JP5786423B2 - 非水電解液型二次電池システムおよびハイブリッド車両 - Google Patents

非水電解液型二次電池システムおよびハイブリッド車両 Download PDF

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Description

本発明は,非水電解液型二次電池システムおよびハイブリッド車両に関する。さらに詳細には,ハイレート充放電による非水電解液型二次電池の劣化を抑制する非水電解液型二次電池システムおよびハイブリッド車両に関するものである。
二次電池は,繰り返し充放電を行うことのできる電池である。例えば,ハイブリッド車両に搭載される二次電池においては,より大電流の充放電(ハイレート充放電)が行われる。このため,エネルギー密度が高く,ハイレート充放電性に優れる非水電解液型のリチウムイオン二次電池を車両用に採用すべく開発が進められている。しかし,リチウムイオン二次電池であっても,より大きな電流で充放電を繰り返すことにより,その内部抵抗が上昇することが知られている(例えば特許文献1の段落[0004]参照)。
このような内部抵抗の上昇の抑制を図ったリチウムイオン二次電池が,特許文献1により開示されている。特許文献1においては,電極集電体と電極合剤層との間に導電層を配設することにより,電極体の劣化を防止するとしている。これにより,電圧低下を抑制するリチウムイオン二次電池が開示されている(例えば特許文献1の段落[0033]参照)。
特開平9−97625号公報
その後,本出願人の研究開発の結果,内部抵抗の上昇の原因として,上記した電極体に起因するものの他に,電解液中の不均一な塩濃度分布に起因するものがあることが明らかになってきた。ここで,不均一な塩濃度分布とは,電極近傍と,電極間の中間地点近傍とで,塩濃度に偏りがみられることをいう。この不均一な塩濃度分布は,ハイレート充放電を行うことにより生ずるものと考えられる。
例えば,ハイレートで充電が行われたとする。すると,正極側ではリチウムイオンが正極活物質から放出される(リチウムデインターカレーション)。この充電における電流値が大きいほど,単位時間当たりのリチウムイオンの放出量は多い。そのため,正極側ではリチウムイオンの濃度が一時的に高くなる。一方,負極側ではリチウムイオンが負極活物質に吸蔵される(リチウムインターカレーション)。そのため,負極側ではリチウムイオンの濃度が一時的に低くなる。このように,リチウムイオンの濃度分布に一時的な偏りが生じることがある。
このようにリチウムイオンの濃度分布に一時的な偏りが生じると,正極側のリチウムイオンは,負極側に移動しようとする。しかし,リチウムイオンの移動速度は有限である。そのため,ハイレート充電によりリチウムイオンの濃度分布に急激な変化が生じると,リチウムイオンの移動が間に合わない。この状態が持続すると,負極側で反応に寄与すべきリチウムイオンが不足する。そうすると,リチウムイオン二次電池の内部抵抗は上昇する。したがって,電圧低下を招くこととなる。以上,ハイレート充電について説明したが,ハイレート放電においても同様の問題を生じることは明らかである。
そして,このような使用状態が続いた場合,塩濃度分布が偏ったままとなるおそれがある。よって,なんらかの措置を講じなければ,電池の内部抵抗が高いままとなる。このように内部抵抗が上昇するほど,電池の出力は低くなる。ハイブリッド車両においては,電池の出力が低くなるほどエンジンの負担は大きくなる。つまり,ガソリンの消費量が多くなる。したがって,ハイブリッド車両における燃費は悪くなる。
前述したように,電極体に起因する内部抵抗の上昇は,電極体に対策を施す従来技術(特許文献1等)により抑制することができる。しかし,特許文献1等のように電極体に対策を施す発明では,電解液の塩濃度分布の偏りを回復することはできない。つまり,電解液の塩濃度分布の偏りに起因する内部抵抗の上昇を回避することはできない。また,その電池を搭載するハイブリッド車両の燃費の低下を抑制することもできない。
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,電解液に生じた塩濃度分布の偏りの回復を図った非水電解液型二次電池システムおよびそれを搭載するハイブリッド車両を提供することである。
この課題の解決を目的としてなされた本発明の一態様における非水電解液型二次電池システムは,非水電解液型二次電池と,非水電解液型二次電池に流れる電流を測定する電流測定部と,非水電解液型二次電池を制御する制御部とを有するものである。そして,制御部は,予め定めた計測期間に,予め定めた充電閾値電流Icを超える電流での充電の履歴を示す充電履歴値Ccと,予め定めた放電閾値電流Idを超える電流での放電の履歴を示す放電履歴値Cdとを計算する充放電履歴値計算部と,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの違いが予め定められた程度より大きい充電過多の場合または放電過多の場合に,電流制御期間を設定するとともに,充電履歴値Ccが放電履歴値Cdより大きい充電過多の場合には,電流制御期間内に,非水電解液型二次電池に充電電流を流さない電流制御を行い,充電履歴値Ccが放電履歴値Cdより小さい放電過多の場合には,電流制御期間内に,非水電解液型二次電池に放電電流を流さない電流制御を行う電流制御部とを有する。かかる非水電解液型二次電池システムでは,所定の期間内に行われるハイレート充電とハイレート放電とをバランスよく行うように電流制御を行うものである。そのため,ハイレート充放電を行うことで電解液中の塩濃度分布に偏りが生じたとしても,その偏りを解消することができる。その結果,非水電解液型二次電池における内部抵抗の上昇が抑制される。よって,非水電解液型二次電池の耐久寿命は長い。
上記に記載の非水電解液型二次電池システムにおいて,電流制御部は,充電過多の場合に,電流制御期間内に,非水電解液型二次電池に放電電流もしくはゼロ電流を流すとともに,放電過多の場合に,電流制御期間内に,非水電解液型二次電池に充電電流もしくはゼロ電流を流すものであるとよい。ここでゼロ電流を流すとは,電流値をゼロとするこという。つまり,非水電解液型二次電池を含む回路に電流を流さないのである。ハイレート充放電を行うことで非水電解液型二次電池における電解液中の塩濃度分布に偏りが生じたとしても,その偏りを解消することができることに変わりない。
上記に記載の非水電解液型二次電池システムにおいて,電流制御部は,充電過多の場合に,電流制御期間内に,非水電解液型二次電池に流れる放電電流の絶対値を増大させるとともに,放電過多の場合に,電流制御期間内に,非水電解液型二次電池に流れる充電電流の絶対値を増大させるものであるとなおよい。ハイレート充放電を行うことで非水電解液型二次電池における電解液中の塩濃度分布に偏りが生じたとしても,その偏りをより好適に解消することができるからである。
上記に記載の非水電解液型二次電池システムにおいて,充放電履歴値計算部は,計測期間および電流制御期間にわたって,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを計算するものであり,電流制御部は,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差が予め定めた履歴値差閾値以下である場合に,電流制御期間を終了させるものであるとよい。電解液中の塩濃度分布に偏りが生じたとしても,その偏りを解消することができることに変わりないからである。
上記に記載の非水電解液型二次電池システムにおいて,電流制御部は,充電過多の場合に,電流制御期間内に,非水電解液型二次電池に定電流放電を行うとともに,放電過多の場合に,電流制御期間内に,非水電解液型二次電池に定電流充電を行うものであるとよい。電解液中の塩濃度分布に偏りが生じたとしても,その偏りを解消することができることに変わりないからである。
上記に記載の非水電解液型二次電池システムにおいて,電流制御部は,充電履歴値Ccから放電履歴値Cdを引いた差が,予め定めた正の基準値以上である場合に,非水電解液型二次電池が充電過多であると判断するとともに,放電履歴値Cdから充電履歴値Ccを引いた差が,予め定めた正の基準値以上である場合に,非水電解液型二次電池が放電過多であると判断するものであるとよい。充電過多もしくは放電過多の判断を好適に行うことができるからである。
上記に記載の非水電解液型二次電池システムにおいて,電流制御部は,充電履歴値Ccの放電履歴値Cdに対する比が,予め定めた1以上の数である第1の基準値より大きい場合に,非水電解液型二次電池が充電過多であると判断するとともに,放電履歴値Cdの充電履歴値Ccに対する比が,予め定めた1以上の数である第2の基準値より大きい場合に,非水電解液型二次電池が放電過多であると判断するものであるとよい。充電過多もしくは放電過多の判断を好適に行うことができることに変わりないからである。
上記に記載の非水電解液型二次電池システムにおいて,充放電履歴値計算部は,充電履歴値Ccとして,次式
Cc1=|∫[I(t)−Ic(t)]dt|
積分区間はI(t)≧Ic(t)となる時間t
Ic(t)は予め定めた閾値電流
で表される値を用い,放電履歴値Cdとして,次式
Cd1=|∫[I(t)−Id(t)]dt|
積分区間はI(t)≦Id(t)となる時間t
Id(t)は予め定めた閾値電流
で表される値を用いるとよい。好適な充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを算出することができるからである。
上記に記載の非水電解液型二次電池システムにおいて,充放電履歴値計算部は,充電履歴値Ccとして,次式
Cc2=|∫I(t)dt|
積分区間はI(t)≧Ic(t)となる時間t
Ic(t)は予め定めた閾値電流
で表される値を用い,放電履歴値Cdとして,次式
Cd2=|∫I(t)dt|
積分区間はI(t)≦Id(t)となる時間t
Id(t)は予め定めた閾値電流
で表される値を用いるとよい。好適な充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを算出することができることに変わりないからである。
上記に記載の非水電解液型二次電池システムにおいて,充放電履歴値計算部は,充電履歴値Ccとして,次式
Cc3=Ic・Tc
Tcは,I(t)≧Icであった時間
で表される値を用い,放電履歴値Cdとして,次式
Cd3=Id・Td
Tdは,I(t)≦Idであった時間
で表される値を用いるとよい。好適な充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを算出することができることに変わりないからである。
上記に記載の非水電解液型二次電池システムにおいて,充放電履歴値計算部は,充電履歴値Ccとして,次式
Cc4=Imax・Tc
Tcは,I(t)≧Icであった時間
で表される値を用い,放電履歴値Cdとして,次式
Cd4=Imin・Td
Tdは,I(t)≦Idであった時間
で表される値を用いるとよい。好適な充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを算出することができることに変わりないからである。
上記に記載の非水電解液型二次電池システムにおいて,充放電履歴値計算部は,充電履歴値Ccとして,I(t)≧Icであった時間Tcを用い,放電履歴値Cdとして,I(t)≦Idであった時間Tdを用いるとよい。好適な充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを算出することができることに変わりないからである。
