以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。各図面において、X方向は型開閉方向と平行な方向、Y方向は電磁鋼板の積層方向と平行な方向、Z方向はX方向及びY方向と互いに垂直な方向を表す。また、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方として説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態による射出成形機の型閉じ完了時の状態を示す図である。図2は、本発明の第1実施形態による射出成形機の型開き完了時の状態を示す図である。
図において、10は射出成形機、Frは射出成形機10のフレーム、Gdは該フレームFr上に敷設される2本のレールよりなるガイド、11は固定プラテン(第1の固定部材)である。固定プラテン11は、型開閉方向(図において左右方向)に延びるガイドGdに沿って移動可能な位置調整ベースBa上に設けられてよい。尚、固定プラテン11はフレームFr上に載置されてもよい。
固定プラテン11と対向して可動プラテン(第1の可動部材)12が配設される。可動プラテン12は可動ベースBb上に固定され、可動ベースBbはガイドGd上を走行可能である。これにより、可動プラテン12は、固定プラテン11に対して型開閉方向に移動可能である。
固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と平行にリヤプラテン(第2の固定部材)13が配設される。リヤプラテン13は、脚部13aを介してフレームFrに固定される。
固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本の連結部材としてのタイバー14(図においては、4本のタイバー14のうちの2本だけを示す。)が架設される。タイバー14を介して固定プラテン11がリヤプラテン13に固定される。タイバー14に沿って可動プラテン12が進退自在に配設される。可動プラテン12におけるタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させるための図示されないガイド穴が形成される。尚、ガイド穴の代わりに、切欠部を形成するようにしてもよい。
タイバー14の前端部(図において右端部)には図示されないネジ部が形成され、該ネジ部にナットn1を螺合して締め付けることによって、タイバー14の前端部が固定プラテン11に固定される。タイバー14の後端部はリヤプラテン13に固定される。
固定プラテン11には固定金型15が、可動プラテン12には可動金型16がそれぞれ取り付けられ、可動プラテン12の進退に伴って固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。尚、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に図示されないキャビティ空間が形成され、キャビティ空間に溶融した樹脂が充填される。固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。
吸着板(第2の可動部材)22は、可動プラテン12と平行に配設される。吸着板22は取付板27を介してスライドベースSbに固定され、スライドベースSbはガイドGd上を走行可能である。これにより、吸着板22は、リヤプラテン13よりも後方において進退自在となる。吸着板22は、軟磁性材で形成されてよい。尚、取付板27はなくてもよく、この場合、吸着板22はスライドベースSbに直に固定される。
ロッド39は、後端部において吸着板22と連結させて、前端部において可動プラテン12と連結させて配設される。したがって、ロッド39は、型閉じ時に吸着板22が前進するのに伴って前進させられて可動プラテン12を前進させ、型開き時に吸着板22が後退するのに伴って後退させられて可動プラテン12を後退させる。そのために、リヤプラテン13の中央部分にロッド39を貫通させるための貫通孔41が形成される。
