以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
本実施の形態は、第1の蓋体の貫通口に蒸着材料が付着しにくく、且つ高温加熱により劣化しにくい蒸発源について、図1乃至図3を用いて説明する。
図1(A)は、蒸発源100の一構造を説明する上面図であり、図1(B)は蒸発源100の縦断面図である。また、図2は、図1(B)の一点鎖線108の拡大図である。
蒸発源100は、筒状セル112及び筒状セル112の開口部において脱着可能に装着される第1の蓋体114で構成される坩堝111と、第1の蓋体114を覆うように設けられる第2の蓋体106と、第2の蓋体106と接し、且つ筒状セル112、第1の蓋体114、及び第2の蓋体106を加熱する発熱部104とを有する。また、発熱部104の外側には外枠102が設けられる。筒状セル112はアルミナ部材103上に設けられており、筒状セル112の熱が外枠102に移動することを妨げている。筒状セル112の底部には熱電対125が接しており、筒状セル112の温度測定及び温度の制御が行われる。筒状セル112及び第1の蓋体114の内部には、内蓋116が設けられてもよい。
図1(A)に示すように、第1の蓋体114は貫通口114aを有し、第2の蓋体106は貫通口106aを有する。また、蒸発源100において、第2の蓋体106の貫通口106aの内側に、第1の蓋体114の貫通口114aが位置する。また、図1(B)に示すように、第1の蓋体114は貫通口が設けられた突起部114cを有し、第1の蓋体114の突起部114cは坩堝111、即ち筒状セル112の外側に突出している。具体的には、図2に示すように、第1の蓋体114の突起部114cの少なくとも一部は、第2の蓋体106の貫通口106aを貫通しており、第2の蓋体106の貫通口より距離d1突出している。なお、d1は0より大5mm以下とすることが好ましい。d1を5mm以下とすることで、第2の蓋体114の輻射熱により第1の蓋体106を加熱することができる。
また、図2に示すように、第1の蓋体114及び第2の蓋体106は一定間隔d2を有して設置されている。
なお、筒状セル112、及び第1の蓋体114で構成される坩堝111の外観図を図3(A)に示し、展開図を図3(B)に示す。
以下に、蒸発源100の各構成について、詳細に説明する。
筒状セル112は、内部に蒸着材料が充填される容器であり、底を有し、上部に開口部を有する。筒状セル112は、熱安定性が高く、特に高温において酸化されにくい材料で形成されることが好ましく、代表的には、クロム、チタン、ジルコニウム等を有する金属または合金、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化シリコン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の絶縁物で形成される。なお、チタンは、加工がしやすく、また高温での反応性が低いため、筒状セル112に適している。
第1の蓋体114は、筒状セル112内で蒸発または昇華(以下、蒸発または昇華を代表して、蒸発として説明する。)された蒸着材料を坩堝111の外側へ吐出させるために設けられており、図1(A)に示す貫通口114a及び図1(B)に示す突起部114cを有する。また、第1の蓋体114は、筒状セル112に脱着可能であることが好ましい。例えば、筒状セル112及び第1の蓋体114それぞれの側面に装着部として螺旋状の溝113を設けることで、筒状セル112及び第1の蓋体114の密閉性を高めることができ、筒状セル112内に充填された材料を、効率よく第1の蓋体114の貫通口から蒸発させることができる。または、筒状セル112の側面上に第1の蓋体114を設置する形状としてもよい。
また、筒状セル112及び第1の蓋体114を同じ材料で形成すると、熱膨張率が等しいため、高温で加熱されても、筒状セル112及び第1の蓋体114の装着部での密閉性を高めることができる。
筒状セル112及び第1の蓋体114の内側には、内蓋116を設けてもよい。内蓋116は、複数の貫通口が設けられており、蒸着材料の突沸を防ぐ機能を有する。内蓋116は、熱伝導率を有する材料が好ましく、代表的には、金、銀、白金、銅、アルミニウム、シリコンカーバイド、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、シリコンナイトライド等で形成されることが好ましい。内蓋116を筒状セル112の内部に設けることで、基板上に蒸着される膜の膜厚分布の均一性を高めることができる。
第2の蓋体106は、発熱部104からの熱を第1の蓋体114へ伝達することで、第1の蓋体114の貫通口近傍の温度低下を防ぐ機能を有する。第2の蓋体106は、第1の蓋体114の少なくとも上面を覆う。さらには、第1の蓋体114の上面及び側面の一部を覆ってもよい。また、第2の蓋体106は発熱部104と接して設けられる。
第2の蓋体106は、金属酸化物の蒸着温度においても耐熱性が高い金属または合金、ここでは融点が1900度以上である高融点金属で形成されることが好ましく、代表的には、タングステン、タンタル、モリブデン、ニオブ、イリジウム、及びバナジウムの一以上を有する金属または合金で形成される。
