JP5791025B2 - ラッカーゼ活性を有する耐熱性タンパク質、当該タンパク質をコードする核酸分子、当該タンパク質の製造方法 - Google Patents
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Description
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および付加から選択される少なくとも1の改変が生じたアミノ酸配列を含むタンパク質
[2]下記(c)又は(d)のラッカーゼ活性を有するタンパク質であって、25〜85 ℃の温度領域において活性を示し、60 ℃での17時間の熱処理によっても70%以上の活性を保持するラッカーゼ活性を有するタンパク質。
(c)配列番号3に示すアミノ酸配列を含むタンパク質
(d)配列番号3に示すアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および付加から選択される少なくとも1の改変が生じたアミノ酸配列を含むタンパク質
[3]本発明のタンパク質が組換え体である
[5]本発明の単離核酸分子が、下記(i)又は(ii)のポリヌクレオチドからなる。
(i)配列番号1に示す塩基配列を含むポリヌクレオチド
(ii)配列番号1に示す塩基配列を含むポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド
[6]本発明の核酸分子を含有する組換えベクター。
[7]本発明の組換えベクターを含有する形質転換体。
[8]本発明の形質転換体を培養し、得られた培養物から本願発明のラッカーゼ活性を有するタンパク質を採取する製造方法。
本発明は、以下の生物学的特性を有するラッカーゼ活性を有するタンパク質に関する。理化学的特性、アミノ酸配列の一次構造、及び由来に分け説明する。なお、本明細書においては本発明のラッカーゼ活性を有するタンパク質を「MELAC」と、また当該タンパク質をコードする核酸分子を「melac」称する場合がある。
1−1−1.ラッカーゼ活性
MELACはラッカーゼ活性を有するタンパク質である。ここで、ラッカーゼとは基質酸化反応の触媒能力を有する酸化酵素であり、その触媒中心に4個の銅イオンが結合したマルチ銅酸化酵素である。基質酸化活性としては、o-, p-ジフェノール、p-フェニレンジアミン、アスコルビン酸
などの酸化
が挙げられ、その触媒機能は、基質から電子を引き抜き(電子受容部位)、その電子を用いて酸素を水に還元することにより発揮される。そして、電子供与体との反応部位(タイプI銅部位)と、電子受容体との反応部位が異なることが知られている。基質としては、例えば、ABTS、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン(TOOS)、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、フェノール、グアヤコール、ピロガロール、p−ヒドロキシ安息香酸、カフェイン酸、ヒドロカフェイン酸、o−クレゾール、p−トルイジン、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、2,6−ジクロロフェノール、2,4,6−トリクロロフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、p−フェニレンジアミン、没食子酸プロピル等が例示でき、特にABTSが好ましく利用できる。
MELACは常温域でラッカーゼ活性を発揮すると共に、高い耐熱性を有する。具体的には、約15 ℃〜約35 ℃の常温域での活性に加え、50℃を超える高温域でも活性を示す。したがって、約25〜85℃の温度領域において安定した活性を示す。至適温度は、80 ℃以上であることが特に好ましい。つまり、これは酵素の耐久性の限界温度が80 ℃以上であることを意味する。更に、MELACは、長時間の熱処理に対しても耐性を示す。例えば、80 ℃以上での1時間程度の熱処理に対しても、常温域での活性に対して60%以上の活性を保持することが好ましい。特には、60 ℃において17時間までの長時間の熱処理によっても、常温域での活性に対して70%以上の活性を保持することが好ましい。更に、80 ℃での17時間以上の熱処理によっても失活しないことが好ましい。そして、特には、60〜70 ℃での1時間の加温によっても活性を70%以上保持できることが好ましい。ここで、失活とはタンパク質が変性し活性を示さなくなることであり、加温処理によっても好ましくは常温域での活性に対して10〜20%の活性を保持できることが好ましい。したがって、MELACは常温域で活性を発揮できると共に耐熱性が高いことから、医療、食品、環境分野等の様々な産業分野における基質酸化反応を要する技術に適用できる。なかでも、25 ℃程度の一般的な使用条件において、また、長期使用及び様々な高温条件下などの様々な使用環境においても安定してその機能を発揮できる耐久性を備えることが要求される燃料電池やバイオセンサー等の電極触媒として利用が期待される。さらに、MELACを組み換え体として遺伝子工学的手法により大量に合成した場合等においても、加熱処理により宿主由来の夾雑タンパク質を不溶性画分として容易に除去できる。したがって、精製に際して、その精製度を向上させることができ、信頼性の高い酵素を製造できるという利点がある。