上記に記載の非水電解液型二次電池システムにおいて,充放電履歴値計算部は,充電履歴値Ccとして,前回以前に計算した充電履歴値Ccの総和に,今回計算した充電履歴値Ccを加えた累積充電履歴値SCcを用いるとともに,放電履歴値Cdとして,前回以前に計算した放電履歴値Cdの総和に,今回計算した放電履歴値Cdを加えた累積放電履歴値SCdを用いるとよい。電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りが,ハイレート充放電を累積的に行ったことにより生じている場合であっても,その偏りを回復することができるからである。
上記に記載の非水電解液型二次電池システムにおいて,充放電履歴値計算部は,充電閾値電流Icとして,SOC(State of Charge)の値が大きくなるほど絶対値として小さい値を,SOCの値が小さくなるほど絶対値として大きい値を,電池温度が高くなるほど絶対値として大きい値を,電池温度が低くなるほど絶対値として小さい値を採用するとともに,放電閾値電流Idとして,SOCの値が大きくなるほど絶対値として大きい値を,SOCの値が小さくなるほど絶対値として小さい値を,電池温度が高くなるほど絶対値として大きい値を,電池温度が低くなるほど絶対値として小さい値を採用するものであるとよい。非水電解液型二次電池における電池温度およびSOCという環境に応じて,電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復することができるからである。
また,本発明の別の態様におけるハイブリッド車両は,上記に記載の非水電解液型二次電池システムと,非水電解液型二次電池システムから電力を得るモータと,モータとともに駆動源となるエンジンと,モータの出力とエンジンの出力とを制御する出力制御部とを有するものである。かかるハイブリッド車両では,所定の期間内に行われるハイレート充電とハイレート放電とをバランスよく行うように電流制御を行うものである。そのため,ハイレート充放電を行うことで電解液中の塩濃度分布に偏りが生じたとしても,その偏りを解消することができる。その結果,非水電解液型二次電池における内部抵抗の上昇が抑制される。よって,このハイブリッド車両を耐久使用しても,その燃費はよい。
本発明によれば,電解液に生じた塩濃度分布の偏りの回復を図った非水電解液型二次電池システムおよびそれを搭載するハイブリッド車両が提供されている。
実施形態に係るハイブリッド車両を説明するための概略構成図である。 実施形態に係るバッテリシステムを説明するための概略構成図である。 ハイブリッド車両の走行によるバッテリの充放電における電流値の時間変化を例示するグラフである。 第1の実施形態のバッテリシステムの電流制御を説明するためのグラフである。 第1の実施形態に係る充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを例示するグラフである。 第1の実施形態のバッテリシステムの電流制御フローを説明するためのフローチャートである。 第2の実施形態のバッテリシステムの電流制御を説明するためのグラフである。 第3の実施形態のバッテリシステムの電流制御フローを説明するためのフローチャートである。 第5の実施形態のバッテリシステムの電流制御フローを説明するためのフローチャートである。 第5の実施形態における充電閾値電流Icを設定するための電池温度−SOC依存性マップである。 第5の実施形態における放電閾値電流Idを設定するための電池温度−SOC依存性マップである。 一定電流で放電し続けた場合の電池セルの電圧の経時変化を説明するためのグラフである。 一定電流で放電し続けた場合の電池セルのdV/d√tの値の経時変化を説明するためのグラフである。 放電し続ける一定電流の値を変えた場合の[dV/d√t(b)]/[dV/d√t(a)]の値の変化を示すグラフである。 SOCが一定(60%)の場合における充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idの温度依存性を例示するグラフである。 温度が一定(25℃)の場合における充電閾値電流Icおよび放電閾値電流IdのSOC依存性を例示するグラフである。
以下,本発明を具体化した実施形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。各々の実施形態は,ハイブリッド車両に用いて好適な非水電解液型二次電池システムおよび当該二次電池システムを搭載するハイブリッド車両について,本発明を具体化したものである。ここで,ハイブリッド車両とは,外部電源から充電可能なプラグインハイブリッド車両をも含むものとする。
(第1の実施形態)
1.ハイブリッド車両の構成
本形態におけるハイブリッド車両1の概略構成を図1に示す。本形態のハイブリッド車両1におけるハイブリッドシステム10は,エンジン20およびモータ30から出力される動力を,動力分割機構60を介してタイヤ2に供給してハイブリッド車両1を駆動させるものである。ハイブリッドシステム10は,エンジン20と,モータ30と,発電機40と,バッテリ50と,動力分割機構60と,パワーコントロールユニット(PCU)200とを有している。
PCU200は,図1に示すように,インバータ70を有している。インバータ70は,バッテリ50側の直流と,モータ30および発電機40側の三相交流とを相互に変換するものである。ここでは,PCU200がインバータ70を有していることとしたが,インバータ70がPCU200の外部に配置されていることとしてもよい。
エンジン20およびモータ30は,ハイブリッド車両1を駆動させるためのものである。エンジン20と,モータ30とから出力された動力は,動力分割機構60を介してタイヤ2に伝達されるようになっている。動力分割機構60は,エンジン20からの動力と,モータ30からの動力とを切り替えるものである。また,エンジン20と,モータ30とからの動力を併用して,より高いエネルギー効率でハイブリッド車両1を走行させるためのものである。
また,モータ30は,ハイブリッド車両1の減速時に,発電機として発電することができるようになっている。この発電により得られた電気的エネルギーは,バッテリ50に蓄えられるようになっている。発電機40は,エンジン20の回転エネルギーにより発電し,インバータ70を介してバッテリ50に電気的エネルギーを蓄えるものである。
バッテリ50は,PCU200に付属しているインバータ70を介してモータ30に電力を供給するためのものである。バッテリ50は,リチウムイオン導電性の非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池の電池セルを複数個直列に接続した組電池である。
また,バッテリ50は,リチウムイオンを吸蔵・放出可能な物質を正極活物質および負極活物質として用いている。バッテリ50の正極は,アルミ等に正極活物質を塗布したものである。負極は,銅等に負極活物質を塗布したものである。
バッテリ50の正極活物質として,ニッケル酸リチウム(LiNiO),マンガン酸リチウム(LiMn),コバルト酸リチウム(LiCoO)等のリチウム複合酸化物などが用いられる。また,負極活物質として,非晶質炭素,難黒鉛化炭素,易黒鉛化炭素,黒鉛等の炭素系物質が用いられる。
また,バッテリ50の電解液は,非水有機溶媒に電解質を溶解させたものである。非水有機溶媒として例えば,プロピレンカーボネート(PC)やエチレンカーボネート(EC),ジメチルカーボネート(DMC),メチルエチルカーボネート(MEC)等のエステル系溶媒や,エステル系溶媒にγ−ブチロラクトン(γ−BL),ジエトキシエタン(DEE)等のエーテル系溶媒等を配合した有機液体溶媒が挙げられる。また,電解質である塩として,過塩素酸リチウム(LiClO)やホウフッ化リチウム(LiBF),六フッ化リン酸リチウム(LiPF)などのリチウム塩を用いることができる。
ハイブリッド車両1において,エンジン20と,モータ30との動力を効率よく用いるために,これらを統合して制御する役割をPCU200が担っている。PCU200は,アクセルペダル,ブレーキペダル,シフトレバー等からの操作信号を受け取り,エンジン20とモータ30とを利用した最適走行を実現するものである。
PCU200は,モータ30と,発電機40とを制御するためのものである。また,PCU200は,バッテリ50の充電または放電を制御する制御部でもある。そして,モータ30の必要とする出力等に応じて電力の供給量を制御するものである。さらに,後に詳述するように,バッテリ50の電解液中の塩濃度分布が不均一となるのを回避するために電流制御を行う制御部でもある。
2.非水電解液型二次電池システム
ここで,本形態のバッテリシステム100について図2により説明する。図2は,図1に示したハイブリッド車両1から,バッテリ50と,PCU200とを抜き出して描いたものである。バッテリシステム100は,バッテリ50とPCU200とを有する非水電解液型二次電池システムである。よって,バッテリシステム100は,ハイブリッドシステム10およびハイブリッド車両1の一部を構成するものである。
PCU200は,インバータ70の他に,図2に示すように,バッテリ制御部151と,電圧測定部152と,電流測定部153と,温度測定部154と,メモリ155とを有する制御部である。また,図2には示されていないが,PCU200は,その他の制御部をも有している。
電圧測定部152は,組電池であるバッテリ50を構成する個々の電池セルの電圧を測定し,バッテリ制御部151に送信するためのものである。電流測定部153は,バッテリ50と接続された回路を流れる電流を測定し,バッテリ制御部151に送信するためのものである。温度測定部154は,バッテリ50を構成する個々の電池セルの温度を測定し,バッテリ制御部151に送信するためのものである。
バッテリ制御部151は,インバータ70を介してバッテリ50の電流制御を行うものである。また,バッテリ制御部151は,電圧測定部152から出力されるバッテリ50の電圧値と,電流測定部153から出力される電流値と,温度測定部154から出力されるバッテリ50の温度とを基に,バッテリ50の状態,例えばSOC(State of Charge)を把握することもできるものである。そして,バッテリ50の過負荷状態を回避する役割も担うものである。
本形態における電流制御を行うために,バッテリ制御部151は,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを計算する充放電履歴値計算部と,電流制御を行う電流制御部を兼ねている。これらの働きについては,後に詳しく述べる。また,メモリ155には,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを計算するために用いる充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idの設定値が格納されている。よって,バッテリ制御部151は,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idの設定値を適宜メモリ155から読み出すことができるようになっている。
3.基本的な動作モード
ここで,ハイブリッド車両1およびハイブリッドシステム10の基本的な動作モードについて説明する。ハイブリッド車両1は,エンジン20およびモータ30の2種類の動力源を備えたハイブリッドシステム10により走行するものである。ハイブリッドシステム10による駆動方式には,エンジン20のみを駆動源として用いる走行と,モータ30のみを駆動源として用いる走行と,エンジン20およびモータ30を駆動源とする走行とがある。バッテリ50の充電状態,放電状態を考慮するとさらに多くの走行モードに細分される。これらの走行モードを使い分けることにより,高いエネルギー効率で燃費の低いハイブリッド車両1が実現されているのである。よって,以下に代表的な走行モードについて説明する。