また、第2の蓋体106は、上記高融点金属と、高融点化合物との積層構造としてもよい。高融点化合物の代表例としては、炭化タンタル、グラファイト、酸化マンガン、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン等がある。なお、第2の蓋体106は適宜、第1の蓋体114側から順に高融点化合物及び高融点金属が積層する構造、第1の蓋体114側から順に高融点金属及び高融点化合物が積層する構造、高融点金属の表面を高融点化合物で被覆する構造等とすることができる。
発熱部104は、抵抗加熱方式を用いる。発熱部104は、少なくとも筒状セル112の外周部に設けられる。また、発熱部104と外枠102の間に反射板105を設けることで、発熱部104で発生した熱を、筒状セル112、第1の蓋体114、及び第2の蓋体106に反射させることが可能であり、より効率よく加熱することができる。
ここでは、発熱部104が第2の蓋体106に接するため、第2の蓋体106を接触加熱する。また、第2の蓋体106は高融点金属で形成されるため、高温で加熱されても劣化しない。一方、筒状セル112及び第1の蓋体114は発熱部104と一定間隔を有し、接していない。このため、発熱部104、及び発熱部104により加熱された第2の蓋体106で発生した輻射熱で、筒状セル112及び第1の蓋体114が加熱される。
第2の蓋体106の貫通口106aは、第1の蓋体114の貫通口114a近傍まで位置する。第2の蓋体106から発する熱は輻射熱となり、第1の蓋体114及びその突起部114cを加熱する。また、発熱部104と、筒状セル112及び第1の蓋体114との間は一定間隔を有するため、これらの間には、熱伝導率の低い空気がある。若しくは、真空状態である。このため、接触加熱と比較して、発熱部104及び第2の蓋体106で発生する輻射熱による加熱は、筒状セル112及び第1の蓋体114の昇温には時間がかかるが、降温しにくい。このため、一度一定温度まで上昇した後、筒状セル112及び第1の蓋体114は、発熱部104及び第2の蓋体106の温度変化の影響を受けにくい。この結果、第1の蓋体114の貫通口での蒸着材料の凝固及び付着を低減でき、蒸着速度のばらつきを低減することができる。
外枠102は、熱伝導率の高い材料で形成されることが好ましく、代表的には、金、銀、白金、銅、アルミニウム、ステンレス、シリコンカーバイド、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、シリコンナイトライド等で形成されることが好ましい。また、外枠102には、冷却手段が連結されてもよい。冷却手段を有することで、蒸発源100の発熱部104で発生した熱が、別の蒸発源100に移動することを防ぐことが可能であり、各蒸発源100の温度制御を容易とすることができる。
本実施の形態に示す蒸発源100は、図1(A)に示すように、第2の蓋体106の貫通口106aを、第1の蓋体114の貫通口114aが設けられた突起部114cの少なくとも一部が貫通する。また、図1(B)に示すように、第1の蓋体114の突起部114cは、坩堝111の外側に突出している。具体的には、第1の蓋体114の突起部114cは、第2の蓋体106の貫通口106aより、距離d1突出している。このため、筒状セル112内に金属酸化物を充填し、高温で加熱し金属酸化物を蒸発させても、第2の蓋体106と、筒状セル112の内部から蒸発する金属酸化物や、蒸発の際に発生する酸素との接触を低減できるため、第2の蓋体106の酸化及び当該酸化による蒸発源の劣化を低減できる。
さらに、第2の蓋体106は、高融点材料で形成されており、また発熱部104と接触しているため、高温での加熱が可能であると共に、第2の蓋体106の貫通口近傍に効率よく熱を伝えることができる。第2の蓋体106の貫通口106aは、第1の蓋体114の貫通口114a近傍まで位置するため、第2の蓋体106から発する熱は輻射熱となり、第1の蓋体114において、第1の蓋体114の貫通口114a近傍まで加熱できる。これらのため、第1の蓋体114の貫通口114aにおける蒸着材料の凝固及び付着を低減し、蒸着速度を高めることができる。また、輻射熱は、昇温には時間がかかるが、降温しにくいため、一旦一定温度まで上昇した後は、発熱部104、及び第2の蓋体106の温度変化の影響を受けにくく、効率よく第1の蓋体114を加熱することができる。このため、蒸着速度のばらつきを低減することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1と異なる構造の蒸発源について、図1及び図4を用いて説明する。なお、実施の形態1と重複する構成については、本実施の形態では説明を省略する。図4は、蒸発源120の縦断面図であり、上面図は図1(A)に示す蒸発源100と同様である。
図4に示す蒸発源120は、筒状セル112、及び筒状セル112の開口部において脱着可能に装着される第1の蓋体114で構成される坩堝111と、第1の蓋体114を覆うように設けられる第2の蓋体106と、第2の蓋体106と接し、且つ筒状セル112、第1の蓋体114、及び第2の蓋体106を加熱する発熱部104とを有する。発熱部104の外側には外枠102が設けられる。筒状セル112はアルミナ部材103上に設けられ、筒状セル112の熱が外枠102に移動することを妨げている。筒状セル112の底部には熱電対125が接しており、筒状セル112の温度測定及び温度の制御が行われている。筒状セル112及び第1の蓋体114の内部には、内蓋116が設けられてもよい。