ラッカーゼはそのアミノ酸組成の違いにより異なる分子量を有していてもよいが、好ましくは比較的小さな分子量を有していることが望ましく、特にMELAC は約47.5kDa とラッカーゼとしては比較的小さな分子量を有する。ラッカーゼが特に適用が期待される燃料電池やバイオセンサー等の電極は、出力向上の観点から触媒酵素を導電性部材上に高密度かつ大量に固定化して構成されることが要求される。そのため、低分子量の物質は、導電性部材の面積あたりの分子の担持量を高めることができ、電流密度が向上することができる。したがって、MELACの利用により燃料電池やバイオセンサーの高性能化を期待できる。
MELACは、配列番号2のアミノ酸配列を含むものが好適に例示される。更に、前述の理化学的性質を保持している限り、配列番号2のアミノ酸配列において、特定のアミノ酸に改変が生じている改変部位を有するアミノ酸配列を含むものであってもよい。改変とは、改変の基礎となるタンパク質のアミノ酸配列のうち、1又は複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入および付加の少なくとも1つからなる改変が生じていることを意味する。そして、「1又は複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び付加の少なくとも1つからなる改変」とは、改変の基礎となるタンパク質をコードする遺伝子に対する公知のDNA組換え技術、点変異導入方法等によって、欠失、置換、挿入又は付加することができる程度の数のアミノ酸が、欠失、置換、挿入又は付加されることを意味し、これらの組み合わせをも含む。例えば、このような改変体は、配列番号2で示すアミノ酸配列に対して、アミノ酸レベルで70 %以上、好ましくは80 % 以上、更に好ましくは90 %以上の相同性を保持するものとすることができる。具体的には、例えば、MELACのアミノ酸配列の一例である配列番号2に示すアミノ酸配列において、第36番目のバリンがイソロイシンへ置換(V36I)、又は、第120番目のアスパラギンがアスパラギン酸へ置換(N120D)されたものが含まれる。双方の置換を有するものが好ましく例示され、そのアミノ酸配列を配列表の配列番号3に示す。更に、前述の理化学的性質を保持している限り、配列番号3のアミノ酸配列において、特定のアミノ酸に改変が生じている改変部位を有するアミノ酸配列を含むものであってもよい。
MELACの由来は、前述の本発明のMELACの理化学的性質を具備している限り制限はない。例えば、前述の理化学的性質を有するMELACを生産する能力を有する生物体であり、いずれの生物体に由来するものであってもよく、特には細菌由来である。好ましくは、堆肥等の環境試料中に存在する生物体に由来する。たとえば、環境試料から調製されたメタゲノムDNAより発現させたタンパク質から、上記理化学的性質を有するタンパク質をスクリーニングすることにより取得することができる。
MELACをコードする核酸分子は、前述の理化学的性質を有するすべてのMELACをコードするものを包含する。例えば、配列番号2又は3に記載されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドであり、一具体例としては、配列番号1に示す塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。ここで、本発明におけるポリヌクレオチドにはDNA及びRNAの双方が含まれ、DNAである場合には、1本鎖であると、二本鎖であるとは問わない。
本発明の組換えベクターは、適当なベクターに本発明のMELACをコードする核酸分子を組み込むことによって構築することができる。利用可能なベクターとしては、外来DNAを組み込め、かつ宿主細胞中で自律的に複製可能なものであれば特に制限はない。したがって、ベクターは、MELACをコードする核酸分子を挿入できる少なくとも1つの制限酵素部位の配列若しくは、部位特異的な組み換え配列を含むものである。例えば、プラスミドベクター(pET系、pUC系、及びpBR系等)、ファージベクター(λt10、λt11、及びλAP等)、コスミドベクター、ウイルスベクター(ワクシニアウイルス、及びバキュロウイルス等)等が包含される。
