JP5826307B2 - 車両駆動システム - Google Patents

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Description

本発明は、車両駆動システムに関する。詳しくは、駆動状態によらずに超過スリップの発生を正確に取得できる車両駆動システムに関する。
従来、前輪及び後輪のいずれか一方の車輪をエンジンによって駆動し、他方の車輪をモータによって駆動する車両において、前輪又は後輪に超過スリップが発生したときに2輪駆動状態(以下、「2WD」という。)から4輪(前後輪)駆動状態(以下、「AWD」という。)への切り替えを行い、スリップ状態の解消時点から予め定めた4輪駆動継続時間が経過するまでの間、AWDを継続する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示された技術では、2WD及びAWDの両状態において、前輪と後輪との車輪速差に基づいて超過スリップの発生の有無やスリップ量(超過スリップの大きさ、度合)を判定し、その判定結果に応じて4輪駆動継続時間を補正する。
特開2008−120119号公報
特許文献1に開示された技術では、前輪と後輪との車輪速差のみに基づいて超過スリップの発生の有無やスリップ量を判定する。しかしながら、例えば、旋回運動中の車両等において前輪又は後輪いずれかの内外輪の車輪速の違いによって超過スリップの発生を誤判定する場合がある。また、前輪又は後輪いずれかを基準に判定するため、前輪及び後輪を用いて駆動する様々な駆動状態に適応できない場合がある。そのため、超過スリップの発生を正確に取得できないおそれがあった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動状態によらずに超過スリップの発生を正確に取得できる車両駆動システムを提供することにある。
上記目的を達成するため本発明は、車両(例えば、後述の車両3)の前輪(例えば、後述の前輪Wf,Wf)を駆動する前輪駆動装置(例えば、後述の第1駆動装置1)と、前記車両の後輪(例えば、後述の後輪Wr(RWr,LWr))を前記前輪とは別個独立に駆動する後輪駆動装置(例えば、後述の第2駆動装置2)と、前記前輪駆動装置及び前記後輪駆動装置を制御し、前記前輪及び前記後輪の駆動状態を制御する制御装置(例えば、後述のECU6)と、を備える車両駆動システム(例えば、後述の車両駆動システム10)であって、前記制御装置は、前記前輪のみで前記車両を駆動する前輪単独駆動状態(例えば後述のFWD)と、前記後輪のみで前記車両を駆動する後輪単独駆動状態(例えば、後述のRWD)と、前記前輪と前記後輪との双方で前記車両を駆動する前後輪駆動状態(例えば、後述のAWD)と、を切り替える駆動状態切替手段(例えば、後述の駆動状態切替部64)を備え、前記車両駆動システムは、前記前輪の回転状態量を取得する前輪回転状態量取得手段(例えば、後述の前輪回転状態量取得部66)と、前記後輪の回転状態量を取得する後輪回転状態量取得手段(例えば、後述の後輪回転状態量取得部67)と、前記前輪の回転状態量及び前記後輪の回転状態量の少なくとも一方に基づいて、前記前輪又は前記後輪に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得するスリップ取得手段(例えば、後述のスリップ取得部61)と、前記車両の速度である車速を取得する車速取得手段と、を備え、前記スリップ取得手段は、前記前輪の回転状態量に基づいて、前記前輪に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得する第1スリップ取得手段(例えば、後述の第1スリップ取得部611)と、前記後輪の回転状態量に基づいて、前記後輪に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得する第2スリップ取得手段(例えば、後述の第2スリップ取得部612)と、前記前輪の回転状態量及び前記後輪の回転状態量に基づいて、前記前輪又は前記後輪に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得する第3スリップ取得手段(例えば、後述の第3スリップ取得部613)と、を備え、且つ、前記車速が第1閾値未満のときに、前記第1及び第2スリップ取得手段に基づいて超過スリップが発生したことを取得し、前記車速が前記第1閾値以上のときに、前記第2及び第3スリップ取得手段に基づいて、又は、前記第1、第2及び第3スリップ取得手段に基づいて超過スリップが発生したことを取得することを特徴とする。
本発明では、スリップ取得手段は、前輪の回転状態量に基づいて、前輪に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得する第1スリップ取得手段と、後輪の回転状態量に基づいて、後輪に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得する第2スリップ取得手段と、前輪の回転状態量及び後輪の回転状態量に基づいて、前輪又は後輪に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得する第3スリップ取得手段と、を備える。
これにより、第1、第2及び第3スリップ取得手段を用い、所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得できる。このため、前輪及び後輪を用いた前輪単独駆動状態、後輪単独駆動状態又は前後輪駆動状態等の様々な駆動状態において3つのスリップ取得手段を種々組み合わせることで、駆動状態によらずに超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
また、前記スリップ取得手段は、前記車速が第1閾値未満のときに、前記第1及び第2スリップ取得手段に基づいて超過スリップが発生したことを取得し、前記車速が前記第1閾値以上のときに、前記第2及び第3スリップ取得手段に基づいて、又は、前記第1、第2及び第3スリップ取得手段に基づいて超過スリップが発生したことを取得する。
スリップ取得手段は、車速が第1閾値未満のときに、第1及び第2スリップ取得手段に基づいて超過スリップが発生したことを取得し、車速が第1閾値以上のときに、第2及び第3スリップ取得手段に基づいて、又は、第1、第2及び第3スリップ取得手段に基づいて超過スリップが発生したことを取得する。
第1閾値未満の低車速領域は、第3スリップ取得手段によって前輪の回転状態量及び後輪の回転状態量を用いて前輪又は後輪に超過スリップが発生したことを取得すると、超過スリップの発生の有無の誤差が大きい。このため、第1閾値未満の低車速領域にて第3スリップ取得手段を用いず、第1及び第2スリップ取得手段を用いて前輪及び後輪それぞれの前輪の回転状態量又は後輪の回転状態量に基づいて超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
第1閾値以上の中高車速領域は、第3スリップ取得手段によって前輪の回転状態量及び後輪の回転状態量を用いて前輪又は後輪に超過スリップが発生したことを取得すると、超過スリップの発生の有無が高精度に取得できる。また、第1閾値以上の中高車速領域は、第2スリップ取得手段によって超過スリップが発生したことを取得可能な後輪単独駆動状態又は前後輪駆動状態となる傾向がある。このため、第1閾値以上の中高車速領域にて少なくとも第2及び第3スリップ取得手段を用い、前輪の回転状態量又は後輪の回転状態量に基づいて超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
前記第3スリップ取得手段は、前記前輪の回転状態量と前記後輪の回転状態量との比に基づいて超過スリップが発生したことを取得することが好ましい。
第3スリップ取得手段は、前輪の回転状態量と後輪の回転状態量との比に基づいて超過スリップが発生したことを取得する。
前後車輪速差は、前輪又は後輪のいずれかを基準として差を求めるため、基準の車輪が超過スリップすると判定不能となる。一方、前後車輪速比は、前輪又は後輪のいずれかを基準として比を求める場合であっても、算出値の絶対値を用いれば前輪又は後輪のいずれもが基準となり得るため、たとえ基準の車輪に超過スリップが発生しても判定可能となる。
また、前後車輪速差では、前後車輪速差の値に応じて許容範囲が異なるため、前後車輪速差の許容範囲の上限値及び下限値の両方を前後車輪速差の値に応じて変更して持ち替える必要が生じる。一方、前後車輪速比では、前後車輪速比の値によって許容範囲がほぼ異ならないため、前後車輪速比の許容範囲の上限値及び下限値の両方をほぼ一定値に規定できる。このため、前後車輪速比は、許容範囲の上限値及び下限値の両方を逐一持ち替える前後車輪速差よりも状態変化に追従して超過スリップの発生を判別でき、超過スリップの発生の有無が高精度に取得できる。
さらに、前後車輪速比では、前後車輪速比を用いる式として、路面μとの動摩擦特性(車輪から路面への伝達可能トルク)の相関を示すスリップ率の相関式を用いることができる。スリップ率の相関式は、駆動状態によらずに1つの式を用いて超過スリップの発生を容易に判別でき、超過スリップの発生の有無が高精度に取得できる。
加えて、前後車輪速比は、例えば車両が旋回動作中等で内外輪差が発生していても平均をとって算出でき、超過スリップの発生の有無が高精度に取得できる。
このため、前輪の回転状態量と後輪の回転状態量との比に基づいて超過スリップが発生したことを取得することで、駆動状態によらずに超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
また、前記第3スリップ取得手段は、前記車速が第2閾値未満のときに、前記比に基づいて前記前輪にスリップが発生したことを取得し、前記車速が前記第2閾値以上のときに、前記比に基づいて前記前輪又は前記後輪に超過スリップが発生したことを取得することが好ましい。
第3スリップ取得手段は、車速が第2閾値未満のときに、比に基づいて前輪にスリップが発生したことを取得し、車速が第2閾値以上のときに、比に基づいて前輪又は後輪に超過スリップが発生したことを取得する。
第2閾値未満の低車速領域は、第3スリップ取得手段によって後輪に超過スリップが発生したことを取得すると、例えば駐車場でスピードブレーカーを乗り越えるために急発進する等の特殊条件下にて、後輪の超過スリップの発生を誤判定し易い。このため、第2閾値未満の低車速領域にて前輪のみを対象として第3スリップ取得手段を用い、前輪の超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
第2閾値以上の中高車速領域は、上記特殊条件下が存在せず、後輪の超過スリップの発生を誤判定しない。このため、第2閾値以上の中高車速領域にて前輪及び後輪の両方を対象として第3スリップ取得手段を用い、前輪及び後輪の超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
ここで、第2閾値は、それ未満であると第3スリップ取得手段が後輪の超過スリップの発生を誤判定し易いため、それ未満で第3スリップ取得手段を前輪に超過スリップが発生したことを取得するために用い、第3スリップ取得手段を用いることができない第1閾値よりも高い車速に設定される。
また、前記第3スリップ取得手段は、前記車速が第3閾値未満のときに、前記比に加えて、前記前輪の回転加速度状態量又は前記後輪の回転加速度状態量に基づいて超過スリップが発生したことを取得することが好ましい。
第3スリップ取得手段は、車速が第3閾値未満のときに、比に加えて、前輪の回転加速度状態量又は後輪の回転加速度状態量に基づいて超過スリップが発生したことを取得する。
第3閾値未満の低車速領域は、第3スリップ取得手段によって超過スリップが発生したことを取得すると、前輪の回転状態量と後輪の回転状態量との比を算出する精度が低車速であるほど低下する。このため、第3スリップ取得手段は、第3閾値未満の低車速領域にて上記比に加えて、前輪の回転加速度状態量又は後輪の回転加速度状態量に基づいて超過スリップが発生したことを取得することで、前輪の回転状態量と後輪の回転状態量との比及び前輪の回転加速度状態量又は後輪の回転加速度状態量の2つのパラメータを用いることができる。これにより、第3スリップ取得手段を用い、超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
第3閾値以上の中高車速領域は、上記比を算出する精度が低下しない。このため、第3スリップ取得手段は、上記比のみを用い、前輪及び後輪の超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
ここで、第3閾値は、それ未満であっても第3スリップ取得手段の上記比を算出する精度が低車速であるほど低下する車速であるため、第3スリップ取得手段を用いることができない第1閾値よりも高い車速に設定され、第3スリップ取得手段を用いて前輪に超過スリップが発生したことを取得する第2閾値よりも低い車速に設定される。
前記スリップ取得手段は、前記駆動状態切替手段の切替状態によらず、前記第1、第2及び第3スリップ取得手段に基づいて超過スリップが発生したことを取得することが好ましい。
スリップ取得手段は、駆動状態切替手段の切替状態によらず、第1、第2及び第3スリップ取得手段に基づいて超過スリップが発生したことを取得する。
本来、前輪駆動状態では、後輪が従動輪であるため、後輪の超過スリップを取得する第2スリップ取得手段が不要となる。後輪駆動状態では、前輪が従動輪であるため、前輪の超過スリップを取得する第1スリップ取得手段が不要となる。一方、前輪駆動状態及び後輪駆動状態の両方にて、第3スリップ取得手段が前輪又は後輪の超過スリップを取得する。これに対し、駆動状態によらず第1、第2及び第3スリップ取得手段に基づいて超過スリップが発生したことを取得することで、第1、第2及び第3スリップ取得手段を切り替える超過スリップの制御が不要となる。これにより、第1、第2及び第3スリップ取得手段を用い、超過スリップが発生したことを容易に取得できる。
