以下に説明する実施形態は、電力の需要家において電力メータに子機が付設され、複数台の子機がそれぞれ電力メータから取得した検針データを親機に集約するために、1台の親機と複数台の子機とが通信する場合を想定して説明する。ただし、子機の機能は検針データの収集にとどまらず、需要家が使用する電気機器が所定の通信機能を有する場合、当該電気機器と通信することにより、電力エネルギーを管理する機能を子機に付与することも可能である。
親機は、電力会社、または電力会社から委託されたサービス提供会社が運営する管理サーバを想定している。管理サーバは、1台のコンピュータを意味するのではなく、複数台のコンピュータで実現されていてもよい。また、親機は、複数階層に階層化された通信ネットワークを構築していてもよい。たとえば、管理サーバと複数台の中継装置とにより上位の通信ネットワークが構築され、中継装置ごとに子機と通信する下位の通信ネットワークが構築されていてもよい。
なお、以下に説明する実施形態は、電力の管理の用途に制限されるものではない。すなわち、親機と複数台の子機との間で通信を行う通信ネットワークであって、親機との間で情報を伝送する子機が他の子機による情報の中継を許容するマルチホップ通信を行う場合であれば適用可能である。なお、以下に説明する実施形態では、具体的な使用例については詳述せず、主として、親機と子機との間で通信ネットワークを構築する機能について説明する。
上述したように、需要家の電力メータから子機が検針データを取得し、子機から親機に検針データを伝送する。通信ネットワークの例を図2に示す。図2に示す通信ネットワークは、1台の親機20と複数台の子機10とにより構築されている。また、子機10は、需要家が使用する機器のうち通信機能を有する機器との間で通信することにより、機器の動作を管理(管理や設定)することが可能になっている。
一方、親機20との間に他の子機10による中継を許容する子機10は、電波を伝送媒体とする無線通信を行う機能と、配電線を伝送媒体とする電力線搬送通信を行う機能との少なくとも一方を有している。
すなわち、子機10は、無線通信と電力線搬送通信との両方を行う構成と、無線通信のみを行う構成と、電力線搬送通信のみを行う構成との3種類に分類される。以下では、無線通信と電力線搬送通信との両方を行う子機10を「ハイブリッド子機11」と呼び、無線通信のみを行う子機10を「無線子機12」、電力線搬送通信のみを行う子機10を「有線子機13」と呼ぶ。図2において、電力線搬送通信の通信路Laは実線で示し、無線通信の通信路Lbは破線で示している。
ハイブリッド子機11は、無線通信と電力線搬送通信とのように物理層が異なる通信方式が選択可能である場合のほか、同じ無線通信であっても情報の到達範囲や信号干渉範囲が異なる周波数帯や変調方式が通信方式として選択可能であってもよい。いずれにしても、異なる通信方式が選択されることによって、情報の伝達範囲や信号干渉範囲が異なっていればよい。
図2に示す構成例では、集合住宅やテナントビルのように一つの建物を共用する複数の需要家と、戸建て住宅のように1つの建物を占有する需要家とが混在する場合を想定している。すなわち、図の右部において配電線L1に接続された複数個の子機10は前者に対応し、図の左部において独立している子機10は後者に対応している。
配電線L1は降圧トランスT1の二次側に接続され、この配電線L1には、ハイブリッド子機11または有線子機13が接続され、配電線L1に接続された子機10の間では、基本的には、配電線L1を伝送媒体に用いて電力線搬送通信を行う。ただし、配電線L1に接続されている複数の子機10の間でも、通信品質が低下した場合には、無線通信が許容される。図には、説明のために有線子機13を含めて記載しているが、配電線L1に接続されたすべての子機10がハイブリッド子機11であってもよい。
一方、図2の左部の2台の子機10は無線子機12であって、電力線搬送通信は行わない。ただし、戸建て住宅のように1つの建物を占有する需要家であっても、降圧トランスの二次側に接続された配電線を用いて上述した中継装置と通信する場合、これらの子機10はハイブリッド子機11あるいは有線子機13に代えることが可能である。
