JP5867387B2 - ポリエステルアミド化合物 - Google Patents
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Description
しかしながら、近年ではプラスチックの大量生産や廃棄物量増大による環境負荷を軽減する動きが求められており、PETを利用した容器も薄肉・軽量化を追求する傾向にある。薄肉・軽量化は容器の酸素バリア性の悪化を招くこととなるため、PETからなる容器の保存性能を保持しつつ薄肉・軽量化を達成するには、容器の酸素バリア性を高める方法が求められている。
また別の方法として、PETからなる容器の内側または外側に酸素バリア性に優れる熱硬化性樹脂をコーティングしたり、無機酸化物を蒸着する方法が挙げられる(特許文献3及び4を参照)。しかしながら、この方法も同様に容器外から進入してくる微量の酸素を完全に遮断できない上に、容器に衝撃が加えられたり、折り曲げられる等の外力が働くと、熱硬化性樹脂膜や無機酸化物蒸着膜にクラックが入り、大きく酸素バリア性が低下する問題がある。
この方法を達成する手段としては、容器を構成する熱可塑性樹脂に酸素吸収剤を添加する方法が挙げられる。例えば、特許文献5及び6には、鉄粉等からなる酸素吸収剤を樹脂中に分散させた酸素吸収多層体および酸素吸収フィルムが記載されている。また特許文献7には、コバルト等の金属系触媒を添加したポリアミドを酸素吸収材として利用し、容器内外の酸素を吸収する包装用酸素捕集障壁が記載されている。特許文献8には、ポリブタジエン等のエチレン性不飽和化合物及びコバルト等の遷移金属触媒をガスバリア性樹脂中に含む酸素吸収層を利用した容器が記載されている。さらに別の方法として、酸素吸収機能を発現する化合物をPETと共重合して得られる酸素吸収性PETから容器を製造する方法が挙げられる。例えば、特許文献9には、ポリエステルセグメントと酸素掃去性のポリオレフィンセグメントからなるコポリエステルを利用した容器が記載されている。
<1>下記一般式(I)で表される芳香族ジカルボン酸単位を70モル%以上含む多価カルボン酸単位25〜50モル%と、下記一般式(II)で表される脂肪族ジオール単位を70モル%以上含む多価アルコール単位25〜50モル%と、下記一般式(III)で表される構成単位0.1〜50モル%とを含有する、ポリエステルアミド化合物。
<2>上記<1>に記載のポリエステルアミド化合物を含むポリエステルアミド組成物。
本発明のポリエステルアミド化合物は、下記一般式(I)で表される芳香族ジカルボン酸単位を70モル%以上含む多価カルボン酸単位25〜50モル%と、下記一般式(II)で表される脂肪族ジオール単位を70モル%以上含む多価アルコール単位25〜50モル%と、3級水素含有カルボン酸単位(好ましくは下記一般式(III)で表される構成単位)0.1〜50モル%とを含有する。
ただし、前記多価カルボン酸単位、前記多価アルコール単位、及び前記3級水素含有カルボン酸単位の合計は100モル%を越えないものとする。本発明のポリエステルアミド化合物は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記以外の構成単位をさらに含んでいてもよい。
本発明の「ポリエステルアミド樹脂」は、本発明のポリエステルアミド化合物において、極限粘度が0.4dl/g以上の重合体を意味する。ポリエステルアミド樹脂は、単独で成形加工可能な材料であり、包装材料や包装容器に加工することができる。本発明のポリエステルアミド樹脂に、必要により、他の樹脂や添加剤を添加、混合してもよく、そのようにして得たポリエステルアミド組成物を成型加工してもよい。本発明のポリエステルアミド樹脂は、金属を含有せずとも十分な酸素吸収性能を発現し、かつ不快な臭気が発生せず、極めて良好な透明性を有する。
本発明の「ポリエステルアミドオリゴマー」は、本発明のポリエステルアミド化合物において、極限粘度が0.4dl/g未満の重合体を意味する。ポリエステルアミドオリゴマーは、単独では通常成型加工できない材料である。一般的にはオリゴマーとは数平均分子量が1000以下の重合体を指すことが多いが、本発明のポリエステルアミドオリゴマーには、そのような一般的なオリゴマーだけでなく、数平均分子量が10000未満の重合体も包含されうる。
本発明のポリエステルアミド化合物中の多価カルボン酸単位は、適度な耐熱性や酸素バリア性を付与する観点から、前記一般式(I)で表される芳香族ジカルボン酸単位を多価カルボン酸単位中に70モル%以上含み、当該含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
前記一般式(I)で表される芳香族ジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等、及びそれらのエステル形成性誘導体等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記一般式(I)で表される芳香族ジカルボン酸単位は、イソフタル酸単位、テレフタル酸単位及び2,6−ナフタレンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1種を前記芳香族ジカルボン酸単位中に合計で50モル%以上含むことが好ましく、当該含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、2−メチルコハク酸、イタコン酸、グルタコン酸等が挙げられる。脂環式ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸類、デカリンジカルボン酸類等が挙げられる。3価以上の多価カルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
