JP5800310B2 - 溶射用複合ワイヤ製造装置 - Google Patents
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Description
同製造装置によれば、量産性の向上、製造コストに優れる等の特徴を有し、前述した特許第3999328号公報(特許文献1)に示唆されている手作業による製造方法から大きく飛躍し、溶射皮膜の可能性をさらに拡げる発明であった。
また、製造されるワイヤの線径(外径)は、ワイヤ成型手段であるローラダイスのサイズに依存するため、例えば多種類の線径のワイヤを製造する場合には成型手段の交換作業が必要になるとともに、同時に潤滑剤を塗布する機構の構造もさらに複雑化するなど、製造効率の悪化を招く要因となる。
前記前段ワイヤ成型手段における前記平型フープ材の成型時に、粉末状の機能発現物質を該平型フープ材に供給する粉末供給手段と、前記前段ワイヤ成型手段の出口側に設けられ、該出口側から送られてくるワイヤを巻き取ることによって、該前段ワイヤ成型手段による平型フープ材の成型作業に要する引張力を負担するとともに、巻き取り方向が水平となるように回転軸を鉛直方向に設けて設置された中間巻き取りローラと、前記前段ワイヤ成型手段によって機能発現物質が充填された成型後のチューブ状のワイヤを、さらに細径に成型する複数のローラダイスを組み合わせてなる複数の個別ワイヤ外径成型部を備え、前記前段ワイヤ成型手段によって成型されたチューブ状のワイヤを、該複数の個別ワイヤ外径成型部によって対応する複数種の外径に成型するとともに、該複数の個別ワイヤ外径成型部は、成型経路上から待避或いは成型経路上に位置するように装置架台に対し、スライドユニットを介して移動可能に設置された後段ワイヤ成型手段と、前記後段ワイヤ成型手段によって成型された溶射用複合ワイヤを巻き取るとともに、前記中間巻き取りローラとの間に生じる回転差を吸収するクラッチを備えた最終巻き取りローラと、を具備したことを特徴としている。
また、充填される機能発現物質である粉末の量をきめ細かく制御することが可能であり、多種類の溶射用粉末に対応することができる。
加えて、ワイヤの製造速度を大幅に向上させることが可能となり、製造コストの低減、効率向上に寄与する。
図1及び図2は本発明の一実施形態に係る溶射用複合ワイヤ製造装置の平面図、正面図である。
図1及び図2に示されるように、本実施形態の溶射用複合ワイヤ製造装置10は、フープ材巻き出しローラ12、前段ワイヤ成型手段14、粉末供給手段16、中間巻き取りローラ18、後段ワイヤ成型手段20、最終巻き取りローラ22等を具備して構成され、各部材は装置架台11の所定箇所に設置されている。また、図示していないが、モータなどの各機器に接続された制御盤を備え、ワイヤ製造に際し各機器を制御するようになっている。
これらの図に示されるように、フープ材巻き出しローラ12は、フープ材1が巻回される円形ローラ部12A、定張力ユニット24、電磁ブレーキ26等を備えている。円形ローラ部12Aは、その中心部に回転軸12Bの一端が固着され、回転軸12Bは装置架台11に取り付けられた軸受け28,28によって回転可能に軸支されている。
回転軸12Bの他端は電磁ブレーキ26と連結されており、必要に応じ円形ローラ部12Aの回転に対し制動をかけることができるようになっている。
また、105〜108の4台によってU字型から丸型へ成型するとともに、109〜113の5台によって外径4mmのチューブ状に成型するようになっている。さらに、104と105との間は70mmの間隔を有し、この上方部分に粉末供給手段16が設置され、溶射皮膜の機能発現物質となる粉末が供給される。