まず,発進時には,ハイブリッド車両1はモータ30のみを駆動して発進する。モータは,回転起動時においても大きなトルクを発生させることができるからである。そして,低速走行時においても,モータ30のみの駆動によりハイブリッド車両1は走行する。発進時および低速走行時には,エンジン20による駆動の効率は低いためである。
通常走行時においては,エンジン20とモータ30とを駆動源として併用して走行する。このとき,アクセルペダル等からの操作信号に対応して,PCU200が最適なエネルギー効率を保てるように,エンジン20およびモータ30を駆動させる。
急加速時においては,エンジン20とモータ30とを駆動源として併用して走行する。そして,強い加速を行うためバッテリ50からより大きな電力をモータ30に供給する。一方,減速等の制動時には,モータ30を発電機として用いて発電する。このように発電した電気をバッテリ50に回収するためである。
PCU200は,上記の動作モードを制御する。PCU200は,各時刻において,エンジン20およびモータ30の駆動源をいずれの割合で使用するかを判断するとともに各ユニットに指令を与える出力制御部でもある。そして,本形態のバッテリシステム100では,このPCU200からの指令に従って,バッテリ50における充放電の電流制御が行われる。
PCU200からの指令を受けて,バッテリ50は充放電を繰り返すこととなる。その充放電の繰り返しを,図3に例示する。図3は,電流測定部153で測定されるバッテリ50の電流値I(t)の時間変化を示したものである。図3の横軸は,時間である。縦軸は,電流値である。本形態では,電流I(t)が正のときにはバッテリ50の充電が行われ,電流I(t)が負のときにはバッテリ50の放電が行われるものとする。図3では,電流値は頻繁に変わっている。すなわち,アクセル,ブレーキ,シフトレバー等からの操作信号に対応して,PCU200がハイブリッド車両1の走行を制御しているためである。
PCU200が行う電流制御には,次の2つがある。
1)最適な走行モードを制御するための電流制御
2)電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復するための電流制御
本形態は,通常の,1)最適な走行モードを制御するための電流制御(以下,「通常の電流制御」という。)に加えて,2)電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復するための電流制御(以下,「本形態の電流制御」という。)をも行うことに特徴がある。したがって,以下にリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復するための電流制御について説明する。
4.電流制御方法(リチウムイオンの濃度分布の偏りを回復するための電流制御)
本形態のバッテリシステム100における電流制御方法について説明する。本形態の電流制御は,リチウムイオンの濃度分布に偏りが生ずるようなハイレート充電もしくはハイレート放電が行われた場合に,その偏りを回復するための電流制御である。したがって,本形態の電流制御は,通常の電流制御に優先して行う。本形態の電流制御を行っている期間内には,一時的にやや燃費が低下している場合がある。しかし,本形態の電流制御はバッテリ50の性能の低下を防止するためのものである。そのため,耐久使用の観点からみれば,ハイブリッド車両1の燃費は向上している。ここで,電解液中の塩濃度分布に偏りが生じる場合には,充電過多の場合と放電過多の場合とがある。
4−1.充電過多の場合
まず,充電過多の場合について説明する。本形態で,充電過多とは,所定の期間(計測期間T1)内にハイレート充電がハイレート放電に比べて予め定めた程度より多くなされた場合をいう。充電過多の場合には,正極側でリチウムイオンのデインターカレーションが多く生じている。つまり,多くのリチウムイオンが正極活物質から電解液に放出されている。一方,負極側では,リチウムイオンのインターカレーションが多く生じている。つまり,多くのリチウムイオンが電解液から負極活物質に吸蔵されている。そのため,表1に示すように,電解液中のリチウムイオンの数は,正極側で多く,負極側で少ない。
この電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを解消するために,充電を行わない電流制御期間T2を設定する。電流制御期間T2内では,充電電流を流す代わりにゼロ電流を流す。その結果,電流制御期間T2内では,バッテリ50に放電電流もしくはゼロ電流が流れることとなる。つまり,電流制御期間T2内には,充電電流は流れない。図4は,充電過多の場合に本形態の電流制御を行った場合を示すグラフである。破線は,本形態の電流制御を行わなかった場合の電流値を仮想的に示している。実線は,実際に本形態の電流制御を行った場合の電流値を示している。なお,図4は,図3の波形を簡略化したものである。
図4に示すように,電流制御期間T2では,バッテリ50に放電電流もしくはゼロ電流が流れる。そのため,電流制御期間T2にバッテリ50が充電されることはない。そして,この電流制御により,リチウムイオンの数は,表1に示すように変化する。すなわち,電解液中のリチウムイオンの数は,正極側で減少し,負極側で増大する。
これにより,電解液中の負極側でのリチウムイオンの不足は解消されることとなる。つまり,バッテリ50の電解液中で生じていたリチウムイオンの濃度分布の偏りは回復する。なお,この電流制御期間T2では,ハイブリッド車両1は,バッテリ50の充電を行わない走行モードで走行することとなる。
[表1]
充電過多の場合
電流制御前 電流制御後
正極側 リチウムイオン多い リチウムイオン減少(濃度分布の偏りの回復)
負極側 リチウムイオン少ない リチウムイオン増加(濃度分布の偏りの回復)
4−2.放電過多の場合
次に,放電過多の場合について説明する。本形態で,放電過多とは,所定の期間(計測期間T1)内にハイレート放電がハイレート充電に比べて予め定めた程度より多くなされた場合をいう。放電過多の場合には,表2に示すように,電解液中のリチウムイオンは,負極側で多く,正極側で少ない。
そのため放電過多の場合にも,この電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを解消するために,電流制御期間T2を設定する。ただし,放電過多の場合における電流制御期間T2では,放電電流の代わりにゼロ電流を流すこととする。その結果,電流制御期間T2内では,バッテリ50に充電電流もしくはゼロ電流が流れる。つまり,電流制御期間T2内には,放電電流は流れない。そして,この電流制御により,リチウムイオンの数は,表2に示すように変化する。すなわち,電解液中のリチウムイオンの数は,正極側で増加し,負極側で減少する。
これにより,電解液中の正極側でのリチウムイオンの不足は解消されることとなる。つまり,バッテリ50の電解液中で生じていたリチウムイオンの濃度分布の偏りは回復する。なお,電流制御期間T2では,ハイブリッド車両1は,エンジン20のみで走行することとなる。
[表2]
放電過多の場合
電流制御前 電流制御後
正極側 リチウムイオン少ない リチウムイオン増加(濃度分布の偏りの回復)
負極側 リチウムイオン多い リチウムイオン減少(濃度分布の偏りの回復)
4−3.電流制御期間の設定方法
ここで電流制御期間T2の設定方法について説明する。電流制御期間T2として,予め定めた時間を電流制御期間T2とすればよい。この時間として,適当な時間を選択することができる。リチウムイオンの濃度分布の偏りを回復するために,充電過多もしくは放電過多の程度に応じて,電流制御期間T2の長さを設定することが好ましい。
5.充電過多および放電過多の判断方法
これまで,充電過多の場合もしくは放電過多の場合に行う本形態の電流制御方法について説明した。続いて,いずれの場合に,充電過多もしくは放電過多に該当するのか,その判断方法について説明する。本形態では,充電過多や放電過多の判断をするために,充電の履歴を数値化した充電履歴値Ccと,放電の履歴を数値化した放電履歴値Cdとを導入する。
充電履歴値Ccは,計測期間T1内に電流測定部153により測定された電流値I(t)が,予め設定した閾値である充電閾値電流Ic(図3参照)の値以上となっている期間の履歴を数値化したものである。放電履歴値Cdは,計測期間T1内に電流測定部153から出力された電流値I(t)が,予め設定した閾値である放電閾値電流Id(図3参照)の値以下となっている期間の履歴を数値化したものである。充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdの定義にはいくつものバリエーションがある。よって,以下に例示する。なお,これらの値を比較するために,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとはともに,絶対値を用いて正またはゼロの値として定義してある。
5−1.計測期間の設定方法
まず,バッテリに流れる電流I(t)を計測する計測期間T1の設定方法について説明する。なお,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdは,計測期間T1にわたって算出される値である。計測期間T1は,例えば,イグニッションキーのオンからオフまでの期間である。そして,オンで計測を開始し,オフで計測を終了するのである。また,1分や1時間などの予め定めた長さの時間であってもよい。
5−2.充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdの設定方法
5−2−1.充電履歴値Cc,放電履歴値Cdの第1の例
本形態では,前述のように,電流I(t)が正のときにはバッテリ50の充電が行われ,電流I(t)が負のときにはバッテリ50の放電が行われる。このため,電流I(t)を充電電流I(t)と放電電流I(t)とに分けることができる。すなわち,充電電流I(t)は,電流I(t)が正である期間にバッテリ50に流れる電流である。放電電流I(t)は,電流I(t)が負である期間にバッテリ50に流れる電流である。
充電履歴値Ccとして,充電電流I(t)のうち充電閾値電流Icを超える部分,すなわちI(t)−Icの積分値の絶対値(Cc1)を用いることができる。ここで充電電流I(t)が充電閾値電流Icを超える場合とは,充電電流I(t)の絶対値が充電閾値電流Icの絶対値よりも大きい場合である。このときの充電履歴値Cc1は,次式に示す値
Cc1=|∫[I(t)−Ic]dt| ………(1)
積分区間はI(t)≧Icとなる時間
である。図5は,第1の例における充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを説明するための概念図である。図5では,図3に示した充放電の波形を簡略化して描かれている。充電履歴値Cc1は,図5においてドットでハッチングした領域の面積の総和と同じである。
そして,放電履歴値Cdとして,放電電流I(t)のうち放電閾値電流Idを超える部分,すなわちI(t)−Idの積分値の絶対値(Cd1)を用いることができる。ここで放電電流I(t)が放電閾値電流Idを超える場合とは,放電電流I(t)の絶対値が放電閾値電流Idの絶対値よりも大きい場合である。このときの放電履歴値Cd1は,次式に示す値
Cd1=|∫[I(t)−Id]dt| ………(2)
積分区間はI(t)≦Idとなる時間
である。放電履歴値Cd1は,図5においてスラッシュでハッチングした領域の面積の総和と同じである。
5−2−2.充電履歴値Cc,放電履歴値Cdの第2の例
また,充電履歴値Ccとして,充電電流I(t)が充電閾値電流Icを超えていた時間における電流I(t)そのものの積分値(Cc2)であってもよい。放電履歴値Cdについても,放電電流I(t)が放電閾値電流Idを超えていた時間における電流I(t)そのものの積分値(Cd2)であってもよい。このとき,充電履歴値Cc2および放電履歴値Cd2は,次式に示す値
