以下、本発明に係る車両シート1用のシート乗員判定装置10の第1の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書中において使用する「前後、左右、上下」の方向は車両シート1に着座した乗員から見た車両の各方向を基準として記述している。また本実施形態において車両は左ハンドルとし、チャイルドシート5は助手席に設置するものとする。
図1に示すように、助手席用の車両シート1は、乗員が着座するシートクッション11と、シートクッション11の後端部において前後方向に回動可能に取り付けられ、乗員の背もたれとなるシートバック12とを備えている。また、シートバック12の上端には、乗員の頭部を支持するヘッドレスト13が取り付けられている。
シートクッション11は、シートフレーム111、シートフレーム111の上方に配置されたパッド部材112、およびパッド部材112の表面を覆う表皮113により形成されている。シートフレーム111の下面には、左右一対のアッパレール14R、14Lが取り付けられている。アッパレール14R、14Lは、車両フロア4上に固定された一対のロアレール41R、41L上に、それぞれ前後方向に移動可能に係合している。これにより車両シート1は、車両フロア4上を前後方向に移動して、乗員の所望する位置に固定可能に形成されている。
次にシート乗員判定装置10について図1乃至図6に基づいて説明する。シート乗員判定装置10は、3点式のシートベルト装置6(図3参照)を有し、バックルスイッチ65(本発明のシートベルト装着検出手段に該当する)と、前方荷重センサFL(本発明の前方荷重検出手段に該当する)および後方荷重センサRL(本発明の後方荷重検出手段に該当する)と、コントローラ3(本発明のチャイルドシート固縛判定手段に該当する)と、を有している。
シートベルト装置6は図示しないELR(Emergency Locking Retractor)機構を有する巻取り装置を備え、車両シート1を前方から見た状態の図3に示すように、ストラップ66、タングプレート63、バックル64、およびロッキングクリップ67を有している。図3乃至図5に示すようにストラップ66は、ショルダストラップ61とラップストラップ62とを備え、各ストラップ61、62はストラップ66の中間部に移動可能に連結されるタングプレート63によって分割されている。ここで中間部とは、ストラップ66の両端である一端と他端の間の部分を言うものとする。
なお、ELR機構とは、通常時には、巻き取りおよび引き出しが自在であるショルダストラップ61(またはストラップ66)に対し衝突等の緊急時に引き出し方向へのロックをかけることにより乗員を車両シート1に拘束し乗員の安全を確保する機構である。ELR機構の構造等については周知であるとともに、本発明においては作用に関係しないので詳細な説明は省略する。
車両シート1の右方(本発明の一方側に該当する)に位置する図示しないピラー内にはシートベルト装置6の巻取り装置を構成するリトラクタ(図示しない)が配置されている。リトラクタはピラー内の下方に配置されている。そしてリトラクタに連結されリトラクタに対し、巻き戻し、および引き出し自在に連結される図示しないリトラクタ用ストラップがピラー内上方まで延在している。そして、リトラクタ用ストラップは、ピラーを貫通する図示しないスリット孔を挿通して車室内のストラップ66の一端であるショルダストラップ61の端部と連結している。またストラップ66の他端である、ラップストラップ62の端部は車両シート1の右方(本発明の一方側に該当する)の後方で下方の車両フロア4に固定されている。なお、本実施形態においてはピラー内に配置されるリトラクタとリトラクタに連結されるリトラクタ用ストラップとを合わせて巻取り装置という。
ストラップ66を構成するショルダストラップ61は、車両衝突時等の緊急時において、主にシートベルト装置6を装着状態として着座する着座者の上半身を拘束することによって着座者を保護するための部分である。上述の通りショルダストラップ61の端部(ストラップ66の一端)は巻取り装置のリトラクタ用ストラップと連結されている。これにより通常時においてショルダストラップ61(ストラップ66)は、リトラクタによる巻き取り、およびリトラクタの巻き取り力に抗しての引き出しが自在となっている。
シートベルト66を構成するラップストラップ62は、車両衝突時等の緊急時において、主にシートベルト装置6を装着状態として着座する着座者の腰部を拘束し着座者を保護するための部分である。ラップストラップ62の端部であるストラップ66の他端は、上述したとおり車両シート1の右側(本発明の一方側に該当する)後部の下方の車両フロア4と接続され固定されている。なお、ストラップ66の他端と車両フロア4との接続においては、車両の衝突を検知し予めストラップ66をモータの回転力によって巻き上げストラップ66にテンションを付与する自動巻き取り機能を備えたリトラクタをストラップ66の他端と車両フロア4との間に介在させて固定させてもよい。これによっても同様の効果が得られる。また、同様にストラップ66の一端に連結するリトラクタについても自動巻き取り機能を備えたリトラクタとしてもよい。