圧下スクリューは、カセットローラーダイス1台当り、下方に向かって左右に2本、または横方向に向かって上下に2本取り付けられている。カセットローラーダイスを、縦にセットするか、90°横にセットするかによって、ボルトの位置は左右、または上下となる。圧下スクリューを1回転させると、ローラギャップは3mmまたは2mm移動する。調整に際しては、被加工材料、例えばフープ材が、連結された全てのカセットローラーダイスの中心部を通過するように、圧下スクリューの回転角度を、左右または上下とも同じに設定する。
1次フィーダ30は、収納部30Aに収容された溶射材料の粉末を、その内部に配設された誘導羽根によって強制的に掻き出し、1次フィーダ30と2次フィーダ32との間に設けられたシュート35を介して2次フィーダ32のホッパ38に定量的に供給する(一例として、高精度小型定量供給機 MO-180R (株)ヨシカワ製)。シュート35の側面には、レーザセンサ36が取り付けられており、1次フィーダ30から2次フィーダ32へ供給される粉末の量を計測し、粉末の途切れを検出するようになっている。
3次フィーダ34には、粉末を横方向に搬送する樋状に形成されたトラフ40が図示しない板バネ、固定フレーム、振動付与部37を介して装置架台11上に設けられている。振動付与部37には電磁石が設置されており、電磁石のコイルに交流半波脈動電流を通電し、当該電流に応じた電磁石の吸引力若しくは反発力によりトラフ40を微振動させて、粉末を少しずつ移動させながら定量的に供給を行う(一例として、小型電磁フィーダ CF-1 神鋼電気(株)製)。
これらの図に示されるように、中間巻き取りローラ18は、回転ローラ18A、ギヤボックス18B、駆動モータ18C等を備え、回転ローラ18Aは、所定の外径の円盤状をなしているとともに、その回転軸が縦方向に設置され、回転ローラ18Aは横方向に回転するようになっている。
ギヤボックス18Bは駆動モータ18Cと連結され、ギヤボックス18Bによってモータ18Cの回転を減速し、回転ローラ18Aを所定の回転数にて回転駆動する。回転ローラ18Aの外周部には前段ワイヤ成型手段14によって成型されたチューブ状のワイヤが巻き取られ、ワイヤ成型手段14と後段ワイヤ成型手段20との間にて張力を分担させる。中間巻き取りローラ18には巻付き防止のためにMCナイロン製ワイヤガイドを設置している。なお、回転ローラ18Aの回転方向を横方向としたのは、ワイヤ内に入っている粉末が重力によって移動し、結果的に充填ムラが生じる可能性を排除する、駆動モータ18Cの設置位置は低い方が装置全体の重心を下げることができる等の理由からである。
図7に示されるように、後段ワイヤ成型手段20は、4つの個別ワイヤ外径成型部20A,20B,20C,20Dを具備し、これらの個別ワイヤ外径成型部20A,20B,20C,20Dは複数のローラダイスを備えている。
図8にも示されるように、個別ワイヤ外径成型部20B,20C,20Dは、装置架台11に対して前後動可能に支持されたスライドユニット48B,48C,48D上に設置されている。また、スライドユニット48B,48C,48Dは、スクリュウシャフト50B,50C,50Dによって装置架台11に対し、移動可能に配設されており、各スクリュウシャフト50B,50C,50Dに取り付けられたハンドル52B,52C,52Dを回転させることにより、各成型部20B,20C,20Dを前後に移動させて、成型経路上から退避、又は成型経路上に位置させることが可能となっている。
複合ワイヤ1を外径φ3.2mmに伸線する場合は、図8−1(a)に示されるように、成型部20B,20C,20Dを成型経路上から後退させて退避した状態として、成型部20Aによって伸線工程を行い、外径φ3.2mmのワイヤへ成型する。また、外径φ2.5mmに伸線する場合は、図8−1(b)に示されるように、成型部20C,20Dを成型経路上から退避させて、成型部20A,20Bを使用して伸線工程を行う。さらに、外径φ2.0mmとする場合は、図8−2(a)に示されるように、成型部20Dを成型経路上から退避させた状態で、成型部20A,20B,20Cによって伸線工程を行う。外径φ1.6mmとする場合は、図8−2(b)に示されるように、すべての成型部20A,20B,20C,20Dを使用して伸線工程を行うことにより、φ1.6mmの複合ワイヤに成型する。
