JP5786423B2 - 非水電解液型二次電池システムおよびハイブリッド車両 - Google Patents
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Description
Cc1=|∫[I(t)−Ic(t)]dt|
積分区間はI(t)≧Ic(t)となる時間t
Ic(t)は予め定めた閾値電流
で表される値を用い,放電履歴値Cdとして,次式
Cd1=|∫[I(t)−Id(t)]dt|
積分区間はI(t)≦Id(t)となる時間t
Id(t)は予め定めた閾値電流
で表される値を用いるとよい。好適な充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを算出することができるからである。
Cc2=|∫I(t)dt|
積分区間はI(t)≧Ic(t)となる時間t
Ic(t)は予め定めた閾値電流
で表される値を用い,放電履歴値Cdとして,次式
Cd2=|∫I(t)dt|
積分区間はI(t)≦Id(t)となる時間t
Id(t)は予め定めた閾値電流
で表される値を用いるとよい。好適な充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを算出することができることに変わりないからである。
Cc3=Ic・Tc
Tcは,I(t)≧Icであった時間
で表される値を用い,放電履歴値Cdとして,次式
Cd3=Id・Td
Tdは,I(t)≦Idであった時間
で表される値を用いるとよい。好適な充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを算出することができることに変わりないからである。
Cc4=Imax・Tc
Tcは,I(t)≧Icであった時間
で表される値を用い,放電履歴値Cdとして,次式
Cd4=Imin・Td
Tdは,I(t)≦Idであった時間
で表される値を用いるとよい。好適な充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを算出することができることに変わりないからである。
1.ハイブリッド車両の構成
本形態におけるハイブリッド車両1の概略構成を図1に示す。本形態のハイブリッド車両1におけるハイブリッドシステム10は,エンジン20およびモータ30から出力される動力を,動力分割機構60を介してタイヤ2に供給してハイブリッド車両1を駆動させるものである。ハイブリッドシステム10は,エンジン20と,モータ30と,発電機40と,バッテリ50と,動力分割機構60と,パワーコントロールユニット(PCU)200とを有している。
ここで,本形態のバッテリシステム100について図2により説明する。図2は,図1に示したハイブリッド車両1から,バッテリ50と,PCU200とを抜き出して描いたものである。バッテリシステム100は,バッテリ50とPCU200とを有する非水電解液型二次電池システムである。よって,バッテリシステム100は,ハイブリッドシステム10およびハイブリッド車両1の一部を構成するものである。
ここで,ハイブリッド車両1およびハイブリッドシステム10の基本的な動作モードについて説明する。ハイブリッド車両1は,エンジン20およびモータ30の2種類の動力源を備えたハイブリッドシステム10により走行するものである。ハイブリッドシステム10による駆動方式には,エンジン20のみを駆動源として用いる走行と,モータ30のみを駆動源として用いる走行と,エンジン20およびモータ30を駆動源とする走行とがある。バッテリ50の充電状態,放電状態を考慮するとさらに多くの走行モードに細分される。これらの走行モードを使い分けることにより,高いエネルギー効率で燃費の低いハイブリッド車両1が実現されているのである。よって,以下に代表的な走行モードについて説明する。
1)最適な走行モードを制御するための電流制御
2)電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復するための電流制御
本形態は,通常の,1)最適な走行モードを制御するための電流制御(以下,「通常の電流制御」という。)に加えて,2)電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復するための電流制御(以下,「本形態の電流制御」という。)をも行うことに特徴がある。したがって,以下にリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復するための電流制御について説明する。
本形態のバッテリシステム100における電流制御方法について説明する。本形態の電流制御は,リチウムイオンの濃度分布に偏りが生ずるようなハイレート充電もしくはハイレート放電が行われた場合に,その偏りを回復するための電流制御である。したがって,本形態の電流制御は,通常の電流制御に優先して行う。本形態の電流制御を行っている期間内には,一時的にやや燃費が低下している場合がある。しかし,本形態の電流制御はバッテリ50の性能の低下を防止するためのものである。そのため,耐久使用の観点からみれば,ハイブリッド車両1の燃費は向上している。ここで,電解液中の塩濃度分布に偏りが生じる場合には,充電過多の場合と放電過多の場合とがある。
