JP5803682B2 - 冷延鋼板の製造方法 - Google Patents
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T(℃)=5.68×TS(MPa)−2600×C(mass%)−217×Mn(mass%)+0.16×CT(℃)+0.29×t(秒)−1420 ・・・(2)
ここで、T:連続焼鈍における均熱温度(℃)、TS:引張強さ(MPa)、C:鋼素材のC含有量(mass%)、Mn:鋼素材のMn含有量(mass%)、CT:熱間圧延後の巻取温度(℃)、t:連続焼鈍における均熱時間(秒)
に鋼素材のCとMnの含有量、熱間圧延後の巻取温度の実績値および連続焼鈍における予定均熱時間および目標引張強さを代入して、連続焼鈍における設定均熱温度を算出し、上記設定均熱温度および予定均熱時間で均熱焼鈍する連続焼鈍を施すことを特徴とする冷延鋼板の製造方法である。
本発明が対象とする440MPa級の冷延鋼板とは、引張強さTSが390〜490MPa(40〜50kgf/mm2)の範囲の比較的低強度の高強度冷延鋼板のことをいう。この440MPa級の冷延鋼板は、C,Mn以外、特別な元素を含有しない鋼素材(スラブ)を熱間圧延し、冷間圧延した鋼板を、図1に示したように、加熱帯、均熱帯、冷却帯および過時効帯を有する連続焼鈍設備を用いて再結晶焼鈍して製造するのが一般的である。また、上記連続焼鈍における均熱焼鈍後の冷却速度は、水冷却のような急速冷却ではなく、5〜50℃/秒程度の中低速冷却であるため、得られる鋼板組織は、フェライトとパーライトからなる組織となる。
TS(MPa)=1/5.68×(T(℃)+2600×C(mass%)+217×Mn(mass%)−0.16×CT(℃)−0.29×t(秒)+1420)
・・・・(A)
ここで、TS:引張強さ(MPa)、T:連続焼鈍における均熱温度(℃)、C:鋼素材のC含有量(mass%)、Mn:鋼素材のMn含有量(mass%)、CT:熱間圧延後の巻取温度(℃)、t:連続焼鈍における均熱時間(秒)
が得られた。
T(℃)=a×TS(MPa)+b×C(mass%)+c×Mn(mass%)+d×CT(℃)+e×t(秒)+f ・・・(1)
ここで、T:連続焼鈍における均熱温度(℃)、TS:引張強さ(MPa)、C:鋼素材のC含有量(mass%)、Mn:鋼素材のMn含有量(mass%)、CT:熱間圧延後の巻取温度(℃)、t:連続焼鈍における均熱時間(秒)、a,b,c,d,e,f:定数
を、冷延鋼板の製造実績から予め求めておき、この(1)式に、目標とする引張強さと、製造因子としてC,Mn含有量の実績値、熱延巻取温度の実績値および連続焼鈍における予定均熱保持時間を代入して、連続焼鈍における均熱温度を求め、その均熱温度で連続焼鈍することで、目標とする引張強さの冷延鋼板を得ることとした。
T(℃)=5.68×TS(MPa)−2600×C(mass%)−217×Mn(mass%)+0.16×CT(℃)+0.29×t(秒)−1420 ・・・(2)
ここで、T:連続焼鈍における均熱温度(℃)、TS:引張強さ(MPa)、C:鋼素材のC含有量(mass%)、Mn:鋼素材のMn含有量(mass%)、CT:熱間圧延後の巻取温度(℃)、t:連続焼鈍における均熱時間(秒)
を用いることができる。
本発明における440MPa級の冷延鋼板は、C,Mn以外の合金元素を特に含有しないものであるが、好ましくは、下記の成分組成を有することが好ましい。
C:0.08〜0.20mass%
Cは、固溶強化およびパーライト組織強化(フェライト+Fe3C)によって鋼を高強度化するのに有効な元素である。しかし、Cが0.08mass%未満では、上記高強度化効果が十分に得られず、440MPa級の強度を確保できないおそれがある。一方、Cが0.20mass%を超えると、引張強さや降伏応力が顕著に上昇するだけでなく、溶接性を害するようになる。よって、Cは0.08〜0.20mass%の範囲とする。
Mnは、鋼の固溶強化元素として添加される元素である。しかし、0.65mass%未満の添加では、上記強度上昇効果が十分ではなく、一方、1.50mass%を超える添加は、引張強さや降伏応力が顕著に上昇し、440MPa級に必要な強度を上回るようになる。よって、Mnは0.65〜1.50mass%の範囲とする。
