JP5846604B2 - 行動リズムモニタリング用バイオマーカー - Google Patents

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Description

本発明は、酸化ストレス応答でみる行動リズムモニタリングのためのバイオマーカーに関する。
健康な生体内では日々活性酸素による酸化ストレスとその抗酸化活性のバランスがとられている。しかし、生活習慣病や加齢に伴いそのバランスが破錠した時に酸化ストレス障害が起きる。酸化ストレスは、パーキンソン病やアルツハイマー病などの脳神経疾患、動脈硬化や心筋梗塞などの循環器性疾患、糖尿病、免疫不全、ガンなど種々の疾患を引き起こすことが知られている。
従来から、生体に過度な酸化ストレスが加わると、生体内で過酸化水素やヒドロキシラジカルなどの活性酸素が発生して生体内の様々な脂質が酸化され酸化脂質を生成することが知られていたため、これら酸化脂質を酸化ストレスマーカーとして用い、その量を測定することで酸化ストレスの程度を評価することが行われていた。産総研の吉田、二木らは、その中でもリノール酸、コレステロール、アラキドン酸などが酸化されて生成されるヒドロキシオクタデカジエノイックアシッド(HODE)類、7-OHCH、イソプロスタン類などに注目し、酸化ストレスレベルをより高感度に測定できるバイオマーカーとして開発し、それら酸化脂質の測定法を確立した(特許文献1)。とりわけ、HODE類は酸化ストレスが亢進すると考えられている腎症関連疾患(特許文献2)、痴呆症(特許文献3)、慢性肝炎及び肝硬変(特許文献4)の診断用バイオマーカーとしての技術的確立もすすめられている。
しかしながら、これらの酸化脂質類についての日内変動は従来全く検討されたことがなかった。
これまで、生体内酸化ストレスの日内変動については、酸化ストレスマーカーとして知られているチオバルビツール酸反応性種(TBARS)の濃度やスーパーオキシドジスムターゼやカタラーゼ、ペルオキシダーゼの酵素活性が、一日のうちでも変化があることが指摘されていた(非特許文献1および2)が、その振幅は小さく日内変動としては規則性に乏しいものであり、生体内のどのような仕組みで引き起こされているのかについても、また何らかの行動リズムとの相関があるか否かについても、全く調べられていなかった。
また、酸化ストレス状態の日内リズムを検出するために、酸化ストレス関連分子の遺伝子発現の日内リズムをヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)遺伝子などを用いて解析する試みがなされているが、遺伝子発現をみても、酸化ストレス状態の日内リズムを検出することはできなかった(非特許文献3)。
一方で、体温や血圧などの生理日内リズムや脂質代謝や糖代謝などの代謝日内リズムが広く体内時計により制御されることが近年明らかになってきている。その結果、代謝日内リズムをモニタリングするための手法として、最も一般的な手法は、血液、毛髪、口腔内上皮、唾液を試料として体内時計遺伝子の発現を調べる試みであり、本発明者らも含め活発に進められている。しかし、本発明者らは、ストレス性睡眠障害モデル動物の開発をする過程において体内時計遺伝子のリズム発現は正常であるが、睡眠日内リズムが乱れるというケースに多く遭遇したことから、体内時計遺伝子発現だけでは生体代謝日内リズムを見極める事が出来ないことを痛感した。Clock/clockマウスは体内時計遺伝子Clockの変異体であり、体内時計が壊れたモデル動物として世界に広く用いられているが、Clock/clockマウスは体内時計が壊れていても、明暗条件下では光条件に従って行動するために自由摂食では明期に休息し、暗期に行動するという行動リズムが観察される。しかしながら、Clock/clockマウスでは、明暗条件下で観察される行動リズムに対応した体内時計遺伝子の発現リズムはみられず、時計遺伝子の発現の観察では行動リズムを検出できない(非特許文献4)。
生体リズムには、脳内視床下部の視交叉上核(SCN)に存在する中枢時計によって支配されているリズムと、SCNに存在する中枢時計とは独立したかたちで摂食行動によって規定されるリズム(給餌性リズム)が存在し、前者は時計遺伝子による制御である一方、給餌性リズムの発振には時計遺伝子を必要としておらず(非特許文献5)、その分子メカニズムは未だに不明である。
