以下、本発明の好適な実施例について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序にしたがって実施例を説明する。
A.第1実施例:
A−1.発電装置の構造:
A−2.発電装置の動作:
A−3.発電装置の動作原理:
A−4.スイッチSW1の切換タイミング:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
D.第4実施例:
E.変形例:
E−1.第1変形例:
E−2.第2変形例:
E−3.第3変形例:
A.第1実施例:
A−1.発電装置の構造:
図1は、本実施例の発電装置100の構造を示した説明図である。図1(a)には、発電装置100の機械的な構造が示されており、図1(b)には電気的な構造が示されている。本実施例の発電装置100の機械的な構造は、先端に錘106が設けられた梁104が、基端側で支持端102に固定された片持ち梁構造となっており、変形方向を切り換えて変形することができる。支持端102は発電装置100内に固定されるのが望ましい。また、梁104の表面には、圧電素子108および圧電素子110が設けられている。圧電素子108は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料によって形成された圧電部材108cと、圧電部材108cの表面に金属薄膜によって形成された第1電極(上部電極)108aおよび第2電極(下部電極)108bとを含んで構成されている。第1電極(上部電極)108aおよび第2電極(下部電極)108bは、圧電部材108cを挟んで対向配置されている。圧電素子110は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料によって形成された圧電部材110cと、圧電部材110cの表面に金属薄膜によって形成された第1電極(上部電極)110aおよび第2電極(下部電極)110bとを含んで構成されている。第1電極(上部電極)110aおよび第2電極(下部電極)110bは、圧電部材110cを挟んで対向配置されている。図1(a)に示す例では、圧電素子108と圧電素子110とは同じ形状を有しているが、必ずしも同じ形状でなくてもよい。たとえば、圧電素子108が梁104に対して設置可能な最大の長さと幅であれば、圧電素子108の発電量は大きくなる。一方、圧電素子110が設置可能な最小の幅(梁104の短手方向への長さ)であれば、圧電素子110による梁104の変位抵抗が低減するため、発電効率が良くなる。なお、圧電素子108および圧電素子110は梁104の変形によって変形するから、梁104が本発明の「変形部材」に相当する。
梁104は、基端側が支持端102に固定されており、先端側には錘106が設けられているので、振動などが加わると、図中に白抜きの矢印で示したように、梁104の先端が大きく振動する。その結果、梁104の表面に設けられた圧電素子108および圧電素子110には、圧縮力および引張力が交互に作用する。すると、圧電素子108の圧電部材108cは圧電効果によって正負の電荷を発生し、その電荷が第1電極108aおよび第2電極108bに現れる。同様に、圧電素子110の圧電部材110cは圧電効果によって正負の電荷を発生し、その電荷が第1電極110aおよび第2電極110bに現れる。また、錘106は必須ではないが、梁104の先端側と基端側とで重量のバランスが非均衡であることが望ましい。なぜなら、重量のバランスが非均衡であることで、たとえば、1つの振動によって梁104の変位が反復しやすくなるためである。
図1(b)には、本実施例の発電装置100の回路図が例示されている。圧電素子108の圧電部材108cは、電気的には、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサー(容量成分)Cgとして表すことができる。また、圧電素子110の圧電部材110cは、電気的には、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサー(容量成分)Csとして表すことができる。インダクターLは、圧電部材108cに対して並列に接続されて、圧電素子108を含む共振回路を構成している。すなわち、インダクターLは、圧電部材108cの容量成分Cgと共に電気的な共振回路を形成している。そして、この共振回路には、共振回路をON/OFFするためのスイッチSW1が、インダクターLに対して直列に接続されて設けられている。本実施例においては、スイッチSW1は、ノーマリーOFFのスイッチである。
また、圧電素子108の圧電部材108cに設けられた第1電極108aおよび第2電極108bは、圧電素子108が発生させる電流を整流する整流回路120に接続されている。本実施例においては、整流回路120は、4つのダイオードD1〜D4から構成される全波整流回路である。整流回路120を全波整流回路で構成することによって、圧電素子108から発生した電荷を効率よく引き出して、効率よく発電することができる。さらに、整流回路120には、電気負荷を駆動するために、整流後の電流を蓄えておく蓄電素子(出力用コンデンサー)C1が接続されている。すなわち、蓄電素子C1は、整流回路120を介して圧電素子108と並列に接続されている。
切換部140は、圧電素子110を圧電素子108と並列に接続される第1状態と、圧電素子110を圧電素子108と接続されない第2状態とを切り換える。本実施例においては、切換部140は、圧電素子108の第1電極108aと圧電素子110の第1電極110aとの間に設けられたスイッチSW2と、圧電素子108の第2電極108bと圧電素子110の第2電極110bとの間に設けられたスイッチSW3と、を含んで構成されている。本実施例においては、スイッチSW2およびスイッチSW3は、ノーマリーONのスイッチである。すなわち、切換部140は、初期状態では第1状態である。
制御部130は、蓄電素子C1から電圧の供給を受けて動作し、スイッチSW1並びに切換部140のスイッチSW2およびスイッチSW3を制御する。制御部130の構成例および動作の詳細については後述される。
また、圧電素子110に設けられた第1電極110aおよび第2電極110bは、制御部130に接続されている。なお、圧電素子108が本発明の「第1の圧電素子」に対応し、圧電素子110が本発明の「第2の圧電素子」に対応する。
A−2.発電装置の動作:
図2は、本実施例の発電装置100の動作を示した説明図である。本項においては、切換部140が第2状態である場合の動作について説明する。第2状態では、スイッチSW2およびスイッチSW3はOFF状態である。図2(a)には、梁104の振動に伴って、梁104の先端の変位uが変化する様子が示されている。なお、プラスの変位uは、梁104が上向きに反った状態(梁104の上面側が凹となった状態)を表しており、マイナスの変位(−u)は、梁104が下向きに反った状態(梁104の下面側が凹となった状態)を表している。また、図2(b)には、梁104の変形に伴って、圧電部材108cが発生する電流の様子と、その結果として圧電部材108cの内部に生じる起電力とが示されている。なお、図2(b)では、圧電部材108cに電荷が発生する様子は、単位時間あたりに発生する電荷量(すなわち、電流Ipzt)として表され、また、圧電部材108cに生じる起電力は、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vpztとして表されている。
なお、図1を用いて前述したように、梁104には圧電素子110も設けられており、梁104が変形すると、圧電部材110cも圧電部材108cと同様に変形する。したがって、圧電部材110cの内部にも、圧電部材108cと全く同様に、図2(b)に示す電流Ipztと同様の電流Ipzt2、および、図2(b)に示す電圧Vpztと同様の電圧Vpzt2が発生する。
図2(a)および図2(b)に示されるように、梁104の変位が増加している間は、圧電部材108cは正方向の電流を発生させ(すなわち、電流Ipztがプラス値)、これに伴って第1電極108aおよび第2電極108bの電圧Vpztは正方向へ増加する。正方向の電圧Vpztが、蓄電素子C1の電圧VC1と整流回路120を構成しているダイオードの順方向降下電圧Vfの2倍との和、すなわち、VC1+2Vfよりも大きくなれば、それ以降に発生した電荷は直流電流として取り出して、蓄電素子C1に蓄えておくことができる。また、梁104の変位が減少している間は、圧電部材108cは負方向の電流を発生させ(すなわち、電流Ipztがマイナス値)、これに伴って第1電極108aおよび第2電極108bの電圧Vpztは負方向へ増加する。負方向の電圧Vpztが、VC1と整流回路120の2Vfの和よりも大きくなれば、発生した電荷は直流電流として取り出して、蓄電素子C1に蓄えておくことができる。すなわち、図1のスイッチSW1をOFFにしたままでも、図2(b)中に斜線を付して示した部分については、蓄電素子C1に電荷を蓄えることができる。