本発明の形質転換体は、適当な細胞を、本発明のMELACをコードする核酸分子を含む組換えベクターで形質転換することによって構築することができる。ここで、宿主となる細胞としては、本発明のMELACをコードする核酸分子を効率的に発現できる宿主細胞であれば、特に制限はない。原核生物を好適に利用でき、特には大腸菌を利用することができる。その他、枯草菌、バシラス属細菌、シュードモナス属細菌等をも利用できる。大腸菌としては、例えば、E.coli DH5瘁AE.coli BL21、E.coli JM109等を利用できる。更に、原核生物に限定されず真核生物細胞を利用することが可能である。例えば、Saccharomyces cerevisiae等の酵母、Sf9細胞等の昆虫細胞、CHO細胞、COS-7細胞等の動物細胞等を利用することも可能である。形質転換法としては、塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポソームトランスフェクション法、マイクロインジェクション法等を公知の方法を利用することができる。
MELACの製造方法は、前述の本発明の形質転換体を培養し、得られた培養物からラッカーゼ活性を有するタンパク質を採取することにより行なう。即ち、前述の本発明の形質転換体を培養する培養工程と、前記培養工程で発現した前記タンパク質を回収する回収工程とを備える。このように、適当な宿主で発現させることによって、低コストでMELACの大量生産が可能となる。
MELACは、常温域で活性化する共に、耐熱性に優れたラッカーゼであることから、種々の産業分野において利用することができる。その利用形態を以下に説明するが、しかしながらこれらに限定されるものではない。
MELACを、酵素電極の触媒として利用することができる。好ましくは、本発明のMELACを外部回路に接続した導電性基材上に固定化することにより構築することができ、構築された電極を燃料電池やバイオセンサーなどに利用することができる。
MELACは、燃料電池の構築に利用することができ、かかる燃料電池も本発明の一部を構成する。本発明の燃料電池は、例えば、酸化反応を行うアノード極と、還元反応を行うカソード極から構成され、必要に応じてアノードとカソードを隔離する電解質層を含んで構成され、好ましくは、6−1の項で説明したMELACを外部回路に接続した導電性基材上に固定化した電極を備える。また、MELACを適当な緩衝液中に溶解させた形態で供給してもよい。固定化に際しては、MELACは、銅原子を含むホロ酵素の状態で固定化することが好ましい。しかしながら、アポ酵素の形態で固定化し、銅原子を別の層として、又は、適当な緩衝液に溶解させた形態で供給してよい。また、その他の、酵素の触媒活性の発現のために必要な物質を、別の層として、又は、適当な緩衝液に溶解させた形態で供給してよい。そして、好ましくは、MELACを外部回路に接続した導電性基材上に固定化した電極はカソード側電極として構築する。好ましくは、アノード側電極は、炭素電極とし、炭素電極とMELACとの間で直に電子のやり取りを行うように構成する。また、炭素電極とMELACの間に、酸化還元物質を介在させるように構成してもよい。例えば、アノード側電極として、グルコースデヒドロゲナーゼ等の酸化還元酵素を固定化した電極を使用することができる。また、必要に応じて、酵素反応と電極間の電子伝達を媒介する電子メディエーターを用いる。メディエーターは、特に限定されるものではないが、例えば、キノン類、シトクロム類、ビオロゲン類、フェナジン類、フェノキサジン類、フェノチアジン類、フェリシアン化物、フェレドキシン類、フェロセンおよびその誘導体等が例示される。
MELACは、バイオセンサーの構築に利用することができ、かかるバイオセンサーも本発明の一部を構成する。本発明のバイオセンサーは、6−1の項で説明したMELACを外部回路に接続した導電性基材上に固定化した電極を備える。例えば、この電極を作用電極とし、その対極を設けて構成される。必要に応じて、測定精度の信頼性を高める観点から、銀-塩化銀などの参照極を設けた三電極方式として構成してもよい。このように構成することにより、ラッカーゼの基質となるo-, p-ジフェノール、p-フェニレンジアミン、アスコルビン酸などを検出することができる。
環境試料由来のメタゲノムDNAからラッカーゼをコードする核酸分子の一部を、PCRを利用してクローニングした。
ラッカーゼ遺伝子を得るために、既存ラッカーゼのアミノ酸配列を参考にして、PCR増幅用のディジェネレートプライマーを設計した。既知ラッカーゼ遺伝子配列としては、Thermus thermophilus (NCBI accession number YP_005339、Cyanothece sp.(NCBI accession number ZP_01731625、Synechococcus sp. (NCBI accession number ZP_01081498、Lyngbya sp. NCBI accession number ZP_01621366、Trichodesmium erythraeum (NCBI accession number YP_720301を用いた。