前記第2スリップ取得手段は、前記後輪の回転状態量に加えて、前記後輪の駆動力相関量に基づいて超過スリップが発生したことを取得することが好ましい。
第2スリップ取得手段は、後輪の回転状態量に加えて、後輪の駆動力相関量に基づいて超過スリップが発生したことを取得する。
第2スリップ取得手段が後輪の回転状態量に加えて、後輪の駆動力相関量に基づいて超過スリップが発生したことを取得することで、後輪の回転状態量及び後輪の駆動力相関量の2つのパラメータを用いることができる。これにより、第2スリップ取得手段を用い、超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
前記第2スリップ取得手段は、前記後輪の駆動力相関量が正の値のときのみ、超過スリップが発生したことを取得することが好ましい。
第2スリップ取得手段は、後輪の駆動力相関量が正の値のときのみ、超過スリップが発生したことを取得する。
旋回外輪の駆動力相関量が正の値であり、旋回内輪の駆動力相関量が負の値であるような左右駆動力配分状態の場合には、旋回内輪の路面に対する荷重が弱まることも相まって、第2スリップ取得手段が旋回内輪の超過スリップの発生を誤判定し易い。このため、第2スリップ取得手段が後輪の回転状態量に加えて、後輪の駆動力相関量に基づいて超過スリップが発生したことを取得する場合には、後輪の駆動力相関量が正の値のときに限定して加味する。これにより、第2スリップ取得手段を用い、超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
前記駆動状態切替手段は、前記スリップ取得手段が取得した超過スリップの発生に基づいて、前記前輪単独駆動状態から前記前後輪駆動状態へ、前記後輪単独駆動状態から前記前後輪駆動状態へ、又は、前記後輪単独駆動状態から前記前輪単独駆動状態へ、切り替えることが好ましい。
駆動状態切替手段は、スリップ取得手段が取得した超過スリップの発生に基づいて、前輪単独駆動状態から前後輪駆動状態へ、後輪単独駆動状態から前後輪駆動状態へ、又は、後輪単独駆動状態から前輪単独駆動状態へ、切り替える。
駆動状態切替手段は、第1、第2及び第3スリップ取得手段を用い、超過スリップが発生したことを正確に取得し、より適切なタイミングで車両の駆動状態を切り替えることができる。これにより、発生した超過スリップを短時間で解消することができる。
本発明によれば、駆動状態によらずにスリップの発生を正確に取得できる車両駆動システムを提供できる。
本発明の第1実施形態に係る車両駆動システムを搭載した車両を示す図である。 上記実施形態に係る第2駆動装置の縦断面図である。 図2に示す第2駆動装置の部分拡大図である。 上記実施形態に係る車両の走行状態における電動機の状態と切離機構の状態を示す図である。 上記実施形態に係るECUの構成を示す機能ブロック図である。 上記実施形態に係るスリップ取得部の構成を示す機能ブロック図である。 上記実施形態に係るスリップ取得部のスリップ判定を示す概念図である。 上記実施形態に係る第3スリップ取得部に記憶された前後輪すべり比算出テーブルを示す図である。 上記実施形態に係る加減スリップポイント算出部の構成を示す機能ブロック図である。 上記実施形態に係る駆動状態切替制御の手順を示すフローチャートである。 上記実施形態に係るスリップ判定処理の手順を示すフローチャートである。 上記実施形態に係る加算スリップポイント算出処理の手順を示すフローチャートである。 上記実施形態に係るスリップ発生時駆動力加算部に記憶された駆動力加算スリップポイント算出テーブルを示す図である。 上記実施形態に係るスリップ発生継続時間加算部に記憶された時間加算スリップポイント算出テーブルを示す図である。 上記実施形態に係る駆動力減算スリップポイント算出処理の手順を示すフローチャートである。 上記実施形態に係るスリップ不発生時駆動力減算部に記憶された駆動力減算スリップポイント算出テーブルを示す図である。 上記実施形態に係る時間減算スリップポイント算出処理の手順を示すフローチャートである。 上記実施形態に係るスリップ不発生継続時間減算部に記憶された時間減算スリップポイント算出テーブルを示す図である。 上記実施形態に係る横G減算スリップポイント算出処理の手順を示すフローチャートである。 上記実施形態に係るスリップ不発生時横G減算部に記憶された横G減算スリップポイント算出テーブルを示す図である。 上記実施形態に係る車速減算スリップポイント算出処理の手順を示すフローチャートである。 上記実施形態に係るスリップ不発生時車速減算部に記憶された車速減算スリップポイント算出テーブルを示す図である。 上記実施形態に係る駆動状態切替制御の一例を示すタイムチャートである。 本発明の第2実施形態に係るスリップ取得部のスリップ判定を示す概念図である。 上記実施形態に係るスリップ判定処理の手順を示すフローチャートである。 本発明の第3実施形態に係るスリップ取得部のスリップ判定を示す概念図である。 上記実施形態に係るスリップ判定処理の手順を示すフローチャートである。 本発明の第4実施形態に係るスリップ取得部のスリップ判定を示す概念図である。 上記実施形態に係るスリップ判定処理の手順を示すフローチャートである。 本発明の第5実施形態に係るスリップ取得部のスリップ判定を示す概念図である。 上記実施形態に係るスリップ判定処理の手順を示すフローチャートである。 本発明の第6実施形態に係るスリップ判定処理の手順を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両駆動システム10を搭載した車両を示す図である。
本実施形態に係る車両駆動システム10を搭載した車両3は、ハイブリッド車両である。図1に示すように、車両3に搭載された車両駆動システム10は、第1駆動装置1と、第2駆動装置2と、これらの駆動装置1,2を制御する制御装置としての電子制御ユニット(以下、「ECU」という。)6と、PDU(パワードライブユニット)8と、バッテリ9と、を備える。
ここで、第1駆動装置1と第2駆動装置2とは、別個独立に駆動され、且つ、機械的に接続されていない(機械的に独立状態である)。
第1駆動装置1は、車両3の前部に設けられ、第1駆動輪としての前輪Wf,Wfを駆動する。第1駆動装置1は、内燃機関(ENG)4と、電動機5と、トランスミッション7と、を有する。内燃機関4と電動機5とは、直列に接続されており、これら内燃機関4と電動機5とのトルクが、トランスミッション7を介して前輪Wf,Wfに伝達される。
内燃機関4は、例えば直列4気筒エンジンであり、燃料を燃焼させることでハイブリッド車両3を走行させるためのトルクを発生する。内燃機関4のクランクシャフトは、電動機5の出力軸に連結されている。
電動機5は、例えば3相交流モータであり、バッテリ9に蓄えられた電力により、車両3を走行させるためのトルクを発生する。電動機5は、インバータを搭載したPDU8を介してバッテリ9に接続されており、内燃機関4の駆動力をアシストする。
トランスミッション7は、内燃機関4で発生したトルクを所望の変速比での回転数及びトルクに変換し、前輪Wf,Wfに伝達する。
第2駆動装置2は、車両3の後部に設けられ、第2駆動輪としての後輪Wr(RWr,LWr)を駆動する。第2駆動装置2は、電動機2A,2Bを有する。これら電動機2A,2Bのトルクが、後輪Wr(RWr,LWr)に伝達される。
電動機2A,2Bは、電動機5と同様に、例えば3相交流モータであり、バッテリ9に蓄えられた電力により、車両3を走行させるためのトルクを発生する。また、電動機2A,2Bは、インバータを備えるPDU8を介してバッテリ9に接続されており、ECU6からの制御信号がPDU8に入力されることで、バッテリ9からの電力供給と、バッテリ9へのエネルギー回生が制御される。
なお、4つの前輪Wf,Wf、後輪Wr(RWr,LWr)の各々には、図示しない摩擦ブレーキが設けられている。この摩擦ブレーキは、例えば、油圧式のディスクブレーキ等から構成される。運転手がブレーキペダルを踏み込むと、踏込力が油圧シリンダ等を介してブレーキパッドに増幅して伝達され、各駆動輪に取り付けられているブレーキディスクとブレーキパッドとの間に摩擦力が生じることで、各駆動輪の制動が行われる。
第2駆動装置2について、更に詳しく説明する。なお、第2駆動装置2については、本出願人により出願されて公開された特開2010−235051号公報に詳しく記載されている。
図2は、本実施形態に係る第2駆動装置2の縦断面図である。図3は、図2に示す第2駆動装置2の部分拡大図である。
図2、図3に示すように、第2駆動装置2は、車両3の各後輪RWr,LWrに駆動力を伝える出力軸10A,10Bを有し、各々、車幅方向に同軸上に配置される。これら出力軸10A,10Bは、各後輪RWr,LWrの車軸に接続される。減速機ケース11の内部には、出力軸10A,10Bを駆動する電動機2A,2Bと、電動機2A,2Bの駆動回転を減速する遊星歯車式減速機12A,12Bと、が、出力軸10A,10Bと同軸上に配置される。
ここで、減速機ケース11は、外壁部よりも少し内側にて軸方向に伸びる筒状の外径側支持部34を有する。外径側支持部34は、支持壁39を内周側に延出し、支持壁39の内周先端に円筒状支持部40を形成している。減速機ケース11については、本出願人により出願されて公開された特開2010−235051号公報に詳しく記載されている。
減速機ケース11の左右両端側内部には、電動機2A,2Bのステータ14A,14Bが固定される。ステータ14A,14Bの内周側には、環状のロータ15A,15Bが回転可能に配置される。ロータ15A,15Bの内周部には、出力軸10A,10Bの外周を囲繞する円筒軸16A,16Bが結合され、この円筒軸16A,16Bが出力軸10A,10Bと同軸で相対回転可能に支持される。減速機ケース11の端部壁17A,17Bには、ロータ15A,15Bの回転位置情報を検出するレゾルバ20A,20Bが設けられる。
遊星歯車式減速機12A,12Bは、円筒軸16A,16Bに噛合されるサンギヤ21A,21Bと、このサンギヤ21A,21Bに噛合される複数のプラネタリギヤ22A,22Bと、これらのプラネタリギヤ22A,22Bを支持するプラネタリキャリア23A,23Bと、プラネタリギヤ22A,22Bの外周側に噛合されるリングギヤ24A,24Bと、を具備し、円筒軸16A,16B及びサンギヤ21A,21Bから電動機2A,2Bの駆動力が入力され、減速された駆動力がサンギヤ21A,21Bからプラネタリキャリア23A,23Bを通して出力軸10A,10Bに出力される。なお、遊星歯車式減速機12A,12Bの詳細については、特開2010−235051号公報を参照されたい。
減速機ケース11の外径側支持部34とリングギヤ24A,24Bとの間には、円筒状の空間部が確保され、その空間部内に、リングギヤ24A,24Bに対する制動を行う油圧ブレーキ60A,60Bが、第2ピニオン26Aと径方向でオーバーラップし、第1ピニオン27Aと軸方向でオーバーラップして配置される。油圧ブレーキ60A,60Bは、減速機ケース11の外径側支持部34の内周面にスプライン嵌合された複数の固定プレート35A,35Bと、リングギヤ24A,24Bの外周面にスプライン嵌合された複数の回転プレート36A,36Bが軸方向に交互に配置され、これらのプレート35A,35B,36A,36Bが環状のピストン37A,37Bによって締結及び解放操作される。
ピストン37A,37Bは、減速機ケース11の外径側支持部34とその内周側に延出された支持壁39と支持壁39の内周先端に形成された円筒状支持部40との間に形成された環状のシリンダ室38A,38Bに進退自在に収容されており、シリンダ室38A,38Bへの高圧オイルの導入によってピストン37A,37Bを前進させ、シリンダ室38A,38Bからオイルを排出することによってピストン37A,37Bを後退させる。油圧ブレーキ60A,60Bはオイルポンプに接続される。
油圧ブレーキ60A,60Bは、ピストン37A,37Bを前進させることで、減速機ケース11とリングギヤ24A,24Bとを締結し、リングギヤ24A,24Bに対する制動を行う。また、油圧ブレーキ60A,60Bは、ピストン37A,37Bを後退させることで、減速機ケース11とリングギヤ24A,24Bとの締結を解放し、リングギヤ24A,24Bに対する制動を行わない。
なお、油圧ブレーキ60A,60B及びピストン37A,37Bの詳細については、特開2010−235051号公報を参照されたい。
ピストン37A,37Bとリングギヤ24A,24Bとの間にも円筒状の空間部が確保されており、その空間部内には、リングギヤ24A,24Bに対し一方向の動力のみを伝達し他方向の動力を遮断する一方向クラッチ50が配置される。一方向クラッチ50は、インナーレース51とアウターレース52との間に多数のスプラグ53を介在させて構成され、そのインナーレース51がリングギヤ24A,24Bのギヤ部28A,28Bと一体回転可能に構成される。またアウターレース52は、減速機ケース11の円筒状支持部40の内周面により位置決めされると共に回り止めされている。
一方向クラッチ50は、車両3が電動機2A,2Bの駆動力によって前進走行する際に係合してリングギヤ24A,24B同士の回転をロック(係合)するように構成される。より具体的には、一方向クラッチ50は、リングギヤ24A,24Bに作用するトルクの作用方向でリングギヤ24A,24B同士をロック(係合)又は切離するように構成され、車両3が前進する際のサンギヤ21A,21Bの回転方向を正転方向とするとリングギヤ24A,24Bそれぞれに逆転方向のトルクが作用する場合、リングギヤ24A,24B同士の回転をロック(係合)する。
