以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1〜図4には、本発明の一実施形態である電子レンジ用炊飯容器10が示されている。電子レンジ用炊飯容器10は、調理対象物としての飯米と水が収容される容器本体12と、容器本体12に取り付けられて、容器本体12の開口部14を覆蓋する蓋部材16を備えている。容器本体12は、内容器18と外容器20を含んで構成されている。一方、蓋部材16は、内蓋22と外蓋24を含んで構成されている。なお、以下の説明において、上下方向とは、使用状態下において鉛直上下方向となる、図1中の上下方向を言うものとする。
内容器18および外容器20は、表面に開口する多数の微小空間を有する多孔質の陶器とされている。内容器18は、図1に示されているように、球殻形状の周壁部26と、上方に向かって開口する円形の開口部14とを有する有底の丸釜形状とされている。更に、内容器18の開口周縁部には、外周側に突出するフランジ状の係止部28が一体形成されている。また、係止部28の内周縁部には、段差部30が全周に亘って連続的に形成されていると共に、係止部28の外周縁部には、上方に向かって延び出す筒状の位置決め部31が一体形成されている。
内容器18の底面32には、上方に向けて突出する底側突起34が一体形成されている。底側突起34は、内容器18の底壁を構成する底部36が円錐台形の湾曲皿形状とされることによって、図5にも示されているように、突出先端面38が略円形の略平坦面とされた円錐台形状とされている。従って、図6に示されているように、底部36の外面は、糸切(底部36から下方に突出する環状の脚部)の中央において、内容器18の内方に窪まされている。このような底側突起34が、底面32の中央に形成されている。なお、内容器18の周壁部26は、上下方向の中間部分で最も膨らまされており、周壁部26の内径寸法は、開口部14から底部36に行くに連れて一旦次第に大きくされた後に、上下方向の中間部分から底部36に行くに連れて再び次第に小さくされている。これにより、内容器18の内面における底部36側には周壁部26の内径寸法が次第に小さくなる湾曲面40が形成されており、この湾曲面40に対して、底側突起34が角部を有することなく滑らかに連続して形成されている。
図1に示したように、電子レンジ用炊飯容器10の全体深さ寸法:Dは、内容器18の底面32と、後述する内蓋22の内面56との対向距離の最大値で規定される。そして、底側突起34の底面32からの突出高さ寸法:h1 は、全体深さ寸法:Dの5%〜30%、より好ましくは、10%〜25%の範囲内で設定される。蓋し、底側突起34の突出高さ寸法:h1 が全体深さ寸法:Dの5%よりも小さいと、底側突起34が小さくなり過ぎて後述する対流促進効果が得られ難くなるおそれがある一方、突出高さ寸法:h1 が全体深さ寸法:Dの30%よりも大きいと、底側突起34が大きくなり過ぎて、かえって容器内全体での対流が阻害されたり、飯米を安定して保持できないおそれや、炊き上がり後の御飯を掬う際に底側突起34が邪魔になるおそれがあるからである。本実施形態においては、底側突起34の突出高さ寸法:h1 は、全体深さ寸法:Dに対する略20%に設定されている。
また、内容器18の開口部14側からの投影視(図5参照)において、底側突起34の突出先端縁部の高さ位置における内容器18の開口面積:A1 に対して、底側突起34の占有面積:a1 は、開口面積:A1 の10%〜80%、より好ましくは、20%〜70%の範囲内に設定される。蓋し、底側突起34の占有面積:a1 が開口面積:A1 の10%よりも小さいと、底側突起34が小さくなり過ぎて、後述する対流促進効果が得られ難くなるおそれがある一方、開口面積:A1 の80%よりも大きいと、底面32における底側突起34とそれ以外の部位との差異が小さくなって、やはり有効な対流促進効果が得られ難くなるおそれがあるからである。なお、図5においては、理解を容易とするために、底側突起34の占有面積:a1 を、底側突起34から僅かにずらした点線で図示している。また、底側突起34および内容器18の開口形状は必ずしも円形状に限定されるものではないが、本実施形態においては、図1に示されているように、底側突起34の占有面積:a1 は、底側突起34の径寸法:r1 を直径とする円の面積となる一方、内容器18の開口面積:A1 は、底側突起34の突出先端縁部の高さ位置(図1中、上下方向位置)における周壁部26の内径寸法:r2 を直径とする円の面積となる。本実施形態においては、底側突起34の突出先端位置における内容器18の開口面積:A1 に対する底側突起34の占有面積:a1 が、開口面積:A1 の略20%に設定されている。