代謝日内リズムとして典型的な給餌性リズムについてみれば、当該リズムは摂食による直接的な応答ではなく、毎日一定の時間帯に摂食(制限給餌)することにより、中枢時計とは独立したリズムを刻むようになり、制限給餌終了後の絶食状態においてもそのリズムが継続されることから、給餌性リズムによって駆動される時計遺伝子非依存性の振動体が存在しているものと考えられる(非特許文献6)。しかしながら、給餌性リズムを客観的に測定するためのバイオマーカーは存在していない。例えば、摂食によって直接的に影響を受ける血糖値や血中脂質量は、食事直後の吸収された栄養動態を反映するものであり、生体内で速やかに消失してしまうため、給餌性リズムの測定用バイオマーカーとしては使用できない。
したがって、時計遺伝子の制御の及ばない典型的な行動リズムである給餌性リズムを客観的に測定できるバイオマーカーの提供が強く望まれていた。
夜食症患者は、体内の代謝リズムが乱れ、睡眠障害や肥満のみならず精神疾患までもを引き起こす事が知られている。しかし、夜食症の診断は医師による問診が主であり、適切な診断方法がない。給餌性リズムは日常の食行動の履歴を反映すると考えられるため、給餌性リズムを測定することにより、食行動の異常を客観的にモニタリングできるものと期待される。
給餌性リズムを客観的に測定できるバイオマーカーが提供できれば、夜食症患者の診断にも有効であると考えられるため、このようなバイオマーカーへの期待は大きい。
特許第4348452 特許第4863204 特許第4521512 特許第4569959
Manoharan S, Baskar AA, ManivasagamT, Subramanian P., Singapore, Med J. 2005, 46(4):184-8. Manoharan S, Panjamurthy K, BalakrishnanS, Vasudevan K, VellaichamyL., Pharmacol Rep. 2009, 61(4):719-26. Poliandri AH, Esquifino AI, Cano P, Jimenez V, Lafuente A, Cardinali DP, Duvilanski BH, J Pineal Res. 2006, 41(3):238-46. Oishi K, Miyazaki K, Ishida N., Biochem Biophys Res Commun. 2002, 298(2):198-202. Pendergast JS, Nakamura W, Friday RC, Hatanaka F, TakumiT, Yamazaki S., PLoS One. 2009, 4(3):e4860. 本間研一 時間生物学事典(朝倉書店)2008「給餌性概日リズム」
本発明は、体内時計遺伝子の発現とは連動しない給餌性リズムなどの行動リズムの体内時刻を知るための方法及びそのためのバイオマーカーを提供することを目的とするものであり、同時に生体内の酸化ストレス日内リズムを安定的かつ精度良く検出する方法を提供するものである。
本発明者らは、時計遺伝子発現とは関係しない給餌性リズムの体内時刻を知るためのバイオマーカーを探索するにあたり、日常の食行動リズムに関連する様々な物質を候補として検討した。血糖値のように摂食によって一過性に応答する生体内物質の場合は、連続的試料採取でリズムパターンを判別しなくてはならず、被験者への負担が大きいため適さない。また、脳内SCNの中枢時計によって制御されている時計遺伝子発現量の測定では、給餌性リズムを反映しないことは明らかであるため、数時間おき(一日に数回)にサンプリングしてその変化のパターンを解析できるような安定性があり、かつ鋭敏に過去の日常的な摂食タイミングの履歴を反映する、新たなバイオマーカーの開発が必要であると考えられた。