まず,充電過多の場合について説明する。本形態で,充電過多とは,所定の期間(計測期間T1)内にハイレート充電がハイレート放電に比べて予め定めた程度より多くなされた場合をいう。充電過多の場合には,正極側でリチウムイオンのデインターカレーションが多く生じている。つまり,多くのリチウムイオンが正極活物質から電解液に放出されている。一方,負極側では,リチウムイオンのインターカレーションが多く生じている。つまり,多くのリチウムイオンが電解液から負極活物質に吸蔵されている。そのため,表1に示すように,電解液中のリチウムイオンの数は,正極側で多く,負極側で少ない。
充電過多の場合
電流制御前 電流制御後
正極側 リチウムイオン多い リチウムイオン減少(濃度分布の偏りの回復)
負極側 リチウムイオン少ない リチウムイオン増加(濃度分布の偏りの回復)
次に,放電過多の場合について説明する。本形態で,放電過多とは,所定の期間(計測期間T1)内にハイレート放電がハイレート充電に比べて予め定めた程度より多くなされた場合をいう。放電過多の場合には,表2に示すように,電解液中のリチウムイオンは,負極側で多く,正極側で少ない。
放電過多の場合
電流制御前 電流制御後
正極側 リチウムイオン少ない リチウムイオン増加(濃度分布の偏りの回復)
負極側 リチウムイオン多い リチウムイオン減少(濃度分布の偏りの回復)
ここで電流制御期間T2の設定方法について説明する。電流制御期間T2として,予め定めた時間を電流制御期間T2とすればよい。この時間として,適当な時間を選択することができる。リチウムイオンの濃度分布の偏りを回復するために,充電過多もしくは放電過多の程度に応じて,電流制御期間T2の長さを設定することが好ましい。
これまで,充電過多の場合もしくは放電過多の場合に行う本形態の電流制御方法について説明した。続いて,いずれの場合に,充電過多もしくは放電過多に該当するのか,その判断方法について説明する。本形態では,充電過多や放電過多の判断をするために,充電の履歴を数値化した充電履歴値Ccと,放電の履歴を数値化した放電履歴値Cdとを導入する。
まず,バッテリに流れる電流I(t)を計測する計測期間T1の設定方法について説明する。なお,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdは,計測期間T1にわたって算出される値である。計測期間T1は,例えば,イグニッションキーのオンからオフまでの期間である。そして,オンで計測を開始し,オフで計測を終了するのである。また,1分や1時間などの予め定めた長さの時間であってもよい。
5−2−1.充電履歴値Cc,放電履歴値Cdの第1の例
本形態では,前述のように,電流I(t)が正のときにはバッテリ50の充電が行われ,電流I(t)が負のときにはバッテリ50の放電が行われる。このため,電流I(t)を充電電流I(t)と放電電流I(t)とに分けることができる。すなわち,充電電流I(t)は,電流I(t)が正である期間にバッテリ50に流れる電流である。放電電流I(t)は,電流I(t)が負である期間にバッテリ50に流れる電流である。
Cc1=|∫[I(t)−Ic]dt| ………(1)
積分区間はI(t)≧Icとなる時間
である。図5は,第1の例における充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを説明するための概念図である。図5では,図3に示した充放電の波形を簡略化して描かれている。充電履歴値Cc1は,図5においてドットでハッチングした領域の面積の総和と同じである。
Cd1=|∫[I(t)−Id]dt| ………(2)
積分区間はI(t)≦Idとなる時間
である。放電履歴値Cd1は,図5においてスラッシュでハッチングした領域の面積の総和と同じである。
また,充電履歴値Ccとして,充電電流I(t)が充電閾値電流Icを超えていた時間における電流I(t)そのものの積分値(Cc2)であってもよい。放電履歴値Cdについても,放電電流I(t)が放電閾値電流Idを超えていた時間における電流I(t)そのものの積分値(Cd2)であってもよい。このとき,充電履歴値Cc2および放電履歴値Cd2は,次式に示す値
Cc2=|∫I(t)dt| ………(3)
積分区間はI(t)≧Icとなる時間
Cd2=|∫I(t)dt| ………(4)
積分区間はI(t)≦Idとなる時間
である。
そして,充電履歴値Ccとして,充電電流I(t)が充電閾値電流Icを超えていた時間Tcそのもの(Cc3)を採用してもよい。放電履歴値Cdについても,放電電流I(t)が放電閾値電流Idを超えていた時間Tdそのもの(Cd3)を採用することができる。このとき,充電履歴値Cc3および放電履歴値Cd3は,次式に示す値
Cc3=Tc=∫dt ………(5)
積分区間はI(t)≧Icとなる時間
Cd3=Td=∫dt ………(6)
積分区間はI(t)≦Idとなる時間
である。なお,時間Tcは,計測期間T1内にハイレート充電を行った期間でもある。時間Tdは,計測期間T1内にハイレート放電を行った期間でもある。
さらに,充電履歴値Ccとして,充電電流I(t)が充電閾値電流Icを超えていた時間Tcに,充電閾値電流Icの値を乗じたもの(Cc4)を採用してもよい。放電履歴値Cdについても,放電電流I(t)が放電閾値電流Idを超えていた時間Tdに,放電閾値電流Idの値を乗じたもの(Cd4)を採用することができる。このとき,充電履歴値Cc4および放電履歴値Cd4は,次式に示す値