なお、内容器18の肉厚寸法の平均値:T1 は、好適には、3mm≦T1 ≦7mm、より好適には、4mm≦T1 ≦6mmとされて、本実施形態では、T1 =4.5mmに設定されている。蓋し、T1 が小さ過ぎると、充分な保温力や耐久性を確保することが困難となり易い一方、T1 が大き過ぎると、内容器18の質量が大きくなってしまうおそれがあるからである。ここで、T1 は、内容器18において、係止部28や底部36の糸切を除いた部分の厚さの平均値である。
一方、外容器20は、内容器18よりも大径且つ深底であって、一体的に形成された球殻形状の周壁部42と皿状の底部44を有しており、全体として丸釜形状を有している。また、周壁部42の開口周縁部には、全周に亘って外周側に突出する把持部46が一体形成されている。
なお、外容器20の肉厚寸法の平均値:T2 は、好適には、3mm≦T2 ≦7mm、より好適には、4mm≦T2 ≦6mmとされて、本実施形態では、T2 =4.5mmに設定されている。蓋し、T2 が小さ過ぎると、充分な保温力や耐久性を確保することが困難となり易い一方、T2 が大き過ぎると、外容器20の質量が大きくなってしまうおそれがあるからである。ここで、T2 は、外容器20において、把持部46や糸切(底部44から下方に突出する環状の脚部)を除いた部分の厚さの平均値である。
また、外容器20の周壁部42の内径寸法:Rは、内容器18の周壁部26の最大の外径寸法:r3 と、内容器18の係止部28の外径寸法:r4 に対して、r3 <R<r4 となるように設定されている。
なお、内容器18と外容器20は、何れも多孔質の陶器製とされて、水との接触によって内部の微小空間に水を収容、保持する吸水性を有している。特に本実施形態では、内容器18および外容器20が、内外両面に吸水性を有しており、内外両面から水を内部に取り入れることが出来るようになっていると共に、内容器18および外容器20が、それぞれ、内周側の領域と外周側の領域の間で水分の移動を許容する透水性を有している。
また、内容器18と外容器20のかさ密度は、1.0g/cm3 〜2.0g/cm3 とされていることが望ましく、より好適には、1.2g/cm3 〜1.8g/cm3 とされている。本実施形態では、それら内外容器18,20のかさ密度が1.66g/cm3 とされている。蓋し、両容器18,20のかさ密度が、1.0g/cm3 より小さいと、両容器18,20の耐久性が充分に得られ難くなるおそれがあり、2.0g/cm3 よりも大きいと、両容器18,20において所望の透水性や保温性が得られ難くなるおそれがあるからである。なお、かさ密度とは、両容器18,20自体の体積と、多孔質とされた両容器18,20の表面に開口する微小な開気孔の容積と、両容器18,20の内部に形成された微小な閉気孔の容積との合計値を、体積として採用して算出した密度のことを言う。
このような内容器18と外容器20は、上下方向で相互に組み合わされるようになっている。即ち、内容器18が外容器20に対して上側開口部から挿し入れられると共に、内容器18に一体形成された係止部28の外周縁部が、外容器20の開口周縁部に対して、上方から重ね合わされる。これにより、内容器18と外容器20が同一中心軸上に配設された状態で着脱可能に組み合わされて、本実施形態における容器本体12が内容器18と外容器20によって構成されるようになっている。なお、本実施形態では、内容器18と外容器20が何れも透水性を有していることから、内容器18と外容器20の組付状態下において、内容器18と外容器20の対向面が何れも吸水性を有する面とされている。また、例えば、外容器20の開口周縁部に段差が形成されて、該段差に内容器18の係止部28が嵌め入れられることにより、内外容器18,20が径方向で容易に位置決めされるようになっていても良い。更に、本実施形態では、内容器18と外容器20が耐熱性の材料で形成されて、直接的に火にあてることが出来るようになっている。従って、内容器18と外容器20を各別に直火用鍋(一般的な土鍋)として使用することも可能である。