本発明者らは、従来生体内の酸化ストレス測定用のマーカーとして開発され、各種疾患の診断用マーカーとして検討されているヒドロキシオクタデカジエン酸(HODE)類、ヒドロキシコレステロール類(7-OHChなど)、イソプロスタン類などの酸化脂質類が、摂食行動に伴って変動する可能性に思い至り、マウスを概日リズムと無関係に強制的に摂食させた場合の摂食行動パターンにあわせて、これら酸化脂質類などの各種酸化ストレス測定用マーカーの血中濃度変化パターンを測定した。
その結果、驚くべきことに、従来知られている各種酸化ストレス測定用マーカーのうちで、HODE類及び7-OHChの血中濃度変化パターンのみが、摂食行動パターンと同期しており、とりわけHODE類は鋭敏なりズムを刻むことが確認できた。また、絶食により摂食リズムをなくしてしまうとHODE類および7-OHChの血中濃度が低値のまま変化がなくなり、再給餌により摂食行動が開始するとHODE類および7-OHChともに急激な上昇が認められる。
このことは、HODE類は給餌性リズムの体内時刻を知るための優れたバイオマーカーとなることを示すことであると共に、生体内の酸化ストレスには給餌性リズムに同期した日内リズムが存在することを明らかにできた。また、このことは、HODE類が、酸化ストレス日内リズム検出用マーカーとしても優れていることを示したことでもある。7-OHChもHODE類ほどの鋭敏なリズムは刻まないものの、明らかに給餌性リズムに同期した日内リズムを刻むので、生体内の給餌リズム又は酸化ストレスの日内リズムを検出する際にHODE類と共に用いることで、より正確な日内リズムを検出することができるものと期待される。
以上の知見を得たことで、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の発明を含むものである。
〔1〕 血液中のヒドロキシオクタデカジエノイックアシッド(HODE)類、又はHODE類と共に7-ヒドロキシコレステロール類(7-OHCh)を少なくとも1日間、経時的に複数回測定し、その測定値の経時的変化を観察することを特徴とする、行動リズムの日内変化をモニタリングする方法。
〔2〕 前記HODE類が9-HODE及び13-HODEからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕 前記行動リズムが摂食行動リズムである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕 血液中のヒドロキシオクタデカジエノイックアシッド(HODE)類、又はHODE類と共に7-ヒドロキシコレステロール類(7-OHCh)を少なくとも1日間、経時的に複数回測定し、その測定値の経時的変化を観察することを特徴とする、体内の酸化ストレス応答の日内リズムを観察する方法。
〔5〕 実験動物に対し、被検物質を投与し、血液中のHODE類又はHODE類と共に7-OHChを少なくとも1日間、経時的に複数回測定し、その測定値の経時的変化を観察する工程と、被検物質を投与しない場合と比較する工程を含むことを特徴とする、酸化ストレス応答の改善効果物質のスクリーニング方法;
〔6〕 酸化ストレス改善物質の効果的な投与時刻の判定方法であって、下記の(1)〜(4)を含む方法;
(1)被検酸化ストレス改善物質を、実験動物に対して複数の時刻に投与し、投与時刻ごとに投与直後の血液中のHODE類、又はHODE類と共に7-OHChを測定する工程、
(2)あらかじめ前記被検酸化ストレス改善物質を投与せずに同一の時刻毎に測定していた場合の測定値と、前記(1)で得られた各投与時刻ごとの測定値とを比較し、両者の差をそれぞれの時刻における変化量として算出する工程、
(3)前記(2)で得られた、それぞれの投与時刻における変化量を比較し、変化量が最大となった投与時刻を決定する工程、
(4)前記(3)工程で得られた変化量が最大となった投与時刻を、被検酸化ストレス改善物質の効果的な投与時刻と判定する工程。
〔7〕 前記〔3〕の摂食リズムをモニタリングする方法が、客観的に摂食時刻を予測するためのものである、請求項3に記載の方法。
本発明においては、HODE類が体内時計遺伝子の発現とは連動しない給餌性リズム、及び生体内の酸化ストレス日内リズムを安定的かつ精度良く検出するための優れたバイオマーカーとして働くことを立証できた。HODE類、又はHODE類及び7-OHChの血中濃度の変動を測定して給餌性リズムを観察し、食行動の異常を客観的にモニタリングできるため、夜食症患者の診断にも有効である。また、HODE類を腎症関連疾患、痴呆症、慢性肝炎または肝硬変などの各種疾患の診断用バイオマーカーとして用いる場合には、給餌性リズムを考慮した測定スパンを設定することで、より精度の高い診断方法が提供できる。