リニアモータ28は、可動プラテン12を進退させるための型開閉駆動部であって、例えば可動プラテン12に連結された吸着板22とフレームFrとの間に配設される。尚、リニアモータ28は可動プラテン12とフレームFrとの間に配設されてもよい。
リニアモータ28は、固定子29、及び可動子31を備える。固定子29は、フレームFr上において、ガイドGdと平行に、かつ、スライドベースSbの移動範囲に対応させて形成される。可動子31は、スライドベースSbの下端において、固定子29と対向させて、かつ、所定の範囲にわたって形成される。
可動子31は、コア34及びコイル35を備える。コア34は、固定子29に向けて突出する複数の磁極歯33を備える。複数の磁極歯33は、型開閉方向と平行な方向に所定のピッチで配列される。コイル35は、各磁極歯33に巻装される。
固定子29は、図示されないコア、及び該コア上に設けられる図示されない複数の永久磁石を備える。複数の永久磁石は、型開閉方向と平行な方向に所定のピッチで配列され、可動子31側の磁極がN極とS極とに交互に着磁されている。
可動子31のコイル35に所定の電流が供給されると、コイル35を流れる電流によって形成される磁場と、永久磁石によって形成される磁場との相互作用で、可動子31が進退させられる。それに伴って、吸着板22及び可動プラテン12が進退させられ、型閉じ及び型開きが行われる。リニアモータ28は、可動子31の位置が目標値になるように、可動子31の位置を検出する位置センサ53の検出結果に基づいてフィードバック制御される。
尚、本実施の形態では、固定子29に永久磁石を、可動子31にコイル35を配設するようになっているが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ28が駆動されるのに伴って、コイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
尚、型開閉駆動部として、リニアモータ28の代わりに、回転モータ及び回転モータの回転運動を直線運動に変換するボールネジ機構、又は油圧シリンダ若しくは空気圧シリンダなどの流体圧シリンダなどが用いられてもよい。
電磁石ユニット37は、リヤプラテン13と吸着板22との間に吸着力を生じさせる。この吸着力は、ロッド39を介して可動プラテン12に伝達し、可動プラテン12と固定プラテン11との間に型締力が生じる。
電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に形成された電磁石49、及び吸着板22側に形成された吸着部51からなる。吸着部51は、吸着板22の吸着面(前端面)の所定の部分、例えば、吸着板22においてロッド39を包囲し、かつ、電磁石49と対向する部分に形成される。また、リヤプラテン13の吸着面(後端面)の所定の部分、例えば、ロッド39のまわりには、電磁石49のコイル48を収容するコイル溝45が形成される。コイル溝45より内側にコア46が形成される。コア46の周りにコイル48が巻装される。コイル48の軸方向はX方向となっている。リヤプラテン13のコア46以外の部分にヨーク47が形成される。
尚、本実施形態においては、リヤプラテン13とは別に電磁石49が、吸着板22とは別に吸着部51が形成されるが、リヤプラテン13の一部として電磁石を、吸着板22の一部として吸着部を形成してもよい。また、電磁石と吸着部の配置は逆であってもよい。例えば、吸着板22側に電磁石49を設け、リヤプラテン13側に吸着部51を設けてもよい。また、電磁石49のコイル48の数は、複数であってもよい。
電磁石ユニット37において、コイル48に電流を供給すると、電磁石49が駆動され、吸着部51を吸着し、型締力を発生させることができる。電磁石49が形成されるリヤプラテン(第1のブロック)13と、吸着部51が形成される吸着板(第2のブロック)22とで型締力発生機構が構成される。
制御部60は、例えばCPU及びメモリ等を備え、メモリに記録された制御プログラムをCPUによって処理することにより、リニアモータ28の動作及び電磁石49の動作を制御する。制御部60は、型締力を検出する型締力センサ55と接続されており、型締力センサ55の検出結果に基づいて、所定の型締力が生じるように、電磁石49のコイル48への供給電流値を設定してよい。型締力センサ55は、例えば型締力に応じて伸びるタイバー14の歪み(伸び量)を検出する歪みセンサであってよい。尚、型締力センサ55としては、例えばロッド39にかかる荷重を検出するロードセル等の荷重センサ、電磁石49の磁場を検出する磁気センサが使用可能であり、型締力センサ55の種類は多種多様であってよい。
