JP5793756B2 - 自動車用潤滑油 - Google Patents
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Description
前記高粘度指数基油としては、ワックス異性化基油(ワックス分の異性化により得られる鉱油)、GTL(Gas To Liquid)系基油、合成系基油であるPAO(Poly−α−olefin)などが知られている。これらの高粘度指数基油はそれ自身が単独で使用されることは少なく、通常所望の特性を発揮させるために種々の基油や潤滑油添加剤を配合してはじめて潤滑油として使用される。
(1)従来から自動車用潤滑油添加剤として知られているエーテル化合物やエステル化合物を配合した潤滑油の性能を確認したところ、粘度特性や潤滑特性は満足できるレベルにあると認められたものの、必ずしも耐熱酸化安定性、高温清浄性、耐水性及び材料適合性のバランスが十分に満足できるレベルに達しているとは言えないことがわかった。
そこで、本発明者らは、耐熱酸化安定性、高温清浄性、耐水性及び材料適合性のバランスに着目して更に検討を進めて、下記(2)〜(4)の知見を得た。
(2)炭化水素系基油をベースオイルとする自動車用潤滑油において、特定構造の脂環式ジカルボン酸ジエステルを改質剤(潤滑油添加剤)として配合することによって、目的である耐熱酸化安定性、高温清浄性、耐水性及び材料適合性のバランスを満足できるレベルに達する自動車用潤滑油組成物が得られること。
(3)特定構造の脂環式ジカルボン酸ジエステルは、従来から用いられてきた脂肪族二塩基酸ジエステルやヒンダード型ポリオールエステルのような自動車用潤滑油添加剤に比べて、比較的少量の配合で本明細書に記載の課題の要求性能を達成させることが可能であること。換言すると、その特定構造の脂環式ジカルボン酸ジエステルは高性能の自動車用潤滑油添加剤であることを意味する。
(4)自動車用潤滑油添加剤としてその特定構造の脂環式ジカルボン酸ジエステルを炭化水素系基油に対して特定の含有量の範囲において配合した自動車用潤滑油組成物は、当該要求性能をより効果的に発揮することが可能であること。即ち、下記項1(ないし項3)に記載の構成の脂環式ジカルボン酸ジエステルを採用することにより、高性能の自動車用潤滑油組成物となることを意味する。
本発明は、かかる知見に基づいて完成するに至った。
(項1) 炭化水素系基油と一般式(1)
で表される脂環式ジカルボン酸ジエステル1種又は2種以上とを含有し、該脂環式ジカルボン酸ジエステルの含有量が炭化水素系基油100重量部に対して0.5〜20重量部の範囲である、自動車用潤滑油組成物。
(項2) さらに一般式(1)におけるR1及びR2の少なくとも一方が2−メチルプロピル基である、上記項1に記載の自動車用潤滑油組成物。
(項3) 一般式(1)におけるXに対するR1及びR2の置換位置が1,2−位である、上記項1又は項2に記載の自動車用潤滑油組成物。
(項4) 前記炭化水素系基油が80〜160の粘度指数を有するものである、上記項1〜3の何れかに記載の自動車用潤滑油組成物。
(項5) 自動車用潤滑油組成物の引火点が200℃以上であり、かつ100℃における動粘度が1.5〜40mm2/sである、上記項1〜4の何れかに記載の自動車用潤滑油組成物。
(項6) 自動車用潤滑油組成物が、エンジン用、変速機用又はショックアブソーバー用潤滑油組成物である、上記項1〜5の何れかに記載の自動車用潤滑油組成物。
(項7) 一般式(1)
で表される脂環式ジカルボン酸ジエステルからなる(炭化水素系基油のための)自動車用潤滑油添加剤。
(項8) さらに一般式(1)におけるR1及びR2の少なくとも一方が2−メチルプロピル基である、上記項7に記載の自動車用潤滑油添加剤。
(項9) 一般式(1)におけるXに対するR1及びR2の置換位置が1,2−位である、上記項7又は項8に記載の自動車用潤滑油添加剤。
市販されているポリ−α−オレフィン(以下「PAO」という)の具体例としては、ルーカントエチレン・α―オレフィンオリゴマーHC−10(三井化学株式会社製)や、Fortum NEXBASE2002、Fortum NEXBASE2004、Fortum NEXBASE2006,Fortum NEXBASE2008(松和産業株式会社製)や、デュラシン162、デュラシン164、デュラシン166、デュラシン168(BPジャパン株式会社製)や、シンフルード201、シンフルード401、シンフルード601、シンフルード801(新日鐵化学株式会社製)や、SpectraSyn2、SpectraSyn4、SpectraSyn6、SpectraSyn8,SpectraSyn10、PureSyn2、PureSyn4、PureSyn6,PureSyn8(エクソンモービル社製)や、リポルーブ40、リポルーブ60,リポルーブ80、リポルーブ100(ライオン株式会社製)などが例示される。
市販されているポリブテンの具体例としては、インドポール L−2、インドポール L―3、インドポール L―6、インドポール L−8、インドポール L−14(BPジャパン株式会社製)などが例示される。
炭化水素系基油は、上記例示を含めて1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用でき、好ましく合成炭化水素系基油を主成分とすることが推奨される。前記の主成分とは、炭化水素系基油100重量部中に、合成炭化水素系基油が50重量部以上、好ましくは70重量部以上の割合で含有していることを意味する。