ここにおいて、内容器18と外容器20の組付状態下では、内容器18の周壁部26が外容器20の周壁部42に対して内周側に離隔位置せしめられていると共に、内容器18の底部36が外容器20の底部44に対して上方に離隔位置せしめられている。これにより、内容器18と外容器20が、開口周縁部の当接部分を除く略全体に亘って、相互に離間して配置されており、内容器18と外容器20の周壁部26,42の対向面間及び底部36,44の対向面間には、容器側空気層48が形成されている。容器側空気層48は、内容器18と外容器20の対向面間の全体に亘って、連続的に形成されていると共に、周壁部26,42と底部36,44と係止部28によって外部空間から隔てられている。また、本実施形態では、内容器18と外容器20の離間距離が、内容器18の底部36の形成部分を除く全体に亘って略一定となっており、容器側空気層48が略全体に亘って略一定の幅で形成されている。なお、本実施形態では、内容器18の外表面と外容器20の内表面の対向面間距離が、内容器18の糸切の突出高さよりも大きくされており、容器側空気層48が、内容器18と外容器20の間の略全体に亘って形成されるようになっている。
一方、蓋部材16は、内外両容器18,20と同様に、何れも連続気孔を有する多孔質の陶器で形成された内蓋22と外蓋24を有している。内蓋22は、全体として略円板形状を有しており、径方向中央部分には上方に向かって突出する筒状の把手部50が一体形成されている。また、内蓋22の外周縁部は厚肉とされており、厚肉とされた外周縁部の上端部分には、全周に亘って外周側に延び出すフランジ状の係止片52が一体形成されている。また、図1に示されているように、内蓋22には、第一の蒸気抜き孔としての蒸気抜き用の内通気孔54が、内蓋22を肉厚方向で貫通して形成されている。本実施形態では、一対の内通気孔54,54が、径方向一方向で把手部50を挟んで対向位置するように形成されている。また、図6にも示されているように、蓋部材16の内面56には、円環形状をもって僅かに突出する環状突部57が形成されている。環状突部57は、内通気孔54,54の外側を通る円環形状の突条とされており、その突出端面は後述する釉薬でコーティングされておらず、素地が露出されている。
さらに、内蓋22の内面56の中央部分には、蓋側突起58が一体形成されている。蓋側突起58は、内面56から突出する先細の円錐形状とされている。蓋側突起58の内面56からの突出高さ寸法:h2 は、電子レンジ用炊飯容器10の全体深さ寸法:Dの5%〜30%、より好ましくは、10%〜25%の範囲内で設定される。蓋し、蓋側突起58の突出高さ寸法:h2 が全体深さ寸法:Dの5%よりも小さいと、蓋側突起58が小さくなり過ぎて後述する対流促進効果が得られ難くなるおそれがある一方、突出高さ寸法:h2 が全体深さ寸法:Dの30%よりも大きいと、蓋側突起58が大きくなり過ぎて、内蓋22の取り扱い性を損なうおそれがあるからである。本実施形態においては、蓋側突起58の突出高さ寸法:h2 は、全体深さ寸法:Dの略10%に設定されている。
また、蓋側突起58の内面56に対する占有面積:a2 は、内面56の面積:A2 の2%〜25%、より好ましくは、3%〜20%の範囲内に設定される。蓋し、蓋側突起58の占有面積:a2 が内面56の面積:A2 の2%よりも小さいと、蓋側突起58が小さくなり過ぎて、後述する水蒸気の分流によると考えられる蒸らしの向上効果が発揮されないおそれがある一方、蓋側突起58の占有面積:a2 が内面56の面積:A2 の25%よりも大きいと、内面56における蓋側突起58とそれ以外の部分との差異が小さくなったり、内容器18への重ね合わせ状態において蓋側突起58の周囲が溝状になって水蒸気が篭り易くなる等して、やはり有効な蒸らしの向上効果が発揮されないおそれがあるからである。また、蓋側突起58の占有面積:a2 を内面56の面積:A2 の25%以下に抑えることによって、蓋側突起58が邪魔になることや、内蓋22の重量化を回避して、内蓋22の取り扱い性を確保することが出来る。なお、図6においては、理解を容易とするために、蓋側突起58の占有面積:a2 を、蓋側突起58から僅かにずらした点線で図示している。また、蓋側突起58および内面56の形状は必ずしも円形状に限定されるものではないが、本実施形態においては、図1に示されているように、蓋側突起58の占有面積:a2 は、蓋側突起58の径寸法:r5 を直径とする円の面積となる。一方、ここで言う内面56とは、内蓋22において、内容器18の開口部14を覆蓋する面によって規定されて、開口部14の開口面積と等しい面積を有する面であり、本実施形態においては、係止片52を部分的に含んで形成された、開口部14の径寸法:r6 を直径とする円の面積となる。本実施形態においては、蓋側突起58の占有面積:a2 は、内面56の面積:A2 の略3%に設定されている。