次に、上記構成の射出成形機10の動作について説明する。射出成形機10の各種動作は、制御部60による制御下で行われる。
制御部60は、型閉じ工程を制御する。図2の状態(型開き状態)において、制御部60は、リニアモータ28を駆動して、可動プラテン12を前進させる。図1に示すように、可動金型16が固定金型15に当接し、型閉じ工程が完了する。このとき、リヤプラテン13と吸着板22との間、即ち電磁石49と吸着部51との間には、ギャップδが形成される。尚、型閉じに必要とされる力は、型締力と比較されて十分に小さくされる。
続いて、制御部60は、型締め工程を制御する。制御部60は、図1の状態(型閉じ状態)で、電磁石49のコイル48に直流電流を供給する。そうすると、コイル48を流れる直流電流によってコイル48内に磁場が生じ、コア46が着磁され、磁場が強化される。そして、所定のギャップをおいて対向する電磁石49と吸着部51との間に吸着力が生じ、この吸着力がロッド39を介して可動プラテン12に伝達し、可動プラテン12と固定プラテン11との間に型締力が生じる。型締め状態の金型装置19のキャビティ空間に溶融した樹脂が充填され、冷却、固化され成形品となる。
続いて、制御部60は、電磁石49のコア46を消磁する。コア46の消磁は、着磁時とは逆向きの直流電流をコイル48に供給することで行われる。消磁工程において、直流電流の向きが複数回反転されてもよい。コア46の消磁によって、型開き開始までの待ち時間が短くなる。
次いで、制御部60は、型開き工程を制御する。制御部60は、リニアモータ28のコイル35に電流を供給して、可動プラテン12を後退させる。可動金型16が後退して型開きが行われる。型開き後、図示されないエジェクタ装置が可動金型16から成形品を突き出す。このようにして、成形品が得られる。
ところで、金型装置19が交換されると、金型装置19の厚さが変わり、型閉じ完了時にリヤプラテン13と吸着板22との間に形成されるギャップδが変わる。ギャップδが変わると、吸着力が変わり、型締力が変わる。
そこで、射出成形機10は、金型装置19の厚さに応じて可動プラテン12と吸着板22との間隔を調整する型厚調整部56を備える。型厚調整部56は、型厚調整用モータ57、ギヤ58、ナット59などによって構成される。ナット59は、吸着板22に対して回転自在に、且つ進退不能に支持されている。吸着板22の中央部分を貫通するロッド39の後端部に形成されるねじ軸部43と、ナット59とが螺合されている。ナット59及びねじ軸部43によって運動方向変換部が構成され、該運動方向変換部において、ナット59の回転運動がロッド39の直進運動に変換される。ナット59の外周面に図示されないギヤが形成され、このギヤと、型厚調整用モータ57の出力軸57aに取り付けられたギヤ58が噛合させられる。型厚調整用モータ57は、例えばサーボモータであって、出力時軸57aの回転数を検出するエンコーダ部57bを含む。
型厚調整モータ57が回転すると、ナット59が回転し、ロッド39が吸着板22に対して進退し、吸着板22と可動プラテン12との間の間隔が調整される。よって、型閉じ完了時におけるギャップδを最適な値にすることができる。型厚調整モータ57は、ギャップδが所望の値となるように、エンコーダ部57bの検出結果に基づいてフィードバック制御される。
次に、図1〜図4に基づいてリヤプラテン13の構成について説明する。図3は、第1実施形態によるリヤプラテンを示す斜視図である。図4は、第1実施形態による複数種類の電磁鋼板の構成を示す図である。
リヤプラテン13は、型締め開始時等、電磁石49の磁場の変化時に生じる渦電流を低減するため、複数の電磁鋼板を積層してなる積層鋼板を有する。電磁鋼板は例えばケイ素を添加した鋼板であってよい。電磁鋼板の表面には絶縁被膜が形成されている。