本発明のポリエステルアミド化合物中の多価アルコール単位は、包装材料として必要な柔軟性を付与する観点から、前記一般式(II)で表される脂肪族ジオール単位を多価アルコール単位中に70モル%以上含み、当該含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
前記一般式(II)で表される脂肪族ジオール単位を構成しうる化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の炭素数2〜20の脂肪族ジオール、及びそれらのエステル形成性誘導体等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記一般式(II)で表される脂肪族ジオール単位は、エチレングリコール単位、1,3−プロパンジオール単位及び1,4−ブタンジオール単位からなる群から選ばれる少なくとも1種を前記脂肪族ジオール単位中に合計で50モル%以上含むことが好ましく、当該含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
芳香族ジオールとしては、ヒドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等が挙げられる。3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
本発明における3級水素含有カルボン酸単位は、ポリエステルアミド化合物の重合の観点から、アミノ基及びカルボキシル基を少なくとも1つずつ有する。具体例としては、下記一般式(III)又は(IV)で表される構成単位が挙げられる。
なお、官能基が更に置換されている場合、上述した炭素数には、更なる置換基の炭素数は含まれないものとする。例えば、ベンジル基は、フェニル基で置換された炭素数1のアルキル基と見なし、フェニル基で置換された炭素数7のアルキル基とは見なさない。以降の炭素数に記載についても、特に断りが無い限り、同様に解するものとする。
好ましいRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、メルカプトメチル基、メチルスルファニルエチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、4−ヒドロキシベンジル基等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、メチル基、エチル基、ベンジル基がより好ましい。
また、前記一般式(IV)で表される構成単位を構成しうる化合物としては、3−アミノ酪酸等のβ−アミノ酸を例示できるが、これらに限定されるものではない。
これらはD体、L体、ラセミ体のいずれであってもよく、アロ体であってもよい。また、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のポリエステルアミド化合物の重合度については、その用途がポリエステル樹脂と近いことから極限粘度が指標として使われる。本発明のポリエステルアミド化合物の極限粘度は、好ましくは0.1dl/g以上1.5dl/g以下である。
本発明のポリエステルアミド化合物がポリエステルアミド樹脂である場合、極限粘度は、成形加工性並びに成形体の機械物性、強度及び臭気等の観点から、好ましくは0.4〜1.5dl/g、より好ましくは0.5〜1.2dl/g、さらに好ましくは0.6〜1.0dl/gである。但し、本発明のポリエステルアミド樹脂を他の熱可塑性樹脂の添加剤や改質剤等に使用する場合、この範囲に限定されない。
本発明のポリエステルアミド化合物がポリエステルアミドオリゴマーである場合、極限粘度は、取扱い性、反応性及び熱安定性等の観点から、好ましくは0.1dl/g以上0.4dl/g未満、より好ましくは0.15〜0.35dl/g、更に好ましくは0.15〜0.3dl/gである。
なお、極限粘度は、実施例に記載の方法で求められる。また、極限粘度を上記範囲にすることは、重合時間、触媒量、重合時の真空度等を適宜設定することにより行うことができる。
本発明のポリエステルアミド化合物は、前記多価カルボン酸単位を構成しうる多価カルボン酸成分と、前記多価アルコール単位を構成しうる多価アルコール成分と、前記3級水素含有カルボン酸単位を構成しうる3級水素含有カルボン酸成分とを重縮合させることで製造することができ、重縮合条件等を調整することで重合度を制御することができる。重縮合時に分子量調整剤として少量のモノアミンやモノアルコール、モノカルボン酸を加えてもよい。
直接エステル化法における3級水素含有カルボン酸成分を添加するタイミングは重縮合工程の任意の段階でよいが、ポリマー中に3級水素含有カルボン酸成分が確実に組み込まれるようにする観点から、重合度が低い段階で添加することが好ましく、例えば多価カルボン酸成分と多価アルコール成分のエステル化の段階、もしくは低重合度物に重縮合触媒を添加する段階に3級水素含有カルボン酸成分を添加することができる。
ポリエステルアミド化合物の製造の際における、エステル交換触媒、エステル化触媒、エーテル化防止剤、また重合に用いる重合触媒、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤、重合調整剤等も従来既知のものを用いることができる。