なお、内蓋22の肉厚寸法の平均値:T3 は、好適には、3mm≦T3 ≦8mm、より好適には、5mm≦T3 ≦7mmとされて、本実施形態では、T3 =5.5mmに設定されている。蓋し、T3 が小さ過ぎると、充分な保温力や耐久性を確保することが困難となり易い一方、T3 が大き過ぎると、内蓋22の質量が大きくなってしまうおそれがあるからである。また、本実施形態では、内蓋22が内外容器18,20よりも厚肉とされて、内蓋22が容器内の圧力によって上方に持ち上げられるのが有利に抑えられるようになっている。これにより、後述する炊飯時に、容器内の圧力が低下するのを有利に防いで、迅速な炊飯を実現することが出来る。ここで、T3 は、内蓋22において、把手部50や係止片52、蓋側突起58等を除いた部分の厚さの平均値である。
一方、外蓋24は、逆向きの略円形皿形状を有しており、径方向中央部分には、上方に向かって突出する筒状の把手部60が一体形成されている。また、図3に示されているように、外蓋24には、第二の蒸気抜き孔としての蒸気抜き用の外通気孔62が、外蓋24を肉厚方向で貫通して形成されている。なお、後述する電子レンジ用炊飯容器10の組立状態下において、外通気孔62は、内蓋22に形成された一対の内通気孔54,54と周方向で離隔して位置されることが好ましく、本実施形態では、一対の内通気孔54,54の対向する径方向と略直交する位置に外通気孔62が位置されることが好ましい。これにより、加熱時に容器内の圧力が通気孔54,62を通じて外部に逃げるのを抑えて、容器内を高温高圧に維持することにより、炊飯を素早く行うことが出来る。
また、外蓋24の肉厚寸法の平均値:T4 は、好適には、3mm≦T4 ≦7mm、より好適には、4mm≦T4 ≦6mmとされて、本実施形態では、T4 =4.5mmに設定されている。蓋し、T4 が小さ過ぎると、充分な保温力や耐久性を確保することが困難となり易い一方、T4 が大き過ぎると、外蓋24の質量が大きくなってしまうおそれがあるからである。ここで、T4 は、外蓋24において、把手部60を除いた部分の厚さの平均値である。なお、外蓋24は、内蓋22と同様に、内外容器18,20よりも厚肉とされて、容器内の圧力の逃げがより一層有利に防がれるようになっていても良い。
なお、内蓋22と外蓋24は、何れも多孔質の陶器製とされて、吸水性を有しており、水中に浸漬されることにより内部に水が保持されるようになっている。特に本実施形態では、内蓋22及び外蓋24の内外両面が吸水性を有していると共に、内蓋22及び外蓋24が透水性を有しており、内蓋22又は外蓋24を挟んだ一方の側から他方の側へ水分の移動が許容されている。
また、内蓋22と外蓋24のかさ密度は、1.0g/cm3 〜2.0g/cm3 とされていることが望ましく、より好適には、1.2g/cm3 〜1.8g/cm3 とされている。本実施形態では、それら内外蓋22,24の密度が1.66g/cm3 とされている。蓋し、両蓋22,24のかさ密度が、1.0g/cm3 より小さいと、両蓋22,24の耐久性が充分に得られ難くなるおそれがあり、2.0g/cm3 よりも大きいと、両蓋22,24において所望の透水性や保温性が得られ難くなるおそれがあるからである。
そして、このような内蓋22と外蓋24は、図1に示されているように、何れも内容器18に対して組み付けられるようになっている。即ち、内蓋22の外周縁部に形成された係止片52が、内容器18の開口周縁部の内周部分に形成された段差部30に対して、上方から嵌め入れられて重ね合わされることにより、内蓋22が、内容器18に重ね合わされて、内容器18の開口部14において軸直角方向に広がるように配設される。なお、本実施形態においては、内蓋22が、段差部30に嵌め入れられることによって、内容器18に対して径方向で容易に位置決めされるようになっている。これにより、内容器18の開口部14が内蓋22で覆蓋されると共に、内容器18の底面32と内蓋22の内面56が、内容器18への内蓋22の重ね合わせ方向(図1中、上下方向)で対向される。その結果、内容器18の底側突起34が内蓋22の内面56に向けて突出されると共に、内蓋22の蓋側突起58が内容器18の底面32に向けて突出されて、これら底側突起34と蓋側突起58が、内容器18の中心軸上で対向位置される。