例えば、リヤプラテン13は、図3に示すように、Y方向に間隔をおいて配設される2つの外側積層鋼板71、72と、Z方向に間隔をおいて配設される2つの内側積層鋼板73、74とを有する。2つの外側積層鋼板71、72と、2つの内側積層鋼板73、74とで、リヤプラテン13のロッド39を貫通させる貫通孔41が画成される。
外側積層鋼板71、72は、複数の電磁鋼板81、82をY方向に積層してなる。隣り合う電磁鋼板は、溶接で固定されていてもよいし、治具で締め付け固定されていてもよい。電磁鋼板81、82には、図4(a)及び(b)に示すようにコイル溝45を構成する凹部81a、82aが形成されている。また、電磁鋼板81、82には、流路管91(図1及び図2参照)を挿入する挿入孔81b、82bが形成されている。挿入孔81b、82bは、電磁石49が形成する磁場に悪影響を与えないように、リヤプラテン13の吸着面(後端面)からできるだけ離れた位置に配置される。
内側積層鋼板73、74は、2つの外側積層鋼板71、72の間に配設される。内側積層鋼板73、74は、それぞれ、複数の電磁鋼板83をY方向に積層してなる。電磁鋼板83には、図4(c)に示すように、コイル溝45を構成する凹部83aが形成されている。また、電磁鋼板83には、流路管91(図1及び図2参照)を挿入する挿入孔83bが形成されている。挿入孔83bは、電磁石49が形成する磁場に悪影響を与えないように、リヤプラテン13の吸着面(後端面)からできるだけ離れた位置に配置される。
流路管91は、リヤプラテン13をY方向に貫通してよい。流路管91は、2つの外側積層鋼板71、72、及び2つの内側積層鋼板73、74のいずれか一方を積層方向(Y方向)に貫通する。2つの内側積層鋼板73、74の両方を温調するため、少なくとも2つの流路管91が設けられてよい。尚、流路管91の数は、積層鋼板の数や形状、配置に応じて適宜選定されてよい。
流路管91は、例えば円筒管であって、温調流体の流路を内部に有する。温調流体が流路管91の内部を流れるので、積層鋼板を積層方向に貫通する貫通孔が流路となる場合と異なり、電磁鋼板同士の間から温調流体が漏出することがない。また、温調流体がリヤプラテン13と直接接触しないので、リヤプラテン13の腐食が防止される。
温調流体は、リヤプラテン13と熱交換し、リヤプラテン13を温調する。温調流体は、冷却水や空気などの冷媒であってよい。冷媒は、リヤプラテン13を冷却することで、電磁石49のコイル48の過熱を抑制する。冷却効率を高めるため、流路管91は、図1等に示すように、吸着板22から見てコイル溝45の裏側に配設されてよい。尚、温調流体は、温水などの熱媒であってもよい。
流路管91は、リヤプラテン13の挿入孔93に挿入され、例えば冷やし嵌め、又は焼き嵌めで挿入孔93に固定されてよい。リヤプラテン13の挿入孔93は、電磁鋼板81〜83の挿入孔81b〜83bで構成される。
冷やし嵌めでは、ドライアイスや液体窒素等の冷媒で流路管91を冷却し、流路管91の外径を小さくしたうえで、流路管91よりも高温(例えば室温)のリヤプラテン13の挿入孔93に流路管91を挿入する。その後、流路管91の温度が室温に戻ると、流路管91が膨らみ、流路管91の外壁が挿入孔93の内壁で締め付けられる。
焼き嵌めでは、リヤプラテン13を加熱し、リヤプラテン13の挿入孔93の直径を大きくしたうえで、リヤプラテン13よりも低温(例えば室温)の流路管91を挿入孔93に挿入する。その後、リヤプラテン13の温度が室温に戻ると、挿入孔93の直径が縮み、挿入孔93の内壁で流路管91の外壁が締め付けられる。
冷やし嵌め又は焼き嵌めによって挿入孔93の内壁と流路管91の外壁との間の隙間が少なくなり、接触熱抵抗が下がるので、リヤプラテン13の温調効率が良くなる。流路管91の外壁が冷やし嵌め又は焼き嵌めによって均一に締め付けられるように、流路管91は円筒管で構成され、挿入孔93は円状の断面形状を有してよい。