図1(A)に示すように、第1の蓋体114は貫通口114aを有し、第2の蓋体106は貫通口106aを有する。また、蒸発源120において、第2の蓋体106の貫通口106aの内側に、第1の蓋体114の貫通口114aが位置する。また、図4に示すように、第1の蓋体114は貫通口が設けられた突起部114cを有し、第1の蓋体114の突起部114cは坩堝111の外側に突出している。具体的には、第1の蓋体114の突起部114cの少なくとも一部は、第2の蓋体106の貫通口を貫通しており、第2の蓋体106の貫通口より距離d1突出している。なお、d1は0より大5mm以下とすることが好ましい。d1を5mm以下とすることで、第2の蓋体114の輻射熱により第1の蓋体106を加熱することができる。また、本実施の形態に示す蒸発源120は、第1の蓋体114及び第2の蓋体106の間に、熱浸透率の低い部材122を有する。熱浸透率の低い部材122は、第1の蓋体114及び第2の蓋体106のそれぞれ一部に少なくとも接していればよい。なお、熱浸透率の低い部材122が第1の蓋体114及び第2の蓋体106のそれぞれ一部に少なくとも接している場合は、環状であってもよい。
熱浸透率の低い部材122は、アルミナ、酸化シリコン、酸化ジルコニウム、窒化シリコン等の材料で形成されることが好ましい。
熱浸透率の低い部材122を有することで、発熱部104によって加熱された第2の蓋体106の熱が第1の蓋体114に移動することを低減する。この結果、第2の蓋体106において、貫通口近傍を選択的に高温に加熱することができる。このため、高温加熱による筒状セル112及び第1の蓋体114の劣化を低減しつつ、選択的に第2の蓋体106の貫通口近傍を加熱することができるため、蒸発速度の低減を抑制できる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1と比較して、第1の蓋体114及び第2の蓋体106の位置関係のことなる蒸発源について、図1及び図5を用いて説明する。なお、実施の形態1と重複する構成については、本実施の形態では説明を省略する。図5(A)は、蒸発源130の縦断面図であり、図5(B)は図5(A)の一点鎖線138の拡大図である。
図5に示す蒸発源130は、筒状セル112、及び筒状セル112の開口部において脱着可能に装着される第1の蓋体114で構成される坩堝111と、第1の蓋体114を覆うように設けられる第2の蓋体106と、第2の蓋体106と接し、且つ筒状セル112、第1の蓋体114、及び第2の蓋体106を加熱する発熱部104とを有する。また、発熱部104の外側には外枠102が設けられる。筒状セル112はアルミナ部材103上に設けられており、筒状セル112の熱が外枠102に移動することを妨げている。筒状セル112の底部には熱電対125が接しており、筒状セル112の温度測定及び温度の制御が行われる。筒状セル112及び第1の蓋体114の内部には、内蓋116が設けられてもよい。
図1(A)に示すように、第1の蓋体114は貫通口114aを有し、第2の蓋体106は貫通口106aを有する。また、蒸発源130において、第2の蓋体106の貫通口106aの内側に、第1の蓋体114の貫通口114aが位置する。また、図5(A)に示すように、第1の蓋体114は貫通口が設けられた突起部114cを有し、第1の蓋体114の突起部114cは、坩堝111の外側に突出している。具体的には、第1の蓋体114の突起部114cの少なくとも一部は、第2の蓋体106の貫通口106aを貫通しており、第2の蓋体106の貫通口より距離d1突出している。なお、d1は0より大5mm以下とすることが好ましい。d1を5mm以下とすることで、第2の蓋体114の輻射熱により第1の蓋体106を加熱することができる。また、本実施の形態に示す蒸発源130は、図5(B)に示すように、第2の蓋体106及び第1の蓋体114が接することを特徴とする。第2の蓋体106及び第1の蓋体114が接することで、第2の蓋体106の空間的安定性を高めることが可能である。
(実施の形態4)
次に、蒸着装置の成膜室の構成及び該成膜室における蒸着方法について、図6及び図7を用いて説明する。なお、図6は蒸着時における成膜室の断面図を示しているため、シャッター161を破線で示す。また、図6においては、実施の形態1に示す蒸発源100を用いて説明するが、実施の形態2及び実施の形態3に示す蒸発源120、130を適宜用いることができる。
成膜室151には、真空排気手段153、及びガス導入手段154が設けられている。
また、成膜室151には、蒸着マスク用設置台163が設けられている。蒸着マスク用設置台163には、蒸着マスク167が固定されたマスクフレーム165が設けられている。また、蒸着マスク167上に基板171が設けられている。なお、成膜室151と基板171の間には、磁石板177が設けられている。当該磁石板177は基板171と接してもよい。または、図6に示すように、一定間隔を有してもよい。磁石板177の磁力により蒸着マスク167が基板171に引き寄せられ、蒸着マスク167の撓みを低減することができる。
また、成膜室151には透明窓部155が設けられており、透明窓部155から撮像手段157によって基板171及び蒸着マスク167の位置を確認すると共に、各々の位置を制御することができる。
成膜室151において、x軸方向の移動機構159a及びy軸方向の移動機構159bを有する移動機構159が設けられる。また、移動機構159上に蒸発源100を保持する蒸発源保持部160が設けられる。移動機構159により蒸発源保持部160を移動させることで、基板171の所定の位置に、蒸発源100に充填された蒸着材料を蒸着することができる。