Cc4=|Ic|・Tc ………(7)
Cd4=|Id|・Td ………(8)
である。
また,充電履歴値Ccとして,充電電流I(t)が充電閾値電流Icを超えていた時間Tcに,計測期間内の最大電流値Imaxの値を乗じたもの(Cc5)を採用してもよい。放電履歴値Cdについても,放電電流I(t)が放電閾値電流Idを超えていた時間Tdに,計測期間内の最小電流値Iminの値を乗じたもの(Cd5)を採用することができる。このとき,充電履歴値Cc5および放電履歴値Cd5は,次式に示す値
Cc5=|Imax|・Tc ………(9)
Imax:計測期間内の最大電流値
Cd5=|Imin|・Td ………(10)
Imin:計測期間内の最小電流値
である。
ここで,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを用いた電流制御フローについて図6のフローチャートにより説明する。まず,計測を開始する(S201)。次に,充電閾値電流Ic(図3参照)および放電閾値電流Id(図3参照)の値をメモリ155から適宜読み出す(S202)。充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idは,予め決定しておいた電流値である。図3には,前述したバッテリ50における充放電の経時変化に加えて,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idが例示されている。なお,図3では,充電閾値電流Icを75A,放電閾値電流Idを−75Aとして示している。
Cc/Cd > α
充電過多であると判断する。そして,電流制御期間T2を設定して充電側の電流制御を行う(S207)。そうでない場合(S205:No),S206へ進む。次に,放電履歴値Cdの充電履歴値Ccに対する比が,基準値αよりも大きい場合(S206:Yes),
Cd/Cc > α
放電過多であると判断する。そして,電流制御期間T2を設定して放電側の電流制御を行う(S208)。そうでない場合(S206:No),電流制御は行わない(S209)。すなわち,電流制御期間T2を設定する必要はない。以上を,繰り返すのである。
7−1.電流制御部
本形態では,バッテリ制御部151がバッテリ50に流れる電流制御部としての役割を担うこととした。本形態では図2に示したように,バッテリ制御部151はPCU200の内部にある。しかし,この電流制御部としての機能を,バッテリ50の内部に設けることとしてもよい。その場合,電流制御部以外のその他の制御機能をバッテリ50の内部に持たせてもよい。その場合であっても,電流制御部がバッテリ50の電流制御を行いつつ,PCU200がハイブリッド車両1の走行モードの制御をすることができるからである。
本形態では,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの大小関係を,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの比により判断することとした。しかし,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差により判断することとしてもよい。つまり,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差が,予め定めた基準値β以上の値である場合(S205:Yes),
Cc − Cd ≧ β
充電過多であると判断する。そして,電流制御期間T2を設定して充電側の電流制御を行う(S207)ようにしてもよい。一方,放電履歴値Cdと充電履歴値Ccとの差が,予め定めた基準値β以上の値である場合(S206:Yes),
Cd − Cc ≧ β
放電過多であると判断する。そして,電流制御期間T2を設定して放電側の電流制御を行う(S208)ようにしてもよい。ここでβは,正の数である。また,基準値αおよびβの値は,S205とS206とで共通としたが,S205とS206とで別の値を用いてもよい。
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るバッテリシステム100は,一定期間内(T1+T2)に行われる充電と放電とをバランスよく行うように電流制御を行うものである。計測期間T1において充電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に充電電流を流さず,放電電流もしくはゼロ電流を流す。一方,計測期間T1において放電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に放電電流を流さず,充電電流もしくはゼロ電流を流す。これにより,本形態のバッテリ50における電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復することのできるバッテリシステム100が実現されている。
第2の実施形態について説明する。本形態に係るハイブリッド車両1およびバッテリシステム100の機械的構成は,第1の実施形態と同様である。第1の実施形態と異なる点は,リチウムイオンの濃度分布の偏りを回復するための電流制御方法である。したがって,その異なっている電流制御方法のみについて説明する。