一定時間に圧電部材108cから取り出せる電荷量(発電効率)はスイッチSW1がONするタイミングによって異なり、図2(c)に示すように、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチSW1がONする場合に発電効率が最大となる。以下では、まず発電効率が最大となる場合の動作について説明する。
制御部130が、図2(c)に示すタイミングでSWをONにしたとする。すると、図2(d)に示すように、第1電極108aと第2電極108bとの間の電圧波形が、スイッチSW1をONにしたときにシフトしたかのような現象が発生する。すなわち、たとえば、図2(d)中に「B」と表示した期間Bでは、圧電部材108cの起電力に対応する細い破線で示した電圧Vpztの波形がマイナス方向にシフトしたような、太い破線で示した電圧波形が第1電極108aと第2電極108bとの間に現れる。このような現象が発生する理由については後述する。また、図2(d)中に「C」と表示した期間Cでは、圧電部材108cの起電力に対応する電圧Vpztの波形がプラス方向にシフトしたような、太い破線の電圧波形が現れる。以降の期間D、期間E、期間Fなどについても同様に、圧電部材108cの起電力に対応する電圧Vpztの波形がプラス方向あるいはマイナス方向にシフトしたような、太い破線の電圧波形が現れる。そして、シフトした電圧波形が、VC1と2Vfとの和を超えた部分(図2(d)中に斜線を付して示した部分)では、圧電部材108cで発生した電荷を蓄電素子C1に蓄えておくことができる。なお、圧電部材108cから蓄電素子C1に電荷が流れる結果、第1電極108aと第2電極108bとの間の電圧Vgenは、VC1と2Vfとの和の電圧でクリップされる。その結果、第1電極108aおよび第2電極108bの間の電圧波形は、図2(d)に太い実線で示した波形となる。
図2(b)に示したスイッチSW1をOFFにしたままの場合と、図2(d)に示したように、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチSW1をONにした場合とを比較すれば明らかなように、本実施例の発電装置100では、適切なタイミングでスイッチSW1をONにすることで、効率よく、蓄電素子C1に電荷を蓄えることが可能となる。そこで、第1実施例の発電装置100は、スイッチSW1を適切なタイミングでONにするために、制御用の圧電素子110を設けておき、圧電素子110に生じた電圧または電流を検出してスイッチSW1を制御している。この点については、後ほど詳しく説明する。
また、蓄電素子C1に電荷が蓄えられて、蓄電素子C1の端子間電圧が増加すると、それにしたがって電圧波形のシフト量も大きくなる。たとえば、図2(d)中の期間B(蓄電素子C1に電荷が蓄えられていない状態)と、図2(d)中の期間H(蓄電素子C1に少し電荷が蓄えられた状態)とを比較すると、期間Hの方が電圧波形のシフト量が大きくなっている。同様に、図2(d)中の期間Cと期間Iとを比較すると、蓄電素子C1に蓄えられた電荷が増えている期間Iの方が、電圧波形のシフト量が大きくなっている。このような現象が発生する理由については後述するが、この結果、本実施例の発電装置100では、圧電部材108cを変形させたことによって、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vpzt以上の電圧を、蓄電素子C1に蓄えることも可能となる。その結果、特別な昇圧回路を設ける必要がなくなり、小型で高効率の発電装置を得ることが可能となる。
A−3.発電装置の動作原理:
図3は、本実施例の発電装置100の動作原理の前半部分を概念的に示した説明図である。また、図4は、本実施例の発電装置100の動作原理の後半部分を概念的に示した説明図である。本項においては、切換部140が第2状態である場合の動作について説明する。第2状態では、スイッチSW2およびスイッチSW3はOFF状態である。図3では、圧電部材108cの変形に合わせてスイッチSW1をONにしたときのCgの電荷の動きが、概念的に示されている。図3(a)は、圧電部材108c(正確には梁104)が上向きに(上面側が凹となるように)変形した状態を表している。圧電部材108cが上向きに変形すると、電流源からは正方向の電流が流れ、Cgに電荷が蓄積され、圧電部材108cの端子間には正方向の電圧が発生する。電圧値は、圧電部材108cの変形が大きくなるほど増加する。そして、圧電部材108cの変形がピークとなったタイミング(電荷量がピークになったタイミング。図3(b)参照)で、スイッチSW1をONにする。
図3(c)には、スイッチSW1をONにした直後の状態が示されている。Cgには電荷が蓄えられているから、この電荷がインダクターLに流れようとする。インダクターLに電流が流れると磁束が生じる(磁束が増加する)が、インダクターLには、自らを貫く磁束の変化を妨げる方向に逆起電力が生じる性質(自己誘導作用)がある。スイッチSW1をONにしたときには、電荷が流れることによって磁束が増加しようとするから、この磁束の増加を妨げる方向(換言すれば、電荷の流れを妨げる方向)に逆起電力が発生する。また、逆起電力の大きさは、磁束の変化速度(単位時間あたりの変化量)に比例する。図3(c)には、このようにしてインダクターLに生じる逆起電力が、斜線を付した矢印によって表されている。このような逆起電力が発生するため、スイッチSW1をONにしても、圧電部材108cの電荷は少しずつしか流れ出さない。すなわち、インダクターLを流れる電流は少しずつしか増加しない。
その後、インダクターLを流れる電流がピークになると、磁束の変化速度が「0」となるので、図3(d)に示したように逆起電力が「0」となる。そして、今度は電流が減少し始める。すると、インダクターLを貫く磁束が減少するので、インダクターLには、この磁束の減少を妨げる方向(電流を流そうとする方向)の起電力が発生する(図3(e)参照)。その結果、この起電力によってCgから電荷を引き抜きながら、インダクターLを電流が流れ続ける。そして、電荷の移動の途中で損失が発生しなければ、圧電部材108cの変形によって生じた全ての電荷が移動して、ちょうど正負の電荷が置き換わったような状態(すなわち、圧電部材108cの下面側に正電荷が分布し、上面側に負電荷が分布した状態)となる。図3(f)には、圧電部材108cの変形によって生じた正負の電荷が全て移動した状態が表されている。
仮に、このままスイッチSW1をONにしておくと、今度は上述した内容と逆の現象が生じる。すなわち、圧電部材108cの下面側の正電荷がインダクターLに流れようとして、このときインダクターLには、電荷の流れを妨げる方向の逆起電力が発生する。その後、インダクターLを流れる電流がピークに達した後、減少に転じると、今度は電流の減少を妨げる方向(電流を流し続けようとする方向)の起電力がインダクターLに発生する。その結果、圧電部材108cの下面側にあった全ての正電荷が上面側に移動した状態(図3(b)に示した状態)となる。こうして圧電部材108cの上面側に戻った正電荷は、再び、図3(b)〜図3(f)を用いて前述したようにして、下面側に移動する。
このように、Cgに電荷が蓄えられた状態でスイッチSW1をONにした後、その状態を保っておくと、圧電部材108cとインダクターLとの間で電流の向きが交互に反転する一種の共振現象が発生する。そして、この共振現象の周期は、いわゆるLC共振回路の共振周期Tとなるから、圧電部材108cに含まれる容量成分Cgの大きさ(キャパシタンス)をC、インダクターLの誘導成分の大きさ(インダクタンス)をLとすると、T=2π(LC)0.5によって与えられる。したがって、スイッチSW1をONにした直後(図3(b)に示した状態)から、図3(f)に示した状態となるまでの時間は、T/2となる。
そこで、スイッチSW1をONにしてからT/2が経過した時点で、図4(a)に示すようにスイッチSW1をOFFにする。そしてこの状態から、圧電部材108c(正確には梁104)を今度は下向きに(下面側が凹となるように)変形させる。前述した図3(a)では、圧電部材108cを上向きに変形させたが、図4(a)では下向きに変形させているので、電流源から負方向の電流が流れ、圧電部材108cの端子間の電圧が負方向へ大きくなるようにCgに電荷が蓄積する。また、図3(a)〜図3(f)を用いて前述したように、圧電部材108c(正確には梁104)を下向きに変形させる前の段階で、圧電部材108cの下面側には正電荷が分布し、上面側には負電荷が分布しているから、これらの電荷に加えて、下面側には新たな正電荷が蓄積され、上面側には新たな負電荷が蓄積されることになる。図4(b)には、スイッチSW1をOFFにした状態で圧電部材108c(正確には梁104)を変形させることによって、圧電部材108cに新たな電荷が蓄積された状態が示されている。
