JP5806926B2 - マクロアゾ化合物、その前駆体および製造方法 - Google Patents

マクロアゾ化合物、その前駆体および製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、1分子中に環状高分子鎖を有する新規なマクロアゾ化合物、その前駆体および製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、重合開始剤として用いることにより、移動架橋を有するネットワーク高分子を合成し得る新規なマクロアゾ化合物、その前駆体および製造方法に関する。
架橋高分子は、通常、化学結合によって高分子鎖同士が互いを拘束し合い、3次元的なネットワーク構造を形成している。このような3次元構造を形成するための従来の架橋は、化学的架橋と物理的架橋に大別される。
化学的架橋は、共有結合により高分子鎖を結びつける架橋であり、通常、重合系に添加された多官能性化合物が架橋剤として作用することによりネットワーク構造が形成される。一方、物理的架橋は、共有結合よりも弱い可逆的な相互作用、例えば疎水相互作用、イオン相互作用、水素結合または配位相互作用により高分子鎖を結びつける架橋であり、直鎖状高分子鎖の局所的な規則構造、例えば、結晶構造やヘリックス(らせん)構造または高分子鎖と溶媒との相互作用によってネットワーク構造が形成される。
近年、従来の化学的架橋や物理的架橋とは異なる新しい範疇に属する、移動架橋、機械的架橋またはトポリジカルな架橋と呼ばれる架橋構造が提案された。この架橋では、環状分子に幹高分子が糸通しされて機械的な連結が形成され、高分子鎖同士が拘束されることにより、高分子鎖間に共有結合をはじめとする化学結合が存在しないにもかかわらず、3次元的なネットワーク構造が形成される。
このような移動架橋を、ポリマーに導入することにより、従来にはない物性の発現が期待できることから、移動架橋を有するネットワーク高分子を与えるための非結合型架橋剤が開発されている。
非結合型架橋剤を用いた架橋反応は、形成される架橋構造に応じて、例えば、次のようなタイプに分類される。
タイプA:芳香族ジアミンとの重縮合において、クラウンエーテル部位を有するジカルボン酸を非結合型架橋剤として機能させて、芳香族ジアミンのポリマー鎖セグメントがクラウンエーテル部位を糸通ししたネットワーク構造を形成する
タイプB:ポリロタキサンの環状部位同士を、塩化シアヌルのような多官能性試薬で結合させて、ロタキサン鎖同士が8の字架橋点により拘束されたネットワーク構造を形成する
タイプC:大環状部位と重合性官能基を有する環状マクロモノマーを非結合型架橋剤として機能させて、重合成長鎖が環状部位を糸通ししたネットワーク構造を形成する
これらの中でも、タイプCは、環状マクロモノマーを合成すれば、比較的多くのモノマーとの応用が期待できる。
タイプCの非結合型架橋剤として、糸通し可能な大きさの内孔を有する環状ポリエチレンオキシドにメタアクリルアミド部位のような重合性官能基を導入した環状マクロモノマー(非特許文献1参照)および重合性官能基を導入した環状ポリテトラヒドロフラン(非特許文献2参照)などが提案されている。
Anat Zada、外2名、「Monomers for non-bond crosslinking of vinyl polymers II. Cyclic octaethylene glycol 5-methacrylamidoisophthalete」、European Polymer Journal、ELSEVIER、2000年、第36巻、p.351-357 Hideaki Oike、外2名、「A Cyclic Macromonomer Designed for a Novel Polymer Network Architecture Having Both Covalent and Physical Linkages」、Macromolecules、American Chemical Society、2001年、第34巻、p.6229-6234
本発明は、1分子中に環状高分子鎖を有する新規なマクロアゾ化合物、その前駆体および製造方法、さらに詳しくは、重合開始剤として用いることにより、容易にかつ効率よく移動架橋を有するネットワーク高分子を合成し得る新規なマクロアゾ化合物、その前駆体および製造方法を提供することを課題とする。
一般的に重合開始剤の切片は高分子鎖の末端に結合することが知られている。
そこで、非特許文献1および非特許文献2に記載されているような環状マクロモノマーを用いなくても、環状高分子鎖を有するマクロアゾ化合物を重合開始剤として用いることにより、高分子末端に効率的に環状高分子鎖を付与させることができると同時に、重合過程で効率的に環状構造の糸通しが起こり、移動架橋を有するネットワーク高分子を合成できることが期待できる。
本発明の発明者らは、移動架橋を有するネットワーク構造を形成するための糸通しが効率よく起こるためには、環状ポリマー部位が反応系で大きな内孔を形成することが重要であると考え、本発明の新規なマクロアゾ化合物を見出し、本発明を完成するに到った。
かくして、本発明によれば、一般式(I):
(式中、XはOまたはNHであり、R1およびR2は同一または異なってCNまたは炭素数1〜4のアルキル基であり、R3は炭素数1〜3のアルキレン基または1−イミノ−2−アザブチレン基であり、Mは炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは5〜100の整数である)