上記重合方法で製造されたポリエステルアミド化合物は、そのまま使用することもできるが、更に重合度を高めるための工程を経てもよい。更に重合度を高める工程としては、押出機内での反応押出や固相重合等が挙げられる。固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置およびナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。特にポリエステルアミド化合物の固相重合を行う場合は、上述の装置の中で回転ドラム式の加熱装置が、系内を密閉化でき、着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進めやすいことから好ましく用いられる。
本発明のポリエステルアミド組成物は、本発明のポリエステルアミド化合物を含有する組成物である。本発明のポリエステルアミド組成物は、本発明のポリエステルアミド樹脂やポリエステルアミドオリゴマーに、種々の添加剤や種々の樹脂を添加、混合することで得られる混合物であり、当該混合物中において、ポリエステルアミド樹脂やポリエステルアミドオリゴマーは、添加した添加剤や樹脂と、反応していてもよい。
本発明のポリエステルアミド化合物は、要求される性能に応じて、滑剤、結晶化核剤、白化防止剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、酸化防止剤、耐衝撃性改良材等の添加剤を添加させてポリエステルアミド組成物としてもよい。これらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加することができる。
本発明のポリエステルアミド組成物においては、熱水処理後や長時間の経時後の白化抑制として、ジアミド化合物及び/又はジエステル化合物をポリエステルアミド化合物に添加することが好ましい。ジアミド化合物及び/又はジエステル化合物は、オリゴマーの析出による白化の抑制に効果がある。ジアミド化合物とジエステル化合物を単独で用いてもよいし、併用してもよい。
炭素数8〜30の脂肪族ジカルボン酸と主としてエチレンジアミンから成るジアミンから得られるジアミド化合物、または、主としてモンタン酸から成る脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜10のジアミンから得られるジアミド化合物が好ましく、特に好ましくは主としてステアリン酸から成る脂肪族ジカルボン酸と主としてエチレンジアミンから成るジアミンから得られるジアミド化合物である。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、ステアリン酸(C18)、エイコサン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、モンタン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等が例示できる。前記ジオールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、キシリレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が例示できる。これらを組み合わせて得られるジエステル化合物が好ましい。
特に好ましくは主としてモンタン酸から成る脂肪族ジカルボン酸と主としてエチレングリコール及び/又は1,3−ブタンジオールから成るジオールから得られるジエステル化合物である。
本発明のポリエステルアミド組成物は、透明性を改善する観点から、結晶化核剤を添加することが好ましい。透明性を改善するだけでなく、熱水処理後や長時間の経時後の結晶化による白化にも効果があり、結晶化核剤をポリエステルアミド化合物に添加することにより、球晶サイズを可視光の波長の1/2以下にすることで抑制できる。また、ジアミド化合物および/またはジエステル化合物と結晶化核剤を併用すると、これらの相乗効果により、それぞれの白化抑制効果から予想される程度よりはるかに優れた白化抑制が得られる。
本発明のポリエステルアミド組成物においては、ポリエステルアミド化合物に、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体から選択される1種以上のカルボン酸塩類を添加することが好ましい。ここで該誘導体としては、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム等の12−ヒドロキシステアリン酸金属塩等が挙げられる。前記カルボン酸塩類を添加することで、成形加工中に起こるポリエステルアミド化合物のゲル化防止や成型体中のフィッシュアイを低減することができ、成形加工の適性が向上する。
本発明のポリエステルアミド組成物は、酸素吸収性能を制御する観点や機械物性低下を抑える観点から酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤としては、銅系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオ系酸化防止剤等を例示することができ、中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が好ましい。