Cc2=|∫I(t)dt| ………(3)
積分区間はI(t)≧Icとなる時間
Cd2=|∫I(t)dt| ………(4)
積分区間はI(t)≦Idとなる時間
である。
5−2−3.充電履歴値Cc,放電履歴値Cdの第3の例
そして,充電履歴値Ccとして,充電電流I(t)が充電閾値電流Icを超えていた時間Tcそのもの(Cc3)を採用してもよい。放電履歴値Cdについても,放電電流I(t)が放電閾値電流Idを超えていた時間Tdそのもの(Cd3)を採用することができる。このとき,充電履歴値Cc3および放電履歴値Cd3は,次式に示す値
Cc3=Tc=∫dt ………(5)
積分区間はI(t)≧Icとなる時間
Cd3=Td=∫dt ………(6)
積分区間はI(t)≦Idとなる時間
である。なお,時間Tcは,計測期間T1内にハイレート充電を行った期間でもある。時間Tdは,計測期間T1内にハイレート放電を行った期間でもある。
5−2−4.充電履歴値Cc,放電履歴値Cdの第4の例
さらに,充電履歴値Ccとして,充電電流I(t)が充電閾値電流Icを超えていた時間Tcに,充電閾値電流Icの値を乗じたもの(Cc4)を採用してもよい。放電履歴値Cdについても,放電電流I(t)が放電閾値電流Idを超えていた時間Tdに,放電閾値電流Idの値を乗じたもの(Cd4)を採用することができる。このとき,充電履歴値Cc4および放電履歴値Cd4は,次式に示す値
Cc4=|Ic|・Tc ………(7)
Cd4=|Id|・Td ………(8)
である。
5−2−5.充電履歴値Cc,放電履歴値Cdの第5の例
また,充電履歴値Ccとして,充電電流I(t)が充電閾値電流Icを超えていた時間Tcに,計測期間内の最大電流値Imaxの値を乗じたもの(Cc5)を採用してもよい。放電履歴値Cdについても,放電電流I(t)が放電閾値電流Idを超えていた時間Tdに,計測期間内の最小電流値Iminの値を乗じたもの(Cd5)を採用することができる。このとき,充電履歴値Cc5および放電履歴値Cd5は,次式に示す値
Cc5=|Imax|・Tc ………(9)
Imax:計測期間内の最大電流値
Cd5=|Imin|・Td ………(10)
Imin:計測期間内の最小電流値
である。
6.電流制御フロー
ここで,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを用いた電流制御フローについて図6のフローチャートにより説明する。まず,計測を開始する(S201)。次に,充電閾値電流Ic(図3参照)および放電閾値電流Id(図3参照)の値をメモリ155から適宜読み出す(S202)。充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idは,予め決定しておいた電流値である。図3には,前述したバッテリ50における充放電の経時変化に加えて,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idが例示されている。なお,図3では,充電閾値電流Icを75A,放電閾値電流Idを−75Aとして示している。
次に,充放電履歴値計算部が,計測期間T1における充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを計算する(S203)。前述したように,充電履歴値Ccとして,前述の式(1),(3),(5),(7),(9)のいずれかを採用することができる。また,放電履歴値Cdとして,前述の式(2),(4),(6),(8),(10)のいずれかを採用することができる。そして,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdの計測はS104の計測終了時まで継続して行われる(S204)。なお,S201における計測開始後に閾値電流Ic,Idを読み出して充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを計算した。しかし,S204の計測終了後に,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを一時に計算することもできる。
続いて,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとを比較する(S205)。充電履歴値Ccの放電履歴値Cdに対する比が,予め定めた基準値αよりも大きい場合(S205:Yes),
Cc/Cd > α
充電過多であると判断する。そして,電流制御期間T2を設定して充電側の電流制御を行う(S207)。そうでない場合(S205:No),S206へ進む。次に,放電履歴値Cdの充電履歴値Ccに対する比が,基準値αよりも大きい場合(S206:Yes),
Cd/Cc > α
放電過多であると判断する。そして,電流制御期間T2を設定して放電側の電流制御を行う(S208)。そうでない場合(S206:No),電流制御は行わない(S209)。すなわち,電流制御期間T2を設定する必要はない。以上を,繰り返すのである。
このとき用いる基準値αは,1以上の数(α≧1)である。例えば,1.2等の数値を用いることができる。これにより,充電履歴値Ccが放電履歴値Cdに比較して大きすぎる場合(S205:Yes)には,充電側の電流制御を行う(S207)。つまり,バッテリ50に放電電流もしくはゼロ電流を流す。逆に,充電履歴値Ccが放電履歴値Cdに比較して小さすぎる場合(S206:Yes)には,放電側の電流制御を行う(S208)。つまり,バッテリ50に充電電流もしくはゼロ電流を流す。どちらでもない場合(S206:No)には,電流制御を行わない(S209)。
以上述べたように,本形態では,一定期間内(T1+T2)に行われる充電と放電とをバランスよく行うように電流制御を行うのである。計測期間T1において充電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に充電電流を流さない。つまり,放電電流もしくはゼロ電流を流す。一方,計測期間T1において放電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に放電電流を流さない。つまり,充電電流もしくはゼロ電流を流す。これにより,本形態のバッテリ50における電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りは,ほとんどなくなる。
そして,本形態のハイブリッド車両1は,バッテリ50を搭載している。そのため,ハイブリッド車両1を長期間使用したとしても,バッテリ50は,電圧低下をほとんど起こさない。そのため,ハイブリッド車両1は,初期とそれほど変わらない高い燃費で走行することができる。
7.変形例
7−1.電流制御部
本形態では,バッテリ制御部151がバッテリ50に流れる電流制御部としての役割を担うこととした。本形態では図2に示したように,バッテリ制御部151はPCU200の内部にある。しかし,この電流制御部としての機能を,バッテリ50の内部に設けることとしてもよい。その場合,電流制御部以外のその他の制御機能をバッテリ50の内部に持たせてもよい。その場合であっても,電流制御部がバッテリ50の電流制御を行いつつ,PCU200がハイブリッド車両1の走行モードの制御をすることができるからである。
7−2.履歴値の大小関係
本形態では,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの大小関係を,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの比により判断することとした。しかし,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差により判断することとしてもよい。つまり,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差が,予め定めた基準値β以上の値である場合(S205:Yes),
Cc − Cd ≧ β
充電過多であると判断する。そして,電流制御期間T2を設定して充電側の電流制御を行う(S207)ようにしてもよい。一方,放電履歴値Cdと充電履歴値Ccとの差が,予め定めた基準値β以上の値である場合(S206:Yes),
Cd − Cc ≧ β
放電過多であると判断する。そして,電流制御期間T2を設定して放電側の電流制御を行う(S208)ようにしてもよい。ここでβは,正の数である。また,基準値αおよびβの値は,S205とS206とで共通としたが,S205とS206とで別の値を用いてもよい。
8.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るバッテリシステム100は,一定期間内(T1+T2)に行われる充電と放電とをバランスよく行うように電流制御を行うものである。計測期間T1において充電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に充電電流を流さず,放電電流もしくはゼロ電流を流す。一方,計測期間T1において放電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に放電電流を流さず,充電電流もしくはゼロ電流を流す。これにより,本形態のバッテリ50における電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復することのできるバッテリシステム100が実現されている。
そして,本形態のハイブリッド車両1は,バッテリ50を搭載している。そのため,ハイブリッド車両1を長期間使用したとしても,バッテリ50は,電圧低下をほとんど起こさない。そのため,ハイブリッド車両1は,初期とそれほど変わらない高い燃費で走行することができる。バッテリ50の劣化が抑制されているからである。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,非水電解液型リチウムイオン二次電池だけでなく,電解液の粘性が水よりも高く,イオンの拡散速度の遅い非水電解液型二次電池であれば,同様に適用可能である。
また,ハイブリッド車両の走行モードは例示であり,前述した走行モードに限定するものではない。本形態では,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idを用いたが,代わりに電力を閾値として用いても構わない。
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本形態に係るハイブリッド車両1およびバッテリシステム100の機械的構成は,第1の実施形態と同様である。第1の実施形態と異なる点は,リチウムイオンの濃度分布の偏りを回復するための電流制御方法である。したがって,その異なっている電流制御方法のみについて説明する。
1.電流制御方法
第1の実施形態では,充電過多の場合に,電流制御期間T2内に充電電流の代わりにゼロ電流を流す設定を行った。これにより,電流制御期間T2内には,バッテリ50に放電電流もしくはゼロ電流が流れる。そして,この放電電流については,増大させることもできる。
したがって,本形態の電流制御では,充電過多の場合に,充電電流の代わりにゼロ電流を流すとともに,放電電流の絶対値を増大させる。一方,放電過多の場合に,放電電流の代わりにゼロ電流を流すとともに,充電電流の絶対値を増大させる。これにより,電解液の塩濃度分布の偏りを回復することができる。その回復までの時間は,第1の実施形態よりも短い。つまり,本形態における電流制御期間は,第1の実施形態における電流制御期間より短い。
1−1.充電過多の場合
充電過多の場合における電流制御方法について説明する。第1の実施形態と同様に,電流制御前では,電解液中のリチウムイオンの数は,正極側で多く,負極側で少ない(表1参照)。