Si:0.03mass%以下
Siは、脱酸元素として、また、鋼を固溶強化する元素として添加される元素であるが、0.03mass%を超える添加は、スケール性の表面欠陥を発生するおそれがある。よって、本発明では、Siは0.03mass%以下とするのが好ましい。
Pは、鋼を固溶強化する元素であるが、多量に含有すると二次加工脆性を引き起こすおそれがある。よって、本発明では0.025mass%以下とするのが好ましい。
Sは、強度に及ぼす影響は小さいが、硫化物系介在物を形成し、伸びフランジ性や耐食性を害する元素である。よって、本発明では0.010mass%以下とするのが好ましい。
Alは、鋼の脱酸元素として添加される元素である。しかし、過剰な添加は、延性の低下や鋼板表面品質の低下をまねくので、0.07mass%以下の範囲で添加するのが好ましい。
Nは、鋼中に不可避的に混入してくる不純物であり、過剰に含有すると、延性や鋼板表面品質の低下をまねくので、0.0060mass%以下に制限するのが好ましい。
本発明の440MPa級の冷延鋼板の製造方法は、好ましくは、上記成分組成に調整した鋼素材(スラブ)を、熱間圧延し、冷間圧延し、連続焼鈍して製造するのが好ましく、具体的には、下記の条件とするのが好ましい。なお、鋼素材(スラブ)は、連続鋳造法、造塊−分塊圧延法等の常法によって製造すればよく、特に制限はない。
上記鋼スラブは、所定の温度に再加熱後、あるいは連続鋳造後、熱片状態のまま熱間圧延し、熱延鋼板とするのが好ましい。上記熱間圧延前の再加熱温度および熱間圧延温度は、常法に準じて行えばよく、特に制限はない。
ただし、熱間圧延後の巻取温度CTは400〜750℃の範囲とするのが好ましい。巻取温度が400℃未満では、熱延板のフェライト粒が微細化し、連続焼鈍後の結晶粒も微細化するため、降伏応力や引張強さが上昇し、鋼成分によっては440MPa級としての強度範囲を超えるおそれがある。一方、750℃を超えると、セメンタイトが凝集し、熱延板のフェライト粒が粗大化するため、連続焼鈍後の結晶粒も粗大化し、引張強さが低下して本発明が目的とする440MPa級の強度を確保できないおそれがあるからである。
<均熱焼鈍>
上記熱間圧延後の鋼板は、その後、酸洗して脱スケール後、通常公知の範囲の圧下率で冷間圧延して冷延板とし、その後、図1に示したような、加熱帯、均熱帯および冷却帯、あるいはさらに過時効帯を有する連続焼鈍設備で連続焼鈍して、所望の鋼板組織と強度を有する製品板とする。
ここで、上記連続焼鈍条件は、均熱温度を730〜870℃、均熱保持時間を100〜600秒の範囲として均熱焼鈍するのが好ましい。
均熱温度が、730℃未満では、再結晶が完全に完了しないおそれがあり、また、Fe3Cの再固溶が十分ではないため、均熱焼鈍後の冷却過程で析出する微細析出物が不足し、目標とする引張強さを確保することが難しくなる。また、図3に示したように、均熱温度と引張強さの関係が直線から外れてくるため、上記(1)式や(2)式が成り立たなくなるおそれがある。一方、均熱温度が870℃を超えると、フェライト粒が粗大化し、やはり、図3に示したように、均熱温度と引張強さの関係が直線から外れてくるので、上記(1)式や(2)式が成り立たなくなるおそれがある。
また、均熱保持時間が、100秒未満では、Fe3Cの再固溶が十分ではないため、均熱焼鈍後の冷却過程で析出する微細析出物(Fe3C)が不足し、目標とする引張強さを確保することが難しくなったり、均熱温度が低い場合には再結晶が完全に完了しないおそれがある。一方、600秒を超えると、結晶粒が粗大化して目標強度を確保できなくなったり、通板速度を大きく低下させることになるため、生産性が著しく低下するおそれがある。
均熱焼鈍後の鋼板は、その後、600〜300℃の範囲までを平均冷却速度5〜50℃/秒で冷却し、過時効処理を施した後、室温まで冷却するのが好ましい。ここで、上記600〜300℃までの平均冷却速度が5〜50℃/秒の範囲とは、ロール冷却やガスジェット冷却による冷却速度範囲に対応する。