本発明のポリエステルアミドを含有するアミド組成物においては、耐衝撃性、フィルムの耐ピンホール性、柔軟性を改善するため耐衝撃性改良材を加えてもよい。耐衝撃性改良材としては、ポリオレフィン、ポリアミドエラストマー、スチレン−ブタジエン共重合樹脂の水素添加処理物、アイオノマー、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂の無水マレイン酸変性品、エチレン−メタクリル酸共重合樹脂、ナイロン6,66,12、ナイロン12、ナイロン12エラストマー、エチレン−プロピレン共重合エラストマー、ポリエステルエラストマー等を添加することができる。耐衝撃性改良材の添加量は1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%が更に好ましく、2〜3質量%が特に好ましい。添加量が多いと、透明性、ガスバリア性が低下する。添加量が少ないと、耐衝撃性、フィルムの耐ピンホール性、柔軟性があまり改善されない。
本発明のポリエステルアミド化合物を、要求される用途や性能に応じて、種々の樹脂と混合してポリエステルアミド組成物としてもよい。本発明のポリエステルアミド化合物と混合しうる樹脂としては、特に限定されないが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール及び植物由来樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
これらの中でも、酸素吸収効果を効果的に発揮するためには、ポリエステル、ポリアミド及びポリビニルアルコールのような酸素バリア性の高い樹脂とのブレンドが好ましい。
ポリオレフィンの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等のオレフィン単独重合体;エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ポリブテン−1共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体等のエチレンとα−オレフィンとの共重合体;エチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分又は完全鹸化物等のその他のエチレン共重合体;これらのポリオレフィンを無水マレイン酸等の酸無水物等でグラフト変性したグラフト変性ポリオレフィン等を挙げることができる。
前記ポリエステルとは、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種又は二種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種又は二種以上とから成るもの、又はヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から成るもの、又は環状エステルから成るものをいう。
本発明で使用しうるポリアミドは、ラクタムもしくはアミノカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とするポリアミドや脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とする脂肪族ポリアミド、脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とする部分芳香族ポリアミド、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とする部分芳香族ポリアミドなどが挙げられ、必要に応じて、主構成単位以外のモノマー単位を共重合してもよい。
ポリビニルアルコールの具体例としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体及びその部分若しくは完全鹸化物等を挙げることができる。さらに、その変性品を用いても構わない。
植物由来樹脂の具体例としては、上記樹脂と重複する部分もあるが、特に限定されることなく公知の種々の石油以外を原料とする脂肪族ポリエステル系生分解性樹脂が挙げられる。脂肪族ポリエステル系生分解性樹脂としては、例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)等のポリ(α−ヒドロキシ酸);ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート(PES)等のポリアルキレンアルカノエート等が挙げられる。
また、本発明のポリエステルアミド化合物において、酸素吸収効果に加えて更なる酸素吸収性能が必要とされる場合には、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属;銅、銀等の第I族金属;スズ、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属;バナジウム等の第V族金属;クロム等の第VI族金属;マンガン等の第VII族金属から選択された一種以上の金属原子を、重縮合反応開始前、反応中、又は押出成形時に化合物又は金属錯体として添加することができる。これらの金属原子の中でも、酸素吸収能力の観点から第VIII族金属原子が好ましく、コバルト原子がより好ましい。
無機酸塩としては、塩化物や臭化物等のハロゲン化物、硫酸塩等のイオウのオキシ酸塩、硝酸塩等の窒素のオキシ酸塩、リン酸塩等のリンオキシ酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。一方、有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等が挙げられるが、カルボン酸塩が本発明の目的に好適であり、その具体例としては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ギ酸、シュウ酸、スルファミン酸、ナフテン酸等の遷移金属塩が挙げられる。