ここで設計したプライマーの配列情報は以下の通りである。
フォワードプライマー配列
5’−CCCTGCTGGAATGTTCTGOLE_LINK3GTAYCAYCCNCA−3’(配列番号4)
リバースプライマー配列
5’−OLE_LINK3CCAGATCCTCATGGTCCAGAATRTGRCARTG−3’(配列番号5)
環境試料からのメタゲノムDNAを鋳型とした。ここで、環境試料としては、千葉市緑区の牧場より採取した木材成分を酸化分解するバクテリアが多く含まれる木材堆肥を使用した。具体的には、間伐材や剪定材を粉砕機で粉砕して木材チップを製造し、この木材チップと発酵菌を含有する牛糞とを体積比が1:1になるように混合した後、堆肥切り返し機を用いて7〜10日の割合で混合し、50〜70 ℃で高温発酵した。木材堆肥からメタゲノムDNAを抽出するためのサンプリングは、木材チップ作製直後の木材堆肥、発酵1ヵ月後の木材堆肥、及び4〜5ヵ月後(最終)に行った。鋳型とする堆肥試料の抽出DNA溶液は、2〜6 g(湿重量)の堆肥試料を出発材料にして、DNA Isolation Kit(MO-BIO社製)を用いて、その添付資料記載の手順に従って調製した。抽出したDNAは、最終的に5 mlのキットに付属した溶出液に溶解させた。
なお、対象試料として、2ヵ月発酵の籾殻堆肥、及び牛糞(脱糞直後)の環境試料から同様にして、メタゲノムDNAの抽出を行った。
上記1で調製したフォワード及びリバースプライマーと、上記2で調製した鋳型DNAとを用いてPCR増幅を行った。PCR反応は、Multiplex PCR Assay Kit (Takara-Bio社製を用いて、当該試薬に付属される説明書に従って実行した。具体的なPCRの反応温度条件は、以下の通りである。
(1)熱変性工程:94 ℃、30秒間
(2)熱変性工程:94 ℃、30秒間
(3)アニーリング工程:55 ℃、30秒間
(4)伸長工程:74 ℃、90秒間
(5)最終伸長工程:74 ℃、7分間
工程(1)の熱変性後、工程(2)〜(4)を40サイクル繰り返し、最後に工程(5)の最終伸長により反応を終了した。
インバースPCR法を利用して、実施例1で得られたDNA断片の全長配列を取得した。本発明のように環境DNAなどの試料から有用な遺伝子などを取得する際に、解読して既知になったDNA配列の周辺領域の未知のDNA配列について増幅が必要である。そのために、既知のDNA配列領域から、当該領域に隣接する未知のDNA配列領域の方向に、伸長反応するように設計されたプライマーを用いて、未知のDNA配列を増幅するインバースPCR法を利用して全長遺伝子を取得した。
発酵1ヶ月後の木材堆肥から抽出したメタゲノムDNAに、制限酵素BamHI、HindIII、KpnI、NdeI、NotI、PstI、SacI、SalI、SmaI、SphI、XbaI、XhoIを夫々50ユニット加え、37 ℃にて5時間の制限酵素反応を行った。このときの反応溶液の用量は50 μlとし、夫々制限酵素に付属のものを使用した。反応後の溶液を、OLE_LINK2DNA 精製キット(GE-Healthcare社製)を用いてOLE_LINK2溶液中のDNAを精製した。次に、精製したDNAをTE緩衝液に溶解して20μlとし、この溶液にDNA Ligation Kit(Mighty Mix)(タカラバイオ社)を20 μl加え、16 ℃にて一晩保温してセルフライゲーション反応をさせた。反応終了後、DNA精製キット(GE-Healthcare社製)を用いて反応産物を精製した。上記精製後の試料全量をインバースPCR法の鋳型として用いて、標的DNA配列の増幅を行った。
プライマーは、実施例1で得られたDNA断片を解読して既知になったDNA配列の周辺領域の未知のDNA配列について増幅できるよう設計した。ここで設計したプライマーの配列情報は以下の通りである。
フォワードプライマー配列
5’−AGTCGTACGTGAAGGTTTCGCCGGG−3’(配列番号6)
リバースプライマー配列
5’−GGTATGATGGGCCATATTCACCTCACTCCC−3’(配列番号7)
上記1で調製した上記反応産物の全量をPCR反応に供した。そして、反応溶液は、DNAポリメラーゼとしてPrimeSTAR GXL DNA Polymerase(Takara-Bio社製)を用い、その添付資料に従って、プライマー(終濃度0.2 μM)を添加し、滅菌蒸留水で50 μlにメスアップすることにより調製した。続いて、調製後の反応溶液をサーマルサイクラーGeneAmp(登録商標) PCR System 9700(Applied Biosystems社)を用いてインバースPCRを実行した。具体的なPCRの反応温度条件は、以下の通りである。