このように構成された第2駆動装置2は、遊星歯車式減速機12A,12Bが中央部で軸方向に対向し、遊星歯車式減速機12Aのリングギヤ24Aと遊星歯車式減速機12Bのリングギヤ24Bとが連結され、連結されたリングギヤ24A,24Bは、外径側支持部34の円筒状支持部40に図示しない軸受を介して回転自在に支持される。また、外径側支持部34とリングギヤ24A,24Bとの間の空間には油圧ブレーキ60A,60Bが設けられる。ピストン37A,37Bとリングギヤ24A,24Bとの間の空間には一方向クラッチ50が設けられる。油圧ブレーキ60A,60Bと一方向クラッチ50との間であって軸受の外径側には、油圧ブレーキ60A,60Bを作動するピストン37A,37Bが配置される。
以上の構成を備えた第2駆動装置2の通常走行時の動作について説明する。
図4は、車両の走行状態における電動機2A,2Bの状態と切離機構(一方向クラッチ50と油圧ブレーキ60A,60B)の状態を示す図である。
図4におけるフロントが前輪Wf,Wfを駆動する第1駆動装置1を表し、リアが後輪Wr(RWr,LWr)を駆動する第2駆動装置2を表し、○が作動(駆動、回生含む)を意味し、×が非作動(停止)を意味する。また、MOT状態が第2駆動装置2の電動機2A,2Bの状態を表す。切離機構のONが、リングギヤ24A,24B同士がロック(係合)されることを意味する。OFFが、リングギヤ24A,24Bそれぞれがフリー状態であることを意味する。また、OWCが一方向クラッチ50を意味し、BRKが油圧ブレーキ60A,60Bを意味する。
先ず、停車中は、前輪Wf,Wf側の第1駆動装置1、後輪Wr(RWr,LWr)側の第2駆動装置2がいずれも停止しているため、電動機2A,2Bが停止し、切離機構も非作動状態となっている。
次いで、キーポジションをONにした後、EV発進時は、第2駆動装置2の電動機2A,2Bが駆動する。このとき、切離機構は一方向クラッチ50によってONとなり、電動機2A,2Bの動力が後輪RWr,LWrに伝達される。
続いて加速時には、第1駆動装置1と第2駆動装置2とのいずれも駆動する双方輪(4輪)駆動状態(AWD)となり、このときも、切離機構は一方向クラッチ50によってONとなり、電動機2A,2Bの動力が後輪RWr、LWrに伝達される。
低・中速域のEVクルーズでは、モータ効率が良いため第1駆動装置1が非作動状態で、第2駆動装置2のみが駆動する後輪単独駆動状態(RWD)となる。このときも、切離機構は一方向クラッチ50によってONとなり、電動機2A,2Bの動力が後輪RWr,LWrに伝達される。
一方、高速域の高速クルーズでは、エンジン効率が良いため第1駆動装置1による前輪単独駆動状態(FWD)となる。このとき、切離機構は、一方向クラッチ50が切離されてOFFとなり(OWCフリー)、油圧ブレーキ60A,60Bが作動せず、電動機2A,2Bは停止する。
また、自然減速する場合も、切離機構は、一方向クラッチ50が切離されてOFFとなり(OWCフリー)、油圧ブレーキ60A,60Bが作動せず、電動機2A,2Bが停止する。
一方、減速回生する場合、例えば第1駆動装置1の駆動力により駆動する場合、切離機構の一方向クラッチ50が切離されてOFFとなる(OWCフリー)。しかし、油圧ブレーキ60A,60Bが締結され、出力軸10A,10Bの動力が円筒軸16A,16Bに伝達されることで、電動機2A,2Bで回生充電がなされる。
通常走行では、摩擦ブレーキに対する制動制御と協調して電動機2A,2Bで回生して走行エネルギーを回収するが、緊急制動の要求(例えば、ABS作動時)には、電動機2A,2Bの回生を禁止して、摩擦ブレーキによる制動制御を優先する。この場合、一方向クラッチ50が切離されたOFF状態(OWCフリー)となり、油圧ブレーキ60A,60Bが作動しないことで、電動機2A,2Bを停止させる。
後進走行の場合、第1駆動装置1が停止し、第2駆動装置2が駆動してRWDとなるか、或いは第1駆動装置1と第2駆動装置2とのいずれも駆動するAWDとなる。このとき、電動機2A,2Bが逆転方向に回転し、切離機構の一方向クラッチ50が切離されてOFFとなる(OWCフリー)。しかし、油圧ブレーキ60A,60Bが接続されることで、電動機2A,2Bの動力が円筒軸16A,16Bから出力軸10A,10Bを介して後輪RWr,LWrに伝達される。
次に、本実施形態に係る制御装置としてのECU6の構成について説明する。
ECU6は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定のレベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路と、中央演算処理ユニット(以下、「CPU」という。)と、を備える。この他、ECU6は、CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路と、PDU8や内燃機関4等に制御信号を出力する出力回路と、を備える。
以上のようなハードウェア構成からなるECU6は、車両3の駆動状態を切り替える駆動状態切替制御を実行する。ここで、図5は、本実施形態に係るECU6の構成を示す機能ブロック図である。図5に示すように、ECU6には、車輪速センサ91、アクセル開度センサ92、エンジン回転数センサ93、モータ電流センサ94、横Gセンサ95、車速センサ96、舵角センサ97及びヨーレートセンサ98等の各種センサの検出信号が入力され、PDU8及び内燃機関(ENG)4に制御信号を出力する。
また、ECU6は、駆動状態切替制御を実行するためのモジュールとして、スリップ取得部61と、加減スリップポイント算出部62と、積算スリップポイント算出部63と、駆動状態切替部64と、安定走行判定部65と、を備える。以下、各モジュールの機能について説明する。
スリップ取得部61は、第1駆動輪としての前輪Wf,Wf又は第2駆動輪としての後輪Wr(RWr,LWr)に、所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得する。スリップ取得部61は、超過スリップが発生したことを取得したときはスリップ判定フラグを「1」に設定し、超過スリップが発生したことを取得していないときはスリップ判定フラグを「0」に設定する。
ここで、車両3は、高μ状態の乾燥路においても常に駆動輪に微小なスリップを発生させながら走行しているとみなすこともできる。そのため、本実施形態における「超過スリップ」とは、このような微小なスリップを除外するものである。以下、超過スリップの発生を、単にスリップの発生ともいう。
ここで、図6は、本実施形態に係るスリップ取得部61の構成を示す機能ブロック図である。
図6に示すように、スリップ取得部61は、第1スリップ取得部611と、第2スリップ取得部612と、第3スリップ取得部613と、を有する。
スリップ取得部61では、車速センサ96からの検出信号である車速が、第1スリップ取得部611、第2スリップ取得部612及び第3スリップ取得部613に入力される。前輪回転状態量取得部66からの左右の前輪車輪速のうちいずれか大きい方である最大前輪車輪速VFr(max)及び後輪回転状態量取得部67からの左右の後輪車輪速のうちいずれか小さい方である最小後輪車輪速VRr(min)が、第1スリップ取得部611に入力される。M−TCS70のスリップ取得部によって設定されるM−TCS作動フラグが、第2スリップ取得部612に入力される。前輪回転状態量取得部66からの左右の平均前輪車輪速VFr(ave)及び後輪回転状態量取得部67からの左右の平均後輪車輪速VRr(ave)が、第3スリップ取得部613に入力される。
なお、平均前輪車輪速VFr(ave)及び平均後輪車輪速VRr(ave)は、前輪又は後輪の左右車輪の平均前輪車輪速VFr(ave)=(VFr(右)+VFr(左))/2,平均後輪車輪速VRr(ave)=(VRr(右)+VRr(左))/2から導出される。
図7は、本実施形態に係るスリップ取得部61のスリップ判定を示す概念図である。
図7に示すように、スリップ取得部61は、車速が車速の第1閾値未満のときに、第1スリップ取得部611及び第2スリップ取得部612に基づいて超過スリップが発生したことを取得し、車速が車速の第1閾値以上のときに、第2スリップ取得部612及び第3スリップ取得部613に基づいて超過スリップが発生したことを取得する。
具体的には、スリップ取得部61は、車速が車速の第1閾値未満のときに、第1スリップ取得部611によって超過スリップが発生したことを取得するか、又は、第2スリップ取得部612によって超過スリップが発生したことを取得するかのいずれかの場合にスリップ判定フラグを「1」に設定する。
また、スリップ取得部61は、車速が車速の第1閾値以上のときに、第2スリップ取得部612によって超過スリップが発生したことを取得するか、又は、第3スリップ取得部613によって超過スリップが発生したことを取得するかのいずれかの場合にスリップ判定フラグを「1」に設定する。
第1スリップ取得部611は、前輪回転状態量取得部66からの左右の最大前輪車輪速VFr(max)及び後輪回転状態量取得部67からの左右の最小後輪車輪速VRr(min)に基づいて、前輪に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得する。
Figure 0005826307
第1スリップ取得部611は、上記の式(1)によって、前輪Wf,Wfに超過スリップが発生したことを取得する。
ここで、後輪回転状態量取得部67からの左右の最小後輪車輪速VRr(min)は、前輪Wf,Wfの超過スリップ判定基準値となる。
また、式(1)の閾値は、最大前輪車輪速VFr(max)から最小後輪車輪速VRr(min)を引いたときに前輪に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを判定可能な予め設定された閾値である。
第2スリップ取得部612は、M−TCS70のスリップ取得部によって設定されるM−TCS作動フラグに基づいて、後輪Wr(RWr,LWr)に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得する。
即ち、第2スリップ取得部612は、後輪Wr(RWr,LWr)に超過スリップが発生したときに設定されるM−TCS作動フラグが「1」のときに、後輪Wr(RWr,LWr)に超過スリップが発生したことを取得する。
第3スリップ取得部613は、前輪回転状態量取得部66からの左右の平均前輪車輪速VFr(ave)及び後輪回転状態量取得部67からの左右の平均後輪車輪速VRr(ave)に基づいて、前輪Wf,Wf又は後輪Wr(RWr,LWr)に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得する。
Figure 0005826307
第3スリップ取得部613は、比に基づいた上記の式(2)を用いて前輪Wf,Wf又は後輪Wr(RWr,LWr)に超過スリップが発生したことを取得する。
ここで、式(2)は、路面μとの動摩擦特性(車輪から路面への伝達可能トルク)の相関を示すスリップ率の相関式を利用している。
車両が通常走行時に後輪単独駆動状態(RWD)になる傾向があることから、後輪回転状態量取得部67からの左右の平均後輪車輪速VRr(ave)は、式(2)の超過スリップ判定基準値(分母)となる。
式(2)は、絶対値の式であることで、前輪Wf,Wfの左右の平均前輪車輪速VFr(ave)を基準に置き換えるものとも判断でき((VRr(ave)−VFr(ave))/VFr(ave))、基準の後輪回転状態量取得部67からの左右の平均後輪車輪速VRr(ave)を取得するための後輪Wr(RWr,LWr)に超過スリップが発生していても、超過スリップが発生したことを取得できる。
式(2)の閾値は、検索値と車速に応じた車速補正値との和をとった値であり、式(2)からの絶対値の値が算出されたときに前輪Wf,Wf又は後輪Wr(RWr,LWr)に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを判定可能となる。図8は、本実施形態に係る第3スリップ取得部613に記憶された前後輪すべり比算出テーブルを示す図である。式(2)の閾値における検索値は、図8に示すような左右の後輪Wr(RWr,LWr)における理想状態の左右の後輪車輪速比に対する前後輪すべり比のテーブル特性として予め作成されて記憶された所定テーブルを、後輪回転状態量取得部67から算出される実際の左右の実後輪車輪速比を用いて検索して算出され、グリップ走行時(理想状態)の前後輪すべり比から所定量加減算された前後輪すべり比となる。車速補正値は、予め定められた車速が「0」に近いほど大きな値となる相関値である。
加減スリップポイント算出部62は、超過スリップが発生したことをスリップ取得部61が取得したこと又は取得していないことに基づいて、加算スリップポイント又は減算スリップポイントである加減スリップポイントを時間離散的に算出する。即ち、加減スリップポイント算出部62は、超過スリップが発生したことをスリップ取得部61が取得したことに基づいて、加算スリップポイントを算出する。また、超過スリップが発生したことをスリップ取得部61が取得していないことに基づいて、減算スリップポイントを算出する。
ここで、図9は、本実施形態に係る加減スリップポイント算出部62の構成を示す機能ブロック図である。
図9に示すように、加減スリップポイント算出部62は、超過スリップが発生したことをスリップ取得部61が取得したとき、即ちスリップ判定フラグが「1」のときに、超過スリップが発生した駆動輪の駆動力に相関のある駆動力相関値に基づいて、加減スリップポイントを算出する。
ここで、駆動力相関値としては、例えば、車輪(一輪)駆動力、車輪(一輪)トルク、車輪を駆動する第1駆動装置1及び第2駆動装置2の駆動力、車輪を駆動する第1駆動装置1及び第2駆動装置2のトルクが挙げられるが、以下では車輪(一輪)駆動力を例に挙げて説明する。
具体的には、図9に示すように加減スリップポイント算出部62は、加算スリップポイント算出部68と、減算スリップポイント算出部69と、を備える。加減スリップポイント算出部62は、スリップ判定フラグが「1」のときに、加算スリップポイント算出部68でプラス値の加算スリップポイントを算出し、算出された加算スリップポイントを積算スリップポイント算出部63に送信する。