ハイブリッド子機11の構成例を図3に示す。ハイブリッド子機11は、基本的には、制御部110と記憶部111と通信部112とを備える。
制御部110は、マイコンのようにプログラムに従って動作するデバイスを主たるハードウェア要素として備える。制御部110は、通信ルートを構築する処理を行うルート構築部1101と、構築された通信ルートを用いて通信を行う通信処理部1102と、電力線搬送通信と無線通信とのどちらを行うかを選択する選択処理部1103とを備える。
記憶部111は、制御部110を動作させるためのプログラムを記憶するほか、少なくとも、第1のノードテーブル1111と第2のノードテーブル1112とを備える。記憶部111は、制御部110とは別のデバイスを用いることが望ましいが、一体化されていてもよい。
通信部112は、無線通信を行うために電波の送受信を行う無線通信インターフェイス部1121と、電力線搬送通信を行うために配電線L1(図2参照)に接続される電力線搬送通信インターフェイス部1122とを備える。以下では、「無線通信インターフェイス部」を「無線I/F」と略称し、「電力線搬送通信インターフェイス部」を「電力線I/F」と略称する。ハイブリッド子機11において、無線I/F1121と電力線I/F1122とのどちらを用いるかは、制御部110における選択処理部1103がルート構築部1101によるルートの構築結果に基づいて決定する。
なお、無線子機12は、ハイブリッド子機11のうち選択処理部1103および電力線I/F1122を省略した構成であり、有線子機13は、ハイブリッド子機11のうち選択処理部1103および無線I/F1121を省略した構成になる。なお、実際には、ハイブリッド子機11と無線子機12および有線子機13とでは、記憶部111の構成にも相違があるが、ハードウェア構成に関してはほぼ同様の構成になる。
ところで、子機10と親機20とによって構築される通信ネットワークは、親機20との間で情報を伝送する子機10が他の子機10による情報の中継を許容するマルチホップ通信を行うから、どの子機10を中継に用いるかを選択しなければならない。そのため、子機10は、それぞれ通信品質が良好であるルート(経路)をあらかじめ探索して記憶し、あらかじめ探索した通信品質のよいルートを利用して親機20との間で通信を行う。また、子機10は、親機20との間の情報の伝送に失敗した場合、同じルートで再送を行ったり、次に通信品質のよいルートを選択して再送を行ったりする。これらの技術は周知技術であるから説明を省略する。
以下では、ルート構築部1101によって上述したルートの探索を行う手順について説明する。つまり、子機10ごとに親機20と通信するためのルートを探索する手順について説明する。ここで、情報の伝送を行うノード(子機10と親機20との総称)の間のルートに他のノードを含まない場合に、ノード間に形成される通信路を「リンク」と呼ぶ。また、リンクの通信品質の評価値を「リンクコスト」、情報の伝送を行うノードの間のルートの全体でのリンクコストを「ルートコスト」と呼ぶ。すなわち、ルートコストは、ルートに含まれるすべてのリンクにおけるリンクコストの総和である。リンクコストは、リンクごとのSNRや信号強度などを用いて求められる整数値であって、通信品質がよいほど小さい値になるように算出される。さらに、ルートを構成するリンクの個数を「ホップ数」と呼ぶ。したがって、他の子機10を通さずに通信を直接行う場合のホップ数は1になる。2台のノードの間のホップ数が1である場合、一方のノードに対して他方のノードを「隣接ノード」と呼ぶ。
ここに、2台のノードの間で無線通信を行う場合、ノードごとの受信感度や電波干渉状況が異なっていると、送受信の向きによってリンクコストに差が生じることがある。そのため、リンクコストを正確に求めるには、2台のノードの間で双方向に通信を行うことが必要である。しかし、多数台のノードを含む通信ネットワークであると、すべての隣接ノードについて双方向に無線通信を行っていると、リンクコストの取得に多大な時間を要することになる。