(1)熱変性工程:98 ℃、10秒間
(2)アニーリングおよび伸長工程:68 ℃、120秒間
(3)最終伸長工程:68 ℃、10分間
工程(1)および(2)を25サイクル繰り返し、最後に工程(3)の最終伸長により反応を終了した。
実施例2で取得したラッカーゼと推定されるタンパク質のアミノ酸配列につき、相同性検索を行うと共に、既知の基質酸化活性を有するタンパク質とのアミノ酸配列アラインメントを行った。
相同性検索は、類似性の高い配列群を見つけ出すために汎用されるBLAST検索により行った。検索条件として、デフォルトすなわち初期条件のパラメーターを用いた場合、最もスコアが高いものとして、原核生物Sorangium cellulosum (AC CESSION YP_001611435)由来のoxidoreductase(配列番号8)がヒットした。相同性は、図3に示すとおり、アミノ酸レベルで46 %(Identities = 196/422)程度であった。
既存の耐熱ラッカーゼのアミノ酸配列とのアラインメントを行った。結果を図4に示す。パネルAは、既存の耐熱性ラッカーゼとして、先行技術文献として提示した特許文献5(特開2006-158252号公報)に開示されるサーマス サーモフィラス由来のラッカーゼとのアミノ酸配列(配列番号9)との比較を示す。以下、当該サーマス サーモフィラス由来のラッカーゼを「TthLAC」と称する場合がある。パネルBは、先行技術文献として提示した特許文献4(特開2009-201481号公報)に開示される環境メタゲノムDNA由来のラッカーゼとのアミノ酸配列(配列番号10)との比較を示す。以下、当該環境メタゲノムDNA由来のラッカーゼを「SLAC」と略する場合がある。その結果、既存のサーマス サーモフィラス由来のラッカーゼとの相同性はアミノ酸レベルで29%(Identities = 135/462)程度であり、既存の環境メタゲノムDNA由来のラッカーゼとの相同性はアミノ酸レベルで20%(Identities = 73/360)程度であり、既存のラッカーゼとは相同性がほとんどないことが判明した。
実施例2で得られたラッカーゼと推定される遺伝子の増幅を行った。
実施例2で得られたラッカーゼと推定される遺伝子の部分配列(ラッカーゼのN末端領域をコードする5´末端配列、及びC末端領域をコードする3´末端配列)に対する特異的プライマーを設計した。具体的には、ここで設計したプライマーの配列情報は以下の通りである。
フォワードプライマー配列
5’−GAAGGAGATATACAT-ATGGAGCTCGAGGCGCGCGTCAC−3’(配列番号11)
リバースプライマー配列
5’−GAGTGCGGCCGCAAG-GGGAGTGAGGTGAATATGGCCCA−3’(配列番号12)
実施例2で取得したDNA断片を鋳型とし、上記プライマーを使用してPCR反応に行った。PCR反応はPrimeSTAR GXL DNA Polymerase (Takara-Bio社を用いて、実施例2に準じて行った。具体的なPCRの反応温度条件は、以下の通りである。
(1)熱変性工程:98 ℃、10秒間
(2)アニーリングおよび伸長工程:68 ℃、120秒間
(3)最終伸長工程:68 ℃、10分間
工程(1)および(2)を25サイクル繰り返し、最後に工程(3)の最終伸長により反応を終了した。得られたPCR産物はアガロースゲル電気泳動により分析及び精製し、以下の実験に使用した。
実施例4で得られDNA断片を大腸菌に形質転換し、大腸菌細胞内で発現させ組み換えタンパク質を製造した。
実施例4で得られたDNA断片を大腸菌発現用ベクターであるpET22b Vectorのマルチクローニングサイト(NdeIとHindIIIの間)に、クローニングキット(In-Fusion Advantage PCRクローニングキット、クローンテック社製)を用いてクローニングした。配列番号11及び配列番号12において、インサートの末端に付加するベクターに相同な配列(15塩基)とインサートの末端配列との間をハイフンで示す。このとき、ラッカーゼ遺伝子のC末端にあるストップコドンを除き、pET22bのNdeI/HindIIIサイトにクローニングすることで、C末端側にヒスチジンを含んだペプチド(L-A-A-A-L-E-H-H-H-H-H-H(配列番号13):H-H-H-H-H-H はHisタグ)との融合タンパク質の発現プラスミドを構築し、大腸菌DH5α株に形質転換し、その遺伝子導入プラスミドを選択した。
上記で選択したタンパク質発現プラスミドを、大腸菌BL21(DE3)pLysS株に形質転換することで導入した大腸菌を培養し、IPTG(isopropyl thio-β-galactoside) の添加により、上記融合タンパク質を誘導し発現させた。具体的には、大腸菌を、吸光度OD600が約0.2になるまで37 ℃で培養し、更に0.1 mMのIPTG、0.5 mM CuCl2を加えて20 ℃で20時間培養した。培養後、培養液を遠心分離することにより大腸菌を回収し、次の実験まで凍結させた。