また、加減スリップポイント算出部62は、スリップ判定フラグが「0」のときに、減算スリップポイント算出部69でマイナス値の減算スリップポイントを算出し、算出された減算スリップポイントを積算スリップポイント算出部63に送信する。
加算スリップポイント算出部68は、スリップ発生時駆動力加算部681と、スリップ発生継続時間加算部682と、を備える。加算スリップポイント算出部68は、これら各加算部で算出したプラス値の各加算スリップポイントを合算することで、加算スリップポイントを算出する。
スリップ発生時駆動力加算部681は、スリップ発生時の一輪駆動力[N]に応じて、予め作成されて記憶された後述の駆動力加算スリップポイント算出テーブル(図13参照)を検索することで、加算スリップポイントとしての駆動力加算スリップポイントを算出する。スリップ発生時駆動力加算部681は、第1閾値を超えない範囲で、スリップ発生時の一輪駆動力が低駆動力であるほど、大きな駆動力加算スリップポイントを算出する。
ここで、本明細書において一輪駆動力とは、車両3の4輪それぞれの駆動力のうち、最大の駆動力を意味する。一輪駆動力は、センサにより検出される他、例えば、アクセル開度センサ92により検出されたアクセル開度、エンジン回転数センサ93により検出されたエンジン回転数、電動機5,2A,2Bそれぞれに設けられたモータ電流センサ94により検出された各モータ電流等に基づいて推定されて、取得される。
また、第1閾値は、双方輪駆動状態(AWD)と一方輪単独駆動状態(2WD)との切り替えの指標として、適切な値に予め設定される。なお、この第1閾値は、後述の第2閾値よりも大きな値に設定される。
スリップ発生継続時間加算部682は、スリップ発生継続時間[秒]、即ちスリップ判定フラグ「1」の継続時間に応じて、予め作成されて記憶された後述の時間加算スリップポイント算出テーブル(図14参照)を検索することで、加算スリップポイントとしての時間加算スリップポイントを算出する。スリップ発生継続時間加算部682は、時間加算スリップポイントの積算値が後述の第1閾値を超えるまでは、スリップ発生継続時間が長いほど大きな時間加算スリップポイントを算出し、当該積算値が第1閾値を超えた後は、ほぼ0の時間加算スリップポイントを継続して算出する。
また図9に示すように、減算スリップポイント算出部69は、スリップ不発生時駆動力減算部691と、スリップ不発生継続時間減算部692と、スリップ不発生時横G減算部693と、スリップ不発生時車速減算部694と、を備える。減算スリップポイント算出部69は、これら各減算部で算出したマイナス値の各減算スリップポイントを合算することで、減算スリップポイントを算出する。
スリップ不発生時駆動力減算部691は、スリップ不発生時の一輪駆動力[N]に応じて、予め作成されて記憶された後述の駆動力減算スリップポイント算出テーブル(図16参照)を検索することで、減算スリップポイントとしての駆動力減算スリップポイントを算出する。スリップ不発生時駆動力減算部691は、スリップ不発生時の一輪駆動力が所定値未満では駆動力減算スリップポイントを0と算出し、所定値以上では絶対値が比較的大きな一定の駆動力減算スリップポイントを算出する。
スリップ不発生継続時間減算部692は、スリップ不発生継続時間[秒]、即ちスリップ判定フラグ「0」の継続時間に応じて、予め作成されて記憶された後述の時間減算スリップポイント算出テーブル(図18参照)を検索することで、減算スリップポイントとしての時間減算スリップポイントを算出する。スリップ不発生継続時間減算部692は、スリップ不発生継続時間によらず、絶対値が比較的小さな一定の時間減算スリップポイントを算出する。
スリップ不発生時横G減算部693は、スリップ不発生時に横Gセンサ95により検出された横Gに応じて、予め作成されて記憶された後述の横G減算スリップポイント算出テーブル(図20参照)を検索することで、減算スリップポイントとしての横G減算スリップポイントを算出する。スリップ不発生時横G減算部693は、スリップ不発生時の横Gが所定値未満では横G減算スリップポイントを0と算出し、所定値以上では絶対値が比較的大きな一定の横G減算スリップポイントを算出する。
スリップ不発生時車速減算部694は、スリップ不発生時に車速センサ96により検出された車速に応じて、予め作成された記憶された後述の車速減算スリップポイント算出テーブル(図22参照)を検索することで、減算スリップポイントとしての車速減算スリップポイントを算出する。スリップ不発生時車速減算部694は、スリップ不発生時の車速が所定値未満では絶対値が比較的大きな一定の車速減算スリップポイントを算出し、所定値以上では車速減算スリップポイントを0と算出する。
積算スリップポイント算出部63は、加算スリップポイント算出部68で算出された加算スリップポイントと、減算スリップポイント算出部69で算出された減算スリップポイントと、を積算することで、積算スリップポイントを経時的に算出する。
図5に戻って、駆動状態切替部64は、積算スリップポイント算出部63で算出された積算スリップポイントに基づいて、第1駆動輪としての前輪Wf,Wfと第2駆動輪としての後輪Wr(RWr,LWr)のうちいずれか一方のみで車両3を駆動する一方輪単独駆動状態(2WD)と、第1駆動輪としての前輪Wf,Wfと第2駆動輪としての後輪Wr(RWr,LWr)の双方で車両3を駆動する双方輪駆動状態(AWD)と、を切り替える。一方輪単独駆動状態としては、前輪Wf,Wfのみで車両3を駆動する前輪単独駆動状態(FWD)と、後輪Wr(RWr,LWr)のみで車両3を駆動する後輪単独駆動状態(RWD)があり、駆動状態切替部64は、前輪単独駆動状態(FWD)と、後輪単独駆動状態(RWD)と、双方輪駆動状態(AWD)の切り替えを実行する。
具体的には、駆動状態切替部64は、積算スリップポイントが第1閾値以上であるときに、スリップAWD要求フラグを「1」に設定し、車両3の駆動状態を双方輪駆動状態(AWD)に切り替える。また、駆動状態切替部64は、積算スリップポイントが第1閾値未満であり、且つ後述の安定走行判定フラグが「1」のときに、スリップAWD要求フラグを「0」に設定し、車両3の駆動状態を一方輪単独駆動状態(2WD)に切り替える。
なお、本実施形態に係る駆動状態切替部は、積算スリップポイントが第1閾値以上であるときに、2WD禁止要求フラグを「1」に設定し、一方輪単独駆動状態(2WD)、即ち前輪単独駆動状態(FWD)及び後輪単独駆動状態(RWD)への切り替えを禁止するものであってもよい。これにより、車両3の駆動状態は双方輪駆動状態(AWD)となる。
また、本実施形態に係る駆動状態切替部は、積算スリップポイントが第1閾値未満であり、且つ安定走行判定フラグが「1」のときに、2WD禁止要求フラグを「0」に設定し、一方輪単独駆動状態(2WD)、即ち前輪単独駆動状態(FWD)及び後輪単独駆動状態(RWD)への切り替えを許容するものであってもよい。これにより、前輪単独駆動状態(FWD)又は後輪単独駆動状態(RWD)への切り替えが実行される。
駆動状態切替部64は、積算スリップポイントが第2閾値以上であるときに、RWD禁止要求フラグを「1」に設定し、車両3の駆動状態を前輪単独駆動状態(FWD)に切り替える。また、駆動状態切替部64は、積算スリップポイントが第2閾値未満であるときに、RWD禁止要求フラグを「0」に設定し、車両3の駆動状態を後輪単独駆動状態(RWD)に切り替える。
ここで、第2閾値は、前輪単独駆動状態(FWD)と後輪単独駆動状態(RWD)との切り替えの指標として、適切な値に予め設定される。なお、この第2閾値は、上述の第1閾値よりも小さな値に設定される。
安定走行判定部65は、車両3が安定走行しているか否かを判定する。具体的には、スリップAWD要求フラグが「1」である場合において、舵角センサ97、ヨーレートセンサ98、車速センサ96及び車輪速センサ91等の検出値や当該検出値を用いた推定値に基づいて、車両3が安定走行しているか否かを判定する。安定走行判定部65は、車両3が安定走行していると判定したときは安定走行判定フラグを「1」に設定し、安定走行していないと判定したときは安定走行判定フラグを「0」に設定する。
前輪回転状態量取得部66は、車輪速センサ91の検出信号から左右の前輪の車輪速等の前輪回転状態量を取得する。即ち、前輪回転状態量取得部66は、左右の最大前輪車輪速VFr(max)及び左右の平均前輪車輪速VFr(ave)を取得する。
なお、前輪回転状態量取得部66は、エンジン回転数センサ93の検出信号であるエンジン回転数から換算して前輪Wf,Wfの車輪速を取得してもよい。また、前輪回転状態量取得部66は、場合によって搭載される前輪回転角速度センサの検出信号から前輪Wf,Wfの車輪速を取得してもよい。また、前輪Wf,Wfの車輪速以外に、前輪Wf,Wfの回転状態量を取得してもよい。
後輪回転状態量取得部67は、車輪速センサ91の検出信号から左右の後輪Wr(RWr,LWr)の車輪速等の後輪回転状態量を取得する。即ち、後輪回転状態量取得部67は、左右の最小後輪車輪速VRr(min)及び左右の平均後輪車輪速VRr(ave)を取得する。
なお、後輪回転状態量取得部67は、モータ電流センサ94の検出信号から算出されるモータ回転数から換算して後輪Wr(RWr,LWr)の車輪速を取得してもよい。また、後輪回転状態量取得部67は、場合によって搭載される後輪回転角速度センサの検出信号から前輪Wf,Wfの車輪速を取得してもよい。また、後輪Wr(RWr,LWr)の車輪速以外に、後輪Wr(RWr,LWr)の回転状態量を取得してもよい。
M−TCS70は、第2駆動装置2に対して、後輪Wr(RWr,LWr)の車輪回転数又は電動機2A,2Bのモータ回転数に基づいてモータトラクションコントロール制御を行う。即ち、M−TCS70は、電動機2A,2Bが発生するトルクを制御し、後輪Wr(RWr,LWr)の回転状態を制御する。
M−TCS70は、スリップ取得部を有し、車輪速センサ91が検出した左右の後輪Wr(RWr,LWr)の車輪速から左右の後輪Wr(RWr,LWr)の車輪回転数を、車輪目標回転数に基づいた上限車輪回転数と比較する。
そして、M−TCS70のスリップ取得部は、左右の後輪Wr(RWr,LWr)の車輪回転数が共に上限車輪回転数以下の場合には、後輪Wr(RWr,LWr)に超過スリップが発生していないと判定し、M−TCS作動フラグを「0」に設定する。この際に、ECU6がドライバ要求トルクを満たすように電動機2A,2Bに指令モータトルクを出力させる。
また、M−TCS70のスリップ取得部は、左右の後輪Wr(RWr,LWr)の車輪回転数のいずれかが上限車輪回転数より大きくなった場合には、後輪Wr(RWr,LWr)に超過スリップが発生したと判定し、M−TCS作動フラグを「1」に設定する。この際に、ECU6は、超過スリップが発生した後輪Wr(RWr,LWr)に接続される電動機2A,2Bの指令モータトルクを、上限スリップ閾値回転数と現在の車輪回転数との差である加速スリップ量に基づいて決定される変化量△1だけ変化させる。ここで、変化量△1は、負の数に設定され、指令モータトルクが変化量△1の分だけ減少する。なお、M−TCS70のスリップ取得部は、この制御で車輪回転数が上限スリップ閾値回転数以下になったことを再取得した場合には、後輪Wr(RWr,LWr)の超過スリップが収まったため、ECU6がドライバ要求トルクを満たすように電動機2A,2Bに指令モータトルクを出力させる。
M−TCS70は、上記モータトラクションコントロール制御を、力行駆動及び回生駆動の両方で実施する。
次に、本実施形態に係るECU6で実行される駆動状態切替制御について説明する。
図10は、本実施形態に係る駆動状態切替制御の手順を示すフローチャートである。この制御処理は、ECU6で繰り返し実行される。
ステップS0では、車両3の前輪Wf,Wf又は後輪Wr(RWr,LWr)のいずれかに所定以上のスリップである超過スリップが発生していると判定したときはスリップ判定フラグを「1」に設定し、車両3の前輪Wf,Wf及び後輪Wr(RWr,LWr)のいずれにも超過スリップが発生していないと判定したときはスリップ判定フラグを「0」に設定する。
ステップS1では、スリップ判定フラグが「1」であるか否かを判別する。この判別がYESの場合には、スリップの発生を取得したためステップS2に進み、加算スリップポイントを算出した後、ステップS4に進む。NOの場合には、スリップが発生していないためステップS3に進み、減算スリップポイントを算出した後、ステップS4に進む。
ステップS4では、積算スリップポイントの前回値に対して、ステップS2で算出した加算スリップポイント又はステップS3で算出した減算スリップポイントを積算し、積算スリップポイントを算出する。その後、ステップS5に進む。
ステップS5では、ステップS4で算出した積算スリップポイントが積算スリップポイントの第1閾値以上であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS6に進み、NOの場合にはステップS7に進む。
ステップS6では、スリップAWD要求フラグを「1」に設定し、本処理を終了する。これにより、AWDへの切り替えが実行され、又はAWDが維持される。
ステップS7では、スリップAWD要求フラグが「1」であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS8に進み、NOの場合にはステップS11に進む。
ステップS8では、車両3が安定走行しているか否かを判定する。車両3が安定走行していると判定したときは安定走行判定フラグを「1」に設定し、安定走行していないと判定したときは安定走行判定フラグを「0」に設定する。
ステップS9では、ステップS8の安定走行判定により設定された安定走行判定フラグが「1」であるか否かを判別する。この判別がYESの場合には車両3の安定性が確保できているためステップS10に進み、スリップAWD要求フラグを「0」に設定した後、ステップS11に進む。これにより、2WD、即ちFWD又はRWDへの切り替えが実行される。