そこで、本実施形態は、無線信号による受信品質のみを用いて仮のリンクコストを算出し、仮のリンクコストから仮のルートコストを求めることを許容している。受信品質のみを用いた仮のリンクコストであれば、後述するHelloパケットを受信するだけで算出可能であり、仮のルートコストもHelloパケットの受信のみで算出可能になる。すなわち、リンクコストおよびルートコストの取得に要する時間が短縮され、またトラフィックの増加抑制につながる。
ここでは、各子機10は、隣接ノードの探索を行った後であって、リンクコストおよびルートコストが算出された状態である場合を想定して説明する。ハイブリッド子機11は、無線通信の通信路と電力線搬送通信の通信路とを選択可能であるから、ルート構築部1101は、隣接ノードとの間で情報を伝送する際に、無線I/F1121と電力線I/F1122とのどちらを用いるかを選択しなければならない。無線I/F1121と電力線I/F1122との選択は、図4(a)に示す第1のノードテーブル1111と図4(b)に示す第2のノードテーブル1112とのデータを用いて行われる。
以下では、図1に示す通信ネットワークを構築する場合を例として説明する。図中の四角形はノードを表し、ノード間を接続する実線あるいは破線はリンクを表す。また、リンクのうち、実線は電力線搬送通信を行うリンクを表し、破線は無線通信を行うリンクを表している。ノードを表す四角形の中に示した数値はノードの識別情報であり、リンクに並記した数値はリンクコストである。
ルート構築部1101は、ルートコストを求めてルートを決定する本処理の前に、図1に示すような通信ネットワークを構築する前処理を行う。つまり、ルート構築部1101は、前処理として、図4(a)に示す第1のノードテーブル1111および図4(b)に示す第2のノードテーブル1112を用いることによって、リンクごとに電力線搬送通信と無線通信とのどちらを用いるかを決定する処理を行う。
第1のノードテーブル1111および第2のノードテーブル1112は、着目するハイブリッド子機11の隣接ノードごとに、親機20との間で当該隣接ノードを通るルートに関する情報を管理する。具体的には、ノードテーブル1111,1112は、ハイブリッド子機11の隣接ノードの識別情報と、親機20と隣接ノードとの間のルートのホップ数と、当該ルートに含まれる子機10の識別情報およびルート上での中継の順序とを含んでいる。さらに、ノードテーブル1111,1112は、隣接ノードごとに、親機20との間のルートコスト(「上位ルートコスト」という)と、ハイブリッド子機11との間のリンクコストと、親機20とハイブリッド子機11との間の全体のルートコストとを含む。上位ルートコストとリンクコストとの和は、全体のルートコストに一致する。
ここに、ルートに関する情報は、着目するハイブリッド子機11と隣接ノードとの間のリンクの種類に応じて、第1のノードテーブル1111と第2のノードテーブル1112とに振り分けて管理される。つまり、無線通信を行うリンクで接続される隣接ノードは、第1のノードテーブル1111に格納され、電力線搬送通信を行うリンクで接続される隣接ノードは、第2のノードテーブル1112に格納される。
いま、識別情報が「13」である子機10を着目するハイブリッド子機11とすると、このハイブリッド子機11の隣接ノードは、識別情報が「1」「3」「12」「14」「23」である子機10になる。ここで、識別情報が「1」「3」である子機10は無線子機12であり、識別情報が「12」「14」である子機10はハイブリッド子機11であり、識別情報が「23」である子機10は有線子機13であるものとする。以下では、識別情報が「n」の子機10を、「n」の子機10という。
図1に示す通信ネットワークを想定しているから、「13」のハイブリッド子機11に関して第1のノードテーブル1111に登録される隣接ノードは、「1」「3」の子機10と親機20とになる。このうち、「3」の子機10に着目すると、「13」のハイブリッド子機11と親機20との間で「3」の子機10を通るルートは、「2」の子機10を含み、親機20から1ホップ目は「2」の子機10であり、2ホップ目は「3」の子機10になる。隣接ノードである「3」の子機10は、親機20からのホップ数が2であり、上位ルートコストが15(=6+9)になる。また、「13」のハイブリッド子機11と「3」の子機10との間のリンクコストは8であるから、全体のルートコストは23(=15+8)になる。同様にして、他の隣接ノードについてもデータが登録される。