タンパク質を発現した菌体を、10 mM Tris-HCl, 1mM EDTA, pH7.4に懸濁し、0.4 %の界面活性剤(Brij58)を加え、氷中で30分間放置した。次に、超音波菌体破砕器にて菌体を破砕し、不溶物を遠心分離により除き、細胞破砕液を分取した。得られた細胞破砕液に可溶化液(SDS を含む電気泳動用サンプル調整液)を加えて95 ℃で熱処理した。続いて、タンパク質の発現を確認するため、この細胞破砕液をアクリルアミドゲル(10-20% PAGEL、アトー社製)で電気泳動に供し、CBB染色法(和光純薬社製)によりタンパク質を可視化した。また、この菌体破砕液を、40,000X g で30分間遠心分離して得られた上清を同様に電気泳動に供しタンパク質を可視化した。
実施例5で精製したラッカーゼと推定されるタンパク質のラッカーゼ活性の有無を確認した。
MELACのラッカーゼ活性のpH依存性を確認した。
MELACのラッカーゼ活性の耐熱性を確認した。
対照としてMELACを添加せず反応液のみを85 ℃で処理した後、同様にラッカーゼ活性を測定したところ活性を示さなかった。したがって、加熱後に残存する活性は、反応液ではなく、全てMELACに由来するものであることが理解できる。
実施例8にて、60分加熱によるMELACのラッカーゼ活性の耐熱性を確認したが、本実施例では、加熱時間を更に長くした場合のMELACのラッカーゼ活性の耐熱性を確認した。
MELACのラッカーゼ活性の温度依存性を検討した。
MELACを、MELACと同様に木材堆肥由来のメタゲノムDNAより単離したラッカーゼとをアミノ酸配列レベルで比較した。
MELACを、MELACと同様に木材堆肥由来のメタゲノムより単離したラッカーゼ及びBacillus subtili由来のラッカーゼとを温度依存性の観点から比較した。
MELACを、MELACと同様に木材堆肥由来のメタゲノムDNAより単離したラッカーゼ等の既知のラッカーゼと分子量の観点から比較した。
他著、JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY、1993年9月、第268巻、第25号、第18801〜9頁)、大腸菌由来のラッカーゼ(先行技術文献として提示した非特許文献1(Sue A. Roberts他著、JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY、2003 年8月、第278巻、第34号31958〜63頁))、実施例3で検討を行ったSLAC及びTthLACである。結果を表1に示す。なお、当該Myrothecium verrucaria由来のラッカーゼを「M.verBOD」と、大腸菌由来のラッカーゼを「CueO」と称する場合がある。
実施例6〜10において活性が確認されたMELACと同等の活性を有する亜種を探索した。
実施例5で精製した酵素について、迅速なホロ化法について検討を行った。
Claims (8)
- 下記(a)又は(b)のラッカーゼ活性を有するタンパク質であって、25〜85℃の温度領域において活性を示し、60℃での17時間の熱処理によっても70%以上の活性を保持するラッカーゼ活性を有するタンパク質。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質 - 下記(c)又は(d)のラッカーゼ活性を有するタンパク質であって、25〜85℃の温度領域において活性を示し、60℃での17時間の熱処理によっても70%以上の活性を保持するラッカーゼ活性を有するタンパク質。
(c)配列番号3に示すアミノ酸配列を含むタンパク質
(d)配列番号3に示すアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質 - 組換え体である請求項1又は2に記載のタンパク質。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする核酸分子。
- 下記(i)又は(ii)のポリヌクレオチドからなる請求項4に記載の核酸分子。
(i)配列番号1に示す塩基配列を含むポリヌクレオチド
(ii)配列番号1に示す塩基配列を含むポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド - 請求項4又は5に記載の核酸分子を含有する組換えベクター。
- 請求項6に記載の組換えベクターを含有する形質転換体。
- 請求項7に記載の形質転換体を培養し、得られた培養物からラッカーゼ活性を有するタンパク質を採取する、請求項1〜3の何れか一項に記載のラッカーゼ活性を有するタンパク質の製造方法。
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