JP5871253B2 - 制振性に優れた丸鋸、丸鋸用積層材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
この基板の振動を防止するため、各種の制振構造が採用されているが、これらは丸鋸に、その板厚方向に貫通するスリット(切り溝)や適宜の形状の穴を形成して振動を抑制するものである。また、鋼板の間にインサートメタルを挟んだサンドイッチ鋼板は、丸鋸の基板材として適用可能であるとされている。
また、その積層材から製造した丸鋸は、上記課題を解決した制振性に優れる丸鋸であることを確認した。
なお、本明細書で用いる「冶金学的に接合していない領域」とは、拡散接合の処理を行っても固相拡散による接合状態とならなかった領域を指すものとする。
銅めっき層の厚さは、3〜25μmとする。
銅めっき層の厚さは、積層構造を作るための接着剤の役割として3μm以上あればよい。25μmを超えると、鋸・刃物等として使用中に銅層のみ摩耗が進行して摩擦部分で複数の鋼板がバラバラになるので、摩耗の進行、靭性の劣化など悪影響を及ぼす。
銅めっき鋼板表面での高低差は、接合処理前の隙間を示すものである。この隙間が大きいと,接合処理後に隙間が残存しやすくなる。本発明では,接合後に接触していても非接合である界面が存在することが制振性を発揮するための基本であり,隙間として残存すると効果がない。よって,高低差は50μm以下に抑える必要がある。
銅めっき鋼板の表面に凹凸を形成したとき、凸部面積が大きいと,接合後の非接合面積が大きくなる。拡散接合により接合部の非接合面積を所定の範囲とするには,鋼板の凸部が5〜20%とする必要がある。5%以下では,非接合部面積が50%以下になる。20%を超えると非接合部面積が85%を超える。
積層材の内部では、非接合部と接合部は均一に,かつ適度に微細に分散したほうが良好な制振性が得られる。少なくとも,半径φ10の円を内包しない程度の凸部または凹部分布にしておけば,制振性の良好な状態が得られる。
銅層は、鋼板どうしを接合させて鋸・刃物の構造を保持する接着剤の役割を果たす。50μmを超えると、鋸・刃物等として使用中に銅層のみ摩耗が進行して摩擦部分で複数層の鋼板に剥離が生じ、摩耗の進行、靭性の低下などで悪影響がでる。
非接合部が存在することで、摩擦による振動エネルギーの吸収により制振性が高まるのであって,50%未満ではその効果は希薄である。85%を超えると,鋸・刃物としての構造が脆弱になり,破壊しやすくなる。
非接合部の面積は、接合前に銅めっき鋼板の表面に形成した凹凸の形状と、その銅めっき鋼板の積み重ね方から、幾何的に求めることができる。本発明の拡散接合条件に従えば、銅めっきどうしが接触して得られた接合面は、固相拡散により接合した面となり、冶金学的接合状態となる。そこで、積み重ねたときに銅めっきによる凸部同士が接触する面積率が接合後の接合部面積率となり、その残部が非接合部の面積率としてよい。
鋸・刃物としての厚さは1〜8mm程度が一般的である。積層構造を構成するために,銅めっき鋼板の板厚は0.2〜2.5mmとするのが妥当である。
本発明は非接合面積率が所定の範囲となるように制御することが必要である。面圧が5MPaを超えると,凸部の面積に関わらず,非接合面積率が小さくなりやすい。面圧が1MPa以下では凸部の面積に関わらず,非接合面積率が大きくなりやすい。
本発明は非接合面積率が所定の範囲となるように制御することが必要である。
本発明では、銅めっき鋼板の表面に形成した凹凸の形状と、その銅めっき鋼板を積層するときの組み合わせ方から、接合面における接合部面積率を幾何的に算出できる。そして、非接合面積率はその残部としてよい。そのためには、幾何的に求められる接合部の面積率が積層体での接合部面積率として良好に再現できるよう、拡散接合の条件を適切に選定する必要がある。加熱温度が1000℃を超えると,凸部の面積に関わらず,非接合面積率が小さくなりやすい。800℃以下では,凸部の面積に関わらず,非接合面積率が大きくなりやすい。
加熱時の温度分布を安定化させるために,少なくとも10分の保持は必要である。
表1にめっき母材となる鋼板の化学成分を示す。D鋼は一般的な鋸・刃物用鋼であるJIS炭素工具鋼のSK85である。
5〜30%となるように凹凸を形成した。銅めっき鋼板の板厚、銅めっき厚さ、凹凸部の形成方法、凹凸部の高低差、凸部の面積率は、表2に示してある。
銅めっき鋼板を異形断面圧延により加工したので、めっき鋼板の表面に凹凸が形成されているものの、凹部(溝部)にも銅めっきは残っている。
銅めっき鋼板を表面から研削したので、凹凸パターンの凹部(溝部)は鋼板の素地が露出しており、この部分には銅めっきは残っていない。
制振性の評価は、図5に示す装置を用いて行った。積層材を制振性測定対象物2としてフレーム1に糸3により懸垂保持しておいて、回転自在なハンマー4を水平状態から回転落下させてその打撃音をマイクロホン5にて受音し,アンプ6で音圧レベルを測定した。その結果を表2に示してある。
また,耐摩耗性については、図6に示す土砂摩耗試験を用いて試験前後の重量比を測定した。供試材から60mm四方となる試験片を切り出した後,回転方向に対して30°傾斜した試験ホルダーに固定し,φ20mm以下の玉砂利を摩耗相手材とし,回転速度100rpm,乾式雰囲気にて行った。試験前後の試料重量差から摩耗により消失した材料の重量差を摩耗量とした。摩耗量も表2に示してある。
上記の評価では、比較材としてD,E鋼の組成を有する単板を用いて制振性および耐摩耗性について同様に試験を行った。それぞれ、No.15とNo.24である。
また,No.16〜23は鋼の化学成分に関わらず,凸凹の高低差が15〜30μm,非接合部の界面面積が70〜85%であり,いずれも音圧レベルが90〜99dBと低い。比較例No.24の高炭素鋼(E鋼)の単板113dB及び比較例No.15の単板115dBに比べて10dB以上の音圧低減が認められる。
Claims (6)
- 表面に厚さ3〜25μmの銅めっき層を有する銅めっき鋼板の表面に、凹部と凸部の高さの差がめっき厚以上50μm以下、凸部の面積率が5〜20%、かつ任意の位置に半径10mmの円形領域を描いたとき、その円内に凹部のみまたは凸部のみが含まれることがないように凹凸を形成し、その銅めっき鋼板を2枚以上重ね合わせて拡散接合し、接合面において接合していない領域が1接合面あたり接合面の面積の50〜85%を占める積層材とすることを特徴とする制振性に優れた丸鋸用積層材の製造方法。
- 銅めっき鋼板の板厚が、0.2〜2.5mmであることを特徴とする請求項1に記載の丸鋸用積層材の製造方法。
- 凹凸の形成方法が、異形断面圧延によるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の制振性に優れた丸鋸用積層材の製造方法。
- 凹凸の形成方法が、エッチングにより銅めっき層を除去することによるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の制振性に優れた丸鋸用積層材の製造方法。
- 凹凸の形成方法が、切削などの機械的手法により銅めっき層を除去することによるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の制振性に優れた丸鋸用積層材の製造方法。
- 積層材の拡散接合において、平均面圧1〜5MPa、加熱温度800〜1000℃、加熱時間10分以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の制振性に優れた丸鋸用積層材の製造方法。
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