処理すべき範囲とその外縁(切除縁)を正確に確定することが可能である。すなわち、上述の蛍光イメージング手段によって、血管病変部位の正確な診断が可能である。
[2−2.画像データに基づいてレーザー光の照射位置を血管病変に合わせる手段]
レーザー光の照射位置を血管病変に合わせる手段は、レーザー照射装置において、励起用光源によって生じたレーザー光を照射可能な状態でターゲットに向けることを可能とするものである。当業者であれば、このような手段は適宜選択することができる。この手段は、レーザー光の照射位置を血管病変に合わせる操作を手動で行うことができるように、例えばレーザー照射口を有するハンドピースとして体現されうる。或いは、この手段は、ハンドピース、及びハンドピースと励起用光源とを接続する可動部材として体現されうる。
[2−3.レーザー光を照射する手段]
レーザー光を照射する手段は、レーザー照射装置において、レーザー光の発生から照射までを行うことが可能なものである。この手段によって照射されるレーザーの波長は例えば700〜1000nm程度、出力は0.01〜60Wでありうる。
当業者であれば、このような手段は適宜選択することができる。具体的には、レーザーを生じさせる励起用光源、レーザー導光手段(具体例として光ファイバー)、レーザー集光手段(具体例としてレンズ)などを含む。
例えば、励起用光源は上記のレーザー光の照射位置を血管病変に合わせる手段(好ましくは上述のハンドピース)とは別途設けられることができる。この場合、励起用光源で生じたレーザー光を光ファイバーなどでハンドピースに導光し、ハンドピース内で集光し、ターゲットに向けて照射可能な状態とすることができる。或いは、励起用光源は、ハンドピースに内蔵されていてもよい。
レーザー光を照射する手段のより具体的な例としては、半導体レーザー装置(例えば医用半導体レーザー装置UDL−15(オリンパス株式会社製))が挙げられる。
レーザー光照射により、正確に確定されたレーザー照射部位においてナノ粒子中の近赤外蛍光色素Bの光線化学反応を誘発することで、周囲の正常組織へのダメージを最小限に抑えつつ、血管病変部位の選択的切除を行うことができる。
[実験例1:脊椎転移乳癌ラットモデルの作製]
脊椎転移乳癌ラットモデルを、Mantha, et al: J. Neurosurg. Spine, 2005 に記載の方法に準じて作製した。
具体的には、ラット乳癌細胞(CRL-1666)を培養して作成した皮下腫瘍片を、ラット(Fischer 344)のL6椎体に18G針を用いて空けた骨孔内に移植した。
[実験例2:ICGラクトソームの調製]
以下のように、ポリサルコシン−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー(PSar70-PLLA30
)とポリ乳酸結合蛍光化合物(ICG-PLLA30)とから構成される蛍光色素内包ナノ粒子(ICGラクトソームを記載する)を調製した。
[実験例2−1:アミノ化ポリL-乳酸の合成]
本実験例では、L−ラクチドとN−カルボベンゾキシ−1,2−ジアミノエタン塩酸
塩とを用いて、アミノ化ポリL-乳酸(a-PLA)を合成した(スキーム1)。
重合開始剤であるN−カルボベンゾキシ−1,2−ジアミノエタン塩酸塩(化合物7)(310 mg, 1.60 mmol)に、オクタン酸スズ(6.91 mg)をトルエン(1.0 mL)に拡散させたものを加えた。トルエンを減圧留去した後、L−ラクチド(化合物6)(3.45 g, 24mmol)を加え、Ar雰囲気下、120 ℃にて重合反応を行った。12時間後、反応容器を室温に空冷した。得られた黄白色固体を少量のクロロホルム(10 mL程度)に溶解させた。クロロホルムを冷メタノール(100 mL)に滴下することにより白色沈殿を得た。得られた白色沈殿は遠心分離により回収し、減圧乾燥した。
得られた白色沈殿(500 mg)のジクロロメタン(1 ml)溶液に25v/v%臭化水素/酢酸(2.0 mL)を加え、遮光、乾燥空気下にて2時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を冷メタノール(100 mL)に滴下し、析出してきた沈殿を遠心分離にて回収した。得られた白色沈殿はクロロホルムに溶解させた後、飽和NaHCO3水溶液にて洗浄し、無水MgSO4にて脱水操作を行った。セライト(R)濾過によりMgSO4を除去した後、真空乾燥することにより、白色のアモルファス状粉末のa-PLA(440 mg)を得た。