で表わされ、数平均分子量Mnが1,500〜4,000でありかつ重量平均分子量Mwが1,800〜5,000であることを特徴とするマクロアゾ化合物が提供される。
また、本発明によれば、一般式(II):
(式中、Mおよびnは一般式(I)と同義であり、R4はOHまたはNH2である)
で表わされることを特徴とする上記のマクロアゾ化合物の前駆体が提供される。
さらに、本発明によれば、
一般式(II):
(式中、Mおよびnは下記一般式(I)と同義であり、R4はOHまたはNH2である)
で表わされる化合物と、一般式(III):
(式中、R1、R2およびR3は下記一般式(I)と同義である)
で表わされる化合物とを反応させて、一般式(I):
(式中、XはOまたはNHであり、R1およびR2は同一または異なってCNまたは炭素数1〜4のアルキル基であり、R3は炭素数1〜3のアルキレン基または1−イミノ−2−アザブチレン基であり、Mは炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは5〜100の整数である)
で表わされ、数平均分子量Mnが1,500〜4,000でありかつ重量平均分子量Mwが1,800〜5,000である化合物を得る工程を含むことを特徴とするマクロアゾ化合物の製造方法が提供される。
本発明によれば、1分子中に環状高分子鎖を有する新規なマクロアゾ化合物、その前駆体および製造方法、さらに詳しくは、重合開始剤として用いることにより、移動架橋を有するネットワーク高分子を合成し得る新規なマクロアゾ化合物、その前駆体および製造方法を提供することができる。
実施例1の化合物(2)の1H−NMRスペクトルである。 実施例1の化合物(2)のIRスペクトルである。 実施例1の化合物(3)の1H−NMRスペクトルである。 実施例1の化合物(3)のIRスペクトルである。 実施例1の化合物(5)の1H−NMRスペクトルである。 実施例1の化合物(5)のMSスペクトルである。 実施例1の化合物(II)の1H−NMRスペクトルである。 実施例1の化合物(II)のMSスペクトルである。 実施例1の化合物(I)の1H−NMRスペクトルである。 実施例1の化合物(I)のIRスペクトルである。 実施例1の化合物(I)のGPCデータである。
本発明のマクロアゾ化合物は、一般式(I):
(式中、XはOまたはNHであり、R1およびR2は同一または異なってCNまたは炭素数1〜4のアルキル基であり、R3は炭素数1〜3のアルキレン基または1−イミノ−2−アザブチレン基であり、Mは炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは5〜100の整数である)
で表わされることを特徴とする。
一般式(I)における置換基について説明する。
なお、以下の説明において、例えば、一般式(A)で表わされる化合物を「化合物(A)」とも表記する。
置換基Xは、OまたはNHであり、合成の容易性の点でOが好ましい。
置換基R1およびR2は、同一または異なって、CNまたは炭素数1〜4のアルキル基であり、そのアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチルおよびsec−ブチルなどの直鎖または分岐鎖のアルキル基が挙げられる。これらの中でも、合成の容易性の点でメチル基およびCNが特に好ましい。
置換基R3は、炭素数1〜3のアルキレン基または1−イミノ−2−アザブチレン基(−CH2−CH2−NH−C(=NH)−)であり、そのアルキレン基としては、メチレン、エチレン、トリメチレンなどが挙げられる。これらの中でも、合成の容易性の点でエチレン基が特に好ましい。
置換基Mは、炭素数2〜4のアルキレン基であり、そのアルキレン基としては、エチレン、トリメチレン、テトラメチレンなどが挙げられ、これらの中でも、合成の容易性の点でエチレン基が特に好ましい。
指数nは、化合物(I)の分子量に特に関係する数値であり、5〜100の整数であり、合成の容易性の点で5〜50の整数であるのが好ましく、特に好ましくは10〜35の整数である。
本発明のマクロアゾ化合物の分子量は、通常、数平均分子量Mnで500〜50,000、好ましくは1,500〜4,000であり、重量平均分子量Mwで600〜60,000、好ましくは1,800〜5,000である。
本発明のマクロアゾ化合物の具体例としては、4,4'-アゾビス((3,5-ビス(シクロポリエチレングリコールカルバモイル)フェニル) 4-シアノペンタン酸)、4,4'-アゾビス((3,5-ビス(シクロポリエチレングリコールカルバモイル)フェニル) N-(2-カルボエチル)2-メチルプロピオン-アミジン)が挙げられる。
本発明のマクロアゾ化合物は、例えば、以下に示すように適当な溶媒中、必要であれば塩基性触媒の存在下、縮合剤を用いて、特定のアゾジカルボン酸と特定の環状高分子とを反応させることにより得ることができるが、本発明はこれにより限定されるものではない。
(第1工程)
一般式(1):
(式中、R4はOHまたはNH2である)
で表わされる化合物と無水酢酸とを反応させて、一般式(2):
(式中、R5は(CH3CO)Oまたは(CH3CO)NHである)
で表わされる化合物を得る。
具体的には、化合物(1)と無水酢酸とを加熱還流して反応させ、得られた反応混合物を例えば氷水に注いで冷却して固体を析出させ、得られた固体を例えば蒸留水/エタノール=1/1(v/v)から再結晶することにより、化合物(2)を得る。
化合物(1)は、具体的には、5-ヒドロキシイソフタル酸および5-アミノイソフタル酸であり、化合物(2)は、具体的には、5-アセトキシイソフタル酸および5-アセトアミドイソフタル酸である。