そして、この状態からスイッチSW1をONにすると、圧電部材108cの下面側に蓄積された正電荷がインダクターLに流れようとする。このときインダクターLには逆起電力が発生するので(図4(c)参照)、電流は少しずつ流れ始めるが、やがてピークに達して、その後は減少に転じる。すると、インダクターLには、電流の減少を妨げる方向(電流を流し続けようとする方向)に起電力が発生し(図4(e)参照)、この起電力によって電流が流れ続けて、最終的には、圧電部材108cの下面側に分布していた全ての正電荷が上面側に移動し、上面側に分布していた全ての負電荷が下面側に移動した状態となる(図4(f)参照)。また、下面側の全ての正電荷が上面側に移動し、上面側の全ての負電荷が下面側に移動する時間は、LC共振回路の共振周期Tの半分に相当する時間T/2となる。そこで、スイッチSW1をONにした後、時間T/2が経過したらスイッチSW1をOFFにして、今度は圧電部材108c(正確には梁104)を上向きに(上面側が凹となるように)変形させれば、圧電部材108c内にさらに正負の電荷を蓄積することができる。
以上に説明したように本実施例の発電装置100では、圧電部材108cを変形させて電荷を発生させた後、圧電部材108cをインダクターLに接続して、共振周期Tの半分の時間だけ共振回路を形成することで、圧電部材108c内での正負の電荷の分布を反転させる。その後、圧電部材108cを今度は逆方向に変形させて新たな電荷を発生させる。圧電部材108c内での正負の電荷の分布は反転されているから、新たに発生させた電荷は圧電部材108cに蓄積されることになる。その後、再び、共振周期Tの半分の周期だけ圧電部材108cをインダクターLに接続して、圧電部材108c内での正負の電荷の分布を反転させた後、圧電部材108cを逆方向に変形させる。このような動作を繰り返すことで、圧電部材108cを繰り返し変形させる度に、圧電部材108cに蓄積された電荷を増加させることができる。
図2を用いて前述したように本実施例の発電装置100では、スイッチSW1をONにする度に第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧波形がシフトする特異な現象が生じるが、この現象は、以下のようなメカニズムによって発生する。すなわち、たとえば図2(d)中に示した期間Aでは、圧電部材108c(正確には梁104)の変形にしたがって、第1電極108aおよび第2電極108bの間に電圧が発生するが、第1電極108aおよび第2電極108bは整流回路120に接続されているので、VC1と2Vfとの和の電圧を超えた部分の電荷は、整流回路120に接続された蓄電素子C1に流れ込む。その結果、梁104の変形がピークになった時点でスイッチSW1をONにすると、そのときに圧電部材108c内に残っていた正負の電荷がインダクターLを介して移動して、圧電部材108c内での正負の電荷の配置が入れ代わる。
そして、正負の電荷の配置が入れ代わった状態から梁104を逆方向に変形させると、圧電部材108cの第1電極108aおよび第2電極108bの間には、圧電効果による電圧波形が現れる。すなわち、圧電部材108cの第1電極108aおよび第2電極108bの極性が入れ代わった状態から、圧電部材108cに変形による電圧変化が発生することになる。その結果、図2(d)中に示した期間Bでは、梁104の変形によって圧電部材108cに生じる電圧波形をシフトさせたような、電圧波形が現れることになる。もっとも、前述したように、VC1と2Vfとの和の電圧を超えた部分の電荷は蓄電素子C1に流れ込むので、圧電部材108cの第1電極108aおよび第2電極108bの間の電圧は、VC1と2Vfとの和の電圧でクリップされる。その後、共振周期Tの半分の時間だけスイッチSW1をONにすると、圧電部材108cに残っていた正負の電荷の配置が入れ代わる。そして、その状態から梁104が変形することによって、圧電部材108cには圧電効果による電圧波形が現れる。このため、図2(d)中に示した期間Cにおいても、梁104の変形による電圧波形をシフトさせたような電圧波形が現れることになる。
また、図2を用いて前述したように本実施例の発電装置100では、梁104が変形を繰り返しているうちに、電圧波形のシフト量が次第に大きくなるという現象も発生する。このため、圧電部材108cの圧電効果によって第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電位差よりも高い電圧を、蓄電素子C1に蓄えることができるという大きな効果を得ることができる。このような現象は、次のようなメカニズムによって生じる。
先ず、図2(d)中の期間Aあるいは期間Bに示したように、C1が充電されていない場合は、圧電部材108cの端子間で発生する電圧が、整流回路120の2Vfを超えると、圧電部材108cから蓄電素子C1に電荷が流れ込むので、第1電極108aと第2電極108bとの間に現れる電圧は、2Vfでクリップされている。しかし、こうして蓄電素子C1に電荷を蓄えるにしたがって蓄電素子C1の端子間の電圧が増加していく。すると、それ以降は、蓄電素子C1の端子間電圧がVC1と2Vfとの和よりも高い電圧になって始めて、圧電部材108cから電荷が流れ込むようになる。このため、第1電極108aと第2電極108bとの間の電圧がクリップされる値が、蓄電素子C1に電荷が蓄えられるにしたがって次第に上昇していく。
加えて、図3および図4を用いて前述したように、圧電部材108cから電荷を流出させない限り、圧電部材108c(正確には梁104)を変形させる度に、圧電部材108c内の電荷は増えて行き、それに伴って、第1電極108aと第2電極108bとの間の電圧は大きくなる。このため、電荷がインダクターLやスイッチSW1を流れる際の損失などを考えなければ、第1電極108aと第2電極108bとの間の電圧を大きくすることができる。このため、本実施例の発電装置100によれば、特別な昇圧回路を設けなくても、電気負荷の駆動に必要な電圧まで自然に昇圧させた状態で、発電することが可能となる。
A−4.スイッチSW1の切換タイミング:
以上に説明したように、本実施例の発電装置100では、圧電部材108c(正確には梁104)に繰り返し変形を加えて、変形方向が切り換わるタイミングで、共振周期Tの半分の時間だけ圧電部材108cをインダクターLに接続することで、蓄電素子C1に効率良く電荷を蓄えることができ、加えて昇圧回路が不要なために容易に小型化することができるという優れた特徴を得ることができる。もっとも、制御部130やスイッチSW1の動作速度などの事情から、制御部130がスイッチSW1をONするタイミングは、梁104の変形方向が切り換わるタイミングと完全に一致するとは限らない。しかし、スイッチSW1がONするタイミングが梁104の変形方向が切り換わるタイミングと完全に一致しなくても、梁104の固有振動周期と一致する周期で、LC共振回路の共振周期Tの半分の時間だけスイッチSW1をONにすることで、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenを昇圧させることが可能である。以下、この理由について説明する。なお、本項においては、切換部140が第2状態である場合の動作について説明する。第2状態では、スイッチSW2およびスイッチSW3はOFF状態である。
図5(a)は、仮に、梁104の変形方向が切り替わる時刻t1でスイッチSW1をONした後OFFしない場合の、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの様子を示している。図5(b)は、図5(a)の時刻t1以降を拡大したものである。なお、図5の例では、整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
時刻t1において、Vgenはピークになっており、スイッチSW1がONすることによって、LC共振回路の共振周期Tの1/2の周期(時刻t1,t2,t3,t4,t5,t6,・・・)で正負のピーク値Vp1,Vp2,Vp3,Vp4,Vp5,Vp6,・・・が交互に現れながら減衰していく。もし、時刻t1からT/2だけ経過後の時刻t2にスイッチSW1をOFFにすると、前述したVgenのシフト量はVp1の絶対値とVp2の絶対値の和(|Vp1|+|Vp2|)となる。なお、図3および図4を用いて説明したように、Vp2は、LC共振回路の共振によって、容量成分Cgの正負の電荷が入れ替わったときの電圧値であるから、Vp1の絶対値が大きいほどVp2の絶対値も大きくなる。したがって、Vp1の絶対値が大きいほどVgenのシフト量も大きくなる。