さらに、外蓋24の外周縁部が、内容器18の開口周縁部の外周側に形成された係止部28に対して、上方から重ね合わされることにより、外蓋24が、内容器18に対して載置されて、内容器18の開口部14の上方を覆うように配設される。なお、本実施形態においては、外蓋24が、位置決め部31の内周側に嵌め入れられることによって、内容器18に対して径方向で容易に位置決めされるようになっている。これにより、内蓋22と外蓋24が何れも内容器18の開口部14を覆うように配設されて、内蓋22と外蓋24によって本実施形態における蓋部材16が構成されるようになっている。
内蓋22と外蓋24の内容器18への取付状態下において、内蓋22が外蓋24に対して下方に離隔位置せしめられており、もって、内蓋22と外蓋24が、略全体に亘って相互に離間して配置されている。これにより、内蓋22と外蓋24の対向面間には、全体に亘って連続する空間が設けられており、該空間によって蓋側空気層64が形成されている。本実施形態では、内蓋22と外蓋24が何れも透水性を有していることから、内蓋22と外蓋24の組付状態下において、内蓋22と外蓋24の対向面が何れも吸水性を有する面とされている。
蓋側空気層64は、内蓋22と外蓋24と内容器18との協働によって容器内の空間及び外部空間から隔てられている。なお、本実施形態では、内蓋22と外蓋24が、内容器18の内周縁部と外周縁部にそれぞれ載置されるようになっており、内蓋22と外蓋24の対向面間の空間が大きく確保されて、蓋側空気層64がより広い範囲に亘って形成されるようになっている。更に、蓋側空気層64は、内蓋22に形成された内通気孔54を通じて容器内に連通せしめられていると共に、外蓋24に形成された外通気孔62を通じて外部空間に連通せしめられている。更にまた、蓋側空気層64は、内蓋22と外蓋24と内容器18(係止部28)の協働によって容器側空気層48と分離して形成されており、それら容器側空気層48と蓋側空気層64が相互に独立せしめられている。なお、本実施形態では、内蓋22の把手部50の突出高さが、外蓋24の深さよりも小さくされており、蓋側空気層64が内蓋22と外蓋24の間の全体に亘って連続的に形成されている。
なお、電子レンジの種類によっては、容器を載置するテーブルが回転するようになっている場合があり、容器と食品の総重量が大き過ぎると、テーブルが巧く回転しないおそれがある。それ故、電子レンジ用炊飯容器10は軽量であることが望ましく、好適には、質量が2500g以下、より好適には、2000g以下とされていることが望ましい。
また、一般的な電子レンジの庫内の幅と奥行き,高さから、電子レンジ用炊飯容器10の最大外径寸法:Rmax が、好適には、Rmax ≦250mm、より好適には、Rmax ≦240mmとされていると共に、電子レンジ用炊飯容器10の最大高さ寸法:Hmax が、好適には、Hmax ≦160mm、より好適には、Hmax ≦150mmとされている。また、本実施形態では、Rmax =230mm,Hmax =145mmとされている。ここで、本実施形態においては、図2,図3に示されているように、Rmax が、外容器20の把持部46の突出先端の直径とされていると共に、Hmax が、外容器20の糸切の下端から外蓋24の把手部60の上端までの距離とされている。
また、本実施形態では、内外容器18,20と内外蓋22,24が略全体に亘って施釉されている。これにより、内外容器18,20と内外蓋22,24の機械的な強度を高めることができると共に、表面をガラス質の釉薬でコーティングすることにより、汚れの付着を防ぐことが出来る。なお、本実施形態では、内外容器18,20と内外蓋22,24の透水性乃至は通気性を有効に得るために、黄瀬戸釉や粉引釉等の一般的な釉薬を、水等の適当な液体で薄めたものが、釉薬として使用されている。このような濃度の低い釉薬を採用することにより、内外容器18,20と内外蓋22,24の素地の表面に開口して水を保持し得る微小な孔の全てが、釉薬によって閉塞せしめられるのを防いで、透水性が有効に維持されるものと考えられる。また、本実施形態では、水によって薄められた一般的な釉薬に、粉末状に粉砕したラジウム鉱石を混合したものを採用しており、ラジウム鉱石によるマイナスイオン効果が期待できる。更に、本実施形態では、釉に対して積極的に貫入(焼成時における釉薬と素地の収縮率の差によって生じる釉のひび)を生ぜしめることにより、貫入を通じて内外容器18,20と内外蓋22,24の通気性乃至は透水性が確保されるようになっている。