図4に示すようにタングプレート63は、タング部63aと支持部63bとを有している。タング部63aは導電性を有する金属製であり、支持部63bはタング部63aの一部を樹脂が覆うことによって形成されている。支持部63bはスリット状の挿通穴63cを有し、該挿通穴63cにストラップ66が挿通され、これによってストラップ66の中間部にタングプレート63がストラップ66の延在方向に移動可能に連結される。そしてタングプレート63は、タングプレート63の位置をストラップ66の延在方向に移動させることによってショルダストラップ61とラップストラップ62とをそれぞれ所定の長さに配分して分割する。例えば車両シート1上に着座する人、または載置されるチャイルドシート等が相対的に大きいと、人、またはチャイルドシートを車両シート1の着座面上に押圧して固定するためのラップストラップ62の必要長さが相対的に長くなる。このため、タングプレート63はショルダストラップ61の方向に移動しラップストラップ62の長さを対象物に応じて長くした上で係脱可能なバックル64に係合させる。なお、このときリトラクタからはラップストラップ62の長さが延びた分だけショルダストラップ61が引き出され、これによりショルダストラップ61の長さが維持される。よってショルダストラップ61の長さをも延長する必要があるときにはリトラクタからはさらにショルダストラップ61を引き出せばよい。また逆にラップストラップ62の長さを装着する対象物に応じて短くするときにはタングプレート63をラップストラップ62の方向に移動させラップストラップ62の長さを短くした上でバックル64に係合させる。このように移動後のタングプレート63の位置を境界点としてショルダストラップ61とラップストラップ62とが分割される。
バックル64は、車両シート1に対して左方(本発明の他方側に該当する)の下方側面の固定部64aに固定され、タングプレート63を挿入するための開口穴が上方に開口している。タングプレート63は、上方からバックル64の開口穴に挿入され係合し固定される。シートベルト装置6のタングプレート63と、バックル64とが非係合状態にある時、バックルスイッチ65は開状態(オフ)にある。タングプレート63とバックル64とが係合することにより、バックルスイッチ65は閉状態(オン)となり、コントローラ3はシートベルト装置6が装着されたことを検出する。
図5に示すロッキングクリップ67は、いわゆるHクリップと呼称されるものである。ロッキングクリップ67は、タングプレート63の移動によって所定の長さに形成されたラップストラップ62の長さを固定するものである。具体的には、まず、ラップストラップ62の長さを所望の長さとした状態でタングプレート63の前後にあるショルダストラップ61、およびラップストラップ62の同じ側の面同士を向かい合わせて束ねる。そして向かい合わせた状態のまま各ストラップ61、62を図5に示すようにしてロッキングクリップ67のスリット状の空間に図5に示すように通し各ストラップ61、62を結合する。これによりロッキングクリップ67と各ストラップ61、62との間の相対移動が阻止され、ラップストラップ62の長さが固定される。このとき、タングプレート63の位置はロッキングクリップ67によって固定されたショルダストラップ61側の固定点とラップストラップ62側の固定点との間に形成される袋状のストラップの中間点に位置する。
これによりタングプレート63がバックル64に係合された状態においては、袋状に形成されたストラップの長さの半分がラップストラップ62の一部を形成し、残りの半分がショルダストラップ61の一部を形成してラップストラップ62の長さが所望の長さに固定される。なお、このとき、ロッキングクリップ67の固定位置は、車両シート1の一方側である左右方向においてバックル64とは反対側(つまり車両のドア側)の側面近傍であることが好ましい。これによってロッキングクリップ67の良好な取付け作業性、および取付け状態確認のための視認性が確保される。
車両シート1の左方(他方側)で前後一対の前方荷重センサFL、および後方荷重センサRLは、シートフレーム111とアッパレール14Lとの間に、前後に所定距離だけ隔離配置され介装されている。図1に示すように、前方荷重センサFLは、シートクッション11の前後中心よりも前方部に設けられている。また、後方荷重センサRLは、シートクッション11の前後中心よりも後方部に設けられている。
前方荷重センサFL、および後方荷重センサRLは、いずれも歪ゲージ等により形成された荷重センサである。前方荷重センサFL、および後方荷重センサRLは共に車両出荷状態において各荷重値Ff、Rfが0にリセットされ、車両シート1への乗員の着座あるいは荷物の載置等によりシートクッション11に対し下方に加わる荷重を検出する。尚、本発明は、前方荷重センサFL、および後方荷重センサRLの種類、型式、検出原理を特定のものに限定するものではない。
前方荷重センサFLは、シートフレーム111の前方部分と左側(本発明の他方側に該当する)のアッパレール14Lとの間に介装され、シートクッション11の前方左側部分が受け持つ前方荷重値Ffを検出する。同様に、後方荷重センサRLは、シートフレーム111の後方部分と左側(本発明の他方側に該当する)のアッパレール14Lとの間で、且つ車両シート1の後部側面の固定部64aに固定されるバックル64の近傍に介装され、シートクッション11の後方左側部分が受け持つ後方荷重値Rfを検出する。
図2に示すように、前方荷重センサFL、後方荷重センサRLは、それぞれセンサ部21F、21Rと、センサ部21F、21Rによって発生した検出信号を増幅するアンプ部22F、22Rと、を備えている。センサ部21F、21Rは、それぞれ4個の歪ゲージからなるホイートストンブリッジ回路によって形成されている。
前方荷重センサFL、後方荷重センサRLには、コントローラ3が接続されている。コントローラ3は、前方荷重センサFL、後方荷重センサRLからのアナログ検出信号をデジタル変換するA/D変換器31、該検出信号に基づき演算を行なう演算部32、着座状態を判定するために必要な演算部32での演算結果等、種々のデータを記憶する記憶部33、および演算部32の演算結果に基づき車両シート1へのチャイルドシートの固縛を判定する判定部34を備えている。