第1の実施形態では,充電過多の場合に,電流制御期間T2内に充電電流の代わりにゼロ電流を流す設定を行った。これにより,電流制御期間T2内には,バッテリ50に放電電流もしくはゼロ電流が流れる。そして,この放電電流については,増大させることもできる。
充電過多の場合における電流制御方法について説明する。第1の実施形態と同様に,電流制御前では,電解液中のリチウムイオンの数は,正極側で多く,負極側で少ない(表1参照)。
Ix = ε×I
ε>1
Ix:電流制御後の放電電流値
ε :増大係数
I :電流制御前の放電電流値
放電過多の場合には,表2に示すように,電解液中のリチウムイオンは,負極側で多く,正極側で少ない。そのため,電流制御期間T2を設定する。この電流制御期間T2では,放電電流の代わりにゼロ電流を流すとともに,充電電流の絶対値を増大させる。その際に,電流値に上記の増大係数を乗じることすればよい。この電流制御の結果,電流制御期間T2内では,バッテリ50に充電電流もしくはゼロ電流が流れることとなる点は,第1の実施形態と同じである。
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るバッテリシステム100は,一定期間内(T1+T2)に行われる充電と放電とをバランスよく行うように電流制御を行うものである。計測期間T1において充電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に充電電流を流さず,放電電流もしくはゼロ電流を流す。そしてさらに,電流制御期間T2の放電電流を増大させる。一方,計測期間T1において放電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に放電電流を流さず,充電電流もしくはゼロ電流を流す。そしてさらに,電流制御期間T2の充電電流を増大させる。このため,電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復させる効果は,第1の実施形態よりも大きい。これにより,本形態のバッテリ50における電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復することのできるバッテリシステム100が実現されている。
第3の実施形態について説明する。本形態に係るハイブリッド車両1およびバッテリシステム100の機械的構成は,第1の実施形態と同様である。第1の実施形態と異なる点は,充電過多および放電過多の判断方法である。第1の実施形態では,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdを用いて充電過多もしくは放電過多を判断した。本形態では,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdに加えて,これらの累積値である累積充電履歴値SCcおよび累積放電履歴値SCdを用いて充電過多もしくは放電過多の判断を行うのである。
本形態では,計測期間T1の間に計測された充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdに加えて,バッテリ50の搭載時からの累積値を用いるのである。長期間でみた場合に,ハイレート充電とハイレート放電とのバランスがとれていない場合があるからである。その場合に,バッテリ50の電解液中のリチウムイオンの濃度に,偏りが生じていることもあるからである。本形態の電流制御は,その累積的なハイレート充放電により生じる偏りを回復するためのものである。
SCc=ΣCc
SCd=ΣCd
で表される。ここで,和は累積計測期間TSについて行われる。
Cc/Cd > α
電流制御期間T2を設定して充電側の電流制御を行う(S310)。そうでない場合(S305:No),S306へ進む。ここで,αは1以上の値である。次に,放電履歴値Cdの充電履歴値Ccに対する比が,基準値αよりも大きい場合(S306:Yes),
Cd/Cc > α
電流制御期間T2を設定して放電側の電流制御を行う(S311)。そうでない場合(S306:No),S307へ進む。
SCc=ΣCc
SCd=ΣCd
和は,和は累積計測期間TSについて行われる
により表されるものである。
SCc/SCd > γ
であった場合(S307:Yes),電流制御期間T2を設定して充電側の電流制御を行う(S310)。そうでない場合(S307:No),S308に進む。ここでγは1以上の数である。
SCd/SCc > γ
であった場合(S308:Yes),電流制御期間T2を設定して放電側の電流制御を行う(S311)。そうでない場合(S308:No),S309に進む。S309では,充電側も放電側も電流制御を行わない。ここで行う電流制御は,第1の形態と同様である。以上を一定期間毎に,繰り返すのである。
2−1.履歴値の大小関係
本形態では,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの大小関係を,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの比により判断することとした。しかし,第1の実施形態における変形例と同様に,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差により判断することとしてもよい。累積充電履歴値SCcと累積放電履歴値SCdとの大小関係についても同様である。