また、上下の各ローラ54A,54B,54C,54Dは、それらのうち一方或いは双方に、バネなどの弾性体を備えた押しボルトによって上下方向からワイヤ1に対する挟圧力を微調整することができるので、ワイヤ1の成型に最も適する挟圧力とすることが可能である。
さらに、各補助モータ56A,56B,56C,56Dは、個別に回転数を選択して制御することができる。つまり、成型速度が最適となるように、フープ材巻き出しローラ12の回転速度、後述する最終巻き取りローラ22の回転速度と併せて、補助モータ56A〜Dも含めた総括的な自動制御を行うことで製造速度の向上を図ることができる。また、ワイヤにかかる張力の分散化がされるので、潤滑剤を使用しなくてもスムーズなワイヤ成型が可能となるとともに、成型時におけるワイヤ破断の防止を同時に達成することが可能となる。
これらの図に示されるように、最終巻き取りローラ22は、巻き取りローラ部22Aと、電磁クラッチ22Bと、最終駆動モータ22C等とを備えているとともに、巻き取り時に乱巻きが生じないように乱巻き防止部58が設置されている。
複合ワイヤの製造過程での回転速度は、中間巻き取りローラ部18で遅くなり、最終巻き取りローラ部22にて早くなる。そこで本装置では、電磁クラッチ22Bによって最終駆動モータ22Cの駆動力を調節し、広範囲な速度変化に対応できる機構を採用している。
同図に示されるように、乱巻き防止部58は、最終巻き取りローラ22の回転軸60に同軸プーリ62が固着されているとともに、乱巻き防止部58のガイドプーリ64に対し、タイミングベルト66が張設されている。乱巻き防止部58は、横方方向に延出する一対のガイド棒68,68、乱巻き防止ガイド70を備え、乱巻き防止ガイド70はガイド棒68,68に沿ってスライドするようになっている。
ガイド棒68,68の外周面にはネジが切られており、タイミングベルト66から伝達される回転力をガイドプーリ64に伝え、ガイドプーリ64の回転とともにガイド棒68,68が回転することによって、ガイド70を横方向にスライドさせながら、ワイヤ1Aの巻き取り位置をガイドするようになっている。つまり、最終巻き取りローラ22に巻き取られる複合ワイヤ1Aにつき、乱巻きが生じないように、ガイド70によって複合ワイヤ1Aを最終巻き取りローラ22の外周面上の適正な位置に導くため、順序よく巻き取っていくことが可能になっている。
そこで、本装置では複合ワイヤの製造において、まず、フープ材巻き出しローラ12、前段ワイヤ成型手段14、粉末供給手段16、中間巻き取りローラ18、後段ワイヤ成型手段20の個別ワイヤ外径成型部20A〜D、最終巻き取りローラ22等の各種機器を手動運転することによって、粉末供給量、モータの回転速度など、最適な製造条件を見出す実験を行った。実験の結果、平型フープ材の幅寸法、複合ワイヤの外径、粉末の種類などを勘案し、最も適する条件を運転用の制御データとして蓄積した。そして、これらの制御データに基づいて運転システムの制御プログラムを構築し、各機器を自動制御することによって連続的に効率よくワイヤ製造を行うようにしている。また、連続自動運転中の異常時においては、パトライトによる警報発信を行い、非常停止するシステムを同時に採用し、安全性を向上させた。
また、ワイヤの真円度は良好で、実際の溶射作業においてもスムーズに定量供給を行うことができ、ガスフレーム溶射でのフラッシュバック現象やアーク溶射での不安定アークは全く見られず、作製された溶射皮膜も密着強度など、要求性能を達成することができた。
また、潤滑剤を塗布する機構等も不要となり、装置自体の簡素化、製造工程の簡略化に寄与する。
1A 複合ワイヤ
10 溶射用複合ワイヤ製造装置
11 装置架台
12 フープ材巻き出しローラ