図6は、梁104の変形方向が切り替わるタイミング毎にスイッチSW1がT/2だけONする場合の、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの様子を示している。なお、図6の例でも、整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。圧電部材108cが発生させる起電力による電圧Vpztの振幅が一定とすると、図6に示すように、最初にVgenが正のピーク値となる電圧値V1となるタイミングでスイッチSW1がT/2だけONすると、VgenはV1+Vaだけマイナス方向にシフトする。すると、2回目にスイッチSW1がONするときのVgenの電圧値V2=−(Va+2V1)であり、スイッチSW1がT/2だけONするとVgenはVb+Va+2V1だけプラス方向にシフトする。同様に、3回目にスイッチSW1がONするときのVgenの電圧値V3=Vb+2V1であり、スイッチSW1がT/2だけONするとVgenはVc+Vb+2V1だけマイナス方向にシフトする。同様に、4回目にスイッチSW1がONするときのVgenの電圧値V4=−(Vc+2V1)であり、スイッチSW1がT/2だけONするとVgenはVd+Vc+2V1だけプラス方向にシフトする。同様に、5回目にスイッチSW1がONするときのVgenの電圧値V5=−(Vd+2V1)である。ここで、V2=−(Va+2V1)であるから、明らかに|V2|>|V1|である。そして、V1,V2は図5(b)のVp1に対応する電圧値、Va,Vbは図5(b)のVp2に相当する電圧値であり、|V2|>|V1|であるから必ずVb>Vaとなる。すると、V2=−(Va+2V1),V3=Vb+2V1であり、Vb>Vaであるから|V3|>|V2|である。同様に、|V3|>|V2|であるから必ずVc>Vbとなり、V3=Vb+2V1,V4=−(Vc+2V1)であり、Vc>Vbであるから|V4|>|V3|である。同様に、|V4|>|V3|であるから必ずVd>Vcとなり、V4=−(Vc+2V1),V5=Vd+2V1であり、Vd>Vcであるから|V5|>|V4|である。要するに、梁104の変形方向が切り替わるタイミングでスイッチSW1がT/2だけONすることによって、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの絶対値は|V1|<|V2|<|V3|<|V4|<|V5|<・・・と昇圧していく。
梁104の変形方向が切り替わるタイミングとスイッチSW1がONするタイミングがずれた場合も同様に考えることができる。図7(a)は、梁104の変形方向が切り替わるタイミングの後ろでスイッチSW1がT/2だけONする場合に第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの様子を示し、図7(b)は、梁104の変形方向が切り替わるタイミングの前でスイッチSW1がT/2だけONする場合に第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの様子を示している。なお、図7(a)、図7(b)の例でも、整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
図7(a)および図7(b)の例では、図6の例と同様に、Vgenは、最初にスイッチSW1がONするときの電圧値V1に対して、2回目にスイッチSW1がONするときの電圧値V2=−(Va+2V1)、3回目にスイッチSW1がONするときの電圧値V3=Vb+2V1、4回目にスイッチSW1がONするときの電圧値V4=−(Vc+2V1)、5回目にスイッチSW1がONするときの電圧値V5=−(Vd+2V1)、・・・となる。ここで、V2,V3,V4,V5,・・・は、それぞれ図6の場合のV2,V3,V4,V5,・・・と同じ式で表されるので、やはりV2>V1、V3>V2、V4>V3、V5>V4、・・・となる。したがって、梁104の変形方向が切り替わるタイミングから前後にずれたタイミングでスイッチSW1をT/2だけONしても、Vgenは|V1|<|V2|<|V3|<|V4|<|V5|<・・・と昇圧していく。ただし、電圧値V1が高いほど、Va,Vb,Vc,Vd,・・・が大きくなるので、図6の例の方が、図7(a)および図7(b)の例よりもVgenが昇圧するスピードが速く、発電効率が高い。
なお、梁104の変位が0(Vgenが0)となるタイミングでスイッチSW1がT/2だけONする場合(図7(a)および図7(b)でV1=0の場合)は、LC共振回路の共振が起こらずVgenは昇圧しない。
以上に説明したように、スイッチSW1がONするタイミングが任意のタイミング(ただし、梁104の変位が0(Vgenが0)となるタイミングを除く)であっても、LC共振回路の共振周期Tの半分の時間だけスイッチSW1をONにすることで、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧を昇圧させることができる。
なお、発電効率を高めるために、LC共振回路の共振周期Tの半分の時間だけスイッチSW1をONにすることが望ましいが、所定期間だけスイッチSW1をONにしても第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenを昇圧させることは可能である。たとえば、図8は、梁104の変形方向が切り替わるタイミングで共振周期Tの3/2倍の時間だけスイッチSW1をONにした場合の、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの一例を示している。要するに、図5(b)に示した時刻t1でスイッチSW1をONにして時刻t3でスイッチSW1をOFFにする場合に対応する。なお、図8の例でも、整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
図8の例では、図6の例と同様に、Vgenは、最初にスイッチSW1がONするときの電圧値V1に対して、2回目にスイッチSW1がONするときの電圧値V2=−(Va+2V1)、3回目にスイッチSW1がONするときの電圧値V3=Vb+2V1、4回目にスイッチSW1がONするときの電圧値V4=−(Vc+2V1)、5回目にスイッチSW1がONするときの電圧値V5=−(Vd+2V1)、・・・となり、Vgenは|V1|<|V2|<|V3|<|V4|<|V5|<・・・と昇圧していく。ただし、電圧値V1が高いほど、Va,Vb,Vc,Vd,・・・が大きくなるので、図6の例の方が、図8の例よりもVgenが昇圧するスピードが速く、発電効率が高い。
一方、図9は、梁104の変形方向が切り替わるタイミングで共振周期Tの1/4倍の時間だけスイッチSW1をONにした場合の、第1電極108aと第2電極108bとの間に生じる電圧Vgenの様子を示している。要するに、図5(b)に示した時刻t1でスイッチSW1をONにして時刻(t1+t2)/2でスイッチSW1をOFFにする場合に対応する。なお、図9の例でも、整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
図9の例では、Vgenは、最初にスイッチSW1がONするときの電圧値V1に対して、2回目にスイッチSW1がONするときの電圧値V2=−2V1、3回目にスイッチSW1がONするときの電圧値V3=2V1、4回目にスイッチSW1がONするときの電圧値V4=−2V1、5回目にスイッチSW1がONするときの電圧値V5=2V1、・・・となる。すなわち、Vgenは2V1までは昇圧できるが、2V1を超えての昇圧はされない。
同様に、梁104の変形方向が切り替わるタイミングで共振周期Tの3/4倍、5/4倍、7/4倍、9/4倍、・・・のいずれかの時間だけスイッチSW1をONにした場合もV2=−2V1、V3=2V1、V4=−2V1、V5=2V1、・・・となり、Vgenは2V1までは昇圧できるが、2V1を超えての昇圧はされない。
以上より、LC共振回路の共振によって、少なくとも、VgenがスイッチSW1をONにするときの極性と反対の極性となったときにスイッチSW1をOFFすれば、Vgenが昇圧していく。要するに、LC共振回路の共振周期Tに対して、スイッチSW1をONする所定期間を、少なくとも、(n+1/4)Tより長く(n+3/4)Tよりも短い時間(nは0以上の任意の整数)に設定すれば、Vgenを効率よく昇圧させることができる。
前述したように、LC共振回路の共振周期Tの1/2の時間だけスイッチSW1をONするのが、スイッチSW1の切り換えときのシフト量が最も大きくなるので、発電効率が最も高い。そこで、本実施例の発電装置100では、制御部130は、梁104の固有振動周期と一致する周期でスイッチSW1をONにし、LC共振回路の共振周期Tの1/2の時間が経過するとスイッチSW1をOFFにする。