野生型、clock/clockマウス、明期摂餌マウス、暗期摂餌マウスにおける一日の血液中リノール酸及びコレステロール濃度の変化を示す。 野生型およびclock/clockマウスの血液中でのtHODE、7-OHChの日内濃度変化 野生型およびclock/clockマウスの血液中でのtHETE、イソプロスタンの日内濃度変化 接餌量日内変化でみる自由摂食(AL)、明期給餌(DF)、暗期給餌(NF)条件下での日内摂食リズムと同条件下での自由行動リズム 明期摂餌マウス、暗期摂餌マウスにおける血液中でのtHODE、7-OHChの日内濃度変化 絶食および再給餌による血液中HODEおよび7-OHChの濃度変化。自由摂食の場合の日内変動と比較した。
1.本発明の食餌マーカーとしての酸化脂質類について
種々の疾患に関与することが知られている酸化ストレスの評価方法として、産総研の吉田、二木らは、活性酸素による脂質分解物である酸化脂質類を測定することで酸化ストレスの程度を評価する方法を提供しているが、その際に各種酸化脂質を正確に測定する方法についても独自の方法を見出している(特許文献1)。
特許文献1において、酸化ストレスマーカーとして有効性が認められた酸化脂質類としては、リノール酸、コレステロール、アラキドン酸などが酸化されて生成されるヒドロキシオクタデカジエノイックアシッド(HODE)類、7-ヒドロキシコレステロール類(7-OHCh)、イソプロスタン類などがある。
これら酸化ストレスマーカーのうち、HODE類、及び7-OHChのみが、明暗条件下での行動リズム及び食餌リズムと一致するリズムを刻むことが本発明において見出された。
すなわち、本発明における行動リズムマーカーとしては、酸化ストレスマーカーのうちのHODE類、及び7-OHChを用いることができる。とりわけ、HODE類は刻むリズムの振幅の幅が大きいので、特に優れた行動リズムマーカーとなる。その際、7-OHChを補完マーカーとしてHODE類と共に測定することが好ましい。
本発明においてHODE類というとき、ヒドロキシル基を有し、炭素数16個で2重結合を2箇所有している不飽和脂肪酸(ヒドロキシオクタデカジエン酸)であり、ヒドロキシル基及び2重結合の位置は9位および12位に限定される。なお、具体的な構造式及び性質など詳細な説明は特許文献1に記載されており、Cayman Chemical社もしくはLarodan Fine Chemicalsより入手可能である。また、7-OHChは、7位の位置に水酸基を有するコレステロールを指し、同様に特許文献1に構造式が記載されている。
HODE類として、好ましくは、9-HODE、13-HODE、それらのHODE量を合わせた全HODE(tHODE)が用いられる。tHODEが最も好ましい。
2.本発明における「行動リズム」について
本発明において、「行動リズム」というとき、典型的には「食餌リズム」など体内の時計遺伝子発現に基づく概日リズムとは独立した日内リズムであって、摂食の行動リズムをいう。通常の食餌リズムを制御する遺伝子や体内のどの領域がその制御に関わっているかは知られておらず、体内時計遺伝子による行動リズムとは異なる仕組みによりコントロールされている。
3.本発明の行動リズムマーカーとして用いる酸化脂質の測定法
本発明の行動リズムマーカーとして用いるHODE類又は7-OHChの測定には、基本的には特許文献1に記載の酸化脂質測定方法に従う。具体的には、生体試料をまず水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)などの還元剤で処理し、活性酸素との反応生成物である過酸化物を安定な還元体に導く。そして、還元体をアルカリ処理、好ましくは水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物と反応させ、加水分解して均一な遊離脂肪酸にする。加水分解処理後のサンプルはLC-MS/MSおよびGC-MSのような通常の分析手段を用いて酸化脂質であるHODE類又は7-OHChを測定する。