また、成膜室151は、蒸着マスク用設置台163と蒸発源保持部160の間に、シャッター161を有する。当該シャッター161は、蒸発源100から基板171への蒸着材料の蒸着を制御する。また、図示しないが、蒸発源100それぞれにシャッター(以下、蒸発源シャッターと示す。)を有する。当該蒸発源シャッターは、蒸発源100それぞれにおいて、蒸発源100から基板171への蒸着材料の付着を制御する。
基板171の表面及び蒸発源100の間隔d3を、代表的には100cm以下、好ましくは30cm以下とする。間隔d3を上記範囲とすることで、基板171が大面積基板であっても、蒸着材料を効率よく蒸着させることが可能である。また、蒸発源100に設けられる発熱部が高温となっても、間隔d3が広いため、当該熱が蒸着マスク167に伝わりにくく、加熱による蒸着マスク167の変形を防ぐことができる。
蒸着マスク167の厚さは10μm〜100μmである。また、蒸着マスク167は、熱によって変形されにくい低熱膨張率を有する金属または合金(例えば、タングステン、タンタル、クロム、ニッケルもしくはモリブデン等の高融点金属、もしくはこれらの元素を含む合金、ステンレス、インコネル、ハステロイといった材料)を用いることが好ましい。また、基板171と同じ熱膨張係数を有する材料を用いた蒸着マスク167を用いることで、蒸着材料の付着中における位置ずれが生じにくいため好ましい。
なお、蒸着マスク167において、基板171と接する面上にDLC膜を形成することで、基板171を蒸着マスク167に設置する際に、基板171を傷つけずにすむため、好ましい。
真空排気手段153としては、磁気浮上型のターボ分子ポンプ、クライオポンプ、またはドライポンプを用いる。真空排気手段153により成膜室151の到達真空度を10−5〜10−6Paにすることが可能である。また、成膜室151内部への不純物の導入を防ぐため、ガス導入手段154から窒素や希ガス等の不活性ガスを成膜室151に導入してもよい。なお、ガス導入手段154にガス精製機を備えることで、ガス中に含まれる酸素や水、その他の不純物を予め除去することができるため、好ましい。
なお、図示しないが、蒸着速度を制御するため、マイクロコンピュータを成膜室151に設けることが好ましい。また、成膜室151または蒸発源100に膜厚モニタを設けることが好ましい。例えば、水晶振動子を用いて蒸着膜の膜厚を測定する場合、水晶振動子に蒸着された膜の質量変化を、共振周波数の変化として測定することができる。
次に、蒸発源100から基板171上に蒸着材料を蒸着する方法について、図6を用いて説明する。
まず、成膜室内を真空排気手段153により真空度が5×10−3Torr(0.665Pa)以下、好ましくは10−5〜10−6Paとなるように真空排気を行う。
次に、後に成膜室151に搬入される基板171と重畳するようにシャッター161を閉じた状態とした後、蒸着マスク167が固定されたマスクフレーム165を成膜室151に導入し、蒸着マスク用設置台163上に設置する。
次に、第1の電極173と、その端部を覆う絶縁物175(隔壁)とが設けられた基板171を基板移動機構により成膜室151に搬入し、蒸着マスク167上に設置する。このとき、絶縁物175が蒸着マスク167側となるように基板171を設置する。また、撮像手段157により基板171及び蒸着マスク167の位置を確認しながら、基板171の位置を調整する。
次に、蒸発源100を蒸発源保持部160内に設置した後、蒸発源シャッターを開け、蒸発源100の発熱部の温度を上昇させ、蒸発源100内の蒸着材料を蒸発させる。蒸発源100からの蒸着速度が一定となった後、シャッター161を開き、第1の電極173及び絶縁物175上に蒸着材料を蒸着する。
このとき、基板171上に膜厚分布が均一となるように蒸着材料を蒸着させる方法について、図7を用いて説明する。図7は、成膜室151の上面図である。なお、成膜室151の一方の側面には、開閉式のゲート182を介して搬送室183が連結される。また、成膜室151の他方の側面には、開閉式のゲート187を介して設置室188が連結される。なお、設置室188は必ずしも設ける必要はない。また、成膜室151において、ゲート182及びゲート187と接する側面には、それぞれ基板171及び蒸発源保持部160を成膜室151に導入するための開口部181及び開口部186を有する。
図7(A)に示すように、設置室188に長方形の蒸発源保持部160が待機している。長方形の蒸発源保持部160には、一列に並んだ3つの蒸発源100が設置されている。設置室188で待機している複数の蒸発源保持部160が、基板171に設けられた画素領域189の下方を点線で示す矢印の方向に移動(または往復移動)することによって、基板171の画素領域189に蒸着材料を蒸着する。なお、蒸発源保持部160を移動させる移動機構(図6の移動機構159に相当)は、複数の蒸発源保持部160を同時またはそれぞれ別に制御することが可能である。また、ここでは、蒸発源保持部160をy方向に移動させる構成を示したが、x方向に移動させてもよい。
図7(B)は、図7(A)と蒸発源保持部160の形状が異なる点と蒸発源保持部160の移動経路が異なる点以外は同一であるので詳細な説明は省略する。図7(B)では蒸発源保持部160が正方形となっており、蒸発源100が4個配置されている。蒸発源保持部160は、基板171の下方をジグザグに移動して蒸着を行う。
なお、蒸発源保持部160に設置された複数の蒸発源100の少なくとも一部が画素領域189より外側を移動するようにすることで、画素領域189における膜厚分布の均一性を高めることができる。