演算部32は本発明にかかる前後和荷重値演算手段35と前後差荷重値演算手段36とを有している。前後和荷重値演算手段35は、前方荷重センサFLで検出された前方荷重値Ffと後方荷重センサRLで検出された後方荷重値Rfとを加算して前後和荷重値(Ff+Rf)を演算する。前後差荷重値演算手段36は後方荷重値Rfから前方荷重値Ffを減算して前後差荷重値(Rf−Ff)を演算する。そして演算された前後和荷重値(Ff+Rf)および前後差荷重値(Rf−Ff)は記憶部33に記憶された後、判定部34に送信される。なお、本実施形態においては前後差荷重値を後方荷重値Rfから前方荷重値Ffを減算して求めた。これにより前後差荷重値(Rf−Ff)は正の値となる。しかし、この形態に限らず前後差荷重値を前方荷重値Ffから後方荷重値Rfを減算して求めても良い。この場合には前後差荷重値(Ff−Rf)の変動は負の値となるため、その点に留意して判定すればよい。
判定部34は、バックルスイッチ65によってシートベルト66の装着が検出された時点からチャイルドシート5の固縛の判定処理を実行する。判定部34は、シートベルト66の装着が検出された時点から計測される図6に示す第1所定時間T1(例えば5S)内において、下記に示す2つの条件が満足されたときにチャイルドシート5が車両シート1上に固縛されたと判定するものである。なお、図6はチャイルドシート5取付け時の前後和荷重値(Ff+Rf)と前後差荷重値(Rf−Ff)の実測データの一例である。図6において実線が前後和荷重値(Ff+Rf)を示し、破線が前後差荷重値(Rf−Ff)を示している。また、バックルスイッチ65の作動信号をBSとして示している。ただし図6に示すデータはあくまで一例を示すものであり、図示しない前方荷重値Ffが負の値になる場合を含むデータとなっている。しかし前方荷重値Ffおよび後方荷重値Rfは実際に適用される車両用シートの形状、取付け方法、取付け位置、およびチャイルドシート5の固縛時における取付け者の体重のかけ方等様々な要因によって変動する。このため本実施形態の図6に示すデータ以外では取付け者によるチャイルドシート5の固縛動作時においては前方荷重値Ffが負の値にならない場合があることを述べておく。
1つ目の条件は、まず前後和荷重値(Ff+Rf)が第1閾値CL1以上に上昇し、その後に第1閾値CL1より小さな第2閾値CL2以下に下降することである(図6参照)。つまり、チャイルドシート5の固縛時においては、図6のa部に示すように、はじめに取付け者がタングプレート63をバックル64に係合させるために車両シート1の後部に体重をかける。そして、タングプレート63のタング部63aをバックル64の開口部に挿入することによって、バックルスイッチ65をオンにする。このとき、車両シート1の後部の荷重が増加すると車両シート1の後部を支点として車両シート1に回転モーメントが発生する。これによって車両シート1の前部が浮き上がり前方荷重値Ffが正の値から途中で負の値に転じて減少していく。本実施形態においては、このときの前方荷重値Ffの減少量は後方荷重値Rfの増加量と比べて小さいことが実験によって確認されている。これによって前後和荷重値(Ff+Rf)は取付け者が車両シート1の後部に体重をかけることによって、演算上、上昇するので、このときの前後和荷重値(Ff+Rf)の上昇量が取付け者の体重による上昇であることを事前に評価によって求め設定した第1閾値CL1によって確認する。
その後、さらにタングプレート63をバックル64に向かって押圧し完全に係合させる。これにより車両シート1の後部の後方荷重値Rfが増加するが、このときは前方荷重値Ffは後方荷重値Rfの減少を越えて減少し、トータルで前後和荷重値(Ff+Rf)が若干、減少する(図6、b部参照)。
この後、チャイルドシート5の固縛が完了し、取付け者がチャイルドシート5上から離間すると、取付け者の体重によって付与され上昇した後方荷重値Rf、および減少した前方荷重値Ffはそれぞれ解除される。これにより前後和荷重値(Ff+Rf)は、所定の傾きで減少し、やがてチャイルドシート5の固縛に係る重量のみが前方荷重センサFL、および後方荷重センサRLに安定的に付与される状態(図6、c部)に至る。
このとき、減少途中における前後和荷重値(Ff+Rf)の挙動は、前方荷重値Ffが負の領域においては、演算上、若干緩やかな減少の傾きを示すが(図6、d部参照)、前方荷重値Ffが正の領域に転じてからは、急速に減少する特性を示す(図6、e部参照)。つまり、前方荷重値Ffが負の領域においては、前後和荷重値(Ff+Rf)が演算上、小さな値となるよう寄与していた負の値の前方荷重が解除され後方荷重とともに前後和荷重値から抜ける。これにより減少の初期において前後和荷重値(Ff+Rf)は負の前方荷重値Ffが正に向かって増加するので比較的緩やかに減少する。そして、途中から、演算上、前後和荷重値(Ff+Rf)が大きくなるように寄与していた正の値に前方荷重値Ffが転じると前後和荷重値(Ff+Rf)の減少速度は大きくなり初期よりも大きな傾きで減少し、やがてチャイルドシート5および車両シート1の重量のみが前方荷重センサFL、および後方荷重センサRLに安定的に付与される状態に至る(図6、c部参照)。そして減少後の前後和荷重値(Ff+Rf)がチャイルドシート5および車両シート1の重量近傍まで減少したかを第2閾値CL2によって確認する。なお、第1閾値CL1は、想定する取付け者の体重、車両シート1の形や強度、前方荷重センサFL、および後方荷重センサRLの取付け位置、およびバックル64の取付け位置等によって値が異なるため事前の実験等によって適切な値が決定されることが好ましい。また第2閾値CL2は車両シート1およびチャイルドシート5の重さ等から決定すればよい。