[実験例2−2:ポリ乳酸結合蛍光化合物(ICG-PLLA30)の合成]
本実験例では、アミノ化ポリL-乳酸(a-PLA)にICG標識を行い、ポリ乳酸結合蛍光化合物(ICG-PLLA30)を得た(スキーム2)。
a-PLAを1.9 mg (1.0 eq)含むDMF溶液に、インドシアニングリーン誘導体(ICG-sulfo-OSu)1mg (1.3 eq)を溶かしたDMF溶液を加え、室温で約20時間攪拌した。その後、溶媒を減圧留去し、LH20カラムにて精製を行い、化合物ICG-PLLA30を得た。
[実験例2−3:ポリサルコシン−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー(PSar70-PLLA30)の合成]
本実験例では、サルコシン−NCA(Sar-NCA)とアミノ化ポリL-乳酸(a-PLA)とから、ポリサルコシン−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー(PSar70-PLLA30)を合成した(スキーム3)。
a-PLA(383 mg, 0.17 mmol)とサルコシン−NCA (Sar-NCA) (3.21 g, 27.9 mmol) に、Ar雰囲気下、ジメチルホルムアミド(DMF)(140 mL)を加え、室温にて12時間攪拌した。反応溶液を0 ℃に冷却した後、グリコール酸(72 mg, 0.95 mmol)、O−(ベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)(357 mg, 0.94 mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(245 μL, 1.4 mmol)を加え、室温にて18時間反応させた。
ロータリーエバポレーターによりDMFを減圧溜去した後、LH20カラムにて精製を行った。UV270 nmにてピークが検出されたフラクションを回収・濃縮した。得られた濃縮溶液を0 ℃にてジエチルエーテル中に滴下し、再沈澱することにより、目的物であるPSar70-PLLA30(1.7 g)を得た。
[実験例2−4:蛍光色素内包ナノ粒子の作成]
キャリア剤であるポリ乳酸−ポリサルコシン両親媒性ブロックポリマー(PSar70-PLLA30・ 26H2O, MW=7767)及び蛍光色素ICG-PLLA30それぞれのクロロホルム溶液(0.2 mM)を調製した。蛍光色素ICG-PLLA30については、蛍光色素のモル濃度が1.5 mol%(低濃度ICGラクトソームを調製する場合)もしくは20 mol%(高濃度ICGラクトソームを調製する場合)となるように、ガラス容器内で両溶液の混合液を調製した。その後、フィルム法に従ってラクトソームを作製した。なお、フィルム法は以下の通り行った。混合液から溶媒を減圧留去しガラス容器の壁面にキャリア剤及び蛍光色素を含むフィルムを形成させた。さらに、フィルムを形成したガラス容器内に、水または緩衝液を加え、温度82℃で20分間湯せんした後、室温で30分間放置し、0.2mmのフィルターでろ過し凍結乾燥した。
[実験例3:ラットモデルへのICG(ラクトソームを伴わないICG単体)投与]
実験例1によって作製した脊椎転移乳癌ラットモデルに、癌細胞移植6日後、25mg/mLのインドシアニングリーン水溶液0.2mLを、尾静脈から投与した。
[実験例4:ラットモデルへのICGラクトソーム投与]
[実験例4−1:低濃度ICGラクトソーム投与]
実験例1によって作製した脊椎転移乳癌ラットモデルに、癌細胞移植6日後、10mg/mLの低濃度ICGラクトソーム分散液0.5mLを、尾静脈から投与した。
[実験例4−2:高濃度ICGラクトソーム投与]
実験例1によって作製した脊椎転移乳癌ラットモデルに、癌細胞移植6日後、5mg/mLの高濃度ICGラクトソーム分散液0.1mLを、尾静脈から投与した。
[実験例5:蛍光イメージング]