ステップS9の判別がNOの場合には、車両3の安定性が確保できていないためステップS6に進み、スリップAWD要求フラグを「1」に設定し、本処理を終了する。これにより、AWDが維持される。
ステップS11では、ステップS4で算出した積算スリップポイントが積算スリップポイントの第1閾値よりも小さい積算スリップポイントの第2閾値以上であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS12に進み、NOの場合にはステップS13に進む。
ステップS12では、RWD禁止要求フラグを「1」に設定し、本処理を終了する。これにより、RWDへの切り替えが禁止され、FWDへの切り替えが実行され、又はFWDが維持される。
ステップS13では、RWD禁止要求フラグを「0」に設定し、本処理を終了する。これにより、FWD若しくはRWDへの切り替えが実行され、又はFWD若しくはRWDが維持される。
なお、ステップS8とステップS9の車両3の安定走行に基づいたステップは、省略してもよい。
次に、図10のステップS0で実行される本実施形態に係るスリップ判定処理について説明する。
図11は、本実施形態に係るステップS0で実行されるスリップ判定処理の手順を示すフローチャートである。
ステップS01では、M−TCS作動フラグが「1」であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS02に進む。
ステップS02では、車速が車速の第1閾値よりも大きいか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS04に進む。一方、NOの場合にはステップS03に進む。
ステップS03では、式(1)を満たすか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS06に進んでスリップ判定フラグを「0」に設定して本処理を終了する。
ステップS04では、式(2)を満たすか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS06に進んでスリップ判定フラグを「0」に設定して本処理を終了する。
次に、図10のステップS2で実行される本実施形態に係る加算スリップポイント算出処理について説明する。本実施形態に係る加算スリップポイント算出処理では、駆動力加算スリップポイント算出処理及び時間加算スリップポイント算出処理により各加算スリップポイントを算出した後、算出された各加算スリップポイントを合算する処理が実行される。
図12は、本実施形態に係る加算スリップポイント算出処理の手順を示すフローチャートである。
ステップS21では、スリップ判定フラグが「1」であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS22に進み、NOの場合にはステップS26に進んで加算スリップポイントを「0」にリセットし、本処理を終了する。
ステップS22では、今回処理が初回であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS23に進み、NOの場合にはステップS25に進む。
ステップS23では、スリップ発生時の一輪駆動力から加算スリップポイントをテーブル検索する。具体的には、スリップ発生時の一輪駆動力に応じて、予め作成されてスリップ発生時駆動力加算部681に記憶された駆動力加算スリップポイント算出テーブルを検索することで、駆動力加算スリップポイントを算出する。その後、ステップS24に進む。
ここで、図13は、スリップ発生時駆動力加算部681に記憶された駆動力加算スリップポイント算出テーブルを示す図である。図13において、横軸は一輪駆動力[N]を表し、縦軸はプラス値の駆動力加算スリップポイントを表している。
図13に示すように、駆動力加算スリップポイント算出テーブルは、第1閾値を超えない範囲で、スリップ発生時の一輪駆動力が低駆動力であるほど、駆動力加算スリップポイントが比例して大きくなるように設定される。これは、スリップが発生している場合において、一輪駆動力が低駆動力であるほど路面が低μ状態であることから、駆動力加算スリップポイントをより大きく設定することで、AWDに早期に切り替えるため、又はAWD走行時間を長く確保するためである。ただし、一輪駆動力がある程度高くなると、駆動力加算スリップポイントが一定となるように設定される。
図12に戻って、ステップS24では、スリップ発生継続時間初期値を設定し、本処理を終了する。具体的には、例えば後述する図14のY軸切片で示されるように、スリップ発生継続時間が0秒のときの時間加算スリップポイントの積算値、即ちスリップ発生継続時間初期値を、0としてもよい。
ステップS25では、スリップ発生継続時間から加算スリップポイントをテーブル検索し、本処理を終了する。具体的には、スリップ発生継続時間に応じて、予め作成されてスリップ発生継続時間加算部682に記憶された時間加算スリップポイント算出テーブルを検索することで、時間加算スリップポイントを算出する。
ここで、図14は、スリップ発生継続時間加算部682に記憶された時間加算スリップポイント算出テーブルを示す図である。図14において、横軸は、スリップ発生継続時間[秒]を表し、縦軸はプラス値の時間加算スリップポイントの積算値を表している。即ち、離散的な1回ごとの純粋な時間加算スリップポイントは、図14中の互いに隣接する一方の点における時間加算スリップポイントの積算値と、他方の点における時間加算スリップポイントの積算値との差分によって表される。
図14に示すように、時間加算スリップポイント算出テーブルは、時間加算スリップポイントの積算値が第1閾値を超えるまでは、スリップ発生継続時間が長いほど時間加算スリップポイントが大きくなるように設定される。これは、スリップ発生継続時間が短過ぎる場合にはスリップ誤判定の可能性があることから、時間加算スリップポイントをより小さく設定することで、路面が高μ状態であるにも関わらず無駄にAWDに切り替えてしまうのを回避するためである。
なお、双方輪駆動状態(AWD)要求応答時間内となるように、スリップ発生継続時間に応じた時間加算スリップポイントが設定される。
また、時間加算スリップポイントの積算値が第1閾値を超えた後は、ほぼ0の時間加算スリップポイントが継続して算出され、時間加算スリップポイントの積算値が一定となるように設定される。これは、時間加算スリップポイントの積算値が第1閾値を過大に超えてしまうと、双方輪駆動状態(AWD)の継続時間が長過ぎてしまい、駆動効率(燃費、電費)が悪化するためである。
次に、図10のステップS3で実行される本実施形態に係る減算スリップポイント算出処理について説明する。本実施形態に係る減算スリップポイント算出処理では、駆動力減算スリップポイント算出処理、時間減算スリップポイント算出処理、横G減算スリップポイント算出処理及び車速減算スリップポイント算出処理により各減算スリップポイントを算出した後、算出された各減算スリップポイントを合算する処理が実行される。
図15は、本実施形態に係る駆動力減算スリップポイント算出処理の手順を示すフローチャートである。
ステップS311では、積算スリップポイントが0よりも大きいか否かを判別する。この判別がYESで積算スリップポイントが溜まった状態である場合には、ステップS312に進む。この判別がNOで積算スリップポイントが溜まっていない状態である場合には、ステップS315に進んで減算スリップポイントを0とし、本処理を終了する。これにより、積算スリップポイントが0のときに、減算スリップポイントとして0しか算出しないため、積算スリップポイントがマイナス値となるのが回避される。
ステップS312では、スリップ判定フラグが「0」であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS313に進み、スリップ不発生時の一輪駆動力を取得した後、ステップS314に進む。この判別がNOの場合には、ステップS315に進んで減算スリップポイントを0として本処理を終了する。
ステップS314では、ステップS313で取得された一輪駆動力から、減算スリップポイントをテーブル検索して本処理を終了する。具体的には、スリップ不発生時の一輪駆動力に応じて、予め作成されてスリップ不発生時駆動力減算部691に記憶された駆動力減算スリップポイント算出テーブルを検索することで、駆動力減算スリップポイントを算出する。
ここで、図16は、スリップ不発生時駆動力減算部691に記憶された駆動力減算スリップポイント算出テーブルを示す図である。図16において、横軸は一輪駆動力[N]を表し、縦軸はマイナス値の駆動力減算スリップポイントを表している。
図16に示すように、駆動力減算スリップポイント算出テーブルは、スリップ不発生時の一輪駆動力が所定値未満では、駆動力減算スリップポイントが0となるように設定され、所定値以上では、絶対値が比較的大きな一定の駆動力減算スリップポイントとなるように設定される。これは、スリップが発生していない場合において、一輪駆動力が高駆動力であるほど路面が確実に高μ状態であることから、駆動力減算スリップポイントをより大きく設定することで、低μ状態であるにも関わらず2WDへの切り替えを実行してしまうのを回避するためである。
図17は、本実施形態に係る時間減算スリップポイント算出処理の手順を示すフローチャートである。
ステップS321では、積算スリップポイントが0よりも大きいか否かを判別する。この判別がYESで積算スリップポイントが溜まった状態である場合には、ステップS322に進む。この判別がNOで積算スリップポイントが溜まっていない状態である場合には、ステップS325に進んでスリップ不発生継続時間カウンタ値SNT_CNTを0にリセットすると共に、減算スリップポイントを0とし、本処理を終了する。これにより、積算スリップポイントが0のときに、減算スリップポイントとして0しか算出しないため、積算スリップポイントがマイナス値となるのが回避される。
ステップS322では、スリップ判定フラグが「0」であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS323に進み、スリップ不発生継続時間カウンタ値SNT_CNTをインクリメントした後、ステップS324に進む。この判別がNOの場合には、ステップS325に進んでスリップ不発生継続時間カウンタ値SNT_CNTを0にリセットすると共に、減算スリップポイントを0とし、本処理を終了する。
ステップS324では、ステップS323でインクリメントされたスリップ不発生継続時間カウンタ値SNT_CNTから、減算スリップポイントをテーブル検索して本処理を終了する。具体的には、スリップ不発生継続時間カウンタ値SNT_CNT、即ちスリップ不発生継続時間[秒]に応じて、予め作成されてスリップ不発生継続時間減算部692に記憶された時間減算スリップポイント算出テーブルを検索することで、時間減算スリップポイントを算出する。
ここで、図18は、スリップ不発生継続時間減算部692に記憶された時間減算スリップポイント算出テーブルを示す図である。図18において、横軸はスリップ不発生継続時間[秒]を表し、縦軸はマイナス値の時間減算スリップポイントを表している。
図18に示すように、時間減算スリップポイント算出テーブルは、スリップ不発生継続時間によらず、絶対値が比較的小さな一定の時間減算スリップポイントとなるように設定される。これは、スリップ不発生継続時間に伴って、徐々に積算スリップポイントを減少させるためである。
図19は、本実施形態に係る横G減算スリップポイント算出処理の手順を示すフローチャートである。
ステップS331では、積算スリップポイントが0よりも大きいか否かを判別する。この判別がYESで積算スリップポイントが溜まった状態である場合には、ステップS332に進む。この判別がNOで積算スリップポイントが溜まっていない状態である場合には、ステップS334に進んで減算スリップポイントを0とし、本処理を終了する。これにより、積算スリップポイントが0のときに、減算スリップポイントとして0しか算出しないため、積算スリップポイントがマイナス値となるのが回避される。
ステップS332では、スリップ判定フラグが「0」であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS333に進み、この判別がNOの場合にはステップS334に進んで減算スリップポイントを0とし、本処理を終了する。
ステップS333では、スリップ不発生時の横Gから減算スリップポイントをテーブル検索して本処理を終了する。具体的には、スリップ不発生時の横Gに応じて、予め作成されてスリップ不発生時横G減算部693に記憶された横G減算スリップポイント算出テーブルを検索することで、横G減算スリップポイントを算出する。
ここで、図20は、スリップ不発生時横G減算部693に記憶された横G減算スリップポイント算出テーブルを示す図である。図20において、横軸は横Gを表し、縦軸はマイナス値の横G減算スリップポイントを表している。
図20に示すように、横G減算スリップポイント算出テーブルは、スリップ不発生時の横Gが所定値未満では横G減算スリップポイントが0となるように設定され、所定値以上では絶対値が比較的大きな一定の横G減算スリップポイントとなるように設定される。これは、スリップが発生していない場合において、横Gが大きいほど路面が確実に高μ状態であることから、横G減算スリップポイントをより大きく設定することで、低μ状態であるにも関わらず2WDへの切り替えを実行してしまうのを回避するためである。
図21は、本実施形態に係る車速減算スリップポイント算出処理の手順を示すフローチャートである。