リヤプラテン13の挿入孔93の内壁と、流路管91の外壁との間には、熱伝達部材としての金属シート95が介在してよい。金属シート95の硬さは、流路管91の硬さよりも低い(柔らかい)ことが好ましい。金属シート95の硬さは、冷やし嵌め又は焼き嵌めの前に押し込み硬さ試験法で測定される。押し込み硬さ試験法としては、例えばブリネル硬さ試験法(JIS Z2243)が用いられる。例えば、流路管91を形成する金属がステンレス鋼の場合、金属シート95の金属としては、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、錫(Sn)、鉛(Pb)、銀(Ag)、インジウム(In)、又はこれらのいずれか1種以上を含む合金が用いられる。柔らかさ及びコストの観点から、インジウム又はインジウム合金が特に好適に用いられる。
冷やし嵌めでは、金属シート95を流路管91の外壁に巻き付け、金属シート95及び流路管91をリヤプラテン13の挿入孔93に挿入する。冷やし嵌めでは、挿入孔93への挿入前に、流路管91及び金属シート95の少なくともいずれか一方を冷媒で冷却する。
例えば、挿入孔93への挿入前に流路管91のみを冷媒で冷却する場合、挿入孔93への挿入後に流路管91の温度が室温に戻り、流路管91が膨らみ、挿入孔93の内壁と流路管91の外壁とで金属シート95が挟まれ、薄く変形する。金属シート95の変形は、弾性変形でも塑性変形でもよい。金属シート95は、流路管91よりも柔らかい金属で形成されるので、挿入孔93の内壁と流路管91の外壁との間の隙間のばらつきを吸収するように変形して隙間を埋め、挿入孔93の内壁と流路管91の外壁との両方に密着する。
また、挿入孔93への挿入前に金属シート95のみを冷媒で冷却し、金属シート95の厚さを薄くする場合、挿入孔93への挿入後に金属シート95の温度が室温に戻り、金属シート95の厚さが厚くなり、挿入孔93の内壁と流路管91の外壁とで金属シート95が挟まれる。金属シート95は、挿入孔93の内壁と流路管91の外壁との間の隙間のばらつきを吸収するように変形して隙間を埋め、挿入孔93の内壁と流路管91の外壁との両方に密着する。
焼き嵌めでは、金属シート95を流路管91の外壁に巻き付け、加熱したリヤプラテン13の挿入孔93に金属シート95及び流路管91を挿入する。その後、リヤプラテン13の温度が室温に戻ると、挿入孔93の直径が縮み、挿入孔93の内壁と流路管91の外壁とで金属シート95が挟まれる。金属シート95は、挿入孔93の内壁と流路管91の外壁との間の隙間のばらつきを吸収するように変形して隙間を埋め、挿入孔93の内壁と流路管91の外壁との両方に密着する。
このように、冷やし嵌め、焼き嵌めのいずれでも、金属シート95は、挿入孔93の内壁と流路管91の外壁との間の隙間のばらつきを吸収するように変形して隙間を埋め、挿入孔93の内壁と流路管91の外壁との両方に密着する。よって、接触熱抵抗がさらに下がり、リヤプラテン13の温調効率がさらに良くなる。また、上記隙間のばらつきを吸収するとき、柔らかい金属シート95が選択的に変形し、硬い流路管91の局所的な変形が抑えられるので、流路管91の損傷が低減される。
尚、本実施形態の熱伝達部材は、金属で形成されるが、空気よりも高い熱伝導率を有していればよく、樹脂で形成されてもよい。また、熱伝達部材は、シート状であるが、リング状であってもよい。
尚、本実施形態の流路管91は、冷やし嵌め、又は焼き嵌めで挿入孔93に固定されるが、その固定方法は、冷やし嵌め、焼き嵌めに限定されない。例えば、挿入孔93に流路管91を挿入しておき、挿入孔93の内壁と流路管91の外壁との間の隙間に加熱した溶融樹脂を流し込み、溶融樹脂を冷却固化する方法等がある。この場合、挿入孔93の内壁と、流路管91の外壁との間に、熱伝達部材としての樹脂層が介在する。樹脂層の硬さは、流路管91の硬さよりも低くなる。
リヤプラテン13の挿入孔93は、積層鋼板(例えば外側積層鋼板71)の積層方向(Y方向)に延在し、例えば積層鋼板の一端部から他端部まで積層方向に延在する。よって、リヤプラテン13の挿入孔93に挿入される流路管91が、積層鋼板(例えば外側積層鋼板71)を構成する複数の電磁鋼板(例えば電磁鋼板81、82)の位置ずれを制限できる。
リヤプラテン13の挿入孔93は、複数の積層鋼板(例えば2つの外側積層鋼板71、72、及び2つの内側積層鋼板73、74のいずれか一方)にわたって形成される。よって、リヤプラテン13の挿入孔93に挿入される流路管91が、複数の積層鋼板の位置ずれを制限できる。