上記冷却速度が5℃/秒未満では、冷却に長時間を要するため、生産性が低下するおそれがある。一方、冷却速度が50℃/秒を超えると、パーライトが析出する時間を十分に確保できなくなったり、成分によってはベイナイトやマルテンサイト等が生成したりするため、上記(1)式や(2)式が成り立たなくなるおそれがある。また、強力な冷却設備が必要となるため設備費が嵩むという問題もある。また、安定してパーライトを生成させるため、均熱後、600〜300℃までを、上記冷却速度で冷却するのが好ましい。
上記冷却に続いて、過時効処理を施してもよい。この過時効処理は、500〜200℃の温度で100〜1000秒間の範囲で行えば、特に生産性を阻害することはない。
なお、過時効処理終了後の鋼板は、室温まで冷却するが、このときの冷却速度は特に制限はなく、急速冷却してもよい。
T(℃)=5.68×TS(MPa)−2600×C(mass%)−217×Mn(mass%)+0.16×CT(℃)+0.29×t(秒)−1420 ・・・(2)
ここで、T:連続焼鈍における均熱温度(℃)、TS:引張強さ(MPa)、C:鋼素材のC含有量(mass%)、Mn:鋼素材のMn含有量(mass%)、CT:熱間圧延後の巻取温度(℃)、t:連続焼鈍における均熱時間(秒)
に、個々の冷延板の目標引張強さ、鋼素材のC,Mn含有量の実績値、熱延巻取温度の実績値および連続焼鈍における予定均熱時間を入力して、連続焼鈍における設定均熱温度を算出し、その均熱温度、均熱保持時間で均熱焼鈍した後、600〜300℃までの範囲を平均冷却速度5〜50℃/秒で冷却し、その後、500〜200℃の温度で100〜1000秒間の過時効処理を施し、室温まで急冷し、伸長率0.5〜2.0%の調質圧延を施して製品板(冷延鋼板)とした。
図4は、引張強さの目標値が異なる2種類の440MPa級冷延鋼板の引張強さの実測値の分布を、上記本発明の方法を適用する以前のものと対比して示したものである。この図から、従来の方法では、目標とする引張強さ(455MPa)に対して実測引張強さは3σで29.3MPaで変動しているが、本発明の製造方法を適用することにより、素材冷延板の板厚や板幅の大きく変動しているにも拘わらず、目標とする引張強さに対する変動幅を3σで15MPa以内に収めることができていることがわかる。
Claims (2)
- C:0.08〜0.20mass%、Mn:0.65〜1.50mass%、Si:0.03mass%以下、P:0.025mass%以下、S:0.010mass%以下、Al:0.07mass%以下、N:0.0060mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼素材を熱間圧延し、冷間圧延し、連続焼鈍して冷延鋼板を製造する方法において、鋼素材のCとMnの含有量、熱間圧延後の巻取温度および連続焼鈍における均熱温度と均熱時間と、連続焼鈍後の鋼板の引張強さとの関係を表す下記(2)式に鋼素材のCとMnの含有量、熱間圧延後の巻取温度の実績値および連続焼鈍における予定均熱時間および目標引張強さを代入して、連続焼鈍における設定均熱温度を算出し、上記設定均熱温度および予定均熱時間で均熱焼鈍する連続焼鈍を施すことを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
記
T(℃)=5.68×TS(MPa)−2600×C(mass%)−217×Mn(mass%)+0.16×CT(℃)+0.29×t(秒)−1420 ・・・(2)
ここで、T:連続焼鈍における均熱温度(℃)、TS:引張強さ(MPa)、C:鋼素材のC含有量(mass%)、Mn:鋼素材のMn含有量(mass%)、CT:熱間圧延後の巻取温度(℃)、t:連続焼鈍における均熱時間(秒) - 熱間圧延後の巻取温度を400〜750℃とし、冷間圧延後、730〜870℃の均熱温度で100〜600秒の均熱時間保持する均熱焼鈍を行う連続焼鈍を施すことを特徴とする請求項1に記載の冷延鋼板の製造方法。
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