一方、「13」のハイブリッド子機11における第2のノードテーブル1112に登録される隣接ノードは、電力線搬送通信を行うリンクで接続されている隣接ノードであるから、「12」「14」「23」の子機10になる。「14」の子機10に着目すると、「13」のハイブリッド子機11と親機20との間で「14」の子機10を通るルートは、「2」の子機10を含み、親機20から1ホップ目は「2」の子機10であり、2ホップ目は「14」の子機10になる。また、隣接ノードである「14」の子機10は、親機20からのホップ数が2であり、上位ルートコストが17(=6+11)になる。同様にして、他の隣接ノードについてもデータが登録される。
第1のノードテーブル1111と第2のノードテーブル1112とにデータが登録されると、選択処理部1103は、第1のノードテーブル1111における最小のルートコストと、第2のノードテーブル1112における最小の上位ルートコストとを比較する。第2のノードテーブル1112における最小の上位ルートコストに対して、第1のノードテーブル1111における最小のルートコストのほうが小さい場合、全体のルートコストは、第1のノードテーブル1111から選択された隣接ノードのほうが小さくなる。
つまり、上述した関係が成立する場合、第2のノードテーブル1112から選択した隣接ノードを含むルートは、第1のノードテーブル1111においてルートコストを最小にする隣接ノードを通るルートよりルートコストを小さくすることはない。そのため、着目するハイブリッド子機11において、親機20とのルートは無線通信の通信路を選択するほうが望ましいと言える。
上述した動作を行うために、選択処理部1103は、第1のノードテーブル1111のうちの最小のルートコストを、隣接ノードに含まれるハイブリッド子機11および有線子機13に電力線I/F1122を通して通知する。電力線I/F1122を通して隣接ノードにルートコストを通知する際には、マルチホップ通信においてノードが動作していることを示すHelloパケット(以下、「Hパケット」という)を用いる。Hパケットは各ノードからブロードキャストで送出され、Hパケットを送出したノードが通信ネットワークに存在することを他のノードに通知する。
したがって、Hパケットは、基本的には、図5(a)のように、オペレーションコード、送信元であるノードの識別情報、シーケンス番号、送信先のノードの種類を含んでいればよい。ただし、上述したように、Hパケットは、無線I/F1121を用いた場合のルートコストを他のノードに通知する必要があるから、ノードが通信ネットワークに参加する際に用いられるHパケットを除けば、Hパケットには、ルートコストも含まれる。
ここに、オペレーションコードは、パケットの種類を示す識別子である。パケットの種類には、Hパケットのほか、Hパケットを受けたノードが必要に応じて返す応答パケットや、通信品質を通知するためのパケットなど、複数種類のパケットが用いられる。送信元のノードの識別情報は、独自に付与した識別情報のほかノードのMACアドレスなどを用いることも可能である。シーケンス番号は、通信に際してパケットに付与される番号であって、一連の通信で用いられるパケットに同じシーケンス番号が付与されることにより、関連したパケットであることが示される。ルートコストは、第1のノードテーブル1111から得られるルートコストの最小値である。
ハイブリッド子機11が、電力線I/F1122を通して隣接ノードにルートコストを含むHパケットを送信すると、Hパケットを受信した隣接ノードは、第2のノードテーブル1112に格納されている上位ルートコストと比較する。ここで、受信したルートコストが上位ルートコストよりも小さい場合、当該隣接ノードの選択処理部1103は、上位側(親機20に近い側)の通信路を形成するために無線I/F1121を選択する。無線I/F1121を選択した場合であっても、下位側については電力線I/F1122を選択する。