本形態では,充電過多の場合に,充電電流の代わりにゼロ電流を流すとともに,放電電流を増大させる。図7は,本形態の電流制御方法を説明するためのグラフである。図7の破線は,図4の実線と同じものを示している。図7の実線が,本形態で流れる電流である。本形態の電流制御を施した放電電流(実線)の絶対値は,第1の実施形態の電流制御を施した放電電流(破線)の絶対値より大きい。
次に,放電電流を増大させる設定方法について説明する。例えば,次式に従って,放電電流の値に補正をかける。
Ix = ε×I
ε>1
Ix:電流制御後の放電電流値
ε :増大係数
I :電流制御前の放電電流値
そのため,この電流制御期間T2で流れる放電電流の電流値の絶対値は大きい。この電流制御により,電解液中のリチウムイオンの数は,正極側で減少し,負極側で増加する(表1参照)。したがって,電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りは解消する。
1−2.放電過多の場合
放電過多の場合には,表2に示すように,電解液中のリチウムイオンは,負極側で多く,正極側で少ない。そのため,電流制御期間T2を設定する。この電流制御期間T2では,放電電流の代わりにゼロ電流を流すとともに,充電電流の絶対値を増大させる。その際に,電流値に上記の増大係数を乗じることすればよい。この電流制御の結果,電流制御期間T2内では,バッテリ50に充電電流もしくはゼロ電流が流れることとなる点は,第1の実施形態と同じである。
そして,この電流制御により,リチウムイオンの数は,表2に示すように変化する。すなわち,電解液中のリチウムイオンの数は,正極側で増加し,負極側で減少する。これにより,電解液中の正極側でのリチウムイオンの不足は解消されることとなる。つまり,バッテリ50の電解液中で生じていたリチウムイオンの濃度分布の偏りは回復する。なお,電流制御期間T2では,ハイブリッド車両1は,エンジン20のみで走行することとなる。
2.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るバッテリシステム100は,一定期間内(T1+T2)に行われる充電と放電とをバランスよく行うように電流制御を行うものである。計測期間T1において充電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に充電電流を流さず,放電電流もしくはゼロ電流を流す。そしてさらに,電流制御期間T2の放電電流を増大させる。一方,計測期間T1において放電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に放電電流を流さず,充電電流もしくはゼロ電流を流す。そしてさらに,電流制御期間T2の充電電流を増大させる。このため,電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復させる効果は,第1の実施形態よりも大きい。これにより,本形態のバッテリ50における電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復することのできるバッテリシステム100が実現されている。
そして,本形態のハイブリッド車両1は,バッテリ50を搭載している。そのため,ハイブリッド車両1を長期間使用したとしても,バッテリ50は,電圧低下をほとんど起こさない。そのため,ハイブリッド車両1は,初期とそれほど変わらない高い燃費で走行することができる。バッテリ50の劣化が抑制されているからである。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,非水電解液型リチウムイオン二次電池だけでなく,電解液の粘性が水よりも高く,イオンの拡散速度の遅い非水電解液型二次電池であれば,同様に適用可能である。
また,ハイブリッド車両の走行モードは例示であり,前述した走行モードに限定するものではない。本形態では,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idを用いたが,代わりに電力を閾値として用いても構わない。
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。本形態に係るハイブリッド車両1およびバッテリシステム100の機械的構成は,第1の実施形態と同様である。第1の実施形態と異なる点は,充電過多および放電過多の判断方法である。第1の実施形態では,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを用いて充電過多もしくは放電過多を判断した。本形態では,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdに加えて,これらの累積値である累積充電履歴値SCcおよび累積放電履歴値SCdを用いて充電過多もしくは放電過多の判断を行うのである。
1.累積充電履歴値SCcおよび累積放電履歴値SCd
本形態では,計測期間T1の間に計測された充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdに加えて,バッテリ50の搭載時からの累積値を用いるのである。長期間でみた場合に,ハイレート充電とハイレート放電とのバランスがとれていない場合があるからである。その場合に,バッテリ50の電解液中のリチウムイオンの濃度に,偏りが生じていることもあるからである。本形態の電流制御は,その累積的なハイレート充放電により生じる偏りを回復するためのものである。
累積充電履歴値SCcは,製造時から計測期間の終了時までの期間(累積計測期間TS)内に算出された充電履歴値Ccの総和である。ここで製造時とは,バッテリ50がハイブリッド車両1に搭載された時点をいう。もしくは,バッテリ50の交換により,新たなバッテリ50がハイブリッド車両1に搭載された時点としてもよい。累積放電履歴値SCdは,累積計測期間TS内に算出された放電履歴値Cdの総和である。
よって,累積充電履歴値SCcおよび累積放電履歴値SCdは,次式
SCc=ΣCc
SCd=ΣCd
で表される。ここで,和は累積計測期間TSについて行われる。
本形態の電流制御方法の一例を図8のフローチャートにより説明する。まず,時間の計測を開始する(S301)。計測期間T1は,第1の形態と同様,予め定めた時間であってもよいし,イグニッションキーのオンからオフまでの時間であってもよい。次に,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idを適宜読み出す(S302)。次に,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを計算する(S303)。また,同時に累積充電履歴値SCcおよび累積放電履歴値SCdを計算する。
累積充電履歴値SCcおよび累積放電履歴値SCdの計算については,次のように行えばよい。つまり,前回までに計算した累積充電履歴値SCcおよび累積放電履歴値SCdに,今回計算した充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを足し合わせればよい。なお,ここで計算する充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdは,第1の形態と同様にいくつかのバリエーションがある。そして,それらのバリエーションのうちいずれか一つを選択すればよい。続いて,時間の計測を終了する(S304)。
続いて,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとを比較する(S305)。充電履歴値Ccの放電履歴値Cdに対する比が,予め定めた基準値αよりも大きい場合(S305:Yes),
Cc/Cd > α
電流制御期間T2を設定して充電側の電流制御を行う(S310)。そうでない場合(S305:No),S306へ進む。ここで,αは1以上の値である。次に,放電履歴値Cdの充電履歴値Ccに対する比が,基準値αよりも大きい場合(S306:Yes),
Cd/Cc > α
電流制御期間T2を設定して放電側の電流制御を行う(S311)。そうでない場合(S306:No),S307へ進む。
S307では,累積充電履歴値SCcと,累積放電履歴値SCdとを比較する。ここで,累積充電履歴値SCcおよび累積放電履歴値SCdは,次式
SCc=ΣCc
SCd=ΣCd
和は,和は累積計測期間TSについて行われる
により表されるものである。
ここで,S307では,累積充電履歴値SCcの累積放電履歴値SCdに対する比が
SCc/SCd > γ
であった場合(S307:Yes),電流制御期間T2を設定して充電側の電流制御を行う(S310)。そうでない場合(S307:No),S308に進む。ここでγは1以上の数である。
S308では,累積放電履歴値SCdの累積充電履歴値SCcに対する比が
SCd/SCc > γ
であった場合(S308:Yes),電流制御期間T2を設定して放電側の電流制御を行う(S311)。そうでない場合(S308:No),S309に進む。S309では,充電側も放電側も電流制御を行わない。ここで行う電流制御は,第1の形態と同様である。以上を一定期間毎に,繰り返すのである。
前述したように基準値αおよびγは,1以上の数である。例えば,1.2等の数値を用いることができる。これにより,充電履歴値Ccが放電履歴値Cdに比較して大きすぎる場合には,充電側の電流制御を行う。逆に,充電履歴値Ccが放電履歴値Cdに比較して小さすぎる場合には,放電側の電流制御を行う。どちらでもない場合は,電流制御を行わない。
このように,充電履歴値Ccと,放電履歴値Cdとの差が小さい場合であっても,前回以前の履歴を示す累積充電履歴値SCcと累積放電履歴値SCdとの間に大きな差が生じていた場合,電流制御を行ったほうがよい場合がある。本形態は,そのような場合に有効である。
2.変形例
2−1.履歴値の大小関係
本形態では,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの大小関係を,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの比により判断することとした。しかし,第1の実施形態における変形例と同様に,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差により判断することとしてもよい。累積充電履歴値SCcと累積放電履歴値SCdとの大小関係についても同様である。
2−2.組み合わせ
本形態では,充電過多もしくは放電過多を判断するために,閾値を組み合わせることとした。本形態では,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdとこれらの累積値を用いることとした。しかし,第1の実施形態で説明したように,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdとして,複数の例がある。したがって,充電履歴値Ccおよび累積充電履歴値SCcを組み合わせる代わりに,他の組み合わせを用いてもよい。例えば,充電履歴値Cc1(式(1))と充電履歴値Cc3(式(3))とを組み合わせてもよい。また,充電履歴値Cc1(式(1))と充電履歴値Cc3(式(3))の累積値SCc3とを組み合わせてもよい。このように,組み合わせのバリエーションは豊富である。もちろん,閾値の組(例えば,Cc1とCd1)のうちから3以上の組を選んで,これらを組み合わせてもよい。