もっとも、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチSWをONにすることは、それほど容易なことではない。たとえば、梁104の変形方向が切り換わるタイミングは、梁104の変位の大きさが最大と考えれば、機械的な接点を用いて、梁104が最大変位となったタイミングでスイッチSWがONとなるように構成することも可能である。しかし、接点の調整がずれると効率が大きく低下することになる。そこで、本実施例の発電装置100では、圧電素子110に生じる電圧Vpzt2または圧電素子110に生じる電流Ipzt2を検出することによって、スイッチSWをONにする。圧電素子110の変形方向が切り換わるタイミングは、圧電素子110が発生させる電荷による電圧Vpzt2が極値になるタイミング、および、圧電素子110が発生させる電荷による電流Ipzt2の向きが切り換わるタイミング(電流値が0となるタイミング)と一致する。したがって、圧電素子110に生じる電圧Vpzt2または電流Ipzt2を検出することによって、梁104(変形部材)の変形方向が切り換わるタイミングで容易にスイッチSWをON(導通状態)にできる。
図10は、制御用の圧電素子110に生じる電圧Vpzt2を検出することによって、スイッチSWを適切なタイミングで制御可能な理由を示す説明図である。図10(a)には、梁104の変位が示されている。また、図10(b)には、梁104の振動に伴って、圧電素子110に生じる電圧Vpzt2が変化する様子が示されている。
図3〜図9を用いて前述したように、梁104の変位uが極値に達したタイミングでスイッチSWをONにした場合に、最も効率よく発電することができる。そして、図10(a)と図10(b)とを比較すれば明らかなように、梁104の変位uが極値となるのは、圧電素子110に生じる電圧Vpzt2が極値となるタイミングと一致する。その理由は、圧電素子110は、インダクターLや蓄電素子C1と接続していないため、電荷の増減が圧電素子110の起電力の電圧Vpzt2の変化に直接反映されるからである。
そこで、図10(b)に白抜き矢印で示したように、圧電素子110に生じる電圧Vpzt2が極値となるタイミングを検出して、そのタイミングから、所定期間(たとえば、前述したLC共振回路の共振周期Tの半分の時間(T/2))だけスイッチSWをONにしてやれば、効率よく発電することが可能となる。
図11は、制御用の圧電素子110に生じる電流Ipzt2を検出することによって、スイッチSWを適切なタイミングで制御可能な理由を示す説明図である。図11(a)には、梁104の変位が示されている。また、図11(b)には、梁104の振動に伴って、圧電素子110に生じる電流Ipzt2が変化する様子が示されている。
図3〜図9を用いて前述したように、梁104の変位uが極値に達したタイミングでスイッチSWをONにした場合に、最も効率よく発電することができる。そして、図11(a)と図11(b)とを比較すれば明らかなように、梁104の変位uが極値となるのは、圧電素子110に生じる電流Ipzt2が0となるタイミングと一致する。その理由は、圧電素子110は、インダクターLや蓄電素子C1と接続していないため、電荷の増減が圧電素子110に生じる電流Ipzt2の変化に直接反映されるからである。
そこで、図11(b)に白抜き矢印で示したように、圧電素子110に生じる電流Ipzt2が0となるタイミングを検出して、そのタイミングから、所定期間(たとえば、前述したLC共振回路の共振周期Tの半分の時間(T/2))だけスイッチSWをONにしてやれば、効率よく発電することが可能となる。
図12は、本実施例における制御部130の構成例を示す回路図である。図12に示す例では、制御部130は、CPU(Central Processing Unit)131と、電源監視回路132と、安定化電源回路133と、A/Dコンバーター(アナログ−デジタル変換回路)134と、SW1駆動回路135aと、SW2駆動回路135bと、SW3駆動回路135cと、を含んで構成されている。
安定化電源回路133は、蓄電素子C1から電圧の供給を受けて、制御部130の各回路ブロックが動作するための電源を各回路ブロックに供給する。CPU131は、SW1駆動回路135a、SW2駆動回路135bおよびSW3駆動回路135cを制御する。電源監視回路132は、安定化電源回路133の出力電圧Vo1が基準値Vr以上である場合には、出力電圧Vo2としてハイレベルを出力し、安定化電源回路133の出力電圧Vo1が基準値Vrを下回っている場合には、出力電圧Vo2としてローレベルをCPU131のリセット端子に出力する。なお、CPU131は、リセット端子に入力される出力電圧Vo2がローレベルである場合には停止状態となり、リセット端子に入力される出力電圧Vo2がハイレベルである場合には動作状態となる。A/Dコンバーター134は、圧電素子110の第1電極110aと第2電極110bとの間の電圧を検出してデジタル変換し、CPU131に出力する。SW1駆動回路135aは、スイッチSW1を制御するための出力信号Vs1をスイッチSW1の制御端子に出力する。SW2駆動回路135bは、スイッチSW2を制御するための出力信号Vs2をスイッチSW2の制御端子に出力する。SW3駆動回路135cは、スイッチSW3を制御するための出力信号Vs3をスイッチSW3の制御端子に出力する。
図13は、本実施例における発電装置100の制御方法の一例としての状態制御処理を説明するためのフローチャートである。図14は、本実施例における発電装置100の制御方法の一例としてのスイッチ制御処理を説明するためのフローチャートである。なお、既に述べたように、状態制御処理の初期状態では、切換部140は第1状態である。
本実施例における発電装置100の制御方法は、蓄電素子C1の電圧VC1を検出することと、蓄電素子C1の電圧VC1が基準値Vrを下回っている場合には、スイッチSW1を非導通状態とし、切換部140を第1状態(圧電素子110を圧電素子108と並列に接続される状態)とすることと、蓄電素子C1の電圧VC1が基準値Vr以上である場合には、切換部140を第2状態(圧電素子110を圧電素子108と接続されない状態)とし、圧電素子110に生じる電圧Vpztを検出することによって、スイッチSW1を所定期間導通状態とすることと、を含む。
図13に示す状態制御処理において、まず、制御部130は、蓄電素子C1の電圧VC1を検出する(ステップS100)。本実施例においては、安定化電源回路133を介して電源監視回路132が蓄電素子C1の電圧VC1を検出する。
ステップS102の後に、制御部130は、蓄電素子C1の電圧VC1が基準値Vr以上であるか否かを判定する(ステップS102)。本実施例においては、蓄電素子C1の電圧VC1が基準値Vr以上であるか否かを、制御部130の電源監視回路132が判定する。制御部130が、蓄電素子C1の電圧VC1が基準値Vrを下回っているものと判定した場合(ステップS102でNOの場合)には、制御部130はステップS100からステップS102までを繰り返す。
制御部130が、蓄電素子C1の電圧VC1が基準値Vr以上であるものと判定した場合(ステップS102でYESの場合)には、制御部130は切換部140の状態を第1状態から第2状態へと変更する(ステップS104)。本実施例においては、CPU131がSW2駆動回路135bおよびSW3駆動回路135cを制御することによって、切換部140の状態を第1状態から第2状態へと変更する。
ステップS104の後に、制御部130は、図14に示すスイッチ制御処理を行う。以下、図14を参照しながらスイッチ制御処理について説明する。
図14に示すスイッチ制御処理において、まず、制御部130は、圧電素子110に生じる電圧Vpzt2を検出する(ステップS200)。本実施例においては、制御部130のA/Dコンバーター134が、圧電素子110に生じる電圧Vpzt2を検出する。
図14に示すスイッチ制御処理において、ステップS200の後に、ステップS200で検出された電圧Vpzt2が極値になったか否かを判定する(ステップS202)。本実施例においては、制御部130のA/Dコンバーター134の出力信号に基づいて、CPU131がステップS202の判定を行う。CPUは、たとえば、電圧Vpztの時間微分を基にして電圧Vpztが極値になったか否かを判定してもよい。電圧Vpzt2が極値になっていない場合(ステップS202でNOの場合)には、ステップS200とステップS202とを繰り返す。
電圧Vpzt2が極値になった場合(ステップS202でYESの場合)には、制御部130は、スイッチSW1をON状態に切り換える(ステップS204)。本実施例においては、制御部130のCPU131がSW1駆動回路135aを制御することによってスイッチSW1をON状態に切り換える。
ステップS204の後に、制御部130は、計時タイマーをスタートする(ステップS206)。本実施例においては、制御部130のCU131が計時タイマーを有していてもよい。
ステップS206の後に、制御部130は、圧電素子108の容量成分CgとインダクターLとによって構成される共振回路の共振周期Tの1/2の時間(T/2)が経過したか否かを判定する(ステップS208)。本実施例においては、制御部130のCPU131がステップS208の判定を行う。CPU131が、T/2の時間が経過していないものと判定した場合(ステップS208でNOの場合)には、ステップS208を繰り返す。