上述したように、選択処理部1103は、無線I/F1121と電力線I/F1122とのどちらを用いるかを以下の手順で選択する。すなわち、ハイブリッド子機11は、まず、電力線I/F1122を用いて、第1のノードテーブル1111の最小のルートコストを含むHパケットを送信する。次に、このHパケットを受信したハイブリッド子機11の選択処理部1103は、Hパケットに含まれるルートコストと、第2のノードテーブル1112における最小の上位ルートコストとを比較する。選択処理部1103は、ルートコストが上位ルートコストよりも小さい場合は、上位側について無線I/F1121を選択し、下位側について電力線I/F1122を選択する。また、選択処理部1103は、ルートコストが上位ルートコストよりも大きい場合は電力線I/F1122のみを選択する。
選択処理部1103が上述した処理を行うことによって、図1に示す通信ネットワークにおいて、たとえば「12」「14」のハイブリッド子機11は電力線I/F1122のみが用いられる。また、「13」のハイブリッド子機11は上位側において無線I/F1121が用いられ、下位側において電力線I/F1122が用いられる。「11」「15」のハイブリッド子機11についても「13」のハイブリッド子機11と同様である。これによって、無線I/F1121を用いて上位側に接続するハイブリッド子機11を、ルートの品質がよい少数に限定することができる。
上述した選択処理部1103は、上位側において無線I/F1121と電力線I/F1122とのどちらを用いるかを選択する選択基準として、ルートコストを用いているが、通信路を決めるには他の選択基準を用いてもよい。
通信路の選択基準としては、たとえば、電力線搬送通信を行う隣接ノードの台数を用いることが可能である。つまり、電力線搬送通信を行う隣接ノードの台数が多いハイブリッド子機11において、上位側の通信に無線I/F1121を用いるという選択基準を設定してもよい。
以下では、図6に示す通信ネットワークを例として動作例を説明する。図6に示す通信ネットワークにおいて、「12」の子機10を着目するハイブリッド子機11とすると、電力線搬送通信を行う隣接ノードは「11」「13」「21」「22」の子機10になる。
隣接ノードの台数を選択基準に用いる場合、ハイブリッド子機11における第2のノードテーブル1112の項目として、電力線I/F1122を用いて通信を行う場合のリンク数が必要になる。このリンク数は、電力線搬送通信を用いる隣接ノードであるから、ハイブリッド子機11と有線子機13とを含んでいる。
したがって、「12」のハイブリッド子機11における第2のノードテーブル1112の内容は、図7のようになる。図示例では、親機20と隣接ノードとの間のルートに含まれる子機10の識別情報およびルート上での中継の順序に関する情報は省略しているが、この情報を含んでいてもよい。第2のノードテーブル1112におけるホップ数は、無線通信によるホップ数であって、「21」「22」の子機10は無線通信を行わないことを想定しているから、図示例において「21」「22」の子機10にはホップ数の情報は含まれていない。
図7に示す第2のノードテーブル1112によれば、電力線搬送通信を行う隣接ノードの台数(つまり、リンク数)は、「4」であることがわかる。一方、リンク数の項目を見ると、隣接ノードにおける最大のリンク数は「2」であることがわかる。このように、ハイブリッド子機11の選択処理部1103は、第2のノードテーブル1112を用いることにより、隣接ノードの台数(リンク数)と、隣接ノードごとのリンク数とを知ることができる。この例の場合、「12」のハイブリッド子機11のリンク数が、電力線搬送通信を行う他の隣接ノードにおけるリンク数よりも多いから、「12」のハイブリッド子機11において、無線I/F1121を用いて上位側の通信路を形成する。
上述した動作を採用する場合、選択処理部1103は、無線I/F1121と電力線I/F1122とのどちらを用いるかを以下の手順で選択する。すなわち、ハイブリッド子機11は、電力線I/F1122を用いて、第2のノードテーブル1112に格納された情報から得られるリンク数を含むHパケットを送信する。このHパケットは、図5(b)に示すように、オペレーションコード、送信元の識別情報、シーケンス番号、送信先のノードの種類に加えてリンク数を含む。したがって、このHパケットを受信したハイブリッド子機11の選択処理部1103は、第2のノードテーブル1112のリンク数の項目に、Hパケットに含まれるリンク数を格納することが可能になる。