ステップS341では、積算スリップポイントが0よりも大きいか否かを判別する。この判別がYESで積算スリップポイントが溜まった状態である場合には、ステップS342に進む。この判別がNOで積算スリップポイントが溜まっていない状態である場合には、ステップS344に進んで減算スリップポイントを0とし、本処理を終了する。これにより、積算スリップポイントが0のときに、減算スリップポイントとして0しか算出しないため、積算スリップポイントがマイナス値となるのが回避される。
ステップS342では、スリップ判定フラグが「0」であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS343に進み、この判別がNOの場合にはステップS344に進んで減算スリップポイントを0とし、本処理を終了する。
ステップS343では、スリップ不発生時の車速から減算スリップポイントをテーブル検索して本処理を終了する。具体的には、スリップ不発生時の車速に応じて、予め作成されてスリップ不発生時車速減算部694に記憶された車速減算スリップポイント算出テーブルを検索することで、車速減算スリップポイントを算出する。
ここで、図22は、スリップ不発生時車速減算部694に記憶された車速減算スリップポイント算出テーブルを示す図である。図22において、横軸は車速を表し、縦軸はマイナス値の車速減算スリップポイントを表している。
図22に示すように、車速減算スリップポイント算出テーブルは、スリップ不発生時の車速が所定値未満では絶対値が比較的大きな一定の車速減算スリップポイントとなるように設定され、所定値以上では車速減算スリップポイントが0となるように設定される。これは、車速が所定値未満の低車速では仮にスリップが発生した場合でも車両の挙動を大きく乱すことが無いので、車速減算スリップポイントの絶対値を比較的大きな一定の値とし、高車速では反対に車速減算スリップポイントを0とすることで、AWDから2WDへの切り替えをより適切なタイミングで実行するためである。
次に、本実施形態に係る駆動状態切替制御の一例について説明する。図23は、本実施形態に係る駆動状態切替制御の一例を示すタイムチャートである。
図23において、「積算スリップポイント」の行における+側(図23における上側)の棒グラフは加算スリップポイントを表し、−側(図23における下側)の棒グラフは減算スリップポイントを表し、折れ線グラフは積算スリップポイントを表している。
先ず、RWD(EV)発進後の時刻t1において、スリップの発生が取得されてスリップ判定フラグが「1」に設定されたことに応じて、加算スリップポイントの算出が開始される。このとき、低駆動力(図13に示すように加算スリップポイントは大きい。)の状態でスリップが発生しているため、加算スリップポイントの算出値は大きい。そのため、加算スリップポイントの積算値である積算スリップポイントが第1閾値以上となり、これに応じてスリップAWD要求フラグが「1」に設定され、AWDへの切り替えが実行される。同時に、当然、積算スリップポイントは第1閾値よりも小さい第2閾値以上であるため、RWD禁止要求フラグが「1」に設定される。
加算スリップポイントの算出は、スリップ判定フラグが「0」に設定される時刻t2まで継続される。また、時刻t1からt2までの間、スリップ発生継続時間に基づいて算出されたプラス値の加算スリップポイントが積算されることで、積算スリップポイントが増加していく。
時刻t2において、スリップの発生が取得されず、スリップ判定フラグが「0」に設定されたことに応じて、加算スリップポイントの算出が終了され、その代わりに減算スリップポイントの算出が開始される。このとき、高車速(図22に示すように減算スリップポイントは小さい。)で低駆動力(図16に示すように減算スリップポイントは小さい。)の状態であるため、減算スリップポイントの算出値は小さい。
減算スリップポイントの算出は、積算スリップポイントが0になる時刻t3まで継続され、時刻t2からt3までの間、スリップ不発生継続時間に基づいて算出されたマイナス値の減算スリップポイントが積算されることで、積算スリップポイントが減少していく。なお、時刻t3では、積算スリップポイントが既に第1閾値未満であるものの、安定走行判定フラグが「0」であるため、スリップAWD要求フラグが「1」のままでAWD走行が維持される。
時刻t4において、積算スリップポイントが第1閾値未満であり、安定走行判定フラグが「1」であることに応じて、スリップAWD要求フラグが「0」に設定される。また、積算スリップポイントが第2閾値未満であることに応じて、RWD禁止要求フラグが「0」に設定される。これにより、FWD又はRWDへの切り替えが実行される。
時刻t5において、再びスリップの発生が取得されてスリップ判定フラグが「1」に設定されたことに応じて、加算スリップポイントの算出が開始される。このとき、高駆動力(図13に示すように加算スリップポイントは小さい。)の状態でスリップが発生しているため、加算スリップポイントの算出値は小さい。そのため、加算スリップポイントの積算値である積算スリップポイントは第1閾値未満であるため、スリップAWD要求フラグは「0」のままである。一方、積算スリップポイントは第2閾値以上であるため、RWD禁止要求フラグが「1」に設定され、RWDへの切り替えが禁止される。これにより、t5以前にRWDであった場合には、FWDへの切り替えが実行される。
時刻t6において、スリップの発生が取得されず、スリップ判定フラグが「0」に設定されたことに応じて、加算スリップポイントの算出が終了され、その代わりに減算スリップポイントの算出が開始される。このとき、高車速(図21に示すように減算スリップポイントは小さい。)で高駆動力(図16に示すように減算スリップポイントは大きい。)の状態であるため、減算スリップポイントの算出値は大きい。また、積算スリップポイントは第1閾値未満であるため、スリップAWD要求フラグは「0」のままである。
時刻t7において、積算スリップポイントが第2閾値未満となったことに応じて、RWD禁止要求フラグが「0」に設定され、FWD又はRWDへの切り替えが実行される。
時刻t8において、再びスリップの発生が取得されてスリップ判定フラグが「1」に設定されたことに応じて、加算スリップポイントの算出が開始される。このとき、低駆動力(図13に示すように加算スリップポイントは大きい。)でのスリップ発生であるため、加算スリップポイントの算出値は大きい。そのため、加算スリップポイントの積算値である積算スリップポイントが第1閾値以上となり、これに応じてスリップAWD要求フラグが「1」に設定され、AWDへの切り替えが実行される。同時に、当然、積算スリップポイントは第1閾値よりも小さい第2閾値以上であるため、RWD禁止要求フラグが「1」に設定される。
時刻t9において、スリップの発生が取得されず、スリップ判定フラグが「0」に設定されたことに応じて、加算スリップポイントの算出が終了され、その代わりに減算スリップポイントの算出が開始される。このとき、低車速(図22に示すように減算スリップポイントは大きい。)で低駆動力(図16に示すように減算スリップポイントは小さい。)の状態でスリップが発生していないため、減算スリップポイントの算出値は大きい。
減算スリップポイントの算出は、積算スリップポイントが0になる時刻t10まで継続され、時刻t9からt10までの間、算出された減算スリップポイントが積算されることで、積算スリップポイントが減少していく。なお、時刻t10では、積算スリップポイントが既に第1閾値未満であるものの、安定走行判定フラグが「0」であるため、スリップAWD要求フラグが「1」のままでAWD走行が維持される。
時刻t11おいて、積算スリップポイントが第1閾値未満であり、安定走行判定フラグが「1」であることに応じて、スリップAWD要求フラグが「0」に設定される。また、積算スリップポイントが第2閾値未満であることに応じて、RWD禁止要求フラグが「0」に設定される。これにより、FWD又はRWDへの切り替えが実行される。
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、スリップ取得部61は、第1スリップ取得部611と、第2スリップ取得部612と、第3スリップ取得部613と、を備える。
これにより、第1スリップ取得部611、第2スリップ取得部612及び第3スリップ取得部613を用い、所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得できる。このため、前輪Wf,Wf及び後輪Wr(RWr,LWr)を用いたFWD、RWD又はAWD等の様々な駆動状態において3つのスリップ取得部611,612,613を種々組み合わせることで、駆動状態によらずに超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
本実施形態では、スリップ取得部61は、車速が第1閾値未満のときに、第1スリップ取得部611及び第2スリップ取得部612に基づいて超過スリップが発生したことを取得し、車速が第1閾値以上のときに、第2スリップ取得部612及び第3スリップ取得部613に基づいて超過スリップが発生したことを取得する。
第1閾値未満の低車速領域は、第3スリップ取得部613によって前輪Wf,Wfの平均前輪車輪速VFr(ave)及び後輪Wr(RWr,LWr)の平均後輪車輪速VRr(ave)を用いて前輪Wf,Wf又は後輪Wr(RWr,LWr)に超過スリップが発生したことを取得すると、超過スリップの発生の有無の誤差が大きい。例えば、第3スリップ取得部613が式(2)を用いて超過スリップの発生の有無を判断すると、式(2)の左辺の分母のわずかな変化が左辺の値を大きく変動させる。このため、第1閾値未満の低車速領域にて第3スリップ取得部613を用いず、第1スリップ取得部611及び第2スリップ取得部612を用いて前輪Wf,Wf及び後輪Wr(RWr,LWr)それぞれの最大前輪車輪速VFr(max)及び最小後輪車輪速VRr(min)又はM−TCS作動フラグの状態に基づいて超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
第1閾値以上の中高車速領域は、第3スリップ取得部613によって前輪Wf,Wfの平均前輪車輪速VFr(ave)及び後輪Wr(RWr,LWr)の平均後輪車輪速VRr(ave)を用いて前輪Wf,Wf又は後輪Wr(RWr,LWr)に超過スリップが発生したことを取得すると、超過スリップの発生の有無が高精度に取得できる。また、第1閾値以上の中高車速領域は、第2スリップ取得部612によって超過スリップが発生したことを取得可能なRWD又はAWDとなる傾向がある。このため、第1閾値以上の中高車速領域にて第2スリップ取得部612及び第3スリップ取得部613を用い、M−TCS作動フラグの状態又は前輪Wf,Wfの平均前輪車輪速VFr(ave)及び後輪Wr(RWr,LWr)の平均後輪車輪速VRr(ave)に基づいて超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
本実施形態では、第3スリップ取得部613は、前輪Wf,Wfの平均前輪車輪速VFr(ave)と後輪Wr(RWr,LWr)の平均後輪車輪速VRr(ave)との比による式(2)に基づいて超過スリップが発生したことを取得する。
前後車輪速差は、前輪又は後輪のいずれかを基準として差を求めるため、基準の車輪が超過スリップすると判定不能となる。一方、式(2)を用いる前後車輪速比は、後輪Wr(RWr,LWr)を基準として比を求める場合であっても、算出値の絶対値を用いれば前輪Wf,Wfも基準となり得るため、たとえ基準の後輪Wr(RWr,LWr)に超過スリップが発生しても判定可能となる。
従来の前後車輪速差では、前後車輪速差の値に応じて許容範囲が異なるため、前後車輪速差の許容範囲の上限値及び下限値の両方を「前後車輪速差」の値に応じて変更して持ち替える必要が生じる。一方、式(2)を用いる前後車輪速比では、式(2)の閾値が大きく変化せず前後車輪速比の値によって許容範囲がほぼ異ならないため、前後車輪速比の許容範囲の上限値及び下限値の両方をほぼ一定値に規定できる。このため、前後車輪速比は、許容範囲の上限値及び下限値の両方を逐一持ち替える前後車輪速差よりも状態変化に追従して超過スリップの発生を判別でき、超過スリップの発生の有無が高精度に取得できる。
前後車輪速比では、式(2)として、路面μとの動摩擦特性(車輪から路面への伝達可能トルク)の相関を示すスリップ率の相関式を用いることができる。スリップ率の相関式は、駆動状態によらずに1つの式(2)を用いて超過スリップの発生を容易に判別でき、超過スリップの発生の有無が高精度に取得できる。
式(2)を用いる前後車輪速比は、例えば車両3が旋回動作中等で内外輪差が発生していても平均をとって算出でき、後輪Wr(RWr,LWr)の左右車輪速度比や車速に応じて超過スリップの発生を判別でき、超過スリップの発生の有無が高精度に取得できる。
このため、式(2)を用いる前輪Wf,Wfの平均前輪車輪速VFr(ave)及び後輪Wr(RWr,LWr)の平均後輪車輪速VRr(ave)との比に基づいて超過スリップが発生したことを取得することで、駆動状態によらずに超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
本実施形態では、駆動状態切替部64は、スリップ取得部61が取得した超過スリップの発生に基づいて、前輪単独駆動状態(FWD)から双方輪駆動状態(AWD)へ、又は、後輪単独駆動状態(RWD)から双方輪駆動状態(AWD)へ、切り替える。
駆動状態切替部64は、第1スリップ取得部611、第2スリップ取得部612及び第3スリップ取得部613を用い、超過スリップが発生したことを正確に取得し、より適切なタイミングで車両3の駆動状態を切り替えることができる。これにより、発生した超過スリップを短時間で解消することができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る車両駆動システムは、第1実施形態に係る車両駆動システム10と比べて、スリップ取得部61の構成のみが異なる。
図24は、本実施形態に係るスリップ取得部61のスリップ判定を示す概念図である。