3.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るバッテリシステム100は,一定期間内(T1+T2)に行われる充電と放電とをバランスよく行うように電流制御を行うものである。本形態では,計測期間T1で算出した充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdと,これらの累積値により,充電過多もしくは放電過多を判断する。計測期間T1において充電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に充電電流を流さず,放電電流もしくはゼロ電流を流す。一方,計測期間T1において放電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に放電電流を流さず,充電電流もしくはゼロ電流を流す。これにより,本形態のバッテリ50における電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復することのできるバッテリシステム100が実現されている。
そして,本形態のハイブリッド車両1は,バッテリ50を搭載している。そのため,ハイブリッド車両1を長期間使用したとしても,バッテリ50は,電圧低下をほとんど起こさない。そのため,ハイブリッド車両1は,初期とそれほど変わらない高い燃費で走行することができる。バッテリ50の劣化が抑制されているからである。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,非水電解液型リチウムイオン二次電池だけでなく,電解液の粘性が水よりも高く,イオンの拡散速度の遅い非水電解液型二次電池であれば,同様に適用可能である。
また,ハイブリッド車両の走行モードは例示であり,前述した走行モードに限定するものではない。本形態では,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idを用いたが,代わりに電力を閾値として用いても構わない。
(第4の実施形態)
第4の実施形態について説明する。本形態に係るハイブリッド車両1およびバッテリシステム100の機械的構成は,第1の実施形態と同様である。第1の実施形態と異なる点は,電流制御期間の設定方法である。したがって,その異なる点についてのみ説明する。
1.電流制御期間の設定方法
第1の実施形態では,計測期間T1の後に,予め定めた時間を電流制御期間T2として設定することとした。本形態では,電流制御期間T2を予め設定する代わりに,電流制御を終了するための終了条件を設定するのである。つまり,本形態の電流制御期間T3は,電流制御を開始してから終了条件を満たすまでの期間のことである。
本形態では,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差がなくなることを電流制御期間T3の終了条件とする。そして,電流制御期間T3中においても電流値I(t)を計測し続けるとともに,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを算出し続ける。そして,計測期間T1および電流制御期間T3にわたって算出した充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差の値がゼロとなった時点で,電流制御を終了する。
すなわち,計測期間T1の終了後には,
Cc > Cd
もしくは,
Cc < Cd
である。ごくまれにではあるが,
Cc = Cd
の場合もありうる。
そして,これらの充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差の値が,予め定めた程度より大きい場合には,電流制御を行う。この電流制御期間T3では,
Cc = Cd
となるまで,電流制御を継続するのである。したがって,電流制御期間T3の終了時には,
Cc = Cd
が成り立っている。なお,計測期間T1における充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差の値が小さければ,電流制御を行う必要はない。
したがって,この電流制御期間T3の終了後には,電解液中の塩濃度分布に偏りはほとんどないはずである。実際には,電解液中のリチウムイオンの移動速度は有限であるため,リチウムイオンの濃度分布にわずかな偏りが生じている場合もある。しかし,たとえ偏りが生じているとしても,その偏りは第1の実施形態等における偏りよりも小さいものと考えられる。
2.変形例
2−1.差が微少量
本形態では,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差がなくなることを電流制御期間T3の終了条件とした。しかし,この差が微少量であるときに,電流制御期間を終了させることとしてもよい。つまり,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差の絶対値が予め定めた履歴値差閾値以下である場合に,電流制御期間T3を終了させるのである。
2−2.累積値
本形態では,電流制御期間T3の終了条件として,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差がなくなることとした。しかし,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdの代わりに,第3の実施形態で説明した累積充電履歴値SCcおよび累積放電履歴値SCdを用いてもよい。この場合であっても,電解液中の塩濃度分布の偏りを均一化することができることに変わりないからである。
2−3.定電流充放電
本形態では,電流制御期間T3において,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差がなくなるまで電流制御を行うこととした。しかし,計測期間T1の終了時において,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdについては計算済みである。もしくは容易に計算できる。図5における,スラッシュのハッチングで表された領域の総面積と,ドットのハッチングで表された領域の総面積との差であるからである。
したがって,これらの総面積同士の差と同じだけの定電流充電もしくは定電流放電を行うこととしてもよい。例えば,電流制御期間T3内で流す放電電流を定電流Ijとすると,電流制御期間T3の終了時は,一義的に定まるからである。
例えば,充電履歴値CcとしてCc1を用いるとともに,放電履歴値CdとしてCd1を用いたとする。そして,充電過多の場合には,
Cc1a−Cd1a = |Ij−Id|×T3
Cc1a:計測期間T1終了時における充電履歴値Cc1の値
Cd1a:計測期間T1終了時における放電履歴値Cd1の値
が成り立つように,定電流Ijおよび電流制御期間T3を決めればよい。このようにすれば,電流制御期間T3の経過後には,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差はゼロである。
一方,放電過多の場合には,定電流Ikをバッテリ50に流す定電流充電を行うこととすればよい。このように,定電流Ij,Ikの値を予め定めておけば,電流制御期間T3を求めることは容易である。ここでは,式(1)の充電履歴値Cc1および式(2)の放電履歴値Cd1を用いたが,その他の充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdの例(式(3)〜(10))を用いても,同様である。なお,この場合には,電流制御期間T3にゼロ電流が流れることはない。
3.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るバッテリシステム100は,一定期間内(T1+T2)に行われる充電と放電とをバランスよく行うように電流制御を行うものである。本形態では,計測期間T1で算出した充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの間に多少の差が生じたとしても,電流制御期間T2でその差をなくすような電流制御を行う。充電過多の場合には,電流制御期間T2に,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差がなくなるまで充電を行わず放電のみを行う。一方,放電過多の場合には,電流制御期間T2に,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdと差がなくなるまで放電を行わず充電のみを行う。これにより,本形態のバッテリ50における電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復することのできるバッテリシステム100が実現されている。
そして,本形態のハイブリッド車両1は,バッテリ50を搭載している。そのため,ハイブリッド車両1を長期間使用したとしても,バッテリ50は,電圧低下をほとんど起こさない。そのため,ハイブリッド車両1は,初期とそれほど変わらない高い燃費で走行することができる。バッテリ50の劣化が抑制されているからである。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,非水電解液型リチウムイオン二次電池だけでなく,電解液の粘性が水よりも高く,イオンの拡散速度の遅い非水電解液型二次電池であれば,同様に適用可能である。
また,ハイブリッド車両の走行モードは例示であり,前述した走行モードに限定するものではない。本形態では,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idを用いたが,代わりに電力を閾値として用いても構わない。
(第5の実施形態)
第5の実施形態について説明する。本形態に係るハイブリッド車両1およびバッテリシステム100の機械的構成は,第1の実施形態と同様である。第1の実施形態と異なる点は,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idとして,種々の環境において異なる値を用いることである。ここで種々の環境とは,例えば,電池セルの温度やSOC(State of Charge)である。電解液中のリチウムイオンの濃度分布を変化させるような電流値は,SOCや電池セルの温度によっても変化するからである。つまり,本形態の電流制御は,電解液中におけるリチウムイオンの伝導性を,より反映した充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idを用いることに特徴点を有する。
本形態で用いる充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idは,電池セルの温度やSOCに依存するものである。そして,電池セルの温度やSOCに依存した充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idの値は,メモリ155に電池温度−SOC依存マップとして格納されている。よって,バッテリ制御部151は,測定した電池温度とSOCとから,最適な充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idを読み出すことができる。そして,それらを基に充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを計算する点は,第1の実施形態等と同様である。
1.電流制御フロー
まず,本形態の電流制御フローを図9により説明する。最初に,計測を開始する(S401)。次に,温度測定部154の測定した各電池セルの温度を取得する(S402)。一方,SOC(State of Charge)も取得する(S402)。なお,本形態ではSOCの値は一定時間おきにメモリ155に記録されている。次に,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idを電池温度−SOC依存性マップから読み出す(S403)。図10は,充電閾値電流Icの電池温度−SOC依存性マップである。取得した電池セルの温度を平均化し,その温度平均値とSOCの値とから,その条件に該当する充電閾値電流Icを読み出すのである。図11は,放電閾値電流Idの電池温度−SOC依存性マップである。同様に,放電閾値電流Idを読み出す。