化合物(1)と無水酢酸との使用割合は、モル比で1:3〜5である。
無水酢酸が化合物(1)1モルに対して3モル未満である場合、目的化合物の収率が低下するおそれがある。一方、無水酢酸が化合物(1)1モルに対して5モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
反応条件は、原料の種類や量などにより適宜設定すればよい。
反応温度は、通常、20〜150℃、好ましくは100〜140℃である。
反応温度が20℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が150℃を超える場合、目的化合物の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。
また、反応時間は、通常、5〜24時間、好ましくは10〜15時間である。
反応時間が5時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が24時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。
また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中および窒素雰囲気が挙げられる。
(第2工程)
第1工程で得られた一般式(2)で表わされる化合物と2-メルカプトチアゾリンとを反応させて、一般式(3):
(式中、R5は式(2)と同義である)
で表わされる化合物を得る。
具体的には、第1工程で得られた化合物(2)と塩素化剤としての塩化チオニルとを溶媒Aおよびジメチルホルムアミドの存在下、加熱還流を行い、溶媒Aを留去し、2-メルカプトチアゾリンおよび溶媒Bを加え、さらにトリエチルアミンを添加し反応させる。次いで、得られた反応混合物を公知の方法により洗浄・乾燥・溶媒中で晶析させることにより、化合物(3)を得る。
上記のように、この反応においては、塩化チオニル、オキシ塩化リンなどの塩素化剤の存在下で、化合物(2)と2-メルカプトチアゾリンとを反応させるのが好ましい。
化合物(2)とトリエチルアミンとの使用割合は、モル比で1:2〜4である。
トリエチルアミンが化合物(2)1モルに対して2モル未満である場合、目的化合物の収率が低下するおそれがある。一方、トリエチルアミンが化合物(2)1モルに対して4モルを越える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
化合物(3)は、具体的には、5-(アセトキシ)-1,3-フェニレン)ビス((2-チオキサチアゾリン-3-イル)メタインおよび5-(ジアセチルアミノ)-1,3-フェニレン)ビス((2-チオキサチアゾリン-3-イル)メタインである。
化合物(2)と塩化チオニルとの使用割合は、モル比で1:3〜5である。
塩化チオニルが化合物(2)1モルに対して3モル未満である場合、目的化合物の収率が低下するおそれがある。一方、塩化チオニルが化合物(2)1モルに対して5モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
溶媒Aとしては、原料化合物および反応化合物に悪影響を与えず、留去し易いものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
その使用量は、原料化合物に対して5〜50倍容量程度である。
反応条件は、原料の種類や量などにより適宜設定すればよい。
反応温度は、通常、20〜100℃、好ましくは60〜80℃である。
反応温度が20℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が100℃を超える場合、目的化合物の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。
また、反応時間は、通常、1〜10時間、好ましくは3〜5時間である。
反応時間が1時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が10時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。
また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中および窒素雰囲気が挙げられる。
化合物(2)と2-メルカプトチアゾリンとの使用割合は、モル比で1:2〜2.5である。
2-メルカプトチアゾリンが化合物(2)1モルに対して2モル未満である場合、目的化合物の収率が低下するおそれがある。一方、2-メルカプトチアゾリンが化合物(2)1モルに対して2.5モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
溶媒Bとしては、原料化合物および反応化合物に悪影響を与えず、留去し易いものであれば特に限定されず、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、酢酸エチルなどが挙げられる。
その使用量は、原料化合物に対して5〜100倍容量程度である。
反応条件は、原料の種類や量などにより適宜設定すればよい。
反応温度は、通常、5〜50℃、好ましくは10〜30℃である。
反応温度が5℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が50℃を超える場合、目的化合物の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。