このような本実施形態に従う構造の電子レンジ用炊飯容器10は、図7に示されているように、電子レンジ66で炊飯を行なうのに好適に用いられる。以下に、本実施形態に従う構造の電子レンジ用炊飯容器10を用いて、電子レンジ66で炊飯を行う方法を例示する。
先ず、内外容器18,20と内外蓋22,24を何れも水中に浸漬せしめる。なお、種々なる条件によって変化し得るが、それら内外容器18,20と内外蓋22,24を、水中に1分間以上浸けておくことが望ましい。これにより、多孔質の陶器で形成されて吸水性を有する内外容器18,20と内外蓋22,24が、何れも水を吸って内部に水を保持する。
次に、内容器18に飯米と水をそれぞれ適量ずつ入れた後、内容器18を外容器20に内挿状態で組み付けて容器本体12を形成する。続いて、内蓋22と外蓋24を内容器18に順に組み付けることによって、内蓋22と外蓋24で蓋部材16を形成して、これら内蓋22と外蓋24で内容器18の開口部14を覆蓋して閉塞せしめる。これにより、容器内に飯米及び水を収容した電子レンジ用炊飯容器10が形成される。そして、容器内に飯米及び水を収容した電子レンジ用炊飯容器10を、周知の電子レンジ66に入れて電子レンジ66を作動せしめることにより、マイクロ波を電子レンジ用炊飯容器10に投射する。なお、図7においては、マイクロ波が二点鎖線の矢印によって概略的に示されている。
投射されたマイクロ波は、陶器には吸収され難く、陶器を通り抜ける性質を有すると共に、水には吸収され易く、水を発熱させる性質を有している。この性質によって、容器内に収容された水(飯米に吸収されたものも含む)が発熱して、飯米と水が加熱されるようになっている。そして、容器内の水が沸騰されて、水の熱で飯米が加熱されることにより、炊き上げ工程が行なわれる。
所定時間の加熱により飯米の炊き上げ工程が完了した後、電子レンジ66の作動を停止して、電子レンジ用炊飯容器10を、蓋部材16で内容器18の開口部14を覆蓋した状態のまま、電子レンジ66から取り出して、適当な時間だけ放置する。これにより、内容器18内の水蒸気と電子レンジ用炊飯容器10の余熱によって、蒸らし工程が行なわれる。そして、適当な時間の蒸らし工程を経ることによって、炊飯が完了する。
ここにおいて、本実施形態に係る電子レンジ用炊飯容器10は、内容器18の底面32に底側突起34が形成されている。これにより、図8に示されているように、内容器18内の水を沸騰させて飯米を加熱する炊き上げ工程において、内容器18内の水に、内容器18の中央部分で上昇して内容器18の周辺部分で下降する対流が生ぜしめられる。その結果、飯米がこの対流に乗って攪拌されて、全ての飯米を均一且つ高温に加熱することが出来る。即ち、本実施形態に係る電子レンジ用炊飯容器10によれば、内容器18内の水を加熱する炊き上げ工程において、従来の電子レンジを用いた炊飯では十分に達成できなかった水の対流を促進することが出来て、これにより、水中の飯米をより均一且つ高温に加熱することが出来る。
そして、内容器18内の水が蒸発した後の蒸らし工程においては、図9に示されているように、飯米側から上昇する水蒸気が内蓋22の蓋側突起58で分流される。これにより、内容器18内において、水蒸気の対流が促進される。その結果、内容器18内の熱分布の偏りを抑えて、飯米の蒸らしをより均一に行なうことが出来ると共に、内容器18内の高温状態をより長時間に亘って維持して、十分な蒸らしを行なうことが出来る。このように、本実施形態に従う構造とされた電子レンジ用炊飯容器10によれば、炊き上げ工程において飯米の全てをより均一且つ高温に加熱することが出来ると共に、より有効な蒸らしを行なえることにより、より良質な御飯を炊き上げることが出来る。
特に本実施形態においては、内容器18が丸釜形状とされており、底部の内面に形成された湾曲面40が底側突起34と滑らかに接続されている。これにより、内容器18内の水を乱流させるおそれが軽減されており、内容器18の外周部分となる周壁部26側で下降して、中央部分の底側突起34側で上昇して循環する対流をより円滑に生ぜしめることが出来る。また、底側突起34と蓋側突起58が対向配置されていることにより、炊飯時の内容器18内全体での対流が整流化されて、炊き上がりの際、飯米が均一に立上ったような理想的な炊き上げが可能となると共に、吹き零れ等を抑制し得る。更に、底側突起34と蓋側突起58が何れも内容器18の中心軸上に形成されていることにより、炊き上げ工程における水の対流と蒸らし工程における水蒸気の対流の何れをもバランスよく生ぜしめることが出来て、飯米の加熱の斑および蒸らしの斑をより低減することが出来る。