次に,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを計算する(S404)。充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdは,第1の形態において用いたものと同様である。次に,計測を終了する(S405)。次に,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとを比較する(S406)。充電履歴値Ccの値が放電履歴値Cdの値よりも大きければ(S406:Yes),電流制御期間T2を設定して充電側の電流制御を行う(S407)。充電履歴値Ccの値が放電履歴値Cdの値以下であれば(S406:No),電流制御期間T2を設定して放電側の電流制御を行う(S408)。以上により,電流制御の1サイクルが終了した。
2.閾値電流の電池温度−SOC依存性マップ
ここで説明する充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idの設定方法は,メモリ155に格納されている電池温度−SOC依存性マップを作成するために用いるものである。よって,この充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idの設定方法は,バッテリシステム100,ハイブリッドシステム10,およびハイブリッド車両1の必須構成要件ではない。予め定めてメモリ155に記憶させておけばよいものだからである。
本形態の電流制御は,電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復することを目的としている。よって,その偏りを判断するための基準となる充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idは,電解液中の塩濃度の分布の変化と,より密接な関連性を有しているほうが好ましい。そこで,まず電流の大きさと電解液中の塩濃度分布との関連性について説明する。
2−1.拡散過程(物質移動過程)
大電流による充電または放電を一定時間継続して行った場合,電解液中を電極の周辺の電荷が巨視的に移動する電荷移動過程が生じる。続いて,電解液中の物質が移動する拡散過程(物質移動過程)が生じる。この物質移動過程が生じると,塩濃度分布が不均一になると考えられる。よって,この物質移動過程をなるべく生じさせないように電流制御を行えばよい。しかし,物質移動過程を全く生じないような制御を行うと,ハイブリッド車両1の出力が不足したり,エネルギー効率を低下させるおそれがある。そこで,物質移動過程の生ずるようなハイレート充放電をある程度は認めるのである。ただし,一時的にリチウムイオンの濃度分布に偏りが生じても,なるべく早くその偏りを回復することとするのが望ましい。
図12は,一定電流Iconstを放電し続けた場合の電池セルの電圧の時間変化の特性を示すグラフである。横軸は,時間tの平方根(√t)[√sec]である。縦軸は,電池セルの電圧[V]である。電池セルの電圧は,放電開始から減少し続ける。特に,放電開始直後では,電圧は急激に減少する(区間A)。そして,急激な減少が終わった後,電圧は緩やかに減少する(区間B)。この区間Bは,電荷移動過程の生じている区間である。その後,電圧は区間Bより急に減少する(区間C)。この区間Cは,物質移動過程(拡散過程)の生じている区間である。図中のa)は,時間tの平方根(√t)の値が1〜1.5の領域を示している。すなわち,放電開始から1〜2秒程度経過した時刻を示している。図中のb)は,時間tの平方根(√t)の値が2.8〜3.2の領域を示している。すなわち,放電開始から9〜10秒程度経過した時刻を示している。
図13は,一定電流Iconstで放電し続けた場合の電池セルのdV/d√tの値の時間変化を示すグラフである。横軸は,時間tの平方根(√t)[√sec]である。縦軸は,電池セルのdV/d√tの値である。そして,区間A〜Cは,図12の区間A〜Cと対応するものである。dV/d√tの値は,電荷移動過程(区間B)では,ほぼ一定値である。そして,物質移動過程(区間C)では,dV/d√tの値は上昇する。電荷移動に加えて,電解液中でのイオン(物質)の拡散が生じているためである。このため,dV/d√tの値で評価すると,電荷移動過程(区間B)から物質移動過程(区間C)への移行を特定するのに好適である。
なお,時間tの平方根√tの値と,物質移動過程(拡散過程)との関連性は次式
∝D・t
≒(dr/dt)∝(D/t)1/2
r:粒子の存在する半径
D:拡散係数
t:時刻
:拡散速度
により表される。すなわち,拡散速度は時間tの平方根√tに反比例する。よって,電池セルの電圧を時間tの代わりに,時間tの平方根√tで評価している。
図14は,一定電流Iconstを変化させた場合の,[dV/d√t(b)]/[dV/d√t(a)]の値の変化を説明するグラフである。dV/d√t(a)の値は,Iconstの値が変化しても,図12および図13に示した区間Bの範囲内にある。一方,dV/d√t(b)の値は,Iconstの値が小さいときは区間Bにあるが,Iconstの値が大きくなると,区間C(拡散過程)の範囲内の値となる。つまり,dV/d√t(b)の値が,区間Bの範囲内にあるとき,[dV/d√t(b)]/[dV/d√t(a)]の値はほぼ1である。一方,dV/d√t(b)の値が,区間Cの範囲内にあるとき,[dV/d√t(b)]/[dV/d√t(a)]の値は1より大きくなる。
よって,[dV/d√t(b)]/[dV/d√t(a)]の値が1より大きくなった電流値を放電閾値電流Idとすればよい。ただし,実際には[dV/d√t(b)]/[dV/d√t(a)]の値はノイズを含んでいる。このため,[dV/d√t(b)]/[dV/d√t(a)]の値をノイズ分だけ1より大きい値となった場合にIdとすればよい。または,例えば[dV/d√t(b)]/[dV/d√t(a)]が1.5となった値から接線を引き,その接線と[dV/d√t(b)]/[dV/d√t(a)]=1との交点を放電閾値電流Idとしてもよい。
充電閾値電流Icについても,放電閾値電流Idと同様に,一定電流で充電した場合の[dV/d√t(b)]/[dV/d√t(a)]の値から求めることができる。このように充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idを設定すると,次のようなことを評価である。充電閾値電流Icの絶対値を超える充電電流が流れた場合には,電解液中で拡散過程(物質移動過程)が生じていると考えられる。一方,放電閾値電流Idの絶対値を超える放電電流が流れた場合にも,電解液中で拡散過程(物質移動過程)が生じていると考えられる。
2−2.電池温度−SOC依存性マップ
ここで,電池温度−SOC依存性マップの作成方法について説明する。電池温度またはSOCが変化した場合,それに伴って図12〜図14に示したグラフは変化する。つまり,dV/d√t(b)の値が区間B(電荷移動過程)から区間C(拡散過程)に移る電流値は電池温度とSOCとに依存するのである。すなわち,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idは,電池温度とSOCとに依存する。このため,電池温度およびSOCの変化に対応した充電閾値電流Icと放電閾値電流Idを得るための温度−SOC依存性マップを用いるのである。
図15は,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idの温度依存性を例示するグラフである。図15では,SOC(State of Charge)が60%のときの充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idの温度依存性を示したものである。電池温度が高くなるほど充電閾値電流Icの絶対値は大きくなる。電池温度が低くなるほど充電閾値電流Icの絶対値は小さくなる。また,電池温度が高くなるほど放電閾値電流Idの絶対値は大きくなる。電池温度が低くなるほど放電閾値電流Idの絶対値は小さくなる。なお,電池温度が上昇するにつれて,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idの変化量は小さくなる。
図16は,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流IdのSOC依存性を示すグラフである。図16では,電池セルの平均温度が25℃のときの充電閾値電流Icおよび放電閾値電流IdのSOC依存性を示したものである。SOCの値が大きくなるほど,充電閾値電流Icの絶対値は小さくなる。SOCの値が小さくなるほど,充電閾値電流Icの絶対値は大きくなる。また,SOCの値が大きくなるほど,放電閾値電流Idの絶対値は大きくなる。SOCの値が小さくなるほど,放電閾値電流Idの絶対値は小さくなる。
このように,図15に示した温度依存性と,図16に示したSOC依存性とから,図10に示した充電閾値電流Icの電池温度−SOC依存性マップを作成することができる。図10の電池温度−SOC依存性マップでは,温度が一定の場合(行成分)に,SOCの値が高くなるほど充電閾値電流Icの絶対値は小さくなり,SOCの値が低くなるほど充電閾値電流Icの絶対値は大きくなる(図16参照)。SOCが一定の場合(列成分)に,電池温度が高くなるほど充電閾値電流Icの絶対値は大きくなり,電池温度が低くなるほど充電閾値電流Icの絶対値は小さくなる(図15参照)。
同様に,図11に示した放電閾値電流Idの電池温度−SOC依存性マップを作成することができる。図11の電池温度−SOC依存性マップでは,温度が一定の場合(行成分)に,SOCの値が高くなるほど放電閾値電流Idの絶対値は大きくなり,SOCの値が低くなるほど放電閾値電流Idの絶対値は小さくなる(図16参照)。SOCが一定の場合(列成分)に,電池温度が高くなるほど放電閾値電流Idの絶対値は大きくなり,電池温度が低くなるほど放電閾値電流Idの絶対値は小さくなる(図15参照)。
S403では,これらの電池温度−SOC依存性マップから充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idを読み出すのである。このように,本形態では計測期間T1毎に異なる充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idを読み出す。よって,充電閾値電流Ic(t)および放電閾値電流Id(t)は,時間の経過により変化する値である。
3.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るバッテリシステム100は,一定期間内(T1+T2)に行われる充電と放電とをバランスよく行うように電流制御を行うものである。計測期間T1において充電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に充電電流を流さず,放電電流もしくはゼロ電流を流す。一方,計測期間T1において放電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に放電電流を流さず,充電電流もしくはゼロ電流を流す。そして,充電過多や放電過多を判断するための閾値電流について,SOCや電池温度等,その環境に応じたものを設定する。これにより,本形態のバッテリ50における電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りをより好適に回復することのできるバッテリシステム100が実現されている。