また、図7では、蒸発源保持部160を移動させて基板171上に蒸着材料を蒸着する方法を示したが、蒸発源保持部160を成膜室151の中央付近に固定し、基板171を移動させることで、画素領域189に蒸着材料を蒸着してもよい。この場合、蒸発源保持部160は、蒸着材料を蒸発させる前に設置室188から成膜室151の中央付近まで移動させればよい。
なお、蒸発源保持部160に複数の蒸発源100を装着し、各蒸発源100に異なる蒸着材料(例えば2種類の蒸着材料)を入れて、異なる蒸着材料を同時に蒸発させてもよい。この結果、共蒸着が可能である。
または、蒸発源保持部160に複数の蒸発源100を装着し、各蒸発源100に異なる蒸着材料(例えば2種類の蒸着材料)を入れて、異なる蒸着材料を別々に蒸発させてもよい。この場合、第1の蒸着材料を蒸着させる場合、第2の蒸着材料が入っている蒸発源100に設けられた蒸着シャッターを閉じて、蒸発源保持部160を移動することで、基板171上に第1の蒸着材料を蒸着させる。次に、第1の蒸着材料が入っている蒸発源100に設けられた蒸着シャッターを閉じ、第2の蒸着材料が入っている蒸発源に設けられた蒸着シャッターを開けることで、連続的に異なる材料を基板171上に蒸着させることができる。
また、設置室188において、蒸着速度が一定となるまで蒸着させた後、成膜室151に蒸発源を移動させてもよい。この結果、蒸着材料による成膜室151の汚染を低減することができると共に、異なる蒸着材料を連続的に蒸着する場合、スループットを向上させることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明した蒸発源及び成膜室を有する蒸着装置の一構造について説明する。また、本実施の形態では、当該蒸着装置を用いて、発光性の有機化合物を含む層を有する積層体(EL層)を有する発光素子が設けられた発光装置を作製する工程について説明する。
図8(A)に示す蒸着装置200は、有機化合物または無機化合物を有する層の蒸着などを行うマルチチャンバーに、封止処理を行うチャンバーが設けられ、一つのユニットとなっている構造である。蒸着装置200を一つのユニットとすることで、発光素子への水分などの不純物の混入防止やスループット向上を図っている。
蒸着装置200は、基板投入室201、搬送室203、219、231、加熱処理室205、受渡室209、221、成膜室207、211、213、215、217、223、225、227、229、及び基板待機室239を有する蒸着装置である。なお、搬送室203には基板を搬送するための搬送機構210が設けており、他の搬送室も同様にそれぞれ搬送機構が設けてある。なお、各搬送室と各受渡室の間、各搬送室と各成膜室の間、各搬送室と各処理室の間には開閉可能なゲートが設けられている。また、図示していないが、各処理室には作業用の開閉扉が設けられている。当該開閉扉を介して、蒸着材料の供給(ルツボの設置)、蒸着マスクの設置、基板の設置などの作業を適宜行うことができる。なお、作業用の開閉扉の代わりに、設置室を設けてもよい。
成膜室207、211、213、215、217それぞれには、先の実施の形態で説明した蒸発源が設らけれている。また、各成膜室に複数の蒸発源が設けられている構成としてもよい。このような構成とすることで、より少ない成膜室で多種の層を積層することができる。
成膜室223、225、227、229には、例えば、先の実施の形態で説明した蒸発源、または分子線蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、若しくはスパッタリング法などに代表される物理蒸着法などが行える機構が適宜設けられている。
蒸着装置200は、上記構成の他に、受渡室233と、対向基板投入室235と、シール形成室237と、貼り合わせ室241と、硬化処理室243と、基板取出室245と、搬送室249とを有する蒸着装置である。なお、搬送室249と受渡室233の間、搬送室249と各処理室の間には開閉可能なゲートが設けられている。なお、図示していないが、各処理室にはメンテナンス作業など、作業用の開閉扉が設けられている。
図8(B)に、上記蒸着装置200を用いて作製する発光装置の構造を示す。当該発光装置の発光素子268は、第1の電極(陽極262)と第2の電極(陰極220)の間にEL層282が設けられている。具体的には、基板264上に陽極262が設けられており、陽極262上に正孔注入層270が設けられており、正孔注入層270上に正孔輸送層272が設けられており、正孔輸送層272上に発光性の有機化合物を含む層214が設けられており、発光性の有機化合物を含む層214上に電子輸送層276が設けられており、電子輸送層276上に電子注入層278が設けられており、電子注入層278上に陰極280(第2の電極)が設けられている。また、陰極280は対向基板266とも接している。なお、陰極280は対向基板266と接していなくともよい。
以下、予め陽極262(第1の電極)と、陽極262の端部を覆う絶縁物(隔壁)とが設けられた基板264を蒸着装置200に搬入し、基板264上に、EL層282を有する発光素子268が設けられた発光装置を作製する手順を示す。
アクティブマトリクス型の発光装置を作製する場合、予め基板264上には、陽極に接続している薄膜トランジスタ(電流制御用TFT)及びその他の薄膜トランジスタ(スイッチング用TFTなど)が複数設けられている。また、当該基板264上には薄膜トランジスタを有する駆動回路が設けられていてもよい。なお、パッシブマトリクス型の発光装置も蒸着装置200により作製することができ、その場合、基板264には電流制御用TFT及びスイッチング用TFTを設けなくてよい。