選択処理部1103は、第2のノードテーブル1112において、すべての隣接ノードのリンク数の項目にデータが格納されると、第2のノードテーブル1112の最大のリンク数と、隣接ノードの台数とを比較する。選択処理部1103は、隣接ノードの台数が最大のリンク数よりも多い場合は、上位側について無線I/F1121を選択し、下位側について電力線I/F1122を選択する。また、選択処理部1103は、最大のリンク数が隣接ノードの台数以下である場合は、電力線I/F1122のみを選択する。これによって、上位側に無線I/F1121を用いるハイブリッド子機11の台数を必要最小限に限定することができる。
ここにおいて、上述の動作では、隣接ノードの台数をHパケットで通知することに代えて、隣接ノードの識別情報のリストを通知してもよい。
通信路の選択基準は、ハイブリッド子機11の隣接ノードに関するトポロジであってもよい。すなわち、隣接ノードにおける上位側のリンクが1本であるか複数本であるかに応じて、当該ハイブリッド子機11の上位側の通信路を無線I/F1121を用いて形成するか否かを選択してもよい。ハイブリッド子機11の隣接ノードにおける上位側のリンクが1本である場合、その隣接ノードは、当該ハイブリッド子機11を通してのみ親機20との間のルートを構築することになる。このようなトポロジの場合、当該ハイブリッド子機11の上位側の通信路を無線I/F1121により形成するのである。
以下では、図8に示す通信ネットワークを例として動作例を説明する。図8に示す通信ネットワークにおいて、「11」の子機10を着目するハイブリッド子機11とすると、電力線搬送通信を行う隣接ノードは「12」「21」「22」の子機10になる。
隣接ノードに関するトポロジを選択基準に用いる場合、ハイブリッド子機11における第2のノードテーブル1112の項目として、隣接ノードごとの隣接ノードの識別情報が必要になる。すなわち、通信ネットワークにおいて、着目するハイブリッド子機11から2ホップの範囲内である子機10についてリンクを知る必要がある。したがって、「11」のハイブリッド子機11における第2のノードテーブル1112は、図9のように、2ホップ目のノードから見た隣接ノードの識別情報を含む。図示例では、親機20と隣接ノードとの間のルートに含まれるノードの識別情報およびルート上での中継の順序に関する情報は省略しているが、この情報を含んでいてもよい。
図9に示す第2のノードテーブル1112によれば、電力線搬送通信を行う隣接ノードのそれぞれについて、次の隣接ノードの識別情報が含まれる。すなわち、「11」のハイブリッド子機11の隣接ノードは、「12」「21」「22」の子機10であり、「12」の子機10の隣接ノードは、「11」「13」「22」の子機10になる。また、「21」の子機10の隣接ノードは、「11」の子機10のみであり、「22」の子機10の隣接ノードは、「11」「12」の子機10になる。
このように、ハイブリッド子機11の選択処理部1103は、第2のノードテーブル1112を用いることにより、当該ハイブリッド子機11との間でのみ上位側のリンクが形成される子機10が含まれるか否かを知ることができる。この例の場合、「21」の子機10は、「11」のハイブリッド子機11のみが隣接ノードになっているから、「11」のハイブリッド子機11において、無線I/F1121を用いて上位側の通信路を形成する。
上述した動作を採用する場合、選択処理部1103は、無線I/F1121と電力線I/F1122とのどちらを用いるかを以下の手順で選択する。すなわち、ハイブリッド子機11は、まず、電力線I/F1122を用いて、第2のノードテーブル1112に格納された情報から得られるリンク数を含むHパケットを送信する。このHパケットは、図5(c)に示すように、オペレーションコード、送信元の識別情報、シーケンス番号、送信先のノードの種類に加えて、隣接ノードごとの隣接ノードの識別情報を含む。したがって、このHパケットを受信したハイブリッド子機11の選択処理部1103は、隣接ノードのそれぞれから見た隣接ノードの識別情報の項目にデータを格納することが可能になる。