また本発明に係る炭化水素系基油の100℃における動粘度は、好ましくは1.5〜40mm2/s、より好ましくは2.5〜30mm2/sの範囲が推奨される。これらの範囲の炭化水素系基油を採用することにより、自動車用潤滑油組成物の粘度特性の優位性が認められる。
またそれらのカルボキシル基の置換位置は、1,2−位、1,3−位及び1,4−位があり、好ましくは1,2−位が推奨される。前記の置換位置として1,2−位を採用することにより、本エステル自身の耐加水分解性がより向上する傾向が認められ、さらには本発明の自動車用潤滑油組成物の耐水性の向上にも好影響を与える。
前記のシクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸及びメチルシクロヘキセンジカルボン酸としては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のシクロヘキサンジカルボン酸;4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等のシクロヘキセンジカルボン酸;3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸等のメチルシクロヘキサンジカルボン酸;3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等のメチルシクロヘキセンジカルボン酸が例示される。
これらの中でも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸が好ましく、特に1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
前記分岐鎖状の飽和脂肪族モノアルコールとして、具体的には、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノールの炭素数4の分岐鎖状の飽和脂肪族モノアルコール;3−メチル−1−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノールの炭素数5の分岐鎖状の飽和脂肪族モノアルコール;4−メチル−1−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール等の炭素数6の分岐鎖状の飽和脂肪族モノアルコール;5−メチル−1−ヘキサノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、2−メチル−1−ヘキサノール、2−メチル−3−ヘキサノール、2−エチル−1−ペンタノール等の炭素数7の分岐鎖状の飽和脂肪族モノアルコール;6−メチル−1−ヘプタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、2−メチル−1−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等の炭素数8の分岐鎖状の飽和脂肪族モノアルコール;7−メチル−1−オクタノール、2−ノナノール、3−ノナノール、2−メチル−1−オクタノール、3−メチル−1−オクタノール、4−メチル−1−オクタノール、5−メチル−1−オクタノール、6−メチル−1−オクタノール、2−エチル−1−ヘプタノール、2,4−ジメチル−1−ヘプタノール、2,5−ジメチル−1−ヘプタノール、4,6−ジメチル−1−ヘプタノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、2,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール等の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族モノアルコール;8−メチル−1−ノナノール、2−デカノール、3−デカノール、2−メチル−1−ノナノール、2−エチル−1−オクタノール、2−プロピル−1−ヘプタノール、2,7−ジメチル−1−オクタノール、2,6−ジメチル−2−オクタノール、2,4−ジメチル−1−オクタノール、3,7−ジメチル−1−オクタノール、3,6−ジメチル−3−オクタノール、4−メチル−2−プロピル−1−ヘキサノール、5−メチル−2−プロピル−1−ヘキサノール、2−(1−メチルエチル)−4−メチル−1−ヘキサノール、2−(1−メチルエチル)−5−メチル−1−ヘキサノール等の炭素数10の分岐鎖状の飽和脂肪族モノアルコールが例示される。
換言すると、プロピレン、n−ブチレン、イソブチレンなどの低級オレフィンを出発原料として、2量化反応や3量化反応、ヒドロホルミル化反応(オキソ法)、アルドール縮合反応、水素化反応(オレフィンやアルデヒド基などの還元)等を適宜組み合わせて、比較的総炭素数の多い(例えば炭素数8以上)分岐鎖状の飽和脂肪族モノアルコールを調製する方法である。出発物質や反応方法の組み合わせによっては、単一化合物ではなく、前記「イソデカノール」のように、同じ炭素数の分岐状態が異なる分岐鎖状の飽和脂肪族モノアルコールの異性体の混合物となる場合もある。得られたモノアルコールが異性体の混合物の場合には、精留などの分離方法により当該異性体を分離して得ることも可能である。