2つ目の条件は、前後差荷重値(Rf−Ff)において、検出時点を起点とした、第1所定時間T1より短い第2所定時間T2内に検出した最大値Fmaxから下降幅Dが所定の下降幅Dmを越えて下降することである(図6参照)。
チャイルドシート5の固縛時においては、上述した1つ目の条件で説明したように、後方荷重値Rfおよび前方荷重値Ffがそれぞれ変動する。このとき前方が浮き上がり前方荷重値Ffが負の値に転じると、前後差荷重値(Rf−Ff)は演算上、大きく上昇し最大値Fmaxが検出される(図6、f部参照)。最大値Fmaxは取付け者がチャイルドシート5の上に乗って体重をかけタングプレート63をバックル64方向に押圧しながら係合したときに検出される。よって本実施形態においては最大値Fmaxの検出時間をバックルスイッチ65がONしてからバックル64にタングプレート63が完全に押込まれて係合を完了するまでの時間である第2所定時間T2(例えば1s間)内に設定する。そして取付け者がチャイルドシート5上から離間することによって発生する最大値Fmaxからの前後差荷重値(Rf−Ff)の減少量である下降幅Dの大きさを所定の下降幅Dmによって確認する。このとき第2所定時間T2、最大値Fmaxおよび下降幅Dmは、それぞれ事前の実験等によって適切に決定するものとする。
このとき、最大値Fmaxから減少する前後差荷重値(Rf−Ff)の挙動は、演算上、前方荷重値Ffが前述した負の領域および正の領域の全域を通して大きな傾きで減少する特性を示す(図6、g部参照)。つまり、取付け者がチャイルドシート5上から降りる動作を開始すると、それまで前後差荷重値(Rf−Ff)の大きさが演算上、大きくなるよう寄与していた負の値の前方荷重が解除され後方荷重とともに前後差荷重値(Rf−Ff)から抜ける。これにより減少挙動の初期において前後差荷重値(Rf−Ff)は負の前方荷重値Ffの増加によって演算上、大きな傾きで減少する。そして、途中から前方荷重値Ffが正の値に転じても、演算上、正の値は大きくなるにつれ前後差荷重値(Rf−Ff)を小さくするよう寄与するので初期同様大きな傾きで減少する。これにより前述した前後和荷重値(Ff+Rf)の減少特性(図6、d、e部参照)と前後差荷重値(Rf−Ff)の減少特性(図6、g部参照)とはそれぞれ傾きの異なった特徴的な特性を示している。そして、第1所定時間T1(例えば5S)内における前後和荷重値(Ff+Rf)および前後差荷重値(Rf−Ff)のそれぞれの挙動が、上述した各条件を満たしたときに、各荷重値Ff、Rfの変動はチャイルドシートの固縛動作によって発生したものであると判定する。
なお、上述したように本実施形態においては前後差荷重値(Rf−Ff)の最大値Fmaxは前後和荷重値(Ff+Rf)の最大値より大きな値になっている。しかし前述した前方荷重値Ffが負の値にならない場合においては、前後差荷重値(Rf−Ff)の最大値Fmaxは前後和荷重値(Ff+Rf)の最大値より小さな値となることはいうまでもない。
バックルスイッチ65は、コントローラ3に接続されている。バックルスイッチ65には、直流抵抗71を介して車両のバッテリ72が接続されている。バックルスイッチ65が開状態にある時、直流抵抗71に電流が流れないため、コントローラ3はバッテリ72の正側端子電圧(ハイ)を検出している。バックルスイッチ65が閉状態になると直流抵抗71に電流が流れ、コントローラ3は直流抵抗71による電圧降下(ロー)を検出することができる。これにより、コントローラ3は、バックル64がタングプレート63と係合し、シートベルト装置6が装着されたことを検出する。
さらに、コントローラ3には、車両のイグニッションスイッチ8が接続されている。コントローラ3は、イグニッションスイッチ8がオン状態にあるか、オフ状態にあるかを検出することができる。
次に、図3に基づき、車両シート1のシートクッション11上に、チャイルドシート5を取り付ける方法について説明する。図3に示すように本実施形態において、チャイルドシート5は、着座する乳幼児が車両の後方を向くように、車両シート1に後ろ向きに取り付けられる。そこでまずチャイルドシート5をシートクッション11上に載置する。そして前述したようにラップストラップ62の長さがチャイルドシート5を取付けるのに適した長さとなるようロッキングクリップ67によって各ストラップ61、62を束ねて結合する(図5参照)。このときチャイルドシート5を取付けるのに適したラップストラップ62の長さとは、束ねた各ストラップ61、62をチャイルドシート5の後部に設けられたストラップ挿通穴5aに挿通させ、チャイルドシート5に荷重をかけずにタングプレート63をバックル64に挿入しようとしたときに、タングプレート63がバックル64に若干届かない状態であることが好ましい。ただし、タングプレート63とバックル64との間がどれほど離間していればよいかについては、実際にチャイルドシート5を固縛した後に取付け具合を評価し、取り付けが緩いようであれば離間距離を更に増して調整すればよい。
次に上述したようにロッキングクリップ67によって束ねた各ストラップ61、62をチャイルドシート5の後部に設けられたストラップ挿通穴5aに挿通させタングプレート63を車両シート1の左側(他方側)に突出させておく。なお、このときロッキングクリップ67は車両シート1の右側(一方側)の側面近傍に配置されている(図3参照)。
このような状態において取付け者はチャイルドシート5の上に乗りチャイルドシート5および車両シート1の後部に体重がかかるように重心をずらす(図6のa部参照)。これにより、車両シート1のシートクッション11が有するパッド部材112の後部が撓みチャイルドシート5がパッド部材112の中に沈み込む。そして固定されたラップストラップ62の長さが適切な長さとなり、タングプレート63が車両シート1の後部側面の固定部64aに固定されたバックル64の開口穴に挿入可能な状態となる。