本形態では,充電過多もしくは放電過多を判断するために,閾値を組み合わせることとした。本形態では,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdとこれらの累積値を用いることとした。しかし,第1の実施形態で説明したように,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdとして,複数の例がある。したがって,充電履歴値Ccおよび累積充電履歴値SCcを組み合わせる代わりに,他の組み合わせを用いてもよい。例えば,充電履歴値Cc1(式(1))と充電履歴値Cc3(式(3))とを組み合わせてもよい。また,充電履歴値Cc1(式(1))と充電履歴値Cc3(式(3))の累積値SCc3とを組み合わせてもよい。このように,組み合わせのバリエーションは豊富である。もちろん,閾値の組(例えば,Cc1とCd1)のうちから3以上の組を選んで,これらを組み合わせてもよい。
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るバッテリシステム100は,一定期間内(T1+T2)に行われる充電と放電とをバランスよく行うように電流制御を行うものである。本形態では,計測期間T1で算出した充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdと,これらの累積値により,充電過多もしくは放電過多を判断する。計測期間T1において充電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に充電電流を流さず,放電電流もしくはゼロ電流を流す。一方,計測期間T1において放電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に放電電流を流さず,充電電流もしくはゼロ電流を流す。これにより,本形態のバッテリ50における電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復することのできるバッテリシステム100が実現されている。
第4の実施形態について説明する。本形態に係るハイブリッド車両1およびバッテリシステム100の機械的構成は,第1の実施形態と同様である。第1の実施形態と異なる点は,電流制御期間の設定方法である。したがって,その異なる点についてのみ説明する。
第1の実施形態では,計測期間T1の後に,予め定めた時間を電流制御期間T2として設定することとした。本形態では,電流制御期間T2を予め設定する代わりに,電流制御を終了するための終了条件を設定するのである。つまり,本形態の電流制御期間T3は,電流制御を開始してから終了条件を満たすまでの期間のことである。
Cc > Cd
もしくは,
Cc < Cd
である。ごくまれにではあるが,
Cc = Cd
の場合もありうる。
Cc = Cd
となるまで,電流制御を継続するのである。したがって,電流制御期間T3の終了時には,
Cc = Cd
が成り立っている。なお,計測期間T1における充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差の値が小さければ,電流制御を行う必要はない。
2−1.差が微少量
本形態では,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差がなくなることを電流制御期間T3の終了条件とした。しかし,この差が微少量であるときに,電流制御期間を終了させることとしてもよい。つまり,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差の絶対値が予め定めた履歴値差閾値以下である場合に,電流制御期間T3を終了させるのである。
本形態では,電流制御期間T3の終了条件として,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差がなくなることとした。しかし,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdの代わりに,第3の実施形態で説明した累積充電履歴値SCcおよび累積放電履歴値SCdを用いてもよい。この場合であっても,電解液中の塩濃度分布の偏りを均一化することができることに変わりないからである。
本形態では,電流制御期間T3において,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差がなくなるまで電流制御を行うこととした。しかし,計測期間T1の終了時において,充電履歴値Ccおよび放電履歴値Cdについては計算済みである。もしくは容易に計算できる。図5における,スラッシュのハッチングで表された領域の総面積と,ドットのハッチングで表された領域の総面積との差であるからである。
Cc1a−Cd1a = |Ij−Id|×T3
Cc1a:計測期間T1終了時における充電履歴値Cc1の値
Cd1a:計測期間T1終了時における放電履歴値Cd1の値