図24に示すように、本実施形態に係るスリップ取得部61は、車速が車速の第1閾値未満のときに、第1スリップ取得部611及び第2スリップ取得部612に基づいて超過スリップが発生したことを取得し、車速が車速の第1閾値以上のときに、第1スリップ取得部611、第2スリップ取得部612及び第3スリップ取得部613に基づいて超過スリップが発生したことを取得する。
具体的には、スリップ取得部61は、車速が車速の第1閾値未満のときに、第1スリップ取得部611によって超過スリップが発生したことを取得するか、又は、第2スリップ取得部612によって超過スリップが発生したことを取得するかのいずれかの場合にスリップ判定フラグを「1」に設定する。
また、スリップ取得部61は、車速が車速の第1閾値以上のときに、第1スリップ取得部611によって超過スリップが発生したことを取得するか、第2スリップ取得部612によって超過スリップが発生したことを取得するか、又は、第3スリップ取得部613によって超過スリップが発生したことを取得するかのいずれかの場合にスリップ判定フラグを「1」に設定する。
図25は、本実施形態に係るスリップ判定処理の手順を示すフローチャートである。このスリップ判定処理は、第1実施形態の図10のステップS0で実行される。
ステップS01では、M−TCS作動フラグが「1」であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS02に進む。
ステップS02では、車速が車速の第1閾値よりも大きいか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS04に進む。一方、NOの場合にはステップS03に進む。
ステップS03では、式(1)を満たすか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS06に進んでスリップ判定フラグを「0」に設定して本処理を終了する。
ステップS04では、式(2)を満たすか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS0Aに進む。
ステップS0Aでは、式(1)を満たすか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS06に進んでスリップ判定フラグを「0」に設定して本処理を終了する。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が奏される。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る車両駆動システムは、第1実施形態に係る車両駆動システム10と比べて、スリップ取得部の構成のみが異なる。
図26は、本実施形態に係るスリップ取得部61のスリップ判定を示す概念図である。
Figure 0005826307
図26に示すように、本実施形態に係るスリップ取得部61は、第3スリップ取得部613が、車速が第1閾値以上第2閾値未満のときに、比に基づいた上記の式(3)を用いて前輪Wf,Wfにスリップが発生したことを取得し、車速が第2閾値以上のときに、比に基づいた式(2)を用いて前輪Wf,Wf又は後輪Wr(RWr,LWr)に超過スリップが発生したことを取得する。
ここで、式(3)は、路面μとの動摩擦特性(車輪から路面への伝達可能トルク)の相関を示すスリップ率の相関式を利用している。
車両が通常走行時に後輪単独駆動状態(RWD)になる傾向があることから、後輪回転状態量取得部67からの左右の平均後輪車輪速VRr(ave)は、式(3)の超過スリップ判定基準値(分母)となる。
式(3)の閾値は、検索値と車速に応じた車速補正値との和をとった値であり、式(3)からの値が算出されたときに前輪Wf,Wfに所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを判定可能となる。式(3)の閾値における検索値は、図8に示すような左右の後輪Wr(RWr,LWr)における理想状態の左右の後輪車輪速比に対する前後輪すべり比のテーブル特性として予め作成されて記憶された所定テーブルを、後輪回転状態量取得部67から算出される実際の左右の実後輪車輪速比を用いて検索して算出され、グリップ走行時(理想状態)の前後輪すべり比となる。車速補正値は、予め定められた車速が「0」に近いほど大きな値となる相関値である。
具体的には、スリップ取得部61は、車速が車速の第1閾値以上第2閾値未満のときに、第3スリップ取得部613によって超過スリップが発生したことを、式(3)を用いて取得してスリップ判定フラグを「1」に設定する。
また、スリップ取得部61は、車速が車速の第2閾値以上のときに、第3スリップ取得部613によって超過スリップが発生したことを、式(2)を用いて取得してスリップ判定フラグを「1」に設定する。
Figure 0005826307
また、第3スリップ取得部613は、車速が第1閾値以上第3閾値未満のときに、式(3)を用いる比に加えて、上記の式(4)を用いた前輪Wf,Wf及び後輪Wr(RWr,LWr)の車輪加速度に基づいて超過スリップが発生したことを取得する。
式(4)の閾値は、式(4)から算出される車輪加速度が算出されたときに前輪Wf,Wf又は後輪Wr(RWr,LWr)に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを判定可能となる値に設定される。
なお、第3スリップ取得部613が超過スリップの発生したことを取得するために、車速が第1閾値以上第3閾値未満のときに式(3)を用いる比に加えるパラメータは、上記の車輪加速度だけでなく、車輪回転角速度等の回転加速度状態量に基づいてもよい。
具体的には、スリップ取得部61は、車速が車速の第1閾値以上第3閾値未満のときに、第3スリップ取得部613によって超過スリップが発生したことを、式(3)を用いる比に加えて、式(4)を用いて取得してスリップ判定フラグを「1」に設定する。
また、スリップ取得部61は、車速が車速の第3閾値以上のときに、第3スリップ取得部613によって超過スリップが発生したことを取得する場合に、式(4)を用いない。
図27は、本実施形態に係るスリップ判定処理の手順を示すフローチャートである。このスリップ判定処理は、第1実施形態の図10のステップS0で実行される。
ステップS01では、M−TCS作動フラグが「1」であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS02に進む。
ステップS02では、車速が車速の第1閾値よりも大きいか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS0Bに進む。一方、NOの場合にはステップS03に進む。
ステップS03では、式(1)を満たすか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS06に進んでスリップ判定フラグを「0」に設定して本処理を終了する。
ステップS0Bでは、車速が車速の第2閾値よりも大きいか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS04に進む。一方、NOの場合にはステップS0Cに進む。
ステップS0Cでは、車速が車速の第3閾値よりも大きいか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS0Eに進む。一方、NOの場合にはステップS0Dに進む。
ステップS0Dでは、式(4)を満たすか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS0Eに進む。一方、NOの場合にはステップS06に進んでスリップ判定フラグを「0」に設定して本処理を終了する。
ステップS0Eでは、式(3)を満たすか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS06に進んでスリップ判定フラグを「0」に設定して本処理を終了する。
ステップS04では、式(2)を満たすか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS06に進んでスリップ判定フラグを「0」に設定して本処理を終了する。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が奏される。
本実施形態によれば、更に以下の効果が奏される。
本実施形態では、第3スリップ取得部613は、車速が第1閾値以上第2閾値未満のときに、比に基づいた式(3)を用いて前輪Wf,Wfにスリップが発生したことを取得し、車速が第2閾値以上のときに、比に基づいた式(2)を用いて前輪Wf,Wf又は後輪Wr(RWr,LWr)に超過スリップが発生したことを取得する。
第2閾値未満の低車速領域は、第3スリップ取得部613によって後輪Wr(RWr,LWr)に超過スリップが発生したことを取得すると、例えば駐車場でスピードブレーカーを乗り越えるために急発進する等の特殊条件下にて、後輪Wr(RWr,LWr)の超過スリップの発生を誤判定し易い。このため、第2閾値未満の低車速領域にて前輪Wf,Wfのみを対象として第3スリップ取得部613を用い、前輪Wf,Wfの超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
第2閾値以上の中高車速領域は、上記特殊条件下が存在せず、後輪Wr(RWr,LWr)の超過スリップの発生を誤判定しない。このため、第2閾値以上の中高車速領域にて前輪Wf,Wf及び後輪Wr(RWr,LWr)の両方を対象として第3スリップ取得部613を用い、前輪Wf,Wf及び後輪Wr(RWr,LWr)の超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
本実施形態では、第3スリップ取得部613は、車速が第3閾値未満のときに、比に基づいた式(2)又は式(3)を用いることに加えて、前輪Wf,Wf及び後輪Wr(RWr,LWr)の車輪加速度に基づいて超過スリップが発生したことを取得する。
第3閾値未満の低車速領域は、第3スリップ取得部613によって超過スリップが発生したことを取得すると、前輪Wf,Wfの平均前輪車輪速VFr(ave)と後輪Wr(RWr,LWr)の平均後輪車輪速VRr(ave)との比を算出する精度が低車速であるほど低下する。このため、第3スリップ取得部613は、第3閾値未満の低車速領域にて上記比に加えて、前輪Wf,Wf及び後輪Wr(RWr,LWr)の車輪加速度に基づいて超過スリップが発生したことを取得することで、前輪Wf,Wfの平均前輪車輪速VFr(ave))と後輪Wr(RWr,LWr)の平均後輪車輪速VRr(ave)との比並びに前輪Wf,Wf及び後輪Wr(RWr,LWr)の車輪加速度の2つのパラメータを用いることができる。これにより、第3スリップ取得部613を用い、超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
第3閾値以上の中高車速領域は、上記比を算出する精度が低下しない。このため、第3スリップ取得部613は、上記比のみを用い、前輪Wf,Wf及び後輪Wr(RWr,LWr)の超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係る車両駆動システムは、第1実施形態に係る車両駆動システム10と比べて、スリップ取得部61の構成のみが異なる。
図28は、本実施形態に係るスリップ取得部61のスリップ判定を示す概念図である。
即ち、第3スリップ取得部613は、車速が第1閾値以上第3閾値未満のときに、式(2)を用いる比に加えて、上記の式(4)を用いた前輪Wf,Wf及び後輪Wr(RWr,LWr)の車輪加速度に基づいて超過スリップが発生したことを取得する。
具体的には、スリップ取得部61は、車速が車速の第1閾値以上第3閾値未満のときに、第3スリップ取得部613によって超過スリップが発生したことを、式(2)を用いる比に加えて、式(4)を用いて取得してスリップ判定フラグを「1」に設定する。
また、スリップ取得部61は、車速が車速の第3閾値以上のときに、第3スリップ取得部613によって超過スリップが発生したことを、式(4)を用いず、式(2)のみを用いて取得してスリップ判定フラグを「1」に設定する。
図29は、本実施形態に係るスリップ判定処理の手順を示すフローチャートである。このスリップ判定処理は、第1実施形態の図10のステップS0で実行される。
ステップS01では、M−TCS作動フラグが「1」であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS02に進む。
ステップS02では、車速が車速の第1閾値よりも大きいか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS04に進む。一方、NOの場合にはステップS03に進む。
ステップS03では、式(1)を満たすか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS06に進んでスリップ判定フラグを「0」に設定して本処理を終了する。
ステップS04では、式(2)を満たすか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS0Fに進む。一方、NOの場合にはステップS06に進んでスリップ判定フラグを「0」に設定して本処理を終了する。
ステップS0Fでは、式(4)を満たすか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS06に進んでスリップ判定フラグを「0」に設定して本処理を終了する。
本実施形態によれば、第3実施形態と同様の効果が奏される。
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態に係る車両駆動システムは、第1実施形態に係る車両駆動システム10と比べて、スリップ取得部61の構成のみが異なる。