そしてタングプレート63を上方からバックル64に挿入し、タングプレート63のタング部63aがバックル64内の導通部に接触するとバックルスイッチ65がONとなる。その後さらにタングプレート63を押圧してバックル64に押込むとタングプレート63がバックル64に完全に係合状態となる。これにより、バックル64およびバックル64が固定される車両シート1の後方には下方に押圧する力が加わり後方荷重センサRLが検出する後方荷重値Rfがさらに増大する。またこのとき同時にチャイルドシート5の前方左側はさらに浮き上がり、前方荷重センサFLが検出する前方荷重値Ffが減少する。これにより図6、f部に示すように前後差荷重値(Rf−Ff)がさらに増加して最大値Fmaxが検出される。
その後、タングプレート63とバックル64との係合完了後に、取付け者がチャイルドシート5上から降りると、前方荷重センサFLおよび後方荷重センサRLに付与されていた荷重が解除される。これにより、図6のd、eおよびg部に示すように前後和荷重値(Ff+Rf)および前後差荷重値(Rf−Ff)は、前述したように異なる傾きによってそれぞれ大きく減少し、やがて車両シート1およびチャイルドシート5の重さのみを検出する。そしてこのときチャイルドシート5はパッド部材112の撓みが所定量だけ復帰するとともにパッド部材112の復帰力とラップストラップ62の押さえ力とが釣合って良好に固定される。
そして、前後和荷重値(Ff+Rf)および前後差荷重値(Rf−Ff)のそれぞれの挙動(図6のa〜g部)が、第1所定時間T1(例えば5S)内において上述した各条件を満たしたときに、各荷重値の変動はチャイルドシート5の固縛動作によって発生したものであると判定する。
なお、以上、左ハンドル車両に搭載された助手席用の車両シート1における着座荷重の変動について説明したが、右ハンドル車両に搭載された助手席用の車両シートの場合、これまでの説明に対して、左右の関係が逆になることは言うまでもない。つまり右ハンドル車両の助手席用の車両シートの場合においては、一方側が車両シートの左側に該当し、他方側が車両シートの右側に該当する。
次に、図7乃至図10のフローチャート1乃至4に基づき、本実施形態における、シート乗員判定装置10によるシート乗員判定方法について説明する。シート乗員判定装置10は、イグニッション8がOFF状態であり車両シート1上の荷重が所定値以下で、且つシートベルト装置6のバックルスイッチ65(シートベルト装着検出手段)がオンされていない状態においては、車両シート1上に乗員なし、と判定し記憶している。
そして、バックル64にタングプレート63が挿入されバックルスイッチ65がオンされると、コントローラ3が起動され、車両シート1上に乗ったのが大人(または子供)であるか、チャイルドシート5であるかの判定を開始する。本実施形態においては、このように乗員なしの状態からバックルスイッチ65がオンされた場合の判定方法である。なお、イグニッション8はOFFに限らず、ON状態でもよい。
まず、本発明に係るシート乗員判定のメインプログラムである図7のフローチャート1について説明する。フローチャート1は、フローチャート2乃至4の各サブルーチンA〜Cの結果を基に最終的にチャイルドシート5の固縛を判定する。具体的には、フローチャート1のプログラムが開始されると後に詳述する図8に示すフローチャート2のサブルーチンAが実行される(ステップS1)。サブルーチンAはバックルスイッチ65のONを検出するとともに、前方および後方荷重値Ff、Rfを順次取得するプログラムである。
次に後に詳述する図9に示すフローチャート3のサブルーチンBが実行される(ステップS2)。サブルーチンBは前後和荷重値(Ff+Rf)が後述する所定の条件1を満たしているか否かの判定を行なうものである。そして条件1が成立していなければ、車両シート1上にはチャイルドシート5は固縛されていないと判定する(ステップS6)。条件1が成立していればステップS3に移動する。
ステップS3では後に詳述する図10に示すフローチャート4のサブルーチンCが実行される。サブルーチンCは前後差荷重値(Rf−Ff)が後述する所定の条件2を満たしているか否かの判定を行なうものである。そして条件2が成立していなければ、車両シート1上にはチャイルドシート5は固縛されていないと判定する(ステップS6)。条件2が成立していればステップS4に移動する。
ステップS4(チャイルドシート固縛判定ステップ)では、バックルスイッチ65をオンしてからの経過時間Tが、チャイルドシート固縛判定のため設定された第1所定時間T1より小さいか否かが判定される。第1所定時間T1を越えていれば、判定時間は終了しているのでステップS5に移動し、車両シート1上にはチャイルドシート5が固縛されていると判定しプログラムを終了する。第1所定時間T1を越えていなければフローチャート1の後述するステップS15に移動し第1所定時間T1になるまで処理を繰り返す。
次にフローチャート2乃至4のそれぞれのサブルーチンA〜Cについて説明する。まず図8に示す、フローチャート2(サブルーチンA)について説明する。最初に、フローチャート2のステップS9(シートベルト装着検出ステップ)では、シートベルト装置6のバックルスイッチ65(シートベルト装着検出手段)がオンしたか否かが判定される。本実施形態においては、イグニッションスイッチ8の作動状態に拘わらず、車両のメインコントローラ(図示せず)が、バックルスイッチ65の作動状態を監視している。前述したようにイグニッションスイッチ8がオフ状態にある場合に、バックルスイッチ65がオンしたことが検出されると、メインコントローラによってシート乗員判定装置10のコントローラ3が起動され、それ以降、シート乗員判定装置10によるチャイルドシート5の固縛の判定が実行される。