尚、本実施形態では、挿入孔93の内壁と、流路管91の外壁との間に熱伝達部材が介在するが、熱伝達部材がなくてもよい。つまり、挿入孔93の内壁と、流路管91の外壁とが冷やし嵌め又は焼き嵌めによって直接密着していてもよい。
[第2実施形態]
上記第1実施形態のリヤプラテン13は流路管91を挿入する挿入部として挿入孔93を有するが、本実施形態のリヤプラテンは挿入溝を有する点で相違する。以下、相違点を中心に説明する。
図5は、第2実施形態によるリヤプラテンを示す断面図である。図5に示すリヤプラテン113には挿入部としての挿入溝193が形成され、挿入溝193に流路管191が挿入される。挿入溝193は、リヤプラテン113の吸着面と反対側の面(前端面)や側面に形成される。
流路管191は、例えば角筒管であって、温調流体の流路を内部に有する。温調流体が流路管191の内部を流れるので、積層鋼板を積層方向に貫通する貫通孔が流路となる場合と異なり、電磁鋼板同士の間から温調流体が漏出することがない。また、温調流体がリヤプラテン113と直接接触しないので、リヤプラテン113の腐食が防止される。
温調流体は、リヤプラテン113と熱交換し、リヤプラテン113を温調する。温調流体は、冷却水や空気などの冷媒であってよい。冷媒は、リヤプラテン113を冷却することで、電磁石49のコイル48の過熱を抑制する。尚、温調流体は、温水などの熱媒であってもよい。
流路管191は、リヤプラテン113の挿入溝193に挿入される。流路管191は、例えば冷やし嵌め、又は焼き嵌めで挿入溝193に固定されてよい。
冷やし嵌めでは、ドライアイスや液体窒素等の冷媒で流路管191を冷却し、縮ませたうえで、流路管191よりも高温(例えば室温)のリヤプラテン113の挿入溝193に挿入する。その後、流路管191の温度が室温に戻ると、流路管191が膨らみ、流路管191の外壁が断面矩形状の挿入溝193の互いに対向する内壁(側壁)で締め付けられる。
焼き嵌めでは、リヤプラテン113を加熱し、リヤプラテン113の挿入溝193の溝幅を広げたうえで、リヤプラテン113よりも低温(例えば室温)の流路管191を挿入溝193に挿入する。その後、リヤプラテン113の温度が室温に戻ると、挿入溝193の溝幅が狭くなり、断面矩形状の挿入溝193の互いに対向する内壁で流路管191が締め付けられる。
冷やし嵌め又は焼き嵌めによって挿入溝193の内壁と流路管191の外壁との間の隙間が少なくなり、接触熱抵抗が下がるので、リヤプラテン113の温調効率が良くなる。
挿入溝193の内壁と、流路管191の外壁との間には、熱伝達部材としての金属シート195が介在してよい。金属シート195の硬さは、流路管191の硬さよりも低い(柔らかい)ことが好ましい。
冷やし嵌めでは、金属シート195を流路管191の外壁に巻き付け、金属シート195及び流路管191をリヤプラテン13の挿入溝193に挿入する。冷やし嵌めでは、挿入溝193への挿入前に、流路管191及び金属シート195の少なくともいずれか一方を冷媒で冷却する。
例えば、挿入溝193への挿入前に流路管191のみを冷媒で冷却する場合、挿入溝193への挿入後に流路管91の温度が室温に戻り、挿入溝193の内壁と流路管191の外壁とで金属シート195が挟まれ、薄く変形する。金属シート195の変形は、弾性変形でも塑性変形でもよい。金属シート195は、流路管191よりも柔らかい金属で形成されるので、挿入溝193の内壁と流路管191の外壁との間の隙間のばらつきを吸収するように変形して隙間を埋め、挿入溝193の内壁と流路管191の外壁との両方に密着する。
また、挿入溝193への挿入前に金属シート195のみを冷媒で冷却し、金属シート195の厚さを薄くする場合、挿入溝193への挿入後に金属シート195の温度が室温に戻り、金属シート195の厚さが厚くなり、挿入溝193の内壁と流路管191の外壁とで金属シート195が挟まれる。金属シート195は、挿入溝193の内壁と流路管191の外壁との間の隙間のばらつきを吸収するように変形して隙間を埋め、挿入溝193の内壁と流路管91の外壁との両方に密着する。