主な市販品としては、例えば、3−メチル−1−ヘキサノール、5−メチル−1−ヘキサノール、3−メチル−1−ヘプタノール、5−メチル−1−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、「オクタノール」(製品名,協和醗酵ケミカル社製)、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、「ノナノール」(製品名,協和醗酵ケミカル社製)、7−メチル−1−オクタノール、「オキソコール900」(製品名,協和醗酵ケミカル社製)、「Diadol 9」(製品名,三菱化学社製)、「イソノナノール」(製品名,三菱化学社製)、「Exaal 9」(製品名,エクソン社製)、2−エチル−1−オクタノール、8−メチル−1−ノナノール、「デカノール」(製品名,協和醗酵ケミカル社製)、などが挙げられる。
なお工業的に入手される市販品の中にも、メチル分枝を有する複数の異性体の混合物がある。その場合には、本明細書および特許請求の範囲において、「イソ」を付して当該アルコールを表現する。そして、その対応するアルコールの一般式(1)におけるR1及びR2は「イソアルキル基」と称して当該脂環式ジカルボン酸ジエステルを表現する。例えば、「イソノナノール」の場合、総炭素数9で分岐状態が異なる異性体の混合物(メチル分枝がある位置が異なる等の複数の異性体を含む混合物)を意味し、その対応するアルコールの一般式(1)のR1及びR2は「イソノニル基」と表す。
これらの中でも、好ましくは1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(2−メチルプロピル)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及び3−メチル−1−ブタノールから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及び4−メチル−1−ペンタノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及び5−メチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及び2−エチル−1−ヘキシルとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(2−メチルプロピル)、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及び3−メチル−1−ブタノールから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及び4−メチル−1−ペンタノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及び5−メチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及び2−エチル−1−ヘキシルとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ(2−メチルプロピル)、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及び3−メチル−1−ブタノールから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及び4−メチル−1−ペンタノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及び5−メチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及び2−エチル−1−ヘキシルとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及びイソノナノールとから得られる混基エステル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及びイソデカノールとから得られる混基エステル等が推奨される。
本発明の自動車用潤滑油組成物は、本発明に係る炭化水素系基油と上記一般式(1)で表わされる脂環式ジカルボン酸ジエステル1種又は2種以上とを、脂環式ジカルボン酸ジエステルが炭化水素系基油100重量部に対して、0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは1〜8量部の範囲で含有してなるものである。
耐熱酸化安定性は、比較的高温領域で使用される自動車用途全般において、重要な要求性能の一つである。後述の耐熱酸化安定性の評価値が低いほど、潤滑油の酸化劣化が起こりにくいことを示し、運転時間或いは使用時間の長期化が可能となる。
高温清浄性は、特にエンジン用途において重要な要求性能の一つである。後述の高温洗浄性の評価値評点が高いほど又コーク量が少ないほど、潤滑油の使用時に発生する酸化劣化物の可溶化効果が高いことを意味し、清浄性に優れていることを示している。
また耐水性は、自動車用途全般において重要な要求性能の一つである。これは、潤滑油を長期間使用する場合には、水分が混入若しくは水分を吸水する可能性があり、それにより加水分解等が生じる。そのために加水分解物により長時間の運転・使用が妨げられることがある。後述の耐水性の評価値が低いほど、本エステルの加水分解が抑制されていることを意味し、潤滑組成物としての耐水性に好影響を与えることを示している。
また材料適合性は、自動車用途全般において重要な要求性能の一つである。自動車用途では、潤滑油が使用される箇所にはシーリング部材としてゴム材が多用されている。シーリング部材は、潤滑油により適度に膨潤して、潤滑油漏れを防ぐ役割をも担っている。後述の材料適合性の評価方法は、この「適度な膨潤」を評価するための方法である。