まず、基板投入室201に基板264(300mm×360mm)をセットする。基板サイズは、320mm×400mm、370mm×470mm、550mm×650mm、600mm×720mm、680mm×880mm、1000mm×1200mm、1100mm×1250mm、さらには1150mm×1300mmのような大面積基板でも対応可能である。
基板投入室201にセットした基板264を搬送室203に搬送する。なお、搬送室203には基板264を搬送または反転するための搬送機構210(搬送ロボットなど)が設けられている。
また、搬送室203、219、231には、それぞれ搬送機構が設けてある。搬送機構210は、基板264の表裏を反転させることができ、成膜室207または加熱処理室205に反転させて搬入することができる。各搬送室203、219、231及び受渡室209は、真空排気処理室と連結されており、真空排気して真空にすることもでき、真空排気した後、不活性ガスを導入して大気圧にすることもできる。
また、上記の真空排気処理室としては、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、またはドライポンプなどが備えられている。これにより各処理室と連結された搬送室の到達真空度を10−5〜10−6度にすることが可能であり、さらにポンプ側及び排気系からの不純物の逆拡散を制御することができる。
また、基板投入室201に搬入する前に基板表面を洗浄した場合や、シュリンクなどを抑制するために、EL層282を蒸着する前に加熱処理を行うことが好ましく、基板264を搬送室203から加熱処理室205に搬送し、基板264に含まれる水分やその他のガスを除去する。基板264に含まれる水分やその他のガスを徹底的に除去するために、加熱処理を真空(5×10−3Torr(0.665Pa)以下、好ましくは10−4〜10−5Pa)で行うことが好ましい。例えば、加熱処理室205は、平板ヒータ(代表的にはシースヒータ)を用いて、複数の基板を均一に加熱することができる。この平板ヒータは複数設置され、平板ヒータで基板を挟むように両面から加熱することもでき、勿論、片面から加熱することもできる。特に、第1の電極(陽極262)上に設けられた絶縁物(隔壁)の材料として有機樹脂膜を用いた場合、有機樹脂膜は水分を吸着しやすく、さらに脱ガスを放出する恐れがあるため、EL層282を形成する前に100℃〜250℃、好ましくは150℃〜200℃、例えば30分以上の加熱を行った後、30分の自然冷却を行って吸着水分を除去する真空加熱処理は有効である。
本実施の形態では、搬送室203から成膜室207に基板264を搬送し、蒸着マスクを用いて、陽極262(第1の電極)上に正孔注入層270を形成する。
ここで、正孔注入層270の例を示す。正孔注入層270は正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。また、フタロシアニン(略称:H2Pc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物を用いることができる。
また、低分子の有機化合物である芳香族アミン化合物等を用いることができる。
さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。また、酸を添加した高分子化合物を用いることができる。
特に、正孔注入層270として、正孔輸送性の高い有機化合物にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることが好ましい。正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることにより、陽極からの正孔注入性を良好にし、発光素子の駆動電圧を低減することができる。これらの複合材料は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター物質とを共蒸着することにより形成することができる。該複合材料を用いて正孔注入層270を形成することにより、陽極からEL層282への正孔注入が容易となる。
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
アクセプター性物質としては、有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
なお、高分子化合物と、上述したアクセプター性物質を用いて複合材料を形成し、正孔注入層270に用いてもよい。
蒸着装置200を用いて異なる材料を同時に蒸着する共蒸着を行う際は、1つの成膜室に複数の蒸発源を設けて、各蒸発源に異なる蒸着材料を設置し、適宜蒸着レートを考慮して蒸着すればよい。また、実施の形態1乃至実施の形態3に示す蒸発源を用いることで、蒸発源の劣化を防ぎつつ、蒸発温度が高温である金属酸化物を蒸着させることができる。
次いで、成膜室207から受渡室209に基板を搬送し、さらに、大気にふれさせることなく、受渡室209から搬送室219に基板を搬送する。
次いで、搬送室219に連結された成膜室211、成膜室213、成膜室215、成膜室217へ基板を適宜、搬送して、正孔輸送層272、発光性の有機化合物を含む層214(例えば青色の発光層、緑色の発光層、赤色の発光層)を適宜形成する。