上記金属触媒化合物は、一種以上を添加することができるが、金属原子としてコバルトを含むものが特に酸素吸収機能に優れており、好ましく用いられる。固体または粉末状で溶融混合時の取り扱い性に優れる点から、ステアリン酸コバルト(II)又は酢酸コバルト(II)が特に好ましい。
本発明のポリエステルアミド組成物は、更に酸化性有機化合物を含有してもよい。
酸化性有機化合物としては、酸素が存在する雰囲気下において、自動的に、または触媒や、熱、光、水分等のいずれか一つの共存下において酸化される有機化合物であり、水素の引き抜きが容易に行えるような活性な炭素原子を有するものが好ましい。このような活性炭素原子の具体例としては、炭素−炭素二重結合に隣接する炭素原子、炭素側鎖の結合した第三級炭素原子、活性メチレン基を含むものが挙げられる。
例えば、ビタミンCやビタミンEも酸化性有機化合物の一例として挙げられる。また、ポリプロピレン等のように分子に酸化されやすい3級水素を持つようなポリマーや、ブタジエンやイソプレン、シクロヘキサノンのように分子内に炭素−炭素二重結合をもつ化合物やそれらからなる、もしくは含むポリマーも酸化性有機化合物の一例として挙げられる。その中でも、酸素吸収能力や加工性の観点から、炭素−炭素二重結合を有する化合物やポリマーが好ましく、炭素原子数4〜20の炭素−炭素二重結合を含む化合物やそれらから誘導された単位を含むオリゴマー乃至ポリマーがより好ましい。
組み合わせで用いられる単量体としては、炭素原子数2〜20のα−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンが挙げられ、他にスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどの単量体も使用可能である。
これらの単量体としては、不飽和カルボン酸またはこれらの誘導体を用いるのが好ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等のα,β−不飽和カルボン酸無水物、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸の無水物が挙げられる。
本発明のポリエステルアミド化合物及びポリエステルアミド組成物は、酸素バリア性や酸素吸収性能が要求されるあらゆる用途に利用できる。例えば、本発明のポリエステルアミド化合物を単独で小袋などに充填して酸素吸収剤として利用してもよい。
本発明のポリエステルアミド化合物及びポリエステルアミド組成物の代表的な利用例としては包装材料や包装容器等の成型体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明のポリエステルアミド化合物またはポリエステルアミド組成物を、それら成型体の少なくとも一部として加工して使用することができる。例えば、本発明のポリエステルアミド化合物またはポリエステルアミド組成物をフィルム状又はシート状の包装材料の少なくとも一部として使用することができ、また、ボトル、トレイ、カップ、チューブ、平袋やスタンディングパウチ等の各種パウチ等の包装容器の少なくとも一部として使用することができる。なお、これら包装材料や包装容器の成型体の構造は、本発明のポリエステルアミド化合物またはポリエステルアミド組成物からなる層の単層構造であってもよく、当該層と他の熱可塑性樹脂からなる層を組み合わせた多層構造であってもよい。本発明のポリエステルアミド化合物またはポリエステルアミド組成物からなる層の厚みは、特に制限は無いが、1μm以上の厚みを有することが好ましい。
また、トレイやカップ等の容器は射出成形機から金型中に溶融したポリエステルアミド化合物又はポリエステルアミド組成物を射出して製造する方法や、シート状の包装材料を真空成形や圧空成形等の成形法によって成形して得ることができる。包装材料や包装容器は上述の製造方法によらず、様々な方法を経て製造することが可能である。
1H−NMR(400MHz,日本電子(株)製、商品名:JNM−AL400、測定モード:NON(1H))を用いて共重合体の成分組成の定量を実施した。具体的には、溶媒としてトリフルオロ酢酸−dを用いてポリエステルアミド化合物及びポリエステル化合物の5質量%の溶液を調製し、1H−NMR測定を実施した。
ポリエステルアミド化合物又はポリエステル化合物0.5gをフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの混合溶媒(質量比=6:4)120gに加熱溶解し、ろ過後、25℃まで冷却して測定用サンプルを調製した。毛細管粘度計自動測定装置((株)柴山科学機械製作所製、商品名:SS−300−L1)を用い、25℃で測定を行った。
示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC−60)を用い、昇温速度10℃/分で窒素気流下にDSC測定(示差走査熱量測定)を行い、融点(Tm)を求めた。
粉砕したサンプル2gを、アルミ箔積層フィルムからなる25cm×18cmの3方シール袋に、水10mlを含ませた綿と共に仕込み、袋内空気量400mlとなるようにして密封した。袋内の湿度は100%RH(相対湿度)とした。40℃下で28日保存後に、袋内の酸素濃度を酸素濃度計(東レエンジニアリング(株)製、商品名:LC−700F)で測定し、この酸素濃度から酸素吸収量(cc/g)を計算した。数値が高いほど酸素吸収性能に優れ好ましい。