脂肪酸モノエステルとしては、炭素数5〜22の脂肪族直鎖状又は分岐鎖状モノカルボン酸と炭素数3〜22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールとから得られるモノエステルなどが挙げられる。また、脂肪族二塩基酸ジエステルとしては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸,ノナン二酸、デカン二酸等脂肪族二塩基酸と炭素数3〜22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールとから得られるジエステルなどが挙げられる。また、ポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等のネオペンチル型のポリオールと炭素数3〜22の直鎖状及び/又は分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪酸とから得られるポリオールエステルなどが挙げられる。
前記以外のエステルとしては、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、或いは縮合ヒマシ油脂肪酸、水添縮合ヒマシ油脂肪酸などのヒドロキシ脂肪酸と炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールとのエステル化合物などが挙げられる。
下記条件を用いてガスクロマトグラフィーを測定し、得られたガスクロマトグラムの面積比をもって組成比とした。
測定条件
機器:島津製作所製 GC−2010
使用カラム:J&W製TC−5 30m×0.25mm
カラム温度:100〜300℃(昇温速度20℃/min)
インジェクション温度/検出温度:300℃/300℃
検出器:FID
キャリアガス:ヘリウム
ガス流量:0.97mL/min
JIS K2501(2003年)に準拠して測定した。
JIS K2283(2000年)に準拠して、40℃、100℃における動粘度を測定した。
JIS K2283(2000年)に準拠して算出した。
JIS K2269(1987年)に準拠して流動点を測定した。
JIS K2265.4(クリーブランド解放式)(2007年)に準拠して測定した。
表1又は表2に記載の組成比の炭化水素系基油とエステルとからなる混合油100重量部に、酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール及びp,p’−ジオクチルジフェニルアミン各1.0重量部を添加してなる潤滑油を調製した。当該試験は、通常酸化防止剤などの添加剤を加えて行われる為、実施例及び比較例において同一の添加剤を配合して比較試験を行った。内径33mm、高さ85mmのガラス製試験管にその潤滑油0.2gと鋼、アルミ、銅の針金をそれぞれ2mmの長さに切ったものを入れて共栓の蓋をし、蓋が開かないように止め金を付けた。その試験管をオーブンに入れ、190℃で20時間加熱した。試験後の潤滑油の酸価を測定して、酸化試験前の酸価との差を求め、その差を酸価上昇値とした。酸価上昇値(mgKOH/g)が小さいものほど熱酸化安定性が良好であると判定される。
酸価上昇値(mgKOH/g)=試験後の酸価−試験前の酸価
ホットチューブテスタ(コマツエンジニアリング社製)を用いて評価した。表1又は表2に記載の組成比の炭化水素系基油とエステルとからなる混合油100重量部に、酸化防止剤として4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)及びp,p’−ジオクチルジフェニルアミン各0.5重量部を添加してなる潤滑油を調製した。当該試験は、通常酸化防止剤などの添加剤を加えて行われる為、実施例及び比較例において同一の添加剤を配合して比較試験を行った。ガラスチューブ内を290℃に保ち、その潤滑油0.31mL/時間、空気10mL/分の割合で16時間注入する。試験後にガラスチューブをn−ヘキサンで洗浄し、十分に乾燥させた後、汚れを評点見本と比較しカラー評点(0〜10点満点)として判定した。又、ガラスチューブの重量増加をコーク量(mg)とした。この際、評点の高い程、或いはコーク量の少ない程、高温清浄性が良好であることを示す。
表1又は表2に記載の組成比の炭化水素系基油とエステルとからなる混合油100重量部に、酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.0重量部を添加してなる潤滑油を調製した。当該試験は、通常酸化防止剤などの添加剤を加えて行われる為、実施例及び比較例において同一の添加剤を配合して試験評価を行った。内径33mm、高さ85mmのガラス製試験管にその潤滑油50gとシート状のニトリルゴム(20mm×20mm、厚さ1mm)を入れて共栓の蓋をし、蓋が開かないように止め金を付けた。その試験管をオーブンに入れ、120℃で72時間加熱した。試験後にゴムを取り出し、n−ヘキサンで洗浄した後、冷風にてn−ヘキサンを揮発させ、さらに1時間デシケーターにて室温・常圧で保管した後、ゴムの重量増加を測定した。試験前後の重量変化率(重量%)が大きいものほど(即ち、試験前よりも試験後の重量が増加したものほど)、ゴムへの膨潤性が大きいと判定される。なお、重量変化率が負の値となった場合は実用性がないと判断される。重量変化率(重量%)は下記の式に従って算出した。
重量変化率(重量%)=(試験前後で変化したゴムの重量/試験前のゴムの重量)×100