選択処理部1103は、第2のノードテーブル1112におけるすべての隣接ノードについて、その隣接ノードから見た隣接ノードの識別情報の項目にデータが格納されると、隣接ノードが1個だけである隣接ノードの有無を判断する。隣接ノードが1個だけである隣接ノードが存在する場合、着目するハイブリッド子機11の上位側について無線I/F1121を選択する。また、このハイブリッド子機11の下位側については電力線I/F1122を選択する。要するに、着目するハイブリッド子機11の隣接ノードごとに、当該隣接ノードから見た隣接ノードを抽出し、隣接ノードが1個だけであるという条件が成立した場合は、着目するハイブリッド子機11の上位側について無線I/F1121を選択するのである。これにより、上位側に無線I/F1121を用いるハイブリッド子機11の台数を抑制しながらも、下位側に電力線搬送通信で接続される子機10が良好な品質の通信ルートを生成できるようになる。
本実施形態は、ハイブリッド子機11において通信路を定めるために上述した3種類の選択基準の少なくとも1種類を用いることが可能である。ここに、ハイブリッド子機11は、上述した選択基準を採用することによって、電力線搬送通信を無線通信に優先して選択することになる。たとえば、需要家が集合住宅やテナントビルなどであって、建物内では電力線搬送通信を用いるとすれば、情報の伝達範囲が建物内などに制限されるが、無線通信の場合は伝達範囲が広く、広範囲に信号干渉を与えるおそれがある。上述の処理によって、複数台のハイブリッド子機11のなかから、無線I/F1121を用いて上位側に接続するハイブリッド子機11が限定されるため、無線通信側の通信トラフィックが低減され、パケット衝突などによる通信エラーを抑制できる。
ここで、上述した選択基準を適用してハイブリッド子機11の上位側の通信路を無線I/F1121で形成しても、ハイブリッド子機11の下位側の通信路のリンクコストが大きいと、隣接ノードの通信品質を確保できない場合がある。したがって、着目するハイブリッド子機11の隣接ノードについて上位ルートコストとともに、着目するハイブリッド子機11との間のリンクコストも評価することが好ましい。
以下では、図10に示す通信ネットワークを例として動作例を説明する。図10に示す通信ネットワークにおいて、「12」の子機10を着目するハイブリッド子機11とすると、電力線搬送通信を行う隣接ノードは「11」「13」「21」「22」の子機10になる。このハイブリッド子機11における第2のノードテーブル1112は、図11に示すように、図4(b)に示した例と同様の項目を有している。ただし、着目するハイブリッド子機11との間の電力線搬送通信によるリンクコストに具体例を記載している。
図11に示す第2のノードテーブル1112によれば、隣接ノードである「11」「13」のハイブリッド子機11に関する上位ルートコストは、それぞれ11、12である。一方、着目するハイブリッド子機11のルートコストの最小値は15になっている。このことから、上述した選択基準であれば、このハイブリッド子機11において無線I/F1121が選択されることはない。つまり、「12」のハイブリッド子機11のルートコストは、隣接ノードである「11」「13」のハイブリッド子機11の上位ルートコストより大きいから、「12」のハイブリッド子機11は電力線I/F1122が選択されることになる。これに対して、ここでは、着目するハイブリッド子機11と隣接ノードとのリンクコストを併せて考慮することにより、「12」のハイブリッド子機11において無線I/F1121が選択されるようにしているのである。
すなわち、図10に示す例では、「12」のハイブリッド子機11と隣接ノードである「11」「13」のハイブリッド子機11との間のリンクコストは、それぞれ32、41になっている。そのため、「12」のハイブリッド子機11が、上位側の通信に無線I/F1121を用いる場合のルートコストである15に対して、隣接ノードを通るルートのルートコストは、それぞれ43、53であり、大幅に大きくなっている。したがって、このような条件が成立する場合は、上述した選択基準であれば、上位側の通信に電力線I/F1122を用いるハイブリッド子機11であっても、無線I/F1121を用いるのが望ましい。