4.本発明における行動リズムのモニタリング方法
(1)モニタリング対象動物
本発明で対象となる被検動物としては、ヒトを含む哺乳動物であり、実験のために用いる場合は一般的な実験動物類が好ましく、特にマウスなどの齧歯類が好ましい。動物の行動リズムは明暗条件の下では、体内時計遺伝子の発現リズムの有無にかかわらずリズムを刻むので、clock/clockマウスなど、体内時計遺伝子がノックアウトされた実験動物であっても被検動物として用いることが可能である。
(2)明暗条件下での行動リズムのモニタリング手法
被検動物に対して、8:00点灯/20:00消灯の照明条件で2週間、通常飼育する。このような条件では、体内時計が壊れていても行動の日内リズは保たれる。飼育ケージには赤外線センサー(オムロンE3HS-DS5E1)が取り付けられており、センサー前を動物が横切った場合にカウントを行い、そのデータをクロノバイオロジーキットシステム(スタンフォード社製)に送る。この5分ごとのカウント量を自由行動の行動量とし、2週間分の行動パターンを解析する。
血液中のヒドロキシオクタデカジエノイックアシッド(HODE)類又はHODE類および7-ヒドロキシコレステロール類(7-OHCh)を測定して、体内の酸化ストレス応答の日内リズムを観察する。
その際に、脂質酸化物の変化による血液中の酸化ストレス度判定を行動リズムと合わせて経時的に追うことが重要である。
(3)食餌リズムのモニタリング手法
被検動物に対して、通常飼育しながら2種の食餌リズムのモニタリング方法のいずれかを行う。1つは、食餌リズムとほぼ連動している飲水行動リズムを飲水ボトルの先端に合わせてセットした赤外線センサー(オムロンE3HS-DS5E1)で、動物が水を飲みにきた時にカウントを取る事によって測定する。データの解析はクロノバイオロジーキットシステム(スタンフォード社製)で、5分ごとのカウント量を飲水行動の行動量とする。もう1つは、10分ごとに動物による摂餌で減少した餌の量を測定する摂餌量測定装置(メルクエスト社製)を用いて、摂食量を経時的に測定する。
血液中のヒドロキシオクタデカジエノイックアシッド(HODE)類、又はHODE類および7-ヒドロキシコレステロール類(7-OHCh)を測定して酸化ストレス応答をみることで食行動リズムをモニタリングする。
4.行動リズムによる影響を考慮した酸化ストレス応答改善物質のスクリーニング方法
本発明の行動リズムマーカーの日内リズムを測定することで、行動リズムにより影響をうける酸化ストレス応答の変動を測定することができる。酸化ストレスを軽減するような抗酸化物質などのストレス改善物質のスクリーニングを行う際、酸化ストレス度の日内リズム考慮すれば、よりその効用が高い時間帯を見いだす事が出来る。また、これまでは改善効果の認められなかった物質でも投与のタイミングを変える事で抗酸化機能を見いだす事が出来る可能性がある。
実験動物に対し、被検物質を投与し、血液中のHODE類、又はHODE類および7-OHChを測定して酸化ストレス応答の日内リズムを測定し、被検物質を投与しない場合と比較する。
被検物質は、典型的にはポリフェノール類、カフェイン類などの抗酸化物質が対象となるが、これら既知の抗酸化物質には限られず、生体への毒性がなく投与可能であれば、どのような物質も対象となる。
被検物質の投与方法は、経口投与、静注による投与、皮膚からの投与など、通常の投薬方法が適用できる。被検物質の投与時期は、HODE類の測定に先立ち1回のみの投与であってもよく、また複数の時刻での断続的な投与もしくは継続的な投与であってもよい。
5.酸化ストレス応答改善物質の効果的時刻を見出す方法
既知の酸化ストレス改善物質、又は本発明のスクリーニング方法で見出された酸化ストレス応答改善物質を被検物質として、実験動物に対して複数の時刻に投与する。そして、投与後の血液中のHODE類、又はHODE類および7-OHChの測定を被検物質の投与時刻ごとに行い、それぞれの投与時刻における測定値を、被検物質を投与しない場合の測定値と比較した変化量を算出し、それぞれの投与時刻における変化量を比較することにより、変化量が最大となった投与時刻を決定し、被検物質となった酸化ストレスの改善効果物質の最も効果的な投与時刻を見いだすことができる。