図30は、本実施形態に係るスリップ取得部61のスリップ判定を示す概念図である。
図30に示すように、スリップ取得部61は、駆動状態切替部64の切替状態によらず、第1スリップ取得部611、第2スリップ取得部612及び第3スリップ取得部613に基づいて超過スリップが発生したことを取得する。
具体的には、スリップ取得部61は、駆動状態切替部64の切替状態によらず、第1スリップ取得部611によって超過スリップが発生したことを取得するか、第2スリップ取得部612によって超過スリップが発生したことを取得するか、又は、第3スリップ取得部613によって超過スリップが発生したことを取得するかのいずれかの場合にスリップ判定フラグを「1」に設定する。
図31は、本実施形態に係るスリップ判定処理の手順を示すフローチャートである。このスリップ判定処理は、第1実施形態の図10のステップS0で実行される。
ステップS01では、M−TCS作動フラグが「1」であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS03に進む。
ステップS03では、式(1)を満たすか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS04に進む。
ステップS04では、式(2)を満たすか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS06に進んでスリップ判定フラグを「0」に設定して本処理を終了する。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が奏される。
本実施形態によれば、更に以下の効果が奏される。
本実施形態では、スリップ取得部61は、駆動状態切替部64の切替状態によらず、第1スリップ取得部611、第2スリップ取得部612及び第3スリップ取得部613に基づいて超過スリップが発生したことを取得する。
本来、FWDでは、後輪Wr(RWr,LWr)が従動輪であるため、後輪Wr(RWr,LWr)の超過スリップを取得する第2スリップ取得部612が不要となる。RWDでは、前輪Wf,Wfが従動輪であるため、前輪Wf,Wfの超過スリップを取得する第1スリップ取得部611が不要となる。一方、FWD及びRWDの両方にて、第3スリップ取得部613が前輪Wf,Wf又は後輪Wr(RWr,LWr)の超過スリップを取得する。これに対し、駆動状態によらず第1スリップ取得部611、第2スリップ取得部612及び第3スリップ取得部613に基づいて超過スリップが発生したことを取得することで、第1スリップ取得部611、第2スリップ取得部612及び第3スリップ取得部613を切り替える超過スリップの制御が不要となる。これにより、第1スリップ取得部611、第2スリップ取得部612及び第3スリップ取得部613を用い、超過スリップが発生したことを容易に取得できる。
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態に係る車両駆動システムは、第1実施形態に係る車両駆動システム10と比べて、スリップ取得部61の構成のみが異なる。
即ち、スリップ取得部61は、第2スリップ取得部612が、M−TCS作動フラグの状態に加えて、後輪Wr(RWr,LWr)の指令モータトルクに基づいて超過スリップが発生したことを取得する。このとき、第2スリップ取得部612は、後輪Wr(RWr,LWr)の指令モータトルクが力行駆動される正の値のときのみ、超過スリップが発生したことを取得する。
なお、第2スリップ取得部612が超過スリップの発生したことを取得するために、M−TCS作動フラグの状態に加えるパラメータは、後輪Wr(RWr,LWr)の指令モータトルクだけでなく、後輪Wr(RWr,LWr)のトルク指令量、トルク要求値等の駆動力相関量に基づいてもよい。
具体的には、第2スリップ取得部は、M−TCS作動フラグが「1」であり、且つ、後輪Wr(RWr,LWr)の指令モータトルクが正の値(0より大きい)場合に、超過スリップが発生したことを取得してM−TCS作動判定フラグを「1」に設定する。
図32は、本実施形態に係るスリップ判定処理の手順を示すフローチャートである。このスリップ判定処理は、第1実施形態の図10のステップS0で実行される。
ステップS0Gでは、M−TCS作動フラグが「1」であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS0Hに進む。一方、NOの場合にはステップS0Jに進んでM−TCS作動判定フラグを「0」に設定する。
ステップS0Hでは、後輪Wr(RWr,LWr)の指令モータトルクが0より大きいか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS0Iに進んでM−TCS作動判定フラグを「1」に設定する。一方、NOの場合にはステップS0Jに進んでM−TCS作動判定フラグを「0」に設定する。
ステップS0Kでは、M−TCS作動判定フラグが「1」であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS02に進む。
ステップS02では、車速が車速の第1閾値よりも大きいか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS04に進む。一方、NOの場合にはステップS03に進む。
ステップS03では、式(1)を満たすか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS06に進んでスリップ判定フラグを「0」に設定して本処理を終了する。
ステップS04では、式(2)を満たすか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS05に進んでスリップ判定フラグを「1」に設定して本処理を終了する。一方、NOの場合にはステップS06に進んでスリップ判定フラグを「0」に設定して本処理を終了する。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が奏される。
本実施形態によれば、更に以下の効果が奏される。
本実施形態では、第2スリップ取得部612は、M−TCS作動フラグの状態に加えて、後輪Wr(RWr,LWr)の指令モータトルクに基づいて超過スリップが発生したことを取得する。
第2スリップ取得部612がM−TCS作動フラグの状態に加えて、後輪Wr(RWr,LWr)の指令モータトルクに基づいて超過スリップが発生したことを取得することで、M−TCS作動フラグの状態及び後輪Wr(RWr,LWr)の指令モータトルクの2つのパラメータを用いることができる。これにより、第2スリップ取得部612を用い、超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
本実施形態では、第2スリップ取得部612は、後輪Wr(RWr,LWr)の指令モータトルクが正の値のときのみ、超過スリップが発生したことを取得する。
旋回外輪の指令モータトルクが正の値であり、旋回内輪の指令モータトルクが負の値であるような左右駆動力配分状態の場合には、旋回内輪の路面に対する荷重が弱まることも相まって、第2スリップ取得部612は、旋回内輪の超過スリップの発生を誤判定し易い。このため、第2スリップ取得部612がM−TCS作動フラグの状態に加えて、後輪Wr(RWr,LWr)の指令モータトルクに基づいて超過スリップが発生したことを取得する場合には、後輪Wr(RWr,LWr)の指令モータトルクが正の値のときに限定して加味する。これにより、第2スリップ取得部612を用い、超過スリップが発生したことを正確に取得できる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
本実施形態では、駆動状態切替部64は、スリップ取得部61が取得した超過スリップの発生に基づいて、前輪単独駆動状態(FWD)から双方輪駆動状態(AWD)へ、又は、後輪単独駆動状態(RWD)から双方輪駆動状態(AWD)へ、切り替えた。しかし、これに限られず、後輪単独駆動状態(RWD)から前輪単独駆動状態(FWD)へ、切り替えてもよい。
これによると、駆動状態切替部64は、第1スリップ取得部611、第2スリップ取得部612及び第3スリップ取得部613を用い、超過スリップが発生したことを正確に取得し、より適切なタイミングで車両3の駆動状態を切り替えることができる。これにより、発生した超過スリップを短時間で解消することができる。
例えば、上記実施形態に係る前後配分が設定された双方輪駆動状態(AWD)は、2WD(前輪単独駆動状態(FWD),後輪単独駆動状態(RWD)又は他の双方輪駆動状態(AWD)から切り替えられる。
上記実施形態では、前輪Wf,Wfの駆動源は、第1駆動装置1として、内燃機関(ENG)4と電動機5とを備えていた。しかし、第1駆動装置1として、電動機5のみであってもよい。
また、上記実施形態では、後輪Wr(RWr,LWr)の駆動源を電動機2A,2Bのみとしたが、エンジン駆動であってもよい。
また、上記実施形態では、後輪Wr(RWr,LWr)側の第2駆動装置2を2つの電動機2A,2Bを具備する2モータ方式としたが、1つの電動機と差動装置を具備する1モータ方式であってもよい。
1…第1駆動装置(前輪駆動装置)
2…第2駆動装置(後輪駆動装置)
3…車両
6…ECU(制御装置)
10…車両駆動システム
61…スリップ取得部(スリップ取得手段)
64…駆動状態切替部(駆動状態切替手段)
66…前輪回転状態量取得部(前輪回転状態量取得手段)
67…後輪回転状態量取得部(後輪回転状態量取得手段)
611…第1スリップ取得部(第1スリップ取得手段)
612…第2スリップ取得部(第2スリップ取得手段)
613…第3スリップ取得部(第3スリップ取得手段)
96…車速センサ(車速取得部)

Claims (8)

  1. 車両の前輪を駆動する前輪駆動装置と、
    前記車両の後輪を前記前輪とは別個独立に駆動する後輪駆動装置と、
    前記前輪駆動装置及び前記後輪駆動装置を制御し、前記前輪及び前記後輪の駆動状態を制御する制御装置と、を備える車両駆動システムであって、
    前記制御装置は、前記前輪のみで前記車両を駆動する前輪単独駆動状態と、前記後輪のみで前記車両を駆動する後輪単独駆動状態と、前記前輪と前記後輪との双方で前記車両を駆動する前後輪駆動状態と、を切り替える駆動状態切替手段を備え、
    前記車両駆動システムは、
    前記前輪の回転状態量を取得する前輪回転状態量取得手段と、
    前記後輪の回転状態量を取得する後輪回転状態量取得手段と、
    前記前輪の回転状態量及び前記後輪の回転状態量の少なくとも一方に基づいて、前記前輪又は前記後輪に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得するスリップ取得手段と、
    前記車両の速度である車速を取得する車速取得手段と、
    を備え、
    前記スリップ取得手段は、
    前記前輪の回転状態量に基づいて、前記前輪に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得する第1スリップ取得手段と、
    前記後輪の回転状態量に基づいて、前記後輪に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得する第2スリップ取得手段と、
    前記前輪の回転状態量及び前記後輪の回転状態量に基づいて、前記前輪又は前記後輪に所定以上のスリップである超過スリップが発生したことを取得する第3スリップ取得手段と、を備え、且つ、
    前記車速が第1閾値未満のときに、前記第1及び第2スリップ取得手段に基づいて超過スリップが発生したことを取得し、前記車速が前記第1閾値以上のときに、前記第2及び第3スリップ取得手段に基づいて、又は、前記第1、第2及び第3スリップ取得手段に基づいて超過スリップが発生したことを取得することを特徴とする車両駆動システム。
  2. 前記第3スリップ取得手段は、前記前輪の回転状態量と前記後輪の回転状態量との比に基づいて超過スリップが発生したことを取得することを特徴とする請求項1に記載の車両駆動システム。
  3. 記第3スリップ取得手段は、前記車速が第2閾値未満のときに、前記比に基づいて前記前輪に超過スリップが発生したことを取得し、前記車速が前記第2閾値以上のときに、前記比に基づいて前記前輪又は前記後輪に超過スリップが発生したことを取得することを特徴とする請求項に記載の車両駆動システム。
  4. 記第3スリップ取得手段は、前記車速が第3閾値未満のときに、前記比に加えて、前記前輪の回転加速度状態量又は前記後輪の回転加速度状態量に基づいて超過スリップが発生したことを取得することを特徴とする請求項又はに記載の車両駆動システム。
  5. 前記スリップ取得手段は、前記駆動状態切替手段の切替状態によらず、前記第1、第2及び第3スリップ取得手段に基づいて超過スリップが発生したことを取得することを特徴とする請求項1からいずれかに記載の車両駆動システム。
  6. 前記第2スリップ取得手段は、前記後輪の回転状態量に加えて、前記後輪の駆動力相関量に基づいて超過スリップが発生したことを取得することを特徴とする請求項1からいずれかに記載の車両駆動システム。
  7. 前記第2スリップ取得手段は、前記後輪の駆動力相関量が正の値のときのみ、超過スリップが発生したことを取得することを特徴とする請求項に記載の車両駆動システム。
  8. 前記駆動状態切替手段は、前記スリップ取得手段が取得した超過スリップの発生に基づいて、前記前輪単独駆動状態から前記前後輪駆動状態へ、前記後輪単独駆動状態から前記前後輪駆動状態へ、又は、前記後輪単独駆動状態から前記前輪単独駆動状態へ、切り替えることを特徴とする請求項1からいずれかに記載の車両駆動システム。
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