そして,本形態のハイブリッド車両1は,バッテリ50を搭載している。そのため,ハイブリッド車両1を長期間使用したとしても,バッテリ50は,電圧低下をほとんど起こさない。そのため,ハイブリッド車両1は,初期とそれほど変わらない高い燃費で走行することができる。バッテリ50の劣化が抑制されているからである。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,非水電解液型リチウムイオン二次電池だけでなく,電解液の粘性が水よりも高く,イオンの拡散速度の遅い非水電解液型二次電池であれば,同様に適用可能である。
また,ハイブリッド車両の走行モードは例示であり,前述した走行モードに限定するものではない。本形態では,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idを用いたが,代わりに電力を閾値として用いても構わない。
以上説明した各実施形態(変形例を含む)について,もちろん,それぞれを組み合わせることとしてもよい。電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを,より効果的に回復することができるからである。
1…ハイブリッド車両
10…ハイブリッドシステム
20…エンジン
30…モータ
40…発電機
50…バッテリ
60…動力分割機構
70…インバータ
100…バッテリシステム
151…バッテリ制御部
152…電圧測定部
153…電流測定部
154…温度測定部
155…メモリ
200…パワーコントロールユニット(PCU)

Claims (15)

  1. 非水電解液型二次電池と,
    前記非水電解液型二次電池に流れる電流を測定する電流測定部と,
    前記非水電解液型二次電池を制御する制御部とを有する非水電解液型二次電池システムであって,
    前記制御部は,
    予め定めた計測期間に,
    予め定めた充電閾値電流Icを超える電流での充電の履歴を示す充電履歴値Ccと,
    予め定めた放電閾値電流Idを超える電流での放電の履歴を示す放電履歴値Cdとを計算する充放電履歴値計算部と,
    前記充電履歴値Ccと前記放電履歴値Cdとの違いが予め定められた程度より大きい充電過多の場合または放電過多の場合に,
    電流制御期間を設定するとともに,
    前記充電履歴値Ccが前記放電履歴値Cdより大きい充電過多の場合には,
    前記電流制御期間内に,前記非水電解液型二次電池に充電電流を流さない電流制御を行い,
    前記充電履歴値Ccが前記放電履歴値Cdより小さい放電過多の場合には,
    前記電流制御期間内に,前記非水電解液型二次電池に放電電流を流さない電流制御を行う電流制御部とを有することを特徴とする非水電解液型二次電池システム。
  2. 請求項1に記載の非水電解液型二次電池システムであって,
    前記電流制御部は,
    充電過多の場合に,
    前記電流制御期間内に,前記非水電解液型二次電池に放電電流もしくはゼロ電流を流すとともに,
    放電過多の場合に,
    前記電流制御期間内に,前記非水電解液型二次電池に充電電流もしくはゼロ電流を流すものであることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。
  3. 請求項2に記載の非水電解液型二次電池システムであって,
    前記電流制御部は,
    充電過多の場合に,
    前記電流制御期間内に,前記非水電解液型二次電池に流れる放電電流の絶対値を増大させるとともに,
    放電過多の場合に,
    前記電流制御期間内に,前記非水電解液型二次電池に流れる充電電流の絶対値を増大させるものであることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
    前記充放電履歴値計算部は,
    前記計測期間および前記電流制御期間にわたって,前記充電履歴値Ccおよび前記放電履歴値Cdを計算するものであり,
    前記電流制御部は,
    前記充電履歴値Ccと前記放電履歴値Cdとの差が予め定めた履歴値差閾値以下である場合に,前記電流制御期間を終了させるものであることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。
  5. 請求項1に記載の非水電解液型二次電池システムであって,
    前記電流制御部は,
    充電過多の場合に,
    前記電流制御期間内に,前記非水電解液型二次電池に定電流放電を行うとともに,
    放電過多の場合に,
    前記電流制御期間内に,前記非水電解液型二次電池に定電流充電を行うものであることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
    前記電流制御部は,
    前記充電履歴値Ccから前記放電履歴値Cdを引いた差が,予め定めた正の基準値以上である場合に,
    前記非水電解液型二次電池が充電過多であると判断するとともに,
    前記放電履歴値Cdから前記充電履歴値Ccを引いた差が,予め定めた正の基準値以上である場合に,
    前記非水電解液型二次電池が放電過多であると判断するものであることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。
  7. 請求項1から請求項5までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
    前記電流制御部は,
    前記充電履歴値Ccの前記放電履歴値Cdに対する比が,予め定めた1以上の数である第1の基準値より大きい場合に,
    前記非水電解液型二次電池が充電過多であると判断するとともに,
    前記放電履歴値Cdの前記充電履歴値Ccに対する比が,予め定めた1以上の数である第2の基準値より大きい場合に,
    前記非水電解液型二次電池が放電過多であると判断するものであることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。
  8. 請求項1から請求項7までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
    前記充放電履歴値計算部は,
    前記充電履歴値Ccとして,次式
    Cc1=|∫[I(t)−Ic(t)]dt|
    積分区間はI(t)≧Ic(t)となる時間t
    Ic(t)は予め定めた閾値電流
    で表される値を用い,
    前記放電履歴値Cdとして,次式
    Cd1=|∫[I(t)−Id(t)]dt|
    積分区間はI(t)≦Id(t)となる時間t
    Id(t)は予め定めた閾値電流
    で表される値を用いることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。
  9. 請求項1から請求項7までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
    前記充放電履歴値計算部は,
    前記充電履歴値Ccとして,次式
    Cc2=|∫I(t)dt|
    積分区間はI(t)≧Ic(t)となる時間t
    Ic(t)は予め定めた閾値電流
    で表される値を用い,
    前記放電履歴値Cdとして,次式
    Cd2=|∫I(t)dt|
    積分区間はI(t)≦Id(t)となる時間t
    Id(t)は予め定めた閾値電流
    で表される値を用いることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。
  10. 請求項1から請求項7までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
    前記充放電履歴値計算部は,
    前記充電履歴値Ccとして,次式
    Cc3=Ic・Tc
    Tcは,I(t)≧Icであった時間
    で表される値を用い,
    前記放電履歴値Cdとして,次式
    Cd3=Id・Td
    Tdは,I(t)≦Idであった時間
    で表される値を用いることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。
  11. 請求項1から請求項7までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
    前記充放電履歴値計算部は,
    前記充電履歴値Ccとして,次式
    Cc4=Imax・Tc
    Tcは,I(t)≧Icであった時間
    で表される値を用い,
    前記放電履歴値Cdとして,次式
    Cd4=Imin・Td
    Tdは,I(t)≦Idであった時間
    で表される値を用いることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。
  12. 請求項1から請求項7までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
    前記充放電履歴値計算部は,
    前記充電履歴値Ccとして,I(t)≧Icであった時間Tcを用い,
    前記放電履歴値Cdとして,I(t)≦Idであった時間Tdを用いることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。
  13. 請求項8から請求項12までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
    前記充放電履歴値計算部は,
    前記充電履歴値Ccとして,
    前回以前に計算した充電履歴値Ccの総和に,今回計算した充電履歴値Ccを加えた累積充電履歴値SCcを用いるとともに,
    前記放電履歴値Cdとして,
    前回以前に計算した放電履歴値Cdの総和に,今回計算した放電履歴値Cdを加えた累積放電履歴値SCdを用いるものであることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。
  14. 請求項1から請求項13までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
    前記充放電履歴値計算部は,
    前記充電閾値電流Icとして,
    SOC(State of Charge)の値が大きくなるほど絶対値として小さい値を,SOCの値が小さくなるほど絶対値として大きい値を,
    電池温度が高くなるほど絶対値として大きい値を,電池温度が低くなるほど絶対値として小さい値を採用するとともに,
    前記放電閾値電流Idとして,
    SOCの値が大きくなるほど絶対値として大きい値を,SOCの値が小さくなるほど絶対値として小さい値を,
    電池温度が高くなるほど絶対値として大きい値を,電池温度が低くなるほど絶対値として小さい値を採用するものであることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。
  15. 請求項1から請求項14までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムと,
    前記非水電解液型二次電池システムから電力を得るモータと,
    前記モータとともに駆動源となるエンジンと,
    前記モータの出力と前記エンジンの出力とを制御する出力制御部とを有するハイブリッド車両。
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