CPU131が、T/2の時間が経過したものと判定した場合(ステップS208でYESの場合)には、制御部130は、スイッチSW1をOFF状態に切り換える(ステップS210)。本実施例においては、制御部130のCPU131がSW1駆動回路135aを制御することによってスイッチSW1をOFF状態に切り換える。
以上のようにしてスイッチSW1のON/OFF状態を切り換えることによって、梁104の動きに合わせて適切なタイミングでスイッチSW1のON/OFF状態を切り換えられるので、発電装置100を用いて効率よく発電することが可能となる。
図13に戻り、ステップS106の後に、制御部130は、蓄電素子C1の電圧VC1を検出する(ステップS108)。本実施例においては、安定化電源回路133を介して電源監視回路132が蓄電素子C1の電圧VC1を検出する。
ステップS108の後に、制御部130は、蓄電素子C1の電圧VC1が基準値Vr以上であるか否かを判定する(ステップS110)。本実施例においては、蓄電素子C1の電圧VC1が基準値Vr以上であるか否かを、制御部130の電源監視回路132が判定する。制御部130が、蓄電素子C1の電圧VC1が基準値Vr以上であるものと判定した場合(ステップS110でYESの場合)には、再びスイッチ制御処理(ステップS106)を行う。
制御部130が、蓄電素子C1の電圧VC1が基準値Vrを下回っているものと判定した場合(ステップS110でNOの場合)には、制御部130は切換部140の状態を第2状態から第1状態へと変更する(ステップS112)。本実施例においては、CPU131がSW2駆動回路135bおよびSW3駆動回路135cを制御することによって、切換部140の状態を第2状態から第1状態へと変更する。
図15は、本実施例における発電装置100の動作例を説明するためのタイミングチャートである。図15(a)は蓄電素子C1の電圧VC1、図15(b)は安定化電源回路133の出力電圧Vo1、図15(c)は電源監視回路132の出力電圧Vo2、図15(d)は圧電素子110に生じる電圧Vpzt2、図15(e)はSW1駆動回路135aの出力信号Vs1、図15(f)はSW2駆動回路135bの出力信号Vs2およびSW3駆動回路135cの出力信号Vs3を表す。
図15に示す例では、時刻t11で梁104が動作を開始し、それに伴って圧電素子108および圧電素子110も動作を開始する。時刻t11から時刻t12までの期間では、蓄電素子C1の電圧VC1および安定化電源回路133の出力電圧Vo1が基準値Vrを下回っているので、電源監視回路132の出力電圧Vo2はローレベルである。また、時刻t11から時刻t12までの期間では、SW1駆動回路135aの出力信号Vs1、SW2駆動回路135bの出力信号Vs2およびSW3駆動回路135cの出力信号Vs3はいずれもローレベルであるので、ノーマリーOFFのスイッチSW1はOFF状態のままであり、ノーマリーONのスイッチSW2およびスイッチSW3はON状態のままである。
時刻t11から時刻t12までは、切換部140の状態は第1状態であるので、圧電素子108と圧電素子110とが並列に接続されている状態である。したがって、蓄電素子C1の電圧VC1が低い場合には、圧電素子108と圧電素子110の両方を使って速やかに蓄電素子C1に蓄電できる。
図15に示す例では、時刻t12以降の期間においては、蓄電素子C1の電圧VC1および安定化電源回路133の出力電圧Vo1が基準値Vr以上であるので、電源監視回路132の出力電圧Vo2はハイレベルである。また、時刻t12以降の期間では、SW2駆動回路135bの出力信号Vs2およびSW3駆動回路135cの出力信号Vs3はいずれもハイレベルであるので、スイッチSW2およびスイッチSW3はOFF状態である。すなわち、切換部140の状態は第2状態である。
時刻t12以降の期間におけるスイッチSW1のON/OFF状態については、図10を用いて説明したとおりである。したがって、蓄電素子C1の電圧VC1が高い場合には、圧電素子110に生じる電圧Vpzt2に基づいてスイッチを制御することで、早期に高い電圧を発生させることが可能になる。たとえば、基準値Vrとしては、制御部130がスイッチSW1を切り換えるために必要な最小の電圧を設定してもよい。これによって、より早く高い電圧を発生させることが可能になる。
B.第2実施例:
図16は、本実施例における制御部130の他の構成例を示す回路図である。なお、図12と共通する構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図16に示す例では、制御部130は、圧電素子110に並列に接続される蓄電素子137と、蓄電素子137に流れる電流を検出する電流検出部とを含んで構成されている。より具体的には、制御部130は、A/Dコンバーター134aと、抵抗136と、蓄電素子137と、を含んで構成されている。A/Dコンバーター134aと抵抗136とが、電流検出部に相当する。なお、電流検出部としては、種々の公知の電流検出器を用いることができ、たとえば、ホール素子型電流センサーを用いてもよい。図16に示す例では、抵抗136と蓄電素子137とは互いに直列に接続され、圧電素子110とは並列に接続されている。A/Dコンバーター134aは、抵抗136に流れる電流によって発生する電圧をデジタル変換し、CPU131に出力する。抵抗136に流れる電流の大きさは、圧電素子110に生じる電流Ipzt2に比例する。したがって、A/Dコンバーター134a、抵抗136および蓄電素子137の構成で、圧電素子110に生じる電流Ipzt2を検出することに相当する。
このような構成によっても、図13を用いて説明した状態制御処理を行うことができる。すなわち、本実施例における発電装置100の制御方法は、蓄電素子C1の電圧VC1を検出することと、蓄電素子C1の電圧VC1が基準値Vrを下回っている場合には、スイッチSW1を非導通状態とし、切換部140を第1状態(圧電素子110を圧電素子108と並列に接続される状態)とすることと、蓄電素子C1の電圧VC1が基準値Vr以上である場合には、切換部140を第2状態(圧電素子110を圧電素子108と接続されない状態)とし、圧電素子110に生じる電流Ipztを検出することによって、スイッチSW1を所定期間導通状態とすることと、を含む。
図12に示した制御部130の構成での状態制御処理と、図16に示した制御部130の構成での状態制御処理とでは、図13におけるスイッチ制御処理(ステップS106)のみが異なる。したがって、以下では、図16に示した制御部130の構成でのスイッチ制御処理(ステップS106)について説明する。
図17は、本実施例における発電装置100の制御方法の他の一例としてのスイッチ制御処理を説明するためのフローチャートである。
図17に示すスイッチ制御処理において、まず、制御部130は、圧電素子110に生じる電流Ipzt2を検出する(ステップS300)。本実施例においては、制御部130のA/Dコンバーター134aが抵抗135に生じる電圧を検出することによって、圧電素子110に生じる電流Ipzt2を検出する。
図17に示すスイッチ制御処理において、ステップS300の後に、ステップS300で検出された電流Ipzt2が0クロスしたか否かを判定する(ステップS302)。本実施例においては、制御部130のA/Dコンバーター134aの出力信号に基づいて、CPU131がステップS302の判定を行う。電流Ipzt2が0クロスしていない場合(ステップS302でNOの場合)には、ステップS300とステップS302とを繰り返す。
電流Ipzt2が0クロスした場合(ステップS302でYESの場合)には、制御部130は、スイッチSW1をON状態に切り換える(ステップS304)。本実施例においては、制御部130のCPU131がSW1駆動回路135aを制御することによってスイッチSW1をON状態に切り換える。
ステップS304の後に、制御部130は、計時タイマーをスタートする(ステップS306)。本実施例においては、制御部130のCU131が計時タイマーを有していてもよい。
ステップS306の後に、制御部130は、圧電素子108の容量成分CgとインダクターLとによって構成される共振回路の共振周期Tの1/2の時間(T/2)が経過したか否かを判定する(ステップS308)。本実施例においては、制御部130のCPU131がステップS308の判定を行う。CPU131が、T/2の時間が経過していないものと判定した場合(ステップS308でNOの場合)には、ステップS308を繰り返す。
CPU131が、T/2の時間が経過したものと判定した場合(ステップS308でYESの場合)には、制御部130は、スイッチSW1をOFF状態に切り換える(ステップS310)。本実施例においては、制御部130のCPU131がSW1駆動回路135aを制御することによってスイッチSW1をOFF状態に切り換える。
以上のようにしてスイッチSW1のON/OFF状態を切り換えることによって、梁104の動きに合わせて適切なタイミングでスイッチSW1のON/OFF状態を切り換えられるので、発電装置100を用いて効率よく発電することが可能となる。