さらに、本実施形態に係る電子レンジ用炊飯容器10は、多孔質材で形成されており、加熱前に水中に浸けることにより予め吸水せしめられて、内部に保留水を有している。従って、電子レンジ用炊飯容器10の内部に保持された水(保留水)が、マイクロ波を吸収して発熱せしめられると共に、発熱による保留水の温度上昇に伴って電子レンジ用炊飯容器10の温度が上昇せしめられる。要するに、本実施形態に係る電子レンジ用炊飯容器10は、陶器製でありながら、電子レンジ66から発せられるマイクロ波の作用によって加熱されるようになっているのである。
このように電子レンジ用炊飯容器10自体が加熱されるようになっていることにより、電子レンジ用炊飯容器10に収容された飯米と水は、マイクロ波による水分の発熱による内部加熱と、電子レンジ用炊飯容器10からの熱伝達による外部加熱によって、内外両側から加熱されることとなる。これにより、飯米の加熱をより速やかに完了することが出来ると共に、全体を略均一に加熱することが出来て、仕上がり(炊き上がり)の斑を軽減乃至は解消することが出来る。しかも、遠赤外線効果によって、より食感や風味に優れた調理結果を得ることも出来る。
また、内容器18と外容器20の間と、内蓋22と外蓋24の間に、それぞれ空気層48,64が形成されていることにより、内容器18の熱が外部(電子レンジ66の庫内)に逃げるのを有利に防ぐことが出来て、保温性の向上が図られている。これにより、電子レンジ66の停止後も、容器内の空間と該空間の壁面を構成する内容器18及び内蓋22が、何れも保温状態に維持されて、余熱によって飯米への加熱が緩やかに進行するようになっている。従って、本実施形態に従う構造の電子レンジ用炊飯容器10によれば、従来の電子レンジ66による加熱調理では困難であった余熱による蒸らし等が、容器の構造を工夫することによって、容易に且つ効果的に実現されるようになっており、余熱による最終的な蒸らしが重要な炊飯においても、旨みや風味を損なうことなく有利に調理することが出来る。
しかも、本実施形態では、内容器18と外容器20の内周面と外周面の両面が吸水性を有していると共に、内蓋22と外蓋24の表裏両面が吸水性を有している。それ故、マイクロ波の照射によって保留水が加熱されて蒸気化すると、容器側空気層48及び蓋側空気層64に蒸気が流れ込むようになっている。従って、マイクロ波の作用による電子レンジ用炊飯容器10の発熱状態下では、容器側空気層48と蓋側空気層64に蒸気の流入による気流が生ぜしめられる。そして、容器側空気層48内と蓋側空気層64内の空気(水蒸気)の熱が、対流によって内容器18及び内蓋22に対して有利に伝達されることにより、内容器18及び内蓋22が外部から全体的に満遍なく加熱される。これにより、内容器18と内蓋22において、マイクロ波が当たり易い部分(例えば、周壁部26)と、マイクロ波が当たり難い部分(例えば、底部36の径方向中央部分)との温度差が、可及的速やかに解消されて、飯米の局所的な加熱がより一層有利に回避され、飯米全体を斑なく加熱することが可能となる。特に本実施形態では、容器側空気層48が全体に亘って略一定の幅で形成されており、対流による熱伝達が内容器18に対して偏りなく作用するようになっている。なお、図7では、内外容器18,20と内外蓋22,24から空気層48,64への蒸気の流入が、矢印によって概略的に示されている。
さらに、本実施形態では、内容器18が透水性を有しており、内容器18の内周側と外周側で水分の移動が許容されている。これにより、加熱調理後に容器内の水分が自動的に調節されて、容器内の結露や乾燥等が抑えられる。それ故、飯米に水滴が付いてべた付いたり、飯米の水分が内容器18に吸収されて乾燥する等の問題を回避することが出来る。従って、調理後に、飯米を電子レンジ用炊飯容器10に入れた状態で比較的長期間に亘って保存する場合等には、内容器18の透水性による調湿効果と、通気性による外部とのガス交換によって、飯米の品質低下を抑えることが出来る。しかも、内容器18の外周側には、容器側空気層48と外容器20が、内容器18を取り囲むように設けられている。これにより、内容器18の内周側(容器内)の乾燥が有利に防がれて、保存時等における飯米の乾燥による劣化が軽減乃至は解消されるようになっている。特に、容器側空気層48が、炊飯時には水蒸気で満たされる、水分を多く含む空気の層であることから、内容器18が容器側空気層48で取り囲まれていることによって、内容器18がより有利に湿潤な状態で維持されて、飯米の乾燥が一層効果的に防がれるようになっている。