実験例3及び実験例4−1のラットそれぞれ1検体について、Clairvivo OPT(島津製作所製)(励起:785 nm, 蛍光:845 nm)を用いて蛍光イメージングを行った。その結果を図1(実験例4−1のラットのもの)及び図2(実験例3のラットのもの)に示す。図1に示すように、ICGラクトソームを全身投与した場合、ICGラクトソームが癌移植部位に選択的に集積し、選択的イメージングが可能であることが判った。一方、図2に示すように、ICGのみを全身投与した場合、ICGは投与後短時間で肝臓へ集積し、その後徐々に腸管から***された。
実験例4−1のラットの1検体(Rat 6)について、癌細胞移植7日後、椎体のみを摘出して(すなわち、椎体の前方にできた骨外腫瘍塊は完全に切除した状態で)イメージングを行った。摘出した椎体の明視野像及び蛍光イメージング像を図3(Rat 6)に示す。図示されるように、ICGラクトソームが移植部位であるL6椎体に集積したことが確認された。
さらに、上記Rat 6の椎体の断面像を図4(Rat 6)に示す。図示されるように、椎体(B)の骨梁構造が破壊されて内部が癌細胞に置換されている。脊柱管内へ病変が僅かに伸展(M)しているが、脊髄(C)を圧迫するまでには至っていなかったことが確認された。
実験例4−1のラットの他の1検体(Rat 7)について、下肢麻痺出現後、椎体のみを摘出して(すなわち、椎体の前方にできた骨外腫瘍塊は完全に切除した状態で)イメージングを行った。摘出した椎体の明視野像及び蛍光イメージング像を図3(Rat 7)に示す。図示されるように、ICGラクトソームが移植部位であるL6椎体に集積したことが確認された。
さらに、上記Rat 7の椎体の断面像を図4(Rat 7)に示す。図示されるように、椎体(B)の骨梁構造の破壊が進行し、脊柱管内への病変が増大(M)して脊髄(C)を圧迫していたことが確認された。
[比較例1:レーザー照射のみによる手術]
レーザー群:実験例1によって作製した脊椎転移乳癌ラットモデル(n=6)を、作製7日後に開腹し、移植部にレーザー照射を行った。
[実施例1:ポリ乳酸結合インドシアニングリーン内包ラクトソーム投与モデルに対するレーザー照射による手術]
PDT群:実験例4−1によって作製した低濃度ICGラクトソーム投与脊椎転移乳癌ラットモデル(n=6)を、作製7日後に開腹し、移植部にレーザー照射を行った。
PDT群:実験例4−2によって作製した高濃度ICGラクトソーム投与脊椎転移乳癌ラットモデル(n=6)を、作製7日後に開腹し、移植部にレーザー照射を行った。
[下肢機能の推移]
レーザー(Laser)群及びPDT群(実験例4−1によって作製した低濃度ICGラクトソーム投与脊椎転移乳癌ラットモデル)について、下肢運動機能とラット作製後の日数との関係を図5に示す。レーザー照射は10J、(1W、10秒間)の条件で行った。図中、横軸はラット作製後の日数、縦軸は運動機能評価尺度(BBB(Basso, Beattie & Bresnahan)スケール)を示す。図示されるように、PDT群ではモデル作製後13日(治療後6日)以降継続的に下肢運動機能が有意に温存されていた(Wilcoxon signedrank test (p<0.05))。
レーザー(Laser)群及びPDT群(実験例4−1によって作製した低濃度ICGラクトソーム投与脊椎転移乳癌ラットモデル)について、生存率とラット作製後の日数との関係を図6に示す。図中、横軸はラット作製後の日数(観察期間)、縦軸は生存率を示す。図示されるように、PDT群では観察期間の有意な延長効果が得られた(Log-rank test (P<0.05))。なお、平均観察期間はレーザー群で17.2日、PDT群で21.0日であった。
レーザー(Laser)群、PDT−低濃度ICGラクトソーム群(実験例4−1によって作製した低濃度ICGラクトソーム投与脊椎転移乳癌ラットモデル)及びPDT−高濃度ICGラクトソーム群(実験例4−2によって作製した高濃度ICGラクトソーム投与脊椎転移乳癌ラットモデル)について別途得られた、下肢運動機能とラット作製後の日数との関係図を図7に示す。レーザー照射は5J、(0.5W、10秒間)の条件で行った。図中、横軸はラット作製後の日数、縦軸は運動機能評価尺度(BBB(Basso, Beattie & Bresnahan)スケール)を示す。図示されるように、PDT群ではいずれも有意な下肢麻痺遅延効果が示された。高濃度ICGラクトソームは、ICGの蛍光が消光しているが、PDT治療には影響しないと考えられる。