が成り立つように,定電流Ijおよび電流制御期間T3を決めればよい。このようにすれば,電流制御期間T3の経過後には,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差はゼロである。
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るバッテリシステム100は,一定期間内(T1+T2)に行われる充電と放電とをバランスよく行うように電流制御を行うものである。本形態では,計測期間T1で算出した充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの間に多少の差が生じたとしても,電流制御期間T2でその差をなくすような電流制御を行う。充電過多の場合には,電流制御期間T2に,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdとの差がなくなるまで充電を行わず放電のみを行う。一方,放電過多の場合には,電流制御期間T2に,充電履歴値Ccと放電履歴値Cdと差がなくなるまで放電を行わず充電のみを行う。これにより,本形態のバッテリ50における電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りを回復することのできるバッテリシステム100が実現されている。
第5の実施形態について説明する。本形態に係るハイブリッド車両1およびバッテリシステム100の機械的構成は,第1の実施形態と同様である。第1の実施形態と異なる点は,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idとして,種々の環境において異なる値を用いることである。ここで種々の環境とは,例えば,電池セルの温度やSOC(State of Charge)である。電解液中のリチウムイオンの濃度分布を変化させるような電流値は,SOCや電池セルの温度によっても変化するからである。つまり,本形態の電流制御は,電解液中におけるリチウムイオンの伝導性を,より反映した充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idを用いることに特徴点を有する。
まず,本形態の電流制御フローを図9により説明する。最初に,計測を開始する(S401)。次に,温度測定部154の測定した各電池セルの温度を取得する(S402)。一方,SOC(State of Charge)も取得する(S402)。なお,本形態ではSOCの値は一定時間おきにメモリ155に記録されている。次に,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idを電池温度−SOC依存性マップから読み出す(S403)。図10は,充電閾値電流Icの電池温度−SOC依存性マップである。取得した電池セルの温度を平均化し,その温度平均値とSOCの値とから,その条件に該当する充電閾値電流Icを読み出すのである。図11は,放電閾値電流Idの電池温度−SOC依存性マップである。同様に,放電閾値電流Idを読み出す。
ここで説明する充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idの設定方法は,メモリ155に格納されている電池温度−SOC依存性マップを作成するために用いるものである。よって,この充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idの設定方法は,バッテリシステム100,ハイブリッドシステム10,およびハイブリッド車両1の必須構成要件ではない。予め定めてメモリ155に記憶させておけばよいものだからである。
大電流による充電または放電を一定時間継続して行った場合,電解液中を電極の周辺の電荷が巨視的に移動する電荷移動過程が生じる。続いて,電解液中の物質が移動する拡散過程(物質移動過程)が生じる。この物質移動過程が生じると,塩濃度分布が不均一になると考えられる。よって,この物質移動過程をなるべく生じさせないように電流制御を行えばよい。しかし,物質移動過程を全く生じないような制御を行うと,ハイブリッド車両1の出力が不足したり,エネルギー効率を低下させるおそれがある。そこで,物質移動過程の生ずるようなハイレート充放電をある程度は認めるのである。ただし,一時的にリチウムイオンの濃度分布に偏りが生じても,なるべく早くその偏りを回復することとするのが望ましい。
r2∝D・t
vD≒(dr/dt)∝(D/t)1/2
r:粒子の存在する半径
D:拡散係数
t:時刻
vD:拡散速度
により表される。すなわち,拡散速度は時間tの平方根√tに反比例する。よって,電池セルの電圧を時間tの代わりに,時間tの平方根√tで評価している。
ここで,電池温度−SOC依存性マップの作成方法について説明する。電池温度またはSOCが変化した場合,それに伴って図12〜図14に示したグラフは変化する。つまり,dV/d√t(b)の値が区間B(電荷移動過程)から区間C(拡散過程)に移る電流値は電池温度とSOCとに依存するのである。すなわち,充電閾値電流Icおよび放電閾値電流Idは,電池温度とSOCとに依存する。このため,電池温度およびSOCの変化に対応した充電閾値電流Icと放電閾値電流Idを得るための温度−SOC依存性マップを用いるのである。