成膜室211、成膜室213、成膜室215、成膜室217は、成膜室207と同様に先の実施の形態で説明した蒸発源を有する。なお、成膜室211、成膜室213、成膜室215、成膜室217において、有機化合物のみ蒸着し、金属酸化物を蒸着しない場合は、成膜室211、成膜室213、成膜室215、成膜室217に、従来の蒸発源を設けてもよい。
成膜室211では、蒸着マスクを用いて正孔輸送層272を形成する。正孔輸送層272は正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、芳香族アミン化合物を用いることができる。これらは主に10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
また、正孔輸送層272には、カルバゾール誘導体や、アントラセン誘導体や、そのほか正孔輸送性の高い高分子化合物を用いてもよい。
成膜室213、成膜室215、成膜室217では、蒸着マスクを用いて発光性の有機化合物を含む層214を蒸着する。発光性の有機化合物を含む層214は、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。
なお、発光性の有機化合物を含む層214としては、発光性の有機化合物(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。ホスト材料としては、各種のものを用いることができ、発光性の物質よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、最高被占有軌道準位(HOMO準位)が低い物質を用いることが好ましい。
また、ホスト材料は複数種用いることができる。例えば、結晶化を抑制するために結晶化を抑制する物質をさらに添加してもよい。また、ゲスト材料へのエネルギー移動をより効率良く行うために、さらに異なる物質を添加してもよい。
ゲスト材料をホスト材料に分散させた構成とすることにより、発光性の有機化合物を含む層214の結晶化を抑制することができる。また、ゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
また、発光性の有機化合物を含む層214として高分子化合物を用いることができる。
また、発光性の有機化合物を含む層を複数設け、それぞれの層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、発光性の有機化合物を含む層を2つ有する発光素子において、第1の発光性の有機化合物を含む層の発光色と第2の発光性の有機化合物を含む層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。また、発光性の有機化合物を含む層を3つ以上有する発光素子の場合でも同様である。発光素子全体として白色発光する発光素子を表示パネルに用いる場合、当該表示パネルをカラー表示させるには第2の基板(対向基板266)にカラーフィルタを設ければよい。
例えば、成膜室213で蒸着マスクを用いて青色の発光性の有機化合物を含む層を形成し、成膜室215で蒸着マスクを用いて緑色の発光性の有機化合物を含む層を形成し、成膜室217で蒸着マスクを用いて赤色の発光性の有機化合物を含む層を形成することで、発光性の有機化合物を含む層を複数設けた発光装置を作製できる。
なお、発光性の有機化合物を含む層を複数設ける場合、それぞれの層を積層してもよいし、それぞれの層を並列に設けて、領域毎に異なる色が発光されるようにしてもよい。また、それぞれの層を積層する場合は、各層の間に電子注入層、電子輸送層、正孔注入層及び正孔輸送層などを適宜設けることが好ましい。
次いで、成膜室217から受渡室221に基板を搬送し、さらに、大気にふれさせることなく、受渡室221から搬送室231に基板を搬送する。
次いで、搬送室231内に設置されている搬送機構により、基板を成膜室223に搬送し、蒸着マスクを用いて電子輸送層276を形成する。電子輸送層276は電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、主に10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。また、電子輸送層276は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
次いで、成膜室223から成膜室225に基板を搬送し、蒸着マスクを用いて電子注入層278を形成する。電子注入層278は電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層278には、リチウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、リチウム酸化物等のようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む材料を用いることができる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いることができる。また、上述した電子輸送層276を構成する物質を用いることもできる。
なお、電子輸送層276および電子注入層278は、それぞれ、上述した材料から適宜選択し、また、実施の形態1乃至実施の形態3に示す蒸発源を用いる蒸着法、またはスパッタリング法などを用いて形成することができる。