6.食餌リズムの乱れに起因する夜食症、肥満などの診断方法
夜食症は早朝の食欲不振、夜間の過食、不眠を特徴とする疾患であり、食餌性リズム異常疾患で肥満につながる。肥満などを臨床的に判断するため、被検個体の血液中HODE類、又はHODE類及び7-OHChを一日のうち複数時刻で測定する事で、客観的に測定前日の摂食時刻や摂食習慣を予測することができる。
7.疾患診断の条件の最適化
先行特許において、血液中HODE類、又はHODE類及び7-OHChは肝炎、腎症、アルツハイマー等の疾患のバイオマーカーとしての活用が提唱されている。被験者の採血およびその採血前摂食条件を定義する事でより、HODE類及び7-OHCh測定の条件を最適化する事ができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は特にこれら実施例に限定されるものではない。
なお、本発明で使用されている技術的用語は、別途定義されていない限り、当業者により普通に理解されている意味を持つ。
また、本発明で引用した先行文献又は特許出願明細書の記載内容は、本明細書の記載として組み入れるものとする。
(実施例1)酸化ストレスの日内リズムと明暗条件下での行動リズムとの相関性
野生型マウス(ICR)24匹と時計遺伝子ミュータントclock/clockマウス16匹を12時間ごとの明暗条件下で飼育した。照明がついてから2時間後、8時間後、照明が消えてから2時間後、8時間後の一日4時刻で各群のマウスをケージより4〜6匹のマウスを取り出し、麻酔下で開腹、下大動脈より注射針で採血し、キャピジェクト採血管(テルモ)にうつし、7000Gで10分間遠心分離後、上清を血漿サンプルとした。血漿は測定まで-80℃で保存した。
先行特許文献1に記載の吉田、二木ら独自の化学的前処理法に従って、リノール酸由来酸化生成物を網羅的にヒドロキシリノール酸(HODE)に、コレステロール由来酸化生成物をヒドロキシコレステロール(t7-OhCh)に変換した。そして、その生成物をそれぞれLC-MS/MS及びGC-MSを用いて定量した。
その結果、野生型およびclock/clockマウスともに一日を通して、血液中リノール酸やコレステロールの濃度はほとんど変化しなかった(図1)。
一方で、リノール酸由来酸化生成物のHODEは明期に低く、暗期に高い血液中の日内変動が認められた(図2)。
このことからHODEをマーカーとして観察すれば、血液中での日内酸化ストレスの変動が6時間おきの試料採取でも精緻に検出できる事がわかった。しかも、その変動は体内時計遺伝子の発現変動が認められないclock/clockマウスにおいても同様に認められる事から、酸化ストレスの日内変動は時計遺伝子の発現パターンを検出する従来の遺伝子発現解析法では検出が出来ないタイプの代謝リズムである事がわかる。HODEと同じ酸化ストレスマーカーとして知られるt7-OhChもHODEと同様の傾向を示すが、HODEに比べて振幅のSN比が小さい事から、HODEは単独でも充分精度の高い結果を示す事が予想された。7-OhChについては、HODEを補完するマーカーとしての役割が期待できる(図2)。
(実施例2)他の酸化ストレスマーカーの検討
これまで酸化ストレスの評価のために定量されてきたイソプロスタン及びアラキドン酸由来脂質酸化物であるヒドロキシ酸(HETE)についても、(実施例1)と同様に日内変動を観測した。
しかしながら、イソプロスタンは検出レベルが低いため、統計的に有意な日内変動を認める事が出来なかった(図3)。また、ヒドロキシ酸HETEも同様に有意な日内変動を検出できなかった(図3)。
(実施例3)酸化ストレスの日内リズムと摂食行動リズムとの相関性