また、反応時間は、通常、1〜30時間、好ましくは5〜20時間である。
反応時間が1時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が30時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。
また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中および窒素雰囲気が挙げられる。
(第3工程)
第2工程で得られた一般式(3)で表わされる化合物と、一般式(4):
(式中、Mおよびnは一般式(I)と同義である)
で表わされる化合物とを反応させて、一般式(5):
(式中、Mおよびnは一般式(I)と同義であり、R5は式(2)と同義である)
で表わされる化合物を得る。
化合物(4)のアミノ基末端ポリアルキレングリコールのアルキレンとしては、エチレン、プロピレンおよびブチレンが挙げられる。
化合物(4)としては、アミノエチル末端ポリオキシエチレングリコール、アミノエチル末端ポリオキシトリメチレングリコール、アミノエチル末端ポリオキシテトラメチレングリコールが挙げられる。
化合物(4)は、入手可能な化合物の製法、例えば、M. Yuan、外1名、「Synthesis and Characterization of Poly(ethylene glycol)-block-poly(amino acid) Copolymer」、European Polymer Journal、Elsevier、2001年、第37巻、p.1907-1912、またはK .Kugo、外3名、「Synthesis and Conformation of A-B-A Tri-Block Copolymers with Hydrophobic Poly(g-benzyl L-glutamate) and Hydrophilic Poly(ethylene oxide)」、Polymer Journal、日本高分子学会、1987年、第19巻、p.375-381に記載されている製法に準じて製造することができ、市販品を用いることもできる。
具体的には、第2工程で得られた化合物(3)と化合物(4)とを溶媒の存在下で反応させる。次いで、得られた反応混合物を公知の方法により洗浄・乾燥・精製させることにより、化合物(5)を得る。この反応では両者を溶媒に低濃度で希釈(高希釈)し、例えば両者の希釈液を、時間を掛けて滴下して徐々に反応させ、その後撹拌下で反応させるのが好ましい。
溶媒としては、原料化合物および反応化合物に悪影響を与えず、留去し易いものであれば特に限定されず、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化溶媒などが挙げられる。
希釈倍率は、化合物(3)および化合物(4)の合計量の500〜1000倍容量程度である。
化合物(3)と化合物(4)との使用割合は、モル比で1:0.95〜1.05である。
化合物(4)が化合物(3)1モルに対して0.95モル未満である場合、目的化合物の収率が低下するおそれがある。一方、化合物(4)が化合物(3)1モルに対して1.05モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
反応条件は、原料の種類や量などにより適宜設定すればよい。
反応温度は、通常、10〜30℃、好ましくは20〜25℃である。
反応温度が10℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が30℃を超える場合、目的化合物の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。
また、反応時間は、通常、12〜72時間、好ましくは24〜48時間である。
反応時間が12時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が72時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。
また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中および窒素雰囲気が挙げられる。
(第4工程)
第3工程で得られた一般式(5)で表わされる化合物とアルカリとを反応させて、一般式(II):
(式中、Mおよびnは一般式(I)と同義であり、R4は式(1)と同義である)
で表わされる化合物を得る。
具体的には、第3工程で得られた化合物(5)とアルカリとを溶媒の存在下で加熱還流して反応させ、その後公知の方法で洗浄・乾燥させて、化合物(II)を得る。
アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化リチウムなどが挙げられる。
アルカリの使用量は、化合物(5)およびアルカリの種類により異なり、化学量論上、化合物(5)中の(CH3CO)基の1当量に対してアルカリ中の水酸基が1当量となるような量であればよく、好ましくは2〜25当量である。
アルカリ中の水酸基が化合物(5)中の(CH3CO)基の1当量に対して1当量未満である場合、目的化合物の収率が低下するおそれがある。一方、アルカリ中の水酸基が化合物(5)中の(CH3CO)基に対して20当量を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
反応条件は、原料の種類や量などにより適宜設定すればよい。