加えて、本実施形態においては、内容器18の底側突起34が、突出先端面38が略平坦面とされた裁頭円錐台形状とされている。これにより、飯米の炊き上げが完了した後に、内容器18内で対流促進によりふっくらと炊き上がった飯米を、その状態で安定して保持することが出来、均等な蒸らしを行なうことが出来る。また、炊き上がり後の御飯を杓文字で掬う際に、底側突起34が邪魔になるおそれも軽減されている。
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記実施形態における蓋側突起58は必ずしも必要ではなく、図10に示す本発明の異なる態様としての電子レンジ用炊飯容器70のように、内蓋22の内面56は平坦面として、内容器18側の底側突起34のみを形成しても良い。
また、底側突起および蓋側突起の具体的形状は、前記実施形態の如き形状に限定されない。例えば、底側突起を先細の円錐形状としても良いし、底側突起および蓋側突起を、円錐形状に代えて半球形状としたり、その他任意の突起形状としても良い。更に、底側突起および蓋側突起は、容器本体の底面および蓋部材の内面の中央部分から外れた位置に形成しても良いし、容器本体と蓋部材の重ね合わせ方向(図1中、上下方向)で互いに位置をずらせて形成しても良い。更にまた、底側突起および蓋側突起を複数形成する等しても良い。
また、前記実施形態における容器本体と蓋部材の具体的形状はあくまでも例示であって、何等限定的に解釈されるものではない。例えば、前記実施形態においては、容器本体12が内容器18と外容器20による二重構造とされると共に、蓋部材16が内蓋22と外蓋24による二重構造とされていたが、容器本体12および蓋部材16は、一重構造でも良いし、或いは内容器18と外容器20の間に中間容器を備えて容器本体を三重構造としたり、内蓋22と外蓋24の間に中間蓋を備えて蓋部材を三重構造とする等しても良い。
また、前記実施形態では、内蓋22と外蓋24がそれぞれ内容器18に組み付けられるようになっており、それら内蓋22と外蓋24が全体に亘って相互に離隔せしめられている。しかし、例えば、内蓋22が内容器18に組み付けられると共に、外蓋24が内蓋22に対して載置されて組み付けられるようになっていても良い。更にまた、内蓋22と外蓋24の各外周縁部を、外容器20の開口周縁部によって支持させるようにしても良い。
また、前記実施形態では、内外容器18,20と内外蓋22,24が何れも透水性を有する部材とされていたが、これらの部材18,20,22,24は、必ずしも透水性を有していなくても良い。具体的には、例えば、内容器18の内周面と外容器20の外周面に施釉することにより、内容器18の内周面と外容器20の外周面が、液体乃至は気体の通過を阻止するように加工されていても良い。要するに、内容器18と外容器20の対向面の少なくとも一方を吸水性を有する面としたり、内蓋22と外蓋24の対向面の少なくとも一方を吸水性を有する面とする等しても良い。
また、内容器18,外容器20,内蓋22,外蓋24は、必ずしも同じ材料で形成されていなくても良い。具体的には、例えば、内容器18及び内蓋22を耐火性に優れた粘土を材料とする陶器製とすると共に、外容器20及び外蓋24を耐火性をもたない粘土を材料とする陶器製とすることにより、内容器18と内蓋22を組み合わせて直火にあてることが可能な蓋付きの鍋として使用することが出来ると共に、直火にあてない外容器20と外蓋24の材料を耐火性に留意することなく自由に選択することが出来る。加えて、容器本体および蓋部材は、陶器製のものに限定されず、耐熱性に優れた合成樹脂製のもの等であっても良い。
また、本発明に従う構造とされた電子レンジ用炊飯容器を、飯米以外の食品の加熱調理や、料理の解凍及び温め等に用いることも勿論可能であって、前記実施形態に示したように、火加減の容器による調節や熱斑のない全体的な加熱,加圧による迅速な調理等の効果を実現することが出来る。例えば、本発明に従う構造とされた電子レンジ用炊飯器を用いて麺類を湯掻くこと等も可能であり、前述の如き対流促進効果によって、麺類の容器への張り付きを抑えることが出来る。更に、御飯以外の各種料理も、電子レンジ用炊飯容器に収容して保存することにより、比較的に長期間に亘って品質の劣化を抑えることが出来る。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。