バックルスイッチ65がオンしたと判定されると、ステップS10で前方荷重センサFLが検出する前方荷重値Ff、および後方荷重センサRLが検出する後方荷重値Rfのそれぞれのデータ番号を示す添え字iが初期化される。ステップS11では、バックルスイッチ65がオンしたときからの経過時間Tの測定を開始する。ステップS12〜S14では、flag1〜3を0とする。ステップS15では、添え字iに1を加算し、ステップS16(前方荷重検出ステップ)、S17(後方荷重検出ステップ)で最初のデータである前方荷重値Ff(1)および後方荷重値Rf(1)を取得し、取得した前方荷重値Ff(1)および後方荷重値Rf(1)をコントローラ3の記憶部33に記憶させる。そして図9のフローチャート3(サブルーチンB)に移動する。なお、取得された前方荷重値Ff(i)および後方荷重値Rf(i)は以降、フローチャート3およびフローチャート4で利用される。
次に図9に示す、フローチャート3(サブルーチンB)について説明する。サブルーチンBでは車両シート1にチャイルドシート5を固縛したときに特徴的に出現する前後和荷重値(Ff+Rf)の所定の条件1が成立しているか否かを判定する。ここで条件1とはバックルスイッチ65のON後に前後和荷重値(Ff+Rf)が第1閾値CL1以上に上昇し、その後に第1閾値CL1より小さな第2閾値CL2以下に下降しその後安定的に推移することである。
フローチャート3(サブルーチンB)のステップS18(前後和荷重値演算ステップ)では、前後和荷重値(Ff(i)+Rf(i))が演算されステップS19に移動する。ステップS19でflag1が1か否かの確認を行なう。初めはフローチャート2のステップS12において、flag1を0としているので、NでステップS20(チャイルドシート固縛判定ステップ)に移動する。なお、flag1が1の場合には、ステップS22に移動する。
ステップS20では、前後和荷重値(Ff(i)+Rf(i))が、前述した条件1の第1閾値CL1を越えているか否かの判定が行なわれる。第1閾値CL1を越えていなければ、ステップS25に移動する。ステップS25ではバックルスイッチ65をオンしてからの経過時間Tが、第1所定時間T1より小さいか否かが判定される。第1所定時間T1を越えていれば、判定時間は終了しているのでステップS26に移動し、条件1不成立として処理を終了する。また第1所定時間T1を越えていなければ、フローチャート2のステップS15に戻る。そしてフローチャート3のステップS20で前後和荷重値(Ff(i)+Rf(i))が第1閾値CL1を越えてYESとなるか、ステップS25で第1所定時間T1を越えるまで処理を続行する。
ステップS20で第1閾値CL1を越えていれば、取付け者がチャイルドシート5を取付けるためにチャイルドシート5上に体重をかけていると判定し、YでステップS21に移動し、flag1に1を立てる。
ステップS22(チャイルドシート固縛判定ステップ)では、前後和荷重値(Ff(i)+Rf(i))が、前述した第2閾値CL2より小さいか否かの判定が行なわれる。前後和荷重値(Ff(i)+Rf(i))が、依然、第2閾値CL2以上であれば、ステップS20のNOと同様、ステップS25に移動し、バックルスイッチ65をオンしてからの経過時間Tが、第1所定時間T1より小さいか否かが判定される。第1所定時間T1を越えていれば、判定時間は終了しているのでステップS26に移動し、条件1不成立として処理を終了する。また第1所定時間T1を越えていなければ、フローチャート2のステップS15に戻りiに1を加算する。そしてフローチャート3のステップS22で前後和荷重値(Ff(i)+Rf(i))が第2閾値CL2より小さくなりYESとなるか、またはステップS25で第1所定時間T1を越えるまで処理を続行する。なお、このとき、ステップS21(1←flag)を通過した後に、再びステップS19を処理する際には、flagは1となっているので、ステップS19からステップS22に移動する。
そして、ステップS22で第2閾値CL2より小さくなれば、取付け者がチャイルドシート5の取付けを完了し、チャイルドシート5上から降りた(離間した)ことがわかるのでステップS23に移動する。
ステップS23では、前後和荷重値(Ff(i)+Rf(i))が、安定状態であるかの確認が行なわれる。このときの確認方法はどのようなものでもよい。例えば、前後和荷重値(Ff(i)+Rf(i))と(Ff(i+1)+Rf(i+1))との間の微分値を確認し、微分値が所定の値より小さい時に、安定状態であると判定すればよい。なお、ステップS23についてはなくてもよく、なくても相応の効果を得ることができる。
ステップS23で安定状態が確認できなければ、ステップS22と同様に、NでステップS25に移動する。そして経過時間Tが、第1所定時間T1より大きければ、ステップS26に移動し、条件1不成立として処理を終了する。また第1所定時間T1を越えていなければ、フローチャート2のステップS15に戻りiに1を加算し処理を続行する。そしてフローチャート3のステップS23で前後和荷重値(Ff(i)+Rf(i))の安定が確認できYESとなるか、ステップS25で第1所定時間T1を越えるまで処理を続行する。なお、上記のステップS22の場合と同様にステップS19では、flagは1となっているので、ステップS19からステップS22に移動する。ステップS23で前後和荷重値(Ff(i)+Rf(i))の安定が確認できればステップS24に移動し条件1成立としてサブルーチンCに移動する。