内径6.6mm、高さ30cmのガラス試験管に長さ4cmの鉄、銅およびアルミニウムの針金を入れ、各実施例又は比較例に記載のエステルを2.0g、蒸留水を0.2g秤取る。アスピレーターで脱気しながらその試験管を封じ、オーブンに入れて175℃で40時間加熱する。試験後のエステルの酸価を測定して、試験前の酸価との差を求めた。酸価の上昇値(mgKOH/g)が小さいものほど、エステル自身の耐加水分解性が良好であることを示す。そして、この値は本発明の自動車用潤滑油組成物の耐水性に直接的に反映する指標として相対的な評価ができる値である。
酸価上昇値(mgKOH/g)=試験後の酸価−試験前の酸価
撹拌機、温度計、Dean−Stark水分離器を備えた4ツ口フラスコに、仕込み原料である酸成分として1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物231g(1.5モル)及びモノアルコール成分として2−メチル−1−プロパノール244.2g(3.3モル)、並びに水同伴剤としてキシレンを仕込み原料に対し5重量%に相当する量(23.8g)及びエステル化触媒として酸化スズ触媒を仕込み原料に対し0.2重量%に相当する量(0.95g)を仕込み、窒素置換した後、窒素雰囲気下、徐々に220℃まで昇温した。エステル化反応中に副生した水を水分分離器で除去しながら、常圧で15時間エステル化反応を行い、引き続き220℃を保持したまま減圧下(0.02MPa)で5時間反応し続けて、反応混合物の酸価は5mgKOH/g以下となり、エステル化粗物を得た。
次に、そのエステル化粗物の後処理を行った。まずエステル化粗物からキシレン及び過剰の2−メチル−1−プロパノールを180℃、1330Paの減圧条件下で留去し、得られた液状残査に5%苛性ソーダ水溶液30gを加えて80℃で2時間撹拌を行なうことにより中和を行った。その中和処理をしたものを水洗水の水層が中性になるまで繰り返し水洗して液状物を得た。次いで活性アルミナを加えて攪拌して吸着処理した後、吸引濾過をして1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(2−メチルプロピル)(以下「エステルA」という)394gを得た。
エステルAの酸価は0.01mgKOH/g、水酸基価は1mgKOH/g未満、硫酸灰分は30ppm未満であった。
前記1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物は、新日本理化社製「リカシッドHH」を使用した。該無水物は、無水マレイン酸と1,3−ブタジエンとをディールス・アルダー反応をすることにより調製した4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物の二重結合を水素化することにより調製された無水物である。
仕込み原料のモノアルコール成分を2−メチル−1−プロパノール122.1g(1.65モル)、2−エチル−1−ヘキサノール214.5g(1.65モル)に代え、常圧でのエステル化反応時間を5時間とした他は、製造例1と同様の方法により、エステル混合物(以下「エステルB」という)515gを得た。エステル化反応終了時の反応混合物の酸価は1mgKOH/g以下であった。
エステルBの酸価は0.01mgKOH/g、水酸基価は1mgKOH/g未満、硫酸灰分は30ppm未満であった。エステルBの組成は、ガスクロマトグラムから以下の通りであった。
エステルB;
(a)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(2−メチルプロピル)
(b)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸(2−メチルプロピル)(2−エチルヘキシル)
(c)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(2−エチルヘキシル)
(a)/(b)/(c)=20.5/47.3/32.2(面積%)
なお、前記(b)は、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及び2−エチル−1−ヘキサノールとから得られる混基エステルと同義である。
仕込み原料のモノアルコール成分を2−メチル−1−プロパノール122.1g(1.65モル)、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール(協和発酵ケミカル社製「ノナノール」)237.6g(1.65モル)に代え、常圧でのエステル化反応時間を5時間とした他は、製造例1と同様の方法により、エステル混合物(以下「エステルC」という)547gを得た。エステル化反応終了時の反応混合物の酸価は1mgKOH/g以下であった。
エステルCの酸価は0.01mgKOH/g、水酸基価は1mgKOH/g未満、硫酸灰分は30ppm未満であった。エステルCの組成は、ガスクロマトグラムから以下の通りであった。
エステルC;
(a)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(2−メチルプロピル)
(b)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸(2−メチルプロピル)(3,5,5−トリメチルヘキシル)
(c)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(3,5,5−トリメチルヘキシル)
(a)/(b)/(c)=17.3/55.1/27.6(面積%)
なお、前記(b)は、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及び3,5,5−トリメチルヘキサノールとから得られる混基エステルと同義である。