反応温度は、通常、40〜120℃、好ましくは60〜100℃である。
反応温度が40℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が120℃を超える場合、目的化合物の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。
また、反応時間は、通常、5〜48時間、好ましくは12〜24時間である。
反応時間が5時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が48時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。
また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中および窒素雰囲気が挙げられる。
(第5工程)
第4工程で得られた一般式(II)で表わされる化合物と、一般式(III):
(式中、R1、R2およびR3は一般式(I)と同義である)
で表わされる化合物とを反応させて、一般式(I)で表わされる化合物を得る。
具体的には、化合物(II)と化合物(III)とを、溶媒、必要に応じて縮合剤および縮合助剤の存在下で反応させ、公知の方法で洗浄・乾燥することにより、化合物(I)を得る。
化合物(III)は、入手可能な化合物の製法、例えば、B. V. Tamhankar、外4名、「Oxidation of alkylcyanohydrazines to azo-bis nitriles using oxone-potassium bromide in aqueous medium」、Synthetic Communications、Marcel Dekker、2002年、第32巻、p.3643-3646に記載されている製法に準じて製造することができ、市販品を用いることもできる。
化合物(III)の具体例としては、3,3'-アゾビス(3-シアノブタン酸)、3,3'-アゾビス(3-メチルブタン酸)、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、4,4'-アゾビス(4-メチルペンタン酸)、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピンアミジン}水和物などが挙げられる。
化合物(II)と化合物(III)との使用割合は、モル比で1:0.45〜0.55である。
化合物(III)が化合物(II)1モルに対して0.45モル未満である場合、目的化合物の収率が低下するおそれがある。一方、化合物(III)が化合物(II)1モルに対して0.55モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
第5工程において、必要に応じて縮合剤および縮合助剤を加えてもよい。
縮合剤としては、特に限定されず従来エステル化反応に用いられているものを用いることができる。具体的には、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドなどのカルボジイミド類;2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホニルクロリドなどのアリールスルホニルクロリド類;2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルイミダゾリド、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルトリアゾリドなどのアリールスルホンアミド類;アゾジカルボン酸エステル;ハロゲン化有機スルホニル;ジフェニルホスホリルアジド、ジエトキシホスホニルクロリド、ジエトキシホスホニルアジド、無水プロピルホスホン酸、ジフェニルホスホニルクロリド;マグネシウムジメトキシド、マグネシウムジエトキシド、アルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリ-t-ブトキシドなどの金属アルコキシド;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属酸化物;リチウムアミドなどのアルカリ金属アミド;炭酸カリウム;塩化亜鉛、三塩化アルミニウム、オキシ塩化リン、テトラメチルアンモニウムクロリド、濃硫酸、五酸価ニリン、ポリリン酸、無水酢酸、カルボニルジイミダゾール、p-トルエンスルホニルクロリド、塩基性のイオン交換樹脂などが挙げられる。これらの中でも、入手し易さや合成の容易性の点で1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドの塩酸塩が特に好ましい。
また、縮合助剤としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ベンジルアミン、ベンジルメチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ジメチルアニリン、トリブチルアミン、4-ピペリジノピリジンなどの有機塩基が挙げられる。これらの中でも、入手し易さや合成の容易性の点で4-ジメチルアミノピリジンが特に好ましい。
縮合剤の使用量は、化合物(II)1モルに対して1〜4モル、より好ましくは1.5〜2モルである。
縮合剤の使用量が化合物(II)1モルに対して1モル未満である場合、目的化合物の収率が低下するおそれがある。一方、縮合剤の使用量が化合物(II)1モルに対して4モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