焼き嵌めでは、金属シート195を流路管191の外壁に巻き付け、加熱したリヤプラテン113の挿入溝193に金属シート195及び流路管191を挿入する。その後、リヤプラテン113の温度が室温に戻ると、挿入溝193の溝幅が狭くなり、挿入溝193の内壁と流路管191の外壁とで金属シート195が挟まれる。金属シート195は、挿入溝193の内壁と流路管191の外壁との間の隙間のばらつきを吸収するように変形して隙間を埋め、挿入溝193の内壁と流路管191の外壁との両方に密着する。
このように、冷やし嵌め、焼き嵌めのいずれでも、金属シート195は、挿入溝193の内壁と流路管191の外壁との間の隙間のばらつきを吸収するように変形して隙間を埋め、挿入溝193の内壁と流路管191の外壁との両方に密着する。よって、接触熱抵抗がさらに下がり、リヤプラテン113の温調効率がさらに良くなる。また、上記隙間のばらつきを吸収するとき、柔らかい金属シート195が選択的に変形するので、硬い流路管191の局所的な変形が抑えられ、流路管191の損傷が低減される。
尚、本実施形態の熱伝達部材は、金属で形成されるが、空気よりも高い熱伝導率を有していればよく、樹脂で形成されてもよい。また、熱伝達部材は、シート状であるが、リング状であってもよい。
尚、本実施形態の流路管191は、冷やし嵌め、又は焼き嵌めで挿入溝193に固定されるが、その固定方法は、冷やし嵌め、焼き嵌めに限定されない。例えば、挿入溝193に流路管191を挿入しておき、挿入溝191の内壁と流路管191の外壁との間の隙間に加熱した溶融樹脂を流し込み、溶融樹脂を冷却固化する方法等がある。この場合、挿入溝193の内壁と、流路管191の外壁との間に、熱伝達部材としての樹脂層が介在する。樹脂層の硬さは、流路管191の硬さよりも低くなる。
リヤプラテン113の挿入溝193は、積層鋼板(例えば図3に示す外側積層鋼板71)の積層方向(Y方向)に延在し、例えば積層鋼板の一端部から他端部まで積層方向に延在する。よって、リヤプラテン113の挿入溝193に挿入される流路管191が、積層鋼板(例えば外側積層鋼板71)を構成する複数の電磁鋼板(例えば電磁鋼板81、82)の位置ずれを制限できる。
リヤプラテン113の挿入溝193は、複数の積層鋼板(例えば図3に示す2つの外側積層鋼板71、72、及び2つの内側積層鋼板73、74のいずれか一方)にわたって形成される。よって、リヤプラテン113の挿入溝193に挿入される流路管191が、複数の積層鋼板の位置ずれを制限できる。
尚、本実施形態の流路管191は、一体物であるが、流路溝が形成された樋状部材と、樋状部材の流路溝が形成される面に固定される蓋部材とで構成されてもよい。この場合、樋状部材を挿入溝193に固定した後、樋状部材に蓋部材を固定してもよいし、樋状部材に蓋部材を固定した後、樋状部材を挿入溝193に固定してもよい。樋状部材と蓋部材との間には、温調流体の漏出を防止するシール部材が介装されてよい。
尚、本実施形態では、挿入溝193の内壁と、流路管191の外壁との間に熱伝達部材が介在するが、熱伝達部材がなくてもよい。つまり、挿入溝193の内壁と、流路管191の外壁とが冷やし嵌め又は焼き嵌めによって直接密着していてもよい。
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、置換が可能である。
例えば、上記実施形態の流路管91、191は、リヤプラテン13、113の挿入部93、193に挿入されているが、本発明を吸着板に適用してもよい。即ち、流路管91、191は、吸着板22の挿入部に挿入されてもよい。
また、上記実施形態の流路管91、191は、円筒管又は角筒管であるが、2重管であってもよい。2重管は内管及び外管で構成され、内管と外管との間の空間が温調流体の往路となり、内管の内側空間が温調流体の復路となる。2重管の先端部には、往路と復路とを連通するように蓋が設けられる。
また、上記実施形態のリヤプラテン13、113は、複数の電磁鋼板を積層してなる積層鋼板を有するが、積層鋼板を有さなくてもよく、例えば1枚の軟磁性板から削り出されてもよい。この場合、複数の電磁鋼板の位置ずれ防止が不要なので、流路管91、191は、リヤプラテン13、113を貫通しなくてもよく、例えば上記2重管で構成され、リヤプラテン13、113の途中で途切れていてよい。