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るバッテリシステム100は,一定期間内(T1+T2)に行われる充電と放電とをバランスよく行うように電流制御を行うものである。計測期間T1において充電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に充電電流を流さず,放電電流もしくはゼロ電流を流す。一方,計測期間T1において放電過多の場合には,電流制御期間T2にバッテリ50に放電電流を流さず,充電電流もしくはゼロ電流を流す。そして,充電過多や放電過多を判断するための閾値電流について,SOCや電池温度等,その環境に応じたものを設定する。これにより,本形態のバッテリ50における電解液中のリチウムイオンの濃度分布の偏りをより好適に回復することのできるバッテリシステム100が実現されている。
10…ハイブリッドシステム
20…エンジン
30…モータ
40…発電機
50…バッテリ
60…動力分割機構
70…インバータ
100…バッテリシステム
151…バッテリ制御部
152…電圧測定部
153…電流測定部
154…温度測定部
155…メモリ
200…パワーコントロールユニット(PCU)
Claims (15)
- 非水電解液型二次電池と,
前記非水電解液型二次電池に流れる電流を測定する電流測定部と,
前記非水電解液型二次電池を制御する制御部とを有する非水電解液型二次電池システムであって,
前記制御部は,
予め定めた計測期間に,
予め定めた充電閾値電流Icを超える電流での充電の履歴を示す充電履歴値Ccと,
予め定めた放電閾値電流Idを超える電流での放電の履歴を示す放電履歴値Cdとを計算する充放電履歴値計算部と,
前記充電履歴値Ccと前記放電履歴値Cdとの違いが予め定められた程度より大きい充電過多の場合または放電過多の場合に,
電流制御期間を設定するとともに,
前記充電履歴値Ccが前記放電履歴値Cdより大きい充電過多の場合には,
前記電流制御期間内に,前記非水電解液型二次電池に充電電流を流さない電流制御を行い,
前記充電履歴値Ccが前記放電履歴値Cdより小さい放電過多の場合には,
前記電流制御期間内に,前記非水電解液型二次電池に放電電流を流さない電流制御を行う電流制御部とを有することを特徴とする非水電解液型二次電池システム。 - 請求項1に記載の非水電解液型二次電池システムであって,
前記電流制御部は,
充電過多の場合に,
前記電流制御期間内に,前記非水電解液型二次電池に放電電流もしくはゼロ電流を流すとともに,
放電過多の場合に,
前記電流制御期間内に,前記非水電解液型二次電池に充電電流もしくはゼロ電流を流すものであることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。 - 請求項2に記載の非水電解液型二次電池システムであって,
前記電流制御部は,
充電過多の場合に,
前記電流制御期間内に,前記非水電解液型二次電池に流れる放電電流の絶対値を増大させるとともに,
放電過多の場合に,
前記電流制御期間内に,前記非水電解液型二次電池に流れる充電電流の絶対値を増大させるものであることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。 - 請求項1から請求項3までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
前記充放電履歴値計算部は,
前記計測期間および前記電流制御期間にわたって,前記充電履歴値Ccおよび前記放電履歴値Cdを計算するものであり,
前記電流制御部は,
前記充電履歴値Ccと前記放電履歴値Cdとの差が予め定めた履歴値差閾値以下である場合に,前記電流制御期間を終了させるものであることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。 - 請求項1に記載の非水電解液型二次電池システムであって,
前記電流制御部は,
充電過多の場合に,
前記電流制御期間内に,前記非水電解液型二次電池に定電流放電を行うとともに,
放電過多の場合に,
前記電流制御期間内に,前記非水電解液型二次電池に定電流充電を行うものであることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。 - 請求項1から請求項5までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
前記電流制御部は,
前記充電履歴値Ccから前記放電履歴値Cdを引いた差が,予め定めた正の基準値以上である場合に,
前記非水電解液型二次電池が充電過多であると判断するとともに,
前記放電履歴値Cdから前記充電履歴値Ccを引いた差が,予め定めた正の基準値以上である場合に,
前記非水電解液型二次電池が放電過多であると判断するものであることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。 - 請求項1から請求項5までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
前記電流制御部は,
前記充電履歴値Ccの前記放電履歴値Cdに対する比が,予め定めた1以上の数である第1の基準値より大きい場合に,