(ポリエステルアミド化合物の重合)
エステル化反応槽に、表1に示す量の有機チタン酸テトラブチル(TBT)触媒、テレフタル酸とエチレングリコールとDL−アラニンとを仕込み、撹拌下、約240℃、約0.3MPaにて3時間エステル化反応を行った。この反応物を重縮合槽へ移送し、表1に示す触媒を加えた後、撹拌下、窒素流通下にて加熱しながら過剰のエチレングリコールを系外へ留去した後、表1に示す反応条件で重縮合を行い、ポリエステルアミド化合物を得た。
図1の1.3〜1.7ppm付近の吸収ピークは、DL−アラニンのメチル基の水素に由来する吸収ピークaであり、図1では、吸収ピークaの積分強度を示している。また、4.7ppm付近の吸収ピークは、エチレングリコールのメチレン基の水素に由来する吸収ピークbであり、図1では、吸収ピークbの積分強度を示している。また、7.9〜8.4ppm付近のピークはテレフタル酸の芳香族環の水素に由来するピークcであり、図1では、吸収ピークcの積分強度を示している。
他の実施例及び比較例においても、同様の手法により、調製したポリエステルアミド化合物及びポリエステル化合物の成分組成の定量を実施した。
DL−アラニンをDL−2−アミノ酪酸に変更したこと以外は実施例3と同様の方法でポリエステルアミド化合物を得た。
DL−アラニンをDL−フェニルアラニンに変更したこと以外は実施例3と同様の方法でポリエステルアミド化合物を得た。
TBTを50ppmとし、反応時間を2時間に変更したこと以外は実施例3と同様の方法でポリエステルアミド化合物を得た。
TBTを150ppmとし、最高到達樹脂温度を265℃、反応時間を5時間に変更したこと以外は実施例3と同様の方法でポリエステルアミド化合物を得た。
(ポリエステル化合物の重合)
エステル化反応槽に表1に示す量のテレフタル酸とエチレングリコールを仕込み、撹拌下、約240℃、約0.3MPaにて3時間エステル化反応を行った。この反応物を重縮合槽へ移送し、表1に示す触媒を加えた後、撹拌下、窒素流通下にて加熱しながら過剰のエチレングリコールを系外へ留去した後、表1に示す反応条件で重縮合を行い、ポリエステル化合物を得た。
DL−アラニンをα位に水素を持たない2−アミノイソ酪酸に変更したこと以外は実施例3と同様の方法でポリエステルアミド化合物を得た。
これらに対し、3級水素を有するα−アミノ酸を共重合したポリエステルアミド化合物(ポリエステルアミド樹脂及びポリエステルアミドオリゴマー)は、金属を用いることなく十分な酸素吸収性能を発現することができ、しかも不快な臭気を発生することがない(実施例1〜10)。
Claims (10)
- 下記一般式(I)で表される芳香族ジカルボン酸単位を70モル%以上含む多価カルボン酸単位25〜50モル%と、下記一般式(II)で表される脂肪族ジオール単位を70モル%以上含む多価アルコール単位25〜50モル%と、下記一般式(III)で表される構成単位0.1〜50モル%とを含有するポリエステルアミド化合物。
- 前記一般式(I)で表される芳香族ジカルボン酸単位が、イソフタル酸単位、テレフタル酸単位及び2,6−ナフタレンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1種を合計で50モル%以上含む、請求項1に記載のポリエステルアミド化合物。
- 前記一般式(II)で表される脂肪族ジオール単位が、エチレングリコール単位、1,3−プロパンジオール単位及び1,4−ブタンジオール単位からなる群から選ばれる少なくとも1種を合計で50モル%以上含む、請求項1又は2に記載のポリエステルアミド化合物。
- 前記一般式(III)におけるRが、水酸基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、アリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、メルカプトメチル基、メチルスルファニルエチル基もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、又は、アルキル基で置換された炭素数6〜10のアリール基もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルアミド化合物。
- 極限粘度が0.4dl/g以上1.5dl/g以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルアミド化合物。
- 極限粘度が0.1dl/g以上0.4dl/g未満である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルアミド化合物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステルアミド化合物を含むポリエステルアミド組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステルアミド化合物又は請求項7に記載のポリエステルアミド組成物を加工して得られる成型体。
- 包装材料又は包装容器である、請求項8に記載の成型体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステルアミド化合物又は請求項7に記載のポリエステルアミド組成物の、酸素吸収剤としての使用。
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