縮合助剤の使用量は、化合物(II)1モルに対して0.01〜0.5モル、より好ましくは0.05〜0.2モルである。
縮合助剤の使用量が化合物(II)1モルに対して0.01モル未満である場合、目的化合物の収率が低下するおそれがある。一方、縮合助剤の使用量が化合物(II)1モルに対して0.5モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
反応条件は、原料の種類や量などにより適宜設定すればよい。
反応温度は、通常、5〜30℃、好ましくは20〜25℃である。
反応温度が5℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が30℃を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
また、反応時間は、通常、12〜72時間、好ましくは24〜48時間である。
反応時間が12時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が72時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。
また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中および窒素雰囲気が挙げられる。
本発明を以下の実施例および参考例によりさらに具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
実施例の各工程において得られた化合物を、以下の機器および条件で分析して同定し、またそれらの物性を評価した。
1H−NMR)
日本電子製EX−270型超伝導核磁気共鳴吸収装置を使用した。溶媒としては、重クロロホルムまたは重ジメチルスルホキシドを用いた。基準物質としては、テトラメチルシランを用いて、室温で測定した。
(MALDI−TOF MS)
島津製作所製KOMPACT−2型マトリックス支援レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置を用いた。マトリックス及びイオン化助剤として、それぞれ、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸及びヨウ化ナトリウムを用いた。
試料溶液は、試料1mgをテトラヒドロフラン(THF)1mLに溶解させて調製した。マトリックス溶液はα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸17mgを1mLのTHFに溶解させて調製した。その後、マトリックス溶液と試料溶液を1:1の比で混合した。試料プレートに、0.1mmol/mLのヨウ化ナトリウム溶液0.5Lをスポットし、室温で数分間乾燥させてから、その上に、0.5〜1.0μLの試料/マトリックス混合溶液をスポットし、乾燥空気で溶媒を揮発させてから測定した。
(IR)
日本分光製FT/IR4100型フーリエ変換赤外分光光度計を用いた。
試料を臭化カリウムとよく混合し、加圧器で直径5mm、厚み0.1〜0.2mm程度の円板型ペレットに成型してから測定した。
(元素分析)
ヤナコ製CHNコーダMT−5型を使用した。
1回の測定につき、およそ2.5mgの試料を用いて、測定を最低2回行った。元素含有量は得られた値の平均値として求めた。
(ゲル透過クロマトグラフィー:GPC)
日本分光製PU−2080ポンプ及び東ソー製紫外・可視検出器UV−8020を用いた。カラムとしては、東ソー製TSKゲルG2500H/G3000Hを用いた。溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、1.0mL/minの流量で測定した。
(融点)
ヤナコ製MP−S3型融点測定装置を使用した。
(実施例1)
(第1工程)5-アセトキシイソフタル酸の合成
マグネチックスターラーを備え付けた100mLのナスフラスコに、化合物(1)としての5-ヒドロキシイソフタル酸(10.0g、55mmol)および無水酢酸(22.0g、215mmol)を加え、空気中、大気圧下、温度140℃で12時間加熱還流を行った。
その後、反応混合物を氷水に注いで冷却させ、析出した固体をろ過により集めた。得られた固体を蒸留水/エタノール=1/1(v/v)から再結晶させて、白色固体9.3gを得た。
下記の分析により、得られた白色固体が、化合物(2)としての5-アセトキシイソフタル酸であることを確認した。収率は76%であった。
1H-NMR (DMSO-d6) δ ppm(図1参照)
8.35 (s, 1H), 7.90 (s, 2H), 2.32 (s, 3H)
IR (KBr) cm-1(図2参照)
3452, 1760, 1687, 1292, 1207
元素分析
分析値: C 53.47%, H 3.56%
C8H8O6としての計算値:C 53.38%, H 3.60%
(第2工程)(5-(アセトキシ)-1,3-フェニレン)ビス((2-チオキサチアゾリン-3-イル)メタイン)の合成
ジムロート冷却器およびマグネチックスターラーを備え付けた200mLのナスフラスコに、第1工程で得られた化合物(2)としての5-アセトキシイソフタル酸(2.2g、10mmol)、塩素化剤としての塩化チオニル(3.6g、30mmol)、溶媒としてのベンゼン(40mL)および活性化剤としてのジメチルホルムアミド(DMF、1mL)を加え、空気中、大気圧下、温度80℃で3時間加熱還流を行った。放冷後、減圧下で溶媒を留去し、2-メルカプトチアゾリン(2.4g、20mmol)および溶媒としてのテトラヒドロフラン(THF、70mL)を加え、さらに塩基としてのトリエチルアミン(4.1mL、30mmol)を滴下し、空気中、大気圧下、温度25℃で20時間撹拌した。