次に図10に示す、フローチャート4(サブルーチンC)について説明する。サブルーチンCでは車両シート1にチャイルドシート5を固縛したときに特徴的に出現する前後差荷重値(Rf−Ff)の所定の条件2が成立しているか否かを判定する。ここで条件2とは、バックルスイッチ65の検出時点を起点とした、第1所定時間T1より短い第2所定時間T2内に検出した最大値Fmaxから下降幅Dが所定の下降幅Dmを越えて下降することである(図6参照)。
ステップS31(前後差荷重値演算ステップ)では、前後差荷重値(Rf(i)−Ff(i))が演算されステップS32に移動する。ステップS32でflag2が1か否かの確認を行なう。初めはステップS13において、flag2を0としているので、NでステップS33(チャイルドシート固縛判定ステップ)に移動する。なお、flag2が1の場合には、ステップS36に移動する。
ステップS33(チャイルドシート固縛判定ステップ)では、バックルスイッチ65をオンしてからの経過時間Tが、第2所定時間T2より小さいか否かが判定される。第2所定時間T2は、前後差荷重値(Rf(i)−Ff(i))の最大値Fmax値を探索する時間である。経過時間Tが第2所定時間T2を越えていなければ、ステップS34(チャイルドシート固縛判定ステップ)に移動する。
ステップS34では、第2所定時間T2内に測定され記憶部33に記憶された前後差荷重値(Rf(i)−Ff(i))の最大値Fmaxを探索し記憶する。これによって取付け者の体重によって荷重が増加する後方荷重値Rf(i)と、後方荷重値Rf(i)の増加により連動して発生する浮き上がりによって減少する前方荷重値Ff(i)との間の差のうちもっとも大きな差を見いだすことができる。つまり取付け者が車両シート1の後方に最も大きな荷重をかけた状態を精度よく検出でき、これによって精度よく取付け動作を検出する。
ステップS34からはフローチャート2のステップS15に移動し、ステップS33で経過時間Tが、第2所定時間T2より大きくなるまで処理を繰り返す。そして経過時間Tが、第2所定時間T2より大きくなれば、ステップS35に移動し、flag2に1を立てる。
次に、ステップS36でflag3が1か否かの確認を行なう。初めはステップS14においてflag3を0としているので、NでステップS37(チャイルドシート固縛判定ステップ)に移動する。なお、flag3が1の場合には、ステップS39に移動する。
ステップS37(チャイルドシート固縛判定ステップ)ではステップS34で探索し記憶した前後差荷重値(Rf(i)−Ff(i))の最大値Fmaxから最新の前後差荷重値(Rf(i)−Ff(i))を減算した差(以降下降幅Dと称す)が所定の下降幅Dmを越えるか否かが判定される。下降幅Dが所定の下降幅Dmを越えていなければ、ステップS41に移動する。
ステップS41では経過時間Tが、第1所定時間T1より小さければフローチャート2のステップS15に移動し、ステップS37で下降幅Dmを越えるか、またはステップS41で経過時間Tが、第1所定時間T1より大きくなってステップS42に移動し条件2不成立となって終了するまで処理が続行される。なお、途中の処理のステップS32においてはflag2は1となっているのでステップS36まで一気に移動する。
ステップS37で、下降幅Dが所定の下降幅Dmを越ればステップS38に移動し、flag3に1を立てる。そしてステップS39に移動し、flag3がすでに立っていること、且つ最新の下降幅Dが所定の下降幅Dmを越えていることが確認される。ここでは、ステップS37で、一度所定の下降幅Dmを越えて下降した下降幅Dが再び上昇していないかを確認するものである。そして所定の下降幅Dmより小さな下降幅Dとなっていた場合はNでステップS42に移動し、条件2不成立とする。所定の下降幅Dmを越えていれば、ステップS40に移動し、条件2成立として処理を終了し、フローチャート1のステップS4に移動する。
フローチャート1のステップS4では、経過時間Tが、第1所定時間T1より小さいか否かが判定され、第1所定時間T1を経過していれば車両シート1にチャイルドシート5が固縛されたと判定する。また第1所定時間T1を越えていなければ、フローチャート2のステップS15に戻り処理を続行する。
このようにフローチャート1においては、サブルーチンA〜Cが順次実行される。サブルーチンBにおいて条件1の成立が確認され(ステップS2)、次にサブルーチンCにおいて条件2の成立が確認される(ステップS3)。そして、ステップS4において第1所定時間T1の間だけステップS2とステップS3の各条件1、2の成立が継続するか否かを確認する。第1所定時間T1の間、成立の継続が確認されたときチャイルドシート5が車両シート1に固縛されたと判定してエアバッグ用ECUに対し判定結果を送信する。また、ステップS2およびステップS3において各条件1、2のいずれかが不成立であった場合はステップS6に移動し、車両シート1上にあるのはチャイルドシート5ではないと判定する。そして車両シート1上には、もっと重い例えば大人(または子供)である可能性があるため、仮判定状態とし、プログラムを終了する。このとき、仮判定状態とされた大人、または子供については、別のプログラムに移行して判定すればよい。今回の発明については、別のプログラムについての説明は省略する。
上述の説明から明らかな様に、本実施形態に係るシート乗員判定装置10によれば、ロッキングクリップ67を利用したチャイルドシート5の固縛時においては、はじめに取付け者が体重をかけることにより車両シート1の後部の荷重が増加する。このとき車両シート1の前方部では荷重増加した後部を支点として浮き上がるように回転モーメントが発生し前方部の荷重が減少する。その後、固縛が完了し、取付け者がチャイルドシート5上から離間すると、車両シート1を支持する各部に付与された正、または負の荷重は解除され、チャイルドシート5および車両シートの重量のみが安定的に付与される。