酸化ストレスの日内リズムと摂食行動リズムとの相関性を見た。野生型マウス(ICR)48匹を2群にわけ、給餌時間を照明点灯後3時間後から6時間(DF)または照明消灯後3時間後から6時間(NF)に限定して明暗条件下で2週間飼育した。この条件の下では、マウスは給餌時間に合わせて起きて餌を食べる行動をするようになる(図4)。摂餌パターンはNFやDFの場合、餌が提示されている間で摂食量の増加が認められる。自由行動パターンは制限給餌の場合、餌の提示前に餌を予知する行動(予知行動)が観察されるが、NFではその予知行動をも含めほとんどの自由行動は夜間に認められる。他方、DFでは明期での予知行動と同程度の自由行動量が暗期にも観察される2方性の行動を示す(図4)。2週間後、(実施例1)と同様に照明がついてから2時間後、8時間後、照明が消えてから2時間後、8時間後の一日4時刻で各群のマウスをケージより6匹のマウスを取り出して採血を行った。(実施例1)と同様にリノール酸由来酸化物HODEの測定を行ったところ、血液中HODEの量は摂餌リズムと連動して上昇する一方性の周期で、DFとNFとでは相反する変動を示した(図5)。さらにDFにおいて、自由行動リズムの二方性とHODEの量的変化は連動していない事から、自由行動ではなく摂食行動のリズムを反映していると考えられる。このことからHODEは給餌リズムに代表される行動リズムに連動した酸化ストレスの日内リズムを検出できるバイオマーカーである事がわかった。
(実施例4)絶食によるHODEリズムの変化
絶食による酸化ストレスの日内リズムの変化を見た。野生型マウス(ICR)を自由摂食で1週間飼育後、照明の点灯と同時に餌を取り除き絶食を開始する。絶食開始後2、8、14、20時間後に採血をおこなった(絶食条件)。絶食24時間後、餌を再びあたえ5時間後に採血を行った(再給餌条件)。(実施例1)と同様にリノール酸由来酸化物HODEの測定を行ったところ、絶食の間、自由摂食で認められるHODEは認められず、日内最低値以下の低値で変化しない。しかしながら、再給餌により摂食行動が認められると、それに応答してtHODE量が上昇した。絶食中、再給餌後の7-OhChもHODEと同様の変化を示す(図6)。

Claims (6)

  1. 血液中のヒドロキシオクタデカジエノイックアシッド(HODE)類、又はHODE類と共に7-ヒドロキシコレステロール類(7-OHCh)を少なくとも1日間、経時的に複数回測定し、その測定値の経時的変化を観察することを特徴とする、摂食行動リズムの日内変化をモニタリングする方法。
  2. 前記HODE類が9-HODE及び13-HODEからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1に記載の方法。
  3. 血液中のヒドロキシオクタデカジエノイックアシッド(HODE)類、又はHODE類と共に7-ヒドロキシコレステロール類(7-OHCh)を少なくとも1日間、経時的に複数回測定し、その測定値の経時的変化を観察することを特徴とする、体内の酸化ストレス応答の日内リズムを観察する方法。
  4. 実験動物に対し、被検物質を投与し、血液中のHODE類又はHODE類と共に7-OHChを少なくとも1日間、経時的に複数回測定し、その測定値の経時的変化を観察する工程と、当該経時的に変化する測定値を被検物質を投与しない場合の経時的に変化する測定値と比較する工程を含み、被検物質を投与した場合の上記測定値が被検物質を投与しない場合の上記測定値と比べて減少したことをもって酸化ストレス応答が改善されたと判断することを特徴とする、酸化ストレス応答の改善効果物質のスクリーニング方法
  5. 酸化ストレス改善物質の効果的な投与時刻の判定方法であって、下記の(1)〜(4)を含む方法;
    (1)被検酸化ストレス改善物質を、実験動物に対して複数の時刻に投与し、投与時刻ごとに投与直後の血液中のHODE類、又はHODE類と共に7-OHChを測定する工程、
    (2)あらかじめ前記被検酸化ストレス改善物質を投与せずに同一の時刻毎に測定していた場合の測定値と、前記(1)で得られた各投与時刻ごとの測定値とを比較し、両者の差をそれぞれの時刻における変化量として算出する工程、
    (3)前記(2)で得られた、それぞれの投与時刻における変化量を比較し、変化量が最大となった投与時刻を決定する工程、
    (4)前記(3)工程で得られた変化量が最大となった投与時刻を、被検酸化ストレス改善物質の効果的な投与時刻と判定する工程。
  6. 観的に摂食時刻を予測するためのものである、請求項1または2に記載の方法。
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