その後、反応混合物をジクロロメタンで約5倍容量に希釈し、5%水酸化ナトリウム水溶液および蒸留水で洗浄した。次いで、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。残留物を約5mLのジクロロメタンに溶解させ、イソプロピルエーテルを添加することで晶析させ、黄色固体2.6gを得た。
下記の分析により、得られた黄色固体が、化合物(3)としての5-(アセトキシ)-1,3-フェニレン)ビス((2-チオキサチアゾリン-3-イル)メタインであることを確認した。収率は61%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ ppm(図3参照)
7.85 (s, 1H), 7.57 (s, 2H), 4.53 (t, J = 7.0 Hz, 4H), 3.49 (t, J = 7.0 Hz, 4H), 2.31 (s, 3H)
IR (KBr) cm-1(図4参照)
3469, 1722, 1707, 1282, 1209
元素分析
分析値: C 44.87%, H 3.36%, N 6.39%
C16H14N2O4S4としての計算値:C 45.06%, H 3.31%, N 6.57%
(第3工程)環状ポリエチレングリコールの合成
メカニカルスターラーおよびメタロールポンプを備え付けた3000mLの三つ口フラスコに、第2工程で得られた化合物(3)としての(5-(アセトキシ)-1,3-フェニレン)ビス((2-チオキサチアゾリン-3-イル)メタイン)(0.43g、1.0mmol)のジクロロメタン溶液(300mL)と、化合物(4)としてのアミノ基末端ポリエチレングリコール(ポリオキシエチレンジエチルアミン、Mn=1,000)(1.0g、1.0mmol)のジクロロメタン溶液(300mL)とを、空気中、大気圧下、温度25℃で12時間掛けてゆっくりと同時に滴下した。
滴下終了後、さらに12時間撹拌を継続し、ジクロロメタンの全量が約200mL程度になるまで濃縮し、次いで希塩酸(1%)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水で洗浄した。次いで、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた黄色粘性液体をシリカゲルカラム(塩化メチレン→酢酸エチル→塩化メチレン/メタノール=8/2)で精製した。
得られた生成物を少量(約5mL)のジクロロメタンに溶解させ、ジエチルエーテルを注ぐことにより、多分子環化体を沈殿物として除去した。次いで、減圧下で溶媒を留去することで淡黄色粘性液体0.6gを得た。
下記の分析により、得られた淡黄色粘性液体が、化合物(5)としての環状ポリエチレングリコールであることを確認した。収率は50%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ ppm(図5参照)
8.23 (s, 1H), 7.79 (s, 2H), 7.64 (br, 2H), 2.31 (s, 3H)
MALDI-TOF MS (α-cyano-4-hydroxycinnamic acid, NaI)(図6参照)
(第4工程)環状ポリエチレングリコールの合成
ジムロート冷却器およびマグネチックスターラーを備え付けた200mLのナスフラスコに、第3工程で得られた化合物(5)としての環状ポリエチレングリコール(1.0g、0.84mmol)、アルカリとしての水酸化ナトリウム(0.7g、18mmol)および溶媒としてのメタノール(50mL)を加え、空気中、大気圧下、温度60℃で18時間加熱還流を行った。その後、減圧下で反応混合物から溶媒を留去し、ジクロロメタン50mLを加え、希塩酸(1%)および蒸留水で洗浄した。次いで、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去し、無色透明粘性液体0.9gを得た。
下記の分析により、得られた無色透明粘性液体が、化合物(II)としての環状ポリエチレングリコールであることを確認した。収率は93%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ ppm(図7参照)
7.81 (s, 1H), 7.51 (s, 2H), 7.41 (br, 2H)
MALDI-TOF MS (α-cyano-4-hydroxycinnamic acid, NaI)(図8参照)
(第5工程)環状マクロアゾ化合物の合成
マグネチックスターラーおよび塩化カルシウム管を備え付けた100mLのナスフラスコに、化合物(II)としての環状ポリエチレングリコール(0.9g、0.78mmol)、化合物(III)としての4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)(0.11g、0.39mmol)、溶媒としてのジクロロメタン(30mL)、縮合剤としての1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSCI、0.29g、1.5mmol)および縮合助剤としての4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、10mg、0.08mmol)を加え、25℃で48時間攪拌した。