そしてタングプレート63のバックル64への係合が検出された検出時点から第1所定時間T1内において、前後和荷重値(Ff+Rf)および前後差荷重値(Rf−Ff)の変動が所定の条件を満たしたときに各荷重値の変動はチャイルドシートの固縛動作によって発生したものであると判定している。このように、大人着座時では、たとえ体重移動等によっても出現しえない、チャイルドシート5の固縛動作によってのみ発生する車両シート1の荷重の変動状態を、車両シート1の他方側の前後方向に設けた少なくとも2個の前方荷重センサFL(前方荷重検出手段)および後方荷重センサRL(後方荷重検出手段)によって低コストに、且つ高精度に検出しチャイルドシート5の固縛を好適に判定することができる。
また、本実施形態に係るシート乗員判定装置10によれば、バックル64は車両シート1の後方の他方側(左側)の側面に設けられ、前方荷重センサFL(前方荷重検出手段)および後方荷重センサRL(後方荷重検出手段)が、バックル64と同じ側である車両においてドアと反対側の、いわゆるインナー側に設けられる。このため取付け者がチャイルドシート5の固縛のためにチャイルドシート5の後部に体重をかけた状態でタングプレート63をバックル64に押圧して係合すると、バックル64が固定された固定部64aの下方で、且つ近傍に設けられた後方荷重センサRL(後方荷重検出手段)の検出荷重値はタングプレート63を押圧して係合した分だけさらに増大して確実に検出される。また前方荷重センサFL(前方荷重検出手段)は後方荷重センサRLと同じ他方側(左側)に配置されるので、前方部の浮き上がり分の減少荷重が精度よく検出される。これらにより前後和荷重値(Ff+Rf)、および前後差荷重値(Rf−Ff)はさらに大きく変動するので、充分な量の前後和荷重値(Ff+Rf)、および前後差荷重値(Rf−Ff)の変動を取得でき、精度のよいチャイルドシートの固縛の判定ができる。
なお、本発明においては、車両シート1の下方に設けられる前方および後方荷重センサFL、RLは、少なくとも車両シート1の左右のいずれか一側の前後に一対設ければよい。したがって、第1の実施形態と異なり車両シート1の右方(一方側)のみに、前後一対の前方および後方荷重センサFR、RR(図1乃至図3参照)を取り付けてもよい。また、車両シート1の4隅にそれぞれ着座センサを取り付けてもよい。さらには、車両シート1の左右の一方側または他方側の前後に一対設け、他方側または一方側の前後いずれか一方に一個だけ前方または後方荷重センサを取り付けてもよい。これらによっても、取得される各荷重値の程度はそれぞれ異なるものの同様な結果が得られる。なお、各荷重値の出現態様は、車両シート1の形状やストラップ66にかかる力の大きさ等によって様々であるので、事前に評価を行ない判定を行なうための各閾値(第1、第2閾値CL1、CL2、第1、第2所定時間T1、T2等)をそれぞれ適切に設定することが好ましい。
次に、別の実施形態について説明する。第1の実施形態においては、バックル64を車両シート1の他方側(左側)の側面後部に固定した。しかし、別の実施形態として、図11に示すようにバックル64を車両シート1の他方側の側面下方の車両フロア4に設けてもよい。このため、車両衝突時等においてストラップ66から入力される衝撃荷重は車両フロア4に入力され、車両シート1には入力されない。これにより車両シート1の強度を低減させることができコスト低減を図ることができる。またストラップ66からの引っ張り荷重が後方荷重センサRL(後方荷重検出手段)に入力されることがないので、後方荷重センサRL自体、および後方荷重センサRLの取付け部(アッパレール14等)の設計強度も低減させることができるので簡素な構造とすることができコスト低減を図ることができる。
ただし、別の実施形態においては、取付け者がチャイルドシート5の固縛のためにタングプレート63をバックル64に押圧して係合しても、後方荷重センサRL(後方荷重検出手段)による検出荷重値の増加はない。しかし、この場合においても第1の実施形態と同様に判定すればよい。また、別の実施形態においてはバックル64の固定支持は車両フロア4上に限らない。別の支持の態様として車両フロア4に固定される左右一対のロアレール41R、41L上や、ロアレール41R、41L上に係合されるアッパレール14R、14L上にバックル64の固定部を設けても良い。
なお、判定を開始する条件として、バックルスイッチ65のオフからオンへの作動の検出に代えて、車両シートの位置調整の完了、車両ドアの開閉作動、イグニッションスイッチのオフからオンへの作動のいずれかの検出があった場合としてもよい。
また、第1の実施形態においては、シートベルト装置6はELR機構を有したシートベルト装置であるとしたが、この態様に限らずシートベルト装置6がALR(Automatic Locking Retractor)機構を有していてもよい。ALR機構はシートベルト66がリトラクタから所定量引き出された状態においてモードがALRに切り替わりシートベルト66の引き出し作動をロックしシートベルト66の巻き取り方向の作動のみを許容する装置である。ALR機構は主に車両シート1上にチャイルドシート5を取付ける際に利用される機構である。本発明においてはチャイルドシート5の固縛にALR機構を利用することはないが、この機構を有していてもよい。
さらに、本実施形態においては、チャイルドシート5の固縛の判定に、第1、第2閾値CL1、CL2、および下降幅Dm等の実際の数値を使用して判定した。しかしこれに限らず、数値を割合(変化率)に変換して判定してもよい。つまり、例えば取付け者がチャイルドシート5の取付けを完了し、チャイルドシート5から降りたときの各荷重の減少量を減少前と比較した減少率で判定してもよい。これによっても同様の効果が得られる。