14 前段ワイヤ成型手段
16 粉末供給手段
18 中間巻き取りローラ
18A 回転ローラ
18B ギヤボックス
18C 駆動モータ
20 後段ワイヤ成型手段
20A 20B 20C 20D 個別ワイヤ外径成型部
22 最終巻き取りローラ
22A 巻き取りローラ部
22B 電磁クラッチ
22C 最終駆動モータ2
24 定張力ユニット
24A タッチロール部
24B アーム
24C ピボットセンサ
26 電磁ブレーキ
30 1次フィーダ
30A 収納部
32 2次フィーダ
34 3次フィーダ
35 シュート
36 レーザセンサ
37 振動付与部
38 ホッパ
39 スクリューフィーダ
40 トラフ
42 最終投入シュート
44 バイブレータ
46 レーザセンサ
48B 48C 48D スライドユニット
50B,50C,50D スクリュウシャフト
52B 52C 52D ハンドル
54A 54B 54C 54D 補助送りローラ
56A 56B 56C 56D 補助モータ
58 乱巻き防止部
60 回転軸
62 同軸プーリ
64 ガイドプーリ
66 タイミングベルト
68 ガイド棒
70 乱巻き防止ガイド
101〜113 ローラダイス
Claims (3)
- ワイヤの材料となる平型フープ材が巻回されたフープ材巻き出しローラと、
前記平型フープ材を成型経路上にて、U字成型、片丸成型、丸型成型と順次、成型作業を行って該平型フープ材をチューブ状に成型する複数のローラダイスを組み合わせてなる前段ワイヤ成型手段と、
前記前段ワイヤ成型手段における前記平型フープ材の成型時に、粉末状の機能発現物質を該平型フープ材に供給する粉末供給手段と、
前記前段ワイヤ成型手段の出口側に設けられ、該出口側から送られてくるワイヤを巻き取ることによって、該前段ワイヤ成型手段による平型フープ材の成型作業に要する引張力を負担するとともに、巻き取り方向が水平となるように回転軸を鉛直方向に設けて設置された中間巻き取りローラと、
前記前段ワイヤ成型手段によって機能発現物質が充填された成型後のチューブ状のワイヤを、さらに細径に成型する複数のローラダイスを組み合わせてなる複数の個別ワイヤ外径成型部を備え、前記前段ワイヤ成型手段によって成型されたチューブ状のワイヤを、該複数の個別ワイヤ外径成型部によって対応する複数種の外径に成型するとともに、該複数の個別ワイヤ外径成型部は、成型経路上から待避或いは成型経路上に位置するように装置架台に対し、スライドユニットを介して移動可能に設置された後段ワイヤ成型手段と、
前記後段ワイヤ成型手段によって成型された溶射用複合ワイヤを巻き取るとともに、前記中間巻き取りローラとの間に生じる回転差を吸収するクラッチを備えた最終巻き取りローラと、を具備したことを特徴とする溶射用複合ワイヤ製造装置。 - 前記個別ワイヤ外径成型部におけるローラダイス間には、チューブ状のワイヤを巻き取り方向側へ送り出す補助送りローラが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の溶射用複合ワイヤ製造装置。
- 前記粉末供給手段は、1次フィーダ、2次フィーダ、3次フィーダを備えて構成され、粉末状の機能発現物質は、これらの1次フィーダ、2次フィーダ、3次フィーダを経て、該3次フィーダのシュートからU字成型された平型フープ材内に段階的に供給されるとともに、
前記1次フィーダから2次フィーダとの間には、前記粉末状の機能発現物質の途切れを検出するレーザセンサが設けられ、且つ、前記3次フィーダには振動付与部、並びに、末端に設置されている最終投入シュートにはバイブレータ、粉末状の機能発現物質の供給量を計測するセンサが、各々設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶射用複合ワイヤ製造装置。
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