その後、反応混合物をジクロロメタンで約2倍容量に希釈し、希塩酸(1%)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および蒸留水で洗浄した。次いで、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。残留物を少量(約5mL)のジクロロメタンに溶解させ、ジエチルエーテルで再沈殿させた後、ベンゼンを用いて凍結乾燥を行うことにより、白色固体0.45gを得た。
下記の分析により、得られた白色固体が、化合物(I)(一般式(I)におけるXがOであり、同一の炭素原子に結合するR1およびR2がそれぞれCNとメチル基の組み合わせであり、R3およびMがエチレン基であり、nが5〜100の整数である)に相当する環状マクロアゾ化合物(4,4'-アゾビス(3,5-ビス(シクロポリエチレングリコールカルバモイル)フェニル) 4-シアノペンタン酸)であることを確認した。収率は45%であった。
またGPC測定の結果から、Mn=2,600、Mw=2,800、Mw/Mn=1.06であった。
1H-NMR (CDCl3) δ ppm(図9参照)
8.24 (s, 1H), 7.81 (s, 2H), 7.60 (br, 2H), 2.54‐2.94 (m, 4H), 1.78 (d, J = 20 Hz, 3H)
IR (KBr) cm-1(図10参照)
2869, 1762, 1661, 1108
GPC(図11参照)
(参考例1)
重合開始剤として実施例1で得られたマクロアゾ化合物を用いて、アクリル酸ブチルの重合体を得、その物性を評価した。
直前に減圧蒸留によって精製したアクリル酸nブチル(1.0g、7.8mmol)に40mg(0.016mmol)のマクロアゾ開始剤(I)を溶解し、脱気封管後、100W水銀灯を15分照射したところ、反応系は固化し、有機溶媒に不溶で膨潤する無色透明ゴム状物質が得られた。
また、重合開始剤として環状マクロアゾ化合物の代わりに、従来のポリエチレングリコールユニットを有する高分子アゾ重合開始剤を用いて、同様に光照射したところ、有機溶媒に可溶な重合体(ポリエチレングリコールとポリアクリル酸nブチルとのブロック共重合体)が得られた。
上記の結果から、重合開始剤として本発明のマクロアゾ化合物を用いたアクリル酸ブチルの重合体は、重合中に高分子成長鎖が開始剤断片に含まれる環状ポリエチレングリコール部位を糸通しすることによって形成された可動性架橋構造を有する三次元ポリマーであることがわかる。
本発明のマクロアゾ化合物は、1分子中に環状高分子鎖を有するので、これを重合開始剤として用いることにより、移動架橋を有する3次元構造のネットワーク高分子を合成し得る。
3次元構造では架橋点が移動でき、ポリマー鎖セグメントの運動性が高くなるので、このようなネットワーク高分子は、良好な膨潤性や優れた耐衝撃性を有する材料として期待できる。例えば、衝撃に対して復元力を有し、優れた耐傷付き性を有する塗料材料などへの応用が期待できる。また、温度、pH、溶媒組成、磁場などの外部刺激に対して応答を示すスマートゲル(インテリジェントゲル)のような高機能性ソフトマテリアルなどへの応用も期待できる。

Claims (5)

  1. 一般式(I):
    (式中、XはOまたはNHであり、R1およびR2は同一または異なってCNまたは炭素数1〜4のアルキル基であり、R3は炭素数1〜3のアルキレン基または1−イミノ−2−アザブチレン基であり、Mは炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは5〜100の整数である)
    で表わされ、数平均分子量Mnが1,500〜4,000でありかつ重量平均分子量Mwが1,800〜5,000であることを特徴とするマクロアゾ化合物。
  2. 一般式(I)におけるXがOであり、同一の炭素原子に結合するR1およびR2がそれぞれCNとメチル基の組み合わせであり、R3がエチレン基であり、Mがエチレン基であり、nが5〜100の整数である請求項1に記載のマクロアゾ化合物。
  3. 一般式(II):
    (式中、Mおよびnは一般式(I)と同義であり、R4はOHまたはNH2である)
    で表わされることを特徴とする請求項1または2に記載のマクロアゾ化合物の前駆体。
  4. 一般式(II)におけるR4がOHである請求項3に記載のマクロアゾ化合物の前駆体。
  5. 一般式(II):
    (式中、Mおよびnは下記一般式(I)と同義であり、R4はOHまたはNH2である)
    で表わされる化合物と、一般式(III):
    (式中、R1、R2およびR3は下記一般式(I)と同義である)
    で表わされる化合物とを反応させて、一般式(I):
    (式中、XはOまたはNHであり、R1およびR2は同一または異なってCNまたは炭素数1〜4のアルキル基であり、R3は炭素数1〜3のアルキレン基または1−イミノ−2−アザブチレン基であり、Mは炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは5〜100の整数である)
    で表わされ、数平均分子量Mnが1,500〜4,000でありかつ重量平均分子量Mwが1,800〜5,000である化合物を得る工程を含むことを特徴とするマクロアゾ化合物の製造方法。
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