[実施例2:PDT群−ヒト乳がん細胞に対するin vitroでの光線力学治療]
[組織培養プレートの作成]
96ウェルプレートに、Leibovitz’s L-15 450 ml、胎仔牛血清(FBS) 50 ml及びペニシリン−ストレプトマイシン 10 mlを含む完全増殖培地を用意し、CO非存在下、37℃でインキュベートした。
ヒト乳がん細胞MDA-MB-231を、1〜4列×A〜D行の16ウェルそれぞれに、2×104cell/100μl/well播種し、24時間培養した。
[光線力学治療]
培養後、実験例2で調製した高濃度ICGラクトソーム0.1mgを含むPBSを、組織培養プレートの1ウェルにつき100μl添加し、さらに、近赤外光(810nm)を照射した(照射強度629mW/cm2、照射時間30秒、総照射量18.8J/cm2)。照射には、医療用半導体レーザー装置(オリンパス社製UDL-15)を用いた。
[WST-1アッセイ]
照射直後(0時間後)、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後のそれぞれの時点で、WST-1アッセイを行った。WST-1アッセイにおいては、テトラゾリウム塩 WST-1を10μl/wellずつ添加し、培養器内で1時間インキュベートした。マイクロプレートリーダーで発色色素溶液の吸光度を測定した。具体的には、2〜3列×B〜C行の4ウェルにおける平均吸光度を算出(n=16)した。なお、照射後24時間ごとに培地を交換した。
[比較例2:コントロール群]
実施例2と同様に組織培養プレートの作成を作成した。
得られた組織培養プレートに対しては、24時間ごとに培地を交換することを除いて処置を行わなかった。
実施例2と同じタイミングで同様のWST-1アッセイを行った。
[比較例3:ICGラクトソーム群]
96ウェルプレートに、Leibovitz’s L-15 450 ml、胎仔牛血清(FBS) 50 ml、ペニシリン−ストレプトマイシン 10 ml、及び実験例2で調製した高濃度ICGラクトソーム0.1mgを含む完全増殖培地を用意し、CO非存在下、37℃でインキュベートした。
ヒト乳がん細胞MDA-MB-231を、1〜4列×A〜D行の16ウェルそれぞれに、2×104cell/100μl/well播種し、24時間培養した。
得られた組織培養プレートに対しては、24時間ごとに培地を交換することを除いて処置を行わなかった。
実施例2と同じタイミングで同様のWST-1アッセイを行った。
[比較例4:レーザー群]
組織培養プレートのウェルに添加するPBSにICGラクトソームを含ませないことを除いて、実施例2と同じ操作を行った。
[実施例2と比較例2〜4のとの比較結果]
PDT群(実施例2)、コントロール群(比較例2)、ICGラクトソーム群(比較例3)及びレーザー群(比較例4)におけるWST-1アッセイ時のウェル内の顕微鏡写真(400倍)を図8に示す。PDT群では48時間以降で細胞数の著明な減少が認められた。
PDT群(実施例2)、コントロール群(比較例2)、ICGラクトソーム群(比較例3)及びレーザー群(比較例4)におけるWST-1アッセイの結果を図9に示す。Tukey-Kramer法で多重比較検定を行った。図中のアスタリスクは、p値が0.01より小さいことすなわち統計的有意差があることを示し、n.sは、統計的有意差がないことを示す。PDT群(実施例2)においては、48時間後、72時間後、及び96時間後において、レーザー群(比較例4)と統計学的有意差を認めた。コントロール群(比較例2)、ICGラクトソーム群(比較例3)及びレーザー群(比較例4)の間に、どの時間帯でも統計学的有意差が認められなかった。

Claims (12)

  1. 20個以上のサルコシン単位を有する親水性ブロック鎖と、10個以上の乳酸単位を有する疎水性ブロック鎖とを有する両親媒性ブロックポリマーA1、及び700〜1000nmの波長のレーザー光の照射により細胞毒性を生じさせる近赤外蛍光色素Bを含む光線力学治療用ナノ粒子であって、