前記非水電解液型二次電池が充電過多であると判断するとともに,
前記放電履歴値Cdの前記充電履歴値Ccに対する比が,予め定めた1以上の数である第2の基準値より大きい場合に,
前記非水電解液型二次電池が放電過多であると判断するものであることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。 - 請求項1から請求項7までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
前記充放電履歴値計算部は,
前記充電履歴値Ccとして,次式
Cc1=|∫[I(t)−Ic(t)]dt|
積分区間はI(t)≧Ic(t)となる時間t
Ic(t)は予め定めた閾値電流
で表される値を用い,
前記放電履歴値Cdとして,次式
Cd1=|∫[I(t)−Id(t)]dt|
積分区間はI(t)≦Id(t)となる時間t
Id(t)は予め定めた閾値電流
で表される値を用いることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。 - 請求項1から請求項7までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
前記充放電履歴値計算部は,
前記充電履歴値Ccとして,次式
Cc2=|∫I(t)dt|
積分区間はI(t)≧Ic(t)となる時間t
Ic(t)は予め定めた閾値電流
で表される値を用い,
前記放電履歴値Cdとして,次式
Cd2=|∫I(t)dt|
積分区間はI(t)≦Id(t)となる時間t
Id(t)は予め定めた閾値電流
で表される値を用いることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。 - 請求項1から請求項7までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
前記充放電履歴値計算部は,
前記充電履歴値Ccとして,次式
Cc3=Ic・Tc
Tcは,I(t)≧Icであった時間
で表される値を用い,
前記放電履歴値Cdとして,次式
Cd3=Id・Td
Tdは,I(t)≦Idであった時間
で表される値を用いることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。 - 請求項1から請求項7までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
前記充放電履歴値計算部は,
前記充電履歴値Ccとして,次式
Cc4=Imax・Tc
Tcは,I(t)≧Icであった時間
で表される値を用い,
前記放電履歴値Cdとして,次式
Cd4=Imin・Td
Tdは,I(t)≦Idであった時間
で表される値を用いることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。 - 請求項1から請求項7までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
前記充放電履歴値計算部は,
前記充電履歴値Ccとして,I(t)≧Icであった時間Tcを用い,
前記放電履歴値Cdとして,I(t)≦Idであった時間Tdを用いることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。 - 請求項8から請求項12までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
前記充放電履歴値計算部は,
前記充電履歴値Ccとして,
前回以前に計算した充電履歴値Ccの総和に,今回計算した充電履歴値Ccを加えた累積充電履歴値SCcを用いるとともに,
前記放電履歴値Cdとして,
前回以前に計算した放電履歴値Cdの総和に,今回計算した放電履歴値Cdを加えた累積放電履歴値SCdを用いるものであることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。 - 請求項1から請求項13までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムであって,
前記充放電履歴値計算部は,
前記充電閾値電流Icとして,
SOC(State of Charge)の値が大きくなるほど絶対値として小さい値を,SOCの値が小さくなるほど絶対値として大きい値を,
電池温度が高くなるほど絶対値として大きい値を,電池温度が低くなるほど絶対値として小さい値を採用するとともに,
前記放電閾値電流Idとして,
SOCの値が大きくなるほど絶対値として大きい値を,SOCの値が小さくなるほど絶対値として小さい値を,
電池温度が高くなるほど絶対値として大きい値を,電池温度が低くなるほど絶対値として小さい値を採用するものであることを特徴とする非水電解液型二次電池システム。 - 請求項1から請求項14までのいずれかに記載の非水電解液型二次電池システムと,
前記非水電解液型二次電池システムから電力を得るモータと,
前記モータとともに駆動源となるエンジンと,
前記モータの出力と前記エンジンの出力とを制御する出力制御部とを有するハイブリッド車両。
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