仕込み原料のモノアルコール成分を2−メチル−1−プロパノール73.3g(0.99モル)、イソノナノール(協和発酵ケミカル社製、製品名「オキソコール900」)332.6g(2.31モル)に代え、常圧でのエステル化反応時間を5時間とした他は、製造例1と同様の方法により、エステル混合物(以下「エステルD」という)587gを得た。エステル化反応終了時の反応混合物の酸価は1mgKOH/g以下であった。
エステルDの酸価は0.01mgKOH/g、水酸基価は1mgKOH/g未満、硫酸灰分は30ppm未満であった。エステルDの組成は、ガスクロマトグラムから以下の通りであった。
エステルD;
(a)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(2−メチルプロピル)
(b)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸(2−メチルプロピル)(イソノニル)
(c)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(イソノニル)
(a)/(b)/(c)=7.5/45.6/46.9(面積%)
なお、前記(b)は、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及びイソノナノールとから得られる混基エステルと同義である。また当該「イソノナノール」は、炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族モノアルコールの異性体を含む混合物である。
仕込み原料のモノアルコール成分を2−メチル−1−プロパノール122.1g(1.65モル)、イソデカノール(協和発酵ケミカル社製,製品名「デカノール」)260.7g(1.65モル)に代え、常圧でのエステル化反応時間を5時間とした他は、製造例1と同様の方法により、エステル混合物(以下「エステルE」という)565gを得た。エステル化反応終了時の反応混合物の酸価は1mgKOH/g以下であった。
エステルEの酸価は0.01mgKOH/g、水酸基価は1mgKOH/g未満、硫酸灰分は30ppm未満であった。エステルEの組成は、ガスクロマトグラムから以下の通りであった。
エステルE;
(a)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(2−メチルプロピル)
(b)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸(2−メチルプロピル)(イソデシル)
(c)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(イソデシル)
(a)/(b)/(c)=19.0/48.7/32.3(面積%)
なお、前記(b)は、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−メチル−1−プロパノール及びイソデカノールとから得られる混基エステルと同義である。また当該「イソデカノール」は、炭素数10の分岐鎖状の飽和脂肪族モノアルコールの異性体を含む混合物である。
自動車用潤滑油添加剤として製造例1〜5で得られたエステルA〜Eを用い、炭化水素系基油にそのエステルA〜Eを混合して、本発明の自動車用潤滑油組成物を調製した。また比較例として、ポリオールエステルと炭化水素系基油とを混合した本発明外の潤滑油を調製した。
当該自動車用潤滑油組成物の組成(比)、動粘度、粘度指数、引火点及び流動点の測定結果、並びに耐熱酸化安定性、高温清浄性、材料適合性及び耐水性の評価結果を表1又は表2に示した。なお、炭化水素系基油及び比較例で用いたポリオールエステル(以下「エステルa」という)は下記の通りである。
PAO;「SpectraSyn4」(製品名,エクソンモービルケミカル社製)
鉱油;「コスモニュートラル100」(製品名,コスモ石油ルブリカンツ社製)
エステルa;トリメチロールプロパンと1−オクタン酸及び1−デカン酸とから得られるトリエステル混合物(1−オクタン酸:1−デカン酸=6:4(モル比))
炭化水系基油の動粘度、粘度指数、引火点及び流動点の測定結果、並びに耐熱酸化安定性、高温清浄性、材料適合性及び耐水性の評価結果を表2に示した。
Claims (6)
- 炭化水素系基油と一般式(1)
で表される脂環式ジカルボン酸ジエステル1種又は2種以上とを含有し、該脂環式ジカルボン酸ジエステルの含有量が炭化水素系基油100重量部に対して0.5〜20重量部の範囲である、自動車のエンジン用、変速機用又はショックアブソーバー用潤滑油組成物。 - さらに一般式(1)におけるR1及びR2の少なくとも一方が2−メチルプロピル基である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
- 炭化水素系基油が80〜160の粘度指数を有するものである、請求項1又は請求項2に記載の潤滑油組成物。
- 潤滑油組成物の引火点が200℃以上であり、かつ100℃における動粘度が1.5〜40mm2/sである、請求項1〜3の何れかに記載の潤滑油組成物。
- 一般式(1)
で表される脂環式ジカルボン酸ジエステルからなる自動車のエンジン用、変速機用又はショックアブソーバー用潤滑油添加剤。 - さらに一般式(1)におけるR1及びR2の少なくとも一方が2−メチルプロピル基である、請求項5に記載の潤滑油添加剤。
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