また、圧電素子110に生じる電流に基づいてスイッチSWのON/OFF状態を切り換えるので、電圧値の極値に達したか否かではなく、電流値が基準値を横切ったか否かでタイミングを判定することができる。したがって、スイッチSWを切り換えるタイミングを精度よく判定することができる。これによって、発電効率を高めることができる。また、電圧値を微分して変形方向が切り換わるタイミングを決定するなどの複雑な演算処理が不要になるので、制御部130の処理負荷が軽くなる。
C.第3実施例:
図18は、本実施例の発電装置100の他の例を示す回路図である。図1に示される例と同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
圧電素子110の圧電部材110cに設けられた第1電極108aおよび第2電極108bは、それぞれ切換部140のスイッチSW2およびスイッチSW3を介して、圧電素子110が発生させる電流を整流する整流回路121に接続されている。本実施例においては、整流回路121は、4つのダイオードD5〜D8から構成される全波整流回路である。整流回路121を全波整流回路で構成することによって、圧電素子110から発生した電荷を効率よく引き出して、効率よく発電することができる。さらに、整流回路121には、蓄電素子C1が接続されている。
切換部140は、圧電素子110を圧電素子108と並列に接続される第1状態と、圧電素子110を圧電素子108と接続されない第2状態とを切り換える。本実施例においては、第1状態において、圧電素子108と圧電素子110とが、整流回路120および121を介して並列に接続される。本実施例においては、スイッチSW2およびスイッチSW3は、ノーマリーONのスイッチである。すなわち、切換部140は、初期状態では第1状態である。
図18に示す発電装置100の回路構成においても、図1(b)に示す発電装置100の回路構成と同様の効果を奏する。
D.第4実施例:
以上に説明した第1実施例〜第3実施例の発電装置100では、2つの圧電素子108および110が設けられているものとして説明した。しかし、発電装置100には3つ以上の圧電素子が設けられていてもよい。以下では、このような第4実施例について説明する。なお、第1実施例〜第3実施例と同様な構成については、第4実施例においても同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図19は、3つ以上の圧電素子を備えた第4実施例の発電装置100を示した説明図である。図19(a)は、梁104の一方の面から見た平面図である。図19(b)は、梁104の他方の面から見た平面図である。図19(a)には、梁104の一方の面に設けられた圧電素子108が示されており、図19(b)には、梁104の他方の面に設けられた2つの圧電素子(圧電素子110および圧電素子114)が示されている。図19(a)と図19(b)とを比較すれば明らかなように、圧電素子110および114は、圧電素子の長さ(梁104の長手方向への長さ)は圧電素子108と同じであるが、圧電素子の幅(梁104の短手方向への長さ)は、圧電素子108の半分よりもさらに狭くなっている。そして、2つの圧電素子110および114は、梁104の幅の両側に寄せた位置に設けられている。圧電素子114は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料によって形成された圧電部材114cと、圧電部材114cの表面に金属薄膜によって形成された第1電極(上部電極)114aおよび第2電極(下部電極)114bとを含んで構成されている。第1電極(上部電極)114aおよび第2電極(下部電極)114bは、圧電部材114cを挟んで対向配置されている。
また、圧電素子108が梁104に対して、設置可能な最大の長さと幅であれば、圧電素子108の発電量は大きくなり、圧電素子110および114が設置可能な最小の幅(梁104の短手方向への長さ)であれば、圧電素子110および114による梁104の変位抵抗が低減するため、発電効率がよい。
そして、2つの圧電素子110および114を、梁104の幅の両側に寄せた位置に設けられていることによって、梁104が上下左右で異なる変位を生じるときでも、圧電素子110および114は適切なタイミングでスイッチSW1をON/OFFすることができるので、発電装置100を様々なところで使用することができる。
また、図19(c)には、3つの圧電素子118、110および114を備える第4実施例の発電装置100の回路図が示されている。圧電素子110は、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサー(容量成分)Cs1とを組み合わせたものして表され、圧電素子114は、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサー(容量成分)Cs2とを組み合わせたものとして表されている。また、圧電素子114の第1電極114aは、切換部140のスイッチSW4を介して圧電素子108の第1電極108aと接続される。また、圧電素子114の第2電極114bは、切換部140のスイッチSW5を介して圧電素子108の第2電極108bと接続される。本実施例においては、スイッチSW4およびスイッチSW5は、ノーマリーONのスイッチである。また、圧電素子114の第1電極114aおよび第2電極114bは、制御部130に接続されている。制御部130は、スイッチSW4およびスイッチSW5を、スイッチSW2およびスイッチSW3と同じタイミングでON/OFFの制御をする。
そして、制御部130は、第1電極110aおよび第2電極110bの組、あるいは第1電極114aおよび第2電極114bの組のいずれか一方を選択して、選択した方の圧電素子110あるいは圧電素子114に生じる電圧または電流を検出することによって、スイッチSWを所定期間導通状態とする。たとえば、発電装置100の設置時に、圧電素子110に生じる電圧を検出して発電した場合と、圧電素子114に生じる電圧を検出して発電した場合とで発電量を計測しておく。そして、制御部130に設けたスイッチ(不図示)などを用いて、発電量の多い方を選択しておく。こうして圧電素子110または圧電素子114の一方を予め選択しておけば、図14を用いて前述したスイッチ制御処理を行うことによって、スイッチSW1のON/OFFを制御することができる。
2つの圧電素子110および114は、大まかには同じような電流波形を発生させるが、梁104の構造や、製造ばらつきなどの要因で、電圧波形、電流振幅の大きさ、電流波形、電流振幅の大きさに若干の違いが生じ得る。そして電圧波形や電流波形に違いが生じれば、発電量に違いが生じる可能性があり、また、電圧振幅の大きさや電流振幅の大きさに違いが生じれば、大きな電圧振幅や電流振幅が得られる方(センサーとしての感度の高い方)を用いた方が、より適切なタイミングでスイッチSW1を制御できる可能性がある。そこで、圧電素子110に生じる電圧または電流を検出して発電した場合と、圧電素子114に生じる電圧または電流を検出して発電した場合とで発電量を予め計測しておき、発電量の多い方を選択することで、より効率よく発電することが可能となる。
E.変形例:
上述した第1実施例〜第4実施例には種々の変形例が存在している。以下では、これらの変形例について簡単に説明する。
E−1.第1変形例:
上述した第4実施例では、圧電素子110および114が、圧電素子108と同じ長さを有しており、圧電素子110および114が、梁104の幅の両端に寄せた位置に設けられているものとして説明した。しかし、圧電素子108の長さの半分よりも短い2つの圧電素子110および114を、梁104の中央の位置に、長手方向に向けて一列に並べて設けるようにしてもよい。
図20は、第1変形例の発電装置100の梁104に、圧電素子108、110および114が設けられている様子を示した説明図である。図20(a)は、梁104の一方の面から見た平面図である。図20(b)は、梁104の他方の面から見た平面図である。図20(a)には、圧電素子108が設けられている様子が示されており、図20(b)には、圧電素子110および114が設けられている様子が示されている。
梁104の構造や、発電装置100が設置される環境によっては、梁104が波打つように変形する場合が起こり得る。すると、梁104が撓んだ場合の変形が大きくなる箇所と、小さくなる箇所とが、梁104の長手方向に沿って発生する。したがって、図20(b)に示すように、短い2つの圧電素子110および114を、梁104の中央に長手方向に沿って一列に設けておき、十分な振幅の電圧波形または電流波形を発生する圧電素子を選択すれば、たとえ梁104が波打つような変形が発生した場合でも、適切なタイミングでスイッチSWを制御することが可能となる。