選択処理部1103は、第1のノードテーブル1111から得られる最小のルートコストと、第2のノードテーブル1112から得られる上位ルートコストおよびリンクコストの和であるルートコストとを比較する。そして、選択処理部1103は、両ルートコストの差が規定の閾値を超える場合は、無線I/F1121を選択する。このような制限を付加しておくことによって、通信品質が非常に劣るルートが形成される可能性が低減される。
親機20と子機10との間に形成される通信ネットワークにおいてリンクとなる通信路では、上述した選択基準や制限によって、無線通信あるいは電力線搬送通信が使用されることになる。ところで、子機10は、上述したように、需要家が使用する機器との間で通信が可能であって、機器との間でも無線通信あるいは電力線搬送通信が用いられる。したがって、子機10と機器との間の通信が、子機10と親機20との間の通信と干渉する可能性がある。
そこで、この種の干渉を避けるために、子機10と親機20との間の通信には、子機10と機器との間の通信で用いる伝送媒体とは異なる伝送媒体を優先的に用いることが好ましい。たとえば、需要家において子機10と機器との間で無線通信を行うとすれば、該当する子機10と親機20との間の通信には、電力線搬送通信が優先的に用いられるようにすることが好ましい。
子機10と親機20との間の通信路の伝送媒体を上述のようにして選択するには、子機10と機器との間の通信路の伝送媒体を選択した後、子機10において選択可能な範囲で、先に選択した伝送媒体とは異なる伝送媒体を選択すればよい。さらに、選択した伝送媒体が優先的に使用されるように選択基準に重み付けを行えば、子機10と機器との間の通信路と子機10と親機20との間の通信路との分離が容易になる。このように通信路が明確に分離されると、トラフィックの増加が抑制され、パケットの衝突も抑制される。重み付けの技術については後述する。
ところで、通信ネットワークに含まれるリンクのリンクコストは、Hパケットの送受信によって動的に変化する。電力線搬送通信の場合は、家電機器や電気設備のような電気機器の動作状態やスイッチのオン/オフなどに伴って発生するインピーダンスやノイズの変化によって、SNRが変化する。無線通信の場合は、親機20や子機10そのものは移動しなくても、車や人の移動など周辺環境の変化により、受信信号強度が変化する。しかしながら、ごくわずかな変化によってルートを変更すると、システム全体でルートが収束せずに発散するなど、運用管理上好ましくない。したがって、電力線搬送通信と無線通信との特性に応じたリンクが一旦形成された後は、リンクコストが大幅に変化しなければ、リンクを変更せずに用いることが好ましい。
このことから、ハイブリッド子機11は、上位側の通信路に無線通信を使用することを決定した後は、上位側の通信路に無線通信を使用していることを示すフラグを設定したHパケットを送出することが好ましい。このHパケットを受信した隣接ノードのハイブリッド子機11は、フラグを設定したハイブリッド子機11において優先的に無線通信が使用されるように、通信路の選択基準に重み付けを行う。つまり、ハイブリッド子機11は、通信路に無線通信をすでに採用している場合、そのまま無線通信が選択されやすくなるように、通信路の選択基準に重み付けがなされる。
この重み付けは、たとえば、ルートコストと上位ルートコストとを比較する選択基準を用いる場合には、フラグを設定したハイブリッド子機11におけるルートコストを所定値だけ引き下げればよい。また、選択基準に隣接ノードの台数を用いる場合には、無線通信が選択されているハイブリッド子機11から送出するHパケットに含める台数を所定数だけ加算すればよい。
以上のように、ハイブリッド子機11において、上位側の通信路に無線通信を使用することが一旦選択されると、その状態が可及的に維持されるから、無線通信を使用するハイブリッド子機11が頻繁に変化するのを防止することができる。
なお、ハイブリッド子機11は、上位側の通信路で用いる通信方式と下位側の通信路で用いる通信方式とを選択するにあたり、異なる通信方式が選択される確率を同じ通信方式が選択される確率よりも高めるように選択基準を設定しておくことが好ましい。