次いで、成膜室225から成膜室227に基板を搬送し、蒸着マスクを用いて陰極280(第2の電極)を形成する。この陰極280は、透明または半透明であることが好ましく、実施の形態1に示す蒸着法により形成される金属膜(MgAg、MgIn、LiFなどの合金、または周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成した膜、またはこれらの積層膜)の薄膜(1nm〜300nm程度)、或いは上記金属膜の薄膜(1nm〜300nm程度)とITOなど透明導電膜との積層を陰極280とすることが好ましい。積層する場合、スパッタリング法などの物理蒸着法を行うことができる成膜室に搬送し、透明導電膜を形成する。
以上の工程でEL層を有する発光素子が形成される。
形成した発光素子は、陽極と陰極280との間に上記以外の層が複数積層されていてもよい。例えば、成膜室229で電荷発生層が形成された発光素子であってもよい。なお、EL層282において、発光性の有機化合物を含む層が複数積層されている場合は、発光性の有機化合物を含む層の間に電荷発生層を設けることが好ましい。電荷発生層は、正孔注入層270で述べた、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いて形成することができる。また、電荷発生層は複合材料からなる層と他の材料からなる層との積層構造でもよい。この場合、他の材料からなる層としては、電子供与性物質と電子輸送性の高い物質とを含む層や、透明導電膜からなる層などを用いることができる。このような構成を有する発光素子は、エネルギーの移動や消光などの問題が起こり難く、材料の選択の幅が広がることで高い発光効率と長い寿命とを併せ持つ発光素子とすることが容易である。また、一方のEL層282で燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易である。この構造は上述のEL層282の構造と組み合わせて用いることができる。
また、演色性の良い白色発光を得る場合、発光スペクトルが可視光全域に広がるものとする必要があり、3つ以上のEL層が積層された発光素子とすることが好ましい。例えばそれぞれ赤色、青色、緑色の発光色のEL層を積層して発光素子を形成することができる。このように異なる3色以上のEL層が積層された発光素子とすることにより演色性を高めることができる。また、複数のEL層を積層する場合にも、各EL層の間には電荷発生層を設けることが好ましい。
陰極220までが形成された基板264は、受渡室233を経由して搬送室249に導入され、基板待機室239に搬送する。搬送室249、基板待機室239は搬送室203、搬送室219、搬送室231と同様の構成であり、減圧雰囲気とすることが好ましい。
そして、陰極280までが形成された基板264は搬送室249に設置された搬送機構によって、貼り合わせ室241に搬送される。
対向基板266は、予め柱状または壁状の構造物を設けておき、真空排気手段および発熱部を有する対向基板投入室235に導入した後、まず、減圧下で加熱して脱気を行う。その後、搬送室249に設置された搬送機構によって、シール形成室237に搬送し、シール材の形成を行う。シール形成室237にはディスペンス装置またはインクジェット装置が備えられている。また、シール形成室237にはシール材を仮硬化するためにベークまたはUV照射機構を備えてもよい。シール形成室237でシール材を仮硬化させた後、シール材で囲まれた領域に充填材の滴下を行う。
次いで、対向基板266も搬送室249に設置された搬送機構247で貼り合わせ室241に搬送する。
貼り合わせ室241では、処理室内を減圧にした後、陰極までが形成された基板264と対向基板266を貼り合わせる。上定盤または下定盤を上下動させることによって一対の基板となるように貼り合わせる。減圧下で2枚の基板を貼り合わせる際、対向基板266に設けられた柱状または壁状の構造物が基板間隔を精密に保ち続け、且つ、基板割れが生じないように基板264及び対向基板266にかかる圧力を拡散する重要な役割を果たしている。
また、シール形成室237で充填材の滴下を行わず、貼り合わせ室241においてシール材で囲まれた領域に充填材の滴下を行う機構としてもよい。
また、処理室全体を減圧するのではなく、上定盤と下定盤とを上下動させることによって定盤間の空間を密閉した後、下定盤に設けられた穴から真空ポンプで脱空させて定盤間の空間を減圧することができるようにしてもよい。こうすると、処理室全体に比べて減圧する空間の容積が小さいので短時間に減圧することができる。
また、上定盤と下定盤のいずれか一方に透光性の窓を設け、上定盤と下定盤との間隔を保ったままの貼り合わせた状態で光を照射してシール材を硬化させてもよい。
次いで、一時的に貼り合わせた一対の基板を搬送室249に設置された搬送機構で硬化処理室243に搬送する。硬化処理室243ではシール材の本硬化を光照射(例えばUV光)または加熱処理によって行う。
そして、貼り合わせた一対の基板を搬送室249に設置された搬送機構で基板取出室245に搬送する。基板取出室245では減圧から大気圧に戻した後、貼り合わせた一対の基板を取り出す。こうして基板間隔を均一に保つ封止工程が完了する。なお、貼り合わせた一対の基板間に乾燥剤を設けてもよく、例えば第2の基板(対抗基板206)に予め乾燥剤を設けておき、上記封止工程を行えばよい。
以上の工程により、蒸着装置200を用いて、EL層を有する発光素子が設けられた発光装置を作製することができる。
また、本実施の形態は、他の実施の形態の構成と適宜組み合わせて実施することができる。