なお、図14には、圧電素子108、110および114の3つの圧電素子が設けられているものとして説明したが、4つ以上の圧電素子を設けるようにしてもよい。
E−2.第2変形例:
上述した各種の実施例、あるいは第1変形例では、圧電素子110(および圧電素子114)が、圧電素子108とは異なる面に設けられているものとして説明した。しかし、圧電素子110を、圧電素子108と同じ面に設けるようにしてもよい。
図21は、第2変形例の発電装置100の梁104の同じ面に、圧電素子108および110が設けられている様子を示した説明図である。図21に示した例では、圧電素子108と圧電素子110とが、梁104の同じ面に設けられている。また、圧電素子110は、圧電素子108と同じ長さを有するが幅は狭くなっている。このように、圧電素子108に対して、ほぼ同じ長さを有する圧電素子110を、圧電素子108と平行に設けておけば、圧電素子108と圧電素子110とはほぼ同じ変形をする。したがって、圧電素子108の変形方向が切り換わるタイミングを精度良く検出して、適切なタイミングでスイッチSW1を制御することが可能となる。
もちろん、圧電素子108と、圧電素子110とを梁104の同じ面に設けた場合、圧電素子110の分だけ、発電用の圧電素子108の大きさ(面積)が小さくなる。その結果、前述した各種の実施例あるいは第1変形例のように、圧電素子108と圧電素子110とを異なる面に設けた場合に比べて、発電能力が低下する。しかし図21に示したように、圧電素子110は幅が狭いので、圧電素子108の面積の減少を比較的小さな値に抑制することができ、発電能力の低下も比較的小さくすることができる。
その一方で、図21に示した第2変形例のように、圧電素子108と圧電素子110とを同じ面に設けておけば、圧電素子108および110を同じ工程で設けることができる。これに対して、前述した各種実施例や第1変形例のように、圧電素子108と圧電素子110とを異なる面に設けた場合には、圧電素子108を設ける工程と、圧電素子110を設ける工程とを別の工程にしなければならない。したがって、第2変形例のように圧電素子108と圧電素子110とを同じ面に設けることで、発電装置100の製造工程を単純化することが可能となる。逆に言えば、前述した各種の実施例や第1変形例のように、圧電素子108と圧電素子110とを別の面に設けた場合、発電装置100の製造工程は複雑となるが、発電用の圧電素子108の面積を大きくすることができるので、発電能力を高くすることが可能となる。
以上では、制御用の圧電素子110が、圧電素子108とほぼ同じ長さを有するが、幅は圧電素子108よりも狭いものとして説明した。しかし、圧電素子108と幅がほぼ同じで、長さが短い圧電素子110を使用し、それら圧電素子108および110を梁104の同じ面に設けることとしてもよい。
図22は、圧電素子108および110が、梁104の同じ面に設けられた第2変形例の他の態様を示した説明図である。図22に示す例は、変形部材(梁104)は、変形しない固定端(支持端102との接続部分)を含んで構成され、圧電素子110は、圧電素子108より固定端に近い箇所に設けられている例である。梁104のような、いわゆる片持ち梁では、先端から支持端102に近付くにしたがって曲げモーメントが大きくなり、それに伴って、単位長さ当りの梁104の変形量も大きくなる。したがって、圧電素子110を支持端102の近くに設けることでセンサーとしての感度が高くなり、その分だけ、圧電素子110の幅を狭くすることができる。その結果、圧電素子108の面積を広くすることができるので、圧電素子108と圧電素子110とを同じ面に設けたことによる発電能力の低下を抑制することが可能となる。
E−3.第3変形例:
上述した第2変形例では、2つの圧電素子108および110が、梁104の同じ面に設けられているものとして説明した。しかし、3つ以上の圧電素子を設けるようにしてもよい。
図23は、同じ面に3つ以上の圧電素子108、110および114が設けられた第3変形例を示した説明図である。図示した例では、圧電素子108よりも幅が狭く、長さについても圧電素子108の半分以下の短い圧電素子110および114が一列に並べて、圧電素子108に対して平行に設けられている。
前述したように、梁104の構造や発電装置100が設置される環境によっては、梁104が波打つように変形する場合が起こり得る。すると、梁104が撓んだ場合の変形が大きくなる箇所と、小さくなる箇所とが、梁104の長手方向に沿って発生する。したがって、圧電素子110および114が設けられた位置によっては、十分な感度(検出する電圧値または電流値)が得られない場合が起こり得る。そこで、図23に示すように、短い2つの圧電素子110および114を、梁104の長手方向に沿って一列に設けておき、十分な感度が得られる圧電素子を選択すれば、たとえ梁104が波打つような変形が発生した場合でも、適切なタイミングでスイッチSW1を制御することが可能となる。もちろん、圧電素子としては、圧電素子108、110および114の3つに限らず、4つ以上の圧電素子を設けるようにしても構わない。
なお、図23に示した第3変形例では、2つの短い圧電素子110および114が、梁104の長手方向に一列に並んで設けられているものとして説明した。したがって、2つの短い圧電素子110および114は、圧電素子108に対しては一方の側に設けられていることになる。これに対して、圧電素子108の両側に、圧電素子108とほぼ同じ長さで、幅の狭い圧電素子110および114を設けることとしてもよい。
図24は、同じ面に3つ以上の圧電素子108、110および114が設けられた第3変形例の他の態様を示した説明図である。前述したように、梁104の構造や発電装置100が設置される環境などの影響で、梁104を捻るような変形が発生することが起こり得る。そして、梁104に捻りが発生すると、圧電素子110や圧電素子114が発生する電流波形の位相がシフトして、適切なタイミングでスイッチSW1を切り換えることができなくなることが起こり得る。しかし、図24に示したように、圧電素子108の両側に、幅の狭い圧電素子110および114を設けておき、それぞれの圧電素子110および114の電圧値または電流値を用いてスイッチSW1を制御したときの発電量を計測して、発電量が多い方の圧電素子110または114を選択しておく。こうすれば、たとえ梁104に捻りが生ずるような場合でも、発電能力の低下を少なくすることができる。
以上、本実施例あるいは変形例について説明したが、本発明はこれら本実施例あるいは変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
たとえば、上述した実施例では、圧電素子108および110が片持ち梁構造の梁104に取り付けられているものとして説明した。しかし、圧電素子108および110が取り付けられる部材は、振動などによって容易に繰り返し変形する部材であれば、どのような部材であっても構わない。たとえば、薄膜の表面に圧電素子108および110を取り付けてもよいし、弦巻バネの側面に圧電素子108および110を取り付けても構わない。
また、本発明の発電装置は振動や移動に応じて発電するため、たとえば、橋梁や建築物あるいは地すべり想定箇所などに発電装置を設置すれば地震などの災害時に発電し、電子機器などのネットワーク手段に必要時(災害時)だけ電源供給することもできる。
なお、電子機器に限らず、本発明の発電装置は小型化が可能であるため、あらゆる機器に設置することもできる。たとえば、車両や電車などの移動手段に本発明の発電装置を用いることで、移動に伴う振動によって発電し、移動手段に備わる機器に効率良く電力供給することもできる。
このとき、あらゆる振動に対応するために、梁104の長さや錘106の重さが異なる複数の発電装置100を移動手段に組み込んでもよい。たとえば、複数の発電装置100が共通の支持端102に固定されている発電ユニットとして構成されていてもよい。
また、本発明の発電装置を電池の代わりにリモコン等の小型電子機器に組み込むこともできる。
さらに、特定の機器等に設置されるのではなく、本発明の発電装置がたとえばボタン電池、乾電池と同じ形状であって、電子機器一般で使用されてもよい。このとき、振動によって蓄電素子への充電が可能であるため、電力が喪失した災害時でも電池として使用可能である。また、一次電池より寿命が長いため、ライフサイクルの観点で環境負荷低減を図ることができる。
本発明は、実施例で説明した構成と実質的に同一の構成(たとえば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施例で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施例で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施例で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。