    前記近赤外蛍光色素Bが、10個以上の乳酸単位と、近赤外蛍光基とを少なくとも有する近赤外蛍光標識ポリマーB1であり、且つ、前記両親媒性ブロックポリマーA1とともに自己集合することにより分子集合体を形成しているものである、光線力学治療用ナノ粒子
  2. 前記近赤外蛍光色素Bが、前記レーザー光による励起により生じた活性酸素による自己酸化によって、細胞毒性を有する分解物を与えるものである、請求項1に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
  3. 前記近赤外蛍光標識ポリマーB1における近赤外蛍光基が、下記式(I):
    (式中、Rは、置換されていてもよい炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい2価の炭化水素基であり;R及びR’は、水素であるか、又はそれらが互いに連結して環状構造を形成するものであり;Xは水素又はハロゲンであり;Aは陰イオンであり、mは0又は1であり;環B及び環Dは、それぞれ同一又は異なっていてもよい含窒素縮合芳香族複素環である。)で示されるものである、請求項1又は2に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
  4. 前記近赤外蛍光標識ポリマーB1における近赤外蛍光基がインドシアニングリーンに由来する基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
  5. 前記ナノ粒子が、10個以上の乳酸単位を少なくとも有する疎水性ポリマーA2をさらに含むものである、請求項1〜のいずれか1項に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
  6. 20個以上のサルコシン単位を有する親水性ブロック鎖と、10個以上の乳酸単位を有する疎水性ブロック鎖とを有する両親媒性ブロックポリマーA1、10個以上の乳酸単位を少なくとも有する疎水性ポリマーA2、及び700〜1000nmの波長のレーザー光の照射により細胞毒性を生じさせる近赤外蛍光色素Bを含む光線力学治療用ナノ粒子であって、
    前記近赤外蛍光色素Bが、前記両親媒性ブロックポリマーA1の自己集合により形成された分子集合体に内包された近赤外蛍光分子B2である、光線力学治療用ナノ粒子。
  7. 前記近赤外蛍光分子B2が、下記式(I’):
    (式中、R及びR’は、それぞれ、同一又は異なっていてもよく、置換されていてもよい炭化水素基であり;R及びR’は、水素であるか、又はそれらが互いに連結して環状構造を形成するものであり;Xはハロゲンであり;Aは陰イオンであり、mは0又は1であり;環B及び環Dは、同一又は異なっていてもよい含窒素縮合芳香族複素環である。)で示されるシアニン化合物である、請求項6に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
  8. 前記近赤外蛍光分子B2がインドシアニングリーン分子である、請求項6又は7に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
  9. 前記ナノ粒子が、20〜200nmの粒子径を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
  10. 前記近赤外蛍光色素Bの濃度が、前記ナノ粒子を構成するポリマー及び前記赤外蛍光色素Bの合計に対し0.1〜50mol%である、請求項1〜のいずれか1項に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
  11. 骨又は脊椎に存在する血管病変を治療するための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
  12. ヒト乳がん細胞を治療するための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の光線力学治療用ナノ粒子。
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